JP5571932B2 - フィルタ回路 - Google Patents

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Description

本発明は、フィルタ回路にかかり、特に、プロセスに起因するIC素子のばらつき及び温度特性変動によらず所望の特性を有するフィルタ回路に関する。
現在、電気信号から雑音や妨害信号を除去するフィルタは、IC(Integrated Circuit )回路として形成されている。フィルタには、時間連続フィルタと、時間離散系フィルタとがある。時間離散系フィルタには、高速動作には適さない、折り返し(aliasing)が発生するという欠点がある。時間離散系フィルタの代表的なフィルタには、SCF(Switched Capacity Filter:スイッチド・キャパシタ・フィルタ)やデジタルフィルタがある。
一方、時間連続フィルタの周知の例としては、Gm−CフィルタやRCアクティブフィルタがある。Gm−Cフィルタは、高速動作に適するものの、入力信号範囲が小さい、線形性能が悪いという欠点がある。また、ICの内蔵抵抗や容量を用いたアクティブフィルタは、入力信号範囲や線形性能についてGm−Cフィルタの性能をはるかに上回る。しかし、ICとして製造される際、ICに含まれる抵抗素子の抵抗値や容量素子の容量値に製造のばらつきがある。さらに、抵抗素子の抵抗値には温度依存性があるため、フィルタの周波数特性に±30〜40%のばらつきが生じるという問題があった。また、アクティブフィルタの帯域は、使用しているフィルタの帯域に対してせいぜい1/5程度しか実現できず、同じ時間連続フィルタでありながらGm−Cフィルタより劣るという問題もあった。
ところで、演算増幅器の出力端子と反転入力端子とを接続すると、ボルテージフォロワ回路が構成できる。フィルタ回路において、演算増幅器から出力される信号が所定の値以上の利得(ゲイン)が得られる周波数の範囲を周波数帯域(以降、単にフィルタの帯域とも記す)と呼ばれている。所定の値には、通過帯ゲインに対して−3dBとなる周波数が用いられることがある。ボルテージフォロワでは、周波数帯域におけるゲインが1倍(0dB)で、帯域外では1次の低域通過フィルタ(Low-pass filter:LPF)特性を示す。
ボルテージフォロワの帯域は、演算増幅器のGB積で決まる。このため、ボルテージフォロワ回路は、カットオフ周波数がGB積に等しい1次のフィルタ回路となる。なお、GB積(Gain-Bandwidth Product)とは、第1ポール周波数とゲインとの積として表される、演算増幅器の性能を表す指標の1つである。
また、演算増幅器のGB積と第2ポール周波数とが同じ、あるいは近い位置にある場合、ボルテージフォロワ回路は2次のLPF特性を示す。ボルテージフォロワ回路によって実現されるフィルタは、演算増幅器を負帰還で使用しているので、RCアクティブフィルタと同様に、信号の入力範囲や線形性能についてGm−Cフィルタの性能を遥かに上回る。
ただし、上記した回路をフィルタとして積極的に利用することは一般的に行われていない。この理由は、上記した回路によって2次以上のLPFを実現することが困難であるためであると思われる。
2次以上のフィルタは、2次のフィルタを1つあるいは複数直列接続することで実現できる。すなわち、GB積と第2ポールをほぼ同じ値にしたボルテージフォロワ回路を単体または複数直列接続することで2次フィルタあるいは2次を超える高次フィルタを実現できる。これらフィルタをGm−Cフィルタ並の精度で実現するためには、それぞれの2次フィルタのカットオフ周波数だけでなく、フィルタのクオリティファクタ(quality factor:Q値)の両方のパラメータを高い精度で実現する必要がある。
演算増幅器をボルテージフォロワ構成にして精度の良いQ値を有したフィルタ実現するには、演算増幅器の位相余裕の精度を良くしなければならない。位相余裕とQ値の関係については非特許文献1に記載されている。なお、位相余裕とは、演算増幅器の周波数・ゲイン特性および周波数・位相周波数特性において、ゲインが1になる周波数での位相遅れ角と180度との差分をいうものとする。例えば、Q値が1.0のフィルタを実現する場合、演算増幅器の位相余裕は51.8度とする必要がある。そしてQ値が1.0に対して±0.05(カットオフ周波数でのゲイン変動が±0.45dBに相当)の変動まで許容できる場合、対応する位相余裕の許容範囲は位相余裕51.8度に対して±2.1度となる。通常の演算増幅器を設計する場合、MOSトランジスタ等素子の製造変動および温度変動の影響を受けるので、位相余裕を±10度以内に抑えることすら困難であった。
また2次を超える高次のフィルタは、Q値の高い2次フィルタを含んだ複数の2次フィルタから構成される。例えば、8次バターワース型のLPFの場合、4つの2次フィルタが必要であるが、このうちQ値が一番高い2次フィルタの場合、Q=2.5となる。ボルテージフォロワでQ=2.5を実現する場合、演算増幅器の位相余裕は22.6度とする必要がある。一般的な増幅器の設計では、回路の安定性のために、位相余裕の低下を避けなくてはいけない。非特許文献2には、増幅器の位相余裕は、少なくとも45度、好ましくは60度必要であるということが記載されている。従って、位相余裕が22.6度となるような演算増幅器を設計するという概念はなかった。しかも、Q値が2.5に対して±0.1(ピークゲインの変動が±0.35dBに相当)以内に抑える場合、対応する位相余裕の許容範囲は位相余裕22.6度に対してわずか±0.9度以内に抑えることが必要になる。この位相余裕の許容範囲は、先に説明した位相余裕が51.8度の場合より狭い。このことから、位相余裕特性が22度程度しかない演算増幅器を設計することは、回路の安定性確保の点と位相余裕精度の点で従来の設計思想ではあり得ないことであった。
Phillip E. Allen, Douglas R. Holdberg 著 CMOS Analog Circuit Design, Holt, Rinehart Winston, inc.1987年, pp. 685-693. PAUL R. GRAY, ROBERT G. MEYER著 ANLYSIS AND DESIGN OF ANALOG INTEGRATED CIRCUITS SECOND EDITION, JOHN WILLEY & SONS Inc., page 534.
上記のようにターゲット値の位相余裕22.6度に対して±0.9度とするような非常に高い精度の位相余裕はおろかターゲット値の位相余裕51.8度に対して±2.1度とするような高い精度の位相余裕を有する演算増幅器を実現する方法については知られていない。また、演算増幅器だけを使った高精度のフィルタも実現されていなかった。
以下に、上記した課題を解決するためのアプローチの具体的な手法を、伝達関数を使って説明する。
図30は、演算増幅器を用いた一般的なボルテージフォロワ回路を示した図である。図示したボルテージフォロワ回路は、演算増幅器1を使って構成されていて、演算増幅器は反転入力端子4、非反転入力端子3、出力端子6、バイアス端子7を備えている。出力端子6から出力された信号は、反転入力端子4から演算増幅器1に帰還されている。
図30に示したボルテージフォロワの伝達関数H(s)=Vout(s)/Vin(s)は、演算増幅器1の帰還がない場合の伝達関数A(s)を用いて(1)のように表すことができる。
H(s)=A(s)/{A(s)+1} …式(1)
式(1)の伝達関数A(s)は、近似的に(2)で表される。
A(s)=Ao・ω1・ω2/((s+ω1)(s+ω2)) …式(2)
式(2)において、AoはDCゲイン、ω1は角周波数で表される第1ポール周波数、ω2は角周波数で表される第2ポール周波数を示している。
ここで周波数fと角周波数ωについて説明する。角周波数ωと周波数fの関係は、ω=2πfとしてよく知られていて、いずれも信号の周波数の高さを表す用語である。フィルタをはじめとした電気分野において通常は周波数fが好んで用いられるが、伝達関数でその周波数特性を記述する場合は、式(2)のように角周波数ωを使用することによって、式の中で2πまたは4π2といった記号の出現を抑えることができる。
このような理由から、本明細書においても、説明する記述内容によりこれら2通りの語句および記号のいずれかが用いられる。また、明細書において、ωの後にサフィックスが付けられている記号は角周波数、fの後にサフィックスが付けられている記号は周波数を表している。ただし、周波数、角周波数のいずれもが周波数を表すものであり、本質的に差異がない。
また、ボルテージフォロワ回路のゲイン・バンド幅積(gain bandwidth product:以降、文中ではGB積、式においては単にGBと記す)は、式(3)のように表すことができる。
GB=Ao・ω1 …式(3)
上記した式(1)に式(2)を代入して整理すると、以下の式(4)が得られる。
H(s)=Ao・ω1・ω2/{s2+s(ω1+ω2)+ω1・ω2+Ao・ω1・ω2}
…式 (4)
式(4)は、分子が定数、分母がsの2次の多項式である。このことから、図30に示したボルテージフォロワ回路は2次LPF特性を有することが分かる。ここで式(4)が具体的にどのような特性を示すかについて一般的な2次LPFの伝達関数を用いて説明する。
一般的な2次LPFの伝達関数は、式(5)によって表される。
H(s)=ωo2/{s2+s(ωo/Q)+ωo2} …式(5)
式(5)に示したωoは角周波数で表されるカットオフ周波数(カットオフ周波数を2π倍した値)、Qはクオリティファクタである。クオリティファクタQを、以降Q値と記す。
式(5)の分母に含まれる、sの1次の項と0次の項と上記した式(4)とを比較し、さらに式(3)を用いることにより、カットオフ周波数ωoとクオリティファクタQはそれぞれ式(6)、式(7)のように表すことができる。
ωo=(Ao・ω1・ω2)1/2=(GB・ω2)1/2 …式(6)
Q=(Ao・ω1/ω2)1/2=(GB/ω2)1/2 …式(7)
ただし、式(6)、式(7)は、DCゲインAoが1に比べて十分大きく、また第2ポール周波数ω2が第1ポール周波数ω1よりも充分大きいとした場合の近似式である。これら2つの近似条件は、通常の演算増幅器の場合、十分満足できる。
式(6)によれば、フィルタのカットオフ周波数ωoがGB積と第2ポール周波数の相乗平均で求めることができることが分かる。また、式(7)によれば、Q値がGB積と第2ポール周波数の比の平方根で求めることができることが分かる。式(7)によれば、高いQ値を実現するには、GB積は第2ポール周波数よりも大きくする必要があり、GB積と第2ポール周波数の比が大きいほどQ値を高くすることが分かる。
図31は、図30で示したボルテージフォロワを4段に直列接続して構成された8次低域通過フィルタ回路の周波数特性を表した図である。なお、周波数特性は、SPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)によるシミュレーションの結果得られたものである。また、ボルテージフォロワ回路に使用される演算増幅器には後に述べる図15の演算増幅器を用いた。フィルタはバターワース型の8次低域通過フィルタで、カットオフ角周波数は40MHzである。またシミュレーション条件として、図30に示した演算増幅器のMOSトランジスタに供給される電流は、MOSトランジスタの性能値と無関係に常に一定としている。この一定の電流値としては、typの場合に目標とするフィルタ周波数特性(カットオフ周波数が40MHzとなるバターワース型低域通過フィルタ)が実現できるような電流値であり、この電流値はmax及びminの場合にも同じ電流値が用いられる。
なお、typとは、MOSトランジスタの性能がターゲット値のものを使って得られた特性図を示している。また、maxとは温度特性を含めて最高の性能のMOSトランジスタを使って得られた特性図を、minとは温度特性を含めて最低の性能のMOSトランジスタを使って得られた特性図を示している。
図31に示した周波数特性で中央のtypはほぼ狙いどおりのカットオフ周波数が実現できている。しかし、MOSトランジスタの性能値が変動すると、最大A(max)からC(min)の範囲でMOSトランジスタ特性が大きく変動することが分かる。この特性の変動の原因は、製造プロセスに起因する特性のばらつき(以降、製造変動とも記す)および温度に依存する特性変動(以降、温度変動とも記す)である。MOSトランジスタのトランスコンダクタンス値が変動を受けると、その結果、式(4)で与えられる伝達関数も影響を受けるからである。
また、フィルタの周波数特性変動は、演算増幅器のGB積と第2ポール周波数の変動だけでなく、第3ポール等の高次ポールの影響や、演算増幅器の位相補償回路によって発生するゼロ点が位相余裕の値に影響することによっても生じる。特に高速フィルタを目指す場合は、GB積、第2ポール周波数が共に高い値に設定されるので、高次ポール、ゼロ点の影響を受ける可能性が高くなる。
以上のことから、高速フィルタをボルテージフォロワ回路単体または複数を直列接続構成で実現するためには、以下の3点が演算増幅器の性能に求められる。
i GB積と第2ポール周波数をそれぞれ正確に所望の値に設定すること。
ii ゼロ点の影響を排除すること。
iii 高次ポールの影響を排除すること。
以上のi〜iiiを実現することにより、演算増幅器の伝達関数は、式(2)のように表すことができる。その結果、演算増幅器を使ったフィルタの特性は、式(6)、式(7)のように表現することができる。
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、Gm−Cフィルタと同じくらいに高速に動作することが可能で、アクティブフィルタと同様に入力電圧の範囲が広く、線形性能が優れており、さらに特性のばらつきをGm−Cフィルタと同等、あるいはそれ以上に抑えることが可能なフィルタ回路を提供することを目的とする。
以上の課題を解決するため、請求項1に記載のフィルタ回路は、入力信号が入力されるフィルタ入力端子(例えば図1に示したフィルタ入力端子108)、フィルタリングされた信号が出力されるフィルタ出力端子(例えば図1に示したフィルタ出力端子109)、演算増幅器を有するフィルタ(例えば図1に示したフィルタ100)と、前記フィルタを制御するためのフィルタ制御信号を生成するフィルタ制御信号生成回路(例えば図1に示した調整信号発生回路102)と、を備えたフィルタ回路であって、前記フィルタ制御信号生成回路は、前記演算増幅器のGB積と第2ポール周波数とを制御するための前記フィルタ制御信号を生成し、前記フィルタ制御信号を前記演算増幅器に供給することで、前記フィルタのカットオフ周波数とクオリティファクタとを制御し、前記演算増幅器は、増幅器反転入力端子、増幅器非反転入力端子、増幅器出力端子を備え、前記フィルタにおいて、前記フィルタ入力端子と前記増幅器非反転入力端子とが接続され、前記フィルタ出力端子と前記増幅器出力端子とが接続され、前記増幅器出力端子と前記増幅器反転入力端子とが接続され、前記カットオフ周波数は、前記演算増幅器のGB積と第2ポール周波数との積の平方根であり、前記クオリティファクタは、前記演算増幅器のGB積を第2ポール周波数で割った値の平方根であることを特徴とする。
請求項に記載のフィルタ回路は、入力信号が入力されるフィルタ入力端子(例えば図22に示した端子Vin)、フィルタリングされた信号が出力されるフィルタ出力端子(例えば図22に示した端子Vout)、演算増幅器を有するフィルタ(例えば図22に示したフィルタ200)と、前記フィルタを制御するためのフィルタ制御信号を生成するフィルタ制御信号生成回路(例えば図22に示した調整信号発生回路102)と、を備えたフィルタ回路であって、前記フィルタ制御信号生成回路は、前記演算増幅器のGB積と第2ポール周波数とを制御するための前記フィルタ制御信号を生成し、前記フィルタ制御信号を前記演算増幅器に供給することで、前記フィルタのカットオフ周波数とクオリティファクタとを制御し、前記演算増幅器は、増幅器反転入力端子、増幅器非反転入力端子、増幅器出力端子を備え、前記フィルタにおいて、前記フィルタ入力端子と前記増幅器反転入力端子とが第1抵抗素子(例えば図22に示した抵抗素子211)を介して接続され、前記フィルタ出力端子と前記増幅器出力端子とが接続され、前記増幅器出力端子と前記増幅器反転入力端子とが第2抵抗素子(例えば図22に示した抵抗素子212)を介して接続され、前記増幅器非反転入力端子に基準信号が供給され、利得Gを前記第2抵抗素子の抵抗値を前記第1抵抗素子の抵抗値で割った値の極性を反転した値とし、前記カットオフ周波数は、前記演算増幅器のGB積と第2ポール周波数との積の平方根を(G+1)の平方根で割った値であり、前記クオリティファクタは、前記演算増幅器のGB積を第2ポール周波数で割った値の平方根を(G+1)の平方根で割った値であることを特徴とする。
請求項に記載のフィルタ回路は、入力信号が入力されるフィルタ入力端子(例えば図23に示した端子Vin)、フィルタリングされた信号が出力されるフィルタ出力端子(例えば図23に示した端子Vout)、演算増幅器を有するフィルタ(例えば図23に示したフィルタ100)と、前記フィルタを制御するためのフィルタ制御信号を生成するフィルタ制御信号生成回路(例えば図23に示した調整信号発生回路102)と、を備えたフィルタ回路であって、前記フィルタ制御信号生成回路は、前記演算増幅器のGB積と第2ポール周波数とを制御するための前記フィルタ制御信号を生成し、前記フィルタ制御信号を前記演算増幅器に供給することで、前記フィルタのカットオフ周波数とクオリティファクタとを制御し、前記演算増幅器は、増幅器反転入力端子、増幅器非反転入力端子、増幅器出力端子を備え、前記フィルタにおいて、前記フィルタ入力端子と前記増幅器非反転入力端子とが接続され、前記増幅器反転入力端子に第1抵抗素子(例えば図23に示した抵抗素子211)を介して基準信号が供給され、前記フィルタ出力端子と前記増幅器出力端子とが接続され、前記増幅器出力端子と前記増幅器反転入力端子とが第2抵抗素子(例えば図23に示した抵抗素子212)を介して接続され、前記第1抵抗素子の抵抗値と前記第2抵抗素子の抵抗値とを加算した値を前記第1抵抗素子の抵抗値で割った値を利得Gとし、
前記カットオフ周波数は、前記演算増幅器のGB積と第2ポール周波数との積の平方根をGの平方根で割った値であり、前記クオリティファクタは、前記演算増幅器のGB積を第2ポール周波数で割った値の平方根をGの平方根で割った値であることを特徴とする。
請求項に記載のフィルタ回路は、請求項1から3のいずれか1項において、前記演算増幅器は、GB積を制御するための第1制御信号端子(例えば図1に示したバイアス端子107)と、第2ポール周波数を制御するための第2制御信号端子(例えば図1に示した端子バイアス107)と、を備え、前記フィルタ制御信号生成回路は、前記第1制御信号端子に前記演算増幅器のGB積を制御する第1フィルタ制御信号を供給し、前記第2制御信号端子に前記演算増幅器の第2ポール周波数を制御する第2フィルタ制御信号を供給することを特徴とする。
請求項に記載のフィルタ回路は、請求項1から4のいずれか1項において、前記フィルタ制御信号生成回路が、第1フィルタ制御信号を生成する第1フィルタ制御信号生成回路(例えば図1に示したフィルタ制御信号生成回路102)と、第2フィルタ制御信号を生成する第2フィルタ制御信号生成回路(例えば図1に示したフィルタ制御信号生成回路102)と、を備え、前記演算増幅器は、第1MOSトランジスタ(例えば図2に示したMOSトランジスタ10)及び第2MOSトランジスタ(例えば図2に示したMOSトランジスタ11)からなる入力MOSトランジスタ対、前記入力MOSトランジスタ対に電流を供給すると共にゲートに前記第1フィルタ制御信号が入力される第3MOSトランジスタ(例えば図2に示したMOSトランジスタ12)、を有する差動増幅回路(例えば図2に示した差動増幅回路201)と、ゲートに前記差動増幅回路の出力端子が接続される第4MOSトランジスタ(例えばMOSトランジスタ16)、ドレインに前記第4MOSトランジスタのドレインが接続されると共にゲートに前記第2フィルタ制御信号が入力される第5MOSトランジスタ(例えばMOSトランジスタ15)、を有する出力増幅回路(例えば図2に示した出力増幅回路202)と、前記差動増幅回路の出力端子と前記出力増幅回路の出力端子との間に接続される第1容量素子(例えば図2に示した容量素子18)及び抵抗回路(例えば図2に示した抵抗回路17)、前記差動増幅回路の出力端子に接続される第2容量素子(例えば図2に示した容量素子20)または前記出力増幅回路の出力端子に接続される第3容量素子(例えば図2に示した容量素子19)の少なくとも一方、を有する受動素子群と、を備えることを特徴とする。
請求項に記載のフィルタ回路は、請求項1から4のいずれか1項において、前記フィルタ制御信号生成回路は、第1フィルタ制御信号を生成する第1フィルタ制御信号生成回路(例えば図1に示したフィルタ制御信号生成回路102)と、第2フィルタ制御信号を生成する第2フィルタ制御信号生成回路(例えば図1に示したフィルタ制御信号生成回路102)と、を備え、前記演算増幅器は、互いにソース同士が接続された第6MOSトランジスタ(例えば図15に示したMOSトランジスタ50)、第7MOSトランジスタ(例えば図15に示したMOSトランジスタ51)からなる入力MOSトランジスタ対と、前記入力MOSトランジスタ対のソースにドレインが接続され、前記入力MOSトランジスタ対に電流を供給すると共に、ゲートに前記第1フィルタ制御信号が入力される第8MOSトランジスタ(例えば図15に示したMOSトランジスタ52)と、前記第6MOSトランジスタのドレインにソースが接続される第9MOSトランジスタ(例えば図15に示したMOSトランジスタ55)、前記第7MOSトランジスタのドレインにソースが接続される第10MOSトランジスタ(例えば図15に示したMOSトランジスタ56)からなるカスコードMOSトランジスタ対と、前記第9MOSトランジスタとドレイン同士が接続される第11MOSトランジスタ(例えば図15に示したMOSトランジスタ57)、前記第10MOSトランジスタとドレイン同士が接続される第12MOSトランジスタ(例えば図15に示したMOSトランジスタ58)からなるロードMOSトランジスタ対と、前記第9MOSトランジスタのソースにドレインが接続される第13MOSトランジスタ(例えば図15に示したMOSトランジスタ53)、前記第10MOSトランジスタのソースにドレインが接続される第14MOSトランジスタ(例えば図15に示したMOSトランジスタ54)からなる電流源MOSトランジスタ対と、を有する差動増幅回路(例えば図15に示した差動増幅回路151)と、ゲートに前記差動増幅回路の出力端子が接続される第15MOSトランジスタ(例えば図15に示したMOSトランジスタ59)、ドレインに前記第15MOSトランジスタのドレインが接続されると共にゲートに前記第2フィルタ制御信号が入力される第16MOSトランジスタ(例えば図15に示したMOSトランジスタ60)、を有する出力増幅回路(例えば図15に示した出力増幅回路152)と、前記差動増幅回路の出力端子と前記出力増幅回路の出力端子との間に接続される第4容量素子(例えば図15に示した容量素子61)及び抵抗回路(例えば図15に示した抵抗回路62)、前記差動増幅回路の出力端子に接続される第5容量素子(例えば図15に示した容量素子63)または前記出力増幅回路の出力端子に接続される第6容量素子(例えば図15に示した容量素子64)の少なくとも一方、を有する受動素子群と、を備えることを特徴とする。
