JP5611382B2 - 安定化ジルコニア粉末およびその前駆体の製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1および特許文献2に開示されている方法は、いずれも、ジルコニウム、安定化剤となる元素、および、硫酸塩イオンを含む酸性の水溶液を加熱して安定化元素を一部吸着若しくは取り込んだジルコニウムの塩基性硫酸塩を析出させた後、系のpHを上昇させてジルコニウムの塩基性硫酸塩を水酸化物に変換するとともに、安定化元素を水酸化物としてジルコニウムの水酸化物と共沈させ、得られたジルコニウムと安定化元素とを含む水酸化物を焙焼して安定化ジルコニア粉末を得るというものである。
[1]オキシ塩化ジルコニウムを溶解した水溶液中に炭酸ジルコニウム塩を溶解して水溶液中のZr/Clのモル比を0.50を超え1.00以下、好ましくは0.60以上0.84以下とする工程、前記のZr/Clを調整した水溶液に、希土類元素、マグネシウムおよびアルミニウムからなる群から選ばれる一種または二種以上の安定化元素を含む化合物を溶解する工程、前記のジルコニウムおよび安定化元素の一種または二種以上を含む水溶液に、さらに硫酸塩イオンを含む化合物を溶解した後、その水溶液を50℃以上に加熱し、ジルコニウムの塩基性硫酸塩を析出させる工程、前記のジルコニウムの塩基性硫酸塩の析出物を含む水溶液のpHを8〜12とし、前記のジルコニウムの塩基性硫酸塩の析出物の硫酸塩イオンを水酸イオンと置換してジルコニウムの水酸化物とするとともに、前記の安定化元素を水酸化物として前記のジルコニウムの水酸化物と共沈させる工程、および、前記の安定化元素の水酸化物とジルコニウムの水酸化物とが共沈した固相を固液分離により回収する工程、とを含む、安定化ジルコニア粉末の前駆体の製造方法、および、
[2]前記の安定化ジルコニア粉末の前駆体を焙焼する工程をさらに含む、安定化ジルコニア粉末の製造方法、
である。
ここでいう希土類元素とは、スカンジウム、イットリウムおよびランタノイドを意味する。
本発明の安定化ジルコニウム粉末およびその前駆体の製造方法においては、出発物質のジルコニウム源として、酸性の水溶液に可溶なオキシ塩化ジルコニウムを用い、さらにその水溶液に炭酸ジルコニウム塩を溶解する。本発明に使用可能な炭酸ジルコニウム塩としては、炭酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム等が挙げられる。炭酸ジルコニウム塩は、オキシ塩化ジルコニウム水溶液に固体状態で直接溶解することも可能であるが、反応の均一性の観点から、水溶液の状態でオキシ塩化ジルコニウム水溶液に混合することが好ましい。なお、これらの反応は、45℃以下で行うことが好ましい。また、これらの反応は、公知の撹拌手段を用いて、撹拌条件下で行っても良い。
炭酸ジルコニウム塩の水溶液は、通常アルカリ性域で安定に用いられる。酸性域では炭酸基が安定に存在できず、炭酸ジルコニウム塩単独では急速に加水分解して水酸化物の沈殿を形成するが、オキシ塩化ジルコニウム水溶液に溶解した場合には、可溶性の状態を保つことが可能である。これは、炭酸ジルコニウム塩由来のジルコニウムが、水溶液中に存在していた可溶性のジルコニウム化合物と反応して、水酸基を含む可溶性の無機ポリマーを形成したためと考えられる。
本発明においては、全ジルコニウム濃度については特に規定するものではないが、炭酸ジルコニウム塩を溶解した時点で2.77〜3.78mol/Lとすることが好ましい。全ジルコニウム濃度が2.77mol/L未満では、1回の処理により得られる安定化ジルコニウム粉末の量が少なく、製造コストの増大を招くので好ましくない。全ジルコニウム濃度が3.78mol/Lを超えると、後述する硫酸塩イオンを添加した際に、ジルコニウムの塩基性硫酸塩が析出し易くなるので、好ましくない。すなわち、ジルコニウムの塩基性硫酸塩は難溶性の塩であり、全ジルコニウム濃度、硫酸塩イオン濃度および水酸イオン濃度のいずれかが増加しても、溶解度積を超えて当該塩が析出し易くなる。なお、最終生成物の均一性を得るためには、ジルコニウムの塩基性硫酸塩は、コントロールした条件下で析出させる必要がある。
