JP2019048939A - 環式ポリアリーレンスルフィドおよびポリアリーレンスルフィドの製造方法 - Google Patents

環式ポリアリーレンスルフィドおよびポリアリーレンスルフィドの製造方法 Download PDF

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華菜子 山本
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Abstract

【課題】550℃で焼成した際の残渣により求められる灰分量が290ppm未満の環式ポリアリーレンスルフィドを得る。【解決手段】少なくとも環式ポリアリーレンスルフィド及び溶媒(a)を含み、環式ポリアリーレンスルフィド含有率が3重量%以上30重量%以下の混合物(i)を120℃を越え200℃以下で加熱処理した後、混合物(i)に溶媒(a)とは異なる溶媒(b)を加えて環式ポリアリーレンスルフィドが析出した混合物(ii)とし、混合物(ii)を50℃を越え120℃以下の温度で固液分離する環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は環式ポリアリーレンスルフィドおよびポリアリーレンスルフィドの製造方法に関する。より詳しくは簡易な方法で高純度な環式ポリアリーレンスルフィドを製造し、得られた環式ポリアリーレンスルフィドを用いて工業的に有用なポリアリーレンスルフィドを製造する方法に関する。
芳香族環式化合物はその環式であることから生じる特性に基づく高機能材料や機能材料への応用展開可能性、例えば包接能を有する化合物としての特性や、開環重合による高分子量線状高分子の合成のための有効なモノマーとしての活用等、その構造に由来する特異性で近年注目を集めている。環式ポリアリーレンスルフィド(以下、ポリアリーレンスルフィドをPASと略する場合もある)も芳香族環式化合物の範疇に属し、上記同様に注目に値する化合物である。
環式PASの混合物を製造する方法として、スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物とを有機極性溶媒中で接触させて環式PASを製造する方法であって、スルフィド化剤のイオウ原子1モルに対して有機極性溶媒を1.25リットル以上用いて、反応混合物を常圧における還流温度を超えて加熱する方法が開示されている(例えば特許文献1参照)。この方法では、反応生成物から目的物の環式PASを単離する手法として次の方法が開示されている。すなわち、反応により得られた混合物中に存在する環式PASと線状PASとを含む混合物としてPAS混合物を回収した後に、環式PASをクロロホルムで抽出した後、この抽出液をメタノールに再沈殿する環式PASの回収方法が開示されている。(例えば特許文献1、2及び3参照)
別の方法として、ポリフェニレンスルフィド(以下、ポリフェニレンスルフィドをPPSと略する場合もある)を塩化メチレンで抽出して得られた抽出液の飽和溶液をメタノールに再沈殿することで沈殿物として環式フェニレンスルフィドオリゴマー混合物を得る方法(例えば特許文献4参照)等が開示されている。
また、4−ブロモチオフェノールの銅塩をキノリン中の超希釈条件下で加熱することで得られた環式フェニレンスルフィドオリゴマーを含む反応液から溶媒を留去することで生成物の濃厚溶液を得た後、これを含水メタノールに滴下、次いで塩酸水溶液及び蒸留水で精製することで固形分を回収し、この固形分のクロロホルム可溶分をメタノールを用いて再沈殿回収し、酢酸エチルで線状オリゴマーを溶解除去することで環式フェニレンスルフィドオリゴマーを得る方法(例えば特許文献5参照)等も開示されている。
上記以外の方法で環式PASを回収する方法としては、架橋タイプのポリフェニレンスルフィド樹脂からクロロホルムを抽出溶媒としてソックスレー抽出を行い、この抽出液を室温まで冷却して再結晶を行うことで、白色析出物として純度99.9%のシクロヘキサ(p−フェニレンスルフィド)を得る方法が開示されている(例えば特許文献6参照)。
さらに、上記のいずれとも異なる方法として、少なくとも環式PAS及び有機溶媒を含む混合物に、その有機溶媒とは異なる溶媒を加えることで、環式PASを固形分として回収する晶析法(例えば特許文献7参照)や、上記晶析法において、溶媒をスプレー状に噴霧して添加する方法(例えば特許文献8参照)が開示されている。
少なくとも環式PAS及び有機溶媒を含む混合物を得る方法としては、スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物とを有機極性溶媒中で接触させて得られる環式PAS、線状PAS及び有機極性溶媒等からなる反応混合物について、線状PASが溶解し、環式PASが溶解しない温度で固液分離を行うことで、少なくとも環式PAS及び有機溶媒を含む混合物を得る方法が開示されている(例えば特許文献9参照)。
一方で、PASの製造方法として、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機アミド溶媒中で硫化ナトリウムなどのアルカリ金属硫化物とp−ジクロロベンゼンなどのポリハロ芳香族化合物を反応させる方法が提案されており、この方法はポリアリーレンスルフィドの工業的製造方法として幅広く利用されている(特許文献10参照)。また、含有不純物量の少ないPASの製造方法として、環式ポリアリーレンスルフィドを用いる方法が挙げられ、環式PASを溶融重合させて高分子量化させる方法が挙げられる(例えば特許文献3参照)。
特開2009−030012号公報 特開2007−231255号公報 国際公開第2007/034800号 特開平05−163349号公報 米国特許第5869599号明細書 特開平10−077408号公報 特開2011−132498号公報 特開2014−108921号公報 特開2011−149014号公報 特公昭52−12240号公報
特許文献1から5に示される環式PASの製造方法は、いずれもクロロホルムや塩化メチレンといった環境負荷の大きい塩素系溶媒を用いた抽出と大過剰のメタノールに再沈殿することを必須要件とした方法であり、アルカリ金属含有量などの不純物量は低いものの、環式PAS回収にあたり大量の混合溶媒廃液が発生し、操作が煩雑で工程が多く、工業プロセス面で課題を有する方法であった。 また、特許文献6に示される再結晶法は、比較的結晶性の高いシクロヘキサ(p−フェニレンスルフィド)の回収効率は高いものの、他の繰り返し単位数の環式PPSは回収困難で、生産性に劣る方法であった。
また、特許文献7や8に示される晶析法による環式PASの回収方法は、上記の特許文献1から6の方法と比較して、使用する溶媒の種類と量を低減できるためプロセス性に優れる方法であるが、さらなる生産性と得られる環式PASの純度の向上が望まれていた。
特許文献9では少なくとも環式PAS及び有機溶媒を含む混合物を得る方法が開示されている。その混合物から環式PASを高純度で効率よく回収する方法については、当該混合物を第2の溶剤と接触させて環式PASを析出させ、公知の固液分離法を用いて固体状の環式PASを回収することが可能である、という程度の説明にとどまり、アルカリ金属や重金属等の無機不純物の総量を示す灰分量についての開示もなく、環式PASを高純度で回収するための詳細な方法については何ら開示されていない。
なお、環式ポリアリーレンスルフィドから得られるポリアリーレンスルフィドの灰分量は、通常、環式ポリアリーレンスルフィドの灰分量に依存する。また、環式ポリアリーレンスルフィドを溶融重合して得られるポリアリーレンスルフィドでは、残存した不純物を洗浄することは困難であり、簡易な方法で灰分量の少ないポリアリーレンスルフィドを得るためには、灰分量の少ない環式ポリアリーレンスルフィドを用いることが好ましい。
