しかし、特許文献2の楔部材は、前記ベース部が建枠の脚柱と向かい合う向きとなって前記連結部材に配設されている。このため、建枠の脚柱と押圧接触する部分は、このベース部となっている。このベース部は、上下方向が幅方向となっている部分であるため、楔部材は建枠の脚柱と大きな面積で押圧接触することになる。
これによると、単位面積当たりの押圧接触力は小さくなり、楔部材を建枠の脚柱に充分な楔作用により押圧接触させることは難しい。
本発明の目的は、楔部材を建枠の脚柱に充分な楔作用により押圧接触させることができるようになる仮設足場用手摺り枠の連結構造を提供するところにある。
本発明に係る仮設足場用手摺り枠の連結構造は、仮設足場を構築するために並設された建枠同士の間に架け渡される手摺り枠をこれらの建枠の脚柱に連結するための連結構造であって、前記手摺り枠に連結手段が設けられ、この連結手段は、前記建枠の前記脚柱を挿入するための凹部が形成された連結部材と、この連結部材に設けられたガイド部に挿通案内されて前記凹部の開口部を開閉するために水平方向にスライド自在となっているとともに、前記凹部の前記開口部を閉じたときに楔作用により前記脚柱に押圧接触する楔部材と、を含んで構成され、前記楔部材が、幅方向が上下方向となっているベース部の上下端から一対の突出部が水平方向に突出しているコ字形状となっている仮設足場用手摺り枠の連結構造において、前記楔部材は、前記一対の突出部の先端が前記脚柱と向かい合う向きとなって前記連結部材に配設されていることを特徴とするものである。
本発明では、連結部材に設けられた凹部の開口部を閉じたときに楔作用により建枠の脚柱に押圧接触する楔部材は、幅方向が上下方向となっているベース部の上下端から一対の突出部が水平方向に突出しているコ字形状となっているため、この楔部材は大きな曲げ強度を有しており、楔部材が凹部の開口部を閉じて楔作用により脚柱に押圧接触したときに、楔部材が大きく湾曲変形することはないため、楔部材に楔作用を発揮させてこの楔部材を建枠の脚柱に楔作用で押圧接触させることができる。
特に本発明では、楔部材は、一対の突出部の先端が建枠の脚柱と向かい合う向きとなって連結部材に配設されているため、楔部材の各部分のうち、建枠の脚柱と押圧接触する部分は、ベース部ではなく、一対の突出部の先端となる。これらの突出部の先端は、ベース部よりも小さい面積となっているため、楔部材は、建枠の脚柱と小さい面積で押圧接触することになり、このため、楔部材の脚柱に対する単位面積当たりの押圧接触力は大きくなり、したがって、楔部材を建枠の脚柱に充分な楔作用により、言い換えると、大きな楔作用により押圧接触させることができ、これにより、手摺り枠を建枠に大きな連結強度で連結できることになる。
本発明において、楔部材の一対の突出部の先端には、この楔部材の前記スライド方向に対して傾斜していて、楔作用により脚柱に押圧接触する楔面が設けられる。この楔面は、上記スライド方向である楔部材の長さ方向の全長又は略全長に渡る長さを有するものとしてもよい。
しかし、これによると、楔部材の全長が長くなってしまい、楔部材が仮設足場を構成する部材等と干渉するおそれが生じるため、楔部材の一対の突出部の先端に、楔面と、この楔面よりも前記凹部の前記開口部を閉じる側において、楔面よりも大きな角度で前記スライド方向に対して傾斜して形成された傾斜面とを設けることが好ましい。
これによると、楔面を、前記スライド方向である楔部材の長さ方向の全長又は略全長に渡る長さとした場合よりも、楔部材の全長を短くすることができ、この楔部材が仮設足場を構成する部材等と干渉するおそれをなくすことができる。
また、楔面と傾斜面とを直接接続させて楔部材に設けてもよい。さらに、これらの楔面と傾斜面との間に中間面を設けてもよい。
このような中間面を楔面と傾斜面との間に設ける場合には、中間面を前記スライド方向と平行な面となっている平坦面としてもよい。
これによると、傾斜面と楔面とが直接接続されず、平坦面を介して接続されることになるため、楔面を前記脚柱に楔作用で押圧接触されるために楔部材を前進スライドさせたときに、楔面が脚柱に急激に押圧接触することを防止できる。
また、中間面を楔面と傾斜面との間に設ける場合には、中間面を水平断面が円形となっている脚柱の外径方向へ僅かに湾曲膨出した湾曲面としてもよい。
これによると、楔部材を前記凹部の開口部を閉じる側へスライドさせたときに、初めに湾曲面が脚柱に当たることにより、湾曲面及び/又は脚柱の弾性変形によって湾曲面が脚柱を抱き込むようにしてこの脚柱に接触することになり、次いで、楔部材を凹部の開口部を閉じる側へさらにスライドさせ、楔面を脚柱に押圧接触させたときにも、この楔面は脚柱を抱き込むようにしてこの脚柱に接触することになるため、楔部材がスライド方向にずれ移動することを防止できることになる。
本発明において、前記連結部材と楔部材は金属で形成される。これらの連結部材と楔部材は同じ素材で形成してもよいが、連結部材の素材を楔部材の素材よりも軟質としてもよい。なぜならば、連結部材には、楔部材をスライド方向に挿通案内するための前記ガイド部が設けられ、楔部材を建枠の脚柱に楔作用で押圧接触させるためには、その反作用として、このガイド部に楔部材は大きな接触力で接触することになるが、この接触は楔部材のベース部材で行われ、このベース部は前記一対の突出部の先端よりも大きな面積を有しているため、ガイド部と楔部材は大きな面積で接触することになり、このため、連結部材の素材を楔部材の素材よりも軟質としても、連結部材のガイド部が摩滅等してしまうおそれはないからである。
