<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる車両用空調装置の第1の実施形態について図1〜図3を参照して説明する。はじめに、図1を参照して、本実施形態にかかる車両用空調装置の概略構成について説明する。
図1に示すように、この空調装置では、車室内あるいは車室外の空気が吸入口11を介して空調ダクト10に導入されるとともに、この空気の風量及び温度が空調ダクト10内で調整される。そしてこの空調用空気が空調ダクト10の下流に設けられた吹き出し口12〜14を介して車室内に供給されることで、車室内の空調が行われる。
ここで、空調ダクト10において、吸入口11の下流には、ブロアモータ90によって回転駆動されるブロアファン40が設けられている。そしてこの空調装置は、ブロアモータ90の駆動を通じてブロアファン40の回転速度を変化させることで、空調用空気の風量を調整する。
また、空調ダクト10において、ブロアファン40の下流には、通過する空気を冷却、除湿するエバポレータ51が設けられている。このエバポレータ51には、冷媒配管を介してコンプレッサ52、コンデンサ53、及び膨張弁54が環状に連結されており、これらの要素によって冷却器50が構成されている。なお、冷却器50を構成する各要素51〜54はそれぞれ周知の構成をなしており、その機能も周知であることから、ここでの詳細な説明を割愛する。このうち、コンプレッサ52には、電磁クラッチ52aを介して車載エンジン55が駆動連結されている。すなわち、コンプレッサ52は、電磁クラッチ52aへの通電により車載エンジン55に接続されると、車載エンジン55の動力が伝達されて作動する。一方、コンプレッサ52は、電磁クラッチ52aへの通電が遮断されると、車載エンジン55との接続が解除されて停止する。
一方、空調ダクト10において、エバポレータ51の下流には、通過する空気を加熱するヒータ60が設けられている。このヒータ60は、車載エンジン55から適宜の配管を介して供給されるエンジン冷却水の熱により加熱されるものである。また、このヒータ60の上流側には、エアミックスダンパ用モータ91によって駆動されるエアミックスダンパ21が設けられている。そして、エアミックスダンパ21が開状態の方向に変化するほど、すなわち図中の矢印a1で示す方向に回動するほど、ヒータ60を通過する空調用空気の流量が増加するため、空調用空気が暖められる。すなわちこの場合には、空調用空気の温度が上昇する。一方、エアミックスダンパ21が閉状態の方向に変化するほど、すなわち図中の矢印a2で示す方向に回動するほど、ヒータ60を通過する空調用空気の流量が減少するため、空調用空気が暖められなくなる。すなわちこの場合には、空調用空気の温度が低下する。
また一方、空調ダクト10において、ヒータ60の下流には、デフロスタ吹き出し口12、フット吹き出し口13、及びフェイス吹き出し口14がそれぞれ設けられている。また、これらの吹き出し口12〜14には、吹き出し口切り替えダンパ用モータ92によって駆動されるデフダンパ22、フットダンパ23、及びフェイスダンパ24がそれぞれ設けられている。そしてこの空調装置は、これらのダンパ22〜24によって各吹き出し口12〜14を選択的に開閉させることで、空調用空気の吹き出し口を切り替える。
一方、車両のセンターコンソールには、当該空調装置を含めて、車両に搭載された各種機器を操作するためのコントロールパネルが設けられている。
次に、図2を参照して、このコントロールパネルの構造について説明する。
図2に示すように、このコントロールパネル70は、大きくは、以下の(a1)〜(a5)に示すスイッチを備えている。
(a1)空調用空気の風量を調整するための風量調整用スイッチ71。
(a2)空調用空気の温度を調整するための温度調整用スイッチ72。
(a3)空調用空気の吹き出し口を切り替えるための吹き出し口切り替えスイッチ73。
(a4)上記冷却器50を作動/停止させるためのエアコンスイッチ74。
(a5)運転席のドア、助手席のドア、運転席後部座席のドア、及び助手席後部座席のドアにそれぞれ設けられた窓ガラスを開閉させるための第1〜第4の窓開閉スイッチ75〜78。
