ここで、好適には、油温に応じて変更される油圧の変化量は、油温毎に実験的に求めた関係マップ、または精緻な流量等の方程式を解くことによって油温毎に求めた関係マップを予め記憶し、現在の油温に応じた最適な関係マップを使用することで変更される。このようにすれば、事前に求めて記憶された油温毎の関係マップを使用することで、容易に油温に応じた油圧の変化量を決定することができる。
また、好適には、油温に応じて変更される油圧の変化量は、予め設定された基準となる油温における油圧の変化量に対し、油温に応じて予め設定されている係数を掛けることで、変化量が決定される。このようにすれば、現在の油温に対応する係数を基準となる油温における油圧の変化量に掛けることで、容易に油温に応じた油圧の変化量を決定することができる。なお、上記係数は、予め実験または計算によって求められ、油温に応じた最適な油圧の変化量が決定される値に設定される。
また、好適には、油温が低くなるに従って、油圧の変化量が小さくなるように、前記関係マップおよび前記係数が設定される。油温が低くなると油の粘度が高くなり油の流れが悪くなるため、指示圧に対する油圧の変化が小さくなる。これより、油温に応じた最適な油圧の変化量を設定することができる。
また、好適には、前記特異点の油圧は、前記油圧式摩擦係合装置を構成するリターンスプリング、クッション、摩擦材のウェーブのエンド等による特性の変化に基づいて油圧の特性が切り替わる境界油圧に対応する。上記特異点の油圧は、実験あるいは流量等の方程式を解くことで求められ、求められた特異点の油圧間での関係マップが予め実験または計算によって求められて記憶される。このようにすれば、流量等の方程式を解くことなく、各特異点の油圧間での関係マップに基づいて精度良くモデル油圧を算出することができる。
また、好適には、前記油圧式摩擦係合装置としては、油圧アクチュエータによって係合させられる多板式、単板式のクラッチやブレーキ等の摩擦係合装置が広く用いられる。この油圧式摩擦係合装置を係合させるための作動油を供給するオイルポンプは、走行用の駆動力源により駆動されて作動油を吐出するものでも良いが、例えば駆動力源とは別に配設された専用の電動モータなどで駆動されるものでも良い。この油圧式摩擦係合装置を含む油圧制御回路は、例えば電磁弁装置としてのリニアソレノイドバルブの出力油圧を直接的に油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)にそれぞれ供給することが応答性の点で望ましいが、そのリニアソレノイドバルブの出力油圧をパイロット油圧として用いることによりシフトコントロールバルブ(変速制御弁)を制御して、そのコントロールバルブから油圧アクチュエータに作動油を供給するように構成することもできる。また、上記リニアソレノイドバルブは、例えば複数の油圧式摩擦係合装置の各々に対応して1つずつ設けられるが、同時に係合したり係合、解放制御したりすることがない複数の油圧式摩擦係合装置が存在する場合には、それ等に共通のリニアソレノイドバルブを設けることもできるなど、種々の態様が可能である。また、必ずしも全ての油圧式摩擦係合装置の油圧制御をリニアソレノイドバルブで行う必要はなく、一部乃至全ての油圧制御をON−OFFソレノイドバルブのデューティ制御など、リニアソレノイドバルブ以外の調圧手段で行っても良い。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明が適用された車両10に備えられた自動変速機12の構成を説明する骨子図である。図2は自動変速機12の複数のギヤ段GS(変速段GS)を成立させる際の摩擦係合装置の作動状態を説明する作動表である。この自動変速機12は、車両10の左右方向(横置き)に搭載するFF車両に好適に用いられるものであって、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスアクスルケース14(以下、ケース14)内において、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置16を主体として構成されている第1変速部18と、ダブルピニオン型の第2遊星歯車装置20及びシングルピニオン型の第3遊星歯車装置22を主体としてラビニヨ型に構成されている第2変速部24とを共通の軸心C上に有し、入力軸26の回転を変速して出力歯車28から出力する。入力軸26は、自動変速機12の入力回転部材に相当するものであり、本実施例では走行用の駆動力源であるエンジン30によって回転駆動される流体式伝動装置としてのトルクコンバータ32のタービン軸と一体的に構成されている。また、出力歯車28は、自動変速機12の出力回転部材に相当するものであり、本実施例では例えば図3に示す差動歯車装置34に動力を伝達するために、デフリングギヤ36と噛み合うことでファイナルギヤ対を構成するデフドライブピニオンと同軸上に配置されたカウンタドリブンギヤと噛み合ってカウンタギヤ対を構成するカウンタドライブギヤとして機能している。そして、このように構成された自動変速機12等において、エンジン30の出力は、トルクコンバータ32、自動変速機12、差動歯車装置34、及び一対の車軸38等を含む車両用動力伝達装置11を順次介して左右の駆動輪40へ伝達されるようになっている(図3参照)。尚、自動変速機12やトルクコンバータ32は中心線(軸心)Cに対して略対称的に構成されており、図1の骨子図においてはその軸心Cの下半分が省略されている。
トルクコンバータ32は、エンジン30の動力を流体を介することなく入力軸26に直接伝達するロックアップ機構としてのロックアップクラッチ42を備えている。このロックアップクラッチ42は、係合側油室44内の油圧と解放側油室46内の油圧との差圧ΔPにより摩擦係合させられる油圧式摩擦クラッチであり、それが完全係合(ロックアップオン)させられることにより、エンジン30の動力が入力軸26に直接伝達される。
自動変速機12は、第1変速部18及び第2変速部24の各回転要素(サンギヤS1〜S3、キャリアCA1〜CA3、リングギヤR1〜R3)のうちのいずれかの連結状態の組み合わせに応じて第1ギヤ段「1st」〜第6ギヤ段「6th」の6つの前進ギヤ段(前進変速段)が成立させられるとともに、後進ギヤ段「R」の後進ギヤ段(後進変速段)が成立させられる。図2に示すように、例えば前進ギヤ段では、クラッチC1とブレーキB2との係合により第1速ギヤ段が、クラッチC1とブレーキB1との係合により第2速ギヤ段が、クラッチC1とブレーキB3との係合により第3速ギヤ段が、クラッチC1とクラッチC2との係合により第4速ギヤ段が、クラッチC2とブレーキB3との係合により第5速ギヤ段が、クラッチC2とブレーキB1との係合により第6速ギヤ段が、それぞれ成立させられるようになっている。また、ブレーキB2とブレーキB3との係合により後進ギヤ段が成立させられ、クラッチC1、C2、及びブレーキB1〜B3の何れもが解放されることによりニュートラル状態となるように構成されている。尚、ケース14内には、エンジン30によって回転駆動されることにより、上記クラッチC1、C2、及びブレーキB1〜B3を作動させる為の元圧となる作動油圧を発生する機械式のオイルポンプ48が備えられている。