このように連結部材の素材を楔部材の素材よりも軟質とする一例は、楔部材をスチール製とした場合に、連結部材をアルミ製又はアルミ合金製とすることである。連結部材をアルミ製又はアルミ合金製とすると、アルミ製又はアルミ合金製の押し出し成形品又は引き抜き成形品を短い間隔で切断することにより、多数の連結部材を安価に製造することができ、これにより、連結部材の製造コストを低減することができる。
また、建枠の脚柱と楔部材は金属で形成される。楔部材の素材は脚柱の素材と同じとすることが好ましい。なぜならば、上述したように、楔部材における脚柱と押圧接触する部分になっている前記一対の突出部の先端は、ベース部よりも小さい面積になっているため、楔部材の素材を脚柱の素材と同じとすることにより、これらの楔部材と脚柱のうち、一方が摩滅等しまうおそれをなくすことができるからである。
このように楔部材の素材を脚柱の素材と同じとする場合の一例は、脚柱がスチール製である場合に、楔部材もスチール製とすることである。
本発明において、楔部材を前記スライド方向に案内するために連結部材に設ける前記ガイド部の個数は、1個でもよく、あるいは、前記凹部の前記スライド方向の両側に設けた第1ガイド部と第2ガイド部の2個でもよい。
ガイド部の個数をこれらの第1ガイド部と第2ガイド部の2個とする場合には、楔部材にスライド方向に延びる長孔を形成するとともに、第1ガイド部と第2ガイド部のうち、スライド方向の前記凹部の開口部を開ける側に設けられた第1ガイド部よりもさらに開口部を開ける側において、連結部材にピン状部材を配置し、このピン状部材を前記長孔に挿入し、楔部材のスライドによりこの長孔のスライド方向における凹部の開口部を閉じる側の端部がピン状部材の位置に達しているときに、第1ガイド部に、楔部材のスライド方向における凹部の開口部を閉じる側の端部が挿入されているようにする。
これによると、楔部材が凹部の開口部を開けるために後退限位置までスライドしても、長孔のスライド方向における凹部の開口部を閉じる側の端部がピン状部材の位置に達することにより、楔部材のスライド方向における凹部の開口部を閉じる側の端部が第1ガイド部から脱出してしまうことを防止できる。
また、このように楔部材に長孔を設けるとともに、連結部材にこの長孔に挿入されるピン状部材を配置する場合には、長孔のスライド方向における凹部の開口部を閉じる側の端部には、ピン状部材と協働して楔部材が凹部の開口部を閉じる側へスライドすることを防止するためのスライド防止部を設けることが好ましい。
これによると、楔部材が凹部の開口部を開けているときに、作業者が、手摺り枠を前記建枠の間に配置するためにこの手摺り枠を水平方向に対して傾けるなどの作業操作を行っても、楔部材が凹部の開口部を閉じる側へスライドしてしまうことをスライド防止部により防止することができ、これにより、凹部に建枠の脚柱を挿入するなどの作業を確実に行えることなる。
なお、スライド防止部は、凹部の開口部を開けているときの楔部材がこの凹部の開口部を閉じる側へスライドしてしまうことを防止できるものであれば、任意なものでよく、その一例は、長孔のスライド方向における凹部の開口部を閉じる側の端部を先細り状とし、この先細り状端部に前記ピン状部材を圧入状態で挿入できるようにすることにより、先細り状端部とピン状部材との摩擦力により、楔部材が凹部の開口部を閉じる側へスライドしてしまうことを防止することである。
また、スライド防止部の他の例は、長孔のスライド方向における凹部の開口部を閉じる側の端部を長孔に対して角度をなした屈曲部とし、この屈曲部にピン状部材が挿入されることにより、楔部材が凹部の開口部を閉じる側へスライドしてしまうことを防止することである。
なお、上記ピン状部材は、前記長孔のスライド方向における凹部の開口部を閉じる側の端部がこのピン状部材に当接することにより、楔部材のスライド方向における凹部の開口部を閉じる側の端部が前記第1ガイド部から脱出することを防止できるものであれば、任意な部材でよく、このピン状部材は、例えば、ボルトでもよく、ピンでもよい。
また、楔部材に長孔を設けず、連結部材にこの長孔に挿入されるピン状部材を配置しない場合には、楔部材のスライド方向における凹部の開口部を閉じる側の端部には、前記第1ガイド部と協働して楔部材のこの端部がこの第1ガイド部から脱出することを防止するための脱出防止部を設けてよい。
これによると、楔部材が凹部の開口部を開けるために後退限位置までスライドしても、楔部材のスライド方向における凹部の開口部を閉じる側の端部が第1ガイド部から脱出してしまうことを脱出防止部により防止できる。
なお、この脱出防止部は、楔部材が後退限位置までスライドして凹部の開口部を開けているときに、楔部材のスライド方向における凹部の開口部を閉じる側の端部が第1ガイド部から脱出してしまうことを防止できるものであれば、任意なものでよく、その一例は、楔部材のスライド方向における凹部の開口部を閉じる側の端部に、脱出防止部となった突起を設け、前記第1ガイド部に、楔部材が後退限位置までスライドしたときにこの突起が当接することにより楔部材の前記端部が第1ガイド部から脱出することを阻止する当接部を設けることである。
以上説明した本発明において、楔部材は、幅方向が上下方向となっているベース部の上下端から一対の突出部が水平方向に突出しているコ字形状となっていれば、任意な製造方法で製造されたものでよく、楔部材は、例えば、厚板の折り曲げ品でもよく、鋳造品でもよく、鍛造品でもよい。
また、以上説明した本発明に係る手摺り枠の連結構造は、建枠を用いて任意な作業現場で構築される仮設足場に適用することができ、この作業現場は、例えば、建築作業現場でもよく、土木作業現場でもよく、解体作業現場でもよく、電気作業現場でもよく、塗装作業現場でもよい。