請求項に記載のフィルタ回路は、請求項またはにおいて、前記演算増幅器が、前記出力増幅回路と前記受動素子群とをさらにもう一対備え、全差動型演算増幅器を構成することを特徴とする。
請求項に記載のフィルタ回路は、請求項において、前記受動素子群に含まれる前記抵抗回路が、前記第4MOSトランジスタのトランスコンダクタンス値の逆数に比例する抵抗値を有することを特徴とする。
請求項に記載のフィルタ回路は、請求項において、前記受動素子群に含まれる前記抵抗回路が、前記15MOSトランジスタのトランスコンダクタンスの値の逆数に比例する抵抗値を有することを特徴とする。
請求項10に記載のフィルタ回路は、請求項からのいずれか1項において、前記受動素子に含まれる前記抵抗回路は、抵抗制御信号が供給されるゲート端子を有する抵抗用MOSトランジスタを含むスレーブ回路(例えば図5に示したスレーブ回路602)と、前記抵抗用MOSトランジスタに対し、前記抵抗用MOSトランジスタのソース、ドレイン間の抵抗値を所定の値にするための前記抵抗制御信号を供給するマスタ回路(例えば図5に示したマスタ回路601)と、を備えることを特徴とする。
請求項11に記載のフィルタ回路は、請求項10において、前記マスタ回路が、所定の値のトランスコンダクタンスを有するgm素子(例えば図11に示したトランスコンダクタンスアンプ118)と、前記抵抗用MOSトランジスタと同じ極性であって、前記抵抗制御信号が供給されるゲート端子を有する制御用MOSトランジスタ(例えば図11に示したMOSトランジスタ603)と、前記gm素子の出力端子及び前記制御用MOSトランジスタのソースまたはドレインと接続する反転入力端子リファレンス信号を生成するリファレンス信号生成回路と接続する非反転入力端子前記制御用MOSトランジスタのゲート及び前記スレーブ回路において抵抗素子として機能する前記抵抗用MOSトランジスタのゲートに信号を供給する出力端子、を有する差動増幅器(例えば図11に示した差動増幅器606)と、を備え、前記gm素子の入力端子に第1電圧を供給し、前記制御用MOSトランジスタのドレインまたはソースに第2電圧を供給し、前記gm素子からの出力端子と前記制御用MOSトランジスタのソースまたはドレインを、前記差動増幅器の反転入力端子に接続し、前記差動増幅器の出力端子から出力された信号が、前記抵抗制御用信号として前記制御用MOSトランジスタ及び前記抵抗用MOSトランジスタに供給されることを特徴とする。
請求項12に記載のフィルタ回路は、請求項10において、前記マスタ回路が、基準抵抗素子(例えば図5に示した外付け基準抵抗素子604)と、前記抵抗用MOSトランジスタと同じ極性であって、前記抵抗制御信号が供給されるゲート端子を有する制御用MOSトランジスタ(例えば図5に示したMOSトランジスタ603)と、前記基準抵抗素子の一方の端子と、前記制御用MOSトランジスタのソースまたはドレインと接続する反転入力端子と、リファレンス信号を生成するリファレンス信号生成回路と接続する非反転入力端子と、前記制御用MOSトランジスタのゲート及び前記スレーブ回路において抵抗素子として機能する前記抵抗用MOSトランジスタのゲートに信号を供給する出力端子、を有する差動増幅器(例えば図5に示した差動増幅器606)と、を備え、前記基準抵抗素子の方の端子に第1電圧を供給し、前記制御用MOSトランジスタのドレインまたはソースに第2電圧を供給し、前記基準抵抗素子の他方の端子と前記制御用MOSトランジスタのソースまたはドレインを、前記差動増幅器の反転入力端子に接続し、前記差動増幅器の出力端子から出力された信号が、前記抵抗制御信号として前記制御用MOSトランジスタ及び前記抵抗用MOSトランジスタに供給されることを特徴とする。
請求項13に記載のフィルタ回路は、請求項11または12において、前記スレーブ回路(例えば図9に示したスレーブ回路902)が、前記抵抗用MOSトランジスタと同一の基板上に形成された内部抵抗素子(例えば図10に示したリニア抵抗素子112)を有し、前記抵抗用MOSトランジスタと前記内部抵抗素子とは、直列、または並列に接続された組み合わせ抵抗(例えば図9に示した組み合わせ抵抗907であり、具体的には図10に示した回路)を構成し、前記マスタ回路は、前記制御用MOSトランジスタと同一の基板上に形成された第2内部抵抗素子(例えば図10に示したリニア抵抗素子112)を有し、前記制御用MOSトランジスタと前記第2内部抵抗素子とは、直列または並列に接続された組み合わせ抵抗(例えば図9に示した組み合わせ抵抗903であり、具体的には図10に示した回路)を構成することを特徴とする。
請求項14に記載のフィルタ回路は、請求項11から13のいずれか1項において、前記マスタ回路の前記差動増幅器の非反転入力端子に供給されるリファレンス信号を生成するリファレンス信号生成回路(例えば図6に示した回路)を備え、前記リファレンス信号生成回路は、前記演算増幅器が備える前記出力増幅回路に含まれるMOSトランジスタのチャネルのサイズに比例して縮小され、前記縮小の縮小率に応じた電流が供給されるMOSトランジスタを有することを特徴とする。
請求項15に記載のフィルタ回路は、請求項11から請求項14のいずれか1項において、前記マスタ回路が多段に接続され、前記マスタ回路は、当該接続の段数に応じた前記差動増幅器(図7の差動増幅器706と図7のマスタ回路700に対応する図5の差動増幅器606)を有し、前記スレーブ回路は、前記マスタ回路の数に応じた数の前記抵抗用MOSトランジスタ(例えば図7に示したMOSトランジスタ707a、707b)を有し、前記差動増幅器の各々は、前記抵抗用MOSトランジスタのいずれか1つのゲートに抵抗制御信号を供給することを特徴とする。
請求項16に記載のフィルタ回路は、請求項1からのいずれか1項において、前記演算増幅器が、互いにソース同士が接続された第17MOSトランジスタ(例えば図13に示したMOSトランジスタ30)、第18MOSトランジスタ(例えば図13に示したMOSトランジスタ31)からなる入力MOSトランジスタ対と、前記入力MOSトランジスタ対のソースにドレインが接続され、前記入力MOSトランジスタ対に電流を供給すると共に、ゲートに前記フィルタ制御信号が入力される第19MOSトランジスタ(例えば図13に示したMOSトランジスタ32)と、前記第17MOSトランジスタのドレインにソースが接続される第20MOSトランジスタ(例えば図13に示したMOSトランジスタ35)、前記第18MOSトランジスタのドレインにソースが接続される第21MOSトランジスタ(例えば図13に示したMOSトランジスタ36)からなるカスコードMOSトランジスタ対と、前記第20MOSトランジスタとドレイン同士が接続される第22MOSトランジスタ(例えば図13に示したMOSトランジスタ37)、前記第21MOSトランジスタとドレイン同士が接続される第23MOSトランジスタ(例えば図13に示したMOSトランジスタ38)からなるロードMOSトランジスタ対と、前記第20MOSトランジスタのソースにドレインが接続される第24MOSトランジスタ(例えば図13に示したMOSトランジスタ33)、前記第21MOSトランジスタのソースにドレインが接続される第25MOSトランジスタ(例えば図13に示したMOSトランジスタ34)からなる電流源MOSトランジスタ対と、前記第22MOSトランジスタのドレインに接続される第7容量素子(例えば図13に示した容量素子41)、前記第23MOSトランジスタのドレインに接続される第8容量素子(例えば図13に示した容量素子42)、によって構成される第1容量素子対と、前記第24MOSトランジスタのドレインに接続される第9容量素子(例えば図13に示した容量素子39)、前記第25MOSトランジスタのドレインに接続される第10容量素子(例えば図13に示した容量素子40)、によって構成される第2容量素子対と、を備えることを特徴とする。
請求項17に記載のフィルタ回路は、請求項1から16のいずれか1項において、前記フィルタ制御信号生成回路は、ドレインとゲートが接続される第1の極性の第26MOSトランジスタ(例えば図3(a)に示したMOSトランジスタ73)、前記第26MOSトランジスタとゲート同士が接続される第1の極性の第27MOSトランジスタ(例えば図3(a)に示したMOSトランジスタ72)、からなる第1MOSトランジスタ対と、前記第26MOSトランジスタとドレイン同士が接続される第2の極性の第28MOSトランジスタ(例えば図3(a)に示したMOSトランジスタ71)、ドレインとゲートが接続されると共に前記第28MOSトランジスタとゲート同士が接続され前記第27MOSトランジスタとドレイン同士が接続される第2の極性を有する第29MOSトランジスタ(例えば図3(a)に示したMOSトランジスタ70)、からなる第2MOSトランジスタ対と、前記第26乃至第29MOSトランジスタのうちいずれか1つのMOSトランジスタのソースに接続される第3抵抗素子(例えば図3(a)に示した抵抗素子74)と、前記第26MOSトランジスタのドレインに接続される第1端子(例えば図3(a)に示したバイアス端子B11)と、前記第29MOSトランジスタのドレインに接続される第2端子(例えば図3(a)に示したバイアス端子B1)と、を備え、前記第1端子、前記第2端子の少なくとも一方から前記フィルタ制御信号が出力されることを特徴とする。
請求項18に記載のフィルタ回路は、請求項17において、前記第26MOSトランジスタと前記第28MOSトランジスタのドレイン間、前記第27MOSトランジスタと前記第29MOSトランジスタのドレイン間、のすくなくともひとつに接続されるカスコードMOSトランジスタを備えることを特徴とする。
請求項19に記載のフィルタ回路は、請求項1から16のいずれか1項において、前記フィルタ制御信号生成回路が、PLL回路(図17に示したPLL回路)であることを特徴とする。
請求項20に記載のフィルタ回路は、入力信号が入力される第1フィルタ入力端子、フィルタリングされた信号が出力される第1フィルタ出力端子、第1演算増幅器(例えば図16に示した演算増幅器101a)を備える第1フィルタ(例えば図16に示したフィルタ140a)と、第k−1フィルタの出力信号入力信号として入力される第kフィルタ入力端子(kは、≦k≦Nの整数、Nは以上の整数)(例えば図16に示した入力端子141c)、フィルタリングされた信号が出力される第kフィルタ出力端子(例えば図16に示したフィルタ出力端子109)、第k演算増幅器(例えば図16に示した演算増幅器101c)を備える第kフィルタ(例えば図16に示したフィルタ140c)と、を含む前記第1フィルタから第Nフィルタまでのフィルタ(例えば図16に示したフィルタ2)と、前記第1フィルタから前記第Nフィルタまでの前記フィルタを制御するためのフィルタ制御信号を生成するフィルタ制御信号生成回路(例えば図16に示したフィルタ制御信号生成回路102)と、を備えたフィルタ回路であって、前記フィルタ制御信号生成回路は、前記第1フィルタから前記第Nフィルタまでに備えられる前記第1演算増幅器から第N演算増幅器までのそれぞれの第1から第NまでのGB積と、前記第1演算増幅器から前記第N演算増幅器までのそれぞれの第1から第Nまでの第2ポール周波数とを制御するためのフィルタ制御信号を生成し、前記フィルタ制御信号を前記第1フィルタから前記第Nフィルタまでに備えられる前記第1演算増幅器から前記第N演算増幅器までに供給することで、前記第1フィルタから前記第Nフィルタまでのそれぞれの第1から第Nまでのカットオフ周波数と、前記第1フィルタから前記第Nフィルタまでのそれぞれの第1から第Nまでのクオリティファクタとを制御し、前記第1演算増幅器から前記第N演算増幅器までの演算増幅器は、増幅器反転入力端子、増幅器非反転入力端子、増幅器出力端子、を備え、前記第1フィルタから前記第Nフィルタまでにおいて、前記フィルタ入力端子と前記増幅器非反転入力端子とが接続され、前記フィルタ出力端子と前記増幅器出力端子とが接続され、前記増幅器出力端子と前記増幅器反転入力端子とが接続され、前記カットオフ周波数のそれぞれは、前記演算増幅器のそれぞれのGB積と前記第2ポール周波数との積の平方根であり、前記クオリティファクタのそれぞれは、前記演算増幅器のそれぞれのGB積と前記第2ポール周波数との比の平方根であることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、演算増幅器のGB積と第2ポール周波数が制御信号で制御されているので、所望のカットオフ周波数とQ値を有したフィルタ周波数特性を実現することができる。さらにフィルタ回路は演算増幅器を含んでいるので、入力電圧範囲が広く、線形性能が優れている。また、Gm−Cフィルタと同様に演算増幅器のgm値と容量でフィルタを実現しているので、高い周波数領域でのフィルタを実現できる。
また、請求項に記載の発明によれば、ボルテージフォロワ回路を用いているのでカットオフ周波数がGB積と第2ポール周波数の平方根であり、クオリティファクタがGB積と第2ポール周波数の比の平方根であるような2次の低域通過フィルタ回路を構成することができる。
請求項に記載の発明によれば、反転増幅器を用いているので利得Gのフィルタ回路を構成することができる。
請求項の発明によれば、非反転増幅器を用いているので利得Gのフィルタ回路を構成することができる。さらに入力インピーダンスが無限大とすることができる。
請求項に記載の発明によれば、第1制御信号で演算増幅器のGB積を、第2制御信号で演算増幅器の第2ポール周波数を制御しているので、所望のカットオフ周波数とQ値を有したフィルタ周波数特性を実現することができる。
請求項5に記載の発明によれば、一般的な演算増幅器を使って、入力電圧範囲が広く、線形性能が優れたフィルタ回路を提供することができる。
請求項6に記載の発明によれば、出力増幅回路を備えた折り返しカスコード演算増幅器を使って入力電圧範囲が広く、線形性能が優れたフィルタ回路を提供することができる。さらにGB積と第2ポールを決定するMOSトランジスタの極性が同じであるので、フィルタ制御信号生成回路が1つだけでも精度の高いフィルタを提供できる。
請求項7に記載の発明によれば、入出力信号レンジをシングルエンド回路の2倍とし、S/N特性が向上し、電源ノイズや、同一チップ上に設けられている他回路からのノイズに対する耐性を向上させることができる。
請求項および9に記載の発明によれば、抵抗素子を使ってゼロ点周波数を第2ポール周波数に比べ遠方に配置できる。
請求項10に記載の発明によれば、抵抗素子をマスタ回路とスレーブ回路とによって構成し、スレーブ回路において抵抗素子として機能するMOSトランジスタをマスタ回路で高精度に制御することができる。このため、プロセス変動によらず常に抵抗値が変わらない抵抗素子を提供することができる。
請求項11に記載の発明によれば、スレーブ回路において抵抗素子として機能するMOSトランジスタを、gm素子、MOSトランジスタ、差動増幅器を使って制御することができる。
請求項12に記載の発明によれば、スレーブ回路において抵抗素子として機能するMOSトランジスタを、基準抵抗素子、MOSトランジスタ、差動増幅器を使って制御することができる。
請求項13に記載の発明によれば、組み合わせ抵抗を用いているので小規模な回路でスレーブ回路の抵抗値の設計の自由度を高めることができる。
請求項14に記載の発明によれば、リファレンス信号生成回路を備えているので、スレーブ回路の抵抗値の精度を高くすることができる。
請求項15に記載の発明によれば、マスタ回路を複数用いているのでスレーブ回路の抵抗値の設計の自由度を非常に高めることができる。
請求項16に記載のフィルタ回路は、折り返しカスコード演算増幅器を使っているのでゼロ点周波数の影響がないフィルタ回路を提供することができる。
請求項17に記載のフィルタ回路は、比較的簡易な構成によってフィルタ制御信号生成回路を実現することができる。本回路は容量変動に対する制御を行わないにも関わらず図2、図13、図15に示すような一般によく用いられるタイプの演算増幅器と組合わせたフィルタ回路のQ値は容量変動に影響することなく所望の値に制御できる。
請求項18に記載のフィルタ回路は、フィルタ制御信号生成回路にカスコードMOSトランジスタを用いているので、より高精度なフィルタ回路を提供することができる。
請求項19に記載のフィルタ回路は、PLLをフィルタ制御信号生成回路として用いているので、精度の高い抵抗素子がなくても高精度のフィルタ回路を提供することができる。
請求項20に記載のフィルタ回路は、複数のフィルタを直列接続しているので、任意の次数の任意のタイプのフィルタを実現することができる。
また、請求項20に記載のフィルタ回路は、各々のフィルタに用いている演算増幅器のGB積と第2ポール周波数が制御信号で制御されることで、任意の次数の任意のタイプのフィルタ周波数特性を実現することができる。
本発明の実施形態1のフィルタ回路を説明するための回路図である。 実施形態1の、図1に示した演算増幅器を例示した図である。 図1に示したフィルタ制御信号生成回路を説明するための図である。 図1に示した他のフィルタ制御信号生成回路を説明するための図である。 本発明の実施形態1の抵抗回路を、MOSトランジスタを使って構成することを説明するための図である。 図5に用いられているリファレンス信号電圧VAを生成する回路を説明するための図である。 図5に示したマスタ回路に加えて、第2のマスタ回路を使ってスレーブ回路を制御することを説明するための図である。 図5および図7に示した回路の動作を説明するための図である。 本発明の実施形態1の抵抗値の精度を高く保ちながら、より回路規模が小さい抵抗素子を説明するための図である。 図9に用いられている組み合わせ抵抗を例示した図である。 外付け基準抵抗素子を使用しない抵抗回路を説明するための図である。 図11に用いられているトランスコンダクタンスアンプの回路図である。 本発明の実施形態2のフィルタ回路に用いられる演算増幅器を説明するための図である。 本発明の実施形態2のフィルタ制御信号生成回路を説明するための図である。 本発明の実施形態3のフィルタ回路に用いられる演算増幅器を説明するための図である。 本発明の実施形態4の、図1に示したフィルタを多段に直列接続したフィルタを示した図である。 本発明の実施形態5の、代表的なPLL回路を説明するための図である。 図17に示したPLL回路において出力される信号の波形を示した図である。 図17に示したマスタフィルタの位相特性を示した図である。 図17に示したマスタフィルタの構成を例示するための図である。 図15に示した回路を図17のマスタおよびスレーブフィルタに適用した場合の、回路を例示した図である。 本発明の実施形態6のフィルタ回路を説明するための図である。 本発明の実施形態7のフィルタ回路を説明するための図である。 本発明の実施形態8のフィルタ回路を説明するための図である。 図24に示した演算増幅器の回路を説明するための図である。 図25の演算増幅器に用いられる同相信号レベル制御アンプの回路構成を例示した図である。 図24に示した別の演算増幅器の回路を説明するための図である。 図27の演算増幅器に用いられる同相信号レベル制御アンプの回路構成を例示した図である。 SPICEシミュレーションによって求めた本発明の8次低域通過フィルタ周波数特性示した図である。 演算増幅器を用いた一般的なボルテージフォロワ回路を示した図である。 フィルタ制御信号生成回路を用いない場合の8次低域通過フィルタ回路の周波数特性を表した図である。
以下、図を参照して本発明に係る実施形態1ないし実施形態8のフィルタ回路を説明する。
(実施形態1)
1 回路構成
図1は、本発明の実施形態1のフィルタ回路を説明するための回路図である。実施形態1のフィルタ回路は、フィルタ100と、フィルタ100を制御するためのフィルタ制御信号を生成するフィルタ制御信号生成回路102と、を備えたフィルタ回路である。フィルタ100は、入力信号が入力されるフィルタ入力端子108と、フィルタリングされた信号が出力されるフィルタ出力端子109と、演算増幅器101とを備えている。演算増幅器101は、増幅器反転入力端子104、増幅器非反転入力端子103、増幅器出力端子106を備えている。
なお、図1に示したフィルタ回路は、以下に説明する実施形態2、実施形態3および実施形態5に共通の構成である。
図1中の102はフィルタ制御信号を生成するためのフィルタ制御信号生成回路である。演算増幅器101は、フィルタ制御信号を入力するためのバイアス端子107を備えている。なお、後述するように、フィルタ制御信号生成回路は2つあって、バイアス端子107には2つのフィルタ制御信号が入力される。2つのフィルタ制御信号を、第1フィルタ制御信号、第2フィルタ制御信号とも記す。
フィルタ制御信号生成回路102で生成されたフィルタ制御信号は、演算増幅器101のバイアス端子107へ供給される。演算増幅器101の増幅器非反転入力端子103は、フィルタ入力端子108に接続されている。また、演算増幅器101の増幅器出力端子106はフィルタ出力端子109に接続されている。
増幅器非反転入力端子103はフィルタの入力端子の機能を担っており、入力信号電圧Vinが供給されている。増幅器反転入力端子104、増幅器出力端子106は互いに接続されている。増幅器反転入力端子104、増幅器出力端子106はフィルタ100の出力端子の機能を担っていて、増幅器出力端子106からは出力電圧Voutが出力される。このような構成の演算増幅器は、ボルテージフォロワ回路としてもよく知られている。
