JP5578141B2 - 車両用空調装置 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば燃料電池車やハイブリッド車の廃熱を空調装置の暖房に活用する車両用空調装置に関するものである。
通常、燃料電池には、燃料電池自身の特性に応じた最適な動作温度(例えば、最大発電効率を発揮する温度)の範囲があり、燃料電池の動作温度を最適な動作温度の範囲内に制御するために、燃料電池の冷却液の温度を所定の範囲内に制御することが望まれている。
このことから、例えば特許文献1の燃料電池システムでは、車両の暖房に際して、燃料電池冷却回路を空調用回路に接続して、燃料電池冷却回路の冷却水を暖房に利用するときには、燃料電池システムにおける発熱量と放熱量とがバランスされるように制御している。例えば、発熱量が少ない場合であれば電気ヒータを作動させて、発熱量の不足分を電気ヒータによって補い、燃料電池冷却回路の冷却水温度が大きく変動(大きく低下)しないようにしている。更に、燃料電池出口側の冷却水温度を検出し、この出口温度に基づいて、燃料電池システムにおける発熱量の調整、あるいは燃料電池冷却回路と空調用回路の接続、断続を制御し、燃料電池冷却回路の冷却水の温度が所定の範囲内に制御されるようにしている。
また、従来の車両用空調装置として、例えば特許文献2に示されたものが知られている。特許文献2の車両用空調装置は、燃料電池を走行用駆動源とする車両に適用されており、燃料電池の冷却水を加熱源として空調用空気を加熱するヒータコアと、ヒートポンプ装置の高温冷媒を加熱源として空調用空気を加熱する第1加熱用室内器、および第2加熱用室内器とを備えている。ヒータコア、第1加熱用室内器、および第2加熱用室内器は、空調ケース内において空調用空気の上流側から下流側に向けて、第2加熱用室内器、ヒータコア、第1加熱用室内器の順に配設されている。
燃料電池の冷却水温度が基準冷却水温度より高く、車室内の暖房を行うときには(暖房運転モード)、以下のように空調空気の加熱を行うようにしている。即ち、冷却水温度が車室内吹出空気の目標吹出温度+5℃を上回っていると、ヒートポンプ装置を停止し、ヒータコアのみで空調用空気を加熱するようにしている。
一方、冷却水温度が車室内吹出空気の目標吹出温度+5℃を下回っていると、ヒートポンプ装置を作動させて、第1、第2加熱用室内器、およびヒータコアを用いて空調用空気を加熱するようにしている。この場合では、ヒータコアにより加熱された空調用空気を第1加熱用室内器によって更に加熱することができ、冷却水温度が低い場合でも、冷却水を暖房用熱源として利用できるようにしている。
また、燃料電池の冷却水温度が基準冷却水温度よりも低く、燃料電池の暖機を行うときには(暖機運転モード)、第2加熱用室内器に高温の冷媒を流すことで、下流側のヒータコア、つまり燃料電池用の冷却水を加熱するようにしている。
特開2010−282808号公報 特開2009−51475号公報
しかしながら、特許文献1の燃料電池システムでは、燃料電池システムにおける発熱量に不足がある場合は、電気ヒータによって補うようにしているので、効率が悪く、また燃料電池の電力を使用することから車両の航続距離が低下してしまうという問題があった。
また、特許文献2の車両用空調装置では、加熱用室内器を2つ必要としており、空調ケース内に搭載することが困難であるという問題があった。
また、特許文献2の車両用空調装置では、燃料電池の冷却水の温度を所定の範囲内に制御するという思想は無く、車室内吹出空気の目標吹出温度を満たすように、ヒータコアと第1、第2加熱用室内器との組み合わせを決定しつつ、ヒータコアから放熱させるようにしているので、ヒータコアにおける過度な放熱を伴う場合には、冷却水の温度を一定に保つことができない。
また、特許文献2の車両用空調装置における暖機運転モードでは、第2加熱用室内器によるヒータコアの冷却水の加熱は可能となるものの、空調空気は、第2加熱用室内器によって加熱された後に、ヒータコアを通過して温度低下してしまうので、冷えた空調空気が車室内に吹出されることとなり、乗員に対する快適性を阻害してしまう。
本発明の目的は、上記問題に鑑み、燃料電池における少ない廃熱を有効に利用しつつ、簡素な構成で好適な空調を可能とし、燃料電池の温度を一定に保つことのできる車両用空調装置を提供することにある。
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
請求項1に記載の発明では、車両用空調装置において、燃料電池車の燃料電池(111)を冷却する冷却回路(110)の冷却水を加熱源として空調用空気を加熱するヒータコア(116)と、
ヒータコア(116)に対して、空調用空気の流れ方向の上流側に配設されて、ヒートポンプサイクル(120)を循環する冷媒を加熱源として空調用空気を加熱する加熱用熱交換器(122)と、
冷却水の温度(TFC)に応じて、加熱用熱交換器(122)によって加熱される空調用空気の温度目標値として設定される目標加熱温度(TAVO)を変化させるようにヒートポンプサイクル(120)の作動を制御する制御部(140)とを備え
制御部(140)は、冷却水の温度(TFC)がヒータコア(116)による暖房が可能となる暖房可能温度(TFC SET)より高いときに、少なくとも冷却水の第1所定温度範囲(β)において、冷却水の温度(TFC)が高くなるほど、目標加熱温度(TAVO)をより低く設定すると共に、冷却水の温度(TFC)が暖房可能温度(TFC SET)より低いときに、少なくとも冷却水の第2所定温度範囲(−β)において、冷却水の温度(TFC)が低くなるほど、目標加熱温度(TAVO)をより高く設定し、ヒータコア(116)と加熱用熱交換器(122)との両者による協調運転制御を実行し、
更に、目標加熱温度(TAVO)が暖房可能温度(TFC SET)より高くなる領域においては、加熱用熱交換器(122)で加熱された空調用空気によってヒータコア(116)の冷却水を加熱することを特徴としている。