そこで、本発明は上記した従来技術の課題を解決し、簡易な方法で効率よく灰分量が少ない、高純度な環式ポリアリーレンスルフィドとポリアリーレンスルフィドの製造方法を提供することを課題とする。
本発明は上記課題を解決するため以下の特徴を有する環式ポリアリーレンスルフィドおよびポリアリ−レンスルフィドの製造方法を提供する。
[1]少なくとも環式ポリアリーレンスルフィド及び溶媒(a)を含み、環式ポリアリーレンスルフィド含有率が3重量%以上30重量%以下の混合物(i)を120℃を越え200℃以下で加熱処理した後、混合物(i)に溶媒(a)とは異なる溶媒(b)を加えて環式ポリアリーレンスルフィドが析出した混合物(ii)とし、混合物(ii)を50℃を越え120℃以下の温度で固液分離する環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[2]少なくとも環式ポリアリーレンスルフィドおよび溶媒(a)を含み環式ポリアリーレンスルフィド含有率が1重量%以上3重量%未満の混合物(iii)から減圧下で溶媒(a)を留去し、混合物(i)を得、次いで前記加熱処理および固液分離を行う[1]に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[3]前記混合物(i)に前記溶媒(b)を加える温度が50℃以上150℃以下である[1]または[2]のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[4]前記混合物(i)に前記溶媒(b)を加える温度が70℃以上120℃以下である[1]から[3]のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[5]前記混合物(i)に加える前記溶媒(b)の量が前記溶媒(a)と溶媒(b)の合計量に対して5重量%以上50重量%以下である[1]から[4]のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[6]前記混合物(i)を120℃を越え200℃以下で加熱処理を行う時間が30分以上300分以下である[1]から[5]のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[7][1]から[6]のいずれかに記載の方法で環式ポリアリーレンスルフィドを製造し、次いでその環式ポリアリーレンスルフィドを溶媒を用いて洗浄する環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[8]得られる環式ポリアリーレンスルフィドの、550℃で焼成した際の残渣により求められる灰分量が290ppm未満である[1]から[7]のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[9][1]から[8]のいずれかに記載の製造方法で環式ポリアリーレンスルフィドを製造し、次いで環式ポリアリーレンスルフィドを加熱してポリアリーレンスルフィドを得るポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[10]得られるポリアリーレンスルフィドの、550℃で焼成した際の残渣により求められる灰分量が290ppm未満である、[9]に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
本発明によれば、混合物(i)を加熱処理する工程を加えることで灰分量が少なく高純度な環式ポリアリーレンスルフィドを製造する方法を提供することができる。また、このような利点を有する環式ポリアリーレンスルフィドを加熱することで、高分子量かつ高純度であって工業的に有用なポリアリーレンスルフィドの製造方法を提供することができる。
より詳しくは、少なくとも環式ポリアリーレンスルフィドと溶媒(a)を含み環式ポリアリーレンスルフィド含有率が3重量%以上30重量%以下の混合物(i)を120℃を越え200℃以下で加熱処理した後に溶媒(a)とは異なる溶媒(b)を加えて環式ポリアリーレンスルフィドが析出した混合物(ii)とし、混合物(ii)を固液分離、洗浄することで、簡便かつ効率的に高純度な環式ポリアリーレンスルフィドを製造する。得られた環式ポリアリーレンスルフィドを加熱することで、高分子量で灰分量が少ない、工業的に有用なポリアリーレンスルフィドを製造する方法を提供することができる。
以下に、本発明実施の形態を説明する。
(1)環式ポリアリ−レンスルフィド
本発明における環式ポリアリ−レンスルフィドは、式−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする環式化合物であり、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する下記一般式(A)のごとき化合物である。
(ここで、Arはアリーレン基、mは4〜50で表される整数である。)
ここでArはアリーレン基であり、下記の式(B)から式(M)等であらわされる単位を例示できるが、なかでも式(B)から式(M)が好ましく、式(B)及び式(C)がより好ましく、式(B)が特に好ましい。
(ただし、式中のR1、R2は水素、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。)
なお、環式PASにおいては上記式(B)から式(M)等の繰り返し単位をランダムに含んでも良いし、ブロックで含んでも良く、それらの混合物のいずれであってもよい。これらの代表的なものとして、環式ポリフェニレンスルフィド、環式ポリフェニレンスルフィドスルホン、環式ポリフェニレンスルフィドケトン、これらが含まれる環式ランダム共重合体、環式ブロック共重合体及びそれらの混合物が挙げられる。特に好ましい環式PASとしては、主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
を80モル%以上、特に90モル%以上含有する環式PPSが挙げられる。
環式PASの上記(A)式中の繰り返し数mは4から50であり、4から25がより好ましく、4から20がさらに好ましい。mがこの様な範囲の環式PASは加熱した際に流動化する温度が低くなる傾向にあるため、環式PASを成形加工する際や、他の樹脂と溶融混練する際に加工温度を低くできる観点で有利となる。また、後述するように環式PASを高重合度体への転化する場合には、環式PASが溶融解する温度以上に加熱して行うことが好ましいが、mが大きくなると環式PASの溶融解温度が高くなる傾向にあるため、環式PASの高重合度体への転化をより低い温度で行うことができるようになる観点でmを上記範囲にすることは有利となる。また、本発明の環式PASは、単一の繰り返し数を有する単独化合物、異なる繰り返し数を有する環式PASの混合物のいずれでも良いが、異なる繰り返し数を有する環式PASの混合物の方が単一の繰り返し数を有する単独化合物よりも溶融解温度が低く、融解に要する熱量も小さくなる傾向があるため好ましい。
また、本発明の環式PASは上記式(A)で表される環式PASのみで構成されることが好ましい。すなわち環式PAS以外の不純物を含まないことが望ましく、不純物含有量が少ないほど、言い換えれば純度が高いほど環式PASとしての特性が発現されるようになる。ただし、高純度の環式PASを得るためにはより多大な労力とエネルギ−を要する傾向があるため、環式PASを用いる用途によっては不純物の含有が許容される場合もある。よって本発明の環式PASは、ある程度の不純物を含んでいてもよく、好ましくは環式PASを50重量%以上含むもの、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上含むものを言う。ここで、本発明における不純物は環式PAS以外の成分を指し、特に限定されないが、例えば、有機物として、線状PAS、環式PASの製造原料、環式PASの製造または回収時に使用した溶媒、またはそれらが環式PAS製造や回収の過程で変性して生じた化合物などが挙げられ、無機物としては、塩や金属といった物質などが挙げられる。
