JP5593699B2 - 水素化銅ナノ粒子、その製造方法、金属ペーストおよび物品 - Google Patents

水素化銅ナノ粒子、その製造方法、金属ペーストおよび物品 Download PDF

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Description

本発明は、水素化銅ナノ粒子、その製造方法、該水素化銅ナノ粒子を含む金属ペースト、および該金属ペーストから形成される金属膜を有する物品に関する。
基材上に金属ペーストを所望の配線パターン状に塗布、焼成して、所望の配線パターンを有するプリント基板等を製造する方法が知られている。
該方法に用いられる金属ペーストとしては、たとえば、下記のものが提案されている。
(1)平均粒子径が1〜100nmである金属銀ナノ粒子と、平均粒子径が5〜20μmである金属フィラーと、樹脂バインダとを含む金属ペースト(特許文献1)。
(1)の金属ペーストは、金属フィラーのみでは実現できなかった低抵抗化を、金属銀ナノ粒子の有する表面融解現象を利用して金属フィラー同士を融着することによって実現している。
しかし、銀はイオンマイグレーションを起こしやすい金属であるため、(1)の金属ペーストを用いて製造したプリント基板等の電子部品の信頼性を考慮した場合、金属ナノ粒子の材料としては、銅が好ましい。しかし、金属銅ナノ粒子は、非常に酸化しやすい。
耐酸化性に優れた銅を含むナノ粒子としては、下記のものが提案されている。
(2)長鎖の有機化合物によって表面が被覆された水素化銅ナノ粒子(特許文献2)。
しかし、(2)の水素化銅ナノ粒子は、長鎖の有機化合物によって表面が被覆されているため、金属フィラーと焼結しにくく、焼成後の金属膜の導電性が不充分である。
国際公開第02/35554号パンフレット 国際公開第2004/110925号パンフレット
本発明は、耐酸化性に優れ、かつ金属フィラーと焼結しやすい水素化銅ナノ粒子、その製造方法、導電性が高い金属膜を形成できる金属ペースト、および導電性が高い金属膜を有する物品を提供する。
本発明は、以下を特徴とする要旨を有する。
(1)ギ酸によって表面が被覆され、かつ平均粒子径が10〜100nmであることを特徴とする水素化銅ナノ粒子。
(2)表面を被覆している前記ギ酸が、前記水素化銅ナノ粒子の1〜40質量%である上記(1)に記載の水素化銅ナノ粒子。
(3)前記水素化銅ナノ粒子に含まれるナトリウムの量が、800ppm以下である上記(1)または(2)に記載の水素化銅ナノ粒子。
(4)下記の工程(a)〜(c)を有する、水素化銅ナノ粒子の製造方法。
(a)水溶性銅化合物を水に溶解し、銅イオンを含む水溶液を調製する工程。
(b)前記水溶液にギ酸を加えてpHを3以下に調整する工程。
(c)前記pHが3以下の水溶液を攪拌しながら、該水溶液に金属水素化物または次亜リン酸を加えて銅イオンを還元し、平均粒子径が10〜100nmである水素化銅ナノ粒子を生成させる工程。
(5)下記の工程(d)をさらに有する、上記(4)に記載の水素化銅ナノ粒子の製造方法。
(d)前記水素化銅ナノ粒子を、水とメタノールとの混合分散媒で精製する工程。
)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の水素化銅ナノ粒子と、
平均粒子径が0.5〜20μmである金属フィラーと、
樹脂バインダと
を含む、金属ペースト。
)前記水素化銅ナノ粒子の含有量が、前記金属フィラーに対して3〜40質量%である上記()に記載の金属ペースト。
)基材と、
該基材上に、上記(または(7)に記載の金属ペーストを塗布、焼成して形成された金属膜と
を有する、物品。
)前記金属膜の体積抵抗率が1.0×10−4Ωcm以下である上記()に記載の物品。
本発明の水素化銅ナノ粒子は、耐酸化性に優れ、かつ金属フィラーと焼結しやすい。
本発明の水素化銅ナノ粒子の製造方法によれば、耐酸化性に優れ、かつ金属フィラーと焼結しやすい水素化銅ナノ粒子を製造できる。
本発明の金属ペーストによれば、導電性が高い金属膜を形成できる。
