JP7131546B2 - イムノクロマト試験片およびキットおよび測定方法 - Google Patents

イムノクロマト試験片およびキットおよび測定方法 Download PDF

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Description

本発明は、イムノクロマト法による生体試料中に含まれる分析対象物質(特に、ヘモグロビンA1c)の測定方法、当該測定方法に用いるイムノクロマト試験片およびイムノクロマト試験片を含むキットに関する。
世界糖尿病連合(International Diabetes Federation)によると、世界の糖尿病患者数はアメリカ、ヨーロッパなどの先進国に加え、中国、インド、ブラジルなどの新興国を含めて急増しており、2015年で約4.2億人存在し、2040年には約6.4億人に及ぶと予測され、糖尿病診断の重要性は増している。
糖尿病診断項目の一つであるヘモグロビンA1c(以下、HbA1cと略す場合がある)とは、血液中の酸素を運搬する役割を担うヘモグロビン(以下、Hbと略す場合がある)に糖(グルコース)が結合した糖化ヘモグロビンの内、ヘモグロビンβ鎖のN末端側に位置するバリン残基が糖化された物質を指し、総Hb量に対するHbA1c濃度が過去1~2ヶ月間の平均血糖値を反映することから、糖尿病の長期的な経過を観察するのに利用されている。
従来、HbA1cの測定にはHPLC法、キャピラリー電気泳動法、酵素法、免疫法などの測定技術が利用されていたが、これらの測定方法は専門知識を有することや分析装置が大型かつ高額であるなどの理由から、主に大規模病院や多数の検査を行う検査センターで利用されており、小規模病院ではHbA1cを簡単に測定できない点が問題となっていた。
近年、医療現場ではPOCTという言葉が注目を集めている。POCTとはPoint Of Care Testingの略であり、医療従事者が被験者の傍らで行う臨床検査のことをいう。POCTは大規模病院の中央検査室等で行う臨床検査とは異なり、その場で瞬時に検査結果が得られることから、糖尿病診断においてもPOCTが広まりつつある。
HbA1c濃度の測定を目的としたPOCTの中に、イムノクロマト法を利用した技術が提案されている。イムノクロマト法とは毛細管現象を利用した免疫測定法であり、妊娠検査やインフルエンザ検査などにおいて世界的に普及している。従来のイムノクロマト法は目視判定(定性評価)が一般的であったが、近年、クロマトリーダー等の分析装置を利用して生体試料中に含まれる分析対象物質の濃度を定量する技術が開発されつつある。
イムノクロマト法を用いた分析対象物質の濃度を定量する手法の一つとしては、抗原抗体反応を利用したサンドイッチ法が挙げられる。サンドイッチ法では分析対象物質に対してエピトープの異なる2種類の抗体を利用する。一方の抗体は、金コロイド、着色ラテックスまたは蛍光粒子等の検出粒子と感作した検出抗体を使用する。他方の抗体は、多孔質支持体の表面に線状に固定した捕捉抗体としてテストラインを形成する。加えて、前記検出抗体を特異的に認識する抗体を多孔質支持体の表面の、前記テストラインとは異なる位置に線状に固定しコントロールラインを形成する。生体試料中に含まれる分析対象物質は、多孔質支持体の一端(上流側)から展開し、検出抗体と免疫複合体を形成しながら移動し、テストライン上で捕捉抗体と接触して捕捉され発色する。分析対象物質と免疫複合体を形成しなかった遊離の検出試薬はテストライン上を通過し、コントロールラインの抗体に捕捉され発色する。これらの発色強度をクロマトリーダー等の装置を利用することで分析対象物質の濃度を定量することができる。
特許文献1および2には、イムノクロマト法を用いたHbA1c濃度を測定する技術が開示されている。当該方法は血液と環状多糖類を含む試薬を接触させることでHbβ鎖のN末端(エピトープ)を露出させ、その後、検出粒子(金コロイドあるいはラテックス粒子)で標識されたHb抗体と免疫反応を行い、抗体固定化メンブレン上に展開し、抗HbA1c抗体固定化部および抗HbA0固定化部に到達した免疫複合体をそれぞれ検出することで、血液中のHbA1c(%)を簡便に求めることができる。
しかしながら、該手法では検出粒子に感作した抗Hb抗体がHbA1cやHbA0だけではなく、他のHbとも免疫反応を行うので、生体試料の種類によっては感度が低下することが問題となる。また、同一メンブレン上で2種類の免疫複合体を検出する場合、上流の免疫反応が下流の免疫反応に影響することがあり、測定精度が低下する問題がある。
一方、特許文献3には、イムノクロマト法において、サンプルパッドに保持されたHbを光学的に検出して、生体試料溶液中のヘマトクリット値を測定する技術が開示されている。該発明は、上流の免疫反応が下流の免疫反応に影響することがないため、測定精度の向上が期待される。しかしながら、該発明ではサンプルパッドにグラスファイバー製パッドが使用されており、グラスファイバー製パッドやセルロース製パッドをはじめとするサンプルパッドに一般的に使用される基材では、時間と共にHb由来の色味が変化するため、生体試料溶液の展開性によって測定精度が低下する問題がある。また、サンプルパッドにおいて前記生体試料溶液を保持できる液量が少ないため、特に生体試料溶液の希釈倍率が高い場合に感度が不足する問題がある。
特開2012-251789号公報 特開2015-158515号公報 WO2013/147200公報
本発明は、上記の問題点に鑑みて、従来よりも測定精度の高い生体試料中に含まれる分析対象物質(特に、HbA1c)の測定方法、当該測定方法に用いるイムノクロマト試験片およびイムノクロマト試験片を含むキットを提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、イムノクロマト試験片において、Hbをサンプルパッド部で測定し、分析対象物質(特に、HbA1c)をメンブレン部で測定することで、生体試料の種類や生体試料中の分析対象物質の濃度の影響を受けず、Hbと分析対象物質(特に、HbA1c)をそれぞれ正確に測定できること見出した。
