JP5582980B2 - 自動車衝突模擬試験装置 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車を破壊することなく衝突時に客室に発生する加速度を再現し、二次衝突による乗員の傷害度合いを再現する自動車衝突模擬試験装置に関するものである。
一般に、自動車の衝突試験は、クラッシュ量や客室の残存空間量などの物理量と乗員傷害値とを評価するための実車衝突試験があるが、実車にダミーを乗せて所定速度でバリヤに衝突させる方法は破壊試験であり、非常にコストを要する。そのため、ダミーやエアバッグ等を搭載したホワイトボディ、模擬車体等を台車上に取付け、この台車に対して実車衝突時とほぼ同様の加速度を与えることで、供試体に作用する衝撃度を非破壊的に再現して乗員傷害値を評価し、エアバッグなどの安全装置を開発するための自動車衝突模擬試験が行われる。
このような自動車衝突模擬試験装置としては、例えば、下記特許文献1、2に記載されたものがある。この各特許文献に記載された荷重負荷試験方法では、スレッド上に座席を固定してダミーを座らせ、このダミーの足が載るトーボードをトーボード支持台に回動自在に支持すると共に、油圧シリンダ(トーボード駆動装置)により前側を上下に傾動可能とし、また、トーボード支持台を案内部材によりスライド自在に支持すると共に、油圧シリンダ(トーボード駆動装置)により前後に移動可能としている。従って、自動車のイントルージョン試験を行う場合、実際の自動車の衝突データに基づいてトーボード駆動装置を制御し、トーボードの傾動や移動を行っている。
特開2002−062230号公報 米国特許第7415903号明細書
上述した従来の自動車衝突模擬試験装置にあっては、トーボードが前後に傾動自在に支持すると共に、前後に移動自在に支持されており、イントルージョン試験時には、トーボード駆動装置によりこのトーボードを傾動したり移動したりして実際の衝突試験を再現している。即ち、従来、自動車の前面衝突時に、トーボードは、上側が後方に折れ曲がると共に後方に移動するものと考えられている。しかし、実際に、トーボードがこのように変形するとは限らず、更なる高精度な再現性が望まれている。
本発明は上述した課題を解決するものであり、再現性を向上可能とする自動車衝突模擬試験装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するための本発明の自動車衝突模擬試験装置は、水平な前後方向に沿って移動自在に支持されて供試体を搭載可能なスレッドと、前上方に延出する傾斜部と後方に延出する水平部とを有して中間部が前記スレッドの前部における水平な左右方向に沿う軸心により回動自在に支持されるトーボードと、前記トーボードにおける前記傾斜部の後方及び前記水平部の下方に向けて加速度を付与する加速度装置と、を備えることを特徴とするものである。
従って、加速度装置によりトーボードにおける傾斜部の後方に向けて加速度を付与可能とすると共に、水平部の下方に向けて加速度を付与可能とすることで、トーボードの傾斜部と水平部を同時に動作させることとなり、自動車衝突模擬試験における再現性を向上することができる。
本発明の自動車衝突模擬試験装置では、前記加速度装置は、前記傾斜部の先端部が後方に移動する共に前記水平部の先端部が下方に移動する回転力を付与することを特徴としている。
従って、実際の自動車衝突時におけるトーボードの変形を高精度に再現することができる。
本発明の自動車衝突模擬試験装置では、前記トーボードは、中間部を介して前記傾斜部と前記水平部が一体に回動可能に支持されることを特徴としている。
従って、傾斜部と水平部を一体としてトーボードを構成することで、構造の簡素化を可能とすることができる。
本発明の自動車衝突模擬試験装置では、前記傾斜部は、基端部が前記スレッドに回動自在に支持されて先端部が前上方側に所定角度で延出されると共に、第1加速度装置により加速度が付与可能である一方、前記水平部は、基端部が前記スレッドに回動自在に支持されて先端部が後方に延出されると共に、第2加速度装置により加速度が付与可能であることを特徴としている。
従って、傾斜部と水平部を独立してトーボードを構成し、この傾斜部と水平部に対して異なる加速度装置により異なる加速度を付与可能に構成することで、自動車衝突模擬試験における更なる再現性の向上を可能とすることができる。
本発明の自動車衝突模擬試験装置では、前記スレッドの上面部に前後方向に沿って移動台が移動自在に支持され、該移動台に前記トーボードが回動自在に支持され、前記移動台は第3加速度装置により加速度が付与可能であることを特徴としている。
