JP4267609B2 - 金属板材の圧延方法および圧延装置 - Google Patents
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このような問題に対し、特許文献1では、圧延機の入側および出側において圧延材の幅方向位置を測定する装置を配備し、この測定値から圧延材のキャンバーを演算し、これを修正するように圧延機入側に配備したエッジャーロールの位置を調整するキャンバー制御技術が開示されている。
また、特許文献3には、圧延荷重の左右差の実測値を分析して、ロール開度の左右差すなわち圧下レベリングを制御するか、またはサイドガイドの位置を制御するキャンバー制御技術が開示されている。
また、特許文献4には、入側のエッジャーロールとサイドガイド、そして出側サイドガイドで圧延材を拘束してキャンバー制御する方法が開示されている。
特許文献2記載の、圧延機入出側のエッジャーロール荷重左右差に基づくキャンバー制御技術に関する発明では、入側の圧延材に既にキャンバーが存在する場合、これが入側のエッジャーロール荷重差の外乱になって高い制御精度を得ることが困難になる。また、出側のエッジャーロールは圧延材先端がエッジャーロールに衝突することを避けるため圧延材先端通板時は退避しておく必要があり、圧延材先端からキャンバー制御を実施することも困難である。
特許文献4に記載の、入側エッジャーロール、入側サイドガイドおよび出側サイドガイドによるキャンバー制御に関する発明では、出側サイドガイドが出側圧延材を完全に拘束することができれば出側キャンバーを零とすることが可能となるが、圧延操業を円滑に実施するには出側サイドガイドを圧延材板幅より広げておく必要があり、この余裕代の分だけ圧延材にキャンバーを生じることになる。
上記したような従来技術の問題は、結局、種々の原因によって発生するキャンバーを高精度かつ時間遅れなく測定、制御する方法がないことに起因していると言える。
そこで、本発明は、以上のキャンバー制御に関する従来技術の問題点を有利に解決して、圧延本数に依存せず定常的にキャンバーのない、あるいは極めてキャンバーの軽微な金属板材を安定して製造することのできる、金属板材の圧延方法および圧延装置を提供することを目的とするものである。
一般に、圧延によってキャンバーを生ずる原因としては、ロールギャップ設定不良、圧延材の入側板厚左右差あるいは変形抵抗左右差等があげられるが、何れの原因の場合でも、最終的には、圧延によって生じる圧延方向の伸び歪に左右差を生じることで先進率および後進率が板幅方向に変化し、圧延材の出側速度および入側速度に左右差を生じキャンバーを生じることになる。このとき、例えば、圧延材先端部圧延時は、既に圧延が終了した出側の圧延材長さは短いので出側速度に左右差を生じることは比較的自由であるが、入側速度に左右差を生じるためには入側に存在する圧延材全体を水平面内で剛体回転させる必要がある。しかしながら先端部圧延時は一般に入側に長い未圧延材が残っているので、圧延材自身の重量とテーブルローラーとの摩擦によって、上記剛体回転に抗するモーメントが発生する。このモーメントは、圧延機の作業ロールに反力として伝わることになるので、作業ロールチョック部に作用する圧延方向力に左右差を生じることで最終的には支持されることになる。
また、さらに研究を進めると、上記方法では、ロールの摩耗等が起因でロール径の左右差あるいは摩擦係数の左右差等が生じた場合、これによって圧延方向力左右差がシフトする可能性があるため、圧延方向力左右差を小さくする方向に圧下レベリングを操作してもキャンバーの発生を防止することができなくなるといった懸念があることがわかった。
(1)少なくとも作業ロールと補強ロールとを有する金属板材の圧延機を用いて行う金属板材の圧延方法において、該作業ロールの作業側と駆動側のロールチョックに作用する圧延方向の力を測定し、該圧延方向力の作業側と駆動側との差分(以下、差異という。)を演算し、この圧延方向力の差異が制御目標値になるように前記圧延機のロール開度の左右非対称成分を制御し、さらに被圧延材の作業側および駆動側の出側板厚を測定し、該出側板厚の作業側と駆動側との差異(以下、「出側板厚の作業側と駆動側との差異」は「出側板厚ウェッジ」ともいう。)を演算し、この出側板厚ウェッジに基づいて、前記圧延方向力の差異の制御目標値を学習することを特徴とする、金属板材の圧延方法。
