JP2004249871A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】操縦安定性の確保と、使用後の乗心地性能の低下の抑制を同時に実現すること。
【解決手段】ビードフィラー22の高さBHをタイヤ断面高さSHの20〜30%の範囲内に設定して従来対比でビードフィラー22のボリュームを減らすが、これによる剛性低下分は補強層44が補うので、操縦安定性は確保される。ビードフィラー22は、タイヤの使用に硬度が更に高くなるが、従来対比でボリュームが減っているので、硬度が高くなっても、乗心地性能の低下の度合いを小さくできる。補強層44の劣化による硬化は、補強層44がビードフィラー22に比較して薄肉であり、曲げ剛性への影響は小さいため、乗心地に与える影響は小さく、新品時から走行中期以降も操縦安定性と乗心地がバランス良く保たれる。したがって、操縦安定性の確保と、使用後の乗心地性能の低下抑制とを同時に実現することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】ビードフィラー22の高さBHをタイヤ断面高さSHの20〜30%の範囲内に設定して従来対比でビードフィラー22のボリュームを減らすが、これによる剛性低下分は補強層44が補うので、操縦安定性は確保される。ビードフィラー22は、タイヤの使用に硬度が更に高くなるが、従来対比でボリュームが減っているので、硬度が高くなっても、乗心地性能の低下の度合いを小さくできる。補強層44の劣化による硬化は、補強層44がビードフィラー22に比較して薄肉であり、曲げ剛性への影響は小さいため、乗心地に与える影響は小さく、新品時から走行中期以降も操縦安定性と乗心地がバランス良く保たれる。したがって、操縦安定性の確保と、使用後の乗心地性能の低下抑制とを同時に実現することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、操縦安定性の確保と、使用後の乗心地性能の低下の抑制とを同時に実現することのできる空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
タイヤケース部の運動性能を決定する骨格部材は、カーカスプライ、ビードフィラー、及びビードコアの3部材で、従来の空気入りタイヤでは、ビードフィラーがタイヤ断面高さの約30〜50%の高さに設定されており、そのボリュームで新品時に必要なケース剛性を確保していた(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、空気入りタイヤは、走行により構成部材が劣化するため、タイヤ寿命の中期より乗心地が損なわれる問題があった。
【0004】
特に、従来の空気入りタイヤでは、ビードフィラーのゴムの硬化による乗心地の悪化が顕著であった。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−185514号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、乗心地性能の低下を抑えるためにビードフィラーのボリュームを減らすことが考えられるが、これはビード部の剛性の低下につながり、操縦安定性や耐久性への影響が無視できなくなることから、安易にボリュームを落すことは出来なかった。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、操縦安定性の確保と、使用後の乗心地性能の低下の抑制とを同時に実現することのできる空気入りタイヤを提供することが目的である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の空気入りタイヤは、一対のビード部間をトロイド状に跨り、前記ビード部に配置したビードコアの周りを、タイヤ幅方向内側から外側に巻き返した少なくとも2枚のカーカスプライと、前記1対のビード部をトロイド状に跨る前記カーカスプライの本体部と、前記ビードコアの周りを巻き返した前記カーカスプライの巻き返し部との間に配置され、前記ビードコアからタイヤ径方向外側に向けて延び、その高さがタイヤ断面高さの20〜30%の範囲内に設定されたビードフィラーと、タイヤ側部領域の前記カーカスプライの間に配置され、前記ビードフィラーと略同等の硬さのゴムからなり、かつ前記ビードフィラーよりも薄肉に形成された補強層と、を有することを特徴としている。
【0009】
次に、請求項1に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0010】