このうち、風量調整用スイッチ71は、コントロールパネル70に形成された溝79aに沿って矢印b1,b2で示す方向に操作されるノブ71aを有している。なお本実施形態では、このノブ71aが風量調整用操作部に相当する。このノブ71aの中央部には、マーク71bが印字されており、このマーク71bがノブ71aの操作位置を示すものとなっている。また、コントロールパネル70には、ノブ71aの操作位置を示す文字、すなわち「OFF」、「1」、「2」、「3」、「4」といった文字が印字されている。そして本実施形態では、外力の印加に基づきノブ71aが「OFF」の位置に操作されると、上記ブロアファン40の回転が停止されて空調用空気の送出が停止される。また、外力の印加に基づきノブ71aが「1」〜「4」の位置に操作されると、上記ブロアファン40が回転して空調用空気が上記吹き出し口12〜14から送出される。なお、ノブ71aの操作位置に対応した数字が大きくなるほど、空調用空気の風量が大きくなる。すなわち、ノブ71aが「4」の位置に操作されると、空調用空気の風量が最大の風量となる。
また、エアコンスイッチ74は、コントロールパネル70に形成された溝79bに沿って矢印d1,d2で示す方向に操作されるノブ74aを有している。このノブ74aは、図中の実線の位置を基準位置として、同基準位置から矢印d2で示す方向に外力が印加されると、図中の破線の位置まで移動する。そして本実施形態では、ノブ74aが基準位置に位置しているときには、エアコンスイッチ74がオフ状態となって、上記コンプレッサ52が停止する。また、ノブ74aが破線の位置に位置しているときには、エアコンスイッチ74がオン状態となって、上記コンプレッサ52が作動する。
さらに、第1〜第4の窓開閉スイッチ75〜78は、コントロールパネル70に形成された溝79cに沿って矢印d1,d2で示す方向に操作されるノブ75a〜78aをそれぞれ有している。これらのノブ75a〜78aは、図中の実線の位置を基準位置として、同基準位置から矢印d1,d2で示す方向に外力が印加された場合には、図中の破線の位置までそれぞれ移動するが、外力が除かれた場合には、基準位置まで自動復帰する。そして本実施形態では、外力の印加に基づきノブ75a〜78aが矢印d1で示す方向に操作されると、車両のパワーウィンドウモータの駆動を通じて各車両ドアの窓ガラスが閉じる方向にそれぞれ動作する。また、外力の印加に基づきノブ75a〜78aが矢印d2で示す方向に操作されると、パワーウィンドウモータの駆動を通じて各車両ドアの窓ガラスが開く方向にそれぞれ動作する。
一方、温度調整用スイッチ72には、円環状に形成されて図中の矢印c1,c2で示す方向に回動するノブ72aが設けられている。なお本実施形態では、このノブ72aが操作部となる。このノブ72aには、マーク72bが印字されており、このマーク72bがノブ72aの操作位置を示すものとなっている。また、ノブ72aの内側の領域には、空調用空気の設定温度を模式的に示すマークM1,M2を有する温度表示部材72cが配設されている。そして、この温度調整用スイッチ72では、外力の印加に基づきノブ72aが図中の中立位置から矢印c1で示す方向に回動操作されると、上記エアミックスダンパ21が開状態の方向に変化して、空調用空気の設定温度が上昇する。またこのとき、マーク72bがマークM1の端部E1に対向する位置までノブ72aが操作されると、上記エアミックスダンパ21が最も開かれた状態となって、空調用空気の設定温度が最も高い温度となる。一方、外力の印加に基づきノブ72aが図中の中立位置から矢印c2で示す方向に回動操作されると、上記エアミックスダンパ21が閉状態の方向に変化して、空調用空気の設定温度が低下する。またこのとき、マーク72bがマークM2の端部E2に対向する位置までノブ72aが操作されると、上記エアミックスダンパ21が最も閉じた状態となって、空調用空気の設定温度が最も低い温度となる。このように、本実施形態にかかる空調装置では、ノブ72aを矢印c1,c2で示す方向に回動操作することで、空調用空気の設定温度を上昇させたり、あるいは低下させることができる。
一方、温度表示部材72cには、マークM1の端部E1に隣接するかたちでマークM3が印字されるとともに、マークM2の端部E2に隣接するかたちで、マークM4〜M7が矢印c2で示す方向に順に印字されている。そして、図中に破線で示すように、これらのマークM3〜M7に対応するかたちで、以下の(b1)〜(b5)に示す特定操作位置がそれぞれ設定されている。
(b1)マーク72bがマークM3に対向する第1の風量設定位置P1。この位置にノブ72aが操作された場合には、空調用空気の設定温度が最も高い温度に設定された状態が維持されたまま、上記ブロアファン40の回転速度が「4」の操作位置に対応した回転速度になって、空調用空気の風量が最大の風量に設定される。
