JP2008297417A - 環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
本発明は線状ポリアリーレンスルフィドと環式ポリアリーレンスルフィドを含むスラリーから、環式ポリアリーレンスルフィド混合物を分離する方法を提供する。
【解決手段】
少なくとも
(a)線状ポリアリーレンスルフィド
(b)環式ポリアリーレンスルフィド
(c)環式ポリアリーレンスルフィドが可溶、もしくは易溶な溶媒
(d)環式ポリアリーレンスルフィドが不溶、もしくは難溶な溶媒
を含み、(a)/(b)の重量比が1を超えるポリアリーレンスルフィドスラリーの(c)/(d)組成比を変化させ、次いで該スラリーを固液分離することにより、(a)/(b)重量比が0.6以下の環式ポリアリーレンスルフィド混合物を含む溶液を得ることを特徴とする、環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は線状ポリアリーレンスルフィドと環式ポリアリーレンスルフィドを含むスラリーから、環式ポリアリーレンスルフィドをより多く含む混合物を分離する方法に関し、より具体的には環式ポリアリーレンスルフィド混合物を簡便な方法で効率よく製造する方法に関する。
芳香族環式化合物はその環状であることから生じる特性に基づく高機能材料や機能材料への応用展開可能性、たとえば包接能を有する化合物としての特性や、開環重合による高分子量直鎖状高分子の合成のための有効なモノマーとしての活用など、その構造に由来する特異性で近年注目を集めている。環式ポリアリーレンスルフィド(以下、ポリアリーレンスルフィドをPASと略する場合もある)も芳香族環式化合物の範疇に属し、上記同様に注目に値する化合物である。
環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法としては、たとえばジアリールジスルフィド化合物を超希釈条件下で酸化重合する方法が提案されている(たとえば特許文献1参照。)。この方法では環式ポリアリーレンスルフィドが高選択で生成し、線状ポリアリーレンスルフィドはごく少量しか生成しないと推測され、確かに環式ポリアリーレンスルフィドが高収率で得られると考えられる。しかしながら、この方法では超希釈条件で反応を行うことが必須とされており、反応容器単位容積あたりに得られる環式ポリアリーレンスルフィドはごくわずかであり、効率的に環式ポリアリーレンスルフィドを得るとの観点では課題の多い方法であった。さらに該方法には線状ポリアリーレンスルフィドを比較的多く含むポリアリーレンスルフィド混合物から、環式ポリアリーレンスルフィドだけを高純度で回収する方法については記載されていない。
環式ポリアリーレンスルフィドの他の製造方法としては、ジハロゲン化芳香族化合物としてp−ジクロロベンゼンと、アルカリ金属硫化物として硫化ナトリウムを有機極性溶媒であるN−メチルピロリドン中で反応させ、ついで加熱減圧下で溶媒を除去後、水で洗浄する事で得られたポリフェニレンスルフィドを、塩化メチレンで抽出して得られた抽出液の飽和溶液部分から回収する方法が開示されている(たとえば特許文献2参照。)。この方法では抽出液の飽和溶液部分から環式フェニレンスルフィドオリゴマーを回収しているため、得られる環式ポリアリーレンスルフィドは繰り返し単位数7〜15に限定されたものであり、繰り返し単位数7未満の成分は回収することができず、また、環式ポリアリーレンスルフィドが極微量しか得られないという問題があった。
環式ポリアリーレンスルフィドとして繰り返し単位数7未満のものを得る方法としては、架橋タイプのポリフェニレンスルフィド樹脂をクロロホルムで抽出して得られた抽出液を冷却することで、高純度のシクロヘキサ(p−フェニレンスルフィド)を得る方法が開示されている(たとえば特許文献3参照。)。この方法では、抽出液を冷却する事で繰り返し単位数6の環式ポリアリーレンスルフィドを単結晶として得られると推測され、繰り返し単位数が6以外の成分は回収する事ができないため、得られる環式ポリアリーレンスルフィドは極微量であるという問題があった。また、このようにして得られる単一組成の環式ポリアリーレンスルフィドは、その結晶構造のため融点が極めて高く、環式アリーレンスルフィドの成形加工や開環重合等の各種目的で溶融させるためには、極めて高いプロセス温度が必要になるという問題があった。
特許第3200027号公報(第2頁) 特開平05−163349号公報(第7頁) 特開平10−077408号公報(第6頁)
本発明の目的は線状ポリアリーレンスルフィドと環式ポリアリーレンスルフィドを含むスラリーから、環式ポリアリーレンスルフィドを分離する方法に関し、より具体的には環式ポリアリーレンスルフィド混合物を簡便な方法で効率よく製造する方法を提供することである。
上記課題に関し、本発明は以下のとおりである。
1.少なくとも
(a)線状ポリアリーレンスルフィド
(b)環式ポリアリーレンスルフィド
(c)環式ポリアリーレンスルフィドが可溶、もしくは易溶な溶媒
(d)環式ポリアリーレンスルフィドが不溶、もしくは難溶な溶媒
を含み、(a)/(b)の重量比が1を超えるポリアリーレンスルフィドスラリーの(c)/(d)組成比を変化させ、次いで該スラリーを固液分離することにより、(a)/(b)重量比が0.6以下の環式ポリアリーレンスルフィド混合物を含む溶液を得ることを特徴とする、環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
2.(c)が環式ポリアリーレンスルフィドが可溶もしくは易溶な有機極性溶媒であることを特徴とする1記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
