以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各実施形態において、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の実施形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1実施形態)
先ず、本開示における第1実施形態について、図1〜図3を参照しつつ説明する。第1実施形態では、本開示に係る空調装置1を、車両走行用の駆動力を走行用電動モータから得る電気自動車の車両用空調装置に適用している。空調装置1は、電気自動車において、空調対象空間である車室内の空調や、発熱機器としてのバッテリ31の温度調整を行う。
そして、空調装置1は、車室内の空調を行う空調運転モードとして、冷房モードと、暖房モードと、除湿暖房モードとを切り替えることができる。冷房モードは、車室内へ送風される送風空気を冷却して車室内へ吹き出す運転モードである。暖房モードは、送風空気を加熱して車室内へ吹き出す運転モードである。除湿暖房モードは、冷却して除湿された送風空気を再加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の除湿暖房を行う運転モードである。
又、空調装置1は、空調運転モードの状態によらずに、バッテリ31の冷却の有無を切り替えることができる。従って、空調装置1の運転モードは、空調運転モードの状態及びバッテリ31の冷却の有無の組み合わせによって定義することができる。この為、空調装置1の運転モードには、冷房モード、暖房モード、除湿暖房モード、単独冷却モード、冷却冷房モード、冷却暖房モード、冷却除湿暖房モードの7つの運転モードが含まれる。
単独冷却モードは、車室内の空調を行うことなく、バッテリ31の冷却を行う運転モードである。冷却冷房モードは、車室内の冷房を行うと共に、バッテリ31の冷却を行う運転モードである。冷却暖房モードは、車室内の暖房を行うと共に、バッテリ31の冷却を行う運転モードである。冷却除湿暖房モードは、車室内の除湿暖房を行うと共に、バッテリ31の冷却を行う運転モードである。
尚、空調装置1のヒートポンプサイクル10では、冷媒として、HFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。冷媒には、圧縮機11を潤滑する為の冷凍機油が混入されている。冷凍機油としては、液相冷媒に相溶性を有するPAGオイル(ポリアルキレングリコールオイル)が採用されている。冷凍機油の一部は、冷媒と共にサイクルを循環している。
次に、第1実施形態に係る空調装置1の具体的構成について、図1〜図3を参照しつつ説明する。第1実施形態に係る空調装置1は、ヒートポンプサイクル10と、加熱部20と、低温側熱媒体回路30と、室内空調ユニット40と、制御装置50を有している。
初めに、空調装置1におけるヒートポンプサイクル10を構成する各構成機器について説明する。ヒートポンプサイクル10は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置である。
先ず、圧縮機11は、ヒートポンプサイクル10において、冷媒を吸入し、圧縮して吐出する。圧縮機11は車両ボンネット内に配置されている。圧縮機11は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて回転駆動する電動圧縮機である。圧縮機11は、後述する制御装置50から出力される制御信号によって、回転数(即ち、冷媒吐出能力)が制御される。
そして、圧縮機11の吐出口には、熱媒体冷媒熱交換器12における冷媒通路12aの入口側が接続されている。熱媒体冷媒熱交換器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が有する熱を、加熱部20の高温側熱媒体回路21を循環する高温側熱媒体に放熱し、高温側熱媒体を加熱する熱交換器である。
熱媒体冷媒熱交換器12は、ヒートポンプサイクル10の冷媒を流通させる冷媒通路12aと、高温側熱媒体回路21の高温側熱媒体を流通させる熱媒体通路12bを有している。熱媒体冷媒熱交換器12は、伝熱性に優れる同種の金属(第1実施形態では、アルミニウム合金)で形成されており、各構成部材は、ロウ付け接合によって一体化されている。
これにより、冷媒通路12aを流通する高圧冷媒と熱媒体通路12bを流通する高温側熱媒体は、互いに熱交換することができる。熱媒体冷媒熱交換器12は、高圧冷媒の有する熱を放熱させる凝縮器の一例であり、後述する加熱部20の一部を構成する。尚、熱媒体通路12bを流通する高温側熱媒体としては、エチレングリコールを含む溶液、不凍液等を採用することができる。
熱媒体冷媒熱交換器12の冷媒通路12aの出口には、三方継手構造の冷媒分岐部が接続されている。冷媒分岐部は、熱媒体冷媒熱交換器12から流出した液相冷媒の流れを分岐するものである。冷媒分岐部では、3つの流入出口の内の1つを冷媒流入口とし、残りの2つを冷媒流出口としている。
冷媒分岐部の一方の冷媒流出口には、第1膨張弁14aを介して、室内蒸発器15の冷媒入口側が接続されている。冷媒分岐部の他方の冷媒流出口には、第2膨張弁14bを介して、チラー16の冷媒入口側が接続されている。
第1膨張弁14aは、少なくとも冷房モード時において、冷媒分岐部の一方の冷媒流出口から流出した冷媒を減圧させる減圧部である。第1膨張弁14aは、電気式の可変絞り機構であり、弁体と電動アクチュエータとを有している。即ち、第1膨張弁14aは、いわゆる電気式膨張弁によって構成されている。
第1膨張弁14aの弁体は、冷媒通路の通路開度(換言すれば絞り開度)を変更可能に構成されている。電動アクチュエータは、弁体の絞り開度を変化させるステッピングモータを有している。第1膨張弁14aは、制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
又、第1膨張弁14aは、絞り開度を全開した際に冷媒通路を全開する全開機能と、絞り開度を全閉した際に冷媒通路を閉塞する全閉機能を有する可変絞り機構で構成されている。つまり、第1膨張弁14aは、冷媒通路を全開にすることで冷媒の減圧作用を発揮させないようにすることができる。
そして、第1膨張弁14aは、冷媒通路を閉塞することで、室内蒸発器15に対する冷媒の流入を遮断できる。即ち、第1膨張弁14aは、冷媒を減圧させる減圧部としての機能と、冷媒回路を切り替える冷媒回路切替部としての機能とを兼ね備えている。
第1膨張弁14aの出口には、室内蒸発器15の冷媒入口側が接続されている。室内蒸発器15は、少なくとも冷房モード時に、第1膨張弁14aにて減圧された低圧冷媒と送風空気Wとを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させ、送風空気Wを冷却する蒸発器である。
図2に示すように、室内蒸発器15は、室内空調ユニット40のケーシング41内に配置されている。即ち、室内蒸発器15は、冷房用蒸発器の一例に相当し、第1膨張弁14aは、冷房用減圧部の一例に相当する。
図1に示すように、冷媒分岐部における他方の冷媒流出口には、第2膨張弁14bが接続されている。第2膨張弁14bは、少なくとも暖房モード時において、冷媒分岐部の他方の冷媒流出口から流出した冷媒を減圧させる減圧部である。
第2膨張弁14bは、第1膨張弁14aと同様に、電気式の可変絞り機構であり、弁体と電動アクチュエータとを有している。即ち、第2膨張弁14bは、いわゆる電気式膨張弁によって構成されており、全開機能と全閉機能を有している。
つまり、第2膨張弁14bは、冷媒通路を全開にすることで冷媒の減圧作用を発揮させないようにすることができる。又、第2膨張弁14bは、冷媒通路を閉塞することで、チラー16に対する冷媒の流入を遮断することができる。即ち、第2膨張弁14bは、冷媒を減圧させる減圧部としての機能と、冷媒回路を切り替える冷媒回路切替部としての機能とを兼ね備えている。
第2膨張弁14bの出口には、チラー16の冷媒入口側が接続されている。チラー16は、第2膨張弁14bにて減圧された低圧冷媒と、低温側熱媒体回路30を循環する低温側熱媒体とを熱交換させる熱交換器である。
チラー16は、第2膨張弁14bにて減圧された低圧冷媒を流通させる冷媒通路16aと、低温側熱媒体回路30を循環する低温側熱媒体を流通させる熱媒体通路16bとを有している。従って、チラー16は、冷媒通路16aを流通する低圧冷媒と熱媒体通路16bを流通する低温側熱媒体との熱交換によって、低圧冷媒を蒸発させて低温側熱媒体から吸熱する蒸発器である。即ち、チラー16は蒸発器の一例に相当し、第2膨張弁14bは減圧部の一例に相当する。
図1に示すように、室内蒸発器15の冷媒出口には、蒸発圧力調整弁17の入口側が接続されている。蒸発圧力調整弁17は、室内蒸発器15における冷媒蒸発圧力を予め定めた基準圧力以上に維持する蒸発圧力調整部である。蒸発圧力調整弁17は、室内蒸発器15の出口側の冷媒圧力の上昇に伴って、弁開度を増加させる機械式の可変絞り機構によって構成されている。
尚、当該蒸発圧力調整弁17は、室内蒸発器15における冷媒蒸発温度を、室内蒸発器15の着霜を抑制可能な基準温度(本実施形態では、1℃)以上に維持するように構成されている。
そして、蒸発圧力調整弁17の出口には、冷媒合流部の一方の冷媒入口側が接続されている。又、チラー16の冷媒出口側には、冷媒合流部の他方の冷媒入口側が接続されている。ここで、冷媒合流部は、冷媒分岐部と同様の三方継手構造のもので、3つの流入出口のうち2つを冷媒入口とし、残りの1つを冷媒出口としたものである。
冷媒合流部は、蒸発圧力調整弁17から流出した冷媒の流れとチラー16から流出した冷媒の流れとを合流させる。そして、冷媒合流部の冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
続いて、空調装置1における加熱部20について説明する。加熱部20は、ヒートポンプサイクル10における高圧冷媒を熱源として、空調対象空間に供給される送風空気Wを加熱する為の構成である。
第1実施形態に係る加熱部20は、高温側熱媒体回路21によって構成されている。高温側熱媒体回路21は、高温側熱媒体を循環させる熱媒体回路であり、高温側熱媒体としては、エチレングリコールを含む溶液、不凍液等を採用することができる。
加熱部20の高温側熱媒体回路21には、熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12b、ラジエータ22、ヒータコア23、電気ヒータ24、高温側流量調整弁25、高温側ポンプ26等が配置されている。
上述したように、熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bにおいては、高温側熱媒体が、冷媒通路12aを流通する高圧冷媒との熱交換によって加熱される。即ち、高温側熱媒体は、ヒートポンプサイクル10で汲み上げられた熱を用いて加熱される。
ラジエータ22は、熱媒体冷媒熱交換器12等で加熱された高温側熱媒体と図示しない外気ファンから送風された外気OAとを熱交換させて、高温側熱媒体の有する熱を外気OAに放熱させる熱交換器である。ラジエータ22は外気放熱器の一例に相当する。
そして、ラジエータ22は、車両ボンネット内の前方側に配置されている。上述した外気ファンの作動に伴って、外気OAは、車両前方側から後方へ流れ、ラジエータ22の熱交換部を通過する。又、車両走行時には、車両前方側から後方に向かってラジエータ22に走行風を当てることができる。
ヒータコア23は、熱媒体冷媒熱交換器12等で加熱された高温側熱媒体と室内蒸発器15を通過した送風空気Wとを熱交換させて、送風空気Wを加熱する熱交換器である。従って、ヒータコア23は暖房用熱交換器の一例に相当する。図1、図2に示すように、ヒータコア23は、室内空調ユニット40のケーシング41内に配置されている。
熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bにおける一方側の流入出口には、電気ヒータ24が接続されている。電気ヒータ24は、電力を供給されることによって発熱し、電気ヒータ24の熱媒体通路を流れる高温側熱媒体を加熱する加熱装置である。
電気ヒータ24としては、例えば、PTC素子(即ち、正特性サーミスタ)を有するPTCヒータを用いることができる。電気ヒータ24は、制御装置50から出力される制御電圧によって、高温側熱媒体を加熱する為の熱量を任意に調整することができる。
電気ヒータ24における熱媒体通路の出口側には、高温側流量調整弁25の流入出口の1つが接続されている。高温側流量調整弁25は、3つの流入出口を有する電気式の三方流量調整弁によって構成されている。高温側流量調整弁25の流入出口における他の一つは、ヒータコア23の流入口に接続されている。高温側流量調整弁25における残りの流入出口には、ラジエータ22の流入口が接続されている。
従って、高温側熱媒体回路21において、熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bを通過する高温側熱媒体の流れに関して、ラジエータ22及びヒータコア23は並列に接続されている。そして、高温側流量調整弁25は、高温側熱媒体回路21において、ヒータコア23に流入する高温側熱媒体の流量と、ラジエータ22に流入する高温側熱媒体の流量との流量割合を連続的に調整することができる。
そして、ラジエータ22の流出口及びヒータコア23の流出口には、三方継手構造の合流部が接続されている。合流部は、三方継手構造における3つの流入出口の内の1つを流出口とし、残りの2つを流入口としている。従って、合流部は、ラジエータ22を通過した高温側熱媒体の流れと、ヒータコア23を通過した高温側熱媒体の流れとを合流させることができる。
そして、合流部における流出口には、高温側ポンプ26の吸込口が接続されている。高温側ポンプ26は、高温側熱媒体回路21における高温側熱媒体を循環させる為に圧送する熱媒体ポンプである。高温側ポンプ26は、制御装置50から出力される制御電圧によって、回転数(即ち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。高温側ポンプ26の吐出口には、熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bにおける他方側の流入出口が接続されている。
図1に示すように、高温側熱媒体回路21は、分岐部に配置された高温側流量調整弁25によって、ラジエータ22側へ流れる高温側熱媒体の流量と、ヒータコア23側へ流れる高温側熱媒体の流量とを連続的に調整することができる。
つまり、高温側流量調整弁25の動作を制御することで、ラジエータ22にて外気OAに放熱される高温側熱媒体の熱量と、ヒータコア23にて送風空気Wに放熱される高温側熱媒体の熱量とを調整することができる。即ち、高温側流量調整弁25は、放熱量調整部の一例に相当する。
次に、空調装置1における低温側熱媒体回路30について説明する。低温側熱媒体回路30は、低温側熱媒体を循環させる熱媒体回路である。低温側熱媒体としては、高温側熱媒体回路21における高温側熱媒体と同様の流体を採用できる。
低温側熱媒体回路30には、チラー16の熱媒体通路16b、バッテリ31、外気熱交換器32、低温側流量調整弁33、低温側ポンプ34等が配置されている。チラー16における熱媒体通路16bの流出口には、低温側ポンプ34の吸込口側が接続されている。
低温側ポンプ34は、低温側熱媒体回路30において、チラー16の熱媒体通路16bを通過した低温側熱媒体を圧送する熱媒体ポンプである。低温側ポンプ34の基本的構成は、高温側ポンプ26と同様である。
そして、低温側ポンプ34の吐出口側には、三方継手構造の分岐部が接続されている。分岐部は、三方継手構造における3つの流入出口の内の1つを流入口とし、残りの2つを流出口としている。従って、分岐部は、低温側ポンプ34から圧送された低温側熱媒体の流れを2つの流れに分岐させることができる。
低温側熱媒体回路30の分岐部における一方の流出口には、バッテリ31における熱媒体通路の入口側が接続されている。バッテリ31は、車両の各種電気機器に電力を供給するもので、例えば、充放電可能な二次電池(本実施形態では、リチウムイオン電池)が採用される。バッテリ31は、充放電に際して発熱する為、発熱機器の一例に相当する。
バッテリ31は、複数の電池セルを積層配置し、これらの電池セルを電気的に直列或いは並列に接続することによって形成された、いわゆる組電池である。この種のバッテリ31は、低温になると出力が低下しやすく、高温になると劣化が進行しやすい。この為、バッテリ31の温度は、バッテリ31の充放電容量を充分に活用することができる適切な温度範囲内(例えば、15℃以上かつ55℃以下)に維持されている必要がある。
ここで、空調装置1では、バッテリ31の熱媒体通路に低温側熱媒体を通過させて熱交換させることで、バッテリ31で生じた熱を低温側熱媒体に吸熱させて、バッテリ31の温度調整を行うことができる。即ち、バッテリ31は、低温側熱媒体回路30にて低温側熱媒体により冷却可能に接続されており、予め定められた温度範囲内にバッテリ31の温度を保つことができる。
そして、低温側熱媒体回路30の分岐部における他方の流出口には、外気熱交換器32の入口側が接続されている。外気熱交換器32は、低温側ポンプ34から吐出された低温側熱媒体と、図示しない外気ファンにより送風された外気OAとを熱交換させる熱交換器である。
外気熱交換器32は、駆動装置室内の前方側に配置されている。このため、車両走行時には、外気熱交換器32に走行風を当てることができる。従って、外気熱交換器32は、ラジエータ22等と一体的に形成されていてもよい。
図1に示すように、バッテリ31の熱媒体通路の出口側及び外気熱交換器32の流出口側には、低温側流量調整弁33が接続されている。低温側流量調整弁33は、3つの流入出口を有する電気式の三方流量調整弁によって構成されている。
即ち、低温側流量調整弁33の流入出口の1つには、バッテリ31の熱媒体通路の出口側が接続されており、又、低温側流量調整弁33の別の流入出口には、外気熱交換器32の流出口側が接続されている。低温側流量調整弁33における更に別の流入出口には、チラー16における熱媒体通路16bの流入口側が接続されている。
この為、低温側熱媒体回路30は、低温側流量調整弁33の作動を制御することで、低温側熱媒体回路30における低温側熱媒体の流れを切り替えることができる。例えば、低温側流量調整弁33は、チラー16の熱媒体通路16bを通過する低温側熱媒体の流れに関して、外気熱交換器32を通過する低温側熱媒体の流量と、バッテリ31の熱媒体通路を通過する低温側熱媒体の流量との流量割合を連続的に調整できる。即ち、低温側ポンプ34は、熱交換量調整部の一例に相当する。
例えば、低温側熱媒体回路30では、チラー16側の流入出口とバッテリ31側の流入出口を連通させ、外気熱交換器32側の流入出口を閉塞させるように、低温側流量調整弁33を制御することができる。この場合、低温側熱媒体の流れは、チラー16を通過した低温側熱媒体の全量がバッテリ31の熱媒体通路を通過するように切り替えられる。
この態様によれば、チラー16で冷却された低温側熱媒体を、バッテリ31に供給することができるので、バッテリ31を冷却することができる。換言すると、バッテリ31の冷却に伴って吸熱したバッテリ31の廃熱を、チラー16における熱交換によって、ヒートポンプサイクル10の低圧冷媒に吸熱させることができる。
又、低温側熱媒体回路30では、チラー16側の流入出口と外気熱交換器32側の流入出口を連通させ、バッテリ31側の流入出口を閉塞させるように、低温側流量調整弁33を制御することができる。この場合、低温側熱媒体の流れは、チラー16を通過した低温側熱媒体の全量が外気熱交換器32を通過するように切り替えられる。