(b2)マーク72bがマークM4に対向する第2の風量設定位置P2。この位置にノブ72aが操作された場合には、空調用空気の設定温度が最も低い温度に設定された状態が維持されたまま、上記ブロアファン40の回転速度が「4」の操作位置に対応した回転速度になって、空調用空気の風量が最大の風量に設定される。
(b3)マーク72bがマークM5に対向する冷却器作動位置P3。この位置にノブ72aが操作された場合には、更に上記コンプレッサ52が作動する。すなわち冷却器50が作動する。
(b4)マーク72bがマークM6に対向する第1の窓開放位置P4。この位置にノブ72aが操作された場合には、更に運転席のドア及び助手席のドアのそれぞれの窓ガラスが開く方向に動作する。
(b5)マーク72bがマークM7に対向する第2の窓開放位置P5。この位置にノブ72aが操作された場合には、更に運転席後部座席のドア及び助手席後部座席のドアのそれぞれの窓ガラスが開く方向に動作する。
ちなみに、ノブ72aの操作範囲は、第1の風量設定位置P1及び第2の窓開放位置P5を両端とする範囲に設定されている。また、ノブ72aは、第1及び第2の風量設定位置P1,P2、並びに冷却器作動位置P3に位置したとき、その位置が保持される。さらに、これらの操作位置P1〜P3に位置している状態で矢印c1,c2で示す方向に外力が印加されると、外力が印加された方向に回動する。また、ノブ72aは、冷却器作動位置P3に位置している状態で矢印c2で示す方向に外力が印加されると、第1及び第2の窓開放位置P4,P5まで回動するが、外力が取り除かれた場合には冷却器作動位置P3まで自動復帰する。すなわち、ノブ72aは、第1及び第2の窓開放位置P4,P5に操作されたときにモーメンタリ動作する。
また、本実施形態では、マークM3,M4が緑色に、マークM5が青色に、マークM6,M7がピンク色にそれぞれ着色されている。一方、コントロールパネル70において、風量調整用スイッチ71の下部には緑色のマークs1が、エアコンスイッチ74の下部には青色のマークs2が、更に第1〜第4の窓開閉スイッチ75〜78の下部にはピンク色のマークs3がそれぞれ印字されている。なお、マークs1については、空調用空気の風量が最大の風量になることを示す「MAX」の文字も併記されている。本実施形態ではこのように、特定操作位置P1〜P5を示すマークM3〜M7、及びスイッチ71,74〜78の近傍に設けられたマークs1〜s3については、それぞれ機能が対応するもの同士を共通の色で着色することとしている。これにより、ユーザは、特定操作位置P1〜P5を示すマークM3〜M7の色と、各スイッチ71,74〜78の近傍のマークs1〜s3の色とを比較すれば、ノブ72aを特定操作位置P1〜P5に操作したときに、どの車載機が駆動するかを容易に判断することができる。このため、利便性が向上するようになる。また、特定操作位置P1〜P5を示すマークとしてその機能を示す一般的なマークを用いる場合、すなわち例えば冷却器作動位置P3を示すマークとして「A/C」の文字を用いる場合と比較すると、特定操作位置P1〜P5を示すマークを簡素化することができるようにもなる。
なお、吹き出し口切り替えスイッチ73には、矢印c1,c2で示す方向に回動するノブ73aが設けられている。そしてユーザは、このノブ73aを回動操作することで、空調用空気の吹き出し口を切り替えることができる。
次に図3を参照して、本実施形態にかかる空調装置の電気的な構成について説明する。
図3に示すように、風量調整用スイッチ71は、一端が電源(電源電圧「+B」)に接続されるとともに、他端がグランド電位におかれた可変抵抗スイッチからなるものであって、上記ノブ71aに連動して動く可動接点71cを有している。すなわちこの風量調整用スイッチ71は、ノブ71aの操作位置に応じてその出力電圧Vbが変化する。また、温度調整用スイッチ72も、同じく、一端が電源に接続されるとともに、他端がグランド電位におかれた可変抵抗スイッチからなるものであって、上記ノブ72aに連動して動く可動接点72dを有している。すなわちこの温度調整用スイッチ72も、ノブ72aの操作位置に応じてその出力電圧Vtが変化する。
そして、これら風量調整用スイッチ71及び温度調整用スイッチ72を含め、上記吹き出し口切り替えスイッチ73、エアコンスイッチ74、及び第1〜第4の窓開閉スイッチ75〜78の出力信号が電子制御装置80に取り込まれている。この電子制御装置80は、演算処理装置(CPU)、プログラムメモリ(ROM)やデータメモリ(RAM)などを有するマイクロコンピュータを備えて当該空調装置の駆動を統括制御する部分である。なお本実施形態では、この電子制御装置80が制御手段となる。ここで、電子制御装置80は、上記各スイッチ71〜78の出力に基づいて以下の(c1)〜(c5)に示す制御を実行する。
