JP5554483B2 - 金属と樹脂の複合体及びその製造方法 - Google Patents

金属と樹脂の複合体及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5554483B2
JP5554483B2 JP2008233749A JP2008233749A JP5554483B2 JP 5554483 B2 JP5554483 B2 JP 5554483B2 JP 2008233749 A JP2008233749 A JP 2008233749A JP 2008233749 A JP2008233749 A JP 2008233749A JP 5554483 B2 JP5554483 B2 JP 5554483B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
resin
alloy
titanium alloy
metal
type titanium
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2008233749A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2010064397A (ja
Inventor
正徳 成富
直樹 安藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Taisei Purasu Co Ltd
Original Assignee
Taisei Purasu Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Taisei Purasu Co Ltd filed Critical Taisei Purasu Co Ltd
Priority to JP2008233749A priority Critical patent/JP5554483B2/ja
Publication of JP2010064397A publication Critical patent/JP2010064397A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5554483B2 publication Critical patent/JP5554483B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B29WORKING OF PLASTICS; WORKING OF SUBSTANCES IN A PLASTIC STATE IN GENERAL
    • B29CSHAPING OR JOINING OF PLASTICS; SHAPING OF MATERIAL IN A PLASTIC STATE, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; AFTER-TREATMENT OF THE SHAPED PRODUCTS, e.g. REPAIRING
    • B29C66/00General aspects of processes or apparatus for joining preformed parts
    • B29C66/70General aspects of processes or apparatus for joining preformed parts characterised by the composition, physical properties or the structure of the material of the parts to be joined; Joining with non-plastics material
    • B29C66/71General aspects of processes or apparatus for joining preformed parts characterised by the composition, physical properties or the structure of the material of the parts to be joined; Joining with non-plastics material characterised by the composition of the plastics material of the parts to be joined

Description

本発明は金属と樹脂の複合体及びその製造方法に関し、より詳細には、移動機械、屋外機器、舶用機器、一般機械部品、スポーツ用具等に用いられ、冷間加工が可能で高強度のチタン合金であるβ型チタン合金の形状物と金属を含む他の形状物とを接着剤により接合した金属と樹脂の複合体、β型チタン合金の形状物と樹脂形状物とを直接的に接合した金属と樹脂の複合体、β型チタン合金の形状物と繊維強化プラスチック(以下「FRP」という)を接着剤により接合した金属と樹脂の複合体、β型チタン合金の形状物と研磨材等フェノール樹脂硬化物が一体化した金属と樹脂の複合体、並びにそれぞれの製造方法に関する。
金属同士を接合する接着剤、金属と合成樹脂を強く接着する技術等は、自動車、家庭電化製品、産業機器等の部品製造業等だけでなく、建材や土木材を含む広い産業分野において求められており、このために多くの接着剤が開発されている。この中には非常に優れた接着剤が提案されている。
しかしながら、接着剤を使用しない、より合理的な接合方法も従来から研究されてきた。マグネシウム、アルミニウムやその合金である軽金属類、又、ステンレス等の鉄合金類に対し、接着剤の介在なしで高強度のエンジニアリング樹脂を一体化する方法がその一例である。例えば、本発明者等は、予め射出成形金型内にインサートしていた金属部品に、熱可塑性樹脂を射出して樹脂部分を成形すると同時に、その成形品と金属部品とを接合する方法を提案した(以下「射出接合」と呼ぶ)。
この発明は、アルミニウム合金に対しポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、「PBT」という)、又はポリフェニレンサルファイド樹脂(以下、「PPS」という)を射出接合させる製造技術を提案している(例えば、特許文献1参照)。また、他にアルミニウム材の陽極酸化皮膜に大きめの穴を設け、この穴に合成樹脂体を食い込ませ接着させる接合技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献1の提案におけるこの射出接合の原理は、以下に示すようになっている。アルミニウム合金を水溶性アミン系化合物の希薄水溶液に浸漬させ、アルミニウム合金を水溶液の弱い塩基性によって微細にエッチングさせるものである。また、この浸漬では、アルミニウム合金表面へのアミン系化合物分子の吸着が同時に起こる。この処理がなされたアルミニウム合金を射出成形金型にインサートし、溶融した熱可塑性樹脂を高圧で射出させる。
このとき、熱可塑性樹脂と、アルミニウム合金表面に吸着していたアミン系化合物分子が遭遇することで発熱や高分子切断反応が起こる。この化学反応と平行し、樹脂は低温の金型温度に保たれたアルミニウム合金に接して急冷され、このために結晶化し固化せんとする(結晶化反応)。化学反応と結晶化反応は競争反応の関係になると推定され、化学反応は進み結晶化反応は抑制される。その結果、樹脂の粘度はアルミニウム合金に冷やされても急上昇することなく、超微細なアルミニウム合金面上の凹部にも潜り込める。このことにより、アルミニウム合金と熱可塑性樹脂との接合体では、樹脂がアルミニウム合金表面から剥がれることなく強固に接合された状態となる。すなわち、結晶化反応を抑制できるような化学反応が生じると強固な射出接合ができる。
実際、アミン系化合物と化学反応できるPBTやPPSがこのアルミニウム合金と射出接合ができることを確認している。この射出接合のメカニズムを本発明者らは「NMT(Nano molding technologyの略)」理論(仮説)と称した。
ここで上記NMT理論の他にも、金属部品を射出成形機の金型にインサートし、これに対して熱可塑性樹脂材料を射出して一体化する技術が存在する(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、この技術はNMT理論と比較して未成熟であり、接合力で劣っていたことから、NMT理論は本分野に多大に貢献することとなった。
そこで本発明者らは、アルミニウム合金以外の金属への射出接合に関して接合技術の開発を行った。その結果、以下に示す「新NMT」理論に行き着いた。即ち、アミン系化合物の金属部品表面への化学吸着なしに、要するに特段の発熱反応や何らかの特異な化学反応の助力を得ることなしに、射出接合が可能な条件を発見した。そしてこれは以下に述べる多種の金属合金で実証できた。
新NMT理論による射出接合理論では、少なくとも以下の条件を必要とする。第1条件は、硬い高結晶性樹脂を使用すること、即ちPPSやPBTやポリアミドを使うことである。しかもこれらを射出接合に合わせてさらに改良した組成物にすることが必要である。他の条件は、金型にインサートする金属部品の表層が丈夫で硬く、かつ特定の表面形状を有していることである。
例えば、マグネシウム合金を素材としてその形状物を使用する場合、自然酸化層で覆われたままのマグネシウム合金では耐食性が低いので、これを化成処理して表層を金属酸化物や金属リン酸化物にすることで、硬度の高いセラミックス質で覆われた表面とすることができる。これらセラミック質の表層を有し、かつ、ミクロンオーダーでの凹凸面を有するマグネシウム合金部品であれば前記条件に合致させることができた。
これら表面処理されたマグネシウム合金形状物を射出成形金型にインサートした場合の接合理論は以下のようになる。金型及びインサートしたマグネシウム合金形状物は、射出する樹脂の融点より約150℃低い温度に保たれているので、射出された樹脂は金型内の流路に入った途端に急冷され、マグネシウム金属部品に接近した時点で融点以下になっている可能性が高い。
どのような結晶性樹脂でも溶融状態から急速に冷却されて融点以下になった場合、即時に結晶化するわけでなく、僅かな時間であるが融点以下の溶融状態、すなわち、過冷却状態の時間がある。マグネシウム合金形状物上の凹部の径が1〜10μm程度と比較的大きく、その凹部深さが径の半分程度までの場合、樹脂組成物によっては過冷却から微結晶が生じる限られた時間内に樹脂は入り込み得る。また、生じた高分子微結晶群の数密度がまだ小さい場合も大きな凹部なら樹脂は入り込み得る。これは不規則に運動していた分子鎖が整列状態となったときの微結晶の大きさが分子モデルから推定すると数nm〜10nmの大きさとみられるからである。
それゆえ、微結晶は10nm径の超微細凹部に対し簡単に侵入出来るとは言い難いが、数十nm周期の凹凸面の凹部ならば、若干は樹脂流の一端が侵入する可能性がある。ただし、微結晶は同時発生的に無数に生じるので、射出樹脂の先端や金型金属面に接している箇所では樹脂流の粘度が急上昇する。結果的に、急冷時の結晶化速度を特殊なコンパウンドで遅くした樹脂を使用した場合、1〜10μm周期で深さがその周期の半分の0.5〜5μm程度の凹部であれば、溶融樹脂はその凹部奥底まで侵入でき、もしその凹部内壁面にさらに10〜100nm周期程度の超微細凹凸が更にあった場合、その超微細凹凸の隙間の凹部に樹脂流の一端が侵入できるとみられた。
化成処理をしたマグネシウム合金表面を電子顕微鏡で観察すると、10〜50nm周期の超微細凹凸が観察され、樹脂流が侵入し得る表面構造であることが確認された。マグネシウム合金に限らず、上記と同様な表面構造の金属合金の場合、射出接合したときに、樹脂流はミクロンオーダーの凹部(すなわち、1〜10μm周期の凹凸があり、その凹凸高低差が周期の半分程度までの物)の奥底まで侵入しうる。さらにその凹部に形成された超微細凹凸部に樹脂流が侵入した後に樹脂が結晶化固化することで、硬い表層で覆われた超微細凹凸及びミクロンオーダーの凹凸に樹脂が引っかかり、これを引き抜くのは困難となる。