本発明の物品は、導電性が高い金属膜を有する。
本発明の水素化銅ナノ粒子のIRスペクトルの一例を示す図である。
<水素化銅ナノ粒子>
水素化銅ナノ粒子は、銅原子が水素原子と結合した状態で存在し、60〜100℃で金属銅と水素とに分解する性質を有する。
水素化銅ナノ粒子の平均粒子径は、10〜100nmであり、50〜80nmが好ましい。平均粒子径が100nm以下であれば、表面融解温度が充分に低下するため、表面融解が起こりやすくなり、また、緻密な金属膜を形成できることから導電性の向上が期待できる。平均粒子径が10nm以上であれば、表面積の増加による酸化の促進も顕著ではなくなる。
水素化銅ナノ粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(以下、TEMと記す。)像の中から無作為に選ばれた100個の粒子の粒子径を測定し、平均することにより算出する。
本発明の水素化銅ナノ粒子は、ギ酸によって表面が被覆されている。これにより、本発明の水素化銅ナノ粒子は、耐酸化性に優れ、かつ金属フィラーと焼結しやすいので好ましい。また、比較的低温の100〜300℃程度でも、ギ酸が表面から離脱し、気化するため、ペーストに使用した場合には、金属フィラー同士が焼結しやすく、ペーストの焼成が可能となるので好ましい。
ギ酸によって表面が被覆されていることの確認は、水素化銅ナノ粒子のIRスペクトルを測定し、図1に示すように、水素化銅ナノ粒子の表面と相互作用していないギ酸に由来するC=Oの伸縮による1700cm−1付近の吸収が存在しないもしくは小さいこと、および水素化銅ナノ粒子の表面と相互作用しているギ酸に由来するCOOによる1500〜1600cm−1の吸収が存在することを確認することによって実施できる。
すなわち、ギ酸が水素化銅ナノ粒子の表面と相互作用している場合、ギ酸のカルボン酸は、−COOとなっている。−COOにおける負電荷は、2つの酸素原子上に非局在化しているため、−COOにはカルボニル基(C=O)が存在しない。一方、水素化銅ナノ粒子とギ酸とを単にブレンドしただけでは、前記相互作用が起こらないため、該ブレンド物においては、C=Oの伸縮による1700cm−1付近の吸収が存在し、COOによる1500〜1600cm−1の吸収が存在しない。
ギ酸の被覆量は、水素化銅ナノ粒子全体(ギ酸を含む。)100質量%中、1〜40質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。ギ酸の被覆量が、1質量%以上であれば、ギ酸による環が充分でき、40質量%以下であれば、導電性が良好となる。
ギ酸の被覆量は、熱分析測定装置を用いて水素化銅ナノ粒子を熱分解させ、150〜500℃間の質量減少を測定し、求める。
本発明の水素化銅ナノ粒子は、下記の工程(a)〜(d)を有する方法(湿式還元法)によって製造できる。
(a)水溶性銅化合物を水に溶解し、銅イオンを含む水溶液を調製する工程。
(b)前記水溶液にギ酸を加えてpHを3以下に調整する工程。
(c)前記pHが3以下の水溶液を攪拌しながら、該水溶液に還元剤を加えて銅イオンを還元し、平均粒子径が10〜100nmである水素化銅ナノ粒子を生成させる工程。
(d)必要に応じて、前記水素化銅ナノ粒子を、水とメタノールとの混合分散媒で精製する工程。
工程(a):
水溶性銅化合物としては、硫酸銅、硝酸銅、ギ酸銅、酢酸銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅等が挙げられる。
水溶性銅化合物の濃度は、水溶液100質量%中、0.1〜30質量%が好ましい。水溶液中の水溶性銅化合物の濃度が0.1質量%以上であれば、水の量が抑えられ、また、水素化銅ナノ粒子の生産効率が良好となる。水溶液中の水溶性銅化合物の濃度が30質量%以下であれば、水素化銅ナノ粒子の収率の低下が抑えられる。
工程(b):
水溶液のpHを3以下に調整する酸として、ギ酸を用いる。
