JP5532532B2 - 低分子量ポリテトラフルオロエチレン水性分散液及びその製造方法 - Google Patents

低分子量ポリテトラフルオロエチレン水性分散液及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、低分子量ポリテトラフルオロエチレン水性分散液及びその製造方法に関する。
分子量60万以下の低分子量ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕(PTFEマイクロパウダーとも呼ばれる)は、化学的安定性に優れ、表面エネルギーが極めて低いことに加え、フィブリル化が生じにくいので、滑り性や塗膜表面の質感を向上させる添加剤として、プラスチック、インク、化粧品、塗料、グリース等の製造に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
低分子量PTFEの製造方法として、高分子量PTFEと特定のフッ化物とを高温下で接触反応させて熱分解する方法(例えば、特許文献2参照。)や、高分子量PTFEの粉末や成形体に電離性放射線を照射する方法(例えば、特許文献3参照。)等が知られている。
高分子量PTFEを熱分解する方法は、フッ化水素等の有害な副生成物が生成する問題や、更に微粉砕する工程を要するのでコストが高い問題がある。放射線を照射する方法についても、フッ化水素等の有害な副生成物が生成し、設備に関わるコスト及び利便性の面から見ても必ずしも有利ではない。更に、この方法では、線量率が高い放射線の照射を要するが、75kGry以上の放射線や電子線を照射したPTFEは、FDAに認可されていないので、アメリカでは直接人体に触れる用途には用いることができない(例えば、非特許文献1参照)。
低分子量PTFEの製造方法として、連鎖移動剤の存在下、モノマーであるTFEを直接重合する方法も知られている。例えば、特許文献4には、連鎖移動剤(テロゲン)として炭素数1〜3のフルオロアルカン又はクロルフルオロアルカンを用いて重合を行うことが提案されている。
工業的な重合方法としては、特許文献4の方法のように何れの方法で行うか不明確なものもあるが、懸濁重合と乳化重合に大別される。重合から直接得られる低分子量PTFEは、工程の簡便化、分子量分布の狭小化、低遊離フッ素イオン濃度の点で好ましい。
懸濁重合では、連鎖移動剤存在下、水性媒体中に重合開始剤を分散させ、モノマーであるTFE又はTFEと共重合し得るモノマーとTFEを重合させることによって、低分子量PTFEの顆粒状粉末を直接単離する(例えば、特許文献5及び6参照)。懸濁重合の場合、乳化剤を用いることなく、低分子量PTFEの粉末を直接的に得ることができるが、見掛密度や粒子径を調整し難い。
これに対し、乳化重合では、連鎖移動剤存在下、水性媒体中に重合開始剤及び乳化剤として含フッ素界面活性剤を分散させ、モノマーであるTFE又はTFEと共重合し得るモノマーとTFEを重合させることによって、低分子量PTFEを得る。この場合、懸濁重合とは異なり、含フッ素界面活性剤が存在することで、1μm以下の乳化粒子(ミセル、一次粒子とも呼ばれる)からなる水性分散液の状態で得られる(例えば、特許文献7参照)。得られた水性分散液はそのまま、あるいはこれを濃縮することにより、水性塗料等の用途に用いることができる。
乳化重合により得られる低分子量PTFEを粉末として用いる場合、上記水性分散液を凝析させることで粉末粒子(マイクロパウダー)とすることができる。
乳化重合により得られる低分子量PTFE粉末粒子の特徴としては、懸濁重合により得られるものより、比表面積が5〜15m/gと大きく、粒子が柔らかいため、例えば、塗膜表面の質感を向上させる等、表面を改質する効果が高い。また、吸油量も多くなり、マトリックス材料に安定した分散体が得られる。さらに、乳化重合により得られる低分子量PTFE粉末粒子は、上述した凝析工程の条件により、見掛密度及び粒子径の調整が可能であるという点で好ましい。
しかしながら、上述の乳化重合では、含フッ素界面活性剤等の高価な物質を乳化剤として用いる必要があるのでコストが高い。また、PTFE粒子に界面活性剤が残存した場合、着色等の原因となることがある。
このことより、これらの含フッ素界面活性剤を添加せずに重合を行うPTFEの製造方法が求められていた。
含フッ素界面活性剤を添加せずに重合を行う方法として、水性媒体中でTFEと水溶性過酸化物を用いて反応させるTFEの懸濁重合法が知られている(例えば、非特許文献2参照)。特許文献8にも、界面活性剤を添加せず、水性媒体中でジコハク酸パーオキサイドを重合開始剤としてTFE重合を行い、水性分散液を得られたことが記載されている。
しかしながら、特許文献8の実施例に記載されている水性分散液は、ポリマー固形分濃度もわずか6.5重量%と希薄であり、生産性を鑑みると実用性は非常に乏しい。また、特許文献8には、連鎖移動剤の添加、得られた重合体の乳化粒子径及び分子量を示唆するデータは何ら記載されていない。
特開平10−147617号公報 特開昭61−162503号公報 特開昭48−78252号公報 特開昭51−41085号公報 国際公開第2004/050727号パンフレット 特願2005−2322号公報 特開平7−165828号公報 米国特許第2,534,058号 FDA文書 Sec.177.1550 ふっ素樹脂ハンドブック 編者:里川孝臣 日刊工業新聞社(1990年)、27頁
