JP5589154B2 - 非水電解質二次電池負極用炭素質材料及びその製造方法 - Google Patents

非水電解質二次電池負極用炭素質材料及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、非水電解質二次電池負極用炭素質材料及びその製造方法に関する。本発明によれば、植物由来の30μm以下の負極用炭素質材料を、工業的に且つ大量に製造することができる。
近年、環境問題への関心の高まりから、エネルギー密度が高く、出力特性の優れた大型のリチウムイオン二次電池の電気自動車への搭載が検討されている。携帯電話やノートパソコンといった小型携帯機器用途では、体積当たりの容量が重要となるため、密度の大きい黒鉛質材料が主に負極活物質として利用されてきた。しかし、車載用リチウムイオン二次電池においては大型で且つ高価であることから途中での交換が困難である。従って、少なくとも自動車と同じ耐久性が必要であり、10年以上の寿命性能の実現(高耐久性)が求められる。黒鉛質材料又は黒鉛構造の発達した炭素質材料では、リチウムのドープ、脱ドープの繰り返しによる結晶の膨張収縮により破壊が起きやすく、充放電の繰り返し性能が劣るため、高いサイクル耐久性が求められる車載用リチウムイオン二次電池用負極材料としては適していない。これに対し、難黒鉛化性炭素はリチウムのドープ、脱ドープ反応による粒子の膨張収縮が小さく、高いサイクル耐久性を有するという観点からは自動車用途での使用に好適である(特許文献1)。
また、難黒鉛化性炭素は黒鉛質材料と比較すると、充放電曲線がなだらかであり、黒鉛質材料を負極活物質に使用した場合よりも急速な充電を行っても充電規制との電位差が大きいため、急速な充電が可能であるという特徴がある。更に、黒鉛質材料と比べ結晶性が低く充放電に寄与できるサイトが多いために、急速充放電特性も優れているという特徴もある。しかしながら、小型携帯機器で1〜2時間であった充電時間がハイブリッド自動車用電源では、ブレーキ時のエネルギー回生を行うことを考慮すると数十秒であり、放電もアクセルを踏み込む時間を考えれば数十秒と、小型携帯向けのリチウムイオン二次電池と比較し、圧倒的に優れた急速な充放電(入出力)特性が求められている。特許文献1記載の負極材料は、高い耐久性を有するが圧倒的に優れた充放電特性が求められる車載用リチウムイオン二次電池用負極材料としては十分ではなく、更なる性能向上が期待されている。
従来、難黒鉛性炭素の炭素源としては、石油ピッチ又は石炭ピッチなどが用いられていたが、本発明者らは、植物由来のチャー(植物由来の有機物)を炭素源として用いた負極用炭素質材料が、多量の活物質をドープすることが可能であることから、負極材料として有望であることを見出した(特許文献2及び3)。しかしながら、負極用炭素質材料の炭素源として、植物由来のチャー(植物由来の有機物)を用いた場合、有機物原料中に存在するカリウム元素が、負極として使用される炭素質材料のドープ及び脱ドープ特性に好ましくない影響を及ぼしていた。この問題を解決するため、特許文献3においては、植物由来のチャー(植物由来の有機物)を酸洗浄による脱灰処理(以下、液相脱灰と称する)することによって、カリウム元素の含有量を低減させる方法が開示されている(特許文献3)。すなわち、植物由来のチャー(植物由来の有機物)を炭素源として用いる負極用炭素質材料の製造方法においては、脱灰処理が必要である。
特開平8−64207号公報 特開平9−161801号公報 特開平10−21919号公報 特開2000−281325号公報
前記特許文献3には、液相脱灰において、脱灰時の被処理物の粒径が大きいと脱灰率が著しく低下するため、炭素質材料の粒子径が、100μm以下であることが好ましいことが開示されており、特許文献3の実施例では、実際には25μmの炭素質材料前駆体が用いられている。本発明者らは、特許文献3に記載の液相脱灰を用いて、平均粒子径19μmの非水電解質二次電池負極用炭素質材料の調製を行った(比較例5)。液相脱灰においては、灰分が溶出した溶液をろ過により除去する必要がある。しかしながら、平均粒子径が小さくなると、ろ過時に炭素前駆体の充填層内を洗浄水が透過するのに長時間を要するため、短時間で効率よく溶液を除くことが非常に困難であった。そして、たとえ溶液を除去できたとしても、コストが高くなり、工業的には液相脱灰を用いて平均粒子径20μm未満の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造の実用化が困難であった。
従って、本発明の目的は、植物由来のチャーを原料とし、カリウム元素が十分に脱灰された平均粒子径の小さい非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法、及び非水電解質二次電池負極用炭素質材料を提供することである。
本発明者らは、植物由来の負極用炭素質材料の製造方法において、工業的に用いることのできる脱灰方法について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、植物由来のチャーを、ハロゲン化合物を含む不活性ガス雰囲気中で500℃〜1250℃で熱処理(以下、「気相脱灰」と称することがある)することによって、カリウムを除去することが可能であり、この気相脱灰方法を用いることにより、植物由来の負極用炭素質材料を、工業的に且つ大量に製造することができることを見出した。
更に、本発明者らは、液相脱灰及び気相脱灰によって得られた炭素質材料を負極として用いた非水電解質二次電池の性能を検討する段階で、気相脱灰によって得られた炭素質材料を用いた場合に、ドープ特性及び脱ドープ特性が優れる傾向があることを見出した。本発明者らは、液相脱灰及び気相脱灰によって得られた炭素質材料について検討したところ、気相脱灰によって得られた炭素質材料は液相脱灰によって得られた炭素質材料と比較して、鉄元素の除去率が10倍以上優れていることを見出した。鉄元素が酸化鉄として炭素中に存在すると、酸化鉄にリチウムの挿入などの反応が起こり、ドープ特性及び脱ドープ特性に好ましくない影響を与えることが考えられる。更に、酸化鉄が金属鉄まで還元され、その際に不純物が生成する可能性がある。また、炭素中に金属鉄として存在する場合、又は電解液に溶出して金属が再析出した場合は、微小短絡を引き起こし電池の温度が上昇する可能性がある。気相脱灰によって得られた炭素質材料は、鉄元素の除去において優れており、従って液相脱灰により得られた炭素質材料と比較するとドープ特性及び脱ドープ特性に優れ、更に安全性が担保された非水電解質二次電池を作製できるものと考えられる。
更に、本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料を用いた非水電解質二次電池は、石油ピッチ由来の炭素質材料と比較すると優れた出力特性及びサイクル特性を示した。また、負極用炭素質材料から粒子径1μm以下の粒子を除去することにより、不可逆容量の低い非水電解質二次電池を得ることができることを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1](1)平均粒子径100〜10000μmの植物由来のチャーを、ハロゲン化合物を含む不活性ガス雰囲気中で500℃〜1250℃で熱処理する気相脱灰工程、(2)気相脱灰して得た炭素質前駆体を粉砕する工程、及び(3)粉砕した炭素質前駆体を、非酸化性ガス雰囲気下で1000℃〜1600℃で焼成する工程、を含む平均粒子径が3〜30μmの非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法、
