JP4728525B2 - 車両用自動変速機の制御装置の開発支援装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は車両用自動変速機の制御装置の開発支援装置に関し、具体的には変速制御アルゴリズムをシミュレートして検証・評価する開発支援装置(シミュレータ)に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用自動変速機の制御装置の開発支援装置、より具体的にはシミュレータとして、5速プラネタリ式自動変速機を対象にその油圧挙動を解析する手法が知られている(AVEC’94。1994年10月)。また、実車に搭載されたECU(電子制御ユニット)を組み込んだハードウァア・イン・ザ・ループ(HILS)と呼ばれるシミュレータを用いて行う手法も、知られている(社団法人自動車技術会 学術公演会前刷集983、1998年5月)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、変速制御アルゴリズムを検証するシミュレータは種々提案されている。しかしながら、自動変速機のクラッチ(摩擦係合要素)のクリアランスには作動油と空気が混在してデッドボリュームになっていることから、そのクラッチの無効ストローク詰めを含む挙動を精度良く解析するために約1μsec程度の刻み時間が必要となり、計算頻度が極めて頻繁となって1 回の変速をシミュレートするだけでも多大な時間を要する。
【0004】
また、あるクラッチの無効ストローク詰めを含む挙動をたとえ理想的にモデル化できたとしても、クラッチ(搭載車種)が異なると、その挙動は相違する。
【0005】
かかる理由から、クラッチなどの摩擦係合要素を有する自動変速機の制御装置の変速制御アルゴリズムを変速過渡時を含めて実際の変速と同一の時間(リアルタイム)でシミュレートする開発支援装置は従来提案されていなかったのみならず、実際の変速に近い時間ででもシミュレートする開発支援装置も従来提案されていなかった。
【0006】
さらには、摩擦係合要素が異なるときも同様の時間でシミュレート可能な、汎用性に優れた車両用自動変速機の制御装置の開発支援装置も、従来提案されていなかった。
【0007】
従って、この発明の目的は上記した課題を解決し、摩擦係合要素を有する自動変速機の制御装置の変速制御アルゴリズムを変速過渡時を含めて実際の変速にほぼ近い時間でシミュレートすると共に、摩擦係合要素が異なるときも同様の時間でシミュレート可能な、汎用性に優れた車両用自動変速機の制御装置の開発支援装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を解決するために、この発明は請求項1項にあっては、内燃機関に接続され、格納された変速制御アルゴリズムに従って少なくともスロットル開度および車速に基づいて油圧アクチュエータを介して前記内燃機関の出力を変速して駆動輪に伝達する車両用自動変速機の制御装置の開発支援装置において、前記自動変速機の制御装置に接続されて前記変速制御アルゴリズムを入力し、入力した変速制御アルゴリズムに基づいて供給油圧指令値を出力する供給油圧指令値出力手段、前記供給油圧指令値を入力し、前記自動変速機を含む系全体の動作を記述する第1のモデルに基づき、前記供給油圧指令値に応じて前記自動変速機の摩擦係合要素に生じるであろう推定実効圧力を算出する推定実効圧力算出手段、前記摩擦係合要素の動作を記述する第2のモデルに基づき、前記供給油圧指令値に応じて算出される前記第2のモデルの出力が、前記推定実効圧力に一致するように前記第2のモデルの伝達関数を設定すると共に、前記伝達関数を所定のパラメータから検索自在に記憶する油圧伝達関数モデリング手段、および前記第1のモデルに前記第2のモデルを組み込んでなる第3のモデルに基づき、前記格納された変速制御アルゴリズムをシミュレートして検証・評価するシミュレーション手段を備える如く構成した。
【0009】
このように、自動変速機を含む系全体の動作を記述する第1のモデルに基づき、供給油圧指令値に応じて前記自動変速機の摩擦係合要素に生じるであろう推定実効圧力を算出し、前記摩擦係合要素の動作を記述する第2のモデルに基づき、前記供給油圧指令値に応じて算出される第2のモデル出力が、前記推定実効圧力に一致するように前記第2のモデルの伝達関数を設定し、前記第1のモデルに前記第2のモデルを組み込んでなる第3のモデルに基づき、前記格納された変速制御アルゴリズムをシミュレートして検証・評価する如く構成した、換言すれば、非線形な挙動を示す摩擦係合要素の動作を既述する第2のモデルを、その伝達関数が第1のモデルに基づいて得た推定実効圧力に一致するように作成すれば足るように構成したので、第2のモデルは簡易な構成で足りることから、シミュレーション時間を短縮することができ、実際の変速状態にほぼ近い時間で実行することができる。
【0010】
さらに、前記伝達関数を所定のパラメータから検索自在に記憶するように構成したので、搭載車種が相違して摩擦係合要素が異なるときも、その摩擦係合要素の特性を測定して前記所定のパラメータの特性を設定し直すことで、同様の時間でシミュレートすることができて汎用性を向上させることができる。
【0011】
請求項2項にあっては、前記第2のモデルの伝達関数は、前記第2のモデルの出力が増加を開始する所定時間を含むことを特徴とする請求項1項記載の車両用自動変速機の制御装置の開発支援装置。
【0012】
