JP5577898B2 - タイヤ劣化判定システムおよび更生タイヤの製造方法 - Google Patents

タイヤ劣化判定システムおよび更生タイヤの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、空気入りタイヤの耐久性の劣化の程度を判定する判定装置を含むタイヤ劣化判定システム、および、更生タイヤの製造方法に関する。
今日の資源の有効活用、省エネルギーの点から、空気入りタイヤ(以降、タイヤという)のトレッド部が摩耗して使用不能状態(使用済み)のタイヤを再生した更生タイヤが普及している。特に、トラック用あるいはバス用の重荷重用タイヤには、更生タイヤが広く用いられている。
更生タイヤ製造業者は、使用済みタイヤを多方面のタイヤユーザから回収し、シェアログラフィ検査および外観検査を行い、検査結果が設定された条件を満足する使用済みタイヤのみを対象として用いる。使用済みタイヤの摩耗したタイヤトレッド部は、研削されることにより所定の形状に成形された後、このタイヤに新たなトレッドゴム部材が貼り付けられて加硫処理が行われる。これにより、溝付きトレッドが設けられた空気入りタイヤが再生される。
更生タイヤ製造業者には、タイヤユーザが様々な条件で使用した使用済みタイヤが持ち込まれるので、上記シェアログラフィ検査および外観検査は重要な検査工程である。あるタイヤユーザは、地域間を高速走行で長時間走行するトラックにタイヤを使用し、別のタイヤユーザは地域内を走行するトラックにタイヤを使用する。このため、持ち込まれるタイヤのゴム部材の劣化の程度、ひいては、タイヤの耐久性の劣化の程度は様々に異なる。
上記シェアログラフィ検査は、タイヤ内部のゴム部材間のセパレーションの確認に用いられ、内部構造の故障及び欠陥の有無を調べる。外観検査は、パンクの穴や傷の有無を調べる。しかし、シェアログラフィ検査および外観検査では、空気入りタイヤのゴム部材の劣化の程度を十分に知ることはできない。
このような状況下、走行中のタイヤの内部に装着し、定期的にゴムの硬化状況を把握することにより、タイヤ内部のゴムやカーカス被覆ゴムの破壊時期を判定するタイヤ劣化判定具及びこれを用いたタイヤ寿命の予測方法が知られている。
具体的には、 タイヤのゴム部材やカーカス被覆ゴム部材に相当する硫黄架橋可能なジエン系ゴム組成物からなる帯状の芯体ゴムの周囲を、タイヤのインナライナーゴム部材と同等又はそれ以上の酸素透過係数を有するカバーゴムで被覆したタイヤ劣化判定具が知られている。このタイヤ劣化判定具は、走行中のタイヤの温度が最も高くなる部位であるタイヤ内壁のタイヤ最大幅より径方向外側又はリムの外周面に装着される。所定の期間又は所定の距離を走行した段階毎にタイヤ劣化判定具を取り出して屈曲試験を行ない、この屈曲試験を通じてタイヤのゴム又はカーカス被覆ゴムの破壊時期を判定する。
特開2006−327469号公報
しかし、上述のような技術では、タイヤの内部にタイヤ劣化判定具を装着している必要があり、製造コストがかかる。また、タイヤ劣化判定具を装着していないタイヤについては、タイヤの耐久性の劣化の有無や程度を判定できない。
さらに、上述のタイヤ劣化判定具による屈曲試験は、ばらつきが大きく、精度の高い判定をすることは難しい。屈曲試験では、劣化の激しい特異な微小領域が集中的に損傷するので、ゴム部材等の全体的な劣化の程度を判定することはできない。また、屈曲試験を行うので、タイヤのゴム部材の破壊時期を判定するのに時間がかかる。
そこで、本発明は、上記タイヤ劣化判定具とは異なる方式で、タイヤの耐久性の劣化の程度を判定するタイヤ劣化判定システムおよび更生タイヤの製造方法を提供することを目的とする。
上記目的は、空気入りタイヤの使用履歴による耐久性の劣化の程度を判定する判定装置を含むタイヤ劣化判定システムにより達成することができる。
当該タイヤ劣化判定システムでは、前記判定装置は、
試料とする前記空気入りタイヤのトレッド部のゴム部材の一部の比重を評価指標として測定した第1結果に基づいて、前記空気入りタイヤの使用履歴による耐久性の劣化の程度を判定する装置である。
また、当該タイヤ劣化判定システムでは、さらに、前記比重を測定する測定装置を有し、