この態様によれば、チラー16で冷却された低温側熱媒体を、外気熱交換器32に供給することができるので、低温側熱媒体の温度が外気温よりも低ければ、外気OAから吸熱させることができる。これにより、外気OAを熱源として利用することができる。
即ち、空調装置1は、低温側熱媒体回路30を利用することで、バッテリ31の冷却や温度調整を行うことができる。又、空調装置1は、外気熱交換器32を利用することで、外気OAを熱源として利用することができる。
続いて、空調装置1を構成する室内空調ユニット40について、図2を参照しつつ説明する。室内空調ユニット40は、空調装置1において、ヒートポンプサイクル10によって温度調整された送風空気Wを車室内の適切な箇所へ吹き出すためのユニットである。室内空調ユニット40は、車室内最前部の計器盤(即ち、インストルメントパネル)の内側に配置されている。
室内空調ユニット40は、その外殻を形成するケーシング41の内部に形成される空気通路に、送風機42、室内蒸発器15、ヒータコア23等を収容して構成されている。ケーシング41は、車室内に送風される送風空気Wの空気通路を形成している。ケーシング41は、或る程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(具体的には、ポリプロピレン)にて成形されている。
図2に示すように、ケーシング41の送風空気流れ最上流側には、内外気切替装置43が配置されている。内外気切替装置43は、ケーシング41内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入するものである。
内外気切替装置43は、ケーシング41内へ内気を導入させる内気導入口及び外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の導入風量と外気の導入風量との導入割合を変化させる。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
内外気切替装置43の送風空気流れ下流側には、送風機42が配置されている。送風機42は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機によって構成されている。送風機42は、内外気切替装置43を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する。送風機42は、制御装置50から出力される制御電圧によって、回転数(即ち、送風能力)が制御される。
送風機42の送風空気流れ下流側には、室内蒸発器15及びヒータコア23が、送風空気の流れに対して、この順に配置されている。つまり、室内蒸発器15は、ヒータコア23よりも送風空気流れ上流側に配置されている。
又、ケーシング41内には、冷風バイパス通路45が形成されている。冷風バイパス通路45は、室内蒸発器15を通過した送風空気Wを、ヒータコア23を迂回させて下流側へ流す空気通路である。
室内蒸発器15の送風空気流れ下流側であって、且つ、ヒータコア23の送風空気流れ上流側には、エアミックスドア44が配置されている。エアミックスドア44は、室内蒸発器15を通過後の送風空気Wのうち、ヒータコア23を通過させる風量と冷風バイパス通路45を通過させる風量との風量割合を調整するものである。
エアミックスドア44は、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置50から出力される制御信号により、その作動が制御される。
ヒータコア23の送風空気流れ下流側には、混合空間46が設けられている。混合空間46では、ヒータコア23にて加熱された送風空気Wと冷風バイパス通路45を通過してヒータコア23にて加熱されていない送風空気Wとが混合される。
更に、ケーシング41の送風空気流れ最下流部には、混合空間46にて混合された送風空気(空調風)を車室内へ吹き出す開口穴が配置されている。この開口穴としては、フェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴(いずれも図示せず)が設けられている。
フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面の窓ガラスにおける内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
これらのフェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
従って、エアミックスドア44が、ヒータコア23を通過させる風量と冷風バイパス通路45を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間46にて混合される空調風の温度が調整される。これにより、各吹出口から車室内へ吹き出される送風空気(空調風)の温度も調整される。
そして、フェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴の送風空気流れ上流側には、それぞれ、フェイスドア、フットドア、デフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。フェイスドアは、フェイス開口穴の開口面積を調整する。フットドアは、フット開口穴の開口面積を調整する。デフロスタドアは、デフロスタ開口穴の開口面積を調整する。
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、空調風が吹き出される吹出口を切り替える吹出モード切替装置を構成する。フェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。この電動アクチュエータは、制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
次に、第1実施形態に係る空調装置1の制御系について、図3を参照しつつ説明する。制御装置50は、CPU、ROM及びRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。
そして、制御装置50は、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、その出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。制御対象機器には、圧縮機11と、第1膨張弁14aと、第2膨張弁14bと、電気ヒータ24と、高温側流量調整弁25と、高温側ポンプ26と、低温側流量調整弁33と、低温側ポンプ34と、送風機42等が含まれている。
図3に示すように、制御装置50の入力側には、空調制御用のセンサ群が接続されている。空調制御用のセンサ群は、内気温センサ52a、外気温センサ52b、日射センサ52c、高圧センサ52d、蒸発器温度センサ52e、送風空気温度センサ52f、バッテリ温度センサ52gを含んでいる。制御装置50には、これらの空調制御用のセンサ群の検出信号が入力される。
内気温センサ52aは、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ52bは、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出部である。日射センサ52cは、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。高圧センサ52dは、圧縮機11の吐出口側から第1膨張弁14a或いは第2膨張弁14bの入口側へ至る冷媒流路の高圧冷媒圧力Pdを検出する冷媒圧力検出部である。
蒸発器温度センサ52eは、室内蒸発器15における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Tefinを検出する蒸発器温度検出部である。送風空気温度センサ52fは、車室内へ送風される送風空気温度TAVを検出する送風空気温度検出部である。バッテリ温度センサ52gは、バッテリ31の温度であるバッテリ温度TBAを検出するバッテリ温度検出部である。
バッテリ温度センサ52gは、複数の温度検出部を有し、バッテリ31の複数の箇所の温度を検出している。この為、制御装置50では、バッテリ31の各部の温度差を検出することもできる。更に、バッテリ温度TBAとしては、複数の温度検出部における検出値の平均値を採用している。
そして、制御装置50の入力側には、高温側熱媒体回路21、低温側熱媒体回路30の各熱媒体回路における熱媒体の温度を検出する為に、複数の熱媒体温度センサが接続されている。複数の熱媒体温度センサには、第1熱媒体温度センサ53a〜第5熱媒体温度センサ53eが含まれている。
第1熱媒体温度センサ53aは、電気ヒータ24の熱媒体通路における出口部分に配置されており、電気ヒータ24から流出する高温側熱媒体の温度を検出する。第2熱媒体温度センサ53bは、ラジエータ22の出口部分に配置されており、ラジエータ22を通過した高温側熱媒体の温度を検出する。第3熱媒体温度センサ53cは、ヒータコア23の入口部分に配置されており、ヒータコア23に流入する高温側熱媒体の温度を検出する。
第4熱媒体温度センサ53dは、チラー16の熱媒体通路16bにおける出口部分に配置されており、チラー16から流出する低温側熱媒体の温度を検出する。第5熱媒体温度センサ53eは、バッテリ31における熱媒体通路の出口部分に配置されており、バッテリ31の熱媒体通路から流出する低温側熱媒体の温度を検出する。
そして、空調装置1は、第1熱媒体温度センサ53a〜第5熱媒体温度センサ53eの検出結果を参照して、加熱部20の高温側熱媒体回路21、低温側熱媒体回路30における熱媒体の流れを切り替える。これにより、空調装置1は、高温側熱媒体、低温側熱媒体を用いて、車両における熱を管理することができる。
更に、制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル51が接続されている。操作パネル51には、複数の操作スイッチが配置されている。従って、制御装置50には、この複数の操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル51における各種操作スイッチとしては、オートスイッチ、冷房スイッチ、風量設定スイッチ、温度設定スイッチ等がある。
オートスイッチは、空調装置1の自動制御運転を設定或いは解除する際に操作される。冷房スイッチは、車室内の冷房を行うことを要求する際に操作される。風量設定スイッチは、送風機42の風量をマニュアル設定する際に操作される。そして、温度設定スイッチは、車室内の目標温度Tsetを設定する際に操作される。
尚、制御装置50では、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されているが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェア及びソフトウェア)がそれぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。例えば、制御装置50のうち、加熱部20の放熱量調整部である高温側流量調整弁25の作動を制御する構成は、放熱量調整制御部50aである。
そして、制御装置50のうち、高温側熱媒体を加熱する電気ヒータ24の発熱量を制御する構成は、電気ヒータ制御部50bである。電気ヒータ制御部50bは加熱装置制御部に相当する。又、制御装置50のうち、低温側熱媒体回路30の熱交換量調整部である低温側流量調整弁33の作動を制御する構成は、熱交換量調整制御部50cである。
又、制御装置50のうち、バッテリ31のバッテリ温度TBAに応じて、車室内へ送風させる送風空気の目標吹出温度TAOを調整して設定する構成は、目標温度設定部50dである。又、制御装置50のうち、バッテリ31の冷却を開始する際に、低温側ポンプ34等の作動を制御する構成は、機器冷却制御部50eである。
続いて、第1実施形態における空調装置1の作動について説明する。上述したように、第1実施形態に係る空調装置1では、複数の運転モードから適宜運転モードを切り替えることができる。これらの運転モードの切り替えは、制御装置50に予め記憶された制御プログラムが実行されることによって行われる。
より具体的には、制御プログラムでは、空調制御用のセンサ群によって検出された検出信号および操作パネル51から出力される操作信号に基づいて、車室内へ送風させる送風空気の目標吹出温度TAOを算出する。
具体的には、目標吹出温度TAOは、以下数式F1によって算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×As+C…(F1)
尚、Tsetは温度設定スイッチによって設定された車室内の目標温度(車室内設定温度)、Trは内気温センサ52aによって検出された内気温、Tamは外気温センサ52bによって検出された外気温、Asは日射センサ52cによって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
そして、制御プログラムにおいては、操作パネル51のエアコンスイッチが投入された状態で、目標吹出温度TAOが予め定めた冷房基準温度αよりも低くなっている際には、空調運転モードを冷房モードに切り替える。
又、制御プラグラムでは、操作パネル51のエアコンスイッチが投入された状態で、目標吹出温度TAOが冷房基準温度α以上になっている際には、空調運転モードを除湿暖房モードに切り替える。更に、エアコンスイッチが投入されていない状態で、目標吹出温度TAOが冷房基準温度α以上になっている際には、空調運転モードを暖房モードに切り替える。
そして、制御プログラムでは、バッテリ温度TBAに応じて、バッテリ31の冷却の有無を切り替える。具体的には、バッテリ温度TBAが基準バッテリ温度KTBA以上となった際には、バッテリ31の冷却を実行する運転モードに切り替える。
従って、空調装置1における運転モードは、空調運転モードと、バッテリ31の冷却の有無を示す運転モードの組み合わせによって定められる。例えば、車室内の空調が行われていない状態で、バッテリ温度TBAが基準バッテリ温度KTBA以上となった場合は、空調装置1の運転モードは、車室内空調を行うことなく、バッテリ31を冷却する単独冷却モードに切り替えられる。
この為、空調装置1の運転モードには、冷房モード、暖房モード、除湿暖房モード、単独冷却モード、冷却冷房モード、冷却暖房モード、冷却除湿暖房モードが含まれる。以下に、各運転モードについて説明する。
(a)冷房モード
冷房モードは、バッテリ31の冷却を行うことなく、室内蒸発器15により送風空気Wを冷却して車室内に送風する運転モードである。この冷房モードでは、制御装置50は、第1膨張弁14aを予め定められた絞り開度で開き、第2膨張弁14bを全閉する。
従って、冷房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第1膨張弁14a、室内蒸発器15、蒸発圧力調整弁17、圧縮機11の順で流れる冷媒の循環回路が構成される。つまり、冷房モードでは、送風機42により送風される送風空気Wを、室内蒸発器15で冷却する冷媒回路に切り替えられる。
そして、このサイクル構成で、制御装置50は、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。例えば、制御装置50は、蒸発器温度センサ52eによって検出された冷媒蒸発温度Tefinが目標蒸発温度TEOとなるように圧縮機11の作動を制御する。目標蒸発温度TEOは、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置50に記憶された冷房モード用の制御マップを参照して決定される。
具体的には、この制御マップでは、送風空気温度センサ52fによって検出された送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくように、目標吹出温度TAOの上昇に伴って目標蒸発温度TEOを上昇させる。さらに、目標蒸発温度TEOは、室内蒸発器15の着霜を抑制可能な範囲(具体的には、1℃以上)の値に決定される。
そして、制御装置50は、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置50に記憶された制御マップを参照して送風機42の制御電圧(送風能力)を決定する。具体的には、この制御マップでは、目標吹出温度TAOの極低温域(最大冷房域)及び極高温域(最大暖房域)で送風機42の送風量を最大とし、中間温度域に近づくに伴って送風量を減少させる。
そして、冷房モードの加熱部20について、制御装置50は、予め定めた冷房モード時の水圧送能力を発揮するように、高温側ポンプ26の作動を制御する。又、制御装置50は、ラジエータ22側の流入出口と電気ヒータ24側の流入出口を連通させると共に、ヒータコア23側の流入出口を閉塞させるように、高温側流量調整弁25を制御する。
これにより、冷房モードの高温側熱媒体回路21では、高温側ポンプ26、熱媒体冷媒熱交換器12、電気ヒータ24、高温側流量調整弁25、ラジエータ22、高温側ポンプ26の順で循環する高温側熱媒体の循環回路が構成される。
又、冷房モードの低温側熱媒体回路30について、制御装置50は、低温側熱媒体回路30の構成機器を作動させることなく、停止状態を保つ。
このように、冷房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、熱媒体冷媒熱交換器12へ流入する。熱媒体冷媒熱交換器12では、高温側ポンプ26が作動しているので、高圧冷媒と高温側熱媒体回路21の高温側熱媒体が熱交換して、高圧冷媒が冷却されて凝縮し、高温側熱媒体が加熱される。
そして、高温側熱媒体回路21では、熱媒体冷媒熱交換器12にて加熱された高温側熱媒体が、電気ヒータ24及び高温側流量調整弁25を介して、ラジエータ22へ流入する。ラジエータ22へ流入した高温側熱媒体は、外気OAと熱交換して放熱する。ラジエータ22にて冷却された高温側熱媒体は、高温側ポンプ26に吸入されて再び熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bへ圧送される。
一方、熱媒体冷媒熱交換器12の冷媒通路12aを通過した高圧冷媒は、冷媒分岐部を介して、第1膨張弁14aへ流入して減圧される。第1膨張弁14aの絞り開度は、室内蒸発器15の出口側の冷媒の過熱度が概ね3℃となるように調整される。
第1膨張弁14aにて減圧された低圧冷媒は、室内蒸発器15へ流入する。室内蒸発器15へ流入した冷媒は、送風機42から送風された送風空気Wから吸熱して蒸発し、送風空気Wを冷却する。室内蒸発器15から流出した冷媒は、蒸発圧力調整弁17及び冷媒合流部を介して、圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される。
従って、冷房モードの空調装置1では、室内蒸発器15にて冷却された送風空気Wを車室内へ吹き出すことによって、車室内の冷房を行うことができる。
尚、この冷房モードにおいては、高温側熱媒体回路21にて、高温側熱媒体の有する熱を外気OAへ放熱させる構成である為、電気ヒータ24を作動させていない。電気ヒータ24を必要に応じて作動させても良いことは言うまでもない。
(b)暖房モード
暖房モードは、バッテリ31の冷却を行うことなく、ヒータコア23により送風空気Wを加熱して車室内に送風する運転モードである。この暖房モードでは、制御装置50は、第2膨張弁14bを所定の絞り開度で開き、第1膨張弁14aを全閉状態にする。
従って、暖房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第2膨張弁14b、チラー16、圧縮機11の順で冷媒が循環するヒートポンプサイクルが構成される。