水溶液のpHを3以下に調整することにより、水溶液中の銅イオンが還元剤により還元されやすくなり、水素化銅ナノ粒子が生成しやすくなる。水溶液のpHが3を超えると、水素化銅ナノ粒子が生成せずに、金属銅ナノ粒子が生成するおそれがある。
水溶液のpHは、水素化銅ナノ粒子を短時間で生成できる点から、2〜2.5が好ましい。
なお、工程(a)と工程(b)は、同時に行ってもよい。
工程(c):
銅イオンは酸性下で還元剤により還元され、徐々に水素化銅ナノ粒子が成長して、平均粒子径が10〜100nmである水素化銅ナノ粒子が生成する。該水素化銅ナノ粒子は、ただちに共存しているギ酸により表面を覆われ、安定化する。
還元剤としては、大きな還元作用があることから金属水素化物または次亜リン酸が好ましい。金属水素化物としては、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウム、水素化カリウム、水素化カルシウム等が挙げられ、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。
還元剤の添加量は、銅イオンに対して1.5〜10倍当量数が好ましい。還元剤の添加量が銅イオンに対して1.5倍当量数以上であれば、還元作用が充分となる。還元剤の添加量が銅イオンに対して10倍当量数以下であれば、水素化銅ナノ粒子に含まれる不純物(ナトリウム、ホウ素、リン等。)の量が抑えられる。
還元剤を加える際の水溶液の温度は、5〜60℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。水溶液の温度が60℃以下であれば、水素化銅ナノ粒子の分解が抑えられ、また、5℃以上であれば、反応速度の低下による収率の低下もない。
工程(d):
水素化銅ナノ粒子を含む懸濁液を静置すると、水素化銅ナノ粒子が凝集して沈殿する。
該沈殿物を分散媒に再分散させた後、水素化銅ナノ粒子を再び凝集させて沈殿させる方法で精製することにより、高純度化した水素化銅ナノ粒子が得られる。
精製に用いる分散媒としては、水とメタノールとの混合分散媒が好ましい。水のみでは、水の表面張力が大きいため、水素化銅ナノ粒子の凝集物の細孔に水が入っていくことができず、精製の効果が小さい。一方、メタノールのみでは、メタノールの誘電率が小さいため、ナトリウム等の不純物をイオンとして分散媒中に遊離できず、精製の効果が小さい。
水の割合は、混合分散媒100質量%のうち、40〜90質量%が好ましく、50〜85質量%がより好ましい。
水素化銅ナノ粒子に含まれるナトリウムの量は、金属膜の導電性が良好であるため、800ppm以下が好ましい。
以上説明した本発明の水素化銅ナノ粒子にあっては、下記の(i)〜(iii)の理由から、耐酸化性に優れ、かつ金属フィラーと焼結しやすい。
(i)水素化銅ナノ粒子は、銅原子と水素原子とが結合した状態で存在するため、空気雰囲気中において、金属銅ナノ粒子に比べて酸化されにくく安定であり、保存安定性に優れている。
(ii)水素化銅ナノ粒子は、温度60〜100℃において金属銅と水素とに分解する性質を有するため、水素化銅ナノ粒子を基材に塗布し、焼成する際、金属銅ナノ粒子とは異なり、粒子表面に酸化物皮膜が形成されることがほとんどない。したがって、表面溶融現象により銅ナノ粒子が融解し、銅ナノ粒子同士、または銅ナノ粒子と金属フィラーとが焼結して、すみやかに金属膜を形成できる。
(iii)本発明の水素化銅ナノ粒子は、還元性(すなわち−CHO基)を有するギ酸によって表面を被覆されているため、空気雰囲気中において、他の有機酸によって被覆された水素化銅ナノ粒子に比べて酸化されにくい。よって、焼成によって形成される金属膜は、導電性に優れている。
<金属ペースト>
本発明の金属ペーストは、本発明の水素化銅ナノ粒子と、平均粒子径が0.5〜20μmである金属フィラーと、樹脂バインダとを含む。これにより、本発明の金属ペーストは、導電性が高い金属膜を形成できるので好ましい。得られる金属膜の導電性の高くなる理由としては、詳細には解明できていないが、ギ酸に還元性があるため、金属フィラーの表面酸化膜を還元することができ、酸化膜がなくなるため、金属フィラー同士との間で焼結しやすくなり、また、金属フィラー同士の間に、水素化銅微粒子が分解して得られる銅ナノ粒子が隙間に入り、緻密な金属膜が得られるためであると考えられる。
