JP2012085066A - トランスコンダクタンスアンプ及びそれを用いたGm−Cフィルタ - Google Patents

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Abstract

【課題】線形性能が優れたGmアンプ、このGmアンプを用いて高速動作が可能で、入力電圧範囲が広く、かつ線形性能の優れたGm−Cフィルタを提供する。
【解決手段】入力信号が端子17、18から供給され、ソース端子が電源端子に接続されるMOSトランジスタ11、12、同相制御信号がゲート端子から供給されるMOSトランジスタ13、14、出力信号を出力する出力端子対の平均電圧を一定にするためMOSトランジスタ13、14のゲート端子に同相制御信号を出力する同相制御アンプ15、入力信号を入力して、MOSトランジスタ11、12に入力される入力信号の大小に応じて基板電圧を制御する基板制御信号をMOSトランジスタ11、12の基板端子に供給する基板電圧制御回路21、22によってGmアンプを構成する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、トランスコンダクタンスアンプ(Tran conductance Amplifier:以下、Gmアンプと記述する)と、Gmアンプを用いた高速動作可能で、入力電圧範囲が広くて線形性能の優れたGm−Cフィルタに関するものである。
フィルタには、多種多様な構成のものが提案されており、それぞれが目的及び仕様によって使い分けられている。例えば、アクティブフィルタは、オペアンプ、抵抗、容量素子からなるが、チップ上に形成される抵抗素子、容量素子の素子ばらつき、温度変動の影響を受けるため所望の周波数特性が得られないという問題がある。また、デジタルフィルタやSCF(スイッチトキャパシタフィルタ)には、サンプリング動作をするために高速動作に適さないという問題がある。
Gm−Cフィルタ(OTA−Cフィルタとも呼ばれる)は、高速動作に適するが、大信号処理に不適であるという問題がある。Gm−Cフィルタは、Gmアンプと容量素子とから構成されるフィルタで、そのフィルタの性能のほとんどはGmアンプの性能に依存していて、大信号処理に不適であるという問題もGmアンプの性能に由来している。
図9は、代表的なGmアンプを示した図である。図9に示したGmアンプは、MOSトランジスタ101、102からなる一対の入力MOSトランジスタ対と、MOSトランジスタ103、104からなる一対の電流源MOSトランジスタと、電流源の機能を有するMOSトランジスタ105と、からなる。MOSトランジスタ101、102のゲート端子対106、107に入力電圧Vinを供給することで出力端子対108、109から出力電流Ioutが出力される。この入力電圧と出力電流との関係は式(1)のように記述できる。なお、このような関係は、例えば、非特許文献1に記載されている。
Iout=(K・Io)0.5Vin{1−(K・Vin2)/(4・Io)}0.5 …式(1)
式(1)において、Kは式(2)で示されるようにMOSトランジスタの性能を表すパラメータ、IoはMOSトランジスタに流れる電流である。
K=μ・Cox・(W/L) …式(2)
ここで、μ、Cox、W、LはそれぞれMOSトランジスタの移動度、単位面積あたりのゲート容量、チャネル幅、チャネル長である。またIoは、Kとオーバードライブ電圧Vovを用いて式(3)のように表すことができる。
Io=KVov2 …式(3)
ここで、オーバードライブ電圧Vovは、式(4)のようにゲート・ソース間電圧から閾値電圧を引いた値を指すものである。
Vov=Vgs−Vth …式(4)
式(1)は、式(3)、式(4)を用いて式(5)のように表すことができる。
Iout=(K・Io)0.5Vin{1−Vin2/(4・Vov2)}0.5…式(5)
ここで、入力電圧Vinが十分小さい場合には式(5)は式(6)のように表すことができる。
Iout=gm・Vin …式(6)
ここでgmは式(7)で表されるような比例定数であり、図9に示したGmアンプのトランスコンダクタンス値でありかつ、MOSトランジスタ101、102のトランスコンダクタンス値でもある。
gm=(K・Io)0.5 …式(7)
すなわち、出力電流は入力電圧に比例しており、図9のGmアンプと容量素子を組み合わせることでGm−Cフィルタを実現できる。しかしながら、式(5)からもわかるように、入力信号Vinが大きい、例えばVinがVovの値に対して無視できない程度に大きい場合、その大きさが大きくなるほど出力電流と入力電圧との線形関係が成り立たなくなる。このような場合、Gm−Cフィルタには所望の周波数特性が得られなくなるという問題が生じる。通常、Vovの値は0.3〜0.7V程度であるので、線形性を保つことができる入力電圧範囲は非常に小さな値になる。
図10は、広い入力電圧にわたって線形性能を保つことができる従来のGmアンプを説明するための図である。このようなGmアンプは、例えば、特許文献1、非特許文献2に記載されている。
図10に示したGmアンプは、入力MOSトランジスタとして機能する同じサイズのMOSトランジスタ11、12からなる一対の入力MOSトランジスタ対、電流源MOSトランジスタとして機能する同じサイズのMOSトランジスタ13、14からなる一対の電流源MOSトランジスタ対、MOSトランジスタ13、14のゲートに電圧信号を供給するための同相制御アンプ15から構成される。