本発明の安定化ジルコニウム粉末およびその前駆体の製造方法においては、オキシ塩化ジルコニウム水溶液に炭酸ジルコニウム塩を溶解した際の全ジルコニウム濃度と全塩化物イオン濃度とのモル比、Zr/Cl比、を0.5超え〜1、好ましくは0.60〜0.85とする。オキシ塩化ジルコニウム水溶液への炭酸ジルコニウム塩の添加は、少量でも遊離塩化物イオン濃度の低減に効果を有するが、Zr/Cl比を0.60以上とすることにより、その効果がより一層明確になる。Zr/Cl比が1を超えると、後述する硫酸塩イオンを添加した際に、ジルコニウムの塩基性硫酸塩が析出し易くなるので、好ましくない。すなわち、酸性水溶液中への炭酸ジルコニウム塩の添加は、加水分解による中和現象でもあり、ジルコニウムと結合する水酸イオンの数を増加させるため、ジルコニウムの塩基性硫酸塩を析出し易くすることになる。なお、例えば、Zr/Cl比が1の場合、全塩化物イオン濃度は初期の1/2となり、それに応じて遊離の塩化物イオン濃度も減少する。
本発明の安定化ジルコニウム粉末およびその前駆体の製造方法においては、ジルコニウム塩を最終的に焙焼してジルコニアとした際にそれを安定化させるために、オキシ塩化ジルコニウム水溶液に炭酸ジルコニウム塩を溶解した水溶液に、安定化元素の化合物を溶解する。安定化元素としては、希土類元素(例えばイットリウム)、マグネシウムおよびアルミニウムからなる群から選ばれる一種または二種以上を添加する。これらの安定化元素は酸化物や、塩化物等の塩の形態の固体状態で添加して溶解することも可能であるが、予め溶解して水溶液の形態で添加することが好ましい。なお、本発明において、安定化元素の添加量は特に規定するものではなく、オキシ塩化ジルコニウム水溶液に炭酸ジルコニウム塩を溶解した水溶液に含まれる全ジルコニウム量を最終的に安定化するのに必要な量を算出して添加すればよい。なお、これらの反応は、45℃以下で行うことが好ましい。また、これらの反応は、公知の撹拌手段を用いて、撹拌条件下で行っても良い。
前記のオキシ塩化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム塩、および安定化元素の化合物を溶解した水溶液に、さらに硫酸塩イオンを溶解した後、その水溶液の温度を50℃以上に上昇させ、安定化元素を一部吸着若しくは取り込んだジルコニウムの塩基性硫酸塩を析出させる。これは、ジルコニウムを含む酸性の水溶液を中和して、ジルコニウムの水酸化物を直接得ようとすると、沈殿形成反応が急速に進行し、生成する沈殿が不純物を含み易くなる等、不均質な水酸化物の沈殿となるので、反応速度を制御可能なジルコニウムの塩基性硫酸塩を一度経由して、均一なジルコニウムの水酸化物を得るものである。なお、本発明のオキシ塩化ジルコニウムと炭酸ジルコニウム塩を溶解した水溶液中に存在するジルコニウム化学種は、オキシ塩化ジルコニウム単独の水溶液中のそれと比較して多量の水酸基を含有し、オキシ塩化ジルコニウムと炭酸ジルコニウム塩を溶解した水溶液から出発した場合、オキシ塩化ジルコニウム単独の水溶液から出発した場合と比較して、低い温度でジルコニウムの塩基性硫酸塩の析出が開始するため、本発明の製造方法の方が、従来法と比較して、エネルギーコストが安くなるという、副次的なメリットも存在する。
本発明における硫酸塩イオンの添加量としては、全ジルコニウム濃度1mol/Lに対して好ましくは0.4〜0.5mol/L、より好ましくは0.45〜0.48mol/Lの範囲とする。硫酸塩イオンの添加量が0.4mol/L未満では、ジルコニウムの塩基性硫酸塩の析出が生起し難くなり、硫酸塩イオンの添加量が0.5mol/Lを超えると、ジルコニウムの塩基性硫酸塩ではなく、ジルコニウムの硫酸塩が生成するようになる。
