JP2020070319A - 環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法 - Google Patents

環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法 Download PDF

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宗一郎 岩花
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Abstract

【課題】高純度の環式ポリアリーレンスルフィドを合成する製造方法を提供する。【解決手段】 少なくともスルフィド化剤(a)、ジハロゲン化芳香族化合物(b)、周期表第12族の金属を含む化合物(c)、反応混合物(A)中のイオウ成分1モルに対して1.25リットル以上50リットル以下の有機極性溶媒(d)を原料成分とする反応混合物(A)を加熱して反応させる環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法に関する。より詳しくは、環式ポリアリーレンスルフィドを経済的かつ簡易な方法で効率よく製造する方法に関する。
芳香族環式化合物はその環状であることから生じる特性、すなわちその構造に由来する特異性により、近年注目を集めている。具体的には、高機能材料用途や機能材料への応用展開可能性、たとえば包接能を有する化合物としての活用や開環重合による高分子量直鎖状高分子合成のためのモノマーとしての活用など、が期待されている。環式ポリアリーレンスルフィド(以下、ポリアリーレンスルフィドをPASと略する場合もある)も芳香族環式化合物の範疇に属し、上記同様に注目に値する化合物である。
環式PASの製造方法としては、例えばジアリールジスルフィド化合物を超希釈条件下で酸化重合する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
また、環式PASの他の製造方法として、4−ブロモチオフェノールの銅塩をキノリン中の超希釈条件下で加熱する方法も開示されている(例えば特許文献2参照)。
一方、汎用的な原料から環式PASを製造する方法として、ジハロゲン化芳香族化合物としてp−ジクロロベンゼンと、アルカリ金属硫化物として硫化ナトリウムを有機極性溶媒であるN−メチルピロリドン中で反応させ、ついで加熱減圧下で溶媒を除去後、水で洗浄する事で得られたポリフェニレンスルフィドを、塩化メチレンで抽出して得られた抽出液の飽和溶液部分から回収する方法が開示されている(例えば特許文献3参照)。
また、汎用的な原料から環式PASを製造する別の方法としては、スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物を、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり1.25リットル以上の有機極性溶媒中で反応させる方法が開示されている(例えば特許文献4参照)。
さらに、汎用的な原料から環式PASを製造する別の方法としては、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が0.8モル以上1.05モル未満である反応混合物を加熱して反応を行い、次いで反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が1.05モル以上1.5モル以下となるようにジハロゲン化芳香族化合物を追加してさらに反応を行う方法が開示されている(例えば特許文献5参照)。
また、スルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物に加えて、線状PASを原料として用いる方法としては、線状PASとスルフィド化剤を反応させて末端にチオラート基を有するPASオリゴマーを生成させ、次いでジハロゲン化芳香族化合物を追加して反応させることで環式PASを製造する方法が開示されている(例えば特許文献6参照)。
また、スルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物に加えて、金属触媒を用いて環式PASを製造する方法としては、スルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物、および周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属を含む錯体を、スルフィド化剤のイオウ原子1モルに対して1.25リットル以上の有機極性溶媒中で反応させる方法が開示されている(例えば特許文献7参照)。
特許第3200027号公報 米国特許第5869599号公報 特開平05−163349号公報 特開2009−30012号公報 特許第5516756号公報 特開2011−068885号公報 特開2009−7521号公報
前記特許文献1の方法では環式PASが高選択で生成し、線状PASはごく少量しか生成しないと推測され、確かに環式PASが高収率で得られると考えられるが、この方法は産業への応用可能性の観点からは課題の多い方法であった。すなわち、超希釈条件で反応を行うことが必須であり、反応容器の単位容積あたりに得られる環式PASがごくわずかで効率的に環式PASを得ることが困難であること、また、この方法で副生する線状PASの分子量が目的物である環式PASと近いために、分離除去することが困難であり高純度な環式PASを効率よく得られないこと、などの課題があった。
また、前記特許文献1と同様、前記特許文献2の方法も超希釈条件が必須であり、また、反応に長時間が必要な生産性の極めて低い方法であった。さらに、副生する臭化銅を生成物である環式PASから分離することが困難で、得られる環式PASは純度の低いものであった。
前記特許文献3の方法では、生成物の大部分が高分子量ポリフェニレンスルフィドであり、環式PASが極微量(収率1%未満)しか生成せず、塩化メチレンによる抽出操作が必須な生産性に劣る方法であった。
前記特許文献4から6の方法は、いずれも汎用的な原料から環式PASを製造する方法であり、従来の方法に比べて投入原料あたりの環式PASの収率が改善する方法であるが、依然として、環式PASの収率には更なる向上が求められていた。
前記特許文献7の方法では、周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属を含む錯体を触媒として用いることで、従来の方法と比較して環式PASの収率が向上する方法であるが、環式PASの収率には更なる向上が求められていた。また、周期表第12族の金属の効果については、なんら記載されていない。