より具体的には、前記第2のモデルの伝達関数が、前記摩擦係合要素の挙動を測定して得た、前記供給指令値に応じて算出されるモデル出力が増加を開始する所定時間を含む如く構成したので、その時間はシミュレーション手段の出力の算出を不要とすることが可能となってシミュレーション手段の負荷を低減することができ、よってシミュレーション時間を効果的に短縮することができ、実際の変速状態にほぼ近い時間で実行することができる。
【0013】
請求項3項にあっては、前記第2のモデルは、前記供給油圧指令値が所定値を超えてからの経過時間が前記所定時間を超えたとき、前記出力を生じる関数を備える如く構成した。
【0014】
前記第2のモデルは、前記供給油圧指令値が所定値を超えてからの経過時間が前記所定時間を超えたとき、モデル出力を生じる関数を備える如く構成したので、所定時間を容易に設定することができ、よってシミュレーション時間を効果的に短縮することができ、実際の変速状態にほぼ近い時間で実行することができる。
【0015】
請求項4項にあっては、前記所定のパラメータが、前記自動変速機の作動油温、前記摩擦係合要素の回転数、前記供給油圧指令値(あるいは通電指令値)および変速インターバルの少なくともいずれかである如く構成した。
【0016】
前記所定のパラメータが、前記自動変速機の作動油温、前記摩擦係合要素の回転数、前記供給油圧指令値値および変速インターバルの少なくともいずれかである如く構成したので、パラメータの特性の設定あるいは設定し直しが容易となって、汎用性を一層向上させることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に即してこの発明の一つの実施の形態に係る車両用自動変速機の制御装置の開発支援装置、より具体的にはシミュレータを説明する。
【0018】
図1はその装置を全体的に示す概略図である。
【0019】
開発支援装置10は、車両12に搭載される内燃機関(エンジン)Eに接続され、変速制御アルゴリズム(量産車用制御アルゴリズム)に従って少なくともスロットル開度THHFおよび車速Vに基づいてクラッチ(摩擦係合要素。後述)などの油圧アクチュエータ(図1で図示省略。後述)を介して前記エンジンEの出力を変速して駆動輪14に伝達する自動変速機(トランスミッション)Tの制御装置の開発支援装置、より具体的にはシミュレータである。トランスミッションTは、平行軸式の前進5速後進1段の構造を備える。
【0020】
図2は、そのトランスミッションTを簡略化して前進2速について示すスケルトン図である。平行軸式にあっては、平行に配置されたメインシャフトMSとカウンタシャフトCSに、常時噛み合い型の複数個のギヤ16と、そのそれぞれに油圧式のクラッチ(摩擦係合要素。前記した油圧アクチュエータ)20が配置される構造となる。
【0021】
クランクシャフトから取り出されたエンジントルクは、トルクコンバータ24を介してメインシャフトMSに伝達され、対応する速度段(変速段)のギヤとクラッチを介してカウンタシャフトCSと最終減速ギヤ26を経てドライブシャフト30に伝達され、さらに図1に示す駆動輪14に伝達される。
【0022】
各要素の運動方程式を同図の下部に示す。トランスミッションTでの変速は、前段クラッチを解放すると共に、次段クラッチを係合してギヤを切り換えることで行われる。その変速状態(変速過渡状態)における相ごとのメインシャフトMSとカウンタシャフトCS上での釣合い式を同図の末尾に示す。変速過渡状態は、式4と5によって表現され、ローギヤ駆動、トルク相、イナーシャ相、ハイギヤ駆動の順で進行する。
【0023】
図1の説明に戻ると、開発支援装置10はマイクロコンピュータ34を備え、マイクロコンピュータ34は、トランスミッションTの制御装置(ECU(電子制御ユニット))32に接続されて前記変速制御アルゴリズムを入力し、入力した変速制御アルゴリズムに基づいて供給油圧指令値QATを出力する制御系設計ツール(供給油圧指令値出力手段)34aを格納する。制御系設計ツール34aはコンピュータ・エイデッド・デザイン(CAD)プログラムあるいはパッケージからなり、モデルの作成(モデリング)、作成したモデルのダウンロードおよびモニタなどを行う。
【0024】
ECU32について説明すると、図示は省略するが、エンジンEおよび車両12の適宜位置には以下に記載するセンサ群が設けられ、ECU32は(実車搭載時には)それらの出力を入力するものとする。即ち、エンジン回転数ωEに応じた出力を生じるクランク角センサ、エンジン負荷(吸気管内絶対圧)に応じた出力を生じる絶対圧センサ、スロットル開度THHFに応じた出力を生じるスロットル開度センサ、車速Vに応じた出力を生じる車速センサ、運転者が操作するシフトレバーの位置に応じた出力を生じるシフトレバーポジションセンサなどが設けられる。
【0025】
また、トランスミッションTにおいてメインシャフトMSの付近には回転数センサが設けられ、メインシャフトMSが1回転する度にメインシャフト回転数ωMSを示す信号を出力すると共に、カウンタシャフトCSの付近にも回転数センサが設けられてカウンタシャフトCSが1回転する度にカウンタシャフト回転数ωCSを示す信号を出力する。
【0026】
また、トランスミッションミッションTの適宜位置には温度センサが設けられ、油温(Automatic Transmission Fluid温度。作動油の温度)TATFに比例した信号を出力すると共に、ブレーキペダルにはブレーキスイッチが設けられ、ブレーキ操作が行われると、オン信号を出力する。