図2の作動表は、上記各ギヤ段GSとクラッチC1、C2、及びブレーキB1〜B3の作動状態との関係をまとめたものであり、「○」は係合、「◎」はエンジンブレーキ時のみ係合を表している。尚、第1ギヤ段「1st」を成立させるブレーキB2には並列に一方向クラッチF1が設けられているため、発進時(加速時)には必ずしもブレーキB2を係合させる必要は無い。つまり、発進時にはクラッチC1のみを係合させれば良く、例えば後述するニュートラル制御からの復帰時にはこのクラッチC1が係合させられる。このように、このクラッチC1は発進クラッチとして機能する。また、各ギヤ段GSの変速比γgs(=入力軸26の回転速度Nin/出力歯車28の回転速度Nout)は、第1遊星歯車装置16、第2遊星歯車装置20、及び第3遊星歯車装置22の各ギヤ比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。
上記クラッチC1、C2、及びブレーキB1〜B3(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBという)は、例えば多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御され、係合によりエンジン30の動力を駆動輪40側へ伝達する油圧式摩擦係合装置である。そして、油圧制御回路100内のリニアソレノイドバルブSL1〜SL5(図3,4参照)の励磁、非励磁や電流制御により、各クラッチC及びブレーキBの係合、解放状態が切り換えられると共に、係合、解放時の過渡係合油圧などが制御される。
図3は、エンジン30や自動変速機12などを制御する為に車両10に設けられた電気的な制御系統の要部を説明するブロック線図である。図3において、車両10には、例えば自動変速機12のニュートラル制御などに関連する油圧制御装置を含む電子制御装置120が備えられている。この電子制御装置120は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン30の出力制御や自動変速機12の変速制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用のエンジン制御装置や油圧制御回路100内のリニアソレノイドバルブSL1〜SL5を制御する変速制御用の油圧制御装置等に分けて構成される。
電子制御装置120には、例えば作動油温センサ74により検出された油圧制御回路100内の作動油(例えば公知のATF)の温度である作動油温Toilを表す信号、アクセル開度センサ76により検出された運転者による車両10に対する要求量(ドライバ要求量)としてのアクセルペダル78の操作量であるアクセル開度Accを表す信号、エンジン回転速度センサ80により検出されたエンジン30の回転速度であるエンジン回転速度Neを表す信号、冷却水温センサ82により検出されたエンジン30の冷却水温Twを表す信号、吸入空気量センサ84により検出されたエンジン30の吸入空気量Qを表す信号、スロットル弁開度センサ86により検出された電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θthを表す信号、車速センサ88により検出された車速Vに対応する出力歯車28の回転速度である出力回転速度Noutを表す信号、ブレーキスイッチ90により検出された常用ブレーキであるフットブレーキの作動中(踏込操作中)を示すフットブレーキペダル92の操作(オン)Bonを表す信号、レバーポジションセンサ94により検出されたシフトレバー96のレバーポジション(操作位置、シフトポジション)PSHを表す信号、タービン回転速度センサ98により検出されたトルクコンバータ32のタービンの回転速度であるタービン回転速度Nt(すなわち入力軸26の回転速度である入力回転速度Nin)を表す信号などがそれぞれ供給される。
また、電子制御装置120からは、エンジン30の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号Se、例えばアクセル開度Accに応じて電子スロットル弁の開閉を制御する為のスロットルアクチュエータへの駆動信号や燃料噴射装置から噴射される燃料噴射量を制御する為の噴射信号やイグナイタによるエンジン30の点火時期を制御する為の点火時期信号などが出力される。また、自動変速機12の変速制御の為の油圧制御指令信号Sp、例えば自動変速機12のギヤ段GSを切り換える為に油圧制御回路100内のリニアソレノイドバルブSL1〜SL5の励磁、非励磁などを制御する為のバルブ指令信号(油圧指令値、駆動信号)やライン油圧PLを調圧制御する為のリニアソレノイドバルブSLTへの駆動信号などが出力される。
また、シフトレバー96は、例えば運転席の近傍に配設され、図3に示すように、5つのレバーポジション「P」、「R」、「N」、「D」、または「S」へ手動操作されるようになっている。
「P」ポジション(レンジ)は自動変速機12内の動力伝達経路を解放しすなわち自動変速機12内の動力伝達が遮断されるニュートラル状態(中立状態)とし且つメカニカルパーキング機構によって機械的に出力歯車28の回転を阻止(ロック)する為の駐車ポジション(位置)である。また、「R」ポジションは自動変速機12の出力歯車28の回転方向を逆回転とする為の後進走行ポジション(位置)である。また、「N」ポジションは自動変速機12内の動力伝達が遮断されるニュートラル状態とする為の中立ポジション(位置)である。また、「D」ポジションは自動変速機12の変速を許容する変速範囲(Dレンジ)で第1ギヤ段「1st」〜第6ギヤ段「6th」の総ての前進ギヤ段を用いて自動変速制御を実行させる前進走行ポジション(位置)である。また、「S」ポジションはギヤ段の変化範囲を制限する複数種類の変速レンジすなわち高車速側のギヤ段が異なる複数種類の変速レンジを切り換えることにより手動変速が可能な前進走行ポジション(位置)である。
上記「D」ポジションは自動変速機12の変速可能な例えば図2に示すような第1速ギヤ段乃至第6速ギヤ段の範囲で自動変速制御が実行される制御様式である自動変速モードを選択するレバーポジションでもあり、「S」ポジションは自動変速機12の各変速レンジの最高速側ギヤ段を超えない範囲で自動変速制御が実行されると共にシフトレバー96の手動操作により変更された変速レンジ(すなわち最高速側ギヤ段)に基づいて手動変速制御が実行される制御様式である手動変速モードを選択するレバーポジションでもある。
なお、上記実施例では、シフトレバー96が「S」ポジションに操作されることにより、最高速側の変速レンジが設定される(シフトレンジ固定)ものであったが、シフトレバー96の操作に基づいて変速段(ギヤ段)が指定される(ギヤ段固定)ものであっても構わない。この場合、自動変速機12ではマニュアルシフト操作される度にその操作に対応する所望のギヤ段となるように変速制御が実行される。