金属フィラーとしては、金属ペーストに用いられる公知の金属粒子が挙げられる。金属フィラーの材料としては、金、銅、パラジウム、ニッケル、錫、アルミニウム、ビスマス、インジウム、鉛等が挙げられ、導電性、耐マイグレーション性、価格の点から、銅が好ましい。
金属フィラーの平均粒子径は、0.5〜20μmであり、1〜10μmが好ましい。金属フィラーの平均粒子径が、0.5μm以上であることにより、得られるペーストの流動特性が良好となるので好ましく、平均粒子径が20μm以下であることにより、微細配線が作製しやすくなるので好ましい。
金属フィラーの平均粒子径は、TEM像の中から無作為に選ばれた100個の粒子の粒子径を測定し、平均することにより算出する。
樹脂バインダとしては、金属ペーストに用いられる公知の樹脂バインダ(熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等。)等が挙げられ、焼成時の温度において充分な硬化がなされる樹脂成分を選択して用いることが好ましい。
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、オリゴエステルアクリレート樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイドトリアジン樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、オキサジン樹脂等が挙げられ、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、オキサジン樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、ケトン樹脂、ポリスチレン、ポリエステル等が挙げられる。
金属ペースト中の水素化銅ナノ粒子の含有量は、金属フィラー100質量%に対して、3〜40質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。水素化銅ナノ粒子の量が、3質量%以上であることにより、金属フィラー表面に焼結しやすく、金属フィラー間の導電パスを増やすことができ、得られる金属膜の導電性の向上に寄与できるので好ましい。また、水素化銅ナノ粒子の量が、40質量%以下であることにより、得られるペーストの流動特性が良好となるので好ましい。
金属ペースト中の樹脂バインダの量は、金属フィラーおよび水素化銅ナノ粒子の全体の体積とそれらの粒子間に存在する空隙との比率に応じて適宜選択すればよく、通常、金属フィラーおよび水素化銅ナノ粒子の合計100質量%に対して、5〜50質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。樹脂バインダの量が、5質量%以上であることにより、得られるペーストの流動特性が良好となるので好ましく、樹脂バインダの量が、50質量%以下であることにより、得られる金属膜の導電性が良好となるので好ましい。金属フィラーおよび水素化銅ナノ粒子の全体の体積とそれらの粒子間に存在する空隙との比率に応じて樹脂バインダを添加することで、粒子間の導電パスを維持しながら焼成後の金属膜の構造を維持できる。
金属ペーストは、必要に応じて、溶媒、公知の添加剤(レベリング剤、カップリング剤、粘度調整剤、酸化防止剤等。)等を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。
以上説明した本発明の金属ペーストにあっては、本発明の水素化銅ナノ粒子を含んでいるため、導電性が高い金属膜を形成できる。
<物品>
本発明の物品は、基材と、該基材上に、本発明の金属ペーストを塗布、焼成して形成された金属膜とを有する。
基材としては、ガラス基板、プラスチック基材(ポリイミド基板、ポリエステル基板等。)、繊維強化複合材料(ガラス繊維強化樹脂基板等。)等が挙げられる。
