JP5562606B2 - 放射性アンモニア含有排液の処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、特に原子力発電プラントから排出される、放射性のアンモニア含有排液の処理方法に関する。
原子力発電所等から発生する炉水浄化系の使用済みイオン交換樹脂廃棄物は、60Co等の放射能濃度が高く、余裕深度処分対象の廃棄物とされている。処分する廃棄体を減容する観点から、樹脂の分解処理等が各々の発電所で検討されている。一例としては、使用済み樹脂に硫酸を通水し、60Co等の核種を樹脂から溶離し、放射能レベルを低下することで余裕深度処分対象となる廃棄物を減容する処理方法が実施されている。この処理からは、硫酸を主成分とする廃液が発生する。また、銅触媒、高温高圧の酸化反応を用いた樹脂の分解処理が検討されている。この処理でも、硫酸塩を主成分とする廃液が発生する。
一方、これらの樹脂分解液および樹脂溶離廃液には、副生成物としてのアンモニアが含まれるようになる。この廃液を直接セメント固化すると、固化体作製時に多量のアンモニアガスが発生するため、オフガス処理等の負担が大きくなる問題がある。
このような問題に鑑み、特許文献1においては、放射性アンモニア含有排液中にアルカリを添加してその排液のpHを10以上とした後、加熱下に空気を通気してアンモニアを気相分離させた後、生成したアンモニアガスを触媒で分解し、アンモニア除去後の残留排液をセメント固化して安定化処理を施すことが開示されている。
しかしながら、この方法ではセメント固化の他に、アンモニアの気相分離及び生成したアンモニアガスの触媒での分解処理等の操作が必要となるため、放射性アンモニア含有排液の処理に関する操作が煩雑化するという問題が生じる。
特開2007−147453号
本発明は、放射性アンモニア含有排液からのアンモニアの除去と、前記排液の安定化処理とを簡易に行うことができる新規な方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく、本発明の一態様は、放射性アンモニア含有排液中に陽イオン交換体を浸漬させ、前記排液中のアンモニウムイオンを前記陽イオン交換体に固定化するステップと、前記アンモニウムイオンを固定化した前記陽イオン交換体及び前記アンモニウムイオンの固定化後の前記排液の残留分に導入したセメント材を混練してセメント固化するステップと、を具えることを特徴とする、放射性アンモニア含有排液の処理方法に関する。
上記態様によれば、排液中に含まれるアンモニアを予め陽イオン交換体に固定化させた後、このアンモニアが固定化された陽イオン交換体と、アンモニアが除去された残留排液とをセメント固化して安定化するようにしている。したがって、セメント固化の際に、排液中に含まれるアンモニアは既に陽イオン交換体に固定化されているので、例えば、セメント固化の際に、残留排液中に極微量のアンモニアが残存していたり、上記陽イオン交換体及び残留排液とセメントとを攪拌して混合する際に、攪拌によって陽イオン交換体に固定化されたアンモニウムイオンが分離したりして、所定量のアンモニアガスが発生する場合においても、上述したように、排液を直接セメント固化する場合に比較してそのアンモニアガス発生量を極力低減することができる。
また、上記態様によれば、従来のセメント固化の操作に加えて、排液中に陽イオン交換体を浸漬させるという極めて簡易な操作を付加するのみで、セメント固化の際に発生するアンモニアガスの発生を極力抑えることができる。
なお、特許第3346690号、特許第3491794号、特許第3555807号及び特許第4104845号においては、ゼオライト等の陽イオン交換体にアンモニウムイオンを固定化させることが開示されているが、これらの技術は放射性排液の処理に関するものではなく、単に下水等の非放射性排液において菌を含む汚泥を処理するための技術であって本発明の技術分野とは異なる。
また、技術分野の相違に基づく処理対象の排液の相違に依存して、上述した先行技術においては、アンモニウムイオンを固定化した陽イオン交換体は沈殿させて除去するのみであるが、本発明においては、放射性排液を処理する観点からアンモニウムイオンを固定化した陽イオン交換体をも安定化処理しなければならず、そのために単に除去して廃棄するのみではなく、セメント固化する必要がある。
