JP5604960B2 - 自動二輪車の吸気ダクト構造 - Google Patents

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Description

本発明は、自動二輪車の前部を覆うフロントカバーに形成された導風口から走行風を導入する自動二輪車の吸気ダクト構造に関する。
従来、車両前部に、エンジンの吸気装置(エアクリーナ、エアボックス等)へ走行風を導入する吸気ダクトを備えた自動二輪車が知られている。例えば、特許文献1に開示された自動二輪車では、車両前部を覆うフロントカバー(フロントカウリング)の車体側に吸気ダクト装置が配置されている。この吸気ダクト装置は、車両前後方向に長い吸気ダクトを備え、この吸気ダクトの後端が、ダクトジョイントを介してエアボックスに接続され、吸気ダクトの前端が、吸気ネットを介してダクト延長部材に接続されている。このダクト延長部材の前端部は、フロントカバーの導風口(走行風導入口)に挿入され、この導風口は前輪とヘッドライト(前照灯)との間に配置されている。
ところで、上述の吸気ダクト装置では導風口が車両の比較的下側に設置されるため、例えば前方を走行する車両の後輪によって弾き飛ばされた小石などが吸気ダクト内に進入する恐れがある。しかし、この小石などの異物の進入を防止するために、吸気ダクトに前述のように吸気ネットが装着されている。
また、近年では、導風口をより上方に設置することで、異物進入をさらに防止できるようにした自動二輪車が開発されている。具体的には、車両前部を覆うフロントカバーの前部にヘッドライトが備えられ、このヘッドライトよりも車幅方向外側のフロントカバーに導風口が形成され、吸気ダクトがヘッドライトの側方を通過して導風口の後端に、吸気ネットを介して連通された吸気ダクト構造である。
特開2002−284074号公報
図8に示すように、導風口101がフロントカバー100におけるヘッドライト(前照灯)102の車幅方向外側に設けられ、吸気ダクト103がヘッドライト102の側方を通過する吸気ダクト構造では、例えば吸気ダクト103の前端部に設けられる吸気ネット104は、導風口101よりも大径に形成されて、この導風口101の後端に近接配置または嵌合される。また、吸気ネット104の後端に、この吸気ネット104よりも大径の吸気ダクト103が接続され、この吸気ダクト103はヘッドライト102の側壁に係合して支持される。
このように構成されることで、走行風は、吸気ネット104の前端部104Aに干渉することなく円滑に吸気ダクト103内に導入され、同時に吸気ダクト103も安定して支持される。また、車両前方視で吸気ネット104の前端部104Aが目視できないよう構成されているため、吸気ネット104の前端部104Aが段差として視認されず、車両の外観も良好になる。
しかしながら、自動二輪車においては、一般に空気抵抗の増大や操作性の低下を招くことがないように、フロントカバー100などの外装部品は車幅方向に狭く構成されている。従って、上述の図8に示す吸気ダクト構造では、吸気ダクト103の前端部に吸気ネット104が配設されることによって、ヘッドライト102のレンズ105を縮小し、またはフロントカバー100の導風口101を縮径しなければならない。ヘッドライト102のレンズ105が縮小されることで、ヘッドライト102からの光量が減少し、また、導風口101が縮径されることで、エンジンへの吸気量が減少してしまう課題がある。
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、自動二輪車の車幅を拡大させることなく、エンジンへの吸気量及び前照灯からの光量を共に増大できる自動二輪車の吸気ダクト構造を提供することにある。
本発明は、車両前部を覆うフロントカバーには、前端に前照灯が設置されると共に、この前照灯よりも車幅方向外側に走行風を導入可能な導風口が形成され、この導風口からエンジンの吸気装置へ向かって吸気ダクトが、前記前照灯の側方を通過して延設された自動二輪車の吸気ダクト構造において、前記吸気ダクトは軸方向に2分割されて、内側ダクト半体と外側ダクト半体とを備えて構成され、前記内側ダクト半体の内側前部には、この吸気ダクトの軸方向に対し直交する方向に延びて、前記吸気ダクト内への異物の進入を防止する進入防止板が一体に設けられたことを特徴とするものである。
本発明によれば、吸気ダクトの前部に、この吸気ダクト内への異物の進入を防止するための吸気ネットが設置される必要がないので、自動二輪車の車幅を拡大させることなく、前照灯のレンズを車幅方向に拡張してこの前照灯から光量を増大でき、更に、導風口の径を拡大してエンジンへの吸気量を増大させることができる。