本発明は、上記現状に鑑み、含フッ素界面活性剤を使用せず低コストで低分子量ポリテトラフルオロエチレンを製造する方法を提供することにある。
本発明は、含フッ素界面活性剤を添加することなく、連鎖移動剤の存在下において、重合開始剤が分散した水性媒体中でテトラフルオロエチレン〔TFE〕又はTFEと共重合し得るモノマーとTFEの乳化重合を行うものであって、上記連鎖移動剤は、水素、炭素数1〜3の炭化水素及び炭素数1〜3のハロゲン化炭化水素よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、上記重合開始剤は水溶性過酸化物であることを特徴とする低分子量ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕水性分散液の製造方法である。
本発明は、上記低分子量PTFE水性分散液の製造方法から得られることを特徴とする低分子量PTFEである。
本発明は、上記低分子量PTFE水性分散液の製造方法から得られることを特徴とする低分子量PTFE水性分散液である。
本発明は、パーフルオロオクタン酸〔PFOA〕及びその塩並びにパーフルオロスルホン酸〔PFOS〕及びその塩を実質的に含まないことを特徴とする低分子量PTFE水性分散液である。
本発明は、上記低分子量PTFE水性分散液を凝析することによって得られることを特徴とする低分子量PTFE粉末である。
本発明は、比表面積が7〜15m/gであって、パーフルオロオクタン酸〔PFOA〕及びその塩並びにパーフルオロスルホン酸〔PFOS〕及びその塩を実質的に含まないことを特徴とする低分子量PTFE粉末である。
本発明は、上記低分子量PTFEを含有することを特徴とする塗料である。
本発明は、上記低分子量PTFEを含有することを特徴とするエンジニアリングプラスチックである。
本発明は、上記低分子量PTFEを含有することを特徴とする化粧料である。
本発明は、上記低分子量PTFEを含有することを特徴とするグリースである。
本発明は、上記低分子量PTFEを含有することを特徴とするトナーである。
本発明は、上記低分子量PTFE粉末を含有することを特徴とする塗料である。
本発明は、上記低分子量PTFE粉末を含有することを特徴とするエンジニアリングプラスチックである。
本発明は、上記低分子量PTFE粉末を含有することを特徴とする化粧料である。
本発明は、上記低分子量PTFE粉末を含有することを特徴とするグリースである。
本発明は、上記低分子量PTFE粉末を含有することを特徴とするトナーである。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の製造方法は、含フッ素界面活性剤を添加することなく乳化重合を行うことを特徴とし、水性分散液の状態で低分子量PTFEを得ることができ、その製造コストが低く、上述した従来の含フッ素界面活性剤に起因する問題点が無い。
含フッ素界面活性剤を添加せずに、水性媒体中でTFEと水溶性過酸化物だけを用いて反応させるTFEの懸濁重合法では、反応のごく初期の系中には乳化重合を行った場合と同様に核(乳化粒子)が発生するが、ポリマー鎖の成長とともに乳化粒子が凝集し、この凝集粒子が液面に移行し気相で反応が進行することが知られている(例えば、非特許文献2参照)。
このように含フッ素界面活性剤を系中に添加しないTFEの重合では、水溶性過酸化物に由来の親水性末端基を有するポリマー鎖が重合初期に生成し、これが乳化作用を持つため、水性媒体中で乳化粒子が形成されると考えられる。しかしながら、重合度の増加、ならびに水性媒体中のポリマー固形分濃度の増加にしたがい、親水性末端基を有するポリマー鎖の乳化作用が著しく低下するため、不安定化した乳化粒子が凝集すると考えられる。
これに対し、本発明の製造方法では、驚くべきことに含フッ素界面活性剤を添加しなくとも、反応系中は乳化状態で重合反応を維持でき、最終的に、低分子量PTFEを固形分濃度が12質量%程度の安定な水性分散液の状態で得ることができる。
さらに、含フッ素界面活性剤を用いた一般的な乳化重合法によって得られる水性分散液と同様の後処理工程を経て、低分子量PTFE粉末を得ることができ、これを各種添加剤として多岐に用いることができる。
本発明の製造方法がこのような優れた効果を奏する機構は明らかでないが、本発明における重合では、
(1)連鎖移動剤と水溶性過酸化物とTFEとが反応することにより、水溶性過酸化物由来の親水性末端基を有し乳化作用を持つポリマー鎖が生長するが、該ポリマー鎖の生長過程において、連鎖移動剤とポリマー鎖間の連鎖移動により該ポリマー鎖の生長末端が失活するので短鎖のTFE重合体が生成し、重合度の増加に伴う乳化作用の低下が起こらないこと、
(2)上記連鎖移動剤として使用する上述の化合物は連鎖移動能が高いため、上述の短鎖TFE重合体の重合度は低く、より高い乳化効果を示すこと、
(3)重合初期以降も水溶性過酸化物の分解が続くため、上述の親水性末端基を有する短鎖TFE重合体の生成は持続されること、
によりTFE重合体が乳化粒子として安定的に分散している水性分散液として得られることが推測される。
即ち、本発明では、親水性基をポリマー末端に付与する水溶性過酸化物を重合開始剤として用い、連鎖移動能が比較的高い化合物を連鎖移動剤として使用して重合を行うので、分散安定性が高くかつ重合後の固形分濃度が高い低分子量PTFEの水性分散液を、含フッ素界面活性剤を添加せずに得ることができる。
