JP5601039B2 - チアジアゾール含有高分子 - Google Patents

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Description

本発明は、チアジアゾール骨格を含有する新規高分子およびこれを用いた有機電子デバイスに関する
有機ELや有機薄膜トランジスタ、有機発光センサー等デバイスの半導体材料として、π共役高分子が応用されており、なかでも高分子有機太陽電池への応用が注目されている。高分子有機太陽電池は、塗布による製膜が可能であることに伴う低コスト化や大面積化、また、フレキシブル化、軽量化などが実現することから広く研究されている。これまでポリチオフェン(P3HT)、ポリアセチレンなどの高分子の有機太陽電池への応用が報告されている。
非特許文献1には、π共役高分子としてチアジアゾール骨格を主鎖に導入した高分子の合成が報告されているが、下記反応式の様にチアジアゾール骨格を有する単量体を重合するのではなく、重合後に、分子内閉環反応を利用しチアジアゾール骨格形成を行っている。この方法では、高分子鎖中に未反応部位が残留し、欠陥の非常に多い高分子鎖が形成されることとなる。その結果、電気デバイスに応用した場合、十分な半導体特性が得られないという課題があった。更に、主鎖骨格中に存在する芳香環の修飾が困難であるため、合成できる(高)分子の種類に偏りがあった。
特許文献1には、上述の高分子の課題を解決すべく、チアジアゾール骨格の2,5位両末端置換基のカップリング反応によるチアジアゾール含有高分子の製造法が報告されているが、チアジアゾール骨格の反応性は低く、鎖長が伸びないという課題が現れた。また、本願発明者らの検討によれば、重合後の高分子が難溶性であり、実質的には半導体に応用しにくいという課題もあった。
非特許文献2には、特許文献1で明らかになったような、チアジアゾール骨格の2,5
位両末端置換基のカップリング反応の低反応性を解決するため、芳香環間をジカルボキシヒドラジド結合で連結後、Thiadiazole環形成を行うことによりユニットを製造し、それを用いて重合を行っている。だが、本願発明者らの検討によれば、チアジアゾール骨格の低溶解性により、製造された高分子は難溶性であり、電子吸収領域も、現在太陽電池用途の研究において汎用されているP3HTと同程度でしかない。
特開2006−131799号公報
Macromol. Rapid Commun. 2000, 21, 1234−1237. Macromolecules 2007, 40, 6585−6593.
上記の背景より、従来のチアジアゾール含有高分子の貧溶解性および、低重合度を向上し、且つ、長波長領域に吸収を有する新規のチアジアゾール含有高分子を効率的に製造、提供する方法が求められていた。
本発明は、チアジアゾール骨格を有する高分子として、有機デバイスに実用可能な易溶解性と、電子吸収波長領域の長波長化を兼ね備えた材料を提供することをその一つの目的とする。
また、本発明は、上述の高分子を用いた電荷輸送材料を提供することを、その目的の一つとする。
更に、本発明は、上述の高分子を用いた有機電子デバイスを提供することを、その目的の一つとする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、芳香環に挟まれたチアジアゾール骨格ユニットを易溶解性の置換基とカップリング反応させた新規チアジアゾール含有高分子の製造に成功し、本発明を達成するに至った。即ち、本発明は、以下を要旨とする。
[1] 重量平均分子量が0.5×10 4 以上である下記一般式(1)で表されるチア
ジアゾール含有高分子。
(式中、Ar1,Ar2は各々独立してアリーレン基、またはヘテロアリーレン基を表し、Ar3は、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アルケニル基、アルキニル基、又はこれらの連結した基のいずれかを表す。)
[2]Ar1,Ar2,Ar3が各々独立してアリーレン基、またはヘテロアリーレン基
を表すことを特徴とする[1]に記載のチアジアゾール含有高分子。
[3]λmaxが、470nm以上である[1]又は[2]に記載のチアジアゾール含有高分子。
[4]25℃におけるクロルベンゼンに対する溶解度が0.5wt%以上である[1]〜[3]のいずれか一項に記載のチアジアゾール含有高分子
[5]Ar1,Ar2が各々独立して炭素数4以上の置換基で置換された、アリーレン基、またはヘテロアリーレン基である[1]〜[4]のいずれか一項に記載のチアジアゾール含有高分子。
[6]Ar3が炭素数4以上の置換基で置換された、アリーレン基、またはヘテロアリーレン基である[1]〜[5]のいずれか一項に記載のチアジアゾール含有高分子。
[7]Ar1とAr2が同じ基である[1]〜[6]のいずれか一項に記載のチアジアゾール含有高分子。
[8]下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物を重合する[1]〜[7]のいずれか一項に記載のチアジアゾール含有高分子の製造方法。
(式中、Ar1,Ar2は各々独立してアリーレン基、またはヘテロアリーレン基を表し、Ar3は、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アルケニル基、アルキニル基又はこれらの連結した基のいずれかを表し、X、Yは各々独立して、ハロゲン原子、アルキルスタニル基、アルキルスルホ基、アリールスルホ基、アリールアルキルスルホ基、ホウ酸エステル残基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、モノハロゲン化メチル基、ホウ酸残基(−B(OH)2)、ホルミル基、アルケニル基又はアルキニル基を表す。)
[9]Ar1,Ar2,Ar3が各々独立してアリーレン基、またはヘテロアリーレン基を表すことを特徴とする[8]に記載のチアジアゾール含有高分子の製造方法。
[10][1]〜[7]のいずれか一項に記載のチアジアゾール含有高分子を含む有機半導体材料。
[11][10]に記載の有機半導体材料を含む、有機半導体層。
[12][11]に記載の有機半導体層を含む有機電子デバイス。
[13]光電変換素子であることを特徴とする、[12]に記載の有機電子デバイス。
[14]太陽電池であることを特徴とする、[12]に記載の有機電子デバイス。
本発明のチアジアゾール含有高分子は、易溶解性であるため、塗布プロセスの実用性に優れた半導体材料である。さらに、電子吸収波長領域が、長波長化していることにより、太陽電池デバイスとして利用した場合に、効率的な光電変換特性を示す可能性がある。
本発明の一実施形態としての光電変換素子の構成を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態としての太陽電池の構成を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態としての太陽電池ユニットの構成を模式的に示す断面図である。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
(チアジアゾール含有高分子)
本発明は、下記式(1)で表されるチアジアゾール含有高分子である。
式中、Ar,Arは各々独立してアリーレン基、またはヘテロアリーレン基を表し、Arは、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アルケニル基、アルキニル基、これらの連結した基を表す。)
Ar,Arの種類としては、シクロペンタジチオフェニレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、アズレニレン基、ナフチレン基(好ましくは2,7−ナフチレン基)、アントリル基(好ましくは2,7−アントリレン基)、ナフタセニル基、フェナントリル基等のアリーレン基、チエニレン基、バイチエニレン基、フルオレニレン基、ピリジレン基、オキサゾーレン基、チアゾーレン基、ベンゾチアジアゾーレン基、ベンゾチエニレン基、ジベンゾチエニレン基、ピラジレン基、ピリミジレン基、ピラゾイレン基、イミダゾイレン基、フェニルカルバゾイレン基、カルバゾイレン基、チエニルチエニレン基、ベンゾジチエニレン基、ジケトピロロピローレン基、ジチエノピローレン基、ジチエノシローレン基、シクロペンタジチオフェン基、チアジアゾロキノキサリン基、チエノピラジン基、ホスホーレン基、イミダゾリノフェニレン基、イミダゾリノチエニレン基、ベンゾビスイミダゾイレン基、ベンゾビスチアゾーレン基等のヘテロアリーレン基が挙げられる。好ましくはシクロペンタジチオフェニレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、アズレニレン基、2,7−ナフチレン基、2,7−アントリレン基、ナフタセニレン基、フェナントリレン基、チエニレン基、ビチエニレン基、フルオレニレン基、ベンゾチアジアゾーレン基、カルバゾイレン基、チエニルチエニレン基、ベンゾジチエニレン基、ジケトピロロピローレン基、ジチエノピローレン基、ジチエノシローレン基、シクロペンタジチオフェン基、チアジアゾロキノキサリン基、チエノピラジン基、イミダゾリノフェニレン基、イミダゾリノチエニレン基、ベンゾビスイミダゾイレン基、ベンゾビスチアゾーレン基等が挙げられる。さらに好ましくはフェニレン基、シクロペンタジチオフェニレン基、チエニレン基、チアゾーレン基、ベンゾチアジアゾーレン基、フルオレニレン基、2,7−アントリレン基、ベンゾチアジアゾーレン基、カルバゾイレン基、チエニルチエニレン基、ベンゾジチエニレン基、ジチエノピローレン基、ジチエノシローレン基、シクロペンタジチオフ
ェン基、チエノピラジン基、イミダゾリノフェニレン基、ベンゾビスイミダゾイレン基、ベンゾビスチアゾーレン基等が挙げられる。様々な吸収波長を有する置換基を組み合わせることにより、太陽光のより広範囲を網羅できる点や、高分子に電子の受容性や供与性の特性を選択的に与えられる点から好ましい。
ArとArは、好ましくは同じ基である。
Arの種類としては、シクロペンタジチオフェニレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、アズレニレン基、ナフチレン基(好ましくは2,7−ナフチレン基)、アントリル基(好ましくは2,7−アントリレン基)、ナフタセニル基、フェナントリル基等のアリーレン基、チエニレン基、バイチエニレン基、フルオレニレン基、ピリジレン基、オキサゾーレン基、チアゾーレン基、ベンゾチアジアゾーレン基、ベンゾチエニレン基、ジベンゾチエニレン基、ピラジレン基、ピリミジレン基、ピラゾイレン基、イミダゾイレン基、フェニルカルバゾイレン基、カルバゾイレン基、チエニルチエニレン基、ベンゾジチエニレン基、ジケトピロロピローレン基、ジチエノピローレン基、ジチエノシローレン基、シクロペンタジチオフェン基、チアジアゾロキノキサリン基、チエノピラジン基、ホスホーレン基、イミダゾリノフェニレン基、イミダゾリノチエニレン基、ベンゾビスイミダゾイレン基、ベンゾビスチアゾーレン基等のヘテロアリーレン基、炭素数2〜12のアルケニル基、アルキニル基が挙げられる。好ましくはシクロペンタジチオフェニレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、アズレニレン基、2,7−ナフチレン基、2,7−アントリレン基、ナフタセニレン基、フェナントリレン基、チエニレン基、ビチエニレン基、フルオレニレン基、ベンゾチアジアゾーレン基、カルバゾイレン基、チエニルチエニレン基、ベンゾジチエニレン基、ジケトピロロピローレン基、ジチエノピローレン基、ジチエノシローレン基、シクロペンタジチオフェン基、チアジアゾロキノキサリン基、チエノピラジン基、イミダゾリノフェニレン基、イミダゾリノチエニレン基、ベンゾビスイミダゾイレン基、ベンゾビスチアゾーレン基等が挙げられる。さらに好ましくはフェニレン基、シクロペンタジチオフェニレン基、チエニレン基、チアゾーレン基、ベンゾチアジアゾーレン基、フルオレニレン基、2,7−アントリレン基、ベンゾチアジアゾーレン基、カルバゾイレン基、チエニルチエニレン基、ベンゾジチエニレン基、ジチエノピローレン基、ジチエノシローレン基、シクロペンタジチオフェン基、チエノピラジン基、イミダゾリノフェニレン基、ベンゾビスイミダゾイレン基、ベンゾビスチアゾーレン基等が挙げられる。様々な吸収波長を有する置換基を組み合わせることにより、太陽光のより広範囲を網羅できる点や、共役が発達することで電子吸収が長波長側にシフトし、より狭いバンドギャップの高分子となり素子特性の向上が期待できる点、また、高分子に電子の受容性や供与性の特性を選択的に与えられる点から好ましい。
特に、アリーレン基及び/又はヘテロアリーレン基との組み合わせることは、骨格鎖上に共役が広がり吸収波長が長波長化する点で好ましい。
Arは上述のアリーレン基及び/又はヘテロアリーレン基、及び/又はアルケニル基及び/又はアルキニル基の連結した基であってもよい。その場合、Arの連結した基の数は、特段の制限はないが、通常2個以上であり、一方通常6個以下、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下である。また、アルケニル基やアルキニル基は連続して配置されることはなく、末端に位置するものが好ましい。
具体的には、Arが6個連結している場合、そのうちアリーレン基及び/又はヘテロアリーレン基が6個もの、アリーレン基及び/又はヘテロアリーレン基が5個でうち1個はアルキニル基及び/またはアルケニル基のもの、アリーレン基及び/又はヘテロアリーレン基が4個でうち2個はアルキニル基及び/またはアルケニル基のもの、アリーレン基及び/又はヘテロアリーレン基が3個でうち3個はアルキニル基及び/またはアルケニル基のもの、アリーレン基及び/又はヘテロアリーレン基が2個でうち4つはアルキニル基及び/またはアルケニル基のものが挙げられる。Arが5個連結している場合、そのう
ちアリーレン基及び/又はヘテロアリーレン基が5個もの、アリーレン基及び/又はヘテロアリーレン基が4個でうち1個はアルキニル基及び/またはアルケニル基のもの、アリーレン基及び/又はヘテロアリーレン基が3個でうち2個はアルキニル基及び/またはアルケニル基のもの、アリーレン基及び/又はヘテロアリーレン基が2個でうち3個はアルキニル基及び/またはアルケニル基のものが挙げられる。Arが4個連結している場合は、そのうちアリーレン基及び/又はヘテロアリーレン基が4個もの、アリーレン基が3個でうち1個はアルキニル基及び/またはアルケニル基のもの、アリーレン基及び/又はヘテロアリーレン基が2個でうち2個はアルキニル基及び/またはアルケニル基のものが挙げられる。Arが3個連結している場合は、そのうちアリーレン基及び/又はヘテロアリーレン基が3個もの、アリーレン基及び/又はヘテロアリーレン基が2個でうち1個はアルキニル基及び/またはアルケニル基のものが挙げられる。Arが連結した場合の好ましい基としては、ビスチオフェニルアルキルジケトピロロピロール、ビスフェニルアルキルジケトピロロピロール、ビスピロロフェニルアルキルジケトピロロピロール等が挙げられる。さらに好ましくはビスチオフェニルアルキルジケトピロロピロール、ビスフェニルアルキルジケトピロロピロールが挙げられる。
特に、アリーレン基及び/又はヘテロアリーレン基との組み合わせることは、骨格鎖上に共役が広がり吸収波長が長波長化する点で好ましい。
(Ar,Ar,Arが有してもよい置換基について)
Ar,Ar,Arは、アルキル基、アルコキシ基およびアリール基から選ばれる置換基を有すると、有機溶媒への溶解性が特に優れたものとなりやすく、好ましい。
置換の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基の炭素原子数は、通常、1〜20、好ましくは3〜12、より好ましくは4〜10である。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、シクロプロピル基、nブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、3−メチルブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、シクロオクチル基、ノニル基、シクロノニル基、デシル基、シクロデシル基、ラウリル基、シクロラウリル基等が挙げられるが、n−プロピル基、iso−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、3−メチルブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、シクロラウリル基が好ましく、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロオクチル基、ノニル基、シクロノニル基、デシル基、シクロデシル基等がより好ましい。
置換の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基の炭素原子数は、通常、1〜20、好ましくは3〜12、より好ましくは4〜10である。このようなアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、3−メチルブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ラウリルオキシ基等が挙げられるが、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、3−メチルブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基が好ましく、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、3−メチルブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基がより好ましい。
置換のアリール基の炭素原子数は、通常、6〜60、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜14である。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基(「C1〜C12」という式は、この式とともに記載された有機基の炭素原子数が1〜12であることを示す。以下も同様である。)、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられ、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基が好ましい。C1〜C12アルコキシフェニル基としては、例えば、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、n−プロポキシフェニル基、iso−プロポキシフェニル基、n−ブトキシフェニル基、iso−ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基、3−メチルブトキシフェニル基、ペンチルオキシフェニル基、ヘキシルオキシフェニル基、2−エチルヘキシルオキシフェニル基、ヘプチルオキシフェニル基、オクチルオキシフェニル基、ノニルオキシフェニル基、デシルオキシフェニル基、ラウリルオキシフェニル基等が挙げられる。C1〜C12アルキルフェニル基としては、例えば、メチルフェニル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、iso−プロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、iso−ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、3−メチルブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、2−エチルヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ラウリルフェニル基等が挙げられる。本発明のチアジアゾール含有高分子の好ましい具体例を示す。
本発明のチアジアゾール含有高分子は、チアジアゾール基と上記で規定されるAr、Ar、Arを組み合わせることにより、以下の点に特徴を有する。
まず、様々な吸収波長を有するAr、Ar、Arを組み合わせて高分子化することにより電子吸収がブロードになり、太陽光の波長のより広範囲を網羅できることが期待で
きる。
次に、Ar、Ar、Arを分子主鎖骨格のねじれを緩和するような組み合わせにすると、共役が広がりやすく電子吸収がより長波長側にシフトする。即ち、狭いエネルギーバンドギャップの高分子となり、素子特性の向上が期待できる。
さらに、Ar、Ar、Arの組み合わせを換えることでHOMO・LUMOのエネルギー準位を調節でき、素子特性の向上への寄与、p型またはn型または両極性の半導体特性を持たせることが期待できる。例えば、電子受容性のチアジアゾール基を、電子受容性を有するAr、Arで挟み込み、さらにArも電子受容性を有する分子であった場合n型半導体特性を示すと考えられる。Arが電子供与性を有する分子であった場合も、高分子全体の電子受容性がより向上しているため、両極性の半導体特性を示す可能性がある。一方で、電子供与性を有するAr、Arを組み合わせた場合は、Arが電子受容性であれば両極性、電子供与性であればp型の半導体特性を示す可能性が高いと考える。よって、組み合わせによって高分子に、選択的にpまたはn、または両極性の半導体特性を発現させられると考える。
特に、置換基を有するAr、Ar、Arを組み合わせることによって、低溶解性のチアジアゾールを含有しているにもかかわらず、置換基を有するAr、Ar、Arが高溶解性であることから、本発明のチアジアゾール含有高分子としての溶解性が向上するために好ましい。