(c1)風量調整用スイッチ71の出力に基づいて上記ノブ71aの操作位置を検出するとともに、検出されたノブ71aの操作位置に基づいてブロアモータ90の駆動を制御する。これにより空調用空気の風量が調整される。
(c2)温度調整用スイッチ72の出力に基づいて上記ノブ72aの操作位置を検出するとともに、検出されたノブ72aの操作位置に基づいてエアミックスダンパ用モータ91の駆動を制御する。これにより空調用空気の温度が調整される。
(c3)吹き出し口切り替えスイッチ73の出力に基づいて上記ノブ73aの操作位置を検出するとともに、検出されたノブ73aの操作位置に基づいて吹き出し口切り替えダンパ用モータ92の駆動を制御する。これにより空調用空気の吹き出し口が切り替えられる。
(c4)エアコンスイッチ74の出力に基づいて上記ノブ74aの操作位置を検出するとともに、検出されたノブ74aの操作位置に基づいて電磁クラッチ52aへの通電/通電の遮断を行う。これによりコンプレッサ52が駆動/停止する。
(c5)第1〜第4の窓開閉スイッチ75〜78の出力に基づいて上記ノブ75a〜78aの操作位置をそれぞれ検出するとともに、検出されたノブ75a〜78aの操作位置に基づいて運転席のドア、助手席のドア、運転席後部座席のドア、及び助手席後部座席のドアにそれぞれ設けられたパワーウィンドウモータ93の駆動を制御する。これにより車両ドアの各窓ガラスが開閉される。
また、電子制御装置80は、温度調整用スイッチ72の出力電圧Vtに基づいてノブ72aが上記特定操作位置P1〜P5に操作されたか否かを検出する。そして、ノブ72aが特定操作位置P1〜P5に操作された旨を検出したとき、各操作位置P1〜P5に対応する特定の車載機を駆動させる。具体的には、ノブ72aが上記第1及び第2の風量設定位置P1,P2に操作された旨を検出した場合には、空調用空気の風量が最大の風量となるようにブロアモータ90の駆動を制御する。また、ノブ72aが上記冷却器作動位置P3に操作された旨を検出した場合には、エアコンスイッチ74がオフ状態であることを条件に、電磁クラッチ52aへの通電を行ってコンプレッサ52を作動させる。さらに、ノブ72aが上記第1及び第2の窓開放位置P4,P5に操作された旨を検出した場合には、パワーウィンドウモータ93を駆動させて各車両ドアの窓ガラスを開放させる。一方、電子制御装置80は、ノブ72aが冷却器作動位置P3から第2の風量設定位置P2に戻された旨を検出した場合には、エアコンスイッチ74がオフ状態であることを条件に、電磁クラッチ52aへの通電を遮断してコンプレッサ52を停止させる。また、ノブ72aが第1及び第2の風量設定位置P1,P2から温度調整の操作位置に戻された旨を検出した場合にはまず、風量調整用スイッチ71の出力電圧Vbに基づいて現在のノブ71aの操作位置を検出する。そして、空調用空気の風量がノブ71aの操作位置に対応した風量となるようにブロアモータ90の駆動を制御する。
車両用空調装置としてのこうした構成によれば、ユーザは、温度調整用のノブ72aを第1の風量設定位置P1に操作するだけで、空調用空気の温度を最も高い温度に設定する操作に併せて空調用空気の風量を最大の風量に設定することができる。このため、特にユーザが車室内を即座に暖めたい状況において操作性が向上するようになる。
また、ユーザは、ノブ72aを第2の風量設定位置P2に操作すれば、空調用空気の温度を最も低い温度に設定する操作に併せて空調用空気の風量を最大の風量に設定することができる。このため、特にユーザが車室内を即座に冷やしたい状況において操作性が向上するようになる。
さらに、ユーザは、ノブ72aが第2の風量設定位置P2に位置しているときに、同ノブ72aを冷却器作動位置P3に操作すれば、冷却器50を作動させることができる。このため、ユーザが車室内を冷却したい状況において利便性が向上するようになる。
また、ユーザは、ノブ72aが冷却器作動位置P3に位置しているときに、同ノブ72aを第1及び第2の窓開放位置P4,P5に操作すれば、車両ドアの窓ガラスを開放させることができる。このため、例えば夏場など、車室内の温度が著しく上昇しているような状況では、車室内の換気を行って車室内の温度を即座に低下させることができるため、特にこのような状況において利便性が向上するようになる。
