以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
先ず、第1実施形態に係る燃料電池システム100の構成について、図1を参照しつつ説明する。第1実施形態に係る燃料電池システム100は、燃料電池1を電源として走行する電気自動車(燃料電池車両)に適用されており、走行用電動モータやバッテリ等の電気機器(図示せず)に対して、燃料電池1で発電された電力を供給するように構成されている。
図1に示すように、第1実施形態に係る燃料電池システム100は、燃料電池1と、冷却水回路10と、暖房用冷却水回路20と、車両用空調ユニット30と、制御装置50とを有しており、制御装置50によって各構成の作動が制御されるように構成されている。
第1実施形態に係る燃料電池1は、水素と酸素との化学反応を利用して電力を発生する燃料電池(FCスタック)であり、固体高分子電解質型燃料電池(PEFC)によって構成されている。当該燃料電池1は、多数のセルを組み合わせて構成されており、各セルは電解質膜を一対の電極で挟み込んで形成されている。
そして、燃料電池1には、図示しない空気通路及び水素通路を介して、酸素を含む空気及び水素が供給される。当該燃料電池1では、供給された酸素及び水素によって、以下の水素と酸素の電気化学反応が起こり、電気エネルギが発生する。従って、当該燃料電池1は、本発明における燃料電池として機能する。この電気化学反応に用いられなかった未反応の酸素及び水素は、燃料電池1から排出される。
(負極側)H2→2H++2e−
(正極側)2H++1/2O2+2e−→H2O
当該電気化学反応の為には、燃料電池1内の電解質膜は、水分を含んだ湿潤状態となっている必要がある。当該燃料電池システム100は、燃料電池1に供給される空気及び水素に加湿を行い、これらの加湿されたガスを燃料電池1に供給することで、燃料電池1内の電解質膜を加湿するように構成されている。
又、燃料電池1では、発電の際の電気化学反応により熱及び水分が発生する。当該燃料電池1の発電効率を考慮すると、燃料電池1は、燃料電池システム100が作動している間、一定温度(例えば80℃程度)に維持されている必要がある。又、燃料電池1内部の電解質膜は、所定の許容上限温度を超えると、高温により破壊されてしまう。この為、燃料電池1の温度が許容温度以下となるようにしておく必要がある。
第1実施形態に係る燃料電池システム100には、燃料電池1を冷却する為に、冷却水回路10が配置されている。この冷却水回路10は、熱媒体としての冷却水を用いて、燃料電池1を冷却して当該燃料電池1の温度を制御する役割を果たしている。この熱媒体である冷却水としては、低温時における凍結を防止する為に、例えば、エチレングリコールと水の混合溶液を用いることができる。
図1に示すように、冷却水回路10は、燃料電池1とラジエータ11の間で冷却水が循環する冷却水流路14に、ラジエータ11と、冷却水ポンプ12と、三方弁13と、バイパス流路15と、水温センサ16とを配置して構成されている。
尚、燃料電池1の外部ケーシング内には、熱媒体としての冷却水が流通する冷却水流路14の一部が形成されており、流通する冷却水によって、燃料電池1の温度が一定温度以下に調節(冷却)されるようになっている。
ラジエータ11は、燃料電池1で発生した熱を燃料電池システム100外部に放熱するように構成された熱交換器である。当該燃料電池システム100において、冷却水流路14の冷却水は、燃料電池1を流れる過程で、電気化学反応で発生した熱を吸熱して流出し、冷却水流路14を介して、ラジエータ11へ流入する。ラジエータ11では、冷却水と大気との熱交換が行われ、冷却水の熱が大気に放熱される。その後、冷却水は、ラジエータ11から燃料電池1へ向かって流れ、基本的には、冷却水回路10の冷却水流路14を循環する。
即ち、ラジエータ11は、熱媒体としての冷却水との熱交換によって、燃料電池1の電気化学反応で生じた熱を放熱して、燃料電池1を冷却している。又、当該ラジエータ11には、図示しないファンが配置されている。当該ファンは、ラジエータ11における熱交換対象である外気をラジエータ11に送風することで、ラジエータ11における冷却水の熱交換を補助している。
冷却水ポンプ12は、図示しない電動モータによって駆動される電動式の流体機械である。冷却水ポンプ12は、その作動によって、冷却水回路10における冷却水を循環させている。当該燃料電池システム100において、冷却水回路10における冷却水の温度制御は、冷却水ポンプ12による冷却水の流量制御、ラジエータ11におけるファンの送風量制御によって行われる。
そして、冷却水流路14における燃料電池1の流出口側とラジエータ11の流入口側との間には、バイパス流路15が接続されている。バイパス流路15は、冷却水流路14においてラジエータ11をバイパスする流路として構成されている。即ち、図1に示すように、バイパス流路15は、燃料電池1からラジエータ11の流入口へ向かう冷却水流路14上で分岐し、ラジエータ11の流出口側から冷却水ポンプ12の吸入口側との間で冷却水流路14に合流するように接続されている。
三方弁13は、冷却水回路10における冷却水の流路をラジエータ11側、或いはバイパス流路15側に切り替える為に、冷却水流路14からバイパス流路15が分岐する分岐点に配置されている。三方弁13の作動は、制御装置50によって制御されており、冷却水ポンプ12から吐出された冷却水をラジエータ11側に流通させる場合と、冷却水ポンプ12から吐出された冷却水を、ラジエータ11側を介さずに、バイパス流路15側に流通させる場合とに切り替えられる。
尚、この三方弁13は、上述のように冷却水の流れを切り替えることができればよく、流路を切り替える構成として、様々な態様を採用することができる。例えば、複数の開閉弁の集合体として、各開閉弁の開度を独立して調整可能に構成しても良いし、冷却水の温度に応じて内部バルブの開度が変化するサーモスタットによって構成しても良い。
そして、冷却水流路14における燃料電池1の流出口側には、水温センサ16が配置されている。当該水温センサ16は、燃料電池1の流出口側から流出する冷却水温度を検出する。冷却水流路14によって検出された冷却水温度の検出信号は、制御装置50に対して出力される。
当該冷却水温度は、燃料電池1内部の冷却水流路14を通過する際に、燃料電池1における電気化学反応で生じた熱を吸熱する為、燃料電池1の温度状態を判定する為の指標として利用できる。
図1に示すように、暖房用冷却水回路20は、暖房用冷却水流路21と、分岐流路22と、還流路23と、切替弁24と、暖房用冷却水ポンプ25と、電熱ヒータ26と、ヒータコア27とを有している。
ヒータコア27は、車両用空調ユニット30の空調ケース41内に配置されており、暖房用冷却水回路20の暖房用冷却水流路21に接続されている。ヒータコア27は、暖房用冷却水回路20を流れる冷却水を通過させる際に、暖房用冷却水回路20を流れる冷却水と、空調ケース41を流れる空調空気との間で熱交換させる為の熱交換器である。従って、ヒータコア27は、暖房用冷却水回路20を流れる冷却水を熱源として、空調ケース41内を流れる空調空気を加熱する暖房用加熱手段として機能することができる。
