JP2015154925A - 耐食性に優れたステント - Google Patents

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Makoto Sasaki
誠 佐々木
貞玉 金
Teigyoku Kin
貞玉 金
和田 晃
Akira Wada
和田  晃
紘享 則安
Hiroyuki Noriyasu
紘享 則安
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Abstract

【課題】耐食性に優れ且つ再狭窄を予防する血管内膜肥厚抑制剤を継続的に放出するステントを実現できるようにする。【解決手段】ステントは、環状の生分解性または非生分解性材料のコア構造体13と、生分解性または非生分解性材料のコア構造体13の表面を被覆し且つ耐食性防止能を有するポリマー層12と、ポリマー層12の表面に被覆された血管内膜肥厚抑制剤を含有したポリマー層11を備えている。血管内膜肥厚抑制剤を含有したポリマー層11は、再狭窄防止効果を有する血管内膜肥厚抑制剤10を含有し、血管内膜肥厚抑制剤10は血管内膜肥厚抑制剤を含有したポリマー層11から徐放される。【選択図】図6

Description

本発明は、生体内の管腔に生じた狭窄部若しくは閉塞部に留置して開放状態に維持するステントに関する。特に、狭窄した血管系の処置に有用な血管内膜肥厚抑制剤を担持した金属製ステント、およびその製造方法に関する。
近年、生活習慣の欧米化並びに高齢化に伴い、我が国においても心筋梗塞、狭心症、脳卒中、末梢血管疾患等の動脈硬化性疾患が益々増加している。このような動脈硬化性疾患に対する確実な治療法として、例えば心臓の冠状動脈における経皮的冠動脈形成術(以下、PTCAという)に代表されるような、血管の狭窄部或いは閉塞部を外科的に開大させる経皮的インターベーションが普及している。
PTCAとは、先端にバルーン(風船)が付いた細いチューブ(カテーテル)を、腕や大腿部の動脈から挿入して心臓冠動脈の狭窄部に通した後、先端のバルーンを膨らませ、狭窄した血管を押し拡げることで、血流を回復させる手技である。これにより、病変部の血管内腔は拡張され、それにより血管内腔を通る血流は増加する。
しかし、カテーテルによって血管壁が傷つけられたりすると、血管壁の治癒反応である血管内膜の増殖が起こり、PTCAにより冠狭窄病変部の開大に成功したうちの約30〜40%に再狭窄が生じる。再狭窄が生じた場合は再びPTCAを行う必要があるため、その予防法、治療法の確立が急務となっている。
この問題を解決するため、近年、血管、気管、食道、尿道等の管腔に生じた狭窄部に留置して開放状態を維持するステントと呼ばれる医療器具が使用されている。このステントには、小さく折り畳んだ収縮状態のステントを目的部位に挿入した後、収縮を維持する応力を除去し、ステント自体の復元力により半径方向に拡張して生体器官の内面に密着固定される自己拡張タイプと、ステント内に配置されたバルーンの拡張力によりステントを拡張させるバルーン拡張タイプとがある。しかし、狭窄部にステントを留置するのみでは再狭窄を十分に抑制できていないのが現状である。
一般に、PTCAあるいはステント留置を行った血管部位は、内皮細胞の剥離あるいは弾性板損傷等の傷害を受けており、これらに対する生体治癒反応は比較的長期(ステント留置後、約2ヶ月間)に亘ると考えられている。より詳細には、ヒトにおける再狭窄の成因は、主としてPTCAあるいはステント留置後1〜3日間に生じる単球の接着・浸潤に見られる炎症過程と、約45日後に最も増殖性がピークとなる平滑筋細胞による内膜肥厚形成過程が考えられている。
そこで、金属や高分子材料で形成されたステントの表面に、抗炎症剤や平滑筋細胞の増殖抑制剤を担持させた薬剤溶出性ステント(drug−eluting stent)を用いることにより、管腔内の留置部位で長期にわたって局所的に薬剤を放出させ、再狭窄率の低減化を図るため、金属製ステント本体の表面に薬剤層を設けたステントが多数提案されている。
しかしながら、これら金属材料で形成されたステント本体は半永久的に生体内に留置されることになる。そのため、薬剤が放出された後、ステント本体の血管壁に対するメカニカルストレスに起因した慢性的な炎症が起こる恐れがあり、最近、金属製ステントの上記問題を解決するステントとして、ステント本体を生体吸収性金属(生分解性金属)や生体吸収性ポリマーで構成したステントが提案されている。
例えば、生体吸収性のポリマーからなるステント本体の表面に、治療のための物質とポリマーとの混合物をコーティングしたステントが記載されている(特許文献1)。しかし、生分解性のポリマーからなるステントは、金属製のステントと比較して強度が低く、必要なラジアルフォースを確保しながら体内に一定期間留置すること等を考慮すると問題がある。
また、生体吸収性ポリマー(ポリ乳酸)製の繊維を筒状、または管状に編んだ編物からなる脈管ステントが提案されている(特許文献2)。しかし、該編物からなる脈管ステントは、金属ステントと同等のラジアルフォースを得るために金属ステントよりも編物を厚くする必要があるが、厚みに限界があり実用的でない。
また、生分解性材料として、比較的強度が高いマグネシウム合金製のステントが提案されている(特許文献3)。マグネシウム合金は、生分解性ポリマーよりも高い強度を有するため線材の厚さを薄くすることができる。
また、ステント表面に生理活性物質層を設け、その上に水溶性物質を分散させた生分解性ポリマー層を設けることにより、水溶性物質の溶出により形成される細孔によって生理活性物質を初期放出させ、且つ生分解性ポリマー層の分解により生理活性物質を二次放出させるステントが提案されている(特許文献4)。
しかし、特許文献4のステントは、生理活性物質層と生分解性ポリマー層とをそれぞれ別々に被覆する必要があるため、製造された個々のステント間における生理活性物質層及び生分解性ポリマー層の層厚のばらつきが大きくなる。また、生分解性ポリマー層が分解されるまでは生理活性物質が少量溶出し、生分解性ポリマー層が分解した後は生理活性物質が一度に溶出してしまうため、生理活性物質の放出量の制御が十分に行えないという問題もあった。また、最適な薬剤徐放でなければ、血管の拍動の影響により留置されたステント本体であるコア構造体から金属が溶出されることにより、血管壁に刺激を与え、再狭窄が起こるという問題もあった。
特開平8−33718号公報 特開平9−56807号公報 特許2842943号公報 特開2004−41704号公報
そこで、本発明者らは従来の薬剤溶出性ステントについて徹底的に検討したところ、最適なポリマーと薬剤の比率を調整することにより、従来の薬剤溶出性ステントと同等の性能を有し、慢性炎症を起こさない薬剤溶出性ステントを提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、被覆層の構成に着目し、さらに検討した結果、本発明に到達したものである。すなわち、本発明の第1の構成は、(1)外表面と内表面とを有する円筒形状に形成された生分解性材料または非生分解性材料のコア構造体と、前記コア構造体の外表面と内表面を被覆している第1被覆層と、前記第1被覆層を実質的に完全に覆うように被覆している第2被覆層と、を具備しており、前記第1被覆層は、ポリマー単独により形成されている層と、前記第2被覆層は、ポリマーと血管内膜肥厚抑制剤である第1組成物により形成されている層からなるステント、(2)外表面と内表面とを有する円筒形状に形成された生分解性材料または非生分解性材料のコア構造体と、前記コア構造体の外表面と内表面を被覆している第1被覆層と、前記第1被覆層を実質的に完全に覆うように被覆している第2被覆層、前記第2被覆層を実質的に完全に覆うように被覆している第3被覆層と、を具備しており、前記第1被覆層は、ポリマー単独により形成されている層、または、生体適合性被膜により形成されている層と、前記第2被覆層は、ポリマーと血管内膜肥厚抑制剤である第2組成物により形成されている層と、前記第3被覆層は、ポリマー単独により形成されている層からなるステントである。前記ポリマーとは、ホモポリマー、コポリマー、またはポリマーの混合物を含む用語として用いられる。また、前記第1組成物、前記第2組成物は、ポリマーと血管内膜肥厚抑制剤を含んでいるものをいう。また、前記血管内膜肥厚抑制剤は、シロリムス、エベロリムス、バイオリムスA9、ゾタロリムス、タクロリムス、パクリタキセルなどがあげられるが、なかでも、シロリムスが好ましい。また、前記第2被覆層はシロリムス以外の他の薬剤を含まないことが好ましい。また、前記ポリマーは生分解性ポリマーであって、ポリ乳酸、ポリ(乳酸−グリコール酸)、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ(乳酸−ε―カプロラクトン)、またはポリ(グリコール酸−ε−カプロラクトン)であることが好ましい。また、前記コア構造体であるステント本体は、生分解性の金属材料である場合はマグネシウムまたはマグネシウム合金から、非生分解性の金属材料である場合はコバルトクロムまたはコバルトクロム合金から形成されていることが好ましい。
本発明の第1の構成において、前記第1被覆層、前記第2被覆層、前記第3被覆層の厚さが表1の範囲内にあることが好ましい。
前記第1被覆層、前記第2被覆層、前記第3被覆層におけるシロリムスは、ポリマーに結晶状態でサブミクロンオーダーの粒子状に分散している。
上記本発明の第1の構成のステントにおいて、ステントの形状は略直線部と略円弧部とを具備する、軸方向に沿って一端側に開口した略U字型形状を有するセルが複数連結して形成された環状ユニットが軸方向に複数配列して連結部で連結されることにより管状体を形成し、前記環状体はその内部より半径方向に伸張可能なステントであって、
複数の第一のセルを周方向に連結した第一のセル群からなる第一の環状ユニットと、複数の第二のセルを周方向に連結した第二のセル群からなる第二の環状ユニットがステントの中心軸を取り囲むように交互に配置され、前記第一セルと前記第二セルの形状は前記連結部を中心にして、ステントの軸方向に対称であり、前記隣接する第一及び第二の環状ユニットの複数の相対するセル同士の中の一部のセル同士のみが連結部で連結され、前記連結部は、相対するセルの前記略円弧部同士が接続して形成されたステントにおいて、