以上説明したように、本実施形態にかかる車両用空調装置によれば、以下のような効果が得られるようになる。
(1)ノブ72aの操作位置として、空調用空気の温度が最も高い温度に設定される操作位置に隣接するかたちで第1の風量設定位置P1を設けることとした。そしてノブ72aが第1の風量設定位置P1に操作されたとき、空調用空気の風量を最大の風量に設定することとした。これによりユーザは、ノブ72aを操作するだけで、空調用空気の温度を最も高い温度に設定する操作に併せて空調用空気の風量を最大の風量に設定することができるため、特にユーザが車室内を暖めたい状況において操作性が向上するようになる。
(2)ノブ72aの操作位置として、空調用空気の温度が最も低い温度に設定される操作位置に隣接するかたちで第2の風量設定位置P2を設けることとした。そしてノブ72aが第2の風量設定位置P2に操作されたとき、空調用空気の風量を最大の風量に設定することとした。これによりユーザは、ノブ72aを操作するだけで、空調用空気の温度を最も低い温度に設定する操作に併せて空調用空気の風量を最大の風量に設定することができるため、特にユーザが車室内を冷やしたい状況において操作性が向上するようになる。
(3)ノブ72aの操作位置として、第2の風量設定位置P2に隣接するかたちで冷却器作動位置P3を設けることとした。そしてノブ72aが冷却器作動位置P3に操作された際に、コンプレッサ52を作動させることとした。これによりユーザは、ノブ72aを第2の風量設定位置P2に操作したとき、同ノブ72aを更に冷却器作動位置P3に操作すれば、冷却器50を作動させることができるため、利便性が向上するようになる。
(4)ノブ72aの操作位置として、冷却器作動位置P3に隣接するかたちで第1及び第2の窓開放位置P4,P5を設けることとした。そしてノブ72aが第1及び第2の窓開放位置P4,P5に操作されたとき、各車両ドアの窓ガラスを開く方向に動作させることとした。これによりユーザは、ノブ72aを冷却器作動位置P3に操作したとき、同ノブ72aを更に第1及び第2の窓開放位置P4,P5に操作すれば、各車両ドアの窓ガラスを開放させることができるため、ユーザが車室内の換気を行って車室内の温度を即座に低下させたい状況において特に有効となる。
(5)温度表示部材72cには、特定操作位置P1〜P5を示すマークM3〜M7を設けることとした。また、スイッチ71,74〜78の近傍には、マークM3〜M7の色と同じ色に着色されたマークs1〜s3を設けることとした。これによりユーザは、ノブ72aを特定操作位置P1〜P5に操作したときにどの車載機が駆動するかを容易に判断することができるため、利便性が向上するようになる。また、特定操作位置P1〜P5を示すマークとしてその機能を示すマークを用いる場合と比較すると、特定操作位置を示すマークを簡素化することができるようにもなる。
<第2の実施形態>
続いて、本発明にかかる車両用空調装置の第2の実施形態について図4〜図7を参照して説明する。なお、本実施形態にかかる車両用空調装置は、空調ダクト内に配設された各種ダンパなどと、ユーザによって操作される操作部とがケーブルなどを介して機械的に連結された、いわゆるマニュアル式の空調装置を想定している。また、この第2の実施形態も車両用空調装置としての基本構造は先の図1及び図2に例示した構造に準ずるものであり、ここでは先の図1に対応する図として、車両用空調装置の概略構成を図4に示す。以下では、先の図1及び図2に例示した要素と同一の要素にはそれぞれ同一の符号を付すことにより重複する説明を割愛し、以下では、両者の相違点を中心に説明する。
図4に示すように、本実施形態にかかる空調装置では、風量調整用のノブ71aの操作に基づいてブロアモータ90の駆動状態が変化し、これにより空調用空気の風量が変化する。また、温度調整用のノブ72aとエアミックスダンパ21とがケーブルなどを介して機械的に連結されている。そして、このノブ72aがユーザによって操作されると、ノブ72aに印加された外力がケーブルを介してエアミックスダンパ21に伝達されて、同ダンパ21が矢印a1,a2で示す方向に動作する。さらに、吹き出し口切り替え用のノブ73aと各ダンパ22〜24とがケーブルなどを介して機械的に連結されている。そして、このノブ73aがユーザによって操作されると、ノブ73aに印加された外力がケーブルを介して各ダンパ22〜24に伝達されて、各ダンパ22〜24が動作する。
一方、本実施形態でも、これらノブ71a,72a,73aを含めて、上記エアコンスイッチ74及び第1〜第4の窓開閉スイッチ75〜78が車両のコントロールパネルに設けられている。