分岐流路22は、冷却水回路10の冷却水流路14と、暖房用冷却水回路20の暖房用冷却水流路21とを接続している。当該分岐流路22によれば、冷却水回路10で燃料電池1から吸熱して温められた冷却水の一部を、暖房用冷却水回路20に分岐させることができる。又、暖房用冷却水流路21の端部は、冷却水流路14に接続されており、分岐流路22から流入した冷却水を、冷却水流路14に合流させることができる。
切替弁24は、暖房用冷却水流路21と、分岐流路22と、還流路23の合流部分に配置された三方弁によって構成されており、分岐流路22を介した暖房用冷却水回路20に対する冷却水の流入を制御する。当該切替弁24は、本発明における切替部として機能する。
具体的には、当該切替弁24は、暖房用冷却水回路20における冷却水の流れを、図3に示す非連携状態と、図4に示す連携状態とに切り替える為の流路切替部である。連携状態、非連携状態については後に詳細に説明する。
尚、切替弁24は、分岐流路22を介した暖房用冷却水回路20に対する冷却水の流入を制御することができればよく、必ずしも三方弁で構成する必要はない。例えば、本発明における切替部を、複数の開閉弁の集合体として、各開閉弁の開度を独立して調整可能に構成しても良いし、冷却水の温度に応じて内部バルブの開度が変化するサーモスタットによって構成しても良い。
暖房用冷却水回路20の暖房用冷却水流路21上において、切替弁24とヒータコア27の流入口側の間には、暖房用冷却水ポンプ25と、電熱ヒータ26が配置されている。暖房用冷却水ポンプ25は、図示しない電動モータによって駆動される電動式の流体機械である。暖房用冷却水ポンプ25は、その作動によって、暖房用冷却水流路21に流入した冷却水を圧送する。
電熱ヒータ26は、暖房用冷却水回路20を流れる冷却水を加熱する加熱手段である。従って、ヒータコア27は、燃料電池1に由来する冷却水の温熱に加えて、電熱ヒータ26で冷却水に加えられた温熱を用いて、空調空気を温めることができる。
暖房用冷却水流路21におけるヒータコア27の流出口側から冷却水流路14との合流部との間には、還流路23が接続されている。上述したように、還流路23の一端部は、切替弁24に接続されている為、暖房用冷却水流路21上のヒータコア27から流出した冷却水を、還流路23及び切替弁24を介して、暖房用冷却水流路21上の暖房用冷却水ポンプ25に戻すことができる。
即ち、当該暖房用冷却水回路20は、暖房用冷却水流路21と還流路23によって、暖房用冷却水回路20のみで冷却水を循環させる循環流路を構成することができる。
図1に示すように、車両用空調ユニット30は、冷凍サイクル装置31と、室内ユニット40とを有しており、電気自動車(燃料電池車両)の車室内に対する空調を行う。つまり、車両用空調ユニット30による空調対象空間は、電気自動車の車室内である。
当該車両用空調ユニット30は、室内ユニット40によって車室内に供給される空調空気を、冷凍サイクル装置31等を用いて加熱又は冷却することにより車室内の快適性を向上させている。
図1に示すように、冷凍サイクル装置31は、圧縮機32と、凝縮器33と、膨張弁34と、蒸発器35とを冷媒流路36によって接続しており、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを構成している。即ち、冷凍サイクル装置31は、本発明における冷凍サイクルとして機能する。
具体的には、当該冷凍サイクル装置31では、冷媒としてHFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。もちろん、冷媒としてHFO系冷媒(例えば、R1234yf)や自然冷媒(例えば、R744)等を採用してもよい。更に、冷媒には圧縮機32を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
圧縮機32は、冷凍サイクル装置31において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものであり、車両ボンネット内に配置されている。圧縮機32は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて駆動する電動圧縮機として構成されている。
そして、圧縮機32の圧縮機構としては、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用することができる。又、圧縮機32を構成する電動モータは、制御装置50から出力される制御信号によって、その作動(回転数)が制御される。この電動モータとしては、交流モータ、直流モータの何れの形式を採用してもよい。
圧縮機32の吐出口には、凝縮器33の冷媒入口側が接続されている。凝縮器33は、圧縮機32から吐出された高温高圧の吐出冷媒と空気とを熱交換させ、吐出冷媒の熱を空気に放熱する。
そして、凝縮器33の冷媒流出口側には、膨張弁34が配置されている。膨張弁34は、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の絞り開度を変化させるステッピングモータからなる電動アクチュエータとを有する可変絞り機構を有して構成されており、凝縮器33から流出した冷媒を減圧させる。膨張弁34は、制御装置50から出力される制御信号(制御パルス)によって、その作動が制御される。
膨張弁34の出口側には、蒸発器35が接続されている。当該蒸発器35は、室内ユニット40の空調ケース41内において、ヒータコア27の空調空気流れ上流側に配置されており、膨張弁34から流出した冷媒と空調ケース41内を流れる空調空気とを熱交換させる。即ち、蒸発器35では、膨張弁34にて減圧された冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることによって空調空気を冷却する。従って、当該蒸発器35は、本発明における冷房用熱交換器として機能する。
蒸発器35の冷媒出口には、圧縮機32の吸入口側が接続されている。これにより、蒸発器35から流出した冷媒は、再び圧縮機32によって圧縮され、凝縮器33へ流出することになる。
尚、上述した冷凍サイクル装置31には、図示は省略しているが、アキュムレータ等の種々の構成機器が接続されている。例えば、アキュムレータは、蒸発器35の冷媒出口側と圧縮機32の吸入口側の間に配置されており、蒸発器35から流出した冷媒の気液を分離して液相冷媒を溜め、気相ガス冷媒を圧縮機32へ吸入させる。
次に、冷凍サイクル装置31と共に車両用空調ユニット30を構成する室内ユニット40について説明する。室内ユニット40は、冷凍サイクル装置31によって温度調整された空調空気を車室内へ吹き出すためのものである。この室内ユニット40は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されている。
