JP5590666B2 - 気泡から作る中空粒子およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、気泡の界面を利用して製造した中空粒子およびその製造方法に関するものである。
内部が気体で外部が固体の構造を有する中空粒子は、密度が低く、音や熱の伝達を抑制することもできるため、材料の比重調整や防音材・断熱材などへ用いられているほか、液体中で浮上する特性を利用して液体表面の流れを可視化するトレーサなどにも用いられている。近年では、中空粒子の超音波に対する周波数応答性を利用して、超音波診断用造影剤やドラッグデリバリーの薬剤輸送担体など医療材料として中空粒子を用いる先進医療の研究も行われている。
従来の中空粒子の製法としては、液体または固体を内包する粒子を生成し、内部の液体を抽出して中空にする方法(特許文献1、2参照)、あるいは液体または固体を含む粒子を熱膨張気化させて中空にする技術(特許文献3参照)などがある。
また、気泡を用いて直接中空粒子を作り出す手法としては、気泡の表面において液相中の物質同士を重合させて固体膜を生み出して中空粒子化する方法(特許文献4参照)、液相中の物質の重合を気相の触媒で促進させて中空粒子化する方法(特許文献5参照)、膜原材料を溶解させた液滴中に気泡を安定に存在させたまま液滴を乾燥させ膜を析出させることで中空構造を有したまま中空粒子化する方法などがある(特許文献6参照)。
特表平9−508067号公報 特開2002−105104号公報 特公平3−79060号公報 特開2007−21315号公報 特開2007−196223号公報 特開2007−75660号公報
Journal of Fluid Mechanics,548,113,2006. Materials Letters,2009,63,703.
前記の背景技術において、液体内包の粒子から内部液体の抽出や熱膨張気化を用いて中空化する方法は、中空化工程の圧力・熱の制御が難しく、中空化の際に粒子の変形や表面の損傷が起こりやすいことが問題である。
また、前記の背景技術における気泡を使う手法においては、中空化工程が不要のため簡便に中空粒子を作ることができるものの、固体膜となる原材料が液相に溶解・分散して存在しているため、気泡界面近傍以外の部分では中空粒子の固体膜として有効に使われないことが問題である。
本発明は、モノマーガスを含む気泡を用いることで、前記の従来技術の問題を解決することを課題としている。
本発明における気泡の界面を利用して製造した中空粒子およびその製造方法では、図1に示すように供給されたモノマーガスを含む気体を、公知の気泡発生手法を用いて液体中に気泡として供給することで、気泡表面においてモノマーの重合反応が起こり、ガスが固体膜で覆われた中空粒子が生成する。
本発明における気泡の界面を利用して製造した中空粒子およびその製造方法によって以下の効果を得ることができる。
(1)液体や固体を芯とした粒子から内部の芯を除去あるいは気化することによる中空化工程を必要とせず、簡便に中空粒子を作製することができる。
(2)固体膜となる原材料は気体として供給され気泡の主成分となるため、気液界面に原材料を効率よく供給することができる。
(3)発生する気泡の径、モノマーガス濃度、膜形成の反応時間などを調整することで中空粒子の径や膜厚を制御することができる。
本発明技術と従来技術を比較した説明図である。 本発明の構成を示した図である。 実施例1および実施例2に用いた超音波中空ホーンからの気泡生成を示す図である。 実施例1で得られた中空粒子の光学顕微鏡画像である。 実施例2で得られた中空粒子の光学顕微鏡画像である。 実施例3で得られた中空粒子の光学顕微鏡画像である。 実施例1、実施例2および実施例3で得られた中空粒子の体積粒度分布を示した図である。
本発明における気泡の界面を利用して製造した中空粒子およびその製造方法では、モノマーガスを含む気体を公知の気泡発生手法を用いて液体中に気泡として供給し、気泡表面においてモノマーガスと液体が接触することで膜形成反応が起こり、ガスが固体膜で覆われた中空粒子が生成する。以下、本発明を実施するための最良の形態について図面2を参照して説明する。
