JP5571207B1 - スタッダブルタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】ICE路面走行時に発生する氷粉のスパイクピンへの付着を抑制して高い操縦安定性能を確保することのできるスタッダブルタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤトレッドに設けられてタイヤ周方向に延長する周方向溝とこれらの周方向溝と交差する方向に延長するラグ溝とにより区画される陸部にスタッド孔9が形成されたスタッダブルタイヤにおいて、陸部表面のスタッド孔9の中心を中心とする互いに半径の異なる2つの円C1,C2で囲まれた領域Rの蹴り出し側に、両端部がともに陸部内で終端する第1及び第2の溝12,13を設けるとともに、領域Rの踏み込み側に、両端部がともに陸部内で終端する陸部内溝14aと陸部内溝14aとラグ溝とに連通する連通溝部14bとを備えた第3の陸部を設けた。
【選択図】図3

Description

本発明は、タイヤのトレッドにスパイクピンを埋設するためのスタッド孔が複数形成されたスタッダブルタイヤに関するものである。
従来、冬用タイヤとして、トレッドの陸部に金属から成るスパイクピンを打ち込んだスタッダブルタイヤが知られている。このようなスタッダブルタイヤを装着した車両がICE路面を走行すると、スパイクピンの先端が路面に喰い込み路面とタイヤとの間の摩擦力を増加するので、ICE路面での操縦安定性能を確保することができる。
また、前記冬用タイヤにおいて、耐ピン抜け性を向上させるため、スタッド孔の周りのタイヤ幅方向両側、もしくは、片側に、スタッド孔を囲むように、深さが3〜7.5mmのスリットを設けて、スパイクピンが周囲のゴムと一体になって動くようにすることで、スパイクピンに加わる外力を緩和する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2008−230259号公報
ところで、スタッダブルタイヤを装着した車両がICE路面を走行すると、スパイクピンにより掘削された氷粉がスパイクピン周りに付着するという現象が発生する。スパイクピン周りに氷粉が付着すると、スパイクピンの氷への貫入が阻害されるので、ICE路面での操縦安定性能が低下する虞があった。
前記特許文献1に記載されたスリットは、スリットが開閉することでスパイクピンに加わる外力を緩和するものであるので、耐ピン抜け性を向上させることはできるが、スパイクピンへの氷粉の付着を抑制することはできなかった。
また、スパイクピンへの氷粉の付着を抑制する有効な技術については、発明者らの知る限りでは提案されていなかった。
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、ICE路面走行時に発生する氷粉のスパイクピンへの付着を抑制して高い操縦安定性能を確保することのできるスタッダブルタイヤを提供することを目的とする。
本願発明は、タイヤトレッドに設けられてタイヤ周方向に延長する周方向溝と、前記周方向溝と交差する方向に延長するラグ溝と、前記周方向溝とラグ溝とにより区画される陸部と、前記陸部に形成されたスタッド孔とを有するスタッダブルタイヤであって、前記陸部の表面の前記スタッド孔の中心を中心とする互いに半径の異なる2つの円で囲まれた領域内の前記陸部の踏み込み側と蹴り出し側とにそれぞれ形成された、両端部がともに陸部内で終端する陸部内溝と、前記陸部内溝と前記ラグ溝とを連通する連通溝とを備え、前記陸部内溝は、前記半径の異なる2つの円で囲まれた領域内のみに形成され、前記連通孔は、前記陸部内溝が踏み込み側に形成された陸部内溝である場合には、前記陸部の踏み込み側に位置するラグ溝に連通し、前記陸部内溝が蹴り出し側に形成された陸部内溝である場合には、前記陸部の蹴り出し側に位置するラグ溝に連通することを特徴とする。
