JP5569519B2 - 低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末及びその製造方法 - Google Patents
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Description
工業的な重合方法としては、特許文献4の方法のように何れの方法で行うか不明確なものもあるが、懸濁重合と乳化重合に大別される。
乳化重合により得られる低分子量PTFE粉末粒子の特徴としては、懸濁重合により得られるものより、比表面積が7〜20m2/g(稀に、5〜20m2/g)と大きく、粒子が柔らかいため、例えば、塗膜表面の質感を向上させる等、表面を改質する効果が高い。また、吸油量も多くなり、マトリックス材料に安定した分散体が得られる。さらに、乳化重合により得られる低分子量PTFE粉末粒子は、上述した凝析工程の条件により、粒子径の調整が可能であるという点で好ましい。
このことより、これらの含フッ素界面活性剤を添加せずに重合を行うPTFEの製造方法が求められていた。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の製造方法により得られる低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末は、乳化重合、懸濁重合のそれぞれの利点を併せ持ち、塗膜表面の質感、滑り性を向上させることができるとともに、分散性、粘度を改善することができる。
すなわち、本発明の製造方法は、重合開始剤が水溶性過酸化物である、及び/又は、上記乳化重合工程が界面活性剤の存在下で重合を行う工程である、ことが好ましい。
反応容器内に添加される、TFE、連鎖移動剤、重合開始剤及び水性媒体は、少なくとも乳化重合工程の前に反応容器内に添加されていればよく、その添加する順番は特に限定されないが、通常、重合開始剤を添加することで、乳化重合工程は開始される。
上記亜硫酸塩としては特に限定されず、例えば、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸カリウム等が挙げられる。
上記水溶性有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ジコハク酸パーオキサイド〔DSP〕、ジグルタル酸パーオキサイド等が挙げられる。
上記水溶性過酸化物を重合開始剤に用いた場合、開始剤由来のポリマー末端基は、親水性の末端官能基、例えば、カルボキシル基、スルホン酸、あるいは水酸基を有するものとなる。APS、KPS、DSPの場合、末端基はカルボキシル基となる。
上記「過硫酸塩若しくは亜硫酸塩及び/又は有機過酸化物と、レドックス触媒」は、過硫酸塩とレドックス触媒、亜硫酸塩とレドックス触媒、有機過酸化物とレドックス触媒、過硫酸塩と有機過酸化物とレドックス触媒、亜硫酸塩と有機過酸化物とレドックス触媒の5通りのうち何れの組み合わせであってもよい。
上記過硫酸塩、亜硫酸塩及び有機過酸化物としては上述したものを用いることができる。
上記レドックス触媒としては特に限定されず、例えば、金属カルボニル−四塩化炭素混合物、過酸化物−鉄(II)化合物の混合物等が挙げられる。
また、上記重合開始剤としては、少なくとも1種が水溶性であればよい。
上記重合開始剤は、重合開始時に一括して反応容器中に存在していてもよいし、重合中に複数回に分割して添加してもよいし、また、重合中に連続的に添加してもよい。
上記「水性分散液の状態で存在する」とは、上記乳化重合工程中に生成した低分子量PTFEが凝固せず、乳化粒子の状態で存在することを意味する。すなわち、上記低分子量PTFEの90質量%以上が乳化粒子の状態で存在するものであればよい。より好ましくは95質量%以上であり、更に好ましくは98質量%以上である。
凝固した低分子量PTFEの固形分の量は、乳化重合工程中に生成した低分子量PTFEの10質量%未満であることが好ましく、より好ましくは5質量%未満であり、更に好ましくは2質量%未満である。
上記乳化重合工程は、上記モノマーとして、TFEに加え、任意のテトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーを添加するものであってもよい。上記変性モノマーについては、後述する。
上記乳化重合における攪拌速度は、気相−液相界面に凝集粒子が生成しないことを確認することにより重合スケールやその他の重合条件に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、上述のように、低分子量PTFEの90質量%以上が乳化粒子の状態で存在するものであれば、攪拌速度が小さく、乳化重合が行われたということができる。