つまり、暖房モードでは、チラー16へ冷媒を流入させ、低温側熱媒体回路30の低温側熱媒体から吸熱した熱を汲み上げて、送風空気Wを加熱する為に利用可能な冷媒回路に切り替えられる。
このサイクル構成で、制御装置50は、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。例えば、制御装置50は、高圧センサ52dによって検出された高圧冷媒圧力Pdが目標高圧PCOとなるように圧縮機11の作動を制御する。
目標高圧PCOは、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置50に記憶された暖房モード用の制御マップを参照して決定される。具体的には、この制御マップでは、送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくように、目標吹出温度TAOの上昇に伴って目標高圧PCOを上昇させる。
又、制御装置50は、冷房モードと同様に、送風機42の制御電圧(送風能力)を決定する。制御装置50は、ヒータコア23側の通風路を全開として冷風バイパス通路45を閉塞するように、エアミックスドア44の作動を制御する。
そして、暖房モードの加熱部20について、制御装置50は、予め定めた暖房モード時の水圧送能力を発揮するように、高温側ポンプ26を作動させる。又、制御装置50は、ヒータコア23側の流入出口と電気ヒータ24側の流入出口を連通させると共に、ラジエータ22側の流入出口を閉塞させるように、高温側流量調整弁25を制御する。
これにより、暖房モードの高温側熱媒体回路21では、高温側ポンプ26、熱媒体冷媒熱交換器12、電気ヒータ24、高温側流量調整弁25、ヒータコア23、高温側ポンプ26の順で循環する高温側熱媒体の循環回路が構成される。
又、暖房モードの低温側熱媒体回路30について、制御装置50は、暖房モード時の水圧送能力を発揮するように、低温側ポンプ34の作動を制御する。そして、制御装置50は、チラー16側の流入出口と外気熱交換器32側の流入出口を連通させると共に、バッテリ31側の流入出口を閉塞させるように、低温側流量調整弁33の作動を制御する。
これにより、暖房モードの低温側熱媒体回路30では、低温側ポンプ34、外気熱交換器32、低温側流量調整弁33、チラー16、低温側ポンプ34の順で循環する低温側熱媒体の循環回路が構成される。
ここで、低温側熱媒体回路30の低温側熱媒体は、外気熱交換器32を通過する場合には、外気OAとの熱交換を行う。低温側熱媒体は、チラー16にて冷却されている為、外気OAとの温度差に従って外気OAから吸熱する。つまり、空調装置1は、暖房モードにおいて、外気OAを暖房用の熱源として利用することができる。
そして、暖房モードのヒートポンプサイクル10において、熱媒体冷媒熱交換器12の冷媒通路12aから流出した高圧冷媒は、第2膨張弁14bへ流入し減圧される。第2膨張弁14bの絞り開度は、チラー16の出口側の冷媒が気液二相状態となるように調整される。低圧冷媒は、チラー16にて低温側熱媒体と熱交換することで蒸発して、低温側熱媒体から吸熱することができる。
低温側熱媒体から吸熱した冷媒は、圧縮機11で圧縮され、高圧冷媒として熱媒体冷媒熱交換器12へ吐出される。熱媒体冷媒熱交換器12では、高温側ポンプ26が作動しているので、高圧冷媒と高温側熱媒体回路21の高温側熱媒体が熱交換して、高圧冷媒が冷却されて凝縮する。これにより、高圧冷媒の熱によって高温側熱媒体が加熱される。
そして、高温側熱媒体回路21では、熱媒体冷媒熱交換器12にて加熱された高温側熱媒体が、高温側流量調整弁25を介して、ヒータコア23へ流入する。ヒータコア23へ流入した高温側熱媒体は、エアミックスドア44がヒータコア23側の通風路を全開としているので、室内蒸発器15を通過した送風空気Wと熱交換して放熱する。
これにより、暖房モードでは、送風空気Wが加熱されて、送風空気Wの温度が目標吹出温度TAOに近づく。ヒータコア23から流出した高温側熱媒体は、高温側ポンプ26に吸入されて再び熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bへ圧送される。
即ち、暖房モードの空調装置1は、低温側熱媒体回路30にて外気OAから吸熱した熱を、ヒートポンプサイクル10で汲み上げて、高温側熱媒体回路21を介して、送風空気Wの加熱に利用することができる。
(c)除湿暖房モード
除湿暖房モードは、バッテリ31の冷却を行うことなく、室内蒸発器15で冷却された送風空気Wをヒータコア23で加熱して車室内に送風する運転モードである。この除湿暖房モードでは、制御装置50は、第1膨張弁14a及び第2膨張弁14bをそれぞれ所定の絞り開度で開く。
従って、除湿暖房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第1膨張弁14a、室内蒸発器15、蒸発圧力調整弁17、圧縮機11の順に冷媒が循環する。同時に、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第2膨張弁14b、チラー16、圧縮機11の順で冷媒が循環する。
つまり、除湿暖房モードのヒートポンプサイクル10では、熱媒体冷媒熱交換器12から流出した冷媒の流れに対して、室内蒸発器15及びチラー16が並列的に接続されたヒートポンプサイクルが構成される。
このサイクル構成で、制御装置50は、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。例えば、制御装置50は、暖房モードと同様に、高圧冷媒圧力Pdが目標高圧PCOとなるように圧縮機11の作動を制御する。
そして、除湿暖房モードの加熱部20について、制御装置50は、予め定めた除湿暖房モード時の水圧送能力を発揮するように、高温側ポンプ26を作動させる。又、制御装置50は、ヒータコア23側の流入出口と電気ヒータ24側の流入出口を連通させると共に、ラジエータ22側の流入出口を閉塞させるように、高温側流量調整弁25を制御する。
これにより、除湿暖房モードの高温側熱媒体回路21では、高温側ポンプ26、熱媒体冷媒熱交換器12、電気ヒータ24、高温側流量調整弁25、ヒータコア23、高温側ポンプ26の順で循環する高温側熱媒体の循環回路が構成される。
又、除湿暖房モードの低温側熱媒体回路30について、制御装置50は、除湿暖房モード時の水圧送能力を発揮するように、低温側ポンプ34の作動を制御する。そして、制御装置50は、チラー16側の流入出口と外気熱交換器32側の流入出口を連通させると共に、バッテリ31側の流入出口を閉塞させるように、低温側流量調整弁33の作動を制御する。
これにより、除湿暖房モードの低温側熱媒体回路30では、低温側ポンプ34、外気熱交換器32、低温側流量調整弁33、チラー16、低温側ポンプ34の順で循環する低温側熱媒体の循環回路が構成される。
そして、除湿暖房モードのヒートポンプサイクル10において、熱媒体冷媒熱交換器12の冷媒通路12aから流出した高圧冷媒は、冷媒分岐部にて分岐される。冷媒分岐部で分岐した高圧冷媒の一方は、第1膨張弁14aへ流入し減圧される。第1膨張弁14aにて減圧された低圧冷媒は、室内蒸発器15へ流入する。
室内蒸発器15へ流入した冷媒は、送風機42から送風された送風空気Wから吸熱して蒸発し、送風空気Wを冷却する。室内蒸発器15から流出した冷媒は、蒸発圧力調整弁17及び冷媒合流部を介して、圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される。
一方、冷媒分岐部で分岐した高圧冷媒の他方は、第2膨張弁14bへ流入して減圧される。第2膨張弁14bで減圧された低圧冷媒は、チラー16に流入して、熱媒体通路16bを流通する低温側熱媒体と熱交換する。従って、低圧冷媒は、低温側熱媒体と熱交換することで蒸発して、低温側熱媒体から吸熱することができる。低温側熱媒体から吸熱した冷媒は、圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される。
圧縮機11から吐出された高圧冷媒は、熱媒体冷媒熱交換器12において、高温側熱媒体回路21の高温側熱媒体と熱交換して凝縮する。これにより、高圧冷媒の熱によって高温側熱媒体が加熱される。
そして、高温側熱媒体回路21では、熱媒体冷媒熱交換器12にて加熱された高温側熱媒体が、高温側流量調整弁25を介して、ヒータコア23へ流入する。ヒータコア23へ流入した高温側熱媒体は、室内蒸発器15にて冷却された送風空気Wと熱交換して放熱する。
これにより、除湿暖房モードでは、室内蒸発器15で冷却された送風空気Wを加熱することができ、車室内の除湿暖房を実現することができる。ヒータコア23から流出した高温側熱媒体は、高温側ポンプ26に吸入されて再び熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bへ圧送される。
即ち、除湿暖房モードの空調装置1は、低温側熱媒体回路30にて外気OAから吸熱した熱を、ヒートポンプサイクル10で汲み上げて、高温側熱媒体回路21を介して、冷却された送風空気Wを加熱する際の熱源として利用することができる。
(d)単独冷却モード
単独冷却モードは、車室内の空調運転を行うことなく、バッテリ31の冷却を行う運転モードである。この単独冷却モードでは、制御装置50は、第2膨張弁14bを所定の絞り開度で開き、第1膨張弁14aを全閉状態にする。
従って、単独冷却モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第2膨張弁14b、チラー16、圧縮機11の順で冷媒が循環するヒートポンプサイクルが構成される。
つまり、単独冷却モードでは、チラー16へ冷媒を流入させ、低温側熱媒体回路30の低温側熱媒体から吸熱した熱を、加熱部20の高温側熱媒体に汲み上げることができる冷媒回路に切り替えられる。
このサイクル構成で、制御装置50は、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。例えば、制御装置50は、単独冷却モードで定められた冷媒吐出能力を発揮するように、圧縮機11の作動を制御する。
そして、単独冷却モードの加熱部20について、制御装置50は、予め定めた単独冷却モード時の水圧送能力を発揮するように、高温側ポンプ26の作動を制御する。又、制御装置50は、ラジエータ22側の流入出口と電気ヒータ24側の流入出口を連通させると共に、ヒータコア23側の流入出口を閉塞させるように、高温側流量調整弁25を制御する。
これにより、単独冷却モードの高温側熱媒体回路21では、高温側ポンプ26、熱媒体冷媒熱交換器12、電気ヒータ24、高温側流量調整弁25、ラジエータ22、高温側ポンプ26の順で循環する高温側熱媒体の循環回路が構成される。
又、単独冷却モードの低温側熱媒体回路30について、制御装置50は、単独冷却モード時の水圧送能力を発揮するように、低温側ポンプ34の作動を制御する。そして、制御装置50は、チラー16側の流入出口とバッテリ31側の流入出口を連通させると共に、外気熱交換器32側の流入出口を閉塞させるように、低温側流量調整弁33の作動を制御する。
これにより、単独冷却モードの低温側熱媒体回路30では、低温側ポンプ34、バッテリ31、低温側流量調整弁33、チラー16、低温側ポンプ34の順で循環する低温側熱媒体の循環回路が構成される。
ここで、低温側熱媒体回路30では、チラー16にて冷却された低温側熱媒体が、低温側流量調整弁33を介して、バッテリ31に流入する。バッテリ31の熱媒体通路において、低温側熱媒体は、バッテリ31から吸熱することで、バッテリ31を冷却する。バッテリ31から流出した低温側熱媒体は、低温側ポンプ34に吸入されて再びチラー16の熱媒体通路16bへ圧送される。
つまり、単独冷却モードの空調装置1によれば、バッテリ31の冷却に際して吸熱した熱を、チラー16によって、低温側熱媒体回路30の低温側熱媒体からヒートポンプサイクル10の低圧冷媒に吸熱させることができる。
そして、空調装置1は、ヒートポンプサイクル10にて、チラー16で吸熱した熱を汲み上げて、熱媒体冷媒熱交換器12で高温側熱媒体回路21の高温側熱媒体に放熱することができる。更に、空調装置1は、高温側熱媒体が有する熱を、ラジエータ22にて外気OAへ放熱させることができる。
(e)冷却冷房モード
冷却冷房モードは、バッテリ31の冷却と並行して、室内蒸発器15により送風空気Wを冷却して車室内に送風する運転モードである。この冷却冷房モードでは、制御装置50は、第1膨張弁14a及び第2膨張弁14bをそれぞれ所定の絞り開度で開く。
従って、冷却冷房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第1膨張弁14a、室内蒸発器15、蒸発圧力調整弁17、圧縮機11の順に冷媒が循環する。同時に、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第2膨張弁14b、チラー16、圧縮機11の順で冷媒が循環する。
つまり、冷却冷房モードのヒートポンプサイクル10では、熱媒体冷媒熱交換器12から流出した冷媒の流れに対して、室内蒸発器15及びチラー16が並列的に接続されたヒートポンプサイクルが構成される。
このサイクル構成で、制御装置50は、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。例えば、制御装置50は、冷却冷房モードに対して定められた冷媒吐出能力を発揮するように、圧縮機11の作動を制御する。
そして、冷却冷房モードの加熱部20について、制御装置50は、予め定めた冷却冷房モード時の水圧送能力を発揮するように、高温側ポンプ26の作動を制御する。又、制御装置50は、ラジエータ22側の流入出口と電気ヒータ24側の流入出口を連通させると共に、ヒータコア23側の流入出口を閉塞させるように、高温側流量調整弁25を制御する。
これにより、冷却冷房モードの高温側熱媒体回路21では、高温側ポンプ26、熱媒体冷媒熱交換器12、電気ヒータ24、高温側流量調整弁25、ラジエータ22、高温側ポンプ26の順で循環する高温側熱媒体の循環回路が構成される。
又、冷却冷房モードの低温側熱媒体回路30について、制御装置50は、冷却冷房モード時の水圧送能力を発揮するように、低温側ポンプ34の作動を制御する。そして、制御装置50は、チラー16側の流入出口とバッテリ31側の流入出口を連通させると共に、外気熱交換器32側の流入出口を閉塞させるように、低温側流量調整弁33の作動を制御する。
これにより、冷却冷房モードの低温側熱媒体回路30では、低温側ポンプ34、バッテリ31、低温側流量調整弁33、チラー16、低温側ポンプ34の順で循環する低温側熱媒体の循環回路が構成される。
従って、冷却冷房モードにおける低温側熱媒体回路30では、チラー16にて冷却された冷却水が、低温側流量調整弁33を介して、バッテリ31に流入する。バッテリ31の熱媒体通路において、低温側熱媒体は、バッテリ31から吸熱することで、バッテリ31を冷却する。バッテリ31から流出した低温側熱媒体は、低温側ポンプ34に吸入されて再びチラー16の熱媒体通路16bへ圧送される。
つまり、冷却冷房モードの空調装置1によれば、バッテリ31の冷却に際して吸熱した熱を、チラー16によって、低温側熱媒体回路30の低温側熱媒体からヒートポンプサイクル10の低圧冷媒に吸熱させることができる。
又、冷却冷房モードでは、室内蒸発器15において、車室内に送風される送風空気Wとの熱交換により、低圧冷媒を蒸発させて送風空気Wを冷却することができる。これにより、冷却冷房モードの空調装置1は、車室内の冷房を実現することができる。
そして、冷却冷房モードでは、バッテリ31の冷却や送風空気Wの冷却に際して冷媒に吸熱した熱は、熱媒体冷媒熱交換器12において、高温側熱媒体に放熱される。高温側熱媒体回路21では、高温側熱媒体は、ラジエータ22で外気OAに対して放熱する。従って、冷却冷房モードの空調装置1は、バッテリ31の冷却と共に、車室内の冷房によって快適性を向上させることができる。
(f)冷却暖房モード
冷却暖房モードは、バッテリ31の冷却と並行して、ヒータコア23により送風空気Wを加熱して車室内に送風する運転モードである。この冷却暖房モードでは、制御装置50は、第2膨張弁14bを所定の絞り開度で開き、第1膨張弁14aを全閉状態にする。
従って、冷却暖房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第2膨張弁14b、チラー16、圧縮機11の順で冷媒が循環するヒートポンプサイクルが構成される。
つまり、冷却暖房モードでは、チラー16へ冷媒を流入させ、低温側熱媒体回路30の低温側熱媒体から吸熱した熱を汲み上げて、送風空気Wを加熱する為に利用可能な冷媒回路に切り替えられる。
このサイクル構成で、制御装置50は、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。例えば、制御装置50は、冷却暖房モードで定められた冷媒吐出能力を発揮するように、圧縮機11の作動を制御する。
そして、冷却暖房モードの加熱部20について、制御装置50は、予め定めた冷却暖房モード時の水圧送能力を発揮するように、高温側ポンプ26の作動を制御する。又、制御装置50は、高温側流量調整弁25の作動を制御することによって、ラジエータ22に対する高温側熱媒体の流量と、ヒータコア23に対する高温側熱媒体の流量との流量割合を調整する。この場合における高温側流量調整弁25の制御内容については、後に図面を参照しつつ説明する。
そして、制御装置50は、電気ヒータ24の作動を制御することで、電気ヒータ24の発熱量を調整する。この場合における電気ヒータ24の制御内容についても、後に図面を参照しつつ説明する。
これにより、冷却暖房モードの高温側熱媒体回路21では、高温側ポンプ26、熱媒体冷媒熱交換器12、電気ヒータ24、高温側流量調整弁25、ヒータコア23、高温側ポンプ26の順で循環する高温側熱媒体の循環回路が構成される。同時に、高温側ポンプ26、熱媒体冷媒熱交換器12、電気ヒータ24、高温側流量調整弁25、ラジエータ22、高温側ポンプ26の順で循環する高温側熱媒体の循環回路が構成される。
つまり、冷却暖房モードの高温側熱媒体回路21では、熱媒体冷媒熱交換器12から流出した高温側熱媒体の流れに対して、ラジエータ22及びヒータコア23が並列的に接続された熱媒体回路が構成される。
又、冷却暖房モードの低温側熱媒体回路30について、制御装置50は、冷却暖房モード時の水圧送能力を発揮するように、低温側ポンプ34の作動を制御する。そして、制御装置50は、チラー16側の流入出口とバッテリ31側の流入出口を連通させると共に、外気熱交換器32側の流入出口を閉塞させるように、低温側流量調整弁33の作動を制御する。
これにより、冷却暖房モードの低温側熱媒体回路30では、低温側ポンプ34、バッテリ31、低温側流量調整弁33、チラー16、低温側ポンプ34の順で循環する低温側熱媒体の循環回路が構成される。
尚、図1に示すように、低温側熱媒体回路30では、チラー16を通過した低温側熱媒体の流れに関して、バッテリ31と外気熱交換器32が並列に接続されている。従って、低温側流量調整弁33の作動を制御することで、バッテリ31に対する低温側熱媒体の流量と、外気熱交換器32に対する低温側熱媒体の流量との流量割合を調整することも可能である。この場合、低温側熱媒体回路30には、上述した循環回路に加えて、低温側ポンプ34、外気熱交換器32、低温側流量調整弁33、チラー16、低温側ポンプ34の順で循環する循環回路が同時に構成される。