請求項1に記載の空気入りタイヤでは、ビードフィラーの高さをタイヤ断面高さの20〜30%の範囲内に設定して従来対比でビードフィラーのボリュームを減らしているが、ビードフィラーのボリュームを減らしたことによる剛性低下分は補強層が補うので、操縦安定性は確保される。
【0011】
ビードフィラーは、硬いゴムから構成されており、タイヤの使用により劣化して硬度が更に高くなるが、従来対比でボリュームが減っているので、硬度が高くなっても、乗心地性能の低下の度合いを小さくできる。
【0012】
なお、補強層自体の劣化による硬化は、補強層自体がビードフィラーに比較して薄肉であり、曲げ剛性への影響は小さいため、乗心地に与える影響は小さく、新品時から走行中期以降も操縦安定性と乗心地がバランス良く保たれる。
【0013】
したがって、請求項1に記載の空気入りタイヤによれば、操縦安定性の確保と、使用後の乗心地性能の低下抑制と、を同時に実現することができる。
【0014】
ここで、ビードフィラーの高さが、タイヤ断面高さの20%未満になると、タイヤ側部の剛性が不足し、操縦安定性や耐久性が十分に確保できなくなる。
【0015】
一方、ビードフィラーの高さが、タイヤ断面高さの30%を越えると、タイヤ側部の剛性が高くなり過ぎて、乗心地性能の低下抑制という本来の目的が達成できなくなる。
【0016】
なお、タイヤ側部領域とは所謂ビード部とサイド部とを含む領域である。
【0017】
また、ここでいうゴムの硬さの略同等とは、±5度の範囲内を含むことを意味する。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空気入りタイヤにおいて、前記補強層のゴムの硬度が、90〜100度の範囲内である、ことを特徴としている。
【0019】
次に、請求項2に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0020】
補強層のゴムの硬度を90〜100度の範囲内とすることで、使用後の乗心地性能の低下抑制と、操縦安定性の確保とを高次元で確保できる。
【0021】
なお、補強層のゴムの硬度が90度未満になると、操縦安定性の確保が困難となる。
【0022】
一方、補強層のゴムの硬度が100度を越えると、乗り心地性能の確保が困難となる。
【0023】
なお、本発明において、ゴムの硬度は、JIS K 6253のスプリング式(デュロメータ硬さ)による硬さである。
【0024】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤにおいて、前記補強層が、少なくともタイヤ断面高さの24〜40%の範囲内に分布している、ことを特徴としている。
【0025】
次に、請求項3に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0026】
補強層を、少なくともタイヤ断面高さの24〜40%の範囲内に分布させることで、ビードフィラーのボリュームを減らしたことによる剛性低下分を補強層のゴム使用量を抑えつつ十分に補うことができる。
【0027】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記補強層は、厚みが0.3〜1.0mmの範囲内である、ことを特徴としている。
【0028】
なお、補強層の厚みが0.3mm未満になると、タイヤ側部領域の補強効果が不足し、ビードフィラーのボリュームを充分に減らすことが出来なくなる。
【0029】
一方、補強層の厚みが1.0mmを越えると生タイヤの製造工程において、カーカスプライの外面に貼り付けられた補強層の上に更にカーカスプライを貼り付ける際、補強層の端部、と2枚のカーカスプライの表面で囲まれる大きな空間、即ち空気溜まりが生じてしまい、セパレーション等の原因となる。
【0030】
したがって、補強層の厚みを0.3〜1.0mmの範囲内とすることが好ましい。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤについて説明する。
【0032】
図1に示すように、空気入りタイヤ10は、1対のビードコア12(図1では片側のみ図示。)と、1対のビードコア12にトロイド状に跨るカーカス14を有している。
【0033】
このカーカス14は、本実施形態ではタイヤ内側のカーカスプライ15、及びタイヤ外側のカーカスプライ16の2枚のカーカスプライから構成されている。
【0034】
カーカスプライ15,16は、幅方向端付近がビード部17に埋設されたビードコア12の回りをタイヤ軸方向内側から外側へ向けて折返されている。
【0035】