なお、ここで、環式PAS混合物における環式PASの総量に対する繰り返し数mの異なる環式PAS含有率は、環式PAS混合物をUV検出器を具備した高速液体クロマトグラフィーで成分分割した際に環式PASに帰属される全ピーク面積に対する、所望するm数を有する環式PAS単体に帰属されるピーク面積の割合として求めることができる。なお、この高速液体クロマトグラフィーで成分分割された各ピークの定性は、各ピークを分取液体クロマトグラフィーで分取し、赤外分光分析における吸収スペクトルや質量分析を行うことで可能である。
(2)溶媒(a)
本発明における溶媒(a)は、環式PASの製造を行うにあたり、環式PASを溶解する溶媒のことである。本発明における溶媒(a)は、混合物(i)中に存在する環式PASの50重量%以上を溶解する溶解力を有することが好ましく、溶媒の溶解力は、温度、圧力、使用量、環式PASの種類等様々な要因が影響するため一意的には決まらない。それゆえ溶媒(a)の種類にも特に制限は無い。ただし、より効率よくかつ簡易な操作で環式PASの回収を実施する観点では、より少量の溶媒に多量の環式PASを溶解できることが好ましい。
また、一般に溶媒の溶解力は溶解操作に処する温度の上昇に伴って増大する傾向が見られる一方で、温度上昇により溶媒の蒸気圧が上昇すると、溶媒の大気中への揮散が懸念される。よって、高温条件下で溶解操作を行う際には、同時に密閉条件下での溶解操作が可能で加圧にも耐える容器が必要となり、高コストな設備を用いる必要が生じる。したがって、より簡易な設備を用いて溶解操作を行うためには、溶媒の蒸気圧が低い条件で溶解操作を行うことが好ましい。この蒸気圧と関連する指標の1つが溶媒の沸点であり、沸点の高い溶媒、例えば非プロトン性極性溶媒は、本発明において好ましい選択である。なお、溶媒(a)は後述する溶媒(b)すなわちプロトン性極性溶媒と混和することが望ましいが、非プロトン性極性溶媒は一般にプロトン性極性溶媒と混和しやすいため、この観点からも好ましいと言える。
また、溶媒(a)は、PAS成分の分解や架橋等好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものが好ましい。
以上の観点より、本発明における好ましい溶媒(a)としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン等のN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタム、ε−カプロラクタム等のカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等に代表される非プロトン性極性溶媒が例示でき、中でも安定性に優れ取り扱いが容易なアミド溶媒のN−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドがより好ましく、N−メチル−2−ピロリドンがさらに好ましい。
(3)溶媒(b)
本発明で好ましく用いる溶媒(b)は、溶媒(a)とは異なる溶媒が好ましく、環式PAS及び溶媒(a)を含む混合物(i)に加えることで混合物(i)中の環式PASの50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、最も好ましくは95重量%以上を固形分として析出させ、環式PASを固液分離によって回収可能な状態にする溶媒が好ましい。溶媒(b)は、溶媒(a)と混和することが好ましく、かつ、溶媒(a)よりも環式PASの溶解性が低いことが好ましい。
溶媒(b)が溶媒(a)と混和しない場合、または、溶媒(b)の環式PASの溶解性が溶媒(a)よりも高い場合、後述する混合物(i)に溶媒(b)を加えた際に環式PASが十分に析出せず、環式PASの回収率が低下する傾向がある。この様な性質を有する溶媒は一般に極性の高い溶媒が該当し、溶媒(a)の種類により好ましい溶媒(b)は異なるので限定はできないが、例えば、水や、メタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、イソプロパノ−ル、ブタノ−ル、ヘキサノ−ルに代表されるアルコ−ル類、アセトン、メチルエチルケトンに代表されるケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルに代表される酢酸エステル類が例示できる。中でも、プロトン性極性溶媒である水やアルコール類は極性が特に高く環式PASの溶解性が低いため好適に利用でき、入手性、経済性、取り扱い性の容易さの観点から、水、メタノール、エタノールが好ましく、水が最も好ましい。
(4)環式ポリアリーレンスルフィドの回収方法
(4−1)混合物(i)
本発明における混合物(i)は、少なくとも環式PAS及び溶媒(a)を含む混合物であり、環式PAS含有率が3重量%以上30重量%以下であり、溶媒(b)を加える直前の段階において、この混合物中に存在する環式PASのうち50重量%以上が溶解していることが好ましい。
混合物(i)中の環式PAS含有率は、高いほど回収できる環式PASの収量が増大して生産性を高めることができる。よって、混合物(i)における環式PAS含有率の下限としては、3重量%以上が好ましく、4重量%以上がより好ましく、5重量%以上がよりいっそう好ましい。一方、環式PASは各種溶媒に対する溶解性が比較的低いため、含有率を高くし過ぎると不溶成分が生じて不均一な性状となり、回収時に局所的な組成の偏りが生じて環式PASの品質が低下する傾向がある。よって、混合物(i)における環式PASの含有率の上限としては、30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましく、10重量%以下がよりいっそう好ましい。混合物(i)中の環式PAS含有率が上記の好ましい範囲にある場合、環式PASを効率よく高純度で回収することが可能である。ここで、環式PAS含有率とは、環式PASの重量と溶媒(a)の重量の総和に対する環式PASの重量分率である。
混合物(i)中に存在する環式PASの溶解量が50重量%未満である場合、析出した環式PAS中に不純物が取り込まれることがあるが、この後の工程ではこの不純物を除去することが困難であるため、得られる環式PASの純度が低下する傾向がある。
なお、混合物(i)中で溶解状態にある環式PAS量が多いほど、回収した環式PASに含まれる不純物量を減らすことが可能であるため、混合物(i)中の環式PASの溶解量の好ましい下限としては、70重量%以上が例示でき、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がさらに好ましく、95重量%以上がよりいっそう好ましい。一方で、混合物(i)中の環式PASの溶解量に上限はなく、混合物(i)中に存在する全ての環式PASが溶解状態にある溶解量100重量%が最も好ましい。混合物(i)中で溶媒(a)に溶解している環式PAS量が上記の好ましい範囲にある場合、より高純度で環式PASを回収することが可能である。
ここで、本発明における混合物(i)中に溶解している環式PAS量を定量する方法としては、混合物(i)を所定の温度に加熱し、孔径10μmのメンブレンフィルターで固液分離して不溶成分を回収して乾燥させ、その重量を求めることで定量する。
混合物(i)は環式PAS及び有機溶媒(a)のみから成ることが好ましいが、本発明の本質を損なわない範囲で第3成分を含むことができる。ただし、第3成分の含有量が増大すると、本回収方法により単離回収される環式PASの純度が低下する傾向にあるため、前述した好ましい純度の環式PASを得るためには第3成分の含有量は少ないことが望まれる。
(4−2)混合物(i)の加熱処理