このように上述した先行技術と本発明とはアンモニウムイオンを陽イオン交換体に固定化する点では共通しているが、技術分野及び処理対象の排液の相違に基づいて、その後の工程が異なる。したがって、上記先行技術において、本発明の技術的事項と一部共通の内容が開示されているとしても、技術分野の相違及びそれに伴って処理工程全体が相異なるものであるので、上述した先行技術をもって本発明を容易に推考することができないことは明らかである。
なお、本発明の一態様においては、前記放射性アンモニア含有排液のpHを8以下とする。この場合、以下に詳述するように、排液中のアンモニウムイオンに対するアンモニアの割合を低減させることができるので、陽イオン交換体に対するアンモニウムイオンの固定化を促進させることができるとともに、残留排液中のアンモニアの割合が減少し、セメント固化の際に残留排液から生成するアンモニアガスの量を低減することができる。
また、本発明の一態様においては、前記固定化のステップと前記セメント固化のステップとは、同一の処理容器を用いて順次に行う。これによって排液の処理に伴うシステム構成をも簡易化することができる。
以上説明したように、本発明によれば、放射性アンモニア含有排液からのアンモニアの除去と、前記排液の安定化処理とを簡易に行うことができる新規な方法を提供することができる。
実施形態における放射性アンモニア含有廃棄の処理方法で使用する処理容器の概略構成を示す断面図である。 実施形態における放射性アンモニア含有廃棄の処理方法で使用する処理容器の概略構成を示す上平面図である。 実施形態における放射性アンモニア含有廃棄の処理方法を説明するためのフローチャートである。 溶液中のアンモニウムイオン及びアンモニアの存在割合と、溶液のpHとの関係を示すグラフである。
以下、本発明の詳細、並びにその他の特徴及び利点について図面を参照しながら説明する。
図1及び図2は、本実施形態の処理方法で使用する処理容器の概略構成である。図1は、処理容器の断面構成を示す図であり、図2は、処理容器の上平面図(上平面構成)を示す図である。但し、図2では、処理容器の構成を明確にすべく、攪拌機のモータ部についての記載は省略している。図3は、本実施形態における放射性アンモニア含有廃棄物の処理方法を説明するためのフローチャートである。なお、本実施形態は、バッチ式の処理方法に関する。
図1及び図2に示すように、本実施形態で使用する処理装置10は、容器本体11と、容器本体11の内容物を攪拌するための攪拌機12と、内容物が外方へ飛散しないようにするための容器本体11に対する蓋体13と、内容物から発生するガスを容器本体11の外方に排気するための排気ベント14とを具備している。
攪拌機12は、モータ部121と、このモータ部121から下方に向け、蓋体13を貫通するようにして延在してなるシャフト123と、このシャフト123の先端部に設けられた攪拌翼124とを有し、インドラムミキサを構成している。なお、攪拌機12には、切り離しジョイント122が設けられており、これより下方に位置するシャフト123の一部及び攪拌翼124を適宜切り離したり、接続したりすることができるようになっている。
また、蓋体13には、容器本体11内の内容物から発生するガスを外方に放出するための排気ベント14が形成されているとともに、処理すべき放射性排液を容器本体11に投入するための排液投入口16、及び陽イオン交換体、セメントを容器本体11に投入するための処理剤投入口17が形成されている。
次に、図1及び図2に示す処理装置10を用いた放射性アンモニア含有排液の処理方法を図3に示すフローチャートとともに説明する。
最初に、例えば、原子力発電所等から発生する炉水浄化系の使用済みイオン交換樹脂廃棄物から生じた、放射性の樹脂分解液又は樹脂溶離廃液(放射性アンモニア含有排液)Aを、図1及び図2に示す処理容器10の排液投入口16から容器本体11内に導入するとともに、陽イオン交換体Bを処理剤投入口17から容器本体11内に導入する。次いで、容器本体11内に投入された排液及び陽イオン交換体を攪拌機12によって混練(ステップS1)し、排液中に含まれるアンモニウムイオンを陽イオン交換体に固定化させる。
なお、攪拌機12における攪拌翼124の回転速度は、例えば80rpm〜120rpmとすることができる。
次いで、セメント材Cを同じく処理剤投入口17から容器本体11内に導入する。次いで、アンモニウムイオンが固定化された陽イオン交換体B及びこれを含有する排液Aを、導入したセメント材Cと混練(ステップS2)し、固化して安定化する。なお、セメント材Cの混練は、このセメント材Cが固化し、ある程度の強度を奏するようになるまで行う。したがって、混練時間は使用するセメント材Cによって異なるようになる。また、混練の際の攪拌翼124の回転速度は、例えば上述の範囲に設定することができる。