1対のビードコア12をトロイド状に跨るカーカスプライ16の本体部16Aと、外側へ向けて折返されたカーカスプライ15の折返部15B及びカーカスプライ16の折返部16Bとの間には、ビード部20の剛性を確保するために、比較的硬度の高いゴム(後述するサイドゴム層24、インナーライナー34、トレッドゴム層42対比で)からなるビードフィラー22が配設されている。
【0036】
ビードフィラー22の高さBHは、タイヤ断面高さSHの20〜30%の範囲内に設定されている。
【0037】
また、カーカス14のタイヤ軸方向外側には、サイドゴム層24が形成されている。
【0038】
一方、カーカス14のタイヤ軸方向内側にはインナーライナー34が設けられている。
【0039】
また、カーカス14のタイヤ径方向外側には、少なくとも1枚、本実施形態では2枚のベルトプライ40A、40Bからなるベルト40が設けられている。
【0040】
ベルト40のタイヤ径方向外側には、補強層41A、および補強層41Bが配置され、さらにそのタイヤ径方向外側には、トレッドゴム層42が配置されている。
【0041】
タイヤ側部領域には、カーカスプライ15とカーカスプライ16との間に、ビードフィラー22を構成するゴムに対し、略同等の硬度を有するゴムからなる補強層44が設けられている。
【0042】
補強層44は、少なくともタイヤ断面高さSHの24〜40%の範囲内に分布していることが好ましい。
【0043】
補強層44を構成するゴムの硬度は、ビードフィラー22を構成するゴムの硬度に対して±5度以内が好ましい。
【0044】
また、補強層44を構成するゴムの硬度は、90〜100度の範囲内であることが好ましい。
【0045】
また、補強層44の厚みは、0.3〜1.0mmの範囲内が好ましい。
【0046】
なお、カーカスプライ15,16は、複数本のコードを互いに平行に並べてゴムコーティングした通常の構造を有している。
【0047】
カーカスプライ15,16において、コードの打込み本数は、10〜16本/25mmが好ましい。
【0048】
さらに、カーカスプライ15,16に用いるコードは、1670dtex/2の場合、引っ張り力66Nを与えたときの伸びが3.5〜8%の範囲内であることが好ましく、1100dtex/2の場合、引っ張り力44Nを与えたときの伸びが3.5〜8%の範囲内であることが好ましい。
(作用)
本実施形態の空気入りタイヤ10では、ビードフィラー22の高さBHをタイヤ断面高さSHの20〜30%の範囲内に設定して従来対比でビードフィラー22のボリュームを減らしているが、ビードフィラー22のボリュームを減らしたことによる剛性低下分は補強層44が補うので、操縦安定性は確保される。
【0049】
ビードフィラー22は、タイヤの使用により劣化して硬度が更に高くなるが、従来対比でボリュームが減っているので、硬度が高くなっても、乗心地性能の低下の度合いを小さくできる。
【0050】
なお、補強層44の劣化による硬化は、補強層44がビードフィラー22に比較して薄肉であり、曲げ剛性への影響は小さいため、乗心地に与える影響は小さく、新品時から走行中期以降も操縦安定性と乗心地がバランス良く保たれる。
【0051】
したがって、この空気入りタイヤ10は、操縦安定性の確保と、使用後の乗心地性能の低下抑制と、を同時に実現することができる。
【0052】
なお、補強層44を、少なくともタイヤ断面高さの24〜40%の範囲内に分布させることで、ビードフィラー22のボリュームを減らしたことによる剛性低下分を補強層44のゴム使用量を抑えつつ十分に補うことができる。
【0053】
ここで、ビードフィラー22の高さBHが、タイヤ断面高さSHの20%未満になると、タイヤ側部の剛性が不足し、操縦安定性や耐久性が十分に確保できなくなる。
【0054】
一方、ビードフィラー22の高さBHが、タイヤ断面高さSHの30%を越えると、タイヤ側部の剛性が高くなり過ぎて、乗心地性能の低下抑制という本来の目的が達成できなくなる。
【0055】
また、補強層44のゴムの硬度を90〜100度の範囲内とすることで、操縦安定性の確保と、使用後の乗心地性能の低下抑制と、を高次元で確保できる。
【0056】
なお、補強層44のゴムの硬度が90度未満になると、操縦安定性の確保が困難となる。
一方、補強層44のゴムの硬度が100度を越えると、乗り心地性能の確保が困難となる。
【0057】
補強層44の厚みが0.3mm未満になると、ビード部17の補強効果が不足し、ビードフィラー22のボリュームを充分に減らすことが出来なくなる。
【0058】
一方、補強層44の厚みが1.0mmを越えると、生タイヤの製造工程において、カーカスプライ15の外面に貼り付けられた補強層44の上にカーカスプライ16を貼り付ける際、図2に示すように、補強層44の端部、カーカスプライ15、及びカーカスプライ16で囲まれる大きな空間、即ち空気溜まり46が生じてしまい、セパレーション等の原因となる。