[2]粒子径1μm以下の粒子を3.0体積%以下に除去する工程を粉砕工程(2)と同時か、又は粉砕工程(2)より後に含む[1]に記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法、
[3](1)平均粒子径100〜10000μmの植物由来のチャーを、ハロゲン化合物を含む不活性ガス雰囲気中で500℃〜1250℃で熱処理する気相脱灰工程、(2)気相脱灰して得た炭素質前駆体を粉砕する工程、及び(3)粉砕した炭素質前駆体を、非酸化性ガス雰囲気下で1000℃〜1600℃で焼成する工程、により調製される平均粒子径が3〜30μmの非水電解質二次電池負極用炭素質材料、
[4]粒子径1μm以下の粒子を3.0体積%以下に除去する工程を粉砕工程(2)と同時か、又は粉砕工程(2)より後に含む[3]に記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料、
[5]比表面積が1〜50m/gであり、カリウム元素含有量が0.1重量%以下、及び鉄元素含有量が0.02重量%以下であることを特徴とする、[3]又は[4]に記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料、
[6][3]〜[5]のいずれかに記載の炭素質材料を含む非水電解質二次電池負極電極、
[7]非水電解質二次電池負極電極は、金属集電板に対し、活物質層が片面又は両面に存在し、片面の活物質層の厚みが80μm以下である、[6]に記載の非水電解質二次電池負極電極、
[8][3]〜[5]のいずれか一項に記載の負極用炭素質材料を含む非水電解質二次電池、
[9][6]又は[7]に記載の負極電極を含む、非水電解質二次電池、又は
[10][8]又は[9]に記載の非水電解質二次電池を有する車両、
に関する。
なお、特許文献4には、トリハロメタン及びフミン酸の吸着性が高い活性炭が開示されており、強熱残分が3重量%以上の炭素質材料を、ハロゲン化合物を含む不活性ガス気流中で熱処理することが記載されている。そしてこの熱処理によって、炭素質表面にトリハロメタン及びフミン酸の吸着に適した細孔構造が形成されることが推定されている。
ここで、特許文献4に記載の熱処理は、本発明における気相脱灰と同じようにハロゲン化合物を用いるものであるが、特許文献4における熱処理は、実施例からハロゲン化物の混合割合が20%と多く、500℃以下または1300℃以上での熱処理では、つづく賦活処理によって、トリハロメタン吸着量が低くなるとの記載より、炭素質の表面に細孔を形成させ、更に賦活処理によって1000m/g以上の比表面積を有するトリハロメタン及びフミン酸の吸着性が高い活性炭を製造することを目的とするものであり、本発明における気相脱灰とはその目的を異にするものである。また、特許文献4で製造されるものは、有害物質の吸着に用いる比表面積の大きい活性炭である。従って、非水電解質二次電池に用いる比表面積の小さい本発明の負極用炭素質材料の技術分野と、特許文献4に記載の発明の技術分野は異なるものである。
更に、本発明における気相脱灰は、負極用炭素質材料の負極としての電気的特性を改善させるための処理である。一方、特許文献4には前記の熱処理によって、トリハロメタン及びフミン酸の吸着性が向上することは記載されているが、炭素質材料の負極としての電気的特性が改善されることは、開示も示唆もされておらず、ハロゲン化合物による熱処理によって、負極用炭素質材料の負極としての電気的特性に優れた負極用炭素質材料が得られることは、驚くべきことである。
本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法によれば、負極用炭素質材料の負極としての電気的特性において優れた植物由来の負極用炭素質材料を工業的に、且つ大量に得ることができる。具体的には、本発明の製造方法によれば、カリウム元素及び鉄元素が、効率よく除去された植物由来の負極用炭素質材料であり、平均粒子径の小さい炭素質材料を、工業的に、且つ大量に得ることができるため、厚みの薄い非水電解質二次電池負極を製造することが可能である。すなわち、負極の抵抗を小さくすることが可能であり、急速充電可能で、且つ不可逆容量が低く出力特性の優れた非水電解質二次電池を作ることができる。更に、本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料を用いた非水電解質二次電池は、石油ピッチ由来の炭素質材料と比較すると優れた出力特性及びサイクル特性を示す。
また、負極用炭素質材料から粒子径1μm以下の粒子を除去することにより、更に不可逆容量の低い非水電解質二次電池を得ることができる。
実施例2及び比較例6で得られた炭素質材料を用いた非水電解質二次電池の高温におけるサイクル特性の変化を示したグラフである。
[1]非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法
本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法は、(1)平均粒子径100〜10000μmの植物由来のチャーを、ハロゲン化合物を含む不活性ガス雰囲気中で500℃〜1250℃で熱処理する気相脱灰工程、(2)気相脱灰して得た炭素質前駆体を粉砕する工程、及び(3)粉砕した炭素質前駆体を、非酸化性ガス雰囲気下で1000℃〜1600℃で焼成する工程を含む、平均粒子径3〜30μmmの炭素質材料の製造方法である。更に、本発明の製造方法は、粒子径1μm以下の粒子を3.0体積%以下に除去する工程を粉砕工程(2)と同時か、又は粉砕工程(2)より後に含むことができる。
(植物由来のチャー)
本発明に用いることのできる植物由来のチャー(炭素質前駆体)において、原料となる植物は、特に限定されるものではないが、例えば、椰子殻、珈琲豆、茶葉、サトウキビ、果実(みかん、又はバナナ)、藁、広葉樹、針葉樹、竹、又は籾殻を挙げることができる。これらの植物を、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができるが、特には大量に入手可能であることから、椰子殻が好ましい。
前記椰子殻の原料の椰子としては、特に限定されるものではなく、パームヤシ(アブラヤシ)、ココヤシ、サラク、又はオオミヤシを挙げることができる。これらの椰子から得られた椰子殻を単独又は組み合わせて使用することができるが、食品、洗剤原料、バイオディーゼル油原料などとして利用され、大量に発生するバイオマス廃棄物であるココヤシ及びパームヤシ由来の椰子殻が特に好ましい。本発明の製造方法においては、これらの植物を仮焼成してチャーの形態で入手することが可能で(例えば椰子殻チャー)、これを素原料として使用することが好ましい。チャーとは、一般的には石炭を加熱した際に溶融軟化しないで生成する炭素分に富む粉末状の固体をいうが、ここでは有機物を加熱し、溶融軟化しないで生成する炭素分に富む粉末状の固体も指すこととする。
植物からチャーを製造する方法は、特に限定されるものではないが、例えば植物原料を不活性雰囲気下で、300℃以上で熱処理することによって製造される。
これらの植物由来のチャーから製造された負極用炭素質材料は、多量の活物質をドープすることが可能であることから、非水電解質二次電池の負極材料として有用である。しかしながら、植物由来のチャーは多くの金属元素を含有し、特にカリウムを多く(例えば、椰子殻チャーでは0.3%程度)含んでいる。また、多量の鉄などの金属元素(例えば椰子殻チャーでは、鉄元素を0.1%程度)を含んだ植物由来のチャーから製造された炭素質材料は、負極として用いた場合、電気化学的な特性や安全性に好ましくない影響を与える。従って、負極用炭素質材料に含まれるカリウム元素や鉄元素などの含量は、極力低下させた方が好ましい。