前記測定装置は、前記試料として、前記トレッド部をスライスしたゴム部材、または、前記トレッド部を研削することにより生じた前記トレッド部のゴム部材の粉状粒子を用いる。
また、上記目的は、空気入りタイヤの使用履歴による耐久性の劣化の程度を判定する判定装置を含む以下のタイヤ劣化判定システムにより達成することができる。
当該タイヤ劣化判定システムでは、前記判定装置は、
試料とする前記空気入りタイヤのトレッド部のゴム部材の一部の、比重、ゴム物性、および酸素元素量の少なくとも一つを評価指標として測定した第1結果に基づいて、前記空気入りタイヤの使用履歴による耐久性の劣化の程度を判定する装置であり、
前記判定装置は、空気入りタイヤにおけるベルト剥離力と、前記評価指標の値とを関連づけたマスターカーブに基づいて、所定のベルト剥離力に対応する前記評価指標における値を用いて、前記耐久性の劣化の程度を判定する。
さらに、上記目的は、空気入りタイヤの使用履歴による耐久性の劣化の程度を判定する判定装置を含む以下のタイヤ劣化判定システムにより達成することができる。
当該タイヤ劣化判定システムでは、前記判定装置は、
試料とする前記空気入りタイヤのトレッド部のゴム部材の一部の、比重、ゴム物性、および酸素元素量の少なくとも一つを評価指標として測定した第1結果に基づいて、前記空気入りタイヤの使用履歴による耐久性の劣化の程度を判定する装置であり、
前記空気入りタイヤは、使用されてトレッド部が摩耗したタイヤであり、
前記判定装置は、所定のベルト剥離力に対応する前記評価指標における値を閾値とし、前記閾値と前記第1結果の前記評価指標の値とを比較することにより、前記空気入りタイヤのトレッド部を除いたタイヤ本体が、更生タイヤに用いられ得るか否かを判定する。
さらに、上記目的は、以下の更生タイヤの製造方法により達成することができる。
使用した空気入りタイヤのトレッド部を研削する研削工程と、
研削された前記トレッド部のゴム部材の一部を試料としてゴムの比重、ゴム物性、および酸素元素量の少なくとも一つを評価指標として測定する、または、前記空気入りタイヤのビード周りのゴム部材のゴム硬度を評価指標として測定する測定工程と、
空気入りタイヤにおけるベルト剥離力と前記評価指標の値とを関連づけたマスターカーブに基づいて定まる、所定のベルト剥離力に対応する前記評価指標の値を、前記評価指標の測定値と比較することにより、前記空気入りタイヤのトレッド部を除いたタイヤ本体が、更生タイヤに用いられ得るか否かを、判定する判定工程と、
判定結果に応じて、前記タイヤ本体に新たなトレッド部を設けて更生タイヤを製造する製造工程と、を有する。
上述のタイヤ劣化判定システムでは、従来の公知のタイヤ劣化判定具とは異なる方式で、タイヤの耐久性の劣化の程度を判定することができる。したがって、このタイヤ劣化判定システムおよびタイヤを用いることにより、効率のよい更生タイヤの製造が実現できる。
第1実施形態または第2実施形態のタイヤ劣化判定システムの概略を説明する図である。 タイヤの耐久性の劣化の程度を判定する使用済みのタイヤの断面図である。 図1に示すタイヤ劣化判定システムに用いるゴム比重とベルト剥離力とを関連づけたマスターカーブの一例を表す図である。 図1に示すタイヤ劣化判定システムに用いるゴム硬度とベルト剥離力とを関連づけたマスターカーブの一例を表す図である。 図1に示すタイヤ劣化判定システムに用いるゴムの破断伸びとベルト剥離力とを関連づけたマスターカーブの一例を表す図である。 図1に示すタイヤ劣化判定システムに用いるゴムのモジュラスとベルト剥離力とを関連づけたマスターカーブの一例を表す図である。 図1に示すタイヤ劣化判定システムに用いるゴムの酸素元素量とベルト剥離力とを関連づけたマスターカーブの一例を表す図である。 第1実施形態の更生タイヤの製造方法の一例の流れを示すフローチャートである。 図1に示すタイヤ劣化判定システムに用いるビード部のゴム硬度とビードフィラーゴム部材の破断伸びとを関連づけたマスターカーブの一例を表す図である。
以下、添付の図面に示す第1実施形態に基づいて、本発明のタイヤ劣化判定システム、空気入りタイヤおよび更生タイヤの製造方法を説明する。