前記ステントを構成する実質的に全てのセルにおける、セルの略円弧部を形成する弧の頂部の曲率半径は、前記セルの略直線部の接線円の曲率半径の1.1〜1.5倍の範囲内にあることを特徴とするステントである。
前記ステントの形状において、前記セルの略円弧部の弧の頂部の曲率半径は、前記セルの略直線部の接線円の曲率半径の1.2〜1.4倍の範囲内にあることが好ましい。
上記ステントの形状において、連結部で連結されているセル同士の双方のセルの略直線部の長さが同じで、非連結部のセルの略直線部の長さよりも、若干長くなっているのが好ましい。通常、連結部で連結されているセルの略直線部の方が、非連結部のセルの略直線部よりも10〜25%程度長くなっており、長さ1.2mmのセルの場合、0.1〜0.3mm程度である。
上記ステントの形状において、それぞれの前記環状ユニットは6〜10個のセルから構成されており、その中の1〜3個のセルが、相対するセルとの間に連結部を形成しているのが好ましい。
上記ステントの形状において、連結部は相対するセルの略円弧部と略円弧部との間を短い線状物で構成されていてもよいが、相対するセルの略円弧部と略円弧部とが直接接続することにより連結部を構成しているのが好ましく、なかでも、前記連結部は相対するセルの略円弧部同士の中心円弧の頂部を互いに共有する構造とするのが特に好ましい。前記セル及び前記連結部の幅及び厚みが、それぞれ一定であることが好ましい。
本発明の第2の構成は、前記第1被覆層、前記第2被覆層、前記第3被覆層を、低級アルキルケトン溶剤、低級アルキルエステル溶剤に溶解した溶液を用いて、ステント本体の少なくとも外表面を被覆し、被覆後、前記溶剤を除去して前記第1被覆層、前記第2被覆層、前記第3被覆層を形成する、ステントの製造方法である。
本発明の第3の構成は、本発明の第1の構成のステントを血管内に留置し、前記ステントから血管内膜肥厚抑制剤を放出させて、血管内膜肥厚を抑制する方法である。
本発明の第4の構成は、(1)外表面と内表面とを有する円筒形状に形成された生分解性材料または非生分解性材料のコア構造体と、前記コア構造体の外表面と内表面を被覆している第1被覆層と、前記第1被覆層を実質的に完全に覆うように被覆している第2被覆層と、を具備しており、前記第1被覆層は、ポリマー単独により形成されている層と、前記第2被覆層は、ポリマーと血管内膜肥厚抑制剤である第1組成物により形成されている層からなるステント、(2)外表面と内表面とを有する円筒形状に形成された生分解性材料または非生分解性材料のコア構造体と、前記コア構造体の外表面と内表面を被覆している第1被覆層と、前記第1被覆層を実質的に完全に覆うように被覆している第2被覆層、前記第2被覆層を実質的に完全に覆うように被覆している第3被覆層と、を具備しており、前記第1被覆層は、ポリマー単独により形成されている層、または、生体適合性被膜により形成されている層と、前記第2被覆層は、ポリマーと血管内膜肥厚抑制剤である第2組成物により形成されている層と、前記第3被覆層は、ポリマー単独により形成されている層からなるステントであって、前記第1被覆層、前記第2被覆層、前記第3被覆層のポリマーならびに生体適合性被膜、血管内膜肥厚抑制剤の重量構成比率が、表2の範囲内により形成されているステントである。
前記コア構造体とは、金属製またはポリマー薄肉チューブに対してレーザ加工を行い、ステントとして形成し製造したものである。
本発明の第5の構成は、上記の本発明の第1の構成のステントにおいて、それぞれの層を表1に示す厚さにすることにより、37℃のリン酸緩衝生理食塩水中で、前記ステントの浸漬時点から血管内膜肥厚抑制剤の放出が、少なくとも約1日〜最大約3ヶ月間にわたるように調整することを特徴とする、ステントからの血管内膜肥厚抑制剤の放出の調整方法である。
前記第1組成物、前記第2組成物において、血管内膜肥厚抑制剤が、ポリマー中にミクロ分散することにより、血管内膜肥厚抑制剤の放出速度が調節されている。
前記第1組成物、前記第2組成物を溶解する溶剤を、低級アルキルケトン溶剤、低級アルキルエステル溶剤の中から選択し、選択された溶剤により前記第1組成物、前記第2組成物を溶解した溶液を用いて、ステント本体の表面に第1被覆層であるポリマー、または、生体適合性被膜層を形成し、前記溶剤を除去して第2被覆層を形成することにより、血管内膜肥厚抑制剤の放出速度が調節されるのが好ましい。
本発明の第6の構成は、上記の本発明の第1の構成のステントにおいて、前記コア構造体の幅及び厚みが、それぞれ一定であることを特徴とするステントである。
本発明の第7の構成は、上記の本発明の第1の構成のステントにおいて、37℃のリン酸緩衝生理食塩水中で、前記ステントの浸漬時点から金属イオンの溶出が、前記コア構造体単体と比較して、長期間にわたって持続的に抑制されることを特徴とする前記コア構造体の腐食抑制方法である。
本発明の第1の構成によれば、表2に示す構成をすることにより、前記血管内膜肥厚抑制剤が徐放されるため、血管内膜肥厚抑制効果を発揮できるステントを得ることが出来る。
上記本発明の第1の構成のステントによれば、前記血管内膜肥厚抑制剤が適度な放出速度で持続的に放出できるため、内皮細胞の増殖を過度に阻害することなく、血管内膜肥厚抑制効果を発揮できるステントを得ることが出来る。
さらに、上記本発明の第1の構成のステントによれば、第1被覆層、第2被覆層、第3被覆層の厚みが表1に示す範囲内であり、両層合わせても25μm以下、好ましくは20μm以下の厚みであることが、とくに狭窄防止上で望ましい。
本発明の第2の構成によれば、前記第1被覆層、前記第2被覆層、前記第3被覆層を溶解する溶剤として用いられる低級アルキルケトン、低級アルキルエステルはポリマーまたは/および血管内膜肥厚抑制剤を溶解した溶剤である。この溶剤を用いて形成された第1被覆層、第2被覆層、第3被覆層の厚み等を制御することにより、血管内膜肥厚抑制剤の放出速度の制御が行いやすいという特徴を有する。
本発明の第3の構成によれば、本発明の第1の構成のステントにおいて、とくに、表1に示す範囲内の適当な厚みに制御することにより、血管内膜肥厚抑制剤の放出速度の制御が行いやすいという特徴を有する。
また、本発明の第3の構成によれば、ステント本体上に形成された被覆層中の血管内膜肥厚抑制剤が、ステントを血管内、特に動脈内留置後、放出される。このことにより、放出された血管内膜肥厚抑制剤の薬理効果(血管内膜肥厚の抑制)が発現し、ステント内狭窄を有効に抑止する。
本発明の第4の構成によれば、(1)外表面と内表面とを有する円筒形状に形成された生分解性材料または非生分解性材料のコア構造体と、前記コア構造体の外表面と内表面を被覆している第1被覆層と、前記第1被覆層を実質的に完全に覆うように被覆している第2被覆層と、を具備しており、前記第1被覆層は、ポリマー単独により形成されている層と、前記第2被覆層は、ポリマーと血管内膜肥厚抑制剤である第1組成物により形成されている層からなるステント、(2)外表面と内表面とを有する円筒形状に形成された生分解性材料または非生分解性材料のコア構造体と、前記コア構造体の外表面と内表面を被覆している第1被覆層と、前記第1被覆層を実質的に完全に覆うように被覆している第2被覆層、前記第2被覆層を実質的に完全に覆うように被覆している第3被覆層と、を具備しており、前記第1被覆層は、ポリマー単独により形成されている層、または、生体適合性被膜により形成されている層と、前記第2被覆層は、ポリマーと血管内膜肥厚抑制剤である第2組成物により形成されている層と、前記第3被覆層は、ポリマー単独により形成されている層からなるステントであって、その重量構成比率が、表2に示す重量構成比率にすることにより、前記血管内膜肥厚抑制剤が適度な放出速度で持続的に放出することができるため、内皮細胞の増殖を過度に阻害することなく、血管内膜肥厚抑制効果を発揮できるステントを得ることが出来る。
本発明の第5の構成によれば、本発明の第1の構成のステントにおいて、とくに、高濃度の血管内膜肥厚抑制剤を含有した層を表1に示す厚みに制御することにより、所望の期間に血管内膜肥厚抑制剤を放出することができる。
また、本発明の第5の構成によれば、コア構造体であるステント本体上に形成された被覆層中の血管内膜肥厚抑制剤が、ステントを血管内、特に動脈内留置後、放出される。このことにより、放出された血管内膜肥厚抑制剤の薬理効果(血管内膜肥厚の抑制)が発現し、ステント内狭窄を有効に抑止する。
本発明の第6の構成によれば、外表面と内表面とを有する円筒形状に形成された生分解性材料または非生分解材料のコア構造体の幅及び厚みをそれぞれ一定であることにより、放出された血管内膜肥厚抑制剤の薬理効果(血管内膜肥厚の抑制)が発現し、ステント内狭窄を有効に抑止する。
本発明の第7の構成によれば、本発明の第1の構成ステントにおいて、とくにポリマー層を表1に示す厚みに制御することにより、金属イオンの溶出を長期間にわたって持続的に抑制することが出来る。
本発明の薬剤徐放性ステントは、冠動脈のステント治療に有効に用いられるが、脳動脈、腎動脈、末梢動脈のステント治療においても有効である。
本発明の薬剤徐放性ステントは図1のようなオープンセルステント(部分リンク型ステント)が好ましいが、図2のようなクローズドセルステント(全リンク型ステント)でもよい。
本発明に基づく生分解性の金属材料で形成された例示的オープンリンク型ステントの一部分の平面図。 本発明に基づく生分解性の金属材料で形成された例示的クローズドリンク型ステントの一部分の平面図。 図1の部分拡大図である。 セルの直線部の円弧側端部において形成される接線円の概略平面図である。 セルを構成するストラットの概念図である。 本発明に基づく第1の例示的ステントの構成要素を示す模式図。 本発明に基づく例示的ステントの構成要素を示す比較模式図1。 本発明に基づく例示的ステントの構成要素を示す比較模式図2。 本発明に基づく第2の例示的ステントの構成要素を示す模式図。 本発明に基づく例示的ステントの構成要素を示す比較模式図3。
