JP6748413B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
また、特許文献2では、ショルダ域において、ラグ溝の底にサイプを設けている。溝底に配置したサイプは、長期間の使用によっても消え難いので、サイプによる雪上性能を長期間に渡って継続することが可能となる。
構成(A)
タイヤを車両に装着した状態で最も内側に位置する1組(2本)の周方向溝間に位置するリブ山は、横方向溝でブロック区画されることなく、表面にサイプまたは溝底にサイプを備えたサイプ付き浅溝が複数個、タイヤ周方向に間隔をあけて形成されている。個々の前記サイプ付き浅溝は前記1組の周方向溝に接続するように設けられており、前記タイヤ周方向に隣接する1組の前記サイプ付き浅溝間には波状サイプ又は直線状サイプが形成されている。
ここで、「横方向溝」は、「周方向溝」と交わる方向に延在し、その深さが「周方向溝」の深さのほぼ0.85〜1.0倍のものを意味する。
構成(B)
他の周方向溝間領域の少なくとも1つにおいて、当該周方向溝と横方向溝とで周囲から分断された複数のブロックが周方向に並んでいる。そして、当該複数のブロックの全てが、溝底にサイプを備えた1本または複数本のサイプ付き浅溝によって表面が区分けされてなる複合ブロックである。
(1)「複合ブロック」は、「周方向溝」および「横方向溝」によって周囲から分断されている。「横方向溝」は、「周方向溝」と交わる方向に延在し、その深さが「周方向溝」の深さのほぼ0.85〜1.0倍のものを意味する。
(2)「複合ブロック」は、その表面に1本または複数本の「サイプ付き浅溝」を備えている。当該「サイプ付き浅溝」によって、「複合ブロック」は、その表面が複数のサブ領域に区分けされている。
ここで「浅溝」とは、その深さが「周方向溝」の深さのほぼ0.4〜0.6倍のものを意味する。「サイプ」とは、タイヤの分野で一般的に使用される用語であって、「周方向溝」、「横方向溝」、「浅溝」よりも細いスリット状の切込みを言い、一般的には、幅が0.8〜1.5mm程度、深さが2mm以下程度である。
(A)
まず、2つの周方向溝で挟まれる領域のうち、タイヤを車両に装着した状態で最も内側に位置する1組(2本)の周方向溝間の領域(この領域では、キャンバー角を考慮したときにタイヤ周方向の接地長が最も長くなる)に、横方向溝でブロック区画されることなく、表面に溝底にサイプを備えたサイプ付き浅溝を備えたリブ山が配置されている。
このようなリブ山は、全体の剛性が高く、しかも表面に設けたサイプ付き浅溝によって、グリップ力を高めることができる。つまり、接地長の長い領域(IN-ME)領域に、剛性およびグリップ力の高いリブ山を設けることで、ドライ路面における高い運動性および制動性を得ることができる。
(B)
さらに、上記「複合ブロック」の特性を利用して、ドライ性能の低下を防止しつつ、スノー性能を高めることができる。その原理は、実施形態においても説明するが、簡単に言うと次の通りである。
すなわち、「周方向溝」と「横方向溝」で分断された単純な「ブロック」だけでは、タイヤのドライ性能が低下する。そこで、一部の「横方向溝」に代えて「浅溝」を入れることでドライ性能を上げる。ただし、「横方向溝」を「浅溝」に代えた分だけスノー性能が落ちる。この「スノー性能落ち」を緩和するため、「浅溝」の底に「サイプ」を追加している。これによって、スノー性能とドライ性能を高い次元で両立することができる。
当該構成を採用した場合には、複合ブロックの数が増える分だけ、スノー性能およびドライ性能を高めることができる。
なお、図1中のトレッドパターンは、後述する実施例1のパターンである(図2)。
タイヤの全周に、周方向に延びるように構成された溝を言う。隣接する2つの周方向溝の間には、「リブ山」あるいは「リブ山を横方向溝で分断して構成される複数のブロック」が存在する。
なお、図2において、周方向溝A4は、断続的に存在する複数の傾斜した短い溝から構成されている。そのような構成であっても、全体として1本の溝として認識でき、かつ周方向に延在しているものは、本発明における「周方向溝」に該当する。
一般的には、周方向溝は、トレッド面に存在するすべての溝の中で1番深いものであるが、本発明において、必ずしもその必要はない。
タイヤの幅方向に延びていて、周方向溝と「ほぼ同等の深さ」あるいは、やや浅い溝を言う。
