JP5590651B2 - 血液試料の品質評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、血液試料の品質評価方法に関する。さらに詳しくは、血液試料の品質評価方法、それに用いられるイムノクロマトグラフィー用検査片、および該イムノクロマトグラフィー用検査片を含む血液試料の品質評価用キットに関する。
血液試料は、例えば、被検者の状態の診断、疾患に対する最適な治療法の選択のための判断などに利用されている。しかしながら、採血位置により、被検者の状態および疾患を十分に反映する血液試料が得られない場合がある。このような場合、被検者の状態の診断および最適な治療法の選択のための判断を正確に行なうことができないことがある。
血液試料を用いて疾患状態の判断または治療法の選択のための判断が行なわれている疾患としては、例えば、アルドステロン症がある。アルドステロン症は、副腎皮質自体にアルドステロンの分泌過剰を起こす疾患であり、過形成に起因する突発性高アルドステロン症およびグルココルチコイド奏効性高アルドステロン症と、腺腫に起因するアルドステロン産生腺腫とに大別されている。過形成に起因するアルドステロン症に対し、薬剤投与による治療法が採用され、アルドステロン産生腺腫に対し、原則として外科的摘除による治療法が採用されている。
アルドステロン症の病型に応じて治療法を選択する際には、副腎静脈サンプリング検査が行なわれている(例えば、非特許文献1、非特許文献2などを参照)。副腎静脈サンプリング検査では、左右の副腎静脈にカテーテルを挿入して、5mL前後の血液試料を採血し、その血液試料中におけるアルドステロンの量が測定される。
しかしながら、副腎静脈サンプリング検査では、カテーテルを挿入する対象となる副腎静脈の内径および用いられるカテーテルの直径が小さいため、採血が困難であることがある。また、副腎静脈には、種々の静脈から血液が流入するため、採血によって得られた血液試料に含まれているアルドステロンがその血液によって希釈されていることがある。そのような場合、副腎静脈サンプリング検査を正確に行なうことができないことがある。
副腎静脈サンプリング検査に用いられる血液試料の適性は、血液試料におけるコルチゾール濃度に基づいて評価されている。コルチゾール濃度の測定には、通常、大型の装置が必要であるため、コルチゾール濃度を手術現場などで簡単に測定することができない。したがって、一般に、コルチゾール濃度の測定は、検査会社、検査部署などの外部機関で行なう必要があるため、その測定結果が得られるまでに数日間から1週間程度の長期間を要する。
一方、被検対象の試料に含まれている被検対象物質の検出は、イムノクロマトグラフィーなどによって行なわれている。イムノクロマトグラフィーでは、抗体として、例えば、抗体を金属微粒子に固定化することによって得られた標識抗体の分散液が用いられている(例えば、特許文献1などを参照)。
特開2007−169209号公報 大村昌夫、「特殊型原発性アルドステロン症の診断―副腎静脈サンプリングの意義―」、最新医学、最新医学社、2004年、第59巻、第10号、p.2286−2291 ジウリオ メンゴッツィ(Giulio Mengozzi)ほか7名、「原発性アルドステロン症患者の副腎静脈サンプリングの際の迅速コルチゾール測定法(Rapid Cortisol Assay during Adrenal Vein Sampling in Patients with Primary Aldosteronism.)」、クリニカルケミストリー(Clinical Chemistry)、2007年11月、第53巻、第11号、p.1968−1971
本発明の目的は、少量の血液試料を用いて迅速かつ簡便に血液試料の品質を評価することができる血液試料の品質評価方法を提供することにある。本発明の他の目的は、少量の血液試料を用いて迅速かつ簡便に血液試料の品質を評価するのに好適に使用することができるイムノクロマトグラフィー用検査片および血液試料の品質評価用キットを提供することにある。
本発明は、
(1)(a)標識抗コルチゾール抗体と被検対象の血液試料とを混合し、該標識抗コルチゾール抗体と血液試料に含まれているコルチゾールとの抗原抗体反応を行なうステップ、
(b)ステップ(a)で得られた混合物をコルチゾールが固定化された基材を備えたイムノクロマトグラフィー用検査片上で展開させ、該混合物中で遊離している標識抗コルチゾール抗体を、前記基材に固定化されたコルチゾールと抗原抗体反応させて該コルチゾールに結合させるステップ、
(c)ステップ(b)でコルチゾールに結合している標識抗コルチゾール抗体の量を測定するステップ、および
(d)ステップ(c)で測定された標識抗コルチゾール抗体の量に基づき、血液試料が副腎静脈サンプリング検査に適する品質を有するか否かを評価するステップ
を含む血液試料の品質評価方法、
(2)(A)基材の一端に標識抗コルチゾール抗体が被検対象の血液試料との接触により脱離するように保持された標識抗体相が設けられ、該基材の他端にコルチゾールが固定化されているイムノクロマトグラフィー用検査片を用い、該イムノクロマトグラフィー用検査片の標識抗体相側の端部から一定量の被検対象の血液試料を展開させて該標識抗コルチゾール抗体と血液試料に含まれているコルチゾールとを抗原抗体反応させ、その抗原抗体反応後の遊離の標識抗コルチゾール抗体を、該基材に固定化されているコルチゾールと抗原抗体反応させて該基材に固定化されたコルチゾールに結合させるステップ、
(B)ステップ(A)で基材に固定化されているコルチゾールに結合している標識抗コルチゾール抗体の量を測定するステップ、および
(C)ステップ(B)で測定された標識抗コルチゾール抗体の量に基づき、血液試料が副腎静脈サンプリング検査に適する品質を有するか否かを評価するステップ
を含む血液試料の品質評価方法、
(3)前記(1)に記載の血液試料の品質評価方法に用いるためのイムノクロマトグラフィー用検査片であって、リンカーを介してコルチゾールが固定化されてなるイムノクロマトグラフィー用検査片、
(4)前記(2)に記載の血液試料の品質評価方法に用いるためのイムノクロマトグラフィー用検査片であって、標識抗コルチゾール抗体が被検対象の血液試料との接触により脱離するように保持された標識抗体相が基材の一端に設けられており、かつ該基材の他端にリンカーを介してコルチゾールが固定化されているイムノクロマトグラフィー用検査片、ならびに
(5)前記イムノクロマトグラフィー用検査片を含む血液試料の品質評価用キット
に関する。
本発明の血液試料の品質評価方法によれば、少量の血液試料を用いて迅速かつ簡便に血液試料の品質を評価することができる。本発明のイムノクロマトグラフィー用検査片および血液試料の品質評価用キットによれば、少量の血液試料を用いて迅速かつ簡便に血液試料の品質を評価するのに好適に使用することができる。
本発明の実施例2および3における血液試料の採取位置の概略説明図である。 本発明の実施例2におけるテストラインでの金コロイド粒子に由来するバンドの有無を示すイムノクロマトグラフィー用検査片の図面代用写真である。 試験例2におけるテストラインでの金コロイド粒子に由来するバンドの有無を示すイムノクロマトグラフィー用検査片の図面代用写真である。 試験例3におけるイムノクロマトグラフィー後のイムノクロマトグラフィー用検査片の図面代用写真である。 試験例4におけるコルチゾール濃度と吸光度との関係を示すグラフである。 試験例5における金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量と吸光度の差との関係を示すグラフである。 試験例6における金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量と吸光度の差との関係を示すグラフである。
本発明の血液試料の品質評価方法は、
(a)標識抗コルチゾール抗体と被検対象の血液試料とを混合し、該標識抗コルチゾール抗体と血液試料に含まれているコルチゾールとの抗原抗体反応を行なうステップ、
(b)ステップ(a)で得られた混合物をコルチゾールが固定化された基材を備えたイムノクロマトグラフィー用検査片上で展開させ、該混合物中で遊離している標識抗コルチゾール抗体を、該基材に固定化されたコルチゾールと抗原抗体反応させて該コルチゾールに結合させるステップ、
(c)ステップ(b)でコルチゾールに結合している標識抗コルチゾール抗体の量を測定するステップ、および
(d)ステップ(c)で測定された標識抗コルチゾール抗体の量に基づき、血液試料が副腎静脈サンプリング検査に適する品質を有するか否かを評価するステップ
を含む。以下、この品質評価方法を「評価方法1」という。
ステップ(a)では、標識抗コルチゾール抗体と被検対象の血液試料とを混合し、該血液試料に含まれているコルチゾールと標識抗コルチゾール抗体との抗原抗体反応を行なう。
ステップ(a)で得られた混合物中では、血液試料に含まれているコルチゾールと標識抗コルチゾール抗体との抗原抗体反応によって複合体が形成し、血液試料に含まれているコルチゾールの量に応じて遊離の標識抗コルチゾール抗体が残存する。通常、血液試料に含まれているコルチゾールの量が多くなるにしたがって、相対的に複合体を形成していない遊離の標識抗コルチゾール抗体の量が少なくなる。
被検対象の血液試料としては、例えば、血漿、血清、全血などが挙げられる。被検対象の血液試料のなかでは、血液試料に含まれているコルチゾールと標識抗コルチゾール抗体とをより効率よく結合させて複合体を形成させる観点から、血漿が好ましい。
静脈血に含まれているコルチゾールの量は、その静脈から副腎までの距離が短いほど増加することから、副腎静脈から採取された血液試料に含まれているコルチゾールの量は、該血液試料と同一体積の末梢血に含まれているコルチゾールの量よりも多い。末梢血におけるコルチゾールの含有量は、個体にストレスが負荷した場合や、血液試料の採取時期などにより、平常状態よりも増加することがあるため、被検対象の血液試料は、平常状態における個体の血液試料であることが好ましい。
標識抗コルチゾール抗体は、コルチゾールに対する抗体(以下、「抗コルチゾール抗体」という)を標識物質で標識することによって得られる抗体である。
抗コルチゾール抗体は、コルチゾールに対するモノクローナル抗体であってもよく、コルチゾールに対するポリクローナル抗体であってもよい。コルチゾールに対するモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体は、例えば、ジョン・イー・コリガン(John E. Coligan)編、「カレント・プロトコルズ・イン・イムノロジー(Current Protocols in Immunology)」〔ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons, Inc)社、1992年発行〕に記載の方法などに準じて得ることができる。
より具体的には、コルチゾールに対するモノクローナル抗体は、例えば、ウサギ、ヤギなどの動物をコルチゾールで免疫し、免疫後の動物から脾細胞を得た後、脾細胞とミエローマ細胞とを細胞融合させてハイブリドーマを調製し、得られたハイブリドーマを培養し、培養上清に含まれているモノクローナル抗体を精製することなどによって得ることができる。コルチゾールに対するポリクローナル抗体は、例えば、ウサギ、ヤギなどの動物をコルチゾールで免疫し、免疫後の動物から血清を採取し、その血清に含まれているポリクローナル抗体を精製することによって得ることができる。
標識物質としては、例えば、金属コロイド粒子、酵素、蛍光物質などが挙げられる。これらのなかでは、検出操作が簡便であり、視認性に優れることから、金属コロイド粒子が好ましい。
金属コロイド粒子としては、例えば、金コロイド粒子、銀コロイド粒子、白金コロイド粒子、これらの複合金属コロイド粒子、セレニウムコロイド粒子などが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでは、安定性および視認性に優れることから、金コロイド粒子が好ましい。
金属コロイド粒子の定量は、例えば、波長520nmにおける金属コロイド粒子の吸光度を測定することによって行なうことができる。
酵素としては、例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。酵素の定量は、酵素の比活性を測定する方法などによって行なうことができる。
蛍光物質としては、例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネートなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。蛍光物質の定量は、例えば、蛍光物質の蛍光強度を測定する方法などによって行なうことができる。
標識抗コルチゾール抗体は、必要により、例えば、リン酸緩衝液、トリス緩衝液などの溶液に溶解させてもよい。