従って、第3加速度装置によりトーボードに対して前後方向に沿って加速度を付与可能とすることで、トーボードの傾斜部と水平部を同時に動作させることとなり、自動車衝突模擬試験における再現性を向上することができる。
本発明の自動車衝突模擬試験装置によれば、加速度装置によりトーボードにおける傾斜部の後方及び水平部の下方に向けて加速度を付与可能とするので、トーボードの傾斜部と水平部を同時に動作させることとなり、自動車衝突模擬試験における再現性を向上することができる。
図1は、本発明の実施例1に係る自動車衝突模擬試験装置を表す側面図である。 図2は、実施例1の自動車衝突模擬試験装置を表す平面図である。 図3は、実施例1の自動車衝突模擬試験装置におけるイントルージョン試験装置を表す概略図である。 図4は、イントルージョン試験装置におけるトーボードの支持構造を表す概略図である。 図5は、本発明の実施例2に係る自動車衝突模擬試験装置におけるトーボードの支持構造を表す概略図である。 図6は、本発明の実施例3に係る自動車衝突模擬試験装置におけるトーボードの支持構造を表す概略図である。
以下に添付図面を参照して、本発明に係る自動車衝突模擬試験装置の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。
図1は、本発明の実施例1に係る自動車衝突模擬試験装置を表す側面図、図2は、実施例1の自動車衝突模擬試験装置を表す平面図、図3は、実施例1の自動車衝突模擬試験装置におけるイントルージョン試験装置を表す概略図、図4は、イントルージョン試験装置におけるトーボードの支持構造を表す概略図である。
実施例1の自動車衝突模擬試験装置において、図1及び図2に示すように、スレッド15は、所定厚さを有する板材を有する骨組材であって、平面視が前後方向(図1及び図2にて、左右方向)に長い矩形状をなしている。床面12には、所定間隔を有して左右一対のレール13a,13bが前後方向に沿って付設されており、スレッド15が下面に固定されたスライダ14a,14bを介してレール13a,13bに沿って前後移動自在に支持されている。
また、スレッド15は、上面に供試体16を搭載可能となっている。この供試体16は、本実施例では、骨格のみを有する自動車、所謂、ホワイトボディであって、シート16a、ステアリング16b、エアバッグ16cなどの装備品が装着されると共に、ダミー16dが装着されている。この供試体16は、スレッド15における所定の位置に載置され、図示しない固定具により固定される。
なお、ここで、供試体16は、ホワイトボディであり、シート16a、ステアリング16b、エアバッグ16c、ダミー16dを含むものであるが、ホワイトボディ、シート16a、ステアリング16b、エアバッグ16c、ダミー16dを単体で供試体と称する場合もある。
また、本実施例にて、供試体16は、スレッド15上に搭載されることから、この供試体16である自動車の前方(図1及び図2にて、左方向)をスレッド15の前方とし、供試体16である自動車の後方(図1及び図2にて、右方向)をスレッド15の後方として説明する。また、供試体16である自動車の側方、つまり、左右方向(図1及び図2にて、上方向及び下方向)をスレッド15の側方、つまり、左右方向として説明する。
本実施例の自動車衝突模擬試験装置にて、スレッド15の前方側の床面12には、スレッド15に対して後方加速度を付与するスレッド加速度装置としての発射装置17が設置されている。この発射装置17は、油圧制御(または、空圧制御、摩擦制御など)されることで、スレッド15側に打ち出されるピストン17aを有している。そのため、発射装置17は、ピストン17aの先端がスレッド15の前端に接触した状態で、ピストン17aを打ち出すことで、このスレッド15に対して後方への衝撃力、つまり、加速度を与えることができる。即ち、発射装置17によりスレッド15に後方加速度を付与することは、スレッド15上の供試体16が前面衝突したときに後方加速度を受けることと同様の形態となり、模擬的に自動車衝突を発生させることができる。
また、スレッド15上の前部には、供試体16の前方に位置してイントルージョン装置21が設けられている。このイントルージョン装置21において、図3及び図4に示すように、スレッド15上には、取付台22が固定され、この取付台22にブラケッド23により支持軸24が装着されている。この支持軸24は、スレッド15の移動方向である前後方向に直交する水平な左右方向に沿って配置されている。