図1に示すフィルタの伝達関数は、前記した式(4)〜式(7)によって表される。ただし、Aoは演算増幅器101のDCゲイン、GBは演算増幅器101のGB積、ω1、ω2は演算増幅器101の第1ポール周波数、第2ポール周波数である。またωoはフィルタ100の角周波数で表されたカットオフ周波数、Qはフィルタ100のクオリティファクタである。
図2は、図1に示した演算増幅器101を例示した図である。演算増幅器101は、正の電圧Vddを供給する電源(図中にVddで示し、電源Vddとも記す)と、負の電圧Vssを供給する電源(図中にVssで示し、電源Vssとも記す)との間に差動増幅回路201、出力増幅回路202が接続されて構成されている。
演算増幅器101は、外部から信号が入力されるMOSトランジスタ10及びMOSトランジスタ11からなるMOSトランジスタ対(入力MOSトランジスタ対とも記す)、MOSトランジスタ10、11に電流を供給すると共に、バイアス端子B1に第1フィルタ制御信号が入力される第3MOSトランジスタ12と、MOSトランジスタ10のドレインにドレインとゲートが接続されるMOSトランジスタ13とMOSトランジスタ11のドレインにドレインが接続されてかつMOSトランジスタ13のゲートにゲートが接続されるMOSトランジスタ14からなるMOSトランジスタ対(ロードMOSトランジスタ対とも記す)を含む差動増幅回路201と、ゲートに差動増幅回路201の出力端子が接続されるMOSトランジスタ16と、MOSトランジスタ16とドレイン同士が接続されると共にバイアス端子B2に第2フィルタ制御信号が入力されるMOSトランジスタ15とを含む出力増幅回路202と、を備えている。
また、図2に示した演算増幅器101は、差動増幅回路201の出力端子203と出力増幅回路202の出力端子204との間に接続される容量素子18及び抵抗回路17、出力増幅回路202の出力端子204に接続される容量素子19、差動増幅回路201の出力端子203に接続される容量素子20を含む受動素子群と、を備えている。
実施形態1では、前記したように、フィルタ制御信号生成回路102が第1フィルタ制御信号、第2フィルタ制御信号を生成している。フィルタ制御信号が供給される端子として機能するバイアス端子B1、B2は、図1に示したバイアス端子107に相当する。
このような演算増幅器101は、きわめて一般的な演算増幅器である。
2 伝達関数
演算増幅器101の帰還がない場合、つまりオープンループの場合の伝達関数は、近似的に式(8)のように表される。
A(s)=Ao・ω1・ω2[1−(s/ωz)]/[(s+ω1)(s+ω2)]…式(8)
前記したように、式(8)中のAoは演算増幅器のDCゲイン、ω1は角周波数で表される第1ポール周波数、ω2は角周波数で表される第2ポール周波数である。ωzは、角周波数で表されるゼロ点周波数である。
また、演算増幅器101のGB積は、式(9)のように表すことができる。
GB=Ao・ω1 …式(9)
さらに、図2の小信号等価回路を計算することで式(9)のGBは式(10)、式(8)中のω2は式(11)のように表すことができる。(参考書:「CMOS Analog Circuit Design」p. 387.Phillip E. Allen, Douglas R. Holdberg 著 Holt, Rinehart Winston, inc.1987年出版)
GB=Ao・ω1=gm1/C1 …式(10)
ω2=gm2/{C2+C3+(C2・C3)/C1} …式(11)
式(10)において、gm1は、図2に示したMOSトランジスタ10またはMOSトランジスタ11のトランスコンダクタンス(以降、gm値とも記す)、C1は容量素子18の容量値である。また、式(11)において、gm2は、MOSトランジスタ16のgm値、C2は容量素子20の容量値、C3は容量素子19の容量値である。
また、式(8)におけるゼロ点周波数ωzは、以下の式(12)によって表される。
ωz=(C1/gm2−C1・R)-1 …式(12)
式(12)中のRは、抵抗回路17の抵抗値である。ゼロ点周波数ωzの影響をできるだけ排除するためには、ゼロ点周波数ωzを第1ポール周波数ω1、第2ポール周波数ω2に比べて充分大きい値にすることが必要である。ゼロ点周波数ωzが無視できる場合、図2に示した演算増幅器101を図1のフィルタに用いると、フィルタのカットオフ周波数ωoとフィルタのクオリティファクタQは、式(6)、式(7)に、式(10)、式(11)を代入することにより、式(13)、式(14)のように、gm値と容量値とのみによって表すことができる。
ωo=[(gm1・gm2)/C1/{C2+C3+(C2・C3)/C1}]1/2
…式(13)
Q=[gm1・{C2+C3+(C2・C3)/C1}/(gm2・C1)]1/2
…式(14)
式(13)、式(14)から明らかなように、図2の演算増幅器を図1の演算増幅器101に使った場合のフィルタ100のカットオフ周波数ωoやQ値は、MOSトランジスタのgm値であるgm1、gm2を制御することによって制御することができる。また、gm値の制御は、MOSトランジスタに流れる電流を制御することによって実現することができる。
より具体的には、図2に示した演算増幅器の場合、電流源用のMOSトランジスタ12のバイアス端子B1に供給される電圧を制御し、MOSトランジスタ10、11に流れる電流が制御される。電流の制御により、MOSトランジスタ10、11のgm値であるgm1が制御できる。
また、電流源用のMOSトランジスタ15のバイアス端子B2に供給される電圧を制御することにより、MOSトランジスタ15、16に流れる電流が制御できる。電流の制御により、MOSトランジスタ16のgm値であるgm2が制御できる。すなわち、図2に示した演算増幅器を使ったフィルタ回路のフィルタ周波数特性は、フィルタ制御信号端子として機能するバイアス端子B1、B2の電圧を制御することによって制御することが可能である。尚、図2において、容量19または容量20のいずれか一方の容量をゼロにすることができる。実際には、MOSトランジスタの寄生容量を完全にゼロとすることはできないが、ほぼゼロにすることで式(13)、式(14)はより単純な式に改めることができる。
なお、実施形態1で使用している図2の演算増幅器は、図示した構成に限定されるものではなく、GB積と第2ポール周波数を正確に所望の値に設定するのに好適で、ゼロ点の影響及び高次ポール周波数の影響を概ね排除できるものであればどのような演算増幅器であってもよい。
3 フィルタ制御信号生成回路
次に、バイアス端子B1、B2の電圧を制御するための回路を説明する。
図3(a)は、図1に示したフィルタ制御信号生成回路102を説明するための図であって、図2のバイアス端子B1に入力されるフィルタ制御信号を生成する回路の一部、または全部を表している。
図3(a)に示したフィルタ制御信号生成回路は、電源Vddと電源Vssとの間に、MOSトランジスタ72、70とMOSトランジスタ73、71とが並列に接続されて構成されている。MOSトランジスタ72、MOSトランジスタ70は、ドレイン同士が接続されるように直列に接続されている。また、MOSトランジスタ73、71も、ドレイン同士が接続されるように直列に接続されている。
バイアス端子B1は、MOSトランジスタ72、70のドレインと接続されていて、バイアス端子B1とMOSトランジスタ72、70のドレインとの接続ノードn2は、MOSトランジスタ70、71のゲート端子に接続されている。
また、MOSトランジスタ73、71のドレインは、MOSトランジスタ72、73のゲート端子に接続されている。MOSトランジスタ73、71のドレインとMOSトランジスタ72、73のゲート端子との接続ノードn3は、バイアス端子B11に接続されている。MOSトランジスタ71と電源Vssとの間には、抵抗素子74がMOSトランジスタ73、71と直列に接続されている。抵抗素子74の抵抗値はR1である。
MOSトランジスタ72、73のトランジスタサイズ(チャネル長及びチャネル幅)は等しく、MOSトランジスタ70と71とのトランジスタサイズ比Nは、式(15)のように表される。
N=(W71/L71)/(W70/L70) …式(15)
式(15)に示したW71、L71はMOSトランジスタ71のチャネル幅、チャネル長で、W70、L70はMOSトランジスタ70のチャネル幅、チャネル長である。この場合、MOSトランジスタ70〜73に流れる電流I70は、式(16)のように表される。
I70=(N1/2−1)2/(N・K70・R12) …式(16)
すなわち、カレントミラー回路を構成するMOSトランジスタ72、73のトランジスタサイズが同じであるため、MOSトランジスタ72、73に流れる電流は等しい。それに伴って、MOSトランジスタ70、71に流れる電流も等しくなる。なお、このような原理は、例えば、非特許文献、「ROUBIK GREGORIAN, GABOR C. TEMES著 ANALOG MOS INTEGRATED CIRCUITS FOR SIGNAL PROCESSING, JOHN WILEY & SONS Inc. page 127-128.」に記載されているように周知である。このため、この内容についてはこれ以上の説明を省くものとする。
式(16)に示したK70は、式(17)によって与えられる。
K70=(1/2)・μn・Cox・(W70/L70) …式(17)
式(17)のμnはNMOSトランジスタの移動度、CoxはMOSトランジスタのゲート酸化膜の単位容量である。
図3(a)に示したフィルタ制御信号生成回路の出力端子B1は、図2に示したMOSトランジスタ12のバイアス端子B1に接続される。図3(a)に示したMOSトランジスタ70と図2に示したMOSトランジスタ12とのトランジスタサイズ比が2である場合、MOSトランジスタ12の電流は式(16)によって求められる電流I70の2倍になる。また、図2に示したMOSトランジスタ10、11に流れる電流の電流値はその半分、つまり電流I70になる。
図2に示したMOSトランジスタ10、またはMOSトランジスタ11のgm値であるgm1は、以下の式(18)のように表すことができる。
gm1=2(K10・I10)1/2 …式(18)
式(18)のI10は、式(16)によって求められる電流I70に等しい。また、式(18)中のK10は、式(19)によって求められる。
K10=(1/2)・μn・Cox・(W10/L10) …式(19)
式(19)と式(16)を式(18)に代入すると、式(20)が得られる。
gm1=(2/R1)・{(W10/L10)/(W70/L70)・(N1/2−1)2/N}1/2
…式(20)
式(20)において、W10、L10はMOSトランジスタ10のチャネル幅とチャネル長である。式(20)に示したように、図2に示したMOSトランジスタ10、またはMOSトランジスタ11のgm値であるgm1は、MOSトランジスタ10と図3(a)に示したMOSトランジスタ70のトランジスタサイズ比、図3(a)に示したMOSトランジスタ70、71のトランジスタサイズ比N、図3(a)に示した抵抗素子74の抵抗値R1のみに依存する。
ここで、抵抗素子74を外付けの高精度抵抗とすると、抵抗値R1がばらつきのない一定の値になる。したがって、式(20)によって与えられるgm1は、製造変動や温度変動の影響を受けることがないトランスコンダクタンス値となる。
ただし、式(18)によって与えられるgm値であるgm1は、電流I10に関して特別な制御をしない場合、μnが製造変動と温度変動の影響を受け、Coxが製造プロセスにおけるばらつきの影響を受けるので、狙い通りの値にはならない。
次に、図2に示したMOSトランジスタ16のgm値を制御する回路について説明する。
図4は、図1に示したフィルタ制御信号生成回路102を説明するための図であって、図2に示したバイアス端子B2に入力されるフィルタ制御信号を生成する回路の一部、または全部を表している。なお、実施形態1では、このように、図3(a)、図4に示した2つのフィルタ制御信号生成回路によってフィルタ制御信号生成回路102が構成されることから、フィルタ100のバイアス端子107に2つのフィルタ制御信号が入力されている。
図4に示したフィルタ制御信号生成回路は、電源Vddと電源Vssとの間にMOSトランジスタ81、82とMOSトランジスタ80、83とが並列に接続されている。MOSトランジスタ81、82は互いにドレイン同士が接続されるように、直列に接続されている。また、MOSトランジスタ80、83は互いにドレイン同士が接続されるように、直列に接続されている。
図2に示したバイアス端子B2はMOSトランジスタ81、82のドレインが接続される接続ノードn4に接続されている。接続ノードn4には、MOSトランジスタ82、83のゲート端子が接続されている。また、MOSトランジスタ81、80のゲート端子同士が接続されていて、この接続ノードn5は、MOSトランジスタ80、83のドレインに接続されている。さらに、MOSトランジスタ81と電源Vddとの間には、MOSトランジスタ81に直列に、抵抗素子84が接続されている。抵抗素子84の抵抗値は、R2である。
図4において、MOSトランジスタ82、83のトランジスタサイズ(MOSトランジスタのチャネル長、チャネル幅)は同じである。MOSトランジスタ80とMOSトランジスタ81のトランジスタサイズの比Nは、式(21)によって与えられる。
N=(W81/L81)/(W80/L80) …式(21)
式(21)において、W81、L81はMOSトランジスタ81のチャネル幅とチャネル長で、W80、L80はMOSトランジスタ80のチャネル幅とチャネル長である。
MOSトランジスタ80〜83に流れる電流I80は、式(16)と同様にして式(22)によって与えられる。
I80=(N1/2−1)2/(N・K80・R22) …式(22)
式(22)中のK80は、以下の式(23)によって与えられる。
K80=(1/2)・μp・Cox・(W80/L80) …式(23)
式(23)において、W80、L80はMOSトランジスタ80のチャネル幅とチャネル長である。μpはPMOSトランジスタの移動度、CoxはMOSトランジスタのゲート酸化膜の単位容量である。
図4に示したフィルタ制御信号生成回路のバイアス端子B2は、図2に示したMOSトランジスタ15のバイアス端子B2に接続される。このとき、図4に示したMOSトランジスタ82と図2に示したMOSトランジスタ15のトランジスタサイズが等しいなら、MOSトランジスタ16の電流は、式(22)によって表される。
また、MOSトランジスタ16のgm値であるgm2は、式(24)のように表すことができる。
gm2=2(K16・I16)1/2 …式(24)
式(24)のI16は、式(22)によって与えられる電流I80に等しい。
また、式(24)中のK16は、式(25)によって与えられる。
K16=(1/2)・μp・Cox・(W16/L16) …式(25)
式(25)において、W16、L16はMOSトランジスタ16のチャネル幅とチャネル長である。式(25)、式(22)を式(24)に代入することにより、式(26)が得られる。
gm2=(2/R2)・{(W16/L16)/(W80/L80)}・(N1/2−1)2/N}1/2 …式(26)
式(26)に示したように、MOSトランジスタ16のgm値であるgm2は、図2に示したMOSトランジスタ16とMOSトランジスタ80のトランジスタサイズ比、図4に示したMOSトランジスタ80、81のトランジスタサイズ比N、図4に示した抵抗素子84の抵抗値R2のみに依存することになる。
ここで、抵抗素子84を外付けの高精度抵抗とすると、抵抗値R2がばらつきのない一定の値になる。したがって、式(26)によって与えられるgm2は、製造プロセスに起因する製造変動や温度変動の影響を受けることがないトランスコンダクタンス値となる。
ただし、gm2は、電流I16に関して特別な制御をしない場合、PMOSトランジスタの移動度μpが製造変動と温度変動の影響を受け、ゲート酸化膜の単位容量Coxが製造プロセスにおけるばらつきの影響を受けるので、狙い通りの値にはならない。
以上述べた実施形態1によれば、図2の演算増幅器のgm1、gm2は、図3(a)、図4に示したフィルタ制御信号生成回路によって正確に制御することができる。ただし、フィルタに要求される周波数特性の精度が低くても良い場合、図3(a)または図4に示したフィルタ制御信号生成回路のいずれか一方だけを使って図2に示した演算増幅器のgm1、gm2を同時に制御することができる。
以下、図3(a)に示したフィルタ制御信号生成回路だけを使ってgm2を制御することを説明する。
図3(a)に示したフィルタ制御信号生成回路によりgm2を制御する場合、式(24)によって与えられるgm2を、式(22)に代えて式(16)を使って計算する。計算の結果、以下に示す式(27)が得られる。
gm2=(2/R1)・{μp(W16/L16)/μn(W80/L80)・(N1/2−1)2/N}1/2 …式(27)
式(27)を式(26)と比較すると、式(27)には、式(26)にないPMOSトランジスタの移動度μpとNMOSトランジスタの移動度とμnの比の成分が加わっている。μpとμnの大凡の比は予想できる。また、温度特性も同一ではないものの、近い数値である。フィルタ周波数特性の精度が低くてもよい場合には、μp、μnの比を考慮して制御信号を補正して、NMOSトランジスタ用のフィルタ制御信号生成回路、またはPMOSトランジスタ用のフィルタ制御信号生成回路の一方だけを使って演算増幅器を制御してもよい。
なお、図2に示した演算増幅器において、全てのMOSトランジスタの極性を入れ替えて構成することもできる。この場合、外部から信号を入力するMOSトランジスタ(入力MOSトランジスタとも記す)の極性はNMOSからPMOSに変更されるので、gm1を制御するためのフィルタ制御信号生成回路にはPMOSトランジスタのgm値を制御できる図4の回路が用いられる。また、このような場合、出力増幅回路202の中でアクティブに動作するMOSトランジスタ(図2におけるMOSトランジスタ16)の極性はP型からN型になるので、gm2を制御するためのフィルタ制御信号生成回路には、NMOSトランジスタのgm値を制御できる図3(a)の回路が用いられる。
ここで図3(a)の代わりに図3(b)に示すようなフィルタ制御信号生成回路を用いることができる。図3(b)と図3(a)の違いは図3(a)ではバイアス端子B1がMOSトランジスタ70のドレイン端子と接続していたのに対して、図3(b)ではバイアス端子B1がMOSトランジスタ71のドレイン端子と接続していてかつ、図3(a)ではバイアス端子B11がMOSトランジスタ73のドレイン端子と接続していたのに対して、図3(b)ではバイアス端子B11がMOSトランジスタ72のドレイン端子と接続していることだけである。図3(a)の回路も図3(b)の回路もMOSトランジスタ72と73がカレントミラー回路を形成していて同じ電流が流れるので、MOSトランジスタ70,71および72,73のゲート電圧に相当するバイアス端子B1およびB11の電圧も変わることなく同じである。従って、図3(a)のフィルタ制御信号生成回路の代わりに図3(b)のフィルタ制御信号生成回路を用いても構わない。同様にして、図4の回路に対しても図3(b)と同じような接続に変更した回路に置き換えても構わない。
また、図3(a)の回路は式(16)で与えられる電流を正確に実現しなければ、フィルタの周波数特性に影響を与える式(20)で与えられるgm1値にも影響する。このためには、MOSトランジタ72、73で与えられるカレントミラーの電流精度を厳密に制御するため、MOSトランジスタ72,73のドレイン電圧を同じにするため良く知られているカスコード回路の手法を用いることができる。図3(c)は図3(a)のフィルタ制御信号生成回路に対してカスコードMOSトランジスタ75を追加するとともに、さらにカスコードMOSトランジスタ76を追加して、カレントミラー電流精度を向上させている。図4のフィルタ制御信号生成回路に対しても図3(c)と同じようにカスコードMOSトランジスタを追加することで一層の精度向上を図ることができる。また図3(a)から図3(c)に置き換えたように、図3(b)の回路を図3(c)のようにカスコードMOSトランジスタを追加して電流精度を向上させることができる。
次に、前記した式(8)の伝達関数に表れる、ゼロ点周波数ωzを制御する方法について説明する。
フィルタのカットオフ周波数ωoやQ値は、式(8)のゼロ点周波数ωzが無視できる場合、式(13)、式(14)のように表すことができる。すなわち、ゼロ点周波数が無限大の場合に、式(8)は式(2)のようになる。図2に示した演算増幅器の回路の場合、ゼロ点周波数は式(28)のようになる。なお、ゼロ点周波数を式(28)のように表すことができることは、例えば、「PAUL R. GRAY、ROBERT G. MEYER著 ANLYSIS AND DESIGN OF ANALOG INTEGRATED CIRCUITS SECOND EDITION、JOHN WILLEY & SONS Inc、page 748.」に記載されているから、これ以上の説明を省くものとする。
ωz=1/[(C1/gm2)−C1・R)] …式(28)
式(28)において、C1は図2に示した容量素子18の容量値、gm2は図2に示したMOSトランジスタ16のgm値である。ゼロ点周波数、すなわち式(28)が無限大になる条件は、図2に示した抵抗回路17の抵抗値Rが、以下の式(29)を満たすことである。
R=1/gm2 …式(29)
gm2は、例えば図4に示した回路により、常に一定の値に制御される。このため、抵抗回路17の抵抗値Rは、gm2に反比例した一定の値を有するものであればよい。このような抵抗回路17として、IC上に形成された抵抗を用いることが考えられる。IC上に形成される抵抗の抵抗値Rは製造ばらつきおよび温度変動があるため、目標値に対してある程度の変動ばらつきを考慮する必要がある。ここで、この変動ばらつきとして目標値に対して±40%程度の変動を仮定して、ゼロ点ωzの変動量を計算する。抵抗の目標値(ターゲット値)Roと目標値Roに対するばらつきΔRとによって抵抗値Rを表すと、以下のようになる。
R=Ro+ΔR …式(30)
ΔR=±0.4×(1/gm2) …式(31)
式(28)に式(30)、式(31)を代入すると、式(32)を得る。
ωz=±2.5/(C1/gm2) …式(32)
すなわち、ゼロ点周波数と(gm2/C1)の値とは、(gm2/C1)の2.5倍程度しか離れていないことが分かる。gm2及び容量値C1はフィルタの性能に大きく影響を及ぼすパラメータであるから、gm2を大きくしたり、容量値C1を小さくしたりしてゼロ点の影響を小さくすることは難しい。