(試験例)
本発明の効果を確かめるために、従来例に係る空気入りタイヤ、本発明に係る実施例のタイヤ、及び比較例に係る空気入りタイヤを用意し、それぞれの新品時及び使用後について乗心地、及び操縦安定性の試験を行った。
【0059】
以下に、従来例、比較例、及び実施例の空気入りタイヤに付いて説明する。
【0060】
実施例:図1に示すように、カーカスの間に補強層を有する。
【0061】
従来例、比較例1:図3に示すように、補強層が設けられていない点以外は、実施例と同様の構成を有する。
【0062】
比較例2〜比較例9:補強層を設けているが、各部の寸法、ゴム硬度が実施例とは異なる。
【0063】
なお、何れもタイヤサイズは205/65 R15である。
次に、試験方法を説明する。
【0064】
試験は、新品の供試タイヤと使用後の供試タイヤをそれぞれ用意し、乗用車に装着してテストコースにて行った。
【0065】
なお、使用後のタイヤとは、ドラム式のタイヤ試験機にて30000km走行させた後のものである。
【0066】
乗心地:評価パネラーによる官能評価試験。従来品を100とした相対評価であり、数値が大きいほど乗り心地が良いことを表している。
【0067】
操縦安定性:評価パネラーによる官能評価試験。従来品を100とした相対評価であり、数値が大きいほど操縦安定性が良いことを表している。
【0068】
なお、供試タイヤの緒元、及び試験結果を以下の表1〜5に示す。
【0069】
また、表内の補強層上端高さと、補強層下端高さは、それぞれタイヤ断面高さと同様にビードヒールを基準としてタイヤ径方向外側に計測した寸法である。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
上記表1〜5に示すように、本発明の適用された実施例のタイヤは、走行後の性能低下が、従来例、及び比較例に対して小さいことが分かる。
【0075】
【発明の効果】
本発明の空気入りタイヤは上記構成としたので、操縦安定性の確保と、使用後の乗心地性能の低下抑制とを同時に実現することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの断面図である。
【図2】補強層端部付近の断面図である。
【図3】従来例に係る空気入りタイヤの断面図である。
【符号の説明】
10 空気入りタイヤ
12 ビードコア
15 カーカスプライ
16 カーカスプライ
17 ビード部
22 ビードフィラー
44 補強層
【発明の属する技術分野】
本発明は、操縦安定性の確保と、使用後の乗心地性能の低下の抑制とを同時に実現することのできる空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
タイヤケース部の運動性能を決定する骨格部材は、カーカスプライ、ビードフィラー、及びビードコアの3部材で、従来の空気入りタイヤでは、ビードフィラーがタイヤ断面高さの約30〜50%の高さに設定されており、そのボリュームで新品時に必要なケース剛性を確保していた(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、空気入りタイヤは、走行により構成部材が劣化するため、タイヤ寿命の中期より乗心地が損なわれる問題があった。
【0004】
特に、従来の空気入りタイヤでは、ビードフィラーのゴムの硬化による乗心地の悪化が顕著であった。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−185514号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、乗心地性能の低下を抑えるためにビードフィラーのボリュームを減らすことが考えられるが、これはビード部の剛性の低下につながり、操縦安定性や耐久性への影響が無視できなくなることから、安易にボリュームを落すことは出来なかった。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、操縦安定性の確保と、使用後の乗心地性能の低下の抑制とを同時に実現することのできる空気入りタイヤを提供することが目的である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の空気入りタイヤは、一対のビード部間をトロイド状に跨り、前記ビード部に配置したビードコアの周りを、タイヤ幅方向内側から外側に巻き返した少なくとも2枚のカーカスプライと、前記1対のビード部をトロイド状に跨る前記カーカスプライの本体部と、前記ビードコアの周りを巻き返した前記カーカスプライの巻き返し部との間に配置され、前記ビードコアからタイヤ径方向外側に向けて延び、その高さがタイヤ断面高さの20〜30%の範囲内に設定されたビードフィラーと、タイヤ側部領域の前記カーカスプライの間に配置され、前記ビードフィラーと略同等の硬さのゴムからなり、かつ前記ビードフィラーよりも薄肉に形成された補強層と、を有することを特徴としている。
