以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
<1.フラーレン化合物>
本実施形態のフラーレン化合物は、下記一般式(n1)で表される。
(式(n1)において、FLNはフラーレンを表し、R1及びR2は各々独立してヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基を表す。R1は、R2と環を形成していてもよい。X1及びX2は各々独立して水素原子又は電子吸引性基であり、X1及びX2の少なくとも一方は電子吸引性基である。pは1以上3以下の整数を表し、qは1以上3以下の整数を表す。pが2以上の場合、複数のR1及び複数のR2は各々独立して異なっていてもよい。qが2以上の場合、複数のX1及び複数のX2は各々独立して異なっていてもよい。)
フラーレン(FLN)とは、閉殻構造を有する炭素クラスターである。フラーレンの炭素数は、通常60〜130の偶数であれば何でもよい。フラーレンとしては、例えば、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94、及びC96等が挙げられる。さらに本実施形態に係るフラーレンは、これらよりも多くの炭素を有する高次の炭素クラスターであってもよい。入手が容易なためにコストが下がりうる観点からは、この中でもC60及びC70が好ましく、C60がさらに好ましい。
フラーレン環上の炭素―炭素結合の一部が切れているフラーレンも周知である。本実施形態に係るフラーレンには、このようなフラーレン環上の炭素―炭素結合の一部が切れているフラーレンも含まれる。また、フラーレンを構成する一部の炭素原子が、他の原子に置き換えられているフラーレン、及び、金属原子、非金属原子あるいはこれらから構成される原子団を内包するフラーレンもまた周知である。本実施形態に係るフラーレンには、これらのフラーレンも含まれる。
R1及びR2は各々独立してヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基を表す。ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基には、ヘテロ原子を有していてもよい脂肪族炭化水素基、及びヘテロ原子を有していてもよい芳香族基が含まれる。また、R1及びR2はさらに置換基を有していてもよい。pが2以上の場合、複数のR1及び複数のR2は各々独立して異なっていてもよい。合成の容易性の観点からは、複数のR1及び複数のR2は、それぞれ互いに一致していてもよい。
ヘテロ原子を有していてもよい脂肪族炭化水素基の例としては、アルキル基又はアルケニル基等の直鎖脂肪族炭化水素基、並びにシクロアルカン基等の環状脂肪族炭化水素基が挙げられる。また、例えばフッ化アルキル基、アルコキシアルキル基又はアルキルカルボニル基のような、脂肪族炭化水素基の水素原子がヘテロ原子を含む原子団、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、カルボニル基、又はアミノ基等で置換されて得られる基も挙げられる。さらに、例えばアルコキシ基のような、脂肪族炭化水素基の炭素鎖を構成する原子が酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子のようなヘテロ原子で置換されて得られる基も挙げられる。
ヘテロ原子を有していてもよい芳香族基には、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が含まれる。芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基は、さらに置換基を有していてもよい。
R1及びR2の好ましい例としては、置換基を有していてもよい脂肪族基、及び置換基を有していてもよい芳香族基が挙げられる。本明細書において脂肪族基には、直鎖脂肪族基、分岐鎖脂肪族基、及び環状脂肪族基が含まれ、例えばアルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基、及びシクロアルキル基等が挙げられる。ここで、環状脂肪族基には環状脂肪族炭化水素基及び環状脂肪族複素環基が含まれる。環状脂肪族炭化水素基としては例えば、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等が挙げられる。環状脂肪族複素環基としては例えば、ピペリジル基、ピロリジル基、テトラヒドロフリル基、等が挙げられる。また、本明細書において芳香族基には芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が含まれる。
本実施形態に係るフラーレン化合物の溶解性を高める観点から、R1及びR2の特に好ましい例として、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、及び置換基を有してもよい芳香族基が挙げられる。
アルキル基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。シクロアルキル基としては、炭素数3〜20のものが好ましく、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜30のものが好ましい。芳香族炭化水素基は単環基に何ら限定されず、縮合多環式炭化水素基又は環縮合炭化水素基であってもよい。例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、ビフェニル基、ビフェニレニル基、アントリル基、ピレニル基、フルオレニル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオランテニル基、ナフタセニル基、ペリレニル基、ペンタセニル基、トリフェニレニル基及びクオーターフェニル基等が挙げられる。これらの中でも、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、ピレニル基、フルオレニル基、アセナフテニル基、フルオランテニル基、ペリレニル基及びトリフェニレニル基が好ましい。
芳香族複素環基としては、炭素数2〜30のものが好ましい。芳香族複素環基は単環基に何ら限定されず、縮合多環式炭化水素基又は環縮合炭化水素基であってもよい。例えば、ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、フェニルカルバゾリル基、フェノキサチエニル基、キサンテニル基、ベンゾフラニル基、チアントレニル基、インドリジニル基、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、フェナントロリニル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基及びキノキサリニル基等が挙げられる。これらの中でも、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピラゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、イミダゾリル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、フェナントロリニル基、キノキサリニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、フェニルカルバゾリル基、キサンテニル基及びフェノキサジニル基が好ましい。
R1及びR2がさらに有してもよい置換基、例えば上述の脂肪族基及び芳香族基が有していてもよい置換基に特に限定はなく、例えば、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、エステル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、アセチル基、スルホニル基、シリル基、ボリル基、ニトリル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアミノ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、パーフルオロアルキル基、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基等が挙げられる。これらの置換基は、隣接するもの同士で連結して環を形成していてもよい。
R1、R2、又はR1若しくはR2がさらに有する置換基が金属への配位能を有する場合、この置換基と金属原子との配位結合を介して、本実施形態に係るフラーレン化合物は金属錯体を形成していてもよい。
X1及びX2は各々独立して水素原子又は電子吸引性基である。ここで、X1及びX2の少なくとも一方は電子吸引性基である。X1及びX2の少なくとも一方は電子吸引性基であることは、LUMOエネルギー準位が低くなりうるために好ましい。好ましくは、X1及びX2の双方が電子吸引性基である。合成の容易性の観点からは、X1とX2とが同じことも好ましい。qが2以上の場合、複数のX1及び複数のX2は各々独立して異なっていてもよい。合成の容易性の観点からは、複数のX1及び複数のX2は、それぞれ互いに一致していてもよい。
本明細書において電子吸引性基とは、電子吸引性を有する基である。本明細書における電子吸引性基は、ハメット(Hammett)の置換基定数(パラ位,σp)が通常0より大きく、0.01以上であることが好ましく、0.1以上であることがさらに好ましく、0.5以上であることが特に好ましい。ハメットの置換基定数は、例えば野依良治ら編、「大学院講義有機化学」、第1版、第I巻、株式会社東京化学同人、1999年6月、175頁に記載されている。
電子吸引性基の例としては、ハロゲン原子、シアノ基、水素原子若しくは置換基を有するカルボニル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基のようなパーフルオロアルキル基、などが挙げられる。ハロゲン基としては、フッ素原子、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子が挙げられる。その中でもフッ素原子が好ましい。水素原子若しくは置換基を有するカルボニル基としては例えば、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルカルボニルアミノカルボニル基及びアリールカルボニルアミノカルボニル基等が挙げられる。
これらの中でも、ハロゲン原子又はシアノ基は立体障害が小さい点で好ましい。また、水素原子若しくは置換基を有するカルボニル基は、本実施形態に係るフラーレン化合物の溶解性が向上しうる点で好ましい。溶解性の点からは置換基を有するカルボニル基であることがより好ましく、この場合カルボニル基に結合する置換基にはアルキル基又はアリール基が含まれていることが好ましい。
置換基を有するカルボニル基としては、中でもアルコキシカルボニル基が好ましい。アルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基を形成するアルキル基は、炭素数1〜12の炭化水素基及びフッ化アルキル基が好ましく、炭素数1〜12の炭化水素基がより好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基、オクチル基、2-プロピルペンチル基、2−エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシルメチル基及びベンジル基がさらに好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基及びn−ヘキシル基が特に好ましい。
R1とR2とは、直接又は別の置換基を介して環を形成してもよい。この場合、下式のように、R1が結合するフラーレン環上の炭素とR2が結合するフラーレン環上の炭素とは、互いに結合していてもよい。また、R1が結合するフラーレン環上の炭素とR2が結合するフラーレン環上の炭素とは、1つの炭素原子を挟んで結合していてもよい。さらにはR1が結合するフラーレン環上の炭素とR2が結合するフラーレン環上の炭素とは、2つ以上の炭素原子を挟んで結合していてもよい。また、R1及びR2は、フラーレン骨格中の同一の5員環又は6員環に付加されていることが好ましい。
同様に、X1及びX2も、フラーレン骨格中の同一の5員環又は6員環に付加されていることが好ましい。
一般式(n1)において、pは1以上3以下の整数である。フラーレン化合物の溶解度を高くする観点から、pは1以上であることが好ましい。また、フラーレン化合物の立体障害を抑え、且つLUMOエネルギー準位を高くしすぎないという観点から、pは3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
また一般式(n1)において、qは1以上3以下の整数である。フラーレン化合物のLUMOエネルギー準位を低くする観点から、qは1以上であることが好ましい。また、フラーレン化合物のLUMOエネルギー準位を低くしすぎないという観点から、pは3以下であることが好ましく、2以下であることがであることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
R1及びR2は、以下の一般式(n2)〜(n5)で表される置換基のうちの何れかを表すことが好ましい。
式(n2)において、R3はR2と同様の置換基を表し、例えば置換基を有していてもよい炭素数1〜14のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜14のアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい芳香族基でありうる。R4〜R6は各々独立して水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜14のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜14のフッ化アルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を表し、Lは1〜8の整数を表す。Lとして好ましくは1以上4以下の整数であり、さらに好ましくは1以上2以下の整数である。
アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基又はイソブチル基がより好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましい。アルコキシ基としては、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜6のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基又はエトキシ基が特に好ましい。芳香族基としては、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、チエニル基、フリル基又はピリジル基がより好ましく、フェニル基又はチエニル基がさらに好ましい。アルキル基、アルコキシ基及び芳香族基が有していてもよい置換基としては、例えばハロゲン原子又はシリル基でありうる。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。シリル基としては、ジアリールアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、トリアリールシリル基又はトリアルキルシリル基が好ましく、ジアルキルアリールシリル基がより好ましく、ジメチルアリールシリル基がさらに好ましい。
アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基又はn−ヘキシル基が好ましい。アルキル基が有していてもよい置換基としてはハロゲン原子が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。フッ化アルキル基としては、パーフルオロオクチル基、パーフルオロヘキシル基又はパーフルオロブチル基が好ましい。芳香族基としては、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、チエニル基、フリル基又はピリジル基がより好ましく、フェニル基又はチエニル基がさらに好ましい。芳香族基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数1〜14のフッ化アルキル基、炭素数1〜14のアルコキシ基又は炭素数3〜10の芳香族基が好ましく、フッ素原子又は炭素数1〜14のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、n−ブトキシ基又は2−エチルヘキシルオキシ基がさらに好ましい。芳香族基が置換基を有する場合、その数に限定は無いが、1以上3以下が好ましく、1がより好ましい。芳香族基が置換基を複数有する場合、その置換基の種類は異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
式(n3)において、R7〜R11は各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜14のアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を表す。
アルキル基として好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基又はオクチル基であり、より好ましくはメチル基である。芳香族基としては、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基又はピリジル基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
アルキル基が有していてもよい置換基としてはハロゲン原子が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。フッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロオクチル基、パーフルオロヘキシル基又はパーフルオロブチル基が好ましい。芳香族基が有していてもよい置換基としては、特に限定は無いが、好ましくはフッ素原子、炭素数1〜14のアルキル基、又は炭素数1〜14のアルコキシ基である。アルキル基にはフッ素原子が置換されていてもよい。さらに好ましくは炭素数1〜14のアルコキシ基であり、より好ましくはメトキシ基である。置換基を有する場合、その数に限定は無いが、好ましくは1〜3であり、より好ましくは1である。置換基の種類は異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
式(n4)において、Ar1は置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の芳香族複素環基を表し、R12〜R15は各々独立して水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよいアルキルチオ基を表し、R12又はR13は、R14又はR15と結合して環を形成していてもよい。
Ar1の好ましい例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、チエニル基、フリル基、ピリジル基、ピリミジル基、キノリル基又はキノキサリル基が挙げられ、さらに好ましくはフェニル基、チエニル基又はフリル基である。芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が有していてもよい置換基として限定は無いが、フッ素原子、塩素原子、水酸基、シアノ基、シリル基、ボリル基、アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数1〜14のアルコキシ基、炭素数1〜14のアルキルカルボニル基、炭素数1〜14のアルキルチオ基、炭素数1〜14のアルケニル基、炭素数1〜14のアルキニル基、エステル基、アリールカルボニル基、アリールチオ基、アリールオキシ基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、又は炭素数2〜20の複素環基が好ましく、フッ素原子、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数1〜14のアルコキシ基、エステル基、炭素数1〜14のアルキルカルボニル基、又はアリールカルボニル基がより好ましい。炭素数1〜14のアルキル基にはフッ素が置換されていてもよい。炭素数1〜14のアルキル基としては、メチル基、エチル基又はプロピル基が好ましい。炭素数1〜14のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシル基が好ましい。炭素数1〜14のアルキルカルボニル基としては、アセチル基が好ましい。エステル基としては、メチルエステル基又はn−ブチルエステル基が好ましい。アリールカルボニル基としては、ベンゾイル基が好ましい。置換基を有する場合、その数に限定は無いが、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましい。置換基が複数の場合、その種類は異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
R12又はR13が、R14又はR15と結合して環を形成する場合、式(n4)は式(n6)で表すことができる。例えば、式(n4)でR12がメチル基でありかつR14がメチル基であって、R12とR14とが結合している場合、式(n6)においてX3はエチレン基(−CH2−CH2−)である。また、式(n4)でR12がメチル基でありかつR14が水素原子であって、R12とR14とが結合している場合、式(n6)においてX3はメチレン基(−CH2−)である。