本発明のチアジアゾール含有高分子のポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常0.5×10以上、好ましくは0.8×10以上、より好ましくは1.0×10以上、さらに好ましくは1.1×10以上である。一方、好ましくは1.0×10以下、より好ましくは1×10以下、さらに好ましくは5×10以下である。(1)式中のnは、前述の高分子のポリスチレン換算の重量平均分子量が、通常0.5×10以上、好ましくは0.8×10以上、より好ましくは1×10以上、さらに好ましくは1.1×10以上である。一方、好ましくは1×10以下、より好ましくは1×10以下、さらに好ましくは5×10以下となるような整数を示す。この重量平均分子量は、小さすぎると鎖上に共役が広がらず、電子吸収波長の短波長化といった問題点が生じ、大きすぎると溶解性が低下するなどの問題点が生ずる。
本発明のチアジアゾール含有高分子において、好ましくは電子吸収の吸収極大(λmax)が470〜1200nmであり、さらには480〜1000nmであることが好ましい。また、半値幅が10〜300nmであり、さらには20〜300nmであることが好ましい。太陽電池用途のため、本発明の高分子の吸収波長領域は、太陽光の吸収波長領域に近ければ近いほど望ましい。
本発明のチアジアゾール含有高分子において、好ましくは25℃におけるクロロベンゼンに対する溶解度が通常0.1wt%以上、好ましくは0.5wt%以上、さらに好ましくは1wt%以上であり、一方、通常30wt%以下、好ましくは20wt%である。難溶性であれば、十分な厚さで製膜できないという問題が生ずる。
溶媒の種類としては、前記チアジアゾール含有高分子を均一に溶解あるいは分散できるものであれば特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチルなどのエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレンなどのハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類等が挙げられる。その
中でも好ましくは、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類やクロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレンなどのハロゲン炭化水素類である。
(チアジアゾール含有高分子の製造方法)
発明のチアジアゾール含有高分子の製造方法には特に限定はなく、公知の方法で製造することができる。好ましくは、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物を重合する方法である。
式中、Ar,Ar,Arは前記と同義である。
X、Yは各々独立して、ハロゲン原子、アルキルスタニル基、アルキルスルホ基、アリールスルホ基、アリールアルキルスルホ基、ホウ酸エステル残基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、モノハロゲン化メチル基、ホウ酸残基(−B(OH))、ホルミル基、アルケニル基又はアルキニル基を表す。前記式(2)または(3)で表される化合物の合成上の観点及び反応のし易さの観点から、X、Yは独立に、ハロゲン原子、アルキルスタニル基、ホウ酸エステル残基、またはホウ酸残基(−B(OH))であることが好ましい。
チアジアゾール基と本願規定のAr、Arで挟み込むことで、チアジアゾール基を有するモノマーユニットの合成が簡便になる点から好ましい。特に、置換基を有するAr、Ar、Arを組み合わせることによって、低溶解性のチアジアゾールを含有しているにもかかわらず、置換基を有するAr、Ar、Arが高溶解性であることから、一般式(2)、一般式(3)で表される化合物の溶解性が向上した結果、重合度も向上するために好ましい。
ArとArは、好ましくは同じ基であり、合成の簡便さの点から好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が例示される。
ホウ酸エステル残基としては、例えば、下記式で示される基が挙げられる。
(式中、Meはメチル基を示し、Etはエチル基を示す。)
スタニル基としては、例えば、下記式で示される基等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば炭素数2〜12の基が挙げられる。
本発明の高分子の合成に用いる反応法としては、Suzuki−Miyauraクロスカップリング反応方法、Stilleカップリング反応方法、Yamamotoカップリング反応方法、Grignard反応方法、FeClなどの酸化剤を用いる反応方法、Sonogashira‐Hagiwaraカップリング反応法、Mizoroki‐Heck反応法、電気化学的な酸化反応を用いる方法、適当な脱離基を有する中間体化合物の分解による反応方法などが挙げられる。これらの中でも、Suzukiカップリング反応方法、Stilleカップリング反応方法、Yamamotoカップリング反応方法、Grignard反応方法が、構造制御がしやすい点で好ましい。特に、Suzuki−Miyauraクロスカップリング反応方法、Stilleカップリング反応方法、Grignard反応方法が、材料の入手しやすさ、反応操作の簡便さの点から好ましい。Sonogashira‐Hagiwaraカップリング反応法、Mizoroki‐Heck反応法は、アルキニル基やアルケニル基を反応させることが出来る点から好ましい。尚、この反応を用いる場合には、ArのうちYと結合する部位はアリーレン基またはヘテロアリーレン基であることが好ましい。
前記反応においては、反応促進のために、適宜、アルカリ、適切な触媒を添加することができる。これらアルカリや適切な触媒は、反応の種類に応じて選択すればよいが、反応に用いる溶媒に十分に溶解するものが好ましい。アルカリとしては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基;トリエチルアミン、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の有機塩基;フッ化セシウム等の無機塩が挙げられる。触媒としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウムアセテート類、ヨウ化銅などが挙げられる。
Sonogashira−Hagiwaraカップリング反応法では、触媒にヨウ化銅などの銅塩、また、反応はアミン存在下で行う。アミンは、例えばジイソプロピルアミン、プロピルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、及びトリメチルアミンなどが挙げられる。
本発明の高分子を有機光電変換素子用の材料として用いる場合、その純度が素子特性に影響を与えるので、反応前のモノマーを蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で精製した後にカップリング反応させることが好ましく、また、高分子の合成後、再沈精製、クロマトグラフィーによる分別等の純化処理をすることが好ましい。
前記反応に用いられる溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブチルアルコール等のアルコール類;蟻酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等のエーテル類;塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸等の無機酸等が挙げられる。これらの溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
反応後は、例えば、水でクエンチした後に有機溶媒で抽出し、該有機溶媒を留去する等の通常の後処理で、粗製の高分子を得ることができる。また、上記のとおり、高分子の単離及び精製は再沈殿、クロマトグラフィーによる分取等の方法により行うことができる。
本発明のチアジアゾール含有高分子の合成に用いる反応方法としては、特に、Stilleカップリング反応方法が好ましい。
Stilleカップリング反応方法を用いる場合、上記一般式(2)、一般式(3)において例えば、Xはハロゲン原子、且つYはスタニル基であるか、Xはスタニル基、且つYはハロゲン原子であるかが好ましい。
Stilleカップリング反応は溶媒中で行なう。使用することができる溶媒は一般的に上述した通りである。
該溶媒の使用量は、上記式(2)で表される化合物と上記式(3)で表される化合物との合計1gに対して、通常、0.01〜10,000mLであるが、好ましくは0.1〜1,000mLであり、より好ましくは1〜200mLである。
Stilleカップリング反応の反応温度は、通常、0〜200°Cであり、好ましくは0〜180°Cであり、より好ましくは0〜160°Cである。該反応の時間は、通常1分間〜160時間であり、好ましくは10分間 〜120時間であり、より好ましくは10分間〜100時間である。
Stilleカップリング反応の後処理ならびに得られた重合体の単離及び精製は上記と同様に行うことができる。
Stilleカップリング反応では、重合触媒としてホスフィン化合物を配位子として含むパラジウム錯体を用いる。具体例としては、Pd(PPh、Pd(PPhMe)2、Pd(P(t−Bu)、Pd(PEt)、Pd(PCy、Pd(dppb)、Pd(dppe)、Pd(dppp)、Pd(BINAP)等が挙げられる(式中、Phはフェニル基を表し、Meはメチル基を表し、t−Buはtert−ブチル基を表し、Etはエチル基を表し、Cyはシクロヘキシル基を表す。)。
該触媒の使用量は、上記式(2)で表される化合物と上記式(3)で表される化合物との合計にたいするパラジウム錯体の使用量として、好ましくは0.0001〜10mol%であり、より好ましくは0.001〜5mol%であり、さらに好ましくは0.01〜5mol%である。
Stilleカップリング反応では、反応条件として大気下を好まない。よって、NまたはAr雰囲気下で行う。
(有機半導体材料)
発明のチアジアゾール含有高分子は、有機半導体材料として用いられることが好ましい。
本発明の有機半導体材料は、上に説明した本発明の高分子を少なくとも含有することを特徴とする。本発明の高分子のうち、何れか一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせで含有していても良い。また、本発明の高分子のみからなるものであってもよいが、その他の成分(例えば、その他の高分子やモノマー、各種の添加剤等)を含有していてもよい。
本発明の有機半導体材料は、その用途の一つとして後述する有機電子デバイスの有機半導体層に好適である。その場合、当該有機半導体材料を成膜して用いることが好ましく、この際に前述した有機溶剤への可溶性及びその加工性に優れているなどの物性が好ましい点として現れる。有機電子デバイスの有機半導体層として用いる際の詳細は、有機電子デ
バイスの項にて説明する。
本発明の有機半導体材料は、単独でも有機電子デバイスの有機半導体層の材料として十分に作用するが、他の有機半導体材料と混合及び/又は積層して使用することも可能である。本発明の有機半導体材料と併用可能な他の有機半導体材料としては、Poly(3−hexylthiophene)(P3HT)、Poly[2,6−(4,4−bis−[2−ethylhexyl]−4H−cyclopenta[2,1−b:3,4−b¢]dithiophene)−alt−4,7−(2,1,3−benzothiadiazole)] (PCPDTBT)、Benzoporphyrin (BP)、Pentaceneまた、n型半導体とも知られているPerylene−bis imide、PCBM、PCBNBなどのフラーレン誘導体などの既知の有機半導体材料が挙げられるが、特にこれらに限定されることはない。
(有機電子デバイス)
次に、本発明の有機電子デバイスについて説明する。
本発明の有機電子デバイスは、上述した本発明の有機半導体材料を用いて形成されたことを特徴としている。本発明の有機半導体材料を適用可能なものであれば、有機電子デバイスの種類に特に制限はない。例としては、発光素子、スイッチング素子、光電変換素子、光電導性を利用した光センサー、太陽電池等が挙げられる。
発光素子としては、表示デバイスに用いられる各種の発光素子が挙げられる。具体例としては、液晶表示素子、高分子分散型液晶表示素子、電気泳動表示素子、エレクトロルミネッセント素子、エレクトロクロミック素子等が挙げられる。
スイッチング素子の具体例としては、ダイオード(pn接合ダイオード、ショットキー・ダイオード、MOSダイオード等)、トランジスタ(バイポーラートランジスタ、電界効果トランジスタ(FET)等)、サイリスタ、更にはそれらの複合素子(例えばTTL等)等が挙げられる。
光電変換素子の具体例としては、薄膜太陽電池、電荷結合素子(CCD)、光電子増倍管、フォトカプラ等が挙げられる。また、光電導性を利用した光センサーとしては、これらの光電変換素子を利用したものが挙げられる。
本発明の有機半導体材料を有機電子デバイスのどの部位に用いるかは特に制限されず、任意の部位に用いることが可能であるが、通常は有機電子デバイスの有機半導体層に使用される。
<光電変換素子>
本発明に係る光電変換素子は、少なくとも1対の電極、活性層、及びバッファ層を有し、該活性層に、本発明の有機半導体層を有する。活性層及びバッファ層は、電極間に配置されている。図1は一般的な有機薄膜太陽電池に用いられる光電変換素子を表すが,これに限るわけではない。
<活性層>
活性層の層構成は、p型半導体化合物とn型半導体化合物が積層された薄膜積層型、p型半導体化合物とn型半導体化合物が混合したバルクヘテロ接合型、薄膜積層型の中間層にp型半導体化合物とn型半導体化合物が混合した層(i層)を有する構造等が挙げられる。中でも、p型半導体化合物とn型半導体化合物が混合したバルクヘテロ接合型が好ましい。
活性層の膜厚は特に限定されないが、10nm未満では均一性が十分ではなく、短絡を起こしやすいという問題が生じる。他方、活性層の厚さが1000nmを超えると内部抵
抗が大きくなり、また電極間の距離が離れて電荷の拡散が悪くなる問題が生じるため、好ましくない。そこで、活性層の膜厚は10〜1000nmが好ましく、30〜200nmがさらに好ましい。
<p型半導体化合物>
p型半導体化合物としては、特に限定はないが、低分子材料と高分子材料が挙げられる。
低分子系材料として,ナフタセン、ペンタセン、ピレン等の縮合芳香族炭化水素;α−セキシチオフェン等のチオフェン環を4個以上含むオリゴチオフェン類;チオフェン環、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環を合計4個以上連結したもの;フタロシアニン化合物及びその金属錯体並びにテトラベンゾポルフィリン(BP)等のポルフィリン化合物及びその金属錯体等の大環状化合物なども挙げられる。低分子材料は、蒸着法によって製膜したり、半導体化合物前駆体を塗布後、半導体に変換することで製膜する方法がある。
高分子材料として、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアセチレン、ポリアニリン等の共役ポリマー半導体;アルキル置換されたオリゴチオフェン等のポリマー半導体、本発明の有機半導体材料等が挙げられる。なお、上記一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。
p型半導体化合物としてその中でも好ましくは、低分子材料としては、ナフタセン、ペンタセン、ピレン等の縮合芳香族炭化水素、フタロシアニン化合物及びその金属錯体、もしくはテトラベンゾポルフィリン(BP)等のポルフィリン化合物及びその金属錯体であり、高分子材料としては、ポリチオフェン等の共役ポリマー半導体、もしくは本発明の有機半導体材料が好ましい。なお、上記一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。
本発明の有機半導体材料は、上記チアジアゾール含有高分子のモノマー骨格やモノマーの置換基を、溶解性、結晶性、製膜性、HOMOレベル及びLUMOレベル等を制御するために選択することができることから好ましい。また、本発明の有機半導体材料は有機溶媒に可溶なものであることから、有機太陽電池素子の製造プロセスにおいて塗布法を使用できるため好ましい。
p型半導体層作成方法については、特段の制限はないが、塗布法が好ましい。塗布法については、以下の任意の方法で行うことができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法、カーテンコート法などが挙げられる。
低分子材料及び/又は高分子材料は、製膜された状態において、何らかの自己組織化した構造を有するものであっても、アモルファス状態であっても良い。
p型半導体化合物のHOMOレベルは、特に限定は無いが、後述のn型半導体の種類によって選択することができるが、特にフラーレン化合物と組み合わせるp型半導体のHOMOレベルは、通常−5.7eV以上、より好ましくは−5.5eV以上、一方、通常−4.6eV以下、−4.8eV以下が好ましい。p型半導体化合物のHOMOレベルが−5.7eV以上であることによりp型半導体としての特性が向上し、p型半導体のHOMOレベルが−4.6eV以下であることにより化合物の安定性が向上し、開放端電圧(Voc)の向上する。また、p型半導体のLUMOレベルは、特に限定は無いが、後述のn型半導体の種類によって選択することができるが、特にフラーレン化合物と組み合わせるp型半導体のLUMOレベルは、通常−3.7eV以上、好ましくは−3.6eV以上である。一方、通常−2.5eV以下、好ましくは−2.7eV以下である。p型半導体の
LUMOレベルが−2.5eV以下であることにより、バンドギャップが調整され長波長な光エネルギーを有効に吸収することができ、短絡電流密度が向上する。p型半導体のLUMOレベルが−3.7eV以上であることにより、n型半導体への電子移動が起こりやすくなり短絡電流密度が向上する。
<n型半導体化合物>
n型半導体化合物としては、特に限定はないが、フラーレン化合物、8−ヒドロキシキノリンアルミニウムに代表されるキノリノール誘導体金属錯体、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、ターピリジン金属錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体、ペリノン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ビススチリル誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ビピリジン誘導体、アントラセン、ピレン、ナフタセン、ペンタセンなど縮合多環芳香族の全フッ化物、単層カーボンナノチューブ、ポリキノリン、ポリピリジン、ポリアニリン、ポリ(ベンゾビスイミダゾベンゾフェナントロリン)、ホウ素ポリマー、シアノ置換されたポリフェニレンビニレン、もしくは本発明の有機半導体材料等が挙げられる。その中でも好ましくは、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、フラーレン化合物、本発明の有機半導体材料である。これらを一種又は二種以上含んでも良い。
本発明のフラーレン化合物としては、一般式(I),(II),(III)及び(IV)で示されるフラーレン化合物が好ましい。
式中、FLNとは、閉殻構造を有する炭素クラスターであるフラーレンを表わす。フラーレンの炭素数は、通常60〜130の偶数であれば何でも良い。フラーレンとしては、例えば、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94、C96及びこれらよりも多くの炭素を有する高次の炭素クラスターなどが挙げられる。その中でも、C60もしくはC70が好ましい。フラーレンとしては、一部のフラーレン環上の炭素―炭素結合が切れていても良い。又、一部の炭素原子が、他の原子に置き換えられていても良い。さらに、金属原子、非金属原子あるいはこれらから構成される原子団をフラーレンケージ内に内包していても良い。
a、b、c、dは整数であり、通常a、b、c、dの合計が1〜5であり、好ましくは1〜3である。(I),(II),(III),(IV)中の付加基は、フラーレン骨格中の同一の五員環もしくは六員環に付加される。eは1〜8の整数である。eとして好ましくは1以上4以下の整数であり、さらに好ましくは1以上2以下の整数である。
一般式(I)中のRは置換基を有していても良い炭素数1〜14のアルキル基、置換基を有しても良い炭素数1〜14のアルコキシ基、置換基を有していても良い芳香族基である。アルキル基として好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基もしくはイソブチル基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基である。アルコキシ基として好ましくは、炭素数1〜10のアルコキシ基であり、さらに好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基、エトキシ基である。芳香族基は、炭素数3〜10の芳香族炭化水素基あるいは芳香族複素環基であり、好ましくはフェニル基、チエニル基、フリル基、ピリジル基であり、さらに好ましくはフェニル基、チエニル基である。上記アルキル基に置換しても良い置換基とは、ハロゲン原子又はシリル基である。置換しても良いハロゲン原子として好ましくはフッ素原子である。置換しても良いシリル基とは、ジアリールアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、トリアリールシリル基、トリアルキルシリル基であり、好ましくは、ジアルキルアリールシリル基であり、さらに好ましくは、ジメチルアリールシリル基である。