同相制御アンプ15の動作については、特許文献1に詳細に説明してあるのでここでは簡単に説明する。図10に示したGmアンプでは、入力MOSトランジスタ対と電流源MOSトランジスタ対のみを備える構成の場合、出力電圧の動作点が定まらないため、出力端子である端子19、20に発生する出力電圧の平均値が設定された値になるように、同相制御アンプが用いられる。同相制御アンプには様々なタイプのものがあるが、代表的な同相制御アンプを図11に示す。以下、図11に示した同相制御アンプにおいて同相制御アンプが出力電圧の平均値を設定された値にする際の動作を説明する。
図11に示した同相制御アンプでは、MOSトランジスタ121〜127及び抵抗素子128、容量素子129によって演算増幅器が構成される。ここで、MOSトランジスタ121〜125によって差動増幅回路が、MOSトランジスタ126、127によって出力増幅回路が形成される。抵抗素子128、容量素子129は回路の安定を目的として設けられている位相補償回路である。
図11に示した同相制御アンプでは、図10に示した端子19、20からの出力信号の平均値を生成するため、出力信号が端子136、137から入力される。出力信号の入力により、抵抗値が等しい2つの抵抗素子134、135の中点にて発生する出力信号電圧の平均値が、演算増幅器の図11に示した非反転入力端子141に入力される。一方、基準電圧が端子132、133から入力され、抵抗値が等しい2つの抵抗素子130、131の中点にて発生する基準電圧の平均値が、演算増幅器の反転入力端子140に入力される。ただし、図11に示した同制御アンプの場合、基準電圧は1つなので、平均値を生成するための抵抗素子132、133は不要で、基準電圧信号を端子140に直接入力すればよい。
次に、同相制御アンプの具体的な動作について図10、図11を用いて説明する。図10に示した端子19、20に発生する電圧の平均値が基準電圧よりも高くなると、演算増幅器の非反転入力端子141の電圧は反転入力端子140の電圧よりも高くなるので、演算増幅器の出力、すなわち図10に示した端子25の電圧レベルは高くなる。すると、P型のMOSトランジスタ13、14の電流は減少し、その結果、端子19、20にて発生する出力電圧は低くなる。
逆に、出力電圧の平均値が基準電圧よりも低くなると、演算増幅器の図11に示した非反転入力端子141の電圧は反転入力端子140の電圧よりも低くなるので、演算増幅器の出力、すなわち図10に示した端子25の電圧レベルは低くなる。するとP型のMOSトランジスタ13、14の電流は増加して、その結果、出力端子である端子19、20にて発生する出力電圧は高くなる。
このようにして、最終的に出力電圧の平均値は基準電圧に等しくなる。このように、同相制御アンプは、図10のようないわゆる全差動アンプの出力レベルの平均値を決めるために欠かせないものである。
なお、図11の同相制御アンプの代わりに、図11の出力増幅回路に相当するMOSトランジスタ126、127及び位相補償回路である抵抗128と容量素子129を有していない回路を用いても同様の効果を発揮する。この場合、出力増幅回路を除去したことで極性が逆になるので、正の入力端子と負の入力端子とは相互に置き換えられることになる。
また、図10のアンプの代わりに非反転入力端子と反転入力端子を2つずつ有している差動差動増幅器を使用することもできる。差動差動増幅器を使用する場合は、抵抗素子を使って平均値を作り出す回路が不要になる。このように同相を制御するためのアンプには、多種多様のものが存在する。
次に、図10に示したGmアンプの入力電圧Vinに対して端子19、20から出力される出力電流Ioutの振る舞いについて説明する。端子17、18の端子電圧V17、V18とMOSトランジスタ11、12に流れる電流I11、I12の関係は、MOSトランジシタ11、12が飽和領域で動作する場合、Sahの式を用いて以下のように表すことができる。
I11=K・(V17−Vth)2 …式(8)
I12=K・(V18−Vth)2 …式(9)
但し、Kは下式のように表される。
K=(W/L)・μ・Cox/2 …式(10)
ここでVth、μ、Coxはそれぞれ、MOSトランジスタの閾値電圧、キャリアの移動度、単位面積あたりのゲート容量である。図10に示したGmアンプの出力電流Ioutは、出力端子である端子19、20から出力される電流の差電流である。ここで、MOSトランジスタ13、14のゲート電圧は同相制御アンプから共通に供給されていて、同じ電流が流れるので、出力電流IoutはMOSトランジスタ11、12の差電流に等しくなる。差電流を計算する前に、端子電圧V17、V18を、同相電圧Vcと差入力電圧としての入力電圧Vinを用いて以下のように定義する。
V17=Vc+Vin …式(11)
V18=Vc−Vin …式(12)
式(11)、(12)を式(8)、(9)に代入して整理すると、次の式(13)、(14)のようになる。
I11=K・{(Vc−Vth)2+2(Vc−Vth)・Vin+Vin2}…式(13)
I12=K・{(Vc−Vth)2−2(Vc−Vth)・Vin+Vin2}…式(14)
差電流である出力電流Ioutを式(13)、(14)を用いて計算すると、式(15)が得られる。
Iout=I11−I12=4K・(Vc−Vth)・Vin …式(15)
上記した式(15)において、K、Vc、Vthは一定値であるので、出力電流Ioutは、入力電圧に比例することがわかる。
すなわち図10に示したGmアンプは、MOSトランジスタがオフするか、あるいは線形領域に入る等しない限り広い入力電圧にわたって線形性能を保つことができる。
特開平6−152320号公報