本発明において、ジルコニウムの塩基性硫酸塩の析出速度は、その反応温度によってコントロールされる。すなわち、ジルコニウムと硫酸塩イオンとを含む水溶液の液温を上昇すると水の解離が促進され、水酸イオン濃度が増加することにより、ジルコニウムの塩基性硫酸塩の溶解度積を超えることになる。因みに、水の解離積KWは、25℃で1.00×10-14であるが、50℃では5.47×10-14である。本発明においては、ジルコニウム、安定化元素および硫酸塩イオンを含む水溶液の昇温速度は特に規定するものではないが、0.43〜0.87℃/minが好ましい。昇温速度が0.43℃/min未満では、反応に時間が掛かりすぎ、0.87℃/minを超えると、ジルコニウムの塩基性硫酸塩の析出速度が速くなり、得られる沈殿が不均一なものとなり易い。なお、昇温速度を変化させることにより、種結晶の発生状況が変化するため、最終的に得られるジルコニウムの水酸化物の凝集状態を変化させることが可能である。ジルコニウム、安定化元素および硫酸塩イオンを含む水溶液の到達温度(保持温度)は50℃以上とする。到達温度が50℃未満では、反応に長時間を要するので好ましくない。なお、反応時間短縮の観点からは、到達温度を80〜90℃とするのが好ましい。本発明における反応溶液の到達温度の上限としては、100℃(沸点)でも構わないが、反応の際の反応溶液からの水の蒸発が無視できなくなるので、到達温度を90℃以下とするのが好ましい。到達温度(保持温度)における反応時間(保持時間)は30〜60分が適当である。また、これらの反応は、公知の撹拌手段を用いて、撹拌条件下で行っても良い。
本発明においては、ジルコニウムの塩基性硫酸塩を析出させてスラリー状となった反応溶液に、引き続きアルカリを添加する中和処理を施し、塩基性硫酸塩に含まれる硫酸塩イオンを水酸イオンと置換することにより、ジルコニウムの水酸化物に変化させるとともに、安定化元素も水酸化物としてジルコニウムの水酸化物と共沈させ、ジルコニウムと安定化元素との複合水酸化物を得る。中和処理を行うpHは8〜12が好ましく、9〜11がより好ましい。pHが8未満では、水酸イオンの置換反応に長時間を要するので好ましくない。また、pHが12を超えると、中和に必要な薬品量が増加するとともに、ジルコニウムおよび安定化元素の水酸化物中にアルカリカチオンが不純物として取り込まれ易くなるので好ましくない。中和処理には、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム等を使用することが出来る。本発明においては、中和処理の温度は特に規定するものではないが、反応促進の観点から、上述のジルコニウムの塩基性硫酸塩の析出の保持温度と同程度の高い温度で行うのが好ましい。中和処理の反応時間は、50〜70分が適当である。なお、これらの反応は、公知の撹拌手段を用いて、撹拌条件下で行っても良い。
前記の中和処理工程において共沈した固相の複合水酸化物を、デカンテーション、濾過、遠心分離等の公知の固液分離手段に分離し、複合水酸化物を回収する。回収された複合水酸化物は、不純物として硫酸塩イオンやアルカリカチオンを含んでいるので、純水や希アンモニア水を用いて洗浄し、不純物を除去した後、公知の乾燥手段により脱水、乾燥する。
以上の一連の工程により、安定化ジルコニアの前駆体である、品質の均一性に優れるジルコニウムと安定化元素の複合水酸化物が得られる。
前記の安定化ジルコニアの前駆体である、ジルコニウムと安定化元素の複合水酸化物を、公知の加熱手段を用い、500〜1200℃、好ましくは700〜1200℃で焙焼することにより、品質の均一性に優れる安定化ジルコニアの粉体が得られる。所望の粒径の安定化ジルコニア粉末を得るためには、公知の粉砕手段を用いて、前記の安定化ジルコニアの粉体を粉砕すれば良い。