また、植物由来のチャーは、カリウム以外に、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム、又はカルシウム)、遷移金属(例えば、鉄や銅)及びその他の元素類を含んでおり、これらの金属類の含有量も減少させることが好ましい。これらの金属を含んでいると負極からの脱ドープ時に不純物が電解液中に不純物が溶出し、電池性能や安全性に悪影響を及ぼす可能性が高いからである。
《気相脱灰工程(1)》
本発明の製造方法における気相脱灰工程(1)は、植物由来のチャーを、ハロゲン化合物を含む不活性ガス雰囲気中で500℃〜1250℃で熱処理するものである。この気相脱灰によって、カリウム元素及び鉄元素などを効率よく除去することができ、特に液相脱灰と比較して、鉄元素を効率よく除去することができる。また、他のアルカリ金属、アルカリ土類金属、更には銅やニッケルなどの遷移金属を除去することが可能である。
気相脱灰に用いるハロゲン化合物は、特に限定されるものではなく、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、臭化ヨウ素、フッ化塩素(ClF)、塩化ヨウ素(ICl)、臭化ヨウ素(IBr)、塩化臭素(BrCl)など、若しくは熱分解によりこれらのハロゲン化合物を発生する化合物、又はそれらの混合物を挙げることができるが、好ましくは塩化水素である。
更に、ハロゲン化合物は不活性ガスと混合して使用しても良く、混合する不活性ガスは、前記処理温度において、炭素質材料と反応しないものであれば、特に限定されるものではないが、例えば窒素、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、又はそれらの混合ガスを挙げることができるが、好ましくは窒素である。更に、不活性ガスに含まれる不純物ガス、特に酸素の濃度としては、低ければ低いほど好ましいが、通常許容される酸素濃度としては、0〜2000ppm、より好ましくは、0〜1000ppmである。
気相脱灰においては、前記不活性ガスとハロゲン化合物との混合比は、十分な脱灰が達成される限り、限定されるものではないが、好ましくは不活性ガスに対するハロゲン化合物の量が0.1〜10.0体積%であり、より好ましくは0.3〜5.0体積%であり、更に好ましくは0.5〜3.0体積%である。
気相脱灰の温度は、500℃〜1250℃であり、好ましくは600℃〜1250℃であり、より好ましくは700℃〜1200℃であり、更に好ましくは800℃〜1150℃である。500℃未満では、脱灰効率が低下して、脱灰が十分でないことがあり、1250℃を超えるとハロゲン化合物による賦活が起きることがある。
また、気相脱灰の時間は、特に限定されるものではないが、好ましくは5分から300分であり、より好ましくは10分〜200分であり、更に好ましくは30分〜150分である。
本発明における気相脱灰工程(1)は、植物由来のチャーに含まれているカリウム及び鉄などを除去するための工程である。気相脱灰工程(1)後のカリウム含有量は、0.1重量%以下が好ましく、0.05重量%以下がより好ましく、0.03重量%以下が更に好ましい。また、鉄含有量は、0.02重量%以下が好ましく、0.015重量%以下がより好ましく、0.01重量%以下がより好ましく、0.005重量%以下が更に好ましい。カリウム含量が0.1重量%及び鉄含有率が0.02重量%を超えると、得られた負極用炭素質材料を用いた非水電解質二次電池において、脱ドープ容量が小さくなること、及び非脱ドープ容量が大きくなるだけでなく、これらの金属元素が電解液に溶出し、再析出した際に短絡を引き起こし、安全性に大きな問題を引き起こすことがあるからである。
本発明の製造方法における気相脱灰によって、カリウム、他のアルカリ金属、アルカリ土類金属、及び遷移金属などが、効率よく除去できるメカニズムは明確ではないが、以下のように考えられる。植物由来のチャーに含まれているカリウムなどの金属が、チャー中に拡散したハロゲン化合物と反応し、金属ハロゲン化物(例えば、塩化物又は臭化物)となる。そして生成された金属ハロゲン化物が、加熱により揮発(散逸)することにより、カリウム及び鉄などを脱灰できると考えられる。このような、チャー中へのハロゲン化物の拡散、反応による金属ハロゲン化物の生成メカニズムでは、気相でのハロゲン化物の高拡散により、液相脱灰と比較して効率よくカリウム及び鉄を除去できるものと考えられるが、本発明は、前記の説明に限定されるものではない。
気相脱灰に用いられる植物由来のチャーの粒子径は、特に限定されるものではない。しかしながら、粒子径が小さすぎる場合、除去されたカリウム等を含む気相と、植物由来のチャーとを分離することが難しくなることから、粒子径の下限は100μm以上が好ましく、200μm以上がより好ましく、300μm以上が更に好ましい。また、粒子径の上限は10000μm以下が好ましく、8000μm以下がより好ましく、5000μm以下が更に好ましい。
また、気相脱灰に用いる装置も、植物由来のチャーと、不活性ガス及びハロゲン化合物の混合ガスとを混合しながら加熱できる限り、限定されるものではないが、例えば流動炉を用いて、流動床等による連続式又はバッチ式の層内流通方式で行うことができる。混合ガスの供給量(流通量)も、限定されるものではないが、植物由来のチャー1g当たり、1mL/分以上、好ましくは5mL/分以上、更に好ましくは10mL/分以上である。
気相脱灰においては、ハロゲン化合物を含む不活性ガス雰囲気中での熱処理の後に、更にハロゲン化合物非存在下での熱処理を行うことが好ましい。前記ハロゲン化合物との接触により、ハロゲンが炭素前駆体に含まれるため、ハロゲン化合物非存在下での熱処理により炭素前駆体に含まれているハロゲンを除去することが好ましい。具体的には、ハロゲン化合物非存在下での熱処理は、ハロゲン化合物を含まない不活性ガス雰囲気中で500℃〜1250℃で熱処理することによって行うが、ハロゲン化合物非存在下での熱処理の温度は、最初のハロゲン化合物を含む不活性ガス雰囲気中の温度と同じか、又はそれよりも高い温度で行うことが好ましい。例えば、前記ハロゲン熱処理後に、ハロゲン化合物の供給を遮断して熱処理を行うことにより、ハロゲンを除去することができる。また、ハロゲン非存在熱処理の時間も特に限定されるものではないが、好ましくは5分〜300分であり、より好ましくは10分〜200分であり、更に好ましくは10分〜150分であり、最も好ましくは10分〜100分である。
《粉砕工程(2)》
本発明の製造方法における粉砕工程(2)は、カリウム及び鉄を除去した炭素質前駆体を、焼成後の平均粒子径が3〜30μmになるように粉砕する工程である。すなわち、粉砕工程(2)によって、得られる炭素質材料の平均粒子径が3〜30μmとなるように調整する。更に、粉砕工程(2)は、分級を含むことが好ましい。分級によって平均粒子径を、より正確に調整することができ、粒子径1μm以下の粒子を除くことも可能である。
気相脱灰された植物由来のチャー(炭素前駆体)は、熱処理を行っても溶融しないため、粉砕工程(2)の順番は、前記気相脱灰工程の効率を考慮し前記気相脱灰工程(1)の後であれば、特に限定されないが、後述の焼成工程(3)の前に行うことが好ましい。この理由は、例えば粉砕を脱灰前に実施した場合、微粒子のため気相脱灰での回収率(収率)が低下すること、及び微粒を回収する敷設設備が大掛かりになり、設備容積効率が低くなるからである。しかしながら、焼成工程の後に粉砕することを排除するものではない。