このため、抵抗値Rと目標値Roとの相違が大きい場合、演算増幅器の伝達関数は式(2)では近似できなくなる。そして、演算増幅器を使ったフィルタは、有限に位置するゼロ点の影響により、式(6)、式(7)で与えられるフィルタ周波数特性を実現することができなくなる。
すなわち、抵抗値Rが製造変動や温度変動によって大きく変動すると、フィルタの周波数特性にも変動が生じる。換言すれば、フィルタ周波数特性が式(6)、式(7)で表されるようにするためには、位相補償用の抵抗回路が、充分高い精度の抵抗値を持ったものである必要がある。例えば、製造条件を厳密に制御して精度の高い抵抗を実現する、あるいはトリミング等によって抵抗値をターゲット値になるようにすればよい。ただし、コスト等の問題もありこれらの手法で精度の高い抵抗は、簡単に実現できない。このため、本実施形態では、MOSトランジスタを用いて、抵抗素子の抵抗値がいつも式(29)を満足するように制御される。
4 抵抗回路
図5は、実施形態1に用いる抵抗回路(例えば図2の17)を説明するための図である。図5に示した回路は、ゲート制御電圧生成用のマスタ回路601と、演算増幅器の位相補償抵抗(例えば図2の17)となるスレーブ回路602とによって構成されている。スレーブ回路602は、図2の演算増幅器の位相補償用の抵抗回路17となっている。
マスタ回路601は、差動増幅器606を備えている。差動増幅器606の反転入力端子と端子621との間には基準抵抗素子604が接続されている。MOSトランジスタ603のソースには、基準抵抗素子604の一方の端子が接続されるとともに差動増幅器606の反転入力端子622に接続されている。
差動増幅器606の出力信号は、MOSトランジスタ603のゲート端子とともにスレーブ回路602に備えられているMOSトランジスタ607のゲート端子に電圧VCとして供給されている。電圧VCは、実施形態1の抵抗制御信号となる。
MOSトランジスタ603のドレイン端子620には電圧VA+Δ1、基準抵抗素子604の他方の端子621には電圧VA−Δ2が供給される。また、非反転入力端子623には、リファレンス信号生成回路610からリファレンス信号電圧VAが供給されている。Δ1、Δ2は、それぞれリファレンス信号生成回路610から供給される電圧VAに対する差電圧である。また、MOSトランジスタ603、607は、抵抗素子として機能するため、以降本実施形態では、それぞれMOS抵抗素子603、MOS抵抗素子607と記す。
図5の回路の動作説明をする。端子620と端子621にはそれぞれ電圧VA+Δ1とVA−Δ2が供給されているので、電流は端子620からMOS抵抗素子603および基準抵抗素子604を通して端子621に流れる。この時、端子622の電圧V622は式(33)のように表すことができる。
V622=(VA−Δ2)+(Δ1+Δ2)×[Rm2/(Rm1+Rm2)] …式(33)
式(33)中のRm1はMOS抵抗素子603の抵抗値、Rm2は基準抵抗素子604の抵抗値である。また差動増幅器606はMOS抵抗素子603、基準抵抗素子604と組み合わされることで負帰還回路を構成しているので、差動増幅器606の反転入力端子622の電圧は非反転入力端子623の電圧VAに等しくなる。仮に、差動増幅器の反転入力端子622の電圧V622が、非反転入力端子623の電圧VAよりも高い場合は、差動増幅器606の出力電圧は低くなる。すると、MOS抵抗素子603のゲート電圧も低くなり、MOS抵抗素子603の抵抗Rm1が高くなる。すると式(33)より反転入力端子電圧V622は低くなる。また逆に、差動増幅器の反転入力端子622の電圧V622が、非反転入力端子623の電圧VAよりも低い場合は、差動増幅器606の出力電圧は高くなる。すると、MOS抵抗素子603のゲート電圧も高くなり、MOS抵抗素子603の抵抗Rm1が低くなる。すると式(33)より反転入力端子電圧V622は高くなる。このようにして、差動増幅器のDCゲインが十分高いときは、反転入力端子の電圧V622と非反転入力端子の電圧VAは等しくなり、式(33)は式(34)のように表すことができる。
VA=(VA−Δ2)+(Δ1+Δ2)×[Rm2/(Rm1+Rm2)] …式(34)
式(34)より式(35)が得られる。
Δ2×(Rm1+Rm2)=(Δ1+Δ2)×Rm2 …式(35)
さらに、式(35)を整理すると式(36)が成立する。
Rm1=(Δ1/Δ2)Rm2 …式(36)
式(36)から図5の回路によれば、MOS抵抗素子の抵抗値Rm1は、基準抵抗素子の抵抗値Rm2に必ず比例する。
ここで、よりわかりやすくするためにマスタ回路601のMOS抵抗素子603とスレーブ回路602のMOS抵抗素子607のトランジスタサイズが同じで、かつソース電圧、ドレイン電圧も同じであるとすると、スレーブ回路601のMOS抵抗素子607の抵抗値Rm3は、式(37)に示すように製造変動や温度変動に関係なく、マスタ回路601のMOS抵抗素子603の抵抗値Rm1に等しくなる。
Rm3=Rm1 …式(37)
実施形態1では、図5に示したマスタ回路601によって制御されるスレーブ回路602を、図2に示した抵抗回路17に使用するものとする。式(29)に示しているようにこの抵抗値Rm3がgm2の逆数に等しい時(Rm3=1/gm2)、言い換えると上記で仮定したRm3=Rm1より式(38)に示すような関係の時に図2の回路の伝達関数である式(8)のゼロ点を無限大にすることができる。
Rm1=1/gm2 …式(38)
実施形態1では、図5に示したマスタ回路601によって制御されるスレーブ回路602を、図2に示した抵抗回路17に使用するものとする。
なお、図5に示したMOS抵抗素子603、607はNMOSトランジスタであるが、当然のことながら、NMOSトランジスタをMOS抵抗素子に使用するものに限定されるものではない。実施形態1では、PMOSトランジスタを用いても、図5に示した回路と同様の回路を構成することができる。抵抗素子にNMOSトランジスタを用いるか、PMOSトランジスタを用いるかは、図2に示した抵抗回路17のソース電圧が電源Vssの電位に近い場合はNMOSを、ソース電圧が電源Vddの電位に近い場合はPMOSを選択するようにする。逆の場合、抵抗素子の抵抗値を低くするのが困難である、あるいはMOS抵抗素子の制御可能な抵抗範囲が狭くなる。
また、Δ1の値は、MOS抵抗素子が線形性能を良好に保つために、MOS抵抗素子603、607のVgs−Vthに比べて十分小さくする必要がある。ただし、小さすぎるとΔ1およびΔ2の設定電圧からの偏移に対する影響が大きくなるので、適正な値に設定することが望ましい。
次にリファレンス信号電圧VAを生成するためのリファレンス信号生成回路610について説明する。前記したように、MOS抵抗素子603、607の抵抗値は、MOS抵抗素子603、607各々のゲート・ソース間の電圧で決まる。このため、MOS抵抗素子603、607において、ゲートの電圧だけでなく、ソース電圧も同じにする必要がある。マスタ回路601では、MOS抵抗素子603のソース電圧を、図2に示した演算増幅器の抵抗回路17の両端の電圧に等しくしなければならない。これを実現する方法としては、図2に示した演算増幅器101をコピーした、この演算増幅器と同じ回路構成であって、かつ、演算増幅器に含まれる素子のサイズが等しい回路(以下、レプリカ回路Aと記す)をボルテージフォロワ構成にし、抵抗回路17の両端子のどちらか一方の電圧信号を、マスタ回路601の演算増幅器606の非反転入力端子へ電圧VAとして供給すればよい。すなわちリファレンス信号生成回路610として、レプリカ回路Aを用いて、そのリファレンス信号生成回路610から出力されるリファレンス信号電圧VAとして、レプリカ回路Aの中の抵抗回路17(これもレプリカである)の2つの端子のいずれか一方の信号電圧を用いることができる。
このように構成する場合、レプリカ回路Aの演算増幅器のトランジスタサイズ等を図2に示した演算増幅器と完全に同じにすると、回路全体のチップサイズや消費電流が増大する。これを解消するために、レプリカ回路Aの全てのトランジスタサイズとMOSトランジスタを流れる電流の電流値を一律に一定の割合だけ小さくする。トランジスタサイズを小さくして、電流値も同じ割合で小さくすることにより、演算増幅器内の各端子の電圧は図2の演算増幅器と同じになる。このため、抵抗回路17に相当するレプリカ回路Aの抵抗回路の端子電圧も図2の演算増幅器と同じになる。
リファレンス信号生成回路610に用いる回路として、レプリカ回路Aよりさらに小規模の回路として構成する例について説明する。
図6は、図2に示した出力増幅回路202をコピーした、出力増幅回路202と同じ回路構成であって、かつ、演算増幅器に含まれる素子のサイズが等しい回路(以下、レプリカ回路Bと記す)を説明するための図である。図示したレプリカ回路Bでは、図2に示したMOSトランジスタ16に対応するMOSトランジスタ160、図2に示したMOSトランジスタ15に対応するMOSトランジスタ150が直列に接続されている。MOSトランジスタ150のゲート端子にはMOSトランジスタ15のゲート端子へ印加される電圧が供給され、MOSトランジスタ160のゲート端子とドレイン端子を接続すると、その接続点161に、図2のMOSトランジスタ16のゲート電圧VAが形成される。この理由は、図2に示したMOSトランジスタ16とMOSトランジスタ160に同じ電流が流れるので、MOSトランジスタ16、MOSトランジスタ160のゲート電圧が等しくなることによる。
また、レプリカ回路Bにあっても、消費電流低減のため、レプリカ回路に含まれるMOSトランジスタ150、160のサイズを、図2に示した出力増幅回路202に含まれるMOSトランジスタ15、16のサイズに対して一定の割合で縮小してもよい。
また、図5に示したMOS抵抗素子603、607は、製造変動や温度変動により、同じゲート電圧に対して異なる抵抗値を示す。換言すれば、目標とする抵抗値を得るにあたって、MOS抵抗素子ごとに、また環境温度に応じて印加すべきゲート電圧は異なる値になる。
ここで、ゲート電圧が低いと、MOS抵抗素子の線形性能劣化のために、所望する抵抗値を正確に実現することができなくなる。この理由は、線形領域におけるSAHの式であるIds=K(Vgs−Vth−0.5Vds)Vdsからもわかるように、ドレイン・ソース間電流Idsはドレイン・ソース間電圧Vdsが大きい場合には、比例関係から大きく外れるからである。 MOS抵抗素子の線形性能劣化の影響を低減するため、図7のように、図5に示したマスタ回路601に加えて、第2のマスタ回路701を使ってスレーブ回路702を制御することができる。
図7に示した構成では、マスタ回路を多段に接続すると共に、接続の段数に応じてマスタ回路701及びスレーブ回路702のMOSトランジスタの数が増やされる。マスタ回路701はマスタ回路701からの抵抗制御信号VC2によって駆動されるMOSトランジスタ703bを除いて図5のマスタ回路601と完全に同じ回路である。マスタ回路701は、マスタ回路601に接続された2段目のマスタ回路であるから、並列に接続された2つのMOS抵抗素子703a、703bを含んでいる。また、スレーブ回路702には、前段のマスタ回路700(図5のマスタ回路601に相当する)によって制御されるMOS抵抗素子707aとマスタ回路701によって制御されるMOS抵抗素子707bが設けられている。差動増幅器706は、その出力信号VC2がMOSトランジスタ703bのゲートに供給されており、このMOSトランジスタ703bと基準抵抗素子704とMOSトランジスタ703aと組み合わされることで負帰還回路を構成している。
図中に、MOS抵抗素子707aの抵抗制御信号608a、MOS抵抗素子707bの抵抗制御信号608bを示す。抵抗制御信号608aの電圧値はVC1、抵抗制御信号608bの電圧値はVC2である。
図8(a)は、図5に示した回路の動作を示し、図8(b)は図7に示した回路の動作を説明するための図である。図8(a)、(b)のいずれにおいても、縦軸はMOS抵抗素子となるMOSトランジスタのゲート電圧を示し、横軸はMOSトランジスタの性能を表すパラメータを示している。すなわちMOSトランジスタの抵抗をいつも基準抵抗素子に等しくする条件下で、MOSトランジスタの性能に対するゲート電圧との関係を表している。MOSトランジスタの性能を表すパラメータは、移動度、ゲート容量を含んでいて、移動度は低温で高く、高温で低くなる。図8(a)、(b)では、グラフが横軸における左側にシフトするほどMOS抵抗素子となるMOSトランジスタの性能が高いことを示している。
なお、「MOSトランジスタの性能が高い」とは、所定の抵抗を得るために必要なゲート電圧がより低いことをいう。また逆に、「MOSトランジスタの性能が低い」とは、所定の抵抗を得るために必要なゲート電圧がより高いことをいう。MOSトランジスタの性能の低下は、MOSトランジスタ環境の温度が高くなることによっても起こる。図8(a)、図8(b)にMOSトランジスタが所有する性能の範囲を両矢印609で表している。両矢印609の一番左側の点は、MOSトランジスタの最高の性能レベルに相当し、両矢印609の一番右側の点は、MOSトランジスタの最低の性能レベルに相当する。
MOSトランジスタは、ゲート電圧が低い場合に、SAHの式によって線形性が劣化する。このため、MOSトランジスタの性能が高く、低いゲート電圧でも充分動作する場合であっても、ゲート電圧をある程度以上の値にすることが好ましい。すなわち、図8では、ゲート電圧がVA+Vthよりも十分高い電圧(図8(a)ではVC)になるように設定することが好ましい。
ただし、このような場合、MOSトランジスタの性能が低く、必要とされるゲート電圧が電源Vddの電圧値を超えてしまうと、所望の抵抗値を実現できない。図8(a)によれば、所望の抵抗値を実現するために必要とする抵抗制御信号608が、電源Vddの電圧値(図中にVddと記す)を超えて上昇していることが分かる。
これを解消するため、図7に示した回路では、MOS抵抗素子703a、703bと、MOS抵抗素子707a、707bの2組のMOS抵抗素子を用いている。図8(b)によれば、マスタ回路701、スレーブ回路702を図7のように構成することにより、MOS抵抗素子703a、707a(以降、これらを第1のMOS抵抗素子とも記す)のゲート端子電圧が電源Vddの電位に到達すると、MOS抵抗素子703b、707b(以降、これらを第2のMOS抵抗素子とも記す)が動作して、MOSトランジスタの性能が低くなりすぎてもMOSトランジスタ707a、707bを組み合わせることで所望の抵抗値を実現できる。
このとき、図8(b)の区間801において明らかなように、第2のMOS抵抗素子の抵抗のゲート電圧が低いので、線形性能が劣化する。しかし、第1のMOS抵抗素子のゲート電圧が第2のMOS抵抗素子のゲート電圧に比べて十分高いため、線形性能の劣化はMOS抵抗素子を1つだけ使用した場合と比べてはるかに小さくて済む。
また、図8(b)の区間802での動作について説明する。第1のMOS抵抗素子703a、707aは、マスタ回路700の働きによって抵抗値が基準抵抗素子704の抵抗値と同じになるように動作する。実際にはマスタ回路700は、抵抗素子603が基準抵抗素子604と同じ値になるように制御しており、その結果として図7に示した基準抵抗素子704に流れる電流とMOS抵抗素子703aを流れる電流とは等しいので、MOS抵抗素子703bを流れる電流はゼロとなる。第2のマスタ回路701のゲート電圧(図8(b)の608b)は、動作領域が領域802である限り、VA+Vthのままである。すなわち、図8(b)の区間802では、マスタ回路701と703b、707bは存在しない場合と同じである。そして、仮に温度が高温となりMOSトランジスタの性能が低くなると、第1のMOS抵抗素子707aのゲート電圧(図8(b)の608a)が上昇してVddに到達した後、第2のMOS抵抗素子707bを制御するマスタ回路701が働いて第2のMOS抵抗素子707bのゲート電圧がさらに上昇し、MOS抵抗素子707bの抵抗値が下がる。なお、領域802ではMOS抵抗素子707bの抵抗値は無限大であるので、MOS抵抗素子707bが線形性能の点から抵抗素子の特性に悪影響を及ぼすことはない。
図7に示した回路は、抵抗素子の抵抗値の線形性能を高く保つ(抵抗素子の抵抗値の精度を高く保つ)ためのものである。ただし、2つのマスタ回路が必要であるから、回路規模が大きくなるという欠点がある。本実施形態では、マスタ回路が1つでありながら、抵抗素子の良好な線形性能を保つことができる回路を提案する。
図9は、抵抗素子の抵抗値の精度を高く保ちながら、より回路規模が小さい抵抗素子を説明するための図である。図9に示した抵抗素子は、マスタ回路901、スレーブ回路902によって構成されている。なお、図9において、図5と同様の構成については同様の符号を付し、説明を一部略すものとする。図9に示した抵抗素子では、図5に示した回路において、MOS抵抗素子603に代えて組み合わせ抵抗903を、MOS抵抗素子607に代えて組み合わせ抵抗907を設けている。
図10(a)、(b)、(c)は、それぞれ、組み合わせ抵抗903、907を例示した図である。組み合わせ抵抗903、907は、MOS抵抗素子111やチップ内リニア抵抗112を直列、あるいは並列に接続して構成されている。リニア抵抗112は、MOSトランジスタと同一のICチップ内に形成される(MOSトランジスタと同一基板上に形成される)抵抗で、例えばポリ抵抗や、拡散抵抗として実現される。ポリ抵抗や、拡散抵抗は、いずれも、抵抗値が不純物の量のばらつきや、温度の変動によって変動する。
ここで例えば、図10(b)に示した組み合わせ抵抗を組み合わせ抵抗903に用いる場合は、組み合わせ抵抗907にも同じ組み合わせ抵抗が用いられる。なお、組み合わせ抵抗903と組み合わせ抵抗907との間では、MOS抵抗素子111のサイズの逆数とチップ内リニア抵抗112の抵抗値が比例の関係を保っていればよい。
つまり、図9に示した回路は、図5に示した回路と同様に動作するので、リニア抵抗素子112の抵抗値が小さい場合、組み合わせ抵抗の抵抗値が、基準抵抗604の抵抗値に(Δ1=Δ2の場合)等しくなるように図9の回路が動作し、結果としてMOS抵抗素子111は抵抗値が高くなるように制御される。このため、MOS抵抗素子111に印加されるゲート電圧は低くなり、MOS抵抗素子111の線形性能は劣化する。しかし、リニア抵抗素子112の抵抗値と比較してMOS抵抗素子の抵抗値は充分高いので、全体としてMOS抵抗素子111の影響が小さくなり、全体の抵抗素子の線形性能劣化はわずかである。
また、リニア抵抗素子112の抵抗値が高い場合、MOS抵抗素子111の抵抗値は低くなる。このため、MOS抵抗素子111のゲート電圧は高くなり、抵抗値の線形性能は高くなる。図10(a)に示したMOS抵抗素子111とリニア抵抗素子112との直列接続の場合も同様である。すなわち、リニア抵抗素子112とMOS抵抗素子111とを組み合わせにより、図7に示した回路のように、2組のマスタ回路およびMOS抵抗素子を使わなくても、本実施形態は充分高い線形性能を得ることができる。
以上述べた図5、図7、図9の回路は、いずれも基準抵抗素子604、704として精度の高い外付け抵抗素子が必要である。外付け基準抵抗素子を設けることは、コスト増を招き、実装基板のスペース確保やパッケージのピン数増加といった不具合を生ずることがある。本実施形態では、このような不具合を、図11に示した回路によって解消することができる。
図11は、外付け基準抵抗素子604を用いないマスタ回路113を説明するための回路図である。図11では、図5に示した基準抵抗素子604に代えて、トランスコンダクタンス値(以下、gm値という)がgmxであるトランスコンダクタンスアンプ118を設けている。以下、図11のマスタ回路113の動作説明をする。トランスコンダクタンスアンプ118の反転入力端子651には電圧Vbが、トランスコンダクタンスアンプ118の非反転入力端子652には電圧(Vb−Δ2)が、MOSトランジスタ603のドレイン端子650には電圧VA+Δ1が、差動増幅器606の非反転入力端子には、リファレンス信号生成回路610からリファレンス信号電圧VAがそれぞれ供給されている。差動増幅器606は帰還回路を形成しているので、差動増幅器606の反転入力端子電圧が非反転入力端子電圧と同じ値であるVAとなる。トランスコンダクタンスアンプ118から差動増幅器606の反転入力端子へ流れる電流Igmxは、トランスコンダクタンスアンプ118のgm値であるgmxにトランスコンダクタンスアンプ118の非反転入力端子652と反転入力端子651に供給される電圧差(−Δ2)を掛けた値になるので、電流Igmxは式(39)のように表せる。
I2=(−Δ2)・gmx …式(39)
またMOSトランジスタ603において、端子650から差動増幅器606の反転入力端子へ流れる電流I603は、MOSトランジスタ603の抵抗値をR603とすると、
I603=Δ1/R603 …式(39−2)
となる。ここで、差動増幅器606の反転入力端子に流れ込む全ての電流は式(39)と式(39−2)で表される電流の和になる。そしてこの電流の和はゼロでなければならない。もし、ゼロでない場合は反転入力端子の電圧は時間とともに変化するが、最終的には、負帰還回路の作用で非反転入力端子の電圧に等しくなるように、MOSトランジスタ603のゲート電圧が制御される。この動作は図5におけるMOSトランジスタ603の電圧制御と同じである。従って、(39)と(39−2)より(39−3)が成り立つ。
R603=(Δ1/Δ2)/gmx …式(39−3)
ここで、マスタ回路113のMOSトランジスタ603とスレーブ回路602のMOSトランジスタ607のサイズが同じであれば、MOSトランジスタ607の抵抗もまた式(39−3)で表される。図2に示した抵抗回路17(本実施形態では、スレーブ回路602のMOSトランジスタ607に相当する)の抵抗値がゼロ点を無限大にする条件は式(29)に与えられているので、式(29)と式(39−3)より、式(40)で与えられる。
gmx=(Δ1/Δ2)・gm2 …式(40)
すなわち、図11のトランスコンダクタンスアンプ118のgm値が式(40)によって表される場合、ゼロ点周波数を無限大にすることができる。図11では、基準抵抗素子604の代わりにIC上に形成できるトランスコンダクタンスアンプ118を設けたので、複数のgmのトランスコンダクタンスアンプをIC上に形成し、これを切り替えて使用することもできる。