以下、本発明の実施形態について図面にて説明する。図1は円筒形状に形成された生分解性材料または非生分解性材料のコア構造体からなるステント本体の平面図であり、隣接するセルとリンクが部分的に連結されたオープンセル型ステント1であり、拡張均一性が良いことから本発明のステントの好適に使用される。図2は円筒形状に形成された生分解性材料または非生分解性材料のコア構造体からなるステント本体の平面図であり、隣接するすべてのセルとリンクが連結されたクローズドセル型ステント6も使用することができる。
図3は図1に示すステント1の連結部を示す拡大図である。図4はセルの直線部の円弧側端部において形成される接線円の概略平面図である。図5はセルを構成するストラットの概念図である。図6は本発明に基づく第1の例示的ステントの構成要素を示した断面図であり、コア構造体であるステント本体13の円筒状表面の少なくとも外表面、好ましくは、外表面と内表面の両面に、第1被覆層12がポリマーからなる層、第2被覆層11がポリマーに血管内膜肥厚抑制剤10を担持させた層から形成している。特に薬剤溶出性ステントとして使用されるステント本体の形状の一例を示す断面図である。図7は本発明に基づく例示的ステントの構成要素を示す比較模式図の一例の断面図であり、コア構造体であるステント本体17の円筒状表面の少なくとも外表面、好ましくは、外表面と内表面の両面に、第1被覆層16がポリマーに血管内膜肥厚抑制剤14を担持させた層、第2被覆層15がポリマーからなる層により形成している。図8は本発明に基づく例示的ステントの構成要素を示す比較模式図の一例の断面図であり、コア構造体であるステント本体20の円筒状表面の少なくとも外表面、好ましくは、外表面と内表面の両面に、第1被覆層19がポリマーに血管内膜肥厚抑制剤18を担持させた層により形成している。図9は本発明に基づく第2の例示的ステントの構成要素を示した断面図であり、コア構造体であるステント本体25の円筒状表面の少なくとも外表面、好ましくは、外表面と内表面の両面に、第1被覆層24がポリマーからなる層、または、生体適合性被膜からなる層、第2被覆層23がポリマーに血管内膜肥厚抑制剤21を担持させた層、第3被覆層22がポリマーからなる層で形成されている。特に薬剤溶出性ステントとして使用されるステント本体の形状の一例を示す断面図である。図10は本発明に基づく例示的ステントの構成要素を示す比較模式図の一例の断面図であり、コア構造体であるステント本体27の円筒状表面の少なくとも外表面、好ましくは、外表面と内表面の両面に、第1被覆層26がポリマーからなる層で形成されている。
(ステント本体の素材)
コア構造体であるステント本体の素材は生分解性材料または非生分解性材料であることが好ましい。具体例としてSUS316等のステンレス鋼、Ni−Ti合金、Cu−Al−Mn合金などの形状記憶合金、チタン合金、タンタル合金、コバルトクロム合金などからなる金属、また、純マグネシウム、マグネシウム合金、純鉄、純合金などからなる生分解性金属が挙げられる。また、ステント本体を生分解性ポリマーで構成するのも良い。ステント本体の構造としては、外表面と内表面とを有する円筒形状を有しており、バルーン拡張型、自己拡張型、およびそれらの組合せであってよい。
(ステントの基本形状)
コア構造体のステントの基本形状は図1のような形状であることが好ましい。図1は、本発明のステントの基本形状の一例を示す平面図である。図3は図1に示すステント形状の連結部を示す拡大図である。図1に示すように、本発明のステントの基本形状は、軸方向に沿って一端側に開口した略U字型形状を有するセル2、2’がステント1の中心軸C1を取り囲むように周方向に複数連結して環状ユニット3、3’を形成し、この環状ユニット3、3’が軸方向に複数配列し、連結部4で連結されて管状体を構成している。この管状体は、その内部より半径方向に伸張可能であり、上記U字型形状のセルは、略直線部と略円弧部5とから構成されている。
本発明のステントの形状において、複数の第一のセル2を周方向に連結した第一のセル群からなる第一の環状ユニット3と複数の第二のセル2’を周方向に連結した第二のセル群からなる第二の環状ユニット3’とが交互に連結して管状体が形成され、連結部4を中心として第一のセル2と第二のセル2’とが左右対称の形状をしている。環状ユニット3、3’の相対する複数のセル同士の一部のセル同士のみが連結部4で連結されている。第一環状ユニット3と第二環状ユニット3’との間を連結する連結部4と、隣接する環状ユニット3’’、3’’’間を連結する連結部4’とは軸方向C1に沿って一列a、a’に並んで配置することが、ステントの拡張時におけるセルの拡張が軸方向にアンバランスになることが少なくなる傾向になり、所望の薬剤溶出を得ることができる。連結部4における連結構造は、相対するセルの略円弧部の頂部を0.1〜0.3mmの屈曲していない短い線状物で連結してもよいが、好ましくは、連結部4で連結されるセル同士のそれぞれの略直線部が、非連結部のセルの略直線部よりも若干長くなって、一方のセルの略円弧部5の頂部が他方のセルの略円弧部5に直接接触して一体化されていることにより、所望の薬剤溶出を得ることができる。この場合、双方のセルの略直線部がそれぞれ等しく、若干長くなっているのが、薬剤溶出の点から好ましい。セルの略直線部がそれぞれ等しくなることによりセル同士が同様な角度に開き血管を均一に支持し、病変部に血管内膜肥厚抑制剤を送達することができる。したがって、相対するセル同士2、2’の中で、連結部4で連結されているセル2、2’同士は連結されているために、相対するセル間に隙間がないが、非連結部のセル2、2’間には、図1に示されているように、セル略円弧部間に隙間が形成されており、この隙間に相当する距離だけ、連結部のセルの略直線部は非連結部のセルの略直線部よりも若干長くなっている。非連結部における、このわずかな隙間の存在により、ステントが曲げられた場合、又はステントを収縮させた場合に、セルが重なることが防がれ、またステントが折り曲げられたときに、相対するセルが当たることがない。通常、連結部で連結されているセルの略直線部の方が、非連結部のセルの略直線部よりも10〜25%程度長くなっている。10%未満では、非連結部のセル2、2’間の隙間が少なすぎて上記の効果が十分に得られなく、25%を超えて長くなると、空間が大きくなり血管を均一に支持する点で不利となるほか、連結部のセルの長さが非連結部のセルの長さよりも長くなりすぎると拡張均一性の点で不利となり、所望の薬剤溶出が得られないので、好ましくない。
(セルの略円弧部形状)
ステントの基本形状において、ステントを構成するセルの略円弧部5を構成する弧の頂部の曲率半径が、セル2、2’の二つの略直線部の円弧側端部において形成される接線円8、8’の曲率半径の1.1〜1.5倍の範囲内、好ましくは1.2〜1.4の範囲内にある(図3参照)。曲率半径の1.1倍未満、また、曲率半径の1.5倍を超えると、ステントを拡張した際に、所望の薬剤溶出が得られない。また、1.5倍を超えると弧の頂部が大きくなりすぎて、ステントをクリンピングするとき、円弧部同士が干渉し、そのことによりコーティングした被覆層がはがれてしまうため好ましくない。セル2、2’は、ステントの拡張後において中心軸C1に対し鈍角になるほうが、ステントの放出支持力が大きくなる。拡張後のセルの二つの略直線部が形成する角度θは120°に近づくほどステントの放出支持力が大きくなる。すなわちステントの設計においては、少なくともφ2.5mmに拡張したときにおいて、セルの拡張後の角度θは、少なくとも50°以上に設計するのが好ましい。
(ステントのデイメンジョン)
本発明のステントの非拡張時の長さ、非拡張時の直径は、特に制約はなく、従来から使用されているステントと同じでよく、非拡張時の長さには、9〜40mm程度、非拡張時の直径が0.8〜2mm程度であることが好ましい。ステントの1つの環状ユニットの長さは、0.5〜3.0mm程度が好ましい。1つの連結部の長さ(非連結部のセルとセル間の軸方向の隙間の長さ)は、0.05〜1mm程度が好ましく、より好ましくは、0.1〜0.3mmである。また、セル2、2’の周方向の配置数は、4個以上が好ましい。さらに拡張後の径としてφ3.0mm以上となる場合においては6個以上、通常6〜12個配置するのが好ましい。また環状ユニット3、3’は両方の環状ユニットを合わせてステント軸方向においては6個以上、通常6〜12個配置するのが好ましい。さらにステント軸方向においては10mmあたり3個以上、通常4〜8個配置し、ステント拡張の目標径(規格径、例えばφ3.0、φ4.0)となった時点において、例えば先に述べたようにセルの拡張後の角度θが、少なくとも50°以上、通常60°〜120°に設計するのが良い。そのことにより所望の薬剤溶出、分解速度が得られることができる。目標径において120°を超えるように設計することは、ステントの放射支持力には有効であるが、略円弧部5の変形量が大きくなり、所望の薬剤溶出が得られることができない。また拡張に伴うステントの全長短縮(フォーショートニング)が大きくなり、血管内膜肥厚抑制剤が十分に病変部に送達することができない。
セル2、2’のストラット(二つの直線部)の形状は、ステント軸方向の中心線C1に対して径方向に対称的な形状に形成されているのが好ましい。また、ステントでは、セル2の厚みは一定である。本発明のステントではセルの幅が50〜250μで、厚みは50〜250μである。本発明においては、環状ユニット3および連結部4におけるセル2の幅、厚みは一定であることが好ましい。幅、厚みが一定であることにより、加工・研磨時の寸法コントロールがしやすく、また、幅、厚みが一定であることは断面積が一定であることになり、所望の薬剤溶出が得られることができる。特に、相対するセル同士が直接連結して、連結部において相対するセルの中心円弧部同士7、7’の頂点が重なって厚み、幅が一定になることが所望の薬剤溶出が得られることにつながる。
図1及び図3に例示した本発明のステントにおいて、各環状ユニット3、3’を構成するセル2、2’の連結部4は、ステント1の周方向に少なくとも一個形成される必要がある。前述のように、ステントの直径により周方向に配置されるセル数は異なるので、セル数に応じて連結部の数は選択されるが、通常、ステントの直径3〜9mm、セル数6〜10個の場合の連結部の数は1〜3個であることが好ましい。このことにより、所望の薬剤溶出が得られる。