この発明によれば、空調用空気を加熱する加熱手段として、ヒータコア(116)と加熱用熱交換器(122)とが設けられている。そして、制御部(140)は、冷却水の温度(TFC)に応じて、加熱用熱交換器(122)における目標加熱温度(TAVO)を変化させるようにヒートポンプサイクル(120)の作動を制御するようにしている。制御部(140)は、例えば冷却水の温度(TFC)に応じて得られるヒータコア(116)の加熱能力に対して、加熱用熱交換器(122)における目標加熱温度(TAVO)を変化させることで、ヒータコア(116)の加熱能力不足分を加熱用熱交換器(122)によって補うことができ、必要とされる暖房性能をヒータコア(116)と加熱用熱交換器(122)とによって確保することが可能となる。
よって、ヒータコア(116)においては、冷却水の温度(TFC)に応じた分の空調用空気の加熱をすれば良いので、暖房のために過度の熱量を冷却水から放出することがなく、冷却水の温度(TFC)を一定に保つことができる。つまり、燃料電池(111)の温度を一定に保つことができる。
尚、例えば冷却水の温度(TFC)によっては、ヒータコア(116)による加熱能力が充分に得られない場合であっても、加熱用熱交換器(122)における目標加熱温度(TAVO)を変化させることで、ヒータコア(116)内の冷却水を、加熱用熱交換器(122)によって加熱された空調用空気によって加熱しつつ、暖房性能を確保することができる。
このように、冷却水の温度(TFC)に応じて目標加熱温度(TAVO)を変化させることで、ヒータコア(116)と加熱用熱交換器(122)との2つの加熱手段によって必要とされる暖房性能を確保することができるので、3つの加熱手段(2つの加熱用室内器と1つのヒータコア)を必要とする特許文献2と比べて、簡素な構成とすることができる。
よって、燃料電池(111)における少ない廃熱を有効に利用しつつ、簡素な構成で好適な空調を可能とし、燃料電池(111)の温度を一定に保つことのできる車両用空調装置を提供することができる。
上記の対応にあたっては、制御部(140)は、冷却水の温度(TFC)がヒータコア(116)による暖房が可能となる暖房可能温度(TFC SET)より高いときに、少なくとも冷却水の第1所定温度範囲(β)において、冷却水の温度(TFC)が高くなるほど、目標加熱温度(TAVO)をより低く設定すると共に、冷却水の温度(TFC)が暖房可能温度(TFC SET)より低いときに、少なくとも冷却水の第2所定温度範囲(−β)において、冷却水の温度(TFC)が低くなるほど、目標加熱温度(TAVO)をより高く設定し、ヒータコア(116)と加熱用熱交換器(122)との両者による協調運転制御を実行し、
更に、目標加熱温度(TAVO)が暖房可能温度(TFC SET)より高くなる領域においては、加熱用熱交換器(122)で加熱された空調用空気によってヒータコア(116)の冷却水を加熱するようにしている。
これにより、制御部(140)は、冷却水の温度(TFC)が暖房可能温度(TFC SET)より高いときに、少なくとも第1所定温度範囲(β)において冷却水の温度(TFC)が高くなるほど目標加熱温度(TAVO)をより低く設定することにより、主にヒータコア(116)による加熱能力を活用して、不足分のみを加熱用熱交換器(122)によって補うことで、必要とされる暖房性能をヒータコア(116)と加熱用熱交換器(122)とによって確保することが可能となる。
逆に、制御部(140)は、冷却水の温度(TFC)が暖房可能温度(TFC SET)より低いときに、少なくとも第2所定温度範囲(−β)において冷却水の温度(TFC)が低くなるほど目標加熱温度(TAVO)をより高く設定することにより、ヒータコア(116)によって得られる加熱能力をそのまま活用しつつも、不足となる分については加熱用熱交換器(122)によって補うことで、必要とされる暖房性能をヒータコア(116)と加熱用熱交換器(122)とによって確保することが可能となる。
請求項2に記載の発明では、燃料電池車の燃料電池(111)、あるいはハイブリッド車のエンジンを冷却する冷却回路(110)の冷却水を加熱源として空調用空気を加熱するヒータコア(116)と、
ヒータコア(116)に対して、空調用空気の流れ方向の上流側に配設されて、ヒートポンプサイクル(120)を循環する冷媒を加熱源として空調用空気を加熱する加熱用熱交換器(122)と、
冷却水の温度(TFC)に応じて、加熱用熱交換器(122)によって加熱される空調用空気の温度目標値として設定される目標加熱温度(TAVO)を変化させるようにヒートポンプサイクル(120)の作動を制御する制御部(140)とを備え、
制御部(140)は、冷却水の温度(TFC)が、ヒータコア(116)による暖房が可能となる暖房可能温度(TFC SET)より低いときに、目標加熱温度(TAVO)を冷却水の温度(TFC)と同じ値に設定することを特徴としている。
この発明によれば、加熱用熱交換器(122)によって加熱される空調用空気の温度と、ヒータコア(116)における冷却水の温度(TFC)との間における温度差を無くすことができる。よって、冷却水の温度(TFC)が、暖房可能温度(TFC SET)より低い場合に、ヒータコア(116)における冷却水の熱が空調用空気に放出されることがなく、冷却水の熱を冷却回路(110)内に維持することができる。つまり、燃料電池(111)あるいはエンジンの温度を一定に保つことができる。
請求項3に記載の発明では、冷却回路(110)には、冷却水がヒータコア(116)をバイパスするバイパス流路(117)が設けられており、
制御部(140)は、冷却水の温度(TFC)が暖房可能温度(TFC SET)より低いときに、冷却水をバイパス流路(117)に流すことを特徴としている。
この発明によれば、冷却水の温度(TFC)が、暖房可能温度(TFC SET)より低いときに、冷却回路(110)内において冷却水をバイパス流路(117)に流すことで、ヒータコア(116)には、冷却水が流れない形とすることができる。よって、空調用空気の加熱は加熱用熱交換器(122)のみによって行われることとなり、ヒータコア(116)から冷却水の熱が空調用空気に放出されることがなく、冷却水の温度を一定に保つことができる。つまり、燃料電池(111)あるいはエンジンの温度を一定に保つことができる。