R.R.Torrance著 IEEE TransactIons on Circuits and Systems、 32巻、11号、1097ページ。1985年。論文タイトル「High-Frequency CMOS Continuous-Time Filters」 Toshio Adachi著 IEEE Custom Integrated Circuits Conference、 講演番号8.2.1, 159ページ。1994年。論文タイトル「A Low Noise Integrated AMPs IF Filter」
しかしながら、上記した式(13)〜(15)中の定数Kに含まれる移動度μは、次式に示すようにゲート電圧依存性を有する。
μ=μo/{1+θ(Vgs−Vth)} …式(16)
式(16)において、μoはVgs−Vth=0の場合の移動度、θは移動度のゲート電圧による劣化の程度を表す定数、Vgsはゲート・ソース間電圧である。なお、Vgsは、図10に示したMOSトランジスタ11、12にあっては、端子電圧V17、V18に対応する。
式(16)の移動度μのゲート電圧依存性を考慮に入れて、MOSトランジスタ11、12の電流・電圧の関係式である式(8)、(9)を書き直すと、式(17)、(18)のようになる。
I11=Ko・(V17−Vth)2/{1+θ(Vgs−Vth)} …式(17)
I12=Ko・(V18−Vth)2/{1+θ(Vgs−Vth)} …式(18)
ただし、式(17)、(18)中のKoは下式のように表される。
Ko=(W/L)・μo・Cox/2 …式(19)
差電流である出力電流Ioutを式(17)、(18)に代入することで式(20)が得られる。ただし、式(20)において、θは小さいものとしてθの高次項は省略されている。
Iout=I11−I12
=4K・(Vc−Vth)・Vin{1−θ・Vin2/2(Vc−Vth)} …式(20)
すなわち、図10に示したGmアンプには、移動度μのゲート電圧依存性を考慮に入れた場合、Vinの3乗に比例する項があるため、入力信号電圧Vinが大きい場合、3次高調波歪(実質的にTHD(Total Harmonic Distortion(全高調波歪み)))が大きくなるため、良い線形性能を保つことができない、換言すれば、線形性能を良い状態に保つためには、入力信号電圧を小さく設定せざるを得ないという問題がある。
また、このGmアンプを用いてGm−Cフィルタを構成した場合も、Gm−Cフィルタへの入力信号電圧が大きい場合、出力信号が大きく歪むという問題がある。
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、従来のGmアンプに比べて線形性能が優れたGmアンプを提供することを目的とする。そしてこのGmアンプを用いて高速動作が可能で、入力電圧範囲が広くてかつ線形性能の優れたGm−Cフィルタを提供することを目的とする。
以上の課題を解決するため、本発明のトランスコンダクタンスアンプは、入力信号がゲート端子(例えば図1に示した端子17、18)から供給され、ソース端子が電源端子に接続される第1MOSトランジスタ(例えば図1に示したMOSトランジスタ11)及び第2MOSトランジスタ(例えば図1に示したMOSトランジスタ12)からなる入力MOSトランジスタ対と、同相制御信号がゲート端子から供給される第3MOSトランジスタ(例えば図1に示したMOSトランジスタ13)及び第4MOSトランジスタ(例えば図1に示したMOSトランジスタ14)からなる電流源MOSトランジスタ対と、出力信号を出力する出力端子対の平均電圧を一定にするため前記第3MOSトランジスタ及び前記第4MOSトランジスタのゲート端子に前記同相制御信号を出力する同相制御アンプ(例えば図1に示した同相制御アンプ15)と、前記入力信号を入力して、前記第1MOSトランジスタ及び前記第2MOSトランジスタに入力される入力信号の大小に応じて基板電圧を制御する第1基板制御信号及び第2基板制御信号を前記第1MOSトランジスタ及び前記第2MOSトランジスタの基板端子に供給する第1基板電圧制御回路及び第2基板電圧制御回路(例えば図1に示した基板電圧制御回路21、22)と、を含むことを特徴とする。
また、本発明のトランスコンダクタンスアンプは、上記した発明において、前記基板電圧制御回路が、前記第1MOSトランジスタに入力される入力信号の増加に伴って前記第1MOSトランジスタの基板端子に供給される電圧を増加させ、前記第2MOSトランジスタに入力される入力信号の増加に伴って前記第2MOSトランジスタの基板端子に供給される電圧を増加させることが望ましい。
また、本発明のトランスコンダクタンスアンプは、上記した発明において、前記第1基板電圧制御回路及び前記第2基板電圧制御回路が、それぞれ抵抗素子(例えば図2に示した抵抗素子44)と、前記第1MOSトランジスタ及び前記第2MOSトランジスタにそれぞれ流れる電流に比例した電流を前記抵抗素子に供給する電流源(例えばMOSトランジスタ41)とからなり、前記電流を前記抵抗素子に供給することによって生成される電圧を前記第1基板制御信号及び前記第2基板制御信号として出力することが望ましい。
また、本発明のトランスコンダクタンスアンプは、上記した発明において、前記抵抗素子が、集積回路上に形成された抵抗素子であることが望ましい。
また、本発明のトランスコンダクタンスアンプは、上記した発明において、前記抵抗素子として、ゲート端子に抵抗値制御回路からの抵抗値制御信号を供給されるMOSトランジスタ(例えば図4に示したMOSトランジスタ48)が用いられることが望ましい。
また、本発明のトランスコンダクタンスアンプは、上記した発明において、前記基板電圧制御回路が、ボルテージフォロワ回路(例えば図6に示した差動増幅器71)と2つの抵抗素子(例えば図6に示した抵抗素子72、73)を含む減衰器からなり、出力される基板制御信号が入力信号に比例していることが望ましい。