上記「低分子量PTFE」とは、一般に、数平均分子量が60万以下のTFE重合体である。数平均分子量が60万を超える「高分子量PTFE」は、PTFE特有のフィブリル化特性が発現する(特許文献1参照)。高分子量PTFEは、溶融粘度が高く、非溶融加工性である。高分子量PTFEでは、添加剤として用いる場合、フィブリル化特性が発現するのでPTFE粒子同士が凝集しやすくなり、マトリックス材料への分散性が劣る。
上記低分子量PTFEは、380℃における溶融粘度が1×10〜7×10(Pa・s)であるTFE重合体であることが好ましい。上記低分子量PTFEは、一般に、溶融粘度が本範囲内にあれば、数平均分子量が上記範囲内となる(特許文献1参照)。
本明細書において、低分子量PTFEとは、380℃における溶融粘度が上記範囲内にあるTFE重合体を意味する。
すなわち、本発明は、このような低分子量PTFEを乳化重合によって得ることができる重合方法である。
本明細書において、上記溶融粘度は、ASTM D 1238に準拠し、フローテスター(島津製作所製)及び2φ−8Lのダイを用い、予め380℃で5分間加熱しておいた2gの試料を0.7MPaの荷重にて上記温度に保って測定した値である。上記平均分子量は、上記測定方法により測定した溶融粘度から、それぞれ算出した値である。
上記低分子量PTFEは、融点が324〜333℃であるTFE重合体であることが好ましい。
本明細書において、上記低分子量PTFEは、テトラフルオロエチレンホモポリマー〔TFEホモポリマー〕であってもよいし、変性ポリテトラフルオロエチレン〔変性PTFE〕であってもよい。
上記TFEホモポリマーは、モノマーとしてテトラフルオロエチレン〔TFE〕のみを重合することにより得られるものである。
上記変性PTFEは、TFEと共重合し得る変性モノマーとTFEの共重合から得られる重合体を意味する。
上記変性PTFEにおける変性モノマーとしては、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕等のパーフルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕等のクロロフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン〔VDF〕等の水素含有フルオロオレフィン;パーフルオロビニルエーテル;パーフルオロブチルエチレン;エチレン等が挙げられる。また、用いる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
上記パーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、下記一般式(I)
CF=CF−ORf (I)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、上記一般式(I)において、Rfが炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基を表すものであるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕が挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜5である。
上記PAVEにおけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられるが、パーフルオロアルキル基がパーフルオロプロピル基であるパーフルオロプロピルビニルエーテル〔PPVE〕が好ましい。
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、更に、上記一般式(I)において、Rfが炭素数4〜9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rfが下記式
Figure 0005532532
(式中、mは、0又は1〜4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rfが下記式
Figure 0005532532
(式中、nは、1〜4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
上記変性PTFEにおける変性モノマーとしては、HFP、CTFE、VDF、PPVE、エチレンが好ましい。
上記変性PTFEにおいて、上記変性モノマー単位は、全単量体単位の1質量%以下であることが好ましく、0.001〜1質量%であることがより好ましい。本明細書において、上記変性モノマー単位とは、変性PTFEの分子構造の一部分であって変性モノマーに由来する部分を意味し、全単量体単位とは、変性PTFEの分子構造における全ての単量体に由来する部分を意味する。
本発明の製造方法は、含フッ素界面活性剤を添加することなくTFEの乳化重合を行い、安定な水性分散液を得る方法である。本明細書において、上記「含フッ素界面活性剤を添加することなく重合を行う」とは、フルオロカーボン系の乳化剤等、従来のTFEの乳化重合に使用されていた含フッ素界面活性剤を重合開始時や重合中に添加しないことを意味する。