粉砕に用いる粉砕機は、特に限定されるものではなく、例えばジェットミル、ボールミル、ハンマーミル、又はロッドミルなどを単独または組み合わせて使用することができるが、微粉の発生が少ないという点で分級機能を備えたジェットミルが好ましい。一方、ボールミル、ハンマーミル、又はロッドミルなどを用いる場合は、粉砕後に分級を行うことで微粉を除くことができる。
(分級)
分級として、篩による分級、湿式分級、又は乾式分級を挙げることができる。湿式分級機としては、例えば重力分級、慣性分級、水力分級、又は遠心分級などの原理を利用した分級機を挙げることができる。また、乾式分級機としては、沈降分級、機械的分級、又は遠心分級の原理を利用した分級機を挙げることができる。
粉砕工程において、粉砕と分級は1つの装置を用いて行うこともできる。例えば、乾式の分級機能を備えたジェットミルを用いて、粉砕と分級を行うことができる。更に、粉砕機と分級機とが独立した装置を用いることもできる。この場合、粉砕と分級とを連続して行うこともできるが、粉砕と分級とを不連続に行うこともできる。
(粒子径1μm以下の粒子の除去)
本発明の製造方法においては、前記のように粒子径1μm以下の粒子の含有量を3体積%以下に除去することが好ましい。粒子径1μm以下の粒子の除去は、粉砕工程(2)の後であれば、その順番は特に限定されるものではないが、粉砕工程(2)において分級と同時に行うことが好ましい。
本発明の方法により製造される炭素質材料の粒子径1μm以下の粒子は3体積%以下であり、より好ましくは2.5体積%以下であり、更に好ましくは2.0体積%以下である。粒子径1μm以下の粒子を除去することにより、比表面積が低下し、不可逆容量の低い非水電解質二次電池を得ることができる。
(平均粒子径)
本発明の製造方法によって得られる非水電解質二次電池用炭素質材料の平均粒子径(Dv50)は、3〜30μmである。平均粒子径が3μm未満の場合、微粉が増加し比表面積が増加し、電解液との反応性が高くなり充電しても放電しない容量である不可逆容量が増加し、正極の容量が無駄になる割合が増加するため好ましくない。また、得られた炭素質材料を用いて負極電極を製造した場合、炭素質材料の間に形成される1つの空隙が小さくなり、電解液中のリチウムの移動が抑制されるため好ましくない。平均粒子径として、下限は3μm以上が好ましいが、より好ましくは3.5μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、特に好ましくは5μm以上である。一方、平均粒子径が30μm以下の場合、粒子内でのリチウムの拡散自由行程が少なく、急速な充放電が可能であり好ましい。更に、リチウムイオン二次電池では、入出力特性の向上には電極面積を大きくすることが重要であり、そのため電極調製時に集電板への活物質の塗工厚みを薄くする必要がある。塗工厚みを薄くするには、活物質の粒子径を小さくする必要がある。このような観点から、平均粒子径の上限としては30μm以下が好ましいが、より好ましくは19μm以下であり、更に好ましくは17μm以下であり、更に好ましくは16μm以下、最も好ましくは15μm以下である。
なお、粉砕炭素質前駆体は、焼成工程(3)により、焼成されるが、本焼成の条件により、0〜20%程度の収縮がおきる。従って、最終的に平均粒子径Dv50が3〜30μmの非水電解質二次電池負極用炭素質材料を得るために、粉砕炭素質前駆体の平均粒子径を、0〜20%程度の範囲で大きめに調製することが好ましい。粉砕後の平均粒子径は、最終的に得られる炭素質材料の平均粒子径が3〜30μmとなる限り、限定されるものではないが、具体的には平均粒子径Dv50を3〜36μmに調製することが好ましく、3〜22.8μmがより好ましく、3〜20.4μmが更に好ましく、3〜19.2μmが更に好ましく、3〜18μmが最も好ましい。
《焼成工程(3)》
本発明の製造方法における焼成工程(3)は、粉砕した炭素質前駆体を、非酸化性ガス雰囲気下で1000℃〜1600℃で熱処理する工程である。1000℃〜1600℃の焼成は、本発明の技術分野においては、通常「本焼成」と呼ばれている焼成である。また、本発明の焼成工程においては、必要に応じて、本焼成の前に予備焼成を行うことができる。
(本焼成)
本発明の製造方法における本焼成は、通常の手順に従って行うことができ、本焼成を行うことにより、非水電解質二次電池負極用炭素質材料を得ることができる。本焼成の温度は、1000〜1600℃である。本焼成温度が1000℃未満では、炭素質材料に官能基が多く残存してH/Cの値が高くなり、リチウムとの反応により不可逆容量が増加するため好ましくない。本発明の本焼成温度の下限は1000℃以上であり、より好ましくは1100℃以上であり、特に好ましくは1150℃以上である。一方、本焼成温度が1600℃を超えると炭素六角平面の選択的配向性が高まり放電容量が低下するため好ましくない。本発明の本焼成温度の上限は1600℃以下であり、より好ましくは1500℃以下であり、特に好ましくは1450℃以下である。
本焼成は、非酸化性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。非酸化性ガスとしては、ヘリウム、窒素又はアルゴンなどを挙げることができこれらを単独又は混合して用いることができる。更には塩素などのハロゲンガスを上記非酸化性ガスと混合したガス雰囲気中で本焼成を行うことも可能である。ガスの供給量(流通量)も、限定されるものではないが、脱灰済みの炭素前駆体1g当たり、1mL/分以上、好ましくは5mL/分以上、更に好ましくは10mL/分以上である。また、本焼成は、減圧下で行うこともでき、例えば、10KPa以下で行うことも可能である。本焼成の時間も特に限定されるものではないが、例えば1000℃以上に滞留する時間としては、0.05〜10時間で行うことができ、0.05〜3時間が好ましく、0.05〜1時間がより好ましい。
なお、本明細書において「炭素質前駆体」とは、本焼成が行われる前の植物由来のチャーを意味する。
(予備焼成)
本発明の製造方法においては、予備焼成を行うことができる。予備焼成は、炭素源を300℃以上900℃未満で焼成することによって行う。予備焼成は、揮発分、例えばCO、CO、CH、及びHなどと、タール分とを除去し、本焼成において、それらの発生を軽減し、焼成器の負担を軽減することができる。予備焼成温度が300℃未満であると脱タールが不十分となり、粉砕後の本焼成工程で発生するタール分やガスが多く、粒子表面に付着する可能性があり、粉砕したときの表面性を保てず電池性能の低下を引き起こすので好ましくない。一方、予備焼成温度が900℃以上であるとタール発生温度領域を超えることになり、使用するエネルギー効率が低下するため好ましくない。更に、発生したタールが二次分解反応を引き起こしそれらが炭素前駆体に付着し、性能の低下を引き起こすことがあるので好ましくない。
予備焼成は、不活性ガス雰囲気中で行い、不活性ガスとしては、窒素、又はアルゴンなどを挙げることができる。また、予備焼成は、減圧下で行うこともでき、例えば、10KPa以下で行うことができる。予備焼成の時間も特に限定されるものではないが、例えば0.5〜10時間で行うことができ、1〜5時間がより好ましい。なお、本発明において、予備焼成とは、本焼成前の不活性ガス雰囲気中での300℃以上900℃未満での熱処理を意味するため、前記気相脱灰処理を予備焼成と見なすこともできる。
また、前記粉砕工程(2)を予備焼成の後に行ってもよい。
[2]非水電解質二次電池負極用炭素質材料
