JP5593580B2 - 環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法 - Google Patents

環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法 Download PDF

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本発明は線状ポリアリーレンスルフィドと環式ポリアリーレンスルフィドの混合物から環式ポリアリーレンスルフィド混合物を効率よく製造する方法に関する。
芳香族環式化合物はその環状であることから生じる特性に基づく高機能材料や機能材料への応用展開可能性、たとえば包接能を有する化合物としての特性や、開環重合による高分子量直鎖状高分子の合成のための有効なモノマーとしての活用など、その構造に由来する特異性で近年注目を集めている。環式ポリアリーレンスルフィド(以下、ポリアリーレンスルフィドをPASと略する場合もある)も芳香族環式化合物の範疇に属し、上記同様に注目に値する化合物である。
環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法としては、たとえばジアリールジスルフィド化合物を超希釈条件下で酸化重合する方法が提案されている(たとえば特許文献1参照。)。この方法では環式ポリアリーレンスルフィドが高選択で生成し、線状ポリアリーレンスルフィドはごく少量しか生成しないと推測され、確かに環式ポリアリーレンスルフィドが高収率で得られると考えられる。しかしながら、この方法では超希釈条件で反応を行うことが必須とされており、反応容器単位容積あたりに得られる環式ポリアリーレンスルフィドはごくわずかであり、効率的に環式ポリアリーレンスルフィドを得るとの観点では課題の多い方法であった。さらに該方法には線状ポリアリーレンスルフィドを比較的多く含むポリアリーレンスルフィド混合物から、環式ポリアリーレンスルフィドだけを高純度で回収する方法については記載されていない。
環式ポリアリーレンスルフィドの他の製造方法としては、ジハロゲン化芳香族化合物としてp−ジクロロベンゼンと、アルカリ金属硫化物として硫化ナトリウムを有機極性溶媒であるN−メチルピロリドン中で反応させ、ついで加熱減圧下で溶媒を除去後、水で洗浄する事で得られたポリフェニレンスルフィドを、塩化メチレンで抽出して得られた抽出液の飽和溶液部分から回収する方法が開示されている(たとえば特許文献2参照)。この方法では抽出液の飽和溶液部分から環式フェニレンスルフィドオリゴマーを回収しているため、得られる環式ポリアリーレンスルフィドは繰り返し単位数7〜15に限定されたものであり、繰り返し単位数7未満の成分は回収することができず、また、環式ポリアリーレンスルフィドが極微量しか得られないという問題があった。また環式ポリアリーレンスルフィド以外の重合生成物が廃棄物として多量に生じるという問題があった。
環式ポリアリーレンスルフィドとして繰り返し単位数7未満のものを得る方法としては、架橋タイプのポリフェニレンスルフィド樹脂をクロロホルムで抽出して得られた抽出液を冷却することで、高純度のシクロヘキサ(p−フェニレンスルフィド)を得る方法が開示されている(たとえば特許文献3参照。)。この方法では、抽出液を冷却する事で繰り返し単位数6の環式ポリアリーレンスルフィドを単結晶として得られると推測され、繰り返し単位数が6以外の成分は回収する事ができないため、得られる環式ポリアリーレンスルフィドは極微量であるという問題があった。また、このようにして得られる単一組成の環式ポリアリーレンスルフィドは、その結晶構造のため融点が極めて高いため、環式アリーレンスルフィドを成形加工や開環重合等の各種目的で溶融させるためには極めて高いプロセス温度が必要になるという問題があった。
特許第3200027号公報 (第2頁) 特開平05−163349号公報 (第7頁) 特開平10−077408号公報 (第6頁)
本発明の目的は線状ポリアリーレンスルフィドと環式ポリアリーレンスルフィドの混合物から環式ポリアリーレンスルフィド混合物を効率よく製造する方法を提供することである。
上記課題に関し、本発明は以下のとおりである。
1. 少なくとも
(a)線状ポリアリーレンスルフィド
(b)環式ポリアリーレンスルフィド
を含むポリアリーレンスルフィド混合物を、環式ポリアリーレンスルフィドを溶解可能な溶剤として、クロロホルムと接触させて環式ポリアリーレンスルフィドを含む溶液を調製し、次いで該溶液から溶剤を除去することで環式ポリアリーレンスルフィドを得る方法であって、得られる環式ポリアリーレンスルフィドが下記式(1)で表される繰り返し単位数mが4〜50の混合物であって、m=4〜6の環式ポリアリーレンスルフィドを含むことを特徴とする環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
Figure 0005593580
(式(1)中、Arはアリーレン基、Sはスルフィド基である)
2. 環式ポリアリーレンスルフィドを含む溶液が固形分を含むものであって、溶剤の除去時に溶剤に可溶の成分とともにこの固形分も回収することを特徴とする1に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
. ポリアリーレンスルフィド混合物として、少なくとも(a)を5〜99.9重量%含み、且つ(b)を0.05〜70重量%含むものを用いることを特徴とする1からのいずれかに 記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
. ポリアリーレンスルフィド混合物として(a)を5〜99.9重量%含み、且つ(b)を5〜70重量%含むものを用いて、環式ポリアリーレンスルフィド混合物を収率5%以上で得ることを特徴とする1からのいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
. 環式ポリアリーレンスルフィド混合物における(b)の重量分率が、ポリアリーレンスルフィド混合物における(b)の重量分率よりも高いことを特徴とする1からのいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
. 少なくともポリハロゲン化芳香族化合物、アルカリ金属硫化物および有機極性溶媒をいずれも含有する混合物を加熱してポリアリーレンスルフィド樹脂を重合し、220℃以下に冷却して得られた、少なくとも顆粒状のポリアリーレンスルフィド樹脂、顆粒状以外のポリアリーレンスルフィド混合物、有機極性溶媒、水、およびハロゲン化アルカリ金属塩をいずれも含むスラリーから回収された顆粒状以外のポリアリーレンスルフィド混合物を用いることを特徴とする1からのいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
. ポリアリーレンスルフィド混合物を環式ポリアリーレンスルフィドを溶解可能な溶剤と接触させて得られた環式ポリアリーレンスルフィドを含む溶液を、常圧以下で加熱して該溶液から溶剤を除去することを特徴とする1からのいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
. 得られる環式ポリアリーレンスルフィド混合物が、環式ポリアリーレンスルフィドを70重量%以上含むことを特徴とする1からのいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
. ポリアリーレンスルフィドがポリフェニレンスルフィドであることを特徴とする1からのいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
. (b)環式ポリアリーレンスルフィドが下記式(2)で表される環式化合物であり、繰り返し単位数mが4〜50であることを特徴とする1からのいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
Figure 0005593580