冷却暖房モードの空調装置1によれば、低温側熱媒体回路30において、バッテリ31の冷却に際して吸熱した熱量を、チラー16にてヒートポンプサイクル10の低圧冷媒に吸熱させることができる。そして、冷却暖房モードの空調装置1によれば、ヒートポンプサイクル10にて、低温側熱媒体から吸熱した熱を、熱媒体冷媒熱交換器12により高温側熱媒体に放熱させることができる。
又、高温側熱媒体回路21において、高温側流量調整弁25の作動を制御することで、ヒータコア23における高温側熱媒体の放熱量と、ラジエータ22における高温側熱媒体の放熱量を調整することができる。換言すると、空調装置1は、送風空気Wの加熱に関して余剰となった高温側熱媒体の熱を、ラジエータ22にて外気OAに放熱させることができる。
更に、冷却暖房モードでは、高温側熱媒体回路21において、電気ヒータ24によって高温側熱媒体を加熱することができる。従って、空調装置1は、電気ヒータ24の発熱量を適切に調整することによって、ヒータコア23にて送風空気Wを適切に加熱し、車室内の暖房を行うことができる。
(g)冷却除湿暖房モード
冷却除湿暖房モードは、バッテリ31の冷却と並行して、室内蒸発器15で冷却された送風空気Wをヒータコア23で加熱して車室内に送風する運転モードである。この冷却除湿暖房モードでは、制御装置50は、第1膨張弁14a及び第2膨張弁14bをそれぞれ所定の絞り開度で開く。
従って、冷却除湿暖房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第1膨張弁14a、室内蒸発器15、蒸発圧力調整弁17、圧縮機11の順に冷媒が循環する。同時に、圧縮機11、熱媒体冷媒熱交換器12、第2膨張弁14b、チラー16、圧縮機11の順で冷媒が循環する。
つまり、冷却除湿暖房モードのヒートポンプサイクル10では、熱媒体冷媒熱交換器12から流出した冷媒の流れに対して、室内蒸発器15及びチラー16が並列的に接続されたヒートポンプサイクルが構成される。
このサイクル構成で、制御装置50は、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。例えば、制御装置50は、冷却除湿暖房モードで定められた冷媒吐出能力を発揮するように、圧縮機11の作動を制御する。
そして、冷却除湿暖房モードの加熱部20について、制御装置50は、予め定めた冷却除湿暖房モード時の水圧送能力を発揮するように、高温側ポンプ26の作動を制御する。又、制御装置50は、冷却暖房モードと同様に、高温側流量調整弁25の作動を制御することによって、ラジエータ22に対する高温側熱媒体の流量と、ヒータコア23に対する高温側熱媒体の流量との流量割合を調整する。
そして、制御装置50は、電気ヒータ24の作動を制御することで、電気ヒータ24の発熱量を調整する。この場合における電気ヒータ24の制御内容についても、後に図面を参照しつつ説明する。
これにより、冷却除湿暖房モードの高温側熱媒体回路21では、高温側ポンプ26、熱媒体冷媒熱交換器12、電気ヒータ24、高温側流量調整弁25、ヒータコア23、高温側ポンプ26の順で循環する高温側熱媒体の循環回路が構成される。同時に、高温側ポンプ26、熱媒体冷媒熱交換器12、電気ヒータ24、高温側流量調整弁25、ラジエータ22、高温側ポンプ26の順で循環する高温側熱媒体の循環回路が構成される。
つまり、冷却除湿暖房モードの高温側熱媒体回路21では、熱媒体冷媒熱交換器12から流出した高温側熱媒体の流れに対して、ラジエータ22及びヒータコア23が並列的に接続された熱媒体回路が構成される。
又、冷却除湿暖房モードの低温側熱媒体回路30について、制御装置50は、冷却除湿暖房モード時の水圧送能力を発揮するように、低温側ポンプ34の作動を制御する。そして、制御装置50は、チラー16側の流入出口とバッテリ31側の流入出口を連通させると共に、外気熱交換器32側の流入出口を閉塞させるように、低温側流量調整弁33の作動を制御する。
これにより、冷却除湿暖房モードの低温側熱媒体回路30では、低温側ポンプ34、バッテリ31、低温側流量調整弁33、チラー16、低温側ポンプ34の順で循環する循環回路が構成される。
冷却除湿暖房モードの空調装置1によれば、低温側熱媒体回路30において、バッテリ31の冷却に際して吸熱した熱量を、チラー16にてヒートポンプサイクル10の低圧冷媒に吸熱させることができる。そして、冷却除湿暖房モードの空調装置1によれば、ヒートポンプサイクル10において、低温側熱媒体から吸熱した熱と、送風空気Wを除湿する際に吸熱した熱を、熱媒体冷媒熱交換器12により高温側熱媒体に放熱させることができる。
又、高温側熱媒体回路21において、高温側流量調整弁25の作動を制御することで、ヒータコア23における高温側熱媒体の放熱量と、ラジエータ22における高温側熱媒体の放熱量を調整することができる。換言すると、空調装置1は、除湿された送風空気Wの加熱に関して余剰となった高温側熱媒体の熱を、ラジエータ22にて外気OAに放熱させることができる。
更に、冷却除湿暖房モードでは、高温側熱媒体回路21において、電気ヒータ24によって高温側熱媒体を加熱することができる。従って、空調装置1は、電気ヒータ24の発熱量を適切に調整することによって、除湿された送風空気Wを適切に加熱し、車室内の除湿暖房を行うことができる。
ここで、冷却暖房モード、冷却除湿暖房モードにて、熱媒体冷媒熱交換器12で高温側熱媒体に放熱可能な熱量は、室内蒸発器15で送風空気Wから吸熱した熱量、チラー16で低温側熱媒体から吸熱した熱量、圧縮機11における圧縮仕事量の総和に相当する。
そして、空調装置1におけるバッテリ31は、低温になると出力が低下しやすく、高温になると劣化が進行しやすい。この為、バッテリ31を適正な温度範囲に保つ為に低温側熱媒体を循環させると、チラー16で低温側熱媒体から吸熱される熱量は、バッテリ31で生じる廃熱の大きさに応じて変動することになる。
そうすると、熱媒体冷媒熱交換器12で高温側熱媒体に放熱される熱量は、バッテリ31で生じる廃熱の大きさに応じて変動する。この結果、熱媒体冷媒熱交換器12で高温側熱媒体に放熱された全ての熱量が、ヒータコア23にて送風空気Wの加熱に用いられるとした場合、送風空気Wの温度が変動することになり、車室内の快適性に影響を及ぼすことが想定される。
第1実施形態に係る空調装置1では、高温側流量調整弁25の作動制御、電気ヒータ24による発熱量の制御を行うことで、冷却暖房モード、冷却除湿暖房モードにおける送風空気Wの温度変動を抑制して、車室内の快適性を高めている。
続いて、第1実施形態に係る空調装置1における高温側流量調整弁25による放熱量の調整制御と、電気ヒータ24の発熱量の調整制御の内容について、図4〜図6を参照しつつ説明する。
図4は、高温側流量調整弁25による放熱量調整の開始および電気ヒータ24の発熱量調整の開始に関する制御内容を示している。この図4に係る制御プログラムは、冷却暖房モード又は冷却除湿暖房モードの何れかに運転モードが切り替わった時点で、制御装置50によって実行される。
ステップS1においては、送風空気温度センサ52fにより検出された送風空気温度が過剰であるか否かが判断される。ここで、送風空気温度が過剰である状態とは、目標温度としての目標吹出温度TAOを基準として定められる所定の温度範囲の上限値よりも、送風空気温度が高い状態を意味する。送風空気温度が過剰であると判断された場合は、ステップS2に進む。一方、送風空気温度が過剰ではないと判断された場合は、ステップS3に進む。
ステップS2では、送風空気温度を目標吹出温度TAOにする為には、高温側熱媒体が有する熱が過剰である為、高温側熱媒体回路21のラジエータ22における放熱量の調整が開始される。
即ち、ラジエータ22にて高温側熱媒体から外気OAに放熱される放熱量と、ヒータコア23にて高温側熱媒体から送風空気Wの加熱に用いられる放熱量のバランス調整が開始される。その後、図4の制御プログラムは終了される。
送風空気温度が目標吹出温度TAOに対して過剰である場合、高温側熱媒体回路21にてラジエータ22における放熱量を調整することで、高温側熱媒体から余剰熱を外気OAに放熱でき、送風空気温度を目標吹出温度TAOに近づけることが可能となる。
そして、ステップS3においては、送風空気温度センサ52fにより検出された送風空気温度が不足しているか否かが判断される。ここで、送風空気温度が不足している状態とは、目標温度としての目標吹出温度TAOを基準として定められる所定の温度範囲の下限値よりも、送風空気温度が低い状態を意味する。
送風空気温度が不足していると判断された場合は、ステップS4に進む。送風空気温度が不足していないと判断された場合には、図4の制御プログラムは終了される。従って、送風空気温度が目標吹出温度TAOを基準として定められた温度範囲内である場合には、そのまま制御プログラムは終了する。
ステップS4に移行すると、送風空気温度を目標吹出温度TAOにする為には、高温側熱媒体が有する熱が不足している為、高温側熱媒体回路21の電気ヒータ24による加熱が開始される。その後、図4の制御プログラムは終了される。
送風空気温度が目標吹出温度TAOに対して不足している場合に、高温側熱媒体回路21にて電気ヒータ24で高温側熱媒体を加熱することで、不足している熱量を補うことができ、送風空気温度を目標吹出温度TAOに近づけることが可能となる。
次に、第1実施形態における高温側流量調整弁25による放熱量調整の制御内容について、図面を参照しつつ説明する。図5に示す制御プログラムは、上述したステップS2にて、高温側流量調整弁25による放熱量の調整が開始されると同時に、制御装置50によって実行される。
図5に示すように、ステップS10では、送風空気温度センサ52fで検出される送風空気温度が上昇したか否かが判定される。送風空気温度が上昇したと判定された場合は、ステップS11に進む。一方、送風空気温度が上昇していないと判定された場合には、ステップS12に進む。
ステップS11においては、熱媒体冷媒熱交換器12での放熱量が、ヒータコア23及びラジエータ22での放熱量の和よりも大きい為、高温側熱媒体回路21内の高温側熱媒体の温度が上昇し、その結果、送風空気温度が上昇したと判定されている状態である。その為、ラジエータ22に対する高温側熱媒体の流量が増加するように、高温側流量調整弁25が制御される。
これにより、ラジエータ22での放熱量が増加する為、熱媒体冷媒熱交換器12での放熱量が、ヒータコア23及びラジエータ22での放熱量の和に近づいていく。従って、ステップS11における高温側流量調整弁25の作動を行うことで、高温側熱媒体回路21内の高温側熱媒体の温度上昇を抑えて、送風空気温度の上昇も抑えることができる。そして、この結果、送風空気温度は目標吹出温度TAOに近づいていく。その後、図5に示す制御プログラムは終了される。
ステップS12では、熱媒体冷媒熱交換器12での放熱量が、ヒータコア23及びラジエータ22での放熱量の和よりも小さい為、高温側熱媒体回路21における高温側熱媒体の温度が低下し、その結果、送風空気温度が下降したと判定されている状態である。その為、高温側熱媒体の流量が減少するように、高温側流量調整弁25が制御される。
これにより、ラジエータ22での放熱量が減少する為、ヒータコア23及びラジエータ22での放熱量の和が、熱媒体冷媒熱交換器12での放熱量に近づいていく。従って、ステップS12における高温側流量調整弁25の作動を行うことで、高温側熱媒体回路21内の高温側熱媒体の温度低下を抑えて、送風空気温度の低下を抑えることができる。この結果、送風空気温度は目標吹出温度TAOに近づいていく。その後、図5に示す制御プログラムは終了される。
尚、図5に示す制御プログラムは、ステップS2にて高温側流量調整弁25による放熱量調整が開始された後であれば、空調装置1の運転モードが冷却冷房モード及び冷却除湿暖房モードから切り替わらない限り、繰り返し実行される。
そして、図5に示す制御プログラムに従って、高温側流量調整弁25の作動を制御することで、バッテリ31の冷却に伴う廃熱を含む高温側熱媒体の有する熱から、ラジエータ22にて外気OAに放熱される余剰の熱量の割合を調整できる。
従って、空調装置1は、冷却暖房モード及び冷却除湿暖房モードにおいて、高温側流量調整弁25の作動を制御することで、バッテリ31の廃熱の大きさの影響を抑えて、送風空気温度を目標吹出温度TAOに近づけることができる。
又、ラジエータ22とヒータコア23とでは、ラジエータの方が熱交換能力を大きくしている。具体的には、熱媒体側の伝熱面積、空気側の伝熱面積の双方に関して、ラジエータ22の方がヒータコア23よりも大きく構成されている。これにより、高温側流量調整弁25によるラジエータ22の放熱能力調整量は、ヒータコア23の放熱能力調整量よりも相対的に大きくなる。よって、より大きなバッテリ31の廃熱の影響を抑えて、送風空気温度を目標吹出温度TAOに近づけることができる。
続いて、第1実施形態における電気ヒータ24の発熱量調整の制御内容について、図面を参照しつつ説明する。図6に示す制御プログラムは、上述したステップS4にて、電気ヒータ24による高温側熱媒体の加熱が開始されると同時に、制御装置50によって実行される。
図6に示すように、先ず、ステップS20では、送風空気温度センサ52fで検出される送風空気温度が上昇したか否かが判定される。送風空気温度が上昇したと判定された場合には、ステップS21に進む。一方、送風空気温度が上昇していないと判定された場合には、ステップS22に進む。
ステップS21においては、熱媒体冷媒熱交換器12での放熱量と電気ヒータ24の発熱量の和が、ヒータコア23の放熱量よりも大きい為、高温側熱媒体回路21内の高温側熱媒体の温度が上昇して、送風空気温度が上昇したと判定されている状態である。その為、電気ヒータ24の発熱量が減少するように、電気ヒータ24が制御される。
これにより、熱媒体冷媒熱交換器12での放熱量と電気ヒータ24の発熱量の和が、ヒータコア23の放熱量に近づいていく。従って、高温側熱媒体回路21内の高温側熱媒体の温度上昇を抑えることで、送風空気温度の上昇も抑えることができる。よって、送風空気温度は目標吹出温度TAOに近づいていく。その後、図6に示す制御プログラムは終了される。
ステップS21においては、熱媒体冷媒熱交換器12での放熱量と電気ヒータ24の発熱量の和が、ヒータコア23放熱量よりも大きいため、高温側熱媒体回路21内の熱媒体の温度が上昇し、その結果、送風空気温度が上昇したと判定されている状態である。その為、電気ヒータ24の発熱量が減少するように、電気ヒータ24が制御される。
これにより、熱媒体冷媒熱交換器12での放熱量と電気ヒータ24の発熱量の和が、ヒータコア23の放熱量に近づいていく。従って、高温側熱媒体回路21内の高温側熱媒体の温度上昇を抑えることで、送風空気温度の上昇も抑えることができる。この結果、送風空気温度は目標吹出温度TAOに近づいていく。その後、図6に示す制御プログラムは終了される。
ステップS22では、熱媒体冷媒熱交換器12での放熱量と電気ヒータ24の発熱量の和が、ヒータコア23放熱量よりも小さい為、高温側熱媒体回路21内の高温側熱媒体の温度が低下して、送風空気温度が下降したと判定されている状態である。その為、電気ヒータ24の発熱量が増加するように、電気ヒータ24が制御される。
これにより、熱媒体冷媒熱交換器12での放熱量と電気ヒータ24の発熱量の和が、ヒータコア23放熱量に近づいていく。従って、高温側熱媒体回路21内の高温側熱媒体の温度低下を抑えることで、送風空気温度の上昇も抑えることができる。よって、送風空気温度は目標吹出温度TAOに近づいていく。その後、図6に示す制御プログラムは終了される。
尚、図6に示す制御プログラムは、ステップS4にて電気ヒータ24による高温熱媒体の加熱が開始された後であれば、空調装置1の運転モードが冷却冷房モード及び冷却除湿暖房モードから切り替わらない限り、繰り返し実行される。
そして、図6に示す制御プログラムに従って、電気ヒータ24の作動を制御することによって、バッテリ31の冷却に伴う廃熱を含む高温側熱媒体に、目標吹出温度TAOを実現する為に不足する分の熱量を加えて、不足分を補うことができる。
このように、第1実施形態に係る空調装置1によれば、冷却暖房モード及び冷却除湿暖房モードにおいて、バッテリ31の冷却に伴い吸熱した廃熱を、ヒートポンプサイクル10で汲み上げて、送風空気Wの加熱に利用することができる。
そして、空調装置1は、冷却暖房モード及び冷却暖房モードにおいて、送風空気温度と目標吹出温度TAOとの関係に応じて、高温側流量調整弁25によるラジエータ22における放熱量の調整、および電気ヒータ24の発熱量の調整を行うことができる。
即ち、空調装置1は、高温側流量調整弁25の作動を制御することで、高温側熱媒体から適量の余剰熱を、ラジエータ22にて外気OAに放熱させることができる。又、空調装置1は、電気ヒータ24の発熱量を制御することで、送風空気温度を目標吹出温度TAOとする為に必要な熱量を、電気ヒータ24による高温側熱媒体の加熱によって補うことができる。
従って、第1実施形態に係る空調装置1は、高温側熱媒体の有する熱量を調整することで、バッテリ31の廃熱の熱量変動の影響を抑えて、送風空気温度を目標吹出温度TAOに近づけることができる。
そして、第1実施形態に係る空調装置1においては、運転モードの切り替えは、制御装置50に予め記憶された制御プログラムが実行されることによって行われる。空調装置1の運転モードの切り替えには、冷却暖房モードから冷却除湿暖房モードへ切り替える場合と、冷却除湿暖房モードから冷却暖房モードへ切り替える場合が含まれている。
ここで、冷却暖房モードから冷却除湿暖房モードへ切り替える場合とは、バッテリ31の冷却を行っている状態で、室内蒸発器15による送風空気Wの冷却を停止している状態から送風空気Wの冷却を開始する場合に相当する。又、冷却除湿暖房モードから冷却暖房モードへ切り替える場合とは、バッテリ31の冷却を行っている状態で、室内蒸発器15により送風空気Wを冷却している状態から送風空気Wの冷却を終了する場合に相当する。
冷却暖房モードから冷却除湿暖房モードに切り替える場合において、制御装置50は、第2膨張弁14bの開度を冷却暖房モード時に比べて下げる。これにより、第2膨張弁14bにおける冷媒の開口面積が低下することで、チラー16における冷媒流量が低下する為、チラー16における低温側熱媒体からの吸熱量を下げることができる。即ち、空調装置1によれば、バッテリ31の冷却に過剰に性能をとられることがなくなる為、室内蒸発器15における吸熱能力の低下を防ぐことができる。
更に、冷却暖房モードから冷却除湿暖房モードに切り替える場合において、制御装置50は、第1膨張弁14aの開度を冷却暖房モード時に比べて上げる。これにより、第1膨張弁14aにおける開口面積が増加することで、室内蒸発器15における冷媒流量が増大する為、室内蒸発器15における送風空気Wからの吸熱量を上げることができる。即ち、空調装置1によれば、バッテリ31の冷却性能を保ちつつ、室内蒸発器15における吸熱能力を発揮させることができる。
このように、第1膨張弁14aにおける開口面積と第2膨張弁14bにおける開口面積との和に対する第2膨張弁14bにおける開口面積の比を開口面積比とした場合、場合の制御は、以下のように表現できる。
第1実施形態に係る空調装置1は、冷却暖房モードから冷却除湿暖房モードに切り替える場合、前記送風空気の冷却開始前よりも前記送風空気の冷却開始後の方が小さくなるように、開口面積比を制御する。この条件を満たしていれば、上述した第1膨張弁14aを単独で制御してもよいし、第2膨張弁14bを単独で制御しても良い。冷却暖房モードから冷却除湿暖房モードに切り替える際に、これらの制御を行うことで、空調装置1は、バッテリ31の冷却性能を保ちつつ、室内蒸発器15における吸熱能力を発揮させることができる。
冷却除湿暖房モードから冷却暖房モードに切り替える場合において、制御装置50は、第2膨張弁14bの開度を冷却除湿暖房モード時に比べて上げる。これにより、第2膨張弁14bの開口面積が増加して、チラー16における冷媒流量を増大させることができる為、チラー16における低温側熱媒体からの吸熱量を上げることができる。即ち、空調装置1によれば、低温の低温側熱媒体をバッテリ31の熱媒体通路に供給することができる為、バッテリ31の冷却性能を向上させることができる。