一般に、血液試料のコルチゾール濃度が末梢血に含まれているコルチゾール濃度の2倍以上であることは、副腎静脈サンプリングに適切な血液試料であることの指標になると考えられている。したがって、被検対象の血液試料と混合される標識抗コルチゾール抗体の量は、末梢血に含まれているコルチゾールの2倍モル以上であることが好ましい。なお、末梢血が選択されているのは、末梢血におけるコルチゾールの含有量がもっとも少ないことから、これを基準にすることが的確であると考えられるからである。
静脈血に含まれているコルチゾールの量は、その静脈から副腎までの距離が短いほど増加することから、副腎静脈から採取した血液試料に含まれているコルチゾールの量は、下大静脈から採取された血液試料(以下、「下大静脈血」ともいう)に含まれているコルチゾールの量よりも多い。
副腎静脈から採取した血液試料であるかどうかは、イムノクロマトグラフィー用検査片の基材に固定化されているコルチゾールに結合する標識抗コルチゾール抗体が有する標識物質の発色によって視覚的に評価することができる。したがって、ステップ(a)では、標識抗コルチゾール抗体として、例えば、下大静脈血に含まれているコルチゾールのモル数よりも多いモル数の標識抗コルチゾール抗体を用いることが好ましい。なお、被検対象の血液試料に対する標識抗コルチゾール抗体のモル数の上限は、ステップ(a)で用いる標識抗コルチゾール抗体に要するコストなどを考慮して、適宜設定することができる。
ステップ(a)では、操作に要する時間を短縮する観点から、標識抗コルチゾール抗体と被検対象の血液試料とを混合する際に、血液試料と洗浄液とをあらかじめ混合しておいてもよい。洗浄液は、イムノクロマトグラフィー用検査片上で展開されずに残った標識抗コルチゾール抗体を積極的に押し流すために用いることができる。
洗浄液は、イムノクロマトグラフィー用検査片への物質の非特異的吸着を防ぐ性質を有する液体であればよい。洗浄液としては、例えば、ウシ血清アルブミン、カゼイン、セリシン、ゼラチン、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどのブロッキング用試薬と、Tween(登録商標)シリーズの界面活性剤、Pluronic(登録商標)シリーズの界面活性剤、Triton(登録商標)Xシリーズの界面活性剤などの界面活性剤とを含む中性の緩衝液などが挙げられる。洗浄液の量は、イムノクロマトグラフィー用検査片上で標識抗コルチゾール抗体と血液試料との混合物を展開させるのに十分な量であればよい。
ステップ(a)では、操作に要する時間を短縮し、標識抗コルチゾール抗体と血液試料に含まれているコルチゾールとの複合体を精度よく検出する観点から、超音波を照射しながら標識抗コルチゾール抗体と血液試料とを混合することが好ましい。超音波を照射しながら標識抗コルチゾール抗体と血液試料とを混合するのに要する時間は、その超音波の周波数などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、標識抗コルチゾール抗体と血液試料とが均一に分散するのに要する時間が選ばれる。
なお、ステップ(a)では、被検対象の血液試料をそのままの状態で用いてもよく、あるいはステップ(b)で用いられるイムノクロマトグラフィー用検査片の検出感度などに応じて適宜溶媒で希釈して用いてもよい。
ステップ(a)では、個体の末梢血におけるコルチゾール濃度が一定の基準濃度である場合、被検対象の血液試料を希釈せずにそのままの状態で用いることができる。標識抗コルチゾール抗体と被検対象の血液試料とを混合する際、血液試料10μLあたりの標識抗コルチゾール抗体の数は、血液試料に含まれているコルチゾールの量を高感度で測定する観点から、3×108個以上であることが好ましく、ステップ(a)で用いる標識抗コルチゾール抗体に要するコスト低減の観点から、9×108個以下であることが好ましい。標識抗コルチゾール抗体として金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液を用いる場合には、波長520nmにおける吸光度が1〜10absである金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量が被検対象の血液試料30μLあたり1〜15μLであり、前記吸光度と前記金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量との積が10〜90abs・μLとなるように調整すればよい。
ステップ(a)では、個体の末梢血のコルチゾール濃度が大きく変動することが予想される場合、被検対象の血液試料を希釈せずにそのままの状態で用いるとき、血液試料10μLあたりの標識抗コルチゾール抗体は、血液試料に含まれているコルチゾールの量を容易に測定する観点から、少なくとも2種類であることが好ましい。血液試料10μLあたりの標識抗コルチゾール抗体の個数は、血液試料に含まれているコルチゾールの量を高感度で測定する観点から3×108個以上であり、ステップ(a)で用いる標識抗コルチゾール抗体に要するコストの低減の観点から2.4×109個以下であることが好ましい。
また、コルチゾールの量を簡便な操作によって低コストで測定する観点から、ステップ(a)における血液試料の代わりに下大静脈血を用い、イムノクロマトグラフィー用検査片の基材に固定化されたコルチゾールに結合した標識抗コルチゾール抗体に基づく発色を確認することができる個数の標識抗コルチゾール抗体を、前記少なくとも2種類の個数の標識抗コルチゾール抗体のなかから選択し、ステップ(a)において、選択された個数の標識抗コルチゾール抗体と血液試料とを混合することがより好ましい。
血液試料に含まれているコルチゾールの量を簡便な操作で測定する観点から、ステップ(a)において、第1の標識抗コルチゾール抗体または第1の標識抗コルチゾール抗体の個数よりも多い個数の第2の標識抗コルチゾール抗体を用いることが好ましい。
第1の標識抗コルチゾール抗体の個数は、血液試料に含まれているコルチゾールの量を高感度で測定する観点から、3×108個以上であることが好ましく、ステップ(a)で用いる標識抗コルチゾール抗体に要するコストの低減の観点から、8×108個以下であることが好ましい。また、第2の標識抗コルチゾール抗体の個数は、被検対象の血液試料に含まれているコルチゾールの量を高感度で測定する観点から、8×108個以上であることが好ましく、ステップ(a)で用いる標識抗コルチゾール抗体に要するコストの低減の観点から、2.4×109個以下であることが好ましい。このとき、発色を確認することができる個数の標識抗コルチゾール抗体の選択は、例えば、第1の個数の標識抗コルチゾール抗体と下大静脈血とを混合し、下大静脈血に含まれているコルチゾールと標識抗コルチゾール抗体との抗原抗体反応を行ない、得られた混合物を前記イムノクロマトグラフィー用検査片上で展開させ、混合物中で遊離している標識抗コルチゾール抗体を、イムノクロマトグラフィー用検査片の基材に固定化されたコルチゾールと抗原抗体反応させることにより、コルチゾールと結合させ、そのコルチゾールと結合した標識抗コルチゾール抗体に基づく発色を確認することにより、行なうことができる。この場合、発色を確認することができたとき、ステップ(a)において、その標識抗コルチゾール抗体を用いる。一方、発色を確認することができなかったとき、前記第2の個数の標識抗コルチゾール抗体および下大静脈血を用い、前記第1の標識抗コルチゾール抗体を用いた場合と同様の操作を行なうことにより、発色を確認することができる個数の標識抗コルチゾール抗体を選択することができる。
一方、被検対象の血液試料を溶媒で希釈して用いる場合、標識抗コルチゾール抗体の個数は、検出感度に応じて適宜設定することができる。コルチゾールの量を精度よく簡便な操作で測定する観点から、ステップ(a)において、被検対象の血液試料の代わりに、被検対象の血液試料を1/2倍の濃度となるように希釈した希釈物を被検対象の血液試料と同一体積で用いるとともに、血液試料10μLあたり標識抗コルチゾール抗体1.2×109〜4.8×109個を用いることが好ましい。この場合、血液試料10μLあたりの標識抗コルチゾール抗体の個数の下限値は、被検対象の血液試料に含まれているコルチゾールの量を高感度で測定するのに十分な個数であればよく、血液試料10μLあたりの標識抗コルチゾール抗体の個数の上限値は、用いる標識抗コルチゾール抗体に要するコストを低減させ、血液試料に含まれているコルチゾールの量を低コストで測定する個数であればよい。
次に、ステップ(b)では、ステップ(a)で得られた混合物をコルチゾールが固定化された基材を備えたイムノクロマトグラフィー用検査片上で展開させ、該混合物中で遊離している標識抗コルチゾール抗体を、該基材に固定化されたコルチゾールと抗原抗体反応させてコルチゾールに結合させる。
ステップ(b)で用いられるイムノクロマトグラフィー用検査片は、コルチゾールが固定化された基材を有する。このイムノクロマトグラフィー用検査片によれば、ステップ(a)で得られた混合物を該イムノクロマトグラフィー用検査片上で展開させ、該基材に固定化されているコルチゾールに未反応の標識抗コルチゾール抗体を結合させることができる。
イムノクロマトグラフィー用検査片は、基材に固定化されたコルチゾールのモル数が標識抗コルチゾール抗体のモル数以上であることが好ましい。このとき、ステップ(a)において、血液試料に含まれているコルチゾールと結合していない余剰の標識抗コルチゾール抗体が、基材に固定化されているコルチゾールと結合する。したがって、基材に固定化されているコルチゾールと結合する標識抗コルチゾール抗体の量は、ステップ(a)で用いられた標識抗コルチゾール抗体の量から血液試料に含まれているコルチゾールと結合した標識抗コルチゾール抗体の量を差し引いた量となる。
したがって、評価方法1によれば、イムノクロマトグラフィー用検査片の基材に固定化されているコルチゾールに結合した標識抗コルチゾール抗体の量に基づき、間接的に血液試料に含まれているコルチゾールの量を知ることができるので、被検対象の血液試料が副腎静脈サンプリング検査に適する品質を有するか否かを簡便に評価することができる。
ステップ(b)で用いられるイムノクロマトグラフィー用検査片は、被検対象の血液試料に含まれているコルチゾールの量を精度よく測定する観点から、リンカーを介してコルチゾールが固定化されているイムノクロマトグラフィー用検査片であることが好ましい。
リンカーとしては、例えば、O−カルボキシメチルオキシムなどが挙げられる。基材にコルチゾールを強固に固定させることにより、安定した測定結果を得る観点から、リンカーは、ウシ血清アルブミンを介して基材に固定化されていることが好ましい。
このリンカーを介してコルチゾールが固定化されているイムノクロマトグラフィー用検査片は、血液試料の評価用キットに好適に使用することができる。なお、この血液試料の評価用キットには、イムノクロマトグラフィー用検査片のほか、例えば、検査に必要な容器などが含まれていてもよい。
ステップ(b)で用いられるイムノクロマトグラフィー用検査片には、基材における血液試料の展開を効率よく行なう観点から、基材における血液試料の展開方向の下流側に、吸水性材料からなる吸水パッドが設けられていてもよい。吸水性材料としては、例えば、ニトロセルロースなどが挙げられる。
ステップ(b)で用いられるイムノクロマトグラフィー用検査片は、例えば、コルチゾールを基材に固定化し、該基材をブロッキングした後、洗浄することによって容易に調製することができる。例えば、ウシ血清アルブミンが結合したリンカーを介して、コルチゾールを基材に固定化し、コルチゾールの固定化後の基材をブロッキングした後、洗浄することにより、イムノクロマトグラフィー用検査片を調製することができる。
基材は、前記混合物を展開することができる材料からなる基材であればよい。また、基材は、その基材に固定化されるコルチゾールによって標識抗コルチゾール抗体を捕捉するのに十分な展開速度を得ることができるものであることが好ましい。
基材に純水を展開させたときの展開速度は、用いられる標識抗コルチゾール抗体とコルチゾールとの結合力に応じて適宜設定することができる。基材に純水を展開させたときの展開速度は、イムノクロマトグラフィー用検査片の基材に固定化されているコルチゾールに結合する標識抗コルチゾール抗体を精度よく定量する観点から、好ましくは0.35mm/sec以下、より好ましくは0.32mm/sec以下であり、評価に要する時間を短縮する観点から、好ましくは0.25mm/sec以上、より好ましくは0.28mm/sec以上である。
基材としては、例えば、多孔質ポリエチレンからなるメンブレン、セルロース製の濾紙からなるメンブレン、ニトロセルロースからなるメンブレンなどのメンブレンなどが挙げられる。これらのなかでは、コルチゾールなどの固定化や展開速度の制御などを効率よく行なう観点から、セルロース製の濾紙からなるメンブレンが好ましい。