本発明はかかる課題を解決するために、次の手段を採用するものである。
すなわち、本発明は、
[1] 少なくともスルフィド化剤(a)、ジハロゲン化芳香族化合物(b)、周期表第12族の金属を含む化合物(c)、反応混合物(A)中のイオウ成分1モルに対して1.25リットル以上50リットル以下の有機極性溶媒(d)を原料成分とする反応混合物(A)を加熱して反応させる環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[2] 前記反応混合物(A)は、さらに原料成分として線状ポリアリーレンスルフィド(e)を含む前記[1]に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[3] 前記周期表第12族の金属を含む化合物(c)が、亜鉛を含む化合物である前記[1]または[2]に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[4] 前記反応混合物(A)中のイオウ成分と周期表第12族の金属を含む化合物(c)とのモル比が1:0.001以上1:0.5以下の範囲である前記[1]から[3]のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[5] 以下の工程1および工程2を経る前記[1]から[4]のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
工程1:スルフィド化剤(a)、有機極性溶媒(d)と、ジハロゲン化芳香族化合物(b)および/または線状ポリアリーレンスルフィド(e)、を原料成分とする反応混合物(A’)であって、反応混合物(A’)中のイオウ成分1モルあたりのアリーレン単位が0.5モル以上0.98モル以下である前記反応混合物(A’)を加熱して反応させる工程。
工程2:前記工程1で得られた反応混合物に、周期表第12族の金属を含む化合物(c)および、反応混合物(A)中のイオウ成分1モルあたりのアリーレン単位が0.98モル超1.5モル以下となるようにジハロゲン化芳香族化合物(b)を添加して反応混合物(A)とし、加熱して反応させる工程。
[6] 前記工程1において、スルフィド化剤(a)の50%以上が消費されるまで反応させる前記[5]に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[7] 前記工程1を実質的にジハロゲン化芳香族化合物(b)の非存在下で行う前記[5]または[6]に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
本発明によれば、環式ポリアリーレンスルフィドを経済的かつ簡易な方法で効率よく製造できる。より詳しくは、少なくともスルフィド化剤(a)、ジハロゲン化芳香族化合物(b)、周期表第12族の金属を含む化合物(c)、反応混合物(A)中のイオウ成分1モルに対して1.25リットル以上50リットル以下の有機極性溶媒(d)を原料成分とする反応混合物(A)を加熱して反応させることで、効率よく環式ポリアリーレンスルフィドを製造できる。
以下に、本発明実施の形態を説明する。
(1)スルフィド化剤(a)
本発明の実施形態で用いられるスルフィド化剤(a)とは、ジハロゲン化芳香族化合物にスルフィド結合を導入できるものであれば良く、例えばアルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができる。なかでも硫化リチウムおよび/または硫化ナトリウムが好ましく、硫化ナトリウムがより好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。なお、水性混合物とは水溶液、もしくは水溶液と固体成分の混合物、もしくは水と固体成分の混合物のことをさす。一般的に入手できる安価なアルカリ金属硫化物は水和物または水性混合物であるので、このような形態のアルカリ金属硫化物を用いることが好ましい。
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができる。なかでも水硫化リチウムおよび/または水硫化ナトリウムが好ましく、水硫化ナトリウムがより好ましく用いられる。
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系の中で生成されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、あらかじめアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を接触させて調製したアルカリ金属硫化物を用いることもできる。これらのアルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物は、水和物、水性混合物、および無水物から選択される化合物の形で用いることができる。水和物または水性混合物が、入手のし易さ、コストの観点から好ましい。
さらに、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から、反応系の中で生成されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、あらかじめ水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素を接触させて調製したアルカリ金属硫化物を用いることもできる。硫化水素は気体状、液体状、水溶液状のいずれの形態で用いても差し障り無い。
本発明の実施形態においてスルフィド化剤(a)の量は、脱水操作などにより反応開始前にスルフィド化剤(a)の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
なお、スルフィド化剤(a)と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができる。アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、および水酸化バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
スルフィド化剤(a)として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましい。この場合のアルカリ金属水酸化物の使用量は、アルカリ金属水硫化物1モルに対し0.95モル以上とすることができ、好ましくは1.00モル以上であり、更に好ましくは1.005モル以上である。また、1.50モル以下とすることができ、好ましくは1.25モル以下であり、更に好ましくは1.20モル以下である。スルフィド化剤として硫化水素を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましい。この場合のアルカリ金属水酸化物の使用量は、硫化水素1モルに対し2.0モル以上とすることができ、好ましくは2.01モル以上であり、更に好ましくは2.04モル以上である。また、3.0モル以下とすることができ、好ましくは2.50モル以下であり、更に好ましくは2.40モル以下である。