(ステント本体への被覆)
本発明においては、図6に示すように上記のようなステント本体13の円筒状表面の少なくとも外表面、好ましくは、外表面と内表面の両面に、第1被覆層12がポリマーからなる被覆層で、第2被覆層11がポリマーに血管内膜肥厚抑制剤10を担持させて形成している。また、図9に示すように上記のようなステント本体25の円筒状表面の少なくとも外表面、好ましくは、外表面と内表面の両面に、第1被覆層24がポリマーからなる層、または、生体適合性被膜からなる層、第2被覆層23がポリマーに血管内膜肥厚抑制剤21を担持させて形成している層、第3被覆層22がポリマーからなる層で形成している。ステント表面に血管内膜肥厚抑制剤を担持させる方法としては、血管内膜肥厚抑制剤とポリマーとを適当な溶剤に溶かして調製したコーティング液中にステントを浸漬し、引き上げて溶剤を乾燥させるディッピング法、血管内膜肥厚抑制剤とポリマーとを溶解した溶液を霧状化してステントに吹き付けるスプレイ法、血管内膜肥厚抑制剤とポリマーを別々な溶剤に溶解し2本のノズルから同時にステントに吹き付ける2重同時スプレイ法などが挙げられ、本発明においては上記のいずれの方法も適用可能であるが、血管内膜肥厚抑制剤を分散させたポリマーのコート層をステント表面に形成する方法が、血管内膜肥厚抑制剤の放出速度の制御がしやすいので好ましい。なかでも、本発明においては後述のようにそれぞれの層の第1組成物、第2組成物において血管内膜肥厚抑制剤はポリマー中にミクロ分散している。
ここで、本発明に基づく例示的ステントの比較として、図7、図8、図10を示す。図7に示すように上記のようなステント本体17の円筒状表面の少なくとも外表面、好ましくは、外表面と内表面の両面に、第1被覆層16がポリマーに血管内膜肥厚抑制剤14を担持させた被覆層、第2被覆層15がポリマーからなる被覆層で形成している。図8に示すように上記のようなステント本体20の円筒状表面の少なくとも外表面、好ましくは、外表面と内表面の両面に、第1被覆層19がポリマーに血管内膜肥厚抑制剤18を担持させた被覆層から形成している。図10に示すように上記のようなステント本体27の円筒状表面の少なくとも外表面、好ましくは、外表面と内表面の両面に、第1被覆層26がポリマーからなる層で形成している。それぞれの構成要素の被覆層の厚さは本発明の例示的ステントとの比較のために、本発明の例示的ステントと同等な厚さとした(表3)。また、図7、図8、図10の各被覆層の構成と重量構成比率を表4に示す。
(図6における第1被覆層と第2被覆層)
図6における本発明のステントの基本構造は、(a)ステント本体、(b)ステント本体の少なくとも外表面および内表面に形成された、ポリマーからなる第1被覆層と、(c)第1被覆層上に形成されたポリマーと血管内膜肥厚抑制剤を含む第2被覆層から構成されている。本発明の図6における血管内膜肥厚抑制剤を含有している第2被覆層に、任意量の上記血管内膜肥厚抑制剤を強く担持(ポリマー中にサブミクロンオーダーの粒子状にミクロ分散させることにより保持されている)させ、ポリマーからなる第1被覆層により、血管内膜肥厚抑制剤の放出を抑制する長期間にわたる徐放性が付与されている。第1被覆層および第2被覆層の厚み、ポリマー組成、組織等、また、ポリマー中における血管内膜肥厚抑制剤の担持状態等の選択により、ステント表面からの血管内膜肥厚抑制剤の放出速度が制御される。このため、第2被覆層は、第1被覆層を完全に覆うように形成される必要がある。
(図6における第1組成物)
本発明の図6における血管内膜肥厚抑制剤を含有している被覆層は、上記のように第1組成物(ポリマーと血管内膜肥厚抑制剤)からなる層で形成されている。第1組成物において、上記のようにポリマーが任意量の血管内膜肥厚抑制剤に強く担持することにより、血管内膜肥厚抑制剤を長期にわたって放出することができる。したがって、第1組成物のポリマーの血管内膜肥厚抑制剤の担持を阻害しないように、第1組成物は、第1組成物と同じ血管内膜肥厚抑制剤以外の薬剤を含まないのが好ましい。
(図6における第1組成物中の血管内膜肥厚抑制剤の担持状態)
上記のように、血中、特に動脈中に挿入されて所定期間経過後においても、ステントから血管内膜肥厚抑制剤の放出が維持されていることが重要であるが、本発明のステントにおいては、37℃のリン酸緩衝生理食塩水中で第1組成物における血管内膜肥厚抑制剤は、ポリマーと相溶していることが好ましい。「相溶」とはポリマーと血管内膜肥厚抑制剤が2種類または多種類の物質が相互に親和性を有し、溶液または混和物を形成している状態である。
(図6における第1被覆層、第2被覆層を構成するポリマー)
本発明においては、狭窄抑制に有効な量の血管内膜肥厚抑制剤を一定時間持続的に放出させることを主眼としているが、そのために、第2被覆層において、血管内膜肥厚抑制剤を担持させるポリマーとして、血管内膜肥厚抑制剤が拡散によりポリマー層中を移動しやすい柔軟性ポリマーを使用することが好ましい。また、第1被覆層においても、同じポリマーを使用することが好ましい。このような柔軟性ポリマーとして、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素樹脂、ポリブチルアクリレート(−54℃)、ポリブチルメタクリレート(20℃)、アクリルゴム、天然ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレンブロック共重合体などが例示される。上記の柔軟性ポリマーは、血管内に導入されたとき非分解性であるが、本発明においては、ポリマーに起因する慢性炎症から血管組織を早期に回復させることが要求される場合には、生分解性ポリマー、なかでも1年以内に生体内で分解・消失するものを用いて被覆するのが好ましい。生分解性ポリマーの具体例としては、ポリ乳酸、ポリ(乳酸−グリコール酸)、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ(乳酸−ε−カプロラクトン)、ポリ(グリコール酸−ε−カプロラクトン)、ポリ−p−ジオキサノン、ポリ(グリコール酸−トリメチレンカーボネート)、ポリ−β−ヒドロキシ酪酸などが挙げられる。なかでもポリ乳酸は、ガラス転移温度が50〜60℃の範囲にあり、かつ、1年以内に生体内で分解消失する速度であるので、本発明において好ましく用いられる。これらのポリマーの分子量は、コーティング層の強度確保、コーティング作業効率の観点から、30,000〜500,000が適当である。
(図6におけるポリマーの選択と血管内膜肥厚抑制剤の放出速度)
一般的に、コート層からの血管内膜肥厚抑制剤の放出速度は、非分解性ポリマーではポリマー中での血管内膜肥厚抑制剤の拡散速度に依存するが、生分解性ポリマーでは血管内膜肥厚抑制剤の拡散速度とポリマーの分解速度に依存する。したがって血管内膜肥厚抑制剤の放出速度をコントロールするためには、ポリマーの種類を適切に選択し、必要に応じて異なる種類のポリマーを組み合わせてもよい。よってポリマー中での血管内膜肥厚抑制剤の拡散速度、ポリマーの分解速度という2つのパラメータを調節することにより血管内膜肥厚抑制剤の放出速度をコントロールできる。血管内膜肥厚抑制剤のポリマー中での拡散速度を大きくするには非晶性ポリマーを選択するのが適切であり、分解速度を大きくするには、低分子量のポリマーを選択するのが適切である。
(図6における生分解性ポリマーの選択と血管内膜肥厚抑制剤の放出速度)
第1被覆層または/および第2被覆層のポリマーとして、生分解性ポリマーを使用する場合、上記の生分解ポリマーのなかでも、ポリ乳酸が、人体への使用実績があり分解しても乳酸になり毒性も低いので安全性上好ましい。生分解性ポリマーの分解速度は、ポリマーを構成するモノマーの化学構造、共重合比、分子量に依存するので、目標とする血管内膜肥厚抑制剤の放出速度に適するように、これらのパラメータを調節することが好ましい。
(図6における第1被覆層の厚み)
第1被覆層の厚みは、構成要素によって表1に示した数値になることが好ましい。0.5μm未満では、第1被覆層の均一性が確保できなくなり、血管内膜肥厚抑制剤の放出速度の抑制機能が発揮できない。逆に、5μmを超えると、厚みに見合う効果が得られない。また、必要以上に厚みを厚くすることは薬剤溶出としての効果やコア構造体としての機能を損なう。第1被覆層は、単一層であってもよく、上記の範囲内において複数層で形成してもよい。したがって、これらの塗布条件が満たせるように、コーティング液組成およびコーティング条件が選択される。
(図6における第1被覆層)
図6における第1被覆層はステント本体から溶出した金属イオンによって引き起こされる炎症を抑制するための金属腐食防止層である。第1被覆層はポリマー単独で形成されてもよいし、ポリマー以外の成分として、ポリマーと血管内膜肥厚抑制剤、抗トロンビン薬、免疫抑制剤、抗がん剤、コレステロール低下剤などの薬剤を含む組成物であってもよい。
(図6における第2被覆層の厚み)
第2被覆層の厚みは、構成要素によって表1に示した数値になることが好ましい。ステントの単位表面積(1cm)あたりのコート層の厚みは血管内膜肥厚抑制剤を適当量放出させる観点から、1〜25μmの範囲内の厚みが必要である。通常2〜20μmの範囲内にあるのが好ましい。第1被覆層を含めて被覆層が20μmを超えると、ステント内狭窄が大きくなる懸念があるので、第2被覆層の厚みとしては、15μmを超えないようにすることが好ましい。第2被覆層は、単一層であってもよく、上記の範囲内において複数層で形成してもよい。したがって、これらの塗布条件が満たせるように、コーティング液組成およびコーティング条件が選択される。
(図6における第1被覆層、第2被覆層の形成方法)