式(n6)は、芳香族基が縮合したビシクロ構造を表す。式(n6)においてX3は、酸素原子、硫黄原子、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアルキレン基、又は置換されていてもよいアリーレン基である。アルキレン基としては炭素数1〜2のものが好ましい。アリーレン基としては炭素数5〜12のものが好ましく、例えばフェニレン基であることが好ましい。アミノ基は、メチル基やエチル基等の炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよい。アルキレン基は、メトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、又は炭素数2〜20の芳香族複素環基で置換されていてもよい。アリーレン基は、メトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、又は炭素数2〜20の芳香族複素環基で置換されていてもよい。式(n6)において、X3が結合している橋頭位の炭素原子は、置換基を有していてもよい。この置換基の例としては、R12〜R15と同様のものが挙げられる。
式(n5)において、R16〜R17は各々独立して水素原子、アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜14のアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族基を表す。
アルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基としては、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数1〜12のフッ化アルコキシ基が好ましく、炭素数1〜12のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、n−ヘキソキシ基、オクトキシ基、2−プロピルペントキシ基、2−エチルヘキソキシ基、シクロヘキシルメトキシ基又はベンジルオキシ基がさらに好ましく、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基又はn−ヘキソキシ基が特に好ましい。アルキル基としては、炭素数1〜8の直鎖アルキル基が好ましく、n−プロピル基がより好ましい。アルキル基が有していてもよい置換基には特に限定は無いが、好ましくはアルコキシカルボニル基である。アルコキシカルボニル基のアルコキシ基としては、炭素数1〜14のアルコキシ基又はフッ化アルコキシ基が好ましく、炭素数1〜14のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、n−ヘキソキシ基、オクトキシ基、2−プロピルペントキシ基、2−エチルヘキソキシ基、シクロヘキシルメトキシ基又はベンジルオキシ基がさらに好ましく、メトキシ基又はn−ブトキシ基が特に好ましい。芳香族基としては、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数2〜20の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、チエニル基、フリル基又はピリジル基が好ましく、フェニル基又はチエニル基がさらに好ましい。芳香族基が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数1〜14のフッ化アルキル基又は炭素数1〜14のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜14のアルコキシ基がさらに好ましく、メトキシ基又は2−エチルヘキシルオキシ基が特に好ましい。置換基を有する場合、その数に限定は無いが、好ましくは1以上3以下であり、より好ましくは1である。置換基の種類は異なっていても同一でもよく、好ましくは同一である。
式(n5)の構造としては、R16及びR17が共にアルコキシカルボニル基であるか、R16及びR17が共に芳香族基であるか、又はR16が芳香族基でかつR17が3−(アルコキシカルボニル)プロピル基であることが好ましい。
本実施形態に係るフラーレン化合物のLUMOエネルギー準位は、特に限定はされないが、例えばサイクリックボルタモグラム測定法により算出される真空準位に対する値が、通常−4.00eV以上、好ましくは−3.90eV以上である。開放電圧(Voc)はp型半導体材料のHOMOエネルギー準位とn型半導体材料のLUMOエネルギー準位との差で決定される。このため、n型半導体材料として用いられる本実施形態に係るフラーレン化合物のLUMOエネルギー準位を高くすると、Vocが高くなる傾向がある。一方、LUMOエネルギー準位は通常−1.0eV以下、好ましくは−2.0eV以下、より好ましくは−3.0eV以下、さらに好ましくは−3.3eV以下、とりわけ好ましくは−3.7eV以下、特に好ましくは−3.8eV以下である。n型半導体材料として用いられる本実施形態に係るフラーレン化合物のLUMOエネルギー準位を低くすることで、電子の移動が起こりやすくなり、短絡電流(Jsc)が高くなる傾向がある。
本実施形態に係るフラーレン化合物のLUMOエネルギー準位の算出方法は、理論的に計算値で求める方法と実際に測定する方法が挙げられる。理論的に計算値で求める方法としては、半経験的分子軌道法及び非経験的分子軌道法があげられる。実際に測定する方法としては、紫外可視吸収スペクトル測定法、サイクリックボルタモグラム測定法があげられる。その中でも好ましくは、サイクリックボルタモグラム測定法である。具体的には、例えば公知文献(国際公報第2011/016430号)に記載の方法で測定することができる。
本実施形態に係るフラーレン化合物のHOMOエネルギー準位の値は、特に限定は無いが、通常−5.0eV以下、好ましくは−5.5eV以下である。一方、通常−7.0eV以上、好ましくは−6.6eV以上である。本実施形態に係るフラーレン化合物のHOMOエネルギー準位が−7.0eV以上であることにより、本実施形態に係るフラーレン化合物が吸収した光も発電に利用出来る点で好ましい。また、本実施形態に係るフラーレン化合物のHOMOエネルギー準位が−5.0eV以下であることにより、正孔の逆移動を阻止できる点で好ましい。
本実施形態に係るフラーレン化合物の電子移動度は、特段の制限はないが、通常1.0×10−6cm2/Vs以上であり、1.0×10−5cm2/Vs以上が好ましく、5.0×10−5cm2/Vs以上がより好ましく、1.0×10−4cm2/Vs以上がさらに好ましい。一方、通常1.0×103cm2/Vs以下であり、1.0×102cm2/Vs以下が好ましく、5.0×101cm2/Vs以下がより好ましい。本実施形態に係るフラーレン化合物の電子移動度が1.0×10−6cm2/Vs以上であることは、光電変換素子の電子拡散速度向上、短絡電流向上、変換効率向上等の効果が大きくなる傾向にある傾向にあるため、好ましい。測定方法としてはFET法が挙げられ、公知文献(特開2010−045186号公報)に記載の方法により実施することができる。
本実施形態に係るフラーレン化合物は、塗布法に適用できるようにするために、化合物自体が液状で塗布可能であるか、又は何らかの溶媒に対する溶解性を有することが好ましい。溶解性の好適な範囲をあげると、25℃でのトルエンに対する溶解度は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.4重量%以上、より好ましくは0.7重量%以上である。一方、通常90重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましく、70重量%以下がさらに好ましい。25℃でのトルエンに対する溶解度が、フラーレン化合物の溶解度が0.1重量%以上であることで、フラーレン化合物の分散安定性が増加し、凝集、沈降、分離等が起こりにくくなるため好ましい。
フラーレン化合物を溶解する溶媒に特段の制限はないが、非ハロゲン系溶媒が好ましい。ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒でも可能であるが、環境負荷の面等から代替が求められている。非ハロゲン系溶媒としては、例えば、非ハロゲン系芳香族炭化水素類が挙げられる。その中でも好ましくはトルエン、キシレン又はシクロヘキシルベンゼン等である。
本実施形態に係るフラーレン化合物の具体的構造としては、以下のようなものが挙げられる。
これらのフラーレン化合物は、溶媒に対する溶解性を有する。また、適切なHOMO/LUMOエネルギー準位を有するため、半導体特性に優れている。そのため、後述する光電変換素子の活性層に用いることが好適であるのみならず、様々な電子デバイスに利用することができる。電子デバイスとしては、例えば、電圧の印加により電流や電圧を制御する素子、磁場の印加による電圧や電流を制御する素子、化学物質を作用させて電圧や電流を制御する素子が挙げられる。この制御としては、整流、スイッチング、増幅、発振が挙げられる。現在シリコーン等で実現されている対応するデバイスとしては、抵抗器、整流器(ダイオード)、スイッチング素子(トランジスタ、サイリスタ)、増幅素子(トランジスタ)、メモリー素子、化学センサー等、あるいはこれらの素子の組み合わせや集積化したデバイスが挙げられる。また、溶媒への溶解性が高く製膜性に優れることから、塗布や印刷プロセスを用いたデバイスへの利用に適している。
<2.フラーレン化合物の製造方法>
本実施形態に係るフラーレン化合物の製造方法としては、特に制限はない。例えば、フラーレンに電子吸引性基を付加させる工程と、フラーレンに置換基R1及びR2を付加させる工程と、によって本実施形態に係るフラーレン化合物を製造することができる。ここで、フラーレンに電子吸引性基を付加させる工程と、フラーレンに置換基R1及びR2を付加させる工程と、はどちらを先に行ってもよい。
フラーレンに電子吸引性基を付加させる方法としては、公知の方法を用いることができ、公知の方法としては例えば、J.Org.Chem.2009,74,1691−1697、米国特許出願公開第2007/0003807号明細書、New J.Chem.2003,27,188−192、及びJ.Org.Chem.2001,66,7496−7499等に記載の方法が挙げられる。具体的な例としては、例えばフラーレンに単体のハロゲンのようなハロゲン化剤を作用させる方法が挙げられる。また、シアン化ナトリウムのような求核試薬をフラーレンに作用させた後に、生じたフラーレン陰イオンに対して酸ハロゲン化物又はスルホニルシアニド類のような求電子試薬を反応させる方法も挙げられる。
フラーレンに置換基R1及びR2を付加させる方法としては、既知の方法のうち何れを用いてもよい。例えばフラーレンに対して、置換基R1を有するGrignard試薬(グリニャール試薬)等の求核試薬を作用させることにより、置換基R1を有するフラーレン化合物を製造することができる。また、こうして得られたフラーレン化合物に対してt−ブトキシカリウム等の塩基を作用させた後に、置換基R2を有する求電子試薬を作用させることにより、置換基R2を有するフラーレン化合物を製造することができる。
特に、式(n2)に示す置換基を有するフラーレンの合成は、国際公開第2008/059771号やJ.Am.Chem.Soc.,2008,130(46),15429−15436のような公知文献に従って、実施可能である。
また、式(n3)に示す置換基を有するフラーレンの合成は、J.Am.Chem.Soc.1993,115,9798−9799、Chem.Mater.2007,19,5363−5372、及びChem.Mater.2007,19,5194−5199のような公知文献に従って、実施可能である。
また、式(n4)に示す置換基を有するフラーレンの合成は、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1993,32,78−80、Tetrahedron Lett.1997,38,285−288、国際公開第2008/018931号、及び国際公開第2009/086210号のような公知文献に従って、実施可能である。
また、式(n5)に示す置換基を有するフラーレンの合成は、J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,1997 1595、Thin Solid Films 489(2005)251−256、Adv.Funct.Mater.2005,15,1979−1987、及びJ.Org.Chem.1995,60,532−538のような公知文献に従って、実施可能である。
<3.光電変換素子>
本実施形態に係るフラーレン化合物は、n型半導体材料として用いることができる。以下で、本実施形態に係るフラーレン化合物を含む光電変換素子(以下、本実施形態に係る光電変換素子と称する)について説明する。本実施形態に係る光電変換素子は、少なくとも活性層と一対の電極とを含む。またこの活性層は、本実施形態に係るフラーレン化合物を含有する。本実施形態に係る光電変換素子の一例として、一般的な有機薄膜太陽電池に用いられる光電変換素子を図1に示す。もっとも、本実施形態に係る光電変換素子が図1の構造に限られるわけではない。
本発明の一実施形態としての光電変換素子107は、基板106、アノード101、正孔取り出し層102、有機活性層103、電子取り出し層104、及びカソード105をこの順番に有する。それぞれの各層の間には、後述の各層機能に影響を与えない程度に、別の層が挿入されていてもよい。また、光電変換素子107の用途に応じて、基板106、正孔取り出し層102、及び電子取り出し層104のうちの少なくとも1つは存在しなくてもよい。
<3.1 活性層(103)>
本発明に係る光電変換素子において、活性層103は光電変換が行われる層を指し、p型半導体化合物とn型半導体化合物を含む。光電変換素子107が光を受けると、光が活性層103に吸収され、p型半導体化合物とn型半導体化合物の界面で電気が発生し、発生した電気が電極101及び105から取り出される。
活性層103は無機化合物又は有機化合物のいずれを用いてもよいが、簡易な塗布プロセスにより形成しうる層であることが好ましい。より好ましくは、活性層103は有機化合物からなる有機活性層である。以下では、活性層103が有機活性層であるものとして説明する。
有機活性層の層構成は、p型半導体化合物とn型半導体化合物が積層された薄膜積層型、p型半導体化合物とn型半導体化合物が混合したバルクヘテロ接合型、薄膜積層型の中間層にp型半導体化合物とn型半導体化合物が混合した層(i層)を有する構造等が挙げられる。
有機活性層103の膜厚は特に限定されないが、通常10nm以上、好ましくは50nm以上であり、一方通常1.0×103nm以下、好ましくは5.0×102nm以下、より好ましくは2.0×102nm以下である。有機活性層の膜厚が10nm以上であることで、均一性が保たれ、短絡を起こしにくくなるため、好ましい。また、有機活性層の厚さが1.0×103nm以下であることで、内部抵抗が小さくなり、かつ電極間の距離が離れず電荷の拡散が良好となるため、好ましい。
有機活性層103の作製方法としては、特段に制限はないが、塗布法が好ましい。塗布法については、以下の任意の方法で行うことができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法、カーテンコート法等が挙げられる。例えば、n型半導体化合物を含むn型半導体層を形成した後で、p型半導体化合物を含むp型半導体層を形成することにより、有機活性層103を作製することができる。
<3.1.1 n型半導体化合物>
本実施形態に係る光電変換素子107においては、有機活性層103に含まれるn型半導体化合物として本実施形態に係るフラーレン化合物が用いられる。
有機活性層103は、複数の種類の本実施形態に係るフラーレン化合物を、n型半導体材料として含んでいてもよい。この複数の種類のフラーレン化合物は、フラーレン骨格の炭素数が互いに異なっていてもよい。この場合、C60フラーレン化合物とC70フラーレン化合物との混合物を用いることが好ましい。C60フラーレン化合物とC70フラーレン化合物との混合物を用いる場合、フラーレン骨格の炭素数がさらに多いフラーレン化合物が少量混入していてもよい。この場合、フラーレン骨格の炭素数がさらに多いフラーレン化合物の、フラーレン化合物全体に対する混入量は、モル比で20%以下であることが好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることがより好ましく、2%以下であることがさらにより好ましく、1%以下であることがとりわけ好ましく、0.5%以下であることが特に好ましい。
また、本実施形態に係る光電変換素子107において、有機活性層103は、本実施形態に係るフラーレン化合物とは別のn型半導体化合物とを含有していてもよい。但し、その量は、本実施形態に係るフラーレン化合物の奏する効果を著しく阻害しない範囲とする。以下に、有機活性層103が含みうる別のn型半導体化合物について説明する。
有機活性層103が含みうる別のn型半導体化合物としては、特段の制限はないが、具体的にはフラーレン化合物、8−ヒドロキシキノリンアルミニウムに代表されるキノリノール誘導体金属錯体;ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド又はペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の縮合環テトラカルボン酸ジイミド類;ペリレンジイミド誘導体、ターピリジン金属錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体、ペリノン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ビススチリル誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ビピリジン誘導体、ボラン誘導体、アントラセン、ピレン、ナフタセン又はペンタセン等の縮合多環芳香族炭化水素の全弗化物;単層カーボンナノチューブ、n型ポリマー等が挙げられる。
その中でも、フラーレン化合物、ボラン誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、N−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミド及びN−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体が好ましく、フラーレン化合物、N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体、N−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミド又はn型ポリマーがより好ましい。これらの化合物を一種又は二種以上含んでもよく、n型ポリマーを一種又は二種以上含んでもよい。
(フラーレン化合物)
有機活性層103が含みうる、本実施形態に係るフラーレン化合物以外のフラーレン化合物としては、特に限定されないが、例えば市販されているPCBM(フロンティアカーボン社製)、PCBNB(フロンティアカーボン社)等を好適に使用できる。
(N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体)
有機活性層103が含みうるN−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体としては、特段の制限はないが、具体的には国際公開第2008/063609号、国際公開第2009/115513号、国際公開第2009/098250号、国際公開第2009/000756号及び国際公開第2009/091670号に記載されている化合物が挙げられる。電子移動度が高く、可視域に吸収を有するため、電荷輸送と発電との両方に寄与する点から好ましい。
(ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド)
有機活性層103が含みうるナフタレンテトラカルボン酸ジイミドとしては、特段の制限はないが、具体的には国際公開第2008/063609号、国際公開第2007/146250号及び国際公開第2009/000756号に記載されている化合物が挙げられる。電子移動度が高く、溶解性が高く塗布性に優れている点から好ましい。
(n型ポリマー)
有機活性層103が含みうるn型ポリマーとしては、特段の制限はないが、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、ペリレンジイミド誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、ビピリジン誘導体及びボラン誘導体のうち少なくとも一つを構成ユニットとするn型ポリマーが挙げられる。
その中でも、ボラン誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、N−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミド及びN−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体のうち少なくとも一つを構成ユニットとするポリマーが好ましく、N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体及びN−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミドのうち少なくとも一つを構成ユニットとするn型ポリマーがより好ましい。これらの化合物を一種又は二種以上含んでもよい。
具体的には国際公開第2009/098253号、国際公開第2009/098250号、国際公開第2010/012710号及び国際公開第2009/098250号に記載されている化合物が挙げられる。可視域に吸収を有するため、発電に寄与し、粘度が高く、塗布性に優れている点から好ましい。