(2)ジハロゲン化芳香族化合物(b)
本発明の実施形態で使用されるジハロゲン化芳香族化合物(b)とは、芳香環の二価基であるアリーレン基と、2つのハロゲノ基とを有する芳香族化合物である。ジハロゲン化芳香族化合物1モルは、アリーレン単位1モルとハロゲノ基2モルを有している。たとえば、アリーレン基としてベンゼン環の二価基であるフェニレン基を有すると共に2つのハロゲノ基を有する化合物として、p−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼン、o−ジブロモベンゼン、m−ジブロモベンゼン、1−ブロモ−4−クロロベンゼン、および1−ブロモ−3−クロロベンゼンなどのジハロゲン化ベンゼンを挙げることができる。さらに、ジハロゲン化芳香族化合物(b)としては、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン、1−メチル−2,5−ジクロロベンゼン、1,4−ジメチル−2,5−ジクロロベンゼン、1,3−ジメチル−2,5−ジクロロベンゼン、および3,5−ジクロロ安息香酸などのハロゲン以外の置換基をも含む化合物を挙げることができる。なかでも、p−ジクロロベンゼンに代表されるp−ジハロゲン化ベンゼンを主成分にするジハロゲン化芳香族化合物が好ましい。特に好ましくは、p−ジクロロベンゼンを80〜100モル%含むものであり、さらに好ましくは90〜100モル%含むものである。
(3)周期表第12族の金属を含む化合物(c)
周期表第12族の金属としては、亜鉛、カドミウム、水銀が挙げられ、取り扱い性や人体への毒性の観点から亜鉛が好ましい。ここで、周期表第12族の金属を含む化合物(c)としては、周期表第12族の金属の単体、錯体、無機塩、有機塩などがあり、より詳細には、周期表第12族の金属の硝酸塩、硫酸塩、ハライド塩、アンモニウム塩、酢酸塩、酸化物、硫化物、窒化物、炭化物、ホウ化物、シアノ化物、過酸化物、あるいはこれらに配位子を配位させたものが例示できる。その具体例としては、硝酸亜鉛、硝酸カドミウム、硝酸水銀、硫酸亜鉛、硫酸カドミウム、硫酸水銀、ヨウ化亜鉛、ヨウ化カドミウム、ヨウ化水銀、臭化亜鉛、臭化カドミウム、臭化水銀、塩化亜鉛、塩化カドミウム、塩化水銀、フッ化亜鉛、フッ化カドミウム、フッ化水銀、酢酸亜鉛、酢酸カドミウム、酢酸水銀、シュウ酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化水銀、硫化亜鉛、硫化カドミウム、硫化水銀、窒化亜鉛、窒化カドミウム、窒化水銀などが例示でき、なかでもヨウ化亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛が好ましく用いられる。
また、これらの周期表第12族の金属を含む化合物(c)は、活性炭、アルミナ、シリカなどの担体に担持された固相系を構築しても良く、水和物や反応を阻害しない第三成分を含む状態で用いることも可能である。
(4)有機極性溶媒(d)
本発明では有機極性溶媒(d)を用いるが、なかでも有機アミド溶媒が好ましい。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、及びこれらの混合物などが、反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでもN−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが好ましく用いられる。
(5)線状ポリアリーレンスルフィド(e)
本発明における線状ポリアリーレンスルフィド(e)とは、式−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする化合物であり、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する線状のホモポリマーまたは線状のコポリマーである。Arとしては、下記の式(A)〜式(L)であらわされる単位などがあるが、なかでも式(A)が特に好ましい。
Figure 2020070319
(ただし、式中のR1,R2は水素、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。)
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(M)〜式(P)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−であらわされる主要構成単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。
Figure 2020070319
また、本発明の実施形態における線状ポリアリーレンスルフィド(e)は上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、これらのブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい線状PASとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
Figure 2020070319
を80モル%以上、望ましくは90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略すこともある)、ポリフェニレンスルフィドスルホン、およびポリフェニレンスルフィドケトンが挙げられる。
ここで本発明の実施形態において線状PAS(e)の分子量に特に制限はないが、一般的な線状PASの重量平均分子量としては2,000〜1,000,000が例示でき、2,500〜500,000が好ましく例示でき、3,000〜100,000が更に好ましく例示できる。
なお、線状PAS(e)の形態に特に制限はなく、乾燥状態の粉末状、粉粒状、粒状、ペレット状でも良いし、反応溶媒である有機極性溶媒を含む状態で用いることも可能であり、また、本質的に反応を阻害しない第三成分を含む状態で用いることも可能である。この様な第三成分としては例えば無機フィラーなどが例示でき、無機フィラーを含む樹脂組成物の形態の線状PASを用いることも可能である。