尚、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
第1実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す構成図である。 暖房運転時に制御装置が実行する制御フローチャートである。 冷却水の暖房可能判定を行うための判定マップである。 強調制御運転を実行する際に吹出し温度目標値を決定するための決定マップである。 暖機運転時の吹出し温度目標値を決定するための決定マップである。 第2実施形態における吹出し温度目標値を決定するための決定マップである。 第3実施形態における吹出し温度目標値を決定するための決定マップである。
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態における車両用空調装置100について、図1〜図4を用いて説明する。図1は車両用空調装置100の全体構成を示す構成図、図2は暖房運転時に制御装置140が実行する制御フローチャート、図3は冷却水の暖房可能判定を行うための判定マップ、図4は強調制御運転を実行する際に吹出し温度目標値TAVOを決定するための決定マップである。
図1に示すように、車両用空調装置100は、例えば走行用モータを走行用駆動源とし、走行用モータに対する電力供給手段として燃料電池111を備える燃料電池車(電気自動車EV)に搭載される空調装置である。車両用空調装置100は、燃料電池111を冷却する冷却回路110内に設けられるヒータコア116、ヒートポンプサイクル120、室内ユニット130、および制御装置140等を備えている。
冷却回路110は、燃料電池111を冷却するための回路であり、冷却水が循環する循環流路110aに、燃料電池111、ポンプ112、ラジエータ113、バイパス流路114、切替え弁115、ヒータコア116、バイパス流路117、切替え弁118、および水温センサ119等が設けられて形成されている。
燃料電池111は、水素と酸素との電気化学反応を利用して電力を発生する電池である。燃料電池111は、プラス極とマイナス極との間に高分子電解質膜が挟まれて成るセルが複数直列に接続されて形成される燃料電池スタックが、外部ケーシング内に収容されて形成されている。燃料電池111は、発電効率確保のために運転中において一定温度(例えば80℃以下)に維持される必要がある。燃料電池111の外部ケーシング内には冷却媒体としての冷却水が流通できるようになっており、流通する冷却水によって、燃料電池111の運転中の温度が一定温度以下に調節(冷却)されるようになっている。
ポンプ112は、図示しない電動モータによって駆動される電動式の流体機械である。ポンプ112は、循環流路110aにおけるラジエータ113あるいはバイパス流路114、更にヒータコア116あるいはバイパス流路117に、冷却水を循環させるようになっている。
ラジエータ113は、燃料電池111によって温度上昇した冷却水を冷却する放熱用熱交換器であり、例えば、グリルの後方となるエンジンルーム内の前方に配設されている。ラジエータ113には、図示しない送風ファンが設けられている。ラジエータ113は、この送風ファンによって供給される冷却用空気によって、冷却水を冷却するようになっている。
バイパス流路114は、循環流路110aにおいて、ラジエータ113をバイパスする流路となっている。バイパス流路114は、ラジエータ113の冷却水入口側で循環流路110aから分岐して、ラジエータ113の冷却水出口側で循環流路110aに合流するように形成されている。
切替弁115は、冷却回路110における冷却水の流路をラジエータ113側、あるいはバイパス流路114側に切替える流路切替え手段であり、循環流路110aからバイパス流路114が分岐する分岐点に設けられている。切替弁115は、内部に設けられたバルブによって、ラジエータ113側を開きバイパス流路114側を閉じることで冷却水がラジエータ113を流通する場合と、バイパス流路114側を開きラジエータ113側を閉じることで冷却水がバイパス流路114を流通する場合とに切替えることができるようになっている。切替弁115の内部バルブの開閉は、制御装置140によって制御されるようになっている。尚、切替弁115は、冷却水の温度に応じて内部バルブの開度が変化するサーモスタットとしても良い。
ヒータコア116は、冷却水を加熱源として空調ケース131内を流通する空調用空気を加熱する暖房用の加熱手段(加熱用熱交換器)である。ヒータコア116は、空調ケース131内において空調用空気流れの下流側に配設されている。ヒータコア116の内部には冷却水流路が形成されており、冷却水流路に冷却水が流れると、ヒータコア116は、冷却水の熱をヒータコア116自身を通過する空調用空気に放出して、空調用空気を加熱するようになっている。
バイパス流路117は、循環流路110aにおいて、ヒータコア116をバイパスする流路となっている。バイパス流路117は、ヒータコア116の冷却水入口側で循環流路110aから分岐して、ヒータコア116の冷却水出口側で循環流路110aに合流するように形成されている。
切替弁118は、冷却回路110における冷却水の流路をヒータコア116側、あるいはバイパス流路117側に切替える流路切替え手段であり、循環流路110aからバイパス流路117が分岐する分岐点に設けられている。切替弁118は、上記の切替弁115と同様に、内部に設けられたバルブによって、ヒータコア116側を開きバイパス流路117側を閉じることで冷却水がヒータコア116を流通する場合と、バイパス流路117側を開きヒータコア116側を閉じることで冷却水がバイパス流路117を流通する場合とに切替えることができるようになっている。切替弁118の内部バルブの開閉は、制御装置140によって制御されるようになっている。
水温センサ119は、冷却回路110における冷却水の温度を検出する温度検出手段である。水温センサ119は、バイパス流路117の循環流路110aの合流部と、燃料電池111との間に配設されており、ヒータコア116あるいはバイパス流路117から流出される冷却水の温度を検出するようになっている。水温センサ119によって検出された冷却水の温度信号(以下、冷却水温)TFCは、制御装置140に出力されるようになっている。
