JP5597625B2 - 薬剤溶出性ステント - Google Patents
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Description
前記被覆層は、単一の被覆層であり、
前記薬剤は、内皮細胞の増殖を阻害しない血管内膜肥厚抑制剤であり、
前記組成物は、脂溶性の低分子化合物を実質的に含まなく、
前記ポリマー(X)と前記血管内膜肥厚抑制剤(Y)との重量構成比率(Y/X)が、1/9〜6/4の範囲内にあり、
前記ポリマーが乳酸(モノマーA)と炭素数3〜8の直鎖の末端ヒドロキシアルキルカルボン酸(モノマーB)の共重合体であり、モノマーAとモノマーBとの共重合モル比(A/B)が、8/2〜2/8の範囲内にあることを特徴とする薬剤溶出性ステントである。
前記薬剤は、内皮細胞の増殖を阻害しない血管内膜肥厚抑制剤であり、
前記第1被覆層は、実質的にポリマーのみからなる第2被覆層により被覆されており、
前記第1被覆層の組成物は、脂溶性の低分子化合物を実質的に含まなく、
前記第1被覆層におけるポリマー(X)と前記血管内膜肥厚抑制剤(Y)との重量構成比率(Y/X)が、1/9〜6/4の範囲にあり、
前記第1被覆層におけるポリマーが乳酸(モノマーA)と炭素数3〜8の直鎖の末端ヒドロキシアルキルカルボン酸(モノマーB)の共重合体であり、モノマーAとモノマーBとの共重合モル比(A/B)が、8/2〜2/8の範囲内にあり、
前記第2被覆層のポリマーは、ポリ乳酸、グリコール酸または乳酸―グリコール酸共重合体であり、かつ、脂溶性の低分子化合物を実質的に含まないことを特徴する薬剤溶出性ステントである。
前記組成物を溶解する溶媒は、フッ素化アルコールを主成分とし、必要に応じて非フッ素化アルコール、ケトン、エステルまたはハロゲン化炭化水素が加えられたものであり、
乳酸(モノマーA)と炭素数3〜8の直鎖の末端ヒドロキシアルキルカルボン酸(モノマーB)との共重合体におけるモノマーAとモノマーBとの共重合比率および/または前記溶媒として、フッ素化アルコールに非フッ素化アルコール、ケトン、エステルまたはハロゲン化炭化水素を加えて溶媒中におけるフッ素化アルコールの濃度を変更することにより、アルガトロバンの溶出速度を調節する、アルガトロバンのステントからの溶出速度の調整法である。
ステント本体を構成する素材については、特に制限はなく、従来から知られている金属材料、セラミックや高分子材料が用いられるが、なかでも高剛性かつ耐腐食性の金属であることが好ましい。具体例としてステンレス鋼、タンタル、ニッケル−チタン合金(ニチノールを含む)、マグネシウム合金およびコバルト合金(コバルト−クロム−ニッケル合金を含む)などが挙げられる。ステント本体の構造としては、外表面と内表面とを有する円筒形状を有しており、バルーン拡張型、自己拡張型、およびそれらの組合せであってよい。図1は、本発明において用いられる、特に薬剤溶出ステントとして使用されるステント本体の形状の一例を示す斜視図である。ステント本体の網目デザインおよび支柱の形状については、ステント内狭窄を助長する要因、例えば血管内壁近傍での血流の乱れや支柱屈曲部の突出によるフレア現象による血管への機械的刺激が平均以下であれば、特別な制限はない。かかるステント本体として、日本特許第3654627号、同3605388号に開示されているコバルト合金を素材としたステント本体が使用可能である。所定の形状を有するステント本体は、レーザー加工機等により加工し、研磨により表面仕上げを行うことにより形成できる。
ステント表面に上記コーティング液をコーティングするにあたっては、溶剤が揮発した後に残る被覆層がステント表面に密着する必要があるので、ステント本体表面はコーティング作業の前に、必要に応じて、洗浄や表面活性化処理をおこなうのが好ましい。表面処理法としては、酸化剤やフッ素ガスなどによる薬品処理、表面グラフト重合、プラズマ放電処理、コロナ放電処理、UV/オゾン処理、電子線照射などが挙げられる。
主被覆層(以下、本発明第1の構成における単一被覆層および第2の構成における第1被覆層を総称して主被覆層と称することがある。)は、ポリマーと薬剤(アルガトロバン)を含む組成物から形成されている。組成物中におけるポリマーと薬剤(アルガトロバン)との重量構成比率は、ポリマー4〜9対薬剤(アルガトロバン)6〜1(両者合わせて10)であり、薬剤(アルガトロバン)の割合が1未満ではコート層からの薬剤(アルガトロバン)溶出速度が小さすぎ、6超えるとコート層がもろくなり、ステント基材に密着させるのが困難である。また、ポリマーに対する薬剤の比率が高くなると、使用初期段階での溶出が大きくなる。