実際、そのような形状を目指して、銅、チタン、または鋼材等の金属合金表面にエッチング加工や化学処理を施し、これに前述のように改良したPPS系樹脂を射出接合すると相当強い接合力が生じた。金属合金表面は、酸化や化成処理によって金属酸化物等のセラミックス質の微結晶群やアモルファス層としたが、これが硬く丈夫なスパイクの役目を担ったのである。すなわち、超微細凹凸がミクロンオーダーの凹部の中でスパイクのように働き、樹脂部に強い引き剥がし力がかかってもミクロンオーダーの凹部の中で固化した樹脂分は抜けることなく、結果的に金属合金と樹脂間の強い接合を得たものである。
上記改良PPS樹脂について述べる。射出成形においては、樹脂組成物は射出により溶融状態から融点以下の温度に急冷される。急冷時の結晶化速度を遅くした樹脂組成物を用いた場合、金型にインサートした金属合金の超微細凹凸に係る凹部に侵入する時間がとれることになり、より強い接合力を生むことになる。これは射出接合に適する樹脂組成物を選択する上で重要な条件となる。
本発明者らは、前記の考え方に基づき、前述のようにマグネシウム合金やその他の金属合金の形状物を化学エッチングし、さらに化成処理等の表面処理によって表層をセラミックス化硬化することで、これに特殊組成とした硬質の結晶性樹脂を射出接合させて高接合性を得ることを見出した(特許文献4〜8)。各文献では、各金属種毎に接合条件を詳述しているが、共通している考え方は、前記新NMT理論である。要するに、この新NMT理論は、金属種に捉われない一般論として通じることを示している。
新NMT理論の条件について、次のようにまとめられる。金属合金については、その金属合金種に見合った化学処理をして以下の(1)〜(3)を持った表面にすることが基本的な必要条件である。
(1)1〜10μm周期で高低差がその周期の半分程度までの凹凸面とすること、すなわちミクロンオーダーの粗度を有した表面とすること、
(2)前記の凹部内壁面は10〜500nm周期、最も好ましくは50〜100nm周期の超微細凹凸面とすること、
(3)表面はセラミック質の硬質相の薄層で覆われたものにすること、具体的には環境的に安定な金属酸化物や金属リン酸化物の薄層で覆われたものにすること、
である。このようにした金属合金表面の凹凸に液状の樹脂組成物が侵入し侵入後に硬く硬化した場合、金属合金と硬化した樹脂分は非常に強固に接合する、という簡潔な考え方である。
この新NMT理論で熱可塑性樹脂の射出接合を説明すると以下のようになる。急冷時の結晶化固化速度を遅くすることが出来た硬質で高結晶性の熱可塑性樹脂組成物を射出した場合、射出成形金型内に射出された樹脂組成物は、融点以下の温度に冷やされてもしばらくの間は過冷却状態の液状である。
それゆえに、射出成形金型内に前記の金属合金を前もってインサートしておけば、(1)について、ミクロンオーダーの粗度をなしている凹部に容易に侵入し得る。さらに(2)について、超微細凹凸の凹部にも完全ではないだろうがある程度侵入できるのである。その後に結晶化が高速で進み固化に至ったとして、(1)について、ミクロンオーダーの粗度をなす凹部内に侵入固化した樹脂は、(2)について、超微細凹凸に引っ掛けられ、かつその超微細凹凸は、(3)について、非常に硬質の薄層で覆われているので、超微細凹凸に侵入した樹脂はスパイクされたように強固に止められて抜け出すことができず、結果としてミクロンオーダーの粗度に係る凹部から樹脂が抜けにくい。これが熱可塑性樹脂を使用した射出接合の技術である(特許文献4〜8)。
新NMT理論は、射出接合とは異なる接合方法にも適用可能である。すなわち、先に硬質の高結晶性樹脂を主成分とする樹脂組成物を原料として、射出成形等の手法で樹脂成形物を製作しておく。一方、前記新NMT理論の要件である(1)〜(3)を満足する金属合金片を作成しておき、これをホットプレート等で加熱する。加熱した金属合金片に前記の樹脂成形物を押し付けると、金属合金片の温度が樹脂組成物の融点より高温であると接触面では樹脂組成物が溶融する。そのまま放置して金属と樹脂の接触面での温度が数秒〜十数秒かけて樹脂融点より低下した場合、溶融樹脂の一部分が金属表面上の超微細凹凸に侵入し、その後に結晶化固化する。
この方法を使えば、急冷時の結晶化固化速度を特殊コンパウンド等で遅くする必要はないので、樹脂組成物に要求される条件は緩和される。侵入時の圧力は、射出接合と異なり、溶融時の環境を真空にしてから常圧に戻しても1気圧程度とごく低く、接合力を得る上での最良の条件とすることは不可能だが、実用面で使用できる接合力は得られる。これが高結晶性の熱可塑性樹脂を使用した成形品圧融着法である(特許文献9を参照)。
また新NMT理論の接合メカニズムが正しいとすれば、1液性熱硬化型接着剤を使った接着も非常に強い接合力を発揮することが予期できる。すなわち、新NMTに従った表面処理済みの金属合金に対し液状樹脂が接近して、(1)について、ミクロンオーダーの粗度をなす凹部に侵入し、かつ、(2)について、その凹部内壁面にある超微細凹凸の凹部隙間にも侵入し、その後に硬く固化すれば、スパイク効果によって固化樹脂は超微細凹凸に係る凹部ひいてはミクロンオーダーの粗度に係る凹部から抜けることがなく、強い接合が得られることが推測されるからである。
ここで、液状樹脂がその環境(圧力、温度)においてどの程度の粘度を有するかが、超微細凹凸の隙間にどの程度まで侵入できるかを決定する要因となる。その意味で、「新NMT」理論は1液性熱硬化型接着剤を使用した接着に適用可能であり、強烈な接着力が得られる可能性はあるが、これが予定された効力を発揮するか否かは未硬化時の液粘度が重要事項になる。
本発明者らは新NMT理論に従って金属合金片を表面処理し、汎用の1液性エポキシ系接着剤を使って前記金属合金片同士を接着し、せん断破断力や引っ張り破断力で40〜70MPaという強烈な接着の生じることを確認した。ただし、接着剤塗布後に僅かな工夫をした。すなわち、塗布物をデシケータに入れて真空にしその後に常圧に戻す処理を繰り返した。圧力差は1気圧程度しかないが、液状の接着剤は金属表面上の超微細凹凸に侵入し易いと考えた。その後、塗布した金属合金同士をクリップ等で固定し、加熱して硬化すると従来にみられない強固な金属合金同士の接着物が得られたのである。
この技術を本発明者らは「NAT(Nano adhesion technologyの略)」理論と称し、射出成形を利用した技術と区別した。NAT理論で1液性接着剤が好ましいのは、塗布やその後の硬化前操作でゲル化が進まず、樹脂成分を為す分子の分子径が小さいので、上述の(2)について、超微細凹凸の隙間にもある程度侵入が可能だからである。
一方、2液性熱硬化型接着剤であっても、本発明による表面処理をした金属合金に使用すると接合力が向上するものの、ほとんどは明確な効果は奏しない。2液性接着剤では主液に硬化剤成分を加えて混合した瞬間からゲル化が始まるものが殆どで、ゲル化が進むと上述の(2)について、超微細凹凸の隙間に樹脂成分の侵入が少なくなる。要するに、2液性接着剤を使用した場合は、硬化剤を混合した後の経過時間によって接着力が変化することが多く、安定性や再現性に劣ることがあるのが好ましくない理由である。ただし、2液性接着剤と一般には見られている酸無水物を硬化剤とするエポキシ樹脂接着剤であっても、ゲル化が始まるまでの時間が長く、かつゲル化温度が高い場合は使用に好ましいことが理解されよう。このような接着剤は実質的には1液性接着剤と同じ扱いになる。
同じことが、フェノール樹脂系接着剤、不飽和ポリエステル樹脂系接着剤でも言える。すなわち、フェノール樹脂系接着剤は市販されているが、多くは溶剤が添加されており多くのエポキシ系接着剤の様に無溶剤系ではない。しかしながら塗布した後でしばらく放置することで溶剤を揮発させて固化させ、さらに50〜70℃の中温下で減圧/常圧戻しをすると、溶剤揮発後のフェノール樹脂も溶融して粘度が十Pa秒程度の粘性液体に変わっているので、金属凹凸面上の空気を抜くことができる。
また、不飽和ポリエステル系の接着剤というのは市販されていないが、ガラス繊維強化プラスチック(以下「GFRP(Glass-fiber reinforced plasticsの略」という)作成に使用する不飽和ポリエステル成分は多種市販されており、これに混ぜる加熱硬化用の有機過酸化物も市販されている。適正なレシピーで両者を混ぜた場合には、直ぐにゲル化が進行することはなく昇温することでゲル化固化に進むから実質的に1液性熱硬化型接着剤として使用できる。
金属合金に対する被着材は金属合金だけではない。接着剤にフェノール樹脂系接着剤を使用した場合、やはりフェノール樹脂をマトリックスとする摩擦材や砥材は容易に接着するし、接着剤にエポキシ系接着剤を使用した場合、やはりエポキシ樹脂をマトリックスとした炭素繊維強化プラスチック(以下、「CFRP(Carbon-fiber reinforced plasticsの略)」という)は容易に接着する。また、接着剤に不飽和ポリエステル樹脂系接着剤を使用した場合、やはり不飽和ポリエステル樹脂をマトリックスとしたGFRPは容易に接着する。CFRP、GFRPの何れの場合も、接着剤塗布済みの金属合金片とプレプリグとを接触させて固定し、このまま加熱硬化させると、接着剤とプリプレグの双方が固化し、金属合金とFRPが強固に接着一体化した複合物を得ることができる。(特許文献10〜18)。
なお、金属合金と熱可塑性樹脂を使用した射出接合に関し、似た技術が過去に報告されている(特許文献3)。この特許文献3に記載された技術は、射出接合技術ではなく、射出成形の技術であって金属の線膨張率と樹脂の成形収縮率の関係を利用した技術である。この特許文献が示すように、金属製の棒状物質が樹脂部を貫いているような成形品を得るにあたり、金属製棒状物質の周囲に熱可塑性樹脂を射出成形した場合、成形品を金型から離型し放冷すると金属製棒部は樹脂成形品部から締め付けられる形になる。なぜなら、金属の線膨張率は大きくてもアルミニウム合金やマグネシウム合金、銅合金の1.7〜2.5×10−5℃−1であり、金型から降ろされて室温まで冷えたとしても線膨張率×100℃程度でその縮み具合は0.2〜0.3%に過ぎない。しかし、一方の樹脂類は成形収縮率がPPSで1%程度、硝子繊維入りPPSで0.5%もあり、フィラーを増やした樹脂であっても必ず射出成形後は金属部品より樹脂部の方が大きく縮むのである。従って、中心部に金属部品があって、この金属部品が樹脂部を貫いている形状品を、インサートによる射出成形で製作すれば、樹脂部の成形収縮による締め付け効果で金属部が抜け難い一体化品を製造することができる。
このような締め付け型の金属と樹脂の一体化品の製造方法は従来から知られている方法であり、類似成形品として石油ストーブの取手がある。φ2mm程度の鉄製の太い針金を射出成形金型にインサートし耐熱性樹脂等を射出している。針金にはギザギザのキズ(ローレット加工)を入れて樹脂が移動しないようにしている。特許文献3は、凹凸加工を物理的加工法から化学的加工法に代えてスマートにし、かつ凹凸具合をやや微細にしたこと、及び樹脂側に硬質でしかも結晶性のある樹脂を多用してグリップする効果を上げたのが特徴である。この特許文献には、金属棒状物に沿って生じるガス漏洩が大きく抑制されるとあるが、接合力に関する記載はない。
一方、特許文献1及び4〜8に開示した本発明者らの技術では、樹脂による締め付けは全く必要としない。この技術を適用して得た金属製の平板形状片同士の接合品を分離するには強烈な力が必要となる。この技術は、急冷時に長い過冷却時間を経て結晶化固化する高硬度結晶性樹脂組成物を用いていることも大きな特徴である。
なお、金属と熱可塑性樹脂の接合状態を長期間安定的に維持するには両者の線膨張率が近い数字であることが実際には必要である。熱可塑性樹脂組成物の線膨張率はガラス繊維や炭素繊維等の強化繊維、即ち充填剤を大量に含有させることで低くすることができる。
特開2004−216425号 WO2004−055248 特開2001−225352号 特開2006−329410号 特開2006−281961号 特開2006−345273号 特開2006−354636号 特開2007−185547号 特開2007−230794号 特開2007−62376号 特開2007−106454号 特開2007−100727号 特許2007−106455号 特開2007−114576号 特開2007−140072号 特開2007−325736号 特開2007−336378号 特開2008−67313号