図11に示したトランスコンダクタンスアンプ118のgm値は、製造変動、温度変動の影響を受けることなく一定で、しかも式(40)によって与えられる値に等しいことが要求される。このようなトランスコンダクタンスアンプ118について、図12を用いて説明する。
図12は、トランスコンダクタンスアンプ118の回路図である。トランスコンダクタンスアンプ118は、トランスコンダクタンスアンプ118の本体部分128、本体部分118のMOSトランジスタ121のゲート端子へ供給されるバイアス電圧を生成するためのバイアス回路129によって構成されている。本体部分128は入力MOSトランジスタ対を構成するMOSトランジスタ122とMOSトランジスタ123と、入力MOSトランジスタ対のソースに電流を供給する電流源MOSトランジスタとして動作するMOSトランジスタ121と、入力MOSトランジスタのドレインに接続するロードMOSトランジスタを構成するMOSトランジスタ124とMOSトランジスタ125から構成されている。またバイアス回路129は本体回路128のMOSトランジスタ121とカレントミラーを構成するMOSトランジスタ126とこれに電流を供給するMOSトランジスタ127から構成されている。
式(40)を満足させるため、トランスコンダクタンスアンプ118のgm値であるgmxを図2に示したMOSトランジスタ16のgm値であるgm2の(Δ1/Δ2)倍にするには、図12に示したMOSトランジスタ122、123のトランジスタサイズ及び入力電流を、図2に示したMOSトランジスタ16のトランジスタサイズ及び電流を(Δ1/Δ2)倍にすればよい。このためには、図2に示したMOSトランジスタ16に電流を供給するMOSトランジスタ15のバイアス端子B2の制御信号を、図12に示した電流源MOSトランジスタ121のゲート端子へ供給してMOSトランジスタ122、123に流れる電流をMOSトランジスタ16の(Δ1/Δ2)倍になるようにすればよい。
なお、図2、図12に示した回路では、電流源MOSトランジスタ(図2に示したMOSトランジスタ15、図12に示したMOSトランジスタ121)の極性が異なっている。このため、図12のように、制御信号B2をN型のMOSトランジスタ127のゲートへ供給して制御電流にし、制御電流をMOSトランジスタ126とMOSトランジスタ121とによって構成されるカレントミラー回路によりP型の電流源MOSトランジスタ121のゲートに供給すれば、図12のMOSトランジスタ122、123に流れる電流は、図2に示したMOSトランジスタ15、16に流れる電流の(Δ1/Δ2)倍になる。
すなわち、図11に示した回路により、外付け抵抗素子がなくても、MOS抵抗素子の抵抗値を高い精度で制御して、所望の値のゼロ点を形成することができる。言い換えると、図11のトランスコンダクタンスアンプ118に流す電流は、図2のMOSトランジスタ16に流す電流と同じ制御信号を用いているので、図11のMOSトランジスタ607のgm値は、図2のMOSトランジスタ16のgm値であるgm2にいつも比例させることができる。このため高い精度で所望のゼロ点を形成することができる。図2に示したMOSトランジスタ15、16に流れる電流が大きい場合、図12に示したMOSトランジスタ122、123に流れる電流も大きくなり、全体として消費電流が大きくなる。これを解消するため、図11に示したマスタ回路113のMOSトランジスタ603のトランジスタサイズを図2に示した抵抗回路17(スレーブ回路602のMOSトランジスタ607に相当)に用いられるMOSトランジスタサイズの1/A倍とする。
このようにすることで、図11に示したMOS抵抗素子603の抵抗値をA倍したことになるので、図11に示したトランスコンダクタンスアンプ118のgm値も1/Aになり、トランスコンダクタンスアンプ118の電流を1/A倍にすることができる。図11と同様に、図7、図9についても基準抵抗素子604に代えて図12に示したトランスコンダクタンスアンプ118を設けることが可能である。
5 高次ポールの影響
以上述べた実施形態1では、高周波領域において演算増幅器101の第1ポール、第2ポールより高い周波数に形成される3次以上の高次ポールの存在が、少なからず位相を遅延させるように影響する。この影響が無視できない場合、高次ポールによって遅延した分をゼロ点で補償させるため、ゼロ点周波数を無限大ではなく、位相が進むようにある有限の位置に配置させることができる。
上記した内容を、式を使って説明する。高次ポールとして3次ポールを有する演算増幅器の伝達関数A(s)は、式(8)に代わって式(41)のように表せる。
A(s)=Ao・ω1・ω2(1−s/ωz)/(s+ω1)(s+ω2)(1+s/ω3)
…式(41)
式(8)と式(41)の違いは、式(41)の分母に(1+s/ω3)がある点である。ここで、ω3は、角周波数で表された第3ポール周波数である。通常第3ポール周波数ω3は、第2ポール周波数ω2よりはるかに高い周波数にあるが、高速フィルタの設計の場合には第2ポール周波数ω2が高い周波数にあるので、第3ポール周波数ω3の値に近くなり、第3ポール周波数ω3の影響が無視できなくなる。
そこで、式(41)の分子にあるゼロ点の周波数を第3ポール周波数ω3と同じにすれば、ゼロ点の周波数と第3ポール周波数ω3とがお互いに打ち消しあって、高次ポールの影響がなくなる。この結果、演算増幅器の伝達関数を示す式(41)には、ゼロ点も高次ポールの影響もなく、式(2)のように表すことができる。
このように、位相補償用の抵抗回路17を、式(29)ではなくて、式(42)のようにすることで、第3ポール周波数ω3の影響を排除することができる。
R=1/gm2+ΔR …式(42)
式(42)において、ΔRは第3ポール周波数ω3に依存するが、通常はRに比べて十分小さい値になる。式(42)を式(28)に代入すると、ゼロ点周波数ωzは式(43)のようになる。
ωz=−1/(C1・ΔR) …式(43)
以上のことから、第3ポール周波数ω3を打ち消すには、第3ポール周波数ω3とゼロ点周波数ωzが等しくなればよいので、ωz=ω3よりΔRを式(44)のように設定すればよい。
ΔR=1/(ω3・C1) …式(44)
第3ポール周波数は、フィルタの位相特性に影響をもたらすといっても、第2ポール周波数よりも充分高い周波数である。このため、第3ポール周波数の製造変動による位相特性への影響は小さい。言い換えると式(42)で表される位相補償用の抵抗回路17の抵抗値Rは、一定であっても製造変動の影響は殆どない。したがって、ゼロ点周波数を有限の位置に配置させ、ゼロ点周波数と高次ポール周波数とをお互いにキャンセルさせる場合でも、図5、図7、図9、図11で説明したような抵抗回路を用いて、抵抗値のターゲット値を式(29)の代わりに式(42)にすることで第3ポール周波数の影響を排除することができる。
以上、実施形態1のフィルタ回路の特徴についてまとめると、図3または図4のフィルタ制御信号生成回路を用いているので、フィルタはプロセス変動および環境温度によらずいつも所望のGB積とQ値を有する特性を有している。またフィルタの制御は、演算増幅器のgm値を制御するのでGm−Cフィルタと同じ原理で周波数特性を設定できるので、Gm−Cフィルタと同程度の高速フィルタが実現できる。またフィルタ周波数特性の精度は演算増幅器のgm値を制御しているので容量変動が十分小さい場合は、Gm−Cフィルタと同じ精度の特性を実現できる。またフィルタには演算増幅器を負帰還回路として使用しているので、アクティブフィルタと同様に信号範囲が広くてまた線形性能の優れたフィルタが実現できる。また入力信号は演算増幅器の非反転入力端子に供給されるので、フィルタの入力インピーダンスは非常に高くすることができる。
(実施形態2)
1 回路構成
次に、本発明の実施形態2のフィルタ回路について説明する。なお、実施形態2においては、実施形態1で説明した構成と同様の構成については同様の符号を付し、その説明を一部略すものとする。
図13は、実施形態2のフィルタ回路(図1に示したフィルタ回路と同様の構成である)に用いられる演算増幅器を説明するための図である。実施形態2の演算増幅器は、MOSトランジスタ30〜38によって構成される差動増幅回路のみで構成されている。このような回路は、いわゆる折り返しカスコード演算増幅器として知られている。
図13に示した演算増幅器は、互いにソース同士が接続されたMOSトランジスタ30、MOSトランジスタ31でなるMOSトランジスタ対(入力MOSトランジスタ対とも記す)と、入力MOSトランジスタ対に共通のソースにドレインが接続され、入力MOSトランジスタ対に電流を供給すると共に、ゲート(バイアス端子B1)にフィルタ制御信号が入力されるMOSトランジスタ32と、MOSトランジスタ30のドレインにソースが接続されるMOSトランジスタ35、MOSトランジスタ31のドレインにソースが接続されるMOSトランジスタ36でなるMOSトランジスタ対(カスコードMOSトランジスタ対とも記す)と、MOSトランジスタ35とドレイン同士が接続されるMOSトランジスタ37、MOSトランジスタ36とドレイン同士が接続されるMOSトランジスタ38でなるMOSトランジスタ対(ロードMOSトランジスタ対とも記す)と、MOSトランジスタ35のソースに接続されるとともに、ゲート(バイアス端子B25)にフィルタ制御信号が入力されるMOSトランジスタ33と、MOSトランジスタ36のソースに接続されるとともに、ゲート(バイアス端子B25)にフィルタ制御信号が入力されるMOSトランジスタ34でなるMOSトランジスタ対(電流源MOSトランジスタ対とも記す)と、MOSトランジスタ37のドレインに接続される容量素子41と、MOSトランジスタ38のドレインに接続される容量素子42によって構成される容量素子対と、MOSトランジスタ33のドレインに接続される容量素子39、MOSトランジスタ34のドレインに接続される容量素子40によって構成される容量素子対と、を含んでいる。
2 伝達関数
実施形態2に示した演算増幅器の帰還がないオープンループの伝達関数は、近似的に式(45)のように表現される。
A(s)=Ao・ω1・ω2/(s+ω1)(s+ω2) …式(45)
式(45)において、Aoは演算増幅器のDCゲイン、ω1は角周波数で表された第1ポール周波数、ω2は角周波数で表された第2ポール周波数である。
また、GB積、第2ポール周波数ω2は図13の小信号等価回路を計算することで式(46)、式(47)を導き出すことができる。
GB=Ao・ω1=gm1/C1 …式(46)
ω2=gm2/C2 …式(47)
ここでgm1はMOSトランジスタ30、31のgm値、gm2はMOSトランジスタ35、36のgm値、C1は容量素子41、42の容量値、C2は容量素子39、40の容量値である。
式(45)と式(8)とを比較して分かるように、式(45)にはゼロ点がない(すなわち、分子にsを含む項がない)。このため、フィルタ周波数特性にゼロ点が影響しないので、ゼロ点の周波数を無限大になるように制御する回路が不要になる。また図2に示した回路と比較して、図2に示した出力増幅回路202がないため、高次ポール周波数を十分高くすることができるので、高次ポールの影響はより小さい。
図13に示した演算増幅器を図1に示したフィルタに用いた場合の伝達関数は、式(6)、式(7)に式(46)、式(47)を代入することで、式(48)、式(49)のようにフィルタの性能をgm値と容量素子の容量値のみで表すことができる。
ωo=[(gm1・gm2)/(C1・C2)]1/2 …式(48)
Q=(gm1・C2)/(gm2・C1) …式(49)
式(48)、式(49)から分かるように、フィルタのカットオフ周波数ωoやフィルタのQ値はgm1、gm2を制御することで、所望の値を得ることができる。MOSトランジスタのgm値の制御は、MOSトランジスタに流れる電流を制御することによって実現できる。図13の回路の場合は、電流源用のMOSトランジスタ32のゲート(バイアス端子B1)に印加される電圧を制御することで、MOSトランジスタ30、31に流れる電流、すなわちgm1を制御できる。また、電流源用のMOSトランジスタ33、34のゲート(バイアス端子B25)に印加される電圧を制御することで、MOSトランジスタ35、36に流れる電流、すなわちgm2を制御できる。このような実施形態2では、バイアス端子B1、B25に印加される電圧を制御することにより、所望のフィルタ周波数特性を実現することができる。なお、バイアス端子B1、B25は、図1に示したバイアス端子107を構成するものである。
3 フィルタ制御信号生成回路
次に、実施形態2において、MOSトランジスタ30、またはMOSトランジスタ31のgm値を制御する回路について説明する。MOSトランジスタ30、31はNMOSトランジスタである。このため、MOSトランジスタ32のバイアス端子B1を制御するための信号を生成するフィルタ制御信号生成回路には、実施形態1で説明した図3(a)のフィルタ制御信号生成回路を用いることができる。
例えば図3(a)の回路の端子B1を図13のバイアス端子B1に接続して、図13のMOSトランジスタ32のサイズを図3(a)のMOSトランジスタ70のサイズの2倍とする。このとき、図3(a)の回路を用いることで、MOSトランジスタ30、31に流れる電流I30は、式(16)で与えられる。MOSトランジスタ30、またはMOSトランジスタ31のgm値であるgm1は、式(50)のように表すことができる。
gm1=2・(K30・I30)1/2 …式(50)
式(50)において、I30は式(16)に等しく、K30は式(51)で与えられる。
K30=(1/2)・μn・Cox・(W30/L30) …式(51)
式(51)において、W30、L30はMOSトランジスタ30のチャネル幅とチャネル長である。式(51)、式(16)、式(17)を式(50)に代入すると、式(52)を得る。
gm1=(2/R1)・{(W30/L30)/(W70/L70)・(N1/2−1)2/N}1/2
…式(52)
このように、図13に示したMOSトランジスタ30またはMOSトランジスタ31のgm値であるgm1は、図13に示したMOSトランジスタ30と図3(a)に示したMOSトランジスタ70のトランジスタサイズ比と、図3(a)に示したMOSトランジスタ70、71のトランジスタサイズ比Nと、図3(a)に示した抵抗素子74の抵抗値R1のみに依存する。ここで、抵抗素子74を外付けの抵抗素子とすると、式(52)で与えられたgm1は、製造変動や温度変動の影響を全く受けることがない。
なお、式(50)で与えられるgm値は、電流I30に関して特別な制御をしない場合、μnが製造変動と温度変動の影響を受ける。また、Coxも製造変動の影響を受けるので狙い通りの値を得ることはできない。
次に、図13に示したMOSトランジスタ35、36のgm値を制御する回路について説明する。MOSトランジスタ35、36は、PMOSトランジスタである。このため、図4に示したフィルタ制御信号生成回路を用いてgm値を制御することができる。図13において、電流源として機能するMOSトランジスタ33、34に流れる電流は、MOSトランジスタ35、36と共にMOSトランジスタ30、31にも流れることになる。このため、バイアス端子B25に印加される電圧を制御する制御信号を生成する回路として、例えば図14のような回路が用いられる。
図14に示した回路は、MOSトランジスタ90にはMOSトランジスタ91が並列に接続されており、MOSトランジスタ90とMOSトランジスタ91とは、互いにソース同士、ドレイン同士が接続され、さらにこのドレイン同士接続された端子にMOSトランジスタ92のゲートおよびドレインが接続されている。
次に、図14に示した回路の動作について説明する。
MOSトランジスタ90のゲートには、図3(a)に示したフィルタ制御信号生成回路のバイアス端子B1から制御信号が入力されている。MOSトランジスタ90のトランジスタサイズが図3(a)に示したMOSトランジスタ70と同じであるなら、MOSトランジスタ90に流れる電流I90は、式(53)のように、式(16)と同じ式となる。
I90=(N1/2−1)2/(N・K70・R12) …式(53)
また、MOSトランジスタ91のゲートには、図4に示したフィルタ制御信号生成回路のバイアス端子B2から制御信号が入力されている。このため、MOSトランジスタ91のトランジスタサイズが、図4に示したMOSトランジスタ82と同じであるなら、MOSトランジスタ91に流れる電流I91は、式(54)のように、式(22)と同じ式となる。
I91=(N1/2−1)2/(N・K80・R22) …式(54)
MOSトランジスタ92に流れる電流I92は、MOSトランジスタ90、91に流れる電流の和となるので、式(55)のように表される。
I92=(N1/2−1)2/(N・K70・R12)+(N1/2−1)2/(N・K80・R22
…式(55)
図14に示したMOSトランジスタ92のゲートとドレインが接続された出力端子B25は、図13のMOSトランジスタ33、34のゲート(バイアス端子B25)に接続される。このようにすると、MOSトランジスタ92、33、34は、ゲート電圧が同じであることからカレントミラーの関係になる。MOSトランジスタ92、33、34のトランジスタサイズを同じにすると、MOSトランジスタ33、34に流れる電流値は、式(55)で与えられる値となる。
MOSトランジスタ35、またはMOSトランジスタ36に流れる電流I35は、MOSトランジスタ33、またはMOSトランジスタ34に流れる電流I33から、MOSトランジスタ30またはMOSトランジスタ31に流れる電流I30を引いた値になるので、式(56)によって与えられる。
I35=I33−I30=I92−I70 …式(56)
式(56)に式(16)、式(55)を代入すると、式(57)が得られる。
I35=(N1/2−1)2/(N・K80・R22) …式(57)
MOSトランジスタ35、またはMOSトランジスタ36のgm値であるgm2は、式(58)のように表すことができる。
gm2=2・(K35・I35)1/2 …式(58)
式(58)のK35は、式(59)で与えられる。
K35=(1/2)・μp・Cox・(W35/L35) …式(59)
式(59)において、W35、L35はMOSトランジスタ35のチャネル幅とチャネル長である。式(57)、式(59)を式(58)に代入すると、式(60)を得る。
gm2=(2/R2)・{(W35/L35)/(W80/L80)・(N1/2−1)2/N}1/2
…式(60)
以上説明したように、実施形態2では、MOSトランジスタ35、またはMOSトランジスタ36のgm値であるgm2が、MOSトランジスタ35と図4に示したMOSトランジスタ80のトランジスタサイズ比と、図4に示したMOSトランジスタ80、81のトランジスタサイズ比Nと、抵抗素子84の抵抗値R2にのみに依存する。ここで、抵抗素子84を外付けの抵抗とすると、式(60)で与えられるgm2を、製造変動や温度変動の影響を全く受けることがないものとすることができる。
なお、式(58)で与えられるgm値は、電流I35に関して特別な制御をしない場合、PMOSトランジスタの移動度μpが製造変動と温度変動の影響を受ける。また、ゲート酸化膜の単位容量Coxも製造変動の影響を受けるので、狙い通りの値を得ることはできない。
このように、図13の演算増幅器のgm1、gm2は、図3(a)、図4、及び図14に示したフィルタ制御信号生成回路によって正確に制御することができる。なお、このような図3、図4、図14に示したフィルタ制御信号生成回路は、図1に示したフィルタ制御信号生成回路102に相当する。ただし、フィルタに要求される周波数特性の精度が低くても良い場合、図3または図4に示したフィルタ制御信号生成回路のいずれか一方のみを使って図2に示した演算増幅器のgm1、gm2を同時に制御することができる。
なお、図13に示した回路は折り返し構成であるが、実施形態2は、このような構成に限定されるものではない。例えば、図13に示した回路を、折り返さないで電源Vss側から電源Vdd側に、縦にカスコードMOSトランジスタを積み重ねた回路であっても構わない。このように構成した場合、カスコードMOSトランジスタと入力MOSトランジスタの極性は同じになるので、フィルタ制御信号生成回路は1つでも周波数特性を高い精度で制御できる。ただし、折り返し回路を用いない場合には、電源電圧が低くなると動作が困難になる。したがって、折り返し回路を用いない構成は、電源電圧が高い場合に有用である。
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3について説明する。なお、実施形態3において、実施形態1、実施形態2において説明した構成と同様の構成については同様の符号を付し、その説明を一部略すものとする。
1 回路構成
図15は、実施形態3のフィルタ回路(図1に示したフィルタ回路と同様の構成である)に用いられる演算増幅器を示している。実施形態3の演算増幅器は、互いにソース同士が接続されたMOSトランジスタ50、MOSトランジスタ51でなるMOSトランジスタ対(入力MOSトランジスタ対とも記す)と、この入力MOSトランジスタ対のソースにドレインが接続され、図15に示した入力MOSトランジスタ対に電流を供給すると共に、ゲート(バイアス端子B1)にフィルタ制御信号が入力されるMOSトランジスタ52と、MOSトランジスタ50のドレインにソースが接続されるMOSトランジスタ55、MOSトランジスタ51のドレインにソースが接続されるMOSトランジスタ56でなるMOSトランジスタ対(カスコードMOSトランジスタ対とも記す)と、MOSトランジスタ55とドレイン同士が接続されるMOSトランジスタ57、MOSトランジスタ56とドレイン同士が接続されるMOSトランジスタ58でなるMOSトランジスタ対(ロードMOSトランジスタ対とも記す)と、MOSトランジスタ55のソースにドレインが接続されるMOSトランジスタ53、MOSトランジスタ56のソースにドレインが接続されるMOSトランジスタ54でなるMOSトランジスタ対(電流源MOSトランジスタ対とも記す)と、を含む差動増幅回路151と、ゲート(バイアス端子B11)にフィルタ制御信号が入力されるMOSトランジスタ60、MOSトランジスタ60のドレインにドレインが接続されるMOSトランジスタ59と、を含む出力増幅回路152と、差動増幅回路151の出力端子n7と出力増幅回路152の出力端子n6との間に接続される容量素子61及び抵抗回路62、差動増幅回路151の出力端子n7に接続される容量素子63、出力増幅回路152の出力端子n6に接続される容量素子64を含む受動素子群と、を含んでいる。