. 得られる環式ポリアリーレンスルフィド混合物中に含まれる環式ポリアリーレンスルフィドが式(2)で表される化合物であって、繰り返し単位数mが4〜25であることを特徴とする1に記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造
方法。
. ポリアリーレンスルフィド混合物の重量平均分子量Mwが2,500以上であることを特徴とする1から1のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
. ポリアリーレンスルフィド混合物が重量平均分子量2,500以下の成分を0.05〜90重量%含むものであることを特徴とする1から1のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
. ポリアリーレンスルフィド混合物がセラミックス粉末を含むことを特徴とする1から1のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
本発明によれば、線状ポリアリーレンスルフィドと環式ポリアリーレンスルフィドの混合物から環式ポリアリーレンスルフィド混合物を効率よく製造する方法を提供できる。
以下に、本発明実施の形態を説明する。
(1)PAS
本発明におけるPASとは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有するホモポリマーまたはコポリマーである。Arとしては下記の式(A)〜式(K)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(A)が特に好ましい。
Figure 0005593580
(R1,R2は水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい)
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(L)〜式(N)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。
Figure 0005593580
また、本発明におけるPASは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいPASとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
Figure 0005593580
を80モル%以上、特に90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略すこともある)が挙げられる。
(2)環式PAS
本発明の環式ポリアリーレンスルフィドとは式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする環式化合物であり、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する下記一般式(O)のごとき化合物である。Arとしては前記式(A)〜式(K)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(A)が特に好ましい。
Figure 0005593580
(式中、Arはアリーレン基、Sはスルフィド基である)
なお、環式ポリアリーレンスルフィドにおいては前記式(A)〜式(K)などの繰り返し単位をランダムに含んでも良いし、ブロックで含んでも良く、それらの混合物のいずれかであってもよい。これらの代表的なものとして、環式ポリフェニレンスルフィド、環式ポリフェニレンスルフィドスルホン、環式ポリフェニレンスルフィドケトン、これらが含まれる環式ランダム共重合体、環式ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい環式ポリアリーレンスルフィドとしては、主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
Figure 0005593580
を80モル%以上、特に90モル%以上含有する環式ポリフェニレンスルフィド(以下、環式PPSと略すこともある)が挙げられる。
環式ポリアリーレンスルフィドの前記(O)式中の繰り返し数mに特に制限は無いが、2〜50が好ましく、2〜25がより好ましく、3〜20が更に好ましい範囲として例示できる。環式ポリアリーレンスルフィドをポリアリーレンスルフィドプレポリマーとして用いて高重合度体を得る際には、環式ポリアリーレンスルフィドを溶融解させることが有効であるが、mが大きくなると環式ポリアリーレンスルフィドの溶融解温度が高くなる傾向にあるため、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの高重合度体への転化をより低い温度で行うことができるようになるとの観点でmを前記範囲にすることは有利となる。
また、環式ポリアリーレンスルフィドは、単一の繰り返し数を有する単独化合物、異なる繰り返し数を有する環式ポリアリーレンスルフィドの混合物のいずれでも良いが、異なる繰り返し数を有する環式ポリアリーレンスルフィドの混合物の方が単一の繰り返し数を有する単独化合物よりも溶融解温度が低い傾向があり、異なる繰り返し数を有する環式ポリアリーレンスルフィドの混合物の使用は前記した高重合度体への転化を行う際の温度をより低くできるため好ましい。
(3)線状PAS
本発明の線状PASとは前述した環式PAS以外の末端基を有するPASを差し、その分子量は重量平均分子量で2,500以上が好ましく例示でき、5,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、15,000以上がさらに好ましく、18,000以上がよりいっそう好ましい。重量平均分子量が2,500未満の線状PASは各種溶媒への溶解性などの化合物としての特性が前記環式PASに近くなる傾向があり、後述する環式ポリアリーレンスルフィド含有溶液の調製過程において環式PASと線状PASの分離がしにくくなる傾向がある。
(4)PAS混合物
本発明のPAS混合物とは少なくとも前記線状PASと環式PASを含む混合物である。PAS混合物としては線状PASを5〜99.9重量%、好ましくは5〜95重量%、より好ましくは5〜90重量%含むものが望ましい。PAS混合物における線状PASの割合は少ない方が最終的に得られる環式PAS混合物の純度および収率が向上するため望ましいが、前記範囲以下の混合物を得るためにはPAS混合物を得る際の製造条件を極めて厳密に制御する必要がある場合が多く、工業的にこのようなPAS混合物を得ることは現実的でない。一方、前記範囲以上であると最終的に得られる環式PAS混合物の収率が低下する傾向にある。
また、PAS混合物としては環式PASを0.05〜70重量%、好ましくは5〜70重量%、より好ましくは10〜70重量%含むものが望ましい。PAS混合物における環式PASの割合が前記範囲未満では最終的に得られる環式PASの収率が低くなり経済性が低く、一方前記範囲以上のPAS混合物を得るためにはPAS混合物を得る際の製造条件を極めて厳密に制御する必要がある場合が多く、工業的にそのようなPAS混合物を得ることは現実的でない。
また、PAS混合物には少なくとも線状PASと環式PASが含まれていればよく、環式PAS混合物の製造に実質的に悪影響を及ぼさない第三成分が含まれていても差し障りない。このような第三成分としては、たとえば後述する環式PASを溶解可能な溶剤に不溶なPAS以外の成分をあげることができる。このような第三成分として好ましいものにセラミックス粉末が例示でき、この範疇に含まれるものの中でも、パーライト、ゼオライト、ラジオライト、珪藻土、珪藻土の焼成物、珪藻頁岩の焼成物、および焼石が好ましく、パーライト、ラジオライト及び珪藻土の焼成物がより好ましく、ラジオライトが特に好ましいものの具体例として例示できる。なお、ここでラジオライトはケイソウ殻を原料とする焼成物である。その他の第三成分として、後述する環式PASを溶解可能な溶剤に可溶であるが、後述する環式PASが難溶もしくは不溶な第二の溶剤に可溶な成分をあげることができ、たとえばその構造中にベンゼン環を1〜3個含む低分子量成分を例示できる。