(1)連鎖移動剤と水溶性過酸化物とTFEとが反応することにより、水溶性過酸化物由来の親水性末端基を有し乳化作用を持つポリマー鎖が生長するが、該ポリマー鎖の生長過程において、連鎖移動剤とポリマー鎖間の連鎖移動により該ポリマー鎖の生長末端が失活するので短鎖のTFE重合体が生成し、重合度の増加に伴う乳化作用の低下が起こらないこと、
(2)上記連鎖移動剤として使用する上述の化合物は連鎖移動能が高いため、上述の短鎖TFE重合体の重合度は低く、より高い乳化効果を示すこと、
(3)重合初期以降も水溶性過酸化物の分解が続くため、上述の親水性末端基を有する短鎖TFE重合体の生成は持続されること、
によりTFE重合体が乳化粒子として安定的に分散している水性分散液が得られることが推測される。
本明細書において、「実質的に含まない」とは、それらを原料として用いておらず、ポリマー固形分量の1ppmに相当する量以下であることを意味する。
上記含フッ素界面活性剤としては、特に限定されないが、含フッ素アニオン性界面活性剤であることが好ましく、例えば、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数7〜12の炭化水素と、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸、スルホン酸基等の親水基とからなるものが挙げられ、工業的には、パーフルオロオクタン酸アンモニウム、パーフルオロオクタン酸スルホニウム塩;パーフルオロカルボン酸およびその塩;等が挙げられる。
Rf1−Y1 (I)
(式中、Rf1は2価の酸素原子が挿入されていてもよい炭素数2〜12の直鎖又は分岐のフルオロアルキル基を表し、Y1は、−COOM1、−SO3M2、−SO2NM3M4又は−PO3M5M6を表す。上記M1、M2、M3、M4、M5及びM6は、同一又は異なって、H又は一価カチオンを表す。)で表される含フッ素アニオン性界面活性剤が好ましい。
上記一価カチオンとしては、例えば、−Na、−K、−NH4等が挙げられる。上記Rf1は、2価の酸素原子が挿入されていてもよい炭素数2〜6の直鎖又は分岐のフルオロアルキル基であることがより好ましい。
CF3−(CF2)n1−Y1 (II)
(式中、n1は1〜5の整数を表し、Y1は上記と同じ。)で表される含フッ素アニオン性界面活性剤、一般式(III)
Rf2O−Rf3O−Rf4−Y1 (III)
(式中、Rf2は炭素数1〜3のフルオロアルキル基を表し、Rf3及びRf4はそれぞれ独立に直鎖又は分岐の炭素数1〜3のフルオロアルキレン基を表し、Rf2、Rf3及びRf4は炭素数が合計で6以下である。Y1は上記と同じ。)で表される含フッ素アニオン性界面活性剤がより好ましい。
CF3O−CF(CF3)CF2O−CX1(CF3)−Y1
(式中、X1はH又はFを表し、Y1は上記と同じ。)で表される含フッ素アニオン性界面活性剤、一般式
CF3O−CF2CF2CF2O−CFX1CF2−Y1
(式中、X1はH又はFを表し、Y1は上記と同じ。)で表される含フッ素アニオン性界面活性剤、一般式
CF3CF2O−CF2CF2O−CFX1−Y1
(式中、X1はH又はFを表し、Y1は上記と同じ。)で表される含フッ素アニオン性界面活性剤等が挙げられる。
上記含フッ素界面活性剤は、1種使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記炭化水素系界面活性剤としては、フッ素原子を含まない界面活性剤であれば特に限定されないが、例えば、ラウリル硫酸アンモニウムに代表されるアルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、脂肪酸、およびこれらの塩等の陰イオン性界面活性剤;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系ノニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系ノニオン界面活性剤などの非イオン性界面活性剤;等が挙げられる。
R1−O−A1−H (IV)
(式中、R1は、炭素数8〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状の1級又は2級アルキル基であり、A1は、オキシエチレンとオキシプロピレンとの共重合鎖から構成されるポリオキシアルキレン鎖、又は、オキシアルキレン鎖である。)により表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル系ノニオン界面活性剤、下記一般式(V)