本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料は、(1)平均粒子径100〜10000μmの植物由来のチャーを、ハロゲン化合物を含む不活性ガス雰囲気中で500℃〜1250℃で熱処理する気相脱灰工程、(2)気相脱灰して得た炭素質前駆体を、粉砕する工程、及び(3)粉砕した炭素質前駆体を、非酸化性ガス雰囲気下で1000℃〜1600℃で焼成する工程、により得ることのできる平均粒子径が3〜30μmに炭素質材料である。すなわち、本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料は、前記非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法によって得られる炭素質材料である。
本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料における、気相脱灰工程(1)、粉砕工程(2)、焼成工程(3)、及び用いる植物由来のチャー等は、前記非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法に記載されたものである。
本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料における、平均粒子径、比表面積、カリウム元素含有量及び鉄元素含有量等の物性は、特に限定されるものではないが、例えば比表面積が1〜50m/g、カリウム元素含有量が0.1重量%以下、及び鉄元素含有量が0.02重量%以下であるものが好ましい。
(難黒鉛化性炭素質材料)
本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料は、植物由来のチャーを炭素源とするものであり、従って難黒鉛化性炭素質材料である。難黒鉛化性炭素はリチウムのドープ、脱ドープ反応による粒子の膨張収縮が小さく、高いサイクル耐久性を有する。
本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の炭素源である植物由来のチャーは、前記本発明の製造方法の「植物由来チャー」の項に記載されたものである。
(平均粒子径)
本発明の非水電解質二次電池用炭素質材料の平均粒子径(体積平均粒子径:Dv50)は、3〜30μmが好ましい。平均粒子径が3μm未満の場合、微粉が増加するために、比表面積が増加し、電解液との反応性が高くなり充電しても放電しない容量である不可逆容量が増加し、正極の容量が無駄になる割合が増加するため好ましくない。また、負極電極を製造した場合、炭素質材料の間に形成される1つの空隙が小さくなり、電解液中のリチウムの移動が抑制されるため好ましくない。平均粒子径として、下限は3μm以上が好ましいが、更に好ましくは4μm以上、特に好ましくは5μm以上である。一方、平均粒子径が30μm以下の場合、粒子内でのリチウムの拡散自由行程が少なく、急速な充放電が可能である。更に、リチウムイオン二次電池では、入出力特性の向上には電極面積を大きくすることが重要であり、そのため電極調製時に集電板への活物質の塗工厚みを薄くする必要がある。塗工厚みを薄くするには、活物質の粒子径を小さくする必要がある。このような観点から、平均粒子径の上限としては30μm以下が好ましいが、より好ましくは19μm以下であり、更に好ましくは17μm以下であり、更に好ましくは16μm以下であり、最も好ましくは15μm以下である。
(比表面積)
本発明の非水電解質二次電池用炭素質材料の比表面積は、1〜50m/gであり、好ましくは1.5〜40m/gであり、より好ましくは2〜40m/gであり、更に好ましくは3〜30m/gである。BET比表面積が、50m/gを超えると、非水電解質二次電池の負極として用いた場合に、電解液との分解反応が増加し、不可逆容量の増加に繋がり、従って電池性能が低下する可能性がある。BET比表面積が1m/g未満であると、非水電解質二次電池の負極として用いた場合に、電解液との反応面積が低下することにより入出力特性が低下する可能性がある。
(カリウム元素含有量)
本発明の非水電解質二次電池用炭素質材料のカリウム元素含有量は、0.1重量%以下であり、0.05重量%以下がより好ましく、0.03重量%以下が更に好ましい。カリウム含量が0.5重量%を超えた負極用炭素質材料を用いた非水電解質二次電池では、脱ドープ容量が小さくなること、及び非脱ドープ容量が大きくなることがある。
(鉄元素含有量)
本発明の非水電解質二次電池用炭素質材料の鉄の含有量は、0.02重量%以下であり、0.015重量%以下がより好ましく、0.01重量%以下がより好ましく、0.005重量%以下が更に好ましい。鉄の含量が多い負極用炭素質材料を用いた非水電解質二次電池では、微小短絡により発熱を起こす可能性がある。また、ドープ特性及び脱ドープ特性に、悪影響を与える可能性もある。
《H/C比》
本発明の非水電解質二次電池用炭素質材料のH/C比は、特に限定されるものではない。H/Cは、水素原子及び炭素原子を元素分析により測定されたものであり、炭素化度が高くなるほど炭素質材料の水素含有率が小さくなるため、H/Cが小さくなる傾向にある。従って、H/Cは、炭素化度を表す指標として有効である。本発明の炭素質材料のH/Cは、限定されないが0.1以下であり、より好ましくは0.08以下である。特に好ましくは0.05以下である。水素原子と炭素原子の比H/Cが0.1を超えると、炭素質材料に官能基が多く存在し、リチウムとの反応により不可逆容量が増加することがあるので好ましくない。
[3]非水電解質二次電池負極
本発明の非水電解質二次電池負極は、本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料を含むものである。
《負極電極の製造》
本発明の炭素質材料を用いる負極電極は、炭素質材料に結合剤(バインダー)を添加し適当な溶媒を適量添加、混練し、電極合剤とした後に、金属板等からなる集電板に塗布・乾燥後、加圧成形することにより製造することができる。本発明の炭素質材料を用いることにより特に導電助剤を添加しなくとも高い導電性を有する電極を製造することができるが、更に高い導電性を賦与することを目的に必要に応じて電極合剤を調製時に、導電助剤を添加することができる。導電助剤としては、導電性のカーボンブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)、ナノチューブなどを用いることができ、添加量は使用する導電助剤の種類によっても異なるが、添加する量が少なすぎると期待する導電性が得られないので好ましくなく、多すぎると電極合剤中の分散が悪くなるので好ましくない。このような観点から、添加する導電助剤の好ましい割合は0.5〜10重量%(ここで、活物質(炭素質材料)量+バインダー量+導電助剤量=100重量%とする)であり、更に好ましくは0.5〜7重量%、とくに好ましくは0.5〜5重量%である。結合剤としては、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン、およびSBR(スチレン・ブタジエン・ラバー)とCMC(カルボキシメチルセルロース)との混合物等の電解液と反応しないものであれば特に限定されない。中でもPVDFは、活物質表面に付着したPVDFがリチウムイオン移動を阻害することが少なく、良好な入出力特性を得るために好ましい。PVDFを溶解しスラリーを形成するためにN−メチルピロリドン(NMP)などの極性溶媒が好ましく用いられるが、SBRなどの水性エマルジョンやCMCを水に溶解して用いることもできる。結合剤の添加量が多すぎると、得られる電極の抵抗が大きくなるため、電池の内部抵抗が大きくなり電池特性を低下させるので好ましくない。また、結合剤の添加量が少なすぎると、負極材料粒子相互および集電材との結合が不十分となり好ましくない。結合剤の好ましい添加量は、使用するバインダーの種類によっても異なるが、PVDF系のバインダーでは好ましくは3〜13重量%であり、更に好ましくは3〜10重量%である。一方、溶媒に水を使用するバインダーでは、SBRとCMCとの混合物など、複数のバインダーを混合して使用することが多く、使用する全バインダーの総量として0.5〜5重量%が好ましく、更に好ましくは1〜4重量%である。電極活物質層は集電板の両面に形成するのが基本であるが、必要に応じて片面でもよい。電極活物質層が厚いほど、集電板やセパレータなどが少なくて済むため高容量化には好ましいが、対極と対向する電極面積が広いほど入出力特性の向上に有利なため活物質層が厚すぎると入出力特性が低下するため好ましくない。好ましい活物質層(片面当たり)の厚みは、10〜80μmであり、更に好ましくは20〜75μm、とくに好ましくは20〜60μmである。