しかし、同一生体試料を用いても測定値に違い(ばらつき)が生じる新たな課題に直面した。この原因を調査したところ、サンプルパッドにおけるHb由来の色味が時間と共に変化するため、生体試料溶液の展開性によって測定値がばらつくことが判明した。そこで、発明者はサンプルパッドに特定の構成を有する多孔質体を用いることで、サンプルパッドにおけるHb由来の色味の経時変化を抑制することに成功した。また、サンプルパッドにおける生体試料溶液の保持量が向上し、生体試料をより高倍率に希釈しても測定可能であることを見出した。なお、生体試料をより高倍率に希釈することで、生体試料中の反応阻害物質の影響を低減でき、測定精度の更なる向上が期待できる。加えて、本発明者はさらにこの知見を基に、従来よりも測定精度の高い生体試料中に含まれる分析対象物質(特に、HbA1c)の測定方法、当該測定方法を用いるイムノクロマト試験片およびイムノクロマト試験片を含むキットの発明を完成させた。
すなわち代表的な本願発明は以下の通りである。
(1) サンプルパッド、コンジュゲーションパッド、メンブレン、吸収パッドが順に連接配置され、前記サンプルパッドは、保水率が200wt%~1000wt%、平均気孔径が20μm~100μmである多孔質体からなる、イムノクロマト試験片、または前記イムノクロマト試験片、生体試料希釈液およびイムノクロマトリーダーおよび/または反射光測定装置を含む、イムノクロマト測定キットを用い、下記(i)から(iii)の工程を順に経て、生体試料中のヘモグロビンおよび分析対象物質を定量する方法。
工程(i):生体試料と生体試料希釈液とを体積比1:100~1:1000で混合して生体試料溶液を調製する工程
工程(ii):前記生体試料溶液を、サンプルパッドに点着する工程
工程(iii):サンプルパッドの色味からヘモグロビンを比色定量する工程、およびメンブレン部のラインの色味から分析対象物質を比色定量する工程
(2) 前記サンプルパッドは、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルからなる群から選ばれる1種以上である、(1)に記載の方法。
(3) 前記分析対象物質は、ヘモグロビンA1cである、(1)または(2)に記載の方法。
本発明のイムノクロマト試験片は、特定の構成を有するサンプルパッドを使用しているので、生体試料中のHbをサンプルパッド部で、またHbA1cをメンブレン部でそれぞれ高精度かつ定量的に測定することができる。
本発明で使用するイムノクロマト試験片の一例を示す(上面)図である。 本発明で使用するイムノクロマト試験片の一例を示す(側面)図である。 本発明で使用する反射光測定装置の一例を示す(内部)図である。 本発明で使用する反射光測定装置の一例を示す(外部)図である。 本発明のイムノクロマト試験片を用いた、Hbの測定結果を示すグラフである。 本発明のイムノクロマト試験片を用いた、HbA1cの測定結果を示すグラフである。
本発明のイムノクロマト試験片の形態は特に限定されない。例えば、イムノクロマト試験片の生体試料溶液の点着部(滴下部)を上流側として、前記点着部を有するサンプルパッド、コンジュゲーションパッド、メンブレン、吸収パッドの順に連接されたイムノクロマト試験片が挙げられる。
次いで、本発明のイムノクロマト試験片の一例を、図面を参照して説明する。図1、2において、1はメンブレン、2はサンプルパッド、3はコンジュゲーションパッド、4は吸収パッド、7は粘着シートを示す。
図1、2の例では、イムノクロマト試験片は、幅4mm程度、長さ60mm程度の細長い短冊状の形態をしている。なお、イムノクロマト試験片のコンジュゲーションパッド3には分析対象物質を特異的に識別する検出抗体と標識物質が坦持されている。また、メンブレン1の上流側の端部から下流側に向かって約10mmの位置に分析対象物質を特異的に識別する捕捉抗体を線状に固定化したテストライン5が形成されている。さらに、前記端部から約15mmの位置には標識物質を特異的に認識する抗体を線状に固定したコントロールライン6が形成されている。
本発明において、サンプルパッド2は、多孔質体を用いることが好ましい。ここでいう多孔質体とは、粒子充填体、3次元網目構造体(スポンジ体)などを指すが、スポンジ体が好ましい。スポンジ体は、後述する保水率や平均細孔径において場所斑を小さくすることができるメリットがある。
本発明において、前記多孔質体は、保水率が200wt%~1000wt%である。保水率が小さすぎると、サンプルパッドにおいて比色定量する際の色味が薄くなり、特に低濃度の定量が難しくなる。一方、保水率が大きすぎると、生体試料溶液の下流への展開が阻害されるだけでなく、一度展開した生体試料溶液が逆流してサンプルパッドでのHb測定を阻害する。また、サンプルパッドを構成する材料としてよく用いられてきた、セルロース製ろ紙やガラス製ろ紙を本発明に用いると、前記特性が均一ではないため測定箇所によるばらつきが大きくなる。保水率は、より好ましくは250wt%~1000wt%である。
前記保水率とは、多孔質体の質量に対する含浸させた水分の質量の割合を示し、4mm×4mmのサイズにカットした多孔質体の質量(M1)を測定し、前記多孔質体を蒸留水中に10分間浸漬したものの質量(M2)を測定し、下記式にて算出される値である。
保水率(%)={(M2-M1)/M1}×100
本発明において、前記多孔質体の気孔率は60%~95%が好適である。気孔率が小さすぎると吸収可能な生体試料溶液の量が低下し、例えばサンプルパッドにおいて比色定量する際の色味が薄くなり、特に低濃度の定量が困難となる恐れがある。一方、気孔率が大きすぎると実用的強度に乏しくなることがある。
前記気孔率とは、乾燥機で乾燥された乾燥状態の多孔質体の真体積を乾式自動密度計にて測定し、多孔質体の見掛け体積と真体積とから、下記式にて算出される値である。
気孔率(%)=(見掛け体積-真体積)/見掛け体積×100