塗布方法としては、スクリーン印刷、ロールコート法、エアナイフコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、ダイコート法、スライドコート法等の公知の方法が挙げられる。
焼成方法としては、温風加熱、熱輻射等の方法が挙げられる。
焼成温度および焼成時間は、金属膜に求められる特性に応じて適宜決定すればよい。焼成温度は、100〜300℃が好ましい。焼成温度が、100℃以上であることにより、粒子表面を被覆しているギ酸を離脱、気化させることができ、金属フィラーと水素化銅ナノ粒子との焼結が進行しやすくなるので好ましく、焼成温度が300℃以下であることにより、金属膜を形成する基板として、樹脂フィルムを使用できるので好ましい。
金属膜の体積抵抗率は、1.0×10−4Ωcm以下が好ましい。体積抵抗率が1.0×10−4Ωcmを超えると、電子部品用の導電体としての使用が困難となる場合がある。
以上説明した本発明の物品にあっては、金属膜を本発明の金属ペーストから形成しているため、金属膜の導電性が高い。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
例1〜4は実施例であり、例5〜10は比較例である。
(ナノ粒子および金属膜の同定)
ナノ粒子および金属膜の同定は、X線回折装置(株式会社リガク製、TTR−III)により行った。
(平均粒子径)
ナノ粒子および金属フィラーの平均粒子径は、TEM(日本電子社製、JEM−1230)にて得られたTEM像の中から無作為に選ばれた100個の粒子の粒子径を測定し、平均することにより算出した。
また、測定サンプルは、0.1質量%の粒子をメタノール中に分散させた分散液を、カーボングリッド上に塗布し、自然乾燥させることにより作製した。
(ギ酸の被覆量)
水素化銅ナノ粒子におけるギ酸の被覆量は、熱分析測定装置(島津製作所社製、型式:DTG−50)を用いて水素化銅ナノ粒子を熱分解させ、150〜500℃間の質量減少を測定し、求めた。
また、ギ酸によって水素化銅ナノ粒子の表面が被覆されていることの確認は、IRスペクトルを測定することにより行った。
(ナトリウム含有量)
水素化銅ナノ粒子および金属膜に含まれるナトリウムの量は、硝酸と過酸化水素水によって水素化銅ナノ粒子を溶解後、ICP発光分析装置(セイコー電子工業社製、型式:SPQ9000)を用いて測定した。
(金属膜の厚さ)
金属膜の厚さは、DEKTAK3(Veeco metrology Group社製)を用いて測定した。
(金属膜の体積抵抗率)
金属膜の体積抵抗率は、四探針式抵抗計(三菱油化社製、型式:lorestaIP MCP−T250)を用いて測定した。
〔例1〕
ガラス容器内にて、酢酸銅(II)水和物の5.2gを蒸留水の30gおよびギ酸の3.3gで溶解して、銅イオンを含む水溶液を調製した。該水溶液のpHは2.6であった。
該水溶液を激しく撹拌しながら、20℃で該水溶液に4質量%の水素化ホウ素ナトリウム水溶液の23gをゆっくり滴下した。滴下終了後、10分間そのまま撹拌を続け、懸濁液を得た。
遠心分離によって懸濁液中の凝集物を沈殿させ、沈殿物を分離した。該沈殿物を蒸留水の80gおよびメタノールの20gの混合分散媒に再分散させた後、再び遠心分離によって凝集物を沈殿させ、沈殿物を分離した。精製後の沈殿物をX線回折で同定を行ったところ、水素化銅ナノ粒子であることが確認された。また、IRスペクトルを測定して、ギ酸によって水素化銅ナノ粒子の表面が被覆されていることを確認した。IRスペクトルを図1に示す。
水素化銅ナノ粒子の平均粒子径、ギ酸の被覆量、ナトリウム含有量を測定した。結果を表1に示す。