本発明は、狭窄抑制に有効な量の薬剤(アルガトロバン)を一定時間持続的に溶出させることを主眼としているが、そのために、組成物において、薬剤(アルガトロバン)を担持させるマトリックスポリマーとして、乳酸(モノマーA)と炭素数3〜8の直鎖の末端ヒドロキシアルキルカルボン酸(モノマーB)の共重合体を使用する。このポリマーを用いることにより、薬剤(アルガトロバン)を37℃のリン酸緩衝生理食塩水浸漬から48時間もの長時間、さらに好ましくは、72時間もの長時間にわたって薬剤(アルガトロバン)を持続的に溶出させることができる。なお、モノマーBとしては上記のように炭素数3〜8の直鎖の末端ヒドロキシアルキルカルボン酸が用いられ、この範囲外の炭素数2のヒドロキシエタン酸を用いると、薬剤の溶出が大きすぎ、炭素数9のヒドロキシノナン酸を用いると所望の薬剤の溶出性が得にくい。
本発明において、主被覆層を形成するポリマーとして、乳酸とヒドロキシアルキルカルボン酸からなる共重合体を用いるので、このポリマー中に含有された薬剤(アルガトロバン)は適度な溶出性を有する。このため、主被覆層を形成する組成物には、特許文献2に開示される脂溶性低分子である放出助剤(カルボン酸エステル、グリセリンのモノエステル、ジエステル、好ましくは、酒石酸ジメチル、酒石酸ジエチル等)を含ませる必要がない。上記のような放出助剤、可塑剤、乳化剤のような低分子化合物(通常、分子量400以下)をステントの被覆剤に含ませると、ステントが体内に適用されたとき、これらの低分子化合物が血液中に溶出しやすいので、人体に対する安全性の点で好ましくない。したがって、本発明において、前記主被覆層は上記の低分子化合物を実質的に含まない。なお、本発明において、実質的とは、ポリマー100重量部に対して、5重量部以上、好ましくは1重量部以上含まないことを意味する。
ステントのコート層の厚さは薬剤(アルガトロバン)を適当量溶出させる観点から、1〜20μmの範囲内の厚さになるのが好ましく、2〜15μmの範囲内にあるのがさらに好ましい。20μmを超えると、ステント内狭窄が大きくなる懸念があるので、主被覆層の厚さとしては、20μmを超えないようにすることが好ましい。従って、20μmを超えないように、コーティング液組成および、コーティング液とステントを接触させる時間や回数などのコーティング条件の調節が必要である。
本発明において、ステント本体の円筒状表面の少なくとも外表面、好ましくは、外表面と内表面の両面に、主被覆層を形成し、この主被覆層に薬剤を担持させている。ステント表面に薬剤を担持させる方法としては、薬剤とポリマーとを適当な溶剤に溶かして調製したコーティング液中にステントを浸漬し、引き上げて溶剤を乾燥させるディッピング法、薬剤とポリマーとを溶解した溶液を霧状化してステントに吹き付けるスプレイ法、薬剤とポリマーを別々な溶剤に溶解し2本のノズルから同時にステントに吹き付ける2重同時スプレイ法などが挙げられ、本発明においては上記のいずれの方法も適用可能である。
本発明において、薬剤(アルガトロバン)を含む組成物は、円筒状のステント本体の少なくとも外表面(血管壁と接触する面)にコーティングされる。この場合には、塗布は組成物を溶剤に溶解した溶液をステント本体の外表面に噴霧することにより行うのが好ましい。また、外表面だけでなく内表面にも行う場合には、内外両表面に噴霧を行うか、溶液中にステント本体を含浸することにより行うのが好ましい。塗布後の溶剤除去は、減圧、送風、加熱などの方法に適宜行われる。
薬剤(アルガトロバン)を溶解可能で、コーティング後に容易に除去可能な、沸点100℃未満の揮発性溶剤として、メタノール、エタノール、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノールと、これらのアルコールを含有する混合溶剤が挙げられる。また、上記に例示したポリマーを溶解する溶解する溶剤としては、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、アセトンなどのケトン類、酢酸エチルなどエステル類、ジクロロメチレンなどのハロゲン化炭素類が挙げられる。薬剤(アルガトロバン)と上記のポリマーの両方を溶解し、薬剤の徐放性を付与するのに適した溶剤として、炭素数2〜4のフッ素化アルコール(トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、ペンタフルオロプロパノール、オクタフルオロブタノールなど)および前記フッ素化アルコールを主成分とする混合溶剤を挙げることができる。