(2)さらに、被圧延材の作業側と駆動側の入側板厚を測定し、前記出側板厚ウェッジの演算に代えて、被圧延材の作業側および駆動側の入側板厚および出側板厚の測定値より板厚ウェッジ比率変化を演算し、前記出側板厚ウェッジに代えて、前記板厚ウェッジ比率変化を用い、この板厚ウェッジ比率変化に基づいて前記圧延方向力の差異の制御目標値を学習することを特徴とする、前記(1)に記載の金属板材の圧延方法。
(4)被圧延材の作業側と駆動側の入側板厚を測定する板厚測定装置を有し、被圧延材の作業側および駆動側の入側板厚および出側板厚の測定値に基づいて板厚ウェッジ比率変化を演算する演算装置を有し、前記出側板厚ウェッジに代えて、前記板厚ウェッジ比率変化を用い、この板厚ウェッジ比率変化の演算値に基づいて前記圧延方向力の差異の制御目標値を学習する演算装置を有することを特徴とする、前記(3)に記載の金属板材の圧延装置。
このように圧延後の板厚の差異に基づき、制御目標値を修正すなわち学習し、この学習した制御目標値を当該パス、次パスまたは次材の圧延に設定することで、ロールの摩耗等が起因で生じる圧延方向力左右差のずれを修正し、キャンバー発生の直接原因となる圧延による伸び歪の左右差の正確な検出・測定ができ、これを均一化するための圧下レベリング操作を実施することにより、実質的にキャンバー発生のない、あるいは極めてキャンバーの軽微な圧延が実現可能となる。
この圧延方法では、(1)記載の方法に比べ、制御目標値の学習に圧延前後の作業側および駆動側の板厚の測定が必要となるが、入出側の板厚ウェッジの情報と入出側の板厚の情報が得られるので、当該圧延で発生する圧延方向力左右差と板厚ウェッジの板厚に対する比率の圧延前後の変化、すなわち、板厚ウェッジ比率変化との関係がわかるので、より高精度な制御目標値の学習を行うことができる。
(3)に記載の本発明の金属板材の圧延装置では、以下の機能を有する。
1)作業ロールの作業側と駆動側のロールチョックの圧延方向入側と出側の双 方に荷重検出装置が備えられているので、入・出側双方の荷重測定値の方向性 を考慮して合力を演算することで、入・出側何れの方向に力が作用していても 作業側および駆動側それぞれのロールチョックに作用する圧延方向力を求める ことができる。
2)作業ロールチョックに作用する圧延方向力の作業側と駆動側の差異を演算 する演算装置を備えられているので、作業側ロールチョックに作用する圧延方 向力と駆動側ロールチョックに作用する圧延方向力の差異すなわち圧延方向力 左右差を演算することができる。
3)圧延方向力左右差を求めることによって、キャンバーの原因となる圧延方 向の伸び歪の左右差に起因して圧延材より作業ロールに作用するモーメントを 検出することができる。
4)被圧延材の作業側および駆動側の板厚測定装置が備えられているので 、被圧延材の作業側および駆動側の出側板厚板厚を測定することができ、 これらの測定値の差異を演算する演算装置を備えられているので、被圧延材の 板厚の作業側と駆動側との差異すなわち板厚ウェッジを求めることが できる。
5)圧延方向力左右差の制御目標値を学習する演算装置を備えられているので 、ロール摩耗等が起因で該作業ロールチョックに作用する圧延方向力の差異が シフトした場合においても、このシフトした量を被圧延材の板厚の作業側と駆 動側との差異すなわち板厚ウェッジに基づく学習で修正することできるの で、適切な制御目標値を演算することができる。
6)圧延方向力左右差および該制御目標値に基づいて伸び歪を左右均等化するための圧延機のロール開度の左右非対称成分制御量を演算する演算装置と、該ロール開度の左右非対称成分制御量の演算値に基づいて該圧延機のロール開度を制御する制御装置が配備されているので、圧延方向力左右差に基づくキャンバー制御が実施できる。
また、(4)に記載の本発明の金属板材の圧延装置では、(3)に記載の本発明の金属板材の圧延装置において、被圧延材の作業側と駆動側の出側板厚を測定する板厚測定装置に代えて、被圧延材の作業側とおよび駆動側の入側板厚および出側板厚を測定する板厚測定装置と、被圧延材の出側板厚の板厚ウェッジを演算する演算装置に代えて、被圧延材の作業側と駆動側の入側板厚および出側板厚の測定値に基づいて板厚ウェッジ比率変化を演算する演算装置を備えているので板厚ウェッジ比率変化を求めることができ、被圧延材の板厚ウェッジの演算値に基づいて圧延方向力左右差の制御目標値を学習する演算装置に代えて、板厚ウェッジ比率変化の演算値に基づいて制御目標値を学習する演算装置が備えられているので、圧延方向力左右差の制御目標値を板厚ウェッジ比率変化に基づく学習で修正することできる。したがって、以上の機能によって、(2)に記載の金属板材の圧延方法を実施することが可能となり、より高精度な制御目標値の学習の実施、さらにより高精度なキャンバー制御の実施が可能となる。