イムノクロマトグラフィー用検査片上における混合物の展開は、例えば、混合物に含まれている液体成分を展開溶媒とする毛管現象を利用することによって行なうことができる。
次に、ステップ(c)では、ステップ(b)でコルチゾールに結合している標識抗コルチゾール抗体の量を測定する。
コルチゾールに結合している標識抗コルチゾール抗体の量は、標識抗コルチゾール抗体が有する標識物質の量に基づいて測定することができる。例えば、イムノクロマトグラフィー用検査片のコルチゾールと結合している標識抗コルチゾール抗体が有する標識物質の量を測定することにより、標識抗コルチゾール抗体の量の測定を行なうことができる。より具体的には、標識物質が金コロイド粒子である場合、例えば、イムノクロマトグラフィー用検査片のコルチゾールと結合している標識抗コルチゾール抗体が有する金コロイド粒子の吸光度を測定する方法、該金コロイド粒子の反射濃度を測定する方法などにより、標識抗コルチゾール抗体の定量を行なうことができる。吸光度は、吸光度計を用いて測定することができる。また、反射濃度は、デンシトメータを用いて測定することができる。
なお、血液試料の品質を簡便に評価する観点から、ステップ(a)において、被検対象の血液試料と同一体積の末梢血に含まれているコルチゾールと反応する抗体よりも多い量の標識抗コルチゾール抗体と被検対象の血液試料とを混合し、該標識抗コルチゾール抗体と血液試料に含まれているコルチゾールとの抗原抗体反応を行ない、ステップ(b)において、ステップ(a)で用いた量の標識抗コルチゾール抗体と反応するコルチゾールと同量以上の量のコルチゾールが固定化されているイムノクロマトグラフィー用検査片を用いることができる。この場合、イムノクロマトグラフィー用検査片のテストラインにおける標識抗コルチゾール抗体の標識物質の有無を肉眼で観察するだけで、血液試料の品質を容易に評価することができる。
次に、ステップ(d)では、ステップ(c)で測定された標識抗コルチゾール抗体の量に基づき、被検対象の血液試料が副腎静脈サンプリング検査に適する品質を有するか否かを評価する。
ステップ(d)では、ステップ(b)において、イムノクロマトグラフィー用検査片上で被検対象の血液試料を展開させたとき、該イムノクロマトグラフィー用検査片に固定化されているコルチゾールに結合する標識抗コルチゾール抗体に基づく発色により、被検対象の血液試料が副腎静脈サンプリング検査に適する品質を有するか否かを評価することができる。
また、ステップ(d)では、ステップ(b)において、基材に固定化されているコルチゾールのモル数が前記標識抗コルチゾール抗体のモル数以上であるイムノクロマトグラフィー用検査片を用い、イムノクロマトグラフィー用検査片上で被検対象の血液試料を展開させたときに該固定化されているコルチゾールに結合する標識抗コルチゾール抗体に基づいて生じる発色の強度を測定し、測定された発色の強度に基づき、前記被検対象の血液試料が副腎静脈サンプリング検査に適する品質を有するか否かを評価することができる。
イムノクロマトグラフィー用検査片として、基材に固定化されているコルチゾールのモル数が前記標識抗コルチゾール抗体のモル数以上であるイムノクロマトグラフィー用検査片を用い、該イムノクロマトグラフィー用検査片上で被検対象の血液試料を展開させたときに該固定化されているコルチゾールに結合する標識抗コルチゾール抗体に基づく発色が下大静脈の血液試料の測定結果と対比して吸光度の値で4分の1以下であるか、または目視することができないとき、血液試料が副腎静脈サンプリング検査に適する品質を有すると判断することができる。
本発明において、コルチゾールが固定化されている基材を備えたイムノクロマトグラフィー用検査片の代わりに、標識抗コルチゾール抗体が被検対象の血液試料との接触により脱離するように保持された標識抗体相が基材の一端に設けられており、かつ該基材の他端にコルチゾールが固定化されているイムノクロマトグラフィー用検査片を用いることができる。
この標識抗コルチゾール抗体が被検対象の血液試料との接触により脱離するように保持された標識抗体相が基材の一端に設けられており、かつ該基材の他端にコルチゾールが固定化されているイムノクロマトグラフィー用検査片は、血液試料の評価用キットに好適に使用することができる。なお、この血液試料の評価用キットには、イムノクロマトグラフィー用検査片のほか、例えば、検査に必要な容器などが含まれていてもよい。
基材の一端に標識抗コルチゾール抗体が被検対象の血液試料との接触により脱離するように保持された標識抗体相が設けられ、該基材の他端にコルチゾールが固定化されているイムノクロマトグラフィー用検査片を用いる場合、
(A)イムノクロマトグラフィー用検査片の前記標識抗体相側の端部から一定量の被検対象の血液試料を展開させて該標識抗コルチゾール抗体と血液試料に含まれているコルチゾールとを抗原抗体反応させ、その抗原抗体反応後の遊離の標識抗コルチゾール抗体を、該基材に固定化されたコルチゾールと抗原抗体反応させ、該基材に固定化されたコルチゾールと結合させるステップ、
(B)ステップ(A)で基材に固定化されたコルチゾールに結合した標識抗コルチゾール抗体の量を測定するステップ、および
(C)ステップ(B)で測定された標識抗コルチゾール抗体の量に基づき、血液試料が副腎静脈サンプリング検査に適する品質を有するか否かを評価するステップ
により、血液試料の品質を評価することができる。以下、この血液試料の品質評価方法を「評価方法2」という。
ステップ(A)では、イムノクロマトグラフィー用検査片の標識抗体相側の一端から、一定量の被検対象の血液試料を展開させる。イムノクロマトグラフィー用検査片上における被検対象の血液試料の展開は、例えば、血液試料に含まれている液体成分を展開溶媒とする毛管現象を利用することによって行なうことができる。また、必要に応じて、適宜、他の展開溶媒を用いてもよい。展開溶媒の具体例としては、リン酸緩衝液などが挙げられる。
なお、評価方法2においても、被検対象の血液試料としては、例えば、血漿、血清、全血などが挙げられる。被検対象の血液試料のなかでは、血液試料に含まれているコルチゾールと標識抗コルチゾール抗体とをより効率よく結合させて複合体を形成させる観点から、血漿であることが好ましい。一方、前記イムノクロマトグラフィー用検査片において、被検対象の血液試料を滴下し、血球などを濾別するためのサンプルパッドがさらに設けられたイムノクロマトグラフィー用検査片を用いる場合、被検対象の血液試料から血球および血清を分離した試料を予め調製することなく、簡便な操作で評価することができることから、全血であることが好ましい。
ステップ(A)で用いられるイムノクロマトグラフィー用検査片では、基材で被検対象の血液試料を展開させるという簡便な操作で、副腎静脈から採取した血液試料であるかどうかを視覚的に評価するのに十分な量の標識抗コルチゾール抗体を、該血液試料に含まれているコルチゾールと抗原抗体反応させることができる。
イムノクロマトグラフィー用検査片の標識抗体相に保持された標識抗コルチゾール抗体のモル数は、下大静脈血に含まれているコルチゾールのモル数よりも多いことが好ましい。なお、標識抗体相における標識抗コルチゾール抗体のモル数の上限は、基材に保持される標識抗コルチゾール抗体の量やコストなどを考慮して、適宜設定することができる。
評価方法2では、標識抗体相が設けられ、コルチゾールが固定化されているイムノクロマトグラフィー用検査片が用いられるので、一定量の被検対象の血液試料をイムノクロマトグラフィー用検査片で展開させるだけで、標識抗コルチゾール抗体と血液試料に含まれているコルチゾールとを抗原抗体反応させ、その抗原抗体反応後の遊離の標識抗コルチゾール抗体を、該基材に固定化されているコルチゾールとを抗原抗体反応させることにより、該基材に固定化されているコルチゾールに結合させることができる。
ステップ(A)で用いられるイムノクロマトグラフィー用検査片では、コルチゾールは、評価方法1のステップ(b)で用いられるイムノクロマトグラフィー用検査片と同様に、リンカーを介して固定化されていることが好ましい。また、基材にコルチゾールが強固に固定化することにより、安定した測定結果を期待することができることから、リンカーは、ウシ血清アルブミンを介して基材に固定化されていることが好ましい。
ステップ(A)で用いられるイムノクロマトグラフィー用検査片の基材としては、ステップ(b)で用いられるイムノクロマトグラフィー用検査片に用いられる基材と同様の基材が挙げられる。
標識抗体相は、例えば、標識抗コルチゾール抗体を含む溶液を基材に塗布した後、塗布後の基材を適当な条件で乾燥させる方法、水溶性化合物を含む溶液中に標識抗コルチゾール抗体を分散させた分散液を基材に塗布した後、その基材を乾燥させる方法などによって調製することができる。これらの方法のなかでは、被検対象の血液試料と標識抗体相とが接触したときに基材から標識抗コルチゾール抗体が脱離しやすく、かつ被検対象の血液試料と標識抗体相とが接触していないときには基材から標識抗コルチゾール抗体が脱離しがたいことから、水溶性化合物を含む溶液中に標識抗コルチゾール抗体を分散させた分散液を基材に塗布した後、その基材を乾燥させる方法が好ましい。
水溶性化合物としては、例えば、セルロースエーテル、糖などが挙げられる。セルロースエーテルとしては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、オキシエチルセルロース、シアンエチルセルロースなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。また、糖としては、例えば、サッカロースなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
基材における標識抗体相とコルチゾールの固定化部位との間の距離は、被検対象の血液試料に含まれているコルチゾールと標識抗コルチゾール抗体との複合体および被検対象の血液試料に含まれているコルチゾールと結合していない遊離の標識抗コルチゾール抗体が展開するのに十分な距離であればよい。
ステップ(A)で用いられるイムノクロマトグラフィー用検査片には、被検対象の血液試料が全血である場合に簡便な操作で被検対象の血液試料の評価を行なう観点から、被検対象の血液試料を滴下し、血球などを濾別するための吸水性材料からなるサンプルパッドが、基材における標識抗体相よりも血液試料の展開方向の上流側に設けられていてもよい。吸水性材料は、全血から血球などを濾別する機能を有するものであればよく、評価方法1で用いられる吸水性材料と同様の材料が挙げられる。
ステップ(A)で用いられるイムノクロマトグラフィー用検査片には、基材における血液試料の展開を効率よく行なう観点から、基材における血液試料の展開方向の下流側に、吸水性材料からなる吸水パッドが設けられていてもよい。吸水性材料は、評価方法1で用いられる吸水性材料と同様であればよい。
ステップ(A)では、個体の末梢血におけるコルチゾール濃度が一定の基準濃度である場合、被検対象の血液試料を希釈せずにそのままの状態で用いることができる。被検対象の血液試料として、血漿または血清を用いる場合、イムノクロマトグラフィー用検査片を用いる際、血漿または血清10μLあたりの標識抗体相に保持された標識抗コルチゾール抗体の個数は、血漿または血清に含まれているコルチゾールの量を高感度で測定する観点から、3×108個以上であることが好ましく、標識抗コルチゾール抗体に要するコスト低減の観点から、9×108個以下であることが好ましい。被検対象の血液試料として全血を用いる場合、全血10μLあたりの標識抗体相に保持された標識抗コルチゾール抗体の個数は、全血に含まれているコルチゾールの量を高感度で測定する観点から、1.5×108個以上であることが好ましく、標識抗コルチゾール抗体に要するコスト低減の観点から、5.4×108個以下であることが好ましい。標識抗コルチゾール抗体として金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液を用いる場合には、波長520nmにおける吸光度が1〜10absである金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量が被検対象の血液試料30μLあたり1〜15μLであり、前記吸光度と前記金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量との積が10〜90abs・μLとなるように調整すればよい。
