JP5610902B2 - エアバッグ用基布 - Google Patents
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Description
この中で、側部衝突保護用など、特に高い気密性すなわち不通気性が要求されるエアバッグにおいては、布帛の表面に被覆材が配された、いわゆるコーティング基布が広く用いられており、被覆材としては、耐熱性に優れるシリコーン樹脂やシリコーンゴムが好んで用いられている。
また、生産工程以外にも、使用済みエアバッグや、廃車となった自動車に搭載されているエアバッグなど、不要となったことで廃棄処分されるエアバッグの数も年々増加している。
このような状況の中、最近の資源節約や環境保護の立場から、従来廃棄処分されていたこれらの廃材をリサイクルしようとする動きが高まってきている。
例えば、特許文献1には、シリコンがコーティングされているスクラップ布を強アルカリ液に浸漬した後、脱水し、その後シリコンコーティング層を剥離除去する方法が、また特許文献2には、界面活性剤、アルカリおよび水性キャリヤーを含有する組成物を加温し、その中にコーティング繊維を浸漬して繊維のコーティング部分を剥離する方法が、それぞれ開示されている。
これらの方法によれば、コーティング基布の表面からシリコーン樹脂などの被覆材を剥離、除去することが可能となり、処理後の布帛は、ノンコート基布と同様に、布帛単体としてリサイクルに供することができる。
しかしながら、これらの方法を用いた場合、コーティング基布から被覆材を剥離、除去するための特別な処理工程が必要となり、リサイクルコストが高くなるという問題がある。
例えば、特許文献3には、合成繊維糸を構成要素とする基布に、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリアミド樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂が被覆材として配されたエアバッグ用基布が開示されている。
また、例えば、特許文献4には、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂とポリエーテル系ポリウレタン樹脂の混合物を塗布した、軽量で低通気性である基布が開示されている。
しかしながら、特許文献3に開示されているエアバッグ用基布は、不通気性、軽量性、柔軟性、収納性の向上に着目したものであり、また、特許文献4に開示されているエアバッグ用基布は、軽量性、ホツレ防止性、収納性などの向上に着目したものであり、いずれもリサイクルに関しては全く示唆されていない。
該熱可塑性ポリウレタン樹脂の融点が200℃以上、付与量が10〜50g/m2(固形分)であり、さらに、該エアバッグ用基布を、ポリアミド系繊維布帛単体の融点から10℃高い温度において溶融したとき、得られるポリアミド系繊維布帛と被覆材との溶融混合物の、メルトフローインデックス(MI)(JIS K7210に規定)が、20〜200g/10minであることを特徴とする。
なお、ポリウレタン樹脂には熱硬化性のものと熱可塑性のものがあるが、前者は加熱による化学反応で硬化し、一度硬化すると再び加熱しても溶融せず固体のままとなる性質をもっているため、溶融によるリサイクルが困難である。
なお、本発明が意図するリサイクルとは、エアバッグ用基布を溶融することによって得られた布帛と被覆材との溶融混合物を繊維形状や各種形状の成形物に再度成形し、再利用することを想定したものである。
本発明に用いられるポリアミド系繊維布帛は一般的に融点が高く、本発明のエアバッグ用基布をリサイクルに供するためには高温にて溶融する必要がある。しかし、被覆材である熱可塑性ポリウレタン樹脂の融点が低い場合、高温で溶融すると熱可塑性ポリウレタン樹脂の熱変質や分解などが発生するおそれがある。
熱可塑性ポリウレタン樹脂の融点を200℃以上、好ましくは220℃以上、さらに好ましくは240℃以上とすることにより、リサイクルするための溶融工程において、熱可塑性ポリウレタン樹脂の熱変質や分解などを発生させることなく、ポリアミド系繊維布帛と被覆材の均質な溶融混合が可能となる。
熱可塑性ポリウレタン樹脂のポリオール成分としては、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなどがあげられるが、なかでも、ポリカーボネートポリオールが、エアバッグ用基布の被覆材に求められる湿熱特性や乾熱特性に優れた熱可塑性ポリウレタン樹脂が得られる点で好ましく、また、高融点の熱可塑性ポリウレタン樹脂が得られる傾向にある点で好ましい。