図1に示すように、室内ユニット40は、その外殻を形成する空調ケース41内に送風機44、蒸発器35、ヒータコア27等を収容することによって構成されている。空調ケース41は、車室内に送風される空調空気の空気通路を形成するものである。空調ケース41は、或る程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。
空調ケース41の空調空気流れ最上流側には、内気導入口42と、外気導入口43とが形成されている。内気導入口42は、空調ケース41内へ内気(車室内空気)を導入する為の開口部であり、外気導入口43は、空調ケース41内へ外気(車室外空気)を導入する為の開口部である。
この空調ケース41内における内気導入口42、外気導入口43近傍には、図示しない内外気切替ドアが配置されており、制御装置50からの制御信号によって、内気導入口及び外気導入口の開口面積を連続的に調整可能に構成されている。即ち、当該室内ユニット40は、空調ケース41内へ内気を導入させる内気の風量と外気の風量との風量割合を連続的に変化させることができる。
そして、空調ケース41における内気導入口42及び外気導入口43の空調空気流れ下流側には、送風機(ブロワ)44が配置されている。この送風機44は、内気導入口42や外気導入口43を介して導入された空気を、空調対象空間である車室内へ向けて送風する。
送風機44は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機である。送風機44における遠心多翼ファンの回転数(送風量)は、制御装置50から出力される制御電圧によって制御される。
送風機44の空調空気流れ下流側には、冷凍サイクル装置31を構成する蒸発器35が配置されている。従って、車両用空調ユニット30は、送風機44によって送風された空調空気を、冷凍サイクル装置31の蒸発器35によって冷却することができる。
そして、蒸発器35の空調空気流れ下流側は、加熱流路46と、非加熱流路47とに区分されている。加熱流路46には、暖房用冷却水回路20を構成するヒータコア27が配置されている。従って、加熱流路46を流れる空調空気は、ヒータコア27内部を流れる冷却水と熱交換することができる。従って、車両用空調ユニット30は、ヒータコア27の温熱によって空調空気を温めることもできる。
一方、非加熱流路47は、ヒータコア27をバイパスさせて、送風機44による空調空気を流す流路である。この場合、非加熱流路47を流れる空調空気は、蒸発器35によって冷却された状態で、冷風Cとして車室内に供給される。
又、蒸発器35の空調空気流れ下流側であって、加熱流路46及び非加熱流路47の上流側には、エアミックスドア45が配置されている。エアミックスドア45は、蒸発器35通過後の空調空気のうちヒータコア27を通過させる風量割合を調整する際に用いられる。従って、車両用空調ユニット30は、エアミックスドア45によって、非加熱流路47を全開開度とし加熱流路46を全閉にすることで、車室内に最も冷却された状態の空調空気を供給することができる。
尚、図示は省略するが、加熱流路46及び非加熱流路47の下流側には、混合空間が設けられている。混合空間では、ヒータコア27にて加熱された空調空気と、非加熱流路47を通過して空調空気とが混合される。更に、空調ケース41の空調空気流れ最下流部には、複数の開口穴が配置されている。混合空間にて混合された空調空気(空調風)は、これらの開口穴を介して、空調対象空間である車室内へ吹き出される。
これらの開口穴としては、具体的に、フェイス開口穴、フット開口穴、デフロスタ開口穴(いずれも図示せず)が設けられている。フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出す為の開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出す為の開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出す為の開口穴である。
更に、フェイス開口穴、フット開口穴及びデフロスタ開口穴の空調空気流れ下流側は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口及びデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。従って、エアミックスドア45が、加熱流路46を通過させる風量と非加熱流路47を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間にて混合される空調空気の温度が調整されて、各吹出口から車室内へ吹き出される空調空気の温度が調整される。
つまり、エアミックスドア45は、車室内へ送風される空調空気の温度を調整する温度調整部としての機能を果たす。エアミックスドア45は、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
又、フェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴の空調空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス開口穴の開口面積を調整するフェイスドア、フット開口穴の開口面積を調整するフットドア、デフロスタ開口穴の開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替ドアを構成する。フェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、それぞれリンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されており、連動して回転操作される。この電動アクチュエータも、制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
吹出口モード切替ドアによって切り替えられる吹出口モードとしては、具体的に、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード等がある。
フェイスモードは、フェイス吹出口を全開にしてフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。バイレベルモードは、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。フットモードは、フット吹出口を全開にしてフット吹出口から車室内乗員の足元に向けて空調空気を吹き出す吹出口モードである。