【0027】
ECU32は、図示しないCPU,ROM,RAM、入力回路、および出力回路からなるマイクロコンピュータから構成され、ROMに格納された変速制御アルゴリズムに従って検出されたスロットル開度THHFおよび車速Vに基づいてシフト位置(ギヤあるいは速度段あるいは変速段)を決定する。
【0028】
そして、ECU32は、クラッチ20に接続される油圧回路(後述)に配置されたリニアソレノイドおよびシフトソレノイドを励磁/非励磁して決定した変速段(シフト位置)となるように変速を制御する。
【0029】
尚、この発明の特徴はECU32が行う変速制御動作にあるのではなく、ECU32の変速制御動作を検証・評価する開発支援装置10にあるので、ECU32が行う変速制御の説明はこの程度に止める。
【0030】
また、開発支援装置10は第2のマイクロコンピュータ36を備え、マイクロコンピュータ36は、前記供給油圧指令値QATを入力し、変速過渡シミュレーションモデル(第1のモデル)に基づき、前記供給油圧指令値QATに応じてトランスミッションTのクラッチ20に生じるであろう推定クラッチ実効圧(推定実効圧力)を算出する第1のシミュレータ(実効圧力算出手段)36aを格納する。
【0031】
第1のシミュレータ36aもコンピュータ・エイデッド・デザイン(CAD)プログラムあるいはパッケージからなる。尚、第2のマイクロコンピュータ36は、ECU32に比較すると、整数演算で約10倍以上の高速計算処理能力を備える。
【0032】
図示の構成において、制御系設計ツール34aは、第1のシミュレータ36aを格納する第2のマイクロコンピュータ36を介してECU32に接続される。具体的には、ECU32と第1のシミュレータ36aを格納する第2のマイクロコンピュータ36の間にはデュアルポートラム38が配置され、ECU32と第1のシミュレータ36aの間の通信(割り込み)を実行する。第1のシミュレータ36aは、制御系設計ツール34aからモデルを入力し、デュアルポートラム38を介してECU32と10msecごとに通信する。
【0033】
より具体的には、10msecごとに、図3に示す如く、制御系設計ツール34aはECU32から変速信号QATNUM(n速へのアップあるいはダウンシフト指令)、スロットル開度THHFおよびエンジン回転数ωEを入力(受信)入力し、それらに基づいて供給油圧指令値QATを算出してECU32に出力(送信)する。
【0034】
ECU32は、入力した供給油圧指令値QATに基づき、前記したクラッチ20を励磁・非励磁して駆動するリニアソレノイド(電磁ソレノイド)への通電指令値を算出する。以下、この通電指令値を「IACT」という。
【0035】
供給油圧指令値QATは、より詳しくはON(係合)側供給油圧指令値QATONおよびOFF(解放)側供給油圧指令値QATOFFからなる。図4にQATONを、図5にQATOFFを示す。かかる供給油圧指令値が時間軸に沿って出力される。
【0036】
図1に示す構成において、第1のシミュレータ36aは、制御系設計ツール34aからECU32を介して間接的に出力される供給油圧指令値QATを入力し、テスト用変速制御アルゴリズムに基づいて計測し、計測が終了した後、オフラインで変速過渡シミュレータモデル(第1のモデル。後述)に基づき、供給油圧指令値QAT(より具体的には通電指令値IACT)に応じてクラッチ20に生じるであろう推定クラッチ実効圧(推定実効圧力)を算出する。
【0037】
さらに、開発支援装置10は、クラッチの動作を記述する第2のモデル(簡易油圧モデル。後述)に基づき、前記供給油圧指令値QAT、より具体的には前記ECU32が出力するリニアソレノイドへの通電指令値IACTを入力し、前記入力値に応じて算出される出力が、クラッチ20の挙動を測定して得た所定時間(伝達関数)α1経過後に増加を開始しつつ前記推定実効圧力(推定クラッチ圧)に一致するように前記第2のモデルのゲイン(伝達関数)α2を設定すると共に、前記測定して得た所定時間α1およびゲインα2を所定のパラメータから検索自在に記憶する油圧伝達関数モデリング手段としても機能する。
【0038】
さらに、開発支援装置10は第3のマイクロコンピュータ40を備え、第3のマイクロコンピュータ40は、前記第1のモデルに前記第2のモデルを組み込んでなる第3のモデル(後述)に基づき、前記格納された変速制御アルゴリズムを実時間でシミュレートして検証・評価する第2のシミュレータ40aを格納する。
【0039】
第2のシミュレータ40aもコンピュータ・エイデッド・デザイン(CAD)プログラムあるいはパッケージからなると共に、前記したHILSとして構成される。第2のシミュレータ40aを格納する第3のマイクロコンピュータ40は、ECU32と比較すると、整数演算で約100倍以上の高速計算処理能力を有する。
【0040】
第2のシミュレータ40aを格納する第3のマイクロコンピュータ40は、入出力インターフェース42を介してECU32に接続される。ECU32に格納された変速制御アルゴリズムは、入出力インターフェース42を介して第2のシミュレータ40aを格納する第3のマイクロコンピュータ40に入力され、そのメモリ(図示せず)に格納される。
【0041】
入出力インターフェース42はリニアソレノイド疑似信号およびシフトソレノイド疑似信号を生成し、第2のシミュレータ40aに出力する。これらの疑似信号は、後述するシミュレーションにおいてクラッチ20などの油圧アクチュエータを動作させるための信号である。
