JP5613394B2 - 香味付与剤及び組成物 - Google Patents
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Description
(1)レモン果皮油から蒸留により低沸点香気成分の一部を除去した後の蒸留残渣を薄膜蒸留することにより得られる組成物。
(2)蒸留残渣が、シトラールを500〜7,000ppm含むものである(1)記載の組成物。
(3)蒸留残渣を15〜110Paの圧力、110〜210℃の温度の条件で薄膜蒸留することにより得られる、(1)又は(2)に記載の組成物。
(4)薄膜蒸留が、2段階またはそれ以上の段階に分割して行って得られた留出物の混合物である(1)乃至(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)60〜110Paの圧力、110〜150℃の温度で少なくとも1回以上の薄膜蒸留を行って得られた留出物と、15〜60Paの圧力、150〜210℃の温度で少なくとも1回以上の薄膜蒸留を行って得られた留出物との混合物である(4)に記載の組成物。
(6)4,000〜20,000ppmのシトラール、10,000〜90,000ppmのβ−ビサボレン、1,000〜4,500ppmのペンタコサン及び2,000〜12,000ppmのスクアレンを含む、(1)乃至(5)のいずれかに記載の組成物。
(7)(1)乃至(6)のいずれかに記載の組成物を有効成分として含有することを特徴とする、香味付与剤。
(8)(1)乃至(6)のいずれかに記載の組成物を添加して得られる香味料組成物。
(9)0.5〜180ppmのペンタコサンを含むことを特徴とする(8)に記載の香味料組成物。
(10)(1)乃至(6)のいずれかに記載の組成物を添加して得られる飲食品。
(11)1.0〜90ppbのペンタコサンを含むことを特徴とする(10)に記載の飲食品。
〔1〕原材料
本発明に使用するレモン果皮油(A)は、レモン果皮から採取される精油であり、コールドプレスオイルとも呼ばれる。採取方法としては特に制限はないが、主に機械による圧搾法が用いられる。本発明では使用するレモン果皮油に特に制限はなく、レモン果皮を圧搾して得た果皮油を用いてもよく、また、市販されているものを用いてもよい。
ての価値が低いテルペン系炭化水素と、シトラールを主成分とするレモン特有のフレッシュな香気を有する含酸素成分等とが例示される。本発明における蒸留残渣(B)を得る方法は特に制限はなく、後述するように、蒸留残渣(B)に香気成分がある程度残存するような蒸留であればどのような方法であってもよい。例としては、レモン果皮油(A)を精密蒸留に供しテルペン系炭化水素を除いた後、得られた残渣部を減圧蒸留(薄膜蒸留)に供し含酸素成分を除き、蒸留残渣(B)を得る方法が挙げられる。
レモン果皮油(A)中には、テルペン系炭化水素が90wt.%以上含まれる。この大部分を除去するよう蒸留するのが好ましく、すなわち、レモン果皮油(A)から精密蒸留等を行った後の濃縮油(A’)がレモン果皮油の重量の10wt.%程度になるまで精密蒸留等を行うことが好ましい。このような精密蒸留の条件としては、6,500Pa〜1,300Pa、60℃〜120℃、還流比5/10(留出/還流)の条件が例示できる。また、精密蒸留の残渣部から含酸素成分の一部を除く薄膜蒸留の条件としては、260Pa〜133Pa、50℃〜105℃の条件が例示できる。このような条件で蒸留を行うと、レモン果皮油(A)の体積に対して、約2〜5wt.%、好ましくは3〜4wt.%程度の蒸留残渣(B)が得られる。
香味付与剤として利用可能な本発明の組成物は、比較的低沸点の香気成分と、より高沸点の主に味に寄与する成分を含有することから、薄膜蒸留の原材料となる蒸留残渣(B)には香気成分をある程度残存させておく必要がある。香気成分の残存量は、シトラール含有量を指標とした場合、一般に500〜7,000ppmが適切であり、より好ましくは2,000〜5,000ppmである。