[第1実施形態]
(タイヤ劣化判定システム)
図1は、本実施形態のタイヤ劣化判定システム(以下、システムとする)10の概略を説明する図である。図2は、システム10で判定される使用済みのタイヤ12の一例の半断面図である。
システム10は、判定装置14と測定装置15とを備える。
判定装置14は、タイヤ12のトレッドゴム部材24(図2参照)のゴム部材の一部(以下、試料とする)の比重に基づいてタイヤ12の使用履歴による耐久性の劣化の程度を判定する。
測定装置15は、上述の試料の比重を測定する。測定装置15は、具体的には、試料としてサンプリングされたトレッドゴム部材24のゴム片の重量と体積を測定し、重量/体積をJIS K6268「加硫ゴム−密度測定」A法にて測定する。
次にタイヤ12について説明する。タイヤ12は、バスあるいはトラックに用いる重荷重用タイヤ、あるいは、乗用車用タイヤ等である。図2には、重荷重用タイヤの一例が示されている。タイヤ12は、スチールベルト部材21、スチールカーカス部材22、ビード部材23を構造材として含み、トレッドゴム部材24、サイドゴム部材25、ビードフィラーゴム部材26、インナライナーゴム部材27、およびリムクッションゴム部材29等の公知のゴム部材が配されている。インナライナーゴム部材27は、一方のビード部材23のトー先端Aから他方のビード部材23のトー先端Bに至るタイヤ空洞領域Cに面したタイヤ内表面に設けられ、タイヤ空洞領域Cに充填される空気をタイヤ本体16内部へ透過することを抑制する。なお、トレッドゴム部材24は、タイヤ12の外側のキャップトレッド24aと、キャップトレッド24aとスチールベルト部材21との間に設けられるアンダートレッド24bとからなる。
なお、本実施形態において、試料としてサンプリングされるトレッドゴム部材24は、キャップトレッド24aである。また、この試料は、キャップトレッド24aをスライスしたゴム片、または、研削されることにより生じるゴム部材の粉状粒子である。
トレッドゴム部材24は、タイヤ12の外側の大気中に含まれる酸素、および、タイヤ空洞領域C内に充填された空気であってスチールベルト部材21、スチールカーカス部材22、ビードフィラーゴム部材26などを透過した空気に含まれる酸素、によって酸化される。トレッドゴム部材24は、酸化されることにより比重が変化する。本実施形態のシステム10では、試料(トレッドゴム部材24の一部のゴム片)の比重を測定装置15により測定することにより、タイヤ12の耐久性の劣化の程度を判定する。
なお、タイヤ12のゴム部材の酸化の進行の程度は、ゴム部材が空気に接触する経過時間と、その時の温度環境(走行速度とタイヤの負荷荷重)とに応じて定まる。このとき、タイヤ12のゴム部材は、大気中の空気と、タイヤ空洞領域C内に充填され、インナライナーゴム部材27を通してタイヤ12内部に進入した空気とにより、酸化される。この酸化が一定の限度を越えると上記ゴム部材は硬化し、タイヤ12の転動中の歪みにより最終的に亀裂あるいは破壊が生じる。
一方、タイヤ12のスチールベルト部材21におけるベルト剥離は、タイヤの耐久性の支配的な要因である。このベルト剥離は、スチールベルト部材21を被覆するベルトコートゴムの酸化の進行の程度に大きく依存する。ベルトコートゴムの酸化は、トレッドゴム部材24の酸化の進行と略同様に進行するので、ベルトコートゴムの酸化の進行の程度はトレッドゴム部材24の酸化の進行の程度によって判定することができる。
したがって、タイヤの耐久性の劣化は、トレッドゴム部材24の酸化の進行の程度によって判定することができる。すなわち、タイヤ12が、上記亀裂や破壊が生じる程度にゴム部材が劣化し、タイヤの耐久性が劣化しているか否かを、トレッドゴム部材24の酸化の進行の程度を用いて判定することができる。