ポリカーボネートポリオールを得るための反応に用いられるポリオールとしては、例えば、HO−R−OHで示されるジオール類、すなわち、脂肪酸ジオール、脂環式ジオール、または芳香族ジオールなどがあげられる。なかでも、炭素数が少なく、柔軟な熱可塑性ポリウレタン樹脂が得られる点で、アルキレンジオール(炭素数=2〜6)、アルキレングリコール(炭素数=2〜6)、キシリレンジオールなどが好ましく、これらは、単独で用いる以外に、2種以上の混合物、あるいは2種以上の共重合物であってもかまわない。また、必要に応じて、カプロラクトンなどとの共重合物であるポリカーボネート/ポリエステルのポリオールを用いてもよい。
また、ポリカーボネートポリオールとして、例えば、ETERNACOLL UHC50(宇部興産社製品)、デュラノール T5652,T5651,T4672,T4671(以上、旭化成ケミカルズ社製品)、プラクセル CD205(ダイセル化学社製品)、Oxymer N112(Perstorp社製品)などの市販品を使用することもできるが、これらに限定されるものではない。
具体的には、例えば、メチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、リジンイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネートなどがあげられる。なかでも、柔軟な熱可塑性ポリウレタン樹脂が得られる点で、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートが、また、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂が耐熱性に優れる点で、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが好ましい。
なお、後者の場合は、架橋剤を反応させるため、架橋剤を配合した後の熱可塑性ポリウレタン樹脂に対して熱処理などを行う。架橋剤を反応させる方法については特に限定するものではなく常用の方法により行えばよい。例えば、架橋剤を配合した熱可塑性ポリウレタン樹脂を布帛に付与した後、熱処理を行うことにより、架橋剤を反応させることができる。
ポリカルボジイミド化合物は、分子中にカルボジイミド基(−N=C=N−)を有するポリマーであり、カルボキシル基やアミノ基などの活性水素と高い反応性を示す。
前記ポリカルボジイミド化合物は、カルボジイミド化触媒を使用した、ジイソシアネートとの脱炭酸縮合反応により得られる。
なお、モノカルボジイミド化合物は、反応基が少ないことから反応効率が低く、また、水分と反応しやすいため安定性に欠け、本発明で用いるには適していない。
また、前記架橋剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもかまわない。
前記化合物としては、例えば、ジオキシ安息香酸、ジオキシマレイン酸、ジメチロール吉草酸、ジメチロール酪酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールピロピオン酸などのカルボン酸含有物およびこれらの誘導体、またはこれらを共重合させて得られるポリエステルポリオールなどの1種または2種以上をあげることができる。なかでも、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂が柔軟性に優れる点で、ジメチロールプロピオン酸が好ましい。
また、場合によっては、粉体、ビーズ、薄膜、フィルムなどの固体状、あるいは樹脂分のみの無溶媒液体状のものを適用してもよい。
ただし、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂が、何らかの有機溶剤に溶解されたものは、作業環境の面から好ましくない。
このような樹脂は、構成分子中に水酸基、エチレンオキサイド基またはエチレングリコールなどの親水性基を導入することにより得ることができる。
また、その固形分は、前記水性溶液を安定に作製、保存できる範囲であればよく、特に限定するものではないが、例えば、20〜80%が好ましく、30〜70%がさらに好ましい。20%未満であると溶液粘度が低くなる傾向があり、また80%を超えると溶液粘度が高くなる傾向がある。