【0009】
次に、請求項1に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0010】
請求項1に記載の空気入りタイヤでは、ビードフィラーの高さをタイヤ断面高さの20〜30%の範囲内に設定して従来対比でビードフィラーのボリュームを減らしているが、ビードフィラーのボリュームを減らしたことによる剛性低下分は補強層が補うので、操縦安定性は確保される。
【0011】
ビードフィラーは、硬いゴムから構成されており、タイヤの使用により劣化して硬度が更に高くなるが、従来対比でボリュームが減っているので、硬度が高くなっても、乗心地性能の低下の度合いを小さくできる。
【0012】
なお、補強層自体の劣化による硬化は、補強層自体がビードフィラーに比較して薄肉であり、曲げ剛性への影響は小さいため、乗心地に与える影響は小さく、新品時から走行中期以降も操縦安定性と乗心地がバランス良く保たれる。
【0013】
したがって、請求項1に記載の空気入りタイヤによれば、操縦安定性の確保と、使用後の乗心地性能の低下抑制と、を同時に実現することができる。
【0014】
ここで、ビードフィラーの高さが、タイヤ断面高さの20%未満になると、タイヤ側部の剛性が不足し、操縦安定性や耐久性が十分に確保できなくなる。
【0015】
一方、ビードフィラーの高さが、タイヤ断面高さの30%を越えると、タイヤ側部の剛性が高くなり過ぎて、乗心地性能の低下抑制という本来の目的が達成できなくなる。
【0016】
なお、タイヤ側部領域とは所謂ビード部とサイド部とを含む領域である。
【0017】
また、ここでいうゴムの硬さの略同等とは、±5度の範囲内を含むことを意味する。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空気入りタイヤにおいて、前記補強層のゴムの硬度が、90〜100度の範囲内である、ことを特徴としている。
【0019】
次に、請求項2に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0020】
補強層のゴムの硬度を90〜100度の範囲内とすることで、使用後の乗心地性能の低下抑制と、操縦安定性の確保とを高次元で確保できる。
【0021】
なお、補強層のゴムの硬度が90度未満になると、操縦安定性の確保が困難となる。
【0022】
一方、補強層のゴムの硬度が100度を越えると、乗り心地性能の確保が困難となる。
【0023】
なお、本発明において、ゴムの硬度は、JIS K 6253のスプリング式(デュロメータ硬さ)による硬さである。
【0024】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤにおいて、前記補強層が、少なくともタイヤ断面高さの24〜40%の範囲内に分布している、ことを特徴としている。
【0025】
次に、請求項3に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0026】
補強層を、少なくともタイヤ断面高さの24〜40%の範囲内に分布させることで、ビードフィラーのボリュームを減らしたことによる剛性低下分を補強層のゴム使用量を抑えつつ十分に補うことができる。
【0027】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記補強層は、厚みが0.3〜1.0mmの範囲内である、ことを特徴としている。
【0028】
なお、補強層の厚みが0.3mm未満になると、タイヤ側部領域の補強効果が不足し、ビードフィラーのボリュームを充分に減らすことが出来なくなる。
【0029】
一方、補強層の厚みが1.0mmを越えると生タイヤの製造工程において、カーカスプライの外面に貼り付けられた補強層の上に更にカーカスプライを貼り付ける際、補強層の端部、と2枚のカーカスプライの表面で囲まれる大きな空間、即ち空気溜まりが生じてしまい、セパレーション等の原因となる。
【0030】
したがって、補強層の厚みを0.3〜1.0mmの範囲内とすることが好ましい。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤについて説明する。
【0032】