判定装置14は、具体的には、タイヤ12のトレッドゴム部材24から得られたゴム片の比重(以下、ゴム比重とする)とスチールベルト部材21(図中の下から2層目および3層目の第二、第三ベルト)の剥離力(以下、ベルト剥離力とする)とを関連づけたマスターカーブを予め記憶している。一般的に、ゴムが酸化されるとゴム比重が増加し、ゴムは劣化する。また、ゴムの酸化により、タイヤ12におけるスチールベルト部材21のベルト剥離力は低下する。ベルト剥離力の低下は、タイヤの耐久性の劣化を意味する。図3は、第二ベルトと第三ベルトのベルト剥離力とゴム比重とを関連付けたマスターカーブの一例を示している。図3に示すマスターカーブは、ゴム比重が増加するにつれてベルト剥離力が減少する単調減少関数となっている。このため、図3中の第1所定値F1のベルト剥離力に対応するゴム比重は、例えば第2所定値P2という1つの値に該当する。したがって、判定装置14は、ゴム比重における第2所定値P2を閾値とすることにより、タイヤ12の想定されるベルト剥離力が、第1所定値F1以上であるか否かを判定できる。ここで、第1所定値F1は、タイヤ12の耐久性が更生タイヤの台タイヤに要求される耐久性として適するベルト剥離力の値である。
なお、図3には、マスターカーブの他に、実測したデータも同時にプロットされている。このプロットからわかるように、ゴム比重とベルト剥離力との間に相関があり、マスターカーブを設定してもよいことがわかる。また、図3のベルト剥離力は、タイヤに十分の耐久性があると判定される状態(例えば、新品の状態)の数値を100として指数化したものである。
具体的には、判定装置14は、ゴム比重が第2所定値P2以下である場合に、マスターカーブに基づいてベルト剥離力が第1所定値F1以上であると判定する。そして、判定装置14は、ベルト剥離力が第1所定値F1以上である場合に、タイヤ12の耐久性が更生タイヤの台タイヤに要求される耐久性を有する、すなわち、タイヤ12の耐久性は適正であると判定する。判定装置14はまた、ゴム比重が第2所定値P2を超える場合に、マスターカーブに基づいてベルト剥離力が第1所定値F1未満であると判定する。そして、判定装置14は、ベルト剥離力が第1所定値F1未満である場合に、タイヤ12の耐久性が更生タイヤの台タイヤに要求される耐久性を有さず、タイヤ12の耐久性は不適正であると判定する。
判定装置14によるランク分けの結果は、図示されないディスプレイに表示され、オペレータに知らせる。
本実施形態において、試料としてサンプリングされるゴム片は、キャップトレッド24aの部分であるが、これに限定されず、アンダートレッド24bの部分をサンプリングしても構わない。なお、この場合に、判定装置14には、アンダートレッド24bのゴム比重とベルト剥離力とを関連づけたマスターカーブが予め記憶されることになる。また、キャップトレッド24aとアンダートレッド24bとの両方がサンプリングされ、2つの試料が判定に用いられても構わない。
本実施形態のタイヤ劣化判定システム10では、タイヤの耐久性の劣化の評価指標としてトレッドゴム部材24のゴム比重を用いるが、ゴム比重に限るものではない。例えば、トレッドゴム部材24のゴム物性、またはトレッドゴム部材24の酸素元素量であっても構わない。なお、ここで、ゴム物性とは、JIS Hs(以下、ゴム硬度とする)、引張り試験によるゴムの破断伸び(以下、破断伸びとする)、または引張り試験によるゴムのモジュラス(以下、モジュラスとする)である。ゴム硬度は、JIS K6253「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−硬さの求め方」に基づいて測定される。破断伸びおよびモジュラスは、JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に基づいて測定される。酸素元素量は、サンプリングされた試料中から元素分析装置により測定される。
なお、これらの4つの評価指標(ゴム硬度、破断伸び、モジュラス、および酸素元素量)の内で、ゴム硬度および酸素元素量は、ゴム比重と同様に、これらの値が増加すると、対応するベルト剥離力が減少する。したがって、ゴム硬度とベルト剥離力とを関連づけたマスターカーブ、および、酸素元素量とベルト剥離力とを関連づけたマスターカーブは、単調減少する関数となる。図4(a),(d)には、これらのマスターカーブの一例が示されている。一方、破断伸びおよびモジュラスは、これらの値が増加すると、対応するベルト剥離力が増加する。したがって、破断伸びとベルト剥離力とを関連づけたマスターカーブ、および、モジュラスとベルト剥離力とを関連づけたマスターカーブは、単調増加する関数となる。図4(b),(c)には、これらのマスターカーブの一例が示されている。なお、図4(a)〜(d)のベルト剥離力は、タイヤに十分の耐久性があると判定される状態(例えば、新品の状態)の数値を100として指数化したものである。