本発明を実施するための最良の形態では、供給ガス1と気化容器2においてモノマー3を気化させたモノマーガスとの混合ガス4を、送気手段5を用いて気泡発生手段6に供給し、気泡発生手段6によってモノマー3を気化させたガスを含む気泡8を液体7中に発生させる。液体7中に発生させた前記気泡8において、気泡中のモノマーガスと液体7が、界面で接触・固化することによって、気泡表面に固体膜が形成し、中空粒子9が生成して浮上する。
前記気化容器2は、モノマー3を容器に入れて保持し、公知の加熱または減圧手段によって前記モノマー3を沸点以上に加熱あるいは蒸気圧以下に減圧して気化できる機能を有していれば特に制限はなく、ガラス製や金属製の容器を、アルコールランプ、ガスバーナー、ホットプレートなどで加熱または真空ポンプなどで減圧する方法が例示される。また、前記気化容器2は、前記モノマー3が常温で気体の際には必須ではない。
前記モノマー3としては、前記液体7あるいは前記液体7に溶解した成分と反応性を有していれば良く、モノマー3と液体7の組み合わせとして、シアノアクリレート系組成物と水、シリコーン系組成物と水、湿気硬化型ウレタン系組成物と水、オレフィン系炭化水素と触媒を含有した低級脂肪族族炭化水素などが例示される。また、前記組み合わせにおける膜形成に要する時間は、目詰まりや反応界面消失の防止の観点から、気泡の発生に要する時間より長く、気泡が溶解または浮上によって消失する時間より短いことが好ましい。膜形成時間の範囲についてより具体的には、20kHz超音波による気泡発生の基準時間である50マイクロ秒以上(非特許文献1参照)、液体中で安定に気泡が存在可能な4時間以下(非特許文献2参照)が特に好ましい。但し、気泡の発生に要する時間は気泡発生装置、気泡が溶解または浮上によって消失する時間は気泡内包成分の液体に対する溶解度、液体の粘度など気泡周囲の環境によって大きく影響を受けるため、前記範囲に限定されるものではない。
前記混合ガス4中のモノマーガスの濃度は、モノマーガスを含んでいれば特に制限されない。また、前記混合ガス4中のモノマーガスの濃度が100%の場合には、前記供給ガス1は必須ではない。
前記送気手段5は前記気泡発生手段6に供給ガス1とモノマー3を気化させたガスの混合ガス5を供給できれば特に制限はなく、ダイアフラムポンプ、ギアポンプ、ロータリーポンプ、チューブポンプ等が例示される。また、供給ガス1を加圧して送気する場合には、前記送気手段5は必須ではない。
前記気泡発生手段6は、前記混合ガス5を前記液体7中に気泡として供給できる方法であれば特に制限はなく、微小孔を有する管または多孔質体を通して気体を液体中に噴出させる方法、噴流や旋回流中で生じるせん断力を利用して気相を液相に巻き込む方法、超音波を用いて気液界面を振動させ微細な気泡を生成する方法などが例示される。特に好ましい例としては、超音波の周期で瞬間的に微細な気泡を発生するため、膜形成反応による目詰まりが発生しない、超音波を用いて気液界面を振動させ微細な気泡を生成する方法が挙げられる。
前記液体7は、前記モノマー3と反応する成分または触媒が含まれていれば構成に特に制限は無く、反応成分または触媒のみで構成された液体、溶媒に反応成分または触媒が溶解した溶液、溶媒に反応成分または触媒が乳化分散したエマルションなどいずれの状態でも良い。また、前記液体7には気泡の微細化および安定化のために、界面活性剤を含有することが望ましい。界面活性剤は、気泡の気液界面に吸着し、表面張力を下げる働きをするものであれば特に制限はなく、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ゼラチン、一価アルコール、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ドデシル硫酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミドなどが例示される。
最終的に生成する前記中空粒子9に含まれる成分については、前記供給ガス1を変えることによって変えることができる。供給ガス1については限定的ではなく、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、アルゴン、6フッ化硫黄などが例示されるが、好ましくはモノマー3と反応しない気体であることが望ましい。供給ガス1の供給手段については特に制限されず、高圧ボンベ、ダイアフラムポンプ、ギアポンプなどが例示される。