一般式(II)中のR〜Rは各々独立した置換基を表し、水素原子、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数1〜14のフッ化アルキル基、置換基を有していても良い芳香族基である。アルキル基として好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基である。フッ化アルキル基として好ましくは、パーフルオロオクチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロブチル基である。芳香族基は、炭素数3〜10の芳香族炭化水素基あるいは芳香族複素環基であり、好ましくはフェニル基、チエニル基、フリル基、ピリジル基であり、さらに好ましくはフェニル基、チエニル基である。芳香族基が有していても良い置換基は、フッ素原子、炭素数1〜14のアルキル基あるいはフッ化アルキル基あるいはアルコキシ基、炭素数3〜10の芳香族基であり、好ましくはフッ素原子あるいは炭素数1〜14のアルコキシ基であり、さらに好ましくはメトキシ基、n−ブトキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基である。芳香族基が置換基を有する場合、その数に限定は無いが、好ましくは1〜3であり、より好ましくは1である。芳香族基が置換基を複数有する場合、その置換基の種類は異なっていても良いが、好ましくは同一である。
一般式(III)中のR〜Rは各々独立に、水素原子あるいは炭素数1〜14のアルキル基あるいは置換基を有していても良い芳香族基である。アルキル基として好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基、オクチル基であり、より好ましくはメチル基である。芳香族基は、炭素数3〜10の芳香族炭化水素基あるいは芳香族複素環基であり、好ましくはフェニル基、ピリジル基であり、さらに好ましくはフェニル基である。芳香族基が有して良い置換基として特に限定は無いが、好ましくはフッ素原子、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数1〜14のフッ化アルキル基、炭素数1〜14のアルコキシ基であり、さらに好ましくは炭素数1〜14のアルコキシ基であり、さらに好ましくはメトキシ基である。置換基を有する場合、その数に限定は無いが、好ましくは1〜3であり、より好ましくは1である。置換基の種類は異なっていても良いが、好ましくは同一である。
一般式(III)中のArは、置換基を有していても良い炭素数3〜10の芳香族炭化水素基あるいは芳香族複素環基であり、好ましくはフェニル基、ナフチル基、ビフェニ
ル基、チエニル基、フリル基、ピリジル基,ピリミジル基、キノリル基、キノキサリル基であり、さらに好ましくはフェニル基、チエニル基、フリル基である。有していても良い置換基として限定は無いが、好ましくはフッ素原子、炭素数1〜14のアルキル基、フッ化アルキル基、アルコキシ基、エステル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基であり、さらに好ましくはフッ素原子、アルコキシ基、エステル基、アリールカルボニル基であり、さらに好ましくはメトキシ基、メチルエステル基、n−ブチルエステル基、ベンゾイル基である。置換基を有する場合、その数に限定は無いが、好ましくは1〜3であり、より好ましくは1〜2である。置換基が複数の場合、その種類は異なっていても良いが、好ましくは同一である。
一般式(III)中のR10〜R13は各々独立して、水素原子、酸素原子、硫黄原子、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアミノ基、あるいは置換基を有しても良いアルコキシ基である。R10もしくはR11とR12もしくはR13との間で、あるいは、R10もしくはR11とR12もしくはR13のいずれか一方と(III)の骨格を形成する炭素原子との間で結合し環を形成しても良い。環を形成する場合における構造は、例えば、芳香族基が縮合したビシクロ構造である一般式(V)で示すことができる。一般式(V)中におけるfはcと同様であり、Xは、酸素原子、硫黄原子、メチル基やエチル基等の炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基、メトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシル基あるいは炭素数1〜5の炭化水素基もしくは炭素数3〜10の芳香族炭化水素基あるいは芳香族複素環基で置換されていてもよい炭素数1又は2のアルキレン基又はフェニレン基等のアリーレン基である。
一般式(IV)中のR14〜R15は各々独立して、水素原子、アルコキシカルボニル基、置換基を有していても良い炭素数1〜14のアルキル基、あるいは置換基を有していても良い芳香族基である。
アルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基は、炭素数1〜12の炭化水素基あるいはフッ化アルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜12の炭化水素基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基、オクチル基、2−プロピルペンチル基、2−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ベンジル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基である。
アルキル基として好ましくは、炭素数1〜8の直鎖アルキル基であり、より好ましくはn−プロピル基である。アルキル基が有しても良い置換基に特に限定は無いが、好ましくはアルコキシカルボニル基である。アルコキシカルボニル基のアルコキシ基は、炭素数1〜14の炭化水素基あるいはフッ化アルキル基であり、好ましくは炭素数1〜14の炭化水素基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基、オクチル基、2−プロピルペンチル基、2−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ベンジル基であり、さらに好ましくはメチル基、n−ブチル基である。
芳香族基は、炭素数3〜10の芳香族炭化水素基あるいは芳香族複素環基であり、好ましくはフェニル基、ビフェニル基、チエニル基、フリル基、ピリジル基であり、さらに好ましくはフェニル基、チエニル基である。芳香族基が有していても良い置換基として、好ましくは炭素数1〜14のアルキル基、炭素数1〜14のフッ化アルキル基、炭素数1〜14のアルコキシ基であり、さらに好ましくは炭素数1〜14のアルコキシ基であり、さらに好ましくはメトキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基である。置換基を有する場合、その数に限定は無いが、好ましくは1〜3であり、より好ましくは1である。置換基の種類は異なっていても同一でも良く、好ましくは同一である。
一般式(IV)の構造として好ましくは、R14、R15が共にアルコキシカルボニル基であるか、R14、R15が共に芳香族基であるか、R14が芳香族基で、かつR15が3−(アルコキシカルボニル)プロピル基である。
フラーレン化合物の中でも好ましくは、一般式(I)、一般式(II)もしくは一般式(IV)の構造を有するフラーレン化合物であり、より好ましくは、一般式(II)もしくは一般式(IV)の構造を有するフラーレン化合物であり、さらに好ましくは一般式(IV)の構造を有するフラーレン化合物であり、特に好ましくは、一般式(IV)においてR14が芳香族基で、かつR15が3−(アルコキシカルボニル)プロピル基であるフラーレン化合物である。
なお、フラーレン化合物としては、上記一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。
n型半導体層の作成方法としては、特段に制限はないが、塗布法が好ましい。塗布法については、p型半導体層の作成方法と同様である。
塗布法を適用できるようにするためには、当該フラーレン化合物自体が液状で塗布可能であるか、当該半導体化合物前駆体が何らかの溶媒に対して溶解性が高く溶液として塗布可能であることが好ましい。溶解性の好適な範囲をあげると、25℃でのトルエンに対する溶解度が、通常0.1重量%以上、好ましくは0.4重量%以上、より好ましくは0.7重量%以上である。溶解度が小さすぎると、フラーレン化合物の分散安定性が低下し、凝集、沈降、分離等を起こしやすくなるため好ましくない。
<バッファ層>
バッファ層としては、正孔取り出し層及び電子取り出し層に分類することができ、それぞれ、活性層と後述するカソードもしくは後述するアノードの間に設けることができる。
<電子取り出し層>
電子取り出し層の材料は、電子取り出し層には,p半導体化合物とn半導体化合物を含む半導体層から電極へ電子の取り出し効率を向上させることが可能な材料であれば特に限定されない。具体的には、無機化合物又は有機化合物が挙げられる。
無機化合物の材料としては、Li、Na、K、Cs等のアルカリ金属の塩、酸化チタン(TiOx)や酸化亜鉛(ZnO)のようなn型の酸化物半導体が望ましい。
アルカリ金属塩としては、LiF、NaF、KF、CsFのようなフッ化物塩が望ましい。このような材料の動作機構は不明であるが、Al等の電子取り出し電極(カソード)と組み合わされてカソードの仕事関数を小さくし、太陽電池素子内部に印加される電圧を上げる事が考えられる。
有機化合物の材料としては、特段の制限はないが、DSC法によるガラス転移温度(以下、Tgと記載する場合もある)が通常50℃以上の化合物である。より好ましくは80℃、さらに好ましくは100℃以上、特には120℃以上が望ましい。上限は特に限定はないが、DSC法によるガラス転移温度が300℃以下に観測されない有機化合物である
。 DSC法によるガラス転移温度が300℃以下に観測されないものは熱的に高い安定性を有しており好ましいものである。
本発明に係るガラス転移温度とは、有機化合物のアモルファス状態の固体が、熱エネルギーにより局所的な分子運動が開始される温度とされており、比熱が変化する点として定義される。さらに温度が上がると、固体構造が変化して結晶化が起こる(この時の温度を結晶化温度(Tc)とする)。さらに温度が上がると、融点(Tm)で融解し液体状態に変化するのが一般的である。但し、高温で分子が分解したり、昇華したりして、それらの相転移が見られないこともある。ガラス転移温度は公知の方法で測定すれば良く、たとえばDSC法が挙げられる。
DSC法とは、JIS K−0129“熱分析通則”に定義された熱物性の測定法(示差走査熱量測定法)である。有機材料の非晶質固体状態がガラス転移温度は、ガラス状態から分子運動が開始する温度であり、比熱の変化する温度としてDSCで測定できる。ガラス転移温度をより明確に決める為に、一度ガラス点移転以上の温度に加熱したサンプルを急冷した後に測定することが望ましい。
ガラス転移温度が低すぎると、該有機化合物は、印加される電場、流れる電流、曲げや温度変化による応力などの外部ストレスに対して構造が変化しやすいため、耐久性の面で問題になる。また、ガラス転移温度が低すぎると、該有機化合物の薄膜の結晶化が進みやすい傾向も有すことから、使用温度範囲において該有機化合物がアモルファス状態と結晶状態に変化することにより電子取り出し層としての安定性がなくなるため、耐久性の面で問題になる。
本発明の有機化合物の具体例として、バソキュプロイン(BCP)または、バソフェナントレン(Bphen)、(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(alq3)、ホウ素化合物、オキサジアゾール化合物、ヘ゛ンソ゛イミタ゛ソ゛ール化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA)、ペリレンテトラカルボン酸無水物(PTCDA)、ホスフィンオキサイド化合物、ホスフィンスルフィド化合物が挙げられる。その中でも好ましくは、アリール基で置換されたホスフィンオキサイド化合物、アリール基で置換されたホスフィンスルフィド化合物であり、より好ましくは、トリアリールホスフィンオキサイド化合物、トリアリールホスフィンスルフィド化合物、ジアリールホスフィンオキシドユニットを2つ以上有する芳香族炭化水素化合物、ジアリールホスフィンスルフィドユニットを2つ以上有する芳香族炭化水素化合物、フッ素原子もしくはパーフルオロアルキル基で置換されたアリールからなるトリアリールホスフィンオキサイド化合物、ジアリールホスフィンオキシドユニットを2つ以上有する芳香族炭化水素化合物である。上記材料に加えてアルカリ金属又はアルカリ土類金属をドープしてもよい。
電子取り出し層としての厚さは、通常0.1nm以上、より好ましくは0.2nm
以上、一方、通常100nm以下、より好ましくは60nm以下が望ましい。薄すぎると効果が小さく、厚すぎると直列抵抗となり効率の低下を引き起こすからである。
<正孔取り出し層>
正孔取り出し層の材料は、特に限定は無く活性層から電極へ正孔の取り出し効率を向上させることが可能な材料であれば特に限定されない。具体的には、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミンポリピロールおよびポリアニリンなどにスルフォン酸及び/又はヨウ素などのドーピングした導電性ポリマー、アリールアミン等の導電性有機化合物や後述のp型半導体等が挙げられる。その中でも、好ましくは、スルフォン酸をドーピングした導電性ポリマーであり、より好ましくは、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルフォン酸をドーピングしたPEDOT/PSSである。また、金、インジウム、銀、パラジウム等の金属等の薄膜も使用することができる。さらに、金
属等の薄膜は、単独で形成してもよく、上記の有機材料と組み合わせて用いることもできる。
正孔取り出し層の膜厚は特に限定はないが、通常10nm以上、好ましくは30nm以上、一方、通常200nm以下である。薄すぎると均一性が十分ではなく、短絡を起こしやすい傾向がある。
一般的に、透明電極(ITO)表面に正孔取り出し層としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)が用いられているが、発電効率等の電池特性向上に寄与するものの、PEDOT:PSSは熱、光に対する安定性が悪く、熱、光照射に伴い構造破壊が生じる。PEDOT:PSSの分解成分は電子取り出し電極(Al)側に拡散し、動作の不安定化や短絡を招く可能性がある。作用機構としてはまだ定かではないものの、本願発明の無機化合物及びガラス転移温度(Tg)が80℃以上の有機化合物を含む電子取り出し層が、PEDOT:PSSの分解成分の電極(Al)側への移行をブロックすることで耐久性等を向上していることが要因のひとつとして考えられる。
正孔取り出し層と電子取り出し層とは、1対の電極間に、活性層を挟むように配置される。すなわち、本発明に係る光電変換素子が正孔取り出し層と電子取り出し層の両者を含む場合、電極、正孔取り出し層、活性層、電子取り出し層、電極がこの順に配置されている。本発明に係る光電変換素子が電子取り出し層を含み正孔取り出し層を含まない場合は、電極、活性層、電子取り出し層、電極がこの順に配置されている。正孔取り出し層と電子取り出し層とは積層順序が逆であってもよいし、また正孔取り出し層と電子取り出し層との少なくとも一方が異なる複数の膜により構成されていてもよい。
正孔取り出し層と電子取り出し層との形成方法に制限はない。例えば、昇華性を有する材料を用いる場合は真空蒸着法等により形成することができる。また、例えば、溶媒に可溶な材料を用いる場合は、スピンコートやインクジェット等の湿式塗布法等により形成することができる。正孔取り出し層に半導体材料を用いる場合は、活性層の低分子化合物と同様に、前駆体を用いて層を形成した後に前駆体を半導体材料に変換してもよい。
<電極>
本発明に係る電極は、光吸収により生じた正孔及び電子を捕集する機能を有するものである。したがって、一対の電極には、正孔の捕集に適した電極(以下、アノードと記載する場合もある)と電子の捕集に適した電極(以下、カソードと記載する場合もある)を用いることが好ましい。1対の電極は、いずれか一方が透光性であればよく、両方が透光性であっても構わない。透光性があるとは、太陽光が40%以上透過する程度のものである。又、透明電極の太陽光線透過率が70%以上であることが、透明電極を透過させて活性層に光を到達させるためには、好ましい。なお、光の透過率は、通常の分光光度計で測定可能できる。
正孔の捕集に適した電極(アノード)とは、一般には仕事関数がカソード電極よりも高い値を有する導電性材料で、活性層で発生した正孔をスムーズに取り出す機能を有する電極である。
アノードの材料を挙げると、例えば、酸化ニッケル,酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、インジウムージルコニウム酸化物(IZO),酸化チタン、酸化インジウム,酸化亜鉛などの導電性金属酸化物、金、白金、銀、クロム、コバルトなどの金属あるいはその合金が挙げられる。
これらの物質は高い仕事関数を有するため、好ましく、さらに、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルフォン酸をドーピングしたPEDOT/PSSで代表されるような導
電性高分子材料を積層することができるため、好ましい。このような導電性高分子を積層した場合には、その導電性高分子材料の仕事関数が高いことから、上記のような高い仕事関数の材料でなくとも、AlやMg等のカソードに適した金属も広く用いることが可能である。
ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルフォン酸をドーピングしたPEDOT/PSSや、ポリピロールおよびポリアニリンなどにヨウ素などのドーピングした導電性高分子材料をアノードの材料として使用することもできる。
また、アノード電極が透明電極である場合には、ITO、酸化亜鉛、酸化錫等の透光性がある導電性金属酸化物を用いることが好ましく、特にITOが好ましい。
アノードの膜厚は特に制限は無いが、10nm以上、10μm以下、好ましくは20nm以上1μm以下、さらに好ましくは、50nm以上500nm以下である。薄すぎるとシート抵抗が高くなり、厚すぎると光透過率が低下する。透明電極に用いる場合には、光透過率とシート抵抗を両立する膜厚を選ぶ必要がある。
アノードのシート抵抗は、特段の制限はないが、通常1Ω/γ以上、一方、1000Ω/γ以下、好ましくは500Ω/γ以下、さらに好ましくは100Ω/γ以下である。
アノードの形成方法は、蒸着、スパッタ等の真空成膜方法、ナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する方法などがある。
電子の捕集に適した電極(カソード)とは、一般には仕事関数がアノード電極よりも高い値を有する導電性材料で、活性層で発生した電子をスムーズに取り出す機能を有する電極であり、本発明の電子取り出し層と隣接することを特徴とする。
カソードの材料を挙げると、例えば、白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウムおよびマグネシウムなどの金属およびその合金、フッ化リチウム、フッ化セシウムなどの無機塩、酸化ニッケル,酸化アルミニウム、酸化リチウムおよび酸化セシウムのような金属酸化物などが挙げられる。これらの材料は低い仕事関数を有する材料のため、好ましい。カソードについてもアノードと同様に、電子取り出し層にチタニアのようなn型半導体で導電性を有するものを用いることにより、アノードに適した高い仕事関数を有する材料も用いることができる。電極保護の観点から、アノード材料として好ましくは、白金、金、銀、銅、鉄、錫、アルミニウム、カルシウムおよびインジウムなどの金属、またはこれら金属を用いた合金である。
カソードの膜厚は特に制限は無いが、10nm以上、10μm以下、好ましくは20nm以上1μm以下、さらに好ましくは、50nm以上500nm以下である。透明電極に用いる場合には、光透過率とシート抵抗を両立する膜厚を選ぶ必要がある。薄すぎるとシート抵抗が高くなり、厚すぎると光透過率が低下する。
カソードのシート抵抗は、特に制限は無いが、1000Ω/γ以下、好ましくは500Ω/γ以下、さらに好ましくは100Ω/γ以下。下限に制限は無いが、通常は1Ω/γ以上である。
カソードの形成方法は、蒸着、スパッタ等の真空成膜方法、ナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する方法などがある。
さらに、アノードあるいはカソード電極は2層以上積層してもよく、表面処理により特性(電気特性やぬれ特性等)を改良してもよい。
アノード及びカソードを積層した後に、当該光電変換素子を通常50℃以上、好ましくは80℃以上、一方、通常280℃以下、好ましくは250℃以下の温度範囲において,加熱することが好ましい。なお、温度操作については上記範囲内で段階的に加熱してもよ
い。
加熱する時間としては、通常1分以上、好ましくは3分以上、一方、通常3時間以下、好ましくは1時間以下である。
該加熱処理により,素子の熱安定性を向上させるとともに、電極とバッファ層との間の密着性を向上させる効果が得られる。また,活性層の自己組織化にもこのアニール処理は効果的である。
<基板>
本発明に係る光電変換素子は、通常は支持体となる基板を有する。すなわち、基板上に、電極と、活性層、バッファ層とが形成される。基板の材料(基板材料)は本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。基板材料の好適な例を挙げると、石英、ガラス、サファイア、チタニア等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂フィルム、塩化ビニル、ポリエチレン等のポリオレフィン、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリノルボルネン、エポキシ樹脂等の有機材料;紙、合成紙等の紙材料;ステンレス、チタン、アルミニウム等の金属に、絶縁性を付与するために表面をコート或いはラミネートしたもの等の複合材料等が挙げられる。