さて、本発明者らは、新NMT理論、NAT理論の双方に対応すべく多くの金属合金種につきその各々に対応する表面処理工程を開発し」成功して来た。しかしながら新NMT理論、NAT理論の双方で理論提案者安藤が言う条件の一つ、すなわち前述の(2)の10〜300nm周期の超微細凹凸ある表面という定義になかなか適合させ得ない合金群がある。すなわち、チタン合金群は多くの試行錯誤実験によっても(2)の状態に、特に理想的な状態である50〜100nm周期の超微細凹凸がある表面にし難い。その結果、射出接合においても、接着剤接合においても、チタン合金使用時の接合力は、アルミニウム合金、ステンレス鋼、一般鋼材、銅合金等に比較して弱かった。そしてそのチタン合金の中でもβ型チタン合金は、種々の薬液でエッチングして得た表面を電子顕微鏡で見てみると表面凹凸がおとなしくて平面的であり、実際に射出接合や接着剤接合実験をしてみてもよい結果が得られなかった。
合金的な特徴であろうが、強度が高く、かつ冷間加工が容易なβ型チタン合金は比較的用途が広い。航空機部品、ゴルフクラブのヘッド部等が現行の用途であるが、CFRPとの強い接着剤接合が実用化商業化されると用途は移動機械用を中心に飛躍的に増加すると予想される。すなわち、β型チタン合金は冷間加工が可能なことを利用して厚板薄板の製作やそのプレス加工が容易なので形状の自由度が大きいこと、板状物はCFRPのみならずGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)のプリプレグとも組み合わせ易いからチタン合金薄板とプリプレグを交互に重ね合わせて接着硬化したハイブリッド型複合材料の製作が可能になるからである。このように、β型チタン合金にて十分な接合性能を有する表面処理方法が必要とされていた。
本発明は、β型チタン合金製の形状物に熱可塑性樹脂組成物を射出接合し、β型チタン合金製の形状物に熱可塑性樹脂組成物成形品を圧融着し、β型チタン合金製の形状物同士を一体化し、またはβ型チタン合金製の形状物と他の被着材とを接着剤により接合して強固な金属樹脂一体化物を得る実用技術を提供することを目的とする。
本発明は、前述した課題を解決すべくなしたものであり、本発明の請求項による金属と樹脂の複合体は、β型チタン合金製またはα−β型チタン合金製の合金形状物と、金属製または樹脂製の形状物である被着材とを接合してなる金属と樹脂の複合体であって、前記合金形状物は、表面が化学エッチングによって輪郭曲線要素の平均長さRSmが1〜10μmでかつ最大高さ粗さRzが0.2〜5μmのミクロンオーダーの粗度を有するものであるとともに径10〜100nmの多数の超微細凹部で覆われた形状であり、さらにその表面は耐食性のある金属酸化物薄層で覆われているものであり、前記合金形状物と前記被着材とが前記超微細凹部に侵入した1液性熱硬化型接着剤を介して接着されているものである。
本発明の請求項を引用する請求項による金属と樹脂の複合体は、前記合金形状物がβ型チタン合金15V−3Cr−3Sn−3Alチタン合金製であるようにしたものである。
本発明の請求項1を引用する請求項3による金属と樹脂の複合体は、前記合金形状物がα−β型チタン合金の6Al−4Vチタン合金製であるようにしたものである。
本発明の請求項を引用する請求項による金属と樹脂の複合体は、前記1液性熱硬化型接着剤がフェノール樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤または不飽和ポリエステル樹脂系接着剤のいずれかであるようにしたものである。
本発明の請求項を引用する請求項による金属と樹脂の複合体は、前記被着材がフェノール樹脂を含んだ研磨剤または摩擦材用組成物の形状物であって、前記1液性熱硬化型接着剤がフェノール樹脂系接着剤であるようしにしたものである。
本発明の請求項を引用する請求項による金属と樹脂の複合体は、前記被着材がエポキシ樹脂を含んだ繊維強化プラスチックであって、前記1液性熱硬化型接着剤は、エポキシ樹脂系接着剤であるようにしたものである。
本発明の請求項を引用する請求項による金属と樹脂の複合体は、前記被着材が不飽和ポリエステル樹脂を含んだ繊維強化プラスチックであって、前記1液性熱硬化型接着剤は、不飽和ポリエステル樹脂系接着剤であるようにしたものである。
本発明の請求項1ないし7から選択される1項を引用する請求項による金属と樹脂の複合体は、前記1液性熱硬化型接着剤には、0〜60質量%のガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、カーボンナノチューブ、その他の強化繊維、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、粘土、及びガラス粉から選ばれる1種以上の充填材が含まれているものである。
本発明の請求項による金属と樹脂の複合体の製造方法は、β型チタン合金またはα−β型チタン合金を機械的加工で形状化して合金記形状物を形成する形状化工程と、前記合金形状物を、少なくとも弗素イオンを含む硫酸水溶液に浸漬処理する工程及び過マンガン酸塩水溶液に浸漬処理する工程を使用し、最終的には当該合金形状物の表面に(1)輪郭曲線要素の平均長さRSmが1〜10μmであるとともに最大高さ粗さRzが0.5〜5μmのミクロンオーダーの粗度を形成し(2)当該表面が径10〜100nmの多数の超微細凹部で覆われた形状とし(3)表面を主としてマンガン酸化物薄層で覆うこととする化学反応工程と、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂、または液晶ポリマーを主成分とする樹脂組成物から樹脂製成形物を得る工程と、前記化学反応工程後の前記合金形状物を、前記樹脂組成物の溶融温度以上の温度に加熱する加熱工程と、前記加熱した合金形状物に前記樹脂製成形物を押し付けて圧融着する圧融着工程と、を含みβ型チタン合金製またはα−β型チタン合金製の合金形状物と樹脂成型物とを接合するものである。
本発明の請求項10による金属と樹脂の複合体の製造方法は、β型チタン合金またはα−β型チタン合金を機械的加工で形状化して合金形状物を形成する形状化工程と、前記合金形状物を、少なくとも弗素イオンを含む硫酸水溶液に浸漬処理する工程及び過マンガン酸塩水溶液に浸漬処理する工程を使用し、最終的には当該合金形状物の表面に(1)輪郭曲線要素の平均長さRSmが1〜10μmであるとともに最大高さ粗さRzが0.5〜5μmのミクロンオーダーの粗度を形成し(2)当該表面が径10〜100nmの多数の超微細凹部で覆われた形状とし(3)表面を主としてマンガン酸化物薄層で覆うこととする化学反応工程と、前記化学反応工程後の前記合金形状物を射出成形金型にインサートするインサート工程と、インサートされた前記合金形状物に、ポリブチレンテレフタレート樹脂を主成分とし、ポリエチレンテレフタレート樹脂及び/またはポリオレフィン液樹脂を従成分とする第1樹脂組成物、ポリフェニレンサルファイド樹脂を主成分とし、ポリオレフィン系樹脂を従成分とする第2樹脂組成物、一つの芳香族ポリアミド樹脂を主成分とし、他の芳香族ポリアミド樹脂か脂肪族ポリアミド樹脂を従成分とする第3樹脂組成物、または、脂肪族ポリアミド樹脂を主成分とし芳香族ポリアミド樹脂を従成分とする第4樹脂組成物を射出して一体化する射出接合工程と、を含みβ型チタン合金製またはα−β型チタン合金製の合金形状物に樹脂組成物を射出接合し一体化するようにしたものである。
本発明の請求項11による金属と樹脂の複合体の製造方法は、β型チタン合金またはα−β型チタン合金を機械的加工で形状化して合金形状物を形成する形状化工程と、前記合金形状物を、少なくとも弗素イオンを含む硫酸水溶液に浸漬処理する工程及び過マンガン酸塩水溶液に浸漬処理する工程を使用し、最終的には当該合金形状物の表面に(1)輪郭曲線要素の平均長さRSmが1〜10μmであるとともに最大高さ粗さRzが0.5〜5μmのミクロンオーダーの粗度を形成し(2)当該表面が径10〜100nmの多数の超微細凹部で覆われた形状とし(3)表面を主としてマンガン酸化物薄層で覆うこととする化学反応工程と、前記化学反応工程後の前記合金形状物に1液性熱硬化型接着剤を塗布する工程と、前記1液性熱硬化型接着剤を塗布した合金形状物に被着材を押し付けて固定する工程と、前記固定された合金形状物及び被着材を加熱して接着剤成分を硬化させる硬化接着工程と、を含みβ型チタン合金製またはα−β型チタン合金製の合金形状物と被着材とを接合するものである。
本発明の請求項12による金属と樹脂の複合体の製造方法は、β型チタン合金またはα−β型チタン合金を機械的加工で形状化して合金形状物を形成する形状化工程と、前記合金形状物を、少なくとも弗素イオンを含む硫酸水溶液に浸漬処理する工程及び過マンガン酸塩水溶液に浸漬処理する工程を使用し、最終的には当該合金形状物の表面に(1)輪郭曲線要素の平均長さRSmが1〜10μmであるとともに最大高さ粗さRzが0.5〜5μmのミクロンオーダーの粗度を形成し(2)当該表面が径10〜100nmの多数の超微細凹部で覆われた形状とし(3)表面を主としてマンガン酸化物薄層で覆うこととする化学反応工程と、前記化学反応工程後の前記合金形状物に1液性熱硬化型接着剤を塗布する工程と、前記1液性熱硬化型接着剤を塗布した形状物を密閉容器に収納して減圧し、その後に加圧することにより、前記1液性熱硬化型接着剤を前記超微細凹部に侵入させる接着予備工程と、
前記接着予備工程後の前記合金形状物に被着材を押し付けて固定する工程と、
前記固定された合金形状物及び被着材を加熱して接着剤成分を硬化させる硬化接着工程と、を含みβ型チタン合金製またはα−β型チタン合金製の合金形状物と被着材とを接合するものである。
本発明の請求項10ないし12から選択される1項を引用する請求項13による金属と樹脂の複合体の製造方法は、前記合金形状物がβ型チタン合金15V−3Cr−3Sn−3Alチタン合金製であるようにしたものである。また、本発明の請求項10ないし12から選択される1項を引用する請求項14による金属と樹脂の複合体の製造方法は、前記合金形状物がα−β型チタン合金の6Al−4Vチタン合金製であるようにしたものである。
本発明の複合体は、熱可塑性樹脂組成物とβ型チタン合金片とが容易に剥がれることなく一体化されたものである。β型チタン合金片に所定の表面処理をした物に、PBT70〜97質量%とPET及び/またはポリオレフィン系樹脂30〜3質量%を含む樹脂分組成を有する熱可塑性樹脂組成物、PPS70〜97質量%とポリオレフィン系樹脂3〜30質量%を含む樹脂分組成を有する熱可塑性樹脂組成物、または異種の芳香族ポリアミドを含む熱可塑性樹脂組成物、または芳香族ポリアミドと脂肪族ポリアミドの双方を含む熱可塑性樹脂組成物等を射出接合することにより、β型チタン合金片と熱可塑性樹脂組成物とが強力に接合された複合体を製造することができる。
また、PBT、PPS、ポリアミド、液晶ポリマー等を含む熱可塑性樹脂組成物を用いて一旦樹脂成形品を射出成形法で作成し、その一方でβ型チタン合金片に本発明による表面処理を付与しておく。そして表面処理済みの前記チタン合金片を加熱し、これに前出の樹脂成形品を押し付けて圧融着することで強力な接合力を有する金属樹脂複合体を製造することができる。
また、本発明の複合体は、1液性熱硬化型接着剤とβ型チタン合金片とが非常に強烈に接着する。β型チタン合金片に本発明の表面処理を施し、市販のエポキシ接着剤等を使用して、β型チタン合金片同士、β型チタン合金片とその他の金属合金、またはβ型チタン合金片とCFRP又はGFRPとが強く接着した金属樹脂複合体を製造することができる。β型チタン合金と樹脂成形品を強固に一体化した複合部品が製造できれば、航空機、自動車、自転車、その他の移動機械用の部品、屋外機器、舶用機器、一般機械部品、スポーツ用具の部品、楽器、等に好ましく使用することができる。
以下、本発明で用いる手段をさらに詳細に説明する。
〔A〕β型チタン合金と樹脂との複合体の特徴
(1)β型チタン合金
β型チタン合金に関し、普通は最密立法晶をα相とし、体心立法晶をβ相とする。チタン系合金は室温下では一般にα相であり言わばα型合金であるが、900℃近くの高温以上でβ相となる。しかし合金種によっては、β相となった高温から急冷した場合にほとんど変態せずβ相のままにある合金種があり、これがβ型チタン合金である。そしてチタン合金では、純チタン系のα型チタン合金とこのβ型チタン合金の他に、高温のβ型から急冷したときに半分程度だけβ型で残る中間型のα−β型チタン合金がある。β型チタン合金として具体的には15V−3Cr−3Sn−3Alチタン合金、α−β型チタン合金としては6Al−4Vチタン合金があり、代表的なものである。