R2−C6H4−O−A2−H (V)
(式中、R2は、炭素数4〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基であり、A2は、ポリオキシアルキレン鎖である。)により表されるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系ノニオン界面活性剤が好ましい。
上記懸濁重合工程において、重合温度、重合圧力等の重合条件は、特に限定されず、使用するTFEの量、変性モノマーの種類や量、あるいは生産性等に応じて、適宜選択することができるが、重合温度としては、5〜100℃であることが好ましく、50〜90℃であることがさらに好ましい。重合圧力としては、0.03〜3.0MPaであることが好ましい。
上記強制的に凝集させる方法としては、攪拌速度を速くする方法と、電解質又は酸を水性媒体中に添加する方法を併用することが好ましく、該併用する方法は、界面活性剤を添加する場合に特に好適である。
上記乳化重合工程と懸濁重合工程とを含む本発明の重合方法において、重合終了時点でのポリマー得量は、水性媒体に対して、生産性の観点から10%以上が好ましく、好ましくは20%以上である。
本発明は、上記製造方法により得られる低分子量PTFE粉末でもある。
上記低分子量PTFEの数平均分子量は、フローテスター法を用いて測定し得られた溶融粘度から算出した値である。
すなわち、上記低分子量PTFEは、テトラフルオロエチレンホモポリマー〔TFEホモポリマー〕及び/又は変性ポリテトラフルオロエチレン〔変性PTFE〕である。
本明細書において、上記「TFEホモポリマー及び/又は変性PTFE」とは、TFEホモポリマーからなり変性PTFEを含まないもの、変性PTFEからなりTFEホモポリマーを含まないもの、又は、TFEホモポリマーと変性PTFEとからなるものの何れかを意味する。
上記変性PTFEは、TFEと、変性剤とを重合して得られる重合体を意味する。
CF2=CF−ORf (VI)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
上記変性PTFEにおける変性剤としては、パーフルオロビニルエーテル、クロロトリフルオロエチレンが好ましく、パーフルオロビニルエーテルとしてはPAVEが好ましい。
上記低分子量PTFEが上述の不安定末端基の安定化又は末端アミド化を行ったものであると、得られる本発明の低分子量PTFE粉末は、塗料、グリース、化粧品、メッキ液、トナー、プラスチックス等の相手材への添加剤として用いる場合に、相手材となじみやすく、分散性を向上させることができる。
上記平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(日本レーザー社製)を用い、カスケードは使用せず、圧力0.1MPa、測定時間3秒で粒度分布を測定し、得られた粒度分布積算の50%に対応する粒子径に等しいとした。
上記加熱処理により、低分子量PTFE粉末の粒子同士が点接触によって融着し、全体としては弱い結合力で一体に結合した塊状体を形成する。
また、上記加熱処理により、低分子量PTFE粉末の個々の粒子内でポリマー鎖が運動量を増して相互に絡み合う結果、個々の粒子はサイズが小さくかつ密な構造となって収縮する傾向にある。上記加熱処理によって得られた個々の粒子の見掛け密度は、加熱処理前の粉末に比べて一般に高くなるので、粉末の舞い立ちが少なく、粉末流動性が向上することによりホッパーへの充填性を向上させることができる。
上記加熱処理によって得られた塊状体に対しては、所望の大きさに粉砕処理を行ってもよい。上記粉砕処理は、上記低分子量PTFE粉末の個々の粒子に分かれるように行うことが好ましい。また、粉砕処理は、上述した粉砕の方法によって行ってもよい。
上記塗料、グリース、化粧品、メッキ液、トナー又はプラスチックス組成物用の添加剤は、これらの用途に、一般的に行われる方法により製造することができ、他の添加剤等と併用してもよい。また、上記塗料、グリース、化粧品、メッキ液、トナー又はプラスチックスである組成物は、各種用途において一般的に用いられる相手材に対して、通常の方法により混合して製造することができる。
比較例1
2枚のステンレス製平板型撹拌翼と温度調節用ジャケットとを備えた内容積6Lのステンレス製オートクレーブに、脱イオン水2760gを仕込み、密閉した。窒素ガスの圧入、脱気を複数回繰り返すことにより、系内の酸素を除去した後、連鎖移動剤として1.8gのエタンをテトラフルオロエチレン〔TFE〕で圧入し、槽内圧力を0.10MPaとした。700rpmでの撹拌下において槽内を昇温し、槽内温度が85℃に達したら、再度TFEを圧入し、槽内圧力を0.80MPaに調整した。