本発明の組成物は、上記のとおり、レモン果皮油(A)から蒸留により低沸点香気成分の一部を除去した後の蒸留残渣(B)を薄膜蒸留することにより得られる。蒸留残渣(B)で使用される薄膜蒸留とは、分子蒸留に準じる高真空条件下での蒸留を言う。分子蒸留とは、高真空条件下での蒸留であって、蒸発した分子が他の分子と衝突を起こさず冷却面へ到達して凝縮するような蒸留による精製方法を言う。本発明で使用される薄膜蒸留において使用される装置或いは器具については、かかる精製方法が適用できる装置等であればその種類は問わない。実生産に供される装置であって入手可能なものとしては、一般的に回分式又は連続式薄膜蒸留装置があり、形式により流下薄膜式蒸留装置、遠心薄膜式蒸留装置に分類される。これらの装置の中でも安定した薄膜状態を形成できる観点から遠心薄膜式蒸留装置、特に連続式遠心薄膜式蒸留装置を使用することが好ましい。
薄膜蒸留を2段階に分けて行うことにより、第一留分は香気成分を比較的多く含む留分として、第二留分はより高沸点の主に味に寄与する成分を多く含む留分として得ることができる。各留分を適切な比率で混合することにより、より好ましい香味を有する香味付与
剤として利用可能な組成物となる。
薄膜蒸留で得られた留出物(C)は香味付与剤として、そのまま飲食品に添加することができる。果実風味を有する飲食品に添加することで、レモン本来の香りに加え、かすかな苦味や渋み、青さが付与され、より天然に近い好ましい香味が飲食品に付与される。果実風味としてはレモンが好ましいが、他にもオレンジ、グレープフルーツなどの柑橘類や、リンゴ、パイナップル、グレープ、チェリー、プラム、トロピカルフルーツなどを挙げることができる。果実風味を有する飲食品としては、清涼飲料、炭酸飲料、果汁入り飲料、茶飲料、アルコール飲料などの飲料類、チューインガム、キャンディー、アイスキャンディー等の菓子、冷菓類などが挙げられる。また、香味のアクセントとして果実(果汁)や果実風味の香料が用いられる飲食品に使用することもできる。果実風味をアクセントとして用いる飲食品としては、ドレッシング、焼き肉のたれ、ウスターソース、めんつゆ、各種調味料などが挙げられる。
ppbとなるように添加するとより好ましい。
本発明の実施例において使用した香味付与剤は次のようにして調製した。
(工程1)
レモンオイル1kgから、減圧度6,500Pa〜1,300Pa、温度60〜105℃、還流比5/10(留出/還流)の精密蒸留によってリモネンなどの低沸点成分を除き、残渣部100gを得た。
残渣部を260〜133Pa、50〜110℃の条件で遠心式薄膜蒸留に供し、蒸留残渣を得た。
(工程2)
工程1で得られた蒸留残渣を100Pa、130℃の条件で2回薄膜蒸留し留出分(第一留分)と残渣を得た。続いて得られた残渣を30Pa、210℃の条件で薄膜蒸留し留出分(第二留分)を得た。第一留分と第二留分とを合わせ香味付与剤8.0gを得た。
香味付与剤はレモン様の香気を有する黄橙色オイルで、その融点は50〜60℃であった。得られた香味付与剤の主な香気組成を表1に示す。
製造例1の工程(1)と同様の方法で得られた蒸留残渣77.5gを原料に用いて、以下の条件で香味付与剤を得た。
上記の蒸留残渣を90〜110Pa、130℃の条件で薄膜蒸留に供して留出分(第一留分)と残渣を得、次に、当該残渣を30〜40pa、160℃の条件で薄膜蒸留に供して留出分(第二留分)を得、第一留分と第二留分とを合わせた留出分として香味付与剤11.8gを得た。
香味付与剤はレモン様の香気を有する黄橙色オイルで、その融点は50〜60℃であった。得られた香味付与剤の主な香気組成を表2に示す。
製造例1の工程(1)と同様の方法で得られた蒸留残渣75gを原料に用いて、以下の条件で香味付与剤を得た。
上記の蒸留残渣を80〜100Pa、110℃で薄膜蒸留に供して留出分(第一留分)と残渣を得、次に、当該残渣を15〜25pa、210℃の条件で薄膜蒸留に供して留出分(第二留分)を得、第一留分と第二留分とを合わせた留出分として香味付与剤27.6gを得た。
香味付与剤はレモン様の香気を有する黄橙色オイルで、その融点は50〜60℃であった。得られた香味付与剤の主な香気組成を表3に示す。
対照品として、特許文献3787654号の実施例1に従い調製した脱ワックス処理高沸点部を用いた。
調製条件:レモン果皮オイル120gを60Paの減圧下、徐々に加熱して揮発性成分を除いた。オイルの温度が120℃に達したところで加熱を止め、高沸点画分3.7gを得た。得られた高沸点画分のうち2.0gを40gのシリカゲルを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、n−ヘキサン、n−ヘキサン:酢酸エチル=9:1(容量比)、n−ヘキサン:酢酸エチル=8:2(容量比)、酢酸エチルを順に300mLずつ用いて溶出液を得た。n−ヘキサン溶出液以外の溶出液を合わせ、ロータリーエバポレーターにて溶媒を除去し、脱ワックス処理高沸点部1.8gを得た。