図1に示すように、空気入りタイヤ10は、1対のビードコア12(図1では片側のみ図示。)と、1対のビードコア12にトロイド状に跨るカーカス14を有している。
【0033】
このカーカス14は、本実施形態ではタイヤ内側のカーカスプライ15、及びタイヤ外側のカーカスプライ16の2枚のカーカスプライから構成されている。
【0034】
カーカスプライ15,16は、幅方向端付近がビード部17に埋設されたビードコア12の回りをタイヤ軸方向内側から外側へ向けて折返されている。
【0035】
1対のビードコア12をトロイド状に跨るカーカスプライ16の本体部16Aと、外側へ向けて折返されたカーカスプライ15の折返部15B及びカーカスプライ16の折返部16Bとの間には、ビード部20の剛性を確保するために、比較的硬度の高いゴム(後述するサイドゴム層24、インナーライナー34、トレッドゴム層42対比で)からなるビードフィラー22が配設されている。
【0036】
ビードフィラー22の高さBHは、タイヤ断面高さSHの20〜30%の範囲内に設定されている。
【0037】
また、カーカス14のタイヤ軸方向外側には、サイドゴム層24が形成されている。
【0038】
一方、カーカス14のタイヤ軸方向内側にはインナーライナー34が設けられている。
【0039】
また、カーカス14のタイヤ径方向外側には、少なくとも1枚、本実施形態では2枚のベルトプライ40A、40Bからなるベルト40が設けられている。
【0040】
ベルト40のタイヤ径方向外側には、補強層41A、および補強層41Bが配置され、さらにそのタイヤ径方向外側には、トレッドゴム層42が配置されている。
【0041】
タイヤ側部領域には、カーカスプライ15とカーカスプライ16との間に、ビードフィラー22を構成するゴムに対し、略同等の硬度を有するゴムからなる補強層44が設けられている。
【0042】
補強層44は、少なくともタイヤ断面高さSHの24〜40%の範囲内に分布していることが好ましい。
【0043】
補強層44を構成するゴムの硬度は、ビードフィラー22を構成するゴムの硬度に対して±5度以内が好ましい。
【0044】
また、補強層44を構成するゴムの硬度は、90〜100度の範囲内であることが好ましい。
【0045】
また、補強層44の厚みは、0.3〜1.0mmの範囲内が好ましい。
【0046】
なお、カーカスプライ15,16は、複数本のコードを互いに平行に並べてゴムコーティングした通常の構造を有している。
【0047】
カーカスプライ15,16において、コードの打込み本数は、10〜16本/25mmが好ましい。
【0048】
さらに、カーカスプライ15,16に用いるコードは、1670dtex/2の場合、引っ張り力66Nを与えたときの伸びが3.5〜8%の範囲内であることが好ましく、1100dtex/2の場合、引っ張り力44Nを与えたときの伸びが3.5〜8%の範囲内であることが好ましい。
(作用)
本実施形態の空気入りタイヤ10では、ビードフィラー22の高さBHをタイヤ断面高さSHの20〜30%の範囲内に設定して従来対比でビードフィラー22のボリュームを減らしているが、ビードフィラー22のボリュームを減らしたことによる剛性低下分は補強層44が補うので、操縦安定性は確保される。
【0049】
ビードフィラー22は、タイヤの使用により劣化して硬度が更に高くなるが、従来対比でボリュームが減っているので、硬度が高くなっても、乗心地性能の低下の度合いを小さくできる。
【0050】
なお、補強層44の劣化による硬化は、補強層44がビードフィラー22に比較して薄肉であり、曲げ剛性への影響は小さいため、乗心地に与える影響は小さく、新品時から走行中期以降も操縦安定性と乗心地がバランス良く保たれる。
【0051】
したがって、この空気入りタイヤ10は、操縦安定性の確保と、使用後の乗心地性能の低下抑制と、を同時に実現することができる。
【0052】
なお、補強層44を、少なくともタイヤ断面高さの24〜40%の範囲内に分布させることで、ビードフィラー22のボリュームを減らしたことによる剛性低下分を補強層44のゴム使用量を抑えつつ十分に補うことができる。
【0053】
ここで、ビードフィラー22の高さBHが、タイヤ断面高さSHの20%未満になると、タイヤ側部の剛性が不足し、操縦安定性や耐久性が十分に確保できなくなる。
【0054】
一方、ビードフィラー22の高さBHが、タイヤ断面高さSHの30%を越えると、タイヤ側部の剛性が高くなり過ぎて、乗心地性能の低下抑制という本来の目的が達成できなくなる。
【0055】
また、補強層44のゴムの硬度を90〜100度の範囲内とすることで、操縦安定性の確保と、使用後の乗心地性能の低下抑制と、を高次元で確保できる。
【0056】
なお、補強層44のゴムの硬度が90度未満になると、操縦安定性の確保が困難となる。