水素化銅ナノ粒子の0.7gと金属銅粒子(三井金属鉱業株式会社製、1400YP、平均粒子径:7μm)の6.3gをそれぞれ2−プロパノールの10gに懸濁させ、両者を混合した。混合した懸濁液中の2−プロパノールを減圧下に置き、2−プロパノールを除去し、水素化銅と金属銅粒子の複合体を形成した。この複合体を非晶質ポリエステル樹脂(東洋紡績社製、バイロン103)の0.9gをシクロヘキサノン(純正化学株式会社製、特級)の1.1gに溶解させた樹脂バインダ溶液の2.0gに加えた。該混合物を乳鉢中で混ぜ合わせた後、室温で減圧下に置き、シクロヘキサノンを除去し、金属ペーストを得た。
金属ペーストをガラス基板に塗布し、窒素雰囲気中、150℃で1時間焼成し、厚さ4μmの金属膜を形成した。金属膜をX線回折で同定を行ったところ、金属銅であることが確認された。
金属膜の体積抵抗率およびナトリウム含有量を測定した。結果を表2に示す。
〔例2〕
蒸留水およびメタノールの混合分散媒の代わりに、蒸留水のみを用いた以外は、例1と同様にして精製された沈殿物を得た。精製後の沈殿物をX線回折で同定を行ったところ、水素化銅ナノ粒子であることが確認された。また、IRスペクトルを測定して、ギ酸によって水素化銅ナノ粒子の表面が被覆されていることを確認した。
水素化銅ナノ粒子の平均粒子径、ギ酸の被覆量、ナトリウム含有量を測定した。結果を表1に示す。
例2の水素化銅ナノ粒子を用いた以外は、例1と同様にして金属ペーストを調製し、金属膜を形成した。金属膜をX線回折で同定を行ったところ、金属銅であることが確認された。
金属膜の体積抵抗率およびナトリウム含有量を測定した。結果を表2に示す。
〔例3〕
蒸留水およびメタノールの混合分散媒の代わりに、メタノールのみを用いた以外は、例1と同様にして精製された沈殿物を得た。精製後の沈殿物をX線回折で同定を行ったところ、水素化銅ナノ粒子であることが確認された。また、IRスペクトルを測定して、ギ酸によって水素化銅ナノ粒子の表面が被覆されていることを確認した。
水素化銅ナノ粒子の平均粒子径、ギ酸の被覆量、ナトリウム含有量を測定した。結果を表1に示す。
例3の水素化銅ナノ粒子を用いた以外は、例1と同様にして金属ペーストを調製し、金属膜を形成した。金属膜をX線回折で同定を行ったところ、金属銅であることが確認された。
金属膜の体積抵抗率およびナトリウム含有量を測定した。結果を表2に示す。
〔例4〕
水素化ホウ素ナトリウムの代わりに次亜リン酸を用い、45℃で反応させた以外は、例1と同様にして精製された沈殿物を得た。精製後の沈殿物をX線回折で同定を行ったところ、水素化銅ナノ粒子であることが確認された。また、IRスペクトルを測定して、ギ酸によって水素化銅ナノ粒子の表面が被覆されていることを確認した。
水素化銅ナノ粒子の平均粒子径、ギ酸の被覆量を測定した。結果を表1に示す。
例4の水素化銅ナノ粒子を用いた以外は、例1と同様にして金属ペーストを調製し、金属膜を形成した。金属膜をX線回折で同定を行ったところ、金属銅であることが確認された。
金属膜の体積抵抗率を測定した。結果を表2に示す。
〔例5〕
水素化ホウ素ナトリウムの代わりにジメチルアミンボランを用い、45℃で反応させた以外は、例1と同様にして精製された沈殿物を得た。精製後の沈殿物をX線回折で同定を行ったところ、水素化銅ナノ粒子であることが確認された。また、IRスペクトルを測定して、ギ酸によって水素化銅ナノ粒子の表面が被覆されていることを確認した。
金属銅ナノ粒子の平均粒子径、ギ酸の被覆量を測定した。結果を表1に示す。
例5の金属銅ナノ粒子を用いた以外は、例1と同様にして金属ペーストを調製し、金属膜を形成した。金属膜をX線回折で同定を行ったところ、金属銅であることが確認された。
金属膜の体積抵抗率を測定した。結果を表3に示す。
〔例6〕
水素化ホウ素ナトリウムの代わりに次亜リン酸を用い、ギ酸を添加しないで45℃で反応させた以外は、例1と同様にして精製された沈殿物を得た。精製後の沈殿物をX線回折で同定を行ったところ、水素化銅ナノ粒子であることが確認された。
水素化銅ナノ粒子の平均粒子径、ギ酸の被覆量を測定した。結果を表1に示す。
例6の水素化銅ナノ粒子を用いた以外は、例1と同様にして金属ペーストを調製し、金属膜を形成した。金属膜をX線回折で同定を行ったところ、金属銅であることが確認された。
金属膜の体積抵抗率を測定した。結果を表3に示す。
