以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
図7に示すように、硬貨包装装置11は、ばら状態の硬貨を受け入れるとともに回転による遠心力によって1層1列状態で送り出す回転円盤12、およびこの回転円盤12から送り出される硬貨Cを受け入れて搬送する搬送通路13を備えている。
搬送通路13は、硬貨の一面が載る通路底面部材14を有し、この通路底面部材14上で搬送通路13の両側に通路幅を規制する固定通路部材15および可動通路部材16が配置され、通路底面部材14の上方に硬貨を通路底面部材14に押圧しながら搬送する搬送体としての搬送ベルト17(図1などを参照)が配置されている。
可動通路部材16は通路幅方向に移動可能とし、この可動通路部材16の通路幅方向の位置が金種設定手段18により包装金種に対応して調整され、この可動通路部材16の調整により設定された包装金種より大径金種の硬貨の搬送通路13内への進入が規制される。通路底面部材14には、設定された包装金種が通過し、包装金種より小径金種の硬貨が落下して排除される排除口19が形成されている。
搬送ベルト17は、搬送通路13の下流側に配置されるプーリ20(図1などを参照)を含めて複数のプーリにより搬送通路13に沿って張設されており、回転円盤12から硬貨を送り出す速度より速い速度で硬貨を受け入れて搬送し、硬貨の搬送間隔をあけるように構成されている。
搬送通路13の排除口19より下流位置には、搬送通路13から下流域へ搬送する包装金種の硬貨の通過を検知する通過検知センサS1、搬送通路13から下流域へ搬送する硬貨の枚数を計数する計数センサS2、これらセンサS1,S2の検知に基づいて搬送通路13から下流域へ搬送する所定の集積枚数目の硬貨の次の硬貨を停止させるストッパ21が配設されている。
また、図1、図2および図7に示すように、搬送通路13の下流域には搬送通路13から搬送する硬貨Cを下側から上方へ順次集積していって所定枚数の硬貨Cを集積するための硬貨集積部24が形成され、この硬貨集積部24の上方域には硬貨集積部24で硬貨Cが所定枚数集積された集積硬貨を包装するための硬貨包装部25が形成されている。これら硬貨集積部24および硬貨包装部25は、集積硬貨を包装する包装手段26が有する3本の包装ローラ27,28,29間の空間内でかつ搬送通路13の通路面と同一面に配置された集積底面部材30に対して略垂直に形成されており、包装ローラ27,28,29の軸と平行な上下方向を硬貨Cの集積方向としている。
包装手段26の3本の包装ローラ27,28,29は、硬貨包装装置11の天板31に支持された上下方向の軸によって回転可能としている。硬貨集積部24への硬貨Cの搬送方向における奥側に配置された包装ローラ27および硬貨集積部24の手前側で可動通路部材16側に配置された包装ローラ28は、それぞれレバー32,33によって硬貨集積部24の中心に対して接近離反するように移動可能に支持されている。硬貨集積部24の手前側で固定通路部材15側の包装ローラ29は、天板31に対して位置固定に支持され、図示しない包装ローラ用モータによって回転駆動される。
硬貨集積部24の奥側で包装ローラ27の下部には、搬送通路13から硬貨集積部24に搬送された硬貨Cの先端位置を硬貨集積部24の集積位置に位置決めする規制部34が包装ローラ27と一体的に移動するように配設され、この規制部34には硬貨Cの集積に伴う上方への移動をガイドするガイドローラ35が回転自在に配設されている。