図15に示した差動増幅回路151は、図13に示した回路と実質的に同様の回路である。すなわち、図15に示した回路は、図13に示した回路に出力増幅回路152を付け加えた回路であるといえる。
2 伝達関数
実施形態3の演算増幅器において、帰還がないオープンループの伝達関数は、近似的に式(61)のように表される。
A(s)=Ao・ω1・ω2(1−s/ωz)/(s+ω1)(s+ω2) …式(61)
式(61)中の、Aoは演算増幅器のDCゲイン、ω1は第1ポール周波数、ω2は第2ポール周波数、ωzはゼロ点周波数である。
また、実施形態3の演算増幅器のGB積は、以下の式(62)のように表すことができる。
GB=Ao・ω1 …式(62)
また、式(62)のGB積、式(61)中のω2は、図15の小信号等価回路を計算することで式(63)、式(64)を導き出すことができる。
GB=Ao・ω1=gm1/C1 …式(63)
ω2=gm2/{C2+C3+(C2・C3)/C1} …式(64)
式(63)、式(64)において、gm1は、MOSトランジスタ50、またはMOSトランジスタ51のトランスコンダクタンス値である。また、gm2は、MOSトランジスタ59のトランスコンダクタンス値である。C1は容量素子61の容量値、C2は容量素子63の容量値、C3は容量素子64の容量値である。
また、ゼロ点周波数ωzは、式(65)のように表すことができる。
ωz=(C1/gm2−C1・R)-1 …式(65)
式(65)において、Rは抵抗回路62の抵抗値である。抵抗値Rは、ゼロ点の影響をできるだけ排除するために、ω1、ω2に比べ十分大きい値に設定される。この設定については、実施形態1で説明したいずれの方法を用いても構わないので、説明は省略する。
図15に示した演算増幅器を図1に示したフィルタに用いた場合の伝達関数は、ゼロ点を無視した場合、式(6)、式(7)に式(63)、式(64)を代入することにより、式(66)(67)のようにgm値と容量値のみで表すことができる。
ωo=[(gm1・gm2)/C1/{C2+C3+(C2・C3)/C1})]1/2
…式(66)
Q=[gm1・{C2+C3+(C2・C3)/C1}/(gm2・C1)]1/2
…式(67)
式(66)、式(67)からも分かるように、フィルタのカットオフ周波数ωoやフィルタのQ値は、gm1、gm2を制御することにより所望の値を得ることができる。MOSトランジスタのgm値の制御は、MOSトランジスタに流れる電流を制御することによって実現できる。尚、図15において、容量63または容量64のいずれか一方の容量をゼロにすることができる。実際には、MOSトランジスタの寄生容量を完全にゼロとすることはできないが、ほぼゼロにすることで式(66)、式(67)はより単純な式に改めることができる。
図15に示した回路の場合は、電流源用のMOSトランジスタ52のバイアス端子B1に印加される電圧を制御することで、MOSトランジスタ50、51に流れる電流、すなわちgm1を制御できる。また、電流源用MOSトランジスタ60のバイアス端子B11を制御することにより、MOSトランジスタ59に流れる電流、すなわちgm2を制御することができる。すなわち、実施形態3では、バイアス端子B1、B11に印加される電圧を制御することにより、所望のフィルタ周波数特性を実現することができる。なお、バイアス端子B1、B11は、図1に示したバイアス端子107に相当する。
3 gm値の制御
次に、実施形態3において、MOSトランジスタ50、またはMOSトランジスタ51のgm値を制御する回路について説明する。MOSトランジスタ50、51は、NMOSトランジスタであるので、図3(a)に示したフィルタ制御信号生成回路を使ってMOSトランジスタ52のバイアス端子B1に印加される電圧を制御することができる。例えば図3(a)に示したフィルタ制御信号生成回路の出力端子B1を図15に示したバイアス端子B1に接続して、図15のMOSトランジスタ52のサイズは図3(a)のMOSトランジスタ70のサイズの2倍とする。このとき、MOSトランジスタ50、51に流れる電流I50は、式(16)で与えられる値になる。
MOSトランジスタ50、またはMOSトランジスタ51のgm値であるgm1は、式(68)のように表すことができる。
gm1=2・(K50・I50)1/2 …式(68)
式(68)において、I50は式(16)によって得られる電流値に等しく、K50は、式(69)によって与えられる。
K50=(1/2)・μn・Cox・(W50/L50) …式(69)
式(69)において、W50、L50はMOSトランジスタ50のチャネル幅とチャネル長である。式(69)、式(16)、式(17)を式(68)に代入すると、式(70)が得られる。
gm1=(2/R1)・{(W50/L50)/(W70/L70)・(N1/2−1)2/N}1/2
…式(70)
式(70)から明らかなように、MOSトランジスタ50、またはMOSトランジスタ51のgm値であるgm1は、図15に示したMOSトランジスタ50とMOSトランジスタ70のトランジスタサイズ比と、図3(a)に示したMOSトランジスタ70、71のトランジスタサイズ比Nと、図3(a)に示した抵抗素子74の抵抗値R1にのみに依存する。ここで、抵抗素子74を外付けの抵抗とすると、式(70)で与えられたgm1を、製造変動や温度変動の影響を全く受けることがない。
なお、式(68)で与えられるgm1は、電流I50に関して特別な制御をしない場合、NMOSトランジスタの移動度μnが製造変動と温度変動の影響を受け、ゲート酸化膜の単位容量Coxも製造変動の影響を受けるので、狙い通りの値にはならない。
次に、実施形態3において、MOSトランジスタ59のgm値を制御する回路について説明する。MOSトランジスタ59もNMOSトランジスタであるので、図3(a)に示したフィルタ制御信号生成回路を使ってgm値を制御することができる。MOSトランジスタ59に流れる電流I59は、電流源として動作するMOSトランジスタ60を流れる電流I60によって決まる。MOSトランジスタ60のゲート(バイアス端子B11)に印加される電圧は、図3(a)に示した出力端子B11から供給される。さらに、図3(a)に示したMOSトランジスタ73と、図15に示したMOSトランジスタ60のトランジスタサイズ比Mは、式(55)のように定義する。
(W60/L60)/(W73/L73)=M …式(71)
式(71)において、W60、L60はMOSトランジスタ60のチャネル幅とチャネル長である。また、W73、L73は、MOSトランジスタ73のチャネル幅とチャネル長である。MOSトランジスタ73、72、70、71に流れる電流は等しく、MOSトランジスタ70に流れる電流は、式(16)で与えられている。したがって、MOSトランジスタ60、59に流れる電流I59、I60は、式(71)、式(16)より(72)となる。
I59=(N1/2−1)2/(N・K70・R12)・M …式(72)
式(72)において、K70は式(17)で与えられている。また、MOSトランジスタ59のgm値であるgm2は、式(73)のように表すことができる。
gm2=2・(K59・I59)1/2 …式(73)
式(73)において、K59は式(74)によって与えられる。
K59=(1/2)・μn・Cox・(W59/L59) …式(74)
式(74)において、W59、L59はMOSトランジスタ59のチャネル幅とチャネル長である。式(72)と式(74)を式(73)に代入すると、式(75)を得る。
gm2=(2/R1)・{M・(W59/L59)/(W70/L70)・(N1/2−1)2/N}1/2
…式(75)
このように、実施形態3では、MOSトランジスタ59のgm値であるgm2がMOSトランジスタ59とMOSトランジスタ70のトランジスタサイズ比と、図3(a)に示したMOSトランジスタ70、71のトランジスタサイズ比Nと、式(71)で与えられるトランジスタサイズ比Mと、図3(a)に示した抵抗素子74の抵抗値R1にのみに依存する。このため、抵抗素子74を外付け抵抗素子とすると、式(75)で与えられるgm2は、製造変動や温度変動の影響を全く受けることがないものにすることができる。
図15に示した演算増幅器を実施形態3のフィルタに適用する場合、図3(a)に示したフィルタ制御信号生成回路だけを使ってgm1、gm2を制御することができる。これは、gm1を決めているMOSトランジスタ50、またはMOSトランジスタ51と、gm2を決めているMOSトランジスタ59が、同じ極性であるためである。なお、図3(a)に示したフィルタ制御信号生成回路は、図1に示したフィルタ制御回路102に相当する。
実施形態3は、1つのフィルタ制御信号生成回路だけを使ってgm1、gm2を制御することができるので、外付け抵抗素子も1つで済むという点で有利である。なお式(73)で与えられるgm2は、電流I59に関して特別な制御をしない場合、NMOSトランジスタの移動度μnが製造変動と温度変動の影響を受け、ゲート酸化膜の単位容量Coxも製造変動の影響を受けるので、狙い通りの値にはならない。
またフィルタ制御信号生成回路として図3(a)を用いて説明したが、実施形態1で説明したように図3(a)の代わりに図3(b)あるいは図3(c)を用いても構わない。
なお、図15に示した演算増幅器において、全てのMOSトランジスタの極性を入れ替えて構成することもできる。この場合、外部から信号を入力する入力MOSトランジスタ対の極性はNMOSからPMOSに変更されるので、gm1を制御するためのフィルタ制御信号生成回路にはPMOSトランジスタのgm値を制御できる図4の回路が用いられる。同時に、このような場合、出力増幅回路152の中でアクティブに動作するMOSトランジスタ(図15におけるMOSトランジスタ59)の極性はN型からP型になるので、gm2を制御するためのフィルタ制御信号生成回路にも、同じ図4のフィルタ制御信号生成回路が用いられる。すなわち、フィルタ制御信号生成回路が1つだけ有していれば良いと言う特徴はMOSトランジスタの極性を入れ替えた場合でも同じである。
図15の演算増幅器の伝達関数は式(61)および式(65)で表されるゼロ点が存在しており、このゼロ点の影響がないような伝達関数の式(2)で近似できるようにする必要がある。このゼロ点の位置を表す式(65)は実施形態1において説明した図2の演算増幅器の場合のゼロ点の位置を表す式(28)と同じである。すなわち、図2の演算増幅器も図15の演算増幅器も位相補償用容量値(図2、図15ともにC1で表記)と出力増幅回路のアクティブに動作するMOSトランジスタ(図2では16、図15では59)のトランスコンダクタンス値(図2、図15ともにgm2で表記)で表されている。従って、図15の演算増幅器においても、図2の演算増幅器の場合と同じ方法でゼロ点の影響を排除したり(詳細は実施形態1の中の4.抵抗素子に記載)、または高次ポールの影響を排除したり(詳細は実施形態1の中の5.高次ポールの影響に記載)することができる。
(実施形態4)
次に、本発明の実施形態4を説明する。なお、実施形態4においては、実施形態1〜実施形態3で説明した構成と同様の構成については同様の符号を付し、その説明を一部略すものとする。
図1に示したフィルタ回路は2次の低域通過フィルタを実現できる。しかし、さらに高次の低域通過フィルタを実現するためには、図1に示したフィルタ100を多段に直列接続することで任意の次数の低域通過フィルタを実現することができる。図16は、2N次フィルタ2(ここで2N次とはNの2倍の次数という意味である)とフィルタを制御するためのフィルタ制御信号を生成するフィルタ制御信号生成回路102から構成されている。さらに2N次フィルタ2は、図1のフィルタ100に相当するフィルタをN個直列接続するように配置したフィルタ140a、140b、・・・、140cからなる。これらN個のフィルタ140a、140b、・・・、140cは、フィルタ制御信号を入力するためのバイアス端子107a、107b、・・・、107cを有した演算増幅器101a、101b、・・・、101cを備えている。これら演算増幅器101a、101b、・・・、101cは、反転入力端子と出力端子が互いに接続されており、それぞれの演算増幅器はボルテージフォロワ回路構成をしており、これらN個のボルテージフォロワ回路(フィルタ140a、140b、・・・、140c)の伝達特性が式(4)〜式(7)によって表されるようなフィルタ周波数特性を有する。フィルタの入力信号は、フィルタ2の入力端子108から入力して、入力端子108と接続しているフィルタ140aの入力端子141aに入力し、フィルタ140aの出力信号は、フィルタ140bの入力端子141bに入力する。このように各フィルタは次段のフィルタへ接続されており、最終段に配置されたフィルタ140cの演算増幅器101cの出力端子からの出力信号がフィルタ出力端子109からフィルタ2の出力信号として出力される。
ここでN個のボルテージフォロワを入力端子108に近いほうからボルテージフォロワ1、2、・・・、Nと表記するとi番目のボルテージフォロワiの伝達関数は式(76)で表すことができる。
Hi(s)=ωoi2/{s2+s(ωoi/Qi)+ωoi2} …式(76)
(i=1、2、・・・、N)
ここで、ωoiはi番目のボルテージフォロワの角周波数で表されるカットオフ周波数、Qiはi番目のボルテージフォロワのクオリティファクタである。
従って、図16のようなN個のボルテージフォロワが直列接続されたフィルタ2の伝達関数H(s)は式(77)のように、それぞれのボルテージフォロワの伝達関数の積で表すことができる。
H(s)=H1(s)・H2(s)・・・HN(s) …式(77)
一般的なフィルタであるバターワースフィルタ、チェビチェフフィルタ、楕円フィルタなどのあらゆるフィルタの伝達関数は式(76)と式(77)によって表すことができる。またそれぞれのボルテージフォロワの伝達関数の式(76)中のωiとQiは一般に異なる値であり、これらの値は計算式あるいは解析的に求めることができる。(参考書:「アナログフィルタの設計」M.E. VAN VALKENBURG著 金井元、柳沢健訳 秋葉出版)
このように図16の回路によって、任意の次数の任意のタイプのフィルタを実現することができる。尚、フィルタ制御信号生成回路102は演算増幅器101a、101b、・・・、101cが同じであれば、同じフィルタ制御信号生成回路からの信号を用いることができる。それぞれのボルテージフォロワ間で異なるωiやQiを実現するには、電流源MOSトランジスタ(図2の演算増幅器の場合は、MOSトランジスタ10,11、12、15,16)のサイズを適当な値にすればよい。そのような意味では、フィルタ2中で用いられている演算増幅器101a、101b、・・・、101cは同じ構成のものを用いることが好ましい。使用する演算増幅器は実施形態1〜3で用いた図2、図13、図15等いずれのものを用いても構わない。また図2、図13、図15の演算増幅器を用いた時の効果は、既に実施形態1〜3で説明したものと同様の効果を奏する。
また図2や図15のような演算増幅器を用いた場合、抵抗回路(図2の17、図15の62)として、抵抗用MOSトランジスタを使用する際には、図5、図7、図9、図11で説明したゲート制御電圧生成用のマスタ回路を用いると精度の高い抵抗値を実現できる。これらマスタ回路はそれぞれの演算増幅器にひとつずつ備える必要はなく、1つのマスタ回路からそれぞれの演算増幅器の位相補償用MOS抵抗のゲート端子へ供給すればよい。それぞれの演算増幅器のゼロ点周波数は通常異なるので、必要とする抵抗値も異なるが、それぞれのMOS抵抗のトランジスタサイズが式(29)を満足するように設定すればよい。
なお、以上説明したフィルタ次数は偶数(ボルテージフォロワの数の2倍の次数)となり、そのままでは奇数次にできない。奇数次にするための方法を、図2に示した演算増幅器を例にして説明する。図2に示した演算増幅器の伝達関数は、式(8)で与えられている。ここで第2ポール周波数ω2とゼロ点の周波数ωzを一致させると、式(78)のようになる。
A(s)=Ao・ω1/(s+ω1) …式(78)
式(78)を式(1)に代入すると、式(78−2)のようになる。
H(s)=GB/(s+GB) …式(78−2)
式(78−2)は、カットオフ周波数ωoがGB積である1次低域通過フィルタ(LPF)特性を示している。このように1次LPFは、第2ポール周波数とゼロ点周波数を同じにすることによって実現できる。1次LPFを偶数次のフィルタに付け足すと、奇数次のフィルタが実現できる。なお、ゼロ点周波数を第2ポール周波数に一致させるには、図5、図7、図9、図11で説明した位相補償用MOS抵抗素子の抵抗制御の方法を用いることができる。
位相補償用MOS抵抗素子の抵抗制御では、例えば8次LPFを7次LPFに置き換えた場合、ノイズやPSRR(Power Supply Rejection Ratio)の低減といった特性改善効果をもたらす場合がある。
(実施形態5)
次に、本発明の実施形態5について説明する。なお、実施形態5においては、実施形態1〜実施形態4で説明した構成と同様の構成については同様の符号を付し、その説明を一部略すものとする。
前記した実施形態1〜4においては、図3、図4に示したフィルタ制御信号生成回路を使ってフィルタの性能(カットオフ角周波数、Q値)を制御している。このような実施形態1〜4に対し、実施形態5は、gm−Cフィルタの制御回路としてよく知られている、PLL回路をフィルタ制御信号生成回路に用いて、図1に示したフィルタ制御信号生成回路102および図16に示したフィルタ制御信号生成回路102を構成するものである。例えば、図1に示したフィルタにおいては、図3、図4に示したフィルタ制御信号生成回路の代わりに図17に示したPLL回路176を用いてフィルタ制御信号生成回路を構成することができる。
図17に示したPLL回路176は、代表的なPLL回路を説明するための図である。図示したPLL回路176は、マスタフィルタ171、位相比較器172、積分器173、コンパレータ174、175から構成されている。積分器173からの出力信号は、マスタフィルタ171のgm値を制御するためのフィルタ制御信号端子へ供給すると共に、スレーブフィルタ177のgm値を制御するためのフィルタ制御信号端子178へ供給される。スレーブフィルタ177は、図1に示したフィルタ100、または図16に示したフィルタ2に相当する。PLL回路176では、フィルタ制御信号端子178の信号レベルが高いと、マスタフィルタ171のgm値が大きくなり、マスタフィルタの角周波数で表したカットオフ周波数ωmも高くなるように設定されている。
次に、PLL回路176がフィルタ171、177を制御する動作について説明する。PLL回路176には、周波数がωrの参照クロック信号が入力される。参照クロック信号は、マスタフィルタ171及びコンパレータ175に入力する。PLL回路176がロックしている場合、マスタフィルタ171に入力された参照クロック信号は、位相が90度遅延して出力される。コンパレータ174、175は、参照クロック信号の2値化を目的としているので、コンパレータ174、175の前後で信号の位相は変化しない。すなわち、端子D、E間の位相関係は、端子G,F間と同じである。
位相比較器172には、排他的論理和回路が用いられている。角周波数で表した周波数ωrの信号がマスタフィルタ171により位相が90度ずれた場合、位相比較器172の出力端子Hからは、角周波数で表した周波数が2ωrで、デューティ比が50%であるクロック信号が出力される。
これらコンパレータ174、175の出力端子に相当する端子G、Fおよび位相比較器172の出力端子に相当する端子Hの出力波形を図18(a)、(b)、(c)に示す。図18(a)は端子Gの出力波形を示し、図18(b)は端子Fの出力波形を示している。端子Fの信号は端子Gと比較してフィルタ171を余分に通過しているのでPLLロック時には位相が90度遅延している。また、図18(c)は、端子Hの出力波形を示している。PLLロック時は、端子Hのクロックデューティ比が50%であるので、端子Hの出力信号が積分器173を通過しても、信号の「High」の区間と「Low」の区間が等しいので、積分器173では、プラス成分とマイナス成分差し引きゼロとなり、積分器173の出力178に変化はない。
すなわち、PLL回路176から出力されるgm値を制御する信号は一定のままであり、マスタフィルタ171のカットオフ周波数ωmは一定の値に維持される。マスタフィルタ171は、2次のLPFのgm素子によって構成されるフィルタであり、その伝達関数は、式(79)によって表される。
H(s)=ωm2/{s2+(ωm/Qm)s+ωm2} …式(79)
式(79)において、ωmはマスタフィルタの角周波数で表した周波数であり、フィルタ制御信号端子178の信号を制御することで高くなったり低くなったりする。
図19は、図17に示したマスタフィルタ171の位相特性を示した図であって、縦軸にマスタフィルタ171における位相遅れを、横軸に周波数を表している。2次LPFの場合、カットオフ周波数ωmのところでは、式(79)の分母はiωm2/Qmと純虚数となる。従って、式(79)の分子は実数なので、位相が90度遅れていることが式(79)から分かる。
PLL回路176がロックしている場合、周波数ωrである参照クロック信号の位相が90度遅延するので、マスタフィルタ171のカットオフ周波数はωrとなっている。図19に示した曲線bは、マスタフィルタ171のカットオフ周波数ωmがωrの時の位相特性を示す。このとき、参照クロック信号に対する位相遅延量が90度なので、PLL回路176がロックしている。
図19に示した曲線aは、マスタフィルタ171のカットオフ周波数ωmが周波数ωrよりも低い場合の特性を示している。この場合、角周波数で表された参照クロック信号の周波数ωrにおいて、位相遅れは90度よりも大きい。このとき、位相比較器172の出力のデューティ比は50%より大きくなる。すなわち、位相比較器172から「High」が出力される期間が長くなり、積分器出力は増大する。積分器出力の増加により、マスタフィルタ171のgm値も増加して、マスタフィルタ171のカットオフ周波数ωmが増加する。図19に示した曲線aは、曲線bに向かってシフトする。
一方、図19に示した曲線cは、マスタフィルタのカットオフ周波数ωmがωrよりも高い場合の特性を示している。この場合、参照クロック信号の周波数ωrにおける位相遅れは90度よりも小さい。このような場合、位相比較器52の出力のデューティ比は50%より小さくなり、「Low」が出力される期間が長くなる。この結果、積分器173からの積分器出力は低下する。積分器出力低下により、マスタフィルタ171のgm値も減少し、マスタフィルタ171のカットオフ周波数ωmも減少する。この結果、図19に示した曲線cは曲線bに向かってシフトする。