本発明によると、楔部材を建枠の脚柱に充分な楔作用により押圧接触させることができ、手摺り枠を建枠に大きな連結強度で連結できるという効果を得られる。
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る手摺り枠の連結構造が適用された仮設足場1を示す側面図であり、図2は、図1のS2−S2線断面図であって、仮設足場1の正断面図である。仮設足場1は、図2に示されているように、複数の建枠2を左右に間隔を開けて並設するとともに、建枠2を上下に複数段に積み重ね、互いに左右に隣接する2個の建枠2同士の間にクロスブレース8と足場板9とを架け渡し、また、これらの建枠2同士の間に手摺り枠10を配置することにより構築されており、本実施形態では、建枠2は上下に2段2A,2B積み重ねられている。それぞれの建枠2は、図1に示されているように、2本の脚柱3と、これらの脚柱3同士の上部に架設された横架材4と、脚柱3と横架材4とを補強連結する補剛材5とにより、門形状又は鳥居形状になっている。
それぞれの脚柱3は、水平断面が円形となったスチール製の中空パイプであり、上下2段の建枠2A,2Bのうち、下段の建枠2Aの脚柱3の下端に、この建枠2Aのそれぞれの脚柱3の高さレベルを調整するためのジャッキベース6の上部が挿入されている。また、それぞれの脚柱3の上端には小径の接続部材3Aが結合されており、下段の建枠2Aのこの接続部材3Aに上段の建枠2Bの脚柱3の下端が挿入されることにより、下段の建枠2Aの上に上段の建枠2Bが積み重ねられている。
作業者が乗るための足場板9は、図2に示されているように、足場板9の長さ方向(図2では左右方向)の両端にフック部材9Aを備えており、これらのフック部材9Aが互いに左右に隣接する下段の2個の建枠2Aの横架材4に係止されることにより、足場板9は、これらの建枠2A同士の間に架け渡されている。
手摺り枠10は、このようにフック部材9Aを下段の2個の建枠2Aの横架材4に係止することで足場板9を建枠2A同士の間に架け渡す作業を行う前であって、下段の2個の建枠2Aの上に上段の2個の建枠2Bを積み重ねる前に、下段の2個の建枠2Aの間に架け渡される先行手摺り枠になっており、この先行手摺り枠10の全体正面図が図3に示されている。
図3に示されているように、手摺り枠10は、左右の縦部11A,11Bの上端間を水平部11Cが繋いでいる逆U字形の本体11と、中桟12と、下桟13と、これらの中桟12と下桟13との間に架設された2本の縦材14とが主要な部材となって構成されている。中桟12の両端は本体11の縦部11A,11Bにブラケット15で結合され、下桟13の両端は本体11の縦部11A,11Bにブラケット16で結合され、それぞれの縦材14の上下両端は中桟12と下桟13に溶接で結合されている。本体11の縦部11A,11Bのそれぞれには、突き当て部材17と、位置決め部材18とが取り付けられているとともに、これらの縦部11A,11Bには連結手段20も設けられている。連結手段20は、手摺り枠10を、互いに左右に隣接する下段の2個の建枠2Aの脚柱3に連結するためのものであって、縦部11Aの連結手段20と縦部11Bの連結手段20は、上下にずれて配置されている。これにより、左右方向に3個以上の建枠2を並設して仮設足場1を構築する場合に、左右方向に隣接配置される2個の手摺り枠10を、同じ建枠2Aの同じ脚柱3に連結できるようになっている。
また、本体11の縦部11A,11Bに設けられている2個の突き当て部材17同士、2個の位置決め部材18同士、2個の連結手段20同士は、互いに左右対称の形状、構造となっている。このため、図5、図7及び図9には、図3に示されているそれぞれ2個の突き当て部材17、位置決め部材18、連結手段20のうち、代表例として、図3のそれぞれ右側の突き当て部材17、位置決め部材18、連結手段20が拡大されて示されている。
なお、本体11の縦部11A,11Bのそれぞれに設けられている上記ブラケット15も互いに左右対称の形状、構造となっており、上記ブラケット16についても同じである。
手摺り枠10の構成部材となっている本体11と、中桟12と、下桟13は、アルミ製又はアルミ合金製の押し出し成形品又は引き抜き成形品を材料として形成されており、本体11は、この材料を所定長さに切断した後にU字形に折り曲げることにより、また、中桟12と下桟13は、この材料を所定長さに切断することにより、それぞれ形成されている。また、2本の縦材14は、水平断面が円形のアルミ製又はアルミ合金製の中空パイプで形成されている。
本体11と中桟12と下桟13の材料となっている上記アルミ製又はアルミ合金製の押し出し成形品又は引き抜き成形品は、図5のS6−S6線断面図である図6、図7のS8−S8線断面図である図8、及び図9のS10−S10線断面図である図10に示されているとおり、長手方向と直交する断面の形状が四角形又は略四角形になっている中空材であるとともに、互いに対向する2個の面21,22に浅い溝23が形成されたものとなっており、これらの溝23は上記材料の長手方向に連続している。
図3で示されている本体11の縦部11A,11Bと中桟12、下桟13とを結合するためのブラケット15,16は、板金の折り曲げ品であり、これらのブラケット15,16には、溝23に挿入されて縦部11A,11B、中桟12、下桟13と面接触している屈曲部が設けられている。このため、ブラケット15,16と、縦部11A,11B、中桟12、下桟13は、面接触しており、これにより、ブラケット15,16による縦部11A,11Bと中桟12、下桟13との大きな結合強度が確保されている。