本発明の環式PASの製造においては、混合物(i)の加熱処理が必要である。これによって、(4−3)記載の混合物(ii)を得る際に固形分として析出した環式PAS内部への不純物の取り込みが低減する傾向にある。これは、混合物(i)を加熱処理することで、環式PASの溶解性が向上し、系内が均一な状態、すなわち目的物である環式PASと不純物が共に溶解した状態で(4−3)記載の溶媒(b)の添加を行えるため、溶媒(b)の添加によって環式PASが固形分として析出する際に、不純物を取り込みにくくなると考えられる。
加熱温度は(2)項で述べた通り、用いる溶媒(a)によって異なるが、環式PASの溶解性が高い、120℃を越える温度であり、125℃以上がより好ましく、130℃以上がよりいっそう好ましい。一方、上限温度については、用いる溶媒(a)の常圧における沸点以下であることが好ましい。沸点を超え溶媒が留去された場合、環式PAS含有率が高くなる。環式PASは各種溶媒に対する溶解性が比較的低いため、不溶成分が生じて不均一な性状となり、環式PASの回収時に局所的な組成の偏りが生じて品質が低下する傾向がある。よって、本発明の好ましい形態においては200℃以下であり、180℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましい。
また、加熱処理においては非酸化性雰囲気下で行うことが好ましい。このような条件では、副生成物の生成を低減でき環式PASの品質低下を抑制できる傾向にある。ここで非酸化性雰囲気とは、混合物(i)が接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、より好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性及び取り扱いの容易さの面からは窒素雰囲気下が好ましい。
加熱処理においては溶媒(a)を留去することなく行うことが好ましい。溶媒(a)が留去された場合、(4−3)に記載の混合物(i)に溶媒(b)を加えた後の混合物(ii)中の溶媒(b)量が増加する。溶媒(b)量の増加に伴い、不純物も混合物(ii)とともに析出し、純度の低下に繋がる傾向がある。よって、密閉状態で加熱処理を行い、溶媒(a)の留去が生じないようにする必要がある。
加熱処理は所定の温度範囲内で一定時間以上加熱することが好ましく、加熱時間は30分以上300分以下であることが好ましい。加熱時間を30分以上とすることで、環式PASが溶解し系内が均一な状態で(4−3)記載の溶媒(b)の添加を行うことが可能であり、環式PASの純度が向上する傾向にある。加熱時間の上限値について一意的に決めることはできないが、生産性の向上からも短時間であることが好ましく、本発明の好ましい形態においては、300分以下が例示でき、200分以下が好ましく、100分以下が更に好ましい。
混合物(i)加熱時の条件を上記の好ましい範囲とすることで、より簡便な操作で純度よく環式PASを回収できる傾向がある。なお、混合物(i)を加熱処理するにあたり、攪拌や震蕩等の操作を施すことはより均一な状態を保つ観点で好ましいと言える。
(4−3)混合物(ii)
本発明における混合物(ii)は、前述の加熱処理した混合物(i)に溶媒(a)とは異なる溶媒(b)を加えて、環式PASが固形分として析出した混合物のことである。
溶媒(b)を加える下限温度は、温度が低いほど溶媒(b)を加えた際に不純物を取り込みやすい粗大な粒子を形成する傾向が高まるため、このような操作上の不都合を回避する観点で50℃を越える温度が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上がよりいっそう好ましく、90℃以上がさらに好ましい。一方、上限温度としては、系内の組成が変化しないように溶媒(a)と溶媒(b)の常圧における沸点以下が好ましいが、本発明実施の好ましい形態においては、150℃以下が好ましく例示でき、120℃以下がより好ましい。このような好ましい温度範囲で混合物(i)に溶媒(b)を加えることで、より高純度な環式PASを得ることができる。
ここで、混合物(i)に加える溶媒(b)の量は、溶媒(a)の量と溶媒(b)の量の合計に対して5重量%以上50重量%以下であることが好ましい。本発明における溶媒(b)は、溶媒(a)よりも環式PASに対する溶解力が低いため、混合物(i)に加える溶媒(b)量が多いほど、得られる環式PASの回収率が高くなる傾向がある。よって、混合物(i)に加える溶媒(b)の量の下限としては、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、15重量%以上がさらに好ましい。混合物(i)に加える溶媒(b)の量を上記の好ましい範囲とすることで、より効率よく環式PASを固形分として回収することが可能となる。一方で、混合物(i)に加える溶媒(b)の量の好ましい上限としては、50重量%以下が例示でき、40重量%以下がより好ましく、35重量%以下がさらに好ましい。混合物(i)に加える溶媒(b)の量を上記の好ましい範囲とすることで、溶媒回収にかかるコストを低減できるのみならず、回収操作を行う反応器をより小型化でき、設備費の低減や操作性の向上も期待できる。
また、溶媒(b)を加える際の雰囲気は非酸化性雰囲気下が好ましく、環式PAS間での架橋反応や分解反応等の好ましくない副反応の生成を抑制できる傾向にある。なお、ここでの非酸化性雰囲気下とは溶媒留去時の気相における酸素濃度が所定の範囲にあることをいい、上記(4−2)における非酸化性雰囲気の酸素濃度が好ましい範囲として例示できる。
本発明では混合物(i)中に含まれる環式PASの50重量%以上を析出させて固形分として回収するが、上記した好ましい溶媒(b)の使用量の範囲では環式PASの80重量%以上を固形分として回収できる傾向があり、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、よりいっそう好ましくは98重量%以上を回収することも可能である。
なお、環式PASの回収方法として従来採用されてきた再沈殿法では、環式PASの少なくとも一部が溶解した溶液もしくはスラリーを環式PASの貧溶媒に滴下する方法で環式PASを回収するが、一般にこの方法で用いる貧溶媒の使用量は、環式PAS溶液またはスラリーに対して大過剰であるため回収操作において大量の廃液が発生する課題があった。また再沈殿法において、貧溶媒の使用量を低減し、前述した本発明における好ましい溶媒使用量の例示範囲で再沈殿操作を実施した場合、不純物を取り込んだ粗大な粒子が発生しやすく、得られる環式PASの純度が低下しやすい、反応容器に固形分が固着する等様々な不都合が生じる傾向があった。これに対し本発明の環式PASの回収方法はこれら課題を改善できる点でも優れた方法と言える。
なお、混合物(ii)に溶媒(b)を加える方法に特に制限はないが、混合物(ii)を攪拌しながら加えることが好ましく、不純物を取り込みやすい粗大な粒子の形成を回避する観点から、溶媒(b)を小さな液滴の状態で滴下するか、もしくは噴霧して加えることが好ましい。
(4−4)混合物(iii)
本発明における混合物(iii)は、少なくとも環式PAS及び溶媒(a)を含み、環式PAS含有率が1重量%以上3重量%未満の混合物であることが好ましく、減圧下で溶媒を留去することで混合物(i)を得る混合物のことである。
混合物(iii)において環式PAS含有率が3重量%を越える場合、不純物が多くなり環式PASの純度低下に繋がる場合があるため、3重量%未満が好ましい。一方で、下限値を下回る場合、溶媒留去に長時間を有し、生産性の低下に繋がるため、1重量%以上が好ましい。
溶媒留去の際の雰囲気は、非酸化性雰囲気下が好ましい。このような条件により、環式PAS間での架橋反応や分解反応等の好ましくない副反応の生成を抑制できる傾向にある。なお、ここでの非酸化性雰囲気下とは溶媒留去時の気相における酸素濃度が所定の範囲にあることをいい、上記(4−2)における非酸化性雰囲気の酸素濃度が好ましい範囲として例示できる。