次に、図5を参照して、コントロールパネルの構造について説明する。なお、同図5は、先の図2に対応する図として、車両のコントロールパネルの正面構造を示したものである。
同図5に示されるように、風量調整用スイッチ71の溝79aは、その矢印d1,d2で示す方向の長さがノブ71aの矢印d1,d2で示す方向の長さよりも長くなるように形成されている。ここで、ノブ71aは、矢印d1,d2で示す方向の位置が図中の実線の位置である状態を基準位置として、同基準位置から矢印d2で示す方向に外力が印加されると、図中の二点鎖線で示される領域Aまで移動するが、外力が除かれた場合には基準位置まで自動復帰する。そして本実施形態では、外力の印加に基づきノブ71aが基準位置から領域Aまで操作されたとき、空調用空気の風量が最大の風量(「4」の位置に対応する風量)となるようにブロアファン40の回転速度が設定される。
一方、温度調整用のノブ72aは、図示しないリンク機構を介してノブ71a,74a〜78aと機械的に連結されている。そして、外力の印加に基づきノブ72aが第1及び第2の風量設定位置P1,P2に操作された場合には、ノブ71aがリンク機構を介して基準位置から矢印d2で示す方向に押圧されて領域Aまで移動する。したがってこの場合には、空調用空気の風量が最大の風量となる。また、外力の印加に基づきノブ72aが冷却器作動位置P3に操作された場合には、ノブ74aがリンク機構を介して基準位置から矢印d2で示す方向に更に押圧されて破線の位置まで移動する。したがってこの場合には、上記冷却器50が作動する。さらに、外力の印加に基づきノブ72aが第1の窓開放位置P4に操作された場合には、ノブ75a,76aがリンク機構を介して矢印d2で示す方向に更に押圧されて破線の位置まで移動する。したがってこの場合には、運転席のドア及び助手席のドアのそれぞれの窓ガラスが開く方向に動作する。また、外力の印加に基づきノブ72aが第2の窓開放位置P5に操作された場合には、ノブ77a,78aがリンク機構を介して矢印a2で示す方向に更に押圧されて破線の位置まで移動する。したがってこの場合には、運転席後部座席のドア及び助手席後部座席のドアのそれぞれの窓ガラスが開く方向に動作する。
なお、本実施形態では、ノブ72aとエアミックスダンパ21との間の機械的な連結に若干の遊びが設けられているため、ノブ72aが第1の風量設定位置P1に操作されたとき、エアミックスダンパ21はマークM1の端部E1の位置に対応した開閉状態を維持する。また、ノブ72aが第2の風量設定位置P2、冷却器作動位置P3、並びに第1及び第2の窓開放位置P4,P5に操作されたとき、エアミックスダンパ21はマークM2の端部E2の位置に対応した開閉状態を維持する。
このような構成によれば、ユーザは、ノブ72aを特定操作位置P1〜P5に操作した際に、各スイッチ71,74〜78がそれぞれ機械的に操作される様子を視覚的に認知することができる。このため、ユーザにとって分かりやすい操作を実現することができるようになる。
次に、図6及び図7を参照して、本実施形態にかかる空調装置の電気的な構成について説明する。はじめに、図6を参照して、風量調整用スイッチ71の操作に基づいてブロアファン40を駆動させるブロアファン駆動系について説明する。
図6に示すように、このブロアモータ駆動回路は、イグニッションスイッチのオン/オフに応じてオン状態/オフ状態が切り替えられるリレー100と、ブロアモータ90に直列に接続される分圧抵抗R1〜R3とを有している。そして、ブロアモータ90は、リレー100を介して電源(電源電圧「+B」)による給電を受ける構成となっている。
一方、上記風量調整用スイッチ71は、グランド電位に置かれた端子T1、及び同端子T1に電気的に接続されることでグランド電位となる端子T2を有している。また、この風量調整用スイッチ71は、分圧抵抗R1,R2の間の配線に電気的に接続される端子T3、分圧抵抗R2,R3の間の配線に電気的に接続される端子T4、及び分圧抵抗R3とブロアモータ90との間の配線に電気的に接続される端子T5を有している。そしてこの風量調整用スイッチ71では、図中の表に示されるように、ノブ71aが「1」〜「4」の位置に操作されたとき、端子T1と端子T2とが電気的に接続されるため、端子T2がグランド電位となる。このため、イグニッションスイッチがオン状態であることを条件にリレー100がオン状態となる。すなわちこの場合には、ブロアモータ90に電圧が印加されて、上記ブロアファン40が駆動する。また、ノブ71aが「1」〜「4」の位置にそれぞれ操作されたとき、端子T1〜T5の電気的な接続状態が図中の表に示されるように切り替えられることで、ブロアモータ90に直列に接続される分圧抵抗の大きさが変化する。これにより、ブロアモータ90に印加される電圧の大きさが変化するため、ノブ71aの操作位置に応じてブロアファン40の回転速度が変化する。さらに、本実施形態では、ノブ71aが先の図5に例示した領域Aに操作されたとき、各端子T1〜T5の接続状態が「4」の位置と同様の接続状態に切り替わることで、ブロアファンの回転速度が最大の回転速度に設定される。