更に、冷却除湿暖房モードから冷却暖房モードに切り替える場合において、制御装置50は、第1膨張弁14aの開度を冷却暖房モード時に比べて下げる。これにより、第1膨張弁14aの開口面積が低下して、室内蒸発器15における冷媒流量が低下する為、室内蒸発器15における送風空気Wからの吸熱量を下げることができる。即ち、空調装置1によれば、冷却除湿暖房モードにて送風空気Wの冷却に用いていた能力を、バッテリ31の冷却に用いることができる為、バッテリ31の冷却性能を向上させることができる。
第1実施形態に係る空調装置1は、冷却除湿暖房モードから冷却暖房モードに切り替える場合、前記送風空気の冷却開始前よりも前記送風空気の冷却開始後の方が大きくなるように、開口面積比を制御する。この条件を満たしていれば、上述した第1膨張弁14aを単独で制御してもよいし、第2膨張弁14bを単独で制御しても良い。冷却除湿暖房モードから冷却暖房モードに切り替える際に、これらの制御を行うことで、空調装置1は、バッテリ31の冷却性能を保ちつつ、室内蒸発器15における吸熱能力を発揮させることができる。
以上説明したように、第1実施形態に係る空調装置1によれば、ヒートポンプサイクル10と、加熱部20と、低温側熱媒体回路30とを協働させることで、冷却暖房モード、冷却除湿暖房モードを含む複数の運転モードを実現することができる。
空調装置1は、冷却暖房モード及び冷却除湿暖房モードにおいて、低温側熱媒体を介してバッテリ31を冷却すると共に、バッテリ31の廃熱をヒートポンプサイクル10で汲み上げて、送風空気Wの加熱に利用することができる。つまり、空調装置1は、バッテリ31の冷却を行いつつ、バッテリ31の廃熱を活用した空調対象空間の空調を実現させることができる。
又、空調装置1は、図5に示すように、高温側流量調整弁25によってラジエータ22における放熱量を調整することで、ヒータコア23で送風空気Wに放熱される熱量を調整することができる。従って、送風空気温度が予め定められた目標吹出温度TAOに近づくように、高温側流量調整弁25の作動を調整することで、車室内に供給される送風空気温度に対するバッテリ31の発熱量の影響を調整することができる。
即ち、空調装置1は、冷却暖房モード及び冷却除湿暖房モードにおけるバッテリ31の廃熱を活用した空調対象空間の空調に際して、バッテリ31の発熱量によらずに、空調対象空間の快適性を向上させることができる。
又、図4に示すように、空調装置1は、送風空気温度が目標吹出温度TAOに対して過剰になっている場合に、高温側流量調整弁25によるラジエータ22の放熱量の調整を開始する。
これにより、空調装置1は、送風空気温度を目標吹出温度TAOにする為には余剰となる余剰熱を、ラジエータ22から外気OAに適切に放熱させることが可能となる為、バッテリ31の発熱量が増大した場合であっても、車室内の快適性を担保することができる。
又、空調装置1において、ラジエータ22の熱交換能力は、ヒータコア23の熱交換能力よりも高い。この為、空調装置1において、高温側流量調整弁25によるラジエータ22の放熱能力調整量は、ヒータコア23の放熱能力調整量よりも相対的に大きくなる。よって、より大きなバッテリ31の廃熱の影響を抑えて、送風空気温度を目標吹出温度TAOに近づけることができる。
図1に示すように、加熱部20は、高温側熱媒体回路21を有しており、高温側熱媒体回路21は、熱媒体冷媒熱交換器12に対して、ラジエータ22及びヒータコア23を並列に接続して構成されている。
空調装置1は、加熱部20をラジエータ22及びヒータコア23を含む高温側熱媒体回路21で構成することで、高温側熱媒体の流量調整にて、ラジエータ22における外気OAへの放熱量と、ヒータコア23における送風空気Wへの放熱量を調整できる。
更に、空調装置1における高温側流量調整弁25は、高温側熱媒体回路21において、ヒータコア23に対する高温側熱媒体の流量と、ラジエータ22に対する高温側熱媒体の流量割合を連続的に調整する。
これにより、空調装置1は、ラジエータ22による放熱量の調整に伴って、ヒータコア23における放熱量を調整することができ、より簡易な構成で精度よく、車室内の快適性を担保することができる。
そして、空調装置1は、高温側熱媒体を任意の熱量で加熱可能な電気ヒータ24を、高温側熱媒体回路21に有しており、図6に示すように、送風空気温度が目標吹出温度TAOに近づくように、電気ヒータ24の発熱量を調整している。
従って、空調装置1は、電気ヒータ24の発熱量を調整することで、高温側熱媒体の有する熱量を調整することができ、結果として、ヒータコア23で送風空気Wに放熱される熱量を調整することができる。
即ち、空調装置1は、冷却暖房モード及び冷却除湿暖房モードにおけるバッテリ31の廃熱を活用した空調対象空間の空調に際して、バッテリ31の発熱量によらずに、空調対象空間の快適性を向上させることができる。
又、図4に示すように、空調装置1は、送風空気温度が目標吹出温度TAOに対して不足している場合に、電気ヒータ24による高温側熱媒体の加熱を開始する。
これにより、空調装置1は、送風空気温度を目標吹出温度TAOにする為には不足している熱量を、電気ヒータ24による加熱によって補うことが可能となる為、バッテリ31の発熱量が減少した場合であっても、車室内の快適性を担保することができる。
図1に示すように、空調装置1のヒートポンプサイクル10においては、第2膨張弁14b及びチラー16に対して、第1膨張弁14a及び室内蒸発器15が並列に接続されている。
従って、空調装置1によれば、チラー16を用いたバッテリ31の冷却と並行して、室内蒸発器15によって、車室内に送風される送風空気Wを冷却することも可能となる。即ち、空調装置1は、バッテリ31の冷却と同時に、車室内の快適性を更に向上させることができる。
又、空調装置1は、バッテリ31を冷却している状態で、送風空気Wの冷却を停止している状態から送風空気Wの冷却を開始する場合には、第1膨張弁14a及び第2膨張弁14bにおける開口面積によって定まる開口面積比が制御される。この場合における開口面積比は、送風空気Wの冷却開始前よりも送風空気Wの冷却開始後の方が小さくなるように制御される。
これにより、空調装置1は、バッテリ31を冷却している状態で、送風空気Wの冷却を停止している状態から送風空気Wの冷却を開始する場合において、室内蒸発器15及びチラー16における吸熱量を適切に調整することができる。これにより、空調装置1は、バッテリ31の冷却性能を保ちつつ、室内蒸発器15における吸熱能力を発揮させることができる。
そして、空調装置1は、バッテリ31を冷却している状態で、送風空気Wを冷却している状態から送風空気Wの冷却を終了する場合には、第1膨張弁14a及び第2膨張弁14bにおける開口面積によって定まる開口面積比が制御される。この場合における開口面積比は、送風空気Wの冷却終了前よりも送風空気Wの冷却終了後の方が大きくなるように制御される。
これにより、空調装置1は、バッテリ31を冷却している状態で、送風空気Wを冷却している状態から送風空気Wの冷却を終了する場合においても、室内蒸発器15及びチラー16における吸熱量を適切に調整することができる。これにより、空調装置1は、バッテリ31の冷却性能を保ちつつ、室内蒸発器15における吸熱能力を発揮させることができる。
(第2実施形態)
次に、第1実施形態と異なる第2実施形態について、図7〜図9を参照して説明する。第2実施形態では、冷却暖房モード、冷却除湿暖房モードにおいて、上述した第1実施形態と同様に加熱部20における制御を行うと共に、低温側熱媒体回路30における制御を行う。
具体的に、第2実施形態においては、低温側流量調整弁33の制御を行うことで、バッテリ31の冷却能力を保った状態でバッテリ31の廃熱の変動に伴う送風空気Wの温度変動を抑制し、車室内の快適性を高めている。第2実施形態に係る空調装置1の第1実施形態に対する相違点は、低温側熱媒体回路30の制御にあり、空調装置1の基本構成等については、第1実施形態と同様である。
第2実施形態においても、冷却暖房モード、冷却除湿暖房モードにおいて、熱媒体冷媒熱交換器12で高温側熱媒体に放熱可能な熱量は、チラー16で低温側熱媒体から吸熱した熱量を含んでいる。
第2実施形態に係る冷却暖房モード及び冷却除湿暖房モードでは、制御装置50は、低温側流量調整弁33の作動を制御して、バッテリ31に対する低温側熱媒体の流量と、外気熱交換器32に対する低温側熱媒体の流量との流量割合を調整する。
これにより、チラー16で低温側熱媒体から吸熱される熱量には、バッテリ31の冷却に際して低温側熱媒体がバッテリ31から吸熱した熱量と、外気熱交換器32にて低温側熱媒体が外気OAと熱交換した熱量が含まれる。
従って、熱媒体冷媒熱交換器12で高温側熱媒体に放熱可能な熱量は、低温側熱媒体回路30で、バッテリ31の冷却に際し低温側熱媒体がバッテリ31から吸熱した熱量、外気熱交換器32で低温側熱媒体が外気OAと熱交換した熱量により調整できる。
第2実施形態の空調装置1では、冷却暖房モード、冷却除湿暖房モードにおける低温側流量調整弁33の制御を行うことで、バッテリ31の冷却能力を保った状態でバッテリ31の廃熱の変動に伴う送風空気Wの温度変動を抑制し、車室内の快適性を高めている。
第2実施形態に係る空調装置1の低温側流量調整弁33の作動制御について、図7〜図9を参照しつつ説明する。先ず、第2実施形態に係る低温側熱媒体回路30における放熱量の調整に関する制御内容について、図面を参照して説明する。
図7に示す制御プログラムは、冷却暖房モード及び冷却除湿暖房モードの何れかに切り替わった時点で、制御装置50によって実行される。そして、冷却暖房モード及び冷却除湿暖房モードから他の運転モードに切り替わるまで、制御プログラムは繰り返し実行される。
ステップS30では、外気温センサ52bで検出される外気温がバッテリ温度センサ52gで検出されるバッテリ温度よりも低いか否かが判定される。外気温がバッテリ温度よりも低いと判定された場合、ステップS31に進む。外気温がバッテリ温度よりも低くないと判定された場合、図7に示す制御プログラムが終了される。
ステップS31においては、低温側流量調整弁33の作動が制御されて、外気熱交換器32に対する低温側熱媒体の流量を減少させる。外気熱交換器32に対する低温側熱媒体の流量を減少させた後、図7に示す制御プログラムは終了される。
上述したように、冷却暖房モード及び冷却除湿暖房モードでは、低温側熱媒体は、バッテリ31を冷却する際に、バッテリ31の廃熱を吸熱する。この為、外気温がバッテリ温度よりも低い場合、バッテリ31の廃熱を吸熱した低温側熱媒体の熱が、外気熱交換器32にて外気OAに放熱されてしまう。
そうすると、外気熱交換器32にて外気OAに放熱した分だけ、チラー16で低温側熱媒体から吸熱される熱量が減少して、最終的に、ヒータコア23にて、高温側熱媒体から送風空気Wへ放熱可能な熱量を減少させてしまう。
この低温側熱媒体回路30の外気熱交換器32における無駄な放熱を抑制する為に、外気温がバッテリ温度よりも低い場合には、低温側熱媒体の流量を調整することで、外気熱交換器32における熱交換能力を低下させている。
これにより、空調装置1によれば、外気温がバッテリ温度よりも低い場合においても、外気熱交換器32による外気OAへの無駄な放熱を抑制することができ、バッテリ31から吸熱した廃熱を効率よく、送風空気Wの加熱に利用することができる。
次に、外気温がバッテリ温度よりも低い場合の低温側熱媒体回路30における吸熱量制御について、図面を参照して説明する。図8に示す制御プログラムは、冷却暖房モード及び冷却除湿暖房モードの何れかに切り替わった時点で、制御装置50で実行される。そして、冷却暖房モード及び冷却除湿暖房モードから他の運転モードに切り替わるまで、制御プログラムは繰り返し実行される。
ここで、外気温がバッテリ温度よりも低い場合、低温側熱媒体回路30において、低温側熱媒体に吸熱させる吸熱源として、外気OAから吸熱するよりもバッテリ31から吸熱した方が効率良く吸熱することができる。つまり、この条件の低温側熱媒体回路30においては、バッテリ31は、外気熱交換器32よりも効率の良い吸熱源である。
図8に示すように、先ず、ステップS40においては、送風空気温度センサ52fによって検出される送風空気温度が上昇したか否かが判定される。送風空気温度が上昇したと判定された場合、ステップS41に進む。一方、送風空気温度が上昇していないと判定された場合には、ステップS42に進む。
ステップS41に移行する場合は、熱媒体冷媒熱交換器12での放熱量がヒータコア23の放熱量よりも大きい状態である。尚、ラジエータ22でも放熱している場合は、熱媒体冷媒熱交換器12での放熱量がラジエータ22とヒータコア23の放熱量の和よりも大きい状態である。この為、高温側熱媒体回路21内の高温側熱媒体の温度が上昇し、送風空気温度が上昇したと判定されている状態である。
この為、外気熱交換器32に対する低温側熱媒体の流量が増加するように、低温側流量調整弁33が制御される。これにより、低温側熱媒体回路30において、外気熱交換器32を通過する低温側熱媒体の流量が増加して、バッテリ31の熱媒体通路を通過する低温側熱媒体の流量が減少する。
つまり、外気温がバッテリ温度よりも低い状況において、外気熱交換器32における吸熱量を増加させることで、バッテリ31の冷却性能を維持しつつ、低温側熱媒体の有する熱量を低く抑えることができる。
そして、ステップS41では、低温側熱媒体の有する熱量を低く抑えることで、熱媒体冷媒熱交換器12での放熱量を低下させる。結果として、高温側熱媒体回路21における高温側熱媒体の温度が低下し、ヒータコア23で送風空気Wの加熱に利用される熱量を少なくすることができる。即ち、送風空気温度を徐々に低下させることができ、目標吹出温度TAOに近づけることができる。その後、図8に示す制御プログラムは終了される。
一方、ステップS42に移行する場合は、熱媒体冷媒熱交換器12での放熱量がヒータコア23の放熱量よりも小さい状態である。尚、ラジエータ22でも放熱している場合は、熱媒体冷媒熱交換器12での放熱量がラジエータ22とヒータコア23の放熱量の和よりも小さい状態である。この為、高温側熱媒体回路21内の熱媒体の温度が低下し、その結果、送風空気温度が下降したと判定されている状態である。
そこで、外気熱交換器32に対する低温側熱媒体の流量が減少するように、低温側流量調整弁33が制御される。これにより、低温側熱媒体回路30において、外気熱交換器32を通過する低温側熱媒体の流量が減少して、バッテリ31の熱媒体通路を通過する低温側熱媒体の流量が増加する。
つまり、外気温がバッテリ温度よりも低い状況において、外気熱交換器32における吸熱量を低下させることで、バッテリ31の冷却性能を維持すると同時に積極的に吸熱源として利用する為、低温側熱媒体の有する熱量をできるだけ高くすることができる。
そして、ステップS42は、低温側熱媒体の有する熱量を高くすることで、熱媒体冷媒熱交換器12での放熱量を増加させる。結果として、高温側熱媒体回路21における高温側熱媒体の温度が上昇し、ヒータコア23で送風空気Wの加熱に利用される熱量を増大させることができる。即ち、送風空気温度を徐々に上昇させることができ、目標吹出温度TAOに近づけることができる。その後、図8に示す制御プログラムは終了される。
このように、第2実施形態に係る空調装置1によれば、外気温がバッテリ温度よりも低い状況で、低温側熱媒体回路30の吸熱源として、外気OAとバッテリ31を適切に利用することで、送風空気温度を効率よく目標吹出温度TAOに近づけることができる。
続いて、外気温がバッテリ温度よりも高い場合の低温側熱媒体回路30における吸熱量制御について、図面を参照して説明する。図9に示す制御プログラムは、冷却暖房モード及び冷却除湿暖房モードの何れかに切り替わった時点で、制御装置50によって実行される。そして、冷却暖房モード及び冷却除湿暖房モードから他の運転モードに切り替わるまで、制御プログラムは繰り返し実行される。
ここで、外気温がバッテリ温度よりも高い場合、低温側熱媒体回路30において、低温側熱媒体に吸熱させる吸熱源として、バッテリ31から吸熱するよりも外気OAから吸熱した方が効率良く吸熱することができる。つまり、この条件の低温側熱媒体回路30においては、外気熱交換器32は、バッテリ31よりも効率の良い吸熱源である。
図9に示すように、先ず、ステップS50においては、送風空気温度センサ52fによって検出される送風空気温度が上昇したか否かが判定される。送風空気温度が上昇したと判定された場合、ステップS51に進む。一方、送風空気温度が上昇していないと判定された場合には、ステップS52に進む。
ステップS51に移行する場合は、熱媒体冷媒熱交換器12での放熱量がヒータコア23の放熱量よりも大きい状態である。尚、ラジエータ22でも放熱している場合は、熱媒体冷媒熱交換器12での放熱量がラジエータ22とヒータコア23の放熱量の和よりも大きい状態である。この為、高温側熱媒体回路21内の高温側熱媒体の温度が上昇し、その結果、送風空気温度が上昇したと判定されている状態である。
そこで、外気熱交換器32に対する低温側熱媒体の流量が減少するように、低温側流量調整弁33が制御される。これにより、低温側熱媒体回路30において、外気熱交換器32を通過する低温側熱媒体の流量が減少して、バッテリ31の熱媒体通路を通過する低温側熱媒体の流量が増加する。
つまり、外気温がバッテリ温度よりも高い状況において、バッテリ31における吸熱量を増加させることで、バッテリ31の冷却性能を維持しつつ、低温側熱媒体の有する熱量を低く抑えることができる。
そして、ステップS51では、低温側熱媒体の有する熱量を低く抑えることで、熱媒体冷媒熱交換器12での放熱量を低下させる。結果として、高温側熱媒体回路21における高温側熱媒体の温度が低下し、ヒータコア23で送風空気Wの加熱に利用される熱量を少なくすることができる。即ち、送風空気温度を徐々に低下させることができ、目標吹出温度TAOに近づけることができる。その後、図9に示す制御プログラムは終了される。
一方、ステップS52に移行する場合は、熱媒体冷媒熱交換器12での放熱量がヒータコア23の放熱量よりも小さい状態である。尚、ラジエータ22でも放熱している場合は、熱媒体冷媒熱交換器12での放熱量がラジエータ22とヒータコア23の放熱量の和よりも小さい状態である。この為、高温側熱媒体回路21における高温側熱媒体の温度が低下し、その結果、送風空気温度が下降したと判定されている状態である。
そこで、外気熱交換器32に対する低温側熱媒体の流量が増加するように、低温側流量調整弁33が制御される。これにより、低温側熱媒体回路30において、外気熱交換器32を通過する低温側熱媒体の流量が増加して、バッテリ31の熱媒体通路を通過する低温側熱媒体の流量が減少する。
つまり、外気温がバッテリ温度よりも高い状況において、外気熱交換器32における吸熱量を増加させることで、バッテリ31の冷却性能を維持しつつ、低温側熱媒体の有する熱量をできるだけ高くすることができる。
そして、ステップS52では、低温側熱媒体の有する熱量を高くすることで、熱媒体冷媒熱交換器12での放熱量を増加させる。結果として、高温側熱媒体回路21における高温側熱媒体の温度が上昇し、結果として、ヒータコア23で送風空気Wの加熱に利用される熱量を多くすることができる。即ち、送風空気温度を徐々に上昇させることができ、目標吹出温度TAOに近づけることができる。その後、図9に示す制御プログラムは終了される。
このように、第2実施形態に係る空調装置1によれば、外気温がバッテリ温度よりも高い状況で、低温側熱媒体回路30の吸熱源として、外気OAとバッテリ31を適切に利用することで、送風空気温度を効率よく目標吹出温度TAOに近づけることができる。