トーボード25は、中間部が所定角度で折り曲げられた板形状をなし、折り曲げ部となる中間部が支持軸24により回動自在に支持されている。このトーボード25は、スレッド15の前方側にある傾斜部25aと、スレッド15の後方側にある水平部25bとを有しており、傾斜部25aと水平部25bが中間部で連結される一体形状となっている。傾斜部25aは、中間部(支持軸24)からスレッド15の前上方側に延出され、スレッド15の上面に対して所定角度θ1に設定されている。一方、水平部25bは、中間部(支持軸24)からスレッド15の後方側に延出され、スレッド15の上面と略平行に設定されている。この場合、トーボード25にて、傾斜部25aがエンジンルームと乗員ルームとを仕切るトーボードに対応し、水平部25bが乗員ルームのフロアを構成するフロアボードに対応する。
スレッド15上の前部には、トーボード25の前方に位置して、トーボード25における傾斜部25aの後方及び水平部25bの下方に向けて加速度を付与するトーボード加速度装置としての発射装置26が配置されている。この発射装置26は、油圧制御(または、空圧制御、摩擦制御など)されることで、トーボード25側に打ち出されるピストン26aを有している。そして、この発射装置26は、基端部がスレッド15上に固定された固定ブロック27に連結ピン28により回動自在に連結され、ピストン26aの先端部がトーボード25における傾斜部25aの先端部に連結ピン29により回動自在に連結されている。
そのため、発射装置26は、ピストン26aを打ち出すことで、このトーボード25に対して後方へ回動する衝撃力、つまり、加速度を与えることができる。即ち、発射装置26は、トーボード25に対して、傾斜部25aの先端部が後方に移動する共に、水平部25bの先端部が下方に移動するような回転力を付与することができる。
この発射装置26は、発射装置17によりスレッド15に後方加速度を付与するときに同時に作動し、トーボード25に後方加速度を付与する。つまり、発射装置17によりスレッド15に加速度を付与し、スレッド15上の供試体16が前面衝突したときに後方加速度を受けたとき、発射装置26によりトーボード25に加速度を付与することで、スレッド15上のトーボード25が前面衝突による後方加速度(変形)を受けたことと同様の形態となり、模擬的に自動車衝突を発生させることができる。
ここで、上述した実施例1の自動車衝突模擬試験装置の作動について説明する。
実施例1の自動車衝突模擬試験装置により自動車衝突試験を実施する場合、事前に、スレッド15やトーボード25の設計データ(重量や重心位置など)、実車衝突試験で得られた衝突時間に対する加速度変化の各データから、この加速度の時間的変化(波形)を再現できるように、発射装置17,26におけるピストン17a,26aの打ち出し力、スレッド15上の供試体16の位置を所定値に設定しておく。
そして、まず、図1乃至図3に示すように、発射装置17を油圧制御することで、ピストン17aを打ち出し、停止状態にあるスレッド15に対して目標前後加速度(スレッド15、供試体16における後方加速度)を与え、衝突時を模擬する加速度を供試体16に与える。すると、スレッド15は、与えられた目標前後加速度に伴って所定距離だけ後方に移動する。
また、発射装置17と同時に発射装置26を油圧制御することで、ピストン26aを打ち出し、停止状態にあるトーボード25に対して目標前後加速度(トーボード25における後方加速度)を与え、衝突時を模擬する加速度をトーボード25に与える。すると、トーボード25は、与えられた目標前後加速度に伴って所定角度だけ後方に回動する。即ち、図4に二点鎖線で示すように、トーボード25は、傾斜部25aが中間部(支持軸24)を支点として立ち上がり、角度θ1が大きくなると共に、水平部25bが中間部(支持軸24)を支点として下降し、角度θ2が発生する。
このように実施例1の自動車衝突模擬試験装置にあっては、供試体16を搭載可能なスレッド15を水平な前後方向に沿って移動自在に支持し、前上方に延出する傾斜部25aと後方に延出する水平部25bとを有するトーボード25の中間部をスレッド15の前部に支持軸24により回動自在に支持すると共に、発射装置26によりトーボード25における傾斜部25aの後方及び水平部25bの下方に向けて加速度を付与可能としている。