硬貨集積部24の下部には、搬送通路13から硬貨集積部24に搬送されてくる硬貨Cの搬送方向に回転可能とする一対の集積ローラ36が通路幅方向に離間して配設されている。これら集積ローラ36の周縁には集積底面部材30に形成された開口部37から上方に突出する複数の歯部38が形成されている。各歯部38には、搬送されてくる硬貨Cの先端が係合するエッジ部38a、および外径方向に漸増して硬貨Cの後端側を集積底面部材30より持ち上げる漸増部38bが形成されている。そして、集積ローラ36は、搬送通路13から硬貨集積部24に搬送されてくる硬貨Cで1つの歯部38の垂直エッジ部38aが押動されることで回転し、その硬貨Cの搬送方向の後端を集積ローラ36の回転方向次位の歯部38の漸増部38bによって搬送通路13の通路底面部材14および集積底面部材30の上面より上昇させ、続いて搬送されてくる硬貨Cの搬送方向の先端を硬貨集積部24の最下位の硬貨Cの下側に進入させて硬貨Cを集積するように構成されている。したがって、図2に示すように、硬貨集積部24で集積される硬貨Cは傾斜状態で集積される。
一対の集積ローラ36の間には、集積底面部材30に形成された開口部39から上方に出没する支持部材としての支持ロッド40が配設されている。この支持ロッド40は、図示しない駆動手段によって昇降され、硬貨集積時には下降して集積底面部材30の上面より下方に退避し、集積完了後には上昇して上端の水平な硬貨載せ部41に集積硬貨を載せて上方の硬貨包装部25の所定の包装位置まで押し上げる。硬貨載せ部41に集積硬貨を載せることで、傾斜状態にあった集積硬貨が硬貨包装部25では水平状態になる。この支持ロッド40によって硬貨包装部25の包装位置に上昇させる集積硬貨の位置は、硬貨包装部25の包装位置における上下方向の中心と集積硬貨の集積方向である上下方向の中心とが一致するように定められている。したがって、集積硬貨は、集積方向の長さが異なる金種にかかわらず、集積方向の中心を基準として硬貨包装部25の包装位置に配置される。
集積ローラ36および支持ロッド40が配置される集積底面部材30は、ガイド部材42によって硬貨Cの搬送方向および通路幅方向に対して斜め方向に移動可能に支持され、金種設定手段18により移動して集積ローラ36および支持ロッド40の位置が包装金種に対応した位置に調整される。
また、図1ないし図4に示すように、硬貨集積部24の上部には、硬貨集積部24での硬貨Cの集積中から硬貨包装部25での集積硬貨の包装完了までの包装処理期間中であって、かつその包装処理期間中の所定期間を除いて、硬貨Cの上面を押えて集積状態を維持する硬貨支持手段44が配設されている。
この硬貨支持手段44は、硬貨集積部24および硬貨包装部25内を集積方向に移動可能で、硬貨Cの上面に当接して下方へ押える硬貨押え部45を有している。この硬貨押え部45は、硬貨Cより小径の略円柱状で、下面には硬貨集積部24で傾斜状態に集積される硬貨Cの上面に当接して押える傾斜部46、および硬貨包装部25で水平に集積される硬貨Cに当接して押える水平部47が形成されている。
硬貨押え部45は包装ローラ27,29間に通される支持部材48を介して摺動部材49に支持され、この摺動部材49が硬貨包装装置11の天板31と底板50との間に包装ローラ27,28,29の軸と平行に設けられた複数のガイド軸51によって集積方向に摺動可能に取り付けられている。摺動部材49の下方には重り52が複数のガイド軸51に上下方向に摺動可能に取り付けられ、これら摺動部材49と重り52とがスプリング53によって連結されている。
また、図1および図2に示すように、硬貨押え部45の集積方向の位置から硬貨Cの集積高さを検知するための検知手段56が配設されている。この検知手段56は、検知軸57を有するポテンショメータ58、およびこのポテンショメータ58の検知軸57に取り付けられてこの検知軸57を中心として回動する検知レバー59を有し、検知レバー59の一端には硬貨押え部45と一体に上昇する摺動部材49の上面が当接して押し上げられる当接部60が設けられている。ポテンショメータ58は、検知レバー59の回動角度に応じた電圧を出力するもので、ブラケット61によって天板31などに対して固定位置に支持されている。検知レバー59の他端とブラケット61との間には、検知レバー59の一端の当接部60が摺動部材49の上面へ向かう方向へ付勢するスプリング62が取り付けられている。