次に、ヒートポンプサイクル120は、車室内の暖房あるいは冷房を行うための熱サイクルであり、冷媒が循環する冷媒流路120aに圧縮機121、室内熱交換器122、第1絞り123、室外熱交換器124、第2絞り125、蒸発器126、およびアキュムレータ127等が設けられ、また、分岐流路128にシャット弁129が設けられて形成されている。
上記ヒートポンプサイクル120を構成する各機器121〜129のうち、室内熱交換器122、および蒸発器128は、後述する室内ユニット130の構成部品として車室内(インストルメントパネル内)に配設され、他の機器(121、123〜127、129)は車両の走行用モータの収容されるエンジンルーム内に配設されている。
圧縮機121は、図示しない電動モータによって駆動されて、ヒートポンプサイクル120内の冷媒を高温高圧に圧縮して吐出する電動式の流体機械であり、作動回転数に応じて冷媒の吐出量が調節されるようになっている。バッテリ121bから供給される電力がインバータ121aによって調整されることで、圧縮機121の作動回転数および冷媒吐出量が制御されるようになっている。インバータ121aによる電力調整の作動は、制御装置140によって制御されるようになっている。
室内熱交換器122は、圧縮機121から吐出される高温高圧の冷媒を加熱源として空調ケース131内を流通する空調用空気を加熱する暖房用の加熱手段(加熱用熱交換器)である。室内熱交換器122は、空調ケース131内において、ヒータコア116に対して空調用空気流れの上流側に隣接するように配設されている。室内熱交換器122の内部には冷媒流路が形成されており、冷媒流路に冷媒が流れると、室内熱交換器122は、冷媒の熱を室内熱交換器122自身を通過する空調用空気に放出して、空調用空気を加熱するようになっている。
第1絞り123は、絞り開度が、冷媒流路120aの流路断面積と同等となる全開開度から、所定の絞り開度まで調節可能とする絞り部である。第1絞り123の絞り開度は、制御装置140によって制御されるようになっている。
室外熱交換器124は、第1絞り123から流出される冷媒と、外部の熱交換用空気との間で熱交換する熱交換器である。室外熱交換器124は、例えばエンジンルーム内においてラジエータ113の後方に隣接して配設されている。尚、室外熱交換器124の車両後方側には、ラジエータ113および室外熱交換器124に熱交換用空気を供給する電動ファン124a、124bが設けられている。
ヒートポンプサイクル120による冷房運転時においては、第1絞り123の絞り開度は、全開開度に制御されて、室内熱交換器122から流出される冷媒は減圧されずに高温高圧のまま室外熱交換器124に流入されるようになっている。よって、室外熱交換器124は熱交換用空気によって冷媒を冷却する冷却用熱交換器として機能する。また、ヒートポンプサイクル120による暖房運転時においては、第1絞り123の絞り開度は、所定の絞り開度に制御されて、室内熱交換器122から流出される冷媒は低温低圧に減圧されて室外熱交換器124に流入されるようになっている。よって、室外熱交換器124は熱交換用空気から吸熱する吸熱用熱交換器として機能する。
第2絞り125は、絞り開度が調節され、室外熱交換器124から流出される冷媒を減圧する減圧手段である。第2絞り123の絞り開度は、制御装置140によって制御されるようになっている。
蒸発器126は、第2絞り125によって減圧された冷媒と空調ケース131内を流通する空調用空気との間で熱交換して、空調用空気を冷却する熱交換器である。蒸発器126は、空調ケース131内で流路全体を横断するように配設されている。蒸発器126は、空調ケース131内で室内熱交換器122よりも空調用空気流れの上流側に配設されている。
アキュムレータ127は、気液分離手段であり、蒸発器126から流出される冷媒、あるいは後述する分岐流路128を流通する冷媒を受け入れ、冷媒の気液を分離して液冷媒を溜め、ガス冷媒および底部付近の少量の液冷媒(オイルが溶け込んでいる)を圧縮機121へ吸入させるようになっている。
分岐流路128は、室外熱交換器124と第2絞り125との間と、蒸発器126とアキュムレータ127との間とを接続する流路である。分岐流路128の途中部位には、分岐流路128を開閉可能とするシャット弁129が設けられている。シャット弁129による分岐流路128の開閉は、制御装置140によって制御されるようになっている。
次に、室内ユニット130は、空調用空気の温度を、乗員が設定する設定温度に調節して、選択された吹出し口131c〜131eのいずれかから車室内に吹出すユニットである。室内ユニット130は、空調ケース131内に送風機132、蒸発器126、室内熱交換器122、ヒータコア116およびエアミックスドア134等が設けられて形成されている。
送風機132は、空調ケース131に形成された内気吸入口131a、あるいは外気吸入口131bから空調用空気を空調ケース131内に取り入れて、最下流側となる吹出し口131c〜131eから車室内へ吹出す送風手段である。送風機132の作動回転数、即ち送風量は、制御装置140によって制御されるようになっている。送風機132の空調用空気流れ下流側には、上記で説明した蒸発器126、室内熱交換器122、およびヒータコア116が配設されている。また、室内熱交換器122およびヒータコア116と、空調ケース131との間には、空調用空気が室内熱交換器122およびヒータコア116をバイパスして流通可能となるバイパス流路133が形成されている。
エアミックスドア134は、室内熱交換器122およびヒータコア116と、バイパス流路133とを通過する空調用空気量を調節する調節手段である。エアミックスドア134は、室内熱交換器122およびヒータコア116の空調用空気流通部、あるいはバイパス流路133を開閉する回動式のドアである。エアミックスドア134の開度に応じて、室内熱交換器122およびヒータコア116を流通する加熱空気と、蒸発器126で冷却されてバイパス流路133を流通する冷却空気との流量割合が調節されて、室内熱交換器122およびヒータコア116の下流側の空調用空気温度が調節されるようになっている。エアミックスドア134の開度は、制御装置140によって制御されるようになっている。