また、本発明のトランスコンダクタンスアンプは、上記した発明において、前記電流源MOSトランジスタ対と直列に接続されるカスコードMOSトランジスタ対(例えば図7に示したMOSトランジスタ27、28)をさらに含むことが望ましい。
また、本発明のGm−Cフィルタは、上記した発明において、請求項1から7のいずれか1項に記載のトランスコンダクタンスアンプ(例えば図8に示したGmアンプ81、82、83、84)と、容量素子(例えば図8に示した抵抗素子85、86)と、を含むことを特徴とする。
本発明によれば、基板バイアス電圧を制御することによって移動度の劣化による電流値減少分を補正しているため、Gmアンプのトランスコンダクタンス値を広い入力電圧範囲にわたって一定(=出力電流が入力電圧に十分に比例)に保つことができる。言い換えると、入力電圧範囲の広い直線性の優れたGmアンプを実現することができる。また、このGmアンプを容量素子と組合せて用いることにより、周波数特性精度が高く、高速でかつ入力電圧範囲の広いGm−Cフィルタを提供することができる。
本発明の実施形態1のGmアンプを説明するための図である。 本発明の実施形態1に使用される基板電圧制御回路を説明するための図である。 本発明の実施形態1のGmアンプの抵抗値に対するTHD特性を示す図である。 本発明の実施形態2に使用される基板電圧制御回路を説明するための図である。 図4に示した抵抗値制御回路の一例を示した図である。 本発明の実施形態3の基板電圧制御回路を説明するための図である。 本発明の実施形態4のGm−Cフィルタを説明するための図である 本発明の実施形態1から実施形態4に示したGmアンプを用いたGm−Cフィルタを示した図である。 代表的なGmアンプを示した図である。 従来のGmアンプを説明するための図である。 図10に示した従来のGmアンプ及び本発明の実施形態1〜実施形態4に使用される同相制御アンプを説明するための図である。
以下、本発明の実施形態1〜実施形態5について、図面を用いて説明する。
(実施形態1)
図1は、実施形態1のGmアンプを説明するための図である。図1に示したGmアンプは、図10で示した従来から知られているGmアンプと2つの基板電圧制御回路21、22とから構成されている。図1に示したGmアンプは、図10に示したGmアンプと同様の構成を含んでおり、同様の構成には同様の符号を付す。すなわち、図1に示したGmアンプは、入力MOSトランジスタとして機能するMOSトランジスタ11、12からなる一対の入力MOSトランジスタ対、電流源MOSトランジスタとして機能するMOSトランジスタ13、14からなる一対の電流源MOSトランジスタ対、MOSトランジスタ13、14のゲートに電圧信号を供給するための同相制御アンプ15を含んでいる。図1に示したGmアンプの入力端子は、MOSトランジスタ11、12のゲート端子である端子17、18である。また、MOSトランジスタ11、12のソース端子は、それぞれ電源の電源端子として接続されている。
図1に示したGmアンプと図10に示したGmアンプの相違点は、MOSトランジスタ11、12の基板電圧を制御する基板電圧制御回路21、22の有無にある。
ここで、本明細書の実施形態でいう基板という用語について説明する。実施形態1乃至5において言う基板は、正確には基板ではなく、ウェルと称すべきである。しかし、ウェル電圧を変化させることで閾値電圧が変化するという現象を基板効果(またはバルク効果)ということに従い、以下の説明でも、ウェルに接続された端子をウェル端子ではなく基板端子と記すことにする。
ところで、図10に示したGmアンプの場合、MOSトランジスタ11、12の基板を制御する端子に関して回路図上で特に明示されていていない。一般にMOSトランジスタは、ゲート端子、ドレイン端子、ソース端子、基板端子の4つの端子を有しているが、回路図を簡略するために基板端子が電源端子に接続されている場合(NMOSトランジスタの場合は負の電源端子、PMOSトランジスタの場合は正の電源端子)基板端子を省略することが慣例的になされており、本実施形態においてもその慣例に従って多くのMOSトランジスタの基板端子を省いて図示している。
このような慣例に従い、図10においてもN型のMOSトランジスタ11、12の基板端子は負の電源端子に、また、P型のMOSトランジスタ13、14の基板端子は正の電源端子にそれぞれ接続されている。一方、図1の場合、MOSトランジスタ11、12の基板端子は基板電圧制御回路21、22の出力端子に接続されている。基板電圧制御回路21、22は全く同じ回路である。
図2は、図1に示した基板電圧制御回路を説明するための図である。図2に示した基板電圧制御回路は、MOSトランジスタ41、42、43と抵抗素子44とから構成される。基板電圧制御回路において入力信号は入力端子となる端子45から入力され、出力信号(基板制御信号)は出力端子となる端子46から出力される。図2に示した基板電圧制御回路が図1に示した基板電圧制御回路21として使用される場合、図1に示した端子17と図2に示した端子45が接続され、また図1に示した基板端子23と図2に示した端子46とが接続される。
また、図2に示した基板電圧制御回路が図1に示した基板電圧制御回路22として使用される場合、図1に示した端子18と図2に示した端子45とが接続され、また図1に示した基板端子24と図2に示した端子46とが接続される。
次に、図1に示したGmアンプの動作説明を行う。なお、図10に相当する回路についての動作は既に説明しているので、ある程度説明を割愛する。