(2)表面処理/総論
通常、新NMT理論、NAT理論に従う金属合金を得るには、すなわち、前述した(1)〜(3)の条件を満足する表面にするには、基本的に、a.脱脂、b.化学エッチング、c.微細エッチング、d.表面硬化の4工程を経る。使用する金属合金種により、前記4工程のうち、「a.脱脂」が省略される場合もあるし、「b.化学エッチング」が「c.微細エッチング」を兼ねる場合もあるし、「b.化学エッチング」が「c.微細エッチング」も「d.表面硬化」も兼ねる場合もある。また、その逆に、「d.表面硬化」として行う化成処理が「b.化学エッチング」、「c.微細エッチング」を兼ねる場合もある。いずれにしても、本発明者らが実施した化学処理法の基本は、各工程の目的を考えながら「a」〜「d」の具体的方法を考察して実施し、その評価をし、結果的に省略可能な工程があれば省略するというやり方で工程を詰めるものである。
β型チタン合金について述べる。「a.脱脂」の工程は市販のアルミ用脱脂剤、マグネシウム用脱脂剤、ステンレス鋼用脱脂剤、鋼材用脱脂剤、その他の金属用脱脂剤を使用した水溶液に浸漬し、水洗することで済ませられる。金属合金形状物を得る上での機械加工で付着した油剤、及びそれらを取り扱った結果付着した指脂類等を洗い流すのがこの工程の目的である。家庭用や工業用の中性洗剤を水で希釈した物も使用できる。
「b.化学エッチング」の工程は、弗素イオンを含む5%以上のやや高濃度の希硫酸を使用するのが本発明の特徴である。弗素イオンとして弗酸を使用してよいが取り扱いが危険であり、半分を中和した1水素2弗化アンモニウムが固体でもあり扱いが易しい。1水素2弗化アンモニウムを使用するときはその濃度を1重量%程度とし、硫酸濃度を5〜15重量%とした水溶液を調整し、液温を60〜70℃にすることでβ型チタン合金に対し十分なエッチング速度が得られる。この工程は、ミクロンオーダーの凹凸を得るのが目的であり、これは浸漬時間で調整できる。幸運ならこの化学エッチングで超微細凹凸面も生成すればよいのだが、β型チタン合金では、全くそのようにはならなかった。
次だが、「c.微細エッチング」を省いて「d.表面酸化」を行うことが奏功することもある。表面酸化工程は、チタン分の酸化を促進して表面を酸化チタンを主に含む金属酸化物薄層にする工程が通常利用できるので、前工程の後に数%濃度の硝酸水溶液に数分浸漬して弗素イオンを完全に排除し、かつ、薄い酸化性の酸に浸漬することで合金の表面層を酸化し、幸運ならこの表面酸化(表面硬化)工程で超微細凹凸面も生成すればよいのだが、β型チタン合金はそのようにならなかった。
そこで一般則通り「微細エッチング」を行おうとした。電子顕微鏡で逐次の変化を見ているわけではないのでエッチングなのか積層なのか分からないが、具体的には、酢酸々性とした過マンガン酸カリ水溶液に前記工程までで得たチタン合金を浸漬することで超微細な凹凸面が表面に出現した。耐食性の強いチタン合金がこのような弱酸性の水溶液でエッチングされるとは考えられず、元々あるチタン合金上の高さ深さに乏しい超微細凹凸表面に酸化マンガンが取り付いて凹凸の高さ深さを拡大したものと思われた。要するに、エッチングではなくマンガン酸化物が積み重なったことで微細エッチングがなされたようになったものと推定した。使用する水溶液をさらに具体的に言うと、1〜3重量%濃度の過マンガン酸カリと1%前後の濃度の酢酸、及び0.5重量%濃度程度の酢酸ナトリウムを含む水溶液を作成し、数十秒から数分程度浸漬するのが好ましいとみられた。長時間の浸漬は微細な凹凸を潰す方向に働き、結果的に接合力を低下させる。また、短すぎると当然効果がない。このような実験結果も、積み重なりによって微細表面が生じたことを示す証拠だと思われる。
もとに戻るが、「b.化学エッチング」にて生じるミクロンオーダーの凹凸について述べる。輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)が1〜10μmで且つ最大高さ粗さ(Rz)が0.2〜5μmのミクロンオーダーの粗度を有したものということだが、Rzの数値がRSmの約半分としているのは、凹凸周期の半分程度までの深さの凹部であれば、射出接合に本発明者らが使用している樹脂、すなわち、改良されたPBT系樹脂組成物、PPS系樹脂組成物、ポリアミド系樹脂組成物であれば凹部の底まで侵入可能とみているからである。これは1気圧程度までの圧力差で侵入できる液状の1液性接着剤についても言えることである。Rzがもっと大きく、言わば凹凸の底が深い場合、前記した樹脂が奥まで入りきれずミクロンオーダー凹部の底部は空隙となって接合工程終了後も残存し、破壊に対して最も弱い相となる。要するに高い接合力が得られない。また、Rzが小さ過ぎると接合力を維持する役目の大部分を超微細凹凸が負うことになり、結局は接合力を落とすことになる。
また、本発明者らが実施した前記した全浸漬処理を終了したβ型チタン合金の超微細凹凸の様子は後述する実施例に記載した。いずれも径10〜100nmの多数の超微細凹部で全面を覆われた形状となり好ましいものであった。ただ、実際には径10〜30nm径の超微細凹部がその多くを占める。望ましくは径50〜100nmの凹部が多くを占めるのがよいのだが、なかなかそのようにする方法が見つからなかった。すなわち、この超微細凹凸について再度述べると、その凹凸周期が10nm以下の周期であると樹脂分の進入が明らかに難しくなり、その結果、スパイクの役目をなさなくなる。要するに、このような超微細凹凸面は樹脂側から見てかえって円滑面に見える。また、周期が300〜500nm程度またはこれよりよりも大きな周期なら(その場合、ミクロンオーダーの粗度をなす凹部の直径や周期は10μm近くになると推定される)、ミクロンオーダーの凹部内でのスパイクの数が激減するので効果が効き難くなる。結局、今までの新NMT理論、NAT理論の開発に於ける本発明者らの経験で超微細凹凸面の凹凸周期として50〜100nmが最も好ましいとみているが、その点から言えば、後述する実施例での電顕写真はやや凹凸周期が細かきに過ぎ、改良の余地があると言える。
(3)射出接合用の熱可塑性樹脂組成物
この樹脂組成物は、射出成形により前記チタン合金に直接的に接合できる。結晶性の樹脂であるPBTを主成分とする第1樹脂組成物、PPSを主成分とする第2樹脂組成物、または、ポリアミドを主成分とする第3、第4樹脂組成物をいう。この第1樹脂組成物の樹脂分は、PBTを主成分としPET及び/またはポリオレフィン系樹脂を従成分とする樹脂組成物である。また、第2樹脂組成物の樹脂分はPPSを主成分としポリオレフィン系樹脂を従成分とする樹脂組成物である。また、第3樹脂組成物の樹脂分は、芳香族ポリアミド樹脂の一つを主成分としてその他の芳香族ポリアミド樹脂か脂肪族ポリアミド樹脂を従成分とする物である。また、第4樹脂組成物の樹脂分は、脂肪族ポリアミド樹脂を主成分として芳香族ポリアミド樹脂を従成分とするものである。
第1樹脂組成物はPBTが70ないし97質量%、前記PET及び/またはポリオレフィン系樹脂が3ないし30質量%であり、第2樹脂組成物はPPSが70ないし97質量%、前記ポリオレフィン系樹脂が3ないし30質量%であり、第3樹脂組成物及び第4樹脂組成物は主となるポリアミドが70〜95%、従となるポリアミドが5〜30%であるとよい。いずれもこの範囲外であると射出接合力が大きく低下する。
樹脂組成物である高硬度結晶性樹脂組成物は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、その他強化繊維、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、粘土、及びガラス粉から選ばれる1種以上の充填材を、組成物全体の20〜60質量%含むPPSまたはPBTが好ましい。これは、これら充填材を含ませることで樹脂成形物の線膨張率を2〜3×10−5℃−1とし、線膨張率をチタン合金に近づけて温度変化時に生じる接合面での内部歪を小さいレベルに抑えるためである。
(4)熱可塑性樹脂を使用した射出接合による複合体の製造
この複合体製造方法は金属合金材部品を金型にインサートした上で行う射出成形法であり、以下のように行う。射出成形用金型を用意し、金型を開いてその一方に前述の処理により得られたチタン合金形状物をインサートし、金型を閉じ、改良したPBT、改良したPPS、または改良したポリアミド系の熱可塑性樹脂組成物を射出し、固化した後に金型を開き離型することにより複合体の製造を行う。
射出条件について説明する。金型温度としては、特に固化後、樹脂強度への影響が少なく複合体の生産効率に優れることから、PBTやPPS系樹脂では100℃以上が好ましい。より好ましくは120℃以上であるとよい。射出温度、射出圧、射出速度は特に通常の射出成形と変わらないが、強いて言えば、射出速度と射出圧は高目にすることが好適である。
(5)圧融着用の熱可塑性樹脂組成物
圧融着用の樹脂組成物は、硬質の高結晶性樹脂を主成分とする樹脂組成物が使用できる。新NMT理論での圧融着では、樹脂種としてPBT、PPS、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン(以下、「PEEK」という)、等が使用できる。また、前述した射出接合用の熱可塑性樹脂、すなわち射出接合用に改良したPBT、PPS、芳香族ポリアミド系の樹脂ももちろん使用できる。要するに、前述した射出接合用の熱可塑性樹脂よりも範囲が広く、硬質の高結晶性樹脂であれば使用できる。
これらを樹脂分とする樹脂組成物は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、その他強化繊維、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、粘土、及びガラス粉から選ばれる1種以上の充填材を、組成物全体の20〜60質量%含んでいるとよい。また、液晶ポリマーでは前記充填材を0〜50%含んでいると良い。これら充填材を含ませることで樹脂成形物の線膨張率を下げるためである。
(6)熱可塑性樹脂を使用した圧融着による複合体の製造
圧融着による複合体製造法に使用する樹脂組成物の樹脂分は硬質の高結晶性樹脂であって、具体的には、PBT、PPS、ポリアミド、液晶ポリマー等が好ましい。射出接合で好適に使用できるとした、改良済みのPBT、PPS、芳香族ポリアミド系の樹脂組成物もこれらの範疇に入り、勿論使用に好ましい。ガラス繊維、その他の充填材をコンパウンドして樹脂組成物とし、これを原料にして射出成形機にかけて樹脂成形品をまず製作する。
次いで、前述の表面処理をしたチタン合金片をホットプレート、熱風乾燥機等を使用して、接合対象である樹脂組成物の融点以上の温度とし、昇温した合金片の上に先ほどの樹脂成形品を押し付ける。融点以上と言っても、融点より数十℃高い程度の高温で以下の作業の実施は可能である。
好ましい作業方法について述べる。まず表面処理をしたチタン合金片を所定の温度まで加熱する。加熱した合金片を一旦断熱板上に移し、置いた合金片に用意しておいた樹脂成形品を押し付ける。押し付けた樹脂部品の底面が溶融し、その後は熱が分散して再度結晶化固化する。この間に、合金片表面上のミクロンオーダーの粗度を形成する凹部、さらには超微細凹凸に溶融樹脂が入り込み、入り込んだ後で再び放冷されて固化し、接合するのである。接合力の再現性を良くするには、樹脂が溶融している数秒、または十数秒の間に、全体を真空下に置きその後に常圧に戻すというような操作を入れることである。そのためには、適当な圧融着用治具を作り真空ポンプと組み合わせることで合理的で再現性のよい圧融着が可能になる。一例を実施例に示した。
(7)1液性熱硬化型接着剤
塗布時に液状であり、かつ巨大分子(ゲル化分子)が少ない熱硬化型接着剤がNAT理論における接合で望まれるものである。さらに具体面から言えば、金属(本発明ではβ型チタン合金片)表面上の数μm周期の凹部に侵入し、さらにその凹部内に存在する数十nm周期の超微細凹凸の隙間にもある程度侵入してもらわなければならないため、液の粘度は高くとも十数Pa秒程度以下であることが望ましい。