【0042】
第2のシミュレータ40aはこれらの疑似信号(およびスロットル開度THHFおよび車速Vなどの疑似信号)に基づき、格納された変速制御アルゴリズムに従って第3のモデルを用いて所定の計算処理周期ごとにそれらモデルの出力(例えばドライブシャフトトルクTDS、エンジン回転数ωE、クラッチ油圧PCLなど)を計算し、格納された変速制御アルゴリズムを検証あるいは評価すると共に、その出力(および検証あるいは評価の結果)を第3のマイクロコンピュータ40のディスプレイ(図示せず)を通じて表示する。
【0043】
尚、図1で、符合44は、上記したモデルの作成、第2のシミュレータ40aへのダウンロードおよびシミュレーション情報などの設定などを行うホストコンピュータを示す。
【0044】
以下、図6フロー・チャートを参照して上記した構成および動作をさらに説明する。
【0045】
先ず、S10において実機テスト準備を行う。これは具体的には、ホストコンピュータ44を用いてテスト用制御モデル、より具体的にはトランスミッションTの前記したクラッチ20などの油圧アクチュエータの油圧回路の挙動を示す油圧回路設計モデルを作成することで行う。
【0046】
図7は、その油圧回路設計モデルの構成を部分的に示すブロック図である。トランスミッションTは前記したように平行軸方式の前進5速後進1段の構造を備え、従って速度段ごとにクラッチを備えるが、同図は、そのうちの1個のクラッチ(例えば3速用クラッチ)20についてのモデルである。
【0047】
概説すると、オイルポンプ46でリザーバ(図示せず)から汲み上げられた作動油(オイル。ATF)は、レギュレータバルブ50で所定の高圧に調圧され、アキュムレータ52およびオリフィス54を介して前記したクラッチ20に供給される。レギュレータバルブ50とクラッチ20を接続する油路56にはシフトバルブ60と、前記したリニアソレノイド(符合62で示す)が介挿され、クラッチ20への供給油圧を調整する。
【0048】
図6の説明に戻ると、次いでS12に進み、実機テストを行う。これは具体的には、図4および図5を参照しつつ説明した制御仕様を用い、図1に関して既述したECU32、制御系設計ツール34aおよび第1のシミュレータ36aからなるシステムにおいて、ECU32が入力した供給油圧指令値QAT(より具体的にはQATONおよびQATOFF)に基づいて出力した、クラッチ20を駆動するリニアソレノイド62への通電指令値IACTに基づいて変速時の油圧波形を実機テスト結果として得ることを意味する。即ち、車両12の事象を把握する。図8にその実機テスト結果を示す。
【0049】
図6フロー・チャートにおいては次いでS14に進み、その実機テスト結果を解析する。これは具体的には、第1のシミュレータ36aにおいて、変速過渡シミュレーションモデル(第1のモデル)を用い、供給油圧指令値QAT(あるいはIACT)に応じてトランスミッションTのクラッチ20に生じるであろう前記した推定クラッチ実効圧を算出する作業を意味する。
【0050】
図9は、その変速過渡シミュレーションモデルの詳細を示すブロック図である。
【0051】
図2に示した平行軸式のトランスミッションTの運動方程式を前提とし、エンジンEから車両(車体系)12までの系全体をモデル化すると、図9に示すようになる。図9において、「Engine」はエンジンEの挙動を記述するモデル、「Torque converter」はトルクコンバータ24の挙動を記述するモデル、「Transmission」はトランスミッションTの挙動を記述するモデル、「Vehicle」は車両12の挙動を記述する車体系モデル、および「Hydraulic circuit」は図7に部分的に示した油圧回路設計モデルである。
【0052】
図9においてエンジンモデルの出力トルクTEは、トルクコンバータモデルで変換されてトランスミッションモデルに入力される。トランスミッションモデルの出力ドライブシャフトトルクTDSは、車体系モデルに入力される。車体系モデルは、ドライブシャフト回転数ωV(車速V相当値)を出力する。
【0053】
トランスミッションモデルは、ドライブシャフト回転数ωVを入力してメインシャフト回転数ωMSを出力する。出力値はトルクコンバータモデルで変換され、エンジン回転数ωE(NE相当値)をエンジンモデルに出力する。また、エンジントルクTEは、トルクコンバータモデルを介してメインシャフトトルクTMSに変換される。
【0054】
先に述べたように、変速過渡状態は式4と5によって表現されるが、その変速過渡状態において運転者が感じる変速ショックとは、図2末尾の式7に示される車両前後方向加速度の変化である。変速過渡状態では車速変化が小さいため、走行抵抗は一定とみなせることから、変速ショックはドライブシャフトトルクTDSに比例する
【0055】
尚、かかる変速過渡シミュレーションモデルの詳細およびそれを用いたシミュレーションについては、本出願人が先に提案した出願(特願2000−070580号)に詳細に記載されているので、説明はこの程度に止める。
【0056】
図6フロー・チャートのS14においては、図2に示す式8から15に基づき、車両12のドライブシャフトトルクTDS、油圧および回転数からクラッチ実効圧PCLを逆算して推定する。
【0057】