従って、発射装置26によりトーボード25における傾斜部25aの後方に向けて加速度を付与可能とすると共に、水平部25bの下方に向けて加速度を付与可能とすることで、トーボード25の傾斜部25aと水平部25bを同時に動作させることとなり、自動車衝突模擬試験における再現性を向上することができる。
また、実施例1の自動車衝突模擬試験装置では、発射装置26により、傾斜部25aの先端部が後方に移動する共に、水平部25bの先端部が下方に移動するように回転力を付与可能としている。従って、実際の自動車衝突時におけるトーボード25の変形を高精度に再現することができる。
また、実施例1の自動車衝突模擬試験装置では、トーボード25の中間部を介して傾斜部25aと水平部25bを一体に連結して支持軸24により回動可能に支持している。従って、傾斜部25aと水平部25bを一体としてトーボード25を構成することで、構造の簡素化を可能とすることができる。
図5は、本発明の実施例2に係る自動車衝突模擬試験装置におけるトーボードの支持構造を表す概略図である。なお、本実施例の自動車衝突模擬試験装置の基本的な構成は、上述した実施例1とほぼ同様の構成であり、図1及び図2を用いて説明すると共に、この実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
実施例2の自動車衝突模擬試験装置において、図1及び図2、図5に示すように、スレッド15上の前部には、供試体16の前方に位置してイントルージョン装置31が設けられている。このイントルージョン装置31において、スレッド15上には、ガイドレール32が敷設され、移動台33が前後移動自在に支持され、この移動台33にブラケッド23により支持軸24が装着されている。トーボード25は、中間部が支持軸24により回動自在に支持されている。このトーボード25は、スレッド15の前方側にある傾斜部25aと、スレッド15の後方側にある水平部25bとを有しており、傾斜部25aと水平部25bが中間部で連結される一体形状となっている。
スレッド15上の前部には、トーボード25の前方に位置して、トーボード25における傾斜部25aの後方及び水平部25bの下方に向けて加速度を付与する第1発射装置26が配置されている。この第1発射装置26は、油圧制御(または、空圧制御、摩擦制御など)されることで、トーボード25側に打ち出されるピストン26aを有し、ピストン26aの先端部が傾斜部25aに連結されている。そのため、発射装置26は、ピストン26aを打ち出すことで、このトーボード25に対して後方へ回動する衝撃力、つまり、加速度を与えることができる。
また、スレッド15上の前部には、トーボード25の前方に位置して、このトーボード25の後方に向けて加速度を付与するトーボード加速度装置としての第3発射装置34が配置されている。この第3発射装置34は、油圧制御(または、空圧制御、摩擦制御など)されることで、トーボード25側に打ち出されるピストン34aを有している。そして、この第3発射装置34は、基端部がスレッド15上に回動自在に連結され、ピストン34aの先端部が移動台33に連結ピン35により回動自在に連結されている。そのため、第3発射装置34は、ピストン34aを打ち出すことで、このトーボード25に対して後方へ移動する衝撃力、つまり、加速度を与えることができる。
この第3発射装置34は、各発射装置17,26によりスレッド15やトーボード25に後方加速度を付与するときに同時に作動し、トーボード25に後方加速度を付与する。つまり、発射装置17によりスレッド15に加速度を付与し、スレッド15上の供試体16が前面衝突したときに後方加速度を受けたとき、第1、第3発射装置26,34によりトーボード25に加速度を付与することで、スレッド15上のトーボード25が前面衝突による後方加速度(変形)を受けたことと同様の形態となり、模擬的に自動車衝突を発生させることができる。
即ち、発射装置17を油圧制御することで、ピストン17aを打ち出し、停止状態にあるスレッド15に対して目標前後加速度(スレッド15、供試体16における後方加速度)を与え、衝突時を模擬する加速度を供試体16に与える。すると、スレッド15は、与えられた目標前後加速度に伴って所定距離だけ後方に移動する。
また、発射装置17と同時に第1、第3発射装置26,34を油圧制御することで、ピストン26a,34aを打ち出し、停止状態にあるトーボード25に対して目標前後加速度(トーボード25における後方加速度)を与え、衝突時を模擬する加速度をトーボード25に与える。すると、トーボード25は、与えられた目標前後加速度に伴って所定角度だけ後方に回動すると共に、所定距離だけ後方に移動する。即ち、トーボード25は、傾斜部25aが中間部(支持軸24)を支点として立ち上がると共に、水平部25bが中間部(支持軸24)を支点として下降し、同時に、トーボード25が後退する。