溶媒を留去する際の加熱温度としては、溶媒の留去ができ、環式PASが劣化しない温度で行うことが好ましく、100℃以上200℃以下が好ましい。このような温度範囲であれば、本発明の最も好ましい溶媒であるN−メチル−2−ピロリドンが効率よく留去できる。よって、加熱温度の下限値としては100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、120℃以上がよりいっそう好ましい。上限値としては200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましく、160℃以下がよりいっそう好ましい。
また、溶媒留去では減圧条件下で行うことが好ましい。これにより、環式PAS間での架橋反応や分解反応等の好ましくない副反応の生成を抑制できる傾向にあり、短時間で溶媒留去することができ、生産性の向上にも繋がる。減圧条件下とは反応を行う系内が大気圧よりも低いことを指し、上限としては50kPa以下が好ましく、20kPa以下がより好ましく、10kPa以下がよりいっそう好ましい。下限としては、0.1kPa以上が例示でき、0.2kPa以上がより好ましい。
混合物(iii)から溶媒を留去することで、混合物(i)を得ることができる。溶媒留去後の環式PAS含有率としては、全重量に対して3重量%以上30重量%以下である。上記(4−1)に記載のとおり環式PAS含有率は、高いほど回収できる環式PASの収量が増大するが、含有率を高くしすぎると不溶成分が生じて不均一な性状となり、回収後の環式PASの品質が低下する傾向がある。よって、3重量%以上が好ましく、4重量%以上がより好ましく、5重量%以上がよりいっそう好ましい。一方で上限値に関しては、30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましく、10重量%以下がよりいっそう好ましい。
また、混合物(iii)の製造方法としては、例えば、有機極性溶媒中で少なくともスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物を接触させて反応させて得られる反応混合物を、有機極性溶媒の沸点以下の温度領域で固液分離することで混合物を得る方法である。詳細な製造条件に関しては、公開特許公報2009−149863などに開示されている。
(4−5)環式PASの固液分離
本発明では、混合物(ii)を50℃を越え120℃以下の温度で固液分離して環式ポリアリーレンスルフィドを固形分として回収率50重量%以上で回収することが好ましい。
ここで、固液分離温度は50℃を超え120℃以下である必要がある。固液分離温度が50℃以下の場合、環式PASだけでなく不純物(主に低分子量の線状PAS)も同様に析出する傾向がある。また、これらの不純物の一部は、細かい粒子の状態で液中に分散して存在する場合があり、例えば固液分離の手法に濾過を採用した際には濾過性悪化の原因となり環式PASの回収率の低下に繋がると考えられる。よって濾過温度の下限値としては50℃を越える温度が好ましく、70℃以上がより好ましく、90℃以上がよりいっそう好ましい。一方で上限値に関しては、固液分離温度が120℃を越える場合、環式PASが十分に析出しないため、固液分離時に環式PASをロスする傾向がある。また、高温では溶媒が揮散して液組成が変化する傾向があるため、密閉下で固液分離するには特殊な高圧対応の高価な設備を用意する必要があり、設備コストが増大し経済的に環式PASを回収することが難しい。よって濾過温度の上限値としては、120℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましい。
また、固液分離時は非酸化性雰囲気下で行うことが好ましく、環式PAS間での架橋反応や分解反応等の好ましくない副反応の生成を抑制できる傾向にある。なお、ここでの非酸化性雰囲気下とは溶媒留去時の気相における酸素濃度が所定の範囲にあることをいい、上記(4−2)における非酸化性雰囲気の酸素濃度が好ましい範囲として例示できる。
なお、上記の固液分離方法は特に限定されず、種々の公知技術、例えば濾過による分離、遠心分離、デカンテーション等を採用することができるが、簡便で効率的なプロセスであるという観点から、濾過による分離方法が好ましく採用される。
本発明では、上記した条件で固液分離を行うことで混合物(ii)中に存在する環式PASの50重量%以上を固形分として回収することができる。
(4−6)環式PASの精製
本発明では、混合物(ii)を固液分離し、固形分として回収した環式PASを溶媒を用いて洗浄することが好ましい。
固液分離によって得られた固形分中には、目的物の環式PASだけでなく混合物(ii)の母液成分も含まれるが、この母液成分中には環式PASの純度低下につながる不純物が含まれる場合がある。よって、固形状の環式PASを各種溶媒を用いて洗浄し、母液成分を低減してこれらの不純物を除去することで、より高純度な環式PASを回収することが可能となる。洗浄に用いられる溶媒としては、環式PASの溶解性が低い溶媒であれば特に制限はなく、本発明で用いる溶媒(a)や溶媒(b)と同じ溶媒でも良いし、それらとは異なる溶媒を用いても良いが、溶媒(b)が例示でき、好ましくは溶媒(a)と溶媒(b)の混合溶媒である。
上記の洗浄方法としては、固形分ケークが堆積した分離フィルター上に洗浄溶媒をかけ流して洗浄する方法や、水および温水に浸漬し攪拌した後、濾別して固形分を得る方法を繰り返し行うリスラリー洗浄が好ましく例示でき、本発明ではより簡便で洗浄効果の高いリスラリー洗浄がより好ましい。
洗浄によって得られた環式PASの含液率に特に制限はないが10重量%以上80重量%以下が好ましい。含液率が上記上限量を超える場合、溶液中に溶解した不純物があるため、残存する不純物が増加する傾向がある。一方で、含液率の下限量に関しては一意的に決めることはできないが、固液分離の際に含液量を低減するには分離時間を有し、生産性の低下に繋がるため、含液量は一定量ある方が好ましい。よって、得られる環式PAS中の含液率は、10重量%以上80重量%以下が例示でき、好ましくは20重量%以上75重量%以下、より好ましくは30重量%以上70重量%以下である。
また、本発明では、前記環式PASから溶媒を留去することが好ましく、得られる環式PASの含液率が10重量%未満であり、固形分を90%以上含有することがより好ましい。その好ましい様態としては、環式PASが主成分であれば良く、副成分として線状のPASオリゴマーを含んでも良い。
ここで線状のPASオリゴマーとは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有するホモオリゴマーまたはコオリゴマーである。Arとしては前記した式(B)から式(M)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(B)が特に好ましい。線状のPASオリゴマーはこれら繰り返し単位を主要構成単位とする限り、
式(N)から式(P)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0から1モル%の範囲であることが好ましい。また、線状のPASオリゴマーは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィドオリゴマー、ポリフェニレンスルフィドスルホンオリゴマー、ポリフェニレンスルフィドケトンオリゴマー、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい線状のPASオリゴマーとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位を80モル%以上、特に90モル%以上含有する線状のポリフェニレンスルフィドオリゴマーが挙げられる。