3.(d)が(c)と混合した際に相分離しない溶媒であることを特徴とする1または2に記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
4.固液分離を濾過または遠心分離により行うことを特徴とする1から3のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
5.固液分離で得られた環式ポリアリーレンスルフィドを含む溶液から、溶媒を除去することを特徴とする1から4のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
6.溶媒の除去を、常圧以下で加熱して行うことを特徴とする5に記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
7.溶媒を除去したあとに得られる環式ポリアリーレンスルフィド混合物が、環式ポリアリーレンスルフィドを60重量%以上含むことを特徴とする5または6に記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
8.ポリアリーレンスルフィドがポリフェニレンスルフィドであることを特徴とする1から7のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
9.(b)環式ポリアリーレンスルフィドが下記式(1)で表される環式化合物であり、繰り返し単位数mが4〜50であることを特徴とする1から8のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
Figure 2008297417
(式(1)中、Arはアリーレン基、Sはスルフィド基である)
10.繰り返し単位数mが4〜15であることを特徴とする9に記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
11.線状ポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量Mwが2,500以上であることを特徴とする1から10のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
12.ポリアリーレンスルフィドスラリーに含まれる線状および環式のポリアリーレンスルフィド混合物が、重量平均分子量2,500以下の成分を0.05〜90重量%含むものであることを特徴とする1から11のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
13.少なくともポリハロゲン化芳香族化合物、アルカリ金属硫化物および有機極性溶媒をいずれも含有する混合物を加熱してポリアリーレンスルフィド樹脂を重合し、220℃以下に冷却して得られた、少なくとも平均目開き0.175mmの標準ふるいで回収可能な顆粒状のポリアリーレンスルフィド樹脂、顆粒状以外の線状ポリアリーレンスルフィド、環式ポリアリーレンスルフィド、有機極性溶媒、水、およびハロゲン化アルカリ金属塩を含むスラリーから、前記顆粒状のポリアリーレンスルフィド樹脂を回収したあとの環式ポリアリーレンスルフィドの混合物を含むポリアリーレンスルフィドスラリーを用いることを特徴とする1から12のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
本発明によれば、線状ポリアリーレンスルフィドと環式ポリアリーレンスルフィドを含むスラリーから、環式ポリアリーレンスルフィドを分離する方法に関し、より具体的には環式ポリアリーレンスルフィド混合物を簡便な方法で効率よく製造する方法を提供できる。
以下に、本発明実施の形態を説明する。
(1)PAS
本発明におけるPASとは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有するホモポリマーまたはコポリマーである。Arとしては下記の式(A)〜式(K)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(A)が特に好ましい。
Figure 2008297417
(R1,R2は水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい)
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(L)〜式(N)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。
Figure 2008297417
また、本発明におけるPASは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいPASとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
Figure 2008297417
を80モル%以上、特に90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略すこともある)が挙げられる。
(2)環式PAS
本発明の環式ポリアリーレンスルフィドとは式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする環式化合物であり、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する下記一般式(1)のごとき化合物である。Arとしては前記式(A)〜式(K)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(A)が特に好ましい。
Figure 2008297417
(式中、Arはアリーレン基、Sはスルフィド基である)