このように実施例2の自動車衝突模擬試験装置にあっては、第1発射装置26によりトーボード25における傾斜部25aの後方及び水平部25bの下方に向けて加速度を付与可能とすると共に、第3発射装置34により移動台33を介してトーボード25の後方に向けて加速度が付与可能としている。
従って、第3発射装置34によりトーボード25の後方に向けて加速度を付与可能とすることで、トーボード25の傾斜部25aと水平部25bを同時に移動させることとなり、自動車衝突模擬試験における再現性を向上することができる。
図6は、本発明の実施例3に係る自動車衝突模擬試験装置におけるトーボードの支持構造を表す概略図である。なお、本実施例の自動車衝突模擬試験装置の基本的な構成は、上述した実施例1とほぼ同様の構成であり、図1及び図2を用いて説明すると共に、この実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
実施例3の自動車衝突模擬試験装置において、図1及び図2、図6に示すように、スレッド15上の前部には、供試体16の前方に位置してイントルージョン装置41が設けられている。このイントルージョン装置41において、スレッド15上には、ガイドレール32が敷設され、移動台33が前後移動自在に支持され、この移動台33にブラケッド23により支持軸24が装着されている。トーボード42は、中間部が支持軸24により回動自在に支持されている。
このトーボード42は、スレッド15の前方側にある傾斜部42aと、スレッド15の後方側にある水平部42bとを有しており、傾斜部42aと水平部42bは端部が支持軸24に支持されて独立して回動自在となっている。即ち、傾斜部42aは、基端部が支持軸24により回動自在に支持されて先端部が前上方側に所定角度で延出されると共に、第1発射装置26により加速度が付与可能となっている。一方、水平部42bは、基端部が支持軸24により回動自在に支持されて先端部が後方に延出されると共に、第2発射装置43により加速度が付与可能となっている。
この第1発射装置26は、油圧制御(または、空圧制御、摩擦制御など)されることで、トーボード42側に打ち出されるピストン26aを有し、ピストン26aの先端部が傾斜部42aの先端部に連結ピン29により連結されている。そのため、第1発射装置26は、ピストン26aを打ち出すことで、このトーボード42の傾斜部42aに対して後方へ回動する衝撃力、つまり、加速度を与えることができる。また、第2発射装置43は、油圧制御(または、空圧制御、摩擦制御など)されることで、トーボード42側に打ち出されるピストン43aを有し、ピストン43aの先端部が水平部42bの先端部に連結ピン44により連結されている。そのため、第2発射装置43は、ピストン43aを打ち出すことで、このトーボード42の水平部42bに対して下方へ回動する衝撃力、つまり、加速度を与えることができる。
この第1、第2発射装置26,43は、発射装置17によりスレッド15に後方加速度を付与するときに同時に作動し、トーボード42に後方加速度を付与する。つまり、発射装置17によりスレッド15に加速度を付与し、スレッド15上の供試体16が前面衝突したときに後方加速度を受けたとき、第1、第2発射装置26,43によりトーボード42に加速度を付与することで、スレッド15上のトーボード42が前面衝突による後方加速度(変形)を受けたことと同様の形態となり、模擬的に自動車衝突を発生させることができる。
また、スレッド15上の前部には、トーボード42の前方に位置して、このトーボード42の後方に向けて加速度を付与する第3発射装置34が配置されている。この第3発射装置34は、ピストン34aを有しており、このピストン34aを打ち出すことで、トーボード42に対して後方へ移動する衝撃力、つまり、加速度を与えることができる。
従って、発射装置17を油圧制御することで、ピストン17aを打ち出し、停止状態にあるスレッド15に対して目標前後加速度(スレッド15、供試体16における後方加速度)を与え、衝突時を模擬する加速度を供試体16に与える。すると、スレッド15は、与えられた目標前後加速度に伴って所定距離だけ後方に移動する。