重合開始剤として、脱イオン水20gにジコハク酸パーオキサイド〔DSP〕700mgを溶解させた水溶液と、脱イオン水20gに過硫酸アンモニウム〔APS〕700mgを溶解させた水溶液を、TFEで槽内へ圧入した。重合開始剤の分解により槽内圧力が低下するので、TFEを連続的に供給し、槽内圧力を0.80±0.05MPaに維持した。重合反応中は常時、槽内温度を85±1℃に調節し、撹拌回転数を700rpmに制御した。
TFEの消費量が700gの時点で撹拌を停止し、槽内を脱圧した。重合後の液面及び液中の湿潤状態のポリマー粉末を脱イオン水で洗浄した上でろ別した。ろ別したポリマー粉末を、160℃の熱風循環式乾燥機にて18時間乾燥させることにより、低分子量PTFEの粉末を得た。また、ポリマー粉末をろ別した後の分散液において、水相中の固形分濃度を測定した。その結果を表1に示す。
ステンレス製アンカー型撹拌翼と温度調節用ジャケットとを備えた内容積6Lのステンレス製オートクレーブに、脱イオン水2750g、パラフィンワックス90g、および、パーフルオロオクタン酸アンモニウム塩の20%水溶液14gを仕込み、密閉した。その後は、重合反応中の撹拌回転数を300rpmに制御する以外は、比較例1と同様に重合反応を実施した。
重合後の液面には、ポリマー粉末は存在せず、低分子量PTFEの水性分散液が得られた。この水性分散液における水相中の固形分濃度を表1に示す。上記低分子量PTFE水性分散液2000gに硝酸2gを加え、激しい機械的せん断力を加えることでポリマーを凝析させ、ついで得られた湿潤状態の粉末を水洗した上でろ別し、160℃の熱風循環式乾燥機にて18時間乾燥させることにより、低分子量PTFEの粉末を得た。また、ポリマー粉末をろ別した後の分散液において、水相中の固形分濃度を測定した。その結果を表1に示す。
重合反応中の撹拌回転数を350rpmに制御し、TFEの消費量が315gの時点で撹拌を停止する以外は、比較例1と同様に重合反応を実施した。
重合後の液面には、微量の湿潤状態のポリマー粉末が浮遊しており、浮遊粉末を脱イオン水で洗浄した上でろ別した後の水相中の固形分濃度を表1に示す。ろ別したポリマー粉末を、160℃の熱風循環式乾燥機にて18時間乾燥させた。乾燥後の得られた粉末得量は、2.5gであった。
重合後の液相は、白色の低分子量PTFEの水性分散液であった。
参考例1と同様に重合反応を行い、TFEの消費量が175gの時点で撹拌回転数を700rpmに変更し、さらに525gのTFEが消費するまで重合反応を実施した。
TFEの総消費量が700gの時点で撹拌を停止し、槽内を脱圧した。重合後の液面及び液中の湿潤状態のポリマー粉末を脱イオン水で洗浄した上でろ別する。ろ別したポリマー粉末を、160℃の熱風循環式乾燥機にて18時間乾燥させることにより、低分子量PTFEの粉末を得た。また、ポリマー粉末をろ別した後の分散液において、水相中の固形分濃度を測定した。その結果を表1に示す。
参考例1と同様に重合反応を行い、TFEの消費量が175gの時点で脱イオン水20gにシュウ酸2水和物3.4gを溶解させた水溶液を、TFEで槽内へ圧入し、撹拌回転数を350rpmに制御したまま、さらに525gのTFEが消費するまで重合反応を実施した。
TFEの総消費量が700gの時点で撹拌を停止し、槽内を脱圧した。重合後の液面及び液中の湿潤状態のポリマー粉末を脱イオン水で洗浄した上でろ別する。ろ別したポリマー粉末を、160℃の熱風循環式乾燥機にて18時間乾燥させることにより、低分子量PTFEの粉末を得た。また、ポリマー粉末をろ別した後の分散液において、水相中の固形分濃度を測定した。その結果を表1に示す。
TFEの消費量が175gになった時点以降、700gまでの撹拌回転数を700rpmに制御する以外は、実施例2と同様に重合反応を実施した。
重合後の液面及び液中の湿潤状態のポリマー粉末を脱イオン水で洗浄した上でろ別する。ろ別したポリマー粉末を、160℃の熱風循環式乾燥機にて18時間乾燥させることにより、低分子量PTFEの粉末を得た。また、ポリマー粉末をろ別した後の分散液において、水相中の固形分濃度を測定した。その結果を表1に示す。
シュウ酸2水和物の水溶液の槽内へ圧入が、TFEの消費量50gの時点に変更し、さらに650gのTFEを消費するまで重合反応を行う以外は、実施例3と同様に重合反応を実施した。
重合後の液面及び液中の湿潤状態のポリマー粉末を脱イオン水で洗浄した上でろ別する。ろ別したポリマー粉末を、160℃の熱風循環式乾燥機にて18時間乾燥させることにより、低分子量PTFEの粉末を得た。また、ポリマー粉末をろ別した後の分散液において、水相中の固形分濃度を測定した。その結果を表2に示す。