以上説明したように、第2実施形態に係る空調装置1は、低温側熱媒体回路30に、バッテリ31に加えて、外気熱交換器32と、低温側流量調整弁33を有している。空調装置1は、図7〜図9に示すように、バッテリ31と低温側熱媒体との熱交換による冷却能力を保った状態で、送風空気温度が目標吹出温度TAOに近づくように、外気熱交換器32における熱交換量を低温側流量調整弁33によって調整する。
これにより、空調装置1は、バッテリ31の冷却能力を保ちつつ、低温側熱媒体回路30において、バッテリ31の廃熱を含む低温側熱媒体の熱量を調整することができ、結果として、ヒータコア23にて送風空気Wの加熱に用いられる熱量を調整できる。
即ち、空調装置1は、冷却暖房モード及び冷却除湿暖房モードにおけるバッテリ31の廃熱を活用した空調対象空間の空調に際して、低温側熱媒体の熱量を調整して、バッテリ31の発熱量によらずに、空調対象空間の快適性を向上させることができる。
(第3実施形態)
続いて、上述した第1実施形態とは異なる第3実施形態について、図10、図11を参照しつつ説明する。第3実施形態では、高温側流量調整弁25の調整動作の開始に関する制御内容と、電気ヒータ24の発熱開始に関する制御内容が、第1実施形態と相違している。空調装置1の基本構成等の構成については、第1実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
先ず、第3実施形態に係る電気ヒータ24の発熱開始に関する制御内容について、図10を参照して説明する。図10に係る制御プログラムは、冷却暖房モード又は冷却除湿暖房モードに運転モードが切り替わった時点で、制御装置50によって実行される。
図10に示すように、ステップS60では、送風空気温度が不足している否かが判定される。ステップS60の判定処理は、第1実施形態におけるステップS3と同様の制御内容である。送風空気温度が不足している場合、ステップS61に進む。一方、送風空気温度が不足していない場合は、ステップS63に進む。
ステップS61においては、ラジエータ22における外気OAへの放熱量が予め定められた基準以下になっているか否かが判定される。この基準は、例えば、高温側流量調整弁25による高温側熱媒体の流量制御の制御性を担保した状態において、ラジエータ22の放熱量が最も低い状態を示すように定められる。
具体的には、高温側流量調整弁25がラジエータ22に対する高温側熱媒体の流量を基準以下とした状態であるか否かによって判定することができる。ラジエータ22における放熱量が基準以下である場合は、ステップS62に進む。一方、ラジエータ22における放熱量が基準以下ではない場合、ステップS63に進む。
尚、外気放熱器における放熱量が予め定められた基準以下である状態は、ラジエータ22における高温側熱媒体の流量が0となっている状態でも良い。又、高温側流量調整弁25で実現可能な流量配分の内で、最小の流量となっている状態でも良い。
ステップS62では、第1実施形態のステップS4と同様に、高温側熱媒体回路21の電気ヒータ24による加熱が開始される。ここで、ステップS62に移行する状態とは、低温側熱媒体回路30から汲み上げた熱を、できるだけ多く送風空気Wの加熱に利用した状態において、送風空気温度が不足している状態である。
即ち、バッテリ31の冷却に伴い吸熱した廃熱を使い切っても送風空気温度が不足する場合に、電気ヒータ24による加熱が開始される。この時、電気ヒータ24の発熱量は、不足分を補うように決定される為、必要最小限の熱量となる。
つまり、空調装置1によれば、送風空気Wの加熱に際して、バッテリ31の廃熱を優先的に活用し、電気ヒータ24の利用を最小限に留めることができるので、省エネルギ化に貢献することができる。電気ヒータ24による加熱を開始した後、制御プログラムは終了される。
一方、ステップS63に移行する場合は、ラジエータ22の放熱量が基準以下ではない為、ラジエータ22にて外気OAへ放熱される熱量を、ヒータコア23にて送風空気Wの加熱に利用可能な状態である。従って、ステップS63では、ラジエータ22による放熱量の調整を実行する。その後、制御プログラムは終了される。
上述したように、ラジエータ22における放熱量の調整は、図5に示す制御プログラムに従って実行される。この為、ラジエータ22にて外気OAに放熱される熱量は、送風空気Wの加熱に利用されることになり、低温側熱媒体回路30から汲み上げられたバッテリ31の廃熱は、送風空気Wの加熱に最大限利用されることになる。
次に、第3実施形態に係る高温側流量調整弁25の調整動作の開始に関する制御内容について、図11を参照して説明する。図11に係る制御プログラムは、冷却暖房モード又は冷却除湿暖房モードに運転モードが切り替わった時点で、制御装置50によって実行される。
図11に示すように、ステップS70では、送風空気温度が過剰である否かが判定される。ステップS70の判定処理は、第1実施形態におけるステップS1と同様の制御内容である。送風空気温度が過剰である場合、ステップS71に進む。一方、送風空気温度が過剰ではない場合は、ステップS73に進む。
ステップS71においては、電気ヒータ24の発熱量が予め定められた閾値以下になっているか否かが判定される。この閾値は、例えば、ヒータコア23における発熱量制御の制御性を担保した状態において、ヒータコア23の発熱量が最も低い状態を示すように定められる。
具体的には、電気ヒータ24に対する制御電流が0であるか否か、或いは、電気ヒータ24に対する制御電流が予め定められた電流値以下であるか否かによって判定することができる。電気ヒータ24の発熱量が閾値以下である場合は、ステップS72に進む。一方、電気ヒータ24の発熱量が閾値以下ではない場合、ステップS73に進む。
ステップS72では、第1実施形態のステップS2と同様に、高温側流量調整弁25によるラジエータ22における放熱量の調整が開始される。ここで、ステップS72に移行する状態とは、電気ヒータ24で加熱することなく、低温側熱媒体回路30から汲み上げた熱を、送風空気Wの加熱に利用した状態において、送風空気温度が過剰になっている状態である。
つまり、送風空気Wの加熱に際して、電気ヒータ24の発熱量を用いることなく、バッテリ31の廃熱等で十分に送風空気温度を目標吹出温度TAOに調整することができる状態である。従って、空調装置1によれば、電気ヒータ24の利用が優先的に最小限に調整される為、送風空気Wの加熱に関する省エネルギ化に貢献することができる。その後、制御プログラムは終了される。
一方、ステップS73に移行する場合は、電気ヒータ24の発熱量は閾値以下ではない為、電気ヒータ24の発熱量の調整を実行する。その後、制御プログラムは終了される。上述したように、電気ヒータ24における発熱量の調整は、図6に示す制御プログラムに従って実行される。この為、送風空気温度が過剰である場合には、電気ヒータ24の発熱量は徐々に低下していき、閾値に近い状態となる。
以上説明したように、第3実施形態の空調装置1によれば、加熱部20における放熱量調整の開始及び電気ヒータ24の加熱開始の条件を変更した場合でも、第1実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、第1実施形態と同様に得ることができる。
第3実施形態に係る空調装置1は、図10に示すように、ラジエータ22における放熱量が基準以下に低下している状態で、且つ、送風空気温度が不足している場合に、電気ヒータ24による高温側熱媒体の加熱を開始する。
これにより、空調装置1は、送風空気Wの加熱に際して、バッテリ31の廃熱を使いきった状態で、電気ヒータ24で加熱することになる為、バッテリ31の廃熱を優先的に活用しつつ、電気ヒータ24の加熱に伴うエネルギ消費を最小限に留めることができる。
又、第3実施形態に係る空調装置1は、図11に示すように、電気ヒータ24の発熱量が閾値以下である状態で、且つ、送風空気温度が過剰である場合に、高温側流量調整弁25によるラジエータ22における放熱量の調整を開始する。
この場合、空調装置1によれば、電気ヒータ24の利用が優先的にできるだけ小さな状態に調整される為、送風空気の加熱に関する省エネルギ化に貢献しつつ、空調対象空間の快適性を向上させることができる。
(第4実施形態)
次に、上述した各実施形態とは異なる第4実施形態について、図12を参照しつつ説明する。第4実施形態においては、加熱部20の構成が第1実施形態と相違している。
第4実施形態に係る空調装置1の構成について、図12を参照して説明する。第4実施形態に係る空調装置1は、上述した実施形態と同様に、ヒートポンプサイクル10と、加熱部20と、低温側熱媒体回路30と、室内空調ユニット40と、制御装置50とを有している。
第4実施形態に係るヒートポンプサイクル10は、第1実施形態と同様に、圧縮機11と、熱媒体冷媒熱交換器12と、第1膨張弁14aと、第2膨張弁14bと、室内蒸発器15と、チラー16と、蒸発圧力調整弁17とを有している。
又、第4実施形態に係る加熱部20は、第1実施形態と同様に、高温側熱媒体が循環する高温側熱媒体回路21によって構成されている。図12に示すように、高温側熱媒体回路21は、熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bと、ヒータコア23と、電気ヒータ24と、高温側ポンプ26とを有している。つまり、第4実施形態に係る加熱部20は、ラジエータ22及び高温側流量調整弁25を有していない点で、上述した実施形態における加熱部20と相違している。
そして、第4実施形態に係る低温側熱媒体回路30は、第1実施形態と同様に、バッテリ31と、外気熱交換器32と、低温側流量調整弁33と、低温側ポンプ34とを有している。
従って、第4実施形態に係る空調装置1においては、図6等に示す高温側熱媒体回路21における電気ヒータ24の発熱量の調整制御と、図7〜9に示す低温側熱媒体回路30の外気熱交換器32における熱交換量の調整制御とを実現することができる。
以上説明したように、第4実施形態に係る空調装置1によれば、ヒートポンプサイクル10と、加熱部20と、低温側熱媒体回路30とを協働させることで、冷却暖房モード及び冷却除湿暖房モードを実現することができる。即ち、空調装置1は、低温側熱媒体を介してバッテリ31を冷却すると共に、バッテリ31の廃熱をヒートポンプサイクル10で汲み上げて、送風空気Wの加熱に利用することができる。
そして、第4実施形態に係る空調装置1は、バッテリ31と低温側熱媒体との熱交換による冷却能力を保った状態で、送風空気温度が目標吹出温度TAOに近づくように、外気熱交換器32における熱交換量を低温側流量調整弁33によって調整する。
これにより、空調装置1は、バッテリ31の冷却能力を保ちつつ、低温側熱媒体回路30において、バッテリ31の廃熱を含む低温側熱媒体の熱量を調整することができ、結果として、ヒータコア23にて送風空気Wの加熱に用いられる熱量を調整できる。
即ち、空調装置1は、冷却暖房モード及び冷却除湿暖房モードにおけるバッテリ31の廃熱を活用した空調対象空間の空調に際して、低温側熱媒体の熱量を調整して、バッテリ31の発熱量によらずに、空調対象空間の快適性を向上させることができる。
(第5実施形態)
続いて、上述した各実施形態とは異なる第5実施形態について、図13を参照しつつ説明する。第5実施形態においては、ヒートポンプサイクル10及び加熱部20の具体的構成が上述した実施形態と相違している。その他の構成については、第1実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
第5実施形態に係るヒートポンプサイクル10及び加熱部20の構成について、図13を参照して説明する。第5実施形態に係るヒートポンプサイクル10は、上述した実施形態と同様に、圧縮機11と、熱媒体冷媒熱交換器12と、第1膨張弁14aと、第2膨張弁14bと、室内蒸発器15と、チラー16と、蒸発圧力調整弁17とを有している。第5実施形態のヒートポンプサイクル10は、第1実施形態と同様に構成に加え、更に、室内凝縮器13を有している。
図13に示すように、室内凝縮器13は、圧縮機11の吐出口側と熱媒体冷媒熱交換器12における冷媒通路12aの入口側との間に配置されている。そして、室内凝縮器13は、室内空調ユニット40のケーシング41内に収容されており、上述した実施形態におけるヒータコア23の位置に配置されている。
即ち、室内凝縮器13は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と、室内蒸発器15を通過した送風空気Wとを熱交換させて、送風空気Wを加熱する加熱用の熱交換器である。従って、室内凝縮器13は、暖房用熱交換器の一例に相当する。
そして、第5実施形態に係る高温側熱媒体回路21は、熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bと、ラジエータ22と、高温側ポンプ26とを有している。即ち、第5実施形態に係る加熱部20は、ヒータコア23、電気ヒータ24及び高温側流量調整弁25を有していない点で、第1実施形態における高温側熱媒体回路21と相違している。
この為、第5実施形態においては、高温側ポンプ26における高温側熱媒体の圧送能力を調整することによって、ラジエータ22における外気OAへの放熱量を調整することができる。
ここで、第5実施形態において、ラジエータ22と室内凝縮器13とでは、ラジエータの方が熱交換能力を大きくしている。具体的には、空気側伝熱面積に関して、ラジエータ22の方が室内凝縮器13よりも大きく構成されている。これにより、第5実施形態におけるラジエータ22の放熱能力調整量が、室内凝縮器13の放熱能力調整量よりも相対的に大きくなる。よって、より大きなバッテリ31の廃熱の影響を抑えて、送風空気温度を目標吹出温度TAOに近づけることができる。
従って、第5実施形態に係る空調装置1においては、図5等に示すラジエータ22における放熱量の調整制御と、図7〜9に示す低温側熱媒体回路30の外気熱交換器32における熱交換量の調整制御と、を実現することができる。
以上説明したように、第5実施形態に係る空調装置1によれば、加熱部20の構成を変更した場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、上述した実施形態と同様に得ることができる。
(第6実施形態)
次に、上述した各実施形態とは異なる第6実施形態について、図14を参照しつつ説明する。第6実施形態においては、加熱部20の放熱量調整部として、高温側流量調整弁25に替えて、第1高温側ポンプ27a及び第2高温側ポンプ27bが採用されている。
尚、第6実施形態では、第1高温側ポンプ27a及び第2高温側ポンプ27bの採用に伴って、上述した実施形態における高温側ポンプ26が廃止されている。
図14に示すように、第6実施形態に係る高温側熱媒体回路21においては、第1実施形態に係る高温側流量調整弁25の位置に、三方継手構造の熱媒体分岐部が配置されている。熱媒体分岐部における流入口側は、電気ヒータ24における熱媒体通路の出口に接続されている。
そして、熱媒体分岐部における流出口の一方と、ラジエータ22における流入口との間には、第1高温側ポンプ27aが配置されている。第1高温側ポンプ27aは、高温側熱媒体をラジエータ22に対して圧送する熱媒体ポンプである。第1高温側ポンプ27aの基本的構成は、上述した高温側ポンプ26と同様である。
更に、熱媒体分岐部における流出口の他方と、ヒータコア23における流入口との間には、第2高温側ポンプ27bが配置されている。第2高温側ポンプ27bは、高温側熱媒体をヒータコア23に対して圧送する熱媒体ポンプである。第2高温側ポンプ27bの基本的構成は、上述した高温側ポンプ26と同様である。
従って、第6実施形態に係る空調装置1によれば、第1高温側ポンプ27aと第2高温側ポンプ27bにおける高温側熱媒体の圧送能力とをそれぞれ調整することができる。これにより、第6実施形態では、第1高温側ポンプ27a及び第2高温側ポンプ27bの作動を制御することで、ラジエータ22側の高温側熱媒体の流量と、ヒータコア23側の高温側熱媒体の流量との流量割合を調整することができる。
以上説明したように、第6実施形態に係る空調装置1によれば、放熱量調整部を第1高温側ポンプ27a、第2高温側ポンプ27bで構成した場合も、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、上述した実施形態と同様に得ることができる。
(第7実施形態)
続いて、上述した各実施形態とは異なる第7実施形態について、図15を参照しつつ説明する。第7実施形態においては、加熱部20の放熱量調整部として、高温側流量調整弁25に替えて、ラジエータ用開閉弁28が採用されている。
図15に示すように、第7実施形態に係る高温側熱媒体回路21においては、第1実施形態に係る高温側流量調整弁25の位置に、三方継手構造の熱媒体分岐部が配置されている。熱媒体分岐部における流入口側は、電気ヒータ24における熱媒体通路の出口に接続されている。
熱媒体分岐部における流出口の一方と、ラジエータ22における流入口との間には、ラジエータ用開閉弁28が配置されている。ラジエータ用開閉弁28は、熱媒体分岐部とラジエータ22とを接続する熱媒体流路を開閉する電磁弁である。ラジエータ用開閉弁28は、制御装置50から出力される制御信号に従って、熱媒体流路における開度を連続的に変化させる。
従って、第7実施形態に係る空調装置1によれば、ラジエータ用開閉弁28の開度を調整することで、ラジエータ22側の高温側熱媒体の流量と、ヒータコア23側の高温側熱媒体の流量との流量割合を調整することができる。
以上説明したように、第7実施形態に係る空調装置1によれば、高温側流量調整弁25に替えて、ラジエータ用開閉弁28を採用した場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、上述した実施形態と同様に得ることができる。
(第8実施形態)
次に、上述した各実施形態とは異なる第8実施形態について、図16を参照しつつ説明する。第8実施形態においては、加熱部20における放熱量調整部として、高温側流量調整弁25に替えてシャッター装置29が採用されている。
図16に示すように、第8実施形態に係る空調装置1において、ラジエータ22の前方側には、シャッター装置29が配置されている。シャッター装置29は、枠状のフレームの開口部に、複数のブレードを回転可能に配置して構成されている。複数のブレードは、図示しない電動アクチュエータの作動によって連動して回転し、フレームの開口部における開口面積を調整する。
これにより、シャッター装置29は、ラジエータ22の熱交換部を通過する外気OAの流量を調整できるので、ラジエータ22の熱交換能力を調整することができる。換言すると、本開示における放熱量調整部は、高温側熱媒体の流量を調整する場合に限定されるものではなく、ラジエータ22にて放熱される側の媒体の流量を調整する構成にすることも可能である。
以上説明したように、第8実施形態に係る空調装置1によれば、高温側流量調整弁25に替えて、シャッター装置29を採用した場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、上述した実施形態と同様に得ることができる。
(第9実施形態)
続いて、上述した各実施形態とは異なる第9実施形態について、図17を参照して説明する。第9実施形態の空調装置1は、第1実施形態に係る空調装置1と基本的構成を同じくしており、第1実施形態における室内蒸発器15に替えて蓄冷熱交換器15aが採用されている。
蓄冷熱交換器15aは、第1膨張弁14aにて減圧された低圧冷媒の有する冷熱を蓄える蓄冷部15bを有する蒸発器であり、冷房用蒸発器の一例である。尚、図17では、蓄冷熱交換器15a及び蓄冷部15bの構成を簡略化して示している。