但し、排液とセメント材Cとを混練する際に、排液中に残存している微量のアンモニアが気化したり、一旦陽イオン交換体Bに固定化されたアンモニウムイオンが分離してアンモニアガスとなったりする場合がある。これらアンモニアガスはその他の気化成分とともに、蓋体13に形成された排気ベント14より容器本体11の外部に排出される。この際、排気ベント14内に図示しないアンモニア捕集フィルターを備え付けておくことによって、生成したアンモニアガスを容器本体11、すなわち処理容器10の外部に放出させることなく、捕集することができる。換言すれば、処理容器10において放射性アンモニア含有排液の処理を完結することができる。
このように、本実施形態によれば、セメント固化の際に、排液中に含まれるアンモニアは既に陽イオン交換体に固定化されているので、例えば、セメント固化の際に、残留排液中に極微量のアンモニアが残存していたり、上記陽イオン交換体及び残留排液とセメントとを攪拌して混合する際に、攪拌によって陽イオン交換体に固定化されたアンモニアが分離したりして、所定量のアンモニアガスが発生する場合においても、上述したように、排液を直接セメント固化する場合に比較してそのアンモニアガス発生量を極力低減することができる。
また、上記態様によれば、従来のセメント固化の操作に加えて、排液中に陽イオン交換体を浸漬させるという極めて簡易な操作を付加するのみで、セメント固化の際に発生するアンモニアガスの発生を極力抑えることができる。
なお、本実施形態で使用する陽イオン交換体は汎用のものを用いることができるが、特にアンモニウムイオンの吸着性及び固定化に優れるゼオライトであることが好ましい。ここでいうゼオライトは、天然ゼオライト、モルデナイト、クリノブチライト、合成ゼオライトなどのゼオライト系鉱物の総称である。但し、天然ゼオライト及び合成ゼオライトの一種であるモレキュラーシーブを用いることが特に好ましい。
また、本実施形態で使用するセメント材は、アルミナセメント、高炉スラグセメント及びポルトランドセメント等であることが好ましい。これらのセメント材は容易に入手ができるとともに安価であって、かつ海水や化学物質に対して安定であるので、本実施形態のように放射性排液を固化して安定化させるセメント材として適している。特に、アルミナセメントは、アルミニウムの原料であるボーキサイトと石灰石から作られ、酸化アルミニウムを含むセメントであって、混練後すぐに強い強度を発揮する。
本実施形態では、図1及び図2に示すような処理装置10を用い、この処理装置10において排液中のアンモニウムイオンの陽イオン交換体への固定及びセメント固化を実施したが、それぞれ別の装置を用いて行うこともできる。この場合、セメントと排液等との混練は、上述したようなインドラムミキサの他にアウトドラムミキサを用いることもできる。この場合、バッチ式ではなく、連続した排液処理を行うこともできる。
また、本実施形態では、放射性アンモニア含有排液のpHを8以下とすることが好ましい。本発明者らは、鋭意検討の結果、アンモニウムイオン及びアンモニア(ガス)の存在割合と、これらを含む溶液のpHとの間に図4に示すような関係があることを見出した。図4によれば、溶液のpHが8を超えてくると、アンモニウムイオンの割合が急激に減少し、アンモニア(ガス)の割合が急激の増大することが分かる。
したがって、上述のように、放射性アンモニア含有排液のpHを8以下とすることによって、排液中のアンモニアの存在割合を予め十分に低減しておくことができ、陽イオン交換体の使用量を適宜に調節することによって、排液中にアンモニアを残存させることなく、アンモニウムイオンを陽イオン交換体によって十分に固定化することができるようになる。この結果、後のセメント固化の際において発生するアンモニアガスの量を十分に低減することができる。
また、図4から明らかなように、アンモニアガスの存在割合を減少させてアンモニウムイオンの存在割合を増大させるには、放射性アンモニア含有排液のpHが7.5以下であることが好ましく、特には7以下であることが好ましい。