本発明に係る自動二輪車の吸気ダクト構造における一実施の形態が適用された自動二輪車を示す左側面図。 図1の自動二輪車の正面図。 図1の自動二輪車におけるフロントカバーの一部を切欠き、サイドカバー及び燃料タンクを省略して示す部分斜視図。 図3の左側吸気ダクトを示す斜視図。 図4の左側吸気ダクトを示す分解斜視図。 図2のVI−VI線に沿う断面図。 本発明に係る自動二輪車の吸気ダクト構造における他の実施の形態を示す図6に対応する断面図。 従来の導風口周りを示す断面図。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係る自動二輪車の吸気ダクト構造における一実施の形態が適用された自動二輪車を示す左側面図である。尚、本実施の形態において、上下、左右、前後の表現は、車両乗車時の運転者を基準にしたものである。
図1に示す自動二輪車10は、車両前側が流線形の外装カバー(後述)に覆われる所謂スポーツ型の車両である。この自動二輪車10は、車両略中央に前後方向に延びる車体フレーム11が配置され、その前端にヘッドパイプ12が設けられる。ヘッドパイプ12には、左右に回動自在にステアリングシャフト(不図示)が枢支され、このステアリングシャフトに左右一対のフロントフォーク9を介して前輪13が懸架される。ヘッドパイプ12の上方には、ハンドル14がステアリングシャフトと回転一体に連結され、このハンドル14の操舵によって前輪13が左右に回動できるように構成されている。また、車体フレーム11の上方には、燃料タンク15が配置される。
車体フレーム11の前方下方にエンジン16が配置され、このエンジン16の上方で且つ燃料タンク15の下方に、エンジンの吸気装置としてのエアクリーナ17が、インテークパイプ18を介してエンジン16に接続される。エアクリーナ17には、後述する吸気ダクト30から外気が導入される。この吸気ダクト30から導入された外気がエアクリーナ17内で浄化され、キャブレタまたは燃料噴射装置からの燃料と混合されてエンジン16へ供給される。
また、エンジン16からの排気ガスは、エンジン16の前部に接続されて後方へ延びるエキゾーストパイプ19と、このエキゾーストパイプ19の後端に接続されたサイレンサ20とによって車両後方へ排出される。
車体フレーム11の後方下部には、スイングアーム21の前端が揺動自在に連結される。このスイングアーム21の後端には、後輪22が回転自在に支持されている。この後輪22に、エンジン16の動力がドライブチェーン23等によって伝達される。
前記外装カバーは、車体フレーム11の前方に配置されて車両前部を覆う流線形状のフロントカバー24と、車両側面を覆うサイドカバー25と、車両下部を覆うロアカバー26と、エンジン16の側面を覆うエンジンサイドカバー27とを有して構成される。フロントカバー24には、図2にも示すように、前端に前照灯としてのヘッドライト28が配置されると共に、このヘッドライト28よりも車幅方向の両外側に走行風を導入可能な導風口29が形成される。
図1及び図3に示すように、フロントカバー24の内側でヘッドライト28の左右両側方に吸気ダクト30がそれぞれ配置される。この吸気ダクト30は、導風口29からヘッドライト28の側方を通ってエアクリーナ17へ向かって延設される。つまり、吸気ダクト30は、導風口29の後端に連通されて後方へ向かって延び、後端が車体フレーム11に形成された開口部31に接続される。そして、この開口部31の後端にエアクリーナ17が接続される。これにより、車両走行時に導風口29から導入された走行風(外気)は、吸気ダクト30及び開口部31を経てエアクリーナ17へ導かれ、この過給効果によって効率良くエンジン16に充填される。
吸気ダクト30は、図4に示すように管状に形成され、図5に示すように軸方向に沿って左右に分割され、内側ダクト半体32と外側ダクト半体33とを備え、これらのダクト半体32及び33が接合されて構成される。これらの内側ダクト半体32及び外側ダクト半体33の後端に、ゴムなどの弾性部材から形成されたジョイントリング34が嵌合される。このジョイントリング34が車体フレーム11における開口部31に嵌合され、または開口部31の周囲に当接する。
吸気ダクト30の内側前部には、この吸気ダクト30の軸方向に対し直交する方向、つまり内側ダクト半体32と外側ダクト半体33との接合面35に直交する方向に延びる進入防止板36が設けられる。この進入防止板36は、本実施の形態では、内側ダクト半体30に一体成形されて、車両上下方向に複数枚(例えば2枚)平行に配列される。これらの進入防止板36により走行風中の異物(飛び石等)が制止されて、吸気ダクト30内への異物の進入が防止される。
各進入防止板36は、図4及び図6に示すように、内側ダクト半体32に一体成形される基端部36Aが、外側ダクト半体33に係止または嵌合する自由端部36Bよりも幅広に形成され、基端部36Aから自由端部36Bへ向かって車両前後方向の幅Wが漸次減少して構成される。更に、各進入防止板36の前端縁36Cの形状は、フロントカバー24の形状に対応して、車両後方へ向かって傾斜し湾曲して形成される。