そして、縦部11A,11Bと中桟12、下桟13はブラケット15,16で結合されていて、これらの縦部11A,11Bと中桟12、下桟13は溶接で結合されていないため、縦部11A,11Bと中桟12、下桟13を結合する作業を容易に行える。
また、手摺り枠10の側面図を示している図4から分かるように、ブラケット15,16は、手摺り枠10の外側の側面を形成している縦部11A,11Bの外側面11Dを覆う背面部15A,16Aと、これらの背面部15A,16Aから折り曲げられて手摺り枠10の内側へ延びている一対の延出部15B,15C,16B,16Cとからなる。図3から分かるように、ブラケット16の延出部16B,16Cは、下桟13にボルト、ナットによる1個の締結具24で締結されているとともに、縦部11A,11Bにボルト、ナットによる2個の締結具25で締結されている。一方、ブラケット15の延出部15B,15Cは、中桟12にボルト、ナットによる1個の締結具26で締結されているが、縦部11A,11Bには締結具で締結されていない。
すなわち、本実施形態に係るブラケット15は、本体11の縦部11A,11Bにボルト、ナットによる締結具で締結されておらず、このブラケット15の一対の延出部15B,15Cが、前記溝23が形成されている縦部11A,11Bの2つの面を覆っているだけである。このため、ブラケット15の配置位置と対応する縦部11A,11Bの箇所には、締結具のボルトを挿入するための貫通孔は形成されていない。したがって、縦部11A,11Bのこの箇所には、断面欠損が生じていない。
このため、本体11の前述した水平部11Cに作業者の体重等に基づく大きな衝撃荷重が手摺り枠10の外方へ作用しても、ブラケット15の配置位置と対応する縦部11A,11Bの箇所において、縦部11A,11Bが折曲したり、折損したりすることを抑制することができる。
また、ブラケット15は、上述したように、縦部11A,11Bと面接触しているため、上記衝撃荷重によるモーメントは縦部11A,11Bを介してブラケット15に有効に伝達されることになり、このため、ブラケット15自身の強度も、縦部11A,11Bに折曲、折損が生ずることを防止するために有効に貢献する。
なお、ブラケット15が縦部11A,11Bにボルト、ナットによる締結具で締結されておらず、このため、ブラケット15が縦部11A、11Bに沿って上下に摺動できる状態になっていても、中桟12は縦材14を介して下桟13に連結されているため、ブラケット15及び中桟12が縦部11A、11Bに沿って落下することはない。
また、中桟12と下桟13は本体11に取り付け、取り外し可能なブラケット15,16で結合されており、このため、中桟12と下桟13は本体11に溶接で結合されていないため、中桟12や下桟13、縦材14が損傷しても、これらの中桟12、下桟13、縦材14だけを交換し、本体11を再使用することができる。
次に、図5及び図6で示されている突き当て部材17と、図7及び図8で示されている位置決め部材18と、図9及び図10で示されている連結手段20について説明する。
図5及び図6で示されている突き当て部材17は板金の折り曲げ品であり、底部17Aと、この底部17Aから立ち上がった一対の立上り部17B,17Cとからなり、図6に示されているように、これらの立上り部17B,17Cの後部17D,17Eは、底部17Aを越えて本体11の縦部11Aまで達している。これらの後部17D,17Eの間に縦部11Aが挿入され、後部17D,17Eと縦部11Aとがボルト30,ナット30Aで締結されている。また、図6に示されているように、突き当て部材17の先部は末広がり状の拡大部17Fとなっており、この拡大部17Fにおける底部17Aの先端部に、図1及び図2で示した建枠2の脚柱3を挿入することができる略半円形の湾曲凹部17Gが形成されている。このため、図3に示されているように、手摺り枠10の本体11の左右の縦部11A,11Bごとに設けられている突き当て部材17の湾曲凹部17Gに、左右に並設されている2個の建枠2の脚柱3が挿入されて、これらの突き当て部材17をこれらの脚柱3に突き当てることにより、手摺り枠10の位置は、左右方向に位置決めされることになる。
なお、図5に示されているように、突き当て部材17におけるボルト30の位置は、突き当て部材17の後部の位置になっているとともに、突き当て部材17の重心位置Gよりも高位置となっている。このため、突き当て部材17には、ボルト30を中心として下方へ回動しようとするモーメントが作用している。このモーメントにより底部17Aの後端が縦部11Aに当接し、これにより、突き当て部材17は、縦部11Aに対して直角の姿勢となるようになっている。
また、図5に示されているように、立上り部17B,17Cの後部にはボルト30を挿通させる孔31が形成され、この孔31は斜め下向きに延びる長孔となっている。このため、突き当て部材17をボルト30を中心に上向きに回動させると、図16に示されているように、突き当て部材17を縦部11Aに沿って直立させた姿勢とさせることができる。
また、図6に示されているように、脚柱3が挿入される湾曲凹部17Gの位置は突き当て部材17の中心線からずれているため、本体11の縦部11Aと縦部11Bのそれぞれに設けられる2個の突き当て部材17は同一のものとならない。このため、それぞれの突き当て部材17に、縦部11Aと縦部11Bのうちのどちらの縦部に取り付けるべき突き当て部材であるかが作業者に分かるようにするための印を設けてもよい。このような印を突き当て部材17に設けるための一例は、例えば、それぞれの突き当て部材17の前記立上り部17B、17Cのうち、これらの突き当て部材17を縦部11Aと11Bに取り付けたときに同じ方向を向くことになる一方の立上り部に目印用の孔を設けることである。