このように、路面に殆ど接地しないスパイクピン周りの領域の踏み込み側と蹴り出し側とに陸部内溝を設けて、ICE路面走行時に発生する氷粉を陸部内溝内に導くようにすれば、実質的な接地面積を減少させることなく、氷粉のスパイクピンへの付着を確実に抑制することができる。したがって、スパイクピンを氷へ確実に貫入させることができるので、ICE路面における操縦安定性能を確保することができる。
また、連通溝を設けることで、ABS制御におけるブレーキング時(ロック時)においても、氷粉を連通溝からラグ溝に効果的に排出できるので、ICE路面における制動性能を向上させることができる。
また、当該タイヤが方向性パターンのタイヤ(回転方向が指定されており、装着時には、タイヤの回転方向を車の走る向きに合わせて装着する必要があるタイヤ)である場合には、前記陸部内溝のうちの、踏み込み側に設けられた陸部内溝のみに前記連通溝を設け、当該タイヤが両方向の回転に使用できるパターンのタイヤ(回転方向が指定されていないタイヤ)であるには、前記蹴り出し側に設けられた陸部内溝と踏み込み側に設けられた陸部内溝との両方に、前記連通溝を設ければ、ICE路面における操縦安定性能と制動性能とをともに向上させることができる。
また、前記スタッド孔が設けられている陸部が、ブレーキング時の寄与が大きいショルダー陸部である場合には、前記陸部内溝の両端にそれぞれ前記連通溝を形成し、寄与が小さい前記ショルダー陸部のタイヤ幅方向内側に位置する陸部である場合には、前記陸部内溝の幅方向中央部に前記連通溝を形成するようにしたので、ブロックの剛性を確保しつつ氷粉を効果的にラグ溝に逃がすことができる。
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
本発明の実施の形態に係るスタッダブルタイヤのトレッドパターンの一例を示す図である。 スパイクピン周辺の接地圧の低い領域を示す図である。 ショルダーブロックに設けられた排氷用溝群の構成を示す図である。 第1〜第3の溝の形状を示す図である。 内側ブロックに設けられた排氷用溝群の構成を示す図である。 方向性タイヤでないタイヤに設けられた排氷用溝を示す図である。
以下、実施の形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また、実施の形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は本実施の形態に係るスタッダブルタイヤ1のトレッドパターンを示す図である。本例では、スタッダブルタイヤ1として方向性パターンのタイヤを用いており、同図の上下方向がタイヤ周方向、左右方向がタイヤ幅方向で、下側がタイヤ正転時における踏み込み側、上側が蹴り出し側である。
スタッダブルタイヤ1のトレッド2の表面には、タイヤ周方向に平行な方向延長する周方向溝3a〜3dと、周方向溝3a,3bに交差し左上から右下方向に円弧状に延長する左側ラグ溝4aと、周方向溝3c,3dに交差し右上から左下方向に円弧状に延長する右側ラグ溝4bとが形成されている。
タイヤ幅方向内側に位置する2本の周方向溝(以下、主溝という)3b,3cにより中央陸部5が区画される。中央陸部5の主溝3b側と主溝3c側とには、一端が主溝3b,3cに開口し他端が当該中央陸部内で終端する、主溝3b,3cと交差する方向に延長する片側開口溝5kがそれぞれ設けられている。
主溝3bとタイヤ幅方向外側に位置する周方向溝(以下、ショルダー溝)3aと左側ラグ溝4aとにより第1の内側ブロック6aが区画され、主溝3cとショルダー溝3dと右側ラグ溝4bとにより第2の内側ブロック6bが区画される。また、ショルダー溝3aと左側のラグ溝4aとにより左側のショルダーブロック7aが区画され、ショルダー溝3dと右側のラグ溝4bとにより右側のショルダーブロック7bが区画される。
本例では、左側のラグ溝4aと右側のラグ溝4d、左側のブロック6a,7aと右側のブロック6b,7bの動作(機能)はほぼ同じなので、以下、ラグ溝4a,4bをラグ溝4、内側ブロック6a,6bを内側ブロック6、ショルダーブロック7a,7bをショルダーブロック7と呼ぶ。