本発明の図6における第1被覆層はポリマーをステント本体表面に、そのポリマーを易揮発性溶剤(例えばフッ素系アルコール)に溶解した溶液をステント本体表面に噴霧するか、ステント本体を該溶液に浸漬することにより、ステント本体に塗布し、乾燥することにより形成される。本発明において、ポリマーからなる第1被覆層は、円筒状のステント本体の少なくとも外表面(血管壁と接触する面)にコーティングされる。この場合には、塗布はポリマーを溶剤に溶解した溶液をステント本体の外表面に噴霧することにより行うのが好ましい。また、外表面だけでなく内表面にも行う場合には、内外両表面に噴霧を行うか、溶液中にステント本体を含浸することにより行うのが好ましい。塗布後の溶剤除去は、減圧、送風、加熱などの方法に適宜行われる。また、本発明の図6における第2被覆層は第1組成物を前記第1被覆層がコーティングされたステント本体表面に、第1組成物とを易揮発性溶剤(例えばフッ素系アルコール)に溶解した溶液をステント表面に噴霧するか、前記第1被覆層がコーティングされたステント本体を該溶液に浸漬することにより、前記第1被覆層がコーティングされたステント本体に塗布し、乾燥することにより形成される。本発明において、血管内膜肥厚抑制剤を含む組成物は、円筒状のステント本体の少なくとも外表面(血管壁と接触する面)にコーティングされる。この場合には、塗布は組成物を溶剤に溶解した溶液をステント本体の外表面に噴霧することにより行うのが好ましい。また、外表面だけでなく内表面にも行う場合には、内外両表面に噴霧を行うか、溶液中に前記第1被覆層がコーティングされたステント本体を含浸することにより行うのが好ましい。塗布後の溶剤除去は、減圧、送風、加熱などの方法に適宜行われる。
(図6における第1被覆層、第2被覆層のための溶剤の選択)
図6における第1被覆層、第2被覆層の溶剤は、ポリマーおよび血管内膜肥厚抑制剤を溶解可能で、コーティング後に容易に除去可能な、沸点100℃未満の揮発性溶剤として、メタノール、エタノール、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノールと、これらのアルコールを含有する混合溶剤が挙げられる。ポリマーとしては、上記に例示したポリマーが用いられるがなかでも、極性の高いポリ乳酸が上記の溶剤に対する溶解性の点で好ましい。以上のことから、血管内膜肥厚抑制剤と上記のポリマーの両方を溶解し、血管内膜肥厚抑制剤の徐放性を付与するのに適した溶剤として、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノールのほか、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチルなどの低級アルキルエステル(炭素数:6以下)溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどの低級アルキルケトン(炭素数:6以下)溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなどの低級ハロゲン化炭化水素(炭素数:4以下)溶剤などが例示される。なかでも、血管内膜肥厚抑制剤をポリマーに担持させて、血管内膜肥厚抑制剤の徐放性を与える観点から、低級アルキルエステル、低級アルキルケトン溶剤および低級ハロゲン化炭化水素溶剤が好ましい。これらの溶剤を用いて被覆層を形成して溶剤を除去した場合には、血管内膜肥厚抑制剤がポリマーに担持され、前記第1被覆層がコーティングされたステント本体の上に前記第2被覆層が形成されると、血管内膜肥厚抑制剤の放出速度が望ましいものとなる。
(図6における第2被覆層の形成)
第2被覆層は、第1組成物を溶解した溶液を、第1被覆層上に塗布することにより形成される。塗布方法は第1被覆層の形成と同様である。
(図6における第2被覆層のポリマーと血管内膜肥厚抑制剤の重量構成比率)
図6におけるポリマーと血管内膜肥厚抑制剤の重量構成比率が表2の範囲で形成される。ポリマーの重量構成比率(第2被覆層の血管内膜肥厚抑制剤の比率1に対してポリマーの比率が1未満である)が小さくなると、コーティングした層からの血管内膜肥厚抑制剤の放出量が多くなり、また、ポリマーの重量構成比率(第2被覆層の血管内膜肥厚抑制剤の比率1に対してポリマーの比率が3を超える)が多くなると、コーティングした層からの血管内膜肥厚抑制剤の放出量が少なくなり、放出速度が最適であるとは言い難い。
(図9における第1被覆層、第2被覆層、第3被覆層)
図9における本発明のステントの基本構造は、(a)ステント本体、(b)ステント本体の少なくとも外表面および内表面に形成された、ポリマー、または、生体適合性被膜からなる第1被覆層、(c)第1被覆層上に形成されたポリマーと血管内膜肥厚抑制剤からなる第2被覆層、(d)第2被覆層上に形成されたポリマーからなる第3被覆層から構成されている。本発明の図9における血管内膜肥厚抑制剤を含有している第2被覆層に、任意量の上記血管内膜肥厚抑制剤を強く担持(ポリマー中にサブミクロンオーダーの粒子状にミクロ分散させることにより保持されている)させ、ポリマー、または、生体適合性被膜からなる第1被覆層、ポリマーからなる第3被覆層により、血管内膜肥厚抑制剤の放出を抑制する長期間にわたる徐放性が付与されている。第1被覆層、第2被覆層、第3被覆層の厚み、ポリマー組成、組織等、また、ポリマー中における血管内膜肥厚抑制剤の担持状態等の選択により、ステント表面からの血管内膜肥厚抑制剤の放出速度が制御される。このため、第2被覆層は、第1被覆層を、第3被覆層は、第2被覆層を完全に覆うように形成される必要がある。
(図9における第2組成物)
本発明の図9における血管内膜肥厚抑制剤を含有している第2被覆層は、上記のようにポリマーと血管内膜肥厚抑制剤を含む第2組成物から形成されている。第2組成物において、上記のようにポリマーが任意量の血管内膜肥厚抑制剤に強く担持することにより、血管内膜肥厚抑制剤を長期にわたって放出することができる。したがって、第2組成物のポリマーの血管内膜肥厚抑制剤の担持を阻害しないように、第2組成物は、第2組成物と同じ血管内膜肥厚抑制剤以外の薬剤を含まないのが好ましい。
(図9における第2組成物中の血管内膜肥厚抑制剤の担持状態)
本発明の図9は、血中、特に動脈中に挿入されて所定期間経過後においても、ステントから血管内膜肥厚抑制剤の放出が維持されていることが重要であるが、本発明のステントにおいては、37℃のリン酸緩衝生理食塩水中で第2組成物における血管内膜肥厚抑制剤は、ポリマーと相溶していることが好ましい。「相溶」とはポリマーと血管内膜肥厚抑制剤が2種類または多種類の物質が相互に親和性を有し、溶液または混和物を形成している状態である。
(図9における第1被覆層、第2被覆層、第3被覆層を構成するポリマー)
本発明においては、狭窄抑制に有効な量の血管内膜肥厚抑制剤を一定時間持続的に放出させることを主眼としているが、そのために、第2被覆層において、血管内膜肥厚抑制剤を担持させるポリマーとして、血管内膜肥厚抑制剤が拡散によりポリマー層中を移動しやすい柔軟性ポリマーを使用することが好ましい。また、第1被覆層、第3被覆層においても、同じポリマーを使用することが好ましい。このような柔軟性ポリマーとして、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素樹脂、ポリブチルアクリレート(−54℃)、ポリブチルメタクリレート(20℃)、アクリルゴム、天然ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレンブロック共重合体などが例示される。上記の柔軟性ポリマーは、血管内に導入されたとき非分解性であるが、本発明においては、ポリマーに起因する慢性炎症から血管組織を早期に回復させることが要求される場合には、生分解性ポリマー、なかでも1年以内に生体内で分解・消失するものを用いて被覆するのが好ましい。生分解性ポリマーの具体例としては、ポリ乳酸、ポリ(乳酸−グリコール酸)、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ(乳酸−ε−カプロラクトン)、ポリ(グリコール酸−ε−カプロラクトン)、ポリ−p−ジオキサノン、ポリ(グリコール酸−トリメチレンカーボネート)、ポリ−β−ヒドロキシ酪酸などが挙げられる。なかでもポリ乳酸は、ガラス転移温度が50〜60℃の範囲にあり、かつ、1年以内に生体内で分解消失する速度であるので、本発明において好ましく用いられる。これらのポリマーの分子量は、コーティング層の強度確保、コーティング作業効率の観点から、30,000〜500,000が適当である。
(図9におけるポリマーの選択と血管内膜肥厚抑制剤の放出速度)
一般的に、コート層からの血管内膜肥厚抑制剤の放出速度は、非分解性ポリマーではポリマー中での血管内膜肥厚抑制剤の拡散速度に依存するが、生分解性ポリマーでは血管内膜肥厚抑制剤の拡散速度とポリマーの分解速度に依存する。したがって血管内膜肥厚抑制剤の放出速度をコントロールするためには、ポリマーの種類を適切に選択し、必要に応じて異なる種類のポリマーを組み合わせてもよい。よってポリマー中での血管内膜肥厚抑制剤の拡散速度、ポリマーの分解速度という2つのパラメータを調節することにより血管内膜肥厚抑制剤の放出速度をコントロールできる。血管内膜肥厚抑制剤のポリマー中での拡散速度を大きくするには非晶性ポリマーを選択するのが適切であり、分解速度を大きくするには、低分子量のポリマーを選択するのが適切である。
(図9における生分解性ポリマーの選択と血管内膜肥厚抑制剤の放出速度)
第1被覆層、第2被覆層、および第3被覆層のポリマーとして、生分解性ポリマーを使用する場合、上記の生分解ポリマーのなかでも、ポリ乳酸が、人体への使用実績があり分解しても乳酸になり毒性も低いので安全性上好ましい。生分解性ポリマーの分解速度は、ポリマーを構成するモノマーの化学構造、共重合比、分子量に依存するので、目標とする血管内膜肥厚抑制剤の放出速度に適するように、これらのパラメータを調節することが好ましい。
(図9における第1被覆層)
図9における第1被覆層はステント本体から溶出した金属イオンによって引き起こされる炎症を抑制するための金属腐食防止層である。第1被覆層はポリマー単独で形成してもよいし、生体適合性被膜により形成してもよい。生体適合性被膜は生体内にステント本体を留置した場合、血小板を付着し難くかつ組織に対しても刺激性を示さないものが好ましい。
(図9における第1被覆層の厚み)