また、図1および図2に示すように、包装手段26の包装ローラ27,28,29と集積硬貨との間に、供給集積硬貨の周面に巻き付ける包装シートPを供給する包装シート供給部63を備えている。この包装シート供給部63では、包装シートPが集積硬貨の周面に例えば2巻(2重)以上巻き付く所定長さに切断し、包装シートPの幅方向(上下方向)の中心が硬貨包装部25に配置された集積硬貨の集積方向の中心と一致するように、包装シートPを供給する。包装シートPの幅は、例えば110mmで、最も厚みのある500円の硬貨Cを50枚集積した集積長90mmより広く形成されている。そのため、集積硬貨の周面に巻き付けた包装シートPの上下の端部は、集積硬貨の両端面から突出し、その突出寸法が最も小さくなる500円の硬貨の場合でも(110−90)/2=10mm程度となる。
また、図3および図4に示すように、硬貨集積部24の上方であって硬貨包装部25の上部側に、支持ロッド40によって硬貨包装部25の包装位置に配置された集積硬貨の上面に当接する硬貨支持手段44の硬貨押え部45を、集積硬貨の上面に対して離反させたり当接させるように集積方向である上下方向に移動させる移動手段65が配置されている。
この移動手段65は、レバー66を有し、このレバー66の側面には、一端に押動ローラ67が回転可能に軸支され、他端にカムローラ68が回転可能に軸支されている。レバー66の中間部が取付部材69に揺動可能に軸支され、この取付部材69が包装ローラ27,28,29の軸と平行に設けられた支軸70に固定されている。レバー66は、取付部材69に対して一端の押動ローラ67側が長く、この一端の押動ローラ67側に重心があるため、一端の押動ローラ67側が重力によって自動的に下降するように構成されている。あるいは、レバー66の一端の押動ローラ67側が下降するようにスプリングで付勢されている。
支軸70は、その軸回りに取付部材69およびレバー66と一体に回転可能であって、レバー66の一端の押動ローラ67が、支持部材48に対して上下方向に重なることが可能な動作位置と、支持部材48に対して上下方向に重ならずその支持部材48の側方に位置する退避位置とに回転移動可能とする。この支軸70の回転位置は、図示しないモータやソレノイドなどの駆動手段によって切り換えられる。
カムローラ68の上方には水平なカム軸71を中心として回動するカム72が配置され、このカム72の周面であるカム面73にカムローラ68が当接されている。上述したようにレバー66の質量バランスあるいはスプリングでの付勢により、カムローラ68がカム72のカム面73に常時当接されている。レバー66が動作位置と退避位置との間で回転移動しても、カムローラ68とカム72との当接状態は維持されている。
カム72のカム面73には、定位置73a、第1金種位置73b、第2金種位置73c、および第3金種位置73dがそれぞれ形成され、カム軸71からの距離が、定位置73aが最も小さく、第1金種位置73b、第2金種位置73c、および第3金種位置73dの順にカム軸71からの距離が大きくなっている。
そして、カム72のカム面73の定位置73aにカムローラ68が当接する状態では、押動ローラ67が、硬貨包装部25の包装位置に配置されたいずれの金種の集積硬貨においてもその集積硬貨の上面に硬貨押え部45が当接している支持部材48の位置より下側となる定位置に位置し、そのため、支軸70によるレバー66の回転に応じて、押動ローラ67が、支持部材48の下側に進入する動作位置と支持部材48の側方に退避する退避位置とに移動可能となっている。