蓄冷熱交換器15aは、所謂タンクアンドチューブ型の熱交換器構造になっており、冷媒を流通させる複数のチューブと、複数のチューブを流通する冷媒の分配或いは集合を行う為のタンク等を有している。
そして、蓄冷熱交換器15aは、一定方向に互いに間隔を開けて積層配置されたチューブを流通する冷媒と、隣り合うチューブ間に形成された空気通路を流通する空気とを熱交換させる構造になっている。蓄冷熱交換器15aにおける複数のチューブの間に形成される空気通路には、車室へ供給される空気と接触面積を増加させるためのフィンが配置されている。フィンは、複数のコルゲート型のフィンによって構成されており、熱伝達に優れた接合材によって、隣接する2つのチューブに接合されている。
蓄冷部15bは、隣接する2つのチューブの間に形成された空気通路の内部に配置される。蓄冷部15bは、例えば、アルミニウムおよびアルミニウム合金等の金属製のケースの内部に、冷媒からの冷熱を凝固することで留め、留めた冷熱を融解することによって外部に放出する蓄冷材を収容している。蓄冷部15bのケースは、隣接する2つのチューブの間において、各チューブと熱的に接合されている。
尚、蓄冷材として、相転移温度が0℃以下(具体的には、−10℃程度)に調整されたPCM(相転移材料)を採用することができる。又、蓄冷材としては、水あるいはアルコールに不揮発性の添加剤を加えたもの等を採用しても良い。
このように構成された蓄冷熱交換器15aによれば、冷房モードや除湿暖房モード等において、低圧冷媒の冷熱で送風空気を冷却すると同時に、低圧冷媒の冷熱が蓄冷部15bの蓄冷材に蓄えることができる。つまり、第9実施形態に係る空調装置1によれば、室内蒸発器15に替えて、蓄冷熱交換器15aを採用することで、送風空気の冷却時に蓄えた冷熱を有効に活用することができる。
ここで、ヒートポンプサイクル10において、通常の室内蒸発器15とチラー16が並列に接続されている空調装置1について考察する。この構成で、室内蒸発器15における送風空気の冷却を継続しながら、チラー16を用いたバッテリ31の冷却を開始すると、一時的に、室内蒸発器15に流入する冷媒流量が低下してしまうことが考えられる。
室内蒸発器15に対する冷媒流量が低下してしまうと、送風空気の冷却能力も低下することになる為、送風空気温度センサ52fで検出される送風空気温度TAVも一時的に上昇してしまう。この為、車室内における快適性が損なわれてしまったり、窓曇りが生じてしまったりすることが想定される。
この点、第9実施形態に係る空調装置1によれば、蓄冷熱交換器15aにおける送風空気の冷却を継続しながら、チラー16を用いたバッテリ31の冷却を開始する直前まで、低圧冷媒の有する冷熱が蓄冷部15bに蓄えられる。
そして、蓄冷熱交換器15aにおける送風空気の冷却を継続しながら、チラー16を用いたバッテリ31の冷却を開始する際には、低圧冷媒による送風空気の冷却性能は低下するが、蓄冷部15bに蓄えられた冷熱による送風空気の冷却で補うことができる。
第9実施形態に係る空調装置1によれば、送風空気の冷却を継続する際に、バッテリ31の冷却を開始する際の過渡的な送風空気温度の上昇を抑制して、車室内の快適性の低下を抑制することができる。
以上説明したように、第9実施形態に係る空調装置1によれば、送風空気を冷却する空調用蒸発器として、蓄冷熱交換器15aを採用した場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、上述した実施形態と同様に得ることができる。
更に、第9実施形態に係る空調装置1によれば、室内蒸発器15における送風空気の冷却を継続しながら、チラー16を用いたバッテリ31の冷却を開始する際に、蓄冷部15bに蓄えられた冷熱を活用することで、過渡的な快適性の低下を抑制することができる。
(第10実施形態)
次に、上述した各実施形態とは異なる第10実施形態について、図18を参照して説明する。第10実施形態に係る空調装置1は、例えば、第1実施形態の空調装置1とその基本的構成を同じくしており、チラー16を用いたバッテリ31の冷却と、熱媒体冷媒熱交換器12を用いた送風空気の加熱を行う際の制御の点で相違している。
具体的に、第10実施形態においては、冷却暖房モードや冷却除湿暖房モードを実行する際に、制御装置50によって、図18に示すフローチャートが実行される。図18に示すフローチャートを実行する制御装置50は、目標温度設定部50dの一例である。
ここで、冷却暖房モードや冷却除湿暖房モードについて考察する。冷却暖房モードや冷却除湿暖房モードでは、チラー16を用いたバッテリ31の冷却と、熱媒体冷媒熱交換器12を用いた送風空気の加熱が並行して行われる。この為、低温側熱媒体回路30における低温側熱媒体の温度を適切に調整すると同時に、送風空気温度TAVが適切な温度になるように、高温側熱媒体の温度も調整する必要がある。
送風空気温度を上昇させるという要求を満たす為に、高温側熱媒体の温度を調整させた場合、ヒートポンプサイクル10における高圧も上昇してしまう。ヒートポンプサイクル10において高圧が高くなると、冷凍サイクルのバランスから、エンタルピ差が小さくなってしまい、低温側熱媒体に対する冷却性能が不足しやすくなると考えられる。
図18に示すフローチャートは、この点に鑑みて、冷却暖房モードや冷却除湿暖房モードに際して、制御装置50によって実行される。冷却暖房モード又は冷却除湿暖房モードが開始されると、先ず、ステップS80にて、バッテリ温度センサ52gで検出されるバッテリ温度TBAが上昇したか否かが判定される。
つまり、ステップS80では、対象機器であるバッテリ31を冷却する必要性が高まっているか否かが判定されている。バッテリ温度TBAが上昇していると判定された場合は、ステップS81に進み、そうでないと判定された場合は、ステップS82に進む。
ステップS81では、バッテリ温度TBAの上昇に伴い、バッテリ31を冷却する必要性が高まっている為、送風空気温度TAVの目標値である目標吹出温度TAOを低下させて設定する。目標吹出温度TAOは目標温度の一例である。目標吹出温度TAOを低下させることで、ヒートポンプサイクル10における高圧を下げてエンタルピ差を確保し、バッテリ31の冷却性能を確保することができる。目標吹出温度TAOを低下させた後、図18の制御プログラムを終了する。
一方、ステップS82では、バッテリ温度TBAが上昇していない為、バッテリ31を冷却する必要性はそれほど高くない状態であると考えられる。この為、目標吹出温度TAOを上昇させて設定する。
つまり、ヒートポンプサイクル10の高圧を上げることで、送風空気に対する暖房性能を上げて、バッテリ31の冷却性能を低下させる。目標吹出温度TAOを上昇させた後、図18の制御プログラムを終了する。尚、図18に示す制御プログラムは、冷却暖房モード又は冷却除湿暖房モードが継続している間、繰り替えし実行される。
第10実施形態によれば、冷却暖房モード又は冷却除湿暖房モードにおいて、図18に示す制御処理を実行することで、送風空気の加熱能力とバッテリ31の冷却能力を、バッテリ31の冷却に関する必要性に応じて適切に調整することができる。
以上説明したように、第10実施形態に係る空調装置1によれば、冷却暖房モードや冷却除湿暖房モードにおける目標吹出温度TAOの設定態様を変更した場合も、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を同様に得ることができる。
更に、第10実施形態に係る空調装置1によれば、冷却暖房モードや冷却除湿暖房モードにおいて、バッテリ温度TBAが上昇した場合には、目標吹出温度TAOを下げることにより、車室内の快適性に優先してバッテリ31の冷却性能を確保することができる。
(第11実施形態)
続いて、上述した各実施形態とは異なる第11実施形態について、図19を参照して説明する。第11実施形態においては、第18実施形態における目標温度設定部50dの制御内容が変更されている。
第11実施形態においては、冷却暖房モードや冷却除湿暖房モードを実行する際に、制御装置50によって、図19に示すフローチャートが実行される。図19に示すフローチャートを実行する制御装置50は、目標温度設定部50dの一例である。
図19に示すフローチャートは、第10実施形態と同様に、冷却暖房モードや冷却除湿暖房モードに際して、制御装置50によって実行される。冷却暖房モード又は冷却除湿暖房モードが開始されると、先ず、ステップS90にて、バッテリ温度センサ52gで検出されるバッテリ温度TBAが予め定められた閾値以上になったか否かが判定される。閾値は、例えば、バッテリ31の適正温度範囲内において、基準バッテリ温度KTBAより高いバッテリ温度TBAになるように定められており、バッテリ31の冷却に関する必要性が高い状態を示している。
つまり、ステップS90では、対象機器であるバッテリ31を冷却する必要性が基準以上に高まっているか否かが判定されている。バッテリ温度TBAが閾値以上になっていると判定された場合は、ステップS91に進み、そうでないと判定された場合は、ステップS92に進む。
ステップS91では、バッテリ温度TBAが閾値以上であり、バッテリ31を冷却する必要性が基準を超えている為、送風空気温度TAVの目標値である目標吹出温度TAOを低下させて設定する。第10実施形態と同様に、目標吹出温度TAOを低下させることで、ヒートポンプサイクル10におけるエンタルピ差を確保し、バッテリ31の冷却性能を確保することができる。目標吹出温度TAOを低下させた後、図19の制御プログラムを終了する。
一方、ステップS92では、バッテリ温度TBAが閾値よりも低く、バッテリ31を冷却する必要性はそれほど高くない状態であると考えられる為、目標吹出温度TAOを上昇させて設定する。つまり、ヒートポンプサイクル10の高圧を上げることで、送風空気に対する暖房性能を上げて、バッテリ31の冷却性能を低下させる。目標吹出温度TAOを上昇させた後、図19の制御プログラムを終了する。尚、図19に示す制御プログラムについても、冷却暖房モード又は冷却除湿暖房モードが継続している間、繰り替えし実行される。
第11実施形態によれば、冷却暖房モード又は冷却除湿暖房モードにおいて、図19に示す制御処理を実行することで、送風空気の加熱能力とバッテリ31の冷却能力を、バッテリ31の冷却に関する必要性に応じて適切に調整することができる。
以上説明したように、第11実施形態に係る空調装置1によれば、冷却暖房モードや冷却除湿暖房モードにおける目標吹出温度TAOの設定態様を変更した場合も、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を同様に得ることができる。
更に、第11実施形態に係る空調装置1によれば、冷却暖房モードや冷却除湿暖房モードでバッテリ温度TBAが閾値以上になっている場合、目標吹出温度TAOを下げることにより、車室内の快適性に優先してバッテリ31の冷却性能を確保することができる。
(第12実施形態)
次に、上述した各実施形態とは異なる第12実施形態について、図20〜図22を参照して説明する。第12実施形態においては、チラー16の内容積等との関係から、第4熱媒体温度センサ53dの配設位置を特定している。
上述したように、第4熱媒体温度センサ53dは、チラー16の熱媒体通路16bにおける出口部分に配置されており、チラー16から流出する低温側熱媒体の温度を検出している。従って、第4熱媒体温度センサ53dは低温側温度センサの一例に相当する。又、チラー16から流出した低温側熱媒体は、温度調整の対象機器であるバッテリ31を冷却する役割を果たす。
この為、第4熱媒体温度センサ53dの配設位置は、チラー16に関する蒸発器側内容積Vcと、第4熱媒体温度センサ53dに関する低温センサ側内容積Vtと、バッテリ31に関する低温側機器内容積Vbによって特定することができる。
先ず、図20を参照して、蒸発器側内容積Vcについて説明する。チラー16は、第4熱媒体温度センサ53dの測定対象である低温側熱媒体を冷却する為、蒸発器側内容積Vcは、第4熱媒体温度センサ53dの測定精度に影響を与えるものと考えられる。
第12実施形態に係るチラー16は、いわゆる積層型熱交換器によって構成され、複数の略平板状の伝熱プレートを、間隔をおいて重ね合わせた熱交換部16eを有している。チラー16の熱交換部16eには、上述した実施形態と同様に、冷媒通路16a及び熱媒体通路16bが形成されている。
冷媒通路16aは、第2膨張弁14bにて減圧された低圧冷媒を流通させる。熱媒体通路16bは、低温側熱媒体回路30を循環する低温側熱媒体を流通させる。従って、チラー16において、冷媒通路16aを流通する低圧冷媒と熱媒体通路16bを流通する低温側熱媒体との熱交換によって、低圧冷媒を蒸発させて低温側熱媒体から吸熱することができる。
チラー16の熱交換部16eにおける一方側の面(図20中、上方側の面)には、冷媒流出口16aoと、熱媒体流入口16biが形成されている。一方、熱交換部16eにおける他方側の面(図20中、上方側の面)には、冷媒流入口16aiと、熱媒体流出口16boが形成されている。
冷媒流入口16aiは冷媒通路16aにおける一端側を構成し、冷媒流出口16aoは冷媒通路16aにおける他端側を構成する。つまり、熱交換部16eにおいて、冷媒は、冷媒流入口16aiから冷媒通路16aに流入し、冷媒流出口16aoから熱交換部16eの外部へ流出する。
冷媒流入口16aiには、第1ジョイント16ciが取り付けられている。第1ジョイント16ciは、第2膨張弁14bの流出口から伸びる冷媒配管を接続する為の接続部材である。そして、冷媒流出口16aoには、第2ジョイント16coが取り付けられている。第2ジョイント16coは、圧縮機11の吸入口に向かって伸びる冷媒配管を接続する為の接続部材である。
又、熱媒体流入口16biには、第1接続パイプ16diが取り付けられている。第1接続パイプ16diは、低温側熱媒体回路30において、低温側ポンプ34の吐出口から伸びる熱媒体配管を接続する為の接続部材である。そして、熱媒体流出口16boには、第2接続パイプ16doが取り付けられている。第2接続パイプ16doは、低温側熱媒体回路30において、低温側ポンプ34の吸入口に向かって伸びる熱媒体配管を接続する為の接続部材である。
ここで、第12実施形態における蒸発器側内容積Vcは、低温側熱媒体と冷媒が熱交換部16eの構成材料を介して熱交換可能である領域において、低温側熱媒体側の内容積を示す。即ち、図20における蒸発器側内容積Vcは、左下方に伸びる斜線ハッチングで示す領域であり、熱交換部16eの内部に形成された熱媒体通路16bの内容積と言うこともできる。
次に、低温センサ側内容積Vtについて説明する。第4熱媒体温度センサ53dは、チラー16から流出する低温側熱媒体の温度を検出するセンサである為、図20に示すように、第2接続パイプ16do又は、第2接続パイプ16doに接続された熱媒体配管に対して取り付けられている。
そして、低温センサ側内容積Vtは、低温側熱媒体と冷媒が熱交換部16eの構成材料を介して熱交換可能である領域よりも下流であって、第4熱媒体温度センサ53dにて測温されるまでの間の内部容積を示している。
この為、第12実施形態における低温センサ側内容積Vtは、チラー16の熱媒体流出口16boから第4熱媒体温度センサ53dの測温部53dcの位置までの範囲で、低温側熱媒体が示す内容積を示す。即ち、図20における低温センサ側内容積Vtは、右下方に伸びる斜線ハッチングで示すことができる。
続いて、低温側機器内容積Vbについて説明する。低温側機器内容積Vbは、温度調整の対象であるバッテリ31を冷却する低温側熱媒体が占める内部容積を意味している。ここで、第12実施形態においては、バッテリ31の温度調整の為に、バッテリ用熱交換器35が配置されているものとし、バッテリ31の熱媒体通路とは、バッテリ用熱交換器35の内部にて、低温側熱媒体が流通する空間を意味している。
図22、図23を用いて、第12実施形態におけるバッテリ31及びバッテリ用熱交換器35の構成と、低温側機器内容積Vbについて説明する。図22に示すように、バッテリ31は、複数の電池セル31aを積層配置し、これらの電池セル31aを電気的に直列或いは並列に接続した組電池により構成されている
バッテリ用熱交換器35は、熱媒体流入部35a、熱交換部35b、熱媒体流出部35cを有し、低温側熱媒体回路30を循環する低温側熱媒体と、バッテリ31の各電池セル31aとを熱交換させる。
バッテリ用熱交換器35の熱交換部35bは、熱伝導性の良い材料によって形成されており、低温側熱媒体が流通する空間を内部に有している。熱交換部35bの側面は、平面状に形成されており、バッテリ31を構成する各電池セル31aの側面と熱交換可能に接触している。
そして、熱交換部35bにおける一面側(図22、図23中、下方側)には、熱媒体流入部35aが配置されている。熱媒体流入部35aは、熱交換部35bの内部に対して、低温側熱媒体を流入させる部分である。
又、熱交換部35bの他面側(図22、図23中、上方側)には、熱媒体流出部35cが配置されている。熱媒体流出部35cは、熱交換部35bの内部を通過した低温側熱媒体回路30を、バッテリ用熱交換器35の外部へ流出させる部分である。従って、バッテリ用熱交換器35における熱媒体通路は、熱媒体流入部35a、熱交換部35b、熱媒体流出部35cによって構成される。
そして、低温側機器内容積Vbは、温度調整の対象機器(即ち、バッテリ31)と、低温側熱媒体が熱交換可能な領域の内容積を示す。従って、第12実施形態における低温側機器内容積Vbは、バッテリ用熱交換器35の熱交換部35bにおいて、バッテリ31と熱交換可能に接触している領域にて低温側熱媒体が占める内容積ということができる。
従って、図23にて斜線ハッチングで示すように、熱交換部35bの内部空間であっても、バッテリ31との接触領域よりも上方又は下方となる部分は、低温側機器内容積Vbには該当しない。
そして、第12実施形態において、第4熱媒体温度センサ53dは、チラー16における熱媒体流出口16bo側の熱媒体配管において、低温センサ側内容積Vtが低温側機器内容積Vbよりも小さくなるように配置されている。
第4熱媒体温度センサ53dで検出した低温側熱媒体の温度に応じて、チラー16における低温側熱媒体の冷却性能を調整する場合について考察する。例えば、低温センサ側内容積Vtが低温側機器内容積Vbよりも大きい場合、第4熱媒体温度センサ53dで低温側熱媒体の温度上昇を検知したと仮定する。この時に、チラー16の冷却性能を上げたとしても、バッテリ用熱交換器35内にあった低温側熱媒体は、チラー16の内部に存在しない。この為、チラー16の冷却性能の調整が低温側熱媒体の温度に反映されにくい。
この点、低温センサ側内容積Vtが低温側機器内容積Vbよりも小さくなるように配置すると、第4熱媒体温度センサ53dで低温側熱媒体の温度上昇を検知した時点で、バッテリ用熱交換器35内にあった低温側熱媒体がチラー16の内部に存在することになる。この為、第4熱媒体温度センサ53dの検出結果に応じたチラー16の冷却性能の調整が低温側熱媒体の温度に反映されやすくなり、低温側熱媒体を介したバッテリ31の冷却を効率よく行うことができる。
更に、第4熱媒体温度センサ53dは、チラー16における熱媒体流出口16bo側の熱媒体配管において、低温センサ側内容積Vtと蒸発器側内容積Vcの和が低温側機器内容積Vbよりも小さくなるように配置されている。
このように構成することで、第4熱媒体温度センサ53dで低温側熱媒体の温度上昇を検知した時点で、バッテリ用熱交換器35内にあった低温側熱媒体によって、チラー16の内部が満たされている状態になる。この為、第4熱媒体温度センサ53dの検出結果に応じたチラー16の冷却性能の調整が低温側熱媒体の温度に更に反映されやすくなり、低温側熱媒体を介したバッテリ31の冷却効率を高めることができる。