具体的には、図10(図4の一部に相当)に示すように、供給油圧指令値QATを入力し、式8などに基づき、図11に示す如く、それによってクラッチ20(例えば3速用)に生じるであろうと推定される推定クラッチ実効圧(図11。推定実効圧力。推定値も含めて以下「PCL」、より具体的には例えば3速用であれば「PCL3」という)と推定ドライブシャフトトルクTDS(図11)のテスト結果を得る。
【0058】
より具体的には、図10に示すように、棚圧指令値長さConstを固定しつつ棚圧指令値を変えた供給油圧指令値QATを複数個入力し、それによって、図11に示すような実車運転中に得られるであろう推定クラッチ実効圧とドライブシャフトトルクTDSを得る。
【0059】
図6フロー・チャートの説明に戻ると、次いでS16に進み、油圧伝達関数モデリングを行う。具体的には、簡易油圧モデルを作成すると共に、モデル入力値(供給油圧指令値QATに対応する通電指令値IACT)が、モデル出力値(推定クラッチ実効圧)PCLに一致するように、その簡易油圧モデルの伝達関数(所定時間(無効ストローク詰め作業に相当する準備時間)α1およびゲイン(油圧応答性ゲイン)α2)を決定する。
【0060】
より具体的には、入力値に応じて算出される出力が、クラッチ20の挙動を測定して得た所定時間α1経過後に増加を開始しつつ、推定クラッチ実効圧PCLに一致するように簡易油圧モデルのゲインα2を設定すると共に、測定して得た所定時間α1およびゲインα2を所定のパラメータから検索自在に記憶する。
【0061】
それについて説明すると、先にも述べたように、クラッチ20のクリアランスには作動油と空気が混在してデッドボリュームになっていることから、変速開始直後の無効ストローク詰めにおける供給油圧指令値に対する油圧応答性が悪く、油圧応答特性のデータ設定に多大な時間を要すると共に、シミュレーション時間の短縮化の障害となっていた。即ち、精度良くシミュレーションを行うには高精度モデルを用いて第2のシミュレータ40aで演算する必要があるが、第2のシミュレータ40aの演算能力には限界がある。
【0062】
そこで、この実施の形態においては、クラッチ20のデッドボリューム内の作動油量を実際に測定するようにした。図12に測定結果を示す。同図はクラッチ回転数NCLが2000rpmのときの測定結果である。さらに、その測定結果に基づき、図13に示すような、クラッチの挙動を記述する簡易油圧モデルを作成して用いるようにした。
【0063】
即ち、簡易油圧モデルのバックアップデータとして図12の結果を利用した。図12において、オイル(作動油)充填半径32.5mm付近(ON(オン。係合)側の油圧0.13Mpa付近)が、オイルが満たされる状態を示す。この油圧がON(立ち上がり)を開始してから満たされるまでの時間t1に基づいて伝達関数を決定するようにした。尚、OFF(オフ)側では、t2が油圧が立ち下がり始めてから空になるまでの時間を示す。
【0064】
図14は、簡易油圧モデルの伝達関数決定処理を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【0065】
以下説明すると、S100において検出されたスロットル開度THHF、変速段(ギヤ)、油温TATF(あるいは変速インターバル)、供給油圧指令値QAT、およびクラッチ回転数NCLを読み込む。変速インターバルは、前回と今回の変速信号の時間間隔から算出される。尚、供給油圧指令値QATに代え、通電指令値IACTを用いても良い。
【0066】
次いでS102に進み、これらのパラメータからMAP(マップ)を検索して所定時間α1を算出する。
【0067】
図15(a)はそのマップの特性を示す説明図であり、図示の如く、所定時間α1は、クラッチ回転数NCL(1000rpmごと)に応じて油温TATFと供給油圧指令値QATに対して設定される。
【0068】
尚、同図(b)に示す如く、所定時間α1は、油温TATFに代えて変速インターバルなどに対して設定しても良い。尚、所定時間α1は前記したように、無効ストローク詰め相当時間であり、クラッチ20のデッドボリューム内の作動油量を計測して得られた時間である。
【0069】
次いでS104に進み、通電指令値IACTが所定値IREFを超えるか否か判断する。所定値IREFは、クラッチ20のリターンスプリングのセット荷重相当値(1kgf/cm2 )に設定される。
【0070】
次いでS106に進み、TIMER(タイマ。アップカウンタ)をスタートさせて時間計測を開始し、S108に進み、TIMERの値が所定時間α1を超えたか否か判断し、肯定されるまで待機すると共に、肯定されるときはS110に進み、通電指令値IACTの入力を開始する。
【0071】
次いで、S112に進み、前記したパラメータからMAP(マップ)を検索しゲインα2を算出する。図16(a)はそのマップの特性を示す説明図であり、図示の如く、ゲインα2も、クラッチ回転数NCL(1000rpmごと)に応じて油温TATFと推定クラッチ圧PCLに対して設定される。尚、同図(b)に示す如く、ゲインα2も、油温TATFに代えて変速インターバルなどに対して設定しても良い。
【0072】
次いでS114に進み、図示の式から(油圧応答性)ゲインα2を用いて出力yを算出する。
【0073】
図13を参照して図14の処理を説明する。
【0074】
入力値x(通電指令値IACT)はブロックZ1に送られ、そこで所定値IREFと比較される。図17はブロックZ1の構成を示す説明図であり、入力値xが所定値を超えると、1を出力する。出力はブロックZ2に送られて積分される。ブロックZ2は1secで1を出力する時間積分器(前記したタイマTIMER)である。