図7及び図8で示されている位置決め部材18は、アルミ製又はアルミ合金製の押し出し成形品又は引き抜き成形品を短い間隔で切断することにより形成されたものとなっている。図7で示されている位置決め部材18の上下寸法が上記間隔である。この位置決め部材18は、縦部11Aが内部に挿入される中空部18Aと、この中空部18Aから手摺り枠10の外側方に屈曲して延びるアーム部18Bとからなる。
図8に示されているように、中空部18Aの内面には、縦部11Aの前記溝23に嵌合する凸部18Cが形成されており、この中空部18Aと縦部11Aは、これらの中空部18Aと縦部11Aを貫通した1個のボルト32とナット32Aにより結合されている。なお、中空部18Aの外面には、ナット32Aが嵌合する溝状の凹部18Dが形成されているため、中空部18Aと縦部11Aをボルト32とナット32Aで結合するときに、ボルト32をレンチ等の工具で回転させても、ナット32Aが回転することを防止できる。
また、図7に示されているように、アーム部18Bの先端下部には、建枠2の前述した横架材4の外形と対応する湾曲凹部18Eが設けられている。この湾曲凹部18Eは、位置決め部材18を、上述したように、アルミ製又はアルミ合金製の押し出し成形品又は引き抜き成形品を短い間隔で切断することにより形成した後に、アーム部18Bの先端下部を切削加工等することにより形成されている。
このような位置決め部材18も手摺り枠10の本体11の縦部11A,11Bごとに設けられ、それぞれの位置決め部材18の湾曲凹部18Eを、仮設足場1を構築するために左右方向に並設された2個の建枠2の横架材4の上に載せることにより、手摺り枠10の位置は、上下方向に位置決めされることになる。
このように位置決め部材18の湾曲凹部18Eを横架材4の上に載せると、位置決め部材18には、手摺り枠10の重量により、1個のボルト32を中心に上向きに回動しようとする荷重が作用することになるが、位置決め部材18は、中空部18Aに設けられた凸部18Cが縦部11Aの溝23に嵌合しているため、ボルト32を中心にして位置決め部材18が回動することはない。
すなわち、本実施形態では、溝23に対する凸部18Cの嵌合により、位置決め部材18を縦部11Aに結合するためのボルト32の個数を1個にできることになる。
また、本実施形態の位置決め部材18は、上述のように、アルミ製又はアルミ合金製の押し出し成形品又は引き抜き成形品を短い間隔で切断することにより形成されたものとなっているため、多数の位置決め部材18を安価に製造することができ、位置決め部材18の製造コストを低減できる。
なお、図8に示されているように、位置決め部材18のアーム部18Bは屈曲して外側方へ延出し、このアーム部18Bの先端下部に湾曲凹部18Eが設けられているため、突き当て部材17と同様に、本体11の縦部11Aと縦部11Bのそれぞれに設けられる2個の位置決め部材18は同一のものとならない。このため、それぞれの位置決め部材18に、縦部11Aと縦部11Bのうちのどちらの縦部に取り付けるべき位置決め部材であるかが作業者に分かるようにするための印を設けてもよい。
図9及び図10で示されている連結手段20は、縦部11Aに取り付けられた連結部材40と、この連結部材40に水平方向にスライド自在に配置された楔部材41とで構成されている。これらの連結部材40と楔部材41のうち、連結部材40は、アルミ製又はアルミ合金製の押し出し成形品又は引き抜き成形品を短い間隔で切断することにより形成されたものとなっており、このため、本実施形態では、多数の連結部材40が安価に製造され、連結部材40の製造コストは低減されている。図9で示されている連結部材40の上下寸法が上記間隔となっている。
水平方向の長さを有している連結部材40の基端部40Aの内部には、図10に示されているように、縦部11Aを挿通させるための空洞部40Bが形成されており、また、この基端部40Aと縦部11Aは、これらの基端部40Aと縦部11Aを貫通した1個のボルト33とナット33Aにより結合されている。基端部40Aには、縦部11Aの溝23に嵌合する凸部40Cが形成され、このため、1個のボルト33を中心にして連結部材40が回動することはない。すなわち、連結部材40についても、溝23に対する凸部40Cの嵌合により、連結部材40を縦部11Aに結合するためのボルト33の個数を1個にできることになる。
また、基端部40Aの外面には、ナット33Aが嵌合する溝状の凹部40Dが形成されているため、基端部40Aと縦部11Aをボルト33とナット33Aで結合するためにボルト33をレンチ等の工具で回転させたときに、ナット33Aが回転することはない。
連結部材40の先端部40Eには、建枠2の脚柱3を挿入することができる凹部40Fが形成されており、この凹部40Fの開口部40Gは、楔部材41が水平方向へスライドすることにより開閉される。この楔部材41の全体形状は図11に示されている。楔部材41はスチール製の厚板の折り曲げ品であって、この楔部材41は、楔部材41が連結部材40に配設されたときに、幅方向が上下方向となっているベース部41Aと、このベース部41Aの上下端から水平方向に突出している一対の突出部41B,41Cとからなるコ字形状となっている。そして、この楔部材41は、図10に示されているように、一対の突出部41B,41Cの先端が脚柱3と向かい合う向きとなって連結部材40に配設されている。