本発明において、前記多孔質体の平均気孔径は20μm~100μmである。平均気孔径が小さすぎると、毛細管現象による生体試料溶液の吸水が進みすぎ、下流のコンジュゲーションパッド、メンブレン、吸収パッドへの展開が阻害されるだけでなく、一度展開した生体試料溶液が逆流する。一方、平均気孔径が大きすぎると、構造の均一性が損なわれ、測定箇所によるばらつきが大きくなる。平均気孔径は、より好ましくは25μm~80μmである。
前記平均気孔径は、水銀ポロシメーターを用いて後述するような条件で測定し、得られた気孔径分布曲線より見積もることができる。
本発明において、前記多孔質体を構成する材料は特に限定されないが、適度な親水性を有する(特定の接触角を有する)材料からなることが好ましい。疎水性や撥水性の強い材料を用いると、試験片として使用するにあたり湿潤化の前処理が必要になるし、逆に親水性の強い材料を用いると、細孔径にもよるが生体試料溶液の下流側への展開が進まないことがある。好ましい材料として、具体的には、ポリエチレン(水に対する接触角:70~83deg)、ポリプロピレン(水に対する接触角:およそ91deg)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(水に対する接触角:およそ80deg)、ポリウレタン(水に対する接触角:88~96deg)、ポリビニルアルコール(PVA、水に対する接触角:およそ36deg)、ポリ塩化ビニル(PVC、水に対する接触角:およそ87deg)から選ばれる1つ以上からなることが好ましい。
本発明において、コンジュゲーションパッド3としては、検出試薬を乾燥状態で保持することができ、かつ生体試料溶液の展開と共に検出試薬を速やかに放出することができる材質のものであれば良く、特に制限されないが、ガラスファイバー、セルロース製のろ紙、ポリエステル製の不織布などが挙げられる。
本発明において、吸収パッド4としては、生体試料溶液を速やかに吸収、保持できる材質のものであればよく、特に限定されないが、セルロース製のろ紙や不織布が挙げられる。
本発明において、メンブレン1としては、特に限定されないが、セルロース、セルロース誘導体、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ナイロンが挙げられる。これらの材質で構成された膜、布帛、繊維状又は不織布状マトリックス等が好適である。
本発明において、生体試料は特に限定されない。例えば、血液、リンパ液、髄液、汗、尿、涙液、唾液、皮膚、粘膜、毛髪等などの生体試料を例示することができる。血液においては、全血のほか、血液を遠心分離して得られた血清、血球または血漿を試料とすることができる。また、生体試料はヒト由来に限らず、イヌ、ネコ、ウシ等の哺乳動物由来の生体試料も対象である。
本発明のイムノクロマト試験片の製造方法は、従来公知の方法を用いればよい。以下、イムノクロマト試験片の製造方法について詳述するが、本発明を何ら限定するものではない。
コンジュゲーションパッドは、シート状のガラスファイバーに一定量の検出抗体および標識物質を均一に塗布、噴霧または含浸した後、恒温槽内で適当な温度で一定時間乾燥することで作製することが出来る。検出抗体および標識物質の塗布量は特に限定されないが、好ましくはライン長1cm辺り5μL~50μLである。
前記コンジュゲーションパッドの乾燥温度は特に限定されないが、好ましくは20℃~80℃である。乾燥時間は乾燥温度によって異なるが、通常は5分~120分間である。
メンブレンは、テストラインを形成する捕捉抗体(例えば、抗Hb抗体)とコントロールラインを形成する捕捉抗体(例えば、抗ビオチン抗体)を、それぞれ線上に一定量を異なる位置に塗布した後、恒温槽内で適当な温度で一定時間乾燥することで作製することが出来る。テストラインを形成する捕捉抗体とコントロールラインを形成する捕捉抗体の塗布量は特に限定されないが、好ましくはライン長1cm辺り0.1μL~2μLである。また、テストラインを形成する捕捉抗体とコントロールラインを形成する捕捉抗体の塗布濃度も特に限定されないが、好ましくは2.0mg/mL~0.1mg/mLである。
前記メンブレンの乾燥温度は特に限定されないが、好ましくは20℃~80℃である。乾燥時間は乾燥温度によって異なるが、通常は5分~120分間である。
前記調製したメンブレン1を粘着シート7の中程の位置に貼着し、コンジュゲーションパッド3をメンブレン1の末端の上に一部重ね合わせて連接するとともに、吸収パッド4をメンブレン1の逆側の末端上に一部重ね合わせて連接し、さらにコンジュゲーションパッド3の上流側末端にサンプルパッド2の一部が重なるようにして連接することでイムノクロマト試験片を作製することができる。なお、テストライン5およびコントロールライン6は試験片を作製した後に調製してもよいし、試験片を作製する前に調製してもよい。
本発明において、イムノクロマト分析キットは、生体試料を前処理および/または希釈するための生体試料希釈液、イムノクロマト試験片およびイムノクロマトリーダーおよび/または反射光測定装置を含む。
前記生体試料希釈液は、生体試料を展開させるための展開液として使用することができる。生体試料希釈液は、生体試料の展開性を向上させ、かつ免疫反応に影響しないノニオン性界面活性剤を含んでいてもよい。
前記ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(Triton(登録商標)系界面活性剤等)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(Brij(登録商標)系界面活性剤等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween(登録商標)系界面活性剤等)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。また、前記界面活性剤は単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記ノニオン性界面活性剤の濃度としては、好ましくは0.01wt%~5.0wt%である。