<3.1.2 p型半導体化合物>
有機活性層103が含みうるp型半導体化合物は特に限定されないが、例えば、高分子有機半導体化合物又は低分子有機半導体化合物を用いることができる。
光電変換素子の変換効率を向上させるためには、n型半導体化合物の特性とp型半導体化合物の特性との関係が重要となる。例えば、p型半導体層から効率よくn型半導体層へと電子を移動させるためには、p型半導体層及びn型半導体層に用いられる材料のLUMOエネルギー準位の相対関係が重要である。具体的には、p型半導体化合物のLUMOエネルギー準位が、n型半導体化合物のLUMOエネルギー準位より所定のエネルギーだけ上にあることが好ましい。また、例えば光電変換素子の開放電圧(Voc)は、p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位と、n型半導体化合物のLUMOエネルギー準位との差に依存する。このように、n型半導体化合物に適したp型半導体化合物を選択することが、光電変換素子の変換効率を向上させる上で重要である。
本実施形態に係るフラーレン化合物のように、電子吸引性基が付加しているフラーレン化合物は、HOMOエネルギー準位及びLUMOエネルギー準位が低下する傾向にある。従来、n型半導体化合物としてPCBMを用いる場合、p型半導体化合物としてはP3HTを用いることが多かった。しかしながら、本実施形態に係るフラーレン化合物を用いる場合、よりHOMOエネルギー準位及びLUMOエネルギー準位が低いp型半導体化合物を用いる方が、光電変換効率が向上することが期待される。言い換えれば、よりHOMOエネルギー準位及びLUMOエネルギー準位が低いp型半導体化合物を用いる場合に、本実施形態に係るフラーレン化合物を用いることは好適である。
特に、従来のp型半導体化合物とn型半導体化合物との組み合わせでは吸収できない波長の光を吸収できる光電変換素子において、特にタンデム型光電変換素子において、P3HTのような従来使用されているp型半導体化合物よりも低いHOMOエネルギー準位を有するp型半導体化合物を用いることが注目されている。このような光電変換素子において、n型半導体化合物として本実施形態に係るフラーレン化合物を用いることは有利でありうる。
この観点から、有機活性層103が本実施形態に係るフラーレン化合物をn型半導体化合物として含有する場合、p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位は通常−6.0eV以上、好ましくは−5.7eV以上、より好ましくは−5.5eV以上である。一方、通常−4.4eV以下、好ましくは−4.6eV以下、より好ましくは−5.0eV以下、特に好ましくは−5.2eV以下である。p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位が−6.0eV以上であることは、開放電圧(Voc)が向上し、光電変換効率が向上しうる点で好ましい。また、p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位が−4.4eV以下であることは、大気に対し安定になる点、及び光電変換効率が向上しうる点で好ましい。
また、有機活性層103が本実施形態に係るフラーレン化合物をn型半導体化合物として含有する場合、p型半導体化合物のLUMOエネルギー準位は、通常−3.7eV以上、好ましくは−3.6eV以上である。一方、通常−2.5eV以下、好ましくは−2.7eV以下である。p型半導体化合物のLUMOエネルギー準位が−2.5eV以下であることにより、バンドギャップが調整され長波長な光エネルギーを有効に吸収することができ、短絡電流密度が向上する。p型半導体化合物のLUMOエネルギー準位が−3.7eV以上であることにより、n型半導体への電子移動が起こりやすくなり短絡電流密度が向上する。
また、有機活性層103が本実施形態に係るフラーレン化合物をn型半導体化合物として含有する場合、p型半導体化合物の光学バンドギャップは、通常0.5eV以上、好ましくは1.0eV以上、より好ましくは1.2eV以上である。一方、通常2.5eV以下、好ましくは1.8eV以下、より好ましくは1.7eV以下、特に好ましくは1.6eV以下である。p型半導体化合物の光学バンドギャップが2.5eV以下であることは、吸収できる波長領域が増え、短絡電流密度(Jsc)が高くなりうる点で好ましい。また、p型半導体化合物の光学バンドギャップが0.5eV以上であることは、開放電圧(Voc)が高くなりうる点で好ましい。ここでp型半導体化合物の光学バンドギャップとは、励起子を生成するために必要となる最低のエネルギーをいう。光学バンドギャップが小さい場合、短絡電流密度(Jsc)が高くなりうる一方で、通常はLUMOエネルギー準位も低くなる。このため、このように光学バンドギャップが小さいp型半導体化合物は、比較的LUMOエネルギー準位の低い本実施形態に係るフラーレン化合物と併用することが、光電変換素子の変換効率が向上しうる点で好適である。
(高分子有機半導体化合物)
有機活性層103が含みうる高分子有機半導体化合物としては、特に限定はなく、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアセチレン又はポリアニリン等の共役コポリマー半導体;アルキル基やその他の置換基が置換されたオリゴチオフェン等のコポリマー半導体も挙げられる。また、二種以上のモノマー単位を共重合させた半導体コポリマーも挙げられる。共役コポリマーは、例えば、Handbook of Conducting Polymers,3rd Ed.(全2巻),2007、Materials Science and Engineering,2001,32,1−40、Pure Appl. Chem.2002,74,2031−3044、Handbook of THIOPHENE−BASED MATERIALS(全2巻),2009等の公知文献に記載されたコポリマーやその誘導体、及び記載されているモノマーの組み合わせによって合成し得るコポリマーを用いることができる。なお、有機活性層103は一種の高分子有機半導体化合物を含んでいても複数種の高分子有機半導体化合物の混合物を含んでいてもよい。
有機活性層103が含みうる高分子有機半導体化合物の具体例としては以下のものが挙げられるが、これに限定されない。
(低分子有機半導体化合物)
有機活性層103が含みうる低分子有機半導体化合物としては、特段の制限はないが、具体的には、ナフタセン、ペンタセン又はピレン等の縮合芳香族炭化水素;α−セキシチオフェン等のチオフェン環を4個以上含むオリゴチオフェン類;チオフェン環、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環、チアゾール環、チアジアゾール環及びベンゾチアゾール環のうち少なくとも一つ以上を含み、かつ合計4個以上連結したもの;フタロシアニン化合物及びその金属錯体、又はテトラベンゾポルフィリン等のポルフィリン化合物及びその金属錯体、等の大環状化合物等が挙げられる。好ましくは、フタロシアニン化合物及びその金属錯体又はポルフィリン化合物及びその金属錯体である。なお、有機活性層103は一種の低分子有機半導体化合物を含んでいても複数種の低分子有機半導体化合物の混合物を含んでいてもよい。
ポルフィリン化合物及びその金属錯体(図中のQがCH)、フタロシアニン化合物及びその金属錯体(図中のQがN)としては、例えば、以下のような構造の化合物が挙げられる。ポルフィリン化合物及びその金属錯体(図中のQがCH)、並びにフタロシアニン化合物及びその金属錯体(図中のQがN)は、さらなる置換基を有していてもよい。
ここで、Mは金属あるいは2個の水素原子を表し、金属としては、Cu、Zn、Pb、Mg、Co又はNi等の2価の金属のほか、軸配位子を有する3価以上の金属、例えば、TiO、VO、SnCl2、AlCl、InCl又はSi等も挙げられる。
中でも、Mが配位子を有することが好ましく、また、Mが大きい原子であることも好ましい。Mが配位子を有する場合又はMが大きな原子である場合、ポルフィリン化合物錯体又はフタロシアニン化合物錯体の平面性が低くなるため、結晶となった時にπ電子の重なりが大きくなり、π電子の縮退がより解けやすくなることが期待される。この場合、バンドギャップが狭くなり、得られる電流が大きくなるものと考えられる。このような観点からは有機活性層103は、中心金属(M)として配位子を有する金属原子又は大きい金属原子を有するポルフィリン化合物又はフタロシアニン化合物であることが好ましく、特にπ平面に対してピラミッド状にゆがんだ(シャトルコック型の)ポルフィリン化合物又はフタロシアニン化合物であることが好ましい。ここで中心金属(M)が有する配位子は、軸配位子であることがより好ましい。また、本明細書において「大きい金属原子」の定義としては、共有結合半径(単結合)が120pm以上、好ましくは140pm以上、特に好ましくは150pm以上であることをいう。
また、Mの有する配位子が電子吸引性を有することがさらに好ましい。この場合、ポルフィリン化合物錯体又はフタロシアニン化合物錯体のHOMOエネルギー準位がさらに低くなることが期待される。Mの有する配位子としては、上で定義された電子吸引性を有するものであればなんでもよいが、例えば塩素原子のようなハロゲン原子、酸素原子、シアノ基などが挙げられる。
Y1〜Y4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜24のアルキル基である。炭素数1〜24のアルキル基とは、炭素数が1〜24の飽和若しくは不飽和の鎖状炭化水素基又は炭素数が3〜24の飽和若しくは不飽和の環式炭化水素である。その中でも好ましくは炭素数1〜12の飽和若しくは不飽和の鎖状炭化水素基又は炭素数が3〜12の飽和若しくは不飽和の環式炭化水素である。
フタロシアニン化合物及びその金属錯体の例としては、29H,31H−フタロシアニン、銅フタロシアニン錯体、亜鉛フタロシアニン錯体、マグネシウムフタロシアニン錯体、鉛フタロシアニン錯体、チタンフタロシアニンオキシド錯体、バナジウムフタロシアニンオキシド錯体、インジウムフタロシアニンハロゲン錯体、ガリウムフタロシアニンハロゲン錯体、アルミニウムフタロシアニンハロゲン錯体、スズフタロシアニンハロゲン錯体、ケイ素フタロシアニンハロゲン錯体、又は銅4,4’,4’’,4’’’−テトラアザ−29H,31H−フタロシアニン錯体が挙げられ、より好ましくは、チタンフタロシアニンオキシド錯体、バナジウムフタロシアニンオキシド錯体、インジウムフタロシアニンクロロ錯体、アルミニウムフタロシアニンクロロ錯体である。
ポルフィリン化合物及びその金属錯体の例としては、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンコバルト(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン銅(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン亜鉛(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンニッケル(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンバナジウム(IV)オキシド、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンチタン(IV)オキシド、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンインジウム(III)クロリド、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンアルミニウム(III)クロリド、5,10,15,20−テトラ(4−ピリジル)−21H,23H−ポルフィン、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィン、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンコバルト(II)、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィン銅(II)、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィン亜鉛(II)、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンニッケル(II)、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンバナジウム(IV)オキシド、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンチタン(IV)オキシド、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンインジウム(III)クロリド、又は29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンアルミニウム(III)クロリドが挙げられ、より好ましくは、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンバナジウム(IV)オキシド、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンバナジウム(IV)オキシド、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンチタン(IV)オキシド、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンチタン(IV)オキシド、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンインジウム(III)クロリド、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンインジウム(III)クロリド、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンアルミニウム(III)クロリド、又は29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンアルミニウム(III)クロリドである。
低分子有機半導体化合物の製膜方法としては、蒸着法によって製膜する方法や低分子有機半導体化合物前駆体を塗布後に低分子有機半導体化合物に変換することで製膜する方法がある。塗布製膜できるというプロセス上の利点からは後者が好ましい。
低分子有機半導体化合物前駆体とは、例えば加熱や光照射等の外的刺激を与えることにより、その化学構造が変化し、低分子有機半導体化合物に変換される物質である。本実施形態に係る低分子有機半導体化合物前駆体は成膜性に優れるものが好ましい。特に、塗布法を適用できるようにするためには、前駆体自体が液状で塗布可能であるか又は前駆体が何らかの溶媒に対して溶解性が高く溶液として塗布可能であることが好ましい。このため、低分子有機半導体化合物前駆体の溶媒に対する溶解性は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。一方、上限に特段の制限はないが、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下である。
溶媒の種類としては、半導体前駆体化合物を均一に溶解あるいは分散できるものであれば特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン又はデカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン又はオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール又はプロパノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル又は乳酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン又はトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。なかでも好ましくは、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン又はオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等のケトン類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン又はトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン等のエーテル類である。より好ましくは、トルエン、キシレン又はシクロヘキシルベンゼン等の非ハロゲン芳香族炭化水素類;シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等の非ハロゲン系ケトン類;テトラヒドロフラン又は1,4−ジオキサン等の非ハロゲン系脂肪族エーテル類である。特に好ましくは、トルエン、キシレン又はシクロヘキシルベンゼン等の非ハロゲン芳香族炭化水素類である。なお、溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、低分子有機半導体化合物前駆体は、容易に半導体化合物に変換できることが好ましい。低分子有機半導体化合物前駆体から半導体化合物への変換工程においてどのような外的刺激を半導体前躯体に与えるかは任意であるが、通常は、熱処理、光処理等を行なう。好ましくは、熱処理である。この場合には、低分子有機半導体化合物前駆体の骨格の一部に逆ディールス・アルダー反応によって脱離可能な所定の溶媒に対する親溶媒性の基を有するものが好ましい。
また、低分子有機半導体化合物前駆体は、変換工程を経て、高い収率で半導体化合物に変換されることが好ましい。この際、低分子有機半導体化合物前駆体から変換して得られる半導体化合物の収率は有機光電変換素子の性能を損なわない限り任意であるが、低分子有機半導体化合物前躯体から得られる低分子有機半導体化合物の収率は、通常90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは99モル%以上である。
低分子有機半導体化合物前駆体は上記特徴を有するものであれば特に制限はないが、具体的には特開2007−324587号公報に記載の化合物等が用いられうる。なかでも好ましい例としては、下記式(A1)で表わされる化合物が挙げられる。
式(A1)において、X4及びX5の少なくとも一方はπ共役した2価の芳香族環を形成する基を表わし、Z1−Z2は熱又は光により脱離可能な基であって、Z1−Z2が脱離して得られるπ共役化合物が顔料分子となるものを表わす。また、X4及びX5のうちπ共役した2価の芳香族環を形成する基でないものは、置換又は無置換のエテニレン基を表わす。
式(A1)で表わされる化合物は、下記化学反応式に示すように熱又は光によりZ1−Z2が脱離して、平面性の高いπ共役化合物を生成する。この生成されたπ共役化合物が本実施形態に係る半導体化合物である。本実施形態においては、この半導体化合物が半導体特性を示すことが好ましい。
式(A1)で表わされる化合物の例としては、以下のものが挙げられる。なお、t−Buはt−ブチル基を表わす。Mは、2価の金属原子又は3価以上の金属と他の原子とが結合した原子団を表わす。
低分子有機半導体化合物前駆体の半導体化合物への変換方法は、公知のものを用いうる。
式(A1)で表わされる低分子有機半導体化合物前駆体は、位置異性体が存在する構造であってもよく、またその場合、複数の位置異性体の混合物から成っていてもよい。複数の位置異性体からなる低分子有機半導体化合物前駆体は、単一異性体成分からなる低分子有機半導体化合物前駆体と比較して溶媒に対する溶解度が向上するため、塗布製膜が行いやすく好ましい。複数の位置異性体の混合物とすると溶解度が向上する理由は、詳細なメカニズムは明確ではないが、化合物そのものの結晶性が潜在的に保持されつつも、複数の異性体混合物が溶液内に混在することで、三次元規則的な分子間相互作用が困難になるためと想定される。本実施形態において、複数の異性体化合物からなる前駆体混合物の非ハロゲン性溶媒への溶解度は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上である。上限に制限は無いが、通常50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。
p型半導体化合物として、中でも好ましくは、高分子有機半導体化合物としてはポリチオフェン等の共役コポリマー半導体であり、低分子有機半導体化合物としては、ナフタセン、ペンタセン、ピレン等の縮合芳香族炭化水素、フタロシアニン化合物及びその金属錯体、又はテトラベンゾポルフィリン(BP)等のポルフィリン化合物及びその金属錯体である。なお、上記一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。
p型半導体層作成方法については、特段の制限はないが、塗布法が好ましい。塗布法については、以下の任意の方法で行うことができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法又はカーテンコート法等が挙げられる。
高分子有機半導体化合物及び/又は低分子有機半導体化合物は、製膜された状態において、何らかの自己組織化した構造を有するものであっても、アモルファス状態であってもよい。
<3.2 バッファ層(102,104)>
本実施形態に係る光電変換素子107は、1対の電極(101、105)、及びその間に配置された有機活性層103の他に、さらにバッファ層を1以上有することが好ましい。バッファ層としては、電子取り出し層104及び正孔取り出し層102に分類することができ、それぞれ、有機活性層103と電極(101、105)の間に設けることができる。バッファ層を設けることで、活性層と電極の間での電子や正孔の移動度が高まるほか、電極間の短絡を防止しうるという利点がある。