【0075】
ブロックZ2の出力はブロックZ3に送られ、所定時間α1と比較される。図18はブロックZ3の構成を示す説明図であり、Z2(タイマ値)がα1を超えるまでは0を出力すると共に、α1を超えると、1を出力する。Z3の出力は乗算段Z4に送られ、入力値xに乗算される。
【0076】
これにより、図19に示す如く、所定時間α1が経過するまでは乗算段Z4の出力は零であると共に、所定時間α1が経過すると、乗算段Z4は入力値xをそのまま出力する。
【0077】
乗算段Z4の出力は、ゲイン調整部Z5に送られ、図示の式(S114に示す式)に基づき、ゲインα2を用いて出力(油圧出力値)yが決定される。図示の式から明らかな如く、出力yは、入力xとの偏差が減少するように決定される。換言すれば、出力yが推定クラッチ実効圧PCLに一致するように、簡易油圧モデルのゲインα2が決定される。
【0078】
図20にその出力結果を示す。図示の例は、1速から2速へのアップシフトで、スロットル開度THHFが2/8開度の場合の例である。図で「簡易油圧モデル計算結果」と示すのは、簡易モデルを用いて得た出力yである。また、「推定クラッチ実効圧」と示すのは、同じ入力値IACTを用いて実機計測した油圧やドライブシャフトトルクTDSから推定計算したクラッチ圧である。同図から、出力(油圧出力値)yが推定クラッチ実効圧PCLにほぼ一致しているのが見てとれよう。
【0079】
図6フロー・チャートの説明に戻ると、次いでS18に進み、簡易油圧モデルを組み込んだリアルタイム変速過渡シミュレーションモデルを作成する。即ち、図9に示した変速過渡シミュレーションモデルに簡易油圧モデル(図13)を組み込んで作成する。
【0080】
図21は、そのリアルタイム変速過渡シミュレーションモデルの構成を示すブロック図である。同図で(Simple Hydraulic model)と示すのが、簡易油圧モデルである。尚、残余の構成は、図9に示すものと異ならない。
【0081】
次いでS20に進み、図1に示す第2のシミュレータ40aおよび入出力インターフェース42からなる構成(HILS)を用い、作成したリアルタイム変速過渡シミュレーションモデルに従ってリアルタイムシミュレーションを実行し、ECU32に格納された変速制御アルゴリズムに基づいて実機(車両12)を変速制御するとき、変速ショックが生じる否か検証・評価する。
【0082】
尚、そのリアルタイムシミュレーションの詳細は、前記したように、本出願人が先に提案した出願に記載されているため、説明を省略する。その先に提案した出願では、トランスミッションモデルをクラッチ部と残余の部分に分けると共に、クラッチ部の計算周期(刻み時間)を、20μsecごとに疑似的に実行するユーザーコードブロックとし、トランスミッションモデルの残余の部分を含む、エンジンモデルなどのそれを200μsecとすることで、結果として刻み時間20μsecによるリアルタイムシミュレーションを可能とした。
【0083】
具体的には、簡易油圧モデルを用いたことから、S20に示すシミュレーションにおいて、1回の変速(約1.5sec)をシミュレートするのに、4sec程度しか要しなかった。同一性能のCPUを用いて従来技術で提案されるモデルに従ってシミュレートすると、120sec程度かかっていたが、それに比較すると、1/30であり、格段にシミュレーション時間を短縮することが可能となった。
【0084】
即ち、実際の変速状態(変速過渡状態。1.5sec)にほぼ近い時間でシミュレーションを実行することが可能となった。その意味で、S18およびS20では「リアルタイム」なる表現を用いた。
【0085】
図22は、そのリアルタイム変速過渡シミュレーションで得た結果を示すデータ図である。
【0086】
同図で「SIM」はシミュレーション結果を、「実測値」はリアルタイムシミュレーションモデルで用いたのと同じECU32を実車で使用して観測した結果を示す。両者の対比から明らかな如く、実施の形態に係るリアルタイムシミュレーションは、ホストコンピュータ44を用いた場合とほぼ同様の結果を得ることができた。
【0087】
上記した如く、この実施の形態にあっては、非線形な挙動を示すクラッチの動作を既述する簡易油圧モデル(第2のモデル)を作成すると共に、そのモデルにおいて入力(通電指令値IACT(供給油圧指令値QAT相当値))が所定値IREFを超えてからの経過時間TIMERが所定時間(伝達関数)α1を超えたとき、入力を出力する(換言すればモデル出力となる値を生じる)と共に、ゲイン(伝達関数)α2は、出力が変速過渡シミュレーションモデル(第1のモデル)に基づいて得た入力(推定クラッチ圧)に一致するように決定すれば足るようにしたので、第2のモデルは簡易な構成で足り、よってシミュレーション時間を4sec程度に短縮することができ、1.5sec程度で終了する実際の変速状態にほぼ近い時間で実行することができる。
【0088】
さらに、前記伝達関数、即ち、所定時間α1およびゲインα2を油温TATFなどの所定のパラメータから検索自在に記憶するように構成したので、搭載車種が相違してクラッチが異なるときも、そのクラッチのデッドボリュームの作動油量などを測定して前記所定時間α1およびゲインα2の検索に使用するパラメータの特性を設定し直すことで、同様の時間でシミュレートすることができ、よって開発支援装置としての汎用性を向上させることができる。
【0089】