エタンの仕込量を0.2gに変更し、シュウ酸2水和物の水溶液の槽内へ圧入が、TFEの消費量105gの時点に変更し、さらに595gのTFEを消費するまで重合反応を行う以外は、実施例3と同様に重合反応を実施した。
重合後の液面及び液中の湿潤状態のポリマー粉末を脱イオン水で洗浄した上でろ別する。ろ別したポリマー粉末を、160℃の熱風循環式乾燥機にて18時間乾燥させることにより、低分子量PTFEの粉末を得た。また、ポリマー粉末をろ別した後の分散液において、水相中の固形分濃度を測定した。その結果を表2に示す。
シュウ酸2水和物の水溶液の槽内へ圧入が、TFEの消費量315gの時点に変更し、さらに385gのTFEを消費するまで重合反応を行う以外は、実施例3と同様に重合反応を実施した。
重合後の液面及び液中の湿潤状態のポリマー粉末を脱イオン水で洗浄した上でろ別する。ろ別したポリマー粉末を、160℃の熱風循環式乾燥機にて18時間乾燥させることにより、低分子量PTFEの粉末を得た。また、ポリマー粉末をろ別した後の分散液において、水相中の固形分濃度を測定した。その結果を表2に示す。
脱イオン水2760gとともに、パーフルオロヘキサン酸アンモニウム塩〔APFHx〕の50%水溶液1.12gを仕込む以外は、参考例1と同様に重合反応を実施した。
重合後の液面には、微量の湿潤状態のポリマー粉末が浮遊しており、浮遊粉末を脱イオン水で洗浄した上で、ろ別した。ろ別したポリマー粉末を、160℃の熱風循環式乾燥機にて18時間乾燥させた。乾燥後の得られた粉末得量は、1.2gであった。また、ポリマー粉末をろ別した後の分散液において、水相中の固形分濃度を測定した。その結果を表2に示す。
重合後の液相は、白色の低分子量PTFEの水性分散液であった。
参考例2と同様に重合反応を行い、TFEの消費量が315gの時点で脱イオン水20gにシュウ酸2水和物430mgを溶解させた水溶液を、TFEで槽内へ圧入し、撹拌回転数を700rpmに制御し、さらに385gのTFEが消費するまで重合反応を実施した。
TFEの総消費量が700gの時点で撹拌を停止し、槽内を脱圧した。重合後の液面及び液中の湿潤状態のポリマー粉末を脱イオン水で洗浄した上でろ別する。ろ別したポリマー粉末を、160℃の熱風循環式乾燥機にて18時間乾燥させることにより、低分子量PTFEの粉末を得た。また、ポリマー粉末をろ別した後の分散液において、水相中の固形分濃度を測定した。その結果を表2に示す。
シュウ酸2水和物の水溶液の槽内へ圧入が、TFEの消費量490gの時点に変更し、さらに210gのTFEを消費するまで重合反応を行う以外は、実施例7と同様に重合反応を実施した。
重合後の液面及び液中の湿潤状態のポリマー粉末を脱イオン水で洗浄した上でろ別する。ろ別したポリマー粉末を、160℃の熱風循環式乾燥機にて18時間乾燥させることにより、低分子量PTFEの粉末を得た。また、ポリマー粉末をろ別した後の分散液において、水相中の固形分濃度を測定した。その結果を表2に示す。
水性分散液(Xg)を150℃にて3時間加熱した加熱残分(Zg)に基づき、式:P=Z/X×100(%)にて決定した。
ポリマー濃度を0.22質量%に調整した水性分散液の単位長さに対する550nmの投射光の透過率と、透過型電子顕微鏡写真における定方向径を測定して決定された平均一次粒子径との検量線を作成し、測定対象である水性分散液について、上記透過率を測定し、上記検量線をもとに決定した。
レーザー回折式粒度分布測定装置(日本電子社製)を用い、カスケードは使用せず、圧力0.1MPa、測定時間3秒で粒度分布を測定し、得られた粒度分布における累積体積%の50%に対応する値に等しいとした。
また、D90は粒度分布における累積体積%が90%のときの粒子径とし、D10は粒度分布における累積体積%が10%のときの粒子径とした。1μm以下の粒子の割合は、粒度分布における1μm以下の累積体積%とした。
ASTM D 1238に準拠し、フローテスター(島津製作所社製)及び2φ−8Lのダイを用い、予め測定温度(340℃又は380℃)で5分間加熱しておいた2gの試料を0.7MPaの荷重にて上記温度に保って測定を行った。
エスアイアイ・ナノテクノロジー社製の示差走査熱量測定機RDC220(DSC)を用い、事前に標準サンプルとして、インジウム、鉛を用いて温度校正した上で、低分子量PTFE粉末約3mgをアルミ製パン(クリンプ容器)に入れ、200ml/分のエアー気流下で、250〜380℃の温度領域を10℃/分で昇温させて行い、上記領域における融解熱量の極小点を融点とした。