前記生体試料希釈液にはさらに、無機塩類やpH調整に用いる緩衝剤を添加しても良い。前記緩衝剤としては、目的とするpH範囲において充分な緩衝能力を有していれば、いかなる種類の緩衝剤を用いてもよく、例えば、トリス、リン酸、フタル酸、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、シュウ酸、ホウ酸、酒石酸、酢酸、炭酸、グッドバッファー(MES、ADA、PIPES、ACES、コラミン塩酸、BES、TES、HEPES、アセトアミドグリシン、トリシン、グリシンアミド、ビシン)等が挙げられる。
本発明において、前記イムノクロマト試験片は、生体試料溶液を点着(滴下)するための第一の開口部、サンプルパッド部にHbを測定するための第二の開口部、メンブレン部(少なくともテストラインとコントロールラインを測定できる範囲)に分析対象物質と標識物質を測定するための第三の開口部を有する適当なプラスチック製のハウジングケースに収容しても良い。なお、第一の開口部と第二の開口部は一体になっていてもよい。
本発明において、サンプルパッド部で測定する項目はHbであり、メンブレン部で測定する項目は、特に限定されないが、HbA1c、尿中アルブミン、シスタチンC、C反応性タンパク、プロカルシトニン、ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド、心筋トポロニンI、ミオグロビン、心臓由来脂肪酸結合タンパク、フィブリン分解物、α-フェトプロテイン、前立腺特異抗原、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、便潜血、甲状腺ホルモン、ガン抗原125、ガン胎児性抗原、フェリチン、IgE抗原、インスリンなどが挙げられる。これらの中でも、HbA1cが好ましい。以下、サンプルパット部で測定する項目がHbで、かつメンブレン部で測定する項目がHbA1cの場合について詳述するが、本発明を何ら限定するものではない。
テストラインを形成する捕捉抗体としては、分析対象物質がHbA1cの場合は、Hbを特異的に認識する抗体(以下、抗Hb抗体と略す場合がある)、またはHbA1cを特異的に認識する抗体(以下、抗HbA1c抗体と略す場合がある)が好ましく、より好ましくは抗Hb抗体である。抗Hb抗体または抗HbA1c抗体は、市販されているものがあればそれを用いても良いし、別途公知の方法で製造しても良い。分子サイズも特に制限されない。
検出抗体としては、分析対象物質がHbA1cの場合は、抗Hb抗体と検出粒子の複合体、または抗HbA1c抗体と検出粒子の複合体が好ましく、より好ましくは抗HbA1c抗体と検出粒子の複合体である。なお、捕捉抗体が抗Hb抗体のとき検出抗体は抗HbA1c抗体と検出粒子の複合体であり、捕捉抗体が抗HbA1c抗体のとき検出抗体は抗Hb抗体と検出粒子の複合体である必要がある。抗Hb抗体または抗HbA1c抗体は、市販されているものがあればそれを用いても良いし、別途公知の方法で製造しても良い。分子サイズも特に制限されない。
コントロールラインを形成する捕捉抗体としては、標識物質を特異的に認識する抗体が好ましく、より好ましくはビオチンを特異的に認識する抗体(以下、抗ビオチン抗体と略す場合がある)である。抗ビオチン抗体は、市販されているものがあればそれを用いても良いし、別途公知の方法で製造しても良い。分子サイズも特に制限されない。例えば、Anti-Biotin antibody(GENETEX社製)、Anti-Biotin,Goat-Poly(Bethyl Laboratories社製)、IgG Fraction Monoclonal Mouse Anti-Biotin(岩井化学薬品社製)等が挙げられる。
標識物質としては、ビオチン標識タンパク質と検出粒子の複合体またはジゴキシゲニン標識タンパク質と検出粒子の複合体が好ましく、ビオチン標識タンパク質がより好ましい。
前記ビオチン標識タンパク質で用いるタンパク質の種類としては特に制限されないが、微生物由来タンパク質や動物由来タンパク質などが好ましく、微生物由来タンパク質としてはBlocking Peptide Fragment、動物由来タンパク質としてはウシ血清アルブミンまたはカゼインがより好ましい。これらのタンパク質は市販されているものがあればそれを用いても良いし、別途公知の方法で製造しても良い。分子サイズも特に制限されないが、平均分子量で100kDa以下が好ましい。一般的にタンパク質の分子サイズが小さいほど検出粒子1粒子に対するタンパク質の結合量は増加するので、感度などの性能が高くなる。
前記ビオチン標識タンパク質のビオチンの標識方法は特に限定されないが、N-ヒドロキシスクシンイミド法を例示できる。N-ヒドロキシスクシンイミド法を用いることでビオチンのカルボキシル基をN-ヒドロキシアミン系化合物と脱水縮合剤存在下で縮合反応し、選択的に活性化し、タンパク質のアミノ基とアミド結合を介して標識することができる。
前記縮合反応に使用するN-ヒドロキシアミン系化合物は、特に制限されないが、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド、N-ヒドロキシノルボルネン-2,3-ジカルボン酸イミド、2-ヒドロキシイミノ-2-シアノ酢酸エチルエステル、2-ヒドロキシイミノ-2-シアノ酢酸アミド、N-ヒドロキシピペリジン、N-ヒドロキシフタルイミド、N-ヒドロキシイミダゾール、N-ヒドロキシマレイミド等が挙げられる。これら化合物を2種以上用いてもよい。中でも、N-ヒドロキシスクシンイミド(以下、NHSと表記する場合がある)が、比較的安価で、入手し易いことやペプチド合成分野等で実績があることから、より好適である。
前記縮合反応に使用する脱水縮合剤としては、特に制限されないが、例えば1-エチル-3-ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩(以下、EDC・HClと表記する場合がある)、1-シクロヘキシル-(2-モルホニル-4-エチル)-カルボジイミド・メソp-トルエンスルホネート等が挙げられる。中でもEDC・HClがペプチド合成分野等で汎用的な水溶性縮合剤として実績があることから、より好適である。