ここで、線状ポリアリーレンスルフィド(e)中のイオウ成分の「モル数」とは、イオウ原子1個を含むポリマーの「繰り返し単位の数」である。例えば、重合度100のポリアリーレンスルフィド1分子は、1モルではなく、100モルと計算する。
(6)環式ポリアリーレンスルフィド
本発明における環式PASとは式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする環式化合物であり、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する下記一般式(Q)のごとき化合物である。
Figure 2020070319
ここでArとしては前記式(A)〜式(L)などであらわされる単位を例示できるが、なかでも式(A)〜式(C)が好ましく、式(A)および式(B)がより好ましく、式(A)が特に好ましい。
なお、環式PASにおいては前記式(A)〜式(L)などの繰り返し単位をランダムに含んでも良いし、ブロックで含んでも良く、それらの混合物のいずれかであってもよい。これらの代表的なものとして、環式ポリフェニレンスルフィド、環式ポリフェニレンスルフィドスルホン、環式ポリフェニレンスルフィドケトン、これらが含まれる環式ランダム共重合体、環式ブロック共重合体およびそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい環式PASとしては、主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
Figure 2020070319
を80モル%以上、特に90モル%以上含有する環式ポリフェニレンスルフィド(以下、環式PPSと略すこともある)が挙げられる。
環式PASの前記(Q)式中の繰り返し数mに特に制限は無いが、2〜50が好ましく、3〜40がより好ましく、4〜30が更に好ましい範囲として例示できる。後述するように環式PASを含有するPASプレポリマーを高重合度体へ転化する場合には、環式PASが溶融解する温度以上に加熱して行うことが好ましいが、mが大きくなると環式PASの溶融解温度が高くなる傾向にあるため、PASプレポリマーの高重合度体への転化をより低い温度で行うことができるようになるとの観点でmを前記範囲にすることは有利となる。
また、環式PASは、単一の繰り返し数を有する単独化合物、異なる繰り返し数を有する環式PASの混合物のいずれでも良いが、異なる繰り返し数を有する環式PASの混合物の方が単一の繰り返し数を有する単独化合物よりも溶融解温度が低い傾向があり、異なる繰り返し数を有する環式PASの混合物の使用は前記した高重合度体への転化を行う際の温度をより低くできるため好ましい。
(7)環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法
本発明では、少なくともスルフィド化剤(a)、ジハロゲン化芳香族化合物(b)、周期表第12族の金属を含む化合物(c)、反応混合物(A)中のイオウ成分1モルに対して1.25リットル以上50リットル以下の有機極性溶媒(d)、を原料成分とする反応混合物(A)を加熱して反応させて環式ポリアリーレンスルフィドを製造する。
本発明では、環式ポリアリーレンスルフィドの収率向上を目的に鋭意検討を行った結果、周期表第12族の金属を含む化合物(c)の存在下で反応させた場合に、特異的な収率向上効果を見出し、発明を完成させるに至った。
ここで、反応混合物(A)を調製する方法としては、それぞれの原料を一括で混合する方法や、原料成分の一部、例えばスルフィド化剤(a)とジハロゲン化芳香族化合物(b)、を有機極性溶媒(d)中である程度反応させた後に、周期表第12族の金属を含む化合物(c)を添加して反応混合物(A)とするなど、原料成分の一部を後添加することも可能である。また、反応混合物(A)には前記必須成分以外に反応を著しく阻害しない第三成分を加えることも可能である。
さらに、反応混合物(A)には、原料成分として線状ポリアリーレンスルフィド(e)を含んでも良く、この場合、スルフィド化剤(a)およびジハロゲン化芳香族化合物(b)に加えて、線状ポリアリーレンスルフィド(e)も反応してポリアリーレンスルフィドの生成が進行する。このように、原料として線状ポリアリーレンスルフィドを用いる場合、使用するスルフィド化剤やジハロゲン化芳香族化合物の量を低減でき、効率よく環式PASを得ることができる。
なお、反応混合物(A)中のイオウ成分の「モル数」とは、反応混合物(A)中にポリアリーレンスルフィドを含まない場合はスルフィド化剤のイオウ原子のモル数であり、反応混合物(A)中にポリアリーレンスルフィドを含む場合は、ポリアリーレンスルフィド中のイオウ成分のモル数とスルフィド化剤のイオウ原子のモル数の和である。なお、本発明の本質を損なわない限りは、ポリアリーレンスルフィド、スルフィド化剤以外にイオウ成分を含有する化合物を付加的に反応混合物(A)中に存在させることも可能であるが、本発明の反応に対して実質的に作用しないイオウ含有化合物に由来するイオウ成分は考慮しない。
周期表第12族の金属を含む化合物(c)の使用量に特に制限はないが、反応混合物(A)中のイオウ成分と周期表第12族の金属を含む化合物(c)とのモル比が1:0.001以上1:0.5以下が好ましく、1:0.002以上1:0.4以下がより好ましく、1:0.003以上1:0.3以下が更に好ましい。周期表第12族の金属を含む化合物(c)の量が上記の範囲未満では十分な効果が得られにくくなる傾向にあり、上記の範囲を超える場合には、それ以上の効果は発現しにくくなる傾向にあるため、経済性と効果のバランスの観点で上記範囲が好ましい。
本発明における有機極性溶媒の使用量は、反応混合物(A)中のイオウ成分1モルに対して1.25リットル以上50リットル以下であり、好ましくは1.3リットル以上20リットル以下であり、より好ましくは1.5リットル以上15リットル以下である。このような濃度範囲では、効率よく環式PASを合成できる。一方、反応混合物(A)中のイオウ成分1モルに対して50リットル超の有機極性溶媒を用いることは、反応容器の単位体積当たりのPASの生成量が低下する傾向に有り、更に、反応に要する時間が長時間化する傾向があるため生産効率に劣る。また、反応混合物(A)中のイオウ成分1モルに対して1.25リットル未満の有機極性溶媒を用いた場合、環式PASの収率が低下する傾向にある。また、ここでの溶媒使用量は常温常圧下における溶媒の体積を基準とする。なお、常圧とは大気の標準状態近傍における圧力のことであり、約25℃近傍の温度、絶対圧で101kPa近傍の大気圧条件のことである。