[4]非水電解質二次電池
本発明の非水電解質二次電池は、本発明の非水電解質二次電池負極を含むものである。本発明の炭素質材料を使用した非水電解質二次電池用負極電極を用いた非水電解質二次電池は、優れた出力特性及び優れたサイクル特性を示す。
《非水電解質二次電池の製造》
本発明の負極材料を用いて、非水電解質二次電池の負極電極を形成した場合、正極材料、セパレータ、及び電解液など電池を構成する他の材料は特に限定されることなく、非水溶媒二次電池として従来使用され、あるいは提案されている種々の材料を使用することが可能である。
例えば、正極材料としては、層状酸化物系(LiMOと表されるもので、Mは金属:例えばLiCoO、LiNiO、LiMnO、又はLiNiCoMo(ここでx、y、zは組成比を表わす))、オリビン系(LiMPOで表され、Mは金属:例えばLiFePOなど)、スピネル系(LiMで表され、Mは金属:例えばLiMnなど)の複合金属カルコゲン化合物が好ましく、これらのカルコゲン化合物を必要に応じて混合してもよい。これらの正極材料を適当なバインダーと電極に導電性を付与するための炭素材料とともに成形して、導電性の集電材上に層形成することにより正極が形成される。
これら正極と負極との組み合わせで用いられる非水溶媒型電解液は、一般に非水溶媒に電解質を溶解することにより形成される。非水溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、γ−ブチルラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホラン、又は1,3−ジオキソラン等の有機溶媒の一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、電解質としては、LiClO、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiAsF、LiCl、LiBr、LiB(C、又はLiN(SOCF等が用いられる。二次電池は、一般に上記のようにして形成した正極層と負極層とを必要に応じて不織布、その他の多孔質材料等からなる透液性セパレータを介して対向させ電解液中に浸漬させることにより形成される。セパレータとしては、二次電池に通常用いられる不織布、その他の多孔質材料からなる透過性セパレータを用いることができる。あるいはセパレータの代わりに、もしくはセパレータと一緒に、電解液を含浸させたポリマーゲルからなる固体電解質を用いることもできる。
[5]車両
本発明の非水電解質二次電池は、例えば自動車などの車両に搭載される電池(典型的には車両駆動用非水電解質二次電池)として好適である。
本発明による車両とは、通常電動車両として知られるものや燃料電池や内燃機関とのハイブリッド車など、特に制限されることなく対象とすることができるが、少なくとも上記電池を備えた電源装置と、該電源装置からの電源供給により駆動する電動駆動機構と、これを制御する制御装置を備えるものである。更に、発電ブレーキや回生ブレーキを備え制動によるエネルギーを電気に変換して前記非水電解質二次電池に充電する機構を備えてもよい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
なお、以下に本発明の非水電解質二次電池用炭素質材料の物性値(「レーザー回折法による平均粒子径」、「水素/炭素の原子比(H/C)」、「比表面積」、及び「灰分」)の測定法を記載するが、実施例を含めて、本明細書中に記載する物性値は、以下の方法により求めた値に基づくものである。
(評価試験項目)
《粒径分布》
試料約0.01gに対し、分散剤(カチオン系界面活性剤「SNウェット366」(サンノプコ社製))を3滴加え、試料に分散剤を馴染ませる。次に、純水30mLを加え、超音波洗浄機で約2分間分散させたのち、粒径分布測定器(島津製作所製「SALD−3000S」)で、粒径0.5〜3000μmの範囲の粒径分布を求めた。粒子の屈折率は2.0〜0.1iとした。
得られた粒径分布から、累積容積が50%となる粒径をもって平均粒径Dv50(μm)とした。
《水素/炭素(H/C)の原子比》
JIS M8819に定められた方法に準拠し測定した。すなわち、CHNアナライザー(Perkin−elmer社製2400II)による元素分析により得られる試料中の水素及び炭素の重量割合をそれぞれの元素の質量数で除し、水素/炭素の原子数の比を求めた。
《比表面積》
JIS Z8830に定められた方法に準拠し、比表面積を測定した。概要を以下に記す。
BETの式から誘導された近似式v=1/(v(1−x))を用いて液体窒素温度における、窒素吸着による1点法(相対圧力x=0.2)によりvを求め、次式により試料の比表面積を計算した:比表面積=4.35×v(m/g)
(ここで、vは試料表面に単分子層を形成するに必要な吸着量(cm/g)、vは実測される吸着量(cm/g)、xは相対圧力である。)
具体的には、MICROMERITICS社製「Flow Sorb II2300」を用いて、以下のようにして液体窒素温度における炭素質物質への窒素の吸着量を測定した。
炭素材料を試料管に充填し、窒素ガスを20モル%濃度で含有するヘリウムガスを流しながら、試料管を−196℃に冷却し、炭素材に窒素を吸着させる。次に試験管を室温に戻す。このとき試料から脱離してくる窒素量を熱伝導度型検出器で測定し、吸着ガス量vとした。
《灰分》
カリウム元素含有率及び鉄含有率の測定のために、予め所定のカリウム元素および鉄元素を含有する炭素試料を調製し、蛍光X線分析装置を用い、カリウムKα線の強度とカリウム含有量との関係、および鉄Kα線の強度と鉄含有量との関係に関する検量線を作成した。ついで試料について蛍光X線分析におけるカリウムKα線および鉄Kα線の強度を測定し、先に作成した検量線よりカリウム含有量および鉄含有量を求めた。
蛍光X線分析は、(株)島津製作所製LAB CENTER XRF−1700を用い、以下の条件で行った。上部照射方式用ホルダーを用い、試料測定面積を直径20mmの円周内とした。被測定試料の設置は、内径25mmのポリエチレン製容器の中に被測定試料を0.5g入れ、裏をプランクトンネットで押さえ、測定表面をポリプロピレン製フィルムで覆い測定を行った。X線源は40kV、60mAに設定した。カリウムについては、分光結晶にLiF(200)、検出器にガスフロー型比例係数管を使用し、2θが90〜140°の範囲を、走査速度8°/minで測定した。鉄については、分光結晶にLiF(200)、検出器にシンチレーションカウンターを使用し、2θが56〜60°の範囲を、走査速度8°/minで測定した。