フッ素化アルコールを主成分とする混合溶剤は、上記のフッ素化アルコールを50重量%以上含み、該フッ素化アルコールと非フッ素化アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど)、エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸メトキシブチルなど)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、またはハロゲン化炭化水素(ジクロロメチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなど)とからなるものであり、フッ素化アルコールに上記の他の溶剤を混合することにより、フッ素化アルコールの割合が少なくなると、溶出速度が速くなるので、これにより溶出速度を調節することができる。
本発明において、薬剤含有ポリマー主被覆層は、厚さ1〜20μmの範囲内の厚さを有する1層の被覆層(単一被覆層)から構成されているが、この単一の被覆層により所望の溶出速度を得ることが出来る。したがって、被覆層を2層構造にして、薬剤含有ポリマー被覆層Aの上に更に被覆層Bを設けて、被覆層Bのポリマー素材、厚さ等を変えることにより、薬剤の溶出速度を制御する必要がない。なお、本発明のステントが、体温の温度下で使用されるとき、上記の主被覆層のポリマーが粘着性を有する場合には、該ポリマーと血液との直接接触を防ぐために、上記の主被覆層を第1の被覆層として、実質的にポリマーのみからなる第2被覆層を上記主被覆層の上に形成する事が好ましい。実質的にポリマーのみからなるとは、ポリマー以外の成分(抗トロンビン薬、免疫抑制剤、抗ガン剤などの薬剤、脂溶性の低分子化合物、糖類、アミノ酸、無機・有機塩類)を実質的に含まないことを意味する。
被覆方法としては、上記のポリマーを溶剤(フッ素化アルコール、非フッ素化アルコール、ケトン、エステル等)に溶解して、前記の主被覆層の形成と同様にして、前記の主被覆層の上に第2被覆層を形成することができる。第2被覆層の厚さは、主被覆層と血液との接触を防ぐことができる厚さでよく、0.1μm以上、0.5μm未満の範囲内で選ばれる。厚さが大きすぎると、主被覆層からの薬剤の溶出に影響する。第2被覆層も、主被覆層と同様に、特許文献2に開示されている放出助剤などの脂溶性の低分子化合物を含まない。
薬剤溶出ステントがステント内狭窄を顕著に抑制するには、ステントを動脈内に留置して最初の少なくとも2日間、アルガトロバンの溶出速度を3μg/cm2・日以上の速度で溶出させるのが治療上有効である。本発明においては上記のように、薬剤(アルガトロバン)10〜60重量%、およびポリマー90〜40重量%からなる組成物が、円筒状のステント本体の少なくとも外表面に均一に、厚さ1〜20μmの範囲内でコーティングされているので、アルガトロバンの溶出速度を、37℃のリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)にステントを浸漬してから少なくとも2日間の間はアルガトロバンが3μg/cm2・日以上、好ましく4μg/cm2・日以上、さらに好ましくは6μg/cm2・日以上の速度で放出するよう溶出速度を調節することにより、動脈中に挿入されて所定期間経過後においても、ステントから薬剤(アルガトロバン)の溶出が維持されるステントを得ることができる。
アルガトロバンが内皮細胞の増殖を阻害することなく血管内膜肥厚抑制効果を有することが下記により確認されている。下記参考製造例における被覆層は、本発明者を含む発明者によりなされた国際特許出願PCT/JP2008/002410号明細書に開示された発明に係るもので、本発明における被覆層とは異なるが、この試験結果から、アルガトロバンが内皮細胞の増殖を阻害することなく血管内膜肥厚抑制効果を有することを確認することができる。