このとき、付与量が固形分で10〜50g/m2、さらには15〜35g/m2であることが好ましい。また、ポリアミド系繊維布帛の両面に付与する場合は、両面の合計付与量が固形分で10〜50g/m2となるように付与することが好ましい。
付与量を上記範囲とすることにより、得られるエアバッグ用基布の重量、柔軟性、不通気性、被覆材の耐摩耗性、縫合部の目止め剤(シール剤)との密着性など、エアバッグ用基布として求められる特性を満足させることができる。付与量が10g/m2より少ないと、得られるエアバッグ用基布の重量は軽くなるものの、不通気性、被覆材の磨耗強さ、および目止め剤との密着性などが不足し、付与量が50g/m2を超えると、得られるエアバッグ用基布の重量が重くなり、柔軟性にも劣る。
なお、付与された樹脂は、ポリアミド系繊維布帛の表面に加えて、ポリアミド系繊維布帛を構成する繊維糸条の交差部やその間隙部、単糸間隙部などに介在させてもよい。
さらに、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂をポリアミド系繊維布帛に付与した後で、耐熱性、老化防止性、耐磨耗性を改良するために、熱風処理、加圧熱処理、高エネルギー処理(高周波、電子線、紫外線など)により、付与した樹脂の乾燥、架橋、加硫などを行ってもかまわない。
また、必要に応じて、経糸、緯糸の二軸以外に斜め60度や45度を含む3軸、4軸などの多軸設計としても良く、その場合の糸の配列は本来の経糸または緯糸と同様の配列に準じればよい。
なお、織物全体のカバーファクター(CF)は、下式により求められる。
CF=Nw×√Dw+Nf×√Df
ここで、Nw,Nfは、経糸および緯糸の織密度(本/cm)
Dw,Dfは、経糸および緯糸の太さ(dtex)
MIとは、円筒容器内に装填された溶融物が、JIS K7210の規定に従ってノズルから一定の押出し力により10分間当りに押出された重量を言い、MIが小さいほど流動性が低く、大きいほど流動性が高いことを示す。
一般に、2種以上の材料を溶融混合すると、溶融混合される材料同士に化学的な親和性が無い場合や、材料の一部が加熱中に変質を生じた場合には、溶融混合物全体としての溶融粘性が低くなるため、MIは大きくなる。また、材料の一部が十分に溶融していない場合には、溶融混合物全体としての溶融粘度が上がるため、MIは小さくなる。
従って、MIの値を上記範囲内とすることが、均質な溶融混合物を得るために必要である。
すなわち、MIが20未満であると、材料が均質に溶融混合していないおそれがあり、MIが200を超えると、得られる溶融混合物が耐衝撃性などに劣るものとなるおそれがある。
熱可塑性ポリウレタン樹脂の融点は、溶液をテフロン(登録商標)製シート表面に流し込み、70℃で2時間、次いで110℃で2時間乾燥し、さらに150℃で5分間熱処理して得られる被膜の一片を、ポリアミド系繊維布帛の融点は、ポリアミド系繊維布帛を構成する繊維糸条をカットして得られる数本の単糸を、それぞれ融点測定ユニット(ジャパンテック社製品)を装着した光学顕微鏡にて観察し、昇温速度約20℃/分にて加熱した時の流動開始温度を測定した。
布帛の目付け量は、JIS L−1096の8.4.2法に規定された方法により、布帛単体の単位面積当たりの重量を測定することにより求めた。
また、樹脂の付与量は、JIS L−1096の8.4.2法に規定された方法により、樹脂の付与前および付与乾燥後における基布の単位面積当たりの重量差から求めた。
JIS L−1096の8.27.1A法(フラジール法)に準じて通気特性を評価し、N=3の平均値を通気度とした。
被覆材が配されたエアバッグ用基布を細かく裁断し、セミオートメルトインデックサ3A(東洋精機製作所社製)にて、JIS K7210に準じてMIを測定した。
加熱温度は布帛単体の融点+10℃とし、加熱時間10分、押出し力21.2kN、とした。
上記(4)にて押出された溶融混合物の外観を観察した。
(樹脂1)
ポリカーボネートポリオール(融点−5℃、旭化成ケミカルズ社製ポリカーボネートジオール、商品名デュラノールT5651、分子量1000)と、脂環式ポリイソシアネート(ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)を合わせたもの100部(ポリカーボネートジオール/ポリイソシアネート=100/110)、ジメチロールプロピオン酸8部、ポリカルボジイミド(日清紡ケミカルズ社製、商品名カルボジライトSV−02、分子量1720)5部から得られた水性ポリウレタン樹脂(固形分35%、溶液粘度20Pa・s、分子量18000、水溶液)。乾燥および熱処理後の融点は240℃。