ここで、表面処理をしたチタン合金片に接着剤を塗布した後に、50〜80℃に昇温した容器、例えば加温したデシケータに入れて当該合金片を同様な温度にした状態で減圧/常圧戻しの操作を加えることもできる。常温で粘度が数百Pa秒というペースト状の接着剤組成物であっても、50〜80℃に昇温することで粘度を下げて液状化し、使用できることになる。ただし、この昇温下で接着剤のゲル化等が進むようであると、上記した超微細凹凸面の隙間への侵入具合が悪くなるので、このような高粘度接着剤を使用する場合はゲル化硬化温度が高い方が好ましい。
かかる根拠から、2液性熱硬化型接着剤であってもゲル化温度が高く、硬化剤混合後も常温付近でのゲル化速度が非常に遅く、かつ、混合物の粘度域が上記数十Pa秒以下であれば、使用に好ましいことは自明である。接着剤の種類としてエポキシ系、フェノール樹脂系、不飽和ポリエステル系のものが使用できる。前二者は優れた接着能を有する物が多数市販されている。不飽和ポリエステル系では、分解温度の非常に高い有機過酸化物を硬化剤として使用できる。不飽和ポリエステルにはアルキッド型とビニルエステル型があるが、接着力自体はビニルエステル型、特にエポキシ樹脂とメタクリル酸から製造したビニルエステル型の不飽和ポリエステルを使った方が強い。
エポキシ系接着剤についてさらに詳細に述べる。市販の1液性エポキシ接着剤の多くは、エポキシ樹脂としてビスフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、多官能ポリフェノール型エポキシ樹脂、または脂環型エポキシ樹脂等を使用し、硬化剤としてジシアンジアミドやイミダゾール系化合物を加えたものである。これらは接着剤粘度が比較的低くでき、塗布作業は容易であるがやや耐熱性が以下に述べるタイプより低い。
一方、硬化剤として芳香族アミン系化合物を使用したものは、芳香族アミン系化合物の多くが固体であることからして混合物も一旦溶融しないと製作できず、常温での混合物はペーストというよりも粘度が高く、固体である。硬化物の耐熱性が高いという特徴はあるが、本発明での観点から言えば、やや粘度が高過ぎて塗布後の作業(金属表面への染み込まし作業)がやや困難である。
また、硬化剤として酸無水物を使用することも可能であり、酸無水物には低粘度液体の物も生産されているので、エポキシ樹脂と酸無水物から生成された熱硬化性接着剤は好ましく使用できる。この種類は市販されていないが、その理由は、混合後、常温下で保管すると低速ではあるがゲル化が進行することにある。したがって混合品を市販するのは品質保証の面から難しく、現状では、このような接着剤を必要とする企業がエポキシ樹脂と酸無水物を購入し、使用に際してコンパウンドするのが普通である。
混合物のゲル化や硬化温度は150℃以上である場合が多くてゲル化温度が高いので、酸無水物をコンパウンドしたエポキシ樹脂(接着剤組成物)を冷蔵庫に入れておけば数日保管とすることは支障ない。その意味で、酸無水物添加のエポキシ系接着剤は、2液性のようであるが、本発明内では実質的に1液性熱硬化型接着剤として分類している。この系の接着剤は耐熱性に優れた硬化物が得られるので好ましく使用できる。
(8)1液性熱硬化型接着剤を使用した接着剤接合による複合体の製造
接着剤としてエポキシ系、フェノール樹脂系、不飽和ポリエステル系のものが好ましく使用できる。エポキシ系、フェノール樹脂系の双方は優れた接着能を有する物が多数市販されている。塗布時に液体であることが必要である。常温で固体状である高粘度接着剤も50〜80℃にすれば十数Pa秒の液体と言えるレベルの粘度にまで下がる。このような現象を利用するのが好ましい。このような高粘度の接着剤として代表的なものはエポキシ系接着剤であるので、エポキシ接着剤を使用するときの要点について述べる。
すなわち、デシケータなど、減圧にする操作が可能な大型容器をまず用意する。これを温風乾燥機内に入れて1時間近く暖めておく。一方、前述の表面処理をしたチタン合金片を用意し、これの必要箇所に接着剤を塗布する。前出のデシケータを温風乾燥機から取り出し、デシケータ内に接着剤塗布済みの合金片を並べ、蓋をして真空ポンプで数十mmHg〜数mmHgまで減圧する。減圧下にしばらく置いた後に常圧に戻す。そして、さらに減圧/常圧戻し操作を繰り返す。これらの操作によって、デシケータの余熱で液状になった接着剤がチタン合金片表面上の微細凹凸の中に吸い込まれる。
デシケータから取り出し、チタン合金片を被着材とくっつけ固定してから熱風乾燥機に入れ、100〜135℃にして数十分〜数時間近く保つゲル化促進を行い、その後に150〜200℃まで上げて数十分〜数時間程度保って硬化するのが普通である。この温度設定は硬化剤系によって大きく異なり、詳細は個々のエポキシ樹脂と硬化剤種によって異なる。要点は、ゲル化を円滑に進めることがよい接合を生むということであり、一挙に温度を上げ過ぎるとゲル化と硬化が暴走的に起こるので結果的に接着力を下げることもあるからである。
被着材として同じβ型チタン合金を使用してβ型チタン合金片同士を接着することができる。また、β型チタン合金片を、その他の金属合金、例えばNAT理論に従って表面処理した同チタン合金以外の金属合金、例えば表面処理したステンレス鋼とも接着することができる。また、炭素繊維強化プラスチック(以下、「CFRP(Carbon-fiber reinforced plasticsの略)」という)はエポキシ樹脂をマトリックスとする超軽量高強度の材料であるが、未硬化状態のCFRP(すなわちCFRPプリプレグ)とエポキシ接着剤塗布済みのβ型チタン合金片をクリップで繋ぎ合わせ、その繋ぎ合わせた状態のまま熱風乾燥機で加熱して全エポキシ成分を硬化させた場合、エポキシ系接着剤とCFRP部が競争するように固化するので、チタン合金片とCFRPの強固な一体化物を得ることができる。
〔B〕接合の形態
β型チタン合金と樹脂との接合の形態について具体的に説明する。
(1)射出接合
図1及び図2は熱可塑性樹脂の射出接合に関する図であり、図1は、実施例で使用した射出成形金型の断面を模式的に示した断面図である。図1は、金型が閉じ射出成形される状態を示している。図2は、射出成形金型で成形された金属と樹脂の複合体7の外観を示す外観図である。この射出成形金型は、可動側型板2と固定側型板3で構成され、固定側型板3側にピンポイントゲート5、ランナー等からなる樹脂射出部が構成されている。
複合体7の成形は次のように行う。まず可動側型板2を開いて、固定側型板3との間に形成されるキャビティにチタン合金片1をインサートする。インサートした後、可動側型板2を閉じて図1の射出前の状態にする。次にピンポイントゲート5を介して、溶融した樹脂組成物を、チタン合金片1のインサートされたキャビティに射出する。
射出されると樹脂組成物4はチタン合金片1と接合しつつキャビティを埋めて樹脂成形され、金属と樹脂の一体となった複合体7が得られる。複合体7は、チタン合金片1と樹脂組成物4との接合面6を有しており、本発明者らが用いた仕組みでは、この接合面6の面積は5mm×10mmとした。すなわち、接合面6の面積は0.5cmである。
(2)圧融着接合
図3、図4、図5、図6、図7は熱可塑性樹脂の圧融着接合に関する図であり、図3は実験例で使用した熱可塑性樹脂の射出成形品の形を模式的に示した図である。図4は、前記樹脂成形品がボス形状の場合であって、ボス底部中央が0.1mm程度外に突き出した形状になるように形状設計した例を示している。要するに、充填型ボス形状品を射出成形すると、樹脂組成物の成形収縮によって必ずボス底部の中央がへっこむ。底のへっこんだ物は圧融着に望ましくないため、底中央部が突き出るように予め設計すべきことを示したものである。図4のように成形はピンゲートによってなしてもよいが、結果的に、ボス底中央が0.1mm程度張り出しているかまたは悪くとも平面であることが好ましい。
図5は圧融着法で鋼板片にボスが2本融着した一体化物を作るための治具の例である。ホットプレート等で加熱したチタン合金片13を断熱材12の上に作った凹部に置き、予め上型19にセットしておいた樹脂成形品22(図3で示したボスからランナー部を切断したもの)もろとも、上型19を下型11に押し付ける。そしてほぼ同時に2方コック28を開き前もって駆動していた真空ポンプにラインを繋いで系全体を数mmHgの減圧下とし、数秒おいて4方コックを90度回して系全体を常圧に戻す。この一連の操作で、チタン合金片に触れて溶融した樹脂成形物の底部は、その溶融物がチタン合金片上のミクロンオーダーの凹部内に侵入し易くなる。
やがて放冷固化するので上金型19を下金型11から引き上げて外し、付着している一体化物30を圧融着治具から離型する。得られた一体化物は、できれば1時間ほどアニールするのが好ましい。樹脂組成物の融点によってアニール温度は異なるが、PBTやポリアミド類では150℃程度、PPS等では170℃程度が好ましい。一方、図6は、圧融着物の接合強度が計り得る複合体を作製するためのチタン合金片の形状を示したものであり、図8に示す圧融着試験に使用する。多数のビス穴を開けておき、引っ張り試験に備えている。よって一連の実験で図7に示した金属樹脂一体化物30が得られる。
(3)金属同士の接着剤接合
図11は、本発明によるβ型チタン合金片同士の接着剤接合体の例を示したものであり、実施例で使ったものである。チタン合金片61,62は45mm×18mmであり、接着面Aは18mm×約3mmの0.5〜0.6cmの面積である。この接合体を引っ張り破断し、せん断破断力を測定することに使用する。一方、接合体を構成する片方、例えば62の方をチタン合金片でなく他種の金属片に代えて接着剤接合できることは当然である。その金属片が、本発明と同じ目的の加工をしたもの、すなわちNAT理論に基づいて表面処理されたアルミニウム合金、マグネシウム合金、銅合金、チタン合金、ステンレス鋼、一般鋼材等であれば、特に強力な接合力を生じる。
(4)金属片とFRPの接合
図9、図10に本発明者らが使用したチタン合金片とCFRPの接着強度測定用の一体化物の製作治具とその使用の状況、及び得られる一体化物の形状を示した。図9の42、45、46は鉄製の金型状物で組み合わせ型になっている。57はポリエチレンフィルムを長方形に切ったもので2枚を重ね合わせて離型用フィルムとしている。51は1mm厚のチタン合金片、53、56はポリテトラフルオロエチレン樹脂(以下、「PTFE」という。)製のスペーサ、52は炭素繊維織物にエポキシ系接着剤染み込ませたCFRPプリプレグである。54は離型用のポリエチレンフィルム片、55はPTFEのブロックであり、加熱硬化時には図9のように組み込んだもの全体を熱風乾燥機内に設置し、55の上に各数百gの錘58を置いて放置する。硬化し放冷した後、錘58、ブロック55、スペーサ53、フィルム54、及び台座48を外して金型42を床に押し付けると座部45が金型42から離れ、離型用フィルム57と共に一体化物50(図10)が取り出せる。フィルムは必要に応じて剥がせばよい。
〔C〕実施例
以下、本発明の実施例について詳記する。
〔観察・測定及びそれに使用する装置〕
実施例において、また得られたβ型チタン合金と樹脂との複合体の観察・測定、それに使用した装置は次のようである。
(1)PPSの溶融粘度測定
直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスター「CFT−500(島津製作所社製)」にて、測定温度315℃、荷重98N(10kgf)の条件下で溶融粘度の測定を行う。
(2)X線光電子分析装置(XPS観察)
試料にX線を照射することによって試料から放出してくる光電子のエネルギーを分析し、 元素の定性分析等を行う光電子分析装置(XPS観察)を用いて基材(β型チタン合金片)表面の分析を行った。この光電子分析装置は、数μm径の表面を深さ数nmまでの範囲で観察する形式の「AXIS−Nova(製品名)」(英国、クレイトス アナリティカル社/島津製作所社製)を使用した。
(3)電子顕微鏡観察
主に基材表面の観察のために電子顕微鏡を用いた。この電子顕微鏡は、走査型(SEM)の電子顕微鏡「JSM−6700F(製品名)」(日本国東京都、日本電子社製)を使用し、1〜2kVにて観察した。
(4)走査型プローブ顕微鏡観察
さらに、主に基材表面の観察のために走査型プローブ顕微鏡を用いた。この顕微鏡は、先端を尖らせた探針を用いて、物質の表面をなぞるように動かして表面状態を拡大観察する走査型プローブ顕微鏡である。この走査型プローブ顕微鏡として、「SPM−9600(製品名)」(日本国京都府、島津製作所社製)」を使用した。