本発明では、「周方向溝」および「横方向溝」で囲まれる島状の部分を「ブロック」と呼ぶ。その中でも、「サイプ付き浅溝」が表面に形成されたブロックを「複合ブロック」と呼ぶ(詳しくは後述する)。「周方向溝」および「横方向溝」で周囲から分断された「ブロック」は独立性が高く、隣接する1の「ブロック」と他の「ブロック」はトレッド面上で独立した挙動を示す。
D1の値をこのように設定することで、十分なスノー性能(すなわち、雪道における加速、制動、旋回等の運動性能)が得られる。D1がこれよりも浅い場合には、雪柱せん断力が低下してスノー性能が低下する。
「横方向溝」よりも浅い溝を言う。
「浅溝」は「ブロック」を分断する程の深さを有しておらず、したがって、浅溝を形成しても、その両側の部位の一体性は、殆ど損なわれない。
D2がこれよりも浅いと、雪柱せん断力が低下してスノー性能が低下する。反対に、これよりも深いと、ブロックの一体性(=剛性)が低下してドライ性能(すなわち、ドライ路面における加速、制動、旋回等の運動性能)が低下する。
溝底に「サイプ」が形成された「浅溝」を言う。
「サイプ付き浅溝」も、「浅溝」と同様に、「ブロック」を分断するものではなく、その両側の部位の一体性は、殆ど損なわれない。「サイプ付き浅溝」全体の深さをD3とすると、次の関係式が成立することが好ましい。 D3=D0×(0.6〜1.0)
なお、「サイプ」とは、タイヤの分野において一般的に使用される用語であって、「周方向溝」、「横方向溝」、「浅溝」よりも細いスリット状の切込みを言う。「サイプ」の寸法は、一般的には、幅(W3)0.8〜1.5mmで、深さ2mm以下程度である。
図2は、実施例1に係るタイヤのトレッドパターンを示している。図示したトレッドパターンは、タイヤ周方向に沿って一部分のみを切り出したものであり、実際には、図中上下にさらに連続するパターンとなる。図2に示したように、パターンの中央部が実際に地面と接触する接地部(トレッド部)であり、その左右両側がショルダ部となる。
IN-SH : (インナーショルダ、最も内側)
IN-ME : (インナーメディエイト)
CE : (センター、中央)
OUT-ME : (アウターメディエイト)
OUT-SH : (アウターショルダ、最も外側)
実施例1は、次の(イ)、(ロ)の特徴を有する。
(イ)
周方向溝「A1」と「A2」に挟まれる領域(IN-ME。すなわち、タイヤを車両に装着した状態で最も内側に位置する1組(2本)の周方向溝間の領域)において、リブ山100は、横方向溝でブロック区画されることなく、その表面に「波状サイプ」と「溝底にサイプを備えたサイプ付き浅溝」が形成されている。
(ロ)
周方向溝「A3」と「A4」に挟まれる領域(OUT-ME。すなわち、タイヤを車両に装着した状態で、最も外側に位置する1組(2本)の周方向溝間の領域)において、横方向溝「B」で分断された複数のブロック10が周方向に並んでおり、これらのブロック10の全てが以下に説明する「複合ブロック」として構成している。
図2中に、複合ブロック10を拡大して示している。本発明において「複合ブロック」とは、次のものを意味する。
(1)「複合ブロック」は、「周方向溝」および「横方向溝」によって周囲から分断されている。「横方向溝」は、「周方向溝」と交わる方向に延在し、その深さが「周方向溝」の深さのほぼ0.85〜1.0倍のものを意味する。
(2)「複合ブロック」は、その表面に1本または複数本の「サイプ付き浅溝」を備えている。当該「サイプ付き浅溝」によって、「複合ブロック」は、その表面が複数のサブ領域に区分けされている。
ここで「浅溝」とは、その深さが「周方向溝」の深さのほぼ0.4〜0.6倍のものを意味する。「サイプ」とは、タイヤの分野で一般的に使用される用語であって、「周方向溝」、「横方向溝」、「浅溝」よりも細いスリット状の切込みを言い、一般的には、幅が0.8〜1.5mm程度、深さが2mm以下程度である。
実施例1では、周方向溝「A3」と「A4」に挟まれる領域に存在するブロックは、全てが複合ブロック10である。
(ア)
「ブロック」は周方向溝および横方向溝で周囲から分断された島状の部位を言うが、仮に、単純なブロックだけが複数存在している場合を考えると、各ブロックの独立性が高かく、したがって、トレッド面の剛性は低下する。その結果、ドライ性能(すなわち、ドライ路面における加速、制動、旋回等の運動性能)も低下する。