図10に示されているように、連結部材40には、凹部40Fの開口部40Gの前記スライド方向の両側には、言い換えると、開口部40Gの楔部材41がスライドする方向の両側には、第1及び第2ガイド突起部42,43が形成されており、これらのガイド突起部42,43には、楔部材41が挿通案内されるガイド部となっている第1及び第2ガイド孔42A,43Aが形成されている。これらのガイド孔42A,43Aは、図10のS15−S15線断面図であって、ガイド孔42Aについて示している図15のとおり、四角形又は略四角形となっている。ガイド孔42A,43Aは、アルミ製又はアルミ合金製の押し出し成形品又は引き抜き成形品を短い間隔で切断することにより連結部材40を生産した後に、ガイド突起部42,43に孔開け加工を行うことによって形成されている。
図11に示されているように、楔部材41のベース部41Aには、楔部材41のスライド方向である楔部材41の長さ方向に延びる長孔44が形成されている。図10に示されているように、連結部材40の第1ガイド突起部42には、凹部40Fの開口部40Gとは反対側へ延出した延出部42Bが設けられおり、この延出部42Bに、長孔44に挿通されたピン状部材となっているボルト34が挿入されている。このボルト34の先端には、連結部材40の内部において、ナット34Aが螺合されている。
このため、楔部材41は、長孔44の両端部44A,44Bの位置がボルト34の位置に達するまでスライド自在であり、図12には、凹部40Fの開口部40Gを開けるためにスライドした楔部材41が後退限位置まで達した状態が示されている。このときは、長孔44の前記スライド方向における凹部40Fの開口部40Gを閉じる側の端部44Aがボルト34の位置に達していても、楔部材41の前記スライド方向における凹部40Fの開口部40Gを閉じる側の端部41Dが、言い換えると、楔部材41の先端部41Dが、前記2個の第1及び第2ガイド孔42A,43Aのうち、ガイド孔42Aから脱出していない。
このため、楔部材41が後退限位置まで後退しても、楔部材41の先端部41Dがガイド孔42Aから脱出することはない。そして、このガイド孔42Aは、第1及び第2ガイド孔42A,43Aのうち、前記スライド方向の凹部40Fの開口部40Gを開ける側に設けられた第1ガイド孔となっている。
手摺り枠10を図2で示されている2個の下段の建枠2Aの間に架け渡す作業を行うときには、それぞれの連結手段20を図12の状態にした後に、作業者は両手で手摺り枠10を持ってこの手摺り枠10を2個の下段の建枠2Aの間に配置し、縦部11A,11Bごとに設けられている位置決め部材18の湾曲凹部18Eを下段の2個の建枠2Aの横架材4の上に載せ、縦部11A,11Bごとに設けられている連結手段20の連結部材40の凹部40Fに下段の2個の建枠2Aの脚柱3を挿入する。次いで、それぞれ連結手段20の楔部材41の後端部をハンマー等の工具で打つことにより、楔部材41を、図10に示されているように、前進スライドさせ、これにより、連結部材40の凹部40Fの開口部40Gを楔部材41により閉じさせ、この楔部材41の先端部41Dを第2ガイド孔43Aに挿入させる。
楔部材41の前記一対の突出部41B,41Cの先端には、このように楔部材41が前進スライドしたときに、脚柱3に押圧接触する面となっている楔面50が形成されており、この楔面50は、楔部材41のスライド方向に対して傾斜していて、楔作用により脚柱3に押圧接触する面となっている。このため、楔部材41の後端部が上述のようにハンマー等の工具で打たれることにより楔部材41が前進スライドして、楔面50が脚柱3に楔作用で押圧接触することにより、連結部材40と楔部材41により構成されている連結手段20は脚柱3に連結されることになり、この連結が、本体11の縦部11Aと11Bに設けられているそれぞれの連結手段20について行われることにより、手摺り枠10は、2個の下段の建枠2Aに連結される。
このように手摺り枠10が2個の下段の建枠2Aに連結された後に、図2で示した足場板9を2個の下段の建枠2Aの横架材4同士の間に架け渡すとともに、この足場板9の上に乗った作業者が、手摺り枠10の本体11の縦部11A,11Bごとに設けられている突き当て部材17を図16の姿勢とし、次いで、2個の下段の建枠2Aの上に2個の上段の建枠2Bを積み重ね、この後に、それぞれの突き当て部材17を図5の姿勢とすることにより、これらの突き当て部材17の湾曲凹部17Gを上段の2個の建枠2Bの脚柱3に突き当てる。
なお、図5で説明したように、突き当て部材17におけるボルト30の位置は、突き当て部材17の後部の位置であって、突き当て部材17の重心位置Gよりも高位置となっているため、図16の姿勢となっていた突き当て部材17に押し倒し力を軽く作用させることにより、ボルト30を中心に突き当て部材17が自重で下向きに回動することになり、これにより、突き当て部材17を図16の姿勢から図5の姿勢に確実にすることができる。
本実施形態に係る楔部材41は、前述したように、幅方向が上下方向となっているベース部41Aの上下端から一対の突出部41B,41Cが水平方向に突出しているコ字形状となっており、このため、この楔部材41は大きな曲げ強度を有している。したがって、上述したように、楔部材41が凹部40Fの開口部40Gを閉じて楔面50の楔作用によりこの楔面50が脚柱3に押圧接触したときに、楔部材41が大きく湾曲変形することはなく、このため、楔部材41に楔作用を発揮させてこの楔部材41を脚柱3に楔作用で押圧接触させることができる。