このため、第1所定値F1のベルト剥離力に対応するゴム硬度は例えば第3所定値P3という1つの値に該当し、第1所定値F1のベルト剥離力に対応する破断伸びは第4所定値P4という1つの値に該当し、第1所定値F1のベルト剥離力に対応するモジュラスは第5所定値P5という1つの値に該当し、第1所定値F1のベルト剥離力に対応する酸素元素量は第6所定値P6という1つの値に該当する。したがって、判定装置14は、ゴム硬度における第3所定値P3を閾値とすることにより、タイヤ12のベルト剥離力が第1所定値F1以上であるか否かを判定できる。また、判定装置14は、破断伸びにおける第4所定値P4を閾値とすることにより、タイヤ12のベルト剥離力が第1所定値F1以上であるか否かを判定できる。また、判定装置14は、モジュラスにおける第5所定値P5を閾値とすることにより、タイヤ12のベルト剥離力が第1所定値F1以上であるか否かを判定できる。また、判定装置14は、酸素元素量における第6所定値P6を閾値とすることにより、タイヤ12のベルト剥離力が第1所定値F1以上であるか否かを判定できる。
以上のように、システム10では、ゴム比重、ゴム硬度、破断伸び、モジュラス、および酸素元素量の内で少なくとも一つをタイヤの耐久性の劣化の評価指標とすることができる。
(更生タイヤの製造方法)
次に、更生タイヤの製造方法について説明する。図5は、更生タイヤの製造方法の一例の流れを示すフローチャートである。更生タイヤの製造方法では、タイヤ12が用いられる。
まず、ステップS10において、使用済みのタイヤ12が回収される。使用済みのタイヤ12は、サイズ別に分類されて用意される。使用済みのタイヤ12は、トレッド部が摩耗してトレッド溝が殆どなくなり、使用することができない状態のタイヤである。このとき、使用済みのタイヤ12の回収先の情報や使用状況の情報は得られない。ステップS10が終了すると、ステップS20へ移行する。
ステップS20では、用意されたタイヤ12は、残存するトレッドゴム部材24がスチールベルト部材21を被覆するベルトコートゴムが表面に出ない程度まで、研削される。すなわち、研削される部分はトレッドゴム部材24のみとなり、研削の範囲はベルトコートゴムにまで達しない。ステップS20が終了すると、ステップS30へ移行する。
ステップS30では、研削されたトレッドゴム部材24の内で、キャップトレッド24aの一部を所定のサイズにスライスしたゴム片、または、研削の過程で生じた粉状粒子、が試料として収集される。測定装置15は、収集された試料のゴム比重を測定する。このゴム比重は、タイヤ12の耐久性の劣化の程度を判定する評価指標となる。ステップS30が終了すると、ステップS40へ移行する。
ステップS40では、判定装置14が、ステップS30により測定装置15により測定されたゴム比重と、予め記憶しているマスターカーブとに基づいて、タイヤ12が更生タイヤの台タイヤとして適正であるか否かを判定する。すなわち、タイヤの耐久性が台タイヤとして用いられない程度に劣化していないかどうかが判定される。ステップS40が終了すると、ステップS50へ移行する。
ステップS50では、ステップS40において台タイヤとして適正であると判定された場合に、タイヤ12は、さらに、図示されないシェアログラフィ検査装置によりシェアログラフィ検査および作業員による外観検査を受ける。シェアログラフィ検査は、タイヤ12に作用する余分な歪を検査するものであり、タイヤ内部のゴム部材間のセパレーションの確認に用いられる。ステップS50が終了すると、ステップS60へ移行する。