PAS混合物が含有する線状PASと環式PASの重量割合は、線状PASのPAS混合物に対する重量分率の方が環式PASのPAS混合物に対する重量分率よりも大きい方が好ましい。一般に混合物中の環式化合物の存在割合が多いほど、精製操作後に得られる環式PASの収率は増大する傾向にあるが、このような混合物を得るためには製造条件を極めて厳密に制御する必要がある場合が多く、工業的にこのようなPAS混合物を得ることは現実的でないためであり、本発明によれば一般的には環式PASの製造に不利な前記PAS混合物からも収率よく環式PASを得ることができる。
本発明で用いるPAS混合物は重量平均分子量が2,500以上のものが好ましく例示でき、5,000以上であることが好ましく、10,000以上がより好ましい。このような重量平均分子量範囲を有するPAS混合物は、それの含む線状PAS及び環式PASの含有割合が前記した線状PAS及び環式PASの好ましい含有割合範囲に入る傾向にある。
また、本発明で用いるPAS混合物は重量平均分子量2,500以下、好ましくは重量平均分子量5,000以下の成分を0.05〜90重量%含むものが好ましく、5〜70重量%含むものがより好ましく、10〜70重量%含むものがよりいっそう好ましい。このような重量平均分子量範囲を有するPAS混合物は、それの含む線状PAS及び環式PASの含有割合が前記した線状PAS及び環式PASの好ましい含有割合範囲に入る傾向にある。なお、前記重量平均分子量は例えば示差屈折率検出器を具備したSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)を使用して求めることができ、また、該測定によって得られるクロマトグラムから重量平均分子量2,500以下の成分の重量分率を求めることが可能である。
上記のようなPAS混合物は公知のPASの製造方法によって得ることができ、たとえば、少なくともp−ジクロロベンゼンに代表されるポリハロゲン化芳香族化合物、硫化ナトリウムに代表されるアルカリ金属硫化物及びN−メチル−2−ピロリドンに代表される有機極性溶媒を含有する混合物を加熱して、少なくともポリフェニレンスルフィド混合物およびアルカリ金属ハライドを含む反応溶液を調製し、該反応液をたとえば水等で処理することでポリフェニレンスルフィド混合物を得る方法や、ジフェニルジスルフィド類もしくはチオフェノール類を酸化重合することでポリフェニレンスルフィド混合物を得る方法が例示できる。ただし、これら方法で一般に得られるPAS混合物に含まれる環式PASは通常5重量%未満であり、上記方法で本発明で用いる好ましいPAS混合物である環式PASを5重量%以上含むPAS混合物を得るためには、たとえばPAS混合物の重合の際に重合溶媒を多量に用いるなどの特殊な方法が必要であり、このような方法で効率よく多量のPAS混合物を得ることは経済的に不利であり、工業的には成立に難がある。
前記以外のPAS混合物の製造方法としては、たとえば、少なくともp−ジクロロベンゼンに代表されるポリハロゲン化芳香族化合物、硫化ナトリウムに代表されるアルカリ金属硫化物及びN−メチル−2−ピロリドンに代表される有機極性溶媒を含有する混合物を加熱して、ポリフェニレンスルフィド樹脂に代表されるPAS樹脂を重合した後、220℃以下に冷却して得られた、少なくとも顆粒状のPAS樹脂、顆粒状PAS以外のPAS混合物、有機極性溶媒、水、およびハロゲン化アルカリ金属塩を含む反応液から顆粒状のPAS樹脂を取り除いた際に得られるPAS混合物を含む回収スラリーからPAS混合物を得る方法が好ましく例示できる。なお、ここで顆粒状PASとは平均目開き0.175mmの標準ふるい(80meshふるい)で回収できるPAS成分を指す。この方法によって得られるPAS混合物は重量平均分子量が2,500以下、好ましくは5,000以下の低分子量PASを多く含み、たとえば前記顆粒状PASと比較して機械物性などの特性が大幅に劣るため、一般的工業材料用途への適用は困難であり工業利用上の価値のないものとして従来は認識されていた。そのため、この方法で得られるPAS混合物は通常、産業廃棄物として処理されていた。
本発明者らは前記顆粒状PAS以外のPAS混合物を詳細に分析した結果、このPAS混合物には環式PASが5重量%以上、好ましくは10重量%以上含まれており、本発明に好ましいPAS混合物であることを見いだした。このことは、従来は産廃とされていたものから、産業上極めて利用価値の高い化合物を本発明の方法によって回収できるといった観点で、意義の大きなことである。
前記回収スラリーからPAS混合物を回収する方法としては、たとえば回収スラリーから少なくとも50重量%以上の有機極性溶媒を除去し、残留物を得て、これに水を添加した後、所望に応じて酸を加えて、少なくとも残存有機極性溶媒およびハロゲン化アルカリ金属塩を除去してPAS混合物を分離回収して得る方法や、回収スラリーからPAS混合物を析出させ固体状成分としてPAS混合物を回収する方法、たとえば回収スラリーに水を加えることでPAS混合物を析出させた後に公知の固液分離法であるデカンテーション、遠心分離及び濾過などの手法によって、固体成分としてPAS混合物を得る方法などを例示することができる。また、この固液分離を行うに際し、セラミックス粉末を濾過助剤として固液分離を行い、セラミックス粉末を含むPAS混合物を得ることも可能である。なお、セラミックス粉末を濾過助剤として用いることで固液分離に要する時間を短縮できる傾向がある。このようなセラミックス粉末を濾過助剤に用いる固液分離の方法には公知の方法が採用できるが、例えば、あらかじめセラミック粉末を上記回収スラリーに混合した後に固液分離を行う方法や、セラミック粉末をあらかじめ積層した濾材を用いて回収スラリーの固液分離を行う方法が採用できる。
(5)環式ポリアリーレンスルフィド含有溶液の調製
本発明ではポリアリーレンスルフィド混合物を、環式ポリアリーレンスルフィドを溶解可能な溶剤と接触させて環式ポリアリーレンスルフィドを含む溶液を調製する。
ここで用いる溶剤としては環式ポリアリーレンスルフィドスルフィドを溶解可能な溶剤であれば特に制限はないが、溶解を行う環境において環式ポリアリーレンスルフィドは溶解するが線状ポリアリーレンスルフィドは溶解しにくい溶剤が好ましく、線状ポリアリーレンスルフィドは溶解しない溶剤がより好ましい。ポリアリーレンスルフィド混合物を前記溶剤と接触させる際の反応系圧力は常圧もしくは微加圧が好ましく、特に常圧が好ましく、このような圧力の反応系はそれを構築する反応器の部材が安価であるという利点がある。この観点から反応系圧力は、高価な耐圧容器を必要とする加圧条件は避けることが望ましい。用いる溶剤としてはPASの分解や架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものが好ましく、ポリアリーレンスルフィド混合物を溶剤と接触させる操作をたとえば常圧環流条件下で行う場合に好ましい溶剤としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエン等のハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トリメチルリン酸、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなどの極性溶媒を例示できるが、中でもベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トリメチルリン酸、N,N−ジメチルイミダゾリジノンが好ましく、トルエン、キシレン、クロロホルム、塩化メチレン、テトラヒドロフランがより好ましく例示できる。
ポリアリーレンスルフィド混合物を溶剤と接触させる際の雰囲気に特に制限はないが、接触させる際の温度や時間などの条件によってPASや溶剤が酸化劣化するような場合には、非酸化性雰囲気下で行うことが望ましい。なお、非酸化性雰囲気とは気相の酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。
ポリアリーレンスルフィド混合物を溶剤と接触させる温度に特に制限はないが、一般に温度が高いほど環式PASの溶剤への溶解は促進される傾向にある。前記したように、PAS混合物の溶剤との接触は大気圧下でおこなうことが好適であるので、上限温度は使用する溶剤の大気圧下での環流条件温度にすることが望ましく、前述した好ましい溶剤を用いる場合はたとえば20〜150℃を具体的な温度範囲として例示できる。