図1に示したGmアンプには、入力信号として電圧V17、V18が入力端子である端子17、18に入力される。入力された電圧V17は、端子17に入力されると共に図2に示したMOSトランジスタ41のゲート端子である端子45に入力される。MOSトランジスタ41に入力される信号の大きさに応じて、MOSトランジスタ41に流れる電流I41の大きさが決まる。また、電流I41は図1に示したMOSトランジスタ11に流れる電流I11に比例し、電流I41と電流I11の比は、MOSトランジスタ11とMOSトランジスタ41のサイズ比によって決まる。
また、抵抗素子44に流れる電流I44は、MOSトランジスタ42、43がカレントミラーを形成しているので、MOSトランジスタ41に流れる電流I41に比例する。すなわちMOSトランジスタ11に流れる電流I11と抵抗素子44に流れる電流I44の比は、式(21)に示すように、MOSトランジスタ41とMOSトランジスタ11のサイズ比とMOSトランジスタ42とMOSトランジスタ43のサイズ比に依存する。
I44/I11={(W41/L41)/(W11/L11)}・{(W43/L43)/(W42/L42)} …式(21)
式(21)において、W41、L41はMOSトランジスタ41のチャネル幅とチャネル長、W11、L11はMOSトランジスタ11のチャネル幅とチャネル長、W43、L43はMOSトランジスタ43のチャネル幅とチャネル長、W42、L42はMOSトランジスタ42のチャネル幅とチャネル長である。またMOSトランジスタ11の基板電圧Vbs11は、式(22)に示すように、抵抗素子44に流れる電流I44と抵抗素子44の抵抗値R44の積で決まる。
Vbs11=I44・R44 …式(22)
基板電圧制御回路21、22がない図10に示したGmアンプの場合、MOSトランジスタ11の入力電圧が大きくなると、MOSトランジスタ11に流れる電流は、式(17)に示すように、移動度の劣化によってその増加が抑制される。この劣化による部分は、式(17)の分母に係る{1+θ(Vgs−Vth)}に起因していて、移動度の劣化が3次歪を引き起こしている。(実際は3次より高い周波数成分もあるが、3次歪が大きいため3次歪と記すものとする)。
一方、図1に示したGmアンプのように、基板電圧制御回路21、22がある場合、入力電圧の増加に伴って、例えば、N型のMOSトランジスタ11の基板端子23の電圧が増加する。N型のMOSトランジスタの場合、基板電圧が高くなると基板効果により閾値電圧Vthが低下する。閾値電圧Vthが低下すると、式(17)からも導かれるように、MOSトランジスタ11に流れる電流は増加して、移動度の劣化による電流抑制の分を補う効果を発揮する。
このとき、抵抗が大きくなるほど、閾値電圧Vthの低下が大きくなるのでより電流抑制を大きく補うことになるが、抵抗が大きくなりすぎると逆に打ち消し分以上に電流が増加して逆効果をもたらすことになる。
図3は、図1に示した回路において入力電圧Vinとして250mV(差動で入力するので実質的な入力電圧は500mV)の電圧が印加されたときの出力電流のTHD(Total Harmonic DistortIon)をSPICEシミュレーションによって求めたグラフである。図3の横軸は図2に示した抵抗素子44の抵抗値を、縦軸は出力信号のTHDを表している。図3は、THDが小さければ小さいほどマイナス側に数値が大きくなることを表している。図3をみると、抵抗値がゼロの場合(これは実質的に図10と同じであるが)、THDは−55.1dBを示すが、抵抗値を次第に大きくしていくとMOSトランジスタの移動度劣化を打ち消すように基板電圧制御回路21、22が動作するのでTHDは小さくなる。(マイナス側に数値が大きくなる)そして、抵抗値が1800Ωの時、THDは最小レベルになる。このような現象は、移動度劣化を基板制御信号が打消した状態になるため、THDが最小になることによって起こる。抵抗値が1800Ωから増加していくと、打ち消し効果が効きすぎるためTHDは次第に大きくなる。
このように、図1に示したGmアンプに、図2に示した基板電圧制御回路21、22を用いた場合、THD、すなわち電圧電流特性における直線性は改善できる。特に、図2に示した抵抗素子44の抵抗値が1800Ω付近では、格別良好な効果を奏する。ただし、IC上で形成される抵抗素子は通常製造ばらつきや温度によって抵抗値が変動する。IC上で形成される代表的な抵抗素子としてポリシリコンによって形成される抵抗素子(以下、ポリ抵抗素子とも記す)があり、このような抵抗素子の場合、温度変動を含んだ製造ばらつきは±15〜±25%程度である。
以上のことから、ポリ抵抗素子の抵抗値を、その製造変動を考慮して1800±360Ωとした場合に、図3から、THDは−70dB以下とすることができることが分かる。すなわち、図10に示したGmアンプの場合(図1に示したGmアンプにおける抵抗ゼロに相当)THDが−55dBだったのに対して、図1に示したGmアンプの基板電圧制御回路21、22に図2に示した回路を適用した実施形態1では、THDを15dB低下させることができた。
一方、図10に示した従来のGmアンプの回路でTHD−70dBを達成するためには、入力信号レベルを250mVから110mVまで低下させる必要がある。換言すると、図1に示したGmアンプを使用することにより、最大信号レベルを(250/110)倍、7.1dB相当高くすることができる。このことから、実施形態1のGmアンプは、S/N比を7.1dB改善できるといえる。