なお、環式ポリアリーレンスルフィドにおいては前記式(A)〜式(K)などの繰り返し単位をランダムに含んでも良いし、ブロックで含んでも良く、それらの混合物のいずれかであってもよい。これらの代表的なものとして、環式ポリフェニレンスルフィド、環式ポリフェニレンスルフィドスルホン、環式ポリフェニレンスルフィドケトン、これらが含まれる環式ランダム共重合体、環式ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい環式ポリアリーレンスルフィドとしては、主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
Figure 2008297417
を80モル%以上、特に90モル%以上含有する環式ポリフェニレンスルフィド(以下、環式PPSと略すこともある)が挙げられる。
環式ポリアリーレンスルフィドの前記式中の繰り返し数mに特に制限は無いが、4〜50が好ましく、4〜25がより好ましく、4〜15が更に好ましい範囲として例示できる。環式ポリアリーレンスルフィドをポリアリーレンスルフィドプレポリマーとして用いて高重合度体を得る際には、環式ポリアリーレンスルフィドを溶融解させることが有効であるが、mが大きくなると環式ポリアリーレンスルフィドの溶融解温度が高くなる傾向にあるため、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの高重合度体への転化をより低い温度で行うことができるようになるとの観点でmを前記範囲にすることは有利となる。
また、環式ポリアリーレンスルフィドは、単一の繰り返し数を有する単独化合物、異なる繰り返し数を有する環式ポリアリーレンスルフィドの混合物のいずれでも良いが、異なる繰り返し数を有する環式ポリアリーレンスルフィドの混合物の方が単一の繰り返し数を有する単独化合物よりも溶融解温度が低い傾向があり、異なる繰り返し数を有する環式ポリアリーレンスルフィドの混合物の使用は、環式ポリアリーレンスルフィドの成形加工温度や、前記した高重合度体への転化を行う際の温度をより低くできるため好ましい。
(3)線状PAS
本発明の線状PASとは前述した環式PAS以外の末端基を有するPASを差し、その分子量は重量平均分子量で2,500以上が好ましく例示でき、5,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、15,000以上がさらに好ましく、18,000以上がよりいっそう好ましい。重量平均分子量が2,500未満の線状PASは各種溶媒への溶解性などの化合物としての特性が前記環式PASに近くなる傾向があり、後述する環式ポリアリーレンスルフィド含有溶液の調製過程において環式PASと線状PASの分離がしにくくなる傾向がある。
(4)PASスラリー
PASスラリーが含有する(a)線状PASと(b)環式PASの重量割合は、(a)/(b)の重量比が1を超える割合である。一般にスラリー中の環式化合物の存在割合が多いほど、操作後に得られる環式PASの収率は増大する傾向にあるが、このようなスラリーを得るためには製造条件を極めて厳密に制御する必要がある場合が多く、工業的にこのようなPASスラリーを得ることは現実的でない。
また、固液分離後に得られる環式PASを含む溶液の(a)/(b)の重量比は0.6以下であって、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.1以下であることが望ましい。(a)/(b)の重量比が低いほど、得られる環式PAS混合物に含まれる環式PASの重量分率は高くなり、純度が高いと言える。
上記のようなPASスラリーは、公知のPPS製造方法によって得ることができ、例えば、p−ジクロロベンゼン、硫化ナトリウム、及びN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を含有する混合物を加熱して、ポリフェニレンスルフィド樹脂を重合した後、水を添加し、220℃以下に冷却して得られた、顆粒状のPPS樹脂、顆粒状PPS以外のPPS混合物、NMP、水、および塩化ナトリウムを含む反応液から顆粒状のPPS樹脂を取り除いた際に得られるPPS混合物を含む回収スラリーを得る方法が好ましく例示できる。なお、ここで顆粒状PASとは平均目開き0.175mmの標準ふるい(80meshふるい)で回収できるPAS成分を指し、PAS混合物とは、顆粒状PAS以外の線状および環式PAS成分の混合物である。この方法によって得られるPAS混合物は重量平均分子量が2,500以下、好ましくは5,000以下の低分子量PASを多く含み、たとえば前記顆粒状PASと比較して機械物性などの特性が大幅に劣るため、一般的工業材料用途への適用は困難であり工業利用上の価値のないものとして従来は認識されていた。そのため、この方法で得られるPAS混合物は通常、産業廃棄物として処理されていた。しかし、このPAS混合物には、一般に環式PASが5重量%以上、このましくは10重量%以上含まれているため、本発明の方法によって産業上利用価値の高い環式PASを得ることは、意義の大きい事である。
(5)環式ポリアリーレンスルフィド含有溶液の調製
本発明では、少なくとも(a)線状ポリアリーレンスルフィド、(b)環式ポリアリーレンスルフィド、(c)環式ポリアリーレンスルフィドが可溶、もしくは易溶な溶媒、(d)環式ポリアリーレンスルフィドが不溶、もしくは難溶な溶媒を含むポリアリーレンスルフィドスラリーの(c)/(d)組成比を変化させ、次いで該スラリーを固液分離することにより、環式ポリアリーレンスルフィドを含む溶液を得ることのよって環式PAS混合物を製造する。より具体的には、ポリアリーレンスルフィドスラリーを、線状ポリアリーレンスルフィドが難溶且つ環式ポリアリーレンスルフィドが溶解可能な溶媒組成へと変化させて環式ポリアリーレンスルフィドを含む溶液を調製する。