ステップS60では、シェアログラフィ検査および外観検査において条件を満足するタイヤ12に対して、トレッド部の貼り付け処理が行われる。トレッド部の貼り付け処理では、タイヤ12の残存するわずかなトレッドゴム部材24が第1の専用装置で除去されて、一定の形状を成した台タイヤが作られる。この台タイヤに対して、トレッド溝の設けられた、予備加硫されたトレッドゴム部材が第2の専用装置で貼り付けられ、長時間室温等で加硫が行われる。あるいは、台タイヤに対して、未加硫状態のトレッドゴム部材が第2の専用装置で貼り付けられ、専用の加硫機にてモールド成形されて、所定のトレッド溝を有する更生タイヤが作られる。
第1実施形態に係るシステム10または更生タイヤの製造方法では、タイヤ12を更生タイヤの台タイヤとして再利用する際に、研削して廃棄する部分であるトレッドゴム部材24を、タイヤの耐久性の劣化の判定のための試料として利用する。
したがって、タイヤ12に対して、従来のように、タイヤの劣化判定を判定するためのタイヤ劣化判定具を装着することなく、タイヤ12の耐久性の劣化の程度を判定することができる。このため、第1実施形態に係るシステム10または更生タイヤの製造方法では、更生タイヤの台タイヤとして再利用を考慮してタイヤ劣化判定具等の新たな追加部材を装着したタイヤを製造する必要がない。これにより、従来製造されたタイヤについてもタイヤの耐久性の劣化の程度を判定することができる。
[第2実施形態]
(タイヤ劣化判定システム)
第2実施形態に係るタイヤ劣化判定システム(以下、システムとする)10aは、判定装置14aと測定装置15aとを備える。システム10aについても、その概略が図1に示されている。
判定装置14aは、タイヤ12のビード部28のゴム部材(リムクッションゴム部材29)のJIS HS(以下、ゴム硬度とする)に基づいてタイヤ12の使用履歴による耐久性の劣化の程度を判定する。
測定装置15aは、ビード部28(具体的には、リムクッションゴム部材29)のゴム硬度を測定する。測定装置15aは、具体的には、ビード部28のゴム硬度をJIS K6253「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−硬さの求め方」にてゴム硬度を測定する。
第2実施形態に係るシステム10aは、第1実施形態に係るシステム10とは、タイヤ12の使用履歴による耐久性の劣化の程度を判定するための評価指標が異なる。
判定装置14aは、タイヤ12のビード部28のゴム硬度とビードフィラーゴム部材26の破断伸びとを関連づけたマスターカーブを予め記憶している。一般的に、上述したゴム比重と同様にリムクッションゴム部材29もタイヤの使用に伴って酸化することにより、ゴム硬度が大きくなる。また、ゴムの酸化により、タイヤ12におけるビードフィラーゴム部材26の破断伸びは低下する。ビードフィラーゴム部材26の破断伸びの低下は、第1実施形態のベルト剥離力の低下と同様に、タイヤの耐久性の劣化を意味する。
ビード部28のゴム硬度とビードフィラーゴム部材26の破断伸びとを関連づけたマスターカーブは、図6に一例を示すように、ゴム硬度が増加するにつれてビードフィラーゴム部材26の破断伸びが減少する単調減少関数となる。このため、第7所定値P7のビードフィラーゴム部材26の破断伸びに対応するゴム硬度は、例えば第8所定値P8という1つの値に該当する。したがって、判定装置14aは、ゴム硬度における第8所定値P8を閾値とすることにより、タイヤ12のビードフィラーゴム部材26の破断伸びが、更生タイヤの台タイヤとして適する第7所定値P7以上であるか否かを判定できる。なお、図6のビードフィラーゴム部材26の破断伸びは、タイヤに十分の耐久性があると判定される状態(例えば、新品の状態)の数値を100として指数化したものである。
また、第2実施形態では第1実施形態と異なり、ビード部28のリムクッションゴム部材29を試料として摘出することなく、非破壊検査によりゴム硬度の測定が行われる。
第2実施形態に係る更生タイヤの製造方法は、評価指標を上述のようにビード部28のゴム硬度とした上で、ステップS20を省略したものである。したがって、第2実施形態に係る更生タイヤの製造方法の説明は省略する。