ステップ(A)では、被検対象の血液試料として、血漿または血清を用いる場合において、個体の末梢血のコルチゾール濃度が大きく変動することが予想される場合、血漿または血清を希釈せずにそのままの状態で用いるとき、血漿または血清10μLあたりの標識抗コルチゾール抗体は、血漿または血清に含まれているコルチゾールの量を容易に測定する観点から、少なくとも2種類であることが好ましい。このとき、イムノクロマトグラフィー用検査片において、血漿または血清10μLあたりの標識抗コルチゾール抗体の個数は、血漿または血清に含まれているコルチゾールの量を高感度で測定する観点から、3×108個以上であり、標識抗コルチゾール抗体に要するコスト低減の観点から、2.4×109個以下であることが好ましい。ここで、第1の標識抗コルチゾール抗体の個数は、血漿または血清に含まれているコルチゾールの量を高感度で測定する観点から、3×108個以上であることが好ましく、標識抗コルチゾール抗体に要するコスト低減の観点から、8×108個以下であることが好ましい。また、第2の標識抗コルチゾール抗体の個数は、血漿または血清に含まれているコルチゾールの量を高感度で測定する観点から、8×108個以上であることが好ましく、標識抗コルチゾール抗体に要するコスト低減の観点から、2.4×109個以下であることが好ましい。血漿または血清に含まれているコルチゾールの量を簡便な操作で測定する観点から、ステップ(A)において、標識抗体相に保持された標識抗コルチゾール抗体として、第1の標識抗コルチゾール抗体または第1の標識抗コルチゾール抗体の個数よりも多い個数の第2の標識抗コルチゾール抗体を用いることが好ましい。
また、コルチゾールの量を簡便な操作により、低コストで測定する観点から、ステップ(A)における血液試料の代わりに下大静脈血を用い、イムノクロマトグラフィー用検査片の基材に固定化されたコルチゾールに結合した標識抗コルチゾール抗体に基づく発色を確認することができ、標識抗体相に保持された標識抗コルチゾール抗体の個数が異なる少なくとも2種類の個数のイムノクロマトグラフィー用検査片を選択し、ステップ(A)において、選択されたイムノクロマトグラフィー用検査片を用いることがより好ましい。
また、ステップ(A)では、被検対象の血液試料として、全血を用いる場合において、個体の末梢血のコルチゾール濃度が大きく変動することが予想される場合、全血を希釈せずにそのままの状態で用いるとき、全血10μLあたりの標識抗コルチゾール抗体は、全血に含まれているコルチゾールの量を容易に測定する観点から、少なくとも2種類であることが好ましい。このとき、イムノクロマトグラフィー用検査片において、全血10μLあたりの標識抗コルチゾール抗体の個数は、全血に含まれているコルチゾールの量を高感度で測定する観点から、1.5×108個以上であり、標識抗コルチゾール抗体に要するコスト低減の観点から、1.44×109個以下であることが好ましい。ここで、第1の標識抗コルチゾール抗体の個数は、全血に含まれているコルチゾールの量を高感度で測定する観点から、1.5×108個以上であることが好ましく、標識抗コルチゾール抗体に要するコスト低減の観点から、4×108個以下であることが好ましい。また、第2の標識抗コルチゾール抗体の個数は、全血に含まれているコルチゾールの量を高感度で測定する観点から、4×108個以上であることが好ましく、標識抗コルチゾール抗体に要するコスト低減の観点から、1.44×109個以下であることが好ましい。全血に含まれているコルチゾールの量を簡便な操作で測定する観点から、ステップ(A)において、標識抗体相に保持された標識抗コルチゾール抗体として、第1の標識抗コルチゾール抗体または第1の標識抗コルチゾール抗体の個数よりも多い個数の第2の標識抗コルチゾール抗体を用いることが好ましい。
ステップ(A)において、被検対象の血液試料を希釈せずにそのままの状態で用いるとき、イムノクロマトグラフィー用検査片の選択は、例えば、標識抗体相に前記第1の個数の標識抗コルチゾール抗体が保持されたイムノクロマトグラフィー用検査片(以下、「検査片A」という)および下大静脈血を用い、検査片Aの標識抗体相側の一端から、下大静脈血を展開させ、検査片Aの基材に固定化されたコルチゾールに結合した標識抗コルチゾール抗体に基づく発色を確認することにより、行なうことができる。この場合、発色が確認されたとき、ステップ(A)において、イムノクロマトグラフィー用検査片として、この検査片Aを用いる。一方、発色を確認されなかったとき、標識抗体相に前記第2の個数の標識抗コルチゾール抗体が保持されたイムノクロマトグラフィー用検査片(以下、「検査片B」という)および下大静脈血を用い、検査片Aを用いた場合と同様の操作を行なうことにより、イムノクロマトグラフィー用検査片を選択することができる。
一方、被検対象の血液試料を溶媒で希釈した希釈物を用いる場合、標識抗コルチゾール抗体の個数は、検出感度に応じて適宜設定することができる。被検対象の血液試料が血漿または血清であるとき、コルチゾールの量を精度よく簡便な操作で測定する観点から、ステップ(A)において、被検対象の血液試料の代わりに、被検対象の血液試料を1/2倍の濃度となるように希釈した希釈物を該被検対象の血液試料と同一体積で用いるとともに、該血液試料10μLあたり標識抗コルチゾール抗体の個数が1.2×109〜4.8×109個であるイムノクロマトグラフィー用検査片を用いることが好ましい。この場合、血液試料10μLあたりの標識抗コルチゾール抗体の個数の下限値は、被検対象の血液試料に含まれているコルチゾールの量を高感度で測定するのに十分な個数であればよく、血液試料10μLあたりの標識抗コルチゾール抗体の個数の上限値は、用いる標識抗コルチゾール抗体に要するコストを低減させ、血液試料に含まれているコルチゾールの量を低コストで測定する個数であればよい。被検対象の血液試料が全血であるとき、ステップ(A)において、被検対象の血液試料の代わりに、被検対象の血液試料を1/2倍の濃度となるように希釈した希釈物を被検対象の血液試料と同一体積で用いるとともに、血液試料10μLあたり標識抗コルチゾール抗体の個数が6×108〜2.88×109個であるイムノクロマトグラフィー用検査片を用いることが好ましい。
ステップ(B)では、ステップ(A)で基材に固定化されているコルチゾールに結合した標識抗コルチゾール抗体の量を測定する。標識抗コルチゾール抗体の量の測定は、評価方法1のステップ(c)と同様にして行なうことができる。
また、ステップ(B)において、基材に固定化されているコルチゾールのモル数が前記標識抗コルチゾール抗体のモル数以上であるイムノクロマトグラフィー用検査片を用い、イムノクロマトグラフィー用検査片上で被検対象の血液試料を展開させたときに該固定化されているコルチゾールに結合する標識抗コルチゾール抗体に基づいて生じる発色の強度を測定し、測定された発色の強度に基づき、前記被検対象の血液試料が副腎静脈サンプリング検査に適する品質を有するか否かを評価することができる。
イムノクロマトグラフィー用検査片として、基材に固定化されているコルチゾールのモル数が、前記標識抗コルチゾール抗体のモル数以上であるイムノクロマトグラフィー用検査片を用い、該イムノクロマトグラフィー用検査片上で被検対象の血液試料を展開させたときに該固定化されているコルチゾールに結合する標識抗コルチゾール抗体に基づく発色により、前記被検対象の血液試料が副腎静脈サンプリング検査に適する品質を評価することができる。このとき、下大静脈の血液試料の測定結果と対比して、吸光度が4分の1以下となるか、あるいは発色が視認することができないとき、血液試料が副腎静脈サンプリング検査に適する品質を有すると判断することができる。
ステップ(C)では、ステップ(B)で測定された標識抗コルチゾール抗体の量に基づき、血液試料が副腎静脈サンプリング検査に適する品質を有するか否かを評価する。血液試料が副腎静脈サンプリング検査に適する品質を有するか否かの評価は、評価方法1のステップ(d)と同様にして行なうことができる。
本発明において、コルチゾールが固定化されているイムノクロマトグラフィー用検査片の代わりに、抗コルチゾール抗体が固定化されているイムノクロマトグラフィー用検査片を用いることができる。
前記イムノクロマトグラフィー用検査片を用いる場合、
(I)抗コルチゾール抗体が固定化されているイムノクロマトグラフィー用検査片上で被検対象の血液試料を展開させ、該血液試料に含まれているコルチゾールを、該基材に固定化されている抗コルチゾール抗体と抗原抗体反応させることにより、抗コルチゾール抗体と結合させるステップ、
(II)ステップ(I)の後、イムノクロマトグラフィー用検査片に標識コルチゾールをさらに展開させ、該標識コルチゾールを、該基材に固定化されている抗コルチゾール抗体のうち血液試料に含まれているコルチゾールに結合していない抗コルチゾール抗体と抗原抗体反応させることにより、基材に固定化されている抗コルチゾール抗体に結合させるステップ、
(III)ステップ(II)で抗コルチゾール抗体に結合している標識コルチゾールを定量するステップ、
(IV)ステップ(III)で定量された標識コルチゾールの量と基材に固定化されている抗コルチゾール抗体の量とにより、血液試料に含まれているコルチゾールの量を算出するステップ、および
(V)ステップ(IV)で算出されたコルチゾールの量に基づき、血液試料が副腎静脈サンプリング検査に適する品質を有するか否かを評価するステップ
により、血液試料の品質を評価することができる。以下、この血液試料の品質評価方法を「評価方法3」という。
ステップ(I)では、抗コルチゾール抗体が固定化されているイムノクロマトグラフィー用検査片上で被検対象の血液試料を展開させ、該血液試料に含まれているコルチゾールを、基材に固定化されている抗コルチゾール抗体と抗原抗体反応させ、該抗コルチゾール抗体に結合させる。イムノクロマトグラフィー用検査片上における被検対象の血液試料の展開は、例えば、血液試料に含まれている液体成分を展開溶媒とする毛管現象を利用することによって行なうことができる。
ステップ(I)で用いられるイムノクロマトグラフィー用検査片の基材の一端には、抗コルチゾール抗体が固定化されている。このイムノクロマトグラフィー用検査片は、例えば、基材に抗コルチゾール抗体を固定化し、ブロッキングした後、洗浄することによって作製することができる。
基材は、血液試料を展開することができる材料で構成されていればよい。また、基材は、血液試料を展開したときに、その基材に固定化されている抗コルチゾール抗体によってコルチゾールを捕捉するのに十分な展開速度を得ることができる基材であることが好ましい。展開速度および基材は、評価方法1と同様であればよい。
ステップ(II)では、ステップ(I)後のイムノクロマトグラフィー用検査片に標識コルチゾールをさらに展開させ、標識コルチゾールを、基材に固定化されている抗コルチゾール抗体のうち、血液試料に含まれているコルチゾールと結合していない抗コルチゾール抗体と抗原抗体反応させることにより、該基材に固定化されている抗コルチゾール抗体と結合させる。イムノクロマトグラフィー用検査片上におけるコルチゾールの展開は、例えば、適切な展開溶媒を用い、毛管現象を利用することによって行なうことができる。展開溶媒としては、例えば、リン酸緩衝液などが挙げられる。
標識コルチゾールは、例えば、金属コロイド粒子、蛍光物質などの標識物質をコルチゾールに慣用の方法で結合させることによって得ることができる。
血液試料の品質をより簡便に評価する観点から、イムノクロマトグラフィー用検査片の基材には、被検対象の血液試料と同一体積の末梢血に含まれているコルチゾールと反応する抗体よりも多量の抗コルチゾール抗体が固定化されており、ステップ(II)に用いられる標識コルチゾールの量は、該基材に固定化されている抗コルチゾール抗体と反応するコルチゾールと同量以上であることが好ましい。
ステップ(III)では、抗コルチゾール抗体に結合されている標識コルチゾールを定量する。この標識コルチゾールの定量は、標識コルチゾールに含まれている標識物質の量に基づいて行なうことができる。
ステップ(IV)では、ステップ(III)で定量された標識コルチゾールの量と前記基材に固定化されている抗コルチゾール抗体の量とにより、血液試料に含まれているコルチゾールの量を算出する。
ステップ(V)では、ステップ(IV)で算出されたコルチゾールの量に基づき、血液試料が副腎静脈サンプリング検査に適する品質を有するか否かを評価する。なお、ステップ(V)における血液試料が副腎静脈サンプリング検査に適する品質を有するか否かの評価は、評価方法1のステップ(e)と同様であればよい。
以上説明したように、本発明の評価方法によれば、血液試料の品質を迅速かつ簡便に評価することができることから、例えば、血液試料が副腎静脈サンプリング検査に適する試料であるか否かを迅速かつ簡便に評価することができる。
また、本発明の評価方法では、標識抗コルチゾール抗体が用いられているので、少量のコルチゾールを高感度で検出することができることから、例えば、血液試料が副腎静脈サンプリング検査に適する試料であるか否かを少量の血液試料を用いるだけで簡便に評価することができる。
したがって、本発明の評価方法によれば、副腎静脈サンプリング検査に適する血液試料を簡便に得ることができるため、副腎静脈サンプリング検査の成功率が高められることが期待される。
本発明によれば、血液試料の供給源を特定することもできる。血液試料の供給源は、例えば、