本発明の製造方法は、上述のように、従来のTFEの乳化重合に比べ、含フッ素界面活性剤を重合開始時や重合中に配合しない点で、コストが低いことに加え、得られる低分子量PTFEについて含フッ素界面活性剤に起因する問題点がない。
本明細書において、上記含フッ素界面活性剤とは、分子構造中に少なくとも1個のフッ素原子を含む含フッ素化合物であって、界面活性を示す化合物を意味する。
上記含フッ素界面活性剤としては、実用的には、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数7〜12の炭化水素と、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸、スルホン酸基等の親水基とからなるものが挙げられ、工業的には、パーフルオロオクタン酸アンモニウム、パーフルオロオクタン酸スルホニウム塩等が挙げられる。
本発明の低分子量PTFEの製造方法は、連鎖移動剤の存在下において、水溶性過酸化物を分散させた水性媒体中でTFEの乳化重合を行うものである。
上記水性媒体は、脱イオンされた高純度の純水であることが好ましい。
本発明において、上記連鎖移動剤は、水素、炭素数1〜3の炭化水素および炭素数1〜3のハロゲン化炭化水素よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
上記炭素数1〜3の炭化水素としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、上記炭素数1〜3のハロゲン化炭化水素としては、例えば、クロロメタン、クロロエタン等が挙げられる。上記連鎖移動剤は、エタン又はプロパンであることが好ましい。
本発明の製造方法において、上記連鎖移動剤は重合開始剤が添加される前に一括で添加してもよいし、重合開始剤が添加される前と重合反応中の複数に分割仕込みしてもよいし、また連続的に系中に添加してもよい。
連鎖移動剤の添加量は、その連鎖移動能、反応温度、重合圧力、あるいは重合開始剤の添加量等の重合条件により、その適正範囲が異なるので、一概に規定することはできないが、反応系中に存在するTFEに対して0.2〜20モル%であるのが好ましく、1.0〜10モル%であるのがより好ましい。上記添加量が、反応系中に存在するTFEに対して0.2モル%未満であると、安定な水性分散液が得られないことがあり、さらには低分子量PTFEの乳化粒子が得られず、高分子量PTFEが生成することがある。
上記添加量が20モル%を超えると、380℃における溶融粘度が100Pa・s以下となり、高温揮発分が多く、例えば、マトリックスへの分散工程における温度が300℃を超えるような用途には不向きとなり、用途が限定されることもある。
本発明の製造方法において、上記水溶性過酸化物としては、例えば、過硫酸塩や水溶性有機過酸化物が挙げられる。
上記過硫酸塩としては、例えば、過硫酸アンモニウム〔APS〕、過硫酸カリウム〔KPS〕が挙げられる。過硫酸塩をTFEの重合開始剤に用いた場合、開始剤由来の末端基は主にカルボキシル基となることが知られている(例えば、特許文献3)。
上記水溶性有機過酸化物としては、例えば、ジコハク酸パーオキサイド〔DSP〕、ジグルタル酸パーオキサイドが挙げられる。上記水溶性有機化酸化物は、親水性官能基、例えば、カルボキシル基、スルホン酸、あるいは水酸基を有するものであり、これらを重合開始剤に用いた場合、開始剤由来のポリマー末端基は上述の親水性末端基となる。ジコハク酸パーオキサイドの場合、末端基はカルボキシル基となる。
重合開始剤としては、これら水溶性過酸化物を1種だけ用いてもよいし、複数種使用してもよい。なかでも、ポリマー末端基をカルボキシル基とするものが好ましい。上記水溶性過酸化物の適正分解温度、取扱いの簡便性、コスト、ポリマー末端構造を鑑みると、重合開始剤としてはAPS、KPSやDSPがより好ましい。
本発明では、上述したように、過硫酸塩、水溶性有機化酸化物のいずれの系を重合開始剤に用いても開始剤に由来する末端は親水性基となるため、含フッ素界面活性剤の不存在下であってもエマルションの安定性が良好なものとなる。
上記水溶性過酸化物の添加量は、その種類、併用される連鎖移動剤の種類と添加量、あるいは重合温度や重合圧力等の重合条件に大きく依存する。そのため、添加する適正量が重合系により異なるので、一概に規定することはできないが、乳化作用を付与する親水性末端基を有するポリマー鎖を生成させる点で、上記水溶性過酸化物は、水性媒体に対し100〜3000ppmであることが好ましい。上記添加量が、水性媒体に対し100ppm未満であると、低分子量PTFEの乳化粒子が得られず、高分子量PTFEが生成することがあり、上述したようにマトリックスへの分散不良が生じやすくなる。
本発明の製造方法は、安定化剤の存在下で行うことが望ましい。安定化剤としては、パラフィンワックス(炭素数16以上の炭化水素)、フッ素系オイル、フッ素系化合物、シリコーンオイル等が好ましく、なかでも、パラフィンワックスが好ましい。パラフィンワックスの融点は通常40℃〜65℃であることが好ましい。このような安定化剤を含む水性媒体中で乳化重合を行うことにより、重合系中に生成する乳化粒子同士の凝集が妨げられ、より安定な乳化粒子として得ることができる。
上記パラフィンワックスは、低分子量PTFEをより安定に乳化させる点で、水性媒体100質量部に対し0.1〜12質量部であることが好ましい。上記含有量は、水性媒体100質量部に対し、より好ましい下限が1質量部であり、より好ましい上限が8質量部である。