《実施例1》
椰子殻を破砕し、500℃で乾留して得られた粒径2.360〜0.850mmの椰子殻チャーA(粒径2.360〜0.850mmの粒子を98重量%含有)100gに対して、塩化水素ガス1体積%含む窒素ガスを10L/分の流量で供給して、950℃で80分間処理後、塩化水素ガスの供給のみを停止し、更に950℃、30分間熱処理し、椰子殻焼成炭Bを得た。得られた椰子殻焼成炭を、ボールミルで平均粒子径8μmに粗粉砕した後、コンパクトジェットミル(コジェットシステムα―mkIII)で粉砕及び分級し、横型管状炉中に粉末状炭素前駆体を置き、窒素雰囲気下で1200℃で1時間本焼成を行い、平均粒子径7μmの非水電解質二次電池負極用炭素質材料1を得た。脱灰及び焼成の条件、並びに得られた炭素質材料の物性を表1に示す。
《実施例2》
平均粒子径を11μmとした以外は、実施例1と同様にして炭素質材料2を得た。
《実施例3》
平均粒子径を15μmとした以外は、実施例1と同様にして炭素質材料3を得た。
《実施例4》
塩化水素ガスでの処理温度を850℃とした以外は、実施例2と同様にして炭素質材料4を得た。
《実施例5》
平均粒子径を13μmとし、そして塩化水素ガスでの処理温度を1200℃とした以外は、実施例2と同様にして炭素質材料5を得た。
《実施例6》
本焼成温度を1100℃とした以外は、実施例2と同様にして炭素質材料6を得た。
《実施例7》
本焼成温度を1150℃とした以外は、実施例2と同様にして炭素質材料7を得た。
《実施例8》
本焼成温度を1250℃とした以外は、実施例2と同様にして炭素質材料8を得た。
《実施例9》
粉砕時の分級点を変更し、粒子径1μm以下の粒子の含有量を2.5%とした以外は、実施例1の操作を繰り返して炭素質材料9を得た。
《実施例10》
原料にパームチャーを用い、塩化水素ガス1体積%含む窒素ガスを10L/分の流量で供給して、950℃で110分間処理後、塩化水素ガスの供給のみを停止し、更に950℃、30分間熱処理し、パーム焼成炭を得た。その後、実施例2と同様にして炭素質材料10を得た。
《実施例11》
粉砕時の分級点を変更し、粒子径1μm以下の粒子の含有量を4.2%とした以外は、実施例1の操作を繰り返して炭素質材料11を得た。
《比較例1》
塩化水素ガスでの処理温度を400℃とした以外は、実施例2と同様にして比較炭素質材料1を得た。
《比較例2》
平均粒子径を12μmとし、そして塩化水素ガスでの処理温度を1300℃とした以外は、実施例2と同様にして比較炭素質材料2を得た。
《比較例3》
平均粒子径を2μmとした以外は、実施例2と同様にして比較炭素質材料3を得た。
《比較例4》
平均粒子径を10μmとし、そして本焼成温度を950℃とした以外は、実施例2と同様にして比較炭素質材料4を得た。
《比較例5》
椰子殻チャーを窒素ガス雰囲気中(常圧)で600℃で1時間仮焼成した後、粉砕し、平均粒径19μmの粉末状炭素前駆体とした。次に、この粉末状炭素前駆体を、35%塩酸に1時間浸漬した後、沸騰水で1時間洗浄する洗浄操作を2回繰り返して脱灰処理し、脱灰粉末状炭素前駆体を得た。得られた脱灰粉末状炭素前駆体10gを、横型管状炉中に粉末状炭素前駆体を置き、窒素雰囲気下、1200℃で1時間本焼成を行い、比較炭素質材料5を製造した。表1に示すように、カリウム元素含有量が0.049重量%であり、鉄元素含有量が0.059重量%であり、気相脱灰で得られた炭素質材料と比較して、カリウム及び鉄の除去率が低かった。
《比較例6》
軟化点210℃、キノリン不溶分1%、H/C原子比0.63の石油系ピッチ68kgと、ナフタレン32kgとを撹拌翼のついた内容積300Lの耐圧容器に仕込み、190℃で加熱溶融混合を行った後、80〜90℃に冷却して押し出し、径約500μmの紐状成形体を得た。ついで、この紐状成形体を直径と長さの比が約1.5になるように破砕し、得られた破砕物を93℃に加熱した0.53%のポリビニルアルコール(ケン化度88%)水溶液中に投入し、撹拌分散し、冷却して球状ピッチ成形体を得た。大部分の水を濾過により除いた後、球状ピッチ成形体の約6倍量のn−ヘキサンでピッチ成形体中のナフタレンを抽出除去した。
このようにして得た多孔性球状ピッチ多孔体を、加熱空気を通じながら、260℃で1時間保持して酸化処理を行い、熱に対して不融性の多孔性ピッチを得た。得られた熱に対し不融性の多孔性ピッチ成形体を、窒素ガス雰囲気中600℃で1時間予備焼成した後、ジェットミルを用いて粉砕し、分級することで炭素前駆体微粒子とした。次にこの炭素前駆体を1200℃で1時間本焼成し、比較炭素質材料6を得た。
《活物質のドープ−脱ドープ試験》
実施例及び比較例で得られた炭素質材料及び比較炭素質材料を用いて、以下の(a)〜(e)の操作を行い、負極電極及び非水電解質二次電池を作製し、そして電極性能の評価を行った。
(a)電極作製
上記炭素材90重量部、ポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製「KF#1100」)10重量部にNMPを加えてペースト状にし、銅箔上に均一に塗布した。乾燥した後、銅箔より直径15mmの円板状に打ち抜き、これをプレスして電極とした。なお、電極中の炭素材料の量は約10mgになるように調整した。
(b)試験電池の作製
本発明の炭素材は非水電解質二次電池の負極電極を構成するのに適しているが、電池活物質の放電容量(脱ドープ量)および不可逆容量(非脱ドープ量)を、対極の性能のバラツキに影響されることなく精度良く評価するために、特性の安定したリチウム金属を対極として、上記で得られた電極を用いてリチウム二次電池を構成し、その特性を評価した。
リチウム極の調製は、Ar雰囲気中のグローブボックス内で行った。予め2016サイズのコイン型電池用缶の外蓋に直径16mmのステンレススチール網円盤をスポット溶接した後、厚さ0.8mmの金属リチウム薄板を直径15mmの円盤状に打ち抜いたものをステンレススチール網円盤に圧着し、電極(対極)とした。
このようにして製造した電極の対を用い、電解液としてはエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートを容量比で1:2:2で混合した混合溶媒に1.5mol/Lの割合でLiPFを加えたものを使用し、直径19mmの硼珪酸塩ガラス繊維製微細細孔膜のセパレータとして、ポリエチレン製のガスケットを用いて、Arグローブボックス中で、2016サイズのコイン型非水電解質系リチウム二次電池を組み立てた。
(c)電池容量の測定
上記構成のリチウム二次電池について、充放電試験装置(東洋システム製「TOSCAT」)を用いて充放電試験を行った。炭素極へのリチウムのドープ反応を定電流定電圧法により行い、脱ドープ反応を定電流法で行った。ここで、正極にリチウムカルコゲン化合物を使用した電池では、炭素極へのリチウムのドープ反応が「充電」であり、本発明の試験電池のように対極にリチウム金属を使用した電池では、炭素極へのドープ反応が「放電」と呼ぶことになり、用いる対極により同じ炭素極へのリチウムのドープ反応の呼び方が異なる。そこでここでは、便宜上炭素極へのリチウムのドープ反応を「充電」と記述することにする。逆に「放電」とは試験電池では充電反応であるが、炭素材からのリチウムの脱ドープ反応であるため便宜上「放電」と記述することにする。ここで採用した充電方法は定電流定電圧法であり、具体的には端子電圧が0mVになるまで0.5mA/cmで定電流充電を行い、端子電圧を0mVに達した後、端子電圧0mVで定電圧充電を行い電流値が20μAに達するまで充電を継続した。このとき、供給した電気量を電極の炭素材の重量で除した値を炭素材の単位重量当たりの充電容量(mAh/g)と定義した。充電終了後、30分間電池回路を開放し、その後放電を行った。放電は0.5mA/cmで定電流放電を行い、終止電圧を1.5Vとした。このとき放電した電気量を電極の炭素材の重量で除した値を炭素材の単位重量当たりの放電容量(mAh/g)と定義する。不可逆容量は、充電容量−放電容量として計算される。