第1被覆層の厚みは、構成要素によって表1に示した数値になることが好ましい。第1被覆層がポリマーの場合、0.5μm未満では、第1被覆層の均一性が確保できなくなり、血管内膜肥厚抑制剤の放出速度の抑制機能が発揮できない。逆に、5μmを超えると、厚みに見合う効果が得られない。つまり、必要以上に厚みを大きくすることは薬剤溶出としての効果やステントとしての機能を損なう。第1被覆層は、単一層であってもよく、上記の範囲内において複数層で形成してもよい。第1被覆層として生体適合性被膜層とした場合、あまりに過度に膜厚を大きくすると、変形の際に亀裂が発生してしまい、生体適合性被膜が剥離するおそれがあるため、膜厚が10nm以上かつ300nm以下とすればよく、好ましくは20nm以上かつ80nm以下がよい。
(図9における第2被覆層)
第2被覆層は、ポリマー単独で形成してもよいし、ポリマー以外の成分として、ポリマーと血管内膜肥厚抑制剤、抗トロンビン薬、免疫抑制剤、抗がん剤、コレステロール低下剤などの薬剤を含む組成物であってもよい。
(図9における第2被覆層の厚み)
第2被覆層の厚みは、構成要素によって表1に示した数値になることが好ましい。第2被覆層がポリマーに血管内膜肥厚抑制剤が担持された層から形成されている場合、ステントの単位表面積(1cm)あたりのコート層の厚みは血管内膜肥厚抑制剤を適当量放出させる観点から、1〜25μmの範囲内の厚みが必要である。第1被覆層、第3被覆層を含めて被覆層が20μmを超えると、ステント内狭窄が大きくなる懸念があるので、第2被覆層の厚みとしては、15μmを超えないようにすることが好ましい。したがって、これらの塗布条件が満たせるように、コーティング液組成およびコーティング条件が選択される。
(図9における第3被覆層)
第3被覆層は、ポリマー単独で形成してもよいし、ポリマー以外の成分として、ポリマーと血管内膜肥厚抑制剤、抗トロンビン薬、免疫抑制剤、抗がん剤、コレステロール低下剤などの薬剤を含む組成物であってもよい。
(図9における第3被覆層の厚み)
第3被覆層の厚みは、構成要素によって表1に示した数値になることが好ましい。第3被覆層がポリマーの場合、0.5μm未満では、第3被覆層の均一性が確保できなくなり、血管内膜肥厚抑制剤の放出速度の抑制機能が発揮できない。逆に、5μmを超えると、厚みに見合う効果が得られない。つまり、必要以上に厚みを大きくすることは薬剤溶出としての効果やステントとしての機能を損なう。第1被覆層、第2被覆層を含めて被覆層が20μmを超えると、ステント内狭窄が大きくなる懸念があるので、第3被覆層の厚みとしては、5μmを超えないようにすることが好ましい。したがって、これらの塗布条件が満たせるように、コーティング液組成およびコーティング条件が選択される。
(図9における第1被覆層、第2被覆層、および第3被覆層の形成方法)
本発明の図9における第1被覆層(第1被覆層がポリマーである場合)はポリマーをステント本体表面に、そのポリマーを易揮発性溶剤(例えばフッ素系アルコール)に溶解した溶液をステント本体表面に噴霧するか、ステント本体表面を該溶液に浸漬することにより、前記ポリマーがステント本体表面に塗布し、乾燥することにより形成される。本発明において、第1被覆層は、円筒状のステント本体表面の少なくとも外表面(血管壁と接触する面)にコーティングされる。この場合には、塗布はポリマーを溶剤に溶解した溶液をステント本体表面の外表面に噴霧することにより行うのが好ましい。また、外表面だけでなく内表面にも行う場合には、内外両表面に噴霧を行うか、溶液中にステント本体表面を含浸することにより行うのが好ましい。塗布後の溶剤除去は、減圧、送風、加熱などの方法に適宜行われる。また、本発明の図9における第1被覆層(第1被覆層が生体適合性被膜層の場合)はスパッタ法、DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法、化学気相堆積法(CVD法)、プラズマCVD法、プラズマイオン注入法、重畳型RFプラズマイオン注入法、イオンプレーティング法、アークイオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法又はレーザーアブレーション法等によりコア構造体の表面に形成することができる。また、本発明の図9における第2被覆層は第2組成物を前記第1被覆層が搭載されている表面に、その組成物を易揮発性溶剤(例えばフッ素系アルコール)に溶解した溶液を第1被覆層が搭載されている表面に噴霧するか、第1被覆層が搭載されている表面を該溶液に浸漬することにより、第1被覆層が搭載されている表面に塗布し、乾燥することにより形成される。第2被覆層は、第1被覆層が搭載されている表面の少なくとも外表面(血管壁と接触する面)にコーティングされる。この場合には、塗布は第2組成物を溶剤に溶解した溶液を第1被覆層の外表面に噴霧することにより行うのが好ましい。また、外表面だけでなく内表面にも行う場合には、内外両表面に噴霧を行うか、溶液中に第1被覆層を含浸することにより行うのが好ましい。塗布後の溶剤除去は、減圧、送風、加熱などの方法に適宜行われる。また、本発明の図9における第3被覆層はポリマーを前記第2被覆層表面に、そのポリマーを易揮発性溶剤(例えばフッ素系アルコール)に溶解した溶液をステント表面に噴霧するか、前記第1被覆層、前記第2被覆層がコーティングされたステント本体を該溶液に浸漬することにより、前記第1被覆層、前記第2被覆層がコーティングされたステント本体に塗布し、乾燥することにより形成される。本発明において、第3被覆層は、円筒状のステント本体の少なくとも外表面(血管壁と接触する面)にコーティングされる。この場合には、塗布はポリマーを溶剤に溶解した溶液をステント本体の外表面に噴霧することにより行うのが好ましい。また、外表面だけでなく内表面にも行う場合には、内外両表面に噴霧を行うか、溶液中に前記第1被覆層、前記第2被覆層がコーティングされたステント本体を含浸することにより行うのが好ましい。塗布後の溶剤除去は、減圧、送風、加熱などの方法に適宜行われる。
(図9における第1被覆層、第2被覆層、第3被覆層のための溶剤の選択)
図9における第1被覆層(ポリマーの場合)、第2被覆層、第3被覆層の溶剤は、ポリマー、血管内膜肥厚抑制剤を溶解可能で、コーティング後に容易に除去可能な、沸点100℃未満の揮発性溶剤として、メタノール、エタノール、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノールと、これらのアルコールを含有する混合溶剤が挙げられる。ポリマーとしては、上記に例示したポリマーが用いられるがなかでも、極性の高いポリ乳酸が上記の溶剤に対する溶解性の点で好ましい。以上のことから、血管内膜肥厚抑制剤と上記のポリマーの両方を溶解し、血管内膜肥厚抑制剤の徐放性を付与するのに適した溶剤として、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノールのほか、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチルなどの低級アルキルエステル(炭素数:6以下)溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどの低級アルキルケトン(炭素数:6以下)溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなどの低級ハロゲン化炭化水素(炭素数:4以下)溶剤などが例示される。なかでも、血管内膜肥厚抑制剤をポリマーに担持させて、血管内膜肥厚抑制剤の徐放性を与える観点から、低級アルキルエステル、低級アルキルケトン溶剤および低級ハロゲン化炭化水素溶剤が好ましい。これらの溶剤を用いて被覆層を形成して溶剤を除去した場合には、血管内膜肥厚抑制剤がポリマーに担持され、ステント本体の上に前記第1被覆層が、前記第2被覆層の上に前記第3被覆層が形成されると、血管内膜肥厚抑制剤の放出速度が望ましいものとなる。
(図9における第2被覆層の形成)
第2被覆層は、第2組成物を溶剤に溶解した溶液を、第1被覆層上に塗布することにより形成される。塗布方法は第1被覆層の形成と同様である。
(図9における第3被覆層の形成)
第3被覆層は、ポリマーを溶解した溶液を、第2被覆層上に塗布することにより形成される。塗布方法は第1被覆層の形成と同様である。
(図9における第2被覆層のポリマーと血管内膜肥厚抑制剤の重量構成比率)
図9におけるポリマーと血管内膜肥厚抑制剤の重量構成比率が表2の範囲で形成される。ポリマーの重量構成比率(第2被覆層の血管内膜肥厚抑制剤の比率1に対してポリマーの比率が1未満である)が小さくなると、コーティングした層からの血管内膜肥厚抑制剤の放出量が多くなり、また、ポリマーの重量構成比率(第2被覆層の血管内膜肥厚抑制剤の比率1に対してポリマーの比率が3を超える)が大きくなると、コーティングした層からの血管内膜肥厚抑制剤の放出量が少なくなり、放出速度が最適であるとは言い難い。
(図6、図9における血管内膜肥厚抑制剤の放出速度の調整)
本発明の薬剤徐放性ステントがステント内狭窄を顕著に抑制するには、参考実施例の項に記載した動物試験からも明らかなように、37℃のリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)にステントを浸漬してからの血管内膜肥厚抑制剤の溶出量が1ヶ月目に80%程度、3ヶ月目に100%程度となることが望ましい。
(図6、図9における第1被覆層である金属腐食防止層の効果)
血管の拍動の影響により、生体内に留置したステント本体の腐食が劇的に進行すると、ステントとしての機械的強度を損なうだけでなく、溶出した金属イオンによってバースト様の薬剤溶出を引き起こすおそれがあるため、好ましくない。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の限定を意図するものではない。実施例中で用いる材料、使用量、濃度、処理温度などの数値条件、処理法などは本発明の範囲内における好適例にすぎない。ここで、実施例中の血管内膜肥厚抑制剤は、「シロリムス」、または、「薬剤」として記載する。