図4は、本発明の油圧制御装置を構成する油圧制御回路100のうちクラッチC1、C2、及びブレーキB1〜B3の各油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)ACT1〜ACT5の作動を制御するリニアソレノイドバルブSL1〜SL5に関する油圧制御回路の要部を示す図である。なお、本発明の車両用油圧制御装置は、上記油圧制御回路100および電子制御装置120等を含んで構成される。
図4において、油圧供給装置102は、エンジン30によって回転駆動される機械式のオイルポンプ48(図1参照)から発生する油圧を元圧として第1ライン油圧PL1を調圧する例えばリリーフ型のプライマリレギュレータバルブ(第1調圧弁)104と、そのプライマリレギュレータバルブ104から排出される油圧を元圧として第2ライン油圧PL2を調圧するセカンダリレギュレータバルブ(第2調圧弁)106と、スロットル弁開度θthや吸入空気量Q等で表されるエンジン負荷等に応じた第1ライン油圧PL1及び第2ライン油圧PL2が調圧される為にプライマリレギュレータバルブ104及びセカンダリレギュレータバルブ106へ信号圧PSLTを供給するリニアソレノイドバルブSLTと、第1ライン油圧PL1を元圧としてモジュレータ油圧PMを一定値に調圧するモジュレータバルブ108とを備えている。また、油圧供給装置102は、シフトレバー96の操作に基づいて機械的或いは電気的に油路が切り換えられるマニュアルバルブ110を備えている。このマニュアルバルブ110は、例えばシフトレバー96が「D」ポジション或いは「S」ポジションへ操作されたときには、入力された第1ライン油圧PL1をドライブ油圧PDとして出力し、シフトレバー96が「R」ポジションへ操作されたときには、入力された第1ライン油圧PL1をリバース油圧PRとして出力し、シフトレバー96が「P」ポジション或いは「N」ポジションへ操作されたときには、油圧の出力を遮断する(ドライブ油圧PD及びリバース油圧PRを排出側へ導く)。このように、油圧供給装置102は、第1ライン油圧PL1、第2ライン油圧PL2、モジュレータ油圧PM、ドライブ油圧PD、及びリバース油圧PRを出力するようになっている。
また、油圧制御回路100には、各油圧アクチュエータACT1〜ACT5に対応して、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5(以下特に区別しない場合はリニアソレノイドバルブSLと記載する)がそれぞれ設けられている。油圧アクチュエータACT1、ACT2、ACT3、ACT5には、それぞれ対応するリニアソレノイドバルブSL1、SL2、SL3、SL5により、油圧供給装置102からそれぞれ供給されたドライブ油圧PDが電子制御装置120からの指令信号に応じた係合油圧PC1、PC2、PB1、PB3に調圧されてそれぞれ直接的に供給される。また、各油圧アクチュエータACT4には、対応するリニアソレノイドバルブSL4により、油圧供給装置102から供給された第1ライン油圧PL1が電子制御装置120からの指令信号に応じた係合油圧PB2に調圧されて直接的に供給される。なお、ブレーキB3の油圧アクチュエータACT5には、リニアソレノイドバルブSL5により調圧された係合油圧PB3またはリバース油圧PRのどちらかがシャトル弁112を介して供給されるようになっている。また、各油圧アクチュエータACT1〜ACT5の上流側にはアキュムレータACM1〜ACM5が設けられている。
このように、油圧アクチュエータACT1、ACT2、ACT3、ACT5にそれぞれ供給される係合油圧PC1、PC2、PB1、PB3はドライブ油圧PDを元圧として調圧された油圧である。このような油圧制御回路100の構成では、例えばシフトレバー96が「D」ポジションから「N」ポジションへ操作されるD→N操作時には、元圧となるドライブ油圧PDを供給できないので、クラッチC1、C2、及びブレーキB1、B3の解放時の係合油圧PC1、PC2、PB1、PB3を調圧することができない。すなわち、D→N操作時には、解放時の係合油圧PC1、PC2、PB1、PB3は単に排出されるだけとなる。
リニアソレノイドバルブSL1〜SL5は、基本的には何れも同じ構成であり、電子制御装置120によりそれぞれ独立に励磁、非励磁や電流制御がなされて各油圧アクチュエータACT1〜ACT5へ供給される油圧を独立に調圧制御し、クラッチC1、C2、及びブレーキB1〜B3の係合油圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3をそれぞれ制御するものである。そして、自動変速機12は、例えば図2の係合作動表に示すように予め定められた係合装置が係合されることによって各ギヤ段GSが成立させられる。また、自動変速機12の変速制御においては、例えば変速に関与するクラッチCやブレーキBの解放側油圧式摩擦係合装置と係合側油圧式摩擦係合装置との掴み替えによる所謂クラッチツゥクラッチ変速が実行される。このクラッチツゥクラッチ変速の際には、変速ショックを抑制しつつ可及的に速やかに変速が実行されるように解放側油圧式摩擦係合装置の解放過渡係合油圧と係合側油圧式摩擦係合装置の係合過渡係合油圧とが適切に制御される。例えば、図2の係合作動表に示すように3速→4速のアップシフトでは、ブレーキB3が解放されると共にクラッチC2が係合され、変速ショックを抑制するようにブレーキB3の解放過渡油圧とクラッチC2の係合過渡油圧とが適切に制御される。
上記解放側油圧式摩擦係合装置の解放過渡係合油圧および係合側油圧式摩擦係合装置の係合過渡係合油圧は、その油圧式摩擦係合装置(解放側油圧式摩擦係合装置および係合側油圧式摩擦係合装置を区別しない場合には、油圧式摩擦係合装置と記載)の油圧を制御するリニアソレノイドバルブ(SL1〜SL5等)の励磁電流を制御して、リニアソレノイドバルブの指示圧を制御することで実行される。例えば、3速→4速のアップシフトでは、エンジントルクTeや車速V等の車両の走行状態に応じて、係合側油圧式摩擦係合装置に対応するクラッチC2の目標クラッチトルク容量TC2*が設定され、その目標クラッチトルク容量TC2*を達成することができる目標係合油圧PC2*が算出される。そして、実際のクラッチC2の係合油圧(係合過渡係合油圧)が設定された目標係合油圧PC2*に追従するように、そのリニアソレノイドバルブSL2の指示圧PC2inが制御される。また、3速→4速へのアップシフトにおいて、解放側油圧式摩擦係合装置に対応するブレーキB3においても同様に、リニアソレノイドバルブSL5の指示圧PC5inが制御される。ここで、例えばリニアソレノイドバルブSL2の指示圧PC2inを制御するに際して、その指示圧PC2inに対する実際のクラッチC2の係合油圧の過渡特性をモデル内圧Pmdlとしてモデル化し、そのモデル化されたモデル内圧Pmdlに基づいて指示圧PC2inが制御される。上記制御は、クラッチC2以外の油圧式摩擦係合装置においても同様に実施される。なお、モデル内圧Pmdlが、本発明のモデル油圧に対応している。
上記油圧式摩擦係合装置(クラッチC1、C2、ブレーキB1〜B3)のモデル内圧Pmdlは、油圧式摩擦係合装置を構成する各要素に基づいて方程式を組み立て、その方程式を解くことで精緻に算出することができる。上記方程式は、油圧式摩擦係合装置(以下、クラッチCと記載)を構成する各要素を、図5に示すような物理的な模型モデルにモデル化することで組み立てられる。なお、図5のモデルは、クラッチC1、C2、ブレーキB1〜B3の各油圧式摩擦係合装置毎に構成されるため、個々に相違するものである。図5は、上記油圧式摩擦係合装置の何れかを一例として示している。