ここで(c)は、環式ポリアリーレンスルフィドが易溶もしくは可溶な溶媒であれば特に制限はないが、有機極性溶媒が好ましく、特にアプロチックな有機極性溶媒が好ましい。これらのなかでも、常圧下における沸点が、後述する(d)の沸点を超えるものが好ましく、(c)がこのような溶媒では後述する(c)/(d)の組成比を変化させる際の操作が容易になる傾向がある。例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、トリメチルリン酸などの有機極性溶媒を例示でき、なかでもN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルイミダゾリジノンが特に好ましい。環式ポリアリーレンスルフィドが可溶な状態とは、0.1重量%、常温、常圧の条件で上記の(c)と接触させた際に、目開き10〜16μmのガラスフィルターで回収される固形分がない状態のことを指す。また(d)は環式ポリアリーレンスルフィドが難溶もしくは不溶な溶媒であれば特に制限はないが、上記の(c)と混合した際に相分離しないものが好ましい。例えば、水や、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールなどの炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒を例示できる。なかでも、取り扱いの観点から、水が特に好ましい。環式ポリアリーレンスルフィドが難溶もしくは不溶な状態とは、0.1重量%、常温、常圧の条件で上記の(d)と接触させた際に、目開き10〜16μmのガラスフィルターで回収される固形分が存在する状態のことを指す。なお、前記(c)の具体例および前記(d)の具体例の組み合わせは、常温、常圧の条件下でいかなる組成比であっても相分離しないため、これらを用いることが特に好ましい。
(4)で例示したPPS製造方法の場合、請求項に示す環式PASが可溶もしくは易溶な溶媒(c)はNMPであり、環式PASが不溶もしくは難溶な溶媒(d)は水となる。ポリアリーレンスルフィドスラリーに含まれる(c)/(d)の重量比が3〜20となる溶媒組成のスラリーを原料とすることが好ましい。(c)/(d)の重量比が3未満だと、環式PASのほとんどが固形分として析出し、環式ポリアリーレンスルフィドを含む溶液を得ることが困難になる傾向にある。一方、(c)/(d)の重量比が20を超える場合、可溶となる線状PASの割合が増える傾向にあり、固液分離後に得られる溶液に含まれる(a)/(b)の重量比を0.6以下にすることが困難になる傾向にある。
(c)/(d) の組成比を変化させる方法として、(c)の組成が(c)/(d)=20を超える場合は(d)である水などの環式ポリアリーレンスルフィドが不溶もしくは難溶な溶媒を添加して、(c)/(d)の重量比を20以下に変化させる方法が例示できる。また、(c)の組成が(c)/(d)=3を下まわる場合は、(d)である水などの環式ポリアリーレンスルフィドが不溶もしくは難溶な溶媒を除去する、もしくは(c)であるNMPなどの環式ポリアリーレンスルフィドが可溶もしくは易溶な溶媒を添加して、(c)/(d)の重量比を3以上に変化させる方法が例示できる。ここで、(d)を除去する場合、(d)の沸点が(c)の沸点よりも高いことが条件として挙げられる。
PASスラリーから(d)環式PASが不溶もしくは難溶な溶媒を除去する際の雰囲気に特に制限はないが、接触させる際の温度や時間などの条件によってPASや溶媒が酸化劣化するような場合には、非酸化性雰囲気下で行うことが望ましい。なお、非酸化性雰囲気とは気相の酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。
PASスラリーの溶媒組成を変化させる際の温度に特に制限はないが、一般に温度が高いほど環式PASの溶媒への溶解は促進される傾向にある。PASスラリーの溶媒組成変化は大気圧下で行うことが好ましく、上限温度は使用する溶媒の大気圧下での環流条件温度にすることが望ましい。前述した好ましい溶剤を用いる場合はたとえば20〜150℃を具体的な温度範囲として例示できる。
ポリアリーレンスルフィドスラリーの溶媒組成を変化させた後、環式ポリアリーレンスルフィドを溶解させる時間は、用いる溶媒種や温度等によって異なるため一意的には限定できないが、たとえば1分〜30分間が例示でき、短すぎると環式PASの溶媒への溶解が不十分になる傾向にあり、また長すぎても溶媒への溶解は飽和状態に達し、それ以上の効果は得られない傾向がある。
ポリアリーレンスルフィドスラリーの溶媒組成を変化させて得られた、環式PASが溶解し、且つ固形状の線状PASを含むスラリーを公知の固液分離法を用いて溶液部を回収することにより、環式ポリアリーレンスルフィドを含む溶液を得ることが可能である。固液分離方法としては、例えば濾過による分離、遠心分離等が好ましい。
固液分離後に得られる環式PASを含む溶液の(a)/(b)の重量比は、0.6以下であって、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.1以下であることが望ましい。(a)/(b)の重量比が低いほど、得られる環式PAS混合物に含まれる環式PASの重量分率は高くなり、純度が高いと言える。
(6)環式ポリアリーレンスルフィド溶媒からの溶剤の除去
本発明では前述のようにして得られた環式ポリアリーレンスルフィドを含む溶液から溶媒を除去することで、溶媒を含まない環式ポリアリーレンスルフィド混合物を得ることも可能である。ここで溶媒の除去は、たとえば加熱し、常圧以下で処理する方法や、膜を利用した溶媒の除去、環式PASが難溶且つ溶液と混和する溶媒と接触させ析出物を固液分離で回収する方法を例示できるが、より収率良く環式ポリアリーレンスルフィド混合物を得るとの観点では常圧以下で加熱して溶媒を除去する方法が好ましい。