(イ)
上のようなドライ性能の低下を緩和するために、一部の「横方向溝」を「浅溝」に代えることで、トレッド面の剛性を高めることができる。しかし、一部の「横方向溝」が「浅溝」に代わった分だけ、雪道を走行する場合の雪柱せん断力が低下し、したがってスノー性能(すなわち、雪道における加速、制動、旋回等の運動性能)が低下する。
(ウ)
そこで、本発明では、「ブロック」に「浅溝」を設け、さらに、「浅溝」の溝底に「サイプ」を設けている。すなわち、「ブロック」に「サイプ付き浅溝」を設けている(複合ブロック)。「浅溝」の溝底に「サイプ」が存在することで、サイプが存在しない浅溝の場合に比べて、当該浅溝が大きく開くことが可能となり、雪柱せん断力を高めることができる。すなわち、スノー性能を高めることができる。
「IN-SH」列および「OUT-SH」列では、各ブロックは、「横方向溝」で単純に分断されていて、表面に波状サイプが形成されている。なお、「CE」列では、「IN-ME」列と同様に、ブロック分けされていないリブ山が連続的に形成されていて、その表面に「波状サイプ」および「サイプ付き浅溝」が形成されている。
すなわち、一般的に、IN−MEでは、車両にタイヤを装着する際のキャンバー角に起因して、接地長がout側よりも長くなる傾向にある。接地長が長くなるIN−MEでは、剛性の高さを最優先するのが良い。そのため、タイヤ全周に渡って連続的なリブを設ける。あるいは、そのようなリブに対して、「浅溝」または「サイプ付き浅溝」を設けることで(=深い「横方向溝」は設けないことで)、剛性の高さを確保する。
その結果、第2の特徴として、剛性が若干低いがその分スノー性能を高めることのできる「複合ブロック」は、OUT−ME(またはCE)に設けている。OUT−ME(またはCE)列において、そこに属するブロックの全てが「複合ブロック」とされる。
すなわち、ウエット路面でのハイドロプレーニングを防止するには、トレッド面からタイヤ側方(外側)に効率良く水を排出することが必要である。そのため、IN-SHおよびOUT-SHでは、「複合ブロック」を配置するよりも、多くの「横方向溝」を設けて、排水効率を高めることが好ましい。
図3は、実施例2に係るタイヤのトレッドパターンを示している。実施例2は、実施例1に対して、「CE」列および「OUT-ME」列の構成が入れ替わっている点のみが異なっている。
すなわち、実施例2では、周方向溝「A2」と「A3」に挟まれた「CE」列では、そこに属する全てのブロックが複合ブロック20とされている。そして、周方向溝「A3」と「A4」に挟まれた「OUT-ME」列では、「横方向溝」で分断されることのないリブ山200が連続的に延在している。リブ山200は、実施例1におけるリブ山100と同様に、横方向溝でブロック区画されることなく、その表面に「波状サイプ」と「溝底にサイプを備えたサイプ付き浅溝」が形成されている。
図4は、実施例3に係るタイヤのトレッドパターンを示している。実施例3は、実施例1、2に対して、「CE」列および「OUT-ME」列の両方において、そこに属するブロックの全てが上記「複合ブロック」である点だけが異なっている。
実施例1〜3では、周方向溝が4本存在しているが、本発明においては、周方向溝は少なくとも3本存在すればよい。周方向溝が3本の場合、IN-SHとOUT-SHの間に2列のブロックまたはリブが存在するが、その内、タイヤを車両に装着した状態で内側に位置する1組(2本)の周方向溝間に位置するリブ山は、横方向溝でブロック区画されることなく、表面にサイプまたは溝底にサイプを備えたサイプ付き浅溝を形成する。そして、外側の周方向溝間では、そこに属するブロックの全てを上記「複合ブロック」とする。
周方向溝が5本以上の場合は、タイヤを車両に装着した状態で最も内側に位置する1組(2本)の周方向溝間に位置するリブ山を上のように構成し、他の少なくとも1組の周方向溝間領域において、そこに属するブロックの全てを「複合ブロック」とする。
比較例1は、周方向溝が4本存在するという点では、実施例1〜3と共通するが、以下に説明するような相違が存在する。