ポリアリーレンスルフィド混合物を溶剤と接触させる時間は、用いる溶剤種や温度等によって異なるため一意的には限定できないが、たとえば1分〜50時間が例示でき、短すぎると環式PASの溶剤への溶解が不十分になる傾向にあり、また長すぎても溶剤への溶解は飽和状態に達し、それ以上の効果は得られない。
ポリアリーレンスルフィド混合物を溶剤と接触させる方法は、公知の一般的な手法を用いれば良く特に限定はないが、たとえばポリアリーレンスルフィド混合物と溶剤を混合し、必要に応じて攪拌した後溶液部分を回収する方法、各種フィルター上のポリアリーレンスルフィドに溶剤をシャワーすると同時に環式PASを溶剤に溶解させる方法、ソックスレー抽出法原理による方法などいかなる方法も用いることができる。PAS混合物と溶剤を接触させる際の溶剤の使用量に特に制限はないが、たとえばPAS混合物重量に対する浴比で0.5〜100の範囲が例示できる。浴比が小さすぎるとPAS混合物と溶剤の混合が困難になるだけでなく、環式PASの溶剤への溶解が不十分になる傾向にある。浴比が大きい方が一般に環式PASの溶剤への溶解には有利であるが、大きすぎてもそれ以上の効果は望めず、逆に溶剤使用量増大による経済的不利益が生じることがある。なお、PAS混合物と溶剤の接触を繰り返し行う場合は、小さい浴比でも十分な効果を得られる場合が多い。またソックスレー抽出法は、その原理上、PAS混合物と溶剤の接触を繰り返し行う場合と類似の効果が得られるので、この場合も小さな浴比で十分な効果を得られる場合が多い。
ポリアリーレンスルフィド混合物を溶剤と接触させた後に、環式PASを溶解した溶液が固形状の線状PASを含む固液スラリー状で得られた場合、公知の固液分離法を用いて溶液部を回収する。固液分離方法としては、たとえば濾過による分離、遠心分離、デカンテーション等を例示できる。このようにして分離した溶液については、後述する溶剤の除去を行う。一方、固体成分については、環式PASがまだ残存している場合、具体的には重量基準で0.05重量%以上の環式PASが残存している場合には、再度溶剤との接触及び溶液の回収を繰り返し行うことでより収率よく環式PASを得ることができる。また、環式PASがほとんど残存していない、具体的には環式PASの残存が重量基準で0.05重量%未満の場合には、残存溶剤を除去することで高純度な線状PASとして好適にリサイクル可能である。
(6)環式ポリアリーレンスルフィド溶液からの溶剤の除去
本発明では前述のようにして得られた環式ポリアリーレンスルフィドを含む溶液から溶剤の除去を行い、環式ポリアリーレンスルフィド混合物を得る。ここで溶剤の除去は、たとえば加熱し、常圧以下で処理する方法や、膜を利用した溶剤の除去を例示できるが、より収率よく、また効率よく環式ポリアリーレンスルフィド混合物を得るとの観点では常圧以下で加熱して溶剤を除去する方法が好ましい。なお、前述の様にして得られた環式ポリアリーレンスルフィドを含む溶液は温度によっては固形物を含む場合もあるが、この場合の固形物も環式ポリアリーレンスルフィド混合物に属するものであるので、溶剤の除去時に溶剤に可溶の成分とともに回収する事が望ましく、これにより収率よく環式PAS混合物を得られるようになる。
溶剤の除去は、少なくとも50重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、よりいっそう好ましくは95重量%以上の溶剤を除去することが望ましい。加熱による溶剤の除去を行う際の温度は用いる溶剤の特性に依存するため一意的には限定できないが、通常、20〜150℃、好ましくは40〜120℃の範囲が選択できる。また、溶剤の除去を行う圧力は常圧以下が好ましく、これにより溶剤の除去をより低温で行うことが可能になる。
(7)その他後処理
かくして得られた環式ポリアリーレンスルフィドは十分に高純度であり、各種用途に好適に用いることができるが、さらに以下に述べる後処理を付加的に施すことによってよりいっそう純度の高い環式PAS混合物を得ることが可能である。
前記(6)までの操作によって得られた環式PAS混合物は、用いた溶剤の特性によってはPAS混合物中に含まれる不純物成分を含む場合がある。このような少量の不純物を含む環式PAS混合物を不純物は溶解するが、環式PASは溶解しない、もしくは環式PASの溶解しにくい第二の溶剤と接触させることで、不純物成分を選択的に除去することが可能な場合が多い。
環式PAS混合物を前記第二の溶剤と接触させる際の反応系圧力は常圧もしくは微加圧が好ましく、特に常圧が好ましく、このような圧力の反応系はそれを構築する部材が安価であるという利点がある。この観点から反応系圧力は、高価な耐圧容器を必要とする加圧条件は避けることが望ましい。第二の溶剤として好ましい溶剤としては、PASの分解や架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものが好ましく、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトフェノン等のケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ペンチル、酢酸オクチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ペンチル、サリチル酸メチル、蟻酸エチル、等のカルボン酸エステル系溶媒が例示でき、なかでもメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチルが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、アセトン、酢酸エチルが特に好ましい。これらの溶媒は1種類または2種類以上の混合物として使用することができる。
環式PAS混合物を第二の溶剤と接触させる温度に特に制限はないが、上限温度は使用する第二の溶剤の常圧下での環流条件温度にすることが望ましく、前述した好ましい第二の溶剤を用いる場合はたとえば20〜100℃が好ましい温度範囲として例示でき、より好ましくは25〜80℃が例示できる。
環式PAS混合物を第二の溶剤と接触させる時間は、用いる溶剤種や温度等によって異なるため一意的には限定できないが、たとえば1分〜50時間が例示でき、短すぎると環式PAS混合物中の不純物の第二の溶剤への溶解が不十分になる傾向にあり、また長すぎても第二の溶剤への不純物の溶解は飽和状態に達し、それ以上の効果は得られない。
環式PAS混合物を第二の溶剤と接触させる方法としては固体状の環式PAS混合物と第二の溶剤を必要に応じて攪拌して混合する方法、各種フィルター上の環式PAS混合物固体に第二の溶剤をシャワーすると同時に不純物を第二の溶剤に溶解させる方法、固体状の環式PAS混合物を第二の溶剤を用いたソックスレー抽出を用いる方法や、溶液状の環式PAS混合物もしくは溶剤を含む環式PAS混合物スラリーを第二の溶剤と接触させて、第二の溶剤の存在下で環式PASを析出させる方法などを用いることができる。なかでも溶剤を含む環式PAS混合物スラリーを第二の溶剤と接触させる方法は、操作後に得られる環式PAS混合物の純度が高く、有効な方法である。
環式PAS混合物を第二の溶剤と接触させた後には、環式PAS混合物が第二の溶剤中に析出したスラリーが得られるので、公知の固液分離法を用いて固体状の環式PAS混合物を回収する。固液分離方法としては、たとえば濾過による分離、遠心分離、デカンテーション等を例示できる。固液分離後に得られた環式PAS混合物中に不純物がまだ残存している場合は、再度環式PAS混合物と第二の溶剤とを接触させて、さらに不純物を除去することも可能である。
(8)本発明の環式PAS混合物の特性