図1に示すデザインを有する加工時の外径=1.6mmφ、拡張後内径=3mmφ、長さ18mm、全表面積=0.80cmのステント、図2に示すデザインを有する加工時の外径=1.55mmφ、拡張後内径=3mmφ、長さ18mm、全表面積=0.80cmのステントを本試験に使用した。また、コア構造体の材料としてコバルトクロム合金とマグネシウム合金を使用した。本試験での加工後のステント本体であるコア構造体の幅及び厚みは、コバルトクロムステントでは110±40μm、マグネシウムステントでは200±20μmであった。
(図6における構造層の決定)
[参考製造例1]
ステント1本あたり第1被覆層にポリD,L−PLA85μg、第2被覆層にシロリムス85μgとポリD,L−PLA85μgとなるように溶液(コーティング液)を調製した。図1に示すデザインを有するステント本体をスプレイ式コーティング装置のマンドレルに装着した。前記第1被覆層のコーティング液を0.02mL/分の速度でノズルより噴射し、ノズル下9mmの位置でステント本体を毎分120回転の速度で回転させつつ往復運動させて約70秒間にわたってステント本体の端から中央までの表面にコーティングを行った。コーティング終了後3分間ステントを減圧乾燥し、ついで残りの半分をコーティングした。全面コーティングが終了したステントは減圧乾燥してから、60℃で24時間乾燥して溶剤を完全に除去した。溶剤除去後、前記第2被覆層のコーティング液を、第1被覆層のコーティング方法と同様にコーティングした。この同一条件で12本のステント本体にコーティングを行った。
[参考製造例2]
ステント1本あたり第1被覆層にシロリムス85μgとポリD,L−PLA85μg、第2被覆層にポリD,L−PLA85μgとなるように溶液(コーティング液)を調製した。図1に示すデザインを有するステント本体をスプレイ式コーティング装置のマンドレルに装着した。前記第1被覆層のコーティング液を0.02mL/分の速度でノズルより噴射し、ノズル下9mmの位置でステント本体を毎分120回転の速度で回転させつつ往復運動させて約70秒間にわたってステント本体の端から中央までの表面にコーティングを行った。コーティング終了後3分間ステントを減圧乾燥し、ついで残りの半分をコーティングした。全面コーティングが終了したステントは減圧乾燥してから、60℃で24時間乾燥して溶剤を完全に除去した。溶剤除去後、前記第2被覆層のコーティング液を、第1被覆層のコーティング方法と同様にコーティングした。この同一条件で12本のステント本体にコーティングを行った。
[参考製造例3]
ステント1本あたり第1被覆層にシロリムス85μgとポリD,L−PLA85μgとなるように溶液(コーティング液)を調製した。図1に示すデザインを有するステント本体をスプレイ式コーティング装置のマンドレルに装着した。前記第1被覆層のコーティング液を0.02mL/分の速度でノズルより噴射し、ノズル下9mmの位置でステント本体を毎分120回転の速度で回転させつつ往復運動させて約70秒間にわたってステント本体の端から中央までの表面にコーティングを行った。コーティング終了後3分間ステントを減圧乾燥し、ついで残りの半分をコーティングした。全面コーティングが終了したステントは減圧乾燥してから、60℃で24時間乾燥して溶剤を完全に除去した。溶剤除去後、前記第2被覆層のコーティング液を、第1被覆層のコーティング方法と同様にコーティングした。この同一条件で12本のステント本体にコーティングを行った。
[参考製造例4]
ステント1本あたり第1被覆層にポリD,L−PLA85μgとなるように溶液(コーティング液)を調製した。図1に示すデザインを有するステント本体をスプレイ式コーティング装置のマンドレルに装着した。前記第1被覆層のコーティング液を0.02mL/分の速度でノズルより噴射し、ノズル下9mmの位置でステント本体を毎分120回転の速度で回転させつつ往復運動させて約70秒間にわたってステント本体の端から中央までの表面にコーティングを行った。コーティング終了後3分間ステントを減圧乾燥し、ついで残りの半分をコーティングした。全面コーティングが終了したステントは減圧乾燥してから、60℃で24時間乾燥して溶剤を完全に除去した。溶剤除去後、前記第2被覆層のコーティング液を、第1被覆層のコーティング方法と同様にコーティングした。この同一条件で12本のステント本体にコーティングを行った。
(図6における構成層決定のための薬剤放出試験)
参考製造例1〜4に示した4種類の薬剤をコーティングしたステントからの薬剤放出量を測定した。各ステントは減圧滅菌後、エチレンオキサイドガス(EOG)滅菌を行った。各ステントを清浄な密閉ガラス容器に入れ、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水を加えた。ステント全体が液中で浸漬された状態で、37℃恒温器内で振盪をおこなった。
所定時間毎に溶出液のUV吸収(シロリムス278nm)を紫外可視分光光度計UV−2450(島津製)で測定し、シロリムスの吸光度を測定した。搭載された薬剤の量をもとに溶出量を%で算出した。結果を表5に示す。
表5より、1層および2層コーティングしたステントでは、いずれもバースト様の急激な放出は見られなかった。参考製造例2、参考製造例3は薬剤溶出量が多く、所望の薬剤溶出挙動を示さなかった。参考製造例1は参考製造例2、参考製造例3と比較して、薬剤溶出量が抑制されており、金属腐食防止層の効果が発揮されたことが示唆された。参考製造例1をもとに適切なポリマー、薬剤量を以下で検討した。
(図6におけるポリマー、薬剤の最適量の決定)
上記試験により、ステント表面に第1被覆層にポリD,L−PLA、第2被覆層にシロリムスとポリD,L−PLAからなる層が最適な薬剤徐放であることが判明したため、以下でポリマー、薬剤の最適量の決定を行った。
[参考製造例5]
ステント1本あたり第1被覆層にポリD,L−PLA85μg、第2被覆層にシロリムス85μgとポリD,L−PLA255μgとなるように溶液(コーティング液)を調製した。図1に示すデザインを有するステント本体をスプレイ式コーティング装置のマンドレルに装着した。前記第1被覆層のコーティング液を0.02mL/分の速度でノズルより噴射し、ノズル下9mmの位置でステント本体を毎分120回転の速度で回転させつつ往復運動させて約70秒間にわたってステント本体の端から中央までの表面にコーティングを行った。コーティング終了後3分間ステントを減圧乾燥し、ついで残りの半分をコーティングした。全面コーティングが終了したステントは減圧乾燥してから、60℃で24時間乾燥して溶剤を完全に除去した。溶剤除去後、前記第2被覆層のコーティング液を、第1被覆層のコーティング方法と同様にコーティングした。この同一条件で12本のステント本体にコーティングを行った。
[参考製造例6]
ステント1本あたり第1被覆層にポリD,L−PLA85μg、第2被覆層にシロリムス85μgとポリD,L−PLA340μgとなるように溶液(コーティング液)を調製した。図1に示すデザインを有するステント本体をスプレイ式コーティング装置のマンドレルに装着した。前記第1被覆層のコーティング液を0.02mL/分の速度でノズルより噴射し、ノズル下9mmの位置でステント本体を毎分120回転の速度で回転させつつ往復運動させて約70秒間にわたってステント本体の端から中央までの表面にコーティングを行った。コーティング終了後3分間ステントを減圧乾燥し、ついで残りの半分をコーティングした。全面コーティングが終了したステントは減圧乾燥してから、60℃で24時間乾燥して溶剤を完全に除去した。溶剤除去後、前記第2被覆層のコーティング液を、第1被覆層のコーティング方法と同様にコーティングした。この同一条件で12本のステント本体にコーティングを行った。
(図6における最適量決定のための薬剤放出試験)
参考製造例5〜6に示した2種類の薬剤をコーティングしたステントからの薬剤放出量を測定した。各ステントは減圧滅菌後、エチレンオキサイドガス(EOG)滅菌を行った。各ステントを清浄な密閉ガラス容器に入れ、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水を加えた。ステント全体が液中で浸漬された状態で、37℃恒温器内で振盪をおこなった。
所定時間毎に溶出液のUV吸収(シロリムス278nm)を紫外可視分光光度計UV−2450(島津製)で測定し、シロリムスの吸光度を測定した。搭載された薬剤の量をもとに溶出量を%で算出した。結果を表6に示す。表6の溶出量は12本の平均値である。
表6より、いずれもバースト様の急激な放出は見られなかったが、参考製造例5、参考製造例6では所望の薬剤溶出挙動ではなかった。この結果をもとにして、参考動物試験1を実施した。
(参考動物試験1)
参考製造例1、参考製造例2および参考製造例4の3種類のステント各3本、合計18本をクラウン系ミニブタ(体重25〜45kg)9匹の冠動脈(LAD、LCX)に埋植し、1か月後にステント内狭窄の度合いを定量的冠動脈造影法(QCA)で評価した。
各ステントをバルーンカテーテルにマウントし、EOG滅菌を行った。各ステントは全身麻酔下、ミニブタの右大腿動脈からシースイントロデユーサーを使い、6Frのガイディングカテーテルを使用して冠動脈内に挿入した。元の血管径に対して、ステント埋植後の血管径(近位部)が1.0〜1.2の範囲内におさまるよう、埋植部位とステント拡張圧を選択して、ステントの埋植を行った。
埋植3ヶ月後、ステント埋植部位をX線造影法により血管内腔径をステントの近位部、中央部、遠位部の3か所で計測した。狭窄率は以下の計算式により算出した。
血管径狭窄率=(埋植直後の内腔径−3ヶ月後の内腔径)/埋植直後の内腔径×100算出された平均血管径狭窄率(%)を表7に示す。
表7からわかるように、参考製造例1では参考製造例4より狭窄率が小さい。これに対し、参考製造例2の狭窄抑制効果は劣性であり、薬の溶出挙動が最適でないことが示唆された。
(参考動物試験2)