押動ローラ67が支持部材48の下側に進入した動作位置にあるとき、カム72が回転し、第1金種位置73b、第2金種位置73cおよび第3金種位置73dのいずれかにカムローラ68が当接することにより、一端の押動ローラ67側が上昇するようにレバー66が揺動し、押動ローラ67が支持部材48の下面に当接して集積硬貨の第1金種、第2金種および第3金種のいずれかに応じた距離だけ上方へ押し上げ、硬貨押え部45を集積硬貨の上面から上方へ所定の距離だけ離反させる。
このとき、カム72の第1金種位置73b、第2金種位置73cおよび第3金種位置73dとカムローラ68との当接による押動ローラ67の上昇距離は、集積硬貨の第1金種、第2金種および第3金種にそれぞれ対応している。
図5に示すように、第1金種には硬貨Cの厚みが1.5mm、硬貨Cを50枚集積した集積長が75mmとなる1円、5円および10円が含まれ、第2金種には厚みが1.7mm、硬貨Cを50枚集積した集積長が85mmとなる50円および100円が含まれ、第3金種には厚みが1.8mm、硬貨Cを50枚集積した集積長が90mmとなる500円が含まれている。
上述したように、集積硬貨は、集積方向の長さが異なる金種にかかわらず、集積方向の中心を基準として硬貨包装部25の包装位置に配置されるため、集積硬貨の上面位置は、第1金種を基準とすると、第2金種位置は第1金種との集積長/2の差である5mm高く、第3金種位置は第1金種との集積長/2の差である7.5mm高くなる。
そのため、集積硬貨が第1金種の場合、例えば、定位置に位置する押動ローラ67と支持部材48の下面との間の間隔を6mm、硬貨押え部45を集積硬貨の上面から上方へ例えば3mm離反させるとすると、カムローラ68にカム72の定位置73aから第1金種位置73bが当接することにより、押動ローラ67が6+3=9mm上昇することになる。
同様に、集積硬貨が第2金種の場合、第1金種との集積長/2の差が5mmであるため、カムローラ68にカム72の定位置73aから第2金種位置73cが当接することにより、押動ローラ67が6+3+5=14mm上昇することになる。
同様に、集積硬貨が第3金種の場合、第1金種との集積長/2の差が7.5mmであるため、カムローラ68にカム72の定位置73aから第3金種位置73dが当接することにより、押動ローラ67が6+3+7.5=16.5mm上昇することになる。
なお、硬貨押え部45を集積硬貨の上面から上方へ離反させる距離は、3mmに限らず、硬貨押え部45が、包装中の集積硬貨の上面に接しない距離であればよい。好ましくは、集積硬貨の端面から、集積硬貨に巻き付けられて集積硬貨の端面より突出する包装シートPの端部までの距離以下、すなわち、(包装シートの幅−集積硬貨の長さ)/2以下とすることにより、包装中に集積硬貨の上面から硬貨押え部45を離反させても、包装シートPの端部と硬貨押え部45とにより、硬貨の飛び出しを防止できる。また、硬貨押え部45を集積硬貨の上面から上方へ離反させる距離は、全ての金種について一定の値でもよいし、金種毎に異なる値に設定してもよい。
また、図6に示すように、包装手段26は、集積硬貨の周面に巻き付けられてその集積硬貨の端面から突出する包装シートPの両端部を、集積硬貨の端面に巻き込んでかしめる巻込み手段80を備えている。この巻込み手段80は、一対の巻込み部材81を有し、これら各巻込み部材81を支持する支持部82が支持軸83によって集積方向である上下方向にスライド可能に支持されている。支持軸83の側方には複数のカム84を取り付けたカム軸85が回転可能に配置され、このカム軸85の各カム84に従動する各アーム86により、各巻込み部材81が集積方向に移動する。各アーム86は、一端が軸87で定位置に回転可能に支持され、他端が各支持部82に連結され、中間部が各カム84に当接して従動する。