(i)被検対象の血液試料と標識抗コルチゾール抗体とを混合し、標識抗コルチゾール抗体と血液試料に含まれているコルチゾールとの抗原抗体反応を行なうステップ、
(ii)ステップ(i)で得られた混合物をコルチゾールが固定化されているイムノクロマトグラフィー用検査片上で展開させ、前記混合物中で遊離している標識抗コルチゾール抗体を基材に固定化されているコルチゾールと抗原抗体反応させてコルチゾールに結合させるステップ、
(iii)ステップ(ii)によってコルチゾールに結合している標識抗コルチゾール抗体の量を測定するステップ、
(iv)ステップ(iii)によって測定された標識抗コルチゾール抗体の量に基づき、血液試料の供給源を特定するステップ
により、特定することができる。
ステップ(i)〜(iii)は、それぞれ、評価方法1のステップ(a)〜(c)と同様にして行なうことができる。
ステップ(iv)では、ステップ(iii)で測定された標識抗コルチゾール抗体の量に基づいて、血液試料の供給源を特定する。
ステップ(iv)では、例えば、ステップ(iii)で測定された標識抗コルチゾール抗体の量(以下、「抗体量a」という)と、前記血液試料と同一体積の下大静脈血を用いてステップ(i)〜(iii)を行なったときの標識抗コルチゾール抗体の量(以下、「抗体量b」という)とを比較する方法などにより、血液試料の供給源を特定することができる。
前記方法では、抗体量aが抗体量bよりも少ないほど、被検対象の血液試料に含まれているコルチゾールの量が下大静脈血に含まれているコルチゾールの量よりも多くなるので、被検対象の血液試料の供給源がより副腎近傍に位置する静脈であると特定することができる。
以上のように、血液試料の供給源の特定方法によれば、血液試料の供給源を迅速かつ簡便に特定することができる。したがって、この特定方法によれば、例えば、副腎静脈サンプリング検査におけるカテーテルによるサンプル採取位置を迅速かつ簡便に特定することができる。
また、この特定方法では、標識抗コルチゾール抗体が用いられているので、少量のコルチゾールを高感度で検出することができることから、例えば、少量の血液試料を用いるだけで侵襲度が高い副腎静脈サンプリング検査の精度を確認することができる。
したがって、前記血液試料の供給源の特定方法は、カテーテルによる血液試料の採取位置が高感度で迅速かつ簡便に特定することができるので、副腎静脈サンプリング検査の成功率がより一層向上することが期待される。
本発明においては、被検対象物質を含有する被検対象の試料と該被検対象物質に対する金属コロイド標識抗体とを、超音波を照射しながら混合し、得られた混合物を、該被検対象物質が固定化されている基材を備えたイムノクロマトグラフィー用検査片上で展開させる方法により、被検対象物質を検出することができる。
この方法によれば、超音波を照射しながら被検対象物質を含有する被検対象の試料と該被検対象物質に対する金属コロイド標識抗体とを混合するので、通常、金属コロイド標識抗体を用いるイムノクロマトグラフィーでは被検対象物質の検出が困難となることがあるのに対して、被検対象物質を精度よく検出することができるという利点がある。なお、超音波を照射する際の条件は、前記と同様であればよい。
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例1(イムノクロマトグラフィー用検査片の調製)
基材であるメンブレン(ミリポア社製、商品名:Hi−Flow Plus、60mm×4mm)の一端(以下、「上流端」という)を試料供給部とし、試料供給部から長手方向(メンブレンの長辺方向)の他端(以下、「下流端」という)に、コルチゾール−3−カルボキシメチルオキシム−BSA(フィッツジェラルド社製)を1mg/mLの濃度となるように10mMリン酸緩衝液(pH7.5)に溶解させた溶液(以下、「コルチゾール溶液」という)をメンブレンの短辺に平行に線状となるように塗布し、室温で乾燥させた。その後、メンブレンをウシ血清アルブミン(シグマ社製)でブロッキングした。
得られたメンブレンにおけるコルチゾール溶液の塗布部分よりも長手方向の下流端に吸収パッド(ミリポア社製、20mm×4mm)を貼り合せることにより、イムノクロマトグラフィー用検査片を得た。
次に、イムノクロマトグラフィー用検査片のメンブレン上に、コルチゾール−3−カルボキシメチルオキシム−BSAが固定化されているかどうかを、金コロイド標識抗コルチゾール抗体を前記メンブレンに展開させ、赤いバンドが現れるかどうかを確認することによって調べた。その結果、メンブレンに赤いバンドが現れたことから、イムノクロマトグラフィー用検査片のメンブレンにコルチゾール−3−カルボキシメチルオキシム−BSAが固定化されていることが確認された。
このことから、リンカーであるO−カルボキシメチルオキシムと、BSA(ウシ血清アルブミン)とをコルチゾールに結合させることにより、コルチゾールが固定化されたイムノクロマトグラフィー用検査片が得られることがわかる。
なお、メンブレンにおけるコルチゾール−3−カルボキシメチルオキシム−BSAの固定化部分をイムノクロマトグラフィー用検査片のテストラインとした。
比較例1
コルチゾール−3−カルボキシメチルオキシム−BSAの代わりにコルチゾールを用いたこと以外は、実施例1と同様にして検査片を得た。
次に、イムノクロマトグラフィー用検査片のメンブレン上に、コルチゾールが固定化されているかどうかを、金コロイド標識抗コルチゾール抗体を前記メンブレンに展開させ、赤いバンドが現れるかどうかを確認することによって調べた。その結果、赤いバンドが現れなかったため、この検査片のメンブレンにコルチゾールが固定化されていないことが確認された。
実施例2
(1)イムノクロマトグラフィー用試料の調製
静脈カテーテル法により、被検者から全血試料を採取した。図1は、全血試料の採取位置の概略説明図である。図1において、1は下大静脈付近、2は右副腎近傍、3は左副腎上流、4は左副腎下流、5は右腎臓、6は左腎臓、7は右副腎、8は左副腎を示す。
被検者の下大静脈付近1から採取した全血試料500μLから血漿を得た。得られた血漿30μLと金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液(波長520nmにおける吸光度:約4abs)2.5μL(金コロイド標識抗コルチゾール抗体の量)とを反応セルに入れ、反応セル内で得られた混合物をピペットの先で軽く攪拌した。
なお、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液は、コルチゾール抗体(エンバイオテックラボラトリー社製、商品名:anti-cortisol)と金コロイド粒子溶液〔ビービーアイ(BBI)社製、商品名:Gold Colloid〕とを混合し、得られた混合物を静置し、遠心分離し、その上清を取り除いて遊離の抗コルチゾール抗体および遊離の金コロイド粒子を取り除いた後、得られた金コロイド標識抗コルチゾール抗体を緩衝液に混濁させることによって得られる溶液である。
次に、反応セルを超音波洗浄機(アズワン社製)中に入れ、42kHz、100Wの超音波を1分間発生させることにより、混合物を攪拌した。この混合物を実験番号1の試料として用いた。
また、実験番号1において、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量を5μL、7.5μLまたは10μLに変更したことを除き、実験番号1と同様にして、それぞれ順に、実験番号2の試料、実験番号3の試料および実験番号4の試料を調製した。
(2)イムノクロマトグラフィー
前記(1)で得られた反応セル内の混合物中に、実施例1で得られたイムノクロマトグラフィー用検査片の試料供給部を浸漬し、4分間放置した後、イムノクロマトグラフィー用検査片を洗浄液中に4分間浸漬することにより、イムノクロマトグラフィー用検査片を洗浄した。
次に、このイムノクロマトグラフィー用検査片のテストラインでの金コロイド粒子に由来するバンドの有無を観察した。
実施例2におけるイムノクロマトグラフィー用検査片のテストラインでの金コロイド粒子に由来するバンドの有無を観察した結果を図2の図面代用写真に示す。レーン1は実験番号1の試料、レーン2は実験番号2の試料、レーン3は実験番号3、レーン4は実験番号4の試料である。
図2に示された結果から、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量が5μL(実験番号2)以上である場合、すなわち、血液試料10μLあたりの金コロイド標識抗コルチゾール抗体の量が6.7μL・abs(3.8×108個)である場合、テストラインにおいて、金コロイド粒子に由来するバンドが検出されることがわかる。
したがって、金コロイド標識抗コルチゾール抗体と血液試料とを混合し、金コロイド標識抗コルチゾール抗体と血液試料中のコルチゾールとの抗原抗体反応を行なうとき、被検対象の血液試料が副腎近傍の血液試料であるとき、イムノクロマトグラフィー用検査片のテストラインでバンドが現れないようにし、被検対象の血液試料が副腎近傍の血液試料ではないとき、イムノクロマトグラフィー用検査片のテストラインでバンドが現れるように、金コロイド標識抗コルチゾール抗体の量を設定することができることがわかる。
実施例3
実施例2において、血液試料として、図1の被検者の下大静脈付近1から採取した下大静脈血の全血試料から得られた血漿(以下、「基準試料」という)、図1の右副腎近傍2から採取した全血試料から得られた血漿(以下、「右副腎近傍試料」という)、図1の左副腎下流3から採取した全血試料から得られた血漿(以下、「左副腎下流試料」という)および図1の左副腎上流4から採取した全血試料から得られた血漿(以下、「左副腎上流試料」という)を用い、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量を5μL〔金コロイド標識抗コルチゾール抗体の量:20μL・abs(11.4×108個)〕または7.5μL〔金コロイド標識抗コルチゾール抗体の量:30μL・abs(17.25×108個)〕としたこと以外は、実施例2と同様にしてイムノクロマトグラフィーを行なった。
次に、各イムノクロマトグラフィー用検査片のテストラインの波長520nmにおける吸光度を吸光度計〔浜松ホトニクス(株)製、商品名:イムノクロマトリーダーICA−1000〕で測定した。
なお、各血液試料についてイムノクロマトグラフィーを3回測定した。金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量が5μLの場合のイムノクロマトグラフィー後のイムノクロマトグラフィー用検査片のテストラインでの吸光度およびこの吸光度から算出した各試料に含まれているコルチゾールの量を表1に示す。
表1に示された結果から、副腎に近い位置で採取した試料、すなわち右副腎近傍試料、左副腎上流試料および左副腎下流試料の場合、テストラインの吸光度は、16〜39absであるのに対し、副腎から離れた位置で採取した基準試料の場合、テストラインの吸光度は、245absであることがわかる。
また、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量が7.5μLの場合のイムノクロマトグラフィー後のイムノクロマトグラフィー用検査片のテストラインでの吸光度およびこの吸光度から算出した各試料に含まれているコルチゾールの量を表2に示す。
表2に示された結果から、右副腎近傍試料、左副腎上流試料および左副腎下流試料の吸光度は40〜51absであるのに対し、基準試料の吸光度は334absであることがわかる。
また、表1および表2に示された結果から、副腎に近い位置で採取した試料に含まれているコルチゾールの量は277〜347ng/mLであるのに対し、基準試料に含まれているコルチゾールの量は148ng/mLであることから、副腎に近い位置で採取した試料のコルチゾール濃度は、基準試料である末梢血のコルチゾール濃度と比べて、2倍程度高くなっていることがわかる。
これらの結果から、血液試料に含まれているコルチゾール濃度が副腎と血液試料の採取位置との間の距離などの位置関係と相関関係を有するため、基材に固定化されているコルチゾールの量と、このコルチゾールに結合している標識抗コルチゾール抗体の量とにより、血液試料が副腎静脈サンプリング検査に適する品質を有するかどうかを判断することができることがわかる。
また、表1および表2に示された結果から、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量が7.5μLであるときよりも5μLであるときのほうが、左副腎上流試料と左副腎下流試料との間でのコルチゾール濃度差が明確に現れていることがわかる。
したがって、血液試料として、血漿を希釈せずにそのままの状態で用い、副腎からの距離などの位置関係の相違の評価を行なう場合、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量が少ないことが好ましいことがわかる。