溶媒の除去を行う場合は、少なくとも50重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、よりいっそう好ましくは95重量%以上の溶媒を除去することが望ましい。加熱による溶媒の除去を行う際の温度は用いる溶媒の特性に依存するため一意的には限定できないが、通常、20〜280℃、好ましくは40〜250℃、より好ましくは100〜200℃の範囲が選択できる。また、溶媒の除去を行う圧力は常圧以下が好ましく、これにより溶媒の除去をより低温で行うことが可能になる。
(7)その他後処理
前記(6)までの操作によって得られた環式PAS混合物は、用いた溶媒の特性によってはPAS混合物中に含まれる不純物成分を含む場合がある。このような少量の不純物を含む環式PAS混合物を不純物は溶解するが、環式PASは溶解しない、もしくは環式PASの溶解しにくい第二の溶媒と接触させることで、不純物成分を選択的に除去することが可能な場合が多い。
環式PAS混合物を前記第二の溶媒と接触させる際の反応系圧力は常圧もしくは微加圧が好ましく、特に常圧が好ましく、このような圧力の反応系はそれを構築する部材が安価であるという利点がある。この観点から反応系圧力は、高価な耐圧容器を必要とする加圧条件は避けることが望ましい。第二の溶媒として好ましい溶媒としては、PASの分解や架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものが好ましく、例えば水や、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトフェノン等のケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ペンチル、酢酸オクチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ペンチル、サリチル酸メチル、蟻酸エチル、等のカルボン酸エステル系溶媒が例示でき、なかでもメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチルが好ましく、水、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、アセトン、酢酸エチルが特に好ましい。これらの溶媒は1種類または2種類以上の混合物として使用することができる。
環式PAS混合物を第二の溶媒と接触させる温度に特に制限はないが、上限温度は使用する第二の溶媒の常圧下での環流条件温度にすることが望ましく、前述した好ましい第二の溶媒を用いる場合はたとえば20〜100℃が好ましい温度範囲として例示でき、より好ましくは25〜80℃が例示できる。
環式PAS混合物を第二の溶媒と接触させる時間は、用いる溶媒種や温度等によって異なるため一意的には限定できないが、たとえば1分〜50時間が例示でき、短すぎると環式PAS混合物中の不純物の第二の溶媒への溶解が不十分になる傾向にあり、また長すぎても第二の溶媒への不純物の溶解は飽和状態に達し、それ以上の効果は得られない。
環式PAS混合物を第二の溶媒と接触させる方法としては、固体状の環式PAS混合物と第二の溶媒を必要に応じて攪拌して混合する方法、各種フィルター上の環式PAS混合物固体に第二の溶媒をシャワーすると同時に不純物を第二の溶媒に溶解させる方法、固体状の環式PAS混合物を第二の溶媒を用いたソックスレー抽出を用いる方法や、溶液状の環式PAS混合物もしくは溶媒を含む環式PAS混合物スラリーを第二の溶媒と接触させて、第二の溶媒の存在下で環式PASを析出させる方法などを用いることができる。なかでも溶媒を含む環式PAS混合物スラリーを第二の溶媒と接触させる方法は、操作後に得られる環式PAS混合物の純度が高く、有効な方法である。
環式PAS混合物を第二の溶媒と接触させた後には、環式PAS混合物が第二の溶媒中に析出したスラリーが得られるので、公知の固液分離法を用いて固体状の環式PAS混合物を回収する。固液分離方法としては、たとえば濾過による分離、遠心分離、デカンテーション等を例示できる。固液分離後に得られた環式PAS混合物中に不純物がまだ残存している場合は、再度環式PAS混合物と第二の溶媒とを接触させて、さらに不純物を除去することも可能である。
(8)本発明の環式PAS混合物の特性
本発明によれば環式PASを60重量%以上含む環式ポリアリーレンスルフィド混合物を容易に得ることができる。このような純度60重量%以上の環式PAS混合物は、例えば環式PASを開環重合に用いる場合に、高重合度体を得やすくなる傾向があり、工業的にも利用価値の高いものである。本発明の方法を用いれば、環式PASを60重量%、好ましくは75重量%、より好ましくは85重量%以上含む環式PAS混合物を容易に得ることが可能である。また、本発明で得られる環式PAS混合物は前記式におけるmが単一ではなく、m=4〜50の異なるmを有する混合物として得やすいという特徴があり、好ましいmの範囲は4〜25、より好ましくは4〜15である。mがこの範囲の場合、環式PAS混合物を開環重合に用いる場合に重合反応が進行しやすく、高分子量体が得られやすくなる傾向にある。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。これら例は例示的なものであって限定的なものではない。
<分子量測定>
ポリアリーレンスルフィドの分子量はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC−7100