さらに、所定時間α1の間は第2のシミュレータ40aの出力の算出を不要とすることが可能となって第2のシミュレータ40aの負荷を低減することができ、よってシミュレーション時間を効果的に4secまで短縮することができ、実際の変速状態にほぼ近い時間で実行することができる。
【0090】
以上述べたように、この実施の形態においては、内燃機関(エンジンE)に接続され、変速制御アルゴリズムに従って少なくともスロットル開度THHFおよび車速Vに基づいて油圧アクチュエータ(クラッチ20)を介して前記内燃機関の出力を変速して駆動輪14に伝達する車両用自動変速機(トランスミッションT)の制御装置(ECU32)の開発支援装置10において、前記自動変速機(トランスミッションT)の制御装置(ECU32)に接続されて前記変速制御アルゴリズムを入力し、入力した変速制御アルゴリズム、より具体的にはその中の値QATNUMなどに基づいて供給油圧指令値QAT(QATONあるいはQATOFF、あるいはそれに相当するリニアソレノイド62への通電指令値IACT)を出力する供給油圧指令値出力手段(制御系設計ツール34a,S10からS12)、前記供給油圧指令値QAT(より具体的にはそれに相当するリニアソレノイド62への通電指令値IACT)を入力し、前記自動変速機を含む系全体の動作を記述する第1のモデル(変速過渡シミュレーションモデル)に基づき、前記供給油圧指令値に応じて前記自動変速機の摩擦係合要素(クラッチ20)に生じるであろう推定実効圧力(推定クラッチ圧PCL)を算出する推定実効圧力算出手段(第1のシミュレータ36a,S14)、前記摩擦係合要素(クラッチ)の動作を記述する第2のモデル(簡易油圧モデル)に基づき、前記供給油圧指令値(入力x、即ち、通電指令値IACT)に応じて算出される前記第2のモデルの出力y(油圧出力値)が、前記推定実効圧力に一致するように前記第2のモデルの伝達関数(所定時間α1およびゲインα2)を設定すると共に、前記伝達関数を所定のパラメータ(油温TATFなど)から検索自在に記憶する油圧伝達関数モデリング手段(ホストコンピュータ44,第2のシミュレータ40a,S16)、および前記第1のモデルに前記第2のモデルを組み込んでなる第3のモデル(リアルタイム変速過渡シミュレーションモデル)に基づき、前記格納された変速制御アルゴリズムをシミュレートして検証・評価するシミュレーション手段(第2のシミュレータ40a,S18からS20)を備える如く構成した。
【0091】
また、前記第2のモデルの伝達関数は、前記第2のモデルの出力が増加を開始する所定時間α1を含む如く構成した。
【0092】
また、前記第2のモデルは、前記入力値xが所定値IREFを超えてからの経過時間TIMERが前記所定時間α1を超えたとき、前記出力(換言すればモデル入力)を生じる関数(ブロックZ1からZ3)を備える如く構成した。
【0093】
また、前記所定のパラメータが、前記自動変速機の作動油温(油温TATF)、前記摩擦係合要素の回転数(クラッチ回転数NCL)、前記供給油圧指令値QAT(あるいはIACT)および変速インターバルの少なくともいずれかである如く構成した。
【0094】
【発明の効果】
請求項1項にあっては、自動変速機を含む系全体の動作を記述する第1のモデルに基づき、供給油圧指令値に応じて前記自動変速機の摩擦係合要素に生じるであろう推定実効圧力を算出し、前記摩擦係合要素の動作を記述する第2のモデルに基づき、前記供給油圧指令値に応じて算出されるモデル出力が、前記推定実効圧力に一致するように前記第2のモデルの伝達関数を設定し、前記第1のモデルに前記第2のモデルを組み込んでなる第3のモデルに基づき、制御装置に格納された変速制御アルゴリズムをシミュレートして検証・評価する如く構成した、換言すれば、非線形な挙動を示す摩擦係合要素の動作を既述する第2のモデルを、その伝達関数が第1のモデルに基づいて得た推定実効圧力に一致するように作成すれば足るように構成したので、第2のモデルは簡易な構成で足りることから、シミュレーション時間を短縮することができ、実際の変速状態にほぼ近い時間で実行することができる。
【0095】
さらに、前記伝達関数を所定のパラメータから検索自在に記憶するように構成したので、搭載車種が相違して摩擦係合要素が異なるときも、その摩擦係合要素の特性を測定して前記所定のパラメータの特性を設定し直すことで、同様の時間でシミュレートすることができて汎用性を向上させることができる。
【0096】
請求項2項にあっては、前記第2のモデルの伝達関数は、前記第2のモデルの出力が増加を開始する所定時間を含む如く構成したので、その時間はシミュレーション手段の出力の算出を不要とすることが可能となってシミュレーション手段の負荷を低減することができ、よってシミュレーション時間を効果的に短縮することができ、実際の変速状態にほぼ近い時間で実行することができる。
【0097】
請求項3項にあっては、前記第2のモデルは、前記供給油圧指令値が所定値を超えてからの経過時間が前記所定時間を超えたとき、前記出力を生じる関数を備える如く構成したので、所定時間を容易に設定することができ、よってシミュレーション時間を効果的に短縮することができ、実際の変速状態にほぼ近い時間で実行することができる。
【0098】
請求項4項にあっては、前記所定のパラメータが、前記自動変速機の作動油温、前記摩擦係合要素の回転数、前記供給油圧指令値および変速インターバルの少なくともいずれかである如く構成したので、パラメータの特性を設定あるいは設定し直しが容易となって、汎用性を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一つの実施の形態に係る車両用自動変速機の制御装置の開発支援装置を全体的に示す概略図である。