又、第4熱媒体温度センサ53dは、低温センサ側内容積Vtが蒸発器側内容積Vcよりも小さくなるように配置されている。このように構成することで、第4熱媒体温度センサ53dで検出した際の低温側熱媒体が、確実にチラー16の内部に存在することになる。これにより、第4熱媒体温度センサ53dの検出結果を用いたチラー16の冷却性能の制御に関して、制御ハンチングを抑制することができる。
以上説明したように、第12実施形態に係る空調装置1によれば、第4熱媒体温度センサ53dの配置を限定した場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、上述した実施形態と同様に得ることができる。
更に、第12実施形態に係る空調装置1によれば、第4熱媒体温度センサ53dを、低温センサ側内容積Vtが低温側機器内容積Vbよりも小さくなるように配置することで、チラー16の冷却性能の調整を低温側熱媒体の温度に反映させやすくすることができる。これにより、第12実施形態に係る空調装置1は、低温側熱媒体を介したバッテリ31の冷却を効率よく行うことができる。
又、第12実施形態に係る空調装置1では、第4熱媒体温度センサ53dを、低温センサ側内容積Vtと蒸発器側内容積Vcの和が低温側機器内容積Vbよりも小さくなるように配置している。これにより、チラー16の冷却性能の調整を低温側熱媒体の温度に更に反映させやすくして、低温側熱媒体を介したバッテリ31の冷却効率を向上させることができる。
そして、第12実施形態に係る空調装置1では、第4熱媒体温度センサ53dを、低温センサ側内容積Vtが蒸発器側内容積Vcよりも小さくなるように配置している。これにより、空調装置1は、第4熱媒体温度センサ53dの検出結果を用いたチラー16の冷却性能の制御に関して、制御ハンチングを抑制することができる。
(第13実施形態)
続いて、上述した各実施形態とは異なる第13実施形態について、図23、図24を参照して説明する。第13実施形態においては、例えば、第1実施形態の空調装置1とその基本的構成を同じくしており、チラー16を用いたバッテリ31の冷却を開始する際の制御の点で相違している。
具体的に、第13実施形態においては、外気温が極低温である環境において、チラー16を利用したバッテリ31の冷却を行う際に、制御装置50によって、図23に示すフローチャートが実行される。図23に示すフローチャートを実行する制御装置50は、機器冷却制御部50eの一例である。
外気温が極低温の環境においても、チラー16を利用したバッテリ31の冷却を行う場合も想定される。例えば、極低温の環境において、バッテリ31の急速充電を行った場合には、充電に伴う発熱が生じる為、バッテリ31を冷却する必要が生じる。
この時、外気が極低温である環境にある為、低温側熱媒体回路30における低温側熱媒体の温度も低い状態になっている。そのため、そのままの状態でバッテリ31の冷却を開始すると、充分な性能が発揮できない場合が想定される。又、圧縮機11の吸入冷媒温度が低すぎ、冷媒に含まれている冷凍機油の戻りが悪くなり、圧縮機11の動作に影響を及ぼすことも想定される。
第13実施形態に係る空調装置1では、これらの点に鑑みて、外気温が極低温の環境にて、バッテリ31の冷却を行う場合には、図23に示すフローチャートを実行する。図23に示すように、先ず、ステップS100にて、バッテリ31の冷却を開始する前に、ヒートポンプサイクル10を作動させる前に、低温側ポンプ34の作動を開始する。これにより、低温側熱媒体回路30では、バッテリ31及びチラー16を経由するように、低温側熱媒体が循環する。
低温側熱媒体回路30にて、低温側熱媒体はバッテリ31の熱媒体通路を通過して循環する為、低温側熱媒体は、バッテリ31に生じた熱によって加熱される。図24に示すように、低温側熱媒体の温度は、低温側熱媒体の循環に伴って、バッテリ31に生じた熱によって変動していき、より高い温度で安定する。
ステップS101では、冷媒流通開始条件を満たすか否かが判定される。冷媒流通開始条件とは、チラー16の冷媒通路16aに対して、低圧冷媒の流通を開始する条件を意味しており、低温側熱媒体の温度が或る程度高い温度で安定したことを示している。
上述したように、低温側ポンプ34の作動に伴い、バッテリ31に生じた熱で加熱されて安定化する。この為、ステップS101では、低温側ポンプ34の作動開始から予め定められた循環期間を経過したか否かが判断される。循環期間を経過していると判定された場合、低温側熱媒体の温度が或る程度高まった状態で安定したものと考えられるので、ステップS102に進む。そうでない場合には、循環期間を経過するまで、低温側熱媒体回路30における低温側熱媒体の循環を継続する。
ステップS102では、圧縮機11の作動を開始して、チラー16に対する低圧冷媒の流入を開始する。ステップS102に移行した時点で、チラー16に流入する低温側熱媒体は或る程度暖められている。従って、この状態で圧縮機11の作動を開始することで、冷凍サイクルにおける低圧側の冷媒圧力を或る程度上昇させておくことができる。これにより、極低温環境におけるチラー16を用いたバッテリ31の冷却に関して、初期段階における冷却性能を向上させることができる。
尚、ステップS102では、チラー16に対する低圧冷媒の流入を開始することができれば、他の態様を採用しても良い。つまり、圧縮機11の動作を開始する態様に限定されるものではなく、既に圧縮機11を作動している状態でステップS102に移行し、ステップS102において、第2膨張弁14bを全閉状態から絞り状態に切り替えても良い。
以上説明したように、第13実施形態に係る空調装置1によれば、極低温環境におけるバッテリ31の冷却開始時の動作を変更した場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、上述した実施形態と同様に得ることができる。
(第13実施形態の第1変形例)
第13実施形態におけるステップS101では、循環期間を経過したことをもって、冷媒流通開始条件を満たしていると判定していたが、この態様に限定されるものではない。例えば、冷媒流通開始条件として、第4熱媒体温度センサ53dで検出される低温側熱媒体の温度の変動が予め定められた範囲内になったことを採用することも可能である。
低温側熱媒体の温度変動が予め定められた範囲内になったことは、バッテリ31に生じた熱によって低温側熱媒体が或る程度暖められた状態を示す。従って、この内容の冷媒流通開始条件を採用した場合でも、上述した第13実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第13実施形態の第2変形例)
更に、ステップS101における冷媒流通開始条件として、第4熱媒体温度センサ53dで検出される低温側熱媒体の温度が予め定められた基準値よりも高いことを採用しても良い。
この冷媒流通開始条件を採用した場合、低温側熱媒体の温度が基準値より高い為、ヒートポンプサイクル10における低圧側の冷媒圧力を、保証温度内に上昇させておくことができる。この結果、第13実施形態と同様に、極低温環境におけるバッテリ31の冷却に関して、初期段階における性能を確保することができる。
(第14実施形態)
次に、上述した各実施形態とは異なる第14実施形態について、図25を参照して説明する。第14実施形態においては、上述した実施形態に対して、高温側熱媒体回路21及び低温側熱媒体回路30の構成が変更されている。又、高温側熱媒体回路21には、熱媒体冷媒熱交換器12から流出した高温側熱媒体の温度を検出する第6熱媒体温度センサ53fが配置されている。
図25に示すように、第14実施形態における高温側熱媒体回路21は、第1実施形態における高温側熱媒体回路21に対して、暖機用通路29aを介して、バッテリ31を接続して構成されている。暖機用通路29aの一端側は、高温側流量調整弁25における残りの流入出口とラジエータ22の流入口を接続する熱媒体通路に対して接続されている。そして、暖機用通路29aの他端側は、ラジエータ22の流出口と高温側ポンプ26の吸入口を接続する熱媒体通路に対して接続されている。
暖機用通路29aには、バッテリ31の熱媒体通路が接続されている。バッテリ31及びバッテリ31の熱媒体通路の構成は、上述した実施形態と同様である。つまり、バッテリ31は、高温側熱媒体により温度調整可能に接続されている。従って、第14実施形態の高温側熱媒体回路21では、熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bを通過する高温側熱媒体の流れに関して、ラジエータ22、ヒータコア23及びバッテリ31が並列に接続されている。
そして、ラジエータ22の流入口側には、ラジエータ用開閉弁28が配設されている。ラジエータ用開閉弁28は、上述した実施形態と同様に、開閉弁によって構成され、ラジエータ22に対する高温側熱媒体の流入の有無を切り替える。尚、第14実施形態の低温側熱媒体回路30は、チラー16の熱媒体通路16b、低温側ポンプ34、外気熱交換器32を接続して構成されている。
このように構成された第14実施形態に係る空調装置1では、バッテリ31を暖機する為の暖機モードを実行することができる。暖機モードでは、ヒートポンプサイクル10の高圧冷媒の熱を熱源として、高温側熱媒体を介して、バッテリ31を加熱して暖機する。
具体的に、暖機モードの動作について説明する。ヒートポンプサイクル10は、熱媒体冷媒熱交換器12にて、高圧冷媒の有する熱で高温側熱媒体を加熱できるように、予め定められた運転モードで動作する。
そして、高温側熱媒体回路21では、制御装置50は、高温側ポンプ26を作動させると共に、ラジエータ用開閉弁28を閉じる。又、制御装置50は、高温側流量調整弁25について、電気ヒータ24側の流入出口とラジエータ22側の流入出口を連通させると同時に、ヒータコア23側の流入出口を閉塞させる。
これにより、第14実施形態における暖機モードでは、高温側ポンプ26、熱媒体冷媒熱交換器12、電気ヒータ24、高温側流量調整弁25、バッテリ31、高温側ポンプ26の順で、高温側熱媒体が流れて循環する。
つまり、高温側ポンプ26から吐出された高温側熱媒体は、熱媒体冷媒熱交換器12を通過する過程で、高圧冷媒との熱交換によって加熱される。高圧冷媒の有する熱で温められた高温側熱媒体は、電気ヒータ24、高温側流量調整弁25を通過して、バッテリ31の熱媒体通路に流入する。バッテリ31の熱媒体通路を通過する際に、高温側熱媒体は、バッテリ31と熱交換を行う為、空調装置1は、高温側熱媒体を介して、バッテリ31の暖機を行うことができる。
ここで、第14実施形態の暖機モードでは、制御装置50は、熱媒体冷媒熱交換器12から流出する高温側熱媒体の温度に応じて、圧縮機11の冷媒吐出能力を調整している。その為、図25に示すように、熱媒体冷媒熱交換器12における熱媒体通路12bの出口側には、第6熱媒体温度センサ53fが配置されており、熱媒体冷媒熱交換器12から流出する高温側熱媒体の温度を検出している。第6熱媒体温度センサ53fは、高温側温度センサの一例に相当する。
上述した第12実施形態のように、第6熱媒体温度センサ53fの配設位置は、高温センサ側内容積Vth、高温側機器内容積Vbh及び凝縮器側内容積Vchを用いて特定することができる。高温センサ側内容積Vth、高温側機器内容積Vbh及び凝縮器側内容積Vchについては、第12実施形態と同様に定義することができる。
第14実施形態における凝縮器側内容積Vchは、熱媒体冷媒熱交換器12における熱交換部の構成材料を介して、高温側熱媒体と冷媒が熱交換可能な領域において、高温側熱媒体側の内容積を意味している。
そして、第14実施形態における高温センサ側内容積Vthは、熱媒体冷媒熱交換器12における熱媒体通路12bの出口よりも下流側で、熱媒体通路12bの出口から第6熱媒体温度センサ53fの測温部までの内部容積を意味する。又、高温側機器内容積Vbhは、暖機モードにおける温度調整の対象であるバッテリ31を加熱する為の高温側熱媒体が占める内部容積を意味している。
そして、第14実施形態において、第6熱媒体温度センサ53fは、熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bにおける出口側において、高温センサ側内容積Vthが高温側機器内容積Vbhよりも小さくなるように配置されている。
第14実施形態の暖機モードでは、第6熱媒体温度センサ53fで検出した高温側熱媒体の温度に応じて、圧縮機11の冷媒吐出能力を変更して、熱媒体冷媒熱交換器12における高温側熱媒体の加熱性能を調整している。
この為、高温センサ側内容積Vthが高温側機器内容積Vbhよりも小さくなるように配置すると、第6熱媒体温度センサ53fで高温側熱媒体の温度上昇を検知した時点で、バッテリ用熱交換器35内の高温側熱媒体が熱媒体冷媒熱交換器12の内部に存在する。この為、第6熱媒体温度センサ53fの検出結果に応じた熱媒体冷媒熱交換器12の加熱性能の調整が高温側熱媒体の温度に反映されやすくなり、高温側熱媒体を介したバッテリ31の暖機を効率よく行うことができる。
更に、第6熱媒体温度センサ53fは、熱媒体冷媒熱交換器12の熱媒体通路12bにおける出口側の熱媒体配管において、高温センサ側内容積Vthと凝縮器側内容積Vchの和が高温側機器内容積Vbhよりも小さくなるように配置されている。
このように構成することで、第6熱媒体温度センサ53fで高温側熱媒体の温度変化を検知した時点で、バッテリ用熱交換器35内にあった高温側熱媒体によって、熱媒体冷媒熱交換器12の内部が満たされている状態になる。この為、第6熱媒体温度センサ53fの検出結果に応じた熱媒体冷媒熱交換器12の加熱性能の調整が高温側熱媒体の温度に更に反映されやすくなり、高温側熱媒体を介したバッテリ31の暖機の効率を高めることができる。
又、第6熱媒体温度センサ53fは、高温センサ側内容積Vthが凝縮器側内容積Vchよりも小さくなるように配置されている。このように構成することで、第6熱媒体温度センサ53fで検出した際の高温側熱媒体が、確実に熱媒体冷媒熱交換器12の内部に存在することになる。これにより、第6熱媒体温度センサ53fの検出結果を用いた熱媒体冷媒熱交換器12の加熱性能の制御に関して、制御ハンチングを抑制することができる。
以上説明したように、第14実施形態に係る空調装置1によれば、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、上述した実施形態と同様に得ることができる。更に、第14実施形態に係る空調装置1によれば、第6熱媒体温度センサ53fは、高温センサ側内容積Vthが高温側機器内容積Vbhよりも小さくなるように配置されている。これにより、第14実施形態の空調装置1は、暖機モード時の熱媒体冷媒熱交換器12の加熱性能の調整を高温側熱媒体の温度に反映させやすくすることができる。これにより、第14実施形態に係る空調装置1は、高温側熱媒体を介したバッテリ31の暖機を効率よく行うことができる。
又、第14実施形態に係る空調装置1では、第6熱媒体温度センサ53fを、高温センサ側内容積Vthと凝縮器側内容積Vchの和が高温側機器内容積Vbhよりも小さくなるように配置している。これにより、暖機モードにおける熱媒体冷媒熱交換器12の加熱性能の調整を高温側熱媒体の温度に更に反映させやすくして、高温側熱媒体を介したバッテリ31の暖機の効率を向上させることができる。
そして、第14実施形態に係る空調装置1では、第6熱媒体温度センサ53fを、高温センサ側内容積Vthが凝縮器側内容積Vchよりも小さくなるように配置している。これにより、空調装置1は、第6熱媒体温度センサ53fの検出結果を用いた熱媒体冷媒熱交換器12の加熱性能の制御に関して、制御ハンチングを抑制することができる。
(他の実施形態)
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、上述した各実施形態を適宜組み合わせても良いし、上述した実施形態を種々変形することも可能である。
(1)上述した実施形態では、ヒートポンプサイクル10として、第1膨張弁14a及び室内蒸発器15と、第2膨張弁14b及びチラー16とを並列に接続した構成を採用していたが、この態様に限定されるものではない。
本開示におけるヒートポンプサイクル10としては、少なくとも、低温側熱媒体回路30から吸熱する為の減圧部及び蒸発器(例えば、第2膨張弁14b及びチラー16)を有していればよく、その他の構成については適宜変更することができる。
例えば、上述した実施形態のヒートポンプサイクル10の構成から、第1膨張弁14a及び室内蒸発器15を取り除いた構成としても良いし、室内蒸発器15及びチラー16とは異なる吸熱器を、これらに並列に接続した構成としても良い。又、ヒートポンプサイクル10において、室内蒸発器15とチラー16を直列に接続した構成にすることも可能である。
(2)又、上述した実施形態では、第1膨張弁14a、第2膨張弁14bとして、電気式膨張弁を採用していたが、この態様に限定されるものではない。ヒートポンプサイクル10において、高圧冷媒を減圧することができれば、種々の態様を採用することができる。例えば、第2膨張弁14bを電気式膨張弁としたまま、第1膨張弁14aを温度式膨張弁に変更しても良い。
(3)そして、本開示における凝縮器として、熱媒体冷媒熱交換器12を採用していたが、上述した構成に限定されるものではない。具体的には、本開示における凝縮器として、熱交換部、レシーバ部、過冷却部を有するサブクール型の凝縮器を採用することも可能である。
(4)又、上述した実施形態においては、高温側熱媒体回路21における放熱量調整部の構成として、種々の態様を採用していたが、更に異なる態様を採用することも可能である。例えば、上述した第1実施形態等においては、ラジエータ22及びヒータコア23に対する流出口の開度によって、ラジエータ22における放熱量及びヒータコア23における放熱量を調整していたが、この態様に限定されるものではない。
ラジエータ22及びヒータコア23に対する流出口が開状態である時間と、閉状態である時間との比によって、ラジエータ22における放熱量及びヒータコア23における放熱量を調整する構成としても良い。この時、第1実施形態における高温側流量調整弁25のような三方弁を採用しても良いし、ラジエータ22側とヒータコア23側のそれぞれに対して開閉弁を配置した構成を採用しても良い。
(5)そして、上述した実施形態においては、送風空気温度センサ52fによって検出された送風空気温度を用いて、目標温度に対する過剰、不足等の判定を行っていたが、この態様に限定されるものではない。
空調対象空間へ供給される送風空気の温度に相関を有する物理量であれば、上述した実施形態と同様の判定処理を行うことができる。例えば、第3熱媒体温度センサ53cによって検出されるヒータコア23の入口側における高温側熱媒体の温度を採用しても良い。又、ヒートポンプサイクル10における高圧側の冷媒温度を採用することも可能である。そして、ヒートポンプサイクル10における高圧側の冷媒圧力、或いは高圧側の冷媒圧力から推定した飽和温度を採用することも可能である。
(6)又、上述した実施形態においては、本開示における発熱機器として、バッテリ31を採用していたが、この態様に限定されるものではない。本開示における発熱機器としては、車両に搭載されており、予め定められた機能を発揮する為の作動に伴い副次的に発熱する機器であれば、種々の機器を採用することができる。
例えば、インバータ、モータジェネレータ、充電器、先進運転支援システムの構成機器等を発熱機器として採用することも可能である。インバータは、直流電流を交流電流に変換する電力変換部である。そして、モータジェネレータは、電力を供給されることによって走行用の駆動力を出力すると共に、減速時等には回生電力を発生させるものである。
充電器は、バッテリ31に電力を充電する充電器である。又、先進運転支援システムの構成機器は、安全でより良い運転の為に車両システムを自動化・適応・強化するために開発されたシステムの構成機器であり、このシステムの制御装置等を挙げることができる。