また、発射装置17と同時に第1〜第3発射装置26,43,34を油圧制御することで、ピストン26a,43a,34aを打ち出し、停止状態にあるトーボード42に対して目標前後加速度(トーボード42における後方加速度)を与え、衝突時を模擬する加速度をトーボード42に与える。すると、トーボード42は、与えられた目標前後加速度に伴って所定角度だけ後方に回動すると共に、所定距離だけ後方に移動する。即ち、トーボード42は、傾斜部42aが支持軸24を支点として立ち上がると共に、水平部42bが支持軸24を支点として下降し、同時に、トーボード42が後退する。
このように実施例3の自動車衝突模擬試験装置にあっては、第1発射装置26によりトーボード43における傾斜部42aの後方に向けて加速度を付与可能とすると共に、第2発射装置42によりトーボード42における水平部42bの下方に向けて加速度を付与可能としている。
従って、第1、第2発射装置26,43によりトーボード42の傾斜部42aと水平部42bに対して異なる加速度を付与可能とすることで、トーボード42の傾斜部42aと水平部42bを同時に、且つ、独立して移動させることとなり、自動車衝突模擬試験における再現性を向上することができる。
なお、上述した各実施例の自動車衝突模擬試験装置では、スレッド15上に、供試体16として、ホワイトボディ、シート16a、ステアリング16b、エアバッグ16c、ダミー16dを搭載したが、供試体16として、ホワイトボディを搭載せずに、シート16aやダミー16dだけを搭載してもよい。また、イントルージョン装置21,31,41にて、発射装置26,34,43の各ピストン26a,34a,43aの先端部をトーボード25,42に連結したが、発射装置17のように、各ピストン26a,34a,43aの先端部をトーボード25,42に突き当てるようにしてもよい。
本発明に係る自動車衝突模擬試験装置は、トーボードにおける傾斜部の後方及び水平部の下方に向けて加速度を付与可能とすることで、自動車衝突模擬試験の再現性を向上可能とするものであり、スレッドが一方向に加減速する通常の前面衝突用のスレッドだけでなく、回転運動を伴うピッチング用スレッドやヨーイング用スレッドなどいずれの自動車衝突模擬試験装置にも適用することができる。
12 床面
15 スレッド
16 供試体
17 発射装置(スレッド加速度装置)
21,31,41 イントルージョン装置
24 支持軸
25,42 トーボード
25a 傾斜部
25b 水平部
26 発射装置、第1発射装置(トーボード加速度装置)
33 移動台
34 第3発射装置(トーボード加速度装置)
43 第2発射装置(トーボード加速度装置)

Claims (5)

  1. 水平な前後方向に沿って移動自在に支持されて供試体を搭載可能なスレッドと、
    前上方に延出する傾斜部と後方に延出する水平部とを有して中間部が前記スレッドの前部における水平な左右方向に沿う軸心により回動自在に支持されるトーボードと、
    前記トーボードにおける前記傾斜部の後方及び前記水平部の下方に向けて加速度を付与する加速度装置と、
    を備えることを特徴とする自動車衝突模擬試験装置。
  2. 前記加速度装置は、前記傾斜部の先端部が後方に移動する共に前記水平部の先端部が下方に移動する回転力を付与することを特徴とする請求項1に記載の自動車衝突模擬試験装置。
  3. 前記トーボードは、中間部を介して前記傾斜部と前記水平部が一体に回動可能に支持されることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車衝突模擬試験装置。
  4. 前記傾斜部は、基端部が前記スレッドに回動自在に支持されて先端部が前上方側に所定角度で延出されると共に、第1加速度装置により加速度が付与可能である一方、前記水平部は、基端部が前記スレッドに回動自在に支持されて先端部が後方に延出されると共に、第2加速度装置により加速度が付与可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車衝突模擬試験装置。
  5. 前記スレッドの上面部に前後方向に沿って移動台が移動自在に支持され、該移動台に前記トーボードが回動自在に支持され、前記移動台は第3加速度装置により加速度が付与可能であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の自動車衝突模擬試験装置。
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