【図2】図1に示す車両用自動変速機のスケルトン図である。
【図3】図1に示す制御系設計ツールとECUとの双方通信を示す説明図である。
【図4】図1に示す制御系設計ツールが算出して出力するON(係合)側の供給油圧指令値を示すタイム・チャートである。
【図5】図1に示す制御系設計ツールが算出して出力するOFF(解放)側の供給油圧指令値を示すタイム・チャートである。
【図6】図1の開発装置の動作を示すフロー・チャートである。
【図7】図6フロー・チャートの処理で作成されるテスト用制御モデル(油圧回路設計モデル)を部分的に示す説明図である。
【図8】図6フロー・チャートの処理で行われる実機テスト結果を示すデータ図である。
【図9】図6フロー・チャートの処理で作成される変速過渡シミュレーションモデル(第1のモデル)を示すブロック図である。
【図10】図6フロー・チャートの処理の中の実機テスト解析処理における供給油圧指令値の入力条件を示すタイム・チャートである。
【図11】図6フロー・チャートの処理の中の実機テスト解析処理における供給油圧指令値の入力に応じたクラッチに生じであろう推定クラッチ実効圧などのテスト結果を示すデータ図である。
【図12】図6フロー・チャートの処理の中の油圧伝達関数モデリングを説明する、クラッチのデッドボリューム内の作動油量の測定結果を示すデータ図である。
【図13】図6フロー・チャートの処理の中の油圧伝達関数モデリングで作成される簡易油圧モデル(第2のモデル)を示すブロック図である。
【図14】図13に示す簡易油圧モデルの伝達関数決定処理を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【図15】図14フロー・チャートで使用する伝達関数(所定時間α1)のマップ特性を示す説明グラフである。
【図16】図14フロー・チャートで使用する伝達関数(ゲインα2)のマップ特性を示す説明グラフである。
【図17】図13ブロック図の中のブロックZ1の構成を示すブロック図である。
【図18】図13ブロック図の中のブロックZ3の構成を示すブロック図である。
【図19】図13ブロック図の中の乗算段Z4の構成を示すブロック図である。
【図20】図13ブロック図の出力結果を示すデータ図である。
【図21】図6フロー・チャートの処理で作成されるリアルタイム変速過渡シミュレーションモデル(第1のモデル)を示す、図9に類似したブロック図である。
【図22】図6フロー・チャートの処理の中のリアルタイムシミュレーションの結果を示すデータ図である。
【符号の説明】
E 内燃機関(エンジン)
T 自動変速機(トランスミッション)
10 車両用自動変速機の制御装置の開発支援装置
12 車両
14 入出力インターフェース
20 クラッチ(摩擦係合要素。油圧アクチュエータ)
32 ECU(電子制御ユニット。制御装置)
34 マイクロコンピュータ
34a 制御系設計ツール
36 第2のマイクロコンピュータ
36a 第1のシミュレータ
40 第3のマイクロコンピュータ
40a 第2のシミュレータ
44 ホストコンピュータ
62 リニアソレノイド
Claims (4)
- 内燃機関に接続され、格納された変速制御アルゴリズムに従って少なくともスロットル開度および車速に基づいて油圧アクチュエータを介して前記内燃機関の出力を変速して駆動輪に伝達する車両用自動変速機の制御装置の開発支援装置において、
a.前記自動変速機の制御装置に接続されて前記変速制御アルゴリズムを入力し、入力した変速制御アルゴリズムに基づいて供給油圧指令値を出力する供給油圧指令値出力手段、
b.前記供給油圧指令値を入力し、前記自動変速機を含む系全体の動作を記述する第1のモデルに基づき、前記供給油圧指令値に応じて前記自動変速機の摩擦係合要素に生じるであろう推定実効圧力を算出する推定実効圧力算出手段、
c.前記摩擦係合要素の動作を記述する第2のモデルに基づき、前記供給油圧指令値に応じて算出される前記第2のモデルの出力が、前記推定実効圧力に一致するように前記第2のモデルの伝達関数を設定すると共に、前記伝達関数を所定のパラメータから検索自在に記憶する油圧伝達関数モデリング手段、
および
d.前記第1のモデルに前記第2のモデルを組み込んでなる第3のモデルに基づき、前記格納された変速制御アルゴリズムをシミュレートして検証・評価するシミュレーション手段、
を備えたことを特徴とする車両用自動変速機の制御装置の開発支援装置。 - 前記第2のモデルの伝達関数は、前記第2のモデルの出力が増加を開始する所定時間を含むことを特徴とする請求項1項記載の車両用自動変速機の制御装置の開発支援装置。
- 前記第2のモデルは、前記供給油圧指令値が所定値を超えてからの経過時間が前記所定時間を超えたとき、前記出力を生じる関数を備えることを特徴とする請求項2項記載の車両用自動変速機の制御装置の開発支援装置。
- 前記所定のパラメータが、前記自動変速機の作動油温、前記摩擦係合要素の回転数、前記供給油圧指令値、および変速インターバルの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1項から3項のいずれかに記載の車両用自動変速機の制御装置の開発支援装置。
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