このようにして、マスタフィルタ171のカットオフ周波数が特性bから外れていても、上記した作用により、最終的には特性bに一致する。この場合のマスタフィルタ171のカットオフ周波数は参照クロック信号周波数に等しいωrとなっている。一方、PLLがロックしているときの、スレーブフィルタ177もマスタフィルタ171と同じ制御信号を受けているので、マスタフィルタ171とスレーブフィルタ177のカットオフ角周波数はいつも比例の関係を保つことができる。
次にマスタフィルタ171の具体的な回路について説明する。
図20は、図17に示したマスタフィルタ171の構成を例示するための図である。マスタフィルタ171は、gm素子と容量素子とで構成された2次のLPFである。なお、このようなマスタフィルタ171は、例えば特開平8−204504に記載されているように、周知の回路である。図20に示したマスタフィルタ171のカットオフ周波数ωmは、AMP2、AMP3のトランスコンダクタンス値をgm2、gm3、それぞれのアンプの負荷容量をC2、C3とした場合、ωm=(gm2・gm3/C2・C3)1/2と表すことができる。
マスタフィルタ171は、gm値によって制御されるフィルタであれば、具体的な回路構成はどのようなものであってもよい。
精度の高いスレーブフィルタを実現するには、スレーブフィルタ177の回路構成をマスタフィルタ171と同じにすることが好ましい。この理由は、マスタフィルタ171とスレーブフィルタ177のgm値を設計どおり一定の比で実現できたとしても、回路の容量が、配線容量、ドレイン、ソース端子の拡散容量、ゲート容量などを含み、正確に把握できないためである。
上記した理由により、実施形態5において、スレーブフィルタが図15の演算増幅器により構成されたものである場合には、マスタフィルタもまた同じ構成の演算増幅器を用いることでより精度の高いフィルタが実現できる。なお、図15の演算増幅器にはgm1を制御するためのバイアス端子B1とgm2を制御するためのバイアス端子B11が備えられている。図3のフィルタ制御信号生成回路を用いる場合は、先に述べたように図3のバイアス端子B1を図15に示したバイアス端子B1に、図3の出力端子B11を図15のバイアス端子B11に接続すればよかった。ところが、図17のようなフィルタ制御信号生成回路の場合、制御信号は図17の端子178の1つだけである。このため、図17のマスタフィルタ171とスレーブフィルタ177に用いている図15の演算増幅器のバイアス端子B11にも制御信号を与えるために、マスタフィルタ171とスレーブフィルタ177に用いる演算増幅器としては、図15の演算増幅器の代わりに図21の演算増幅器を用いる。
図21の演算増幅器と図15の演算増幅器の相違点は、図21にMOSトランジスタ165とMOSトランジスタ166からなるバイアス回路179が追加されていることのみである。バイアス回路179は、gm2を制御するためのバイアス端子B11にバイアス信号を供給するためのバイアス信号を生成している。図21に示した構成のうち、図15に示した構成には同様の符号を付し、説明を一部略すものとする。
次に、図21に示した演算増幅器をマスタフィルタ171に用いた場合の動作を説明する。ここでは、簡単に説明するため、図17に示したマスタフィルタ171とスレーブフィルタ177とが、構成だけでなく、トランジスタサイズ、容量値も含めて完全に同じフィルタであるものとする。マスタフィルタ171に入力される参照クロック信号の角周波数で表される周波数ωrとし、マスタフィルタ171の出力信号の位相は90度より大きいものとする。(図19のaに相当する)
このような場合、前記したように、図17の積分器173の出力レベル、すなわちフィルタ制御信号レベルが増加する。フィルタ制御信号は、マスタフィルタ171のフィルタ制御信号端子178である図21のバイアス端子B1に印加される。バイアス端子B1の信号レベルが高くなると、MOSトランジスタ52及びMOSトランジスタ166のゲート電圧が高くなり、電流が増加する。この結果、GB積を支配する入力MOSトランジスタ50、51と第2ポール周波数ω2を支配するMOSトランジスタ59の電流が同じ割合で増加する。この結果、マスタフィルタ171のカットオフ周波数は増加して、位相は90度に近づく(位相特性としては、曲線aが曲線bに向かってシフトする)。
また、反対に、フィルタの出力信号の位相が90度より小さい場合には、積分器173の出力レベル、すなわち制御信号レベルは減少する。制御信号は図21に示したバイアス端子B1に印加される。バイアス端子B1に印加される信号レベルが減少することにより、MOSトランジスタ52及びMOSトランジスタ166のゲート電圧が低くなり、電流が減少する。
電流の減少により、GB積を支配するMOSトランジスタ50、51と、第2ポール周波数ω2を支配するMOSトランジスタ59の電流は、同じ割合で減少する。このため、マスタフィルタ171のカットオフ周波数は減少し、位相は90度に近づく(位相特性としては、曲線cが曲線bに向かってシフトする)。このようにして、マスタフィルタ171のカットオフ周波数は、最終的に参照クロック信号の周波数ωrに一致する。また完全に同じ回路であって、同じ制御信号で制御されるスレーブフィルタ177のカットオフ周波数も最終的にωrに一致する。
このように、マスタフィルタ171とスレーブフィルタ177の回路構成が同じである場合には、配線容量、ドレイン、ソース端子にある拡散容量、ゲート容量等も含めて簡単に容量を同一にすることができるので、精度の高いフィルタが実現できる。
なお、実施形態1、実施形態2では、gmの制御に図3に示したフィルタ制御信号生成回路と、図4に示したフィルタ制御信号生成回路の2つが必要であった。これは、極性の異なるMOSトランジスタのgm値を制御する必要があったからである。すなわち図2、図13のような演算増幅器を用いて、かつフィルタ制御信号生成回路として実施形態5のようなPLLを使用して精度の高いフィルタを実現する場合、NMOSトランジスタのgm値を制御するフィルタ制御信号生成回路(=PLL)とPMOSトランジスタのgm値を制御するフィルタ制御信号生成回路(=PLL)が必要である。このとき、2つのフィルタ制御信号生成回路のうちの2つともPLLにしてもよいが、一方を図3、図4に示したフィルタ制御信号生成回路にし、他方にPLL回路を使ったフィルタ制御信号生成回路を使ってもよい。
ここで図3、図4に示したフィルタ制御信号生成回路と図17に示したをフィルタ制御信号生成回路の性能面での違いについて説明する。図3、図4に示したフィルタ制御信号生成回路の場合、gm値のみしか制御できない。すなわち、式(13)からも明らかなように、フィルタのカットオフ周波数ωoは容量の変動がそのまま反映される。また、式(14)によって示されるQ値については、容量の絶対値が変動しても同一チップ上に形成される容量比はいつも一定に形成されるので、式(14)あるいは式(67)の容量成分のみの式{C2+C3+(C2・C3)/C1}/C1は一定となり、容量の変動の影響を受けることはない。
容量の変動により、周波数特性は横軸方向にシフトするのみであるから、このシフト量(周波数偏移)を考慮して設計すれば、図3、図4に示したフィルタ制御信号生成回路を図1に示したフィルタ制御信号生成回路102に用いることができる。このような実施形態1ないし実施形態3に対し、実施形態5は、原理的に、gm値と容量の比が一定になるように制御することができるので、高精度にフィルタ周波数特性を制御することができる。
また、図3、図4に示したフィルタ制御信号生成回路を図1に示したフィルタ制御信号生成回路102に使用する場合には、外付けの抵抗が必要である。しかし、実施形態5(図17のフィルタ制御信号生成回路)では、外付けの抵抗を必要としない点で有利である。ただし、実施形態5(図17のフィルタ制御信号生成回路)では、実施形態1ないし実施形態3(図3または図4のフィルタ制御信号生成回路)では必要としなかったクロック信号が必要になる。さらに、図17に示すPLL回路を用いたフィルタ制御信号生成回路は、図3、図4に示したフィルタ制御信号生成回路よりも回路が複雑で、回路規模が大きくなる。またPLL回路はgm値と容量の比を一定値になるように制御するので、図3、図4に示す回路より高い精度のフィルタが実現できるはずであるが、PLLを構成するコンパレータ174,175および位相比較器172等の素子における信号伝播遅延により期待値から外れた特性となることがある。特に、高速動作させる場合は特性のずれがより顕著になるため,伝播遅延と無関係な図3、図4の回路の方がPLLより誤差が小さくなることがある。これについて補足する。図3、図4のフィルタ制御信号生成回路を用いた場合、先に述べたように容量の変動があってもQ値に対して影響しない。一般にフィルタ設計において、Q値の制御はカットオフ周波数よりも高い精度が要求される。それはQ値がフィルタの特性をより顕著に支配する傾向にあり、特にQ値が高いフィルタでは顕著である。このQ値が容量変動の影響を受けないという特徴は(式(14)あるいは式(67)の容量成分のみの式{C2+C3+(C2・C3)/C1}/C1が一定なので、また式(49)の容量成分のみの式(C2/C1)が一定なので)、図2、図13、図15に代表される演算増幅器をフィルタとして使用し、さらにフィルタ制御信号生成回路として図3、図4を組み合わせたフィルタ回路の時に、持たされる。フィルタ制御信号生成回路102を設計する際には、以上の条件を考慮する必要がある。
(実施形態6)
本発明のフィルタ回路は、図1に示したフィルタ回路に示した構成に限定されるものではない。実施形態6は、図22に示したフィルタ回路を使って本発明を実施するものである。
図22は、実施形態6のフィルタ回路を説明するための図である。図1に示した構成と同様の構成については同様の符号を付し、その説明を一部略すものとする。図示したフィルタ200は、2次低域通過フィルタの一つである反転増幅器である。図1に示したフィルタ100との相違点は、入力信号Vinが入力される端子と増幅器反転入力端子104との間にインピーダンスがZ1の抵抗素子211が接続されている点と、増幅器反転入力端子104と出力信号Voutが出力される出力端子の間にインピーダンスがZ2の抵抗素子212が接続されて、さらに基準信号電圧Vrefが増幅器非反転入力端子103へ供給されている点である。図22に示したフィルタ200は、入力信号Vinが入力される端子から出力信号Voutが出力される出力端子までの直流利得(DCゲイン)Gが抵抗素子212の抵抗値Z2と抵抗素子211の抵抗値Z1比である(−Z2/Z1)となる反転増幅器である。演算増幅器101、抵抗素子211、212で構成される反転増幅器は以下説明するように2次低域通過フィルタという特性を有するフィルタ200を構成する。
この2次低域通過フィルタでは、図1に示したフィルタと同様に、フィルタのカットオフ周波数とQ値に関して、式(6)、式(7)に相当する式を導くことができる。図22に示したフィルタ回路の伝達関数は、演算増幅器101の伝達関数A(s)を用い、以下の式(80)のように表される。
H(s)=A(s)/{A(s)/G+(1+1/G)} …式(80)
式(80)に演算増幅器の伝達関数である式(2)を代入して整理すると、式(81)のようになる。
H(s)=−(−G)・Ao・ω1・ω2/(G+1)
/{s2+(ω1+ω2)s+ω1・ω2+Ao・ω1・ω2/(1+(−G))}…式(81)
式(81)と式(5)の分母のsの1次の項と0次の項を比較して、式(3)を用いることにより、カットオフ周波数ωoとクオリティファクタQは、式(82)、式(83)のように表される。
ωo={Ao・ω1・ω2/(G+1)}1/2={GB・ω2/(G+1)}1/2
…式(82)
Q={Ao・ω1/ω2(G+1)}1/2={GB/ω2(G+1)}1/2…式(83)
ただし、式(82)、式(83)では、Aoは1に比べて充分大きく、また、角周波数で表された第2ポール周波数ω2が角周波数で表された第1ポール周波数ω1よりも十分大きいという条件の下で近似がなされている。式(82)、式(83)を式(6)、式(7)と比較すると、式(82)、式(83)のカットオフ周波数ωo、Q値は、ボルテージフォロワ回路に適用される式(6)、式(7)に1/(G+1)1/2の項が追加された形であり、それ以外は全て同じであることが分かる。
したがって、図22に示したフィルタ回路についても、前記した実施形態1〜実施形態5と同様に扱うことができる。図22に示した回路は、DCゲインを1以外の値に設定したい場合に有利な回路である。さらに図22に示した回路は、後述するように、全差動型回路の場合に適応できる。
尚、実施形態6のフィルタ200は、実施形態4に示した回路と同様に、フィルタ200を直列接続することで任意の次数の任意のタイプのフィルタを実現することができる。
その場合、図1のフィルタ100とフィルタ200を組み合わせることも可能である。
(実施形態7)
次に、本発明の実施形態7について説明する。
実施形態7は、演算増幅器101と抵抗素子211,212を組み合わせて非反転増幅器としたものである。図23は、実施形態7のフィルタ回路を説明するための図である。図23において、図22に示した構成と同様の構成については同様の符号を付し、その説明を一部略すものとする。
図1に示したフィルタ回路との相違点は、図23に示したフィルタ回路が、基準信号電圧Vrefが与えられる端子と、増幅器反転入力端子104との間にインピーダンスがZ1の抵抗素子211を、また、増幅器反転入力端子104と、出力信号Voutが出力される出力端子との間にインピーダンスがZ2の抵抗素子212を備えていて、さらに入力信号Vinが増幅器非反転入力端子103に供給されている点である。
実施形態7の演算増幅器は、入力信号Vinが入力される入力端子から出力信号Voutが出力される出力端子までの直流利得(DCゲイン)Gが抵抗素子212の抵抗値Z2と抵抗素子211の抵抗値Z1を足した合計値を抵抗値Z1で割った値である(Z2+Z1)/Z1となる非反転増幅器である。演算増幅器101、抵抗素子211、212で構成される非反転増幅器は以下説明するように2次低域通過フィルタという特性を有するフィルタ300を構成する。
非反転増幅器を使った低域通過フィルタでは、図1に示したフィルタと同様に、フィルタのカットオフ周波数ωoとQ値に関して、式(6)、式(7)に相当する式を導くことができる。図23に示したフィルタ回路の伝達関数は、演算増幅器101の伝達関数A(s)を用い、以下の式(84)のように表される。この低域通過フィルタでは、図1の説明の時と同様にしてフィルタの角周波数ωoとQ値に関する式(6)、式(7)に相当する式を導くことができる。演算増幅器101の伝達関数A(s)を用いて図23の伝達関数を表すと、式(84)のようになる。
H(s)=A(s)/{A(s)/G+1} …式(84)
式(84)に式(2)を代入して整理すると、式(85)のようになる。
H(s)=Ao・ω1・ω2/{s2+(ω1+ω2)s+ω1・ω2(1+Ao/G)}
…式(85)
式(85)と式(5)の分母のsの1次の項と0次の項を比較し、式(3)を用いることにより、カットオフ周波数ωoとクオリティファクタQとが、式(86)、式(87)のように表すことができる。
ωo=(Ao・ω1・ω2/G)1/2=(GB・ω2/G)1/2 …式(86)
Q={Ao・ω1/(ω2・G)}1/2={GB/(ω2・G)}1/2 …式(87)
ただし、式(86)、式(87)においては、Aoが1に比べて十分大きく、また、角周波数で表された第2ポール周波数ω2が角周波数で表された第1ポール周波数ω1よりも十分大きいという近似を用いている。式(86)、式(87)を、図1のボルテージフォロワ回路に適用される式(6)、式(7)と比較すると、カットオフ周波数ωo、Q値ともに、式(6)、式(7)に1/G1/2が追加されていること以外は同じであることが分かる。
したがって、図23に示したフィルタ回路についても、前記した実施形態1〜実施形態5と同様に扱うことができる。なお、図23に示した回路は、入力信号が演算増幅器の非反転入力端子103に接続されるので入力インピーダンスが無限大でかつDCゲインを1以外の値に設定したい場合に有用な回路である。
尚、実施形態7のフィルタ300は、実施形態4に示した回路と同様に、フィルタ300を直列接続することで任意の次数の任意のタイプのフィルタを実現することができる。
その場合、図1のフィルタ100とフィルタ300を組み合わせることも可能である。
(実施形態8)
次に、本発明の実施形態8について説明する。
図24は、本発明の実施形態8のフィルタ回路を説明するための図である。図1に示した構成と同様の構成については同様の符号を付し、説明を一部略すものとする。図24に示したフィルタ回路は、演算増幅器231と抵抗値がそれぞれZ1、Z2である2組の抵抗素子211、212からなる入力端子から出力端子までのDCゲインGが(−Z2/Z1)となる全差動型の反転増幅器400とフィルタ制御信号を生成するフィルタ制御信号生成回路102からなる。
図1に示したフィルタ回路と図24に示したフィルタ回路との相違点は、図24に示したフィルタ回路の演算増幅器231の入力端子が、プラス、マイナスの入力信号Vinp、Vinnを入力する1組の差動入力端子であること、出力端子が出力信号Voutp、Voutnを出力する1組の差動出力端子であること、抵抗素子211、212を、それぞれ2つずつ備えていることである。反転増幅器400は2次低域通過フィルタ周波数特性を有するフィルタ400でもある。図24に示したフィルタ400の周波数特性と演算増幅器231のGB積、第2ポール周波数ω2との関係は、実施形態6と全く同じ式を用いて表すことができる。
実施形態8のフィルタ400と実施形態6のフィルタ200との相違点は、実施形態8のフィルタ400が全差動回路となっている点である。また、演算増幅器231の内部回路は、後述するように、全差動型のフィルタに対応している。全差動回路のフィルタによれば、入出力信号レンジがシングルエンド回路に比べて2倍となり、S/N特性が向上し、電源ノイズや、同一チップ上に設けられている他回路からのノイズに対する耐性が向上する。
図25は、図24に示した演算増幅器231の回路構成を説明するための図である。演算増幅器231は、シングルエンドタイプである図13の演算増幅器から全差動型(フルディファレンシャルタイプ)の演算増幅器に変更されたものであり、図13に示した回路と略同様に構成されている。このため、図13に示した回路と同様の構成については同様の符号を付し、その説明を一部略すものとする。
図13に示した回路と、図25に示した回路との相違は、2組の出力信号Vout+とVout-がMOSトランジスタ37およびMOSトランジスタ38のドレイン端子から出力されていることと、図25に示した回路のロードMOSトランジスタ対を構成するMOSトランジスタ37のゲート端子が、自トランジスタのドレインに接続されていない点である。ドレインに接続されていないMOSトランジスタ37のゲートには、同相信号レベル制御アンプから制御信号が供給されている。
なお、同相信号レベル制御アンプとは、出力の同相信号レベル(正の極性の出力信号と負の極性の出力信号の平均値)を生成する回路である。図25に示した回路は、出力の同相信号レベルが定まらないので、後述する同相信号レベル制御アンプを用いる必要がある。
図26は、実施形態8に用いられる同相信号レベル制御アンプの回路構成を例示した図である。図26に示した同相信号レベル制御アンプは、出力信号対の平均値を生成する回路と、生成された平均値を差動増幅回路252の非反転入力端子に入力し、基準電圧Vcmを反転入力端子に入力し、差動増幅回路252の出力信号を図25に示した端子B3に供給している。
なお、図26に示した同相信号レベル制御アンプでは、出力信号対の平均値を生成する回路を、2つの抵抗値が等しい抵抗素子251a、251bによって構成している。このような構成によれば、図26に示した回路の出力信号対Vout-、Vout+の平均値は、いつも一定の基準電圧Vcmに等しくなる。
次に、同相信号レベル制御アンプの動作について説明する。仮に、図25に示した出力信号対Vout-、Vout+の平均値が基準電圧Vcmの値よりも低い場合、差動増幅回路252の非反転入力端子の信号レベルが低くなる。このため、差動増幅回路252の出力レベル及び図25に示した端子B3に入力される制御信号のレベルも低くなる。制御信号のレベルが低くなると、MOSトランジスタ37、38のゲート電圧は低くなり、流れる電流が小さくなる。このため出力信号対Vout-、Vout+の電圧値は高くなり、出力信号の平均値は高くなって、基準電圧Vcmの値に近づいていく。
一方、図25に示した出力信号対Vout-、Vout+の平均値が基準電圧Vcmよりも高い場合、差動増幅回路252の非反転入力端子の信号レベルが高くなる。このため、差動増幅回路の非反転入力の信号レベルが反転入力端子よりも高くなる。このため、差動増幅回路の出力レベル及び図25に示した端子B3に入力される制御信号のレベルも高くなる。制御信号のレベルが高くなると、MOSトランジスタ37、38のゲート電圧は高くなり、流れる電流が大きくなる。このため出力信号対Vout-、Vout+の値は低くなり、出力信号の平均値は低下して基準電圧Vcmの値に近づいていく。
図27は、図24に示した演算増幅器231の別の回路を説明するための図であって、シングルエンドタイプである図15の演算増幅器を全差動型(フルディファレンシャルタイプ)の演算増幅器に変更したものである。図15と図27の回路構成の相違点は、図27に示した回路の出力端子がVout+を出力する正の極性とVout-を出力する負の極性の対であること、MOSトランジスタ57のゲートがMOSトランジスタ57のドレインと接続せず、代わりに同相信号レベル制御アンプから供給される制御信号を入力していることと、MOSトランジスタ65〜69、77からなる第2の位相補償回路と、第2の出力増幅回路と、第2の受動素子群と、を追加している点である。
図28は、図27に示したMOSトランジスタ57のゲートに制御信号を入力する同相信号レベル制御アンプの回路を例示した図である。図27の同相信号レベル制御アンプは、図26に示した同相信号レベル制御アンプと差動増幅回路272の入力端子の極性が入れ替わっていることを除き、同様に構成されている。