4本の周方向溝の全てに関して、隣接する周方向溝間の領域に連続的なリブ山が存在しない。実施例1〜3では、少なくとも「IN-ME」領域に「リブ山100」が存在していた。「リブ山100」は、横方向溝でブロック区画されることなく、表面にサイプまたは溝底にサイプを備えたサイプ付き浅溝が形成されたものであるが、そのような「リブ山100」を接地長の長い「IN-ME」領域に配置することで、ドライ性能およびドライ制動性能を高めていた。
本発明に係る実施例1〜3のタイヤと、その範疇外である比較例1のタイヤを車両に装着して、以下に説明する比較試験を行った。各タイヤのタイヤサイズおよび使用車両は、下の通りである。
タイヤサイズ:225/50 R 17
使用車両:アウディA4 (2000cc、FFセダン)
<スノー性試験>
車両に各タイヤを装着して、スノー路面を、加速・制動・旋回・レーンチェンジをする走行を実施した。そして、ドライバーによる官能試験により、操縦安定性能を評価した。
比較例1の結果を100とする指数で評価し、指数が大きいほど、スノー操縦安定性能が優れていることを示す。
<ドライ性試験>
車両に各タイヤを装着して、ドライ路面を、加速・制動・旋回・レーンチェンジをする走行を実施した。そして、ドライバーによる官能試験により、操縦安定性能を評価した。
比較例1の結果を100とする指数で評価し、指数が大きいほど、ドライ操縦安定性能が優れていることを示す。
<ドライ制動試験>
車両に各タイヤを装着して、ドライ路面を100km/hの速度状態からABS制動を開始し、そこから停止するまでの制動距離を測定した。
比較例1の結果を100とする指数で評価し、指数が大きいほど、ドライ制動性能が優れていることを示す。
つまり、接地長の長い「IN-ME」領域に、剛性およびグリップ力の高い「リブ山100」を設けることで、ドライ路面における高い運動性および制動性を得ている。
反対に、比較例1では、「IN-ME」領域において、横方向溝で分断された独立性の高いブロックが並んでいるが故に、実施例1〜3に比べて、ドライ性能およびドライ制動性能が劣ると考えられる。
「複合ブロック」は、前述の通り、スノー性能とドライ性能を高い次元で両立させる効果があり、したがって、「複合ブロック」が比較的少ない実施例1、2においても、その分だけ「複合ブロック」に起因するドライ性能向上の効果は劣ると考えられる。
しかしながら、実施例1、2では、「リブ山100、200」が2列存在しており、これによってドライ性能が高められる結果、トータルのドライ性能は、比較例1よりも優れたものとなったと考えられる。
B 横方向溝
10、20 複合ブロック
100、200 リブ山
Claims (4)
- 車両が前進するときのタイヤ回転方向が指定されていて、トレッド面にタイヤ周方向に延びる少なくとも3本の周方向溝を備えた空気入りタイヤであって、
(A)
タイヤを車両に装着した状態で最も内側に位置する1組(2本)の周方向溝間に位置するリブ山は、横方向溝でブロック区画されることなく、表面に溝底にサイプを備えたサイプ付き浅溝が複数個、タイヤ周方向に間隔をあけて形成されており、個々の前記サイプ付き浅溝は前記1組の周方向溝に接続するように設けられており、前記タイヤ周方向に隣接する1組の前記サイプ付き浅溝間には波状サイプ又は直線状サイプが形成されており、
(B)
他の周方向溝間領域の少なくとも1つにおいて、当該周方向溝と横方向溝とで周囲から分断された複数のブロックが周方向に並んでおり、
当該複数のブロックの全てが、溝底にサイプを備えた1本または複数本のサイプ付き浅溝によって表面が区分けされてなる複合ブロックである、空気入りタイヤ。 - 上記他の周方向溝間領域の全てにおいて、当該周方向溝と横方向溝とで周囲から分断された複数のブロックが周方向に並んでおり、
当該複数のブロックの全てが、溝底にサイプを備えた1本または複数本のサイプ付き浅溝によって表面が区分けされてなる複合ブロックである、請求項1記載の空気入りタイヤ。 - 上記横方向溝の深さは、周方向溝の深さの0.85〜1.0倍であり、
上記浅溝の深さは、周方向溝の深さの0.4〜0.6倍であり、
上記サイプの深さは、2mm以下である、請求項1または2記載の空気入りタイヤ。 - 上記横方向溝の幅寸法は、2.5〜8mmであり、
上記浅溝の幅寸法は、横方向溝の幅寸法以下であり、
上記サイプの幅寸法は、0.8〜1.5mmである、請求項1または2記載の空気入りタイヤ。
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