図5において、所定のクラッチC(クラッチC1、C2、ブレーキB1〜B3)を構成する油圧アクチュエータACTの上流側には、クラッチCへの指示圧Pinを出力するリニアソレノイドバルブSLA(SL1〜SL5)が配置され、リニアソレノイドバルブSLAと油圧アクチュエータACTの間には、アキュムレータACMが設けられている。また、リニアソレノイドバルブSLAとアキュムレータACMとの間の油路122には、オリフィス124が設けられ、アキュムレータACMと油圧アクチュエータACTとの間の油路126にはアキュムレータ128が設けられている。さらに、アキュムレータACMと連通する油路130にはオリフィス132が設けられている。
油圧アクチュエータACTは、図示しない摩擦板を押圧するために摺動可能に設けられているピストン134と、そのピストン134を係合側(図において右側)へ移動させる際、そのピストン134に推力を付与するための油圧が油路126から供給される油室136と、ピストン134を解放させる側へ付勢するリターンスプリング138とを、含んで構成されている。
アキュムレータACMは、油路130から油圧が供給される畜圧室140と、畜圧室140内に油圧が供給されることで移動されるピストン142と、畜圧室140のピストン142を挟んだ背面側に配置されピストン142を畜圧室140側へ付勢するアキュムレータスプリング144とを、含んで構成されている。
上記のようにモデル化されるクラッチCにおいて、下式(1)〜(4)に示す方程式(流量方程式)が成立する。ここで、q1はオリフィス124を単位時間あたりに通過する流量を示し、q2はオリフィス128を単位時間あたりに通過する流量を示し、q3はオリフィス132を単位時間当たりに通過する流量を示している。また、a1はオリフィス124の断面積を示しており、a2はオリフィス128の断面積を示し、a3はオリフィス132の断面積を示し、Bは各オリフィスの流量係数を示している。さらに、PinはリニアソレノイドバルブSLAの指示圧(供給圧)を示し、PacはアキュムレータACMの畜圧室140のアキューム内圧を示し、Pcは油圧アクチュエータACTの油室136内の油圧(以下、内圧Pcと記載)を示し、Pmはオリフィス124とオリフィス128との間の油路の油圧(以下、中間経路圧Pmと記載)を示している。
q1=q2+q3・・・・・(1)
q1=a1×B×(Pin−Pm)1/2・・・・(2)
q2=a2×B×(Pm−Pc)1/2・・・・(3)
q3=a3×B×(Pm−Pac)1/2・・・・(4)
式(1)は、オリフィス124を通る流量q1が、オリフィス128を通る流量q2とオリフィス132を通る流量との和となることを表している。また、式(2)〜式(4)は、公知であるオリフィス前後の圧力と流量の関係を示している。なお、流量係数Bは、一定値とはならず、オリフィスの断面積、オリフィスの形状等に応じて変化するものであり、予め各オリフィスの流量係数Bが実験によって求められる。
また、油圧アクチュエータACTの内圧PcおよびアキュームレータACMのアキューム内圧Pacは、下式(5)、(6)でそれぞれ示される。ここで、Fc(Xc)は、油圧アクチュエータACTのピストン134の移動量であるピストンストローク量Xcに対する反力を示し、Fac(Xac)はアキュムレータACMのピストン142の移動量であるアキュームストローク量Xacに対する反力を示し、Acは油圧アクチュエータACTのピストン134の断面積(受圧面積)を示し、AacはアキュムレータACMのピストン142の断面積(受圧面積)を示している。
Pc=Fc(Xc)/Ac・・・・(5)
Pac=Fac(Xac)/Aac・・・・(6)
また、オリフィス128を単位時間あたりに通過する流量q2と油圧アクチュエータACTのピストン134のピストンスロトーク量Xcとは、下式(7)の関係で示され、オリフィス132を単位時間当たりに通過する流量q3とアキュムレータACMのピストン142のアキュームストローク量Xacとは、下式(8)の関係で示される。下式(7)は、オリフィス128を単位時間あたりに通過する流量q2が油圧アクチュエータACTの油室136の体積変化と等しくなることを示しており、下式(8)は、オリフィス132を単位時間あたりに通過する流量q3がアキュムレータACMの畜圧室140の体積変化と等しくなることを示している。
q2=Xc×Ac・・・・(7)
q3=Xac×Aac・・・・(8)
上記式(1)〜(8)に基づく流量方程式を解くことにより、リニアソレノイドバルブSLAの指示圧Pinに対する油圧アクチュエータACTの内圧Pcが精緻に算出される。すなわち、リニアソレノイドバルブSL2の指示圧Pinに対する油圧アクチュエータACTの内圧Pcをモデル内圧Pmdlとして精緻にモデル化することができる。
上記流量方程式を解くに際して、油圧アクチュエータACTのピストン134のピストンストローク量Xcに対する反力Fc(Xc)、およびアキュムレータACMのピストン142のアキュームストローク量Xacに対する反力Fac(Xac)が予め求められる。油圧アクチュエータACTのピストン134のピストンストローク量Xcに対する反力Fc(Xc)は、言い換えれば、ピストンスロトーク量Xcに応じてその全長(軸長)が変化させられる油圧アクチュエータACTに備えられるリターンスプリング138の弾性復帰力に基づくものである。具体的には、ピストンスロトーク量Xcが大きくなるに従って、リターンスプリング138の全長(軸長)が短くなるため、反力Fc(Xc)が大きくなる。また、ピストン134のピストンスロトーク量Xcが予め設定された制限値Xclimに到達すると、ピストン134の移動が制限され、反力Fc(Xc)が一定となる。
また、アキュムレータのピストン142のアキュームストローク量Xacに対する反力Fac(Xac)は、言い換えれば、アキュームストローク量Xacに応じてその全長(軸長)が変化させられるアキュムレータスプリング144の弾性復帰力に基づくものである。具体的には、アキュームストローク量Xacが大きくなるに従って、アキュームスプリング144の全長(軸長)が短くなるため、反力Fac(Xac)が大きくなる。また、ピストン142のアキュームストローク量Xacが予め設定された制限値Xaclimに到達すると、ピストン142の移動がストッパ146によって制限されるため、反力Fac(Xac)が一定となる。