特に、本実施形態の楔部材41は、一対の突出部41B,41Cの先端が脚柱3と向かい合う向きとなって連結部材40に配設されているため、楔部材41の各部分のうち、脚柱3と押圧接触する部分は、ベース部41Aではなく、一対の突出部41B,41Cの先端となっている。これらの突出部41B,41Cの先端は、ベース部41Aよりも小さい面積となっているため、楔部材41は脚柱3と小さい面積で押圧接触することになる。
したがって、楔部材41の脚柱3に対する単位面積当たりの押圧接触力は大きくなり、このため、充分な楔作用により、言い換えると、大きな楔作用により楔部材41を脚柱3に押圧接触させることができ、これにより、手摺り枠10を建枠2に大きな連結強度で連結できることになる。
また、本実施形態では、図10及び図12に示されているように、楔部材41の一対の突出部41B,41Cの先端には、楔面50が楔部材41の全長又は略全長に渡って形成されておらず、一対の突出部41B,41Cの先端には、上述の楔面50と、この楔面50よりも連結部材40の凹部40Fの開口部40Gを閉じる側において、楔面50よりも大きな角度で前記スライド方向に対して傾斜して形成された傾斜面51とが設けられている。すなわち、前記スライド方向に対する楔面50の角度は、このスライド方向に対する傾斜面51の角度よりも緩やかな角度となっている。
このように本実施形態では、楔部材41の一対の突出部41B,41Cの先端に、楔面50と、この楔面50よりも大きな角度で前記スライド方向に対して傾斜して形成された傾斜面51とが設けられているため、楔面50を、楔部材41の全長又は略全長に渡る長さとした場合よりも、傾斜面51の傾斜角度に応じた分だけ楔部材41の全長は短くなっており、これにより、楔部材41が仮設足場1を構成する部材等と干渉するおそれが生じない。
また、本実施形態では、図10及び図12に示されているように、楔面50と傾斜面51との間は中間面52となっている。図13は、これらの楔面50と傾斜面51と中間面52の部分の拡大断面図である。図13において、楔面50の領域はAで、傾斜面51の領域はBで、中間面52の領域はCでそれぞれ示されている。また、前記スライド方向に対する楔面50の角度Dは、楔作用が生ずる4度〜7度の範囲内の角度であり、前記スライド方向に対する傾斜面51の角度Eは、8度以上の角度である。
そして、図13で示す実施形態の中間面52は、楔部材41のスライド方向と平行の平坦面となっている。このように楔面50と傾斜面51とを、楔部材41のスライド方向と平行の平坦面となっている中間面52を介して接続すると、傾斜面51と楔面50とが直接接続されず、中間面52を介して接続されるため、楔面50を前記脚柱3に楔作用で押圧接触されるために楔部材41を前進スライドさせたときに、楔面50が脚柱3に急激に押圧接触することを防止でき、楔面50による楔作用を一層確実に生じさせることができる。
また、図14は、別実施形態に係る中間面52’を示している。この中間面52’は、傾斜面51側から楔面50側へ延びるにしたがい全体として脚柱3に近づく面になっているとともに、この中間面52’は、水平断面が円形となっている脚柱3の外径方向へ僅かに湾曲膨出した湾曲面となっている。
これによると、楔部材41の後端部をハンマー等の工具で打つことにより、楔部材41を連結部材40の凹部40Fの開口部40Gを閉じる側へ前進スライドさせたときに、初めに中間面52’が脚柱3に当たり、このとき、中間面52’及び/又は脚柱3が弾性変形することにより、湾曲面となっている中間面52’が脚柱3を抱き込むようにしてこの脚柱3に接触することになる。次いで、楔部材41をさらに前進スライドさせると、楔面50が脚柱3に押圧接触し、このときの楔面50は、中間面52’が脚柱3を抱き込むようにして脚柱3に接触した影響がそのまま持続されることにより、脚柱3を抱き込むようにしてこの脚柱3に接触することになる。
このため、楔部材41と脚柱3との接触面が脚柱3の円周方向に大きくなり、これにより、楔部材41がスライド方向にずれ移動することを防止できることになる。
これらの実施形態において、楔部材41を脚柱3に楔作用で押圧接触させるためには、その反作用として、連結部材40の2個のガイド42A,43Aに楔部材41が大きな接触力で接触することになる。しかし、この接触は、楔部材41の一対の突出部41B,41Cの先端よりも面積が大きくなっているベース部41Aで行われるため、このベース部41Aを有している楔部材41の素材が、前述したようにスチールであって、ガイド孔42A,42Bが形成されている連結部材40の素材が、前述したように、スチールよりも軟質のアルミ又はアルミ合金となっていても、ガイド孔42A,43Aが摩滅してしまうおそれをなくすことができる。
すなわち、楔部材41を脚柱3に楔作用で押圧接触させるための反作用として2個のガイド42A,43Aに接触する楔部材41の部分が、ベース部41Aよりも面積が小さくなっている一対の突出部41B,41Cの先端である場合には、アルミ製又はアルミ合金製の連結部材40のガイド孔42A,43Aが、スチール製に楔部材41により摩滅してしまうおそれが生ずるが、ガイド孔42A,43Aに接触する楔部材41の部分がベース部41Aとなっている本実施形態では、このようなおそれを解消することができる。
また、脚柱3と楔部材41は、同じ素材であるスチールで形成されているため、楔部材41における脚柱3と押圧接触する部分になっている一対の突出部41B,41Cの先端が、ベース部41Aよりも小さい面積になっていても、これらの脚柱3と楔部材41のうち、一方が摩滅しまうおそれをなくすことができる。