本発明の製造方法は、上述の連鎖移動剤及び水溶性過酸化物と、必要により添加する安定化剤とを含有する水性媒体中でTFEの乳化重合を行うことによりなるものである。
上記重合において、重合温度、重合圧力等の重合条件は、特に限定されず、使用するTFEの量、変性モノマーの種類や量、あるいは生産性等に応じて、適宜選択することができる。
上記重合温度は、5〜100℃であることが好ましく、50〜90℃であることがさらに好ましい。
上記重合圧力は、0.1〜3.0MPaであることが好ましい。
上記乳化重合は、撹拌機が備えられた耐圧反応容器に、水性媒体と連鎖移動剤とモノマーと、必要に応じて安定化剤を仕込み、温度及び圧力を調整した後、重合開始剤を添加することにより開始することができる。上記乳化重合は、上述の水性媒体中にモノマーを供給しながら行うことができる。
上記重合は、上記モノマーとして、TFEに加え、上述のように変性モノマーを添加するものであってもよい。
上記乳化重合は、上述の水性媒体に攪拌を与えながら行うことが好ましいが、攪拌が強過ぎると機械的剪断力によって乳化粒子が凝集し、気−液界面で重合反応が進行し、結果として懸濁重合による重合となり、低分子量PTFEからなる乳化粒子が得られなくなる場合がある。ゆえに、上記乳化重合は、重合条件として反応スケール、重合温度及び重合圧力が同じ場合、一般的なフルオロポリマーの懸濁重合と比べ攪拌速度を小さくすることが好ましい。
上記乳化重合における攪拌速度は、気−液界面に凝集粒子が生成しないことを観察することにより重合スケールやその他の重合条件に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。
本発明の製造方法において、上述の乳化重合を行うことにより低分子量PTFEの水性分散液(ラテックス)を得ることができる。上記水性分散液は、一般に、低分子量PTFEの1μm以下の乳化粒子が水性媒体中に分散してなるものである。
上記乳化粒子は、分散安定性の点で、平均一次粒子径が50〜300nmであることが好ましい。
本明細書において、上記「平均一次粒子径」とは、重合終了後に濃縮、希釈、精製等の処理を行っていない水性分散液、いわゆる重合上がりの水性分散液におけるにおける低分子量PTFEの乳化粒子の平均粒子径を意味する。
上記平均一次粒子径は、低分子量PTFE濃度を0.22質量%に調整した水性分散液の単位長さに対する550nmの投射光の透過率と、透過型電子顕微鏡写真における定方向径を測定して決定された平均一次粒子径との検量線を作成し、測定対象である水性分散液について、上記透過率を測定し、上記検量線をもとに決定したものである。
上述の乳化重合を行うことにより得られる水性分散液は、重合上がりの状態で、低分子量PTFEの固形分濃度を一般に7〜25質量%とすることができる。
上記含有量は、生産性を鑑みると好ましい下限が8質量%、より好ましい下限が10質量%である。
本明細書において、低分子量PTFEの固形分濃度は、測定対象を150℃で3時間乾燥した時の加熱残分の質量(Zg)の該測定対象の質量(Xg)に対する割合として求めたものである。
上述の本発明の製造方法から得られることを特徴とする低分子量PTFEもまた、本発明の一つである。
本発明の低分子量PTFEは、水性分散液、粉末(マイクロパウダー)、何れの形状であってもよい。
本発明の低分子量PTFEは、上述のように、一般に380℃における溶融粘度が7×10Pa・s以下であるものである。
上記溶融粘度は、好ましくは5×10Pa・s以下である。
本発明の低分子量PTFEは、水性分散液、粉末、何れの形状であっても従来の含フッ素界面活性剤を添加せずに製造することができるので、パーフルオロオクタン酸〔PFOA〕及びその塩やパーフルオロスルホン酸〔PFOS〕及びその塩を実質的に含まない。
本明細書において、「実質的に含まない」とは、それらを原料として用いておらず、ポリマー固形分量の1ppmに相当する量以下であることを意味する。
上記低分子量PTFEの水性分散液は、上述の乳化重合により直接得られる水性分散液であってもよいし、上記水性分散液を濃縮、希釈、精製等の後処理を行ったものであってよい。上記後処理は、従来公知の方法で行うことができ、特に限定されるものではない。上記濃縮の方法としては、例えば、曇点濃縮法が挙げられる。
上記水性分散液は、平均一次粒子径50〜300nmの低分子量PTFE粒子を含むものであることが好ましい。
上記低分子量PTFEの水性分散液は、取り扱い性等の点で、低分子量PTFEの固形分濃度が20〜80質量%であることが好ましい。
上記範囲内の固形分濃度を有する水性分散液は、上述の乳化重合を行った後に濃縮を行うことにより得ることができる。
上記低分子量PTFEの粉末は、上述の水性分散液を凝析することにより得ることができる。即ち、上記粉末は、乳化重合を経て得られる水性分散液を材料とするものなので、粉砕等の後処理を行うことなく得ることができることに加え、見掛密度および平均粒子径を制御することができる。
上記低分子量PTFEの粉末は、取り扱い性の点で、平均粒子径が1〜30μmであるものが好ましく、より好ましくは2〜20μmである。平均粒子径が1μm未満のものは、見掛密度が小さいため舞い立ちやすく、取扱い性に劣る。平均粒子径が30μmを超えるものは、マトリックス材料に微分散し難く、マトリックス材料中に低分子量PTFEの塊状が出やすくなる。