電子取り出し層104と正孔取り出し層102とは、1対の電極間(101、105)に、有機活性層103を挟むように配置される。すなわち、本実施形態に係る光電変換素子107が電子取り出し層104と正孔取り出し層102の両者を含む場合、電極101、正孔取り出し層102、有機活性層103、電子取り出し層104、電極105がこの順に配置されている。本実施形態に係る光電変換素子107が電子取り出し層104を含み正孔取り出し層102を含まない場合は、電極101、有機活性層103、電子取り出し層104、電極105がこの順に配置されている。電子取り出し層104と正孔取り出し層102とは積層順序が逆であってもよいし、また電子取り出し層104と正孔取り出し層102との少なくとも一方が異なる複数の膜により構成されていてもよい。
<3.2.1 電子取り出し層(104)>
電子取り出し層104の材料は、p半導体化合物とn半導体化合物を含む有機活性層103から電極101へ電子の取り出し効率を向上させることが可能な材料であれば特に限定されない。具体的には、無機化合物又は有機化合物が挙げられる。無機化合物の材料としては、Li、Na、K又はCs等のアルカリ金属の塩;酸化チタン(TiOx)や酸化亜鉛(ZnO)のようなn型の酸化物半導体が望ましい。
アルカリ金属塩としては、LiF、NaF、KF又はCsFのようなフッ化物塩が望ましい。このような材料の動作機構は不明であるが、Al等の電子取り出し電極(カソード105)と組み合わされてカソード105の仕事関数を小さくし、太陽電池素子内部に印加される電圧を上げる事が考えられる。
有機化合物の材料としては、具体的には、バソキュプロイン(BCP)、バソフェナントレン(Bphen)、(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)、ホウ素化合物、オキサジアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA)、ペリレンテトラカルボン酸無水物(PTCDA)、又はホスフィンオキシド化合物若しくはホスフィンスルフィド化合物等の第16族元素とリン原子との間の二重結合を有するホスフィン化合物が挙げられる。なかでも好ましくは、アリール基で置換されたホスフィンオキシド化合物又はアリール基で置換されたホスフィンスルフィド化合物等のアリール基で置換された第16族元素とリン原子との間の二重結合を有するホスフィン化合物であり、より好ましくは、トリアリールホスフィンオキシド化合物、トリアリールホスフィンスルフィド化合物、ジアリールホスフィンオキシドユニットを2つ以上有する芳香族炭化水素化合物、ジアリールホスフィンスルフィドユニットを2つ以上有する芳香族炭化水素化合物又はジアリールホスフィンオキシドユニットを2つ以上有する芳香族炭化水素化合物である。上記アリール基にはフッ素原子又はパーフルオロアルキル基等のフッ素原子が置換されたアルキル基が置換されていてもよい。上記材料に加えてアルカリ金属又はアルカリ土類金属をドープしてもよい。
電子取り出し層104の材料のLUMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、通常−4.0eV以上、好ましくは−3.9eV以上である。一方、通常−1.9eV以下、好ましくは−2.0eV以下である。電子取り出し層104の材料のLUMOエネルギー準位が−1.9eV以下であることにより、電荷移動が促進される点で好ましい。電子取り出し層104の材料のLUMOエネルギー準位が−4.0eV以上であることにより、n型材料への逆電子移動が防がれる点で好ましい。
電子取り出し層104の材料のLUMOエネルギー準位の算出方法としては、サイクリックボルタモグラム測定法が挙げられる。例えば、公知文献(国際公報第2011/016430号)に記載の方法を参考にして実施することができる。
電子取り出し層104の材料のHOMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、通常−9.0eV以上、好ましくは−8.0eV以上である。一方、通常−5.0eV以下、好ましくは−5.5eV以下である。電子取り出し層104の材料のHOMOエネルギー準位が−5.0eV以下であることにより、正孔が移動してくることを阻止出来る点で好ましい。
電子取り出し層104の材料が有機化合物である場合の、この化合物のDSC法によるガラス転移温度(以下、Tgと記載する場合もある)は、特段の制限はないが、観測されないか、又は55℃以上であることが好ましい。DSC法によるガラス転移温度が観測されないとは、ガラス転移温度がないことを意味する。具体的には400℃以下のガラス転移温度の有無により判別する。DSC法によるガラス転移温度が観測されない材料は、熱的に高い安定性を有している点で好ましい。
又、DSC法によるガラス転移温度が55℃以上の化合物の中でも、ガラス転移温度が好ましくは65℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上である化合物が望ましい。一方、ガラス転移温度の上限は特に限定はないが、通常400℃以下、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下である。また、電子取り出し層104の材料は、DSC法によるガラス転移温度が30℃以上55度未満に観測されないものであることが好ましい。
本明細書におけるガラス転移温度とは、化合物のアモルファス状態の固体において、熱エネルギーにより局所的な分子運動が開始される温度とされており、比熱が変化する点として定義される。Tgよりさらに温度が上がると、固体構造が変化して結晶化が起こる(この時の温度を結晶化温度(Tc)とする)。さらに温度が上がると、融点(Tm)で融解し液体状態に変化することが一般的である。但し、高温で分子が分解したり、昇華したりして、これらの相転移が見られないこともある。ガラス転移温度は公知の方法で測定すればよく、例えばDSC法が挙げられる。
DSC法とは、JIS K−0129“熱分析通則”に定義された熱物性の測定法(示差走査熱量測定法)である。ガラス転移温度は、ガラス状態から分子運動が開始する温度であり、比熱の変化する温度としてDSCで測定できる。ガラス転移温度をより明確に決める為には、一度ガラス転移点以上の温度に加熱したサンプルを急冷した後に測定することが望ましい。例えば、公知文献(国際公報第2011/016430号)に記載の方法により、実施することができる。
電子取り出し層に用いられる化合物のガラス転移温度が55℃以上であることにより、この化合物は、印加される電場、流れる電流、曲げや温度変化による応力等の外部ストレスに対して構造が変化しにくいため、耐久性の面で好ましい。さらに、化合物の薄膜の結晶化が進みにくい傾向も有すことから、使用温度範囲においてこの化合物がアモルファス状態と結晶状態との間で変化しにくくなることにより、電子取り出し層としての安定性がよくなるため、耐久性の面で好ましい。この効果は、材料のガラス転移温度が高ければ高いほど、より顕著に表れる。
電子取り出し層104の膜厚は特に限定はないが、通常0.01nm以上、好ましくは0.1nm以上、より好ましくは0.5nm以上である。一方、通常40nm以下、好ましくは20nm以下である。電子取り出し層104の膜厚が0.01nm以上であることでバッファ材料としての機能を果たすことになり、電子取り出し層104の膜厚が40nm以下であることで、電子が取り出し易くなり、光電変換効率が向上する。
(第16族元素とリン原子との間の二重結合を有するホスフィン化合物)
第16族元素とリン原子との間の二重結合を有するホスフィン化合物としては、下記一般式(P1)で表される化合物が好ましい。下記一般式(P1)で表される化合物を電子取り出し層104の材料として用いることは、光電変換効率が向上する点及び/又は光電変換素子の耐久性が向上しうる点で好ましい。
式(P1)中、rは1以上の整数を表し、通常6以下であり、5以下であることが好ましく、3以下であることがさらに好ましく、2以下であることが特に好ましい。
R21及びR22は各々独立して、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい複素環基を表し、R21及びR22は互いに結合し環を形成してもよい。炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、アルキル基(シクロアルキル基を含む)等の飽和脂肪族炭化水素基;アルケニル基(シクロアルケニル基を含む)又はアルキニル基等の不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。なかでも、アルキル基等の飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。複素環基としては、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基が挙げられる。すなわちR21及びR22は、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基のような芳香族基(アリール基)でありうる。
中でも、R21及びR22のうち少なくとも一つが置換基を有していてもよい飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基であることが好ましい。R21及びR22のうち少なくとも一つが飽和脂肪族炭化水素基であると、溶解性が向上するために、塗布による成膜が容易となる点で好ましい。一方でR21及びR22のうち少なくとも一つが芳香族基であると、熱安定性が向上する点で好ましい。さらに芳香族基は平面性が高いため、R21及びR22のうち少なくとも一つが芳香族化合物である場合、上述の活性層103のn型半導体化合物とホスフィン化合物が相互作用しやすくなることが考えられる。この場合、バッファ層と活性層との間での電荷移動がより起こりやすくなるために、特に好ましい。
rが2以上の場合には複数のR21及び複数のR22が存在することとなるが、複数のR21及び複数のR22は各々独立して異なっていてもよい。また、複数のR21及び複数のR22のうちいずれか2つ以上が、互いに結合して環を形成してもよい。
アルキル基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基及びヘキシル基等が挙げられる。
シクロアルキル基としては、炭素数3〜20のものが好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、炭素数2〜20のものが好ましく、例えば、ビニル基又はスチリル基等が挙げられる。
シクロアルケニル基としては、炭素数3〜20のものが好ましく、例えば、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、又はシクロヘキセニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、炭素数2〜20のものが好ましく、例えば、メチルエチニル基又はトリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜30のものが好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、ビフェニレニル基、トリフェニレニル基、アントリル基、ピレニル基、フルオレニル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオランテニル基、ナフタセニル基、ペリレニル基、ペンタセニル基又はクオーターフェニル基等が挙げられる。なかでも、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、アントリル基、ピレニル基、フルオレニル基、アセナフテニル基、フルオランテニル基又はペリレニル基が好ましい。
アルコキシ基としては、炭素数2〜20のものが好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基及びt−ブトキシ基、ベンジルオキシ基、エチルヘキシルオキシ基等の直鎖又は分岐のアルコキシ基が挙げられる。
脂肪族複素環基としては、炭素数2〜30のものが好ましく、例えば、ピロリジル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、テトラヒドロフラニル基、ジオキサニル基、モルホリニル基又はチオモルホリニル基が挙げられる。なかでも、ピロリジル基、ピペリジル基又はピペラジニル基が好ましい。芳香族複素環基としては、炭素数2〜30のものが好ましく、例えば、ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、フェニルカルバゾリル、フェノキサチイニル基、キサンテニル基、ベンゾフラニル基、チアントレニル基、インドリジニル基、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、フェナントロリニル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基又はキノキサリニル基等が挙げられる。なかでも、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピラゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、イミダゾリル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、フェナントロリニル基、キノキサリニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、フェニルカルバゾリル、キサンテニル基又はフェノキサジニル基が好ましい。
また、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基は、縮合多環芳香族基であってもよい。縮合多環芳香族基を形成する環としては、置換基を有していてもよい環状アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基が好ましい。環状アルキル基としては、例えば、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。芳香族複素環基としては、例えば、ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピラゾリル基又はイミダゾリル基等が挙げられる。これらの中でも、ピリジル基又はチエニル基が好ましい。
縮合多環芳香族基として、例えば、縮合多環芳香族炭化水素基及び縮合多環芳香族複素環基が好適なものとして挙げられる。縮合多環芳香族炭化水素基としては、例えば、フェナントリル基、アントリル基、ピレニル基、フルオランテニル基、ナフタセニル基、ペリレニル基、ペンタセニル基又はトリフェニレニル基等が好適なものとして挙げられる。また、縮合多環芳香族複素環基として、例えば、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基又はフェナントロリニル基等が好適なものとして挙げられる。
縮合多環芳香族基の具体例としては以下のものが挙げられるが、これに限定されることはない。また、下記縮合多環芳香族基において、リン原子と結合する原子の位置は特に限定されない。
R23は置換基を有していてもよいr価の炭化水素基、置換基を有していてもよいr価の複素環基、又は置換基を有していてもよい炭化水素基及び置換基を有していてもよい複素環基の少なくとも一方が連結したr価の基を表す。すなわちR23は、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基のような芳香族基でありうる。なお、R23は置換基を有してもよいr価の縮合多環芳香族基であってもよい。R23は、好ましくは、置換基を有していてもよいr価の芳香族基であり、より好ましくは、置換基を有してもよいr価の縮合多環芳香族基である。
炭化水素基としては、R21及びR22について説明した1価の炭化水素基又はそれに対応する2価以上6価以下の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の種類としては、R21及びR22と同様に脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基が挙げられる。
複素環基としては、R21及びR22について説明した1価の複素環基又はそれに対応する2価以上6価以下の複素環基が挙げられる。複素環基の種類としては、R21及びR22と同様に脂肪族複素環基又は芳香族複素環基が挙げられる。
縮合多環芳香族基としては、R21及びR22について説明した1価の縮合多環芳香族基又はその2価以上6価以下の縮合多環芳香族基が挙げられる。
R23が2価の基の場合、以下の具体例が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
R21、R22及びR23についての説明における「置換基を有していてもよい」との用語は、置換基を1以上有していてもよいことを意味する。この置換基としては特に限定はないが、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、アセチル基、スルホニル基、シリル基、ボリル基、ニトリル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
アルキル基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、炭素数2〜20のものが好ましく、例えば、ビニル基、スチリル基及びジフェニルビニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、炭素数2〜20のものが好ましく、例えば、メチルエチニル基、フェニルエチニル基及びトリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
シリル基としては,炭素数2〜20のものが好ましく、例えば、トリメチルシリル基及びトリフェニルシリル基等が挙げられる。
ボリル基としては、例えば、ジメシチルボリル基等の芳香族基置換ボリル基が挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数2〜20のものが好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、エチルヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基及びt−ブトキシ基等の直鎖又は分岐のアルコキシ基が挙げられる。
アミノ基としては、例えば、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基又はカルバゾリル基等の芳香族置換アミンが挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、これらは単環基に何ら限定されず、単環芳香族炭化水素基、縮合多環芳香族炭化水素基及び環連結芳香族炭化水素基のいずれであってもよい。
単環芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。縮合多環芳香族炭化水素基としては、例えば、ビフェニル基、フェナントリル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、ピレニル基又はペリレニル基等が挙げられる。環連結芳香族炭化水素基としては、例えば、ビフェニル基及びターフェニル等が挙げられる。これらの中でも、フェニル基又はナフチル基が好ましい。
芳香族複素環基としては、炭素数5〜20のものが好ましく、例えば、ピリジル基、チエニル基、フリル基,オキサゾリル基、チアゾリル基、オキサジアゾリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基又はフェニルカルバゾリル基等が挙げられる。これらの中でも、ピリジル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基又はフェナントリル基が好ましい。
式(P1)においてX6は16族元素を表し、具体的には、酸素、硫黄又はセレンが挙げられる。なかでも、酸素又は硫黄が好ましく、酸素が特に好ましい。式(P1)で表される化合物の具体例(X6は酸素、硫黄又はセレン等の16族元素を表す。)を以下に例示する。
<3.2.2 正孔取り出し層(102)>
正孔取り出し層102の材料は、特に限定は無く有機活性層103からアノード101へ正孔の取り出し効率を向上させることが可能な材料であれば特に限定されない。具体的には、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミン又はポリアニリン等に、スルホン酸及び/又はヨウ素等がドーピングされた導電性ポリマー、スルホニル基を置換基に有するポリチオフェン誘導体、アリールアミン等の導電性有機化合物、上述のp型半導体化合物等が挙げられる。その中でも、スルホン酸をドーピングした導電性ポリマーが好ましく、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)がより好ましい。また、金、インジウム、銀又はパラジウム等の金属等の薄膜も使用することができ、特に三酸化モリブデンのような金属酸化物を用いることもまた好ましい。さらに、金属等の薄膜は、単独で形成してもよく、上記の有機材料と組み合わせて用いることもできる。
正孔取り出し層102の膜厚は特に限定はないが、通常2nm以上である。一方、通常40nm以下、好ましくは20nm以下である。正孔取り出し層102の膜厚が2nm以上であることでバッファ材料としての機能を果たすことになり、正孔取り出し層102の膜厚が40nm以下であることで、正孔が取り出し易くなり、光電変換効率が向上する。