本発明における反応温度は、有機極性溶媒の種類、量によって多様化するため一意的に決めることはできないが、通常120〜350℃、好ましくは180〜320℃、より好ましくは200〜300℃、さらに好ましくは220〜280℃の範囲を例示できる。この好ましい温度範囲ではより高い反応速度が得られ、反応を短時間化することができる。また、このような温度範囲では、ポリアリーレンスルフィドが溶解しやすくなるため、反応が均一で進行しやすい傾向にある。なお、反応は一定温度で行なう1段反応、段階的に温度を上げていく多段反応、あるいは連続的に温度を変化させていく形式の反応のいずれでもかまわない。
また、反応時間は、使用した原料の種類や量あるいは反応温度に依存するので一概に規定できないが、0.1時間以上が好ましく、0.5時間以上がより好ましい。この好ましい時間以上とすることで、未反応の原料成分を減少できるため、環状ポリアリーレンスルフィドの収率が向上しやすくなる傾向にある。一方、反応時間に特に上限は無いが、40時間以内でも十分に反応が進行し、好ましくは10時間以内、より好ましくは6時間以内も採用できる。
なお、反応させる方法にはバッチ式および連続方法など公知の各種重合方式、反応方式を採用することができる。また、製造における雰囲気は非酸化性雰囲気下が望ましく、窒素、ヘリウム、およびアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましく、経済性および取り扱いの容易さの面からは窒素雰囲気下が好ましい。
本発明では、ジハロゲン化芳香族化合物(b)の転化率が50%以上まで反応させることが好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上まで反応させることが好ましい。このような状態では、ジハロゲン化芳香族化合物(c)とスルフィド化剤の反応が効率的に進行するため、環式PASの収率が向上しやすい傾向にある。
なお、ジハロゲン化芳香族化合物(DHA)の転化率は、以下の式で算出した値である。DHA残存量は、通常、ガスクロマトグラフ法によって求めることができる。
(a)ジハロゲン化芳香族化合物をスルフィド化剤に対しモル比で過剰に添加した場合
転化率(%)=[〔DHA仕込み量(モル)−DHA残存量(モル)〕/〔DHA仕込み量(モル)−DHA過剰量(モル)〕]×100%
(b)上記(a)以外の場合
転化率(%)=[〔DHA仕込み量(モル)−DHA残存量(モル)〕/〔DHA仕込み量(モル)〕]×100%
さらに、本発明における原料成分を反応器に仕込む順番や、反応混合物(A)中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位の比率などの条件については、公知の方法や条件であっても良いが、後述の工程1および工程2を経る環式PASの製造方法が好ましく採用できる。下記の工程1および工程2を経て環式PASを製造する場合、従来の方法と比べて環式PASの収率が向上する傾向が特に強い。その理由は定かではないが、工程1で生じる反応中間体と周期表第12族の金属を含む化合物(c)が、とりわけ効率的に相互作用して環式PASが生成しやすくなると推測している。
なお、反応を行う方法に特に制限は無いが、攪拌条件下で行うことが反応系の均一化のために好ましい。
(7−1)工程1
工程1は、スルフィド化剤(a)、有機極性溶媒(d)と、ジハロゲン化芳香族化合物(b)および/または線状ポリアリーレンスルフィド(e)、を原料成分とする反応混合物(A’)であって、反応混合物(A’)中のイオウ成分1モルあたりのアリーレン単位が0.5モル以上0.98モル以下である前記反応混合物(A’)を加熱して反応させる工程であるが、ここでは、少なくとも一方の末端にチオラート基を有するポリアリーレンスルフィド成分の生成が進行する。
ここで、工程1とは、前記(7)項に例示した、反応混合物(A)の原料成分の一部を予め反応させる工程であり、反応混合物(A’)とは、反応混合物(A)の原料成分の一部であるスルフィド化剤(a)、有機極性溶媒(d)と、ジハロゲン化芳香族化合物(b)および/または線状ポリアリーレンスルフィド(e)、を原料成分とする反応混合物である。
工程1の目的は、少なくとも一方の末端にチオラート基を有するポリアリーレンスルフィド成分を得ることにあり、前記したイオウ成分とアリーレン単位のモル比となるようにスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物を反応させる方法や、前記したイオウ成分とアリーレン単位のモル比となるようにスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物、線状ポリアリーレンスルフィドを反応させる方法などが採用できるが、前記したイオウ成分とアリーレン単位のモル比となるように線状ポリアリーレンスルフィドにスルフィド化剤を作用させる方法が最も効率良く少なくとも一方の末端にチオラート基を有するポリアリーレンスルフィド成分が得られる傾向にあるため、本発明の工程1においては、実質的にジハロゲン化芳香族化合物の非存在下で反応を行うことが好ましい。
なお、反応混合物(A’)中のイオウ成分の「モル数」とは、反応混合物(A’)中にポリアリーレンスルフィドを含まない場合はスルフィド化剤のイオウ原子のモル数であり、反応混合物(A’)中にポリアリーレンスルフィドを含む場合は、ポリアリーレンスルフィド中のイオウ成分のモル数とスルフィド化剤のイオウ原子のモル数の和である。なお、本発明の本質を損なわない限りは、ポリアリーレンスルフィド、スルフィド化剤以外にイオウ成分を含有する化合物を付加的に反応混合物(A’)中に存在させることも可能であるが、本発明の反応に対して実質的に作用しないイオウ含有化合物に由来するイオウ成分は考慮しない。
また、反応混合物(A’)中のアリーレン単位とは、反応が全く進行していない段階において、アリーレン単位を含む原料がジハロゲン化芳香族化合物のみの場合は、反応混合物(A’)に含まれるジハロゲン化芳香族化合物に由来するアリーレン単位を指す。一方、反応が進行した段階や、原料にポリアリーレンスルフィドを含む場合は、反応混合物(A’)中に存在するジハロゲン化芳香族化合物に由来するアリーレン単位と、アリーレンスルフィド化合物に由来するアリーレン単位の合計を指す。
本工程1を経る場合の反応混合物(A’)中のイオウ成分1モルあたりのアリーレン単位は、0.5モル以上0.98モル以下が好ましく、0.6モル以上0.95モル以下がより好ましく、0.6モル以上0.9モル以下が更に好ましい。本工程1をこのような範囲で行う場合、後述の工程2での環式PASの収率が向上しやすい傾向にある。
また、工程1では、反応混合物(A’)中のスルフィド化剤が50%以上消費されるまで反応させることが好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましい。このような状態とすることで、環式PASの収率が向上する傾向にある。