(5)複合体の接合強度の測定
複合体の接合強度の測定として、引張り応力を測定する。具体的には、引張り試験機で複合体7を引っ張ってせん断力を負荷し、複合体7が破断するときの破断力をせん断応力として測定した。この引張り試験機は、「モデル1323(製品名)」(日本国東京都、アイコーエンジニヤリング社製)」を使用し、引っ張り速度10mm/分でせん断力を測定した。
〔調製例1〕PPS組成物の調製
攪拌機を装備する50リットルオートクレーブに、NaS・2.9HOを6、214g及びN−メチル−2−ピロリドン17,000gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、1,355gの水を留去した。この系を140℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン7160gとN−メチル−2−ピロリドン5,000gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて2時間重合させた後、30分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却しポリマーを遠心分離機により分離した。分離後の固形分について温水でポリマーを繰り返し洗浄し100℃で一昼夜乾燥することにより、溶融粘度が280ポイズのPPS(以下、PPS(1)と記す。)を得た。
このPPS(1)を、さらに窒素雰囲気下250℃で3時間硬化を行いPPS(以下、PPS(2)と記す。)を得た。得られたPPS(2)の溶融粘度は、400ポイズであった。
得られたPPS(2)6.0kg、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体「ボンダインTX8030(アルケマ社製)」1.5kg、及びエポキシ樹脂「エピコート1004(ジャパンエポキシレジン社製)」0.5kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、二軸押出機「TEM−35B(東芝機械社製)」にて、平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維「RES03−TP91(日本板硝子社製)」をサイドフィーダーから添加量が20質量%となるように供給しながら、シリンダー温度300℃で溶融混練してペレット化したPPS組成物(1)を得た。得られたPPS組成物(1)を175℃で5時間乾燥した。
〔調製例2〕PPS組成物の調製
調整例1で得られたPPS(1)を、酸素雰囲気下250℃で3時間硬化を行いPPS(以下、PPS(3)と記す。)を得た。得られたPPS(3)の溶融粘度は、1800ポイズであった。
得られたPPS(3)5.98kgとポリエチレン(「ニポロンハード8300A(東ソー社製)」)0.02Kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、二軸押出機「TEM−35B」にて、平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維「RES03−TP91」をサイドフィーダーから添加量が40質量%となるように供給しながら、シリンダー温度300℃で溶融混練してペレット化したPPS組成物(2)を得た。得られたPPS組成物(2)を175℃で5時間乾燥した。
〔調製例3〕PPS組成物の調製
調整例1で得られたPPS(2)7.2kgとグリシジルメタクリレート−エチレン共重合体「ボンドファーストE(住友化学社製)」0.8kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、二軸押出機「TEM−35B」にて、平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維「RES03−TP91」をサイドフィーダーから添加量が20質量%となるように供給しながら、シリンダー温度300℃で溶融混練してペレット化したPPS組成物(3)を得た。得られたPPS組成物(3)を175℃で5時間乾燥した。
〔調製例4〕PPS組成物の調製
調整例1で得られたPPS(2)4.0kgとエチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体「ボンダインTX8030(アルケマ社製)」4.0kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、二軸押出機「TEM−35B」にて、平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維「RES03−TP91」をサイドフィーダーから添加量が20質量%となるように供給しながら、シリンダー温度300℃で溶融混練してペレット化したPPS組成物(4)を得た。得られたPPS組成物(4)を175℃で5時間乾燥した。
〔調製例5〕PBT組成物の調製
PBT樹脂「トレコン1100S(東レ社製)」4.5KgとPET樹脂「TR−4550BH(帝人化成社製)」0.5Kgをタンブラーにて均一に混合した。その後、二軸押出機「TEM−35B」にて、平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維「RES03−TP91」をサイドフィーダーから添加量が30質量%となるように供給しながら、シリンダー温度270℃で溶融混練し、ペレット化したPBT系樹脂組成物を得た。140℃で3時間乾燥しPBT組成物(1)とした。
〔調製例6〕PBT組成物の調製
PBT樹脂「トレコン1401X31(東レ社製)」6.0kgとエチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体「ボンダインTX8030(アルケマ社製)」0.7kg、エポキシ樹脂「エピコート1004(ジャパンエポキシレジン社製)」0.15kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、二軸押出機「TEM−35B(東芝機械社製)」にて、平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維「RES03−TP91(日本板硝子社製)」をサイドフィーダーから添加量が30質量%となるように供給しながら、シリンダー温度270℃で溶融混練してペレット化したPBT組成物(2)を得た。得られたPBT組成物(2)を150℃で5時間乾燥した。
〔調製例7〕PBT組成物の調製
PBT樹脂「トレコン1401X31(東レ社製)」6.0kgとPET樹脂「TR−4550BH(帝人化成社製)」0.5kg、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体「ボンダインTX8030(アルケマ社製)」0.5kg、エポキシ樹脂「エピコート1004(ジャパンエポキシレジン社製)」0.1kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、二軸押出機「TEM−35B(東芝機械社製)」にて、平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維「RES03−TP91(日本板硝子社製)」をサイドフィーダーから添加量が30質量%となるように供給しながら、シリンダー温度270℃で溶融混練してペレット化したPBT組成物(3)を得た。得られたPBT組成物(3)を150℃で5時間乾燥した。
〔調製例8〕ポリアミド組成物の調製
ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸からのポリアミドであるナイロン6Iを合成した。また、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸からのポリアミドであるナイロン6Tを合成した。ナイロン66を0.5kg、ナイロン6Iを1kg、ナイロン6Tを2.5kg、をタンブラーにてよく混合した。その後、二軸押出機「TEM−35B」にて、平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維「RES03−TP91」をサイドフィーダーから添加量が50質量%となるように供給しながら、シリンダー温度280℃で溶融混練しペレット化した。80℃で4時間乾燥しポリアミド組成物(1)とした。
〔調製例9〕ポリアミド組成物の調製
ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸からのポリアミドであるナイロン6Iを合成した。ナイロン66を4.5kgとナイロン6Iを0.5kg、をタンブラーに取りよく混合した。その後、二軸押出機「TEM−35B」にて、平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維「RES03−TP91」をサイドフィーダーから添加量が50質量%となるように供給しながら、シリンダー温度280℃で溶融混練しペレット化した。80℃で4時間乾燥しポリアミド組成物(2)とした。
〔実験例1〕チタン合金片の作製
バナジウム15%、クロム3%、錫3%、及びアルミニウムを3%程度含むとされるβ型チタン合金「KS15-3-3-3(神戸製鋼所社製)」の1mm厚の板材を入手した。これを18mm×45mmの長方形片に切断し、多数のチタン合金小片を作成した。槽にアルミ用脱脂剤「NE−6(メルテックス社製)」7.5%を含む水溶液を用意して液温75℃とし、この水溶液を脱脂用水溶液とした。また、別の槽に苛性ソーダ1.5%を含む水溶液を取り40℃として予備塩基洗槽とした。また、別の槽に、1水素2弗化アンモニウムを1%と硫酸10%を含む水溶液を用意し、液温を65℃としてこれをエッチング槽とした。更に別の槽に3%濃度の硝酸水溶液を取り40℃として酸洗槽とした。また、別の槽に、過マンガン酸カリを2%、酢酸を1%、水和酢酸ナトリウムを0.5%含む水溶液を用意し、40℃として化成処理槽とした。
チタン合金小片の端部に穴を開け、塩ビコートの銅線を通してぶら下げることで前記の槽群に浸漬できるようにした。チタン合金片を先ず脱脂槽に5分浸漬し水道水(群馬県太田市)水洗した。次いで予備塩基洗槽に1分浸漬しイオン交換水で水洗した。次いでエッチング槽に3.5分浸漬しイオン交換水で水洗した。次いで酸洗槽に3分浸漬し、イオン交換水で水洗した。次いで化成処理槽に4分浸漬し、イオン交換水で水洗した。90℃とした熱風乾燥機内に15分置いて乾燥した。
2日後、このうち1個を使って走査型プローブ顕微鏡による観察を行った。20μmの長さを6回走査した結果は、山谷平均間隔RSmが2.8〜4.8μm、最大粗さ高さRzは0.5〜0.9μmであり、20回走査した測定結果では、RSmが2.5〜8.0μm、最大粗さ高さRzは0.3〜1.0μmと出た。やや彫りの浅いミクロンオーダーの粗度であった。また、電子顕微鏡観察したところ、合金片表面は無数の超微細凹部で覆われており、詳しくは、不定形の径10〜40nmの凹部が殆どを占め、広くは径10〜100nmの超微細凹部がひしめきあった存在する表面であった。この電顕写真を図13に示した。
〔実験例2〕チタン合金片の作製
アルミニウム6%とバナジウム4%程度含むとされるβ型チタン合金「KS6-4(神戸製鋼所社製)」の1mm厚の板材を入手した。これを18mm×45mmの長方形片に切断し、多数のチタン合金小片を作製した。処理法は実験例1と全く同様に行った。最後も実験例1と同様に90℃とした熱風乾燥機内に15分置いて乾燥した。
10日後、このうち1個を使って走査型プローブ顕微鏡による観察を行った。20μmの長さを6回走査した結果は、山谷平均間隔RSmが3.5〜5.0μm、最大粗さ高さRzは0.7〜0.9μmであり、20回走査した測定結果では、RSmが2.8〜7.0μm、最大粗さ高さRzは0.4〜1.1μmと出て、やはり彫りの浅いミクロンオーダーの粗度であった。また、電子顕微鏡観察したところ、合金片表面は無数の超微細凹部で覆われており、詳しくは、不定形の径15〜40nmの凹部が殆どを占め、広くは径10〜100nmの超微細凹部がひしめきあった存在する表面であった。