前記ビオチン標識タンパク質におけるビオチンの導入量は、タンパク質とビオチンのモル比を調整することで制御することができる。感度などの性能を高めるためには、ビオチンの導入量は高いものが望ましい。より具体的には、タンパク質のモル数に対してビオチンのモル数が、1.0モル倍以上であることが好ましい。前記モル比は一例であるためタンパク質の種類や現実の感度に応じて適宜増減して良い。
前記ビオチン標識タンパク質と検出粒子の結合方法としては特に制限されないが、疎水結合による物理吸着、あるいは共有結合を介した結合方法が例示できる。疎水結合においてはビオチン標識タンパク質と検出粒子の表面層で直接的に結合するので、ビオチン標識タンパク質の等電点付近のpHで処理することが好ましい。共有結合においては、検出粒子表面の官能基によって、結合方法は異なるが、一例を挙げると検出粒子の表面に存在する官能基がアミノ基の場合は、前述したN-ヒドロキシスクシンイミド法を用いて結合することができる。
反応温度は、特に限定されない。好ましい下限は10℃、好ましい上限は50℃である。反応時間は反応温度によって異なり、特に限定されない。好ましい下限は1時間、好ましい上限は24時間である。なお、反応液中に含まれる未反応のN-ヒドロキシアミン系化合物や脱水縮合剤は濾過や遠心分離などにより水溶媒から容易に分離することができる。
検出粒子としては特に制限されないが、着色粒子や蛍光粒子を用いることができる。着色粒子としては金属粒子、ラテックス粒子、セルロース粒子などを例示することができる。金属粒子としては金コロイド、銀コロイド、白金コロイド、パラジウムコロイド、金ナノロッド、金ナノプレート、銀ナノプレートなどを例示することができる。金属粒子の粒径は特に制限されないが、粒径1nm~100nmのものが好ましい。ラテックス粒子としてはポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、アクリル酸重合体などの材質からなるものを例示することができ、粒径は特に制限されないが、粒径25nm~500nmのものが好ましい。セルロース粒子は、粒径100nm~500nmのものが好ましい。蛍光粒子は、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリビニルトルエン、シリカなどの材質からなるものを例示することができる。蛍光色素は、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、シアニン及びその誘導体などを例示することができる。これらの中でも、汎用性が高く、視認性に優れたラテックス粒子やセルロース粒子を用いることが好ましい。
本発明において、イムノクロマト試験片を用いてメンブレン上で分析対象物質の測定を行う方法は特に限定されない。例えば、分析対象物質がHbA1cの場合は、以下の方法が例示される。まず、生体試料を必要に応じて生体試料希釈液と混合して展開可能な混合液(生体試料溶液)を得た後、当該混合液をサンプルパッド2に滴下する。当該混合液は、サンプルパッド2を通過してコンジュゲーションパッド3に展開される。前記混合液は、コンジュゲーションパッド3に坦持された検出抗体および標識物質を溶解しながら、HbA1cと検出抗体(抗HbA1c抗体と検出粒子の複合体)が免疫複合体を形成しメンブレンに展開される。その後、さらに毛細管現象によって吸収パッド4側に流れる。前記混合液がメンブレンのテストライン5に到達すると、前記免疫複合体は捕捉抗体(抗Hb抗体)で捕捉され集積し、テストライン5が発色する。その後、標識物質を含む混合液はテストライン5を通過してコントロールライン6に到達する。ここで標識物質は捕捉抗体(抗ビオチン抗体)で捕捉され集積し、コントロールライン6が発色する。他の混合液は最終的に吸収パッドで吸収される。テストライン5とコントロールライン6の発色強度を、イムノクロマトリーダー等を使用して測定することで分析対象物質の濃度を測定することができる。
本発明において、イムノクロマト試験片のサンプルパッド部でHbの測定を行う方法は特に限定されない。例えば、図3および図4に示す反射光測定装置8を用いる方法が例示される。反射光測定装置8は、イムノクロマト試験片12を装着部9に固定でき、かつ、固定したイムノクロマト試験片12のサンプルパッドに光を照射することができる反射光測定装置であって、さらに、発光素子10より照射した光がサンプルパッドで反射した光を受光できるように受光素子11を配置してあり、得られた測光値を経時的に測定することができるようになっている。サンプルパッド部に展開した生体試料溶液の呈色度合いを反射光として測定することでHb濃度を測定することができる。その他、CCD、C-MOSなどを用いた画像解析システムも好適に使用することができる。
本発明において、Hb測定用の反射光測定装置とHbA1c測定用のイムノクロマトリーダーは上記のように独立した装置を用いても良いし、これらが一体型となった装置を用いても良い。また、測定の順番はHbが先であっても良いし、HbA1cが先であっても良い。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
(保水率の測定)
保水率は、4mm×4mmのサイズにカットした多孔質体の質量(M1)、および前記多孔質体を蒸留水中に10分間浸漬した後の質量(M2)から、下記式にて算出した。
保水率(%)={(M2-M1)/M1}×100
(平均気孔径の測定)
多孔質体を120℃で4時間恒温乾燥したものを下記の測定に用いた。
測定:水銀圧入法により気孔径0.0018~100μmの気孔径分布を求めた。
気孔径はWashburnの式を用いて算出した。
Washburnの式:D=-4γcosθ/P
P:圧力(Pa) γ:水銀の表面張力(N/m)
D:気孔直径(m) θ:水銀と多孔質体との接触角(deg)
測定条件:多孔質体と水銀の接触角:140deg