その他工程1の反応温度や反応時間などの好ましい形態は、前記(7)項の記載に準ずる。
(7−2)工程2
工程2は、前記工程1に次いで、工程1で得られる反応混合物に、周期表第12族の金属を含む化合物(c)と、反応混合物(A)中のイオウ成分1モルあたりのアリーレン単位が0.98モル超1.5モル以下となるように前記ジハロゲン化芳香族化合物(b)を添加して反応混合物(A)とし、さらに加熱して反応させる工程である。
反応混合物(A)におけるイオウ成分1モルあたりのアリーレン単位は、0.98モル超1.5モル以下が好ましく、1.0モル以上1.45モル以下がより好ましく、1.02モル以上1.4モル以下が更に好ましい。このような好ましい範囲では、環式PASの収率が向上する傾向が強い。
前記工程1に次いで、周期表第12族の金属を含む化合物(c)と、ジハロゲン化芳香族化合物(b)を追加する方法に特に制限はなく、一括添加する方法や、一定速度で連続的に行う方法や、複数回にわたって断続的に行う方法などが例示できる。さらに、所望の時間反応を継続し仕込んだ原料が減少した随意の段階で、ジハロゲン化芳香族化合物および/または周期表第12族の金属を含む化合物(c)を追加して更に反応を継続することも可能である。
その他工程2の反応温度や反応時間などの好ましい形態は、前記(7)項、(7−1)項の記載に準ずる。
(8)環式PASの回収方法
本発明の環式PASの製造においては、前記した反応により得られたポリアリーレンスルフィド混合物から環式PASを分離回収することも可能である。反応により得られたポリアリーレンスルフィド混合物には少なくとも環式PAS、線状PASおよび有機極性溶媒が含まれており、その他の成分として未反応のスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物、水、副生塩、周期表第12族の金属を含む化合物などが含まれる場合もある。
このポリアリーレンスルフィド混合物から環式PASを回収する方法に特に制限はなく、公知の方法であっても良い。例えば特許文献5(特開2009−227952号公報)に記載のように、有機極性溶媒の大部分を蒸留等の操作により除去した後に、線状PASに対する溶解性が低く環式PASに対する溶解性の高い溶媒を用いて環式PASを抽出し、線状PASと分離する方法や、ポリアリーレンスルフィド混合物を固液分離し、少なくとも環式PASおよび有機極性溶媒を含む液相部を得て、線状PASを固形分として分離し、環式PASを回収する方法が例示できる。
前記で例示したポリアリーレンスルフィド混合物の分離方法のなかでも、PAS混合物を固液分離することで、環式PASと線状PASに分離する方法が簡便で好ましい。少なくとも環式PASと線状PASを含むPAS混合物を固液分離する方法に特に制限はなく、公知の方法であっても良い。
ここで固液分離方法としては、濾過器を用いる方法、遠心分離機により液相部と固形分を分離する方法、デカンテーションにより液相部と固形分を分離する方法、これらの方法を組み合わせた方法などが例示でき、少なくとも環式ポリアリーレンスルフィドおよび有機極性溶媒を含む液相部、および線状ポリアリーレンスルフィドを含む固形分が得られる方法であればこれらに限定されるものではない。また、前記濾過器としては、ふるい等の濾過器、遠心濾過器、振動スクリーン、加圧濾過機、吸引濾過器などが例示できるが、固液分離ができればこれらに限定されるものではない。ここで前記液相部とは、濾過器により固液分離した際の濾液や遠心分離時の上澄み液などを例示でき、前記固形分とは濾過器により固液分離した際のケークや遠心分離時の沈降部分などを例示できる。
(8−1)有機極性溶媒の除去および環式ポリアリーレンスルフィドの回収
前記固液分離により得られた液相部から後処理をすることで、環式ポリアリーレンスルフィドを得ることが可能である。
前記液相部から環式ポリアリーレンスルフィドを回収する方法に特に制限はなく、公知の方法であっても良い。例えば、液相部をポリアリーレンスルフィド成分に対する溶解性が低く且つ有機極性溶媒と混和する溶剤と接触させて、環式ポリアリーレンスルフィドを回収する方法、液相部の有機極性溶媒の一部もしくは大部分を蒸留等の操作により除去した後に、ポリアリーレンスルフィド成分に対する溶解性が低く且つ有機極性溶媒と混和する溶剤と接触させて、環式ポリアリーレンスルフィドを回収する方法、液相部を冷却して環式ポリアリーレンスルフィドを析出させ、析出した環式ポリアリーレンスルフィドを回収する方法、液相部を常圧以下で加熱して有機極性溶媒を除去し、環式ポリアリーレンスルフィドを回収する方法が挙げられる。なかでも、特開2011−132498号に記載のようにポリアリーレンスルフィド成分に対する溶解性が低く且つ有機極性溶媒と混和する異なる溶剤と接触させることで、有機極性溶媒に溶解している環式ポリアリーレンスルフィドを固形分として析出させて回収する方法が好ましい。
(9)本発明の環式PASの特性
かくして得られた環式PASは、通常、環式化合物を70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上、殊更好ましくは90重量%以上含む純度の高いものであり、一般的に得られる線状のPASとは異なる特性を有する工業的にも利用価値の高いものである。また、本発明の製造方法により得られる環式PASは前記式(A)におけるmが単一ではなく、m=4〜50の異なるmを有する前記式(A)が得られやすいという特徴を有する。ここで好ましいmの範囲は4〜25,より好ましくは4〜20である。mがこの範囲の場合、後述するように環式PASからPASを得るための原料として用いる場合に重合反応が進行しやすく、高分子量体が得られやすくなる傾向にある。この理由は現時点判然とはしないが、この範囲の環式PASは分子が環式であるがために生じる結合のゆがみが大きく、重合時に高分子量化が起こりやすいためと推測している。
なお、mが単一の環式PASは単結晶として得られるため、極めて高い融解温度を有するが、本発明では環式PASは異なるmを有する混合物が得られやすく、これにより環式PASの融解温度が低いという特徴があり、このことはたとえば環式PASを溶融して用いる際の加熱温度を低くできるという優れた特徴を発現することになる。
(10)環式PASの高重合度体への転化
本発明の実施形態によって回収される環式PASは前記(9)項に述べたごとき優れた特性を有するので、PASポリマー、すなわち高重合度体を得る際のプレポリマーとして好適に用いることが可能である。なお、環式PASからPASポリマーを得る方法に特に制限はないが、特許第4432971号公報に記載のような方法が好ましく例示できる。