仮に、従来の回路でS/N比を7.1dB改善するためには、GmアンプのMOSトランジスタから生ずる熱抵抗を低下する必要があり、このためには消費電流とMOSトランジスタサイズとを同時に5.1倍増加させなければならない。換言すると、実施形態1は、消費電流を従来技術よりも約5.1倍低下することができる。もちろん、実施形態1のGmアンプでは、従来のGmアンプと比較して余分な回路を必要とするが、追加したMOSトランジスタサイズを十分小さくして電流を抑えつつ、電流を抑えた分だけ抵抗素子44の抵抗値を大きくすれば(例えば、トランジスタサイズを10分の1にして、抵抗値を10倍にする)追加回路による消費電流の増加を充分に抑えることができる。
また実施形態1のGmアンプにおいて、全てのNMOSトランジスタとPMOSトランジスタを正負の電源端子も含めて上下反転させながらそれぞれ置き換えても同じ効果を得ることができる。
PMOSトランジスタはゲートに供給される入力電圧が低い場合、より多くの電流が流れるとともに移動度の劣化の影響をより多く受ける。通常、PMOSトランジスタの基板端子には、正の電源電圧が供給されているが、この電圧の代わりに、移動度劣化の影響を補うためにP型の入力MOSトランジスタに流れる電流に比例した電流を正の電源に接続している抵抗に負の電流を供給する(負の電流なので実質的には正の電流を引き出す)ことで生成される電圧を供給する。負の電流を供給しているので生成される電圧は正の電源電圧よりも低くなる。このようにすると基板効果により閾値の絶対値は低くなり、電流はより多く流れ移動度劣化を補償することができる。
(実施形態2)
図2に示した抵抗素子44としては、IC(Integrated Circuit:集積回路)上で形成されるポリ抵抗素子、拡散抵抗を使用することで実現できるが、実施形態2では、これら抵抗素子の代わりにMOSトランジスタを線形領域で動作するようにして抵抗素子として使用する。
図4は、実施形態2を説明するための図であって、図2に示した抵抗素子44の代わりにMOSトランジスタ48とその抵抗値の抵抗値制御回路49を用いた基板電圧制御回路を示している。抵抗値制御回路49からの制御信号は、MOSトランジスタ48の抵抗値を制御するために、MOSトランジスタ48のゲート端子である端子50に供給される。
図5は、図4に示した抵抗値制御回路49の一例を示した図である。図5に示した抵抗値制御回路は、抵抗素子51、52、53とMOSトランジスタ54と差動増幅器55から構成される。ここで、差動増幅器55、MOSトランジスタ54、抵抗素子53は、負帰還回路を形成している。
すなわち、差動増幅器55の非反転入力端子57の電圧が反転入力端子56の電圧よりも高い場合、差動増幅器55の出力電圧は高くなる。すると、MOSトランジスタ54のゲート電圧は高くなるので、より多くの電流が流れる、電流がより多く流れると、抵抗素子53にもより多くの電流が流れ、その結果、非反転入力端子57の電圧は低下する。また、逆に、差動増幅器55の非反転入力端子57の電圧が反転入力端子56の電圧よりも低い場合、差動増幅器55の出力は低くなる。すると、MOSトランジスタ54のゲート電圧は低くなるので、電流は減少する。電流が減少すると、抵抗素子53の電流も減少し、その結果、非反転入力端子57の電圧は高くなる。
このようにして、差動増幅器55の利得が十分高い場合、非反転入力端子57の電圧V57と反転入力端子56の電圧V56は同じになる。ここで、抵抗素子51〜53の抵抗値をR51〜R53、MOSトランジスタ54の抵抗値をR54とすると、V56=V57より次式が成り立つ。
R54/R53=R51/R52 …式(23)
式(23)により、MOSトランジスタ54の抵抗値R54は式(24)のように表されることになる。
R54=R53・(R51/R52) …式(24)
(R51/R52)は抵抗値の比なので、IC上で形成される抵抗、例えばポリ抵抗素子で精度よく実現できる。またR53をIC上で形成されるポリ抵抗素子等で実現する場合は、図2に示した基板電圧制御回路と同様にポリ抵抗素子の抵抗値が製造変動の影響を受ける。ここで、抵抗素子53として抵抗値の精度の高い外付け抵抗素子を使用すると、MOSトランジスタ54の抵抗値R54もまた高い精度の抵抗値を得ることができる。
Gmアンプを複数用いて構成されるGm−Cフィルタの場合、複数の基板電圧制御回路が必要になると同時に複数の抵抗素子として機能するMOSトランジスタ(図4に示したMOSトランジスタ48、以下、MOS抵抗素子とも記す)が必要になるが、これらMOSトランジスタ48のゲートに入力される信号には、図4に示した抵抗値制御回路49の端子50から出力される信号を共通に使用することができる。このため、実施形態2では、Gmアンプが複数必要な場合でも、外付け抵抗は1つだけで構わない。このように、図5に示した基板電圧制御回路に外付け抵抗を用いることで、図4に示した基板電圧制御回路のMOS抵抗素子は高い精度の抵抗値を実現することができる。
(実施形態3)
次に、実施形態3のGmアンプを、図1と図6とを用いて説明する。実施形態1、2では、図1に示した基板電圧制御回路21、22として、図2あるいは図4に示した基板電圧制御回路が用いられる。実施形態3は、その代わりに基板電圧制御回路21、22として、図6に示すような回路を用いたものである。
図6は、実施形態3の基板電圧制御回路を説明するための図であって、実施形態3の基板電圧制御回路は、差動増幅器71と2つの抵抗素子72、73から構成される。実施形態3の基板電圧制御回路において、入力信号は入力端子である非反転入力端子74から入力され、出力信号は出力端子である端子75から出力される。実施形態3の基板電圧制御回路が図1に示した基板電圧制御回路21として使用される場合、図1に示した端子17と図6に示した非反転入力端子74とが接続され、また、図1に示した基板端子23と図6に示した端子75とが接続される。また、実施形態3の基板電圧制御回路が図1の22として使用される場合、図1の端子18と図6の非反転入力端子74が接続され、また図1の基板端子24と図6の端子75が接続される。