次に、図7を参照して、エアコンスイッチ74の操作に基づいて上記コンプレッサ52を作動させるとともに、上記第1〜第4の窓開閉スイッチ75〜78の操作に基づいて各車両ドアの窓ガラスを開閉させる構成について説明する。
同図7に示すように、この空調装置には、エアコンスイッチ74、並びに第1〜第4の窓開閉スイッチ75〜78の出力が電子制御装置80に取り込まれている。この電子制御装置80は、エアコンスイッチ74、並びに第1〜第4の窓開閉スイッチ75〜78のそれぞれの出力に基づいて上記(c4),(c5)に示した制御を実行する。
車両用空調装置としてのこのような構成によっても、ユーザは、温度調整用のノブ72aを特定操作位置P1〜P5に操作するだけで、空調用空気の温度を設定する操作に併せて、例えば空調用空気の風量を最大の風量に設定することができる。このため、操作性や利便性が向上するようになる。
以上説明したように、本実施形態による車両用空調装置によれば、上記第1の実施形態による(1)〜(5)の効果と同等、もしくはそれらに準じた効果が得られるとともに、以下のような効果が得られるようになる。
(6)ノブ72aが特定操作位置P1〜P5に操作されたとき、各スイッチ71,74〜78を機械的に操作することとした。これにより、ユーザは、ノブ72aを特定操作位置P1〜P5に操作した際に、各スイッチ71,74〜78が機械的に操作される様子を視覚的に認知することができるため、ユーザにとって分かりやすい操作を実現することができるようになる。
<他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記第1の実施形態では、温度調整用のノブ72aが特定操作位置P1〜P5に操作されたか否かを検出するための検出部として温度調整用スイッチ72を用いることとしたが、これに代えて、例えば同検出部を温度調整用スイッチ72とは別に設けてもよい。この場合には、同検出部として、例えばロータリスイッチや磁気式の位置センサなどを用いてもよい。
・上記第2の実施形態では、ノブ72aとエアミックスダンパ21との間の機械的な連結に遊びを設けることとした。これに代えて、例えばノブ72aが特定操作位置P1〜P5に操作されたときに、ケーブルを介してエアミックスダンパ21を駆動させないような適宜の構造を設けてもよい。このような構成によっても、ノブ72aが特定操作位置P1〜P5に操作されたときに、エアミックスダンパ21の開閉状態を、マークM1の端部E1の位置に対応する開閉状態、あるいはマークM2の端部E2の位置に対応する開閉状態に維持することが可能である。
・上記各実施形態では、ノブ72aが第1及び第2の風量設定位置P1,P2に操作されたとき、その時点から所定時間が経過することを条件に、空調用空気の風量を風量調整用のノブ71aの操作位置に応じた風量に戻してもよい。この場合、第1の実施形態ではまず、電子制御装置80にタイマを設ける。そして、電子制御装置80は、ノブ72aが第1及び第2の風量設定位置P1,P2に操作された旨を検出して空調用空気の風量を最大の風量に設定したとき、その時点からの経過時間をタイマを通じて計測する。そして、計測された経過時間が所定時間に達したとき、空調用空気の風量が風量調整用のノブ71aの操作位置に応じた風量となるようにブロアモータ90の駆動を制御すればよい。また、上記第2の実施形態では、例えばノブ72aが第1及び第2の風量設定位置P1,P2に操作された時点から所定時間が経過したときに、ノブ72aをマークM1の端部E1の位置、あるいはマークM2の端部E2の位置に自動復帰させるタイマ式の復帰機構を設ければよい。このような構成によれば、ユーザがノブ72aを第1の風量設定位置P1あるいは第2の風量設定位置P2に操作して空調用空気の風量が最大の風量に設定されたときに、その状態が継続することがない。したがって、例えば車室内が冷えすぎたり、あるいは暖まり過ぎるような状況を未然に回避することができるため、利便性が向上するようになる。なお、上記各実施形態では、ノブ72aが冷却器作動位置P3に操作されたとき、その時点から所定時間が経過することを条件に冷却器50を停止させるといった構成を採用することも可能である。