電子取り出し層104と正孔取り出し層102の形成方法に制限はない。例えば、昇華性を有する材料を用いる場合は真空蒸着法等により形成することができる。また、例えば、溶媒に可溶な材料を用いる場合は、スピンコートやインクジェット等の湿式塗布法等により形成することができる。正孔取り出し層102に半導体化合物を用いる場合は、上述の有機活性層の低分子有機半導体化合物と同様に、前駆体を用いて層を形成した後に前駆体を半導体化合物に変換してもよい。
<3.3 電極(101,105)>
本実施形態に係る電極(101及び105)は、光吸収により生じた正孔及び電子を捕集する機能を有するものである。したがって、一対の電極には、正孔の捕集に適した電極101(以下、アノードと記載する場合もある)と電子の捕集に適した電極105(以下、カソードと記載する場合もある)を用いることが好ましい。1対の電極は、いずれか一方が透光性であればよく、両方が透光性であっても構わない。透光性があるとは太陽光が40%以上透過する程度のものである。また、透明電極の太陽光線透過率が70%以上であることが、透明電極を透過させて活性層に光を到達させるためには、好ましい。なお、光の透過率は、通常の分光光度計で測定可能できる。
正孔の捕集に適した電極101(アノード)とは、一般には仕事関数がカソードよりも高い値を有する導電性材料で、有機活性層103で発生した正孔をスムーズに取り出す機能を有する電極である。アノード101の材料を挙げると、例えば、酸化ニッケル、酸化スズ、酸化インジウム、酸化スズインジウム(ITO)、インジウム−ジルコニウム酸化物(IZO)、酸化チタン、酸化インジウム又は酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;金、白金、銀、クロム又はコバルト等の金属あるいはその合金が挙げられる。
これらの物質は高い仕事関数を有するため、好ましく、さらに、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたPEDOT/PSSで代表されるような導電性高分子材料を積層することができるため、好ましい。このような導電性高分子を積層する場合には、その導電性高分子材料の仕事関数が高いことから、上記のような高い仕事関数の材料でなくとも、AlやMg等のカソードに適した金属も広く用いることが可能である。
ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたPEDOT/PSSや、ポリピロール又はポリアニリン等にヨウ素等のドーピングした導電性高分子材料をアノードの材料として使用することもできる。また、アノード101が透明電極である場合には、ITO、酸化亜鉛又は酸化スズ等の透光性がある導電性金属酸化物を用いることが好ましく、特にITOが好ましい。
アノード101の膜厚は特に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上、さらに好ましくは、50nm以上である。一方、通常10μm以下、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは500nm以下である。アノード101の膜厚が10nm以上であることにより、シート抵抗が抑えられ、アノード101の膜厚が10μm以下であることにより、光透過率が低下せずに効率よく光を電気に変換することができる。透明電極に用いる場合には、光透過率とシート抵抗を両立する膜厚を選ぶ必要がある。
アノード101のシート抵抗は、特段の制限はないが、通常1Ω/□以上、一方、1000Ω/□以下、好ましくは500Ω/□以下、さらに好ましくは100Ω/□以下である。
アノード101の形成方法は、蒸着若しくはスパッタ等の真空成膜方法又はナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する方法等がある。
電子の捕集に適した電極105(カソード)とは、一般には仕事関数がアノードよりも高い値を有する導電性材料で、有機活性層103で発生した電子をスムーズに取り出す機能を有する電極であり、本実施形態に係る電子取り出し層104と隣接することを特徴とする。
カソード105の材料を挙げると、例えば、白金、金、銀、銅、鉄、スズ、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム又はマグネシウム等の金属及びその合金;フッ化リチウムやフッ化セシウム等の無機塩;酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化リチウム又は酸化セシウムのような金属酸化物等が挙げられる。これらの材料は低い仕事関数を有する材料のため、好ましい。カソード105についてもアノード101と同様に、電子取り出し層104にチタニアのようなn型半導体で導電性を有するものを用いることにより、アノード101に適した高い仕事関数を有する材料も用いることができる。電極保護の観点から、アノード101材料として好ましくは、白金、金、銀、銅、鉄、スズ、アルミニウム、カルシウム又はインジウム等の金属及びこれらの金属を用いた合金である。
カソード105の膜厚は特に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上下、より好ましくは50nm以上である。一方、通常10μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは500nm以下である。透明電極に用いる場合には、光透過率とシート抵抗を両立する膜厚を選ぶ必要がある。カソード105の膜厚が10nm以上であることにより、シート抵抗が抑えられ、カソード105の膜厚が10μm以下であることにより、光透過率が低下せずに効率よく光を電気に変換することができる。
カソード105のシート抵抗は、特に制限は無いが、通常1000Ω/□以下、好ましくは500Ω/□以下、さらに好ましくは100Ω/□以下である。下限に制限は無いが、通常は1Ω/□以上である。
カソード105の形成方法は、蒸着若しくはスパッタ等の真空成膜方法又はナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する方法等がある。
さらに、アノード101又はカソード105は2層以上積層してもよく、表面処理により特性(電気特性やぬれ特性等)を改良してもよい。
アノード101及びカソード105を積層した後に、得られた光電変換素子を通常50℃以上、好ましくは80℃以上、一方、通常300℃以下、好ましくは280℃以下、より好ましくは250℃以下の温度範囲において、加熱することが好ましい(この工程をアニーリング処理工程と称する場合がある)。このアニーリング処理工程の温度を50℃以上にすることで、電子取り出し層104と電極101及び/又は電子取り出し層104と活性層103の密着性が向上する効果が得られるため、好ましい。このアニーリング処理工程の温度が300℃以下にすることで、活性層の有機化合物が熱分解する可能性が低くなるため、好ましい。
なお、温度操作については上記範囲内で段階的に加熱してもよい。加熱する時間としては、通常1分以上、好ましくは3分以上、一方、通常3時間以下、好ましくは1時間以下である。このアニーリング処理は太陽電池性能のパラメータである開放電圧、短絡電流及びフィルファクターが一定の値になったところで終了させることが好ましい。また、このアニーリング処理の雰囲気は常圧下、かつ不活性ガス雰囲気で実施することが好ましい。
このアニーリング処理工程により、電子取り出し層104と電極101及び/又は電子取り出し層104と活性層103の密着性を向上させることで、光電変換素子の熱安定性や耐久性等が向上する効果とともに、有機活性層の自己組織化が促進される効果が得られる。加熱する方法としては、ホットプレート等の熱源に光電変換素子を載せてもよいし、オーブン等の加熱雰囲気下に光電変換素子を入れてもよい。また、バッチ式であっても連続方式であっても構わない。
<3.4 基板(106)>
本実施形態に係る光電変換素子107は、通常は支持体となる基板106を有する。すなわち、基板上に、電極と、活性層、バッファ層とが形成される。基板の材料(基板材料)は効果を著しく損なわない限り任意である。基板材料の好適な例を挙げると、石英、ガラス、サファイア又はチタニア等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂フィルム、塩化ビニル又はポリエチレン等のポリオレフィン、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリノルボルネン又はエポキシ樹脂等の有機材料;紙又は合成紙等の紙材料;ステンレス、チタン又はアルミニウム等の金属に、絶縁性を付与するために表面をコート又はラミネートしたもの等の複合材料等が挙げられる。ガラスとしてはソーダガラスや青板ガラスや無アルカリガラス等が挙げられる。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましい。
基板106の形状に制限はなく、例えば、板、フィルム、シート等の形状を用いることができる。基板106の膜厚に制限はない。ただし、通常5μm以上、中でも20μm以上であり、一方、通常20mm以下、中でも10mm以下に形成することが好ましい。基板の膜厚が5μm以上であると、半導体デバイスの強度が不足する可能性は少なくなるため、好ましい。基板の膜厚が20mm以下であることで、コストが抑えられ、かつ重量が重くならず、好ましい。又、基板がガラスの場合の膜厚は、通常0.01mm以上、好ましくは0.1mm以上であり、一方、また、通常1cm以下、好ましくは0.5cm以下である。ガラス基板の膜厚が0.01mm以上であると、機械的強度が増加し、割れにくくなるために、好ましい。ガラス基板の膜厚が0.5cm以下であると、重量が重くならずに好ましい。
<4.太陽電池>
本実施形態に係る光電変換素子107は、太陽電池素子として、特に薄膜太陽電池として使用されることが好ましい。
図2は本発明の一実施形態としての薄膜太陽電池の構成を模式的に示す断面図である。図2に示すように、本実施形態の薄膜太陽電池14は、耐候性保護フィルム1と、紫外線カットフィルム2と、ガスバリアフィルム3と、ゲッター材フィルム4と、封止材5と、太陽電池素子6と、封止材7と、ゲッター材フィルム8と、ガスバリアフィルム9と、バックシート10とをこの順に備える。そして、耐候性保護フィルム1が形成された側(図中下方)から光が照射されて、太陽電池素子6が発電するようになっている。なお、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシート等の防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム8及び/又はガスバリアフィルム9を用いなくてもよい。
<4.1 耐候性保護フィルム(1)>
耐候性保護フィルム1は天候変化から太陽電池素子6を保護するフィルムである。
太陽電池素子6の構成部品のなかには、温度変化、湿度変化、自然光及び/又は風雨による侵食等により劣化するものがある。そこで、耐候性保護フィルム1で太陽電池素子6を覆うことにより、太陽電池素子6等を天候変化等から保護し、発電能力を高く維持するようにしている。
耐候性保護フィルム1は、薄膜太陽電池14の最表層に位置するため、耐候性、耐熱性、透明性、撥水性、耐汚染性及び/又は機械強度等の、薄膜太陽電池14の表面被覆材として好適な性能を備え、しかもそれを屋外暴露において長期間維持する性質を有することが好ましい。
また、耐候性保護フィルム1は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、特に好ましくは95%である。
さらに、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せられることが多いため、耐候性保護フィルム1も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、耐候性保護フィルム1の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで薄膜太陽電池14の使用時に耐候性保護フィルム1が融解・劣化する可能性を低減できる。
耐候性保護フィルム1を構成する材料は、天候変化から太陽電池素子6を保護することができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリル系樹脂、各種ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド−イミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、シリコーン系樹脂又はポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
中でも好ましくはフッ素系樹脂が挙げられ、その具体例を挙げるとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、4−フッ化エチレン−パークロロアルコキシ共重合体(PFA)、4−フッ化エチレン−6−フッ化プロピレン共重合体(FEP)、2−エチレン−4−フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリ3−フッ化塩化エチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)又はポリフッ化ビニル(PVF)等が挙げられる。
なお、耐候性保護フィルム1は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、耐候性保護フィルム1は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
耐候性保護フィルム1の厚みは特に規定されないが、通常10μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まる傾向にある。
また耐候性保護フィルム1には、他のフィルムとの接着性の改良のために、コロナ処理及び/又はプラズマ処理等の表面処理を行なってもよい。
耐候性保護フィルム1は、薄膜太陽電池14においてできるだけ外側に設けることが好ましい。薄膜太陽電池14の構成部材のうちより多くのものを保護できるようにするためである。
<4.2 紫外線カットフィルム(2)>
紫外線カットフィルム2は紫外線の透過を防止するフィルムである。薄膜太陽電池14の構成部品のなかには紫外線により劣化するものがある。また、ガスバリアフィルム3、9等は種類によっては紫外線により劣化するものがある。そこで、紫外線カットフィルム2を薄膜太陽電池14の受光部分に設け、紫外線カットフィルム2で太陽電池素子6の受光面6aを覆うことにより、太陽電池素子6及び必要に応じてガスバリアフィルム3、9等を紫外線から保護し、発電能力を高く維持することができるようになっている。
紫外線カットフィルム2に要求される紫外線の透過抑制能力の程度は、紫外線(例えば、波長300nm)の透過率が50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、特に好ましくは10%以下である。また、紫外線カットフィルム2は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、特に好ましくは95%以上である。
さらに、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せられることが多いため、紫外線カットフィルム2も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、紫外線カットフィルム2の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点が低すぎると薄膜太陽電池14の使用時に紫外線カットフィルム2が融解する可能性がある。また、紫外線カットフィルム2は、柔軟性が高く、隣接するフィルムとの接着性が良好であり、水蒸気や酸素をカットしうるものが好ましい。
紫外線カットフィルム2を構成する材料は、紫外線の強度を弱めることができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系又はエステル系の樹脂に紫外線吸収剤を配合して成膜したフィルム等が挙げられる。また、紫外線吸収剤を樹脂中に分散あるいは溶解させたものの層(以下、適宜「紫外線吸収層」という)を基材フィルム上に形成したフィルムを用いてもよい。
紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系のものを用いることができる。中でもベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系が好ましい。この例としては、ベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系の種々の芳香族系有機化合物等が挙げられる。なお、紫外線吸収剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上述のように、紫外線吸収フィルムとしては紫外線吸収層を基材フィルム上に形成したフィルムを用いることもできる。このようなフィルムは、例えば、紫外線吸収剤を含む塗布液を基材フィルム上に塗布し、乾燥させることで作製できる。基材フィルムの材質は特に限定されないが、耐熱性、柔軟性のバランスが良好なフィルムが得られる点で、例えばポリエステルが挙げられる。
塗布は任意の方法で行うことができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法又はカーテンコート法等が挙げられる。また、これらの方法は1種を単独で行なってもよく、2種以上を任意に組み合わせて行うこともできる。
塗布液に用いる溶剤は、紫外線吸収剤を均一に溶解あるいは分散できるものであれば特に限定されない。例えば液状の樹脂を溶剤として用いることができ、その例を挙げると、ポリエステル系、アクリル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系又はポリスチレン系等の各種合成樹脂等が挙げられる。また、例えば、ゼラチンやセルロース誘導体等の天然高分子;水、水とエタノール等のアルコール混合溶液等も溶剤として用いることができる。さらに、溶剤として有機溶剤を使用してもよい。有機溶剤を使用すれば、色素や樹脂を溶解又は分散させることが可能となり、塗工性を向上させることが可能となる。なお、溶剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
塗布液にはさらに界面活性剤も含有させてもよい。界面活性剤の使用により、紫外線吸収色素の樹脂への分散性が向上する。これにより、紫外線吸収層において、微小な泡によるヌケ、異物等の付着による凹み及び/又は乾燥工程でのハジキ等の発生が抑制される。界面活性剤としては、公知の界面活性剤(カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤又はノニオン系界面活性剤)を用いることができる。中でも、シリコーン系界面活性剤又はフッ素系界面活性剤が好ましい。なお、界面活性剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
なお、塗布液を基材フィルムに塗布した後の乾燥は、例えば熱風乾燥、赤外線ヒーターによる乾燥等の公知の乾燥方法が採用できる。中でも、乾燥速度が速い熱風乾燥が好適である。
紫外線カットフィルム2の具体的な商品の例を挙げると、カットエース(MKVプラスティック株式会社)等が挙げられる。なお、紫外線カットフィルム2は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、紫外線カットフィルム2は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
紫外線カットフィルム2の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることで紫外線の吸収が高まる傾向にあり、薄くすることで可視光の透過率を増加させられる傾向にある。
紫外線カットフィルム2は、太陽電池素子6の受光面6aの少なくとも一部を覆う位置に設ければよいが、好ましくは太陽電池素子6の受光面6aの全てを覆う位置に設ける。ただし、太陽電池素子6の受光面6aを覆う位置以外の位置にも紫外線カットフィルム2が設けられていてもよい。
<4.3 ガスバリアフィルム(3)>
ガスバリアフィルム3は水及び酸素の透過を防止するフィルムである。
太陽電池素子6は湿気及び酸素に弱い傾向があり、特に、ZnO:Al等の透明電極や、有機太陽電池素子が水分及び酸素により劣化することがある。そこで、ガスバリアフィルム3で太陽電池素子6を被覆することにより、太陽電池素子6を水及び酸素から保護し、発電能力を高く維持することができる。
ガスバリアフィルム3に要求される防湿能力の程度は、太陽電池素子6の種類等に応じて様々である。例えば、太陽電池素子6が有機太陽電池素子である場合には、単位面積(1m2)の1日あたりの水蒸気透過率が、1×10−1g/m2/day以下であることが好ましく、1×10−2g/m2/day以下であることがより好ましく、1×10−3g/m2/day以下であることが更に好ましく、1×10−4g/m2/day以下であることが中でも好ましく、1×10−5g/m2/day以下であることがとりわけ好ましく、1×10−6g/m2/day以下であることが特に好ましい。水蒸気が透過しなければしないほど、太陽電池素子6及び太陽電池素子6のZnO:Al等の透明電極の、水分との反応に起因する劣化が抑えられるので、発電効率が上がると共に寿命が延びる。