本発明のPASの製造に用いる環式PASの分子量の上限値は、重量平均分子量で10,000未満が好ましく、5,000以下が好ましく、3,000以下が更に好ましく、一方、下限値は重量平均分子量で300以上が好ましく、400以上が好ましく、500以上が更に好ましい。
溶媒留去する方法に特に制限はないが、真空乾燥機による乾燥方法や、密閉容器内に乾燥剤と共に置いて乾燥させる方法が好ましく例示できる。
溶媒を留去後の含液率としては、全重量に対して、10重量%未満が好ましく、5重量%以下がより好ましく、3重量%以下がよりいっそう好ましい。一方で、含液率に下限値はなく、溶媒が残存しない0重量%が最も好ましい。含液率が10重量%未満の場合(6)に記載するPASを得た際に、より高品質なPASを得る傾向がある。この原因は明らかではないが、環式PAS以外の成分が少ないことにより、熱変性などが生じずPASの高品質化を導いていると推測している。
(5)環式PASの特性
本発明の環式PASは、550℃で焼成した際の残渣により求められる灰分量が290ppm未満であることが好ましく、より好ましくは270ppm以下、よりいっそう好ましくは250ppm以下である。灰分量が上記上限量を上回る場合、不純物量が増加し(6)記載のPASを得る際の品質低下に繋がる場合がある。一方で、灰分量に下限値はなく灰分が残存しない0ppmが最も好ましく、灰分量が少ないほど不純物の減少により、高品質なPASが得られる傾向がある。
また、上記灰分量の測定方法は、目開き2.00mmのふるいおよびふるい振とう機を用いて得られた、粒径2.00mm未満の環式PAS約5gを電気炉にて550℃で6時間加熱を行い焼成し、その後冷却して回収した残渣の重量より求めることができる。
灰分量が少ない環式PASを得ることで、(7)に記載のPASを得る際、灰分量の少ないPASを得る傾向にあり、PASの品質向上に繋がると考えられる。
(6)ポリアリ−レンスルフィドの製造方法
(6−1)ポリアリーレンスルフィド
本発明におけるポリアリーレンスルフィドとは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有するホモポリマーまたはコポリマーである。Arとしては式(B)から式(M)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(B)が特に好ましい。
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、式(N)から式(P)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0から1モル%の範囲であることが好ましい。
また、本発明におけるPASは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいPASとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
を80モル%以上、特に90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略すこともある)が挙げられる。
本発明のPASの分子量は、重量平均分子量で10,000以上が好ましく、15,000以上がより好ましく、18,000以上がよりいっそう好ましい。重量平均分子量が10,000以上では加工時の成形性が良く、また成形品の機械強度や耐薬品性等の特性が高くなる。重量平均分子量の上限に特に制限は無いが、1,000,000未満を好ましい範囲として例示でき、より好ましくは500,000未満、更に好ましくは200,000未満であり、この範囲内では高い成形加工性を得ることができる。
本発明におけるPASの分子量分布の広がり、即ち重量平均分子量と数平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)で表される分散度は2.5以下が好ましく、2.3以下がより好ましく、2.1以下が更に好ましく、2.0以下がよりいっそう好ましい。分散度が2.5を越える場合はPASに含まれる低分子成分の量が多くなる傾向が強く、このことはPASを成形加工用途に用いた場合の機械特性低下、加熱した際のガス発生量の増大及び溶剤と接した際の溶出成分量の増大等の要因になる傾向にある。なお、前記重量平均分子量及び数平均分子量は例えば示差屈折率検出器を具備したSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)を使用して求めることができる。
また、環式PASのPASへの転化率は、60%以上が好ましく、75%以上がより好ましく、85%以上がよりいっそう好ましい。転化率が60%以上の場合は、本発明のPASの特徴である高分子量のPASを得られる傾向がある。転化率は、加熱前の環式PAS量および、加熱により得られる生成物に含まれる未反応の環式PAS量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて定量し、その値から算出することができる。具体的には、
転化率=(加熱前の環式PAS量―未反応の環式PAS量)/加熱前の環式PAS量
のように算出することができる。
(6−2)環式PASの高重合度体への転化
本発明では、前記環式PASを加熱して高重合度体であるPASを製造することが好ましい。
PASを得る方法として、例えば、公開特許公報2006−534512などに示されている方法が例示できる。加熱する温度は前記環式PASが溶融解する温度であることが好ましく、このような温度条件であれば特に制限は無いが、260℃を越え400℃以下が例示できる。好ましくは280℃以上380℃以下、より好ましくは300℃以上360℃以下、よりいっそう好ましくは320℃以上350℃以下である。加熱温度が環式PASの溶融解温度未満ではPASを得るのに長時間が必要となる傾向がある。なお、環式PASが溶融解する温度は、環式PASの組成や分子量、また、加熱時の環境により変化するため、一意的に示すことはできないが、例えば環式PASを示差走査型熱量計で分析することで溶融解温度を把握することが可能である。一方で、加熱温度範囲が上記の好ましい範囲内では、環式PAS間、加熱により生成したPAS間、及びPASと環式PAS間などでの架橋反応や分解反応に代表される好ましくない副反応を抑制できる傾向にあり、得られるPASの特性が向上する場合がある。
前記加熱を行う時間は使用する環式PASの含有率やm数、及び分子量などの各種特性、また、加熱の温度等の条件によって異なるため一様には規定できないが、前記した好ましくない副反応がなるべく起こらないように設定することが好ましく、0.05から100時間が例示できる。好ましくは0.1から20時間、より好ましくは0.1から10時間、よりいっそう好ましくは1から6時間である。加熱時間が上記の好ましい範囲内では環式PASのPASへの転化が十分に生じ、副反応による得られるPASの特性への影響も低い傾向にあるのみならず、生産性の向上やコストの低減につながり経済的にも利益を生じる場合がある。
環式PASの加熱によるPASへの転化の際の雰囲気は非酸化性雰囲気で行うことが好ましく、減圧条件下で行うことも好ましい。また、減圧条件下で行う場合、反応系内の雰囲気を一度非酸化性雰囲気としてから減圧条件にすることが好ましい。これにより上記と同様に架橋反応や分解反応等の好ましくない副反応の発生を抑制できる傾向にある。なお、非酸化性雰囲気とは環式PASが接する気相における酸素濃度の好ましい範囲をいい、上記(4−2)の場合と同様である。
また、減圧条件下とは反応を行う系内が大気圧よりも低いことを指し、好ましい範囲は上記(4−4)の場合と同様に例示できる。減圧条件が好ましい上限以下では架橋反応などの好ましくない副反応を抑制できる傾向にある。一方、好ましい下限未満では反応温度によっては環式PASに含まれる低分子量の環式PASが揮散しやすくなる傾向にある。