そして、カム軸85の1回転で1回の包装シートPの巻込み動作が完了するもので、初期の退避位置では、一対の巻込み部材81が、3本の包装ローラ27,28,29間から側方に外れた退避位置に位置するとともに、集積硬貨に巻き付けられる包装シートPの両端部より上下方向にそれぞれ離反した位置にある。カム軸85の回転開始とともに、一対の巻込み部材81が3本の包装ローラ27,28,29間で集積硬貨に巻き付けられた包装シートPの上下領域であるかしめ位置に移動し、一対の巻込み部材81が互いに接近移動して包装シートPを集積硬貨の端面に巻き込んでかしめ、包装シートPのかしめ完了後に、一対の巻込み部材81が上下方向に離反移動してから3本の包装ローラ27,28,29間から退避して初期の退避位置に戻るように構成されている。
また、図7に示すように、金種設定手段18は、可動通路部材16の位置を金種に合せて調整する第1の調整カム91、および集積ローラ36および支持ロッド40の位置を金種に合せて調整する第2の調整カム92を有している。さらに、金種設定手段18により、包装ローラ27,28の位置も金種に合せて調整される。
また、硬貨集積部24および硬貨包装部25の下方の集積底面部材30は、退避手段95によって硬貨集積部24および硬貨包装部25の下方位置から横方向へ退避し、形成した包装硬貨や過不足の生じた集積硬貨を下方へ放出可能としている。退避手段95は、退避用モータ96を有し、この退避用モータ96の駆動でリンク97を介して集積底面部材30を移動させる。
また、図8に硬貨包装装置11のブロック図を示す。硬貨包装装置11を制御する制御部101は、搬送通路13の通過検知センサS1および計数センサS2、検知手段56のポテンショメータ58などからの信号を入力し、回転円盤12および搬送ベルト17を駆動する搬送駆動部102、ストッパ21を駆動するストッパ駆動部103、包装手段26の各構成の駆動部、移動手段65の各構成の駆動部、退避手段95の退避用モータなどを制御する。さらに、制御部101には、検知手段56のポテンショメータ58の出力から硬貨Cの集積高さを検知するために、ポテンショメータ58の出力に対応した金種別の硬貨Cの集積方向の基準長さである基準集積高さを記憶する記憶部104が接続されている。
制御部101は、包装手段26の包装ローラ27,28,29の回転速度を制御し、集積硬貨への包装シートPの巻付け動作中には例えば100〜200rpm程度に低速回転させ、巻込み部材81による包装シートPのかしめ動作中には例えば2000rpm程度に高速回転させ、その回転速度の切り換えは連続的に行う。
制御部101は、包装手段26による包装中の所定期間において、例えば巻込み部材81によるかしめ工程中の少なくとも所定期間に、移動手段65により、硬貨支持手段44の硬貨押え部45を集積硬貨の上面から離反させる機能、あるいは、包装手段26による集積硬貨の回転速度に応じて、例えば包装手段26による集積硬貨の回転速度が所定以上の場合に、移動手段65により、硬貨支持手段44の硬貨押え部45を集積硬貨の上面から離反させる機能を有している。
制御部101は、検知手段56のポテンショメータ58の出力から硬貨Cの集積方向の長さである集積高さを検知し、この検知した集積高さと記憶部104に記憶された基準集積高さとを比較して硬貨枚数の過不足を確認する機能を有している。この硬貨枚数の過不足の確認は、集積硬貨を硬貨包装部25の包装位置に移動させた包装前のタイミング、集積硬貨の包装が完了した包装完了後のタイミングにおいて行う。
次に、硬貨包装装置11の動作を説明する。
まず、硬貨包装装置11の全体の動作を説明する。なお、硬貨支持手段44の制御に関する動作の説明は、この全体の動作の説明では省き、後述するものとする。
金種設定手段18によって包装する金種を設定し、搬送通路13の通路幅、集積ローラ36および支持ロッド40の位置、包装ローラ27,28の位置をそれぞれ調整する。