香味付与剤の評価を輪切りレモンを浮かべた水を対照品に用いて行った。輪切りレモンを浮かべた水は以下のように調製した。
イオン交換水400gにレモン輪切り2片(12g)を浮かべ、2分静置後、切片を除きレモンのさわやかな香気と果実感を有する水部を得た(pH=3.7(実測値))。
評価試料は以下のように調製した。
製造例1で得られた香味付与剤をイオン交換水に10ppm添加して評価試料1を調製した。
比較例1で得られた脱ワックス処理高沸点部をイオン交換水に10ppm添加して評価試料2を調製した。
レモン果皮油の香気部分に合わせてレモン香料を調製し、それを評価試料2に添加して評価試料3を調製した。評価試料3の香気成分の組成を表4に示した。
なお、評価試料1〜3のpHは、クエン酸を用いて3.7に調整した。
訓練されたパネル4名により、果実感に関する点数評価(1〜7点)を行った。ここで果実感とは、飲用により感じる香味の広がり、果肉を想起させるような、かすかな苦味、渋み、青さを伴う果実本来の香味を指し、輪切りレモンを浮かべた水から感じられる果実感を7点とし、まったく果実感を感じない場合を1点とした。評価結果を表5に示す。
イオン交換水100重量部に液糖6.6重量部、クエン酸0.1重量部、クエン酸三ナトリウム・2水和物0.5重量部を溶解させ、レモンフレーバー(小川香料株式会社製)を5ppm添加したものを評価生地とした。この評価生地に、製造例1で得られた香味付与剤を1ppmあるいは10ppm添加したものを評価試料とした。
訓練されたパネル7名の評価により、果実感に関して点数評価を行った。果実感に関して7段階の点数評価を行った。果実感の定義は試験例1と同様とし、無添加評価生地の果実感を4点と置いて評価を行った。評価結果を表6に示す。
市販のりんご低果汁飲料を評価生地とし、製造例1で得られた香味付与剤を1ppmあるいは5ppm添加したものを評価試料とした。
訓練されたパネル7名の評価により、果実感に関して7段階の点数評価を行った。果実感の定義は試験例1と同様とし、無添加評価生地の果実感を4点と置いて評価を行った。評価結果を表7に示す。
市販のオレンジ低果汁飲料を評価生地とし、製造例1で得られた香味付与剤を1ppm
あるいは5ppm添加したものを評価試料とした。
訓練されたパネル7名の評価により、果実感に関して7段階の点数評価を行った。果実感の定義は試験例1と同様とし、無添加評価生地の果実感を4点と置いて評価を行った。結果を表8に示す。
市販のグレープフルーツ低果汁飲料を評価生地とし、製造例1で得られた香味付与剤を1ppmあるいは5ppm添加したものを評価試料とした。
訓練されたパネル7名の評価により、果実感に関して7段階の点数評価を行った。果実感の定義は試験例1と同様とし、無添加評価生地の果実感を4点と置いて評価を行った。結果を表9に示す。
市販のレモン飲料を評価生地とし、製造例1で得られた香味付与剤を1ppmあるいは5ppm添加したものを評価試料とした。
訓練されたパネル7名の評価により、果実感に関して7段階の点数評価を行った。果実感の定義は試験例2と同様とし、無添加評価生地の果実感を4点と置いて評価を行った。結果を表10に示す。
Claims (6)
- レモン果皮油から蒸留により低沸点香気成分の一部を除去した後のシトラールを500〜7000ppm含む蒸留残渣を、60〜110Paの圧力、110〜150℃の温度で少なくとも1回以上の薄膜蒸留を行って第一の留分と残渣部を得、次に当該残渣部を15〜60Paの圧力、150〜210℃の温度で少なくとも1回以上の薄膜蒸留を行って第二の留分を得、第一の留分と第二の留分を混合することにより得られる、4000〜20000ppmのシトラール、10000〜90000ppmのβ−ビサボレン、1000〜4500ppmのペンタコサン及び2000〜12000ppmのスクアレンを含む組成物。
- 請求項1に記載の組成物からなることを特徴とする香味付与剤。
- 請求項1に記載の組成物を添加して得られる香味料組成物。
- 0.5〜180ppmのペンタコサンを含む請求項3に記載の香味料組成物。
- 請求項1に記載の組成物を添加して得られる飲食品。
- 1〜90ppbのペンタコサンを含む請求項5に記載の飲食品。
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