以上の結果から、表1および表2における各試料間の吸光度の相違は、イムノクロマトグラフィーの操作に起因する相違ではなく、血液試料に含まれているコルチゾール濃度と位置関係との間の相関関係に起因することがわかる。
実験例1
血漿30μLと、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液〔520nmにおける吸光度が約3abs〕7.5μL〔金コロイド標識抗コルチゾール抗体の量:22.5μL・abs(13.5×108個)〕とを反応セルに入れ、得られた各混合物をピペットの先で攪拌し、実験番号5の試料を得た。なお、ELISA法によって測定した血漿のコルチゾール濃度は59ng/mLであった。
また、実験番号5において、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液7.5μLの代わりに、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液10μL〔金コロイド標識抗コルチゾール抗体の量:30μL・abs(17.7×108個)〕としたことを除き、前記と同様にして実験番号6の試料を調製した。
さらに、実験番号5において、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液7.5μLの代わりに、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液12.5μL〔金コロイド標識抗コルチゾール抗体の量:37.5μL・abs(22.5×108個)〕としたことを除き、前記と同様にして実験番号7の試料を調製した。
実験例2
実験例1で用いた血漿とは異なる血漿を用いたことを除き、実験例1と同様にしてそれぞれ実験番号8〜10の試料を調製した。なお、ELISA法によって測定した血漿のコルチゾール濃度は403ng/mLであった。
実験例3
実験例1および2それぞれで用いた血漿とは異なる血漿を用いたことを除き、実験例1と同様にしてそれぞれ実験番号11〜13の試料を調製した。なお、ELISA法によって測定した血漿のコルチゾール濃度は192ng/mLであった。
試験例1
実験例1〜3で得られた反応セル内の試料中に、実施例1で得られたイムノクロマトグラフィー用検査片の試料供給部を浸漬し、4分間放置した。その後、イムノクロマトグラフィー用検査片を洗浄液〔0.1質量%ウシ血清アルブミン、0.1質量%Tween(登録商標)20、10mMリン酸緩衝液(pH7.5)〕中に4分間浸漬することにより、イムノクロマトグラフィー用検査片を洗浄した。
その後、各イムノクロマトグラフィー用検査片のテストラインの波長520nmにおける吸光度を吸光度計〔浜松ホトニクス(株)製、商品名:イムノクロマトリーダーICA−1000〕で測定した。
イムノクロマトグラフィー後のイムノクロマトグラフィー用検査片のテストラインでの吸光度を表3に示す。
表3に示された結果から、コルチゾール濃度が59ng/mLである血漿の場合(実験例番号1)において、イムノクロマトグラフィー用検査片のテストラインでの吸光度は、実験番号6の試料(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:10μL)を用いたときに最も大きくなることがわかる。
また、イムノクロマトグラフィー用検査片のテストラインでの吸光度は、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量が7.5μLである場合よりも、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量が10μLである場合のほうが大きいことがわかる。
金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量が10μL以上であってもイムノクロマトグラフィー用検査片のテストラインでの吸光度が高くなっていないことから、イムノクロマトグラフィー用検査片の基材に固定化されているコルチゾールは、金コロイド標識抗コルチゾール抗体に対してほぼ飽和していると考えられる。
なお、イムノクロマトグラフィー用検査片の基材に固定化されているすべてのコルチゾールに金コロイド標識抗コルチゾール抗体が結合した場合、イムノクロマトグラフィー用検査片のテストラインでの吸光度は約300absとなる。したがって、実験例1において、実験番号6の試料および実験番号7の試料(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:12.5μL)では、イムノクロマトグラフィー用検査片に固定化されているほぼすべてのコルチゾールに金コロイド標識抗コルチゾール抗体が結合し、遊離の金コロイド標識抗コルチゾール抗体が存在していると考えられる。
試験例2
(1)イムノクロマトグラフィー用試料の調製
コルチゾール濃度が59ng/mLである血漿30μLと、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液(520nmにおける吸光度:約4abs)5μL〔金コロイド標識抗コルチゾール抗体の量:20μL・abs(11.5×108個)〕とを反応セルに入れ、反応セル内で得られた混合物をピペットの先で軽く攪拌した。得られた混合物を実験番号14の試料として用いた。
また、実験番号14において、コルチゾール濃度が59ng/mLである血漿の代わりにコルチゾール濃度が192ng/mLである血漿を用いたことを除き、前記と同様にして調製した試料を実験番号15の試料として用いた。
実験番号14の試料が入った反応セルを超音波洗浄機(アズワン社製)中に入れ、42kHz、100Wの超音波を1分間発生させることにより、試料を攪拌した。この攪拌後の試料を実験番号16の試料として用いた。
また、実験番号16において、コルチゾール濃度が59ng/mLである血漿の代わりにコルチゾール濃度が192ng/mLである血漿を用いたことを除き、前記と同様にして調製した試料を実験番号17の試料として用いた。
(2)イムノクロマトグラフィー
前記(1)で得られた反応セル内の試料中に、実施例1で得られたイムノクロマトグラフィー用検査片の試料供給部を浸漬し、4分間放置した後、各イムノクロマトグラフィー用検査片のテストラインでの金コロイド粒子に由来するバンドの有無を観察した。そのイムノクロマトグラフィー用検査片を図3の図面代用写真に示す。
図3において、1は実験番号14の試料を供したイムノクロマトグラフィー用検査片、2は実験番号15の試料を供したイムノクロマトグラフィー用検査片、3は実験番号16の試料を供したイムノクロマトグラフィー用検査片、4は実験番号17の試料を供したイムノクロマトグラフィー用検査片を示す。
また、各イムノクロマトグラフィー用検査片のテストラインの波長520nmにおける吸光度を吸光度計〔浜松ホトニクス(株)製、商品名:イムノクロマトリーダーICA−1000〕で測定した。
図3に示された結果から、実験番号16の試料を供したイムノクロマトグラフィー用検査片のテストラインにおけるバンドは、血漿と金コロイド標識抗コルチゾール抗体との混合物に超音波が照射されていることから、実験番号14の試料を供したイムノクロマトグラフィー用検査片のテストラインにおけるバンドと比べて発色が強いことがわかる。
なお、実験番号14の試料を供したイムノクロマトグラフィー用検査片のテストラインの波長520nmにおける吸光度は167absであり、実験番号16の試料を供したイムノクロマトグラフィー用検査片のテストラインの波長520nmにおける吸光度は288absであった。
一方、実験番号14および実験番号16よりもコルチゾール濃度が高い実験番号15および実験番号17の試料を供したイムノクロマトグラフィー用検査片のテストラインには、バンドが見られないことがわかる。
なお、試料に超音波を照射することによって抗原抗体反応が阻害されるのであれば、コルチゾール濃度が高い試料を用いたとき、イムノクロマトグラフィー用検査片のテストラインにバンドが現れると考えられる。しかし、試料に超音波が照射されていない実験番号15および試料に超音波が照射された実験番号17のいずれにおいても、テストラインにバンドが現れていないのに対し、コルチゾール濃度が低い実験番号14および実験番号16では、テストラインにバンドが現れている。このことから、血漿と金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液との混合物に超音波を照射することにより、遊離の金コロイド標識抗コルチゾール抗体をより高い精度で検出することができることがわかる。
実験例4
メンブレンとして、純水を展開させたときの展開速度が0.45mm/secであるメンブレン(ミリポア社製、商品名:Hi−Flow Plus、60mm×4mm)を用いたことを除き、実施例1と同様にして、実験番号18のイムノクロマトグラフィー用検査片を作製した。
実験例5
純水を展開させたときの展開速度が0.45mm/secであるメンブレンの代わりに純水を展開させたときの展開速度が0.30mm/secであるメンブレン(ミリポア社製、商品名:Hi−Flow Plus、60mm×4mm)を用いたことを除き、実験例4と同様にして実験番号19のイムノクロマトグラフィー用検査片を作製した。
実験例6
純水を展開させたときの展開速度が0.45mm/secであるメンブレンの代わりに、純水を展開させたときの展開速度が0.22mm/secであるメンブレン(ミリポア社製、商品名:Hi−Flow Plus、60mm×4mm)を用いたことを除き、実験例4と同様にして、実験番号20のイムノクロマトグラフィー用検査片を作製した。
試験例3
コルチゾール濃度が59ng/mLである血漿30μLと金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液(520nmにおける吸光度:約5abs)5μL〔金コロイド標識抗コルチゾール抗体の量:25μL・abs(15×108個)〕とを反応セルに入れて混合し、得られた混合物をピペットの先で攪拌した。
次に、この反応セルを超音波洗浄機(アズワン社製)中に入れ、42kHz、100Wの超音波を1分間発生させることにより、混合物を攪拌し、試料を得た。
反応セル内の試料中に、実験番号18のイムノクロマトグラフィー用検査片の試料供給部を浸漬し、4分間放置した後、この検査片のメンブレンを洗浄液〔0.1質量%ウシ血清アルブミン、0.1質量%Tween(登録商標)20、10mMリン酸緩衝液(pH7.5)〕中に4分間浸漬することにより洗浄した。
その後、メンブレン上における金コロイド粒子に由来するバンドを観察した。また、メンブレン上に生じたバンドの波長520nmにおける吸光度を吸光度計〔浜松ホトニクス(株)製、商品名:イムノクロマトリーダーICA−1000〕で測定した。
実験番号18のイムノクロマトグラフィー用検査片の代わりに実験番号19のイムノクロマトグラフィー用検査片を用いたことを除き、前記と同様にしてメンブレン上における金コロイド粒子に由来するバンドを観察し、メンブレン上に生じたバンドの波長520nmにおける吸光度を測定した。
また、実験番号18のイムノクロマトグラフィー用検査片の代わりに実験番号20のイムノクロマトグラフィー用検査片を用いたことを除き、前記と同様にしてメンブレン上における金コロイド粒子に由来するバンドを観察し、メンブレン上に生じたバンドの波長520nmにおける吸光度を測定した。
試験例3におけるイムノクロマトグラフィー後のメンブレンを図4の図面代用写真に示す。図4において、1は実験番号18のメンブレン、2は実験番号19のメンブレン、3は実験番号20のメンブレンである。また、各バンドにおける吸光度を各メンブレンの下部に示す。
図4に示された結果から、実験番号19のメンブレン上における金コロイド粒子に由来するバンドの吸光度は、660absであり、最も高いことがわかる。また、メンブレン上における金コロイド粒子に由来するバンドの幅は、実験番号18が最も広く、実験番号20が最も狭いことがわかる。このことから、展開速度が0.22mm/sec以上であり、0.45mm/sec以下であるメンブレン、特に展開速度が0.30mm/secであるメンブレンを用いることにより、メンブレン上における金コロイド粒子に由来するバンドを容易に検出することができることがわかる。
以上の結果から、本発明の血液試料の品質評価方法によれば、少量の血液試料を用いて迅速かつ簡便に血液試料の品質を評価することができることがわかる。
実験例7
コルチゾール濃度が57ng/mL(実験番号21)、170ng/mL(実験番号22)、231ng/mL(実験番号23)、318ng/mL(実験番号24)、384ng/mL(実験番号25)、517ng/mL(実験番号26)、586ng/mL(実験番号27)または770ng/mL(実験番号28)である血漿10μLと、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液〔520nmにおける吸光度が約5abs〕20μL〔金コロイド標識抗コルチゾール抗体の量:100μL・abs(6×109個)〕とを反応セルに入れ、反応セル内で得られた混合物をピペットの先で軽く攪拌し、実験番号21〜28の試料を得た。