上記反力Fc(Xc)とピストンスロトーク量Xcとの関係および上記反力Fac(Xac)とアキュームストローク量Xacとの関係、オリフィス124、128、132等の各諸元の特性を予め調べて記憶しておき、油圧アクチュエータACTの容積変化と内圧Pcとの関係、オリフィス前後の差圧による流量等の方程式を公知の算出手段によって解くことで、指示圧Pinに対する内圧Pcが精緻に算出され、指示圧Pinに対する内圧Pcをモデル内圧Pmdlとして精緻にモデル化することができる。ここで、上記方程式を解くことにより、内圧Pcをモデル内圧Pmdlとして精緻にモデル化することができるが、上記流量等の方程式を解くに際して、演算が複雑で演算負荷が大きくなるので、実際の車両に実装することは困難であった。そこで、本実施例では、上記流量等の方程式を解くことなく、簡易な演算によって、上記方程式を解くことによって精緻に得られる内圧Pcと略等しい演算結果を得ることができる算出方法(算出手段)を提案する。以下、本実施例による内圧Pcのモデル化について説明する。なお、以下の説明は、自動変速機12を構成する全てのクラッチC(クラッチC1、C2、ブレーキB1〜B3)において実行される。
本実施例の指示圧Pinに対する内圧Pcをモデル内圧Pmdlとして算出するに際して、予めクラッチC(クラッチC1、C2、ブレーキB1〜B3)の油圧の特異点が検出される。ここで、油圧の特異点とは、内圧Pcの変化特性が変わる境界の油圧であり、油圧の特異点の前後では、内圧Pcの特性(変化勾配)が異なるものとなる。また、上記油圧の特異点は、クラッチCの構成に応じて複数存在する。
上記油圧の特異点は、例えば油圧アクチュエータACT(ACT1〜ACT5)のリターンスプリング138やアキュムレータACM(ACM1〜ACM5)のアキュムレータスプリング144による特性変化の影響等によって生じるものである。例えば、クラッチCの係合制御時において、アキュムレータACMの畜圧室140に油圧が供給されると、ピストン142が移動するに従ってアキュムレータスプリング144が圧縮されるが、ピストン142のアキュムレータストローク量Xacが制限値Xaclimに到達すると、それ以上のストロークはストッパ146によって制限される。このようなピストン142のアキュムレータストローク量Xacが所定値Xacmaxに到達した地点の油圧を境界として、内圧Pcの特性が変化する。また、油圧アクチュエータACTに備えられるリターンスプリング138においても同様に、その変化が制限される点(スプリングエンド点)の内圧Pcを境に内圧Pcの特性が変化する。また、アキュムレータスプリング144およびリターンスプリング138に限定されず、例えばクラッチCの摩擦材にウェーブが形成される場合には、ウェーブの変化が始まる点や終了する点の油圧を境にして、内圧Pcの特性が変化する。このような点に対応する油圧が油圧の特異点となる。
上記油圧の特異点は、例えば試験車両において油圧アクチュエータACTの内圧Pcを検出する油圧センサを設け、指示圧Pinに対する内圧Pcの変化を実験的に計測することによって検出される。具体的には、内圧Pcを逐次検出し、内圧Pcの特性(内圧Pcの変化勾配)が変化する点(油圧)を特異点に設定する。或いは、計算機によって上述した流量等の方程式を解くことで内圧Pcの変化を算出し、その内圧Pcの特性(内圧Pcの変化勾配)が変化する点(油圧)を特異点に設定する。
また、油圧アクチュエータACTへの流量に対応する内圧Pcの変化量ΔPc(以下ガード変化量ΔPcと記載)は、上記特異点間での油圧アクチュエータACTの内圧Pcと指示圧Pinとの差分ΔP(=|Pin−Pc|)、および油温Toilに基づいて略決定できることが見出されている。そこで、本実施例では、求められた特異点間毎に、差圧ΔPに対する内圧Pcのガード変化量ΔPcを油温毎に予め調べ、そのガード変化量ΔPcに基づいて内圧Pcをモデル内圧Pmdlとして逐次算出する。なお、内圧Pcのガード変化量ΔPcが、本発明の油圧の変化量に対応している。
図6は、電子制御装置120による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図6において、油圧制御手段160は、例えば自動変速機12のクラッチツゥクラッチの変速制御が実行される場合、係合側油圧式摩擦係合装置および解放側油圧式摩擦係合装置のトルク容量が最適な値となるように、すなわちクラッチC1、C2、ブレーキB1〜B3に対応する各油圧式摩擦係合装置(以下クラッチCと記載)の油圧が、車両の走行状態に応じて設定された目標油圧に追従するように指示圧Pinを制御する。具体的には、クラッチCの油圧が最適となるように、そのクラッチCを制御するリニアソレノイドバルブ(SL1〜SL5)に供給される励磁電流を制御する。ここで、指示圧Pinを制御するに際して、指示圧Pinに対するクラッチCの内圧Pcをモデル内圧Pmdlとして推定する必要がある。そこで、モデル油圧算出手段162は、指示圧Pinに対するクラッチCの内圧Pcをモデル内圧Pmdlとして推定的に決定する。
モデル油圧算出手段162は、指示圧検出手段164、記憶手段166、演算手段168、および特異点通過判断手段170を含んで構成されている。指示圧検出手段164は、例えばクラッチCに出力されている油圧指令信号に基づいて、クラッチの指示圧Pinを検出する。
記憶手段166は、予め求められたクラッチCの油圧の特異点、およびその各特異点間における指示圧Pinと油圧アクチュエータACTの油室136内の内圧Pcとの差圧ΔP(=|Pin−Pc|)に対する内圧Pcのガード変化量ΔPcを油温毎に予め記憶している。なお、上記ガード変化量ΔPcは、所定時間あたりの変化量、具体的には、後述するモデル内圧Pmdl算出時のタイムステップ時間あたりの変化量に相当する。上記差圧ΔPに対する内圧Pcのガード変化量ΔPcは、予め実験或いは計算によって求められて記憶されている。具体的には、油圧アクチュエータACTの油室136内の油圧(=内圧Pc)を検出する油圧センサが取り付けられた試験車両によって実験を行い、指示圧Pinと内圧Pcとの差圧ΔPに対する内圧Pcのガード変化量ΔPcを逐次測定する。なお、上記測定は、予め求められた特異点間毎に、油温条件を変更しつつ実施される。また、上記実験に代わって、上述した流量等の方程式を解くことにより、差圧ΔPに対する内圧Pcのガード変化量ΔPcを油温毎に算出しても構わない。なお、上記流量等の方程式の算出には、専用の計算機が使用される。
図7は、上述した実験または計算に基づいて、特異点間毎に求められた差圧ΔP(=|Pin−Pc|)と内圧Pcのガード変化量ΔPcとの関係(油圧特性)をマップ(関係マップ)化した一例である。図7に示すように、差圧ΔPが大きくなるに従って、内圧Pcのガード変化量ΔPcが大きくなり、また、油温Toilが高くなるに従って、内圧Pcのガード変化量ΔPcが大きくなる。なお、図7に示す差圧ΔPと内圧Pcのガード変化量ΔPcとの関係(油圧特性)を示す関係マップは、全ての求められた特異点間毎に設定され記憶手段166に記憶される。また、上記関係マップは、内圧上昇時(クラッチ係合時)と内圧低下時(クラッチ解放時)とで、それぞれ別個に求められ、別個のマップとして記憶される。上記は、クラッチ係合時と解放時とでは、内圧Pcの変化特性が異なるためである。