(樹脂2)
ポリエーテルポリオール(ポリテトラメチレングリコール)および脂肪族ポリイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート)からなるポリウレタン樹脂100部に、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース2部を添加して得られた水性ポリウレタン樹脂溶液(固型分25%、溶液粘度11Pa・s、分子量9000、水溶液)。乾燥および熱処理後の融点は190℃。
(樹脂3)
Rhodorsil TCS7534(Bluestar社製、無溶剤型の液付加反応型シリコーン樹脂、調液後の粘度45Pa・s)。融点なし。
経糸、緯糸いずれもナイロン66繊維の470dtex/136f(強度8.6cN/dtex)を用いて平織物を作製し、精練、セットを行い、経、緯の織密度がいずれも18本/cmである布帛(布帛重量175g/m2)を得た。次いで、この布帛の片側表面に、樹脂1を、ナイフコーティング法にて付与量15g/m2(固形分)となるように付与した後、乾燥および160℃で1分間熱処理を行い、本発明のエアバッグ用基布を得た。得られたエアバッグ用基布の重量は190g/m2であった。表1に示すように、得られたエアバッグ用基布は軽量で、不通気性に優れ、MIは55g/10minであり、溶融混合後の状態は均質であった。
樹脂の付与量を60g/m2(固形分)とした以外は、実施例と同様にしてエアバッグ用基布を作製した。
得られたエアバッグ用基布は、表1に示すように、不通気性に優れ、MIは45g/10minであるが、得られたエアバッグ用基布の重量が235g/m2と大きく、エアバッグ用基布に求められる軽量性を満たすものではなかった。
樹脂の付与量を5g/m2(固形分)とした以外は、実施例1と同様にしてエアバッグ用基布を作製した。
得られたエアバッグ用基布は、表1に示すように、軽量で、MIは60g/10minであるが、エアバッグ用基布に求められる不通気性を満足するものではなかった。
基布を構成する繊維材料としてナイロン6繊維、樹脂として樹脂2を用いた以外は、実施例1と同様にして、エアバッグ用基布を作製した。
得られたエアバッグ用基布は、MI測定においてポリウレタン樹脂が熱分解したことにより、MIは極めて大きくなり、溶融混合物は均質な状態ではなかった。
樹脂として樹脂3を用いた以外は、実施例1と同様にしてエアバッグ用基布を作製した。
得られたエアバッグ用基布は不通気性ではあるが、被覆材であるシリコ−ン樹脂が溶融しないため、MIは極めて小さくなり、溶融混合物も均質な状態ではなかった。
Claims (5)
- ポリアミド系繊維布帛の少なくとも片側表面に、被覆材として熱可塑性ポリウレタン樹脂が配されてなるエアバッグ用基布において、
該熱可塑性ポリウレタン樹脂の融点が200℃以上、付与量が10〜50g/m2(固形分)であり、さらに、該エアバッグ用基布を、ポリアミド系繊維布帛単体の融点から10℃高い温度において溶融したとき、得られるポリアミド系繊維布帛と被覆材との溶融混合物の、メルトフローインデックス(MI)(JIS K7210に規定)が、20〜200g/10minであることを特徴とするエアバッグ用基布。 - 前記熱可塑性ポリウレタン樹脂が、ポリカーボネート型ポリウレタン樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載のエアバッグ用基布。
- 前記熱可塑性ポリウレタン樹脂には、架橋剤が含まれていることを特徴とする、請求項1または2に記載のエアバッグ用基布。
- 前記ポリアミド系繊維布帛が、脂肪族ナイロン、半芳香族ナイロン、脂肪族ナイロンと半芳香族ナイロンとの共重合体または混合体、から選ばれた1種または2種以上のものからなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のエアバッグ用基布。
- 前記ポリアミド系繊維布帛を構成する繊維糸条が、溶融紡糸された長繊維からなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のエアバッグ用基布。
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