尚、図4及び図5中の符号37は、吸気ダクト30内に消音室を形成するためのレゾネータ隔壁37であり、内側ダクト半体32及び外側ダクト半体33に形成された係止突起38を用いて、これらの内側ダクト半体32及び外側ダクト半体33に固定される。
以上のように構成されたことから、本実施の形態によれば、次の効果(1)〜(3)を奏する。
(1)吸気ダクト30は軸方向に2分割され、内側ダクト半体32と外側ダクト半体33とが接合されて構成される。この吸気ダクト30の内側前部に、吸気ダクト30の軸方向に対し直交する方向に延びる進入防止板36が、内側ダクト半体32に一体成形されて複数枚設けられる。従って、これらの進入防止板36によって吸気ダクト30内への異物の進入を防止できる。
このため、吸気ダクト30の前部に、この吸気ダクト30内への異物の進入を防止するための吸気ネット(例えば図8の吸気ネット104)が設置される必要がないので、自動二輪車10の車幅を拡大させることなく、ヘッドライト28のレンズ39を車幅方向に拡張してこのヘッドランプ28からの光量を増大でき、更に、導風口29及び吸気ダクト30の有効径を拡大して、エンジン16への吸気量を増大させることができる。
(2)吸気ダクト30の内側前部に設けられた進入防止板36は、内側ダクト半体32に一体成形された基端部36Aが、外側ダクト半体33に係止される自由端部36Bよりも幅広に形成され、車両前後方向の幅Wが基端部36Aから自由端部36Bへ向かって漸次減少して形成されている。進入防止板36は、走行風を直接受けるため一定の強度が必要であるが、自由端部36Bにおける車両前後方向の幅Wが基端部36Aと同一に形成されていると、この自由端部36Bが走行風の影響を強く受けて振動し、基端部36Aに生ずる応力が増大してしまう恐れがある。
これに対し、進入防止板36における車両前後方向の幅Wが、基端部36によりも自由端部36Bが縮小して形成されることで、自由端部36Bに作用する走行風の影響を小さくして、この自由端部36Bの振動を抑制できる。この結果、進入防止板36の基端部36Aに生ずる応力を低減でき、この進入防止板36の耐久性を向上させることができる。
(3)進入防止板36の前端縁36Cが、フロントカバー24の形状に対応して、車両後方へ向かって傾斜し湾曲して形成されたので、進入防止板36が自動二輪車10の前方において目視される場合にも違和感を生ずることがなく、デザイン上の優位性を確保できる。
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図7に示すように、吸気ダクト30の前端縁40の形状が、進入防止板36の前端縁36Cの形状に対応して車両後方へ向かって傾斜して湾曲に形成され、従って、進入防止板36の前端縁36Cが吸気ダクト30の前端縁40と略接するように構成されてもよい。この場合には、進入防止板36に引っ掛かった異物を容易に除去することができる。尚、この場合、導風口29は、吸気ダクト30の前端縁40近傍まで延設される。
10 自動二輪車
17 エアクリーナ(エンジンの吸気装置)
24 フロントカバー
28 ヘッドライト(前照灯)
29 導風口
30 吸気ダクト
32 内側ダクト半体
33 外側ダクト半体
36 進入防止板
36A 進入防止板の基端部
36B 進入防止板の自由端部
36C 進入防止板の前端縁
40 吸気ダクトの前端縁

Claims (3)

  1. 車両前部を覆うフロントカバーには、前端に前照灯が設置されると共に、この前照灯よりも車幅方向外側に走行風を導入可能な導風口が形成され、この導風口からエンジンの吸気装置へ向かって吸気ダクトが、前記前照灯の側方を通過して延設された自動二輪車の吸気ダクト構造において、
    前記吸気ダクトは軸方向に2分割されて、内側ダクト半体と外側ダクト半体とを備えて構成され、
    前記内側ダクト半体の内側前部には、この吸気ダクトの軸方向に対し直交する方向に延びて、前記吸気ダクト内への異物の進入を防止する進入防止板が一体に設けられたことを特徴とする自動二輪車の吸気ダクト構造。
  2. 前記進入防止板は、内側ダクト半体に一体化される基端部が、外側ダクト半体に係止される自由端部よりも幅広に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車の吸気ダクト構造。
  3. 前記進入防止板は、その前端縁の形状が前記フロントカバーの形状に対応して車両後方へ向かって傾斜し湾曲して形成されると共に、その前端が前記吸気ダクトの前端に略接するよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車の吸気ダクト構造。
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