〔実験例3〕射出接合
実験例1にて表面処理したチタン合金片を取り出し、油分等が付着せぬよう穴のある方を手袋で摘まみ射出成形金型にインサートした。金型を閉じ調製例1により得られたPPS組成物(1)を射出温度310℃で射出した。金型温度は140℃であり、図2に示す一体化した複合体20個を得た。樹脂部の大きさは10mm×45mm×5mmであり、接合面6は10mm×5mmの0.5cmであった。成形当日に170℃の熱風乾燥機に1時間投入してアニールし、さらにその1日後に引っ張り試験した結果、平均のせん断破断力は21.8MPaであった。
〔実験例4〕射出接合(比較例)
調製例1により得られたPPS組成物(1)の代わりに、調製例2により得られたPPS組成物(2)を用いた以外は、実験例3と全く同様の実験を行った。すなわち実験例1にて表面処理したチタン合金片を使用し、射出接合して複合体を得た。得られた複合体を170℃で1時間アニールした。要するに、ポリオレフィン系ポリマーをごく僅かしか含まないPPSとフィラーのみのPPS系樹脂組成物を使用した実験である。1日後、これら10個を引っ張り試験したところ、平均のせん断破断力は7.5MPaであった。実験例3に大きく及ばず、使用した樹脂材料の差異が結果として出た。
〔実験例5〕射出接合
調製例1により得られたPPS組成物(1)の代わりに、調製例3により得られたPPS組成物(3)を用いた以外は、実験例1にて表面処理したチタン合金片を使い実験例3と全く同様にして複合体を得た。成形した日に170℃×1時間のアニールをし、その2日後にこの複合体に対して引っ張り試験機でせん断破断力を測定したところ、平均で20.0MPaであった。
〔実験例6〕射出接合(比較例)
調整例1により得られたPPS組成物(1)の代わりに、調製例4により得られたPPS組成物(4)を用いた以外は、実験例1にて表面処理したチタン合金片を使い実験例3と全く同様にして複合体を得た。要するに、ポリオレフィン系ポリマーをごく大量に含むPPS系樹脂組成物を使用した実験である。しかしながら、成形時に多量のガスが発生し、成形を中断した。この実験では樹脂組成物の主成分がPPSではなかった。
〔実験例7〕射出接合
調製例5により得られたPBT組成物(1)と、実験例1にて表面処理したチタン合金片を用いて射出接合を行った。すなわち、チタン合金片を射出成形金型にインサートした。金型を閉じ調製例5により得られたPBT組成物(1)を射出温度280℃で射出した。金型温度は140℃であり、図2に示す一体化した複合体20個を得た。樹脂部の大きさは10mm×45mm×5mmであり、接合面6は10mm×5mmの0.5cmであった。成形当日に150℃の熱風乾燥機に1時間投入してアニールし、さらにその1日後に引っ張り試験した結果、3個平均のせん断破断力は19.0MPaであった。
〔実験例8〕射出接合(比較例)
調製例5により得られたPBT組成物(1)の代わりに、ガラス繊維30%を含む市販PBT樹脂「トレコン1101−G30(東レ社製)」を用いた以外は、実験例7と全く同様にして射出接合して複合体を得た。得られた複合体を150℃で1時間アニールした。要するに、射出接合を助力するポリマーを含まないPBTとフィラーのみのPBT系樹脂組成物を使用した実験である。1日後、これら10個を引っ張り試験したところ、平均のせん断破断力は9.2MPaと小さく実験例7に大きく及ばなかった。
〔実験例9〕射出接合
調製例5により得られたPBT組成物(1)の代わりに、調製例6により得られたPBT組成物(2)を用いた以外は、実験例1にて表面処理したチタン合金片を用いて実験例8と全く同様の方法にして複合体を得た。成形した日に150℃×1時間のアニールをし、その2日後にこの複合体を引っ張り試験機でせん断破断力を測定したところ、平均で18.7MPaであった。
〔実験例10〕射出接合
調製例5により得られたPBT組成物(1)の代わりに、調製例7により得られたPBT組成物(3)を用いた以外は、実験例1にて表面処理したチタン合金片を用いて実験例8と全く同様の方法にして複合体を得た。成形した日に150℃×1時間のアニールをし、その2日後にこの複合体を引っ張り試験機でせん断破断力を測定したところ、平均で18.1MPaであった。
〔実験例11〕射出接合
調製例8により得られたポリアミド組成物(1)と、実験例1にて表面処理したチタン合金片を用いて射出接合を行った。すなわち、チタン合金片を射出成形金型にインサートした。金型を閉じ調製例8により得られたポリアミド組成物(1)を射出温度280℃で射出した。金型温度は100℃であり、図2に示す一体化した複合体20個を得た。樹脂部の大きさは10mm×45mm×5mmであり、接合面6は10mm×5mmの0.5cmであった。成形当日に150℃の熱風乾燥機に1時間投入してアニールし、さらにその1日後に引っ張り試験した結果、3個平均のせん断破断力は19.0MPaであった。
〔実験例12〕射出接合
調製例8により得られたポリアミド組成物(1)の代わりに、調製例9により得られたポリアミド組成物(2)を用いた以外は、実験例1にて表面処理したチタン合金片を用いて実験例11と全く同様の方法にして複合体を得た。成形した日に150℃×1時間のアニールをし、その2日後にこの複合体を引っ張り試験機でせん断破断力を測定したところ、平均で18.7MPaであった。
〔実験例13〕射出成形品の製作
図3、図4の形状の射出成形品を、1.ガラス繊維30%を含むPBT樹脂「トレコン1101G30(東レ社製)」、2.調整例7によって得られたPBT組成物(3)、3.調整例1によって得られたPPS組成物(1)、4.ガラス繊維30%を含む6ナイロン樹脂「B3EG7(BASF社製)」、5.ガラス繊維30%を含む芳香族ポリアミド樹脂「アミランCM3510G30(東レ社製)」を使用して作成した。得られた成形品のランナー部(ゲート部から本体に繋がる突き出し部分)を根元からニッパーでカットし、次の実験に備えた。
〔実験例14〕圧融着実験
図5の治具システムの上金型19の断熱材部分20に実験例13で作製した射出成形品22をはめこんだ。一方、実験例1で使用したのと同じ1mm厚のチタン合金板を40mm×60mmに切断し図6に示した形状のチタン合金片とした。このチタン合金片に実験例1と全く同様の表面処理をした。表面処理後のチタン合金片をホットプレートで加熱し、ピンセットで挟み掴んで図5に示した下金型11の断熱材12の凹部にセットした。真空ポンプを駆動し、直ぐに上型と下型に押し付け、コック28を開いた。数秒〜5秒おいたら内部は数mmHg程度になり、かつ樹脂成形品22の底部も溶融するので4方コック27を90度回転して系内を常圧に戻す。
金属片の大きさ(熱容量)や加熱温度によるが、十秒程度の間、樹脂成形品底部が溶融状態を保つように調整するのが技術的な鍵である。これら一連の操作で、溶融樹脂は金属合金表面のミクロンオーダー凹部に染み込み、その後の結晶化固化で強い接合を生む。結局、図7の様な樹脂金属一体化品が得られるので、これを150℃とした熱風乾燥機内に1時間入れてアニールし、放冷した。その1週間後、図8のような仕組みでチタン合金片から樹脂成形品を引っ張り破断してその接合力を測定した。各種樹脂成形品についてこの実験を行った結果を表1に示した。15kgf以下で破断したものを×とし、破断しなかったものを○とした。
〔実験例15〕圧融着実験(比較例)
図5の治具システムの上金型19の断熱材部分20に実験例13で作成した射出成形品22を嵌め込こんだ。一方、実験例1で使用したのと同じ1mm厚のチタン合金板を40mm×60mmに切断し図6に示した形状のチタン合金片とした。このチタン合金片の表面をアセトンで拭き取って脱脂処理し、これをホットプレートで加熱し、ピンセットで挟み掴んで図5に示した下金型11の断熱材12の凹部にセットした。真空ポンプを駆動し、直ぐに上型と下型に押し付け、コック28を開いた。数秒〜5秒置いたら内部は数mmHg程度になり、且つ樹脂成形品22の底部も溶融するので4方コック27を90度回転して系内を常圧に戻す。その結果を表1に示した。当然だが、全く付着しなかった。
〔実験例16〕接着
実験例1にて表面処理を行ったチタン合金片の端部にエポキシ系接着剤「EP106(セメダイン社製)」を塗り、デシケータに入れた。真空ポンプで減圧して内部圧力を3mmHgとした。この減圧状態に2分おき、常圧に戻した。再度、減圧/常圧戻しの操作を計3回行い、デシケータからチタン合金片を取り出した。同じ表面処理を行ったチタン合金片同士を接着した形状、すなわち図11に示した形状にしてクリップで固定した。接着面積は0.5〜0.7cmになるようにした。この固定品を熱風乾燥機に入れて加熱した。すなわち、100℃で1時間置き、135℃まで昇温して40分置き、その後更に昇温して165℃とし、この温度に30分保った。放冷し、1週間後に引っ張り破断してそのせん断破断力を測定した結果、3組の平均で51MPaであり非常に強い接着力であった。
〔実験例17〕接着(比較例)
実験例1と同じチタン合金を使用したが、表面処理は行わず脱脂槽に5分浸漬して水洗し乾燥だけした物を使用した。このチタン合金片で実験例15と同じ接着実験を行った。1週間後に引っ張り破断してそのせん断破断力を測定したところ19MPaしかなく実験例16より遥かに接着力は劣っていた。
〔実験例18〕CFRPプリプレグの作製
CFRPプリプレグを作成するために表2からなる熱硬化性樹脂を作成した。
この表2の成分からなる熱硬化性樹脂を混合しロールでシート状化した。得られた熱樹硬化性樹脂シートをプリプレグマシンにセットし、強化繊維として一方向に引き揃えた炭素繊維「T−300(東レ社製)」の両面から常法により加圧下で圧着し、樹脂含有率38%に調整したCFRPプリプレグを得た。繊維目付は190g/mであった。
〔実験例19〕複合体の作製
実験例1にて得た表面処理を行ったチタン合金片の端部に実験例17と同じエポキシ系接着剤「EP106」を塗布し、さらにデシケータに入れて減圧/常圧戻しの操作を3回加えた。前述した図9に示す焼成金型40を用いてチタン合金片とCFRPとの接合体を作成する。金型41内に、0.05mmポリエチフィルムの離型用フィルム57を敷き、上記したチタン合金片51、PTFEスペーサ56を置いた。別途、炭素繊維「T−300(東レ社製)」からの平織布を購入し、10%硝酸水溶液にて1昼夜浸漬した後に水洗して乾燥しておいた物を45mm×15mm小片多数に切断した。これを積層して敷いて、注射器から出すエポキシ系接着剤「EP−106」を塗りながら8枚重ね、次いでチタン合金片51の上部にポリエチフィルム製の離型用フィルム54を置いた。使用した接着剤「EP−106」は約1ccであった。
PTFE製のスペーサ53とブロック55を載せ、熱風乾燥機に入れた。そこでさらにPFTEスペーサ、ブロック53、55の上に、0.5kgの鉄の錘58をのせて乾燥機に通電し100℃まで昇温して1時間置き、次いで135℃まで昇温して40分加熱し、さらに5分かけて165℃に昇温し、165℃で1時間保持し、さらに180℃まで上げて20分おき、通電を止めて扉を閉めたまま放冷した。翌日に乾燥機から出し、焼成金型1から成形物を離型し、ポリエチフィルムを剥ぎ取って図10に示すチタン合金樹脂複合体50を得た。同じ操作を繰り返し、チタン合金片とCFRPの複合体である一体化物50を8個得た。
接合後2日目に3個を引っ張り破断試験した。CFRP部分は紙やすりをかけた1mm厚のSUS304ステンレス鋼片2枚で挟み、これをチャック板で挟んで固定する方法を取った。4組の平均でせん断破断力は35MPaあり非常に強かった。
〔実験例20〕複合体の作製
実験例1で得た表面処理を行ったチタン合金片の端部に実験例17と同じエポキシ系接着剤「EP106」を塗布し、さらにデシケータに入れて減圧/常圧戻しの操作を3回加えた。前述した図9に示す焼成金型40を用いてチタン合金片と実験例18で得たCFRPとの接合体を作成する。金型41内に、0.05mmポリエチフィルムの離型用フイルム57を敷き、上記したチタン合金片51、PTFEスペーサ56を置いた。別途切断しておいた実験例18で作成したCFRPプリプレグを5枚重ね、次いでチタン合金片51の上部にポリエチフィルム製の離型用フィルム54を置いた。