ここで、特許第4432971号公報に記載の方法のように、環式PASを加熱して高重合度体へ転化させる場合、環式PAS中の不純物成分の比率が低いほど、高重合度体へ転化した際のPASポリマーの分子量が高くなる傾向にあるため、各種用途への展開可能性が高い高分子量のPASポリマーを得るためには、環式PAS中の不純物量を極力低減させることが好ましい。
このようにして得られたPASポリマーは、耐熱性、耐薬品性、難燃性、電気的性質並びに機械的性質に優れ、射出成形、射出圧縮成形、ブロー成形用途のみならず、押出成形により、シート、フィルム、繊維及びパイプなどの押出成形品に成形することができる。この際、PASを単独で用いてもよいし、所望に応じて、ガラス繊維、炭素繊維、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、着色剤などを添加することもでき、樹脂を配合することもできる。
またその用途としては、電気・電子部品、家庭・事務電気製品部品、光学機器・精密機械関連部品、水廻り部品、自動車・車両関連部品、その他産業用途が例示できる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。これら例は例示的なものであって限定的なものではない。
<ジハロゲン化芳香族化合物の転化率測定>
ジハロゲン芳香族化合物の転化率はガスクロマトグラフィー(GC)分析により定量分析を行なった。GCの測定条件を以下に示す。
装置:島津製作所製 GC−2010
カラム:J&W社製 DB−5 0.32mm×30m(0.25μm)
キャリアーガス:ヘリウム
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
<スルフィド化剤の分析>
反応生成物や反応途中の中間生成物中のスルフィド化剤の定量(水硫化ナトリウムの定量)はイオンクロマトグラフィーを用いて以下の条件にて実施した。
装置:島津製作所製 HIC−20Asuper
カラム:島津製作所製 Shim−packIC−SA2(250mm×4.6mmID)
検出器:電気伝導度検出器(サプレッサ)
溶離液:4.0mM炭酸水素ナトリウム/1.0mM炭酸ナトリウム水溶液
流速:1.0ml/分
注入量:50マイクロリットル
カラム温度:30℃。
試料中に過酸化水素水を添加して試料中に含まれる硫化物イオンの酸化を行った後に上記分析により硫酸イオンとして定量し、試料中の硫化物イオン量を算出した。ここで算出した硫化物イオン量を未反応のスルフィド化剤量とし、仕込んだスルフィド化剤量との割合から試料におけるスルフィド化剤の反応消費率を算出した。
<環式ポリフェニレンスルフィドの分析>
環式ポリフェニレンスルフィド化合物の定性定量分析は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて実施した。HPLCの測定条件を以下に示す。
装置:島津株式会社製 LC−10Avpシリーズ
カラム:関東化学社製 Mightysil RP−18 GP150−4.6(5μm)
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(波長270nm)
なお、HPLCで成分分割した各成分の構造決定は、液体クロマトグラフ質量分析(LC―MS)による分析と、分取液体クロマトグラフ(分取LC)での分取物のマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−MS)、核磁気共鳴分光法(NMR)による分析、および赤外分光測定(IR測定)により行った。これにより、繰り返し単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが、本条件のHPLC測定により定性定量できることを確認した。
環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は、反応混合物中のイオウ成分の全てが環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合の環式ポリフェニレンスルフィドの生成量に対する、環式ポリフェニレンスルフィドの製造で実際に生成した環式ポリフェニレンスルフィド量の比率のことである。環式ポリフェニレンスルフィドの生成率が100%であれば、用いた反応混合物中のイオウ成分の全てが環式ポリフェニレンスルフィドに転化したことを意味する。
<分子量測定>
ポリフェニレンスルフィドの分子量はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC−7110
カラム名:Shodex UT−806M
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (スラリー状:約0.2重量%)。
[参考例1]
ここでは線状ポリフェニレンスルフィドの調製例を示す。
撹拌機を具備したオートクレーブに水硫化ナトリウムの48重量%水溶液を23.36g(水硫化ナトリウム11.21g(0.200モル))、水酸化ナトリウムの48重量%水溶液を17.50g(水酸化ナトリウム8.40g(0.210モル))、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)500mL、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)30.00g(0.204モル)を仕込んだ。ここでの反応混合物中のスルフィド化剤のイオウ原子1モルに対する有機極性溶媒は2.5リットルであった。反応容器を室温・常圧下にて窒素ガス下に密封した後、400rpmで撹拌しながら、室温から200℃まで25分かけて昇温した。次いで、250℃まで35分かけて昇温した。250℃で2時間保持した後、室温近傍まで急冷した。
得られた内容物をガスクロマトグラフィーにより分析を行なった結果、モノマーのp−DCBの転化率は95%であることが分かった。
ADVANTEC社製の万能型タンク付フィルターホルダーKST−90−UH(有効濾過面積約45.3平行センチメートル)に、直径90mm、細孔直径10μmのメンブランフィルター(PTFE製)を設置し、得られた内容物約500gをタンクに仕込んだ。タンクを密閉後、タンク内を窒素にて0.2MPaに加圧し、ケーク約85gを回収した。
得られたケークを約400gのイオン交換水で希釈したのちに平均目開き10〜16マイクロメートルのガラスフィルターで濾過した。フィルターオン成分を約400gのイオン交換水に分散させ、70℃で15分攪拌し、再度前記同様の濾過を行う操作を計3回行い、白色固体を得た。これを100℃で一晩真空乾燥し、乾燥固体約15gを得た。