中央陸部5と内側ブロック6とショルダーブロック7の踏面側には、タイヤ周方向に交差する方向に延長する複数のサイプ8が形成されており、内側ブロック6とショルダーブロック7のサイプ8が形成されていない領域には図示しないスパイクピンを埋設するためのスタッド孔9が形成されている。
図2(a),(b)に示すように、スパイクピン10を装着したタイヤをICE路面Kで走行させると、スパイクピン10の周囲には、接地圧が低く殆どICE路面Kに接地していない環状の領域Rlowができる。
本例では、図3及び図4に示すように、スタッド孔9にスパイクピン10を装着したときに上記の環状の領域Rlowとなる領域、具体的には、スタッド孔9の中心を中心とする互いに半径の異なる2つの円C1,C2で囲まれた領域R内に、ICE路面走行時に発生した氷粉をタイヤ1の外側に排出するための複数の溝から成る排氷用溝群11A,11Bを設けることで、ICE路面走行時に発生する氷粉がスパイクピン10へ付着することを抑制するようにしている。排氷用溝群11Aはショルダーブロック7に設けられ、排氷用溝群11Bは内側ブロック6に設けられる。
なお、各円C1,C2の半径r1,r2は、内側ブロック6及びショルダーブロック7に形成されたスタッド孔9の径に依存する。例えば、スタッド孔9の胴部の半径が2mmの場合には、r1=4mm,r2=6mm程度とするのが適当である。
図3に示すように、排氷用溝群11Aは、ショルダーブロック7の領域R内に互いに離隔するように設けられた第1〜第3の溝12〜14を備える。
第1及び第2の溝12,13はともに両端部がショルダーブロック7内で終端する平面視円弧状の溝(陸部内溝)で、領域Rの蹴り出し側に設けられる。
第3の溝14は、両端部がショルダーブロック7内で終端する平面視円弧状の陸部内溝部14aと、陸部内溝部14aの両端部から当該ショルダーブロック7の踏み込み側に位置するラグ溝4に連通する2本の連通溝部14bとを備える。
本例では、連通溝部14bを陸部内溝部14aを構成する円弧の中心と円弧の両端部とを通る直線上に配置した。
第1及び第2の溝12,13は、第3の溝14の中心部を通り、前記ラグ溝4に直交する直線に対して線対称となる位置に形成される。
このとき、内側の円C1の半径r1を、第1及び第2の溝12,13及び陸部内溝部14aの内縁部とスタッド孔9の外縁部との差が0.5mm〜1.5mm程度となるように設定することが好ましい。これは、第1及び第2の溝12,13及び陸部内溝部14aとスタッド孔9の間が狭すぎると、氷粉がスパイクピン周りに滞留し易いからである。
逆に、第1及び第2の溝12,13及び陸部内溝部14aとスタッド孔9の間を広くとろうとすると、第1及び第2の溝12,13及び陸部内溝部14aの溝幅を狭くしないと、第1及び第2の溝12,13及び陸部内溝部14aが環状の領域Rlowの内側に入らないからである。
なお、外側の円C2の半径r2は、スパイクピン10を装着したときにできる環状の領域Rlowの外側の円の径以下であればよい。但し、第1及び第2の溝12,13及び陸部内溝部14aの溝幅を十分に確保するためには、円C2の半径r2は大きい方が好ましい。
また、氷粉の排出を容易にするために、第1の溝12と第2の溝13との間に溝を追加したり、第1の溝12と第2の溝13とを連通させて1個の円弧状の溝としてもよいが、ショルダーブロック7の剛性を確保するためには、本例のように、第1の溝12と第2の溝13との間に溝を設けないようにすることが好ましい。
また、第3の溝14の陸部内溝部14aを互いに離隔した2つの円弧状の溝部に分割すればショルダーブロック7の剛性を高めることができるが、ブレーキング時(ロック時)における氷粉の排出を効果的に行うためには、本例のように、陸部内溝部14aを1個の円弧状の溝部とすることが好ましい。