以上のように、本発明の圧延方法および圧延装置を用いることによって、圧延本数に依存せず定常的にキャンバーのない、あるいは極めてキャンバーの軽微な金属板材を安定して製造することが可能となり、金属板材の圧延工程の生産性および歩留の大幅な向上が実現できる。
図1には、(1)に記載の本発明の圧延方法を実現する圧延装置または(3)に記載の本発明の圧延装置の好ましい実施の形態を示す。尚、図1は基本的に作業側の装置構成のみを図示しているが、駆動側にも同様の装置が存在する。圧延機の上作業ロール1に作用する圧延方向力は基本的には上作業ロールチョック5によって支持されるが、上作業ロールチョックには上作業ロールチョック出側荷重検出装置9と上作業ロール入側荷重検出装置10が配備されており、上作業ロールチョックを圧延方向に固定しているプロジェクトブロック(図示せず)等の部材と上作業ロールチョックの間に作用する力を測定することができる。これらの荷重検出装置は通常は圧縮力を測定する構造とするのが装置構成を簡単にするため好ましい。上作業ロール圧延方向力演算装置14では、上作業ロール出側荷重検出装置9と上作業ロール入側荷重検出装置10による測定結果の差異を計算することによって、上作業ロールチョック5に作用する圧延方向力を算出する。さらに下作業ロール2に作用する圧延方向力についても、下作業ロールチョック6の出側および入側に配備された下作業ロール出側荷重検出装置11および下作業ロール入側荷重検出装置12の測定値に基づき下作業ロール圧延方向力演算装置15によって、下作業ロールチョック6に作用する圧延方向力を演算する。次に下作業ロール圧延方向合力演算装置16において、上作業ロール圧延方向力演算装置14の演算結果と下作業ロール圧延方向力演算装置15の演算結果の和をとることによって、上下作業ロールに作用する圧延方向合力を算出する。上記のような手続きは作業側のみならず駆動側も全く同じ装置構成で演算を実施し、その結果が駆動側の作業ロール圧延方向合力17として得られる。そして作業側−駆動側圧延方向力差演算装置18によって作業側の演算結果と駆動側の演算結果との差異が計算され、これによって作業ロールチョックに作用する圧延方向力の作業側と駆動側の差異すなわち圧延方向力左右差が計算されることになる。
一般に、板厚ウェッジ比率変化ΔΨとキャンバー曲率変化Δκは、一対一に対応する量であり、例えば、昭和55年度塑性加工春季講演大会(1980) に発表されている論文pp。61〜64「ホットストリップ圧延における蛇行制御方法の研究(第1報)」(中島、菊間、松本、梶尾、木村、田川著)に記載されているように次式で表せる。
図4に示すように圧延方向力左右差と板厚ウェッジの関係直線Aは、ロールの摩耗等が起因で関係直線Bのようにシフトした場合、板厚ウェッジすなわちキャンバー曲率を零にするためには、制御目標値A'(最初は0)を制御目標値B'に変更する必要がある。また、このような圧延方向力左右差と板厚ウェッジの関係直線のシフトおよび制御目標値の変更は、圧延中または圧延後の板厚ウェッジを測定することで容易に判断することができる。
(2)に記載の本発明の圧延方法では、以下のようにして、圧延方向力左右差の制御目標値の学習を行う。図2に示す後面の板厚測定装置23、前面の板厚測定装置26より、圧延中または圧延後の被圧延材の作業側および駆動側の入側板厚および出側板厚が測定される。これらの測定値に基づいて、板厚ウェッジ比率変化を板厚ウェッジ比率変化演算装置27によって演算し、この板厚ウェッジ比率変化は、制御目標値演算装置24に送られる。この時、板厚ウェッジ比率変化の演算は、入出側それぞれの板厚を作業側および駆動側で測定された板厚の平均値を求め、板厚ウェッジを板厚で割った板厚ウェッジ比率を求め、出側板厚ウェッジ比率から入側板厚ウェッジ比率を引くことで板厚ウェッジ比率変化を演算することができる。また、板厚ウェッジ比率変化の代わりに、出側板厚ウェッジから入側板厚ウェッジを引いた板厚ウェッジ変化を用いても良い。制御目標値演算装置24では、板厚ウェッジ比率変化に基づき、当該パス、次パスまたは次材の圧延での制御目標値が演算される。この制御目標値は、圧延本数が増加するに従って学習し変更していく必要があるので、上述した(1)に記載の本発明の圧延方法と同様に、式(4)を用いてパス毎または圧延材本数毎に学習すれば良い。尚、この方法の場合、図4に示した圧延方向力左右差と板厚ウェッジとの関係は、図5に示すような圧延方向力左右差と板厚ウェッジ比率変化との関係に置き換えて、圧延方向力左右差と板厚ウェッジ比率変化との関係直線D、Eの傾きを表す定数ζD、ζEの値を、上述した(1)に記載の本発明の圧延方法と同様に、定期的に測定し学習に用いれば良い。