室内ユニット130において室内熱交換器122およびヒータコア116の下流側は、車室内に向かう複数の吹出し口、即ち、フェイス吹出し口131c、フット吹出し口131d、デフロスタ吹出し口131eへ接続されており、上記エアミックスドア134によって温度調節された空調空気は、吹出し口131c〜131eのうち、選択された吹出し口から車室内に吹出されるようになっている。
制御装置140は、マイクロコンピュータとその周辺回路から構成される制御部である。制御装置140は、予め設定されたプログラムに従って、水温センサ119、外気温センサ141、および内気温センサ142からの各種温度信号、日射センサ143からの日射信号、および図示しない操作パネルで乗員が設定する設定温度信号等に対する演算処理を行う。更に、制御装置140は演算結果に基づいて、切替え弁115、切替え弁118、インバータ121a(圧縮機121)、第1絞り123、電動ファン124a、124b、第2絞り125、シャット弁129、送風機132、エアミックスドア134等の制御を行うことで、以下説明する冷房運転、暖房運転、および暖機運転を行う。
次に、上記構成に基づく作動について、図2〜図5を加えて説明する。
1.冷房運転
制御装置140は、外気温センサ141から得られる外気温度、内気温センサ142から得られる内気温度、日射センサ143から得られる日射量、および乗員が設定する設定温度をもとに、必要吹出し温度TAOを算出する。そして、制御装置140は、車室内に吹出される空調用空気の温度が乗員の設定する設定温度となるように、必要吹出し温度TAOに応じて、空調ケース131内に取り入れるべき空調用空気の選択(内気か外気か)、送風機132の回転数(送風量)設定、エアミックスドア134の開度の設定、吹出口131c〜131eの選択(フェイスかフットかデフロスタか)等を行う。
次に、制御装置140は、冷却回路110において、切替弁118によってヒータコア116側を閉じ、バイパス流路117側を開く。また、冷却水温TFCに応じて切替弁115による流路切替えを行う。また、ヒートポンプサイクル120において、第1絞り123の絞り開度を全開開度にし、シャット弁129を閉じ、圧縮機121および電動ファン124a、124bを作動させる。
すると、冷却回路110においては、冷却水は、燃料電池111、ポンプ112、ラジエータ113(切替弁115の操作によってはバイパス流路114)、バイパス流路117、燃料電池111の順に循環する。よって、冷却水はラジエータ113によって冷却され、燃料電池111は一定温度に冷却維持される。このとき、ヒータコア116には冷却水は流れない形となる。
一方、ヒートポンプサイクル120においては、冷媒は、圧縮機121、室内熱交換器122、第1絞り123、室外熱交換器124、第2絞り125、蒸発器126、アキュムレータ127、圧縮機121の順に循環する。
冷房運転時においては、エアミックスドア134が主に室内熱交換器122を閉じる側に回動されて、空調用空気の大半はバイパス流路133を流れるため、室内熱交換器122内を流れる冷媒は、空調用空気にほとんど放熱することなく、高温高圧のまま室内熱交換器122から流出される形となる。また、第1絞り123が全開開度とされているので、室内熱交換器122から流出された高温高圧の冷媒は、第1絞り123において減圧されることなく、室外熱交換器124内に流入して、熱交換用空気によって冷却されることになる。
更に、冷却されて室外熱交換器124から流出される冷媒は、第2絞り125によって低温低圧に減圧されて、蒸発器126に流入される。室内ユニット130内の空調用空気は、蒸発器126内を流れる冷媒によって冷却され、冷却空気となってバイパス流路133を通り、選択された吹出口から車室内に吹出される。このとき、空調用空気の温度は、主に、エアミックスドア134の開度制御により調整される。
2.暖房運転
制御装置140は、上記冷房運転時と同様に、必要吹出し温度TAOを算出する。そして、制御装置140は、車室内に吹出される空調用空気の温度が乗員の設定する設定温度となるように、必要吹出し温度TAOに応じて、空調ケース131内に取り入れるべき空調用空気の選択(内気か外気か)、送風機132の回転数(送風量)設定、エアミックスドア134の開度の設定、吹出口131c〜131eの選択(フェイスかフットかデフロスタか)を行う。
次に、制御装置140は、図2に示す制御フローチャートに基づき、暖房運転制御を実行していく。即ち、制御装置140は、ステップS100で、水温センサ119から出力される冷却水温TFCを取得する。次に、制御装置140は、ステップS110で、冷却水温TFCをもとに、ヒータコア116による暖房が可能か否かを図3に示す判定マップに基づき判定する。
ここで、判定マップは、変化する冷却水温TFCに対して、予め定めた所定の温度(以下、暖房可能温度TFC SET、あるいは暖房可能温度TFC SET−α)をもって、ヒータコア116による暖房が可能か否かを判定するものである。つまり、判定マップでは、冷却水温TFCが低温側から上昇していく際に、暖房可能温度TFC SET以上となったときに暖房可能と判定する(判定値1とする)と共に、冷却水温TFCが高温側から下降していく際に、冷却水温TFCが暖房可能温度TFC SET−αに以下になったときに暖房不可と判定する(判定値0とする)ものとなっている。αは、判定値1と判定値0との間でハンチングを起さないために予め定めた定数である。暖房可能温度TFC SETは例えば65℃であり、定数αは例えば5℃である(暖房可能温度TFC SET−α=60℃)。
制御装置140は、ステップS110で冷却水による暖房が可能(判定値1)と判定すると、ステップS120へ進む。ステップS120では、制御装置140は、冷却回路110において、切替弁118によってヒータコア116側を開き、バイパス流路117側を閉じる。また、冷却水温TFCに応じて切替弁115による流路切替えを行う。