かくして得られた環式PAS混合物は環式PASを70重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上含む純度の高いものであり、一般的に得られる線状のPASとは異なる特性を有する工業的にも利用価値の高いものである。また、本発明で得られる環式PAS混合物は前記式(O)におけるmが単一ではなく、m=4〜50の異なるmを有する前記式(O)であるという特徴を有する。ここで好ましいmの範囲は4〜25,より好ましくは4〜20である。mがこの範囲の場合、後述するように環式PAS混合物を開環重合に用いる場合に重合反応が進行しやすく、高分子量体が得られやすくなる傾向にある。この理由は現時点判然とはしないが、この範囲の環式PASは分子が環状であるがために生じる結合のゆがみが大きく、重合時に開環反応が起こりやすいためと推測している。
なお、mが単一の環式PASは単結晶として得られるため、極めて高い融解温度を有するが、本発明で得られる環式PAS混合物は異なるmを有する混合物であるため融解温度が低いという特徴があり、このことはたとえば環式PAS混合物を溶融して用いる際の加熱温度を低くできるという優れた特徴を発現することになる。また、環式PASを環式PASの飽和溶液から得る場合にはm=7以上の成分が選択的に回収されることが知られているが、本発明によれば環式PAS混合物としてm=4〜6の環式PASも回収する事が可能であり、このことは環式PASを収率よく得るとの観点で意義がある。
本発明によって得られる環式PAS混合物は上記のごとき優れた特性を有するので、開環重合によりポリマーを得る際のプレポリマーとして好適に用いることができる。開環重合は環式PASの開環が起こり高分子量体が生成する条件下で行えばよく、溶媒存在下で行ってもよいし、溶媒の非存在下で行っても差し支えないが、より効率よくポリマーを得るとの観点では溶媒の非存在下で行うことが好ましい。また、開環重合に際しては、環式PASの開環を促進する各種成分を加えても差し障りない。このような成分としては、各種触媒化合物を用いることができ、たとえばイオン性化合物や、ラジカル発生化合物をあげることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。これら例は例示的なものであって限定的なものではない。
<分子量測定>
ポリアリーレンスルフィドスルフィド及びポリアリーレンスルフィドスルフィドプレポリマーの分子量はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC−7100
カラム名:センシュー科学 GPC3506
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (スラリー状:約0.2重量%)
<アルカリ金属含有量の定量>
ポリアリーレンスルフィドスルフィド及びポリアリーレンスルフィドスルフィドプレポリマーの含有するアルカリ金属含有量の定量は下記により行った。
(a) 試料を石英るつぼに秤とり、電気炉を用いて灰化した。
(b) 灰化物を濃硝酸で溶解した後、希硝酸で定容とした。
(c) 得られた定容液をICP重量分析法(装置;Agilent製4500)及びICP発光分光分析法(装置;PerkinElmer製Optima4300DV)に処した。
[参考例1]
<PAS混合物含有スラリーの調製>
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.0モル)、96%水酸化ナトリウム2.96kg(71.0モル)、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略する場合もある)を11.44kg(116モル)、酢酸ナトリウム1.72kg(21.0モル)、及びイオン交換水10.5kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら約240℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、精留塔を介して水14.8kgおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。なお、この脱液操作の間に仕込んだイオウ成分1モル当たり0.02モルの硫化水素が系外に飛散した。
次に、p−ジクロロベンゼン10.3kg(70.3モル)、NMP9.00kg(91.0モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で270℃まで昇温し、この温度で140分保持した。水1.26kg(70モル)を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後220℃まで0.4℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷し、スラリー(A)を得た。このスラリー(A)を20.0kgのNMPで希釈しスラリー(B)を得た。
80℃に加熱したスラリー(B)10kgをふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別し、メッシュオン成分としてスラリーを含んだ顆粒状PPS樹脂を、濾液成分としてスラリー(C)を約7.5kg得た。
[参考例2]
<PAS混合物の調製1>
参考例1で得られたスラリー(C)1000gをロータリーエバポレーターに仕込み、窒素で置換してから、減圧下100〜150℃で1.5時間処理した後に、真空乾燥機で150℃、1時間処理して固形物を得た。
この固形物にイオン交換水1200g(スラリー(C)の1.2倍量)を加えた後、70℃で30分撹拌して再スラリー化した。このスラリーを目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。得られた白色ケークにイオン交換水1200gを加えて70℃で30分撹拌して再スラリー化し、同様に吸引濾過後、70℃で5時間真空乾燥してポリフェニレンスルフィド混合物1を11.0g得た。
このポリフェニレンスルフィド混合物のGPC測定を行った結果、数平均分子量(Mn)は5200、重量平均分子量(Mw)は28900であり、クロマトグラムを解析した結果、分子量5000以下の成分の重量分率は39%、分子量2500以下の成分の重量分率は32%であった。
[参考例3]
<PAS混合物の調製2>
参考例1で得られたスラリー(C)1000gにイオン交換水4000gを加え、70℃で30分撹拌して再スラリー化した。その後静置し、透明な上澄み液をデカンテーションして除去し、固形物を含むスラリーを約300g得た。これにイオン交換水1200gを加え、70℃で30分撹拌後このスラリーを目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。得られた固形物にイオン交換水1200gを加えて70℃で30分撹拌して再スラリー化し、同様に吸引濾過後、70℃で5時間真空乾燥してポリフェニレンスルフィド混合物2を11.5g得た。
このポリフェニレンスルフィド混合物のGPC測定を行った結果、Mnは5100、Mwは28700であり、クロマトグラムを解析した結果、分子量5000以下の成分の重量分率は40%、分子量2500以下の成分の重量分率は33%であった。
[参考例4]
<PAS混合物3の調製>
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.0モル)、96%水酸化ナトリウム2.96kg(71.0モル)、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略する場合もある)を11.44kg(116モル)、酢酸ナトリウム1.72kg(21.0モル)、及びイオン交換水10.5kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら約240℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、精留塔を介して水14.8kgおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。なお、この脱液操作の間に仕込んだイオウ成分1モル当たり0.02モルの硫化水素が系外に飛散した。