本明細書に記載のpHの値は、JIS Z8802に準拠し、ガラス電極を用い、pH標準液として、酸性域ではシュウ酸塩およびフタル酸塩緩衝液を、中性域では中性リン酸塩およびリン酸塩緩衝液を、アルカリ性域ではほう酸塩および炭酸塩緩衝液を、それぞれ用いて較正したpH計により測定した値を言う。また、高温の水溶液のpHは、温度補償電極により補償されたpH計の示す測定値を直接読み取った値である。
空調された室内において、特別に加温することなしに、805.63gのオキシ塩化ジルコニウム(2.5molのZrOCl2・8H2O:Zr2.5mol、Cl5.0molを含有)を429.81mLの純水に溶解した後、その水溶液に554.96gの炭酸ジルコニウム(2ZrO2・CO2・nH2O:Zr2.5molを含有)を添加し、溶解して、全ジルコニウム含有量5.0molかつZr/Cl比が1.00の第一のジルコニウム水溶液を準備した。なお、ここで用いた炭酸ジルコニウムのジルコニウム量は、1000℃強熱減量後の重量減少率から、残量を全てZrO2と仮定し算出した値である。
前記の第一のジルコニウム水溶液を純水で希釈し、ZrO2濃度で367.5g/Lとした第二のジルコニウム水溶液と、酸化イットリウム(Y2O3 99%)を塩酸で溶解し、水で希釈してY2O3濃度で180g/Lとしたイットリウム水溶液と、硫酸塩イオン源として無水硫酸ナトリウム粉末(Na2SO4 99.5%)とをそれぞれ用意した。
前記の第二のジルコニウム水溶液626mLと、前記のイットリウム水溶液66mLとを混合し、さらに純水1674mLを添加して2366mLの原料水溶液を得た。この時の原料水溶液は無色透明で、液温度は28℃であった。なお、この原料水溶液はZrO2濃度で100g/Lであり、安定化剤のY2O3が最終的に、Y2O3/PSZ(PSZは部分安定化ジルコニア)として2.75mol%相当になる組成である。
この原料水溶液に106.57gの無水硫酸ナトリウム粉末を添加し、溶解して、ZrO2含量に対し硫酸塩イオンの量を0.46質量%とした後、0.57℃/minの速度で80℃まで加熱し、更にその温度に60分間保持してジルコニアの塩基性硫酸塩の沈殿が析出したスラリーを得た。この時のpHは0.78であった。
前記の80℃のスラリーに48質量%NaOH水溶液を4.2g/minの速度で添加し、スラリーのpHを8.7とし、その状態で60分間保持した。なお、pHをこの値にするために、NaOHを215g添加した。
最終的に得られたスラリーを吸引濾過し、ZrO2−kg当たり10Lに相当する量の0.2mol%アンモニア水およびZrO2−kg当たり90Lに相当する量の純水で沈殿を洗浄した後、棚段乾燥機で大気下120℃で乾燥させることにより、安定化ジルコニアの前駆体であるジルコニウムと安定化剤とを含む複合水酸化物を得た。
そこで得られた焼結体を、アルキメデス法により密度測定を行ったところ、800℃仮焼粉では5.83g/cm3、900℃仮焼粉では5.83g/cm3、1000℃仮焼粉では5.89g/cm3、1100℃仮焼粉では5.93g/cm3との結果を得た。
805.63gのオキシ塩化ジルコニウム(2.5molのZrOCl2・8H2O:Zr2.5mol、Cl5.0molを含有)を484.81mLの純水に溶解した後、その水溶液に377.37gの炭酸ジルコニウム(2ZrO2・CO2・nH2O:Zr1.7molを含有)を添加し、溶解して、全ジルコニウム含有量4.2molかつZr/Cl比が0.84の第三のジルコニウム水溶液を準備した。なお、ここで用いた炭酸ジルコニウムのジルコニウム量は、実施例1に記載の方法で算出した値である
前記の第三のジルコニウム水溶液を純水で希釈し、ZrO2濃度で317.5g/Lとした第四のジルコニウム水溶液と、酸化イットリウム(Y2O3 99%)を塩酸で溶解し、水で希釈してY2O3濃度で180g/Lとしたイットリウム水溶液と、硫酸塩イオン源として無水硫酸ナトリウム粉末(Na2SO4 99.5%)とをそれぞれ用意した。