(1−1)アルガトロバン140mgとポリD,L−乳酸/グリコール酸共重合体(モル比:50/50)160mgを2,2,2−トリフルオロエタノール20mLに溶解し均一な溶液(コーティング液)を調製した。図1に示すデザインを有する加工時の外径=1.55mmΦ、拡張後内径=3mmΦ、長さ17mm、全表面積=0.70cm2の、ステント本体(Stent1と称す)をスプレイ式コーティング装置のマンドレルに装着した。前記コーティング液を20μL/分の速度でノズルより噴射し、ノズル下9mmの位置でステント本体を毎分120回転の速度で回転させつつ往復運動させて約4分間にわたってステント本体の端から中央までの表面にコーティングをおこなった。コーティング終了後10分間ステントを窒素気流下で乾燥し、ついで残りの半分をコーティングした。全面コーティングが終了したステントは約1時間風乾してから、真空恒温乾燥器中、60℃で17時間乾燥して溶剤を完全に除去した。同一条件で30本のステント本体にコーティングを行った。精密天秤でμgの単位まで秤量すると、得られたステントには、アルガトロバンと前記共重合体の混合物が平均619μgコーティングされていた(平均被覆層厚さ7.4μm)。以下ではこのステントをDES1と称す。
参考製造例(1−2)で作製したステント(DES2)6本をクラウン系ミニブタ(体重25〜36kg)6匹の冠動脈(LAD、LCX)6本に動物試験1の手順に従って埋植し、28日後に病理解剖して摘出した心臓をホルマリン固定した。該心臓からステントが埋植されている血管組織を切り出し、アクリル樹脂で固定したのち、ステントの中央、両端の3ヶ所で切断して厚さ6μmの薄切片を作製した。これらをヘマトキシリン・エオシン染色とエラスチカ・ワンギーソン染色により染色し、面積狭窄率(%)と内皮細胞被覆率(%)を評価した。DES2では面積狭窄率は28±8%、内皮細胞の被覆率は100%で、ステント埋植時の血管内壁の傷害は完全治癒していた。DES2の病理標本の一例を図2に示した。
アルガトロバン100mgとL−乳酸−6−ヒドロキシヘキサン酸(別名:ε−ヒドロキシカプロン酸)共重合体(モル比:50/50)200mgを2,2,2−トリフルオロエタノール20mLに溶解し均一な溶液(コーティング液)を調製した。図1に示すデザインを有する加工時の外形=1.55mmφ、拡張後内径=3mmφ、長さ17mm、全表面積=0.70cm2の、ステント本体(Stent1と称す)をスプレイ式コーティング装置のマンドレルに装着した。前記コーティング液を20μL/分の速度でノズルより噴射し、ノズル下9mmの位置でステント本体を毎分120回転の速度で回転させつつ往復運動させて約4分間にわたってステント本体の端から中央までの表面にコーティングをおこなった。コーティング終了後10分間ステントを窒素気流下で乾燥し、ついで残りの半分をコーティングした。全面コーティングが終了したステントは約1時間風乾してから、真空恒温乾燥器中、60℃で17時間乾燥して溶剤を完全に除去した。同一条件で10本のステント本体にコーティングを行った。精密天秤でμg単位まで秤量すると、得られたステントには、アルガトロバンと前記共重合体の混合物が平均592μgコーティングされていた(平均被覆層厚さ7.0μm)。以下ではこのステントをDES−A1と称す。
アルガトロバン120mgとL−乳酸−6−ヒドロキシヘキサン酸共重合体(モル比:50/50)180mgを2,2,2−トリフルオロエタノール20mLに溶解し均一な溶液(コーティング液)を調製した。前記Stent1をスプレイ式コーティング装置のマンドレルに装着した。前記コーティング液を20μL/分の速度でノズルより噴射し、ノズル下9mmの位置でステント本体を毎分120回転の速度で回転させつつ往復運動させて約4分間にわたってステント本体の端から中央までの表面にコーティングをおこなった。コーティング終了後10分間ステントを窒素気流下で乾燥し、ついで残りの半分をコーティングした。全面コーティングが終了したステントは約1時間風乾してから、真空恒温乾燥器中、60℃で17時間乾燥して溶剤を完全に除去した。同一条件で10本のステント本体にコーティングを行った。精密天秤でμg単位まで秤量すると、得られたステントには、アルガトロバンと前記共重合体の混合物が平均594μgコーティングされていた(平均被覆層厚さ7.1μm)。以下ではこのステントをDES−A2と称す。