カラム名:センシュー科学 GPC3506
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (スラリー状:約0.2重量%)
[参考例1]
<PAS混合物含有スラリーの調製>
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.0モル)、96%水酸化ナトリウム2.96kg(71.0モル)、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略する場合もある)を11.44kg(116モル)、酢酸ナトリウム1.72kg(21.0モル)、及びイオン交換水10.5kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら約240℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、精留塔を介して水14.8kgおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。なお、この脱液操作の間に仕込んだイオウ成分1モル当たり0.02モルの硫化水素が系外に飛散した。
次に、p−ジクロロベンゼン10.3kg(70.3モル)、NMP9.00kg(91.0モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で270℃まで昇温し、この温度で140分保持した。水1.26kg(70モル)を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後220℃まで0.4℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷し、スラリー(A)を得た。このスラリー(A)を20.0kgのNMPで希釈しスラリー(B)を得た。
80℃に加熱したスラリー(B)10kgをふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別し、メッシュオン成分としてスラリーを含んだ顆粒状PPS樹脂を、濾液成分としてスラリー(C)を約7.5kg得た。ここで、スラリー(C)の溶媒組成は、反応の仕込及び脱水、水添加量を考慮すると(c)NMP/(d)HOの重量比は約16である。
[参考例2]
<PAS混合物の調製>
参考例1で得られたスラリー(C)1000gをロータリーエバポレーターに仕込み、窒素で置換してから、減圧下100〜150℃で1.5時間処理した後に、真空乾燥機で150℃、1時間処理して固形物を得た。
この固形物にイオン交換水1200g(スラリー(C)の1.2倍量)を加えた後、70℃で30分撹拌して再スラリー化した。このスラリーを目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。得られた白色ケークにイオン交換水1200gを加えて70℃で30分撹拌して再スラリー化し、同様に吸引濾過後、70℃で5時間真空乾燥してポリフェニレンスルフィド混合物1を11.0g得た。
このポリフェニレンスルフィド混合物のGPC測定を行った結果、数平均分子量(Mn)は5200、重量平均分子量(Mw)は28900であり、クロマトグラムを解析した結果、分子量5000以下の成分の重量分率は39%、分子量2500以下の成分の重量分率は32%であった。
[参考例3]
参考例2の方法で得られたポリフェニレンスルフィド混合物1を5g分取し、溶媒としてクロロホルム120gを用いて、浴温約80℃でソックスレー抽出法により3時間ポリフェニレンスルフィド混合物と溶媒を接触させ、抽出液を得た。得られた抽出液は室温で一部固形状成分を含むスラリー状であった。この抽出液スラリーからエバポレーターを用いてクロロホルムを留去した後、真空乾燥機70℃で3時間処理して固形物2.1g(ポリフェニレンスルフィド混合物1に対し、収率42%)を得た。
このようにして得られた固形物は、赤外分光分析(装置;島津社製FTIR−8100A)における吸収スペクトルよりフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。また、高速液体クロマトグラフィー(装置;島津社製LC−10,カラム;C18,検出器;フォトダイオードアレイ)より成分分割した成分のマススペクトル分析(装置;日立製M−1200H)、更にMALDI−TOF−MSによる分子量情報より、繰り返し単位数4〜12の環式ポリフェニレンスルフィドを主要成分とする混合物であった。
このことから、スラリー(C)に含まれるポリフェニレンスルフィド混合物の(a)/(b)の重量比は、約1.4であることがわかった。
[実施例1]
参考例1の方法で得られたポリフェニレンスルフィドスラリー(C)500gをロータリーエバポレーターに仕込み、減圧下100〜120℃で3時間処理することによりNMP約20g及び水約30gを留去して、溶媒としてNMPのみを含むスラリーを得た。該スラリーに(c)/(d)の重量比が9になるように水を加えた。得られたスラリーを目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過し、固形分を取り除いた。濾液として得られた環式ポリアリーレンスルフィド溶液をロータリーエバポレーターに仕込み、減圧下100〜120℃で2時間処理することにより濃縮した後、MeOHにゆっくりと滴下した。生じた沈殿物を目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。得られた固形分を真空乾燥機70℃で3時間処理して白色固体を得た。白色固体の収率は、用いたポリフェニレンスルフィドスラリー(C)の重量に対して0.27%であった。