ガラスとしてはソーダガラスや青板ガラスや無アルカリガラスなどが挙げられる。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましい。
基板の形状に制限はなく、例えば、板、フィルム、シート等の形状を用いることができる。基板の厚みに制限はない。ただし、通常5μm以上、中でも20μm以上、また、通常20mm以下、中でも10mm以下に形成することが好ましい。基板が薄すぎると半導体デバイスの強度が不足する可能性があり、基板が厚すぎるとコストが高くなったり重量が重くなりすぎたりする可能性がある。又、基板がガラスの場合は、薄すぎると機械的強度が低下し,割れやすくなるため,好ましくは0.01mm以上。より好ましくは0.1mm以上がよい。また,厚すぎると重量が重くなるため,好ましくは1cm以下,0.5cm以下が好ましい。
(太陽電池)
本発明の有機電子デバイスの例として、光電変換素子の一種である薄膜太陽電池を挙げて説明する。
図2は本発明の一実施形態としての薄膜太陽電池の構成を模式的に示す断面図である。図2に示すように、本実施形態の薄膜太陽電池100は、耐候性保護フィルム1と、紫外線カットフィルム2と、ガスバリアフィルム3と、ゲッター材フィルム4と、封止材5と、太陽電池素子6と、封止材7と、ゲッター材フィルム8と、ガスバリアフィルム9と、バックシート10とをこの順に備え、更に、耐候性保護フィルム1とバックシート10の縁部をシールするシール材11を備えている。そして、耐候性保護フィルム1が形成された側(図中下方)から光が照射されて、太陽電池素子6が発電するようになっている。なお、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシートなど防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム8及び/又はガスバリアフィルム9を用いなくてもよい。
[耐候性保護フィルム1]
耐候性保護フィルム1は天候変化から太陽電池素子6を保護するフィルムである。
太陽電池素子6の構成部品のなかには、温度変化、湿度変化、自然光、風雨による侵食
などにより劣化するものがある。そこで、耐候性保護フィルム1で太陽電池素子6を覆うことにより、太陽電池素子6等を天候変化などから保護し、発電能力を高く維持するようにしている。
耐候性保護フィルム1は、薄膜太陽電池100の最表層に位置するため、耐候性、耐熱性、透明性、撥水性、耐汚染性、機械強度などの、薄膜太陽電池100の表面被覆材として好適な性能を備え、しかもそれを屋外暴露において長期間維持する性質を有することが好ましい。
また、耐候性保護フィルム1は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、特に好ましくは95%である。
さらに、薄膜太陽電池100は光を受けて熱せられることが多いため、耐候性保護フィルム1も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、耐候性保護フィルム1の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで薄膜太陽電池100の使用時に耐候性保護フィルム1が融解・劣化する可能性を低減できる。
耐候性保護フィルム1を構成する材料は、天候変化から太陽電池素子6を保護することができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリル系樹脂、各種ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド−イミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
中でも好ましくはフッ素系樹脂が挙げられ、その具体例を挙げるとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、4−フッ化エチレン−パークロロアルコキシ共重合体(PFA)、4−フッ化エチレン−6−フッ化プロピレン共重合体(FEP)、2−エチレン−4−フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリ3−フッ化塩化エチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリフッ化ビニル(PVF)等が挙げられる。
なお、耐候性保護フィルム1は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。また、耐候性保護フィルム1は単層フィルムにより形成されていても良いが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
耐候性保護フィルム1の厚みは特に規定されないが、通常10μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まる傾向にある。
また耐候性保護フィルム1には、他のフィルムとの接着性の改良のために、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を行なってもよい。
耐候性保護フィルム1は、薄膜太陽電池100においてできるだけ外側に設けることが好ましい。薄膜太陽電池100の構成部材のうちより多くのものを保護できるようにするためである。
[紫外線カットフィルム2]
紫外線カットフィルム2は紫外線の透過を防止するフィルムである。
薄膜太陽電池100の構成部品のなかには紫外線により劣化するものがある。また、ガスバリアフィルム3,9などは種類によっては紫外線により劣化するものがある。そこで、紫外線カットフィルム2を薄膜太陽電池100の受光部分に設け、紫外線カットフィルム2で太陽電池素子6の受光面6aを覆うことにより、太陽電池素子6及び必要に応じてガスバリアフィルム3,9等を紫外線から保護し、発電能力を高く維持することができるようになっている。
紫外線カットフィルム2に要求される紫外線の透過抑制能力の程度は、紫外線(例えば、波長300nm)の透過率が50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、特に好ましくは10%以下である。
また、紫外線カットフィルム2は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、特に好ましくは95%以上である。
さらに、薄膜太陽電池100は光を受けて熱せられることが多いため、紫外線カットフィルム2も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、紫外線カットフィルム2の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点が低すぎると薄膜太陽電池100の使用時に紫外線カットフィルム2が融解する可能性がある。
また、紫外線カットフィルム2は、柔軟性が高く、隣接するフィルムとの接着性が良好であり、水蒸気や酸素をカットしうるものが好ましい。
紫外線カットフィルム2を構成する材料は、紫外線の強度を弱めることができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、エステル系の樹脂に紫外線吸収剤を配合して成膜したフィルムなどが挙げられる。また、紫外線吸収剤を樹脂中に分散あるいは溶解させたものの層(以下、適宜「紫外線吸収層」という)を基材フィルム上に形成したフィルムを用いても良い。
紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾル系、シアノアクリレート系のものを用いることができる。中でもベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系が好ましい。この例としては、ベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系の種々の芳香族系有機化合物などが挙げられる。なお、紫外線吸収剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
前記したように、紫外線吸収フィルムとしては紫外線吸収層を基材フィルム上に形成したフィルムを用いることもできる。このようなフィルムは、例えば、紫外線吸収剤を含む塗布液を基材フィルム上に塗布し、乾燥させることで作製できる。
基材フィルムの材質は特に限定されないが、耐熱性、柔軟性のバランスが良好なフィルムが得られる点で、例えばポリエステルが挙げられる。
塗布は任意の方法で行うことができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法、カーテンコート法などが挙げられる。また、これらの方法は1種を単独で行なってもよく、2種以上を任意に組み合わせて行うこともできる。
塗布液に用いる溶剤は、紫外線吸収剤を均一に溶解あるいは分散できるものであれば特
に限定されない。例えば液状の樹脂を溶剤として用いることができ、その例を挙げると、ポリエステル系、アクリル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリカ−ボネ−ト系、ポリスチレン系などの各種合成樹脂などが挙げられる。また、例えば、ゼラチン、セルロース誘導体などの天然高分子;水、水とエタノール等のアルコール混合溶液なども溶剤として用いることができる。さらに、溶剤として有機溶剤を使用してもよい。有機溶剤を使用すれば、色素や樹脂を溶解または分散させることが可能となり、塗工性を向上させることが可能となる。なお、溶剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
塗布液にはさらに界面活性剤も含有させてもよい。界面活性剤の使用により、紫外線吸収色素の樹脂への分散性が向上する。これにより、紫外線吸収層において、微小な泡によるヌケ、異物などの付着による凹み、乾燥工程でのハジキなどの発生が抑制される。
界面活性剤としては、公知の界面活性剤(カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤)を用いることができる。中でも、シリコン系界面活性剤またはフッ素系界面活性剤が好ましい。なお、界面活性剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
なお、塗布液を基材フィルムに塗布した後の乾燥は、例えば熱風乾燥、赤外線ヒーターによる乾燥など、公知の乾燥方法が採用できる。中でも、乾燥速度が速い熱風乾燥が好適である。
紫外線カットフィルム2の具体的な商品の例を挙げると、カットエース(MKVプラスティック株式会社)などが挙げられる。
なお、紫外線カットフィルム2は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。また、紫外線カットフィルム2は単層フィルムにより形成されていても良いが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
紫外線カットフィルム2の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることで紫外線の吸収が高まる傾向にあり、薄くすることで可視光の透過率を増加させられる傾向にある。
紫外線カットフィルム2は、太陽電池素子6の受光面6aの少なくとも一部を覆う位置に設ければよいが、好ましくは太陽電池素子6の受光面6aの全てを覆う位置に設ける。
ただし、太陽電池素子6の受光面6aを覆う位置以外の位置にも紫外線カットフィルム2が設けられていてもよい。
[ガスバリアフィルム3]
ガスバリアフィルム3は水及び酸素の透過を防止するフィルムである。
太陽電池素子6は湿気及び酸素に弱い傾向があり、特に、ZnO:Al等の透明電極や、化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子が水分及び酸素により劣化することがある。そこで、ガスバリアフィルム3で太陽電池素子6を被覆することにより、太陽電池素子6を水及び酸素から保護し、発電能力を高く維持することができる。
ガスバリアフィルム3に要求される防湿能力の程度は、太陽電池素子6の種類などに応じて様々である。例えば、太陽電池素子6が化合物半導体系太陽電池素子である場合には、単位面積(1m)の1日あたりの水蒸気透過率が、1×10−1g/m/day以下であることが好ましく、1×10−2g/m/day以下であることがより好ましく、1×10−3g/m/day以下であることが更に好ましく、1×10−4g/m/day以下であることが中でも好ましく、1×10−5g/m/day以下であることがとりわけ好ましく、1×10−6g/m/day以下であることが特に好ましい。
また、太陽電池素子6が有機太陽電池素子である場合には、単位面積(1m)の1日あたりの水蒸気透過率が、1×10−1g/m/day以下であることが好ましく、1×10−2g/m/day以下であることがより好ましく、1×10−3g/m/day以下であることが更に好ましく、1×10−4g/m/day以下であることが中でも好ましく、1×10−5g/m/day以下であることがとりわけ好ましく、1×10−6g/m/day以下であることが特に好ましい。水蒸気が透過しなければしないほど、太陽電池素子6及び当該素子6のZnO:Al等の透明電極の水分との反応に起因する劣化が抑えられるので、発電効率が上がると共に寿命が延びる。
ガスバリアフィルム3に要求される酸素透過性の程度は、太陽電池素子6の種類などに応じて様々である。例えば、太陽電池素子6が化合物半導体系太陽電池素子である場合には、単位面積(1m)の1日あたりの酸素透過率が、1×10−1cc/m/day/atm以下であることが好ましく、1×10−2cc/m/day/atm以下であることがより好ましく、1×10−3cc/m/day/atm以下であることが更に好ましく、1×10−4cc/m/day/atm以下であることが中でも好ましく、1×10−5cc/m/day/atm以下であることがとりわけ好ましく、1×10−6cc/m/day/atm以下であることが特に好ましい。また、例えば、太陽電池素子6が有機太陽電池素子である場合には、単位面積(1m)の1日あたりの酸素透過率が、1×10−1cc/m/day/atm以下であることが好ましく、1×10−2cc/m/day/atm以下であることがより好ましく、1×10−3cc/m/day/atm以下であることが更に好ましく、1×10−4cc/m/day/atm以下であることが中でも好ましく、1×10−5cc/m/day/atm以下であることがとりわけ好ましく、1×10−6cc/m/day/atm以下であることが特に好ましい。酸素が透過しなければしないほど、太陽電池素子6及び当該素子6のZnO:Al等の透明電極の酸化による劣化が抑えられる。
従来はこのように高い防湿及び酸素遮断能力を有するガスバリアフィルム3の実装が困難であったため、化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子のように優れた太陽電池素子を備えた太陽電池を実現することが困難であったが、このようなガスバリアフィルム3を適用することにより化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子等の優れた性質を活かした薄膜太陽電池100の実施が容易となる。
また、ガスバリアフィルム3は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、中でも好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、その中でも特に好ましくは97%以上である。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
さらに、薄膜太陽電池100は光を受けて熱せられることが多いため、ガスバリアフィルム3も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、ガスバリアフィルム3の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで薄膜太陽電池100の使用時にガスバリアフィルム3が融解・劣化する可能性を低減できる。
ガスバリアフィルム3の具体的な構成は、太陽電池素子6を水から保護できる限り任意である。ただし、ガスバリアフィルム3を透過しうる水蒸気や酸素の量を少なくできるフィルムほど製造コストが高くなるため、これらの点を総合的に勘案して適切なものを使用することが好ましい。
以下、ガスバリアフィルム3の構成について、例を挙げて説明する。
ガスバリアフィルム3の構成として好ましいものは2例が挙げられる。
一つ目の例は、プラスチックフィルム基材に無機バリア層を配置したフィルムである。この際、無機バリア層は、プラスチックフィルム基材の片面のみに形成してもよいし、プラスチックフィルム基材の両面に形成してもよい。両面に形成するときは、両面に形成する無機バリア層の数が、それぞれ一致していていもよく、異なっていてもよい。
二つ目の例は、プラスチックフィルム基材に、無機バリア層とポリマー層とが互いに隣接して配置された2層からなるユニット層が形成されたフィルムである。この際、無機バリア層とポリマー層とが互いに隣接して配置された2層からなるユニット層を1単位として、このユニット層が1単位(無機バリア層1層とポリマー層1層を合わせて1単位の意味)のみを形成しても良いが、2単位以上形成しても良い。例えば2〜5単位、積層してもよい。
ユニット層は、プラスチックフィルム基材の片面のみに形成してもよいし、プラスチックフィルム基材の両面に形成してもよい。両面に形成するときは、両面に形成する無機バリア層及びポリマー層の数が、それぞれ一致していていもよく、異なっていてもよい。また、プラスチックフィルム基材上にユニット層を形成する場合、無機バリア層を形成してからその上にポリマー層を形成してもよいし、ポリマー層を形成してから無機バリア層を形成してもよい。
(プラスチックフィルム基材)
ガスバリアフィルム3に使用されるプラスチックフィルム基材は、上記の無機バリア層及びポリマー層を保持しうるフィルムであれば特に制限はなく、ガスバリアフィルム3の使用目的等から適宜選択することができる。
プラスチックフィルム基材の材料の例を挙げると、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、アクリロイル化合物が挙げられる。また、スピロビインダン、スピロビクロマンを含む縮合ポリマーを用いるのも好ましい。ポリエステル樹脂の中でも、二軸延伸を施したポリエチレンテレフタレート(PET)、同じく二軸延伸したポリエチレンナフタレート(PEN)は、熱的寸度安定性に優れるため、プラスチックフィルム基材として好ましく用いられる。
なおプラスチックフィルム基材の材料は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
プラスチックフィルム基材の厚みは特に規定されないが、通常10μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まる傾向にある。
プラスチックフィルム基材は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、中でも好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、その中でも特に好ましくは97%以上である。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
プラスチックフィルム基材には、無機バリア層との密着性向上のため、アンカーコート剤の層(アンカーコート層)を形成してもよい。通常、アンカーコート層はアンカーコー
ト剤を塗布して形成される。アンカーコート剤としては、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート含有樹脂及びこれらの共重合体などが挙げられる。中でも、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂の1種類以上と、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート基含有樹脂の1種類以上とを組み合わせたものが好ましい。なお、アンカーコート剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
アンカーコート層の厚さは、通常0.005μm以上、好ましくは0.01μm以上であり、通常5μm以下、好ましくは1μm以下である。この範囲の上限値以下の厚さであれば滑り性が良好であり、アンカーコート層自体の内部応力によるプラスチックフィルム基材からの剥離もほとんどない。また、この範囲の下限値以上の厚さであれば、均一な厚さを保つことができ好ましい。
また、プラスチックフィルム基材へのアンカーコート剤の塗布性、接着性を改良するため、アンカーコート剤の塗布前に、プラスチックフィルム基材に通常の化学処理、放電処理などの表面処理を施してもよい。
(無機バリア層)
無機バリア層は通常は金属酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物により形成される層である。なお、無機バリア層を形成する金属酸化物、窒化物及び酸化窒化物は、1種でもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
金属酸化物としては、例えば、Si、Al、Mg、In、Ni、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、Ta等の酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物などが挙げられる。中でも、高いバリア性と高透明性とを両立させるために、酸化アルミニウムまたは酸化珪素を含むことが好ましく、特に水分の透過性、光線透過性の観点から、酸化珪素を含むことが好ましい。