一方、補強層44のゴムの硬度が100度を越えると、乗り心地性能の確保が困難となる。
【0057】
補強層44の厚みが0.3mm未満になると、ビード部17の補強効果が不足し、ビードフィラー22のボリュームを充分に減らすことが出来なくなる。
【0058】
一方、補強層44の厚みが1.0mmを越えると、生タイヤの製造工程において、カーカスプライ15の外面に貼り付けられた補強層44の上にカーカスプライ16を貼り付ける際、図2に示すように、補強層44の端部、カーカスプライ15、及びカーカスプライ16で囲まれる大きな空間、即ち空気溜まり46が生じてしまい、セパレーション等の原因となる。
(試験例)
本発明の効果を確かめるために、従来例に係る空気入りタイヤ、本発明に係る実施例のタイヤ、及び比較例に係る空気入りタイヤを用意し、それぞれの新品時及び使用後について乗心地、及び操縦安定性の試験を行った。
【0059】
以下に、従来例、比較例、及び実施例の空気入りタイヤに付いて説明する。
【0060】
実施例:図1に示すように、カーカスの間に補強層を有する。
【0061】
従来例、比較例1:図3に示すように、補強層が設けられていない点以外は、実施例と同様の構成を有する。
【0062】
比較例2〜比較例9:補強層を設けているが、各部の寸法、ゴム硬度が実施例とは異なる。
【0063】
なお、何れもタイヤサイズは205/65 R15である。
次に、試験方法を説明する。
【0064】
試験は、新品の供試タイヤと使用後の供試タイヤをそれぞれ用意し、乗用車に装着してテストコースにて行った。
【0065】
なお、使用後のタイヤとは、ドラム式のタイヤ試験機にて30000km走行させた後のものである。
【0066】
乗心地:評価パネラーによる官能評価試験。従来品を100とした相対評価であり、数値が大きいほど乗り心地が良いことを表している。
【0067】
操縦安定性:評価パネラーによる官能評価試験。従来品を100とした相対評価であり、数値が大きいほど操縦安定性が良いことを表している。
【0068】
なお、供試タイヤの緒元、及び試験結果を以下の表1〜5に示す。
【0069】
また、表内の補強層上端高さと、補強層下端高さは、それぞれタイヤ断面高さと同様にビードヒールを基準としてタイヤ径方向外側に計測した寸法である。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
上記表1〜5に示すように、本発明の適用された実施例のタイヤは、走行後の性能低下が、従来例、及び比較例に対して小さいことが分かる。
【0075】
【発明の効果】
本発明の空気入りタイヤは上記構成としたので、操縦安定性の確保と、使用後の乗心地性能の低下抑制とを同時に実現することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの断面図である。
【図2】補強層端部付近の断面図である。
【図3】従来例に係る空気入りタイヤの断面図である。
【符号の説明】
10 空気入りタイヤ
12 ビードコア
15 カーカスプライ
16 カーカスプライ
17 ビード部
22 ビードフィラー
44 補強層
Claims (4)
- 一対のビード部間をトロイド状に跨り、前記ビード部に配置したビードコアの周りを、タイヤ幅方向内側から外側に巻き返した少なくとも2枚のカーカスプライと、
前記1対のビード部をトロイド状に跨る前記カーカスプライの本体部と、前記ビードコアの周りを巻き返した前記カーカスプライの巻き返し部との間に配置され、前記ビードコアからタイヤ径方向外側に向けて延び、その高さがタイヤ断面高さの20〜30%の範囲内に設定されたビードフィラーと、
タイヤ側部領域の前記カーカスプライの間に配置され、前記ビードフィラーと略同等の硬さのゴムからなり、かつ前記ビードフィラーよりも薄肉に形成された補強層と、
を有することを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記補強層のゴムの硬度が、90〜100度の範囲内である、ことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記補強層が、少なくともタイヤ断面高さの24〜40%の範囲内に分布している、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記補強層は、厚みが0.3〜1.0mmの範囲内である、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
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