BET法により、表面分析計(商品名:MONOSORB、QUANTA CHLROME社製)を用いて測定した。尚、キャリアガスとして、窒素30%、ヘリウム70%の混合ガスを用い、冷却は液体窒素を用いて行った。
比較例1で得られた低分子量PTFE粉末を粉砕機にて微粉砕した。粉砕機は、分級機を備えたホソカワミクロン社製エアージェットミル200AFGを用いた。分級機の分級ローターは約9000rpmで回転させた。
比較例2で得られた低分子量PTFE粉末を、分級ローターの回転数約7000rpmで粉砕比較例1と同様に微粉砕した。
実施例3で得られた低分子量PTFE粉末を、分級ローターの回転数約7000rpmで粉砕比較例1と同様に微粉砕した。
実施例8で得られた低分子量PTFE粉末を、分級ローターの回転数約7000rpmで粉砕比較例1と同様に微粉砕した。
予め、ポリエーテルサルフォン55gをN−メチル−2−ピロリドン336gに添加し、混合溶液が透明になるまでディスパー式撹拌機にて撹拌混合し、低分子量PTFE粉末70gを添加し、撹拌速度3000rpmで撹拌混合した。
撹拌15分毎にブレードに溶液を塗装し、ブレード粗さを測定した。ブレード粗さが15μm以下であれば分散性が合格と判断し、総撹拌時間を記録した。総撹拌時間が120分に達してもブレード粗さが15μm以下にならない場合は、総撹拌時間が120分時点でのブレード粗さを記載した。
比較例1で得られた低分子量PTFE粉末を添加した塗料と比較して、比較例2、実施例3、8で得られた低分子量PTFE粉末を添加した塗料のブレード粗さは、低い。
粉砕実施例1、2で得られた低分子量PTFE粉末を添加した塗料のブレード粗さは、粉砕比較例1、2で得られた低分子量PTFE粉末のものと差が無く、いずれも分散性が良好であったが、粉砕比較例2で得られた低分子量PTFE粉末を添加した塗料のブレード粗さが15μm以下に到達する所要時間は、粉砕比較例1、粉砕実施例1、2よりも長く、分散性に劣っていた。
予め、ポリエーテルサルフォン42gをN−メチル−2−ピロリドン130g、キシレン24g、メチルイソブチルケトン72gの混合溶剤に添加し、混合溶液が透明になるまでディスパー式撹拌機にて撹拌混合し、低分子量PTFE粉末16.8gを添加し、撹拌速度3000rpmで30分間撹拌混合した。さらに、カーボンブラック1.2gとN−メチル−2−ピロリドン14gを撹拌することにより作製したカーボンブラックペーストを、上記低分子量PTFE分散溶液に添加し、撹拌速度3000rpmで10分間撹拌混合し、塗料を作製した。
脱脂したアルミニウム板に上記塗料をスプレー塗装し、90℃にて15分間乾燥し、さらに380℃にて15分間焼成させ、塗装板を作製した。
(1)塗料粘度
JIS K 6893に準拠し、塗料粘度を測定した。
(2)光沢度
JIS K 5400に準拠し、光沢度(60°)を測定した。
(3)耐摩耗性
ASTM D−1044に準拠し、摩擦材料CS−17を用い、荷重1.0Kgで1000回転後の磨耗量を測定した。
(4)塗膜外観
目視試験にて、塗膜外観を観察した。
粉砕比較例1、2、粉砕実施例1、2で得られた低分子量PTFE粉末を添加した塗料の塗膜外観はいずれも滑らかで良好であったが、中でも粉砕比較例2、粉砕実施例1、2で得られた低分子量PTFE粉末を添加した塗料の塗膜外観は特に滑らかで質感が良好であった。
また、粉砕比較例1で得られた低分子量PTFE粉末を添加した塗料も、粉砕実施例1、2で得られた低分子量PTFE粉末を添加した塗料と比較して、塗料粘度が低く、塗装時に液がたれやすく、粉砕比較例2で得られた低分子量PTFE粉末を添加した塗料の粘度は高く、取扱い性が悪かった。
Claims (20)
- 低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末の製造方法であって、
重合開始剤及び水性媒体の存在下に、少なくともテトラフルオロエチレンを重合して乳化粒子を生成する乳化重合工程と、
前記乳化粒子を凝集させて凝集粉末を生成させる凝集工程と、
前記凝集粉末、重合開始剤及び水性媒体の存在下に、少なくともテトラフルオロエチレンを重合する懸濁重合工程と、
を含み、
前記低分子量ポリテトラフルオロエチレンは、380℃における溶融粘度が70万Pa・s以下である
ことを特徴とする低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末の製造方法。 - 前記乳化重合工程または懸濁重合工程のうち少なくとも一方の工程において、連鎖移動剤を存在させる請求項1記載の低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末の製造方法。