・上記各実施形態では、ノブ72aが第1及び第2の風量設定位置P1,P2に操作されたとき、空調用空気の風量を最大の風量に設定することとしたが、これに代えて、例えば「1」〜「3」の位置に対応する風量に設定してもよい。
・上記各実施形態では、特定操作位置P1〜P5を示すマークM3〜M7と、スイッチ71,74〜78の近傍に設けられたマークs1〜s3とについては、それぞれ機能が対応するもの同士を共通の色で着色することとした。これに代えて、それぞれ機能が対応するもの同士に共通の図形を用いるなど、適宜のシンボルパターンを用いてもよい。
・上記各実施形態では、空調用空気の温度を調整する操作位置とは別の特定操作位置として、第1及び第2の風量設定位置P1,P2、冷却器作動位置P3、並びに第1及び第2の窓開放位置P4,P5を設けることとした。これに代えて、例えば図8に示すように、冷却器作動位置P3、並びに第1及び第2の窓開放位置P4,P5を省略して、第1及び第2の風量設定位置P1,P2のみを設けてもよい。また、冷却器作動位置P3のみを設けたり、あるいは第1及び第2の風量設定位置P1,P2のみを設けてもよい。さらに、特定操作位置として、例えば上記空調ダクト10の吸入口11からの空気の導入先を車室内から車室外に切り替えるための操作位置や、空調用空気の吹き出し口を予め定められた吹き出し口に設定するための操作位置などを設けてもよい。要は、特定操作位置として、エアミックスダンパ21以外の要素であって且つ、車室内の空気を変化させることのできる特定の車載機を所要に作動させるための操作位置が設けられていればよい。
・上記各実施形態では、特定操作位置P1〜P5を、空調用空気の温度が最も高い温度に設定される操作位置、及び空調用空気の温度が最も低い温度に設定される操作位置の両者に隣接するかたちでそれぞれ設けることとした。これに代えて、例えば両者のいずれか一方の近傍にのみ設けてもよい。
<付記>
次に、上記実施形態及びその変形例から把握できる技術的思想について追記する。
(イ)前記車両ドアの窓ガラスは、運転席のドア及び助手席のドアのそれぞれの窓ガラスを含むとともに、前記窓開放位置は、前記運転席のドア及び前記助手席のドアのそれぞれの窓ガラスを開放させる第1の窓開放位置を含み、該第1の窓開放位置が、前記冷却器作動位置に隣接するかたちで設けられていることを特徴とする車両用空調装置。同構成によれば、ユーザは、操作部を冷却器作動位置まで操作して冷却器を作動させたとき、同操作部を第1の窓開放位置まで更に操作すれば、運転席のドア及び助手席のドアのそれぞれの窓ガラスを開放させることができる。したがって、車室内の換気を効率良く行うことができるため、上述のようにユーザが車室内の換気を行って車室内の温度を即座に低下させたい状況において特に有効となる。
(ロ)前記車両ドアの窓ガラスは、運転席後部座席のドア及び助手席後部座席のドアのそれぞれの窓ガラスを含むとともに、前記窓開放位置は、前記運転席後部座席のドア及び前記助手席後部座席のドアのそれぞれの窓ガラスを開放させる第2の窓開放位置を含み、該第2の窓開放位置が、前記第1の窓開放位置に隣接するかたちで設けられていることを特徴とする車両用空調装置。同構成によれば、ユーザは、操作部を第1の窓開放位置まで操作して運転席のドア及び助手席のドアのそれぞれの窓ガラスを開放させたとき、同操作部を第2の窓開放位置まで更に操作すれば、全ての車両ドアの窓ガラスを開放させることができる。したがって、例えば夏場など、車室内の温度が著しく上昇しているような状況では、車室内の換気を行って車室内の温度を即座に低下させることができるため、特にこのような状況において利便性が向上するようになる。
(ハ)前記操作部の前記特定操作位置への操作に基づいて前記特定の車載機が所要に作動したとき、その時点から所定時間が経過することを条件に前記特定の車載機の動作状態を前記操作部が前記特定の操作位置に操作される前の状態に復帰させる復帰手段を更に備えることを特徴とする車両用空調装置。同構成によれば、ユーザが操作部を特定の操作位置に操作して特定の車載機を所要に作動させたとき、その状態が継続することがないため、例えば車室内が冷えすぎたり、あるいは暖まりすぎるような状況を未然に回避することができる。このため、利便性が向上するようになる。