次に、p−ジクロロベンゼン10.3kg(70.3モル)、NMP9.00kg(91.0モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で274℃まで昇温し、この温度で50分保持した。その後室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、その一部を分取して粉砕することで流動性の低いスラリー(D)を得た。このスラリー1.0kgにイオン交換水1.9kgを加えて70℃で30分間攪拌した後、目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。得られた固形物に同様にイオン交換水を加え、70℃で30分間攪拌した後、吸引濾過する操作をさらに3回繰り返して固形物を回収した。得られた固形物を130℃で熱風乾燥してポリフェニレンスルフィド混合物3を得た。
このポリフェニレンスルフィド混合物のGPC測定を行った結果、Mnは9900、Mwは44900であり、クロマトグラムを解析した結果、分子量5000以下の成分の重量分率は9.8%、分子量2500以下の成分の重量分率は6.0%であった。
[参考例5]
<顆粒状PASの調製>
参考例1で得られたスラリーを含んだ顆粒状PPS樹脂100gにNMP約0.25リットルを加えて85℃で30分間洗浄し、ふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別した。得られた固形物を0.5リットルのイオン交換水で希釈して、70℃で30分撹拌後、80メッシュふるいで濾過して固形物を回収する操作を合計5回繰り返した。このようにして得られた固形物を、130℃で熱風乾燥し、顆粒状ポリフェニレンスルフィドを得た。
得られた顆粒状PPS樹脂のGPC測定を行った結果、Mn=19000、Mw=48600であり、分子量5000以下の成分の重量分率は4.8%、分子量2500以下の成分の重量分率は1.9%であった。
[参考例6]
<PAS混合物4の調製>
参考例1で得られたスラリー(C)1000gをロータリーエバポレーターに仕込み、窒素で置換してから、減圧下100〜150℃で1.5時間処理した後に、真空乾燥機で150℃、1時間処理して固形物を得た。
この固形物にイオン交換水1200g(スラリー(C)の1.2倍量)を加えた後、70℃で30分撹拌して再スラリー化した。ラジオライト#800S(昭和化学工業株式会社製)3gをイオン交換水10gに分散させた分散液を目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過することで、フィルター上にラジオライトを積層し、これを用いてスラリーを固液分離した。得られた褐色のケークにイオン交換水1200gを加えて70℃で30分撹拌して再スラリー化し、同様に吸引濾過後、70℃で5時間真空乾燥してポリフェニレンスルフィド混合物4を14.0g得た。
このポリフェニレンスルフィド混合物のGPC測定を行った結果、PAS混合物1とほぼ同等の分子量特性を有していることがわかった。なお、PAS混合物4の調製においてはラジオライトを用いずにスラリーの固液分離を行ったPAS混合物1の固液分離と比べて、固液分離に要する時間が大幅に短縮された。
[実施例1]
参考例2の方法で得られたポリフェニレンスルフィド混合物1を5g分取し、溶剤としてクロロホルム120gを用いて、浴温約80℃でソックスレー抽出法により3時間ポリフェニレンスルフィド混合物と溶剤を接触させ、抽出液を得た。得られた抽出液は室温で一部固形状成分を含むスラリー状であった。この抽出液スラリーからエバポレーターを用いてクロロホルムを留去した後、真空乾燥機70℃で3時間処理して固形物2.1g(ポリフェニレンスルフィド混合物1に対し、収率42%)を得た。
このようにして得られた固形物は、赤外分光分析(装置;島津社製FTIR−8100A)における吸収スペクトルよりフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。また、高速液体クロマトグラフィー(装置;島津社製LC−10,カラム;C18,検出器;フォトダイオードアレイ)より成分分割した成分のマススペクトル分析(装置;日立製M−1200H)、更にMALDI−TOF−MSによる分子量情報より、この固形物は繰り返し単位数4〜12の環式ポリフェニレンスルフィドを主要成分とする混合物であり、環式ポリフェニレンスルフィドの重量分率は約87%であることがわかった。
本発明によれば、環式ポリフェニレンスルフィドを約87重量%含む、純度の高い環式ポリフェニレンスルフィド混合物を高い収率で得られることがわかった。
また、前記のクロロホルムと接触させた後の抽出残渣を真空乾燥機70℃で3時間乾燥して固形物を2.9g得た(ポリフェニレンスルフィド混合物に対し、収率58%)。この固形物を再度、前記同様に溶剤としてクロロホルムを用いたソックスレー抽出操作に処し抽出液を得た。この抽出液からはクロロホルムを留去したのちに固形物はほとんど回収されず、前記残渣は線状ポリアリーレンスルフィドであることを確認した。以上の結果より、参考例2で得られたポリフェニレンスルフィド混合物1は、少なくとも線状PASを58重量%含み、また上記固形物の収率が42%、固形物中の環式ポリフェニレンスルフィドの重量分率が87%であることから、少なくとも環式PASを37重量%含むものであることがわかった。
[実施例2]
実施例1と同様にして固形物を得た後、得られた固体にクロロホルム20gを加え、室温で超音波をかけてスラリー状の混合液を得た。これを第二の溶剤としてメタノールと接触させるために、スラリー状混合液をメタノール250gに撹拌しながら約10分かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、約15分間攪拌を継続した。沈殿物を目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過して回収し、得られた白色ケークを70℃で3時間真空乾燥して白色粉末を1.8g得た。白色粉末の収率は用いたポリフェニレンスルフィド混合物1に対して35%であった。
この白色粉末の赤外分光分析における吸収スペクトルより、白色粉末はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。また、高速液体クロマトグラフィーより成分分割した成分のマススペクトル分析、更にMALDI−TOF−MSによる分子量情報より、この白色粉末は繰り返し単位数4〜12の環式ポリフェニレンスルフィドを主要成分とする混合物であり、環式ポリフェニレンスルフィドの重量分率は約94%であることがわかった。本発明の好ましい容態によれば、高純度の環式ポリアリーレンスルフィド混合物を高い収率で得られることがわかった。
[実施例3]
参考例3の方法で得られたポリフェニレンスルフィド混合物2を用いて、実施例1と同様の操作を行い固形物2.1g(ポリフェニレンスルフィド混合物2に対し、収率41%)を得た。
赤外分光分析における吸収スペクトルより、得られた固体はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。また、高速液体クロマトグラフィーより成分分割した成分のマススペクトル分析、更にMALDI−TOF−MSによる分子量情報より、この固形物は繰り返し単位数4〜12の環式ポリフェニレンスルフィドを主要成分とする混合物であり、環式ポリフェニレンスルフィドの重量分率は約89%であることがわかった。
本発明によれば、環式ポリフェニレンスルフィドを約89重量%含む、純度の高い環式ポリフェニレンスルフィド混合物を高い収率で得られることがわかった。
また、前記のクロロホルムと接触させた後の抽出残渣を真空乾燥機70℃で3時間乾燥して固形物を2.9g得た(ポリフェニレンスルフィド混合物に対し、収率59%)。この固形物を再度、前記同様に溶剤としてクロロホルムを用いたソックスレー抽出操作に処し抽出液を得た。この抽出液からはクロロホルムを留去したのちに固形物はほとんど回収されず、前記残渣は線状ポリアリーレンスルフィドであることを確認した。以上の結果より、参考例2で得られたポリフェニレンスルフィド混合物2は、少なくとも線状PASを59重量%含み、また上記固形物の収率が41%、固形物中の環式ポリフェニレンスルフィドの重量分率が89%であることから、少なくとも環式PASを36重量%含むものであることがわかった。
[実施例4]