すると、冷却回路110においては、冷却水は、燃料電池111、ポンプ112、バイパス流路114(切替弁115の操作によってはラジエータ113)、ヒータコア116、燃料電池111の順に循環する。ここでは、冷却水の熱は主にヒータコア116で空調用空気に放出されることで、燃料電池111は一定温度に冷却維持される。
そして、制御装置140は、ステップS130で、ヒートポンプ(室内熱交換器122)とヒータコア116との両者による協調運転制御を実行する。即ち、制御装置140は、ヒートポンプサイクル120において、第1絞り123の絞り開度を所定の絞り開度にし、シャット弁129を開き、圧縮機121および電動ファン124a、124bを作動させる。
更に、制御装置140は、ステップS130において、室内熱交換器122によって加熱される空調用空気の吹出し温度目標値(本発明の目標加熱温度に対応)TAVOを、図4に示す決定マップに基づいて決定するようにしている。
ここで、吹出し温度目標値TAVOとは、室内熱交換器122によって加熱される空調用空気の温度を何度にするかという目標値である。決定マップは、変化する冷却水温TFCに対して、予め吹出し温度目標値TAVOを対応付けしたものとなっている。吹出し温度目標値TAVOは、冷却水温TFCが低温側から上昇していき暖房可能温度TFC SETに至る間においては、一定の値となるように設定されている(図4中のa)。一定の値は、吹出し温度目標値TAVOにおいて、最大値として設定される最大吹出し温度目標値TAVOMAXとなっている。ここでは、最大吹出し温度目標値TAVOMAXの値は、暖房可能温度TFC SETの値(65℃)と等しくなるように設定されている。
そして、冷却水温TFCが暖房可能温度TFC SETより高くなると、所定の冷却水温TFCの範囲(β)で、吹出し温度目標値TAVOは冷却水温TFCが高くなるに従ってより低くなるように設定されている(図4中のb)。所定の冷却水温TFCの範囲(β)は、本発明の第1所定温度範囲(β)に対応する。そして、冷却水温TFC SET+β以上となる範囲では、吹出し温度目標値TAVOは、再び一定の値となるように設定されている。一定の値は、吹出し温度目標値TAVOにおいて、最低値として設定される最低吹出し温度目標値TAVOMINとなっている(図4中のc)。
また、吹出し温度目標値TAVOは、冷却水温TFCが高温側から下降していき暖房可能温度TFC SETに至る間においては、最低吹出し温度目標値TAVOMIN一定となるように設定されている(図4中のc、d)。
そして、冷却水温TFCが暖房可能温度TFC SETより低くなると、所定の冷却水温TFCの範囲(−β)で、吹出し温度目標値TAVOは、冷却水温TFCが低くなるに従ってより高くなるように設定されている(図4中のe)。所定の冷却水温TFCの範囲(−β)は、本発明の第2所定温度範囲(−β)に対応する。そして、冷却水温TFC SET−β以下となる範囲では、吹出し温度目標値TAVOは、最大吹出し温度目標値TAVOMAX一定となるように設定されている(図4中のa)。βは、冷却水温TFCの上昇時と下降時とでハンチングを起さないために予め定めた定数である。定数βは、判定マップにおける定数αに対して小さい値となるように設定されている(α>β)。
尚、制御装置140は、室内熱交換器122を通過した空調用空気の温度が、決定マップによって設定した吹出し温度目標値TAVOに近づくように、圧縮機121による吐出冷媒の圧力、あるいは吐出冷媒の流量を調整する。
制御装置140は、上記のような決定マップを用いて、冷却水温TFCに応じて吹出し温度目標値TAVOMAXを設定しながら、ヒータコア116と室内熱交換器122との両者を用いた協調運転制御を実行する。例えば、冷却水温TFCが上昇していき暖房可能温度TFC SETより高くなると、制御装置140は、ヒータコア116内を流れる冷却水によって空調用空気を加熱すると共に、ヒータコア116の加熱では足りない分を、室内熱交換器122の加熱によって補うようにする。つまり、冷却水温TFCが高くなるほどヒータコア116による加熱能力は大きくなるので、その分、室内熱交換器122における吹出し温度目標値TAVOがより低くなるように設定することで、室内熱交換器122によって補われる分を小さくし、ヒータポンプサイクル120の負荷(圧縮機121の負荷)を小さくして空調用空気を加熱する。このとき、空調用空気の温度は、エアミックスドア134の開度制御により調整される。
逆に、冷却水温TFCが下降していき暖房可能温度TFC SETより低くなり、更に暖房可能温度TFC SET−αに至るまでの間においては、ヒータコア116による空調用空気の加熱能力は小さくなっていくので、制御装置140は、ヒータコア116の加熱では足りない分を、室内熱交換器122の加熱によって補うようにする。つまり、冷却水温TFCが低くなるほどヒータコア116による加熱能力は小さくなるので、その分、室内熱交換器122における吹出し温度目標値TAVOがより高くなるように設定することで、室内熱交換器122によって補われる分を大きくし、ヒートポンプサイクル120の能力を充分に活用して空調用空気を加熱する。このとき、空調用空気の温度は、エアミックスドア134の開度制御により調整される。
一方、制御装置140は、ステップS110で冷却水による暖房が不可(判定値0)と判定すると、ステップS140へ進む。ステップS140では、制御装置140は、冷却回路110において、切替弁118によってヒータコア116側を閉じ、バイパス流路117側を開く。また、冷却水温TFCに応じて切替弁115による流路切替えを行う。
すると、冷却回路110においては、冷却水は、燃料電池111、ポンプ112、バイパス流路114(切替弁115の操作によってはラジエータ113)、バイパス流路117、燃料電池111の順に循環し、燃料電池111は一定温度に冷却維持される。
そして、制御装置140は、ステップS150で、ヒートポンプサイクル120(室内熱交換器122)のみによる単独運転制御を実行する。即ち、制御装置140は、ヒートポンプサイクル120において、第1絞り123の絞り開度を所定の絞り開度にし、シャット弁129を開き、圧縮機121および電動ファン124a、124bを作動させる。