高速液体クロマトグラフィーより成分分割した成分のマススペクトル分析、更にMALDI−TOF−MSによる分子量情報より、この固形分は繰り返し単位数4〜12の環式ポリフェニレンスルフィドを主要成分とする混合物であり、環式ポリフェニレンスルフィドの重量分率は約80%、(a)/(b)の重量比は約0.25であることがわかった。
本発明の好ましい容態によれば、高純度の環式ポリアリーレンスルフィド混合物を得られる事が分かった。
[実施例2]
参考例1の方法で得られたポリフェニレンスルフィドスラリー(C)500gをロータリーエバポレーターに仕込み、減圧下100〜120℃で3時間処理することによりNMP約20g及び水約30gを留去して、溶媒としてNMPのみを含むスラリーを得た。該スラリーに(c)/(d)の重量比が5.7になるように水を加えた。得られたスラリーを目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過し、固形分を取り除いた。濾液として得られた環式ポリアリーレンスルフィド溶液をロータリーエバポレーターに仕込み、減圧下100〜120℃で2時間処理することにより濃縮した後、MeOHにゆっくりと滴下した。生じた沈殿物を目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。得られた固形分を真空乾燥機70℃で3時間処理して白色固体を得た。白色固体の収率は、用いたポリフェニレンスルフィドスラリー(C)の重量に対して0.20%であった。
高速液体クロマトグラフィーより成分分割した成分のマススペクトル分析、更にMALDI−TOF−MSによる分子量情報より、この固形分は繰り返し単位数4〜12の環式ポリフェニレンスルフィドを主要成分とする混合物であり、環式ポリフェニレンスルフィドの重量分率は約85%、(a)/(b)の重量比は約0.18であることがわかった。
ポリアリーレンスルフィドスラリーの(c)/(d)の組成比を変化させるにあたり、(c)/(d)の重量比を小さくすることで、得られる環式ポリアリーレンスルフィドの収率は若干低下するが、純度の高い環式ポリアリーレンスルフィドが得られることがわかった。
[実施例3]
参考例1の方法で得られたポリフェニレンスルフィドスラリー(C)500gをロータリーエバポレーターに仕込み、減圧下100〜120℃で3時間処理することによりNMP約20g及び水約30gを留去して、溶媒としてNMPのみを含むスラリーを得た。該スラリーに(c)/(d)の重量比が4になるように水を加えた。得られたスラリーを目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過し、固形分を取り除いた。濾液として得られた環式ポリアリーレンスルフィド溶液をロータリーエバポレーターに仕込み、減圧下100〜120℃で2時間処理することにより濃縮した後、MeOHにゆっくりと滴下した。生じた沈殿物を目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。得られた固形分を真空乾燥機70℃で3時間処理して白色固体を得た。白色固体の収率は、用いたポリフェニレンスルフィドスラリー(C)の重量に対して0.17%であった。
高速液体クロマトグラフィーより成分分割した成分のマススペクトル分析、更にMALDI−TOF−MSによる分子量情報より、この固形分は繰り返し単位数4〜12の環式ポリフェニレンスルフィドを主要成分とする混合物であり、環式ポリフェニレンスルフィドの重量分率は約90%、(a)/(b)の重量比は約0.1であることがわかった。
(c)/(d)の重量比をさらに小さくすることで、より純度の高い環式ポリアリーレンスルフィドが得られることがわかった。
[比較例1]
参考例1の方法で得られたポリフェニレンスルフィドスラリー(C)500gをロータリーエバポレーターに仕込み、減圧下100〜120℃で3時間処理することによりNMP約20g及び水約30gを留去して、溶媒としてNMPのみを含むスラリーを得た。該スラリーに(c)/(d)の重量比が5.7になるように水を加えた。得られたスラリーをロータリーエバポレーターに仕込み、減圧下100〜120℃で2時間処理することにより濃縮した後、MeOHにゆっくりと滴下した。生じた沈殿物を目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。得られた固形分を真空乾燥機70℃で3時間処理して白色固体を得た。白色固体の収率は、用いたポリフェニレンスルフィドスラリー(C)の重量に対して約1%であった。
高速液体クロマトグラフィーより成分分割した成分のマススペクトル分析、更にMALDI−TOF−MSによる分子量情報より、この固形分は繰り返し単位数4〜12の環式ポリフェニレンスルフィドを含む混合物であり、環式ポリフェニレンスルフィドの重量分率は約40%、(a)/(b)の重量比は約1.5であることがわかった。ことがわかった。
(c)/(d)の組成比を変化させた後、スラリーを固液分離することが、得られる環式ポリフェニレンスルフィド混合物に含まれる環式ポリフェニレンスルフィドの重量分率を向上させるのに重要な役割を果たしていることが分かった。
[比較例2]
参考例1の方法で得られたポリフェニレンスルフィドスラリー(C)を500g分取し、回転数2300rpmで10分間遠心分離にかけ、比較的大きな粒子または不溶成分として存在しているハロゲン化アルカリ金属塩を沈降させた。得られた上澄みは、均一なスラリーであり、一晩静置しても沈殿を生じることはなかった。得られた上澄みを目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過し、固形分を完全に取り除いた。