更に、乗員が操作パネルに設けられた吹出モード切替スイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタモードとすることもできる。デフロスタモードは、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出す吹出口モードである。
図1に示すように、第1実施形態に係る燃料電池システム100は、制御装置50を有している。当該制御装置50は、燃料電池システム100を構成する各制御対象機器の作動を制御する制御部であり、本発明における制御部として機能する。当該制御装置50は、CPU、ROM及びRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。
そして、制御装置50の入力側には、冷却水回路10の水温センサ16と、空調制御用センサ群とが接続されている。水温センサ16は、冷却水回路10において、燃料電池1の流出口側における冷却水温度を検出する。従って、制御装置50は、燃料電池1の出力や水温センサ16で検出された冷却水温度を取得することができる。
一方、空調制御用センサ群は、内気温センサ51、外気温センサ52、日射センサ53等を含んでいる。当該内気温センサ51は、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ52は、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出部である。日射センサ53は、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。従って、制御装置50には、これらの空調制御用のセンサ群の検出信号が入力される。
又、制御装置50の出力側には、冷却水回路10における三方弁13、暖房用冷却水回路20における切替弁24、暖房用冷却水ポンプ25や、車両用空調ユニット30における圧縮機32、膨張弁34、送風機44、エアミックスドア45等の各制御対象機器が接続されている。従って、当該制御装置50のROMに記憶されている制御プログラムに基づいて、燃料電池システム100の作動を制御することができる。
そして、制御装置50のROMには、冷却水回路10、暖房用冷却水回路20及び車両用空調ユニット30を熱源として有効利用する為の制御プログラムも記憶されている。この制御プログラム等の内容については後述する。
続いて、第1実施形態に係る燃料電池システム100において、冷却水回路10、暖房用冷却水回路20及び車両用空調ユニット30を熱源として有効利用する為の制御プログラムの内容について、図面を参照しつつ説明する。燃料電池システム100の作動が開始されると、制御装置50は、図2に示す制御プログラムをROMから読み出して、CPUによって実行する。
ステップS1において、燃料電池システム100の作動が開始されると、先ず、燃料電池1が図示しない加熱手段によって発電可能温度まで加熱される。燃料電池1が発電可能温度になると、空気通路及び水素通路を介して、燃料電池1に対する酸素を含む空気と水素の供給が開始される。これにより、燃料電池1における発電が開始される。
この発電時における電気化学反応によって燃料電池1では水分と熱が発生する。水分は空気通路を介して空気に含まれた状態で燃料電池1から排出された後、図示しない気液分離器等を介して、燃料電池システム100の外部に排出される。
この時、燃料電池1における発電開始に伴って冷却水ポンプ12の作動が開始され、冷却水回路10における冷却水の循環が開始される。又、電気化学反応による燃料電池1の温度に応じて、三方弁13の作動が制御され、燃料電池1の冷却が必要な場合には、冷却水回路10の冷却水がラジエータ11を通過するように切り替えられる。これにより、燃料電池1で発生した熱は、冷却水回路10の冷却水を介して、ラジエータ11から大気中に放出される。
ステップS2においては、水温センサ16によって検出された冷却水温度が制御装置50に入力される。この冷却水温度は、燃料電池1における電気化学反応で発生した熱の吸熱によって上昇する為、燃料電池1の温度に強い相関を有しており、燃料電池1の温度状況を示すパラメータである。
ステップS3では、外気温センサ52で検出された外気温が予め定められた基準外気温以上であるか否かが判断される。当該基準外気温は、ラジエータ11の放熱性能の低下が生じる外気温よりも低い任意の温度である。外気温が基準外気温以上である場合、ステップS4に進み、外気温が基準外気温以上ではない場合には、ステップS8に移行する。
ここで、外気温が高い場合には、ラジエータ11の放熱性能が低下してしまう。この状態で燃料電池1における発電量が増大すると、ラジエータ11による冷却性能が不足し、冷却水回路10における冷却水温度の高温化を招いてしまう為、燃料電池1における発電性能を低下させてしまう。即ち、ステップS3では、外気温と基準外気温とを比較することで、ラジエータ11の放熱性能が低下する危険性を判断しており、ひいては、それに起因して燃料電池1の発電性能が低下する可能性を判断している。
ステップS4においては、暖房用冷却水回路20の切替弁24及び暖房用冷却水ポンプ25の作動を制御して、燃料電池システム100における冷却水回路10と暖房用冷却水回路20を非連携状態にする。尚、この時、暖房用冷却水回路20における電熱ヒータ26の作動は停止された状態である。
当該燃料電池システム100における非連携状態は、冷却水回路10の冷却水流路14から暖房用冷却水回路20の分岐流路22への冷却水の流れを遮断した状態であり、冷却水回路10及び暖房用冷却水回路20のそれぞれにおいて、独立して冷却水を循環させる状態を意味する。即ち、この非連携状態は、本発明における第2状態に相当する。
続くステップS5では、車両用空調ユニット30の作動が制御装置50によって制御される。具体的には、室内ユニット40における送風機44の作動が開始され、加熱流路46側が開状態になるようにエアミックスドア45の作動が制御される。そして、冷凍サイクル装置31における圧縮機32及び膨張弁34の作動が制御され、膨張弁34で減圧された冷媒を、蒸発器35にて蒸発させて吸熱作用を発揮させる。
これにより、車両用空調ユニット30においては、送風機44から送風された空調空気が蒸発器35における冷媒の蒸発潜熱で冷却され、空調空気としての冷風が加熱流路46に配置されたヒータコア27を通過することになる。
尚、このステップS5の時の加熱流路46側の開度は全開開度である必要はなく、或る程度の空調空気が加熱流路46内に流入するのであれば任意の開度とすることができる。
ここで、当該燃料電池システム100における非連携状態について、図3を参照しつつ説明する。図3においては、冷却水回路10及び暖房用冷却水回路20における冷却水の流れを矢印Wで示し、車両用空調ユニット30における空調空気としての冷風の流れを矢印Cで示している。
当該燃料電池システム100における非連携状態において、切替弁24は、分岐流路22における冷却水の流れを遮断して、暖房用冷却水流路21及び還流路23における冷却水の流れを許容するように、その作動を制御されている。