実施例3と同様にして固形物を得た後、得られた固体に再度クロロホルム20gを加え、室温で超音波をかけてスラリー状の混合液を得た。これを第二の溶剤としてメタノールと接触させるために、スラリー状混合液をメタノール250gに撹拌しながら約10分かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、約15分間攪拌を継続した。沈殿物を目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過し、得られた白色ケークを70℃で3時間真空乾燥して白色粉末を1.8g得た。白色粉末の収率は、用いたポリフェニレンスルフィド混合物2に対して35%であった。
この白色粉末の赤外分光分析における吸収スペクトルより、白色粉末はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。また、高速液体クロマトグラフィーより成分分割した成分のマススペクトル分析、更にMALDI−TOF−MSによる分子量情報より、この白色粉末は繰り返し単位数4〜12の環式ポリフェニレンスルフィドを主要成分とする混合物であり、環式ポリフェニレンスルフィドの重量分率は約97%であることがわかった。本発明の好ましい容態によれば、環式ポリアリーレンスルフィド混合物を高純度で得ることが可能である。
[実施例5]
参考例2の方法で得られたポリフェニレンスルフィド混合物1を5g分取し、溶剤としてクロロホルム100gを用いて、浴温約70℃の常圧還流下で3時間攪拌することでポリフェニレンスルフィド混合物と溶剤を接触させた。ついで熱時濾過を行い抽出液約100gを得た。得られた抽出液は室温で一部固形状成分を含むスラリー状であった。この抽出液スラリーからエバポレーターを用いてクロロホルムを留去した後、真空乾燥機70℃で3時間処理して固形物2.0g(ポリフェニレンスルフィド混合物1に対し、収率40%)を得た。
このようにして得られた固形物は、赤外分光分析における吸収スペクトルよりフェニレンスルフィド単位からなる高分子化合物であることを確認した。また、高速液体クロマトグラフィーより成分分割した成分のマススペクトル分析、更にMALDI−TOF−MSによる分子量情報より、この固形物は繰り返し単位数4〜12の環式ポリフェニレンスルフィドを主要成分とする混合物であり、環式ポリフェニレンスルフィドの重量分率は約88%であることがわかった。本発明によれば、環式ポリフェニレンスルフィドを約88重量%含む、純度の高い環式フェニレンスルフィド混合物を高い収率で得られることがわかった。
[実施例6]
実施例5と同様にして固形物を得た後、得られた固体に再度クロロホルム30gを加え、室温で超音波をかけてスラリー状の混合液を得た。これを第二の溶剤としてメタノールと接触させるために、スラリー状混合液をメタノール250gに撹拌しながら約10分かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、約15分間攪拌を継続した。沈殿物を目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過し、得られた白色ケークを70℃で3時間真空乾燥して白色粉末1.4gを得た。白色粉末の収率は、用いたポリフェニレンスルフィド混合物1に対して28%であった。
この白色粉末の赤外分光分析における吸収スペクトルより、白色粉末はフェニレンスルフィド単位からなる高分子化合物であることを確認した。また、高速液体クロマトグラフィーより成分分割した成分のマススペクトル分析、更にMALDI−TOF−MSによる分子量情報より、この白色粉末は繰り返し単位数4〜12の環式ポリフェニレンスルフィドを主要成分とする混合物であり、環式ポリフェニレンスルフィドの重量分率は約97%であることがわかった。本発明の好ましい容態によれば、環式ポリアリーレンスルフィド混合物を高純度で得ることが可能である。
[比較例1]
参考例2で得られたポリフェニレンスルフィド混合物1を5g分取し、溶剤として水100gを用いて、浴温約140℃で3時間ソックスレー抽出法によりポリフェニレンスルフィド混合物と溶剤を接触させ、抽出液を得た。得られた抽出液からエバポレーターを用いて水を留去した後、真空乾燥機70℃で3時間処理したところ、極微量の析出物が得られたのみであり重量の測定はできなかった。なお、ここでの析出物を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、析出物はベンゼン環1つを有する化合物であると推測され、環式ポリアリーレンスルフィドではないことが判明した。
[実施例7]
参考例4で得られたポリフェニレンスルフィド混合物3を5g用いて実施例1と同様の操作を行い、固形物を得た。さらに得られた固体を実施例2の操作に処し、白色粉末を約0.10g得た(ポリフェニレンスルフィド混合物3に対し、収率2.0%)。
得られた白色粉末を高速液体クロマトグラフィーによって成分分割した成分のマススペクトル分析、更にMALDI−TOF−MSによる分子量情報より、この白色粉末は繰り返し単位数4〜12の環式ポリフェニレンスルフィドを主要成分とする混合物であり、環式ポリフェニレンスルフィドの重量分率は約93%であることがわかった。本発明の方法によれば環式ポリフェニレンスルフィドを約93重量%含む、純度の高い環式ポリアリーレンスルフィド混合物が得られることがわかったが、本発明の好ましい容態と比べると収率が低い結果であった。
[実施例8]
参考例5で得られた顆粒状ポリフェニレンスルフィド混合物5gを用いて、実施例1と同様の操作を行い固形物を得た。さらに得られた固体を実施例2の操作に処し、白色粉末を約0.013g得た(顆粒状ポリフェニレンスルフィド混合物に対し、収率0.26%)。
得られた白色粉末を高速液体クロマトグラフィーによって成分分割した成分のマススペクトル分析、更にMALDI−TOF−MSによる分子量情報より、この白色粉末は繰り返し単位数4〜12の環式ポリフェニレンスルフィドを主要成分とする混合物であり、環式ポリフェニレンスルフィドの重量分率は約96%であることがわかった。本発明の方法によれば環式ポリフェニレンスルフィドを約96重量%含む、純度の高い環式ポリアリーレンスルフィド混合物が得られることがわかったが、本発明の好ましい容態と比べると収率が低い結果であった。
[参考例7]
実施例2で得られた環式ポリフェニレンスルフィド混合物の重量平均分子量は900、Na含有量は4ppm、塩素含有量は2.2wt%であり、Na以外のアルカリ金属及び塩素以外のハロゲンは検出限界以下であった。また、示差走査型熱量計(装置;パーキンエルマー社製DSC7)を用いて熱的特性を分析した結果(昇温速度40℃/分)、約200〜260℃にブロードな吸熱を示し、ピーク温度は約225℃であることがわかった。本発明の好ましい容態による環式ポリフェニレンスルフィドは、金属不純物含有量が極めて低く、また融解温度は一般のポリフェニレンスルフィドよりも大幅に低いことがわかった。
[実施例9]
参考例6で得られたポリフェニレンスルフィド混合物4を5g分取し、溶剤としてクロロホルム120gを用いて、浴温約80℃でソックスレー抽出法により5時間ポリフェニレンスルフィド混合物と溶剤を接触させ、抽出液を得た。得られた抽出液は室温で一部固形状成分を含むスラリー状であった。この抽出液スラリーからエバポレーターを用いてクロロホルムを留去した後、真空乾燥機70℃で3時間処理して固形物1.7g(ポリフェニレンスルフィド混合物4に対し、収率34%)を得た。
得られた固形物は、赤外分光分析における吸収スペクトルよりフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。また、高速液体クロマトグラフィー(装置;島津社製LC−10,カラム;C18,検出器;フォトダイオードアレイ)より成分分割した成分のマススペクトル分析(装置;日立製M−1200H)、更にMALDI−TOF−MSによる分子量情報より、この固形物は繰り返し単位数4〜12の環式ポリフェニレンスルフィドを主要成分とする混合物であり、環式ポリフェニレンスルフィドの重量分率は約88%であることがわかった。
本発明によれば、環式ポリフェニレンスルフィドを約88重量%含む、純度の高い環式ポリフェニレンスルフィド混合物を高い収率で得られることがわかった。