アルガトロバン80mgとL−乳酸−6−ヒドロキシヘキサン酸共重合体(モル比:75/25)220mgを2,2,2−トリフルオロエタノール20mLに溶解し均一な溶液(コーティング液)を調製した。前記Stent1をスプレイ式コーティング装置のマンドレルに装着した。前記コーティング液を20μL/分の速度でノズルより噴射し、ノズル下9mmの位置でステント本体を毎分120回転の速度で回転させつつ往復運動させて約4分間にわたってステント本体の端から中央までの表面にコーティングをおこなった。コーティング終了後10分間ステントを窒素気流下で乾燥し、ついで残りの半分をコーティングした。全面コーティングが終了したステントは約1時間風乾してから、真空恒温乾燥器中、60℃で17時間乾燥して溶剤を完全に除去した。同一条件で10本のステント本体にコーティングを行った。精密天秤でμg単位まで秤量すると、得られたステントには、アルガトロバンと前記共重合体の混合物が平均602μgコーティングされていた(平均被覆層厚さ7.2μm)。以下ではこのステントをDES−A3と称す。
アルガトロバン60mgとL−乳酸−6−ヒドロキシヘキサン酸共重合体(モル比:75/25)240mgを2,2,2−トリフルオロエタノール20mLに溶解し均一な溶液(コーティング液)を調製した。前記Stent1をスプレイ式コーティング装置のマンドレルに装着した。前記コーティング液を20μL/分の速度でノズルより噴射し、ノズル下99mmの位置でステント本体を毎分120回転の速度で回転させつつ往復運動させて約4分間にわたってステント本体の端から中央までの表面にコーティングをおこなった。コーティング終了後10分間ステントを窒素気流下で乾燥し、ついで残りの半分をコーティングした。全面コーティングが終了したステントは約1時間風乾してから、真空恒温乾燥器中、60℃で17時間乾燥して溶剤を完全に除去した。同一条件で10本のステント本体にコーティングを行った。精密天秤でμg単位まで秤量すると、得られたステントには、アルガトロバンと前記共重合体の混合物が平均592μgコーティングされていた(平均被覆層厚さ7.0μm)。以下ではこのステントをDES−A4と称す。
D,L−乳酸−グリコール酸共重合体(モル比:75/25)100mgを2,2,2−トリフルオロエタノール20mLに溶解し均一な溶液(コーティング液)を調製した。実施例2で得たDES-A2をスプレイ式コーティング装置のマンドレルに装着した。前記コーティング液を10μL/分の速度でノズルより噴射し、ノズル下9mmの位置でステント本体を毎分120回転の速度で回転させつつ往復運動させて約2分間にわたってステント本体の端から中央までの表面にコーティングをおこなった。コーティング終了後10分間ステントを窒素気流下で乾燥し、ついて残りの半分をコーティングした。全面コーティングが終了したステントは約1時間風乾してから、真空恒温乾燥器中、60℃で17時間乾燥して溶剤を完全に除去した。同一条件で5本のステント本体にコーティングを行った。精密天秤でμg単位まで秤量すると、得られたステントには、前記共重合体が平均40μgコーティングされていた(平均被覆層厚さ0.48μm)。以下ではこのステントをDES−A5と称す。
実施例1〜5に示した5種類の薬剤コーティングステントからの薬剤溶出速度を測定した。各ステントは直径3mm、長さ20mmのバルーンカテーテル上にマウントし、エチレンオキサイドガス(EOg)滅菌をおこなった。滅菌後、バルーンカテーテルを約12気圧で30秒間加圧し、ステントを直径3mmに拡張した。ステント3本を清浄な密閉ガラス容器に入れ、30mLのpH7.4のリン酸緩衝生理食塩水を加えた。ステント全体が液中に浸漬された状態で、37℃恒温器内で振盪をおこなった。