最初に、集積工程において、回転円盤12に送り込まれた硬貨Cのうち、包装金種の硬貨径以下の硬貨Cを、回転円盤12の回転による遠心力によって搬送通路13に1枚ずつ送り出し、搬送ベルト17によって搬送する。包装金種より小径の硬貨Cは排除口19から落下し、包装金種の硬貨Cのみを搬送通路13の下流側から硬貨集積部24に搬送する。
硬貨集積部24に搬送する硬貨Cを計数センサS2で検知してカウントし、所定の集積枚数目の硬貨Cを検知したら、その硬貨Cの通過を通過検知センサS1で確認した後、ストッパ21を搬送通路13内に進入させ、所定の集積枚数目の硬貨Cに続く硬貨Cを停止させる。
図2に示すように、この集積工程において、硬貨集積部24では、搬送通路13から搬送してくる硬貨Cで集積ローラ36の1つの歯部38のエッジ部38aを押動して集積ローラ36が回転し、その硬貨Cの搬送方向の後端を集積ローラ36の回転方向次位の歯部38の漸増部38bによって搬送通路13の通路底面部材14および集積底面部材30の上面より上昇させ、続いて搬送してくる硬貨Cの搬送方向の先端を硬貨集積部24の最下位の硬貨Cの下側に潜り込ませて硬貨Cを順次集積する。このとき、硬貨押え部45が最上位の硬貨Cの上面に当接して下方へ押圧し、集積状態を維持する。
硬貨集積部24で搬送通路13から搬送してくる所定の集積枚数分の硬貨Cを集積完了した後、図1に示すように、支持ロッド40を上昇させ、集積硬貨を硬貨包装部25の所定の包装位置まで上昇させる。このとき、集積硬貨と一体に硬貨押え部45が上昇し、この硬貨押え部45の摺動部材49の上面が検知手段56の検知レバー59の当接部60に当接して押し上げ、検知レバー59を介してポテンショメータ58の検知軸57を回動させる。ポテンショメータ58は検知軸57の回動位置に対応した電圧の信号を制御部101に出力する。
制御部101は、ポテンショメータ58の出力から集積硬貨の集積高さを検知し、この検知した集積高さと記憶部104に記憶された基準集積高さとを比較して硬貨枚数の過不足を確認する。
仮に、硬貨枚数に過不足が生じていた場合には、この集積硬貨の包装を中止し、支持ロッド40を下降させた後に退避手段95によって集積底面部材30を硬貨集積部24の下部から退避させ、開口した硬貨集積部24の下部から集積硬貨を排出して回収する。その後、退避手段95によって集積底面部材30を硬貨集積部24の下方に戻し、次の硬貨集積から始まる包装動作を再開する。
包装前の確認で硬貨枚数に過不足が生じていなければ、包装手段26による包装工程を開始し、まず、包装工程中の巻付け工程において、包装ローラ27,28,29で集積硬貨Cを挟み込んで低速回転させながら、これら包装ローラ27,28,29と集積硬貨との間に包装シート供給部63によって所定長さに切断した包装シートPを供給し、集積硬貨の周面に包装シートPを例えば2巻(2重)以上巻き付ける。さらに、包装工程中のかしめ工程において、包装ローラ27,28,29で集積硬貨を高速回転させながら、集積硬貨の端面から突出する包装シートPの両端部を一対の巻込み部材81で集積硬貨の端面に巻き込んでかしめ、棒金といわれる包装硬貨を作成する。
包装完了後には、包装ローラ27,28,29の回転を停止させた後、検査工程において、包装前と同様に、包装硬貨の上面に当接する硬貨押え部45を利用し、制御部101で包装硬貨の硬貨枚数の過不足を確認する。すなわち、制御部101は、検知手段56のポテンショメータ58の出力から硬貨Cの集積高さを検知し、この検知した集積高さと記憶部104に記憶された基準集積高さとを比較して硬貨枚数の過不足を確認する。
仮に、包装中に硬貨枚数に過不足が検知された場合には、包装動作を中止し、支持ロッド40を下降させた後に退避手段95によって集積底面部材30を硬貨集積部24の下部から退避させ、開口した硬貨集積部24の下部から包装中の集積硬貨Cを排出して回収する。その後、退避手段95によって集積底面部材30を硬貨集積部24の下方に戻し、次の硬貨集積から始まる包装動作を再開する。