濾液として得られた環式ポリアリーレンスルフィドをロータリーエバポレーターに仕込み、減圧下100〜120℃で3時間処理した後、真空乾燥機100℃で4時間処理して固形物を得た。この固形分を水に懸濁させ、超音波を照射し、目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過、回収する事により、洗浄を行った。得られた固形分を真空乾燥機70℃で4時間処理し、茶色固体を得た。茶色固体の収率は、用いたポリフェニレンスルフィドスラリー(C)の重量に対して0.26%であった。
高速液体クロマトグラフィー(装置;島津社製LC−10,カラム;C18,検出器;フォトダイオードアレイ)より成分分割した成分のマススペクトル分析(装置;日立製M−1200H)、更にMALDI−TOF−MSによる分子量情報より、この固形分は繰り返し単位数4〜12の環式ポリフェニレンスルフィドを含む混合物であり、環式ポリフェニレンスルフィドの重量分率は約58%、(a)/(b)の重量比は約0.72であることがわかった。
(c)/(d)の組成比を変化させることが、得られる環式ポリフェニレンスルフィド混合物に含まれる環式ポリフェニレンスルフィドの重量分率を向上させるのに重要な役割を果たしていることが分かった。

Claims (13)

  1. 少なくとも
    (a) 線状ポリアリーレンスルフィド
    (b) 環式ポリアリーレンスルフィド
    (c) 環式ポリアリーレンスルフィドが可溶、もしくは易溶な溶媒
    (d) 環式ポリアリーレンスルフィドが不溶、もしくは難溶な溶媒
    を含み、(a)/(b)の重量比が1を超えるポリアリーレンスルフィドスラリーの(c)/(d)組成比を変化させ、次いで該スラリーを固液分離することにより、(a)/(b)重量比が0.6以下の環式ポリアリーレンスルフィド混合物を含む溶液を得ることを特徴とする、環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
  2. (c)が環式ポリアリーレンスルフィドが可溶もしくは易溶な有機極性溶媒であることを特徴とする請求項1記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
  3. (d)が(c)と混合した際に相分離しない溶媒であることを特徴とする請求項1または2に記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
  4. 固液分離を濾過または遠心分離により行うことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
  5. 固液分離で得られた環式ポリアリーレンスルフィドを含む溶液から、溶媒を除去することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
  6. 溶媒の除去を、常圧以下で加熱して行うことを特徴とする請求項5に記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
  7. 溶媒を除去したあとに得られる環式ポリアリーレンスルフィド混合物が、環式ポリアリーレンスルフィドを60重量%以上含むことを特徴とする請求項5または6に記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
  8. ポリアリーレンスルフィドがポリフェニレンスルフィドであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
  9. (b)環式ポリアリーレンスルフィドが下記式(1)で表される環式化合物であり、繰り返し単位数mが4〜50であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
    Figure 2008297417
    (式(1)中、Arはアリーレン基、Sはスルフィド基である)
  10. 繰り返し単位数mが4〜15であることを特徴とする請求項9に記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
  11. 線状ポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量Mwが2,500以上であることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
  12. ポリアリーレンスルフィドスラリーに含まれる線状および環式のポリアリーレンスルフィド混合物が、重量平均分子量2,500以下の成分を0.05〜90重量%含むものであることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
  13. 少なくともポリハロゲン化芳香族化合物、アルカリ金属硫化物および有機極性溶媒をいずれも含有する混合物を加熱してポリアリーレンスルフィド樹脂を重合し、220℃以下に冷却して得られた、少なくとも平均目開き0.175mmの標準ふるいで回収可能な顆粒状のポリアリーレンスルフィド樹脂、顆粒状以外の線状ポリアリーレンスルフィド、環式ポリアリーレンスルフィド、有機極性溶媒、水、およびハロゲン化アルカリ金属塩を含むスラリーから、前記顆粒状のポリアリーレンスルフィド樹脂を回収したあとの環式ポリアリーレンスルフィドの混合物を含むポリアリーレンスルフィドスラリーを用いることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド混合物の製造方法。
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