演算手段168は、記憶手段166に予め記憶されている差圧ΔPと内圧Pcのガード変化量ΔPcとの関係を示す関係マップ、指示圧Pin、および前回算出された直前のモデル内圧Pmdlに基づいて今回の内圧Pcをモデル内圧Pmdlとして決定する。具体的には、関係マップに基づいて油圧のガード変化量ΔPcを決定し、前回算出されたモデル内圧Pmdlを、決定されたガード変化量ΔPcだけ変化させることで、今回のモデル内圧Pmdlを決定する。以下において、算出される内圧Pcをモデル内圧Pmdlと表記する。また、以下において、今回算出されるモデル内圧Pmdlと前回のタイムステップにおいて算出されたモデル内圧Pmdlとを区別するため、今回算出されるモデル内圧mdlをモデル内圧Pmdli、前回のタイムステップにおいて算出されたモデル内圧Pmdlをモデル内圧Pmdli-1と区別して記載する。
演算手段168は、下式(9)または下式(10)に基づいて、予め設定されたタイムステップ後(例えば16ms)に推測されるモデル内圧Pmdliを算出する。なお、式(9)は内圧上昇時(クラッチ係合時、すなわち指示圧Pinが前回算出されたモデル内圧Pmdli-1よりも高い場合)に適用され、式(10)は、内圧低下時(クラッチ解放時、すなわち指示圧Pinが前回算出されたモデル内圧Pmdli-1より低い場合)に適用される。ここで、内圧Pcのガード変化量ΔPcは、記憶手段166に予め記憶されている図7に示す関係マップに基づいて決定される。具体的には、指示圧検出手段164によって検出される指示圧Pinと前回算出されたモデル内圧Pmdli-1との差圧ΔP(|Pin−Pmdli-1|)、および油温Toilを引数として、図7に示す関係マップに基づいて内圧Pcのガード変化量ΔPcが決定される。なお、図7に示す複数求められた油温条件に基づいて、実際の油温Toilにおけるガード変化量ΔPcが、補間によって最適なガード変化量ΔPcとして求められる。
Pmdli=min{Pmdli-1+ΔPc、Pin}・・・・(9)
Pmdli=max{Pmdli-1−ΔPc、Pin}・・・・(10)
ここで、図7に示す関係マップは、基準となる油温Tstdのガード変化量ΔPcstdのみ記憶され、さらに、油温Toilに対する油温係数χが別のマップとして記憶され、基準となる油温Tstdのガード変化量ΔPcstdに現在の油温Toilに対応する油温係数χを掛けることでガード変化量ΔPc(=ΔPcstd×χ)を決定するものであっても構わない。すなわち、下式(9’)または式(10’)に基づいて、モデル内圧Pmdliが算出される。なお、式(9’)は内圧上昇時(クラッチ係合時、すなわち指示圧Pinが前回算出されたモデル内圧Pmdli-1よりも高い場合)に適用され、式(10’)は、内圧低下時(クラッチ解放時、すなわち指示圧Pinが前回算出されたモデル内圧Pmdli-1より低い場合)に適用される。
上記油温係数χは、予め実験や計算によって求められ、油温Toilに応じてガード変化量ΔPcが最適な値となる数値に設定されている。なお、基準となる油温Tstdにおける油温係数χは1.0となる。
Pmdli=min{Pmdli-1+ΔPstd×χ、Pin}・・・・(9’)
Pmdli=max{Pmdli-1−ΔPstd×χ、Pin}・・・・(10’)
上記式(9)、(9’)は、前回算出された内圧Pmdli-1に求められたガード変化量ΔPcを加算した値と、指示圧Pinとを比較し、低圧側の油圧がモデル内圧Pmdliに設定されることを示している。上記のように設定されると、仮に算出されたモデル内圧Pmdliが指示圧Pinよりも高くなった場合には、指示圧Pinがモデル内圧Pmdlとして設定される。すなわち、モデル内圧Pmdlが指示圧Pinを越えることが禁止(ガード)される。
また、上記式(10)、(10’)は、前回算出されたモデル内圧Pmdli-1に求められたガード変化量ΔPcを減算した値と、指示圧Pinとを比較し、高圧側の油圧がモデル内圧Pmdliに設定されることを示している。上記のように設定されると、仮に算出されたモデル内圧Pmdlが指示圧Pinよりも低くなった場合には、指示圧Pinがモデル内圧Pmdlとして設定される。すなわち、モデル内圧Pmdlが指示圧Pinよりも低下することが禁止(ガード)される。
演算手段168は、式(9)、(9’)、(10)、(10’)に基づく演算を繰り返し実行することで、モデル内圧Pmdliをタイムステップ毎に逐次算出する。
また、モデル内圧Pmdlが逐次算出されるに従い、モデル内圧Pmdlが上昇(或いは低下)し油圧の特異点を越えると、関係マップがその特異点を越える範囲に対応する関係マップに切り替えられ、切り替えられた関係マップに基づいて、モデル内圧Pmdlが算出される。なお、モデル内圧Pmdlが油圧の特異点を越えたか否かは、特異点通過判断手段170によって判断される。図8は、破線で示すクラッチCの指示圧Pinに対するモデル内圧Pmdlの変化を示している。図8に示すように、例えばクラッチCにおいて、2つの油圧の特異点(Pa、Pb)が存在するものとする。なお、上記特異点は、上述したようにリターンスプリング138やアキュムレータスプリング144の状態変化の切り替わり等に基づいて発生するものである。特異点通過判断手段170は、算出されたモデル内圧Pmdlと予め求められている特異点(Pa、Pb)とを比較し、モデル内圧Pmdlが特異点(Pa、Pb)よりも大きくなる或いは小さくなる場合に、モデル内圧Pmdlが特異点を越えたと判断する。
図8に示すように、上記特異点(Pa、Pb)を境界にしてモデル内圧Pmdlの特性が変化する。したがって、図8において、モデル内圧Pmdlの特性が異なる3つの領域(α、β、γ)に分割される。この3つの領域が前述した各特異点間の領域に対応しており、この領域毎に前述した関係マップが予め求められて記憶手段166に記憶されている。したがって、領域毎に記憶手段166に予め記憶されている領域毎(図8ではα、β、γの3領域)に設定されている関係マップに基づいてモデル内圧Pmdlが算出されるので、モデル内圧Pmdlの特性の変化が反映される。
また、例えば図8の領域αにおいて、係合制御時にモデル内圧Pmdli-1が特異点Paの近傍となり、演算手段168によって算出されたモデル内圧Pmdliが特異点Paを越える場合、領域αでの関係マップに基づいて算出されたモデル内圧Pmdlに加え、演算手段168は、領域βにおいて適用される関係マップに基づいてモデル内圧Pmdlを算出する。そして、モデル油圧算出手段162は、領域αにおいて適用される関係マップ基づいて算出されたモデル内圧Pmdli(区別のためPmdliαと記載)と、領域βにおいて適用される関係マップに基づいて算出されたモデル内圧Pmdli(区別のためPmdliβと記載)とを比較し、低圧側、言い換えれば、指示圧Pinとの差分が大きい側の油圧をモデル内圧Pmdlに設定する。なおモデル内圧Pmdliβが、本発明の第2のモデル油圧に対応している。
図9は、係合制御時において、上記特異点Pa近傍でのモデル内圧Pmdlの算出方法を説明するための図である。t1時点のモデル内圧Pmdlをモデル内圧Pmdli-2とすると、t2時点のモデル内圧Pmdli-1は、領域αにおいて設定されている関係マップより、式(9)または式(9’)に基づいて算出される。次いで、t2時点のモデル内圧Pmdli-1より、t3時点でのモデル内圧Pmdliを領域αにおいて設定されている関係マップに基づいて算出すると、モデル内圧Pmdliαとなり、特異点Paを越えることとなる。このとき、演算手段168は、領域βにおいて適用される関係マップに基づいてモデル内圧Pmdliβを算出する。モデル油圧算出手段162は、算出されたモデル内圧Pmdliαおよびモデル内圧Pmdliβを比較し、低圧側の油圧をモデル内圧Pmdliに設定する。例えば図9においては、モデル内圧Pmdliβがモデル内圧Pmdliαよりも低圧であるため、モデル内圧Pmdliβがモデル内圧Pmdliに設定される。