- 前記重合開始剤は、水溶性過酸化物である請求項1又は2記載の低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末の製造方法。
- 前記乳化重合工程は、界面活性剤の存在下で重合を行う工程である請求項1、2又は3記載の低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末の製造方法。
- 前記界面活性剤は、含フッ素界面活性剤である請求項4記載の低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末の製造方法。
- 前記界面活性剤は、炭化水素系界面活性剤である請求項4記載の低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末の製造方法。
- 前記凝集工程は、電解質を添加して乳化粒子を凝集させる工程である請求項1、2、3、4、5又は6記載の低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末の製造方法。
- 前記電解質は、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム及び硫酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である請求項7記載の低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末の製造方法。
- 前記凝集工程は、酸を添加して乳化粒子を凝集させる工程である請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末の製造方法。
- 前記酸は、硝酸、硫酸及びシュウ酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である請求項9記載の低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末の製造方法。
- 前記連鎖移動剤は、エタン又はプロパンである請求項2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末の製造方法。
- 前記水溶性過酸化物は、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及びジコハク酸パーオキサイドからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である請求項3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末の製造方法。
- 低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末を粉砕する粉砕工程をさらに含む請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12記載の低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末の製造方法。
- 請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13記載の製造方法から得られ、比表面積が4〜8m 2 /gである低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末。
- 380℃における溶融粘度が70万Pa・s以下である請求項14記載の低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末。
- 平均粒子径が0.5〜30μmである請求項14又は15記載の低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末。
- 請求項14、15又は16記載の低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末を含有することを特徴とする添加剤。
- 塗料組成物用、グリース組成物用、化粧品組成物用、メッキ液組成物用、トナー組成物用、又は、プラスチックス組成物用である請求項17記載の添加剤。
- 請求項14、15又は16記載の低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末を含有することを特徴とする組成物。
- 塗料、グリース、化粧品、メッキ液、トナー、又は、プラスチックスである請求項19記載の組成物。
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