実験例8
コルチゾール濃度が57ng/mL(実験番号29)、231ng/mL(実験番号30)、318ng/mL(実験番号31)、384ng/mL(実験番号32)、517ng/mL(実験番号33)または586ng/mL(実験番号34)である血漿10μLと、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液〔520nmにおける吸光度が約5abs〕6μL〔金コロイド標識抗コルチゾール抗体の量:30μL・abs(1.8×109個)〕とを反応セルに入れ、反応セル内で得られた混合物をピペットの先で軽く攪拌した。
実験例9
コルチゾール濃度が57ng/mL(実験番号35)、77ng/mL(実験番号36)、110ng/mL(実験番号37)、137ng/mL(実験番号38)、170ng/mL(実験番号39)、202ng/mL(実験番号40)、218ng/mL(実験番号41)、231ng/mL(実験番号42)、242ng/mL(実験番号43)、318ng/mL(実験番号44)、384ng/mL(実験番号45)または517ng/mL(実験番号46)である血漿10μLと、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液〔520nmにおける吸光度が約5abs〕2μL〔金コロイド標識抗コルチゾール抗体の量:10μL・abs(6×108個)〕とを反応セルに入れ、得られた各混合物をピペットの先で攪拌し、実験番号35〜46の試料を得た。
実験例10
コルチゾール濃度が57ng/mL(実験番号47)、77ng/mL(実験番号48)、110ng/mL(実験番号49)、137ng/mL(実験番号50)、170ng/mL(実験番号51)、202ng/mL(実験番号52)、218ng/mL(実験番号53)、231ng/mL(実験番号54)、242ng/mL(実験番号55)、318ng/mL(実験番号56)、384ng/mL(実験番号57)、517ng/mL(実験番号58)、586ng/mL(実験番号59)、770ng/mL(実験番号60)、862ng/mL(実験番号61)または1630ng/mL(実験番号62)である血漿を、1/2のコルチゾール濃度になるように希釈用溶液〔組成:0.1質量%ウシ血清アルブミン、10mMリン酸緩衝液(pH7.5)〕で希釈した。得られた希釈物10μLと、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液〔520nmにおける吸光度が約5abs〕10μL〔金コロイド標識抗コルチゾール抗体の量:50μL・abs(3×109個)〕とを反応セルに入れ、得られた各混合物をピペットの先で攪拌し、実験番号47〜62の試料を得た。
実験例11
実験例10において、血漿を、1/2のコルチゾール濃度になるように希釈する代わりに、コルチゾール濃度が57ng/mL(実験番号63)、77ng/mL(実験番号64)、110ng/mL(実験番号65)、137ng/mL(実験番号66)、170ng/mL(実験番号67)、202ng/mL(実験番号68)、218ng/mL(実験番号69)、231ng/mL(実験番号70)、242ng/mL(実験番号71)、318ng/mL(実験番号72)、384ng/mL(実験番号73)、517ng/mL(実験番号74)、586ng/mL(実験番号75)、770ng/mL(実験番号76)、862ng/mL(実験番号77)または1630ng/mL(実験番号78)である血漿を、1/5のコルチゾール濃度になるように希釈したことを除き、実験例10と同様にして実験番号63〜78の試料を得た。
試験例4
実験例7〜11で得られた反応セル内の実験番号21〜78の試料に実施例1のイムノクロマトグラフィー用検査片の試料供給部を浸漬し、4分間放置した後、イムノクロマトグラフィー用検査片のメンブレンを洗浄液〔0.1質量%ウシ血清アルブミン、0.1質量%Tween(登録商標)20、10mMリン酸緩衝液(pH7.5)〕中に4分間浸漬することによりメンブレンを洗浄した。
洗浄されたメンブレン上における金コロイド粒子に由来するバンドを観察し、メンブレン上に生じたバンドの波長520nmにおける吸光度を吸光度計〔浜松ホトニクス(株)製、商品名:イムノクロマトリーダーICA−1000〕で測定した。そのコルチゾール濃度と吸光度との関係を図5に示す。
図5において、黒丸は、実験例7において、血漿10μLと金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液20μLとの混合物が用いられたときの吸光度、黒三角は、実験例8において、血漿10μLと金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液6μLとの混合物が用いられたときの吸光度、黒四角は、実験例9において、血漿10μLと金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液2μLとの混合物が用いられたときの吸光度、白丸は、実験例10において、血漿を1/2の濃度になるように希釈した希釈物10μLと金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液6μLとの混合物が用いられたときの吸光度、白四角は、実験例11において、血漿を1/5の濃度になるように希釈した希釈物10μLと金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液6μLとの混合物が用いられたときの吸光度を示す。
図5に示された結果から、血漿を希釈しないでそのまま使用した場合には(図5中、黒丸、黒三角および黒四角)、コルチゾール濃度が低い血漿では(コルチゾール濃度:0〜200ng/mL)、コルチゾール濃度の相違による吸光度の変化の度合いが大きいため、コルチゾール濃度の相違が判別しやすいことがわかる。これに対し、コルチゾール濃度が高い血漿では(コルチゾール濃度:200〜900ng/mL)、コルチゾール濃度の相違による吸光度の変化が小さくなるため、コルチゾール濃度の相違が判別しにくいことがわかる。
血漿を1/5の濃度となるように希釈した希釈物を使用した場合(図5中、白四角)、コルチゾール濃度が高い血漿では(コルチゾール濃度:200〜900ng/mL)、コルチゾール濃度の相違による吸光度の変化が大きくなるため、コルチゾール濃度の相違が判別しやすいことがわかる。これに対し、コルチゾール濃度が低い場合には(コルチゾール濃度:0〜200ng/mL)、コルチゾール濃度の相違による吸光度の変化が小さいため、コルチゾール濃度の相違が判別しにくいことがわかる。
一方、血漿を1/2の濃度となるように希釈した希釈物を使用した場合(図5中、白丸)、コルチゾール濃度が低い血漿(コルチゾール濃度:0〜200ng/mL)およびコルチゾール濃度が高い血漿(コルチゾール濃度:200〜900ng/mL)のいずれにおいても、コルチゾール濃度の相違による吸光度の変化が大きいため、コルチゾール濃度の相違が判別しやすいことがわかる。これらのことから、血液試料である血漿を1/5〜1/2に希釈した場合、コルチゾール濃度の相違による吸光度の変化が大きくなるため、コルチゾール濃度の相違が判別しやすくなることがわかる。
実験例12
希釈用溶液〔組成:0.1質量%ウシ血清アルブミン、10mMリン酸緩衝液(pH7.5)〕用いて、コルチゾール濃度が57ng/mLである血漿のコルチゾール濃度が1/2となるように希釈した。得られた希釈物10μLと、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液(520nmにおける吸光度が約5abs、金コロイド標識抗コルチゾール抗体濃度:3×108個/μL)3μL(実験番号79)、6μL(実験番号80)、10μL(実験番号81)、15μL(実験番号82)、20μL(実験番号83)または30μL(実験番号84)とを反応セルに入れ、得られた各混合物をピペットの先で攪拌し、実験番号79〜84の試料を得た。
実験例13
実験例12において、コルチゾール濃度が57ng/mLの血漿の代わりに、コルチゾール濃度が90ng/mLの血漿を用いたことを除き、実験例12と同様にして、実験番号85(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:3μL)、実験番号86(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:6μL)、実験番号87(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:10μL)、実験番号88(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:15μL)、実験番号89(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:20μL)および実験番号90(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:30μL)の試料を得た。
実験例14
実験例12において、コルチゾール濃度が57ng/mLの血漿の代わりに、コルチゾール濃度が128ng/mLの血漿を用いたことを除き、実験例12と同様にして、実験番号91(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:3μL)、実験番号92(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:6μL)、実験番号93(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:10μL)、実験番号94(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:15μL)、実験番号95(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:20μL)および実験番号96(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:30μL)の試料を得た。
試験例5
反応セル内の実験番号79〜96の試料に、実施例1のイムノクロマトグラフィー用検査片の試料供給部を浸漬し、4分間放置した後、イムノクロマトグラフィー用検査片のメンブレンを洗浄液〔0.1質量%ウシ血清アルブミン、0.1質量%Tween(登録商標)20、10mMリン酸緩衝液(pH7.5)〕中に4分間浸漬することにより、メンブレンを洗浄した。
次に、メンブレン上における金コロイド粒子に由来するバンドを観察し、メンブレン上に生じたバンドの波長520nmにおける吸光度を吸光度計〔浜松ホトニクス(株)製、商品名:イムノクロマトリーダーICA−1000〕で測定した。
測定された吸光度に基づいて、同一体積の金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液(同一量の金コロイド標識抗コルチゾール抗体)を用いたときの2つの異なるコルチゾール濃度の試料により生じた各バンド間の吸光度の差を算出した。より具体的には、同一体積の金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液を用いたときのコルチゾール濃度57ng/mLである試料(実験番号79〜84)により生じたバンドの吸光度とコルチゾール濃度が90ng/mLである試料(実験番号85〜90)により生じたバンドの吸光度との差を算出した。
前記と同様にして、同一体積の金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液(同一量の金コロイド標識抗コルチゾール抗体)を用いたときのコルチゾール濃度57ng/mLである試料(実験番号79〜84)によって生じたバンドの吸光度とコルチゾール濃度が128ng/mLである試料(実験番号91〜96)により生じたバンドの吸光度との差を算出した。
金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量と吸光度の差との関係を図6に示す。図6において、黒四角は、コルチゾール濃度が57ng/mLである試料とコルチゾール濃度が90ng/mLである試料との吸光度の差、白丸は、コルチゾール濃度57ng/mLである試料とコルチゾール濃度が128ng/mLである試料との吸光度の差を示す。