各々の金属原子と酸素原子との比率も任意であるが、無機バリア層の透明度を向上させ着色を防ぐためには、酸素原子の比率が酸化物の化学量論的な比率から極端に少なくないことが望ましい。一方、無機バリア層の緻密性を向上させバリア性を高くするためには、酸素原子を少なくすることが望ましい。この観点から、例えば金属酸化物としてSiOを用いる場合には前記xの値は1.5〜1.8が特に好ましい。また、例えば金属酸化物としてAlOを用いる場合には前記xの値は1.0〜1.4が特に好ましい。
また、2種以上の金属酸化物より無機バリア層を構成する場合、金属酸化物としては酸化アルミニウムおよび酸化珪素を含むことが望ましい。中でも無機バリア層が酸化アルミニウムおよび酸化珪素からなる場合、無機バリア層中のアルミニウムとケイ素との比率は任意に設定することができるが、Si/Alの比率は、通常1/9以上、好ましくは2/8以上であり、また、通常9/1以下、好ましくは2/8以下である。
無機バリア層の厚みを厚くするとバリア性が高まる傾向にあるが、曲げた際にクラックを生じにくくし割れを防ぐためには、厚みを薄くすることが望ましい。そこで無機バリア層の適正な厚みとしては、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは200nm以下である。
無機バリア層の成膜方法に制限は無いが、一般的にスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などで行うことができる。例えばスパッタリング法では1種類のあるいは複数の金属ターゲットと酸素ガスを原料とし、プラズマを用いた反応性スパッタ方式で形成することができる。
(ポリマー層)
ポリマー層にはいずれのポリマーでも使用することができ、例えば真空チャンバー内で成膜できるものも用いることができる。なお、ポリマー層を構成するポリマーは、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
前記ポリマーを与える化合物としては多種多様なものを用いることができるが、例えば以下の(i)〜(vii)のようなものが例示される。なお、モノマーは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
(i)例えばヘキサメチルジシロキサン等のシロキサンが挙げられる。ヘキサメチルジシロキサンを用いる場合のポリマー層の形成方法の例を挙げると、RF電極を用いた平行平板型のプラズマ装置にヘキサメチルジシロキサンを蒸気として導入し、プラズマ中で重合反応を起こさせ、プラスチックフィルム基材上に堆積させることでポリマー層をポリシロキサン薄膜として形成できる。
(ii)例えばジパラキシリレン等のパラキシリレンが挙げられる。ジパラキシリレンを用いる場合のポリマー層の形成方法の例を挙げると、まず高真空中でジパラキシリレンの蒸気を650℃〜700℃で加熱することで熱分解させて熱ラジカルを発生させる。そして、そのラジカルモノマー蒸気をチャンバー内に導いて、プラスチックフィルム基材への吸着させると同時にラジカル重合反応を進行させてポリパラキシリレンを堆積させることでポリマー層を形成できる。
(iii)例えば二種のモノマーを交互に繰り返し付加重合させることができるモノマーが挙げられる。これにより得られるポリマーは重付加ポリマーである。重付加ポリマーとしては、例えば、ポリウレタン(ジイソシアナート/グリコール)、ポリ尿素(ジイソシアナート/ジアミン)、ポリチオ尿素(ジチオイソシアナート/ジアミン)、ポリチオエーテルウレタン(ビスエチレンウレタン/ジチオール)、ポリイミン(ビスエポキシ/第一アミン)、ポリペプチドアミド(ビスアゾラクトン/ジアミン)、ポリアミド(ジオレフィン/ジアミド)などが挙げられる。
(iv)例えばアクリレートモノマーが挙げられる。アクリレートモノマーには単官能、2官能、多官能のアクリレートモノマーがあるが、いずれを用いてもよい。ただし、適切な蒸発速度、硬化度、硬化速度等を得るために、前記のアクリレートモノマーを2種以上組み合わせて併用することが好ましい。
また、単官能アクリレートモノマーとしては、例えば脂肪族アクリレートモノマー、脂環式アクリレートモノマー、エーテル系アクリレートモノマー、環状エーテル系アクリレートモノマー、芳香族系アクリレートモノマー、水酸基含有アクリレートモノマー、カルボキシ基含有アクリレートモノマー等があるが、いずれも用いることができる。
(v)例えばエポキシ系やオキセタン系等の、光カチオン硬化ポリマーが得られるモノマーが挙げられる。エポキシ系モノマーとしては、例えば、脂環式エポキシ系モノマー、2官能性モノマー、多官能性オリゴマーなどが挙げられる。また、オキセタン系モノマーとしては、例えば、単官能オキセタン、2官能オキセタン、シルセスキオキサン構造を有するオキセタン等が挙げられる。
(vi)例えば酢酸ビニルが挙げられる。モノマーとして酢酸ビニルを用いると、その重合体をケン化することでポリビニルアルコールが得られ、このポリビニルアルコールをポリマーとして使用できる。
(vii)例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸などが挙げられる。これらは、エチレンとの共重合体を
構成させ、この共重合体をポリマーとして使用できる。さらに、これらの混合物、あるいはグリシジルエーテル化合物を混合した混合物、さらにはエポキシ化合物との混合物もポリマーとして用いることができる。
前記のモノマーを重合してポリマーを生成させる際、モノマーの重合方法に制限は無い。ただし、通常は、モノマーを含む組成物を塗布または蒸着して成膜した後で重合を行うようにする。重合方法の例を挙げると、熱重合開始剤を用いたときはヒーター等による接触加熱;赤外線、マイクロ波等の放射加熱;などにより重合を開始させる。また、光重合開始剤を用いたときは活性エネルギー線を照射して重合を開始させる。活性エネルギー線を照射する場合には様々な光源を使用することができ、例えば、水銀アークランプ、キセノンアークランプ、蛍光ランプ、炭素アークランプ、タングステンーハロゲン輻射ランプおよび日光による照射光などを用いることができる。また、電子線照射や大気圧プラズマ処理を行うこともできる。
ポリマー層の形成方法は、例えば、塗布法、真空成膜法等が挙げられる。
塗布法でポリマー層を形成する場合、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、カーテンフローコート、スプレーコート、バーコート等の方法を用いることができる。また、ポリマー層形成用の塗布液をミスト状で塗布するようにしてもよい。この場合の液滴の平均粒径は適切な範囲に調整すればよく、例えば重合性モノマーを含有する塗布液をミスト状でプラスチックフィルム基材上に成膜して形成する場合には、液滴の平均粒径は5μm以下、好ましくは1μm以下である。
他方、真空成膜法でポリマー層を形成する場合、例えば、蒸着、プラズマCVD等の成膜方法が挙げられる。
ポリマー層の厚みについては特に限定はないが、通常10nm以上であり、また、通常5000nm以下、好ましくは2000nm以下、より好ましくは1000nm以下である。ポリマー層の厚みを厚くすることで、厚みの均一性が得やすくなり無機バリア層の構造欠陥を効率よくポリマー層で埋めることができ、バリア性が向上する傾向にある。また、ポリマー層の厚みを薄くする事で、曲げ等の外力によりポリマー層自身がクラックを発生しにくくなるためバリア性が向上しうる。
中でも好適なガスバリアフィルム3としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)或いはポリエチレンナフタレート(PEN)等の基材フィルムにSiOを真空蒸着したフィルムなどが挙げられる。
なお、ガスバリアフィルム3は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。また、ガスバリアフィルム3は単層フィルムにより形成されていても良いが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
ガスバリアフィルム3の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることでガスバリア性が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まりまた可視光の透過率が向上する傾向にある。
ガスバリアフィルム3は、太陽電池素子6を被覆して湿気及び酸素から保護できればその形成位置に制限は無いが、太陽電池素子6の正面(受光面側の面。図2では下側の面)及び背面(受光面とは反対側の面。図2では上側の面)を覆うことが好ましい。薄膜太陽電池100においてはその正面及び背面が他の面よりも大面積に形成されることが多いためである。本実施形態ではガスバリアフィルム3が太陽電池素子6の正面を覆い、後述するガスバリアフィルム9が太陽電池素子6の背面を覆うようになっている。そして、ガス
バリアフィルム3,9の縁部をシール材11でシールし、ガスバリアフィルム3,9及びシール材11で囲まれた空間内に太陽電池素子6を納めることにより、太陽電池素子6を湿気及び酸素から保護できるようになっている。なお、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシートなど防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム8及び/又はガスバリアフィルム9を用いなくてもよい。
[ゲッター材フィルム4]
ゲッター材フィルム4は水分及び/又は酸素を吸収するフィルムである。太陽電池素子6の構成部品のなかには前記のように水分で劣化するものがあり、また、酸素によって劣化するものもある。そこで、ゲッター材フィルム4で太陽電池素子6を覆うことにより、太陽電池素子6等を水分及び/又は酸素から保護し、発電能力を高く維持するようにしている。
ここで、ゲッター材フィルム4は前記のようなガスバリアフィルム3とは異なり、水分の透過を妨げるものではなく、水分を吸収するものである。水分を吸収するフィルムを用いることにより、ガスバリアフィルム3等で太陽電池素子6を被覆した場合に、ガスバリアフィルム3,9及びシール材11で形成される空間に僅かに浸入する水分をゲッター材フィルム4が捕捉して水分による太陽電池素子6への影響を排除できる。
ゲッター材フィルム4の水分吸収能力の程度は、通常0.1mg/cm以上、好ましくは0.5mg/cm以上、より好ましくは1mg/cm以上である。この数値が高いほど水分吸収能力が高く太陽電池素子6の劣化を抑制しうる。また、上限に制限は無いが、通常10mg/cm以下である。
また、ゲッター材フィルム4が酸素を吸収することにより、ガスバリアフィルム3,9等で太陽電池素子6を被覆した場合に、ガスバリアフィルム3,9及びシール材11で形成される空間に僅かに浸入する酸素をゲッター材フィルム4が捕捉して酸素による太陽電池素子6への影響を排除できる。
さらに、ゲッター材フィルム4は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、中でも好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、その中でも特に好ましくは97%以上である。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
さらに、薄膜太陽電池100は光を受けて熱せされることが多いため、ゲッター材フィルム4も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、ゲッター材フィルム4の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで薄膜太陽電池100の使用時にゲッター材フィルム4が融解・劣化する可能性を低減できる。
ゲッター材フィルム4を構成する材料は、水分及び/又は酸素を吸収することができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、水分を吸収する物質としてアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、シリカゲル、ゼオライト系化合物、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸ニッケル等の硫酸塩、アルミニウム金属錯体、アルミニウムオキサイドオクチレート等の有機金属化合物などが挙げられる。具体的には、アルカリ土類金属としては、Ca、Sr、Baなどが挙げられる。アルカリ土類金属の酸化物としては、CaO、SrO、B
aO等が挙げられる。その他にZr−Al−BaOや、アルミニウム金属錯体等も挙げられる。具体的な商品名を挙げると、例えば、OleDry(双葉電子社製)等が挙げられる。
酸素を吸収する物質としては、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、モレキュラーシーブ、酸化マグネシウム、酸化鉄等が挙げられる。またFe、Mn、Zn、及びこれら金属の硫酸塩・塩化物塩・硝酸塩等の無機塩も挙げられる。
なお、ゲッター材フィルム4は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。また、ゲッター材フィルム4は単層フィルムにより形成されていても良いが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
ゲッター材フィルム4の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まる傾向にある。
ゲッター材フィルム4は、ガスバリアフィルム3,9及びシール材11で形成される空間内であればその形成位置に制限は無いが、太陽電池素子6の正面(受光面側の面。図2では下側の面)及び背面(受光面とは反対側の面。図2では上側の面)を覆うことが好ましい。薄膜太陽電池100においてはその正面及び背面が他の面よりも大面積に形成されることが多いため、これらの面を介して水分及び酸素が浸入する傾向があるからである。この観点から、ゲッター材フィルム4はガスバリアフィルム3と太陽電池素子6との間に設けることが好ましい。本実施形態ではゲッター材フィルム4が太陽電池素子6の正面を覆い、後述するゲッター材フィルム8が太陽電池素子6の背面を覆い、ゲッター材フィルム4,8がそれぞれ太陽電池素子6とガスバリアフィルム3,9との間に位置するようになっている。なお、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシートなど防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム8及び/又はガスバリアフィルム9を用いなくてもよい。
ゲッター材フィルム4は吸水剤又は乾燥剤の種類に応じて任意の方法で形成することができるが、例えば、吸水剤又は乾燥剤を分散したフィルムを粘着剤で添付する方法、吸水剤又は乾燥剤の溶液をスピンコート法、インクジェット法、ディスペンサー法等で塗布する方法などを用いることができる。また真空蒸着法、スパッタリング法などの成膜法を使用してもよい。
吸水剤又は乾燥剤のためのフイルムとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を用いることができる。中でも、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂のフィルムが好ましい。なお、前記樹脂は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
[封止材5]
封止材5は、太陽電池素子6を補強するフィルムである。太陽電池素子6は薄いため通常は強度が弱く、ひいては薄膜太陽電池の強度が弱くなる傾向があるが、封止材5により強度を高く維持することが可能である。
また、封止材5は、薄膜太陽電池100の強度保持の観点から強度が高いことが好ましい。
具体的強度については、封止材5以外の耐候性保護フィルム1やバックシート10の強
度とも関係することになり一概には規定しにくいが、薄膜太陽電池100全体が良好な曲げ加工性を有し、折り曲げ部分の剥離を生じないような強度を有するのが望ましい。
また、封止材5は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、中でも好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、その中でも特に好ましくは97%以上である。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
さらに、薄膜太陽電池100は光を受けて熱せられることが多いため、封止材5も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、封止材5の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで薄膜太陽電池100の使用時に封止材5が融解・劣化する可能性を低減できる。
封止材5の厚みは特に規定されないが、通常100μm以上、好ましくは150μm以上、より好ましくは200μm以上であり、また、通常700μm以下、好ましくは600μm以下、より好ましくは500μm以下である。厚みを厚くすることで薄膜太陽電池100全体の強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まりまた可視光の透過率が向上する傾向にある。
封止材5を構成する材料としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂組成物をフィルムにしたもの(EVAフィルム)などを用いることができる。EVAフィルムには通常は耐候性の向上のために架橋剤を配合して架橋構造を構成させる。この架橋剤としては、一般に、100℃以上でラジカルを発生する有機過酸化物が用いられる。このような有機過酸化物としては、例えば、2,5−ジメチルヘキサン;2,5−ジハイドロパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン;3−ジ−t−ブチルパーオキサイド等を用いることができる。これらの有機過酸化物の配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下であり、通常1重量部以上である。なお、架橋剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
このEVA樹脂組成物には、接着力向上の目的で、シランカップリング剤を含有させてもよい。この目的に供されるシランカップリング剤としては、例えば、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン;ビニルトリクロロシラン;ビニルトリエトキシシラン;ビニル−トリス−(β−メトキシエトキシ)シラン;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;β−(3,4−エトキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらのシランカップリング剤の配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常5重量部以下、好ましくは2重量部以下であり、通常0.1重量部以上である。なお、シランカップリング剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
更に、EVA樹脂のゲル分率を向上させ、耐久性を向上するために、EVA樹脂組成物に架橋助剤を含有させてもよい。この目的に供される架橋助剤としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアネート等の3官能の架橋助剤等の単官能の架橋助剤等が挙げられる。これらの架橋助剤の配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下であり、また、通常1重量部以上である。なお、架橋助剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
更に、EVA樹脂の安定性を向上する目的で、EVA樹脂組成物に、例えばハイドロキノン;ハイドロキノンモノメチルエーテル;p−ベンゾキノン;メチルハイドロキノンなどを含有させてもよい。これらの配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常5重量部以下である。
しかし、EVA樹脂の架橋処理には1〜2時間程度の比較的長時間を要するため、薄膜太陽電池100の生産速度および生産効率を低下させる原因となる場合がある。また、長期間使用の際には、EVA樹脂組成物の分解ガス(酢酸ガス)またはEVA樹脂自体が有する酢酸ビニル基が、太陽電池素子6に悪影響を与えて発電効率が低下させる場合がある。そこで、封止材5としては、EVAフィルムの他に、プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体からなる共重合体のフィルムを用いることもできる。この共重合体としては、例えば、下記成分1および成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物が挙げられる。
・成分1:プロピレン系重合体が、通常0重量部以上、好ましくは10重量部以上であり、また、通常70重量部以下、好ましくは50重量部以下。
・成分2:軟質プロピレン系共重合体が、30重量部以上、好ましくは50重量部以上であり、また、通常100重量部以下、好ましくは90重量部以下。
なお、成分1および成分2の合計量は100重量部である。上記のように、成分1および成分2が好ましい範囲にあると、封止材5のシートへの成形性が良好であるとともに、得られる封止材5の耐熱性、透明性および柔軟性が良好となり、薄膜太陽電池100に好適である。
上記の成分1および成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物は、メルトフローレート(ASTM D 1238、230度、荷重2.16kg)が、通常0.0001g/10分以上であり、また、通常1000g/10分以下、好ましくは900g/10分以下、より好ましくは800g/10分以下である。