水銀の表面張力0.48N/m(1dyne=10-5Nで換算)
測定装置:オートポアIV9520(micromeritics社製)
測定数:n=3⇒これらの平均値を気孔径とした。
なお、本発明において、気孔径とは、測定圧力から得られた気孔分布曲線において次のように定義した値である。気孔分布曲線におけるメジャーなピークの極大値を本発明の気孔径と定義した。
(気孔率の測定)
気孔率は、乾燥機で乾燥した多孔質体の真体積を乾式自動密度計にて測定し、多孔質体の見掛け体積と真体積とから、下記式にて算出した。
気孔率(%)=(見掛け体積-真体積)/見掛け体積×100
(実施例1)
(1)検出抗体(抗HbA1c抗体と検出粒子の複合体)の調製
5μLの10%ラテックス粒子(K016、Merk millipore社製)に45μLの50mM リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.5)を添加し、1%ラテックス溶液を調製した。市販の抗HbA1cモノクローナル抗体(製品名:Human HbA1c monoclonal antibody、clone 1D3、品番:MAB0030-MO6A、Abnova社製)を50mM PBS(pH7.5)で1.0mg/mLに調製した。5μLの抗HbA1cモノクローナル抗体溶液を1%ラテックス粒子溶液に加え、ボルテックスで撹拌した後、室温で1時間静置した。10μLの0.3wt%Blocking Peptide Fragment(東洋紡社製)(以下、BPFと略す場合がある)と1.0wt%PEG水溶液(Santa Cruz Biotechnology社製)(以下、PEGと略す場合がある)を加え、ボルテックスで撹拌した後、1時間室温で静置した。その後、9,300rpmで10分間遠心分離し、上清を除去した。200μLの0.3wt%BPFと1.0wt%PEG水溶液を加え、ボルテックスで撹拌した後、室温で1時間静置した。9,300rpmで10分間遠心分離し、上清を除去した。50μLの0.3wt%BPF+1.0wt%PEG水溶液を加え、ボルテックスで撹拌し検出抗体を調製した。
(2)標識物質の調製
3.15mgのD-ビオチン(ナカライテスク社製)を72μLの蒸留水で溶解した。また、10mgの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(ナカライテスク社製)と10mgのN-ヒドロキシスクシンイミド(ナカライテスク社製)を100μLの蒸留水に溶解した。これにD-ビオチン溶液を加え、室温で1時間緩やかに攪拌した。前記溶液に80μLの3wt%BPF溶液を加え30分間室温で静置し、ビオチン標識BPF溶液を調製した。次に、5μLの10%ラテックス粒子に45μLの50mM PBS(pH7.5)を添加し、1%ラテックス溶液を調製した。15μLのビオチン標識BPF溶液を1%ラテックス溶液に加え、ボルテックスで撹拌した後、室温で1時間静置した。200μLの0.3wt%BPFと1.0wt%PEG20000水溶液を加え、ボルテックスで撹拌した後、1時間室温で静置した。その後、9,300rpmで10分間遠心分離し、上清を除去した。200μLの0.3wt%BSAと1.0wt%PEG水溶液を加え、ボルテックスで撹拌した後、1時間室温で静置した。9,300rpmで10分間遠心分離し、上清を除去した。50μLの0.3wt%BPFと1.0wt%PEG水溶液を加え、ボルテックスで撹拌し、標識物質を調製した。
(3)HbA1c測定用メンブレンの作製
25mm×150mmのニトロセルロースメンブレン(商品名:Hi-Flow PlusタイプHF120(Merk millipore社製))の上流側から10mmの位置にライン幅約1mmのテストラインとして、1.0mg/mLの捕捉抗体:抗Hbモノクローナル抗体(製品名:Hemoglobin antibody、品番:70R-7580、Fitgerald社製)溶液を、イムノクロマトディスペンサー(BIODOT社製)を用いて1.0μL/cmの塗布量で塗布した。次に、ニトロセルロースメンブレンの上流側から15mmの位置にライン幅約1mmのコントロールラインとして、1.0mg/mLの抗ビオチンモノクローナル抗体(製品名:Anti-Biotin antibody、品番:GTX44344、GENETEX社製)溶液をイムノクロマトディスペンサー(BIODOT社製)を用いて1.0μL/cmの塗布量で塗布した。その後、40℃で30分乾燥し、HbA1c測定用メンブレンを作製した。
(4)HbA1c測定用コンジュゲーションパッドの作製
10mm×150mmのコンジュゲーションパッド(GLASSFIBER DIAGNOSTIC PAD GFDX(Merk millipore社製))に前記検出抗体と標識物質の混合液(混合比6:1)225μLをイムノクロマトディスペンサー(BIODOT社製)を用いて15μL/cmになるように均一に噴霧した。その後、40℃で30分乾燥し、HbA1c測定用コンジュゲーションパッドを作製した。
(5)イムノクロマト試験片の作製
イムノクロマト試験片は、イムノクロマトグラフで一般的に使用される構成で作製した。具体的には、サンプルパッド(商品名ピオラスシートEVA 厚さ1mm(アイオン社製))、前記HbA1c測定用コンジュゲーションパッド、前記HbA1c測定用メンブレン、吸収パッド(CELLULOSE FIBER SAMPLE PADS CFSP(Merk millipore社製))を、各々端部が一部重なるように連接配置し、幅4mm、長さ60mmのイムノクロマト試験片を作製した。用いたサンプルパッドの保水率は340wt%、気孔率は77%、平均気孔径は25μmであった。
(6)Hb試料の調製
市販のHb標準物質である総ヘモグロビン常用参照標準物質JCCRM912-2(一般社団法人 検査医学標準物質機構社製)3水準を生体試料希釈液(50mM PBS、pH7.4+1.0wt%TritonX-100)で500倍に希釈し、HbA1c(%)が5.2%で、Hb濃度が0.156g/L、0.274g/L、0.359g/Lの各Hb試料(3水準)を調製した。