第2実施形態に係るシステム10aまたは更生タイヤの製造方法では、使用済みのタイヤ12を更生タイヤの台タイヤとして再利用する際に、ビード部28のリムクッションゴム部材29のゴム硬度に基づいてタイヤの耐久性の劣化の程度を判定する。
したがって、第2実施形態は、第1実施形態と同様に、タイヤ12に対して、従来のように、タイヤの劣化の程度を判定するためのタイヤ劣化判定具を装着させることなく、耐久性の劣化の程度を判定することができる。このため、第2実施形態に係るシステム10aまたは更生タイヤの製造方法では、更生タイヤの台タイヤとして再利用を考慮してタイヤ劣化判定具等の新たな追加部材を装着したタイヤを製造する必要がない。これにより、従来製造されたタイヤについてもタイヤ劣化判定を行うことができる。
上記第1実施形態においては、ベルト剥離力が第1所定値F1であるか否かによって、タイヤ12が2段階にランク分けされており、第2実施形態においてはビードフィラーゴム部材26の破断伸びが第7所定値P7であるか否かによって、タイヤ12が2段階にランク分けされている。しかし、このランク分けは2段階に限られない。例えば、更生タイヤとして適正と判定されたグループのタイヤについて、評価指標の値によってさらに分類しても良い。この場合に、分類されたグループごとに、台タイヤに貼り付けるトレッドゴム部材の厚さおよびトレッドゴム部材に設ける溝深さを変更してもよい。
なお、上記第1実施形態において用いるマスターカーブは、種々のタイヤに対して各評価指標とベルト剥離力とを関連づけたデータを蓄積することにより、タイヤの種類(タイヤメーカー、タイヤのブランド、タイヤのサイズ等)別に用意することができる。また、上記第2実施形態において用いるマスターカーブは、種々のタイヤに対してビード部28のゴム部材のゴム硬度とビードフィラーゴム部材26の破断伸びとを関連づけたデータを蓄積することにより、タイヤの種類(タイヤメーカー、タイヤのブランド、タイヤのサイズ等)別に用意することができる。しかし、多くのデータの蓄積により、タイヤの種類に拠らない統一したマスターカーブが作成されて用いられることが好ましい。
上記第1および第2実施形態においては、トレッドゴム部材24におけるゴム比重、ゴム硬度、破断伸び、モジュラス、および酸素元素量と、ビード部28におけるゴム部材のゴム硬度とをそれぞれ別々の評価指標として用いたが、これの評価指標を併用しても構わない。すなわち、トレッドゴム部材24およびビード部28における評価指標を用いてタイヤ12の耐久性の劣化の程度を綜合的に判定することができる。このため、タイヤ12が更生タイヤの台タイヤに適しているか否かの判定をより精度良く行うことができる。
なお、上記第1実施形態においては、トレッドゴム部材24におけるゴム比重、ゴム硬度、破断伸び、モジュラス、および酸素元素量とベルト剥離力とが関連づけられるマスターカーブが予め記憶されており、上記第2実施形態においては、ビード部28のゴム硬度とビードフィラーゴム部材26の破断伸びとが関連づけられるマスターカーブが予め記憶されている。このように、タイヤの耐久性の劣化の判定に利用されるマスターカーブは、トレッドゴム部材24から測定される指標に対してはベルト剥離力が関連づけられ、ビード部28から測定される指標に対してはビードフィラーゴム部材26の破断伸びが関連づけられているが、トレッドゴム部材24から測定される指標に対してビードフィラーゴム部材26の破断伸び(または後述するリムクッションゴム部材29の破断伸び)が関連づけられていても良いし、ビード部28のゴム硬度に対してベルト剥離力が関連づけられていても良い。
上記第2実施形態においては、ビード部28(具体的には、リムクッションゴム部材29)のゴム硬度と、ビードフィラーゴム部材26の破断伸びとが関連づけられたマスターカーブが予め記憶されているが、ビード部28のゴム硬度に関連づけられる指標はビードフィラーゴム部材26の破断伸びに限らずに、リムクッションゴム部材29の破断伸びであっても良い。なお、この場合におけるマスターカーブは、図6と同様に、ビード部28のゴム硬度が増加するのに伴い、リムクッションゴム部材29の破断伸びが減少する単調減少関数となる。したがって、マスターカーブのビード部28の硬度に関連づけられる指標がリムクッションゴム部材29の破断伸びであっても、第2実施形態と同様にタイヤの耐久性の劣化の評価を行うことができる。