ガスバリアフィルム3に要求される酸素透過性の程度は、太陽電池素子6の種類等に応じて様々である。例えば、太陽電池素子6が有機太陽電池素子である場合には、単位面積(1m2)の1日あたりの酸素透過率が、1×10−1cc/m2/day/atm以下であることが好ましく、1×10−2cc/m2/day/atm以下であることがより好ましく、1×10−3cc/m2/day/atm以下であることが更に好ましく、1×10−4cc/m2/day/atm以下であることが中でも好ましく、1×10−5cc/m2/day/atm以下であることがとりわけ好ましく、1×10−6cc/m2/day/atm以下であることが特に好ましい。酸素が透過しなければしないほど、太陽電池素子6及び太陽電池素子6のZnO:Al等の透明電極の、酸化による劣化が抑えられる。
従来はこのように高い防湿及び酸素遮断能力を有するガスバリアフィルム3の実装が困難であったため、有機太陽電池素子のように優れた太陽電池素子を備えた太陽電池を実現することが困難であったが、このようなガスバリアフィルム3を適用することにより有機太陽電池素子等の優れた性質を活かした薄膜太陽電池14の実施が容易となる。
また、ガスバリアフィルム3は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、中でも好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、その中でも特に好ましくは97%以上である。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
さらに、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せられることが多いため、ガスバリアフィルム3も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、ガスバリアフィルム3の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで薄膜太陽電池14の使用時にガスバリアフィルム3が融解・劣化する可能性を低減できる。
ガスバリアフィルム3の具体的な構成は、太陽電池素子6を水から保護できる限り任意である。ただし、ガスバリアフィルム3を透過しうる水蒸気や酸素の量を少なくできるフィルムほど製造コストが高くなるため、これらの点を総合的に勘案して適切なものを使用することが好ましい。以下、ガスバリアフィルム3の構成について、例を挙げて説明する。
ガスバリアフィルム3の構成として好ましいものは以下の2例が挙げられる。一つ目の例は、プラスチックフィルム基材に無機バリア層を配置したフィルムである。この際、無機バリア層は、プラスチックフィルム基材の片面のみに形成してもよいし、プラスチックフィルム基材の両面に形成してもよい。両面に形成するときは、両面に形成する無機バリア層の数が、それぞれ一致していていもよく、異なっていてもよい。
二つ目の例は、プラスチックフィルム基材に、無機バリア層とポリマー層とが互いに隣接して配置された2層からなるユニット層が形成されたフィルムである。この際、無機バリア層とポリマー層とが互いに隣接して配置された2層からなるユニット層を1単位として、このユニット層が1単位(無機バリア層1層とポリマー層1層を合わせて1単位の意味)のみを形成してもよいが、2単位以上形成してもよい。例えば2〜5単位、積層してもよい。
ユニット層は、プラスチックフィルム基材の片面のみに形成してもよいし、プラスチックフィルム基材の両面に形成してもよい。両面に形成するときは、両面に形成する無機バリア層及びポリマー層の数が、それぞれ一致していていもよく、異なっていてもよい。また、プラスチックフィルム基材上にユニット層を形成する場合、無機バリア層を形成してからその上にポリマー層を形成してもよいし、ポリマー層を形成してから無機バリア層を形成してもよい。
(プラスチックフィルム基材)
ガスバリアフィルム3に使用されるプラスチックフィルム基材は、上記の無機バリア層及びポリマー層を保持しうるフィルムであれば特に制限はなく、ガスバリアフィルム3の使用目的等から適宜選択することができる。
プラスチックフィルム基材の材料の例を挙げると、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂又はアクリロイル化合物が挙げられる。また、スピロビインダン、スピロビクロマンを含む縮合ポリマーを用いるのも好ましい。ポリエステル樹脂の中でも、二軸延伸を施したポリエチレンテレフタレート(PET)又は同じく二軸延伸したポリエチレンナフタレート(PEN)は、熱的寸度安定性に優れるため、プラスチックフィルム基材として好ましく用いられる。なおプラスチックフィルム基材の材料は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
プラスチックフィルム基材の厚みは特に規定されないが、通常10μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まる傾向にある。
プラスチックフィルム基材は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、中でも好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、その中でも特に好ましくは97%以上である。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
プラスチックフィルム基材には、無機バリア層との密着性向上のため、アンカーコート剤の層(アンカーコート層)を形成してもよい。通常、アンカーコート層はアンカーコート剤を塗布して形成される。アンカーコート剤としては、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート含有樹脂及びこれらの共重合体等が挙げられる。中でも、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂及びアクリル樹脂の中から選ばれる少なくとも1種類以上の樹脂と、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂及びイソシアネート基含有樹脂の中から選ばれる少なくとも1種類以上の樹脂とを組み合わせたものが好ましい。なお、アンカーコート剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
アンカーコート層の厚さは、通常0.005μm以上、好ましくは0.01μm以上であり、通常5μm以下、好ましくは1μm以下である。この範囲の上限値以下の厚さであれば滑り性が良好であり、アンカーコート層自体の内部応力によるプラスチックフィルム基材からの剥離もほとんどない。また、この範囲の下限値以上の厚さであれば、均一な厚さを保つことができ好ましい。
また、プラスチックフィルム基材へのアンカーコート剤の塗布性、接着性を改良するため、アンカーコート剤の塗布前に、プラスチックフィルム基材に通常の化学処理、放電処理等の表面処理を施してもよい。
(無機バリア層)
無機バリア層は通常は金属酸化物、窒化物又は酸化窒化物により形成される層である。なお、無機バリア層を形成する金属酸化物、窒化物及び酸化窒化物は、1種でもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
金属酸化物としては、例えば、Si、Al、Mg、In、Ni、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce又はTa等の酸化物が挙げられる。中でも、高いバリア性と高透明性とを両立させるために、酸化アルミニウム又は酸化ケイ素を含むことが好ましく、特に水分の透過性、光線透過性の観点から、酸化ケイ素を含むことが好ましい。
各々の金属原子と酸素原子との比率も任意であるが、無機バリア層の透明度を向上させ着色を防ぐためには、酸素原子の比率が酸化物の化学量論的な比率から極端に少なくないことが望ましい。一方、無機バリア層の緻密性を向上させバリア性を高くするためには、酸素原子を少なくすることが望ましい。この観点から、例えば金属酸化物としてSiOxを用いる場合にはこのxの値は1.5〜1.8が特に好ましい。また、例えば金属酸化物としてAlOxを用いる場合にはこのxの値は1.0〜1.4が特に好ましい。
また、2種以上の金属酸化物より無機バリア層を構成する場合、金属酸化物としては酸化アルミニウム及び酸化ケイ素を含むことが望ましい。中でも無機バリア層が酸化アルミニウム及び酸化ケイ素からなる場合、無機バリア層中のアルミニウムとケイ素との比率は任意に設定することができるが、Si/Alの比率は、通常1/9以上、好ましくは2/8以上であり、また、通常9/1以下、好ましくは2/8以下である。
無機バリア層の厚みを厚くするとバリア性が高まる傾向にあるが、曲げた際にクラックを生じにくくし割れを防ぐためには、厚みを薄くすることが望ましい。そこで無機バリア層の適正な厚みとしては、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは200nm以下である。
無機バリア層の成膜方法に制限は無いが、一般的にスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等で行うことができる。例えばスパッタリング法では1種類のあるいは複数の金属ターゲットと酸素ガスを原料とし、プラズマを用いた反応性スパッタ方式で形成することができる。
(ポリマー層)
ポリマー層にはいずれのポリマーでも使用することができ、例えば真空チャンバー内で成膜できるものも用いることができる。なお、ポリマー層を構成するポリマーは、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
このようなポリマーを与える化合物としては多種多様なものを用いることができるが、例えば以下の(i)〜(vii)のようなものが例示される。なお、モノマーは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(i)例えばヘキサメチルジシロキサン等のシロキサンが挙げられる。ヘキサメチルジシロキサンを用いる場合のポリマー層の形成方法の例を挙げると、RF電極を用いた平行平板型のプラズマ装置にヘキサメチルジシロキサンを蒸気として導入し、プラズマ中で重合反応を起こさせ、プラスチックフィルム基材上に堆積させることでポリマー層をポリシロキサン薄膜として形成できる。
(ii)例えばジパラキシリレン等のパラキシリレンが挙げられる。ジパラキシリレンを用いる場合のポリマー層の形成方法の例を挙げると、まず高真空中でジパラキシリレンの蒸気を650℃〜700℃で加熱することで熱分解させて熱ラジカルを発生させる。そして、そのラジカルモノマー蒸気をチャンバー内に導いて、プラスチックフィルム基材へと吸着させると同時にラジカル重合反応を進行させてポリパラキシリレンを堆積させることでポリマー層を形成できる。
(iii)例えば二種のモノマーを交互に繰り返し付加重合させることができるモノマーが挙げられる。これにより得られるポリマーは重付加ポリマーである。重付加ポリマーとしては、例えば、ポリウレタン(ジイソシアナート/グリコール)、ポリ尿素(ジイソシアナート/ジアミン)、ポリチオ尿素(ジチオイソシアナート/ジアミン)、ポリチオエーテルウレタン(ビスエチレンウレタン/ジチオール)、ポリイミン(ビスエポキシ/第一アミン)、ポリペプチドアミド(ビスアゾラクトン/ジアミン)又はポリアミド(ジオレフィン/ジアミド)等が挙げられる。
(iv)例えばアクリレートモノマーが挙げられる。アクリレートモノマーには単官能、2官能又は多官能のアクリレートモノマーがあるが、いずれを用いてもよい。ただし、適切な蒸発速度、硬化度及び/又は硬化速度等を得るために、上記のアクリレートモノマーを2種以上組み合わせて併用することが好ましい。また、単官能アクリレートモノマーとしては、例えば脂肪族アクリレートモノマー、脂環式アクリレートモノマー、エーテル系アクリレートモノマー、環状エーテル系アクリレートモノマー、芳香族系アクリレートモノマー、水酸基含有アクリレートモノマー又はカルボキシ基含有アクリレートモノマー等があるが、いずれも用いることができる。
(v)例えばエポキシ系やオキセタン系等の、光カチオン硬化ポリマーが得られるモノマーが挙げられる。エポキシ系モノマーとしては、例えば、脂環式エポキシ系モノマー、2官能性モノマー又は多官能性オリゴマー等が挙げられる。また、オキセタン系モノマーとしては、例えば、単官能オキセタン、2官能オキセタン又はシルセスキオキサン構造を有するオキセタン等が挙げられる。
(vi)例えば酢酸ビニルが挙げられる。モノマーとして酢酸ビニルを用いると、その重合体をケン化することでポリビニルアルコールが得られ、このポリビニルアルコールをポリマーとして使用できる。
(vii)例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸又は無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸等が挙げられる。これらは、エチレンとの共重合体を構成させ、この共重合体をポリマーとして使用できる。さらに、これらの混合物、あるいはグリシジルエーテル化合物を混合した混合物、さらにはエポキシ化合物との混合物もポリマーとして用いることができる。
上記のモノマーを重合してポリマーを生成させる際、モノマーの重合方法に制限は無い。ただし、通常は、モノマーを含む組成物を塗布又は蒸着して成膜した後で重合を行うようにする。重合方法の例を挙げると、熱重合開始剤を用いたときはヒーター等による接触加熱又は赤外線若しくはマイクロ波等の放射加熱等により重合を開始させる。また、光重合開始剤を用いたときは活性エネルギー線を照射して重合を開始させる。活性エネルギー線を照射する場合には様々な光源を使用することができ、例えば、水銀アークランプ、キセノンアークランプ、蛍光ランプ、炭素アークランプ、タングステンーハロゲン輻射ランプ又は日光による照射光等を用いることができる。また、電子線照射や大気圧プラズマ処理を行うこともできる。
ポリマー層の形成方法は、例えば、塗布法、真空成膜法等が挙げられる。塗布法でポリマー層を形成する場合、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、カーテンフローコート、スプレーコート、バーコート等の方法を用いることができる。また、ポリマー層形成用の塗布液をミスト状で塗布するようにしてもよい。この場合の液滴の平均粒径は適切な範囲に調整すればよく、例えば重合性モノマーを含有する塗布液をミスト状でプラスチックフィルム基材上に成膜して形成する場合には、液滴の平均粒径は通常5μm以下、好ましくは1μm以下である。他方、真空成膜法でポリマー層を形成する場合、例えば、蒸着やプラズマCVD等の成膜方法が挙げられる。
ポリマー層の厚みについては特に限定はないが、通常10nm以上であり、また、通常5000nm以下、好ましくは2000nm以下、より好ましくは1000nm以下である。ポリマー層の厚みを厚くすることで、厚みの均一性が得やすくなり無機バリア層の構造欠陥を効率よくポリマー層で埋めることができ、バリア性が向上する傾向にある。また、ポリマー層の厚みを薄くする事で、曲げ等の外力によりポリマー層自身がクラックを発生しにくくなるためバリア性が向上しうる。
中でも好適なガスバリアフィルム3としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)或いはポリエチレンナフタレート(PEN)等の基材フィルムにSiOxを真空蒸着したフィルム等が挙げられる。なお、ガスバリアフィルム3は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、ガスバリアフィルム3は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
ガスバリアフィルム3の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることでガスバリア性が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まりまた可視光の透過率が向上する傾向にある。
ガスバリアフィルム3は、太陽電池素子6を被覆して湿気及び酸素から保護できればその形成位置に制限は無いが、太陽電池素子6の正面(受光面側の面。図2では下側の面)及び背面(受光面とは反対側の面。図2では上側の面)を覆うことが好ましい。薄膜太陽電池14においてはその正面及び背面が他の面よりも大面積に形成されることが多いためである。本実施形態ではガスバリアフィルム3が太陽電池素子6の正面を覆い、後述するガスバリアフィルム9が太陽電池素子6の背面を覆うようになっている。なお、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシート等の防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム8及び/又はガスバリアフィルム9を用いなくてもよい。
<4.4 ゲッター材フィルム(4)>
ゲッター材フィルム4は水分及び/又は酸素を吸収するフィルムである。太陽電池素子6の構成部品のなかには上記のように水分で劣化するものがあり、また、酸素によって劣化するものもある。そこで、ゲッター材フィルム4で太陽電池素子6を覆うことにより、太陽電池素子6等を水分及び/又は酸素から保護し、発電能力を高く維持するようにしている。
ここで、ゲッター材フィルム4は上記のようなガスバリアフィルム3とは異なり、水分の透過を妨げるものではなく、水分を吸収するものである。水分を吸収するフィルムを用いることにより、ガスバリアフィルム3等で太陽電池素子6を被覆した場合に、ガスバリアフィルム3及び9で形成される空間に僅かに浸入する水分をゲッター材フィルム4が捕捉して水分による太陽電池素子6への影響を排除できる。
ゲッター材フィルム4の水分吸収能力の程度は、通常0.1mg/cm2以上、好ましくは0.5mg/cm2以上、より好ましくは1mg/cm2以上である。この数値が高いほど水分吸収能力が高く太陽電池素子6の劣化を抑制しうる。また、上限に制限は無いが、通常10mg/cm2以下である。
また、ゲッター材フィルム4が酸素を吸収することにより、ガスバリアフィルム3及び9等で太陽電池素子6を被覆した場合に、ガスバリアフィルム3及び9で形成される空間に僅かに浸入する酸素をゲッター材フィルム4が捕捉して酸素による太陽電池素子6への影響を排除できる。
さらに、ゲッター材フィルム4は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、中でも好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、その中でも特に好ましくは97%以上である。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
さらに、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せされることが多いため、ゲッター材フィルム4も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、ゲッター材フィルム4の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで薄膜太陽電池14の使用時にゲッター材フィルム4が融解・劣化する可能性を低減できる。
ゲッター材フィルム4を構成する材料は、水分及び/又は酸素を吸収することができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、水分を吸収する物質としてアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアルカリ土類金属の酸化物;アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;シリカゲル、ゼオライト系化合物、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム又は硫酸ニッケル等の硫酸塩;アルミニウム金属錯体又はアルミニウムオキシドオクチレート等の有機金属化合物等が挙げられる。具体的には、アルカリ土類金属としては、Ca、Sr又はBa等が挙げられる。アルカリ土類金属の酸化物としては、CaO、SrO又はBaO等が挙げられる。その他にZr−Al−BaOやアルミニウム金属錯体等も挙げられる。具体的な商品名を挙げると、例えば、OleDry(双葉電子社製)等が挙げられる。
酸素を吸収する物質としては、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、モレキュラーシーブ、酸化マグネシウム又は酸化鉄等が挙げられる。またFe、Mn、Zn、及びこれら金属の硫酸塩・塩化物塩・硝酸塩等の無機塩も挙げられる。なお、ゲッター材フィルム4は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、ゲッター材フィルム4は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
ゲッター材フィルム4の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まる傾向にある。
ゲッター材フィルム4は、ガスバリアフィルム3及び9で形成される空間内であればその形成位置に制限は無いが、太陽電池素子6の正面(受光面側の面。図2では下側の面)及び背面(受光面とは反対側の面。図2では上側の面)を覆うことが好ましい。薄膜太陽電池14においてはその正面及び背面が他の面よりも大面積に形成されることが多いため、これらの面を介して水分及び酸素が浸入する傾向があるからである。この観点から、ゲッター材フィルム4はガスバリアフィルム3と太陽電池素子6との間に設けることが好ましい。本実施形態ではゲッター材フィルム4が太陽電池素子6の正面を覆い、後述するゲッター材フィルム8が太陽電池素子6の背面を覆い、ゲッター材フィルム4、8がそれぞれ太陽電池素子6とガスバリアフィルム3、9との間に位置するようになっている。なお、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシート等防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム8及び/又はガスバリアフィルム9を用いなくてもよい。