仮に、包装完了後に硬貨枚数に過不足が検知された場合には、支持ロッド40を下降させた後に退避手段95によって集積底面部材30を硬貨集積部24の下部から退避させ、開口した硬貨集積部24の下部から包装硬貨を排出して回収する。その後、退避手段95によって集積底面部材30を硬貨集積部24の下方に戻し、次の硬貨集積から始まる包装動作を再開する。
包装完了後の確認で硬貨枚数に過不足が生じていなければ、支持ロッド40を下降させた後に退避手段95によって集積底面部材30を硬貨集積部24の下部から退避させ、開口した硬貨集積部24の下部から包装硬貨を排出し、収納などの次に処理する所定の場所に送る。その後、退避手段95によって集積底面部材30を硬貨集積部24の下方に戻し、次の硬貨集積から始まる包装動作を開始する。
次に、硬貨支持手段44の制御に関する動作について説明する。
図9に示すように、硬貨支持手段44の制御に関する動作の例として、実施例1および実施例2を示す。
まず、実施例1において、硬貨集積部24での硬貨Cの集積工程中には、硬貨押え部45が最上位の硬貨Cの上面に当接して下方へ押圧し、硬貨Cの集積状態を維持し、また、巻込み部材81は包装ローラ27,28,29間から退避した退避位置に位置している。
集積工程に続く、包装シートPの巻付け工程中には、包装ローラ27,28,29で集積硬貨を挟み込んで低速回転させながら、これら包装ローラ27,28,29と集積硬貨との間に包装シート供給部63によって所定長さに切断した包装シートPを供給し、集積硬貨の周面に包装シートPを巻き付ける。この巻付け工程中には、硬貨押え部45が集積硬貨の上面に当接して下方へ押圧し、包装シートPの巻き付けに伴って集積硬貨の集積が乱れるのを防止し、また、巻込み部材81は退避位置に位置している。このとき、硬貨押え部45が集積硬貨の上面に当接しているが、集積硬貨の回転速度は低速回転であるため、硬貨押え部45と集積硬貨の上面とが擦れるものの、硬貨Cを傷付けるまでには至らない。
巻付け工程に続く、包装シートPのかしめ工程中には、一対の巻込み部材81を包装ローラ27,28,29間で集積硬貨に巻き付けられた包装シートPの上下領域であるかしめ位置に移動させ、包装ローラ27,28,29で集積硬貨を高速回転させながら、一対の巻込み部材81を互いに接近移動させて集積硬貨の端面から突出する包装シートPの両端部を集積硬貨の端面に巻き込んでかしめる。このかしめ工程中において、移動手段65によって硬貨支持手段44の硬貨押え部45を上昇させ、集積硬貨の上面から離反させることにより、硬貨押え部45と高速回転する集積硬貨の上面とが擦れるのを防止し、硬貨Cの表面を傷付けるのを防ぐことができる。
このかしめ工程中には、巻付け工程において2巻(2重)以上巻き付けた包装シートPにより集積硬貨Cが強固に締め付けられていて、集積硬貨の集積状態が安定して保持されていること、上側の巻込み部材81が集積硬貨の上面に対向する上方領域に位置し、包装シートPの上端からの硬貨Cの飛び出しを防止する役目を果たすこと、硬貨押え部45が集積硬貨の端面から離反する寸法が、集積硬貨の端面より突出する包装シートPの寸法より小さく、すなわち(包装シートの幅−集積硬貨の長さ)/2以下で、包装シートPの上端からの硬貨Cの飛び出しを防止する役目を果たすこと、などにより、硬貨押え部45を集積硬貨の上面から離反させても、包装シートPの上端からの硬貨Cが飛び出したり、硬貨Cの集積が乱れることなく包装シートPの端部を集積硬貨の上面に巻き込んでかしめることができる。
かしめ工程を完了すれば、包装ローラ27,28,29および包装硬貨の回転を停止させ、一対の巻込み部材81を包装ローラ27,28,29間から退避させる。