前述したように、手摺り枠10を図2で示されている2個の下段の建枠2Aの間に架け渡す作業を行うために、作業者が、例えば、手摺り枠10を左右に交互に傾ける作業操作を行う場合には、図12の状態となっていた楔部材41が自重で自ずと前進スライドしてしまい、これにより、連結部材40の凹部40Fに脚柱3が挿入される前に、この凹部40Fの開口部40Gが楔部材41で閉じられてしまうおそれが生ずる。
このような問題を解決するためには、楔部材41の長孔44の前記スライド方向における凹部40Fの開口部40Gを閉じる側の端部に、前記ピン状部材となっているボルト34と協働して楔部材41が凹部40Fの開口部40Gを閉じる側へ前進スライドすることを防止するためのスライド防止部を設ければよい。
図17〜図19は、このようなスライド防止部60についての実施形態を示している。
図17のスライド防止部60は、長孔44の前記スライド方向における凹部40Fの開口部40Gを閉じる側の端部60Aを先細り状としたものである。この先細り状端部60Aの先端における最小直径は、ボルト34の軸部の直径よりも小さくなっている。このため、楔部材41の前端をハンマー等の工具で打つことにより、先細り状端部60Aにボルト34を圧入状態で挿入させることができ、先細り状端部60Aとボルト34との摩擦力により、楔部材41が凹部40Fの開口部40Gを閉じる側へ前進スライドしてしまうことを防止できる。
図18のスライド防止部60は、長孔44の前記スライド方向における凹部40Fの開口部40Gを閉じる側の端部を、長孔44に対して斜め上向きの角度をなした屈曲部60Bとし、後退スライドした楔部材41が、自重により図10及び図12で示した第1ガイド突起部42の第1ガイド孔42Aを中心に下方へ回動することにより、屈曲部60Bにボルト34が挿入し、これにより、楔部材41が第1ガイド孔42Aに対して下方向に傾くため、楔部材41が凹部40Fの開口部40Gを閉じる側へ前進スライドしてしまうことを防止できる。
図19のスライド防止部60は、長孔44の前記スライド方向における凹部40Fの開口部40Gを閉じる側の端部を、長孔44に対して直角の角度をなした長孔60Cとし、後退スライドした楔部材41が、自重により上述の第1ガイド突起部42の第1ガイド孔42Aを中心に下方へ回動することにより、長孔60Cの上部にボルト34が挿入し、これにより、楔部材41が第1ガイド孔42Aに対して下方向に傾くため、楔部材41が凹部40Fの開口部40Gを閉じる側へ前進スライドしてしまうことを防止できる。
なお、図17及び図19の実施形態のスライド防止部60によると、楔部材41は上下対称の形状となるため、手摺り枠10の左右の縦部11A,11Bごとに設けられる連結手段20の楔部材41を共通化することができる。
図20〜図23は、別実施形態に係る連結手段120を示す。前述の実施形態の連結手段20の楔部材41には長孔44が設けられ、連結部材40には、この長孔44に挿通されたボルト34が配置されていたが、図20〜図23の別実施形態に係る連結手段120の楔部材141には長孔が設けられておらず、また、連結部材140には、長孔に挿通されるボルトは配置されていない。
図20及び図21に示されているように、連結手段120の連結部材140には、脚柱3が挿入される凹部140Fと、この凹部140Fの開口部140Gを開閉するために水平方向へスライド自在となっている楔部材141を挿通案内するための第1及び第2ガイド孔142A,143Aが形成された第1及び第2ガイド突起部142,143とが設けられている。第1及び第2ガイド孔142A,143Aは、この実施形態における第1及び第2ガイド部となっている。また、図22に示されているように、楔部材141は、この楔部材141が連結部材140に配設されたときに幅方向が上下方向となっているベース部141Aと、このベース部141Aの上下端から水平方向に突出している一対の突出部141B,141Cとからなるコ字形状となっているとともに、前端には、突起141Eが設けられている。
この突起141Eは、楔部材141の材料となっているスチール製の厚板の一部を折り曲げ加工することにより形成されている。
図23は、図20のS23−S23線断面図であり、この図23に示されているように、第1ガイド突起部142に形成されている第1ガイド孔142Aには、このガイド孔142Aの内部に向かって突出した当接部142Bが設けられている。図21から分かるように、楔部材141が後退スライドした場合には、突起141Eが当接部142Bに当接することにより、楔部材141は後退限位置に達する。このときには、楔部材141の先端部141Dが第2ガイド孔142Aから脱出していない。このため、楔部材141が後退限位置まで後退しても、楔部材41の先端部141Dがガイド孔142Aから脱出することを防止することができる。
したがって、この実施形態の突起141Eは、第1ガイド孔142Aの当接部142Bと協働して楔部材141の先端部141Dが第1ガイド孔142Aから脱出することを防止するための脱出防止部70となっている。
なお、突起141Eは、第1ガイド突起部142にビス等で取り付けた板部材又はブロックとしてもよい。
また、第2ガイド突起部143の第2ガイド孔143Aの大きさを楔部材141が貫通できない大きさとすることにより、楔部材141が前進スライドしたときに、楔部材141がこの第2ガイド孔143Aから脱出することを防止できる。