〔例7〕
ギ酸の代わりにクエン酸を用いた以外は、例1と同様にして精製された沈殿物を得た。
精製後の沈殿物をX線回折で同定を行ったところ、水素化銅ナノ粒子であることが確認された。
水素化銅ナノ粒子の平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
例7の水素化銅ナノ粒子を用いた以外は、例1と同様にして金属ペーストを調製し、金属膜を形成した。金属膜をX線回折で同定を行ったところ、金属銅と亜酸化銅の混合物であることが確認された。
金属膜の体積抵抗率を測定した。結果を表3に示す。
〔例8〕
水素化銅ナノ粒子の代わりに、市販の金属銅ナノ粒子(石原産業株式会社製、MD−50、平均粒子径:50nm)を用い、金属銅ナノ粒子に対して10質量%のギ酸を加えた以外は、例1と同様にして金属ペーストを調製し、金属膜を形成した。金属膜をX線回折で同定を行ったところ、金属銅と亜酸化銅の混合物であることが確認された。
金属膜の体積抵抗率を測定した。結果を表3に示す。
〔例9〕
水素化銅ナノ粒子の代わりに、市販の金属銅ナノ粒子(石原産業株式会社製、MD−50、平均粒子径:50nm)を用いた以外は、例1と同様にして金属ペーストを調製し、金属膜を形成した。金属膜をX線回折で同定を行ったところ、金属銅と亜酸化銅の混合物であることが確認された。
金属膜の体積抵抗率を測定した。結果を表3に示す。
〔例10〕
水素化銅ナノ粒子を用いない以外は、例1と同様にして金属ペーストを調製し、金属膜を形成した。金属膜をX線回折で同定を行ったところ、金属銅であることが確認された。
金属膜の体積抵抗率を測定した。結果を表3に示す。
Figure 0005593699
Figure 0005593699
Figure 0005593699
本発明の水素化銅ナノ粒子および金属ペーストは、様々な用途に利用でき、たとえば、プリント配線板等における配線パターンの形成および修復、半導体パッケージ内の層間配線、プリント配線板と電子部品との接合等の用途に利用できる。
なお、2008年2月7日に出願された日本特許出願2008−027675号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。

Claims (9)

  1. ギ酸によって表面が被覆され、かつ平均粒子径が10〜100nmであることを特徴とする水素化銅ナノ粒子。
  2. 表面を被覆している前記ギ酸が、前記水素化銅ナノ粒子の1〜40質量%である請求項1に記載の水素化銅ナノ粒子。
  3. 前記水素化銅ナノ粒子に含まれるナトリウムの量が、800ppm以下である請求項1または2に記載の水素化銅ナノ粒子。
  4. 下記の工程(a)〜(c)を有する、水素化銅ナノ粒子の製造方法。
    (a)水溶性銅化合物を水に溶解し、銅イオンを含む水溶液を調製する工程。
    (b)前記水溶液にギ酸を加えてpHを3以下に調整する工程。
    (c)前記pHが3以下の水溶液を攪拌しながら、該水溶液に金属水素化物または次亜リン酸を加えて銅イオンを還元し、平均粒子径が10〜100nmである水素化銅ナノ粒子を生成させる工程。
  5. 下記の工程(d)をさらに有する、請求項4に記載の水素化銅ナノ粒子の製造方法。
    (d)前記水素化銅ナノ粒子を、水とメタノールとの混合分散媒で精製する工程。
  6. 請求項1〜3のいずれかに記載の水素化銅ナノ粒子と、
    平均粒子径が0.5〜20μmである金属フィラーと、
    樹脂バインダと
    を含む、金属ペースト。
  7. 前記水素化銅ナノ粒子の含有量が、前記金属フィラーに対して3〜40質量%である請求項に記載の金属ペースト。
  8. 基材と、
    該基材上に、請求項またはに記載の金属ペーストを塗布、焼成して形成された金属膜とを有する、物品。
  9. 前記金属膜の体積抵抗率が1.0×10−4Ωcm以下である請求項に記載の物品。
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