成分1および成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物の融点は、通常100℃以上、好ましくは110℃以上である。また通常140℃以下、好ましくは135℃以下である。
また成分1および成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物の密度は、0.98g/cm以下が好ましく、0.95g/cm以下がより好ましく、0.94g/cm以下がさらに好ましい。
この封止材5においては、上記成分1および成分2に、プラスチックなどに対する接着促進剤としてカップリング剤を配合することが可能である。カップリング剤は、シラン系、チタネート系、クロム系の各カップリング剤が好ましく用いられ、特にシラン系のカップリング剤(シランカップリング剤)が好適に用いられる。
上記シランカップリング剤としては公知のものが使用でき、特に制限はないが、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシーエトキシシラン)、γ−グリシドキシプロピルートリピルトリーメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。なお、カップリング剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、これらは熱可塑性樹脂組成物(成分1および成分2の合計量)100重量部に対して、上記シランカップリング剤を通常0.1重量部以上、また、通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下含むことが望ましい。
また、上記カップリング剤は、有機過酸化物を用いて、当該熱可塑性樹脂組成物にグラフト反応させてもよい。この場合、熱可塑性樹脂組成物(成分1および成分2の合計量)100重量部に対して、上記カップリング剤を0.1〜5重量部含むことが望ましい。シラングラフト化された熱可塑性樹脂組成物を用いても、ガラス、プラスチックに対して、
シランカップリング剤ブレンドと同等以上の接着性が得られる。
有機過酸化物を用いる場合、有機過酸化物は、熱可塑性樹脂組成物(成分1および成分2の合計量)100重量部に対して、通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、また、通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下である。
また、封止材5としてエチレン・α−オレフィン共重合体からなる共重合体を用いることもできる。この共重合体としては、下記に示す成分Aおよび成分Bからなる封止材用樹脂組成物と基材とを積層してなる、ホットタック性が5〜25℃のラミネートフィルムが例示される。
・成分A:エチレン系樹脂。
・成分B:以下の(a)〜(d)の性状を有するエチレンとα−オレフィンとの共重合体。
(a)密度が0.86〜0.935g/cm
(b)メルトフローレート(MFR)が1〜50g/10分。
(c)温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線のピークが1つであり;該ピーク温度が100℃以下である。
(d)温度上昇溶離分別(TREF)による積分溶出量が、90℃のとき90%以上である。
成分Aと成分Bとの配合割合(成分A/成分B)は、重量比で、通常50/50以上、好ましくは55/45以上、より好ましくは60/40以上であり、また、通常99/1以下、好ましくは90/10以下、より好ましくは85/15以下である。成分Bの配合量を多くすることで透明性やヒートシール性が高まる傾向にあり、成分Bの配合量を少なくすることでフィルムの作業性が高まる傾向にある。
成分Aと成分Bを配合して生成される封止材用樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は、通常2g/10分以上、好ましくは3g/10分以上であり、通常50g/10分以下、好ましくは40g/10分以下である。なおMFRの測定と評価は、JIS K7210(190℃、2.16kg荷重)に準拠する方法によって実施することができる。
封止材用樹脂組成物の融点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上であり、また、通常300℃以下、好ましくは250℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。融点を高くすることで薄膜太陽電池100の使用時に融解・劣化する可能性を低減できる。
封止材用樹脂組成物の密度は、0.80g/cm以上が好ましく、0.85g/cm以上がより好ましく、また、0.98g/cm以下が好ましく、0.95g/cm以下がより好ましく、0.94g/cm以下がさらに好ましい。なお、密度の測定と評価は、JIS K7112に準拠する方法によって実施することができる。
さらに、エチレン・α−オレフィン共重合体を用いた封止材5において、前記プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体を用いた場合と同様に、カップリング剤を用いることが可能である。
上述した封止材5は、材料由来の分解ガスを発生することがないため、太陽電池素子6への悪影響がなく、良好な耐熱性、機械強度、柔軟性(太陽電池封止性)および透明性を有する。また、材料の架橋工程を必要としないため、シート成形時および薄膜太陽電池100の製造時間が大きく短縮できるとともに、使用後の薄膜太陽電池100のリサイクルも容易となる。
なお、封止材5は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。また、封止材5は単層フィルムにより形成されていても良いが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
封止材5の厚みは、通常2μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また、通常500μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは100μm以下である。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まりまた光線透過率が高まる傾向にある。
封止材5を設ける位置に制限は無いが、通常は太陽電池素子6を挟み込むように設ける。太陽電池素子6を確実に保護するためである。本実施形態では、太陽電池素子6の正面及び背面にそれぞれ封止材5及び封止材7を設けるようにしている。
[太陽電池素子6]
太陽電池素子6は、光を受けて発電する素子である。本発明の太陽電池素子は有機太陽電池素子である。有機太陽電池素子とは、構成材料として有機半導体を有する太陽電池素子をいう。
前記の有機半導体は、通常、太陽電池素子6を構成する層のうちの少なくとも1つに含有され、太陽電池素子6は当該半導体を含有する層で光を吸収して電気が発生するようになっている。具体的な太陽電池素子6の構成を以下に例を挙げて説明する。ただし、本発明に係る太陽電池素子6は以下に説明する例に限定されるものではない。
例えば、有機太陽電池素子は、少なくとも、一対の電極間に活性層を備えて構成される。このような構成の太陽電池素子では、活性層において光が吸収されて電気が発生し、発生した電気が電極から取り出されるようになっている。
・電極
電極は、導電性を有する任意の材料により形成することが可能である。電極の材料の例を挙げると、白金、金、銀、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属あるいはそれらの合金;酸化インジウムや酸化錫等の金属酸化物、あるいはその合金(ITO);ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン等の導電性高分子;前記導電性高分子に、塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、FeCl等のルイス酸、ヨウ素等のハロゲン原子、ナトリウム、カリウム等の金属原子などのドーパントを含有させたもの;金属粒子、カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ等の導電性粒子をポリマーバインダー等のマトリクスに分散した導電性の複合材料などが挙げられる。なお、電極の材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、太陽電池素子6において、電極は少なくとも一対(2個)設けられる。この際、一対の電極のうち、少なくとも受光面側の電極は、発電のために光を透過させるため透明であるようにすることが好ましい。但し、発電層の面積に比べて電極の面積が小さいなど、電極が透明でなくても発電性能に著しく悪影響を与えない場合は必ずしも透明でなくてもよい。透明な電極の材料を挙げると、例えば、ITO、酸化インジウム亜鉛(IZO)等の酸化物;金属薄膜などが挙げられる。また、この際、光の透過率の具体的範囲に制限は無いが、太陽電池素子6の発電効率を考慮すると、80%以上が好ましい。なお、光の透過率は、通常の分光光度計で測定可能できる。
電極は、光吸収により生じた正孔及び電子を捕集する機能を有するものである。したがって、電極には、正孔及び電子を捕集するのに適した電極材料を用いることが好ましい。正孔の捕集に適した電極の材料を挙げると、例えば、Au、ITO等の高い仕事関数を有する材料が挙げられる。一方、電子の捕集に適した電極の材料を挙げると、例えば、Alのような低い仕事関数を有する材料が挙げられる。
なお、電極の形成方法に制限はない。例えば、真空蒸着、スパッタ等のドライプロセスにより形成することができる。また、例えば、導電性インク等を用いたウェットプロセスにより形成することもできる。この際、導電性インクとしては任意のものを使用することができ、例えば、導電性高分子、金属粒子分散液等を用いることができる。
さらに、電極は2層以上積層してもよく、表面処理による特性(電気特性やぬれ特性等)を改良してもよい。
・活性層
活性層は、半導体を含有する層であり、光を吸収して電荷を分離する層である。この活性層は、単層の膜のみによって構成されていてもよく、2以上の積層膜によって構成されていても良い。有機太陽電池素子においては、前記の半導体のうち少なくとも1種、好ましくは全てとして有機半導体を用いる。
少なくともp型の半導体及びn型の半導体が含有されていれば、活性層の具体的な構成は任意である。例えば、n型の半導体とp型の半導体とを別々の膜に含有させるようにしても良く、n型の半導体とp型の半導体とを同じ膜に含有させても良い。また、n型の半導体及びp型の半導体は、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
本発明のチアジアゾール含有高分子は半導体として用いることができる。
さらに、有機半導体は、通常、粒子状、ファイバー状等の凝集状態で存在する。この際、半導体の粒径は、通常2nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常10μm以下、好ましくは1μm以下である。有機太陽電池素子においてはこのような小粒径の粒子を活性層内で良好に分散させることが可能である。
活性層においては、p型半導体とn型半導体とが相分離して、活性層が相分離構造を有していることが好ましい。活性層が相分離構造を有している場合には、光照射によりキャリア分離が起こり、正孔と電子とが生じた後で、それらが再結合することなく電極にたどりつく確率を高くすることが期待できるからである。このような相分離構造は、半導体として有機半導体と無機半導体とを組み合わせて用いた場合に好適に実現できる。
なお、相分離構造とは、相を構成する材料(例えば、半導体等)が分子レベルで均一に混合しておらず、それぞれの材料が凝集状態をとっている構造であり、その凝集状態の間に界面を有するものである。この相分離構造は、光学顕微鏡、あるいは電子顕微鏡、原子間力顕微鏡(AFM)等の局所的な構造を調べる手法で観察したり、X線回折で、凝集部分に由来する回折を観察したりして確認することができる。
活性層の具体的な構成は、その有機太陽電池素子のタイプにより様々である。活性層の構成の例を挙げると、バルクヘテロ接合型、積層型(ヘテロpn接合型)、ショットキー型などが挙げられる。
バルクヘテロ接合型は、単一の活性層内に、p型の半導体とn型の半導体とを含んで構成されている。そして、p型の半導体とn型の半導体とが相分離した相分離構造となっていて、当該相の界面でキャリア分離が起こり、各相において正電荷(正孔)と負電荷(電子)とが分離、輸送されるものである。
バルクヘテロ接合型の活性層において、その相分離構造は、光吸収過程、励起子の拡散過程、励起子の解離(キャリア分離)過程、キャリア輸送過程などに対する影響がある。したがって、相分離構造を最適化することにより、良好な光電変換効率を実現することができるものと考えられる。
積層型(ヘテロpn接合型)は、活性層が2以上の膜から構成されていて、少なくとも一つの膜がp型の半導体を含有して形成され、他の膜がn型の半導体を含有して形成されているものである。そして、当該p型の半導体を含有する膜とn型の半導体を含有する膜との境界にはp型の半導体とn型の半導体との相界面が形成されて、当該相界面でキャリア分離が起こるようになっている。
また、バルクヘテロ接合型と積層型とを組み合わせることも可能である。例えば、活性層を2以上の膜から構成すると共に、それらの膜の少なくとも一つにp型及びn型の両方の半導体を含有させるとともに、p型の半導体とn型の半導体とが相分離するように構成するのである。この場合、積層した膜間に形成される相界面、及び、p型及びn型の両方の半導体を含有した膜内におけるp型の半導体とn型の半導体との相界面の両方でキャリア分離が生じるようになっている。或いは、この場合、例えば積層した膜間において一方のキャリアをブロックして、電気取り出し効率を向上させることも期待されている。
ショットキー型は、電極近傍にショットキー障壁が形成され、この部分の内部電場でキャリア分離を行なうものである。電極としてショットキー障壁を形成するものを用いればその活性層の構成に制限は無い。ショットキー型における活性層の具体的な構成は、前記のバルクヘテロ接合型、積層型及び両者を組み合わせた型のいずれを採用することも可能であり、特に高い特性(例えば、変換効率など)が期待できる。
なお有機太陽電池素子においては、活性層に少なくとも1種の有機半導体を用いるが、この他に無機物質を含んでいてもよい(以下、これをハイブリッド型と称する)。
ハイブリッド型は、活性層が無機物質及び有機物質を共に含有して形成されるものである。この際、少なくとも1種の有機半導体を含有する以外は、ハイブリッド型の活性層が含有する無機物質及び有機物質は半導体特性を有していないものでもよいが、半導体特性を有しているもの(即ち、無機半導体及び有機半導体)を使用することが好ましい。例えば、ハイブリッド型に用いる有機半導体としてはペリレン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、ポルフィリン顔料等が挙げられ、無機半導体としてはチタニア、酸化亜鉛等が挙げられる。
ハイブリッド型の活性層の層構成の具体例を挙げると、バルクヘテロ接合型の活性層において、p型及びn型の半導体の一方として無機物質を使用すると共に他方として有機物質を使用した場合、p型及びn型の半導体の一方又は両方として無機物質及び有機物質を使用した場合などが挙げられる。これにより、活性層は、無機半導体と有機半導体との混合膜として構成され、有機太陽電池素子の高効率化が期待できる。
・太陽電池素子同士の接続
太陽電池素子6は、薄膜太陽電池100の1個あたり1個だけを設けてもよいが、通常は2個以上の太陽電池素子6を設ける。具体的な太陽電池素子6の個数は任意に設定すればよい。太陽電池素子6を複数設ける場合、太陽電池素子6はアレイ状に並べて設けられていることが多い。
太陽電池素子6を複数設ける場合、通常は、太陽電池素子6同士は電気的に接続され、接続された一群の太陽電池素子6から生じた電気を端子(図示せず)から取り出すようになっていて、この際、電圧を高めるため通常は太陽電池素子は直列に接続される。
このように太陽電池素子6同士を接続する場合には、太陽電池素子6間の距離は小さいことが好ましく、ひいては、太陽電池素子6と太陽電池素子6との間の隙間は狭いことが好ましい。太陽電池素子6の受光面積を広くして受光量を増加させ、薄膜太陽電池100の発電量を増加させるためである。
[封止材7]
封止材7は、上述した封止材5と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他は封止材7と同様のものを同様に用いることができる。
また、太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
[ゲッター材フィルム8]
ゲッター材フィルム8は、上述したゲッター材フィルム4と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他はゲッター材フィルム4と同様のものを同様に必要に応じて用いることができる。
また、太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。また使用する水分あるいは酸素吸収剤をゲッター材フィルム4よりも多く含有するフィルムを用いることも可能となる。このような吸収剤としては、水分吸収剤としてCaO、BaO、Zr−Al−BaO、酸素の吸収剤として活性炭、モレキュラーシーブなどが挙げられる。
[ガスバリアフィルム9]
ガスバリアフィルム9は、上述したガスバリアフィルム3と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他はガスバリアフィルム9と同様のものを同様に必要に応じて用いることができる。
また、太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
[バックシート10]
バックシート10は、上述した耐候性保護フィルム1と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他は耐候性保護フィルム1と同様のものを同様に用いることができる。また、このバックシート10が水及び酸素を透過させ難いものであれば、バックシート10をガスバリア層として機能させることも可能である。
また、太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。このため、バックシート10としては、以下に説明するもの(i)〜(iv)を用いることが特に好ましい。
(i)バックシート10としては、強度に優れ、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性に優れた各種の樹脂のフィルムないしシートを使用することができる。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリルースチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、その他等の各種の樹脂のシートを使用することができる。これらの樹脂のシートの中でも、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂のシートを使用することが好ましい。なお、これらは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(ii)バックシート10としては、金属薄膜を用いることもできる。例えば、腐蝕防止したアルミニウム金属箔、ステンレス製薄膜などが挙げられる。なお、前記の金属は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
(iii)バックシート10としては、例えばアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フイルムを接着した防水性の高いシートを用いても良い。フッ素系樹脂としては、例えば、一弗化エチレン(商品名:テドラー,デュポン社製)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマー(ETFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、フッ化ビニル系樹脂(PVF)等が挙げられる。なお、フッ素系樹脂は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
(iv)バックシート10としては、例えば、基材フィルムの片面あるは両面に、無機酸化物の蒸着膜を設け、更に、上記の無機酸化物の蒸着膜を設けた基材フィルムの両面に、耐熱性のポリプロピレン系樹脂フィルムを積層したものを用いてもよい。なお、通常は、基材フィルムにポリプロピレン系樹脂フィルムを積層する場合には、ラミネート用接着剤で張り合わせることで積層する。無機酸化物の蒸着膜を設けることで、水分、酸素等の侵入を防止する防湿性に優れたバックシート10として使用できる。
・基材フィルム
基材フィルムとしては、基本的には、無機酸化物の蒸着膜等との密接着性に優れ、強度に優れ、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性に優れた各種の樹脂のフィルムを使用することができる。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリルースチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、その他等の各種の樹脂のフィルムを使用することができる。中でも、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、または、ポリエステル系樹脂のフィルムを使用することが好ましい。