かしめ工程の後の検査工程において、移動手段65によって硬貨支持手段44の硬貨押え部45を下降させ、この硬貨押え部45を包装硬貨の上面に当接させる。これにより、制御部101は、ポテンショメータ58の出力から包装硬貨の集積高さを検知し、この検知した集積高さと記憶部104に記憶された基準集積高さとを比較して硬貨枚数の過不足を確認する。
次に、実施例2について説明する。ここでは、実施例1との相違点のみを説明するが、その他に関しては実施例1と同様である。
包装シートPの巻付け工程の開始からかしめ工程の完了までの期間中に亘り、移動手段65によって硬貨支持手段44の硬貨押え部45を上昇させ、集積硬貨の上面から離反させる。これにより、硬貨押え部45と巻付け工程およびかしめ工程とも回転する集積硬貨の上面とが擦れるのを防止し、硬貨Cの表面を傷付けるのを確実に防ぐことができる。
この場合、3本の包装ローラ27,28,29で集積硬貨を挟持し、安定した集積状態に保持されるため、硬貨押え部45を集積硬貨の上面から離反させても、包装シートPの上端からの硬貨Cが飛び出したり、硬貨Cの集積が乱れることなく包装できる。
なお、巻付け工程は包装手段26により集積硬貨を低速回転させ、かしめ工程は包装手段26による集積硬貨を高速回転させるので、実施例1の場合は、高速回転中は硬貨支持手段44の硬貨押え部45を上昇させ、集積硬貨の上面から離反させると捉えることができる。硬貨押え部45との当接による硬貨Cの傷付きは、集積硬貨が高速回転する方が起こりやすいので、集積硬貨が高速回転する場合に硬貨押え部45を集積硬貨の上面から離反させることにより、硬貨Cの表面を傷付けるのを防ぐことができる。
また、巻付け工程において、包装シートPの1重目を集積硬貨の周面に巻き終わった時点からかしめ工程の完了までの期間中に亘り、移動手段65によって硬貨支持手段44の硬貨押え部45を上昇させ、集積硬貨の上面から離反させるようにしてもよい。この場合、硬貨Cの集積状態を安定させながら硬貨Cの表面をできるだけ傷付けることなく包装できる。
または、かしめ工程の開始時と終了時とを除き、包装ローラ27,28,29および集積硬貨の高速回転が安定する期間中だけ、移動手段65によって硬貨支持手段44の硬貨押え部45を上昇させ、集積硬貨の上面から離反させるようにしてもよい。この場合、集積硬貨の回転が高速に切り換わる際の影響によって硬貨Cが飛び出すのを確実に防止できる。
このように、包装手段26による包装中の処理工程に応じた所定期間や、包装手段26による集積硬貨の回転速度に応じて、硬貨支持手段44を集積硬貨の端面から離反させるため、硬貨Cの表面をできるだけ傷付けることなく硬貨Cを包装できる。
特に、巻込み部材81によるかしめ工程中の少なくとも所定期間や、包装手段26による集積硬貨の回転速度が所定以上の場合に、硬貨支持手段44の硬貨押え部45を集積硬貨の端面から離反させるため、硬貨Cの表面をできるだけ傷付けることなく硬貨を包装できる。
また、包装完了までの間に硬貨支持手段44の硬貨押え部45を集積硬貨の端面から離反させていても、包装手段26による包装完了後に、硬貨支持手段44の硬貨押え部45を包装硬貨の端面に当接させることにより、検知手段56の検知に基づいて硬貨の過不足を検出することができる。これにより、仮に、包装中に硬貨Cの飛び出しが生じた場合でも、包装硬貨に硬貨枚数の不足が生じていることを把握し、対処することができる。
また、かしめ工程終了間際に回転速度が遅くなる場合には、回転速度が遅くなるタイミングに合わせて、かしめ工程完了前であっても、再び硬貨押え部45を当接させるようにしてもよい。
なお、硬貨包装装置11は、前記実施の形態のように硬貨Cを上下方向に集積するものに限らず、水平方向、あるいは斜め方向に集積するものにも適用できる。そのため、硬貨支持手段44は、集積硬貨や包装硬貨の上面に当接するものに限らず、集積硬貨や包装硬貨の端面に当接するものであればよい。