ここで、上記特異点Paを跨ぐ際のモデル内圧Pmdliβを算出するに際し、モデル内圧Pmdliβの基準点は、特異点Paとされる。具体的には、指示圧Pinと特異点Paとの差圧ΔP(=|Pa−Pin|)が算出され、算出された差圧ΔPを引数とし、領域βにおいて適用される関係マップに基づいてガード変化量ΔPcが決定される。そして、特異点Paに算出された上記ガード変化量ΔPcを加算することで、モデル内圧Pmdliβが算出される。上記モデル内圧Pmdliβの算出方法を式として表すと、下式(11)となる。そして、設定される差圧Pciは、下式(12)で表される。下式(12)は、算出されたモデル内圧(Pmdliα、Pmdliβ)、および指示圧Pinのうち最小値をとる油圧がモデル内圧Pmdliとして選択されることを示している。
Pmdliβ=Pa+ΔPc・・・・(11)
Pmdli=min{Pmdliα、Pmdliβ、Pin}・・・・(12)
上記のように、算出されたモデル内圧Pmdliが特異点Paを跨ぐ場合には、領域αで適用される関係マップに基づくモデル内圧Pmdliαと、領域βで適用されるマップに基づくモデル内圧Pmdliβとを算出し、それぞれのモデル内圧(Pmdliα、Pmdliβ)および指示圧Pinうち、最小値を選択することで、例えば特異点Paを境に内圧Pcの特性が大きく変わった場合においても、その特性の変化がモデル内圧Pmdliに加味されることとなる。なお、他の特異点(特異点Pb等)においても同様の算出方法によってモデル内圧Pmdlが算出される。
上記は、クラッチCが係合される場合すなわちモデル内圧Pmdlが上昇する際に、モデル内圧Pmdlが特性点を跨ぐ場合ついて説明したが、クラッチCが解放される場合すなわちモデル内圧Pmdlが低下する際に、特異点を跨ぐ場合であってもモデル内圧Pmdlを同様の計算方法によって算出することができる。
モデル内圧低下時において、特異点を跨いだ際のモデル内圧Pmdliの算出についても、係合時の算出方法と略同様に、特異点を跨ぐ前の領域で適用される関係マップに基づくモデル内圧Pmdliα、および特異点を跨いだ領域で適用されるマップに基づくモデル内圧Pmdliβが算出され、算出されたモデル内圧(Pmdliα、Pmdliβ)、指示圧Pinのうち、高圧側の油圧が選択される。上記内容は、下式(13)で表される。式(13)は、モデル内圧Pmdliα、モデル内圧Pmdliβ、および指示圧Pinのうち、最大の値がモデル内圧Pmdliに設定されることを示している。なお、特異点を跨いだ領域で適用されるマップに基づくモデル内圧Pmdliβの具体的な算出についても、特異点を基準として算出される。上記モデル内圧Pmdliβの具体的な算出方法は、上述した係合時の算出方法と略変わらないため、その説明を省略する。
Pmdli=max{Pmdliα、Pmdliβ、Pin}・・・・(13)
応答遅れ補正手段172は、モデル油圧算出手段162によって算出されたモデル内圧Pmdlを、クラッチCの摩擦抵抗(摺動抵抗)等による油圧の遅れを考慮したモデル内圧Pmdliに補正する。具体的には、応答遅れ補正手段172は、例えば予め実験または計算によって求められた油圧の遅れを考慮した補正係数をモデル油圧算出手段162によって算出されたモデル内圧Pmdlに掛けるなどして、モデル内圧Pmdlを応答遅れを考慮したモデル内圧Pmdlに補正する。
指示圧遅れ補正手段174は、さらにリニアソレノイドバルブへ出力される指示圧Pinの指令信号に対する実際の指示圧Pinの遅れを考慮したモデル内圧Pmdlに補正する。具体的には、リニアソレノイドバルブ(SL1〜SL5等)から出力される指示圧Pinの指令信号に対して、実際にリニアソレノイドバルブから出力される指示圧Pinには、応答遅れが発生する。指示圧遅れ補正手段174は、予めそのリニアソレノイドバルブの応答遅れを考慮した油圧となるように、実験または計算よって求められた補正係数を掛けるなどして、モデル内圧Pmdlをリニアソレノイドバルブの応答遅れを考慮したモデル内圧Pmdlに補正する。
図10は、電子制御装置120の制御作動の要部すなわち所定の油圧式摩擦係合装置(以下、クラッチCと記載)の指示圧Pinを制御するに際して、指示圧Pinに対するクラッチCのモデル内圧Pmdlを精度良く、且つ、大きな演算負荷をかけることなく算出することができる制御作動を説明するためのフローチャートであり、タイムステップ(例えば16ms)毎に繰り返し実行される。
モデル油圧算出手段162に対応するステップSA1(以下、ステップを省略)において、リニアソレノイドバルブから出力される指示圧Pinが前回算出されたクラッチのモデル内圧Pmdli-1よりも大きいか否かが判断される。SA1が肯定される場合、モデル油圧算出手段162および記憶手段166に対応するSA2において、モデル内圧Pmdlが上昇する場合の関係マップ、具体的には、クラッチ係合時に適用される関係マップが選択される。なお、上記関係マップは、そのモデル内圧Pmdli-1の領域で適用される関係マップが選択される。一方、SA1が否定される場合、モデル油圧算出手段162および記憶手段166に対応するSA3において、内圧Pcが低下する場合の関係マップ、具体的にはクラッチ解放時に適用される関係マップが選択される。なお、上記関係マップは、そのモデル内圧Pmdli-1の領域で適用される関係マップが選択される。
次いで、演算手段168および指示圧検出手段164に対応するSA4において、指示圧Pinと前回算出時のモデル内圧Pmdli-1との差圧ΔPおよび油温Toilを引数として、選択された関係マップからモデル内圧Pmdlのガード変化量ΔPcが求められる。そして、前述した式(9)、(9’)、(10)、または(10’)により、今回のモデル内圧Pmdliが算出される。特異点通過判断手段170に対応するSA5では、SA4において算出されたモデル内圧Pmdliが予め設定されている特異点を跨いだか否かが判断される。SA5が否定される場合、後述するSA8に進む。一方、SA5が肯定される場合、演算手段168に対応するSA6において、その特異点を跨いだ領域において適用される関係マップに基づいて、モデル内圧Pmdlβが算出される。なお、このとき演算の基準点は、特異点が基準とされ、演算が実行される。そして、モデル油圧算出手段162に対応するSA7において、SA5で算出されたモデル内圧Pmdl(Pmdlα)とSA6で算出されたモデル内圧Pmdl(Pmdlβ)とを比較し、指示圧Pinとの差分(差圧)が大きい側の油圧がモデル内圧Pmdlとして設定される。