上記のような各種の樹脂のフィルムのなかでも、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、または、フッ化ビニル系樹脂(PVF)等のフッ素系樹脂のフィルムを使用することがより好ましい。更に、このフッ素系樹脂のフィルムの中でも、特に、ポリフッ化ビニル系樹脂(PVF);テトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマー(ETFE)からなるフッ素系樹脂のフィルムが、強度等の観点から特に好ましい。なお、前記樹脂は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、上記のような各種の樹脂のフィルムのなかでも、シクロペンタジエン及びその誘導体、シクロヘキサジエン及びその誘導体等の環状ポリオレフィン系樹脂のフィルムを使用することもより好ましい。
基材フィルムの膜厚としては、通常12μm以上、好ましくは20μm以上であり、また、通常300μm以下、好ましくは200μm以下である。
・無機酸化物の蒸着膜
無機酸化物の蒸着膜としては、基本的に金属の酸化物を蒸着した薄膜であれば使用可能である。例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、の酸化物の蒸着膜を使用することができる。この際、酸化ケイ素としては例えばSiO(x=1.0〜2.0)を用いることができ、酸化アルミニウムとしては例えばAlO(x=0.5〜1.5)を用いることができる。
なお、使用する金属及び無機酸化物の種類は1種でもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
無機酸化物の蒸着膜の膜厚としては、通常50Å以上、好ましくは100Å以上であり、また、通常4000Å以下、好ましくは1000Å以下である。
蒸着膜の作製方法としては、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を用いることができる。具体例を挙げると、基材フィルムの一方の面に、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
・ポリプロピレン系樹脂フィルム
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体;プロピレンと他のモノマー(例えばα−オレフィン等)との共重合体を使用することができる。また、ポリプロピレン系樹脂としては、アイソタクチック重合体を用いることもできる。
ポリプロピレン系樹脂の融点は通常164℃〜170℃であり、比重は通常0.90〜0.91であり、分子量は通常10万〜20万である。
ポリプロピレン系樹脂は、その結晶性により性質が大きく支配されるが、アイソタクチックの高いポリマーは、引っ張り強さ、衝撃強度に優れ、耐熱性、耐屈曲疲労強度を良好であり、かつ、加工性は極めて良好なものである。
・接着剤
基材フィルムにポリプロピレン系樹脂フィルムを積層する場合には、通常はラミネート用接着剤を用いる。これにより、基材フィルムとポリプロピレン系樹脂フィルムとはラミネート用接着剤層を介して積層されることになる。
ラミネート用接着剤層を構成する接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、アミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、シリコーン系接着剤等が挙げられる。なお、接着剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
上記の接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型等のいずれの組成物形態でもよい。また、その性状は、フィルム・シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよい。さらに、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれの形態でもよいものである。
上記の接着剤は、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、その他等のコート法、あるいは、印刷法等によって施すことができる。そのコーティング量としては、乾燥状態で0.1g/m〜10g/mが望ましい。
[シール材11]
シール材11は、上述した耐候性保護フィルム1、紫外線カットフィルム2、ガスバリアフィルム3、ゲッター材フィルム4、封止材5、封止材7、ゲッター材フィルム8、ガスバリアフィルム9及びバックシート10の縁部をシールして、これらのフィルムで被覆された空間内に湿気及び酸素が浸入しないようにシールする部材である。
シール材11に要求される防湿能力の程度は、単位面積(1m)の1日あたりの水蒸気透過率が0.1g/m/day以下であることが好ましく、0.05g/m/day以下であることがより好ましい。従来はこのように高い防湿能力を有するシール材11の実装が困難であったため、化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子のように優れた太陽電池素子を備えた太陽電池を実現することが困難であったが、このようなシール材11を適用することにより化合物半導体系太陽電池素子及び有機太陽電池素子の優れた性質を活かした薄膜太陽電池100の実施が容易となる。
さらに、薄膜太陽電池100は光を受けて熱せされることが多いため、シール材11も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、シール材11の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常250℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。融点が低すぎると薄膜太陽電池100の使用時にシール材11が融解する可能性がある。
シール材11を構成する材料としては、例えば、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、アクリル系樹脂等のポリマーが挙げられる。
なお、シール材11は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。
シール材11は、少なくともガスバリアフィルム3,9の縁部をシールできる位置に設ける。これにより、少なくともガスバリアフィルム3,9及びシール材11で囲まれた空間を密閉し、この空間内に湿気及び酸素が侵入しないようにすることができる。
このシール材11を形成する方法に制限は無いが、例えば、材料を耐候性保護フィルム1とバックシート10との間に注入することにより形成できる。形成方法の具体例を挙げると、以下の方法が挙げられる。
即ち、例えば封止材5の硬化が進行する途中で、半硬化状態の薄膜太陽電池100を前記ラミネート装置から取り出し、太陽電池素子6の外周部であって耐候性保護シート1とバックシート10との間の部分に液状のポリマーを注入し、このポリマーを封止材5と共に硬化させればよい。また、封止材5の硬化が終了した後にラミネート装置から取り出して単独で硬化させてもよい。なお、前記のポリマーを架橋・硬化させるための温度範囲は通常130℃以上、好ましくは140℃以上であり、通常180℃以下、好ましくは170℃以下である。
[寸法等]
本実施形態の薄膜太陽電池100は、通常、膜状の薄い部材である。このように膜状の部材として薄膜太陽電池100を形成することにより、薄膜太陽電池100を建材、自動車、インテリア等に容易に設置できるようになっている。薄膜太陽電池100は、軽く、割れにくく、従って安全性の高い太陽電池が得られ、また曲面にも適用可能であるため更に多くの用途に使用しうる。薄くて軽いため輸送や保管など流通面でも好ましい。更に、膜状であるためロール・トゥ・ロール式の製造が可能であり大幅なコストカットが可能である。
薄膜太陽電池100の具体的な寸法に制限は無いが、その厚みは、通常300μm以上、好ましくは500μm以上、より好ましくは700μm以上であり、また、通常3000μm以下、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1500μm以下である。
[製造方法]
本実施形態の薄膜太陽電池100の製造方法に制限は無いが、例えば、耐候性保護フィルム1とバックシート10との間に、1個又は2個以上の太陽電池素子6を直列または並列接続したものを、紫外線カットフィルム2、ガスバリアフィルム3,9、ゲッター材フ
ィルム4,8及び封止材5,7と共に一般的な真空ラミネート装置でラミネートすることで製造できる。この際、加熱温度は通常130℃以上、好ましくは140℃以上であり、通常180℃以下、好ましくは170℃以下である。また、加熱時間は通常10分以上、好ましくは20分以上であり、通常100分以下、好ましくは90分以下である。圧力は通常0.001MPa以上、好ましくは0.01MPa以上であり、通常0.2MPa以下、好ましくは0.1MPa以下である。圧力をこの範囲とすることで封止を確実に行い、かつ、端部からの封止材5,7がはみ出しや過加圧による膜厚低減を抑え、寸法安定性を確保しうる。
[用途]
上述した薄膜太陽電池100の用途に制限はなく任意である。例えば、図3に模式的に示すように、何らかの基材12上に薄膜太陽電池100を設けた太陽電池ユニット13を用意し、これを使用場所に設置して用いればよい。具定例を挙げると、基材12として建材用板材を使用した場合、この板材の表面に薄膜太陽電池100を設けて太陽電池ユニット13として太陽電池パネルを作製し、この太陽電池パネルを建物の外壁等に設置して使用すればよい。
基材12は太陽電池素子6を支持する支持部材である。基材12を形成する材料としては、例えば、ガラス、サファイア、チタニア等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂フィルム、塩化ビニル、ポリエチレン、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリノルボルネン等の有機材料;紙、合成紙等の紙材料;ステンレス、チタン、アルミニウム等の金属に、絶縁性を付与するために表面をコート或いはラミネートしたもの等の複合材料;などが挙げられる。なお、基材の材料は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。また、これら有機材料あるいは紙材料に炭素繊維を含ませ、機械的強度を補強させても良い。
本発明の薄膜太陽電池を適用する分野の例を挙げると、建材用太陽電池、自動車用太陽電池、インテリア用太陽電池、鉄道用太陽電池、船舶用太陽電池、飛行機用太陽電池、宇宙機用太陽電池、家電用太陽電池、携帯電話用太陽電池、玩具用太陽電池などに用いて好適である。具体例として以下のようなものを挙げることができる。
1.建築用途
1.1ハウス屋根材として太陽電池
基材として屋根用板材等を使用した場合、この板材の表面に薄膜太陽電池を設けて太陽電池ユニットとして太陽電池パネルを作製し、この太陽電池パネルをハウスの屋根の上に設置して使用すればよい。また、基材として瓦を直接用いることもできる。本発明の太陽電池が柔軟性を有するという特性を生かし、瓦の曲線に密着させることができるので好適である。
1.2屋上
ビルの屋上に取り付けることもできる。基材上に薄膜太陽電池を設けた太陽電池ユニットを用意し、これをビルの屋上に設置することもできる。この時基材とともに防水シートを併用し、防水作用を有するのが望ましい。さらに、本発明の薄膜太陽電池が柔軟性を有するという特性を生かし、平面ではない屋根、例えば折半屋根に密着させることもできる。この場合も防水シートを併用するのが望ましい。
1.3トップライト
エントランスや吹き抜け部分に外装として本発明の薄膜太陽電池を用いることもできる
。何らかのデザイン処理を施されたエントランス等は曲線が用いられている場合が多く、そのような場合において本発明の薄膜太陽電池の柔軟性が生かされる。またエントランス等ではシースルーである場合があり、このような場合には、有機太陽電池の緑色系の色合いが、環境対策が重要視される時代において意匠的な美観も得られるので好適である。
1.4壁
基材として建材用板材を使用した場合、この板材の表面に薄膜太陽電池を設けて太陽電池ユニットとして太陽電池パネルを作製し、この太陽電池パネルを建物の外壁等に設置して使用すればよい。また、カーテンウオールに設置することもできる。その他、スパンドレルや方立等への取り付けも可能である。
この場合、基材の形状に制限はないが、通常は板材を使用する。また、基材の材料、寸法等は、その使用環境に応じて任意に設定すればよい。このような基材の例を挙げると、アルポリック(登録商標;三菱樹脂製)などが挙げられる。
1.5窓
また、シースルーの窓に使用することもできる。有機太陽電池の緑色系の色合いが、環境対策が重要視される時代において意匠的な美観も得られるので好適である。
1.6その他
その他建築の外装としてひさし、ルーバー、手摺等にも使用できる。このような場合においても、本発明の薄膜太陽電池の柔軟性が、これら用途にとり好適である。
2.内装
本発明の薄膜太陽電池はブラインドのスラットに取り付けることもできる。本発明の薄膜太陽電池は軽量であり、柔軟性に富むことから、このような用途が可能となる。また、内容用窓についても有機太陽電池素子がシースルーである特性を生かし使用することができる。
3.野菜工場
蛍光灯などの照明光を活用する植物工場の設置件数は増えているが,照明に掛かる電気代や光源の交換費用などによって栽培コストを引き下げにくいというのが現状である。そこで本発明の薄膜太陽電池を野菜工場に設置し、LEDまたは蛍光灯と組み合わせた照明システムを作製することができる。
このとき蛍光灯よりも寿命が長いLEDと本発明の太陽電池を組み合わせた照明システムを用いることで、照明に要するコストを現状に比べて30%程度減らせることができるので好適である。
また、野菜等を一定温度で輸送するリーファー・コンテナ (reefer container)の屋根や側壁に本発明の太陽電池を用いることもできる。
4.道路資材・土木
本発明の薄膜太陽電池は、駐車場の外壁や高速道路の遮音壁や浄水場の外壁等にも用いることができる。
5.自動車
本発明の薄膜太陽電池は、自動車のボンネット、ルーフ、トランクリッド、ドア、フロントフェンダー、リアフェンダー、ピラー、バンパー、バックミラーなどの表面に用いることができる。得られた電力は走行用モータ、モータ駆動用バッテリー、電装品及び電装品用バッテリーのいずれに供給することができる。太陽電池パネルにおける発電状況と該走行用モータ、該モータ駆動用バッテリー、該電装品及び該電装品用バッテリーにおける電力使用状況とに合わせて選択する制御手段とを備えることで、得られた電力が適正にかつ効率的に使用することができる
前記の場合、基材12の形状に制限はないが、通常は板材を使用する。また、基材12の材料、寸法等は、その使用環境に応じて任意に設定すればよい。
このような基材12の例を挙げると、アルポリック(登録商標;三菱樹脂製)などが挙げられる。
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の例に限定されるものではない。
なお、以下において、各種分析測定方法の詳細は次の通りである。
<重量平均分子量>
ポリスチレン換算の数平均分子量および重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により求めた。カラムとして、Shim−pack GPC−803、GPC−804(島津製作所製、内径8.0mm、長さ30cm)をそれぞれ1本ずつ直列に繋げて用いた。検出器として示差屈折率検出器(島津製作所製:RID−10A)を用いた。高分子をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、得られた溶液50mLをカラムに注入した。移動相としてTHFを用い、1.0ml/minの流速で測定を行なった。
<溶解度>
25℃におけるクロルベンゼンに対する溶解度は、5mgの試料が完全に溶解するために必要な溶媒量を測り、以下の式により算出した。
<イオン化ポテンシャル(Ip)>
イオン化ポテンシャルは、ITO基板上に塗布製膜した試料を、OPTEL社製イオン化ポテンシャル測定装置PCR−101を用いて測定した。膜厚は50nm以上である。塗布溶液には、1.3wt%のクロルベンゼンを用いた。塗布には、スピンコーティ
ング法を用いた。
<電子吸収の吸収極大(λmax)>
電子吸収測定には、日立分光光度計U−3500を用いた。薄膜サンプルは、1.3
wt%のクロルベンゼン溶液を、ITO基板上にスピンコートを行い製膜した。溶液状
態のサンプルは、6.8×10−4wt%クロロホルム溶液とし、1cm角の石英セル
を用いて測定を行った。
<合成例1>
2,5− dibromo−2,5−Bis(3−hexylthiophen−2−yl) −1,3,4−thiadiazoleの合成
下記反応式(I)に従って、2,5− dibromo−2,5−Bis(3−hexylthiophen−2−yl) −1,3,4−thiadiazoleの合成を行った。詳細を説明する。
<工程1−1>
3−hexylthiophene−2−carboxyl acidの合成
室温、窒素雰囲気下において、50ml四ッ口フラスコ中にMg(0.59g,0.0243mol)を入れ1時間攪拌後、dry THF(17.7ml)を加え、次いで2−bromo−3−hexylthiophene(5.0g,0.0202mol)を攪拌しながらゆっくりと加えた。発熱が収まると、60℃に加熱2時間攪拌した。その後、室温まで冷却しdry COを用いて30分間のバブリングを行った。反応溶液を、0℃に冷却した1NのHCl(200ml)に滴下し、Diethyl etherを用いて抽出を行った。溶液の洗浄には、飽和食塩水を用いた。溶媒を除去乾燥後、淡黄色の化合物を得た。
得られた化合物について、プロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)測定を行った。結果を以下に示す。
H−NMR(400Hz,CDCl,TMS)δ/ppm 0.89(t,3H,J=7Hz),1.29−1.40(m,6H),1.64(quin,2H,J=7.5Hz), 3.02(t,2H,J=7.8Hz),6.96(d,1H,J=5.2Hz),7.48(d,1H,J=4.8Hz)
以上の結果より、得られた化合物が3−hexylthiophene−2−carboxyl acidであることが確認された(収率97%)。
<工程1−2>
3−hexylthiophene−2−carboxyl acid N’−(3−hexyl−thiophene−2−carbonyl) hydrazineの合成
室温、窒素雰囲気下において、50ml二ッ口フラスコ中に3−hexylthiophene−2−carboxyl acid(4.05g,0.01908mol)を入れ、次いでSOCl(25ml)を加えた。1時間還流させた後、SOClの蒸留除去、乾燥を行った。同フラスコ中に、dry THF(16ml)及びtriethylamine(2.7ml)を加え0℃に冷却した。溶液を攪拌しながらhydrazine(0.25ml,8.58×10−3mol)を10分間でゆっくりと加えた。その後、析出した生成物をTHFを用いてろ過単離した。回収物をCHClを用いて再結晶を行い、黄色の針状結晶を得た。
得られた化合物について、プロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)測定を行った。結果を以下に示す。
H−NMR(400Hz,CDCl,TMS)δ/ppm 0.88(t,6H,J=7.2Hz),1.30−1.40(m,12H),1.67(quin,4H,J=7.6Hz),2.98(t,4H,J=7.8Hz),6.99(d,2H,J=4.8Hz),7.36(d,2H,J=5.2 Hz),8.51(s,2H)
以上の結果より、得られた化合物が3−hexylthiophene−2−carboxyl acid N’−(3−hexyl−thiophene−2−carbonyl) hydrazineであることが確認された(収率62%)。
<工程1−3>
2,5−Bis(3−hexylthiophen−2−yl)−1,3,4−thiadiazoleの合成
室温、窒素雰囲気下において、50 ml四ッ口フラスコ中に3−hexylthiophene−2−carboxyl acid N’−(3−hexyl−thiophene−2−carbonyl)hydrazine(2.47g,5.872×10−3 mol)、Toluene(20ml)を入れ、次いでLawesson’s 試薬(LR) (2.61g,6.45×10−3mol)を加え、7.5時間還流した。反応溶液にaluminaを加えた後ろ過し、CHClにて洗浄を行った。ろ液を濃縮し、CHClを展開溶媒としたカラムクロマトグラフィーにて精製を行った。淡黄色の生成物を得た。
得られた化合物について、プロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)測定を行った。結果を以下に示す。
H−NMR(400Hz,CDCl,TMS)δ/ppm 0.89(t,6H,J= 7.2Hz),1.30−1.34(m,8H),1.39−1.45(m,4H),1.70(quin,4H,J=7.6Hz),2.96(t,4H,J=7.8Hz),7.01(d,2H,J=5.2Hz),7.39(d,2H,J=5.2 Hz)
以上の結果より、得られた化合物が2,5−Bis(3−hexylthiophen−2−yl)−1,3,4−thiadiazoleであることが確認された(収率79%)。
<工程1−4>
2,5−dibromo−2,5−Bis(3−hexylthiophen−2−yl)−1,3,4−thiadiazoleの合成