以下、本発明を実施例に基づき更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
エチル−2−シアノアクリレート5gを空気吸入口および混合ガス放出口を設けた30mlガラス瓶に封入し、250℃のホットプレートによって加熱し、エチル−2−シアノアクリレートガスを発生させる。発生したエチル−2−シアノアクリレートガスはチューブポンプによって送気され、100mLビーカーに入れ200rpmで攪拌された80mLの純水中に超音波中空ホーンから放出することによって微細な気泡が発生する。超音波中空ホーンの出口径は内径2.6mmで、周波数20kHz、振幅20μmで振動し、振動の有無により図3に示すように瞬時に1mm以下の気泡に微細化される。前記のように発生させた純水中の気泡の界面においてエチル−2−シアノアクリレートは水と接触することで重合反応が開始して固体膜が形成し、中空粒子が生成する。生成した中空粒子は内部が気体であるため、液体表面に浮上する。実施例1によって生成し水面に浮上した球形粒子の光学顕微鏡画像を図4に示す。図4に示すように水面に安定して浮上する大きさ500μm以下の粒子が確認できることから、内部に空気吸入口から取り込んだ空気を含む大きさ500μm以下の中空粒子の作成が確認された。
実施例2として、実施例1における気泡を吹き込む純水に界面活性剤として3−ペンタノールを0.1mL溶解させた水溶液に変えた例を示す。界面活性剤を入れることにより、水の表面張力は下がるため、微細な気泡が生成しやすくなり、気液界面に界面活性剤が吸着するため、液体中での気泡の安定性が向上する。実施例2によって生成し、水面に浮上した粒子の光学顕微鏡画像を図5に示す。図5では、実施例1に比べると形状にばらつきはあるものの、より小さな中空粒子が浮上していることが確認できる。
実施例3として、実施例1における気泡発生手段を振動する超音波中空ホーンからの放出から内径4mmのチューブからの放出に変えた例を示す。なお、この場合に発生する気泡の径はほとんどが100μm以上である。実施例3によって生成し、水面に浮上した粒子の光学顕微鏡画像を図6に示す。図6では、実施例1や実施例2に比べると形状や大きさのばらつきが大きく、より大きな中空粒子が浮上していることが確認できる。
実施例1〜実施例3で作成した中空粒子について体積頻度分布を図7に示す。実施例3のチューブからの吹き込みでエチル−2−シアノアクリレートガスを供給した場合、150μm近辺の体積頻度が最も高くなるのに対し、実施例1の振動する超音波中空ホーンからの放出の場合、65μm近辺の中空粒子の体積頻度がもっとも高く、実施例3に比べると生成する中空粒子を半分以下に微細化することができる。また、更に水に界面活性剤を加えた実施例2の場合、25μm近辺の中空粒子の体積頻度がもっとも高く、界面活性剤の添加による気泡の微細化・安定化によって、より小さい中空粒子を生成できることが確認できる。
本発明で得られる中空粒子は、材料を液体中に溶解させるのではなく、気泡内部のガスとして供給するため、反応場である気泡表面に選択的に材料を供給することができる。また、気泡に含まれるモノマーガスと供給ガスの濃度を変えることにより膜厚や比重の調整も容易であるため、断熱材、防音材、感熱材、緩衝材、軽量化材料、衝撃吸収剤、光学材料、塗料、化粧品、医薬品など様々な用途に有効である。例えば、実施例1〜3で使用したシアノアクリレートは医療用にも用いられている材料であり、中空構造が有する音響特性を活用することで超音波造影剤としての利用も期待できる。
1 供給ガス
2 気化容器
3 モノマー
4 混合ガス(モノマーガス、供給ガス)
5 送気装置
6 気泡発生手段
7 液体
8 気泡
9 中空粒子

Claims (3)

  1. 液体中にモノマーを含む気体を吹き込んで気泡を発生させ、前記気泡の気液界面において前記モノマーと前記液体の接触により固体膜を形成させることを特徴とする中空粒子の製造方法。
  2. 前記液体界面活性剤を含有する請求項1に記載の中空粒子の製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の方法で製造した中空粒子。
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