(7)ポリアリーレンスルフィドの特性
本発明のPASは、550℃で焼成した際の残渣により求められる灰分量が290ppm未満であることが好ましく、270ppm以下がより好ましく、250ppm以下がよりいっそう好ましい。灰分量が上記上限量を上回る場合、不純物量が増加し品質低下に繋がる場合がある。一方で、灰分量に下限値はなく灰分が残存しない0ppmが最も好ましく、灰分量が少ないほど不純物の減少により、高品質なPASを得ることが可能である。
上記の特徴を有するPASは含まれる灰分量が少ないことから、従来のPASに比べ耐熱性、耐薬品性、難燃性、電気的性質および機械的性質に優れ、また分子量分布も狭く、且つ、成形加工性や機械特性および電気的特性が極めて優れており、射出成形、射出圧縮成形、ブロー成形、押出成形において良成形性であり、かつ成形機の汚染が少なく製造コスト低減が可能となる。また、灰分量が少ないことによって、シート、フィルム、繊維およびパイプなどへの成形性向上が期待できる。特に、繊維への成形時においてPASが溶融した際に見られる不純物すなわち灰分が異物となって発生することが品質低下をもたらす傾向にあり、灰分量が低下することで、成形時の糸切れが起こりづらくなることが期待でき、生産性の向上や高品質化が期待できる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。これら例は例示的なものであって限
定的なものではない。
<分子量の測定>
ポリアリーレンスルフィドおよび環式ポリアリーレンスルフィドの分子量はサイズ排除
クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(
GPC)により、ポリスチレン換算で数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)を
算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC−7110
カラム名:Shodex UT806M×2
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (スラリー状:約0.2重量%)。
<転化率の測定>
環式PASのPASへの転化率の算出は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて下記方法で行った。
環式PASの加熱により得られた生成物約10mgを250℃で1−クロロナフタレン約5gに溶解させた。室温に冷却すると沈殿が生成した。孔径0.45μmのメンブランフィルターを用いて1−クロロナフタレン不溶成分を濾過し、1−クロロナフタレン可溶成分を得た。得られた可溶成分のHPLC測定により、未反応の環式PAS量を定量し、環式PASのPASへの転化率を算出した。HPLCの測定条件を以下に示す。
装置:島津株式会社製 LC−10Avpシリーズ
カラム:Mightysil RP−18 GP150−4.6(5μm)
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(UV=270nm)。
<環式ポリアリーレンスルフィドの組成測定>
異なる繰り返し単位数の環式PASの比率は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による定性定量分析を行って算出した。
溶媒留去後の環式PASを約10mg測りとり、室温にて約10gのクロロホルムに溶解させたところ、白濁した溶液を得た。得られた溶液を孔径0.45μmのメンブランフィルターを用いてクロロホルム不溶成分を濾過し、クロロホルム可溶成分を得た。得られた可溶成分のHPLC測定により、環式PAS量を定量した。HPLCの測定条件を以下に示す。
装置:島津株式会社製 LC−10Avpシリーズ
カラム:Mightysil RP−18 GP150−4.6(5μm)
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(UV=270nm)。
また、上記HPLC測定により成分分割した各ピークの帰属は、成分分割した成分のマススペクトル分析、分取クロマトによる分割した各成分のMALDI−TOF−MS及びGPCによる分子量情報による行い、繰り返し単位数4から15までの環式PASを帰属した。帰属した繰り返し単位数4から15までの環式PASについて、標品による検量線を用いて定量を行い、溶液中の環式PAS濃度や回収した固形分の環式PAS純度を算出した。なお、環式PAS純度とは、固形分中に含まれる環式PASの割合であり、HPLCの定量値から求められる。
<含液率の算出>
試料中の含液率は、試料乾燥前後の重量測定によって算出した。試料を約1g量りとり試料に厚みが出ないよう20cm以上に薄く広げた後、加熱温度100℃において2時間真空乾燥を行い、加熱後の重量を測定した。この時の重量減少量が試料中の含液量とし、含液率を求めた。
<環式ポリアリーレンスルフィドの真空乾燥>
環式PASを100℃の条件で12時間真空乾燥することで、環式PASを固形分として得た。
<灰分量の算出>
灰分量の測定は以下の方法により行った。
目開き2.00mmのふるいおよびふるい振とう機を用いて得られた、粒径2.00mm未満の環式PASまたはPAS約5.0gをルツボに入れ、電気炉にて550℃で6時間焼成した。その後乾燥剤入りのデシケーター内に取り出し冷却した後、回収した残渣の重量より求めた。以下に条件を示す。
装置:トーマス科学器械株式会社 TMF−5
条件:550℃、6時間
<参考例1>
ここでは環式PASの製造方法の例を示す。
<環式PASの製造>
攪拌機を具備したステンレス製の反応容器にスルフィド化剤として48重量%の水硫化ナトリウム水溶液を103g(水硫化ナトリウムとして0.880モル)、48重量%水酸化ナトリウム水溶液76.8g(水酸化ナトリウムとして0.920モル)、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)132g(0.896モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)2256g(2.20リットル)を仕込んだ。原料混合物の有機極性溶媒量で表す基質濃度はイオウ成分1モル当たり2.5リットルであり、また、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位の基質濃度はイオウ成分(スルフィド化剤として仕込んだ水硫化ナトリウムに相当)1モル当たりのアリーレン単位(ジハロゲン化芳香族化合物として仕込んだp−DCBに相当は1.020モルであった。次に、窒素下で密閉後に攪拌しながら250℃まで昇温した後、2時間保持して反応を進行させた。
高圧バルブを介して反応容器上部に設置した小型タンクからp−DCBのNMP溶液(p−DCB13.0gをNMP40gに溶解)を反応混合物中に追加した。本操作により、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位(ジハロゲン化芳香族化合物として仕込んだp−DCBの合計量に相当)は1.10モルとなった。追加の仕込み終了後、250℃にてさらに1時間加熱を継続して反応を進行させた。その後、反応容器を室温近傍まで冷却し、反応生成物を回収した。
<参考例2>
ここでは参考例1で得られた反応混合物について、固液分離操作を行うことで濾液を得て、少なくとも環式PASおよびNMPを含み、環式PASの50重量%以上が溶解している混合物(i)を得た例を示す。
参考例1で得られた反応混合物を2000g分取し、攪拌機付きのガラス製容器に仕込んだ。この反応混合物を攪拌しながら窒素バブリングを行った。