(7)HbA1c試料の調製
市販のHbA1c標準物質であるHbA1c測定性能評価用試料QRM HbA1c 2007-1(一般社団法人検査医学標準物質機構社製)4水準を生体試料希釈液(50mM PBS、pH7.4+1.0wt%TritonX-100)で500倍に希釈しHb濃度が0.320g/Lで、HbA1c(%)が5.29%、6.96%、9.08%、10.79%の各HbA1c試料(4水準)を調製した。
(8)Hb濃度(g/L)の検量線の作成
得られたイムノクロマト試験片を水平な台に設置した。次に、前記Hb試料(3水準)100μLをマイクロピペットで分取し、サンプルパッドに緩やかに滴下した。滴下してから1分後、サンプルパッド部のHbを反射光測定装置を用いて測定した。結果、Hb濃度に応じた反射吸光度を確認することができた。Hb測定の結果(n=10の平均値)を表1に示す。また、Hb濃度(X軸)と反射吸光度(Y軸)の相関性からHbの検量線を作成した。結果を図5に示す。
Hbの検量線はY=388X+0.613となった。なお、測定の感度はHb試料の高濃度品(0.359g/L)の反射吸光度と、低濃度品(0.156g/L)の反射吸光度の差:ΔHbで評価し、ΔHb>50mAbsをgood、10mAbs≦ΔHb≦50mAbsをaverage、ΔHb<10mAbsをbadとした。また、測定の再現性は、反射吸光度のn=10のCV(%)で評価し、CV(%)<5%をgood、5%≦CV(%)≦10%をaverage、CV(%)>10%をbadとした。
さらに、測定の安定性はHb試料の高濃度品(0.359g/L)の反射吸光度を経時的に測定し、10分後の反射吸光度と、1分後の反射吸光度の差:Δ10で評価し、Δ10<20mAbsをgood、20mAbs≦Δ10≦30mAbsをaverage、Δ10>30mAbsをbadとした。
これらの結果、実施例1のイムノクロマト試験片は、感度:ΔHb=80mAbsでgood、再現性:CV(%)=3%でgood、安定性:Δ10=15mAbsでgoodと、良好であった。
Figure 0007131546000001
(9)HbA1c(%)の検量線の作成
得られたイムノクロマト試験片を水平な台に設置した。次に、HbA1c試料(4水準)100μLをマイクロピペットで分取し、サンプルパッドに緩やかに滴下した。滴下してから10分後、メンブレン上のテストラインとコントロールラインをイムノクロマトリーダー(浜松ホトニクス社製:C10060-10)を用いて測定した。結果、テストライン(T)はHbA1c濃度に応じた反射吸光度を確認することができた。また、コントロールライン(C)はHbA1c濃度に依存せず一定の反射吸光度を確認することができた。テストラインの反射吸光度をコントロールラインの反射吸光度で割算し、補正値(T/C)とした。HbA1c測定値(テストライン測定値)、コントロールライン測定値、補正値の結果(n=10の平均値)を表2に示す。また、HbA1c濃度(X軸)と補正値(Y軸)の相関性からHbA1cの検量線を作成した。結果を図6に示す。
HbA1cの検量線はY=0.0519X+0.0945となった。なお、測定の感度はHbA1c試料の高濃度品(10.79%)のテストラインの反射吸光度と、低濃度品(5.29%)のテストラインの反射吸光度の差:ΔHbA1cで評価し、ΔHbA1c>100mAbsをgood、50mAbs≦ΔHbA1c≦100mAbsをaverage、ΔHbA1c<50mAbsをbadとした。
これらの結果、実施例1のイムノクロマト試験片は、感度:ΔHbA1c=125mAbsでgoodであった。
Figure 0007131546000002
(実施例2)
サンプルパッドとして、ポリエチレン製の多孔質シート(商品名:ピオラスシートPE 厚さ1mm(アイオン社製))を用いた以外は、実施例1と同様にしてイムノクロマト試験片を作製した。サンプルパッドの保水率は290wt%、気孔率は74%、平均気孔径は25μmであった。
Hb測定の結果は、感度:ΔHb=60mAbsでgood、再現性:CV(%)=4%でgood、安定性:Δ10=18mAbsでgoodであった。また、HbA1c測定の結果は、感度:ΔHbA1c=105mAbsでgoodであった。
(実施例3)
サンプルパッドとして、ウレタン製の多孔質シート(商品名:ACスポンジU 厚さ1mm(エー・シーケミカル社製))を用いた以外は、実施例1と同様にしてイムノクロマト試験片を作製した。サンプルパッドの保水率は350wt%、気孔率は85%、平均気孔径は60μmであった。
Hb測定の結果は、感度:ΔHb=90mAbsでgood、再現性:CV(%)=4%でgood、安定性:Δ10=15mAbsでgoodであった。また、HbA1c測定の結果は、感度:ΔHbA1c=140mAbsでgoodであった。
(実施例4)
サンプルパッドとして、ポリ塩化ビニル製の多孔質シート(商品名:ACスポンジV 厚さ1mm(エー・シーケミカル社製))を用いた以外は、実施例1と同様にしてイムノクロマト試験片を作製した。サンプルパッドの保水率は400wt%、気孔率は75%、平均気孔径は60μmであった。
Hb測定の結果は、感度:ΔHb=70mAbsでgood、再現性:CV(%)=4%でgood、安定性:Δ10=17mAbsでgoodであった。また、HbA1c測定の結果は、感度:ΔHbA1c=110mAbsでgoodであった。
(実施例5)
サンプルパッドとして、ポリエチレン製の多孔質シート(商品名:ACスポンジO 厚さ1mm(エー・シーケミカル社製))を用いた以外は、実施例1と同様にしてイムノクロマト試験片を作製した。サンプルパッドの保水率は250wt%、気孔率は75%、平均気孔径は60μmであった。
Hb測定の結果は、感度:ΔHb=60mAbsでgood、再現性:CV(%)=4%でgood、安定性:Δ10=15mAbsでgoodであった。また、HbA1c測定の結果は、感度:ΔHbA1c=110mAbsでgoodであった。
(実施例6)