次に、実施形態3のGmアンプの動作説明を行う。なお、図1に相当する回路については既に説明しているので、その説明をある程度割愛する。
図1に示したGmアンプには、入力信号として電圧V17、V18が端子17、18に入力される。入力された電圧V17は、MOSトランジスタ11のゲート端子である端子17に入力されるとともに図6に示した差動増幅器71の非反転入力端子74に入力される。
差動増幅器71の反転入力端子と出力端子76とは接続されてボルテージフォロワ回路構成しているので、差動増幅器の出力端子76には非反転入力端子に入力された電圧V17が現れる。さらに、2つの抵抗素子72、73が直列に接続されて、抵抗素子72、73の接続点に基板電圧制御回路の端子75を設け、ここから出力される出力信号V75が図1に示したMOSトランジスタ11の基板端子23に供給されている。なお、このような差動増幅器71、抵抗素子72、73は減衰器を構成する。
図10に示した従来のGmアンプの場合、式(17)に示したように、入力電圧が増加すると、移動度の劣化によってMOSトランジスタ11に流れる電流値の増加が抑制される。一方、実施形態3のGmアンプのように、基板電圧制御回路がある場合、入力電圧増加に伴って基板電圧が増加するので、その分だけ閾値電圧が低下して、MOSトランジスタ11に流れる電流は増加する。
増加した電流は、移動度の劣化による電流抑制の分を補う効果を発揮する。このとき、図6に示した抵抗素子73の抵抗値R73が大きくなるほど基板電圧は高くなり、閾値電圧低下が大きくなるので、より電流抑制を大きく補うことになる。すなわち、抵抗素子73とTHDとの関係は、抵抗素子44の抵抗値とTHDの図3に示した関係と同様に、抵抗値をゼロから高くするにつれてTHDが低下していく。そして、THDは、ある抵抗値で最低値を示し、さらに抵抗値を高くすると逆に大きくなる。したがって、抵抗素子73の抵抗値として、THDが最低レベルになるような値を選択するとよい。なお、抵抗素子72の抵抗値R72によってもTHDを増減することができる。
すなわち、図6の抵抗素子72の抵抗値が高くなると、図1に示したMOSトランジスタ11に対する閾値低減効果は低くなり、また、逆に抵抗素子72の抵抗値が低くなると図に示したMOSトランジスタ11に対する閾値低減効果は高くなる。
(実施形態4)
次に、実施形態4のGmアンプを、図7を用いて説明する。図7に示したGmアンプは、P型のMOSトランジスタ27、28を追加したこと以外、図1に示したGmアンプと全て同じである。このため、図7において示した構成のうち、図1に示した構成と同様の構成については同様の符号を付して示す。
図7に示したMOSトランジスタ27、28に共通のゲート端子となる端子29から一定のバイアス電圧が供給されているP型のMOSトランジスタ27、28は、カスコードトランジスタとして動作する。すなわち、これらMOSトランジスタ27、28は電流源として動作するP型のMOSトランジスタ13、14に直列に接続されて、P型のMOSトランジスタ13、14の出力インピーダンスを高くしている。カスコードトランジスタはよく知られているように、チャネル長変調効果、すなわち出力電圧(端子19、20の電圧)の変動によって電流源の電流値が多少なりとも変動することをほぼ完全に抑える作用がある。このようにすることで、実施形態4では、出力端子から出力される出力電流の誤差を完全に抑えることができ、結果としてより精度の高いGmアンプを実現することができる。
また、図7に示した回路において、基板電圧制御回路21、22としては、図2、図4、図6に示した基板電圧制御回路のいずれを用いても構わない。また基板電圧制御回路の動作説明は実施形態1の場合と全く同じであるので、省略する。
ここで、MOSトランジスタ11、12のチャネル長変調効果による電流値の誤差について簡単に説明する。チャネル長変調効果がある場合のMOSトランジスタ11の電流・電圧特性は、Sahの式である式(8)を式(25)のように変形した近似式として表すことができる。
I11=K・(V17−Vth)2(1+λ1・Vds+λ2・Vds2) …式(25)
ここで、λ1、λ2はチャネル長変調効果の程度を表す定数である。通常MOSトランジスタ11の端子17に加わる入力電圧が高くなると、端子19から出力される出力電圧は下がるので、チャネル長変調効果により、移動度劣化の場合と同様に電流値が減少する。この電流値減少分は、移動度劣化を補った場合と同様に、基板電圧制御回路を用いることで、移動度劣化と合算して補正することができる。
3次高調波歪(実質的にTHDに相当)は、式(17)と式(25)とを組合せた式を計算することによって求めることができ、その3次高調波歪は両方の成分が混在しており、この混在した成分を基板電圧制御回路でまとめて除去することができる。実際に、図3に示したシミュレーション結果には、チャネル長変調効果も当然ながら混在しており、本発明の実施形態の回路によって移動度劣化とともにチャネル長変調効果による3次高調波成分(実質的にTHDに相当)も除去できることを示している。
また、図7に示した回路を差動増幅器でよく知られている折り返し構造にした場合でも、同様の効果を得ることができる。このような場合、MOSトランジスタ11、12に対してカスコードトランジスタを配置することで、チャネル長変調効果を低減させることもできる。
また実施形態2〜4のGmアンプにおいて、全てのNMOSトランジスタとPMOSトランジスタを正負の電源端子も含めて上下反転させながらそれぞれ置き換えても同じ効果を得ることができる。