図28に示した抵抗値が等しい抵抗素子271a、271bは、出力信号対Vout+、Vout-の平均値を生成する回路を構成する。生成された平均値は、差動増幅器272の反転入力端子に入力される。また、基準電圧Vcmは非反転入力端子に入力され、差動増幅器272からの出力信号は図27に示した端子B3に供給される。このように構成することにより、図27の出力信号対Vout+、Vout-の平均値は常に一定の基準電圧Vcmに等しくなる。
次に、図28に示した同相信号レベル制御アンプの動作について説明する。仮に、図27に示した出力信号対Vout-、Vout+の平均値が基準電圧Vcmよりも低い場合、差動増幅回路の反転入力端子の信号レベルが低くなる。このため、差動増幅回路252の出力レベル及び図27に示したB3に入力される制御信号のレベルは高くなる。制御信号のレベルが高くなると、MOSトランジスタ57、58のゲート電圧は高くなり、流れる電流が大きくなる。したがって、MOSトランジスタ57、58のドレインの電圧が低くなる。そして、MOSトランジスタ59、67のゲート電圧が下がるので、出力信号対Vout-、Vout+の電圧値は高くなり、出力信号の平均値は高くなり、基準電圧Vcmの値に近づいていく。
一方、図28に示した出力信号対Vout-、Vout+の平均値が基準電圧Vcmよりも高い場合、差動増幅回路の反転入力端子の信号レベルが高くなる。このため、差動増幅回路252の出力レベル及び図27に示したB3に入力される制御信号のレベルは低くなる。制御信号のレベルが低くなると、MOSトランジスタ57、58のゲート電圧は低くなり、流れる電流の電流値が小さくなる。したがって、MOSトランジスタ57、58のドレインの電圧が高くなる。そして、MOSトランジスタ59、67のゲート電圧が上がるので、出力信号対Vout-、Vout+の電圧値は低くなり、出力信号の平均値は低下して基準電圧Vcmに近づいていく。
尚、実施形態8のフィルタ400は、実施形態4に示した回路と同様に、フィルタ400を直列接続することで任意の次数の任意のタイプのフィルタを実現することができる。
図29は、図16に示したフィルタ回路に、図15に示した演算増幅器と図3(c)に示したフィルタ制御信号生成回路を用いた場合のSPICEシミュレーションによるバターワース型の8次低域通過フィルタの周波数特性を表した図である。フィルタ周波数特性のカットオフ周波数は40MHz、最大Q値は2.5である。typとは、MOSトランジスタの性能が中央値のもので、ほぼ狙い通りの特性のMOSトランジスタを使って得られた値を示している。また、maxとは温度特性を含めて最高の性能のMOSトランジスタを使って得られたものを、minとは温度特性を含めて最低の性能のMOSトランジスタを使って得られたものにそれぞれ付される記号である。
前記した図31の場合と比較してみると、いずれのフィルタも8次低域通過フィルタにあたるフィルタ2は素子サイズ含めて完全に同じ回路構成で、図29の場合は図3(c)のフィルタ制御信号生成回路を使用しており、図31の場合はフィルタ制御信号生成回路は使用せず電流がケース(typ、max、min)に関係なくいつも一定値にしてあることである。図31のグラフと比較すると明らかなように、本発明のフィルタ回路では、MOSトランジスタの性能によらず概ね一定のフィルタ周波数特性が得られることが分かる。
本発明のフィルタ回路は、MOSトランジスタの製造プロセスに起因する変動や温度による特性変動が望ましくないフィルタ回路であれば、どのようなフィルタ回路にも適用することができる。特に、フィルタの周波数帯域が広くてかつ信号レベルの大きい場合にも適用することができる。
演算増幅器 101、231
フィルタ制御信号生成回路 102
MOSトランジスタ 10〜16、30〜38、50〜60、67、68、165、166
容量素子 18、19、20、39、40、41、42、61、63、64、65、69、77
抵抗回路 17、62、66
抵抗素子 74、84
マスタ回路 601、603、604、701、901
スレーブ回路 602、702、902
MOS抵抗素子 603、607、703a、703b、707a、707b
組み合わせ抵抗 903、907
トランスコンダクタンスアンプ 118
PLL回路 176

Claims (20)

  1. 入力信号が入力されるフィルタ入力端子、フィルタリングされた信号が出力されるフィルタ出力端子、演算増幅器を有するフィルタと、
    前記フィルタを制御するためのフィルタ制御信号を生成するフィルタ制御信号生成回路と、を備えたフィルタ回路であって、
    前記フィルタ制御信号生成回路は、前記演算増幅器のGB積と第2ポール周波数とを制御するための前記フィルタ制御信号を生成し、前記フィルタ制御信号を前記演算増幅器に供給することで、前記フィルタのカットオフ周波数とクオリティファクタとを制御し、
    前記演算増幅器は、増幅器反転入力端子、増幅器非反転入力端子、増幅器出力端子を備え、
    前記フィルタにおいて、前記フィルタ入力端子と前記増幅器非反転入力端子とが接続され、前記フィルタ出力端子と前記増幅器出力端子とが接続され、前記増幅器出力端子と前記増幅器反転入力端子とが接続され、
    前記カットオフ周波数は、前記演算増幅器のGB積と第2ポール周波数との積の平方根であり、前記クオリティファクタは、前記演算増幅器のGB積を第2ポール周波数で割った値の平方根であることを特徴とするフィルタ回路。
  2. 入力信号が入力されるフィルタ入力端子、フィルタリングされた信号が出力されるフィルタ出力端子、演算増幅器を有するフィルタと、
    前記フィルタを制御するためのフィルタ制御信号を生成するフィルタ制御信号生成回路と、を備えたフィルタ回路であって、
    前記フィルタ制御信号生成回路は、前記演算増幅器のGB積と第2ポール周波数とを制御するための前記フィルタ制御信号を生成し、前記フィルタ制御信号を前記演算増幅器に供給することで、前記フィルタのカットオフ周波数とクオリティファクタとを制御し、
    前記演算増幅器は、増幅器反転入力端子、増幅器非反転入力端子、増幅器出力端子を備え、
    前記フィルタにおいて、前記フィルタ入力端子と前記増幅器反転入力端子とが第1抵抗素子を介して接続され、前記フィルタ出力端子と前記増幅器出力端子とが接続され、前記増幅器出力端子と前記増幅器反転入力端子とが第2抵抗素子を介して接続され、前記増幅器非反転入力端子に基準信号が供給され、
    利得Gを前記第2抵抗素子の抵抗値を前記第1抵抗素子の抵抗値で割った値の極性を反転した値とし、
    前記カットオフ周波数は、前記演算増幅器のGB積と第2ポール周波数との積の平方根を(G+1)の平方根で割った値であり、前記クオリティファクタは、前記演算増幅器のGB積を第2ポール周波数で割った値の平方根を(G+1)の平方根で割った値であることを特徴とするフィルタ回路。
  3. 入力信号が入力されるフィルタ入力端子、フィルタリングされた信号が出力されるフィルタ出力端子、演算増幅器を有するフィルタと、
    前記フィルタを制御するためのフィルタ制御信号を生成するフィルタ制御信号生成回路と、を備えたフィルタ回路であって、
    前記フィルタ制御信号生成回路は、前記演算増幅器のGB積と第2ポール周波数とを制御するための前記フィルタ制御信号を生成し、前記フィルタ制御信号を前記演算増幅器に供給することで、前記フィルタのカットオフ周波数とクオリティファクタとを制御し、
    前記演算増幅器は、増幅器反転入力端子、増幅器非反転入力端子、増幅器出力端子を備え、
    前記フィルタにおいて、前記フィルタ入力端子と前記増幅器非反転入力端子とが接続され、前記増幅器反転入力端子に第1抵抗素子を介して基準信号が供給され、前記フィルタ出力端子と前記増幅器出力端子とが接続され、前記増幅器出力端子と前記増幅器反転入力端子とが第2抵抗素子を介して接続され、
    前記第1抵抗素子の抵抗値と前記第2抵抗素子の抵抗値とを加算した値を前記第1抵抗素子の抵抗値で割った値を利得Gとし、
    前記カットオフ周波数は、前記演算増幅器のGB積と第2ポール周波数との積の平方根をGの平方根で割った値であり、前記クオリティファクタは、前記演算増幅器のGB積を第2ポール周波数で割った値の平方根をGの平方根で割った値であることを特徴とするフィルタ回路。
  4. 前記演算増幅器は、GB積を制御するための第1制御信号端子と、第2ポール周波数を制御するための第2制御信号端子と、を備え、
    前記フィルタ制御信号生成回路は、前記第1制御信号端子に前記演算増幅器のGB積を制御する第1フィルタ制御信号を供給し、前記第2制御信号端子に前記演算増幅器の第2ポール周波数を制御する第2フィルタ制御信号を供給することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のフィルタ回路。
  5. 前記フィルタ制御信号生成回路は、
    第1フィルタ制御信号を生成する第1フィルタ制御信号生成回路と、
    第2フィルタ制御信号を生成する第2フィルタ制御信号生成回路と、
    を備え、
    前記演算増幅器は、
    第1MOSトランジスタ及び第2MOSトランジスタからなる入力MOSトランジスタ対、前記入力MOSトランジスタ対に電流を供給すると共にゲートに前記第1フィルタ制御信号が入力される第3MOSトランジスタ、を有する差動増幅回路と、
    ゲートに前記差動増幅回路の出力端子が接続される第4MOSトランジスタ、ドレインに前記第4MOSトランジスタのドレインが接続されると共にゲートに前記第2フィルタ制御信号が入力される第5MOSトランジスタ、を有する出力増幅回路と、
    前記差動増幅回路の出力端子と前記出力増幅回路の出力端子との間に接続される第1容量素子及び抵抗回路、前記差動増幅回路の出力端子に接続される第2容量素子または前記出力増幅回路の出力端子に接続される第3容量素子の少なくとも一方、を有する受動素子群と、
    を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のフィルタ回路。
  6. 前記フィルタ制御信号生成回路は、
    第1フィルタ制御信号を生成する第1フィルタ制御信号生成回路と、
    第2フィルタ制御信号を生成する第2フィルタ制御信号生成回路と、
    を備え、
    前記演算増幅器は、
    互いにソース同士が接続された第6MOSトランジスタ、第7MOSトランジスタからなる入力MOSトランジスタ対と、
    前記入力MOSトランジスタ対のソースにドレインが接続され、前記入力MOSトランジスタ対に電流を供給すると共に、ゲートに前記第1フィルタ制御信号が入力される第8MOSトランジスタと、
    前記第6MOSトランジスタのドレインにソースが接続される第9MOSトランジスタ、前記第7MOSトランジスタのドレインにソースが接続される第10MOSトランジスタからなるカスコードMOSトランジスタ対と、
    前記第9MOSトランジスタとドレイン同士が接続される第11MOSトランジスタ、前記第10MOSトランジスタとドレイン同士が接続される第12MOSトランジスタからなるロードMOSトランジスタ対と、
    前記第9MOSトランジスタのソースにドレインが接続される第13MOSトランジスタ、前記第10MOSトランジスタのソースにドレインが接続される第14MOSトランジスタからなる電流源MOSトランジスタ対と、
    を有する差動増幅回路と、
    ゲートに前記差動増幅回路の出力端子が接続される第15MOSトランジスタ、ドレインに前記第15MOSトランジスタのドレインが接続されると共にゲートに前記第2フィルタ制御信号が入力される第16MOSトランジスタ、を有する出力増幅回路と、
    前記差動増幅回路の出力端子と前記出力増幅回路の出力端子との間に接続される第4容量素子及び抵抗回路、前記差動増幅回路の出力端子に接続される第5容量素子または前記出力増幅回路の出力端子に接続される第6容量素子の少なくとも一方、を有する受動素子群と、
    を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のフィルタ回路。
  7. 前記演算増幅器は、
    前記出力増幅回路と前記受動素子群とをさらにもう一対備え、全差動型演算増幅器を構成することを特徴とする請求項またはに記載のフィルタ回路。
  8. 前記受動素子群に含まれる前記抵抗回路が、前記第4MOSトランジスタのトランスコンダクタンス値の逆数に比例する抵抗値を有することを特徴とする請求項に記載のフィルタ回路。
  9. 前記受動素子に含まれる前記抵抗回路が、前記15MOSトランジスタのトランスコンダクタンスの値の逆数に比例する抵抗値を有することを特徴とする請求項に記載のフィルタ回路。
  10. 前記受動素子に含まれる前記抵抗回路は、
    抵抗制御信号が供給されるゲート端子を有する抵抗用MOSトランジスタを含むスレーブ回路と、
    前記抵抗用MOSトランジスタに対し、前記抵抗用MOSトランジスタのソース、ドレイン間の抵抗値を所定の値にするための前記抵抗制御信号を供給するマスタ回路と、
    を備えることを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載のフィルタ回路。
  11. 前記マスタ回路は、
    所定の値のトランスコンダクタンスを有するgm素子と、
    前記抵抗用MOSトランジスタと同じ極性であって、前記抵抗制御信号が供給されるゲート端子を有する制御用MOSトランジスタと、
    前記gm素子の出力端子及び前記制御用MOSトランジスタのソースまたはドレインと接続する反転入力端子リファレンス信号を生成するリファレンス信号生成回路と接続する非反転入力端子前記制御用MOSトランジスタのゲート及び前記スレーブ回路において抵抗素子として機能する前記抵抗用MOSトランジスタのゲートに信号を供給する出力端子、を有する差動増幅器と、
    を備え、
    前記gm素子の入力端子に第1電圧を供給し、前記制御用MOSトランジスタのドレインまたはソースに第2電圧を供給し
    記差動増幅器の出力端子から出力された信号が、抵抗制御用信号として前記制御用MOSトランジスタ及び前記抵抗用MOSトランジスタに供給されることを特徴とする請求項10に記載のフィルタ回路。
  12. 前記マスタ回路は、
    基準抵抗素子と、
    前記抵抗用MOSトランジスタと同じ極性であって、前記抵抗制御信号が供給されるゲート端子を有する制御用MOSトランジスタと、
    前記基準抵抗素子の一方の端子と、前記制御用MOSトランジスタのソースまたはドレインと接続する反転入力端子と、リファレンス信号を生成するリファレンス信号生成回路と接続する非反転入力端子と、前記制御用MOSトランジスタのゲート及び前記スレーブ回路において抵抗素子として機能する前記抵抗用MOSトランジスタのゲートに信号を供給する出力端子、を有する差動増幅器と、
    を備え、
    前記基準抵抗素子の方の端子に第1電圧を供給し、前記制御用MOSトランジスタのドレインまたはソースに第2電圧を供給し、
    前記差動増幅器の出力端子から出力された信号が、前記抵抗制御信号として前記制御用MOSトランジスタ及び前記抵抗用MOSトランジスタに供給されることを特徴とする請求項10に記載のフィルタ回路。
  13. 前記スレーブ回路は、前記抵抗用MOSトランジスタと同一の基板上に形成された内部抵抗素子を有し、
    前記抵抗用MOSトランジスタと前記内部抵抗素子とは、直列、または並列に接続された組み合わせ抵抗を構成し、
    前記マスタ回路は、前記制御用MOSトランジスタと同一の基板上に形成された第2内部抵抗素子を有し、
    前記制御用MOSトランジスタと前記第2内部抵抗素子とは、直列または並列に接続された組み合わせ抵抗を構成することを特徴とする請求項11または12に記載のフィルタ回路。
  14. 前記マスタ回路の前記差動増幅器の非反転入力端子に供給されるリファレンス信号を生成する前記リファレンス信号生成回路を備え、
    前記リファレンス信号生成回路は、
    前記演算増幅器が備える前記出力増幅回路に含まれるMOSトランジスタのチャネルのサイズに比例して縮小され、前記縮小の縮小率に応じた電流が供給されるMOSトランジスタを有することを特徴とする請求項11から13のいずれか1項に記載のフィルタ回路。
  15. 前記マスタ回路が多段に接続され、
    前記マスタ回路は、当該接続の段数に応じた前記差動増幅器を有し、
    前記スレーブ回路は、前記マスタ回路の数に応じた数の前記抵抗用MOSトランジスタを有し、
    前記差動増幅器の各々は、前記抵抗用MOSトランジスタのいずれか1つのゲートに前記抵抗制御信号を供給することを特徴とする請求項11から14のいずれか1項に記載のフィルタ回路。
  16. 前記演算増幅器は、
    互いにソース同士が接続された第17MOSトランジスタ、第18MOSトランジスタからなる入力MOSトランジスタ対と、
    前記入力MOSトランジスタ対のソースにドレインが接続され、前記入力MOSトランジスタ対に電流を供給すると共に、ゲートに前記フィルタ制御信号が入力される第19MOSトランジスタと、
    前記第17MOSトランジスタのドレインにソースが接続される第20MOSトランジスタ、前記第18MOSトランジスタのドレインにソースが接続される第21MOSトランジスタからなるカスコードMOSトランジスタ対と、
    前記第20MOSトランジスタとドレイン同士が接続される第22MOSトランジスタ、前記第21MOSトランジスタとドレイン同士が接続される第23MOSトランジスタからなるロードMOSトランジスタ対と、
    前記第20MOSトランジスタのソースにドレインが接続される第24MOSトランジスタ、前記第21MOSトランジスタのソースにドレインが接続される第25MOSトランジスタからなる電流源MOSトランジスタ対と、
    前記第22MOSトランジスタのドレインに接続される第7容量素子、前記第23MOSトランジスタのドレインに接続される第8容量素子、によって構成される第1容量素子対と、
    前記第24MOSトランジスタのドレインに接続される第9容量素子、前記第25MOSトランジスタのドレインに接続される第10容量素子、によって構成される第2容量素子対と、
    を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のフィルタ回路。
  17. 前記フィルタ制御信号生成回路は、
    ドレインとゲートが接続される第1の極性の第26MOSトランジスタ、前記第26MOSトランジスタとゲート同士が接続される第1の極性の第27MOSトランジスタ、からなる第1MOSトランジスタ対と、
    前記第26MOSトランジスタとドレイン同士が接続される第2の極性の第28MOSトランジスタ、ドレインとゲートが接続されると共に前記第28MOSトランジスタとゲート同士が接続され前記第27MOSトランジスタとドレイン同士が接続される第2の極性を有する第29MOSトランジスタ、からなる第2MOSトランジスタ対と、
    前記第26乃至第29MOSトランジスタのうちいずれか1つのMOSトランジスタのソースに接続される第3抵抗素子と、
    前記第26MOSトランジスタのドレインに接続される第1端子と、
    前記第29MOSトランジスタのドレインに接続される第2端子と、
    を備え、
    前記第1端子、前記第2端子の少なくとも一方から前記フィルタ制御信号が出力されることを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載のフィルタ回路。
  18. 前記第26MOSトランジスタと前記第28MOSトランジスタのドレイン間、前記第27MOSトランジスタと前記第29MOSトランジスタのドレイン間、のすくなくともひとつに接続されるカスコードMOSトランジスタを備えることを特徴とする請求項17に記載のフィルタ回路。
  19. 前記フィルタ制御信号生成回路が、PLL回路であることを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載のフィルタ回路。
  20. 入力信号が入力される第1フィルタ入力端子、フィルタリングされた信号が出力される第1フィルタ出力端子、第1演算増幅器を備える第1フィルタと、
    第k−1フィルタの出力信号入力信号として入力される第kフィルタ入力端子(kは、2≦k≦Nの整数、Nは2以上の整数)、フィルタリングされた信号が出力される第kフィルタ出力端子、第k演算増幅器を備える第kフィルタと、を含む前記第1フィルタから第Nフィルタまでのフィルタと、
    前記第1フィルタから前記第Nフィルタまでの前記フィルタを制御するためのフィルタ制御信号を生成するフィルタ制御信号生成回路と、を備えたフィルタ回路であって、
    前記フィルタ制御信号生成回路は、前記第1フィルタから前記第Nフィルタまでに備えられる前記第1演算増幅器から第N演算増幅器までのそれぞれの第1から第NまでのGB積と、前記第1演算増幅器から前記第N演算増幅器までのそれぞれの第1から第Nまでの第2ポール周波数とを制御するためのフィルタ制御信号を生成し、前記フィルタ制御信号を前記第1フィルタから前記第Nフィルタまでに備えられる前記第1演算増幅器から前記第N演算増幅器までに供給することで、前記第1フィルタから前記第Nフィルタまでのそれぞれの第1から第Nまでのカットオフ周波数と、前記第1フィルタから前記第Nフィルタまでのそれぞれの第1から第Nまでのクオリティファクタとを制御し、
    前記第1演算増幅器から前記第N演算増幅器までの演算増幅器は、増幅器反転入力端子、増幅器非反転入力端子、増幅器出力端子、を備え、
    前記第1フィルタから前記第Nフィルタまでにおいて、前記第kフィルタ入力端子と前記増幅器非反転入力端子とが接続され、前記第kフィルタ出力端子と前記増幅器出力端子とが接続され、前記増幅器出力端子と前記増幅器反転入力端子とが接続され、
    前記カットオフ周波数のそれぞれは、前記演算増幅器のそれぞれのGB積と前記第2ポール周波数との積の平方根であり、前記クオリティファクタのそれぞれは、前記演算増幅器のそれぞれのGB積と前記第2ポール周波数との比の平方根であることを特徴とするフィルタ回路。
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