アルガトロバン140mgとポリ(D,L−乳酸−グリコール酸)(モル比:50/50)160mgを2,2,2−トリフルオロエタノール20mLに溶解し均一な溶液(コーティング液)を調製した。図1に示すデザインを有する加工時の外径=1.55mmΦ、拡張後内径=3mmΦ、長さ17mm、全表面積=0.70cm2の、ステント本体(Stent1と称す)をスプレイ式コーティング装置のマンドレルに装着した。前記コーティング液を20μL/分の速度でノズルより噴射し、ノズル下9mmの位置でステント本体を毎分120回転の速度で回転させつつ往復運動させて約4分間にわたってステント本体の端から中央までの表面にコーティングを行った。コーティング終了後10分間ステントを窒素気流下で乾燥し、ついで残りの半分をコーティングした。全面コーティングが終了したステントは約1時間風乾してから、真空恒温乾燥器中、60℃で17時間乾燥して溶剤を完全に除去した。同一条件で30本のステント本体にコーティングを行った。精密天秤でμgの単位まで秤量すると、得られたステントには、アルガトロバンと前記共重合体の混合物が平均619μgコーティングされていた(平均被覆層厚さ7.4μm)。以下ではこのステントをREF−1と称す。
アルガトロバン100mgとポリ(6−ヒドロキシヘキサン酸)200mgを2,2,2−トリフルオロエタノール20mLに溶解し均一な溶液(コーティング液)を調製した。前記Stent1をスプレイ式コーティング装置のマンドレルに装着した。前記コーティング液を20μL/分の速度でノズルより噴射し、ノズル下9mmの位置でステント本体を毎分120回転の速度で回転させつつ往復運動させて約4分間にわたってステント本体の端から中央までの表面にコーティングをおこなった。コーティング終了後10分間ステントを窒素気流下で乾燥し、ついで残りの半分をコーティングした。全面コーティングが終了したステントは約1時間風乾してから、真空恒温乾燥器中、60℃で17時間乾燥して溶剤を完全に除去した。同一条件で10本のステント本体にコーティングを行った。精密天秤でμg単位まで秤量すると、得られたステントには、アルガトロバンと前記ポリマーの混合物が平均586μgコーティングされていた(平均被覆層厚さ7.0μm)。以下ではこのステントをREF−2と称す。
アルガトロバン100mgとポリ(ヒドロキシヘキサン酸)180mg、および酒石酸ジエチル(低分子化合物)20mgを2,2,2−トリフルオロエタノール20mLに溶解し均一な溶液(コーティング液)を調製した。前記Stent1をスプレイ式コーティング装置のマンドレルに装着した。前記コーティング液を20μL/分の速度でノズルより噴射し、ノズル下9mmの位置でステント本体を毎分120回転の速度で回転させつつ往復運動させて約4分間にわたってステント本体の端から中央までの表面にコーティングをおこなった。コーティング終了後10分間ステントを窒素気流下で乾燥し、ついで残りの半分をコーティングした。全面コーティングが終了したステントは約1時間風乾してから、真空恒温乾燥器中、60℃で17時間乾燥して溶剤を完全に除去した。同一条件で10本のステント本体にコーティングを行った。精密天秤でμg単位まで秤量すると、得られたステントには、アルガトロバン、低分子化合物および前記共重合体の混合物が平均591μgコーティングされていた(平均被覆層厚さ7.0μm)。以下ではこのステントをREF−3と称す。
Claims (14)
- 外表面と内表面とを有する円筒形状のステント本体と、前記ステント本体の少なくとも外表面を被覆している、ポリマーと薬剤とを含む組成物から形成された被覆層とからなる薬剤溶出性ステントにおいて、
前記被覆層は、単一の被覆層であり、
前記薬剤は、内皮細胞の増殖を阻害しない血管内膜肥厚抑制剤のみであり、
前記組成物は、脂溶性の低分子化合物を実質的に含まなく、前記ポリマー(X)と前記血管内膜肥厚抑制剤(Y)との重量構成比率(Y/X)が、1/9〜6/4の範囲にあり、
前記ポリマーが乳酸(モノマーA)と炭素数3〜8の直鎖の末端ヒドロキシアルキルカルボン酸(モノマーB)の共重合体のみから実質的に構成され、モノマーAとモノマーBとの共重合モル比(A/B)が、8/2〜2/8の範囲内にあることを特徴とする薬剤溶出性ステント。 - 請求項1において、前記血管内膜肥厚抑制剤は、アルガトロバン(Argatroban)、キシメラガトラン(Ximelagatran)、メラガトラン(Melagatran)、ダビガトラン(Dabigatran)およびダビガトラン・エテキレート(Dabigatran etexilate)からなるグループから選ばれる薬剤溶出性ステント。
- 請求項1または2において、前記血管内膜肥厚抑制剤の必須成分がアルガトロバンである薬剤溶出性ステント。
- 請求項1において、前記単一の被覆層の厚さが1μm以上、20μm以下の範囲内にある薬剤溶出性ステント。