以上、本発明のタイヤ劣化判定システム、更生タイヤの製造方法について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
10 タイヤ劣化判定システム
12 空気入りタイヤ
14 判定装置
15 測定装置
21 スチールベルト部材
22 スチールカーカス部材
23 ビード部材
24 トレッドゴム部材
24a キャップトレッド
24b アンダートレッド
25 サイドゴム部材
26 ビードフィラーゴム部材
27 インナライナーゴム部材
28 ビード部

Claims (5)

  1. 空気入りタイヤの使用履歴による耐久性の劣化の程度を判定する判定装置を含むタイヤ劣化判定システムであって、
    前記判定装置は、
    試料とする前記空気入りタイヤのトレッド部のゴム部材の一部の比重を評価指標として測定した第1結果に基づいて、前記空気入りタイヤの使用履歴による耐久性の劣化の程度を判定する装置である、ことを特徴とするタイヤ劣化判定システム。
  2. さらに、前記比重を測定する測定装置を有し、
    前記測定装置は、前記試料として、前記トレッド部をスライスしたゴム部材、または、前記トレッド部を研削することにより生じた前記トレッド部のゴム部材の粉状粒子を用いる、
    請求項1に記載のタイヤ劣化判定システム。
  3. 空気入りタイヤの使用履歴による耐久性の劣化の程度を判定する判定装置を含むタイヤ劣化判定システムであって、
    前記判定装置は、
    試料とする前記空気入りタイヤのトレッド部のゴム部材の一部の、比重、ゴム物性、および酸素元素量の少なくとも一つを評価指標として測定した第1結果に基づいて、前記空気入りタイヤの使用履歴による耐久性の劣化の程度を判定する装置であり、
    前記判定装置は、空気入りタイヤにおけるベルト剥離力と、前記評価指標の値とを関連づけたマスターカーブに基づいて、所定のベルト剥離力に対応する前記評価指標における値を用いて、前記耐久性の劣化の程度を判定する、ことを特徴とするタイヤ劣化判定システム。
  4. 空気入りタイヤの使用履歴による耐久性の劣化の程度を判定する判定装置を含むタイヤ劣化判定システムであって、
    前記判定装置は、
    試料とする前記空気入りタイヤのトレッド部のゴム部材の一部の、比重、ゴム物性、および酸素元素量の少なくとも一つを評価指標として測定した第1結果に基づいて、前記空気入りタイヤの使用履歴による耐久性の劣化の程度を判定する装置であり、
    前記空気入りタイヤは、使用されてトレッド部が摩耗したタイヤであり、
    前記判定装置は、所定のベルト剥離力に対応する前記評価指標における値を閾値とし、前記閾値と前記第1結果の前記評価指標の値とを比較することにより、前記空気入りタイヤのトレッド部を除いたタイヤ本体が、更生タイヤに用いられ得るか否かを判定する、
    ことを特徴とするタイヤ劣化判定システム。
  5. 更生タイヤの製造方法であって、
    使用した空気入りタイヤのトレッド部を研削する研削工程と、
    研削された前記トレッド部のゴム部材の一部を試料としてゴムの比重、ゴム物性、および酸素元素量の少なくとも一つを評価指標として測定する、または、前記空気入りタイヤのビード周りのゴム部材のゴム硬度を評価指標として測定する測定工程と、
    空気入りタイヤにおけるベルト剥離力と前記評価指標の値とを関連づけたマスターカーブに基づいて定まる、所定のベルト剥離力に対応する前記評価指標の値を、前記評価指標の測定値と比較することにより、前記空気入りタイヤのトレッド部を除いたタイヤ本体が、更生タイヤに用いられ得るか否かを、判定する判定工程と、
    判定結果に応じて、前記タイヤ本体に新たなトレッド部を設けて更生タイヤを製造する製造工程と、
    を有することを特徴とする更生タイヤの製造方法。
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