また、図4(a)〜(c)に示すように、第1〜第3の溝12〜14の溝幅wを1.0mm以上、溝幅wの上限値である円C1の半径r1と円C2の半径r2との差(r2−r1)以下とし、溝深さhを0.2mm〜1.5mmの範囲とするとともに、溝角度θを0°〜45°の範囲とすることが好ましい。なお、溝角度θは、図4(b),(c)に示すように、タイヤ踏面に垂直な直線と各溝12〜14の溝壁とのなす角度である。
溝幅wが1.0mm未満である場合には、スパイクピンにより掘削された氷粉を排出するための通路が狭くなるため、氷粉を十分にタイヤ外へ排出できない。したがって、溝幅wを1.0mm以上とすることが好ましい。また、溝幅wが上限値を超えると、第1及び第2の溝12,13と陸部内溝部14aの存在する領域が領域Rの外側まで広がってしまうので、ショルダーブロック7の剛性が低下することは前述した通りである。
なお、領域Rの幅がr2−r1≧3mmの場合には、溝幅wの上限値を3mmとすることが好ましい。溝幅wが3mmを超えるとスパイクピン周りの剛性が低下するため、環状の領域Rlowが狭くなり、その結果、第1及び第2の溝12,13と陸部内溝部14aの存在する領域が領域Rの外側まで広がってしまう虞れがあるからである。
溝深さhが0.2mm未満である場合は、溝幅が狭すぎて氷粉の移動しにくくなるため、氷粉を十分にタイヤ外へ排出できなくなる。また、溝深さhが1.5mmを超えると、氷粉が溝底に溜まり易くなり、その結果、氷粉の排出効率が低下するので、溝深さをh=0.2mm〜1.5mmの範囲とすることが好ましい。
また、溝角度θを45°以下とすることが好ましいとした理由は、溝角度θが45°を超えると溝深さが浅くなるとともに溝容積がθ=0°の場合(壁面が垂直な場合)の半分以下になるので、氷粉を十分にタイヤ外へ排出できないからである。
図5に示すように、排氷用溝群11Bは、内側ブロック6の領域R内に互いに離隔するように設けられた第4〜第6の溝15〜17を備える。
第4及び第5の溝15,16は、第1及び第2の溝12,13と同様の、両端部が内側ブロック6内で終端する平面視円弧状の溝で、領域Rの蹴り出し側に設けられる。
第6の溝17は、両端部がショルダーブロック7内で終端する平面視円弧状の陸部内溝部17aと、陸部内溝部17aの中央部から当該内側ブロック6の踏み込み側に位置するラグ溝4に連通する1本の連通溝部17bとを備える。本例では、連通溝部17bを陸部内溝部14aを構成する円弧の中心と円弧の中心とを通る直線上に配置した。
第4及び第5の溝15,16は、第6の溝17の中心部を通り、前記ラグ溝4に直交する直線に対して線対称となる位置に形成される。
内側ブロック6に設けられた第4〜第6の溝15〜17の溝幅wの範囲、溝深さhの範囲、及び、溝角度θの範囲は、ショルダーブロック7に設けられた第1〜第3の溝12〜14の溝幅wの範囲、溝深さhの範囲、及び、溝角度θの範囲と同じである。
但し、内側ブロック6に設けられた第4〜第6の溝15〜17の溝幅w、溝深さh、及び、溝角度θと、ショルダーブロック7に設けられた第1〜第3の溝12〜14の溝幅w、溝深さh、及び、溝角度θとをそれぞれ異なる値としてもよい。
次に、ショルダーブロック7に設けられた排氷用溝群11Aの作用について説明する。
スタッド孔9にスパイクピンを装着したタイヤをICE路面Kで走行させると、ICE路面Kの表面がスパイクピンにより掘削され氷粉が発生する。排氷用溝群11Aが形成されていない場合には、発生した氷粉は、図2に示したスパイクピン周りの領域Rlowに滞留し、その結果、スパイクピン周りに氷粉が付着する。
本例では、スパイクピンの装着後に領域Rlowとなるショルダーブロック7の領域Rの踏み込み側と蹴り出し側とに第1〜第3の溝12〜14が設けられているので、スパイクピンにより掘削された氷粉は、スパイクピンから離れて第1及び第2の溝12,13と第3の溝14の陸部内溝部14a内に集められる。したがって、氷粉がスパイクピン周りに滞留してスパイクピンに氷粉が付着するのを防ぐことができるので、スタッダブルタイヤ1のICE路面性能を向上させることができる。