(実施形態5)
次に、実施形態1から実施形態4に示したGmアンプを用いたGm−Cフィルタを説明する。図8は、実施形態1から実施形態4に示したGmアンプを用いたGm−Cフィルタを示した図である。図8に示したGm−Cフィルタのうち、81、82、83、84はGm値がそれぞれGm1〜Gm4であるGmアンプ、85、86は容量値がC1、C2である容量素子、89、90は差動信号である入力信号が入力される入力端子対を構成する端子、91、92は差動信号である低域通過フィルタ(LPF)出力信号が出力される出力端子対を構成する端子、93、94は帯域通過フィルタ(BPF)出力信号が出力される出力端子対を構成する端子である。
図8に示したGm−Cフィルタは、一般的に双2次型Gm−Cフィルタとして知られていて、出力端子対91、92におけるフィルタ周波数特性を表す伝達関数H(s)は、式(26)で表すことができる。
H(s)=(Gm1・Gm2)/(C1・C2)/
[s2+s(Gm4/C1)+[Gm2・Gm3/(C1・C2)]] …式(26)
このように、図8に示したGm−Cフィルタは、GmアンプのGm値Gm1〜Gm4、容量素子の容量値C1、C2によって任意の特性を得ることができる。ここで、Gmアンプとしては図1または図7に示したGmアンプを用いることができる。また、図1、図7に用いられる基板電圧制御回路としては、図2、図4、図6に示した基板電圧制御回路のいずれかを用いることができる。
図8に示したGm−Cフィルタでは、Gmアンプ81〜84として、例えば図1に示したGmアンプが用いられているので、周波数特性精度が高く、広い入力電圧範囲にわたって直線性が優れているという特徴を有する。
また、実施形態5では、Gm−Cフィルタとして図8に示した双2次型フィルタを用いた例を説明したが、実施形態5のGm−Cフィルタは双2次型フィルタの構成に限定されるものではない。すなわち、実施形態1〜実施形態4のGmアンプを用いた構成であれば、リープフロッグ型フィルタや状態変数型フィルタ等、様々なタイプのGm−Cフィルタを実現することができる。
本発明のGmアンプは、線形性能が優れているので高速でS/N特性の優れたGm−Cフィルタ設計に好適に適用することができる。
11、12、13、14、27、28、41、42、43、48、54 MOSトランジスタ
15 同相制御アンプ
21、22 基板電圧制御回路
23、24 基板端子
44、51、52、53、72、73 抵抗素子
49 抵抗値制御回路
55、71 差動増幅器

Claims (8)

  1. 入力信号がゲート端子から供給され、ソース端子が電源端子に接続される第1MOSトランジスタ及び第2MOSトランジスタからなる入力MOSトランジスタ対と、
    同相制御信号がゲート端子から供給される第3MOSトランジスタ及び第4MOSトランジスタからなる電流源MOSトランジスタ対と、
    出力信号を出力する出力端子対の平均電圧を一定にするため前記第3MOSトランジスタ及び前記第4MOSトランジスタのゲート端子に前記同相制御信号を出力する同相制御アンプと、
    前記入力信号を入力して、前記第1MOSトランジスタ及び前記第2MOSトランジスタに入力される入力信号の大小に応じて基板電圧を制御する第1基板制御信号及び第2基板制御信号を前記第1MOSトランジスタ及び前記第2MOSトランジスタの基板端子に供給する第1基板電圧制御回路及び第2基板電圧制御回路と、
    を含むことを特徴とするトランスコンダクタンスアンプ。
  2. 前記基板電圧制御回路は、
    前記第1MOSトランジスタに入力される入力信号の増加に伴って前記第1MOSトランジスタの基板端子に供給される電圧を増加させ、前記第2MOSトランジスタに入力される入力信号の増加に伴って前記第2MOSトランジスタの基板端子に供給される電圧を増加させることを特徴とする請求項1に記載のトランスコンダクタンスアンプ。
  3. 前記第1基板電圧制御回路及び前記第2基板電圧制御回路が、それぞれ抵抗素子と、前記第1MOSトランジスタ及び前記第2MOSトランジスタにそれぞれ流れる電流に比例した電流を前記抵抗素子に供給する電流源とからなり、前記電流を前記抵抗素子に供給することによって生成される電圧を前記第1基板制御信号及び前記第2基板制御信号として出力することを特徴とする請求項1または2に記載のトランスコンダクタンスアンプ。
  4. 前記抵抗素子が、集積回路上に形成された抵抗素子であることを特徴とする請求項3に記載のトランスコンダクタンスアンプ。
  5. 前記抵抗素子として、ゲート端子に抵抗値制御回路からの抵抗値制御信号を供給されるMOSトランジスタが用いられることを特徴とする請求項3に記載のトランスコンダクタンスアンプ。
  6. 前記基板電圧制御回路が、ボルテージフォロワ回路と2つの抵抗素子を含む減衰器からなり、出力される基板制御信号が入力信号に比例していることを特徴とする請求項1に記載のトランスコンダクタンスアンプ。
  7. 前記電流源MOSトランジスタ対と直列に接続されるカスコードMOSトランジスタ対をさらに含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに1項に記載のトランスコンダクタンスアンプ。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載のトランスコンダクタンスアンプと、容量素子と、を含むことを特徴とするGm−Cフィルタ。
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