これにより、非連携状態では、冷却水回路10を流れる冷却水Wは、燃料電池1と、ラジエータ11(又は、バイパス流路15)と、三方弁13と、冷却水ポンプ12とを通過して冷却水流路14を循環する。一方、暖房用冷却水回路20を流れる冷却水Wは、暖房用冷却水流路21及び還流路23からなる循環流路を流れ、切替弁24と、暖房用冷却水ポンプ25と、電熱ヒータ26と、ヒータコア27とを通過しながら循環する。
つまり、当該燃料電池システム100において、非連携状態では、冷却水回路10を流れる冷却水が分岐流路22を介して暖房用冷却水回路20に流入することはなく、暖房用冷却水回路20を流れる冷却水が冷却水回路10へ流出することもない。即ち、冷却水回路10と、暖房用冷却水回路20とは独立した状態であり、冷却水回路10を流れる冷却水と、暖房用冷却水回路20を流れる冷却水とが混合することはない。
ここで、上述したように、ステップS5における車両用空調ユニット30の作動制御によって、蒸発器35によって冷却された空調空気としての冷風Cが加熱流路46内に流入して、ヒータコア27を通過する。この時、ヒータコア27において、空調空気としての冷風Cと、ヒータコア27内部を流れる冷却水Wの間で熱交換が行われる。
これにより、非連携状態の燃料電池システム100によれば、暖房用冷却水回路20を循環する冷却水Wを、冷凍サイクル装置31で冷却された空調空気としての冷風Cによって冷却することができる。
そして、暖房用冷却水回路20を流れる冷却水Wは、冷却水回路10に対して流出入することなく、暖房用冷却水回路20内を循環する為、当該燃料電池システム100は、空調空気としての冷風Cを介して、冷凍サイクル装置31で生じた冷熱を、暖房用冷却水回路20の冷却水に蓄冷することができる。
再び図2を参照しつつ、ステップS6以後の処理について説明する。ステップS6においては、水温センサ16で取得された冷却水温度が予め定められた基準冷却水温度以上であるか否かが判断される。この基準冷却水温度は、燃料電池1における発電に伴って燃料電池1が高温状態となっている場合の冷却水温度を示しており、例えば、90℃である。
換言すると、ステップS6では、燃料電池1に生じている熱量がラジエータ11の放熱性能を超えているか否かが判断されている。冷却水温度が基準冷却水温度以上である場合はステップS7に進む。一方、冷却水温度が基準冷却水温度以上でない場合は、ステップS2に処理を戻し、非連携状態での作動を継続することで、暖房用冷却水回路20に対する蓄冷を続行する。
ステップS7に移行すると、暖房用冷却水回路20の切替弁24の作動を制御して、燃料電池システム100における冷却水回路10と暖房用冷却水回路20を非連携状態から連携状態に変更する。連携状態では、冷却水回路10と暖房用冷却水回路20の間における冷却水の流れが許容され、冷却水回路10及び暖房用冷却水回路20を構成する流路を冷却水が循環する状態である。この連携状態は、本発明における第1状態に相当する。
ここで、当該燃料電池システム100における連携状態について、図4を参照しつつ説明する。図4においても、冷却水回路10及び暖房用冷却水回路20における冷却水の流れを矢印Wで示し、車両用空調ユニット30における空調空気としての冷風の流れを矢印Cで示している。
ステップS7における切替弁24の作動制御によって、分岐流路22及び暖房用冷却水流路21に対する冷却水Wの流れが許容され、還流路23における冷却水Wの流れは遮断された状態となる。この状態が当該燃料電池システム100における連携状態である。
この連携状態では、燃料電池1から流出した温められた冷却水Wの一部が分岐流路22及び切替弁24を通って暖房用冷却水回路20の暖房用冷却水流路21に供給される。当該冷却水Wは、暖房用冷却水流路21を通過してヒータコア27内に流入する。そして、ヒータコア27から流出して暖房用冷却水流路21を流れた冷却水Wの全量は、冷却水回路10の冷却水流路14に流入する。
即ち、当該燃料電池システム100の連携状態では、冷却水回路10に対する暖房用冷却水回路20における冷却水の流出入を許容させることで、高温状態にある燃料電池1の冷却に、非連携状態において暖房用冷却水回路20に蓄熱した冷熱を用いることができ、燃料電池システム100としての冷却性能を向上させることができる。これにより、当該燃料電池システム100は、発電負荷が高く高温状態になった場合であっても、燃料電池1による発電を安定して行うことができる。
又、図4に示すように、この連携状態においても、車両用空調ユニット30では、冷凍サイクル装置31の蒸発器35で冷却された冷風Cが、加熱流路46内のヒータコア27を通過するように制御されている。これにより、空調空気である冷風Cを介して、暖房用冷却水回路20における冷却水の冷却も並行して行われることになる為、燃料電池システム100としての冷却性能を更に向上させることができる。
その後、ステップS8では、図2に示すように、燃料電池システム100の作動を停止するか否かが判断される。この判断処理は、例えば、燃料電池システム100の作動停止に関する操作が行われたか否かに基づいて判断される。作動停止に関する操作には、例えば、電気自動車(燃料電池車両)に対するキーオフ操作が含まれる。燃料電池システム100の作動を停止させる場合には、この制御プログラムの実行を終了する。一方、燃料電池システム100の作動を停止させない場合には、ステップS2に戻り、上述した各ステップを実行する。
以上説明したように、第1実施形態に係る燃料電池システム100によれば、ステップS3〜ステップS5の処理を実行することで、冷却水回路10と暖房用冷却水回路20を図3に示す非連携状態にすることができる。
これにより、燃料電池システム100は、燃料電池1が高温となる前段階で、冷凍サイクル装置31における蒸発器35で生じた冷熱を、空調空気を介して、暖房用冷却水回路20を循環する冷却水に蓄熱しておくことができ、燃料電池システム100を構成する熱源を有効に活用することができる。
そして、当該燃料電池システム100によれば、燃料電池1が高温状態になった場合には、冷却水回路10と暖房用冷却水回路20が非連携状態から図4に示す連携状態に変更される。
これにより、当該燃料電池システム100は、暖房用冷却水回路20に蓄熱されていた冷熱を、燃料電池1の冷却に用いることができるので、高温状態となった燃料電池1の冷却にも対応することができ、燃料電池1による発電の安定性を向上させることができる。
又、図4に示すように、この連携状態においても、蒸発器35により冷却された冷風Cを加熱流路46内のヒータコア27に通過させることで、暖房用冷却水回路20を流れる冷却水を冷風Cで冷却することができる。即ち、車両用空調ユニット30の作動制御を非連携状態から継続して実行することで、燃料電池システム100の冷却性能を更に向上させることができ、燃料電池1による発電の安定性を更に向上させることができる。