また、第1及び第2の溝12,13と第3の溝14の陸部内溝部14aは、路面に殆ど接地しない箇所に設けられているので、ショルダーブロック7全体の接地面積を減少させることなく氷粉のスパイクピンへの付着を確実に抑制することができる。
なお、第1及び第2の溝12,13に集められた氷粉は、スタッダブルタイヤ1の転動により第1及び第2の溝12,13内から直接タイヤ外部へ排出される。陸部内溝部14aに集められた氷粉は、直接もしくは連通溝部14bを通ってタイヤ外部へ排出される。
一方、タイヤのブレーキング時(ロック時)には、氷粉の発生は踏み込み側に集中するが、発生した氷粉は、踏み込み側に設けられた第3の溝14の陸部内溝部14a内に集められた後、連通溝部14bを介してラグ溝4に誘導され、ラグ溝4とショルダー溝3a(または、ショルダー溝3d)からタイヤ外部に放出される。
このように、ショルダーブロック7の踏み込み側にラグ溝4に連通する連通溝部14bを備えた第3の溝14を設ければ、ブレーキング時(ロック時)におけるスパイクピンへの氷粉の付着を効果的に抑制できるので、タイヤの制動性能を高めることができる。
内側ブロック6に設けられた排氷用溝群11Bの第4〜第6の溝15〜17の作用は、排氷用溝群11Aの第1〜第3の溝12〜14と同様であるので、説明を省略する。
なお、前記実施の形態では、スタッダブルタイヤ1が方向性パターンのタイヤである場合について説明したが、スタッダブルタイヤ1が両方向の回転に使用できるパターンのタイヤである場合には、蹴り出し側と踏み込み側との区別がないので、図6(a),(b)に示すように、スタッド孔9の周りの領域Rの踏み込み側と蹴り出し側とにそれぞれ円弧状の陸部内溝部18aとこの陸部内溝部18aとラグ溝4とに連通する連通溝部18bを備えた排氷用溝18を設けるようにすればよい。
また、連通溝部18bについては、方向性パターンのタイヤの場合と同様に、ショルダーブロック7に設けられる排氷用溝18に陸部内溝部18aの両端部とラグ溝4とに連通する2本の連通溝部18bを形成し、内側ブロック6に設けられる陸部内溝18には、陸部内溝部18aの中央部とラグ溝4とに連通する1本の連通溝18bを設けるようにすれば、氷粉を効果的にラグ溝4に逃がすことができるとともに、ブレーキング時の性能を向上させることができる。
なお、前記実施の形態では、中央陸部5と内側ブロック6とショルダーブロック7とを備えたトレッドパターンを有するスタッダブルタイヤ1について説明したが、これに限るものではなく、本願発明は、中央陸部5がブロック列であるトレッドパターンなどの他のトレッドパターンを有するスタッダブルタイヤにも適用可能である。
また、前記例では、第1〜第6の溝12〜17の溝深さを一定としたが、溝深さを、スタッド孔9側からラグ溝4側に行くに従って浅くしてもよい。これにより、氷粉をタイヤ外部へ更に容易に放出することができる。
また、前記例では、第1及び第2の溝12,13(または、第4及び第5の溝15,16)を、第3の溝14(または、第6の溝17)の中心部を通り、ラグ溝4に直交する直線に対して線対称となる位置に形成したが、第3の溝14(または、第6の溝17)の延長方向をタイヤ周方向とし、第1及び第2の溝12,13(または、第4及び第5の溝15,16)をタイヤ周方向に平行な直線に対して線対称となる位置に形成してもよい。
また、第3の溝14(または、第6の溝17)の延長方向のみをタイヤ周方向としてもよい。第3の溝14(または、第6の溝17)の延長方向のみをタイヤ周方向とした場合には溝長さが長くなるので、ブロック剛性は若干低下するが、氷粉を更に効果的にラグ溝4に逃がすことができる。
[実施例]
本願発明の、スタッド孔周りに、図1に示すような、排氷用溝群を設けたスタッダブルタイヤ(本発明)と、排氷用溝群が設けられていないスタッダブルタイヤ(従来例)とを準備し、スタッド孔にスパイクピンを打ち込んだタイヤを試験車両に搭載して制動性能を調べた結果を下記の表1に示す。