分析の結果、赤外分光分析における吸収スペクトルよりこれはポリフェニレンスルフィドであり、重量平均分子量は11500であった。ここで得られたポリフェニレンスルフィドを、以下、PPS−1と称する。
[実施例1]
ここでは、塩化亜鉛(II)を用いて環式ポリフェニレンスルフィドの合成を行った例を示す。
<工程1>
撹拌機を具備したオートクレーブに水硫化ナトリウムの48重量%水溶液を0.84g(水硫化ナトリウム0.40g(0.0072モル))、水酸化ナトリウムの48重量%水溶液を1.80g(水酸化ナトリウム0.86g(0.022モル))、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)120mL、PPS−1を4.41g(0.041モル)を仕込んだ。ここでの反応混合物中のイオウ成分1モルに対する有機極性溶媒は2.5リットルであった。また、反応混合物中のイオウ成分1モルあたりのアリーレン単位は0.85モルであった。
反応容器を室温・常圧下にて窒素ガス下に密封した後、400rpmで撹拌しながら、室温から200℃まで25分かけて昇温した。次いで、230℃まで35分かけて昇温した。230℃で4時間保持した後、室温近傍まで急冷した。
なお、別途同様に反応を行って得られた内容物をイオンクロマトグラフィーで分析した結果、水硫化ナトリウムの反応消費率は90%であった。
<工程2>
反応容器にp−DCBを1.20g(0.0082モル)、塩化亜鉛(II)を0.98g(0.0072モル)追加し、反応容器を室温・常圧下にて窒素ガス下に密封した。ここでの反応混合物中のイオウ成分と塩化亜鉛とのモル比は1:0.15であり、また、反応混合物中のイオウ成分1モルあたりのアリーレン単位は1.02モルであった。400rpmで撹拌しながら、室温から200℃まで25分かけて昇温し、次いで、250℃まで35分かけて昇温した。250℃で4時間保持した後、室温近傍まで急冷した。
得られた内容物をGCおよびHPLCにより分析を行なった結果、モノマーのp−DCBの転化率は92%であり、環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は25%であることが分かった。
[比較例1]
ここでは、塩化亜鉛(II)を追加しないこと以外は、実施例1と同様にして反応を行い、内容物を回収した。
得られた内容物をGCおよびHPLCにより分析を行なった結果、モノマーのp−DCBの転化率は90%であり、環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は16%であることが分かった。
実施例1と比較例1を比較することで、塩化亜鉛を添加して反応を行うことで、環式ポリフェニレンスルフィドの収率が向上することがわかった。
[比較例2]
ここでは、塩化亜鉛(II)の代わりに塩化銅(II)を0.97g(0.0072モル)追加し、工程2の反応時間を6時間にした以外は、実施例1と同様にして反応を行い、内容物を回収した。
得られた内容物をGCおよびHPLCにより分析を行なった結果、モノマーのp−DCBの転化率は88%であり、環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は15%であることが分かった。
比較例1と比較例2を比較することで、塩化銅(II)を添加して反応を行った場合には、環式ポリフェニレンスルフィドの収率は向上しないことがわかった。
[比較例3]
ここでは、塩化亜鉛(II)の代わりに塩化鉄(II)を0.91g(0.0072モル)追加した以外は、実施例1と同様にして反応を行い、内容物を回収した。
得られた内容物をGCおよびHPLCにより分析を行なった結果、モノマーのp−DCBの転化率は93%であり、環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は14%であることが分かった。
比較例1と比較例3を比較することで、塩化鉄(II)を添加して反応を行った場合には、環式ポリフェニレンスルフィドの収率は向上しないことがわかった。

Claims (7)

  1. 少なくともスルフィド化剤(a)、ジハロゲン化芳香族化合物(b)、周期表第12族の金属を含む化合物(c)、反応混合物(A)中のイオウ成分1モルに対して1.25リットル以上50リットル以下の有機極性溶媒(d)を原料成分とする反応混合物(A)を加熱して反応させる環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  2. 前記反応混合物(A)は、さらに原料成分として線状ポリアリーレンスルフィド(e)を含む請求項1に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  3. 前記周期表第12族の金属を含む化合物(c)が、亜鉛を含む化合物である請求項1または2に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  4. 前記反応混合物(A)中のイオウ成分と周期表第12族の金属を含む化合物(c)とのモル比が1:0.001以上1:0.5以下の範囲である請求項1から3のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  5. 以下の工程1および工程2を経る請求項1から4のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
    工程1:スルフィド化剤(a)、有機極性溶媒(d)と、ジハロゲン化芳香族化合物(b)および/または線状ポリアリーレンスルフィド(e)、を原料成分とする反応混合物(A’)であって、反応混合物(A’)中のイオウ成分1モルあたりのアリーレン単位が0.5モル以上0.98モル以下である前記反応混合物(A’)を加熱して反応させる工程。
    工程2:前記工程1で得られた反応混合物に、周期表第12族の金属を含む化合物(c)および、反応混合物(A)中のイオウ成分1モルあたりのアリーレン単位が0.98モル超1.5モル以下となるようにジハロゲン化芳香族化合物(b)を添加して反応混合物(A)とし、加熱して反応させる工程。
  6. 前記工程1において、スルフィド化剤(a)の50%以上が消費されるまで反応させる請求項5に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  7. 前記工程1を実質的にジハロゲン化芳香族化合物(b)の非存在下で行う請求項5または6に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
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