ゲッター材フィルム4は吸水剤又は乾燥剤の種類に応じて任意の方法で形成することができるが、例えば、吸水剤又は乾燥剤を分散したフィルムを粘着剤で添付する方法、吸水剤又は乾燥剤の溶液をスピンコート法、インクジェット法又はディスペンサー法等で塗布する方法等を用いることができる。また真空蒸着法やスパッタリング法等の成膜法を使用してもよい。
吸水剤又は乾燥剤のためのフィルムとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂又はポリカーボネート系樹脂等を用いることができる。中でも、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂又はポリカーボネート系樹脂のフィルムが好ましい。なお、このような樹脂は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
<4.5 封止材(5)>
封止材5は、太陽電池素子6を補強するフィルムである。太陽電池素子6は薄いため通常は強度が弱く、ひいては薄膜太陽電池の強度が弱くなる傾向があるが、封止材5により強度を高く維持することが可能である。
また、封止材5は、薄膜太陽電池14の強度保持の観点から強度が高いことが好ましい。具体的強度については、封止材5以外の耐候性保護フィルム1やバックシート10の強度とも関係することになり一概には規定しにくいが、薄膜太陽電池14全体が良好な曲げ加工性を有し、折り曲げ部分の剥離を生じないような強度を有するのが望ましい。
また、封止材5は、太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、中でも好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、その中でも特に好ましくは97%以上である。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
さらに、薄膜太陽電池14は光を受けて熱せられることが多いため、封止材5も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、封止材5の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで薄膜太陽電池14の使用時に封止材5が融解・劣化する可能性を低減できる。
封止材5の厚みは特に規定されないが、通常100μm以上、好ましくは150μm以上、より好ましくは200μm以上であり、また、通常700μm以下、好ましくは600μm以下、より好ましくは500μm以下である。厚みを厚くすることで薄膜太陽電池14全体の強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まりまた可視光の透過率が向上する傾向にある。
封止材5を構成する材料としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂組成物をフィルムにしたもの(EVAフィルム)等を用いることができる。EVAフィルムには通常は耐候性の向上のために架橋剤を配合して架橋構造を構成させる。この架橋剤としては、一般に、100℃以上でラジカルを発生する有機過酸化物が用いられる。このような有機過酸化物としては、例えば、2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ジヒドロペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン又は3−ジ−t−ブチルペルオキシド等を用いることができる。これらの有機過酸化物の配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下であり、通常1重量部以上である。なお、架橋剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
このEVA樹脂組成物には、接着力向上の目的で、シランカップリング剤を含有させてもよい。この目的に供されるシランカップリング剤としては、例えば、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス−(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン又はβ−(3,4−エトキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらのシランカップリング剤の配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常5重量部以下、好ましくは2重量部以下であり、通常0.1重量部以上である。なお、シランカップリング剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
更に、EVA樹脂のゲル分率を向上させ、耐久性を向上するために、EVA樹脂組成物に架橋助剤を含有させてもよい。この目的に供される架橋助剤としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート又はトリアリルイソシアネート等の3官能の架橋助剤等の単官能の架橋助剤等が挙げられる。これらの架橋助剤の配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下であり、また、通常1重量部以上である。なお、架橋助剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
更に、EVA樹脂の安定性を向上する目的で、EVA樹脂組成物に、例えばハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノン又はメチルハイドロキノン等を含有させてもよい。これらの配合量は、EVA樹脂100重量部に対して、通常5重量部以下である。
しかし、EVA樹脂の架橋処理には1〜2時間程度の比較的長時間を要するため、薄膜太陽電池14の生産速度及び生産効率を低下させる原因となる場合がある。また、長期間使用の際には、EVA樹脂組成物の分解ガス(酢酸ガス)又はEVA樹脂自体が有する酢酸ビニル基が、太陽電池素子6に悪影響を与えて発電効率が低下させる場合がある。そこで、封止材5としては、EVAフィルムの他に、プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体からなる共重合体のフィルムを用いることもできる。この共重合体としては、例えば、下記成分1及び成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物が挙げられる。
・成分1:プロピレン系重合体が、通常0重量部以上、好ましくは10重量部以上であり、また、通常70重量部以下、好ましくは50重量部以下である。
・成分2:軟質プロピレン系共重合体が、30重量部以上、好ましくは50重量部以上であり、また、通常100重量部以下、好ましくは90重量部以下である。
なお、成分1及び成分2の合計量は100重量部である。上記のように、成分1及び成分2が好ましい範囲にあると、封止材5のシートへの成形性が良好であるとともに、得られる封止材5の耐熱性、透明性及び柔軟性が良好となり、薄膜太陽電池14に好適である。
上記の成分1及び成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物は、メルトフローレート(ASTM D 1238、230度、荷重2.16kg)が、通常0.0001g/10分以上であり、また、通常1000g/10分以下、好ましくは900g/10分以下、より好ましくは800g/10分以下である。成分1及び成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物の融点は、通常100℃以上、好ましくは110℃以上である。また通常140℃以下、好ましくは135℃以下である。また成分1及び成分2が配合された熱可塑性樹脂組成物の密度は、0.98g/cm3以下が好ましく、0.95g/cm3以下がより好ましく、0.94g/cm3以下がさらに好ましい。
この封止材5においては、上記成分1及び成分2に、プラスチック等に対する接着促進剤としてカップリング剤を配合することが可能である。カップリング剤は、シラン系、チタネート系、クロム系の各カップリング剤が好ましく用いられ、特にシラン系のカップリング剤(シランカップリング剤)が好適に用いられる。
上記シランカップリング剤としては公知のものが使用でき、特に制限はないが、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシーエトキシシラン)、γ−グリシドキシプロピルートリピルトリーメトキシシラン又はγ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。なお、カップリング剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、これらは熱可塑性樹脂組成物(成分1及び成分2の合計量)100重量部に対して、上記シランカップリング剤を通常0.1重量部以上含み、また、通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下含むことが望ましい。また、上記カップリング剤は、有機過酸化物を用いて、この熱可塑性樹脂組成物にグラフト反応させてもよい。この場合、熱可塑性樹脂組成物(成分1及び成分2の合計量)100重量部に対して、上記カップリング剤を0.1〜5重量部含むことが望ましい。シラングラフト化された熱可塑性樹脂組成物を用いても、ガラスやプラスチックに対して、シランカップリング剤ブレンドと同等以上の接着性が得られる。
有機過酸化物を用いる場合、有機過酸化物は、熱可塑性樹脂組成物(成分1及び成分2の合計量)100重量部に対して、通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上であり、また、通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下である。
また、封止材5としてエチレン・α−オレフィン共重合体からなる共重合体を用いることもできる。この共重合体としては、下記に示す成分A及び成分Bからなる封止材用樹脂組成物と基材とを積層してなる、ホットタック性が5〜25℃のラミネートフィルムが例示される。
・成分A:エチレン系樹脂。
・成分B:以下の(a)〜(d)の性状を有するエチレンとα−オレフィンとの共重合体。
(a)密度が0.86〜0.935g/cm3。
(b)メルトフローレート(MFR)が1〜50g/10分。
(c)温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線のピークが1つであり、かつこのピーク温度が100℃以下である。
(d)温度上昇溶離分別(TREF)による積分溶出量が、90℃のとき90%以上である。
成分Aと成分Bとの配合割合(成分A/成分B)は、重量比で、通常50/50以上、好ましくは55/45以上、より好ましくは60/40以上であり、また、通常99/1以下、好ましくは90/10以下、より好ましくは85/15以下である。成分Bの配合量を多くすることで透明性やヒートシール性が高まる傾向にあり、成分Bの配合量を少なくすることでフィルムの作業性が高まる傾向にある。
成分Aと成分Bを配合して生成される封止材用樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は、通常2g/10分以上、好ましくは3g/10分以上であり、通常50g/10分以下、好ましくは40g/10分以下である。なおMFRの測定と評価は、JIS K7210(190℃、2.16kg荷重)に準拠する方法によって実施することができる。
封止材用樹脂組成物の融点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上であり、また、通常300℃以下、好ましくは250℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。融点を高くすることで薄膜太陽電池14の使用時に融解・劣化する可能性を低減できる。封止材用樹脂組成物の密度は、0.80g/cm3以上が好ましく、0.85g/cm3以上がより好ましく、また、0.98g/cm3以下が好ましく、0.95g/cm3以下がより好ましく、0.94g/cm3以下がさらに好ましい。なお、密度の測定と評価は、JIS K7112に準拠する方法によって実施することができる。
さらに、エチレン・α−オレフィン共重合体を用いた封止材5において、上記のプロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体を用いた場合と同様に、カップリング剤を用いることが可能である。
上述した封止材5は、材料由来の分解ガスを発生することがないため、太陽電池素子6への悪影響がなく、良好な耐熱性、機械強度、柔軟性(太陽電池封止性)及び透明性を有する。また、材料の架橋工程を必要としないため、シート成形時及び薄膜太陽電池14の製造時間が大きく短縮できるとともに、使用後の薄膜太陽電池14のリサイクルも容易となる。
なお、封止材5は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、封止材5は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。封止材5の厚みは、通常2μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また、通常500μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは100μm以下である。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まりまた光線透過率が高まる傾向にある。
封止材5を設ける位置に制限は無いが、通常は太陽電池素子6を挟み込むように設ける。太陽電池素子6を確実に保護するためである。本実施形態では、太陽電池素子6の正面及び背面にそれぞれ封止材5及び封止材7を設けるようにしている。
<4.6 太陽電池素子(6)>
太陽電池素子6は、前述の光電変換素子と同様である。
・太陽電池素子同士の接続
太陽電池素子6は、薄膜太陽電池14の1個あたり1個だけを設けてもよいが、通常は2個以上の太陽電池素子6を設ける。具体的な太陽電池素子6の個数は任意に設定すればよい。太陽電池素子6を複数設ける場合、太陽電池素子6はアレイ状に並べて設けられていることが多い。
太陽電池素子6を複数設ける場合、通常は、太陽電池素子6同士は電気的に接続され、接続された一群の太陽電池素子6から生じた電気を端子(図示せず)から取り出すようになっていて、この際、電圧を高めるため通常は太陽電池素子は直列に接続される。このように太陽電池素子6同士を接続する場合には、太陽電池素子6間の距離は小さいことが好ましく、ひいては、太陽電池素子6と太陽電池素子6との間の隙間は狭いことが好ましい。太陽電池素子6の受光面積を広くして受光量を増加させ、薄膜太陽電池14の発電量を増加させるためである。
<4.7 封止材(7)>
封止材7は、上述した封止材5と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他は封止材7と同様のものを同様に用いることができる。また、太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
<4.8 ゲッター材フィルム(8)>
ゲッター材フィルム8は、上述したゲッター材フィルム4と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他はゲッター材フィルム4と同様のものを同様に必要に応じて用いることができる。また、太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。また使用する水分あるいは酸素吸収剤をゲッター材フィルム4よりも多く含有するフィルムを用いることも可能となる。このような吸収剤としては、水分吸収剤としてCaO、BaO又はZr−Al−BaO等が挙げられ、酸素の吸収剤として活性炭やモレキュラーシーブ等が挙げられる。
<4.9 ガスバリアフィルム(9)>
ガスバリアフィルム9は、上述したガスバリアフィルム3と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他はガスバリアフィルム9と同様のものを同様に必要に応じて用いることができる。また、太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
<4.10 バックシート(10)>
バックシート10は、上述した耐候性保護フィルム1と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他は耐候性保護フィルム1と同様のものを同様に用いることができる。また、このバックシート10が水及び酸素を透過させ難いものであれば、バックシート10をガスバリア層として機能させることも可能である。
また、太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。このため、バックシート10としては、以下に説明するもの(i)〜(iv)を用いることが特に好ましい。
(i)バックシート10としては、強度に優れ、耐候性、耐熱性、耐水性及び/又は耐光性に優れた各種の樹脂のフィルム又はシートを使用することができる。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリルースチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート若しくはポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂又はその他等の各種の樹脂のシートを使用することができる。これらの樹脂のシートの中でも、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂又はポリエステル系樹脂のシートを使用することが好ましい。なお、これらは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(ii)バックシート10としては、金属薄膜を用いることもできる。例えば、腐蝕防止したアルミニウム金属箔、ステンレス製薄膜等が挙げられる。なお、このような金属は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(iii)バックシート10としては、例えばアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着した防水性の高いシートを用いてもよい。フッ素系樹脂としては、例えば、一弗化エチレン(商品名:テドラー、デュポン社製)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとエチレン若しくはプロピレンとのコポリマー(ETFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)又はフッ化ビニル系樹脂(PVF)等が挙げられる。なお、フッ素系樹脂は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(iv)バックシート10としては、例えば、基材フィルムの片面又は両面に、無機酸化物の蒸着膜を設け、更に、上記の無機酸化物の蒸着膜を設けた基材フィルムの両面に、耐熱性のポリプロピレン系樹脂フィルムを積層したものを用いてもよい。なお、通常は、基材フィルムにポリプロピレン系樹脂フィルムを積層する場合には、ラミネート用接着剤で張り合わせることで積層する。無機酸化物の蒸着膜を設けることで、水分及び/又は酸素等の侵入を防止する防湿性に優れたバックシート10として使用できる。
・基材フィルム
基材フィルムとしては、基本的には、無機酸化物の蒸着膜等との密接着性に優れ、強度に優れ、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性に優れた各種の樹脂のフィルムを使用することができる。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリルースチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート若しくはポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂又はその他等の各種の樹脂のフィルムを使用することができる。中でも、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂又はポリエステル系樹脂のフィルムを使用することが好ましい。
上記のような各種の樹脂のフィルムのなかでも、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)又はフッ化ビニル系樹脂(PVF)等のフッ素系樹脂のフィルムを使用することがより好ましい。更に、このフッ素系樹脂のフィルムの中でも、特に、ポリフッ化ビニル系樹脂(PVF)又はテトラフルオロエチレンとエチレン若しくはプロピレンとのコポリマー(ETFE)からなるフッ素系樹脂のフィルムが、強度等の観点から特に好ましい。なお、このような樹脂は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、上記のような各種の樹脂のフィルムのなかでも、シクロペンタジエン及びその誘導体又はシクロヘキサジエン及びその誘導体等の環状ポリオレフィン系樹脂のフィルムを使用することもより好ましい。基材フィルムの膜厚としては、通常12μm以上、好ましくは20μm以上であり、また、通常300μm以下、好ましくは200μm以下である。