前記の第四のジルコニウム水溶液724mLと、前記のイットリウム水溶液66mLとを混合し、さらに純水1576mLを添加して2366mLの原料水溶液を得た。この時の原料水溶液は無色透明で、液温度は28℃であった。なお、この原料水溶液はZrO2濃度で100g/Lであり、安定化剤のY2O3が最終的に、Y2O3/PSZ(PSZは部分安定化ジルコニア)として2.75mol%相当になる組成である。
この原料水溶液に106.57gの無水硫酸ナトリウム粉末を添加し、溶解して、ZrO2含量に対し硫酸塩イオンの量を0.46質量%とした後、0.57℃/minの速度で80℃まで加熱し、更にその温度に60分間保持してジルコニアの塩基性硫酸塩の沈殿が析出したスラリーを得た。この時のpHは0.55であった。
前記の80℃のスラリーに48質量%NaOH水溶液を4.2g/minの速度で添加し、スラリーのpHを8.7とし、その状態で60分間保持した。なお、pHをこの値にするために、NaOHを245g添加した。
最終的に得られたスラリーを吸引濾過し、ZrO2−kg当たり10Lに相当する量の0.2mol%アンモニア水およびZrO2−kg当たり90Lに相当する量の純水で沈殿を洗浄した後、棚段乾燥機で大気下120℃で乾燥させることにより、安定化ジルコニアの前駆体であるジルコニウムと安定化剤とを含む複合水酸化物を得た。
そこで得られた焼結体を、アルキメデス法により密度測定を行ったところ、800℃仮焼粉では5.84g/cm3、900℃仮焼粉では5.82g/cm3、1000℃仮焼粉では5.90g/cm3、1100℃仮焼粉では5.92g/cm3との結果を得た。
805.65gのオキシ塩化ジルコニウム(2.5molのZrOCl2・8H2O:Zr2.5mol、Cl5.0molを含有)を429.81mLの純水に溶解した後、その水溶液に188.69gの炭酸ジルコニウム(2ZrO2・CO2・nH2O:Zr0.85molを含有)を添加し、溶解して、全ジルコニウム含有量3.35molかつZr/Cl比が0.67の第五のジルコニウム水溶液を準備した。なお、ここで用いた炭酸ジルコニウムのジルコニウム量は、実施例1に記載の方法で算出した値である
前記の第五のジルコニウム水溶液を純水で希釈し、ZrO2濃度で269.7g/Lとした第六のジルコニウム水溶液と、酸化イットリウム(Y2O3 99%)を塩酸で溶解し、水で希釈してY2O3濃度で180g/Lとしたイットリウム水溶液と、硫酸塩イオン源として無水硫酸ナトリウム粉末(Na2SO4 99.5%)とをそれぞれ用意した。
前記の第六のジルコニウム水溶液853mLと、前記のイットリウム水溶液66mLとを混合し、さらに純水1447mLを添加して2366mLの原料水溶液を得た。この時の原料水溶液は無色透明で、液温度は28℃であった。なお、この原料水溶液はZrO2濃度で100g/Lであり、安定化剤のY2O3が最終的に、Y2O3/PSZ(PSZは部分安定化ジルコニア)として2.75mol%相当になる組成である。
この原料水溶液に106.57gの無水硫酸ナトリウム粉末を添加し、溶解して、ZrO2含量に対し硫酸塩イオンの量を0.46質量%とした後、0.57℃/minの速度で80℃まで加熱し、更にその温度に60分間保持してジルコニアの塩基性硫酸塩の沈殿が析出したスラリーを得た。この時のpHは0.39であった。
前記のスラリーに48質量%NaOH水溶液を4.2g/minの速度で添加し、スラリーのpHを8.7とし、その状態で60分間保持した。なお、pHをこの値にするために、NaOHを277g添加した。
最終的に得られたスラリーを吸引濾過し、ZrO2−kg当たり10Lに相当する量の0.2mol%アンモニア水およびZrO2−kg当たり90Lに相当する量の純水で沈殿を洗浄した後、棚段乾燥機で大気下120℃で乾燥させることにより、安定化ジルコニアの前駆体であるジルコニウムと安定化剤とを含む複合水酸化物を得た。