同一試料を用いて作製した試験電池についてのn=3の測定値を平均して充放電容量および不可逆容量を決定した。
(d)急速放電性試験
上記構成のリチウム二次電池について、(c)の通りに充放電を行った後、再度同様の方法で充放電を行った。
次に、端子電圧が0mVになるまで0.5mA/cmで定電流充電を行った後、端子電圧0mVで定電圧充電を行い電流値が20μAに減衰するまで充電を行った。充電終了後、30分間電池回路を開放し、その後端子電圧が1.5Vに達するまで25mA/cmで定電流放電を行った。このときの放電電気量を電極の炭素材の重量で除した値を急速放電容量(mAh/g)と定義する。また25mA/cmにおける放電容量を2回目の0.5mA/cmにおける放電容量で除した値を、出力特性(%)と定義した。
同一試料を用いて作製した試験電池についてのn=3の測定値を平均した。
(e)サイクル試験
上記実施例又は比較例で得られた炭素材各94重量部、ポリフッ化ビニリデン(クレハ製KF#9100)6重量部にNMPを加えてペースト状にし、銅箔上に均一に塗布した。乾燥した後、塗工電極を直径15mmの円板状に打ち抜き、これをプレスすることで負極電極を作製した。なお、電極中の炭素材料の量は約10mgに調整した。
コバルト酸リチウム(LiCoO)94重量部、カーボンブラック3重量部、ポリフッ化ビニリデン(クレハ製KF#1300)3重量部にNMPを加えてペースト状にし、アルミニウム箔上に均一に塗布した。乾燥した後、塗工電極を直径14mmの円板上に打ち抜く。なお、(c)で測定した負極活物質の充電容量の95%となるよう正極電極中のコバルト酸リチウムの量を調整した。コバルト酸リチウムの容量を150mAh/gとして計算した。
このようにして調製した電極の対を用い、電解液としてはエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートを容量比で1:2:2で混合した混合溶媒に1.5モル/リットルの割合でLiPFを加えたものを使用し、直径19mmの硼珪酸塩ガラス繊維製微細細孔膜のセパレータとして、ポリエチレン製のガスケットを用いて、Arグローブボックス中で、2016サイズのコイン型非水電解質系リチウム二次電池を組み立てた。
ここで、はじめに3回充放電を繰り返してエージングを行った後、サイクル試験を開始した。サイクル試験で採用した定電流定電圧条件は、電池電圧が4.2Vになるまで一定の電流密度2.5mA/cmで充電を行い、その後、電圧を4.2Vに保持するように(定電圧に保持しながら)電流値を連続的に変化させて電流値が50μAに達するまで充電を継続する。充電終了後、30分間電池回路を開放し、その後放電を行った。放電は電池電圧が2.75Vに達するまで一定の電流密度2.5mA/cmで行った。この充電および放電を50℃で350サイクル繰り返し、350サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除し、サイクル特性(%)とした。
得られたリチウム二次電池の特性を表2に示す。また、図1に実施例2及び比較例6の350サイクルまでの放電容量の変化を示した。ピッチの炭素質材料を用いたリチウム二次電池と比較すると、植物由来のチャーの炭素質材料を用いたリチウム二次電池は、高温でのサイクル特性が優れていた。
Figure 0005589154
比較例5の液相脱灰で得られた炭素質材料と比較すると、実施例1〜11の本発明の炭素質材料は、Fe含有率の点で優れていた。
Figure 0005589154
実施例1、実施例9及び実施例11において、粒子径1μm未満の粒子が0体積%、2.5体積%、4.2体積%と増えるにつれて不可逆容量が増加した。すなわち、粒子径1μm未満の粒子を除去することにより、不可逆容量が低下した。
本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法は、効率よくカリウムを除去することが可能であり、植物由来の20μm未満の負極用炭素質材料を工業的に且つ大量に製造することができる。本発明の炭素質材料を用いた非水電解質二次電池は、出力特性(レート特性)及びサイクル特性が優れているため、長寿命および高い入出力特性が求められる、ハイブリッド自動車(HEV)及び電気自動車(EV)に用いることができる。

Claims (10)

  1. (1)平均粒子径100〜10000μmの植物由来のチャーを、塩素化合物を含む不活性ガス雰囲気中で500℃〜1250℃で、得られる炭素質材料のカリウム元素含有量が0.1重量%以下、及び鉄元素含有量が0.02重量%以下となるように熱処理する気相脱灰工程、
    (2)気相脱灰して得た炭素質前駆体を粉砕する工程、及び
    (3)粉砕した炭素質前駆体を、非酸化性ガス雰囲気下で1000℃〜1600℃で焼成する工程、
    を含む平均粒子径が3〜30μmの非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法。
  2. 粒子径1μm以下の粒子を3.0体積%以下に除去する工程を粉砕工程(2)と同時か、又は粉砕工程(2)より後に含む請求項1に記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法。
  3. (1)平均粒子径100〜10000μmの植物由来のチャーを、塩素化合物を含む不活性ガス雰囲気中で500℃〜1250℃で、得られる炭素質材料のカリウム元素含有量が0.1重量%以下、及び鉄元素含有量が0.02重量%以下となるように熱処理する気相脱灰工程、
    (2)気相脱灰して得た炭素質前駆体を粉砕する工程、及び
    (3)粉砕した炭素質前駆体を、非酸化性ガス雰囲気下で1000℃〜1600℃で焼成する工程、
    により調製される平均粒子径が3〜30μmの非水電解質二次電池負極用炭素質材料。
  4. 粒子径1μm以下の粒子を3.0体積%以下に除去する工程を粉砕工程(2)と同時か、又は粉砕工程(2)より後に含む請求項3に記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料。
  5. 比表面積が1〜50m/gであり、カリウム元素含有量が0.1重量%以下、及び鉄元素含有量が0.02重量%以下であることを特徴とする、請求項3又は4に記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料。
  6. 請求項3〜5のいずれか一項に記載の炭素質材料を含む非水電解質二次電池負極電極。
  7. 非水電解質二次電池負極電極は、金属集電板に対し、活物質層が片面又は両面に存在し、片面の活物質層の厚みが80μm以下である、請求項6に記載の非水電解質二次電池負極電極。
  8. 請求項3〜5のいずれか一項に記載の負極用炭素質材料を含む非水電解質二次電池。
  9. 請求項6又は7に記載の負極電極を含む、非水電解質二次電池。
  10. 請求項8又は9に記載の非水電解質二次電池を有する車両。
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