なお、放射性アンモニア含有排液のpH調整は、イオン交換樹脂廃棄物の樹脂成分を硫酸によって溶解して得た残留排液であるような場合は、自ずから上述したpH8以下の条件を満たす場合もあるが、かかる条件を必然的に満足しないような場合においては、適宜硫酸、塩酸あるいは硝酸などの酸を加えることによってpH8以下とする。但し、放射性アンモニア含有排液のpHがあまりにも低くなって強酸性を呈するようになると、その後の処理に悪影響をもたらす恐れがあるので、pHの下限値はおおよそ6である。
(実施例1及び比較例1,2)
陽イオン交換体無機系イオン交換体としてモレキュラーシーブ3Aを用いた(実施例1)。モレキュラーシーブ3Aは、メノ−乳鉢で210μm以下に粉体化した後、120℃で2時間乾燥処理した。また、比較検討材料として、ベントナイト微粉末を120℃で2時間乾燥処理したもの(比較例1)と、シャモット(骨材)を篩いで210μm以下の細かい粒子を分別した後、120℃で2時間乾燥処理したもの(比較例2)を用いた。
模擬廃液の廃液仕様は以下に示す。
水 : 67.2 (g)
(NHSO : 3.76(g)
NaSO : 13.7 (g)
また、セメント固化体の作製条件を以下に示す。
廃液 : 84.7 (g)
アルミナセメント: 88.9 (g)
陽イオン交換体 : 29.6 (g)
さらに、アンモニアガス発生量の測定は、以下の手順で行った。
(1)作製したセメント混練物を100mlのポリ瓶に充填した。
(2)加工した20Lの開放口を設けたテドラーバック(登録商標)にセメント混練物を入れて密封した。
(3)真空ポンプでテドラーバック中の空気を出した。
(4)真空ポンプを送気モ−ドで使用し、3.85L/minで2分間送気してテドラ−バックに、7.7Lの空気を入れて密封した。
(5)所定期間毎にアンモニア用のガス検知管を使用して、テドラーバック中の空気を吸引サンプリングしてアンモニアガス濃度を測定した。
その結果、比較例1のベントナイトや比較例2のシャモットのアンモニアガス発生量は10,000ppm以上であったのに対し、実施例のモレキュラーシーブを用いた場合は、6、000ppm〜7,000ppmのアンモニアガス発生量であることを確認できた。このことから、モレキュラーシーブを用いアンモニアを固定化した廃液をセメント固化した場合は、アンモニアを除去せずにセメント固化した場合に比べ、セメント固化後のアンモニアガスの発生量を1/2程度まで低減できることが判明した。
なお、上記実施例では、陽イオン交換体としてモレキュラーシーブを用いた場合についてのみ記載しているが、天然ゼオライトを用いた場合においても同様の効果を得ることができた。
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記態様に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変更や変形が可能であ
る。
10 処理容器
11 容器本体
12 攪拌機
13 蓋体
14 排気ベント
16 排液投入口
17 処理剤投入口

Claims (5)

  1. 放射性アンモニア含有排液中に陽イオン交換体を浸漬させ、前記排液中のアンモニウムイオンを前記陽イオン交換体に固定化するステップと、
    前記アンモニウムイオンを固定化した前記陽イオン交換体及び前記アンモニウムイオンの固定化後の前記排液の残留分に導入したセメント材を混練してセメント固化するステップと、
    を具えることを特徴とする、放射性アンモニア含有排液の処理方法。
  2. 前記陽イオン交換体はゼオライトであることを特徴とする、請求項1に記載の放射性アンモニア含有排液の処理方法。
  3. 前記ゼオライトは天然ゼオライト又はモレキュラーシーブの少なくとも一方であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の放射性アンモニア含有排液の処理方法。
  4. 前記セメントは、アルミナセメント、高炉スラグセメント及びポルトランドセメントからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の放射性アンモニア含有排液の処理方法。
  5. 前記放射性アンモニア含有排液のpHを8以下とするステップを具えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載の放射性アンモニア含有排液の処理方法。
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