そこで得られた焼結体を、アルキメデス法にて密度測定を行ったところ、800℃仮焼粉では5.82g/cm3、900℃仮焼粉では5.85g/cm3、1000℃仮焼粉では5.88g/cm3、1100℃仮焼粉では5.91g/cm3との結果を得た。
805.65gのオキシ塩化ジルコニウム(2.5molのZrOCl2・8H2O:Zr2.5mol、Cl5.0molを含有)を601.7mLの純水に溶解した後、さらに純水で希釈し、ZrO2濃度で228.2g/Lとした第七のジルコニウム水溶液と、酸化イットリウム(Y2O3 99%)を塩酸で溶解し、水で希釈してY2O3濃度で180g/Lとしたイットリウム水溶液と、硫酸塩イオン源として無水硫酸ナトリウム粉末(Na2SO4 99.5%)とをそれぞれ用意した。
前記の第七のジルコニウム水溶液876mLと、前記のイットリウム水溶液57mLとを混合し、さらに純水1124mLを添加して2057mLの原料水溶液を得た。この時の原料水溶液は無色透明で、液温度は28℃であった。なお、この原料水溶液はZrO2濃度で100g/Lであり、安定化剤のY2O3が最終的に、Y2O3/PSZ(PSZは部分安定化ジルコニア)として2.75mol%相当になる組成である。
この原料水溶液に92.67gの無水硫酸ナトリウム粉末を添加し、溶解して、ZrO2含量に対し硫酸塩イオンの量を0.46質量%とした後、0.57℃/minの速度で80℃まで加熱し、更にその温度に60分間保持してジルコニアの塩基性硫酸塩の沈殿が析出したスラリーを得た。この時のpHは0.21であった。
前記のスラリーに48質量%NaOH水溶液を4.2g/minの速度で添加し、スラリーのpHを8.7とし、その状態で60分間保持した。なお、pHをこの値にするために、NaOHを286g添加した。
最終的に得られたスラリーを吸引濾過し、ZrO2−kg当たり10Lに相当する量の0.2mol%アンモニア水およびZrO2−kg当たり90Lに相当する量の純水で沈殿を洗浄した後、棚段乾燥機で大気下120℃で乾燥させることにより、安定化ジルコニアの前駆体であるジルコニウムと安定化剤とを含む複合水酸化物を得た。
次いで前述水酸化物を電気炉にて大気下1100℃で焙焼を行った。
そこで得られた焼結体をアルキメデス法により密度測定を行ったところ、800℃仮焼粉では4.31g/cm3、900℃仮焼粉では5.63g/cm3、1000℃仮焼粉では5.79g/cm3、1100℃仮焼粉では5.74g/cm3との結果を得た。
Claims (3)
- オキシ塩化ジルコニウムを溶解した水溶液中に炭酸ジルコニウム塩を溶解して水溶液中のZr/Clのモル比を0.5超え〜1とする工程、
前記のZr/Clを調整した水溶液に、希土類元素、マグネシウムおよびアルミニウムからなる群から選ばれる一種または二種以上の安定化元素を含む化合物を溶解する工程、
前記のジルコニウムおよび安定化元素の一種または二種以上を含む水溶液に、さらに硫酸塩イオンを含む化合物を溶解した後、該水溶液を50℃以上に加熱し、ジルコニウムの塩基性硫酸塩を析出させる工程、
前記のジルコニウムの塩基性硫酸塩の析出物を含む水溶液のpHを8〜12とし、前記のジルコニウムの塩基性硫酸塩の析出物の硫酸塩イオンを水酸イオンと置換してジルコニウムの水酸化物とするとともに、前記の安定化元素を水酸化物として前記のジルコニウムの水酸化物と共沈させる工程、および、
前記の安定化元素の水酸化物とジルコニウムの水酸化物とが共沈した固相を固液分離により回収する工程、
を有する、安定化ジルコニア粉末の前駆体の製造方法。 - 前記Zr/Clのモル比を0.6〜0.84とする、請求項1に記載の安定化ジルコニア粉末の前駆体の製造方法。
- 請求項1または請求項2に記載の安定化ジルコニア粉末の前駆体を焙焼する工程をさらに有する、安定化ジルコニア粉末の製造方法。
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