[実施例10]
実施例9と同様にして固形物を得た後、得られた固体にクロロホルム20gを加え、室温で超音波をかけてスラリー状の混合液を得た。これを第二の溶剤としてメタノールと接触させるために、スラリー状混合液をメタノール250gに撹拌しながら約10分かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、約15分間攪拌を継続した。沈殿物を目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過して回収し、得られた白色ケークを70℃で3時間真空乾燥して白色粉末を1.5g得た。白色粉末の収率は用いたポリフェニレンスルフィド混合物4に対して31%であった。
この白色粉末の赤外分光分析における吸収スペクトルより、白色粉末はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。また、高速液体クロマトグラフィーより成分分割した成分のマススペクトル分析、更にMALDI−TOF−MSによる分子量情報より、この白色粉末は繰り返し単位数4〜12の環式ポリフェニレンスルフィドを主要成分とする混合物であり、環式ポリフェニレンスルフィドの重量分率は約94%であることがわかった。本発明の好ましい容態によれば、高純度の環式ポリアリーレンスルフィド混合物を高い収率で得られることがわかった。
[実施例11]
第二の溶剤としてアセトンを用いた以外は実施例10と同様に行い、白色粉末を1.4g得た。白色粉末の収率は用いたポリフェニレンスルフィド混合物4に対して28%であった。
この白色粉末の赤外分光分析における吸収スペクトルより、白色粉末はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。また、高速液体クロマトグラフィーより成分分割した成分のマススペクトル分析、更にMALDI−TOF−MSによる分子量情報より、この白色粉末は繰り返し単位数4〜12の環式ポリフェニレンスルフィドを主要成分とする混合物であり、環式ポリフェニレンスルフィドの重量分率は約95%であることがわかった。本発明の好ましい容態によれば、高純度の環式ポリアリーレンスルフィド混合物を高い収率で得られることがわかった。
[実施例12]
第二の溶剤として酢酸エチルを用いた以外は実施例10と同様に行い、白色粉末を1.3g得た。白色粉末の収率は用いたポリフェニレンスルフィド混合物4に対して27%であった。
この白色粉末の赤外分光分析における吸収スペクトルより、白色粉末はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。また、高速液体クロマトグラフィーより成分分割した成分のマススペクトル分析、更にMALDI−TOF−MSによる分子量情報より、この白色粉末は繰り返し単位数4〜12の環式ポリフェニレンスルフィドを主要成分とする混合物であり、環式ポリフェニレンスルフィドの重量分率は約96%であることがわかった。本発明の好ましい容態によれば、高純度の環式ポリアリーレンスルフィド混合物を高い収率で得られることがわかった。

Claims (14)

  1. 少なくとも
    (a)線状ポリアリーレンスルフィド
    (b)環式ポリアリーレンスルフィド
    を含むポリアリーレンスルフィド混合物を、環式ポリアリーレンスルフィドを溶解可能な溶剤として、クロロホルムと接触させて環式ポリアリーレンスルフィドを含む溶液を調製し、次いで該溶液から溶剤を除去することで環式ポリアリーレンスルフィドを得る方法であって、得られる環式ポリアリーレンスルフィドが下記式(1)で表される繰り返し単位数mが4〜50の混合物であって、m=4〜6の環式ポリアリーレンスルフィドを含むことを特徴とする環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
    Figure 0005593580
    (式(1)中、Arはアリーレン基、Sはスルフィド基である)
  2. 環式ポリアリーレンスルフィドを含む溶液が固形分を含むものであって、溶剤の除去時に溶剤に可溶の成分とともにこの固形分も回収することを特徴とする請求項1に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  3. ポリアリーレンスルフィド混合物として、少なくとも(a)を5〜99.9重量%含み、且つ(b)を0.05〜70重量%含むものを用いることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
  4. ポリアリーレンスルフィド混合物として(a)を5〜99.9重量%含み、且つ(b)を5〜70重量%含むものを用いて、環式ポリアリーレンスルフィド混合物を収率5%以上で得ることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
  5. 環式ポリアリーレンスルフィド混合物における(b)の重量分率が、ポリアリーレンスルフィド混合物における(b)の重量分率よりも高いことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
  6. 少なくともポリハロゲン化芳香族化合物、アルカリ金属硫化物および有機極性溶媒をいずれも含有する混合物を加熱してポリアリーレンスルフィド樹脂を重合し、220℃以下に冷却して得られた、少なくとも顆粒状のポリアリーレンスルフィド樹脂、顆粒状以外のポリアリーレンスルフィド混合物、有機極性溶媒、水、およびハロゲン化アルカリ金属塩をいずれも含むスラリーから回収された顆粒状以外のポリアリーレンスルフィド混合物を用いることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
  7. ポリアリーレンスルフィド混合物を環式ポリアリーレンスルフィドを溶解可能な溶剤と接触させて得られた環式ポリアリーレンスルフィドを含む溶液を、常圧以下で加熱して該溶液から溶剤を除去することを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
  8. 得られる環式ポリアリーレンスルフィド混合物が、環式ポリアリーレンスルフィドを70重量%以上含むことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
  9. ポリアリーレンスルフィドがポリフェニレンスルフィドであることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
  10. (b)環式ポリアリーレンスルフィドが下記式(2)で表される環式化合物であり、繰り返し単位数mが4〜50であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
    Figure 0005593580
  11. 得られる環式ポリアリーレンスルフィド混合物中に含まれる環式ポリアリーレンスルフィドが式(2)で表される化合物であって、繰り返し単位数mが4〜25であることを特徴とする請求項1に記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
  12. ポリアリーレンスルフィド混合物の重量平均分子量Mwが2,500以上であることを特徴とする請求項1から1のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
  13. ポリアリーレンスルフィド混合物が重量平均分子量2,500以下の成分を0.05〜90重量%含むものであることを特徴とする請求項1から1のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
  14. ポリアリーレンスルフィド混合物がセラミックス粉末を含むことを特徴とする請求項1から1のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
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