上記平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(日本レーザー社製)を用い、カスケードは使用せず、圧力0.1MPa、測定時間3秒で粒度分布を測定し、得られた粒度分布積算の50%に対応する粒子径に等しいとした。
上述のように、乳化重合で得られた低分子量PTFE粉末は乳化粒子が凝集することによりなるため、その比表面積は懸濁重合で直接的に得られた低分子量PTFE粉末よりも大きく、一般的には7〜15m/gである。
比表面積が大きいと、粒子がやわらかく、例えば、塗膜表面の質感を向上させる等、表面を改質する効果が高い。また、吸油量も多くなり、マトリックス材料に安定した分散体が得られる。従って、上記低分子量PTFEの比表面積は、好ましくは9〜15m/gである。7m/g未満であれば、マトリックス材料への微分散に劣る。
本明細書において、比表面積は、表面分析計(商品名:MONOSORB、QUANTA CHLROME社製)を用い、キャリアガスとして窒素30%、ヘリウム70%の混合ガスを用い、冷却に液体窒素を用いて、BET法により測定したものである。
上記低分子量PTFEの水性分散液を凝析する方法としては、一般に機械的剪断力により乳化粒子を凝集させるが、凝析後の水相に残存するポリマーを低減させる上で、凝析剤として硝酸、硫酸、硝酸アンモニウム等の電解質を凝析前の水性分散液に加えることが好ましく、電解質に酸を用いた場合、凝析後に水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリで凝析後の水相及び凝析粒子を中和することが好ましく、さらに新たに純水で凝析粒子を洗浄することが好ましい。
・パーフルオロオクタン酸〔PFOA〕及びその塩並びにパーフルオロスルホン酸〔PFOS〕及びその塩を実質的に含まない低分子量PTFE水性分散液、並びに、
・比表面積が7〜15m/gであって、PFOA、PFOS及びそれらの塩を実質的に含まない低分子量PTFE粉末
もまた、本発明の範疇に属するものである。
このような低分子量PTFE水性分散液や低分子量PTFE粉末は、本発明の低分子量PTFE水性分散液の製造方法を実施することにより容易に得ることができる。
なお、本発明の低分子量PTFE水性分散液は、非イオン界面活性剤を実質的に含まない点で、従来のPFOAやPFOSを含有する水性分散液を非イオン界面活性剤で安定化した後に、陰イオン交換体と接触させてPFOAやPFOSを除去することによって得られる水性分散液とは区分けされるものである。
本発明の低分子量PTFEは、上述のように含フッ素界面活性剤を添加せずに得られたものなので、着色等の該界面活性剤に起因する問題がない。ゆえに、上記低分子量PTFEは、添加剤として好適に使用することができる。
上記添加剤の用途としては特に限定されず、成形材料、インク、化粧料、塗料、グリース、トナーを改質する添加剤として好適に使用することができる。
上記成形材料としては、例えば、ポリオキシベンゾイルポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド等のエンジニアリングプラスチックが挙げられる。
本発明の低分子量PTFEは、成形材料の添加剤として、例えば、コピーロールの非粘着性・摺動特性の向上、家具の表層シート、自動車のダッシュボード、家電製品のカバー等のエンジニアリングプラスチック成形品の質感を向上させる用途、軽荷重軸受、歯車、カム、プッシュホンのボタン、映写機、カメラ部品、摺動材等の機械的摩擦を生じる機械部品の滑り性や耐摩耗性を向上させる用途、エンジニアリングプラスチックの加工助剤等として好適に用いることができる。
本発明の低分子量PTFEは、塗料の添加剤として、ニスやペンキの滑り性向上の目的に用いることができる。
本発明の低分子量PTFEは、化粧料の添加剤として、ファンデーション等の化粧品の滑り性向上等の目的に用いることができる。
本発明の低分子量PTFEは、更に、ワックス等の撥油性又は撥水性を向上させる用途や、グリースやトナーの滑り性を向上させる用途にも好適である。
このような低分子量PTFEを含有するエンジニアプラスチック等の成形材料、塗料、化粧料、グリース又はトナーもまた、本発明の一つである。更に、上記低分子量PTFE粉末を含有するエンジニアプラスチック等の成形材料、塗料、化粧料、グリース又はトナーもまた、本発明の一つである。
本発明の低分子量PTFE水性分散液の製造方法は、上述の構成よりなるので、含フッ素界面活性剤を使用することなく乳化重合を行うことができることから、低コストで低分子量PTFEの水性分散液や粉末を製造することができる。本発明の低分子量PTFEは、PFOA、PFOS及びそれらの塩を実質的に含んでおらず、成形材料、インク、化粧品、塗料、グリース、トナー等を改質する添加剤として好適に使用することができる。水性分散液から得られた粉末は、比表面積が7〜15m/gと大きく、マトリックス材料への微分散性が良く、表面の改質効果も高い。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断りの無い限り「質量部」及び「質量%」をそれぞれ意味する。
比較例1