加圧濾過器(平均細孔直径1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製メンブレンフィルターをセット)の内部を窒素置換した後、前記反応混合物を加圧濾過器のタンクに仕込み、密閉して窒素置換後、窒素で0.1MPaに加圧した。この加圧状態のまま液取りバルブを開放し、タンク下部から濾液を回収した。この操作を繰り返し行い反応混合物を全て固液分離した。
濾液を窒素で置換した後、エバポレーターで100℃から150℃で加熱し溶媒を除去して環式PAS濃度が5重量%の混合物(i)を得た。
<実施例1>
参考例2で得られた混合物(i)を146g測りとり、窒素置換30分後、攪拌しながら室温にて窒素バブリングを30分行った。次いで、130℃に加温した後溶媒を留去することなく30分間加熱攪拌した。攪拌後80℃に徐冷し、水59.2gを15mL/minの条件で液面上部から滴下した(本操作により混合物(i)に加えた水の量は、NMPと水の量の合計に対して30重量%となった。)。この際、系内に徐々に固形分が形成され、水の滴下が終了した段階では粗大な固形分の形成は認められず、パウダー状の固形分が分散した混合物(ii)を得た。この状態で加熱を継続し、内温80℃に再調整し、30分間攪拌した。
この内温80℃の混合物(ii)155gを80℃に温調したADVANTEC社製の万能型タンク付きフィルターホルダーKST−90−UH(直径90mm、平均細孔直径1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製メンブレンフィルターをセット)に仕込み、タンクを密閉して窒素置換後、タンク内を窒素にて0.4MPaに加圧することで熱時濾過を行った。濾過後に得られた固形分(母液を含む 含液率60%)約6gを25gの水に分散させ80℃で15分攪拌した後、ガラスフィルターで吸引濾過する操作を3回繰り返してリスラリー洗浄を行い、環式PASを固形分として回収した。得られた固形分を100℃の真空乾燥機で12時間加熱し溶媒を留去し、固体である環式PASを得た。上記リスラリー洗浄および溶媒留去を繰り返し行い、灰分量測定に必要な環式PAS量を得た。
得られた環式PASをHPLCで分析した結果、環式PASの回収率は97%、環式PAS純度は88%であった。また、環式PASの灰分量は260ppmであった。
得られた環式PAS300mgをガラス製アンプルに仕込み、アンプル内を窒素で置換した後、真空ポンプを用いて約0.4kPaに減圧した。約0.4kPaに減圧してから約10秒後、340℃に温調した電気炉内にアンプルを設置し、真空ポンプによってアンプル内を約0.4kPaに保ち脱気しながら4時間加熱した後、アンプルを取り出し室温まで冷却し、茶白色の固体を得た。上記操作を繰り返し行い、灰分量測定に必要なPAS量を得た。固体は1−クロロナフタレンに250℃で全溶であった。HPLC測定の結果、環式PASのPASへの転化率は77%であることがわかった。
GPC測定の結果、環式PASに由来するピークと生成したPASのピークが確認でき、得られたPASの重量平均分子量は6.5万、分散度は2.1であることがわかった。
得られた固体の灰分量を測定した結果、灰分量が260ppmの高純度なPASを得られたことがわかった。
<実施例2>
混合物(i)に水を加える温度を100℃、混合物(ii)を熱時濾過する際の温度を100℃とした以外は実施例1と同様に環式PASの回収とPASの製造を実施した。その結果、濾過後に得られた固形分の含液率は63%、環式PASの回収率は97%、環式PAS純度は87%であり、灰分量は220ppmであった。また、環式PASを加熱して得られた固体状のPASは1−クロロナフタレンに250℃で全溶であった。環式PASのPASへの転化率は76%であり、重量平均分子量は6.5万、分散度は2.1であることがわかった。得られた固体中の灰分量は220ppmであった。
実施例1と比較すると、純度や分子量に変化はないが、灰分量が低減し、より高純度なPASを効率よく得ることができた。
<比較例1>
混合物(i)を130℃で30分間加熱攪拌する操作を行わない以外は実施例1と同様に環式PASの回収とPASの製造を実施した。その結果、濾過後に得られた固形分の含液率は77%、環式PASの回収率は97%、環式PAS純度は87%であり、灰分量は290ppmであった。また、環式PASを加熱して得られた固体状のPASは1−クロロナフタレンに250℃で全溶であった。環式PASのPASへの転化率は79%であり、重量平均分子量は6.3万、分散度は2.1であることがわかった。得られた固体中の灰分量は290ppmであった。
実施例1,2と比較すると、分子量の低下と灰分量の増加が確認され、十分に高純度な環式PASおよびPASを得ることができなかった。

Claims (10)

  1. 少なくとも環式ポリアリーレンスルフィド及び溶媒(a)を含み、環式ポリアリーレンスルフィド含有率が3重量%以上30重量%以下の混合物(i)を120℃を越え200℃以下で加熱処理した後、混合物(i)に溶媒(a)とは異なる溶媒(b)を加えて環式ポリアリーレンスルフィドが析出した混合物(ii)とし、混合物(ii)を50℃を越え120℃以下の温度で固液分離する環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  2. 少なくとも環式ポリアリーレンスルフィドおよび溶媒(a)を含み環式ポリアリーレンスルフィド含有率が3重量%未満の混合物(iii)から減圧下で溶媒(a)を留去し、混合物(i)を得、次いで前記加熱処理および固液分離を行う請求項1に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  3. 前記混合物(i)に前記溶媒(b)を加える温度が50℃以上150℃以下である請求項1または2に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  4. 前記混合物(i)に前記溶媒(b)を加える温度が70℃以上120℃以下である請求項1から3のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  5. 前記混合物(i)に加える前記溶媒(b)の量が前記溶媒(a)と溶媒(b)の合計量に対して5重量%以上50重量%以下である請求項1から4のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  6. 前記混合物(i)を120℃を越え200℃以下で加熱処理を行う時間が30分以上300分以下である請求項1から5のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載の方法で環式ポリアリーレンスルフィドを製造し、次いでその環式ポリアリーレンスルフィドを溶媒を用いて洗浄する環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  8. 得られる環式ポリアリーレンスルフィドの、550℃で焼成した際の残渣により求められる灰分量が290ppm未満である請求項1から7のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載の製造方法で環式ポリアリーレンスルフィドを製造し、次いで環式ポリアリーレンスルフィドを加熱してポリアリーレンスルフィドを得るポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  10. 得られるポリアリーレンスルフィドの、550℃で焼成した際の残渣により求められる灰分量が290ppm未満である、請求項9に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
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