試験に使用したスタッダブルタイヤのタイヤサイズは205/55R16で、タイヤ1本当たりのスタッド孔の数はそれぞれ96個である。
制動性能は、ICE路面において車速20km/hで定速走行している試験車両を急制動して停止するまでの時間(制動時間)を測定し、制動時間の逆数を指数化して評価した。表1の制動性能指数(INDEX)は、従来例の制動時間を100とした指数で表したもので、数値が大きいほど制動時間が短く、制動性能が良い。
また、制動試験を5回行ってそのときの制動時間のバラつき(標準偏差σ)についても調べた。σの値が小さいほど制動時間のバラつきは小さい。
Figure 0005571207
表1に示すように、本発明のタイヤでは、制動性能が従来例よりも優れており、かつ、制動時間のバラつきも小さいことから、スタッド孔周りに、図1に示すような、排氷用溝群を設けることで、走行時に発生する氷粉のスパイクピンへの付着を効果的に抑制できることが確認された。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
このように、本発明によれば、ICE路面走行時に発生する氷粉のスパイクピンへの付着を効果的に抑制できるので、操縦安定性能に優れたスタッダブルタイヤを提供することができる。
1 スタッダブルタイヤ、2 トレッド、3a〜3d 周方向溝、
4,4a,4b ラグ溝、5 中央陸部、6,6a,6b 内側ブロック、
7,7a,7b ショルダーブロック、8 サイプ、9 スタッド孔、
10 スパイクピン、11A,11B 排氷用溝群、12〜17 第1〜第6の溝、
14a,17a 陸部内溝部、14b,17b 連通溝部、K ICE路面。

Claims (4)

  1. タイヤトレッドに設けられてタイヤ周方向に延長する周方向溝と、前記周方向溝と交差する方向に延長するラグ溝と、前記周方向溝とラグ溝とにより区画される陸部と、前記陸部に形成されたスタッド孔とを有するスタッダブルタイヤであって、
    前記陸部の表面の前記スタッド孔の中心を中心とする互いに半径の異なる2つの円で囲まれた領域内の前記陸部の踏み込み側と蹴り出し側とにそれぞれ形成された、両端部がともに陸部内で終端する陸部内溝と、
    前記陸部内溝と前記ラグ溝とを連通する連通溝とを備え
    前記陸部内溝は、
    前記半径の異なる2つの円で囲まれた領域内のみに形成され、前記連通孔は、前記陸部内溝が踏み込み側に形成された陸部内溝である場合には、前記陸部の踏み込み側に位置するラグ溝に連通し、
    前記陸部内溝が蹴り出し側に形成された陸部内溝である場合には、前記陸部の蹴り出し側に位置するラグ溝に連通することを特徴とするスタッダブルタイヤ。
  2. 当該タイヤが方向性パターンのタイヤであって、前記陸部内溝のうちの、踏み込み側に設けられた陸部内溝のみに前記連通溝が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスタッダブルタイヤ。
  3. 当該タイヤが両方向の回転に使用できるパターンのタイヤであって、前記蹴り出し側に設けられた陸部内溝と踏み込み側に設けられた陸部内溝との両方に、前記連通溝が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスタッダブルタイヤ。
  4. 前記スタッド孔が設けられている陸部が当該タイヤのショルダー部に設けられたショルダー陸部である場合には、前記連通溝を前記陸部内溝の両端側にそれぞれ形成し、
    前記スタッド孔が設けられている陸部が前記ショルダー陸部のタイヤ幅方向内側に位置する陸部である場合には、前記連通溝を前記陸部内溝の幅方向中央部に形成することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のスタッダブルタイヤ。
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