- 請求項1において、前記モノマーBが6−ヒドロキシヘキサン酸である薬剤溶出性ステント。
- 請求項1において、前記低分子化合物は分子量400以下の化合物である薬剤溶出性ステント。
- 外表面と内表面とを有する円筒形状のステント本体と、前記ステント本体の少なくとも外表面を被覆している、ポリマーと薬剤とを含む組成物から形成された第1被覆層とからなる薬剤溶出性ステントにおいて、
前記薬剤は、内皮細胞の増殖を阻害しない血管内膜肥厚抑制剤のみであり、
前記第1被覆層は、実質的にポリマーのみからなる第2被覆層により被覆されており、
前記第1被覆層の組成物は、脂溶性の低分子化合物を実質的に含まなく、
前記第1被覆層におけるポリマー(X)と前記血管内膜肥厚抑制剤(Y)との重量構成比率(Y/X)が、1/9〜6/4の範囲にあり、
前記第1被覆層のポリマーが、乳酸(モノマーA)と炭素数3〜8の直鎖の末端ヒドロキシアルキルカルボン酸(モノマーB)の共重合体のみから実質的に構成され、モノマーAとモノマーBとの共重合モル比(A/B)が、8/2〜2/8の範囲内にあり、
前記第2被覆層のポリマーは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸または乳酸―グリコール酸共重合体であり、かつ、脂溶性の低分子化合物を実質的に含まないことを特徴とする薬剤溶出性ステント。 - 請求項7において、前記血管内膜肥厚抑制剤は、アルガトロバン(Argatroban)、キシメラガトラン(Ximelagatran)、メラガトラン(Melagatran)、ダビガトラン(Dabigatran)およびダビガトラン・エテキレート(Dabigatran etexilate)からなるグループから選ばれる薬剤溶出性ステント。
- 請求項7または8において、前記血管内膜肥厚抑制剤の必須成分がアルガトロバンである薬剤溶出性ステント。
- 請求項7において、前記第1被覆層の厚さは、1μm以上、20μm以下の範囲内にあり、かつ、前記第2被覆層の厚さが、0.1μm以上、0.5μm未満の範囲内にあることを特徴とする薬剤溶出性ステント。
- 請求項3における組成物を、フッ素化アルコールを主成分とする溶媒に溶解した溶液を用いて、ステント本体の少なくとも外表面を被覆し、被覆後、前記溶媒を除去して前記被覆層を形成するステントの製造方法。
- 請求項9における組成物を、フッ素化アルコールを主成分とする溶媒に溶解した溶液を用いて、ステント本体の少なくとも外表面を被覆し、被覆後、前記溶媒を除去して前記第1被覆層を形成するステントの製造方法。
- 請求項3における前記組成物を溶媒に溶解した溶液を用いて、ステント本体の表面を被覆し、被覆後、前記溶剤を除去して単一の被覆層を形成したステントにおいて、
前記組成物を溶解する溶媒は、フッ素化アルコールを主成分とし、必要に応じて非フッ素化アルコール、ケトン、エステルまたはハロンゲン化炭化水素が加えられたものであり、
乳酸(モノマーA)と炭素数3〜8の直鎖の末端ヒドロキシアルキルカルボン酸(モノマーB)との共重合体におけるモノマーAとモノマーBとの共重合比率および/または前記溶媒として非フッ素化アルコール、ケトン、エステルまたはハロゲン化炭化水素を加えて溶媒中におけるフッ素化アルコールの濃度を変更することにより、アルガトロバンの溶出速度を調節する、アルガトロバンのステントからの溶出速度の調整法。 - 請求項9における前記組成物を溶媒に溶解した溶液を用いて、ステント本体の表面を被覆し、被覆後、前記溶剤を除去して第1被覆層を形成したステントにおいて、
前記組成物を溶解する溶媒は、フッ素化アルコールを主成分とし、必要に応じて非フッ素化アルコール、ケトン、エステルまたはハロンゲン化炭化水素が加えられたものであり、
乳酸(モノマーA)と炭素数3〜8の直鎖の末端ヒドロキシアルキルカルボン酸(モノマーB)との共重合体におけるモノマーAとモノマーBとの共重合比率および/または前記溶媒として非フッ素化アルコール、ケトン、エステルまたはハロゲン化炭化水素を加えて溶媒中におけるフッ素化アルコールの濃度を変更することにより、アルガトロバンの溶出速度を調節する、アルガトロバンのステントからの溶出速度の調整法。
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