すると、ヒートポンプサイクル120においては、冷媒は、圧縮機121、室内熱交換器122、第1絞り123、室外熱交換器124、シャット弁129、アキュムレータ127、圧縮機121の順に循環する。
ステップS150の単独運転時においては、エアミックスドア134が主にバイパス流路133を閉じる側に回動されて、空調用空気の大半は室内熱交換器122を通過する形となり、室内熱交換器122内を流れる高温高圧の冷媒によって空調用空気が加熱される。室内熱交換器122においては、吹出し温度目標値TAVOは、最大噴出し目標値TAVOMAXに設定されて、空調用空気は加熱される。また、室内熱交換器122から流出されて、第1絞り123によって減圧された冷媒は、室外熱交換器124において熱交換用空気から吸熱する形となる。このように、冷却水温TFCが暖房可能温度TFC SETより低い場合であると、ヒータコア116と室内熱交換器122のうち、室内熱交換器122のみによって暖房運転が行われることになる。このとき、空調用空気の温度は、エアミックスドア134の開度制御により調整される。
3.暖機運転
制御装置140は、上記暖房運転時において、冷却水温TFCが暖房可能温度TFC SETよりも低い場合であっても、冷却水温TFC SET−αに至る間においては、冷却水がヒータコア116に流れるようにしている。このとき、決定マップにおいて、図5中の2重線で示すように、吹出し温度目標値TAVOが冷却水温TFCより高くなる領域(TAVO=TFCとなる破線よりも上側となる領域)が形成されている。この領域においては、室内熱交換器122によって加熱された空調用空気の温度は、冷却水温TFCより高くなる領域であり、この場合であると、室内熱交換器122に加熱された空調用空気によって冷却水が加熱されることになる。つまり、ヒータコア116の冷却水が室内熱交換器122によって積極的に暖機されることになる。
以上のように、本実施形態では、暖房運転時において、制御装置140は、冷却水温TFCに応じて、吹出し温度目標値TAVOを変化させるようにしている。具体的には、制御装置部140は、冷却水温TFCが暖房可能温度TFC SETより高いときに、冷却水温TFCが高くなるほど、吹出し温度目標値TAVOをより低く設定すると共に、冷却水温TFCが暖房可能温度TFC SETより低いときに、冷却水温TFCが低くなるほど、吹出し温度目標値TAVOをより高く設定するようにしている。
これにより、制御装置140は、冷却水温TFCが暖房可能温度TFC SETより高いときに、冷却水温TFCが高くなるほど吹出し温度目標値TAVOをより低く設定することにより、主にヒータコア116による加熱能力を活用して、不足分のみを室内熱交換器122によって補うことで、必要とされる暖房性能をヒータコア116と室内熱交換器122とによって確保することが可能となる。
逆に、制御装置140は、冷却水温TFCが暖房可能温度TFC SETより低いときに、冷却水温TFCが低くなるほど吹出し温度目標値TAVOをより高く設定することにより、ヒータコア116によって得られる加熱能力をそのまま活用しつつも、不足となる分については室内熱交換器122によって補うことで、必要とされる暖房性能をヒータコア116と室内熱交換器122とによって確保することが可能となる。
よって、ヒータコア116においては、冷却水温TFCに応じた分の空調用空気の加熱をすれば良いので、暖房のために過度の熱量を冷却水から放出することがなく、冷却水温TFCを一定に保つことができる。つまり、燃料電池111の温度を一定に保つことができる。
このように、冷却水温TFCに応じて吹出し温度目標値TAVOを変化させることで、ヒータコア116と室内熱交換器122との2つの加熱手段によって必要とされる暖房性能を確保することができるので、3つの加熱手段(2つの加熱用室内器と1つのヒータコア)を必要とする特許文献2と比べて、簡素な構成とすることができる。
よって、燃料電池111における少ない廃熱を有効に利用しつつ、簡素な構成で好適な空調を可能とし、燃料電池111の温度を一定に保つことのできる車両用空調装置100を提供することができる。
また、制御装置140は、冷却水温TFCが、暖房可能温度TFC SET(あるいは暖房可能温度TFC SET−α)より低いときに、冷却水をバイパス流路117に流し、ヒートポンプサイクル120(室内熱交換器122)のみによる単独運転制御を実行するようにしている。
これにより、ヒータコア116には、冷却水が流れない形とすることができるので、空調用空気の加熱は加熱用熱交換器122のみによって行われることとなり、ヒータコア116から冷却水の熱が空調用空気に放出されることがなく、冷却水の温度を一定に保つことができる。つまり、燃料電池111の温度を一定に保つことができる。
また、制御装置140は、冷却水温TFCが、暖房可能温度TFC SETより低いときに、吹出し温度目標値TAVOを冷却水温TFCよりも高い値に設定するようにしている(図5中の2重線部)。
これにより、室内熱交換器122によって加熱される空調用空気の温度は、常に冷却水温TFCよりも高い値に加熱される。よって、室内熱交換器122よりも空調用空気流れの下流側となるヒータコア116内の冷却水を、室内熱交換器122によって加熱された空調用空気によって加熱することができる。つまり、冷却水温度TFCが、暖房可能温度TFC SETより低い場合に、暖房性能を確保しつつ、低温の冷却水を積極的に暖機することができる。
尚、図4で説明した決定マップにおいて、冷却水温TFCが暖房可能温度TFC SETより高くなると、所定の冷却水温TFCの範囲(β)で、冷却水温TFCが高くなるに従って吹出し温度目標値TAVOがより低くなるように設定し、冷却水温TFC SET+β以上となる範囲では、吹出し温度目標値TAVOが最低吹出し温度目標値TAVOMIN一定となるように設定した。また、冷却水温TFCが暖房可能温度TFC SETより低くなると、所定の冷却水温TFCの範囲(−β)で、冷却水温TFCが低くなるに従って吹出し温度目標値TAVOがより高くなるように設定し、冷却水温TFC SET−β以下となる範囲では、吹出し温度目標値TAVOが最大吹出し温度目標値TAVOMAX一定となるように設定した。