ステンレス製アンカー型撹拌翼と温度調節用ジャケットとを備えた内容積6Lのステンレス製オートクレーブに、脱イオン水3.2L及びフッ素系乳化剤としてパーフルオロオクタン酸アンモニウム〔APFO〕3.2gを仕込み、密閉した。窒素ガスの圧入、脱気を複数回繰り返すことにより、系内の酸素を除去した後、連鎖移動剤として0.8gのエタンをテトラフルオロエチレン〔TFE〕で圧入し、槽内圧力を0.10MPaとした。500rpmでの撹拌下において槽内を昇温し、槽内温度が85℃に達したら、再度TFEを圧入し、槽内圧力を0.80MPaに調整した。
重合開始剤として、脱イオン水20mlに過硫酸アンモニウム〔APS〕425mgを溶解させた水溶液を、槽内へTFEで圧入した。重合開始剤の分解により槽内圧力が低下するので、TFEを連続的に供給し、槽内圧力を0.80±0.05MPaに維持した。反応中は常時、槽内温度を85±1℃に調節し、撹拌回転数を500rpmに制御した。TFEの消費量が800gの時点で撹拌を停止して、槽内圧力を常圧まで開放し、ついで気相を窒素で置換して、低分子量PTFEの水性分散液を得た。
上記低分子量PTFE水性分散液2000gに硝酸2gを加え、激しい機械的剪断力を与えることで凝析させ、ついで得られた湿潤状態の粉末を水洗した上で濾別し、160℃の熱風循環式乾燥機にて18時間乾燥させることにより、低分子量PTFEの粉末を得た。
比較例2
APFO及びエタンを系中に添加せず、脱イオン水20mlに過硫酸アンモニウム〔APS〕850mgを溶解させた水溶液を重合開始剤として添加し、反応中の撹拌数を700rpmに制御する以外は、比較例1と同様にして重合反応を行った。TFEの消費量が355gの時点で撹拌を停止した。重合後の反応容器内の気−液界面には粒子径が1000μm以上のポリマー粒子が浮遊していたので、これを回収した。
得られた湿潤状態の粉末を水洗した上で濾別し、160℃の熱風循環式乾燥機にて18時間乾燥させることにより、TFE重合体の粉末を得た。乾燥後の得られた粉末得量は349gであった。
実施例1
APFOを系中に添加せず、重合開始剤及び連鎖移動剤を表1に示した量とし、反応中の撹拌数を700rpmに制御する以外は、比較例1と同様にして低分子量PTFEの水性分散液を得た。得られた水性分散液において、気−液界面上に重合体粒子は殆ど発生していなかった。
上記水性分散液に比較例1と同様の凝析、洗浄、乾燥工程を行い、目的とする低分子量PTFEの粉末を得た。
上記水性分散液に、非イオン系界面活性剤としてTDS−80C(第一工業製薬)を低分子量PTFEの質量に対して6.0質量%添加し、更にアンモニア水でpHを9.0に調整した後、常圧で65℃の温度下に静置することにより水分を蒸発させて低分子量PTFEの固形分が60質量%になるよう濃縮した。濃縮した水性分散液中のPTFE一次粒子の平均一次粒子径は、濃縮前の水性分散液と同じであった。
実施例2
反応中の撹拌数を600rpmに制御する以外は、実施例1と同様にして低分子量PTFEの水性分散液を得た。得られた水性分散液において、気−液界面上に重合体粒子は殆ど発生していなかった。
上記水性分散液に実施例1と同様の凝析、洗浄、乾燥工程を行い、目的とする低分子量PTFEの粉末を得た。
実施例3
反応中の撹拌数を500rpmに制御する以外は、実施例1と同様にして低分子量PTFEの水性分散液を得た。得られた水性分散液において、気−液界面上に重合体粒子は殆ど発生していなかった。上記水性分散液に実施例1と同様の凝析、洗浄、乾燥工程を行い、目的とする低分子量PTFEの粉末を得た。
各実施例及び比較例1で得られた低分子量PTFEの水性分散液について下記(1)〜(2)の物性評価を行い、各実施例及び比較例で得られた粉末について下記(3)〜(7)の物性評価を行った。
(1)水性分散液中の固形分濃度(P%)
水性分散液(Xg)を150℃にて3時間加熱した加熱残分(Zg)に基づき、式:P=Z/X×100(%)にて決定した。
(2)平均一次粒子径
ポリマー濃度を0.22質量%に調整した水性分散液の単位長さに対する550nmの投射光の透過率と、透過型電子顕微鏡写真における定方向径を測定して決定された平均一次粒子径との検量線を作成し、測定対象である水性分散液について、上記透過率を測定し、上記検量線をもとに決定した。
(3)見掛密度
JIS K 6891に準拠して測定した。
(4)平均粒子径
レーザー回折式粒度分布測定装置(日本電子社製)を用い、カスケードは使用せず、圧力0.1MPa、測定時間3秒で粒度分布を測定し、得られた粒度分布積算の50%に対応する値に等しいとした。
(5)溶融粘度
ASTM D 1238に準拠し、フローテスター(島津製作所製)及び2φ−8Lのダイを用い、予め測定温度(340℃又は380℃)で5分間加熱しておいた2gの試料を0.7MPaの荷重にて上記温度に保って測定を行った。
(6)融点
エスアイアイ・ナノテクノロジー社製の示差走査熱量測定機RDC220(DSC)を用い、事前に標準サンプルとして、インジウム、鉛を用いて温度校正した上で、低分子量PTFE粉末約3mgをアルミ製パン(クリンプ容器)に入れ、200ml/分のエアー気流下で、250〜380℃の温度領域を10℃/分で昇温させて行い、上記領域における融解熱量の極小点を融点とした。
(7)比表面積
BET法により、表面分析計(商品名:MONOSORB、QUANTA CHLROME社製)を用いて測定した。尚、キャリアガスとして、窒素30%、ヘリウム70%の混合ガスを用い、冷却は液体窒素を用いて行った。