・無機酸化物の蒸着膜
無機酸化物の蒸着膜としては、基本的に金属の酸化物を蒸着した薄膜であれば使用可能である。例えば、ケイ素(Si)やアルミニウム(Al)の酸化物の蒸着膜を使用することができる。この際、酸化ケイ素としては例えばSiOx(x=1.0〜2.0)を用いることができ、酸化アルミニウムとしては例えばAlOx(x=0.5〜1.5)を用いることができる。なお、使用する金属及び無機酸化物の種類は1種でもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
無機酸化物の蒸着膜の膜厚としては、通常50Å以上、好ましくは100Å以上であり、また、通常4000Å以下、好ましくは1000Å以下である。蒸着膜の作製方法としては、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を用いることができる。具体例を挙げると、基材フィルムの一方の面に、有機ケイ素化合物等の蒸着用モノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて酸化ケイ素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
・ポリプロピレン系樹脂フィルム
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体又はプロピレンと他のモノマー(例えばα−オレフィン等)との共重合体を使用することができる。また、ポリプロピレン系樹脂としては、アイソタクチック重合体を用いることもできる。
ポリプロピレン系樹脂の融点は通常164℃以上であり、一方、通常170℃以下である。ポリプロピレン系樹脂の比重は通常0.90以上であり、一方、通常0.91以下である。ポリプロピレン系樹脂の分子量は通常10万以上であり、一方、通常20万以下である。
ポリプロピレン系樹脂は、その結晶性により性質が大きく支配されるが、アイソタクチックの高いポリマーは、引っ張り強さ、衝撃強度に優れ、耐熱性、耐屈曲疲労強度を良好であり、かつ、加工性は極めて良好なものである。
・接着剤
基材フィルムにポリプロピレン系樹脂フィルムを積層する場合には、通常はラミネート用接着剤を用いる。これにより、基材フィルムとポリプロピレン系樹脂フィルムとはラミネート用接着剤層を介して積層されることになる。
ラミネート用接着剤層を構成する接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、アミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤又はシリコーン系接着剤等が挙げられる。なお、接着剤は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記の接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型又は分散型等のいずれの組成物形態でもよい。また、その性状は、フィルム・シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよい。さらに、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型又は熱圧型等のいずれの形態でもよいものである。上記の接着剤は、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法又はその他等のコート法あるいは印刷法等によって施すことができる。そのコーティング量としては、乾燥状態で通常0.1g/m2以上が望ましく、一方、通常10g/m2以下が望ましい。
<4.11 寸法等>
本実施形態の薄膜太陽電池14は、通常、膜状の薄い部材である。このように膜状の部材として薄膜太陽電池14を形成することにより、薄膜太陽電池14を建材、自動車又はインテリア等に容易に設置できるようになっている。薄膜太陽電池14は、軽く、割れにくく、従って安全性の高い太陽電池が得られ、また曲面にも適用可能であるため更に多くの用途に使用しうる。薄くて軽いため輸送や保管等流通面でも好ましい。更に、膜状であるためロール・トゥ・ロール式の製造が可能であり大幅なコストカットが可能である。
薄膜太陽電池14の具体的な寸法に制限は無いが、その厚みは、通常300μm以上、好ましくは500μm以上、より好ましくは700μm以上であり、また、通常3000μm以下、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1500μm以下である。
<4.12 製造方法>
本実施形態の薄膜太陽電池14の製造方法に制限は無いが、例えば、耐候性保護フィルム1とバックシート10との間に、1個又は2個以上の太陽電池素子6を直列又は並列接続したものを、紫外線カットフィルム2、ガスバリアフィルム3、9、ゲッター材フィルム4、8及び封止材5、7と共に一般的な真空ラミネート装置でラミネートすることで製造できる。この際、加熱温度は通常130℃以上、好ましくは140℃以上であり、通常180℃以下、好ましくは170℃以下である。また、加熱時間は通常10分以上、好ましくは20分以上であり、通常100分以下、好ましくは90分以下である。圧力は通常0.001MPa以上、好ましくは0.01MPa以上であり、通常0.2MPa以下、好ましくは0.1MPa以下である。圧力をこの範囲とすることで封止を確実に行い、かつ、端部からの封止材5、7がはみ出しや過加圧による膜厚低減を抑え、寸法安定性を確保しうる。
<4.13 用途>
上述した薄膜太陽電池14の用途に制限はなく任意である。例えば、図3に模式的に示すように、何らかの基材12上に薄膜太陽電池14を設けた太陽電池モジュール13を用意し、これを使用場所に設置して用いればよい。具定例を挙げると、基材12として建材用板材を使用した場合、この板材の表面に薄膜太陽電池14を設けて太陽電池モジュール13として太陽電池パネルを作製し、この太陽電池パネルを建物の外壁等に設置して使用すればよい。
基材12は太陽電池素子6を支持する支持部材である。基材12を形成する材料としては、例えば、ガラス、サファイア又はチタニア等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂フィルム、塩化ビニル、ポリエチレン、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリノルボルネン等の有機材料;紙又は合成紙等の紙材料;ステンレス、チタン又はアルミニウム等の金属に絶縁性を付与するために表面をコート又はラミネートしたもの等の複合材料等が挙げられる。なお、基材の材料は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、これら有機材料あるいは紙材料に炭素繊維を含ませ、機械的強度を補強させてもよい。
本実施形態に係る薄膜太陽電池を適用する分野の例を挙げると、建材用太陽電池、自動車用太陽電池、インテリア用太陽電池、鉄道用太陽電池、船舶用太陽電池、飛行機用太陽電池、宇宙機用太陽電池、家電用太陽電池、携帯電話用太陽電池又は玩具用太陽電池等に用いて好適である。具体例として以下のようなものを挙げることができる。
1.建築用途
1.1ハウス屋根材として太陽電池
基材として屋根用板材等を使用した場合、この板材の表面に薄膜太陽電池を設けて太陽電池ユニットとして太陽電池パネルを作製し、この太陽電池パネルをハウスの屋根の上に設置して使用すればよい。また、基材として瓦を直接用いることもできる。本実施形態に係る太陽電池が柔軟性を有するという特性を生かし、瓦の曲線に密着させることができるので好適である。
1.2屋上
ビルの屋上に取り付けることもできる。基材上に薄膜太陽電池を設けた太陽電池ユニットを用意し、これをビルの屋上に設置することもできる。この時基材とともに防水シートを併用し、防水作用を有するのが望ましい。さらに、本実施形態に係る薄膜太陽電池が柔軟性を有するという特性を生かし、平面ではない屋根、例えば折半屋根に密着させることもできる。この場合も防水シートを併用するのが望ましい。
1.3トップライト
エントランスや吹き抜け部分に外装として本実施形態に係る薄膜太陽電池を用いることもできる。何らかのデザイン処理を施されたエントランス等は曲線が用いられている場合が多く、そのような場合において本実施形態に係る薄膜太陽電池の柔軟性が生かされる。またエントランス等ではシースルーである場合があり、このような場合には、有機太陽電池の緑色系の色合いが、環境対策が重要視される時代において意匠的な美観も得られるので好適である。
1.4壁
基材として建材用板材を使用した場合、この板材の表面に薄膜太陽電池を設けて太陽電池ユニットとして太陽電池パネルを作製し、この太陽電池パネルを建物の外壁等に設置して使用すればよい。また、カーテンウオールに設置することもできる。その他、スパンドレルや方立等への取り付けも可能である。
この場合、基材の形状に制限はないが、通常は板材を使用する。また、基材の材料、寸法等は、その使用環境に応じて任意に設定すればよい。このような基材の例を挙げると、アルポリック(登録商標;三菱樹脂製)等が挙げられる。
1.5窓
また、シースルーの窓に使用することもできる。有機太陽電池の緑色系の色合いが、環境対策が重要視される時代において意匠的な美観も得られるので好適である。
1.6その他
その他建築の外装としてひさし、ルーバー、手摺等にも使用できる。このような場合においても、本実施形態に係る薄膜太陽電池の柔軟性が、これら用途にとり好適である。
2.内装
本実施形態に係る薄膜太陽電池はブラインドのスラットに取り付けることもできる。本実施形態に係る薄膜太陽電池は軽量であり、柔軟性に富むことから、このような用途が可能となる。また、内容用窓についても有機太陽電池素子がシースルーである特性を生かし使用することができる。
3.植物工場
蛍光灯等の照明光を活用する植物工場の設置件数は増えているが、照明に掛かる電気代や光源の交換費用等によって栽培コストを引き下げにくいというのが現状である。そこで本実施形態に係る薄膜太陽電池を植物工場に設置し、LED又は蛍光灯と組み合わせた照明システムを作製することができる。
このとき蛍光灯よりも寿命が長いLEDと本実施形態に係る太陽電池を組み合わせた照明システムを用いることで、照明に要するコストを現状に比べて30%程度減らせることができるので好適である。また、野菜等を一定温度で輸送するリーファー・コンテナ(reefer container)の屋根や側壁に本実施形態に係る太陽電池を用いることもできる。
4.道路資材・土木
本実施形態に係る薄膜太陽電池は、駐車場の外壁や高速道路の遮音壁や浄水場の外壁等にも用いることができる。
5.自動車
本実施形態に係る薄膜太陽電池は、自動車のボンネット、ルーフ、トランクリッド、ドア、フロントフェンダー、リアフェンダー、ピラー、バンパー又はバックミラー等の表面に用いることができる。なおルーフとしてはトラック車輌の荷台のルーフも含まれる。得られた電力は走行用モータ、モータ駆動用バッテリー、電装品及び電装品用バッテリーのいずれに供給することもできる。太陽電池パネルにおける発電状況と、この走行用モータ、モータ駆動用バッテリー、電装品及び電装品用バッテリーにおける電力使用状況とに合わせて、電力の供給先を選択する制御手段を備えることで、得られた電力を適正にかつさらに効率的に使用することができる。
この場合、基材12の形状に制限はないが、通常は板材を使用する。また、基材12の材料、寸法等は、その使用環境に応じて任意に設定すればよい。このような基材12の例を挙げると、アルポリック(登録商標;三菱樹脂製)等が挙げられる。
以下、本発明の実施例を示して本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
<サイクリックボルタモグラム測定方法>
サイクリックボルタモグラム測定は室温で行い、作用電極にはグラッシーカーボン電極、対極には白金電極、参照電極にはAg/Ag+を用いた。電解質として過塩素酸テトラブチルアンモニウム(TBAP)(0.1M)を含むo−ジクロロベンゼンとアセトニトリルの混合溶液(4:1、容積比)を用いた。フラーレン化合物の濃度は、約0.5mMとした。電位はフェロセンの酸化還元電位を基準とした。得られた第一還元電位の値を基に、PCBM(フロンティアカーボン社製 PCBM:1−(3−メトキシカルボニル)プロピル−1−フェニル(6,6)−C60)のLUMOエネルギー準位を−3.80eV(非特許文献:J.Am.Chem.Soc.2008,130,15429−15436)とした場合の相対値より、LUMOエネルギー準位の算出を行った。
<溶解度測定方法>
フラーレン化合物の溶解度は、以下のようにして測定した。まず、フラーレン化合物の粉末とトルエンとを40℃において混合した。この時用いたトルエンの量は、40℃においてフラーレン化合物の粉末が溶解していることが確認できる最少量とした。その後、溶液を25℃に冷却しても析出がない場合の、トルエン溶液におけるフラーレン化合物の濃度を溶解度とした。25℃に冷却した際に析出が見られた場合は、析出物が溶解するまでさらにトルエンを加え、最終的に溶解が確認できた時点の、トルエン溶液におけるフラーレン化合物の濃度を溶解度とした。
<実施例1>
[C60(Ind)(CN)2(フラーレン化合物A)の合成]
フラーレン化合物Aの合成は、以下のように行った。
[中間体フラーレン化合物Bの合成]
C60(フロンティアカーボン社製,1g,1.39mmol)をo−ジクロロベンゼン(167mL)に溶解し、インデン(和光純薬社製,1.94mL,16.67mmol,12MR)を加えて計24時間加熱還流した。その後o−ジクロロベンゼンを60℃にて減圧留去し、トルエン/メタノールを溶媒して再沈殿させたものを濾取及び乾燥することにより、粗生成物(1.44g)を茶色固体として得た。
この反応過程においては、C60(Ind)(フラーレン化合物B)とC60(Ind)2(フラーレン化合物C)とが生成する。反応粗生成物をGPCにて分取精製することにより、フラーレン化合物C(ビス付加体の位置異性体混合物)(130mg)を得た。質量分析(APCI法,negative)により、フラーレン化合物Cの質量と一致するm/z:952[m−]を検出した。また反応粗生成物をGPCにて分取精製することにより、フラーレン化合物B(40mg)を得た。
得られたフラーレン化合物B,CのLUMOエネルギー準位及び溶解度を、上述のように算出及び測定した。結果を表1に示す。なお、参考として、PCBM(1−(3−メトキシカルボニル)プロピル−1−フェニル(6,6)−C60,フロンティアカーボン社製)及びC60(フロンティアカーボン社製)についても、LUMOエネルギー準位及び溶解度を、上述のように算出及び測定した。結果を表1に示す。
[フラーレン化合物Aの合成]
フラーレン化合物B(92.3mg)をオルトジクロロベンゼン(ODCB,10mL)に溶解させ、脱気及び窒素置換を3度繰り返した。得られた黒褐色溶液に、別途調製したシアン化ナトリウムのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液(0.1M,1.1mL)を滴下し室温下で30分攪拌した。その後、4−メチルフェニルスルホニルシアニド(TosCN,40.6mg)をオルトジクロロベンゼン(ODCB,1mL)に溶かして得られた溶液を滴下し、さらに室温下1時間攪拌した。そして、反応液全量を中性シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。具体的には、トルエン/ヘキサン=1/4の混合溶液にて残存するフラーレン化合物Bを分離溶出させた後、トルエン/ヘキサン=4/1の混合溶液にて目的の成分を溶出させた。目的の成分を含むフラクションを濃縮し、クロロホルム(11mL)に溶解させ、GPC分取により精製した。メインピーク部分を回収して濃縮後、クロロホルム/メタノール溶媒で再沈させ、沈殿物を濾取及び減圧乾燥することにより、フラーレン化合物A(19.5mg)を茶色粉末として得た。質量分析(APCI法,negative)により、フラーレン化合物Aの質量と一致するm/z:888[M−]を検出した。
得られたフラーレン化合物AのLUMOエネルギー準位及び溶解度を、上述のように算出及び測定した。結果を表1に示す。なお、フラーレン化合物Aの溶解度については、試料0.6mgを秤取し、25℃においてトルエンを0.05ml加えたところ完溶が確認できたため、溶解度を>1.4wt%とした。
以上より、本発明に係るフラーレン化合物AのLUMOエネルギー準位は、電子吸引性基を有さないフラーレン化合物B、フラーレン化合物C、及びPCBMよりも低く、C60と同程度であることが分かった。また、本発明に係るフラーレン化合物AはC60と比較して溶解度が高く、塗布成膜に適していることが分かった。
<実施例2>
[フラーレン化合物A(C60(Ind)(CN)2)を用いた光電変換素子]
ITO電極がパターニングされたガラス基板に対して、紫外線オゾン洗浄を10分間行った。続いてこの基板上に、真空蒸着により、正孔取り出し層として10nmの三酸化モリブデン層を成膜した。さらに真空蒸着により正孔取り出し層の上に、p型半導体層として28nmのインジウムフタロシアニンクロロ錯体(InClPc)層を成膜した。そして、得られた基板をグローブボックス中へ取出した。なお、InClPcは、公知文献(Synlett 2002(10),1649−1652)に従って合成した。合成方法の概略を以下に示す。
トルエンに、実施例1で合成したフラーレン化合物Aを0.7重量%溶解した液を調製し、ろ過した。得られたろ液を、窒素雰囲気下でp型半導体層上に1000rpmでスピンコートし、120℃で5分間加熱処理を施した。こうして、p型半導体層上にn型半導体層を形成した。
続いて、真空蒸着装置内に配置されたメタルボートに下記のように合成したPOPy2を入れて加熱することにより、p型半導体層上に電子取り出し層として6nmのPOPy2層を蒸着した。さらに真空蒸着により電子取り出し層の上に、厚さ80nmのアルミニウム電極を設けることによって、光電変換素子を作製した。
窒素雰囲気下で、作製した光電変換素子のITO電極側からソーラシミュレーター(AM1.5G)で100mW/cm2の強度の光を照射し、ソースメーター(ケイスレー社製、2400型)にて、ITO電極とアルミニウム電極と間における電流−電圧特性を測定した。得られた開放電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、フィルファクター(FF)、及び光電変換効率(PCE)をそれぞれ表2に示す。
(POPy2の合成)
窒素雰囲気下、1−ブロモピレン(東京化成:14g,50mmol)を脱水テトラヒドロフラン(関東化学:200mL)に溶かし、−78℃に冷却した後、n−ブチルリチウム(関東化学:33mL,1.6M)をゆっくり滴下し、−78℃を保持したまま、30分撹拌した。つづいて、ジクロロフェニルホスフィン(東京化成:4.3g,9.0mmol)を滴下し、十分攪拌した後、室温まで昇温し、1.5時間さらに撹拌した。得られた反応溶液にメタノール(純正化学)30mLを加え、得られた粗精製物をろ過し、ベンゼンを用いて再結晶することにより、10.7gの目的物を得た。ここで得られた化合物をテトラヒドロフラン(純正化学)350mL、ジクロロメタン(関東化学)300mL、及びアセトン(関東化学)100mLの混合溶媒に溶かし、過酸化水素水(和光純薬:30%溶液10mL)を加え、室温で30分撹拌した。反応溶液に水30mLを加え600mLまで濃縮後、ろ過することにより、目的物(POPy2)を7.5g得た。
<比較例2>
[各種フラーレン化合物を用いた光電変換素子]
<比較例2−1:フラーレン化合物Bを用いた光電変換素子>
実施例2において、フラーレン化合物Aの代わりに、上記のように得られたフラーレン化合物Bを用いたこと以外は、実施例2と同様にして光電変換素子を作製し、電流−電圧特性を測定した。得られた開放電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、フィルファクター(FF)、及び光電変換効率(PCE)をそれぞれ表2に示す。
<比較例2−2:フラーレン化合物Cを用いた光電変換素子>
実施例2において、フラーレン化合物Aの代わりに、上記のように得られたフラーレン化合物Cを用いたこと以外は、実施例2と同様にして光電変換素子を作製し、電流−電圧特性を測定した。得られた開放電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、フィルファクター(FF)、及び光電変換効率(PCE)をそれぞれ表2に示す。
<比較例2−3:PCBMを用いた光電変換素子>
実施例2において、フラーレン化合物Aの代わりに、PCBM(フロンティアカーボン社製)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして光電変換素子を作製し、電流−電圧特性を測定した。得られた開放電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、フィルファクター(FF)、及び光電変換効率(PCE)をそれぞれ表2に示す。
表2に示すように、本発明のフラーレン化合物であるフラーレン化合物A(C60(Ind)(CN)2)を用いて作製された光電変換素子は、電子吸引性基を有さないフラーレン化合物B(C60(Ind))、フラーレン化合物C(C60(Ind)2)、又はPCBMを用いる場合と比べ、光電変換素子特性、特に短絡電流密度、が向上した光電変換素子を得ることが可能であることが示された。
以上より、本発明のフラーレン化合物は、実用的な塗布プロセスで成膜可能であり、p型半導体と組み合わせることで、短絡電流密度及び変換効率が高い光電変換素子材料として利用しうることが裏付けられた。