サンプルパッドとして、ポリビニルアルコール製の多孔質シート(商品名:ベルクリン 厚さ1mm(アイオン社製))を用いた以外は、実施例1と同様にしてイムノクロマト試験片を作製した。サンプルパッドの保水率は1000wt%、気孔率は89%、平均気孔径は80μmであった。
Hb測定の結果は、感度:ΔHb=110mAbsでgood、再現性:CV(%)=7%でaverage、安定性:Δ10=8mAbsでgoodであった。また、HbA1c測定の結果は、感度:ΔHbA1c=60mAbsでaverageであった。
(実施例7)
実施例1において、Hb標準物質を生体試料希釈液で300倍に希釈したもの、およびHbA1c標準物質を生体試料希釈液で300倍に希釈したものを用いた以外は、実施例1と同様にして実験を行った。
Hb測定の結果は、感度:ΔHb=200mAbsでgood、再現性:CV(%)=2%でgood、安定性:Δ10=18mAbsでgoodであった。また、HbA1c測定の結果は、感度:ΔHbA1c=115mAbsでgoodであった。
(実施例8)
実施例1において、Hb標準物質を生体試料希釈液で1000倍に希釈したもの、およびHbA1c標準物質を生体試料希釈液で1000倍に希釈したものを用いた以外は、実施例1と同様にして実験を行った。
Hb測定の結果は、感度:ΔHb=60mAbsでgood、再現性:CV(%)=4%でgood、安定性:Δ10=5mAbsでgoodであった。また、HbA1c測定の結果は、感度:ΔHbA1c=120mAbsでgoodであった。
(比較例1)
サンプルパッドとして、セルロース製のろ紙(CELLULOSE FIBER SAMPLE PADS CFSP(Merk millipore社製))を用いた以外は、実施例1と同様にしてイムノクロマト試験片を作製した。
Hb測定の結果は、感度:ΔHb=20mAbsでaverage、再現性:CV(%)=12%でbad、安定性:Δ10=25mAbsでaverageであった。また、HbA1c測定の結果は、感度:ΔHbA1c=110mAbsでgoodであった。
(比較例2)
サンプルパッドとして、ガラス繊維製のろ紙(GLASSFIBER DIAGNOSTIC PAD GFDX(Merk millipore社製))を用いた以外は、実施例1と同様にしてイムノクロマト試験片を作製した。
Hb測定の結果は、感度:ΔHb=8mAbsでbad、再現性:CV(%)=11%でbad、安定性:Δ10=20mAbsでaverageであった。また、HbA1c測定の結果は、感度:ΔHbA1c=130mAbsでgoodであった。
(比較例3)
比較例2において、Hb標準物質を生体試料希釈液で1000倍に希釈したもの、およびHbA1c標準物質を生体試料希釈液で1000倍に希釈したものを用いた以外は、実施例1と同様にして実験を行った。
Hb測定の結果は、感度:ΔHb=5mAbsでbad、再現性:CV(%)=13%でbad、安定性:Δ10=17mAbsでgoodであった。また、HbA1c測定の結果は、感度:ΔHbA1c=90mAbsでaverageであった。
(比較例4)
サンプルパッドとして、ポリビニルアルコール製の多孔質シート(商品名:ACスポンジP 厚さ1mm(エー・シーケミカル社製))を用いた以外は、実施例1と同様にしてイムノクロマト試験片を作製した。サンプルパッドの保水率は1100wt%、気孔率は90%、平均気孔径は130μmであった。
Hb測定の結果は、感度:ΔHb=120mAbsでgood、安定性:Δ10=10mAbsでgoodであったものの、再現性:CV(%)=15%でbadであった。また、HbA1c測定の結果は、感度:ΔHbA1c=40mAbsでbadであった。測定後のサンプルパッドは検出粒子の逆流により、少し青みがかっていた。
(比較例5)
サンプルパッドとして、ポリウレタン製の多孔質シート(商品名:ルビセルクリーンRK厚さ0.8mm(ハーベスト社製))を用いた以外は、実施例1と同様にしてイムノクロマト試験片を作製した。サンプルパッドの保水率は460%、気孔率は80%、平均気孔径は6μmであった。
Hb測定の結果は、感度:ΔHb=110mAbsでgood、安定性:Δ10=10mAbsでgoodであったものの、再現性:CV(%)=13%でbadであった。また、HbA1c測定の結果は、感度:ΔHbA1c=40mAbsでbadであった。測定後のサンプルパッドは検出粒子の逆流により、少し青みがかっていた。
Figure 0007131546000003
本発明により、簡便で測定精度の高いイムノクロマト試験片を提供することができる。
1:メンブレン
2:サンプルパッド
3:コンジュゲーションパッド
4:吸収パッド
5:テストライン
6:コントロールライン
7:粘着シート
8:反射光測定装置
9:装着部
10:発光素子
11:受光素子

Claims (3)

  1. サンプルパッド、コンジュゲーションパッド、メンブレン、吸収パッドが順に連接配置され、前記サンプルパッドは、保水率が200wt%~1000wt%、平均気孔径が20μm~100μmである多孔質体からなる、イムノクロマト試験片、または前記イムノクロマト試験片、生体試料希釈液およびイムノクロマトリーダーおよび/または反射光測定装置を含む、イムノクロマト測定キットを用い、下記(i)から(iii)の工程を順に経て、生体試料中のヘモグロビンおよび分析対象物質を定量する方法。
    工程(i):生体試料と生体試料希釈液とを体積比1:100~1:1000で混合して生体試料溶液を調製する工程
    工程(ii):前記生体試料溶液を、サンプルパッドに点着する工程
    工程(iii):サンプルパッドの色味からヘモグロビンを比色定量する工程、およびメンブレン部のラインの色味から分析対象物質を比色定量する工程
  2. 前記サンプルパッドは、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記分析対象物質は、ヘモグロビンA1cである、請求項1または2に記載の方法。
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