そして、モデル油圧算出手段162に対応するSA8において、上記ステップに基づいて算出されたモデル内圧Pmdlが指示圧Pinを越えるか否かが判断される。具体的には、内圧上昇時(クラッチ係合時)では、モデル内圧Pmdlが指示圧Pinよりも高くなったか否かが判断され、内圧低下時(クラッチ解放時)では、モデル内圧Pmdlが指示圧Pinよりも低くなったか否かが判断される。SA8が否定される場合、モデル油圧算出手段162に対応するSA10において、算出されたモデル内圧Pmdlが維持される。一方、SA8が否定される場合、モデル油圧算出手段162に対応するSA9において、指示圧Pinがモデル内圧Pmdlに設定される。
上記SA1〜SA9がタイムステップ毎に逐次実施されることにより、モデル内圧Pmdlが逐次算出される。また、算出されたモデル内圧Pmdlに対して、前述した応答遅れ補正手段172および指示圧遅れ補正手段174が実行されることで、ソレノイドバルブに出力される指示圧指令に対するモデル内圧Pmdlがさらに正確となる。
図11は、図10のフローチャートに基づいて算出された破線で示す指示圧Pinに対する実線で示すモデル内圧Pmdlの算出結果一例を示している。また、図12は、前述した流量等の方程式を解くことによって精緻に算出されたモデル内圧Pmdlの算出結果を示している。なお、図11および図12共に、同一の構成から成るクラッチにおいて、同じ指示圧Pinが出力された結果を示している。図11に示すように、図12に示す精緻に算出された算出結果と略等しい結果が得られている。したがって、本実施例による算出方法によって、精緻に算出された算出結果と略等しい算出結果を得ることができることがわかる。
上述のように、本実施例によれば、モデル油圧算出手段162は、指示圧Pinと内圧Pcとの差分ΔPおよび油圧のガード変化量ΔPcから構成される予め求められた関係マップに基づいて油圧のガード変化量ΔPcを決定し、前回算出されたモデル内圧Pmdli-1を、決定された油圧のガード変化量ΔPc分だけ変化させることで、今回のモデル内圧Pmdliを決定するものである。このようにすれば、クラッチCを構成する油圧アクチュエータACTやアキュムレータACM等の各種諸元に基づいて構成される流量等の方程式を解いて、精緻にモデル内圧Pmdlを算出する場合と略変わらない算出結果を得ることができる。すなわち、モデル内圧算出時の演算負荷を低減しつつ、上記流量等の方程式に基づいて精緻に算出されるモデル内圧Pmdlと変わらない精度を有する算出結果を得ることができる。これより、実際の車両においても適宜モデル内圧を算出することができるため、実装が可能となる。
また、本実施例によれば、指示圧Pinが前回のモデル内圧Pmdli-1より高い場合には、前回算出されたモデル内圧Pmdli-1に変化量ΔPcを加算することで、今回のモデル内圧Pmdliが算出されるので、モデル内圧Pmdliが指示圧Pinに応じて好適に決定される。また、指示圧Pinが前回のモデル内圧Pmdli-1より低い場合には、前回算出されたモデル内圧Pmdli-1から変化量ΔPcを減算することで、今回のモデル内圧Pmdliが算出されるので、モデル内圧Pmdliが指示圧Pinに応じて好適に決定される。
また、本実施例によれば、関係マップは、クラッチCの油圧の特性が変化する油圧の特異点(Pa,Pb)間毎に設定され、モデル油圧算出手段162は、前回算出されたモデル内圧Pmdli-1の値に対応する関係マップに基づいて今回のモデル内圧Pmdliを決定するため、油圧の特異点間の特性に対応した関係マップに基づいてモデル内圧Pmdliが算出され、流量等の方程式に基づいて精緻に算出されるモデル内圧Pmdlと変わらない精度を有する算出結果を得ることができる。
また、本実施例によれば、モデル油圧算出手段162は、算出されたモデル内圧Pmdliαが予め設定されている特異点(Pa,Pb)を跨いで変化する場合、その特異点を越える領域において予め設定されている関係マップに基づくモデル内圧Pmdliβをさらに算出し、そのモデル内圧Pmdliαとモデル内圧Pmdliβのうち、指示圧Pinとの差分が大きい側の油圧を今回のモデル内圧Pmdliに設定するものである。例えば特異点を跨いだ際に油圧の特性が大きく変化する場合、特異点の油圧を跨ぐ前に使用される関係マップでは、その特性の変化が考慮されず、モデル内圧Pmdliの精度が悪化する。これに対して、さらに特異点の油圧を跨いだ領域での関係マップに基づいてモデル内圧Pmdliβを算出し、モデル内圧Pmdliαとモデル内圧Pmdliβを比較し、指示圧Pinとの差分が大きい側の油圧が今回のモデル内圧Pmdliに設定することで、特異点の油圧を跨いだ際の油圧の特性を反映したモデル内圧Pmdliとなり、モデル内圧Pmdlの精度の悪化が防止される。
また、本実施例によれば、モデル内圧Pmdliβを算出する場合、モデル油圧算出手段162は、指示圧Pinとその特異点の油圧(Pa,Pb)との差分(=|Pin−Pa,Pb|)および前記関係マップに基づいてガード変化量ΔPcを決定し、特異点の油圧(Pa,Pb)を、決定されたガード変化量ΔPc分だけ変化させた油圧を今回のモデル内圧Pmdlに設定するものである。このようにすれば、算出の基準点が特異点の油圧(Pa,Pb)に設定されるため、特異点の油圧を跨いだ後の領域での油圧の特性が、特異点の油圧を跨ぐ前の特性に影響を及ぼすことが防止され、モデル内圧Pmdlの精度の悪化が防止される。
また、本実施例によれば、指示圧Pinが前回算出されたモデル内圧Pmdli-1よりも高い場合において、モデル油圧算出手段によ162って算出されたモデル内圧Pmdliが、その指示圧Pinよりも高くなる場合、モデル油圧算出手段162は、今回のモデル内圧Pmdliをその指示圧Pinに設定するため、モデル内圧Pmdlが指示圧Pinを越えて高くなることが防止される。
また、本実施例によれば、指示圧Pinが前回算出されたモデル内圧Pmdli-1よりも低い場合において、モデル油圧算出手段162によって算出されたモデル内圧Pmdlが、その指示圧Pinよりも低くなる場合、モデル油圧算出手段162は、今回のモデル内圧Pmdliをその指示圧Pinに設定するため、モデル内圧Pmdlが指示圧Pinを越えて低くなることが防止される。
また、本実施例によれば、油圧のガード変化量ΔPcは、油温Toilに応じて変更されるため、油温Toilに応じた最適なガード変化量ΔPcによってモデル内圧Pmdlが算出されるに従い、モデル内圧Pmdlの精度が向上する。
また、本実施例によれば、関係マップは、クラッチCの係合時と解放時とで別個に設定されているため、クラッチCの係合時と解放時とで、油圧の過渡特性が異なることを考慮した関係マップに基づいてモデル内圧Pmdlが算出され、モデル内圧の精度が向上する。
また、本実施例によれば、応答遅れ補正手段172によって、算出されたモデル内圧Pmdlが、例えばクラッチCの摺動抵抗等による応答遅れを考慮したモデル内圧Pmdlに変更されるので、モデル内圧Pmdlの精度が向上する。
また、本実施例によれば、指示圧遅れ補正手段174は、算出されたモデル内圧Pmdlを、指示圧Pinを出力するリニアソレノイドバルブSLA (SL1〜SL5)の応答遅れを考慮したモデル内圧Pmdlに変更するので、指示圧Pinに対するモデル内圧Pmdlの精度が向上する。
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。