図6に示された結果から、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量が約5〜13μLであるとき、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量が15μLを超える場合と比べて、吸光度の差が大きいことから、コルチゾール濃度が低い試料(コルチゾール濃度:0〜200ng/mL)を評価するとき、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量を5〜13μLに調整することにより、コルチゾール濃度の相違が判別しやすくなることがわかる。
実験例15
希釈用溶液〔組成:0.1質量%ウシ血清アルブミン、10mMリン酸緩衝液(pH7.5)〕を用いて、コルチゾール濃度が242ng/mLである血漿のコルチゾール濃度が1/2となるように希釈した。得られた希釈物10μLと、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液(520nmにおける吸光度が約5abs、金コロイド標識抗コルチゾール抗体濃度:3×108個/μL)2μL(実験番号97)、3μL(実験番号98)、4μL(実験番号99)、6μL(実験番号100)、8μL(実験番号101)、10μL(実験番号102)、15μL(実験番号103)、20μL(実験番号104)または30μL(実験番号105)とを反応セルに入れ、得られた各混合物をピペットの先で攪拌し、実験番号97〜105の試料を得た。
実験例16
実験例15において、コルチゾール濃度が242ng/mLの血漿の代わりに、コルチゾール濃度が808ng/mLの血漿を用いたことを除き、実験例12と同様にして、実験番号106(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:2μL)、実験番号107(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:3μL)、実験番号108(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:4μL)、実験番号109(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:6μL)、実験番号110(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:8μL)、実験番号111(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:10μL)、実験番号112(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:15μL)、実験番号113(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:20μL)および実験番号114(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:30μL)の試料を得た。
実験例17
実験例15において、コルチゾール濃度が242ng/mLの血漿の代わりに、コルチゾール濃度が2380ng/mLの血漿を用いたことを除き、実験例12と同様にして、実験番号115(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:2μL)、実験番号116(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:3μL)、実験番号117(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:4μL)、実験番号118(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:6μL)、実験番号119(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:8μL)、実験番号120(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:10μL)、実験番号121(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:15μL)、実験番号122(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:20μL)および実験番号123(金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量:30μL)の試料を得た。
試験例6
実験例15〜17で得られた反応セル内の実験番号97〜123の試料に、実施例1のイムノクロマトグラフィー用検査片の試料供給部を浸漬し、4分間放置した後、イムノクロマトグラフィー用検査片のメンブレンを洗浄液〔0.1質量%ウシ血清アルブミン、0.1質量%Tween(登録商標)20、10mMリン酸緩衝液(pH7.5)〕中に4分間浸漬することにより、メンブレンを洗浄した。
次に、メンブレン上における金コロイド粒子に由来するバンドを観察し、メンブレン上に生じたバンドの波長520nmにおける吸光度を吸光度計〔浜松ホトニクス(株)製、商品名:イムノクロマトリーダーICA−1000〕で測定した。
次に、試験例5と同様にして、測定された吸光度に基づいて、同一体積の金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液を用いたとき、すなわち同一量の金コロイド標識抗コルチゾール抗体を用いたときの2つの異なるコルチゾール濃度の試料により生じた各バンド間の吸光度の差を算出した。より具体的には、同一体積の金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液(同一量の金コロイド標識抗コルチゾール抗体)を用いたときのコルチゾール濃度が242ng/mLである試料(実験番号97〜105)により生じたバンドの吸光度とコルチゾール濃度が808ng/mLである試料(実験番号106〜114)により生じたバンドの吸光度との差を算出した。
前記と同様にして、コルチゾール濃度242ng/mLである試料(実験番号97〜105)とコルチゾール濃度が2380ng/mLである試料(実験番号115〜123)との吸光度の差を算出した。
金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量と吸光度の差との関係を図7に示す。図7において、黒四角は、コルチゾール濃度242ng/mLである試料とコルチゾール濃度が2380ng/mLである試料との吸光度の差、白丸は、コルチゾール濃度242ng/mLである試料とコルチゾール濃度が808ng/mLである試料との吸光度の差を示す。
図7に示された結果から、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量、すなわち金コロイド標識抗コルチゾール抗体の量が多くなるほど、吸光度の差が大きくなるが、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量、すなわち金コロイド標識抗コルチゾール抗体の量が20μLを超えると吸光度の差がほぼ同程度となることがわかる。
なお、吸光度の差を目視により評価する場合には、テストラインの吸光度が200abs以上であることが好ましいことから、コルチゾール濃度が高い試料(コルチゾール濃度:200〜900ng/mL)を評価する場合、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液の量を4〜15μLに調整することにより、コルチゾール濃度の相違が判別しやすくなることがわかる。
実施例4
(1)イムノクロマトグラフィー用検査片の調製
コルチゾール−3−カルボキシメチルオキシム−BSA(フィッツジェラルド社製)を1mg/mLの濃度となるように10mMリン酸緩衝液(pH7.5)に溶解させた溶液(以下、「コルチゾール溶液」という)をメンブレン(ミリポア社製、商品名:Hi−Flow Plus、60mm×4mm)に、そのメンブレンの短辺に平行に線状となるように塗布し、室温で乾燥させる。その後、メンブレンをウシ血清アルブミン(シグマ社製)でブロッキングする。メンブレンにおけるコルチゾール−3−カルボキシメチルオキシム−BSAの固定化部分をイムノクロマトグラフィー用検査片のテストラインとする。
該メンブレンの一端(以下、「上流端」という)の端部に、金コロイド標識抗コルチゾール抗体溶液をしみ込ませ乾燥させたグラスファイバーコンジュケートパッドをその一部が重なるように貼り合わせる。これにより、金コロイド標識抗コルチゾール抗体と被検対象の血液試料に含まれているコルチゾールとを抗原抗体反応させ、かつ金コロイド標識抗コルチゾール抗体と被検対象の血液試料との混合物をメンブレンにリリースするための部材(リリースパッド)を設ける。リリースパッドにおける金コロイド標識抗コルチゾール抗体の保持部分を標識抗体相とする。また、このリリースパッドにおけるメンブレンを貼り合わせた箇所側の端部の反対側の端部に、被検対象の血液試料を滴下するための部材であるサンプルパッドをその一部が重なるように貼り合わせる。
得られたメンブレンにおけるコルチゾール溶液の塗布部分よりも長手方向の下流端に吸収パッド(ミリポア社製、20mm×4mm)を貼り合せることにより、イムノクロマトグラフィー用検査片を得る。
次に、実施例1と同様にして、イムノクロマトグラフィー用検査片のメンブレン上に、コルチゾール−3−カルボキシメチルオキシム−BSAが固定化されているかどうかを評価する。また、10mMリン酸緩衝液(pH7.5)をイムノクロマトグラフィー用検査片のサンプルパッドに滴下し、数分間静置した後、テストラインに赤いバンドが現れていることを確認することにより、リリースパッド上に金コロイド標識抗コルチゾール抗体が保持され、かつサンプルパッドに、血液試料が滴下されたとき、金コロイド標識抗コルチゾール抗体がメンブレン上で展開されるか否かを評価する。
(2)血液試料の評価
実施例4で得られたイムノクロマトグラフィー用検査片の試料供給部に被検対象の血液試料を滴下し、イムノクロマトグラフィー用検査片上に展開させる。展開後、イムノクロマトグラフィー用検査片のテストラインでの金コロイド標識抗コルチゾール抗体の量(吸光度)に基づき、被検対象の血液試料が副腎静脈サンプリング検査に適する品質を有するか否かを評価することができる。
本発明の血液試料の品質評価方法、イムノクロマトグラフィー用検査片および血液試料の品質評価用キットは、副腎静脈サンプリング検査用の血液試料の評価などに使用することができることから、医薬開発、疾患の治療または診断、生化学研究などの用途に利用されることが期待される。

Claims (4)

  1. 血液試料が副腎静脈サンプリング検査に適する品質を有するか否かを決定するためのイムノクロマトグラフィー用検査片であって、
    前記血液試料の試料供給部とコルチゾールと吸収パッドと基材とを有し、
    前記試料供給部が、前記基材の一端に設けられており、
    前記基材の他端に、ウシ血清アルブミンを介して当該基材に固定化されたリンカーによって前記コルチゾールが固定化されており、
    前記吸収パッドが、前記基材における前記コルチゾールが固定化された部分よりも長手方向の下流端に設けられているイムノクロマトグラフィー用検査片。
  2. 血液試料が副腎静脈サンプリング検査に適する品質を有するか否かを決定するためのイムノクロマトグラフィー用検査片であって、
    標識抗コルチゾール抗体が被検対象の血液試料との接触により脱離するように保持された標識抗体相とコルチゾールと吸収パッドと基材とを有し、
    前記標識抗体相、前記基材の一端に設けられており、
    前記基材の他端に、ウシ血清アルブミンを介して当該基材に固定化されたリンカーによって前記コルチゾールが固定化されており、
    前記吸収パッドが、前記基材における前記コルチゾールが固定化された部分よりも長手方向の下流端に設けられており、
    当該イムノクロマトグラフィー用検査片の前記標識抗体相側の一端から血液試料が展開されるように構成されているイムノクロマトグラフィー用検査片。
  3. 前記基材が、純水を展開させたときの展開速度が0.22〜0.45mm/secである基材である請求項1または2に記載のイムノクロマトグラフィー用検査片。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のイムノクロマトグラフィー用検査片を含む、血液試料が副腎静脈サンプリング検査に適する品質を有するか否かを決定するためのキット。
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