参考製造例1、参考製造例2および参考製造例4の3種類のステント各3本、合計18本をクラウン系ミニブタ(体重25〜45kg)9匹の冠動脈(LAD、LCX)に埋植し、1ヶ月後に病理解剖して摘出した心臓をホルマリン固定した。該心臓からステントが埋植されている血管組織を切り出し、アクリル樹脂で固定した後、ステントの中央、両端の3か所で切断して厚さ6μmの薄切片を作製した。これらをヘマトキシリン・エオシン染色とエラスチカ・ワンギーソン染色により染色し、面積狭窄率(%)と内皮細胞被覆率(%)を評価した。参考製造例1では面積狭窄率は27±6%で、参考製造例1の平均血管径狭窄率とほぼ一致した。内皮細胞の被覆率は100%で、ステント埋植時の血管内壁の傷害は完全治癒していた。参考製造例2では面積狭窄率は53±14%で、参考製造例2の平均血管径狭窄率とほぼ一致した。
ステント表面に担持されたシロリムスが、37℃のリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中で、該ステントの浸漬時点から血管内膜肥厚を抑制するためには1ヶ月目の薬剤(シロリムス)溶出量が80%程度、3ヶ月目の薬剤(シロリムス)溶出量が100%程度となるシロリムスの放出速度が調節されている薬剤溶出性ステントが作製された。これを生体内に留置した場合、放出されたシロリムスが血管内膜肥厚を有効に抑制でき、かつステント留置3ヶ月以内に血管内壁がほぼ完全に内皮細胞で覆われることが、以上の薬剤溶出試験および動物実験の結果から示された。ただし、サンプル(ステント)間の面積狭窄率にはあまりにも大きな差違があり、薬剤溶出挙動だけに近因しているとは考えにくい。つまり、金属腐食防止層の効果によって、ポリマーの分解ならびに金属イオンの溶出に起因する炎症が抑制されていることが示唆された。
(図6における拍動耐久性試験、母材:マグネシウム合金)
拍動環境下におけるポリマーならびにステント母材の特性を評価するために、37℃温水中で、拍動耐久性試験装置(BOSE社製)を用いて、ステントから放出されるポリマー粒子数と試験開始前後の母材重量を測定した。本試験は生体内の血管の拍動振幅が中心からマイナス0.2mm〜プラス0.2mmとなるように拍動させ、2週間実施した。以下にその結果を示す。
表8より、参考製造例2、参考製造例4は、金属腐食防止層を有する参考製造例1に比べてポリマー粒子数が多いことが確認された。つまり、参考製造例1は第1被覆層である金属腐食防止層の効果によって、ポリマーの分解が抑制されていることが示唆された。
表9により、試験開始前のマグネシウムステントの1本あたりの重量は5.021±0.177mgである。参考製造例2、参考製造例4は、金属腐食防止層を有する参考製造例1に比べて母材減少量が大きいことが確認された。つまり、参考製造例1は第1被覆層である金属腐食防止層の効果によって、母材の分解が抑制されていることが示唆された。以上の結果から、金属腐食防止層が母材表面からの金属イオンの溶出を抑制し、ひいては、ポリマーの分解を抑制していることが明らかになった。また、この事象と薬剤溶出試験ならびに動物試験結果との間に相関関係が成り立っている。つまり、ステントを最適化するにあたり、母材表面からの金属イオン溶出抑制能を向上させることが重要な因子の一つであるといえる。
(図6における拍動耐久性試験、母材:コバルトクロム合金)
拍動環境下におけるポリマーならびにステント母材の特性を評価するために、37℃温水中で、拍動耐久性試験装置(BOSE社製)を用いて、ステントから放出されるポリマー粒子数と試験開始前後の母材重量を測定した。本試験は生体内の血管の拍動振幅が中心からマイナス0.2mm〜プラス0.2mmとなるように拍動させ、2週間実施した。以下にその結果を示す。
表10より、参考製造例2、参考製造例4は、金属腐食防止層を有する参考製造例1に比べてポリマー粒子数が多いことが確認された。つまり、参考製造例1は第1被覆層である金属腐食防止層の効果によって、ポリマーの分解が抑制されていることが示唆された。
表11により、試験開始前のコバルトクロムステントの1本あたりの重量は15.081±0.004mgである。参考製造例2、参考製造例4は、金属腐食防止層を有する参考製造例1に比べて母材減少量が大きいことが確認された。つまり、参考製造例1は第1被覆層である金属腐食防止層の効果によって、母材の分解が抑制されていることが示唆された。以上の結果から、金属腐食防止層が母材表面からの金属イオンの溶出を抑制し、ひいては、ポリマーの分解を抑制していることが明らかになった。また、この事象と薬剤溶出試験ならびに動物試験結果との間に相関関係が成り立っている。つまり、ステントを最適化するにあたり、母材表面からの金属イオン溶出抑制能を向上させることが重要な因子の一つであるといえる。さらに、金属イオン溶出を抑制するために、検討を行った。
(金属イオン溶出抑制能の向上)
最適な構成層である参考製造例1をもとに、金属イオン溶出抑制能の向上を検討した。
その結果、参考製造例1の構成層にポリマーを被覆させることによって、金属イオン溶出抑制能が向上していることが示唆された(図9参照)。
本発明の特定の実施形態について説明を行ったが、この技術分野における当業者は本明細書において記述された上記の実施形態を容易に修正することができることは明らかである。従って、本発明は、この明細書で示された特定の実施形態に限定されることなく、他のいかなる修正、変更、実施の形態への利用に適用されるものであり、それゆえに、他のすべての修正、変更、実施形態は、本発明の精神および範囲内に入るものとみなされるべきである。
1 部分リンク型ステント
2,2’ セル
3,3’,3’’,3’’’ 環状ユニット
4 連結部
5 セル円弧部
6 全リンク型ステント
7,7’ 中心円弧
8,8’ 接線円
9 最大応力発生点
10,14,18,21 血管内膜肥厚抑制剤
11,16,19,23 血管内膜肥厚抑制剤を含有したポリマー層
12,15,22,26 ポリマー層
13,17,20,25,27 生分解性金属または非生分解性金属材料のコア構造体
24 ポリマー層または生体適合性被膜層

Claims (13)

  1. 外表面と内表面とを有する円筒形状に形成された生分解性材料または非生分解性材料のコア構造体と、前記コア構造体の外表面と内表面を被覆している第1被覆層と、前記第1被覆層を実質的に完全に覆うように被覆している第2被覆層と、を具備しており、
    前記第1被覆層は、ポリマー単独により形成され、前記第2被覆層は、ポリマーと血管内膜肥厚抑制剤である第1組成物から形成されているステント。
  2. 外表面と内表面とを有する円筒形状に形成された生分解性材料または非生分解性材料のコア構造体と、前記コア構造体の外表面と内表面を被覆している第1被覆層と、前記第1被覆層を実質的に完全に覆うように被覆している第2被覆層と、前記第2被覆層を実質的に完全に覆うように被覆している第3被覆層と、を具備しており、
    前記第1被覆層は、ポリマー単独からか、または、生体適合性被膜層から形成され、前記第2被覆層は、ポリマーと血管内膜肥厚抑制剤である第2組成物から形成され、前記第3被膜層は、ポリマー単独により形成されているステント。
  3. 請求項1または請求項2において、前記血管内膜肥厚抑制剤の必須成分が、シロリムス、エベロリムス、バイオリムスA9、ゾタロリムス、タクロリムス、パクリタキセルであるステント。
  4. 請求項1または請求項2において、前記ポリマーは、生分解性ポリマーであって、前記生分解性ポリマーが、ポリ乳酸、ポリ(乳酸―グリコール酸)、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ(乳酸―ε―カプロラクトン)、またはポリ(グリコール酸―ε―カプロラクトン)であるステント。
  5. 請求項1または請求項2において、前記生分解性材料が、生分解性金属であって、その生分解性金属が、純マグネシウム、マグネシウム合金、純鉄または鉄合金であるステント。
  6. 請求項1または請求項2において、前記非生分解性材料が、金属であって、コバルトクロム合金またはステンレス鋼で形成されたステント。
  7. 請求項1または請求項2において、前記生分解性材料が生分解性ポリマーから形成されているステント。
  8. 請求項1における前記第1組成物または請求項2における前記第2組成物を、低級アルキルケトン−メタノール混合溶剤、低級アルキルエステル−メタノール混合溶剤、または低級ハロゲン化炭化水素−メタノール混合溶剤に溶解した溶液を用いて、前記第1被覆層が被覆されているコア構造体の少なくとも外表面を被覆し、被覆後、前記溶剤を除去して第2被覆層を形成するステントの製造方法。
  9. 請求項1または請求項2のステントにおいて、37℃のリン酸緩衝生理食塩水中で、前記ステントの浸漬時点から金属イオンの溶出が、前記コア構造体単体と比較して、長期間にわたって持続的に抑制されることを特徴とする前記コア構造体の腐食抑制方法。
  10. 請求項3に記載のステントにおいて、
    37℃のリン酸緩衝生理食塩水中で、前記ステントの浸漬時点から血管内膜肥厚抑制剤の放出が、少なくとも約1日〜最大約3ヶ月間にわたるように調節することを特徴とする、血管内膜肥厚抑制剤のステントからの放出の調整方法。
  11. 請求項10において、前記血管内膜肥厚抑制剤は前記ポリマーにサブミクロンオーダの粒子状にミクロ分散することにより、前記血管内膜肥厚抑制剤の放出速度を調節している、前記血管内膜肥厚抑制剤のステントからの放出速度の調整方法。
  12. 請求項10において、請求項1における前記第1組成物または請求項2における前記第2組成物を溶解する溶液を、低級アルキルエステル−メタノール混合溶剤または低級アルキルケトン−メタノール混合溶剤の中から選択し、選択された溶剤により請求項1における前記第1組成物または請求項2における前記第2組成物を溶解した溶液を用いて、前記第1被覆層が被覆されているコア構造体の少なくとも外表面を被覆し、被覆後、前記溶剤を除去して第2被覆層を形成することにより、前記血管内膜肥厚抑制剤の放出速度を調節している、前記血管内膜肥厚抑制剤のステントからの放出速度の調整方法。
  13. 請求項1または請求項2のステントにおいて、前記コア構造体の幅及び厚みが、それぞれ一定であるステント。
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