以上の結果を表1に示す。
Figure 0005532532
以上の結果より、各実施例では、乳化重合を行った比較例1と同様に、低分子量PTFEの乳化粒子を含む水性分散液を、APFOやパーフルオロスルホン酸を含有させることなく得られたが、エタンを使用しない比較例2では低分子量PTFEが得られず、更に生成物として水性分散体が得られず乳化重合で反応させることができなかったことが分かった。
本発明の低分子量PTFE水性分散液の製造方法は、上述の構成よりなるので、低コストで低分子量PTFEを製造することができる。本発明の低分子量PTFEは、成形材料、インク、化粧品、塗料、グリース、トナー等を改質する添加剤として好適に使用することができる。水性分散液から得られた粉末は、マトリックス材料への微分散性が良く、表面の改質効果も高い。

Claims (19)

  1. 含フッ素界面活性剤を添加することなく、連鎖移動剤存在下において、重合開始剤を含有する水性媒体中でテトラフルオロエチレン〔TFE〕又はTFEと共重合可能なモノマーとTFEの乳化重合を行う低分子量ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕の水性分散液を製造する方法であって、
    前記連鎖移動剤は、メタン、エタン及びプロパンよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、
    前記重合開始剤は水溶性過酸化物であり、
    前記低分子量PTFEは、前記TFEと共重合可能なモノマーに由来する単量体単位が、全単量体単位の1質量%以下である
    ことを特徴とする低分子量PTFE水性分散液の製造方法。
  2. 連鎖移動剤は、エタン又はプロパンである請求項1に記載の低分子量PTFE水性分散液の製造方法。
  3. 重合開始剤は、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及びジコハク酸パーオキサイドより選択される少なくとも1種の化合物である請求項1又は2に記載の低分子量PTFE水性分散液の製造方法。
  4. 重合上がりの固形分濃度が10%以上である低分子量PTFE水性分散液を得る請求項1、2又は3に記載の低分子量PTFE水性分散液の製造方法。
  5. 低分子量PTFEは、融点が324〜333℃である請求項1、2、3又は4に記載の低分子量PTFE水性分散液の製造方法。
  6. 請求項1、2、3、4又は5に記載の低分子量PTFE水性分散液の製造方法から得られる
    ことを特徴とする低分子量PTFE水性分散液。
  7. 平均一次粒子径50〜300nmの低分子量PTFE粒子を含む請求項6に記載の低分子量PTFE水性分散液。
  8. 請求項6又は7記載の低分子量PTFE水性分散液を濃縮することにより得られ、固形分濃度が20〜80質量%であること
    を特徴とする低分子量PTFE水性分散液。
  9. 低分子量ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕の水性分散液であって、
    パーフルオロオクタン酸〔PFOA〕及びその塩並びにパーフルオロスルホン酸〔PFOS〕及びその塩がポリマー固形分量の1ppmに相当する量以下であり、
    前記低分子量PTFEは、テトラフルオロエチレンと共重合可能なモノマーに由来する単量体単位が、全単量体単位の1質量%以下である
    ことを特徴とする低分子量PTFE水性分散液。
  10. 低分子量PTFEは、融点が324〜333℃である請求項9に記載の低分子量PTFE水性分散液。
  11. 請求項6に記載の低分子量PTFE水性分散液を凝析することによって得られる
    ことを特徴とする低分子量PTFE粉末。
  12. 比表面積が7〜15m/gである請求項11に記載の低分子量PTFE粉末。
  13. 低分子量ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕の粉末であって、
    比表面積が7〜15m/gであって、パーフルオロオクタン酸〔PFOA〕及びその塩並びにパーフルオロスルホン酸〔PFOS〕及びその塩がポリマー固形分量の1ppmに相当する量以下であり、
    前記低分子量PTFEは、テトラフルオロエチレンと共重合可能なモノマーに由来する単量体単位が、全単量体単位の1質量%以下である
    ことを特徴とする低分子量PTFE粉末。
  14. 低分子量PTFEは、融点が324〜333℃である請求項13に記載の低分子量PTFE粉末。
  15. 請求項11、12、13又は14に記載の低分子量PTFE粉末を含有することを特徴とする塗料。
  16. 請求項11、12、13又は14に記載の低分子量PTFE粉末を含有することを特徴とするエンジニアリングプラスチック。
  17. 請求項11、12、13又は14に記載の低分子量PTFE粉末を含有することを特徴とする化粧料。
  18. 請求項11、12、13又は14に記載の低分子量PTFE粉末を含有することを特徴とするグリース。
  19. 請求項11、12、13又は14に記載の低分子量PTFE粉末から得られることを特徴とするトナー。
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