そして、第1実施形態においては、水温センサ16によって検出された冷却水温度を用いて、燃料電池1が高温状態であるか否かが判定されている。当該水温センサ16は、冷却水回路10の冷却水流路14において、燃料電池1の流出口側部分に配置されている。
従って、水温センサ16によって検出される冷却水温度は、燃料電池1の温度に強い相関関係を有することになる為、燃料電池システム100は、燃料電池1が高温状態であるか否かを精度よく判定することができ、非連携状態から連携状態への変更を適切なタイミングで行うことができる。
(第2実施形態)
続いて、上述した第1実施形態とは異なる第2実施形態について、図面を参照しつつ説明する。第2実施形態に係る燃料電池システム100は、第1実施形態に係る燃料電池システム100と基本的な構成をほぼ等しく構成されており、冷却水回路10、暖房用冷却水回路20及び車両用空調ユニット30を熱源として有効利用する為の制御プログラムの内容が相違している。従って、以下の説明において、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
第2実施形態に係る燃料電池システム100は、第1実施形態と同様に、電気自動車(燃料電池車両)に適用されており、燃料電池1と、冷却水回路10と、暖房用冷却水回路20と、車両用空調ユニット30と、制御装置50とを有している。
そして、第2実施形態においては、燃料電池システム100の作動が開始されると、制御装置50は、図5に示す制御プログラムを制御装置50のROMから読み出して、CPUによって実行する。
図5に示すように、先ず、ステップS11においては、燃料電池システム100の作動が開始されると、燃料電池システム100を構成する各制御機器の作動が開始される。このステップS11における処理内容は、第1実施形態におけるステップS1と同様である為、詳細な説明は省略する。
ステップS12では、燃料電池1における電解質膜の膜抵抗であるインピーダンスが制御装置50に入力される。ここで、燃料電池1の電解質膜は、当該電解質膜に含まれる水分が蒸発等によって減少する程に、その膜抵抗(即ち、インピーダンス)が増加する傾向を示す。即ち、当該インピーダンスは、燃料電池1が高温状態であるか否かを判定する為のパラメータとして用いることができる。
尚、第2実施形態に係る燃料電池システム100においては、周知の交流インピーダンス法により、燃料電池1における電解質膜のインピーダンスが検出されている。この点、制御装置50が電解質膜のインピーダンスを取得することができればよく、その取得方法は適宜変更可能である。例えば、インピーダンスに相関を有する一又は複数の物理量を用いて、電解質膜のインピーダンスを算出する構成としても良いし、インピーダンスを検出する為のセンサを配置しても良い。
ステップS13では、外気温センサ52により検出された外気温が予め定められた基準外気温以上であるか否かが判断される。この判断処理は、第1実施形態におけるステップS3と同様の処理である。外気温が基準外気温以上である場合はステップS14に進み、そうでない場合は、ステップS18に移行する。
ステップS14では、暖房用冷却水回路20の切替弁24及び暖房用冷却水ポンプ25の作動を制御して、第2実施形態に係る燃料電池システム100における冷却水回路10と暖房用冷却水回路20を非連携状態にする。
ステップS15においては、室内ユニット40における送風機44の作動が開始され、加熱流路46側が開状態になるようにエアミックスドア45の作動が制御される。又、冷凍サイクル装置31における圧縮機32及び膨張弁34の作動が制御され、膨張弁34で減圧された冷媒を、蒸発器35にて蒸発させて吸熱作用を発揮させる。
即ち、ステップS14、ステップS15の処理は、第1実施形態におけるステップS4及びステップS5と同様の処理である。従って、第2実施形態における非連携状態は、第1実施形態と同様に、図3に示す状態となる。
これにより、第2実施形態に係る燃料電池システム100は、第1実施形態と同様に、燃料電池1が高温となる前段階で、冷凍サイクル装置31における蒸発器35で生じた冷熱を、空調空気を介して、暖房用冷却水回路20を循環する冷却水に蓄熱しておくことができる。
ステップS16では、ステップS12で取得した燃料電池1のインピーダンス(以下、取得インピーダンスという)が予め定められた基準値以上であるか否かが判断される。この基準値は、燃料電池1の電解質膜に含まれる水分が燃料電池1の熱によって一定以下に減少した状態を示しており、燃料電池1が高温状態であるか否かの判定基準を構成する。
即ち、ステップS16は、燃料電池1が高温状態であるか否かを判断する為の処理である。取得インピーダンスが基準値以上であると判断された場合には、燃料電池1が高温状態である為、ステップS17に進む。一方、取得インピーダンスが基準値以上でないと判断された場合には、燃料電池1が高温状態ではない為、ステップS2に処理を戻し、非連携状態における暖房用冷却水回路20に対する蓄冷を継続する。
第2実施形態に係る燃料電池システム100によれば、燃料電池1の温度状態を電解質膜のインピーダンスから直接的に把握することができるので、燃料電池1の高温状態であるか否か(即ち、冷却水回路10による冷却性能を超えているか否か)を精度よく判断することができる。
ステップS17においては、第1実施形態と同様に、切替弁24の作動を制御することで、冷却水回路10と暖房用冷却水回路20を非連携状態から図4に示す連携状態に変更する。これにより、当該燃料電池システム100は、高温状態にある燃料電池1の冷却に、非連携状態において暖房用冷却水回路20に蓄熱した冷熱を用いることができ、燃料電池システム100としての冷却性能を向上させることができる。従って、当該燃料電池システム100は、発電負荷が高く高温状態になった場合であっても、燃料電池1による発電を安定して行うことができる。
ステップS18では、燃料電池システム100の作動を停止するか否かが判断される。この判断処理は、第1実施形態におけるステップS8と同様の処理である為、その説明を省略する。
以上説明したように、第2実施形態に係る燃料電池システム100によれば、ステップS13〜ステップS15の処理を実行することで、冷却水回路10と暖房用冷却水回路20を図3に示す非連携状態にすることができる。
これにより、当該燃料電池システム100は、第1実施形態と同様に、燃料電池1が高温となる前段階で、冷凍サイクル装置31における蒸発器35で生じた冷熱を、空調空気を介して、暖房用冷却水回路20を循環する冷却水に蓄熱しておくことができ、燃料電池システム100を構成する熱源を有効に活用することができる。
そして、当該燃料電池システム100によれば、燃料電池1が高温状態になった場合には、冷却水回路10と暖房用冷却水回路20が非連携状態から連携状態に変更される。これにより、当該燃料電池システム100は、暖房用冷却水回路20に蓄熱されていた冷熱を、燃料電池1の冷却に用いることができるので、高温状態となった燃料電池1の冷却にも対応することができ、燃料電池1による発電の安定性を向上させることができる。