しかしながら、これに限定されることなく、所定の冷却水温TFCの範囲(β、−β)を設けずに、冷却水温TFCが暖房可能温度TFC SETより高くなると、冷却水温TFCが高くなるに従って吹出し温度目標値TAVOが最低吹出し温度目標値TAVOMINに向けてより低くなるように設定し、冷却水温TFCが暖房可能温度TFC SETより低くなると、冷却水温TFCが低くなるに従って吹出し温度目標値TAVOが最大吹出し温度目標値TAVOMAXに向けてより高くなるように設定するようにしても良い。
(第2実施形態)
第2実施形態の決定マップを図6に示す。第2実施形態は、上記第1実施形態に対して決定マップの内容を変更したものである。
図6に示すように、決定マップは、冷却水温TFCが暖房可能温度TFC SETよりも低くなると、吹出し温度目標値TAVOは、制御装置140によって、冷却水温TFCと同じ値に設定されるようになっている。
これにより、冷却水温TFCが、暖房可能温度TFC SETより低い場合に、室内熱交換器122によって加熱される空調用空気の温度と、ヒータコア116における冷却水温TFCとの間における温度差を無くすことができる。よって、ヒータコア116における冷却水の熱が空調用空気に放出されることがなく、冷却水の熱を冷却回路110内に維持することができる。つまり、燃料電池111の温度を一定に保つことができる。
(第3実施形態)
第3実施形態の決定マップを図7に示す。第3実施形態は、上記第1実施形態に対して決定マップの内容を変更したものである。
図7に示すように、決定マップは、冷却水温TFCが暖房可能温度TFC SETよりも低くなると、吹出し温度目標値TAVOは、制御装置140によって、冷却水温TFCよりも高い値に設定されるようになっている。具体的には、吹出し温度目標値TAVOは、図7中の斜線で示した範囲の値に設定されるようになっている。
これにより、上記第1実施形態の図7で説明した2重線部と同様に、冷却水温TFCが、暖房可能温度TFC SETより低い場合に、室内熱交換器122によって加熱される空調用空気の温度は、常に冷却水温TFCよりも高い値に加熱される。よって、室内熱交換器122よりも空調用空気流れの下流側となるヒータコア116内の冷却水を、室内熱交換器122によって加熱された空調用空気によって加熱することができ、低温の冷却水を積極的に暖機することができる。
(その他の実施形態)
上記第1実施形態では、冷却回路110は、燃料電池111を冷却する回路を例として説明したが、これに限らず、ハイブリッド車のエンジンを冷却する回路としても良い。
100 車両用空調装置
110 冷却回路
111 燃料電池
116 ヒータコア
117 バイパス流路
120 ヒートポンプサイクル
122 室内熱交換器(加熱用熱交換器)
140 制御装置(制御部)

Claims (3)

  1. 燃料電池車の燃料電池(111)を冷却する冷却回路(110)の冷却水を加熱源として空調用空気を加熱するヒータコア(116)と、
    前記ヒータコア(116)に対して、前記空調用空気の流れ方向の上流側に配設されて、ヒートポンプサイクル(120)を循環する冷媒を加熱源として前記空調用空気を加熱する加熱用熱交換器(122)と、
    前記冷却水の温度(TFC)に応じて、前記加熱用熱交換器(122)によって加熱される前記空調用空気の温度目標値として設定される目標加熱温度(TAVO)を変化させるように前記ヒートポンプサイクル(120)の作動を制御する制御部(140)とを備え
    前記制御部(140)は、前記冷却水の温度(TFC)が前記ヒータコア(116)による暖房が可能となる暖房可能温度(TFC SET)より高いときに、少なくとも前記冷却水の第1所定温度範囲(β)において、前記冷却水の温度(TFC)が高くなるほど、前記目標加熱温度(TAVO)をより低く設定すると共に、前記冷却水の温度(TFC)が前記暖房可能温度(TFC SET)より低いときに、少なくとも前記冷却水の第2所定温度範囲(−β)において、前記冷却水の温度(TFC)が低くなるほど、前記目標加熱温度(TAVO)をより高く設定し、前記ヒータコア(116)と前記加熱用熱交換器(122)との両者による協調運転制御を実行し、
    更に、前記目標加熱温度(TAVO)が前記暖房可能温度(TFC SET)より高くなる領域においては、前記加熱用熱交換器(122)で加熱された前記空調用空気によって前記ヒータコア(116)の冷却水を加熱することを特徴とする車両用空調装置。
  2. 燃料電池車の燃料電池(111)、あるいはハイブリッド車のエンジンを冷却する冷却回路(110)の冷却水を加熱源として空調用空気を加熱するヒータコア(116)と、
    前記ヒータコア(116)に対して、前記空調用空気の流れ方向の上流側に配設されて、ヒートポンプサイクル(120)を循環する冷媒を加熱源として前記空調用空気を加熱する加熱用熱交換器(122)と、
    前記冷却水の温度(TFC)に応じて、前記加熱用熱交換器(122)によって加熱される前記空調用空気の温度目標値として設定される目標加熱温度(TAVO)を変化させるように前記ヒートポンプサイクル(120)の作動を制御する制御部(140)とを備え、
    前記制御部(140)は、前記冷却水の温度(TFC)が、前記ヒータコア(116)による暖房が可能となる暖房可能温度(TFC SET)より低いときに、前記目標加熱温度(TAVO)を前記冷却水の温度(TFC)と同じ値に設定することを特徴とする車両用空調装置。
  3. 前記冷却回路(110)には、前記冷却水が前記ヒータコア(116)をバイパスするバイパス流路(117)が設けられており、
    前記制御部(140)は、前記冷却水の温度(TFC)が、前記暖房可能温度(TFC SET)より低いときに、前記冷却水を前記バイパス流路(117)に流すことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用空調装置。
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