室温、窒素雰囲気下において、20mlシュレンク管中に2,5−Bis(3−hexylthiophen−2−yl)−1,3,4−thiadiazole(1.93 g, 4.61×10−3mol)、DMF(5ml)を入れ、窒素バブリングを30分間行った。その溶液を0℃まで冷却し、N−bromosuccinimide(1.64g,9.22×10−3mol)のDMF(5ml)溶液を、シリンジを用いて滴下した。その後、室温で6時間攪拌した。反応溶液はEthyl acetateを用いて抽出し、飽和食塩水にて洗浄した後、溶媒を除去した。淡黄色の結晶を得た。
得られた化合物について、プロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)測定を行った。結果を以下に示す。
H−NMR(400Hz,CDCl,TMS)δ/ppm 0.89(t,6H,J= 7.0Hz),1.30−1.37(m,8H),1.41−1.44(m,4H),1.66(quin,4H,J=7.9Hz),2.86(t,4H,J=8Hz),6.98(s,2H)
以上の結果より、得られた化合物が2,5−dibromo−2,5−Bis(3−hexylthiophen−2−yl)−1,3,4−thiadiazoleであることが確認された(収率87%)。
<合成例2>
2,6−trimethylditin−4,4−bis(2−ethy
lhexyl)−4H− cyclopenta[2,1−b;3,4−b’]dithiopheneの合成
下記反応式(II)に従って、2,6−trimethylditin−4,4−bis(2−ethylhexyl)−4H−cyclopenta[2,1−b;3,4−b’]dithiopheneeの合成を行った。詳細を説明する。
<工程2−1>
4,4−bis(2−ethylhexyl)−4H−cyclopenta[2,1−b;3,4−b’]dithiopheneの合成
室温、窒素雰囲気下において、200 mlフラスコ中に4H−Cyclopenta[2,1−b;3,4−b’]dithiophene(3g,1.6×10−2mol)、DMSO(100ml)を入れ溶解させた後、KOH(3.78g,6.73×10−2mol)、NaI(0.1g,6.73×10−4mol)、2−ethylhexyl bromide(6.34g,3.28×10−2mol)を加え、室温にて20時間攪拌した。反応溶液に蒸留水を加えた後、Ethyl acetateにて抽出を行った。溶液の洗浄には飽和食塩水を用いた。溶媒の除去後、Hexaneを展開溶媒としカラムクロマトグラフィーを行った。さらに、CHClを用いた分取GPC(LC−908−C60(日本分析工業))にて精製を行った。カラムは、JAIGEL−1H40と2H40を直列につないで用いた。淡黄色の化合物を得た。
得られた化合物について、プロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)測定を行った。結果を以下に示す。
H−NMR(400Hz,CDCl,TMS)δ/ppm 0.61(dt,6H,J=1.2,7.6Hz),0.78(dt,6H,J =0.8,6.4Hz),0.85−1.00(m,18H),1.88(m,4H),6.92(m,2H),7.10(d,2H,J=4.8Hz)
以上の結果より、得られた化合物が4,4−bis(2−ethylhexyl)−
4H−cyclopenta[2,1−b;3,4−b’]dithiopheneであることが確認された(収率96%)。
<工程2−2>
2,6−trimethylditin−4,4−bis(2−ethylhexyl)−4H−cyclopenta[2,1−b;3,4−b’]dithiopheneの合成
室温、窒素雰囲気下において、300ml四ッ口フラスコ中に4,4−bis(2−ethylhexyl)−4H−cyclopenta[2,1−b;3,4−b’]dithiophene(6g,1.48×10−2mol)、dry THF(120ml)を入れ溶解し、−78℃に冷却後n−BuLi2.6MinHexane(23ml,59.6×10−2mol)を滴下した。−77℃にて1時間攪拌後、ゆっくりと室温に戻し3時間攪拌を行った。再び−78℃に冷却しtriethyltin chloride 1M in Hexane(72ml,7.0×10−2mol)を滴下しゆっくりと室温に戻し16時間攪拌した。反応溶液に蒸留水を加えた後、Ethyl acetateにて抽出を行った。溶液の洗浄には飽和食塩水を用いた。溶媒の除去後、CHCl
を用いた分取GPCにて精製を行った。淡黄色の化合物を得た。
得られた化合物について、プロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)測定を行った。結果を以下に示す。
H−NMR(400Hz,CDCl,TMS)δ/ppm 0.35(s,1
8H),0.58(dt,6H,J=1.2,7.6Hz),0.74(t,6H,J=7.0Hz),0.86−0.99(m,18H),1.82(dt,4H,J=5.2,14 Hz),6.94(t,2H,J=3.4Hz)
以上の結果より、得られた化合物が2,6−trimethylditin−4,4−bis(2−ethylhexyl)−4H−cyclopenta[2,1−b;3,4−b’]dithiopheneであることが確認された(収率65%)。
<合成例3>
2,5−bis(trimethyltin)−2,5−Bis(3−hexylthiophen−2−yl)−1,3,4−thiadiazoleの合成
室温、窒素雰囲気下において、50ml二ッ口ナスフラスコ中に合成例1で得られた2,5−dibromo−2,5−Bis(3−hexylthiophen−2−yl)−1,3,4−thiadiazole(0.2g,3.47×10−4mol)、dry THF(3.5ml)を入れ溶解し、−78℃に冷却後n−BuLi1.67 Min Hexane(0.47ml,7.63×10−4mol)を滴下した。−75℃にて2時間攪拌後、trimethyltin chloride (0.173g,8.67×10−4mol)をdry THF(1.5ml)に溶解させたものをゆっくりと滴下し、室温に戻し1時間攪拌した。反応溶液に蒸留水を加えた後、Ethyl acetateにて抽出を行った。溶液の洗浄には蒸留水を用いた。溶媒の除去後、CHClを用いた分取GPC(LC−908−C60(日本分析工業))にて精製を行った。カラムは、JAIGEL−1H40と2H40を直列につないで用いた。淡黄色の化合物(0.177g)を得た。
得られた化合物について、プロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)測定を行った。結果を以下に示す。
H−NMR(400Hz,CDCl,TMS)δ/ppm 0.41(s,18H),0.89(t,6H,J=7.2Hz),1.30−1.37(m,8H),1.39−1.46(m,4H),1.66−1.73(m,4H),2.96(t,4H,J=7.8Hz),7.05(s,2H)
以上の結果より、得られた化合物が2,5−bis(trimethyltin)−2,5−bis(3−hexylthiophen−2−yl)−1,3,4−thiadiazoleであることが確認された(収率69%)。
<実施例1>
Poly[ (4,4−bis−[2−ethylhexyl]−4H−cyclopenta[2,1−b:3,4−b¢]dithiophene−2,6−diyl)−per−(3−n−hexylthiophene−2,5−diyl)−per− (
1,3,4−thiadiazole−2,5−diyl)−per− (3−n−hexylthiophene−2,5−diyl)]P(DTHTTdzHT)の合成
室温、窒素雰囲気下において、50 ml四ッ口フラスコ中に合成例1で得られた2,5− dibromo−2,5−Bis(3−hexylthiophen−2−yl)
−1,3,4−thiadiazole(0.65g,1.14×10−3mol)、合成例2で得られた2,6−trimethylditin−4,4−bis(2−ethylhexyl)−4H−cyclopenta[2,1−b;3,4−b’]dithiophene(1g,1.37×10−4mol)、Toluene(15ml)を入れ溶解させた後、次いでtriphenylphosphine(0.096g,3.66×10−4mol)、tris(dibenzylidenacetone)dipalladium(0) (Pd(dba))(0.0419g,4.58×10−5mol)を加えた。反応溶液を19時間還流した。反応溶液はMethanol(200ml)に滴下、ろ過後、生成物を得た。Toluene(100ml)に溶解させ、その溶液を1N HCl溶液にて酸処理後、飽和食塩水にて洗浄した。溶媒を除去後、アミン系金属除去シリカゲルを用いて、Tolueneを展開溶媒としカラムクロマトグラフィーを行った。カラムを通過した生成物を収集後、Toluene(200ml)に溶解させ、Acetone(310ml)を用いオイルアウト法にて低分子量の分子を分離した。ろ過後、回収した生成物をCHCl(20ml)に溶解し、分取GPC(LC−908−C60(日本分析工業))にて低分子量の分子を分離した。カラムは、JAIGEL−3H40と4H40を直列につないで用いた。高分子(M=29,600)また、低分子(M=7,410)の2種類の赤色の生成物を得た。
得られた化合物について、プロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)測定を行った。結果を以下に示す。
H−NMR(400Hz,CDCl,TMS)δ/ppm 0.56−0.67,0.67−0.77,0.81−1.12,1.26−1.44,1.66−1.83,1.85−2.02,2.84−3.00,7.00−7.08,7.13−7.17
以上の結果より、得られた化合物がP(HTTdzHT−DT)であることが確認された。
<実施例2>
Poly[(4,8−diethylhexyloxy−benzo[1,2−b;3,4−b]dithiophene)−per−(3−n−hexylthiophene−2,5−diyl)−per− (1,3,4−thiadiazole−2,5−diyl)−per− (3−n−hexylthiophene−2,5−diyl)]P(BDTHTTdzHT)の合成
室温、窒素雰囲気下において、50 ml四ッ口フラスコ中に合成例1で得られた2,5−dibromo−2,5−Bis(3−hexylthiophen−2−yl)
−1,3,4−thiadiazole(0.2 g,3.47×10−4 mol)、公知文献(J.Am.Chem.Soc.,2009,131,15586−15587)の方法に従い合成した2,6−bis(trimethyltin)−4,8−diethylhexyloxy−benzo[1,2−b;3,4−b]dithiophene(0.295 g,3.82×10−4 mol)、Toluene:DMF(6.3 ml:0.7 ml)を入れ溶解させた後、次いでtetrakis(triphenylphosphine)palladium(0) (Pd(PPh)(0.0160g,1.39×10−5mol)を加えた。反応溶液を11.5時間還流した後に、その反応溶液をMethanol(110ml)に滴下、ろ過後、生成物を得た。アミン系金属除去シリカゲルを用いて、Tolueneを展開溶媒としカラムクロマトグラフィーを行った。カラムを通過した生成物を収集後、回収した生成物をCHCl(20ml)に溶解し、CHClを展開溶媒とし、分取GPC精製(LC−908−C60(日本分析工業))にて低分子量の分子を分離した。カラムは、JAIGEL−3H40と4H40を直列につないで用いた。M=110,000、PDI=5.23の青色生成物を25mg得た。
<実施例3>
Poly[(3,6−bis(thiophen−2−yl))−2,5−didecyltetrakosyl−1,4−diketopyrrolo(3,4−c)pyrrole)−per−(3−n−hexylthiophene−2,5−diyl)−per− (1,3,4−thiadiazole−2,5−diyl)−per− (3−n−hexylthiophene−2,5−diyl)] P(TDPPHTTdzHT)の合成
室温、窒素雰囲気下において、50 ml四ッ口フラスコ中に合成例3で得られた2,5−bis(trimethyltin)−2,5−Bis(3−hexylthiophen−2−yl)−1,3,4−thiadiazole(0.177 g,2.38×10−4 mol)、公知特許(WO2009047104(A2,A3))の方法に従い合成した3,6−bis(5−brormothiophen−2−yl)−2,5−didecyltetrakosyl−1,4−diketopyrrolo(3,4−c)pyrrole(0.270 g,2.38×10−4 mol)、およびBenzene(5 ml)を入れ溶解させた後、次いでtriphenylphosphin
e(0.0200 g,7.62×10−5 mol)、tris(dibenzylidenacetone)dipalladium(0) (Pd(dba))(0.00873 g,9.53×10−6 mol)を加えた。
反応溶液を10時間還流した後に、その反応溶液をMethanol(200 ml)に滴下、ろ過後、生成物を得た。アミン系金属除去シリカゲルを用いて、Tolueneを展開溶媒としカラムクロマトグラフィーを行った。カラムを通過した生成物を収集後、回収した生成物をCHCl(10 ml)に溶解し、CHClを展開溶媒とし、分取GPC精製(LC−908−C60(日本分析工業))にて低分子量の分子を分離した。カラムは、JAIGEL−3H40と4H40を直列につないで用いた。M=32,300、PDI=1.31の青色生成物を125mg得た。
得られたP(DTHTTdzHT)2種類、P(BDTHTTdzHT)、P(TDPPHTTdzHT)について、それぞれ溶解度、IP、λmaxを測定した。得られた結果を表1に表す。
<比較例1>
下記一般式のポリマーPoly[ (1,3,4−thiadiazole−2,5−diyl)−alt−(thiophene−2,5−diyl
)](P(Thdz−Th)、構造は、以下に示す)を特開2006−131799の方法
に基づき合成し、M、溶解度、IP、λmaxを測定した。得られた結果を表1に表す。
<比較例2>
Aldrich社製poly(3−hexylthiophene−2,5−diyl),regioregular(P3HT、構造は、以下に示す)について、M、溶解度、IP、λmaxを測定した。得られた結果を表1に表す。
<実施例4>
p型半導体としてP(DTHTTdzHT)を用いた有機薄膜太陽電池
電子供与性分子構造を有するP(DTHTTdzHT)及び電子受容性分子構造を有する1−(3−メトキシカルボニル)プロピル−1−フェニル(6,6)−C60)(C60PCBM、フロンティアカーボン社製)を重量比1:3で、1.2重量%の濃度でクロロベンゼンに溶解させた。得られた溶液を、60℃で窒素雰囲気中、4時間スターラーで攪拌混合した。0.45μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過し、光電変換層塗布液を作製した。
155nmの厚みでインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を堆積したガラス基板を界面活性剤による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、120℃で大気中5分間加熱乾燥した。最後に紫外線オゾン洗浄を行なった。
この透明基板上に、0.45μmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルターで濾過したポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)水性分散液(エイチ・シー・スタルク社製 商品名「CLEVIOSTM P VP AI4083」)をスピンコートした後、120℃で大気中10分間加熱乾燥した。更に窒素雰囲気下で上記基板を195℃で3分間加熱処理を施した。その膜厚は40nmであった。
窒素雰囲気下でガラス基板上に、前記有機活性層塗布液をスピンコートで塗布することにより、約100nmの厚みの有機活性層を形成させた。窒素雰囲気中150℃で10分加熱処理を行った。その後、バッファー層として0.2nmの膜厚のLiFを、更に、80nmの膜厚のアルミニウムを抵抗加熱型真空蒸着法により順次成膜させ、5mm角のバルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池を作製した。その後、この太陽電池を窒素雰囲気下で80℃のホットプレートで5分間加熱処理を行った。
ガラス板を封止板として用いて封止した太陽電池に、ITO電極側からソーラシミュレーター(AM1.5G)で100mW/cmの強度の光を照射し、ソースメーター(ケイスレー社製,2400型)にて、ITO電極とアルミニウム電極と間における電流−電圧特性を測定した。結果を表2に示す。
<実施例5>
p型半導体としてP(TDPPHTTdzHT)を用いた有機薄膜太陽電池
実施例4において、P(DTHTTdzHT)の代わりに、P(TDPPHTTdzHT)を用いた以外は、同様にして、太陽電池を作製し、光電変換特性を評価した。結果を
表2に示す。
<実施例6>
p型半導体としてP(BDTHTTdzHT)を用いた有機薄膜太陽電池
実施例4において、P(DTHTTdzHT)の代わりに、P(BDTHTTdzHT)を用いた以外は、同様にして、太陽電池を作製し、光電変換特性を評価した。結果を表2に示す。
<実施例7>
p型半導体としてP(BDTHTTdzHT)、n型半導体のC70PCBM用いた有機薄膜太陽電池実施例6において、C60PCBMの代わりに、1−(3−メトキシカルボニル)プロピル−1−フェニル(6,6)−C 60)(C70PCBM、フロンティアカーボン社製)を用いた以外は、同様にして、太陽電池を作製し、光電変換特性を評価した。結果を表2に示す。
<比較例3>
p型半導体としてP(Thdz−Th)を用いた有機薄膜太陽電池
実施例4において、P(DTHTTdzHT)の代わりに、P(Thdz−Th)を用いた以外は、同様にして、太陽電池を作製しようとしたが、クロロベンゼンに溶解せず、素子を作製できなかった。
本発明は、塗布プロセスの実用性に優れた半導体材料に利用可能である。さらに、電子吸収波長領域が、長波長化していることにより、効率的な光電変換特性を示す太陽電池デバイスとして利用可能である。
1 耐候性保護フィルム
2 紫外線カットフィルム
3,9 ガスバリアフィルム
4,8 ゲッター材フィルム
5,7 封止材
6 太陽電池素子
10 バックシート
11 シール材
12 基材
13 太陽電池ユニット
100 薄膜太陽電池
101 透明電極
102 電子取り出し層
103 有機活性層(p型半導体、n型半導体混合層)
104 正孔取り出し層
105 対向電極
106 基板

Claims (14)

  1. 重量平均分子量が0.5×10 4 以上である下記一般式(1)で表されるチアジアゾール含有高分子。
    (式中、Ar1,Ar2は各々独立してアリーレン基、またはヘテロアリーレン基を表し、Ar3は、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アルケニル基、アルキニル基、又はこれらの連結した基のいずれかを表す。)
  2. Ar1,Ar2,Ar3が各々独立してアリーレン基、またはヘテロアリーレン基を表
    すことを特徴とする請求項1に記載のチアジアゾール含有高分子。
  3. λmaxが、470nm以上である請求項1又は2に記載のチアジアゾール含有高分子。
  4. 25℃におけるクロルベンゼンに対する溶解度が0.5wt%以上である請求項1〜のいずれか一項に記載のチアジアゾール含有高分子
  5. Ar1,Ar2が各々独立して炭素数4以上の置換基で置換された、アリーレン基、またはヘテロアリーレン基である請求項1〜のいずれか一項に記載のチアジアゾール含有高分子。
  6. Ar3が炭素数4以上の置換基で置換された、アリーレン基、またはヘテロアリーレン基である請求項1〜のいずれか一項に記載のチアジアゾール含有高分子。
  7. Ar1とAr2が同じ基である請求項1〜のいずれか一項に記載のチアジアゾール含有高分子。
  8. 下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物を重合する請求項1〜のいずれか一項に記載のチアジアゾール含有高分子の製造方法。

    (式中、Ar1,Ar2は各々独立してアリーレン基、またはヘテロアリーレン基を表し、Ar3は、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アルケニル基、アルキニル基又はこれらの連結した基のいずれかを表し、X、Yは各々独立して、ハロゲン原子、アルキルスタニル基、アルキルスルホ基、アリールスルホ基、アリールアルキルスルホ基、ホウ酸エステル残基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、モノハロゲン化メチル基、ホウ酸残基(−B(OH)2)、ホルミル基、アルケニル基又はアルキニル基を表す。)
  9. Ar1,Ar2,Ar3が各々独立してアリーレン基、またはヘテロアリーレン基を表
    すことを特徴とする請求項に記載のチアジアゾール含有高分子の製造方法。
  10. 請求項1〜のいずれか一項に記載のチアジアゾール含有高分子を含む有機半導体材料。
  11. 請求項10に記載の有機半導体材料を含む、有機半導体層。
  12. 請求項11に記載の有機半導体層を含む有機電子デバイス。
  13. 光電変換素子であることを特徴とする、請求項12に記載の有機電子デバイス。
  14. 太陽電池であることを特徴とする、請求項12に記載の有機電子デバイス。
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