又、第2実施形態に係る連携状態においても、蒸発器35により冷却された冷風Cを加熱流路46内のヒータコア27に通過させることで、暖房用冷却水回路20を流れる冷却水を冷風Cで冷却することができる。即ち、車両用空調ユニット30の作動制御を非連携状態から継続して実行することで、燃料電池システム100の冷却性能を更に向上させることができ、燃料電池1による発電の安定性を更に向上させることができる。
そして、第2実施形態においては、燃料電池1のインピーダンスを用いて、燃料電池1が高温状態であるか否かが判定されている。このインピーダンスは、燃料電池1の電解質膜が含む水分量が少ない程大きな値を示し、当該電解質膜の水分は、燃料電池1の温度上昇に伴って減少する。
従って、燃料電池1のインピーダンスは、燃料電池1の温度に強い相関関係を有することになる為、燃料電池システム100は、燃料電池1が高温状態であるか否かを精度よく判定することができ、非連携状態から連携状態への変更を適切なタイミングで行うことができる。
(第3実施形態)
続いて、上述した各実施形態とは異なる第3実施形態について、図面を参照しつつ説明する。第3実施形態に係る燃料電池システム100は、上述した実施形態と同様に、電気自動車(燃料電池車両)に適用されており、燃料電池1と、冷却水回路10と、暖房用冷却水回路20と、車両用空調ユニット30と、制御装置50とを有している。
第3実施形態に係る燃料電池システム100においては、車両用空調ユニット30における室内ユニット40の構成を除いて、基本的に上述した実施形態と同様の構成である。従って、以下の説明において、上述した実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
第3実施形態に係る燃料電池システム100においても、車両用空調ユニット30は、冷凍サイクル装置31と、室内ユニット40とを有している。第3実施形態に係る室内ユニット40の空調ケース41には、図6〜図8に示すように、排気口48と、排気用ドア49とが配置されている。
排気口48は、空調ケース41における加熱流路46側の側面に形成されており、加熱流路46内に配置されたヒータコア27よりも空調空気流れ下流側に位置している。当該排気口48は、空調ケース41における加熱流路46の内部と、空調ケース41外部(即ち、燃料電池システム100外部)とを連通している。従って、第3実施形態に係る燃料電池システム100は、ヒータコア27を通過した空調空気を、排気Eとして燃料電池システム100外部に排出することができる。つまり、当該排気口48は、本発明における排気口として機能する。
排気用ドア49は、排気口48の下流側に配置された支持軸周りに回動可能に支持された板状の部材である。排気用ドア49は、排気口48の開口面積及び加熱流路46の流路面積に対応して形成されており、排気口48及び加熱流路46を閉塞可能に形成されている。排気用ドア49は、電動アクチュエータの作動によって支持軸周りに回動するように構成されており、制御装置50による作動制御によって任意の位置に回動する。
即ち、排気用ドア49は、図7に示す排気口48を閉塞すると共に加熱流路を開放した状態と、図8に示す排気口48を開放すると共に加熱流路46を閉塞した状態とを切り替えることができる。従って、当該排気用ドア49は、本発明における排気用部材として機能する。
図7に示すように、排気用ドア49によって排気口48を閉塞することで、加熱流路46を流れる空調空気は、空調ケース41外部へ漏出することなく、空調対象空間である車室内に供給される。即ち、当該燃料電池システム100によれば、空調ケース41に排気口48を形成した場合であっても、加熱流路46の機能を充分に維持することができる。
一方、図8に示すように、排気用ドア49によって排気口48を開放し、加熱流路46の下流側を閉塞すると、ヒータコア27を通過した空調空気は、排気Eとして、排気口48から燃料電池システム100外部に排出される。
ここで、第3実施形態に係る燃料電池システム100においては、冷却水回路10と暖房用冷却水回路20が非連携状態にする場合には、排気用ドア49の作動を制御して、図8に示すように、排気口48を開放すると同時に加熱流路46を閉塞した状態にする。
上述したように、非連携状態の場合、ヒータコア27において、蒸発器35で冷却された冷風Cと暖房用冷却水回路20の冷却水との熱交換が行われ、暖房用冷却水回路20の冷却水Wが冷却される。
換言すると、蒸発器35で冷却された冷風Cは、ヒータコア27における冷却水Wとの熱交換によって温められることになる。蒸発器35で冷却されたにも関わらず、ヒータコア27で温められた空調空気が空調対象空間である車室内に供給されてしまうと、車室内の快適性を損ねる可能性がある。
この点、図8に示すように、排気用ドア49によって、排気口48を開放すると同時に加熱流路46を閉塞した状態にすることで、燃料電池システム100は、ヒータコア27を通過した空調空気を、排気Eとして外部に排出することができる。
又、排気口48の下流側における加熱流路46が排気用ドア49で閉塞されている為、ヒータコア27を通過した空調空気は、排気口48側に導かれ、車室内へと向かうことはない。即ち、非連携状態に際して、排気用ドア49を図8に示すように制御することで、当該燃料電池システム100は、非連携状態における車室内の快適性を維持することができる。
以上説明したように、第3実施形態に係る燃料電池システム100は、上述した実施形態と同様に、燃料電池1と、冷却水回路10と、暖房用冷却水回路20と、車両用空調ユニット30と、制御装置50とを有している。当該燃料電池システム100によれば、冷却水回路10と暖房用冷却水回路20を非連携状態とすることで、冷凍サイクル装置31における蒸発器35で生じた冷熱を、空調空気を介して、暖房用冷却水回路20を循環する冷却水に蓄熱しておくことができ、燃料電池システム100を構成する熱源を有効に活用することができる。
そして、第3実施形態においては、この非連携状態において、排気用ドア49の作動を制御して、図8に示すように、排気口48を開放すると共に、排気口48の下流側における加熱流路46を閉塞する。
これにより、ヒータコア27を通過する際に温められた空調空気を、車室内へ供給することなく、燃料電池システム100外部に排出することができる。即ち、当該燃料電池システム100によれば、非連携状態時に排気用ドア49の作動を制御することで、車室内の快適性を維持することができる。
又、当該燃料電池システム100によれば、燃料電池1が高温状態になった場合には、冷却水回路10と暖房用冷却水回路20が非連携状態から連携状態に変更される。これにより、当該燃料電池システム100は、暖房用冷却水回路20に蓄熱されていた冷熱を、燃料電池1の冷却に用いることができるので、高温状態となった燃料電池1の冷却にも対応することができ、燃料電池1による発電の安定性を向上させることができる。