図3には、(2)に記載の本発明の圧延方法に関する圧延装置または(4)に記載の本発明の圧延装置の他の好ましい実施の形態を示す。図3の実施形態では、図2の実施形態に比べて、前面(逆転パス時は後面)の板厚測定装置、下作業ロールチョックに作用する圧延方向力の検出装置および演算装置を省略している。一般に伸び歪の左右差に起因して圧延材から作業ロールに作用するモーメントは、必ずしも上下作業ロールに均等に作用するとは限らないが、その時系列変化挙動については、上下作業ロールで傾向が逆転することはないが、圧延方向力左右差の零点がシフトする可能性がある。
2 下作業ロール
3 上補強ロール
4 下補強ロール
5 上作業ロールチョック(作業側)
6 下作業ロールチョック(作業側)
7 上補強ロールチョック(作業側)
8 下補強ロールチョック(作業側)
9 上作業ロール出側荷重検出装置(作業側)
10 上作業ロール入側荷重検出装置(作業側)
11 下作業ロール出側荷重検出装置(作業側)
12 下作業ロール入側荷重検出装置(作業側)
13 圧下装置
14 上作業ロール圧延方向力演算装置(作業側)
15 下作業ロール圧延方向力演算装置(作業側)
16 作業ロール圧延方向合力演算装置[加算器](作業側)
17 作業ロール圧延方向合力(駆動側)
18 作業側−駆動側圧延方向力差演算装置
19 圧下レベリング制御量演算装置
20 圧下レベリング制御装置
21 金属板材
22 圧延方向
23 板厚測定装置(後面)
24 制御目標値演算装置
25 作業側−駆動側板厚差演算装置
26 板厚測定装置(前面)
27 板厚ウェッジ比率変化演算装置
Claims (4)
- 少なくとも作業ロールと補強ロールとを有する金属板材の圧延機を用いて行う金属板材の圧延方法において、該作業ロールの作業側と駆動側のロールチョックに作用する圧延方向の力を測定し、該圧延方向力の作業側と駆動側との差分(以下、差異という。)を演算し、この圧延方向力の差異が制御目標値になるように前記圧延機のロール開度の左右非対称成分を制御し、さらに被圧延材の作業側および駆動側の出側板厚を測定し、該出側板厚の作業側と駆動側との差異(以下、「出側板厚の作業側と駆動側との差異」は「出側板厚ウェッジ」ともいう。)を演算し、この出側板厚ウェッジに基づいて、前記圧延方向力の差異の制御目標値を学習することを特徴とする、金属板材の圧延方法。
- さらに、被圧延材の作業側と駆動側の入側板厚を測定し、前記出側板厚ウェッジの演算に代えて、被圧延材の作業側および駆動側の入側板厚および出側板厚の測定値より板厚ウェッジ比率変化を演算し、前記出側板厚ウェッジに代えて、前記板厚ウェッジ比率変化を用い、この板厚ウェッジ比率変化に基づいて前記圧延方向力の差異の制御目標値を学習することを特徴とする、請求項1に記載の金属板材の圧延方法。
- 少なくとも作業ロールと補強ロールとを有する金属板材の圧延機を含む圧延装置において、前記作業ロールの作業側および駆動側のロールチョックに作用する圧延方向の力を測定する前記作業ロールチョックの圧延方向入側と出側の双方に備えた荷重検出装置と、該荷重検出装置による測定値に基づいて前記作業ロールチョックに作用する圧延方向力の差異を演算する演算装置と、前記圧延方向力の差異の演算値に基づいて前記圧延機のロール開度の左右非対称成分制御量を演算する演算装置と、前記ロール開度の左右非対称成分制御量の演算値に基づいて前記圧延機の前記ロール開度を制御する制御装置と、被圧延材の作業側と駆動側の出側板厚を測定する板厚測定装置と、該板厚測定装置による測定値に基づいて出側板厚ウェッジを演算する演算装置と、前記出側板厚ウェッジに基づいて前記圧延方向力の差異の制御目標値を学習する演算装置を有することを特徴とする、金属板材の圧延装置。
- 被圧延材の作業側と駆動側の入側板厚を測定する板厚測定装置を有し、被圧延材の作業側および駆動側の入側板厚および出側板厚の測定値に基づいて板厚ウェッジ比率変化を演算する演算装置を有し、前記出側板厚ウェッジに代えて、前記板厚ウェッジ比率変化を用い、この板厚ウェッジ比率変化の演算値に基づいて前記圧延方向力の差異の制御目標値を学習する演算装置を有することを特徴とする、請求項3に記載の金属板材の圧延装置。
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