(第4実施形態)
続いて、上述した各実施形態とは異なる第4実施形態について、図面を参照しつつ説明する。第4実施形態に係る燃料電池システム100は、暖房用冷却水回路20の構成を除いて、基本的に上述した各実施形態と同様の構成である。従って、以下の説明において、上述した実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
第4実施形態に係る燃料電池システム100は、電気自動車(燃料電池車両)に適用されており、図9に示すように、燃料電池1と、冷却水回路10と、暖房用冷却水回路20と、車両用空調ユニット30と、制御装置50とを有している。
第4実施形態に係る暖房用冷却水回路20は、上述した実施形態と同様に、暖房用冷却水流路21と、分岐流路22と、還流路23と、切替弁24と、暖房用冷却水ポンプ25と、電熱ヒータ26と、ヒータコア27とを有している。これらの点は、上述した各実施形態と同様である。
図9に示すように、第4実施形態に係る暖房用冷却水回路20では、蓄冷器28が暖房用冷却水流路21上に配置されている。蓄冷器28は、暖房用冷却水流路21の流路外周に対してロウ付け接合されており、その内部に蓄冷材が収容されている。蓄冷器28における蓄冷材としては、例えば、パラフィン等を用いることができる。
従って、第4実施形態に係る燃料電池システム100によれば、暖房用冷却水流路21を流れる冷却水との熱交換によって、蓄冷器28内の蓄冷材を凝固させて冷熱を蓄えることができる。当該蓄冷器28は、本発明における蓄熱部として機能する。
即ち、第4実施形態に係る燃料電池システム100によれば、冷却水回路10と暖房用冷却水回路20を非連携状態とした場合に、暖房用冷却水回路20に蓄冷する際に、暖房用冷却水回路20を循環する冷却水に加えて、蓄冷器28にも蓄冷することができる。
これにより、当該燃料電池システム100によれば、連携状態にした場合に、高温状態の燃料電池1の冷却に利用可能な冷熱を増大させることができるので、より高温状態となった燃料電池1の冷却にも対応することができ、燃料電池1の発電に関する安定性を高めることができる。
尚、暖房用冷却水回路20における蓄冷器28の配置は、図9の模式図で示す配置に限定されるものではなく、適宜変更することができる。この点、非連携状態における蓄冷と連携状態における冷熱の利用の観点から、連携状態と非連携状態の何れにおいても冷却水が流れる暖房用冷却水回路20の流路であることが望ましい。
以上説明したように、第4実施形態に係る燃料電池システム100は、上述した実施形態と同様に、燃料電池1と、冷却水回路10と、暖房用冷却水回路20と、車両用空調ユニット30と、制御装置50とを有している。当該燃料電池システム100によれば、冷却水回路10と暖房用冷却水回路20を非連携状態とすることで、冷凍サイクル装置31における蒸発器35で生じた冷熱を、空調空気を介して、暖房用冷却水回路20に蓄熱しておくことができ、燃料電池システム100を構成する熱源を有効に活用することができる。
ここで、第4実施形態に係る暖房用冷却水回路20は、暖房用冷却水流路21上に蓄冷器28を有している為、暖房用冷却水回路20を循環する冷却水に加えて、蓄冷器28にも、蒸発器35で生じた冷熱を蓄熱することができる。
又、当該燃料電池システム100によれば、燃料電池1が高温状態になった場合には、冷却水回路10と暖房用冷却水回路20が非連携状態から連携状態に変更される。これにより、当該燃料電池システム100は、暖房用冷却水回路20に蓄熱されていた冷熱を、燃料電池1の冷却に用いることができる。
このとき、第4実施形態においては、非連携状態において、暖房用冷却水回路20を循環する冷却水に加えて、蓄冷器28にも蓄冷することができるので、より高温状態となった燃料電池1の冷却にも対応することができ、燃料電池1による発電の安定性を更に向上させることができる。
(他の実施形態)
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、上述した各実施形態を適宜組み合わせても良いし、上述した実施形態を種々変形することも可能である。
(1)上述した実施形態においては、燃料電池1として、固体高分子電解質型燃料電池(PEFC)を用いていたが、この態様に限定されるものではない。本発明における燃料電池としては、リン酸形燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)等を用いることも可能である。
(2)そして、本発明における冷凍サイクルのサイクル構成は、上述した各実施形態に記載された構成に限定されるものではない。ヒータコア27の空調空気流れ上流側に配置された熱交換器は、蒸発器(即ち、吸熱器)として機能する回路構成であれば、本発明を適用することができる。例えば、冷房モード、暖房モード、除湿暖房モードに切り替え可能な冷凍サイクルの回路構成を採用することができる。
(3)又、上述した実施形態においては、ステップS6では、水温センサ16にて検出された冷却水回路10における冷却水温度を用いて、燃料電池1の温度状態を判定し、ステップS16では、燃料電池1における電解質膜のインピーダンスを用いて、燃料電池1の温度状態を判定していたが、この態様に限定されるものではない。燃料電池1の温度に相関を有する他の物理量に基づいて、燃料電池1の温度状態を判定しても良いし、燃料電池1の温度を測定して判定しても良い。
(4)そして、上述した実施形態においては、冷却水回路10と暖房用冷却水回路20を非連携状態にする際に、ステップS4、ステップS5等の作動制御を行っていたが、この態様に限定されるものではない。例えば、非連携状態にする際に、その時点における車両用空調ユニット30の作動状況を考慮して、車両用空調ユニット30の作動内容を決定してもよい。
具体的には、非連携状態にする際に、操作パネル等の操作によって、車両用空調ユニット30に対する車室内の冷房要求がなされていた場合には、エアミックスドア45による加熱流路46側の開度を通常時(冷房要求がない場合)よりも小さくし、非加熱流路47側の開度を大きくするように構成しても良い。このように制御すれば、暖房用冷却水回路20に対する蓄冷と、車室内の冷房という要求を或る程度両立させることができる。
(5)そして、上述した実施形態においては、ステップS7、ステップS17で冷却水回路10と暖房用冷却水回路20を連携状態にした後も、図4に示すように、車両用空調ユニット30の作動を継続させていたが、この態様に限定されるものではない。
冷却水回路10と暖房用冷却水回路20が非連携状態である場合に、車両用空調ユニット30を作動させて、暖房用冷却水回路20に蓄冷することができれば、連携状態における車両用空調ユニット30の作動を停止してもよい。この場合であっても、暖房用冷却水回路20に蓄熱された冷熱を、高温状態の燃料電池1の冷却に用いることができるので、燃料電池1による発電の安定性を向上させることができる。