PTFE製のスペーサ53とブロック55を乗せ、熱風乾燥機に入れた。そこでさらにPFTEスペーサ、ブロック53、55の上に、0.5Kgの鉄の錘58をのせて乾燥機に通電し100℃まで昇温して1時間おき、135℃まで昇温して1時間加熱し、さらに165℃に昇温して1時間置き、さらに180℃まで上げて20分おき、通電を止めて扉を閉めたまま放冷した。翌日に乾燥機から出し、焼成金型1から成形物を離型し、ポリエチフィルムを剥ぎ取って図10に示すチタン合金脂複合体50を得た。同じ操作を繰り返し、チタン合金片とCFRPの複合体である一体化物50を8個得た。
接合後2日目に3個を引っ張り破断試験した。CFRP部分は紙やすりをかけた1mm厚のSUS304ステンレス鋼片2枚で挟み、これをチャック板で挟んで固定する方法を取った。4組の平均でせん断破断力は33MPaあり非常に強かった。
〔実験例21〕接着
GFRP用の市販のビニルエステル型不飽和ポリエステル「リポキシR802(昭和高分子社製)」10gとt−ブチルパーオキシベンゾエート「パーブチルZ(日本油脂社製)」0.1gをよく混ぜて接着剤とした。実験例1にて表面処理を行ったチタン合金片の端部にこの接着剤を塗り、デシケータに入れた。真空ポンプで減圧して内部圧力を50mmHg以下とした。この減圧状態になったら数秒おいて常圧に戻した。再度、減圧/常圧戻しの前記操作を計3回行い、デシケータからチタン合金片を取り出した。取り出したチタン合金片同士を接着した形状、すなわち図11に示した形状にしてクリップで固定し、これを3組作った。接着面積は0.5〜0.7cmになるようにした。この固定品を熱風乾燥機に入れて加熱した。90℃まで昇温して1時間おき、その後さらに昇温して120℃とし、この温度に1時間保った。放冷し、その1週間後に引っ張り破断して、そのせん断破断力を測定したところ280kgf/cm(27MPa)あり、非常に強かった。
〔実験例22〕接着
実験例2にて表面処理を行ったチタン合金片の端部にエポキシ系接着剤「EP106(セメダイン社製)」を塗り、デシケータに入れた。真空ポンプで減圧して内部圧力を3mmHgとした。この減圧状態に2分おき、常圧に戻した。再度、減圧/常圧戻しの操作を計3回行い、デシケータからチタン合金片を取り出した。同じ表面処理を行ったチタン合金片同士を接着した形状、すなわち図11に示した形状にしてクリップで固定した。接着面積は0.5〜0.7cmになるようにした。この固定品を熱風乾燥機に入れて加熱した。すなわち、100℃で1時間おき、135℃まで昇温して40分おき、その後さらに昇温して165℃とし、この温度に30分保った。放冷し、1週間後に引っ張り破断してそのせん断破断力を測定した結果、3組の平均で53MPaであり非常に強い接着力であった。
〔実験例23〕接着(比較例)
実験例2と同じチタン合金を使用したが、表面処理は行わず脱脂槽に5分浸漬して水洗し乾燥だけした物を使用した。このチタン合金片で実験例22と同じ接着実験を行った。1週間後に引っ張り破断してそのせん断破断力を測定したところ15MPaしかなく実験例22より遥かに接着力は劣っていた。
本発明は、β型チタン合金と被着材(金属合金またはFRP)を強固に接合する技術であり、種々の分野に適用可能である。具体的には移動機械、屋外機器、一般機械の部品製造等に適する技術であり、これらの製造において新しい設計方法を可能とする。本発明はβ型チタン合金に係る部品製造の基礎技術となり得るものであり、多様な応用分野が存在すると考えられ、各種部品の性能向上、生産性向上に寄与するものである。
金属と樹脂の射出接合による複合体を製造する過程を模式的に示した金型構成図である。 金属と樹脂の射出接合による複合体を模式的に示したものである。 樹脂製ボス成形品の形状例を示す図である。 樹脂製ボスを射出成形で得るときに金型上にてボス底中央部が外に向かって僅か膨らむように金型設計することが分かるよう示した模式図である。 金属合金部品と樹脂製部品を圧融着するのに使用する治具の例を示した模式図である。 本発明の実験例で使用した金属合金片の平面図を示したものである。 本発明で得た、金属合金板片上に樹脂製ボスが接合した部品の例を示す図である。 本発明の実験例で作成した金属合金片・樹脂製ボス一体化物の破壊強度を測定する場合の模式図である。 金属片と予備成形品を1液性熱硬化型接着剤で貼り合せ、熱風乾燥機内で硬化させるための焼成治具を模式的に示す断面図である。 金属片と予備成形品とを1液性熱硬化型接着剤で接合した接着複合体を示す外観図である。 金属片同士を1液性熱硬化型接着剤で接着した接着複合体を示す外観図である。 新NMT理論、NAT理論での金属合金表面構造を示す模式的部分断面図である。 図13は、市販のβ型チタン合金「KS−15-3-3-3(神戸製鋼所社製)」を本発明の方法で液処理した物の10万倍電子顕微鏡写真である。
符号の説明
1:チタン合金片
2:可動側型板
3:固定側型板
4:樹脂組成物
5:ピンポイントゲート
6:接合面
7:射出接合による樹脂金属合金複合体
8:射出成形金型
11:治具下型
12:断熱材(ベークライト製)
13:チタン合金片
14:溝
15:減圧用導通部
16:ジョイント
17:O−リング
18:位置決めピン
19:治具上型
20:断熱材(ベークライト製)
21:キャビティー
22:樹脂成形品
23:減圧穴
24:減圧用導通部
25:ジョイント
26:真空ポンプ
27:4方コック
28:2方コック
30:圧融着による樹脂金属合金複合体
31:樹脂部(ボス形状)
32:ビス穴
33:ビス
34:引っ張りブロック下
35:引っ張り試験機チャック下
36:引っ張り試験機チャック上
41:チタン合金片とFRPプリプレグを接着する為の治具の模式図
42:治具下型
43:下型受け部
44:下型貫通穴
45:床型
46:床型下部
47:下型底部
48:金型台
50:チタン合金片とFRP硬化物の一体化物
51:チタン合金片
52:FRPプリプレグまたは硬化したFRP
53:スペーサ
54:離型用フィルム
55:治具上型
56:スペーサ
57:離型用フィルム
58:錘
60:金属合金片同士の熱硬化型接着剤による接着物
61:チタン合金片
62:金属合金片
63:接着面
70:亜鉛相
71:化成処理薄層
72:樹脂層

Claims (14)

  1. β型チタン合金製またはα−β型チタン合金製の合金形状物と、金属製または樹脂製の形状物である被着材とを接合してなる金属と樹脂の複合体であって、
    前記合金形状物は、表面が化学エッチングによって輪郭曲線要素の平均長さRSmが1〜10μmでかつ最大高さ粗さRzが0.2〜5μmのミクロンオーダーの粗度を有するものであるとともに径10〜100nmの多数の超微細凹部で覆われた形状であり、さらにその表面は耐食性のある金属酸化物薄層で覆われているものであり、
    前記合金形状物と前記被着材とが前記超微細凹部に侵入した1液性熱硬化型接着剤を介して接着されている
    ことを特徴とする金属と樹脂の複合体。
  2. 前記合金形状物がβ型チタン合金15V−3Cr−3Sn−3Alチタン合金製であることを特徴とする請求項1に記載金属と樹脂の複合体。
  3. 前記合金形状物がα−β型チタン合金の6Al−4Vチタン合金製であることを特徴とする請求項1に記載の金属と樹脂の複合体。
  4. 前記1液性熱硬化型接着剤がフェノール樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤または不飽和ポリエステル樹脂系接着剤のいずれかであることを特徴とする請求項に記載の金属と樹脂の複合体。
  5. 前記被着材がフェノール樹脂を含んだ研磨剤または摩擦材用組成物の形状物であって、前記1液性熱硬化型接着剤がフェノール樹脂系接着剤であることを特徴とする請求項1に記載の金属と樹脂の複合体。
  6. 前記被着材がエポキシ樹脂を含んだ繊維強化プラスチックであって、前記1液性熱硬化型接着剤は、エポキシ樹脂系接着剤であることを特徴とする請求項1に記載の金属と樹脂の複合体。
  7. 前記被着材が不飽和ポリエステル樹脂を含んだ繊維強化プラスチックであって、前記1液性熱硬化型接着剤は、不飽和ポリエステル樹脂系接着剤であることを特徴とする請求項1に記載の金属と樹脂の複合体。
  8. 前記1液性熱硬化型接着剤には、0〜60質量%のガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、カーボンナノチューブ、その他の強化繊維、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、粘土、及びガラス粉から選ばれる1種以上の充填材が含まれているものであることを特徴とする請求項1ないし7から選択される1項に記載の金属と樹脂の複合体。
  9. β型チタン合金またはα−β型チタン合金を機械的加工で形状化して合金記形状物を形成する形状化工程と、
    前記合金形状物を、少なくとも弗素イオンを含む硫酸水溶液に浸漬処理する工程及び過マンガン酸塩水溶液に浸漬処理する工程を使用し、最終的には当該合金形状物の表面に(1)輪郭曲線要素の平均長さRSmが1〜10μmであるとともに最大高さ粗さRzが0.5〜5μmのミクロンオーダーの粗度を形成し(2)当該表面が径10〜100nmの多数の超微細凹部で覆われた形状とし(3)表面を主としてマンガン酸化物薄層で覆うこととする化学反応工程と、
    ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂、または液晶ポリマーを主成分とする樹脂組成物から樹脂製成形物を得る工程と、
    前記化学反応工程後の前記合金形状物を、前記樹脂組成物の溶融温度以上の温度に加熱する加熱工程と、
    前記加熱した合金形状物に前記樹脂製成形物を押し付けて圧融着する圧融着工程と、
    を含みβ型チタン合金製またはα−β型チタン合金製の合金形状物と樹脂成型物とを接合することを特徴とする金属と樹脂の複合体の製造方法。
  10. β型チタン合金またはα−β型チタン合金を機械的加工で形状化して合金形状物を形成する形状化工程と、
    前記合金形状物を、少なくとも弗素イオンを含む硫酸水溶液に浸漬処理する工程及び過マンガン酸塩水溶液に浸漬処理する工程を使用し、最終的には当該合金形状物の表面に(1)輪郭曲線要素の平均長さRSmが1〜10μmであるとともに最大高さ粗さRzが0.5〜5μmのミクロンオーダーの粗度を形成し(2)当該表面が径10〜100nmの多数の超微細凹部で覆われた形状とし(3)表面を主としてマンガン酸化物薄層で覆うこととする化学反応工程と、
    前記化学反応工程後の前記合金形状物を射出成形金型にインサートするインサート工程と、
    インサートされた前記合金形状物に、ポリブチレンテレフタレート樹脂を主成分とし、ポリエチレンテレフタレート樹脂及び/またはポリオレフィン液樹脂を従成分とする第1樹脂組成物、ポリフェニレンサルファイド樹脂を主成分とし、ポリオレフィン系樹脂を従成分とする第2樹脂組成物、一つの芳香族ポリアミド樹脂を主成分とし、他の芳香族ポリアミド樹脂か脂肪族ポリアミド樹脂を従成分とする第3樹脂組成物、または、脂肪族ポリアミド樹脂を主成分とし芳香族ポリアミド樹脂を従成分とする第4樹脂組成物を射出して一体化する射出接合工程と、
    を含みβ型チタン合金製またはα−β型チタン合金製の合金形状物に樹脂組成物を射出接合し一体化したことを特徴とする金属と樹脂の複合体の製造方法。
  11. β型チタン合金またはα−β型チタン合金を機械的加工で形状化して合金形状物を形成する形状化工程と、
    前記合金形状物を、少なくとも弗素イオンを含む硫酸水溶液に浸漬処理する工程及び過マンガン酸塩水溶液に浸漬処理する工程を使用し、最終的には当該合金形状物の表面に(1)輪郭曲線要素の平均長さRSmが1〜10μmであるとともに最大高さ粗さRzが0.5〜5μmのミクロンオーダーの粗度を形成し(2)当該表面が径10〜100nmの多数の超微細凹部で覆われた形状とし(3)表面を主としてマンガン酸化物薄層で覆うこととする化学反応工程と、
    前記化学反応工程後の前記合金形状物に1液性熱硬化型接着剤を塗布する工程と、
    前記1液性熱硬化型接着剤を塗布した合金形状物に被着材を押し付けて固定する工程と、
    前記固定された合金形状物及び被着材を加熱して接着剤成分を硬化させる硬化接着工程と、
    を含みβ型チタン合金製またはα−β型チタン合金製の合金形状物と被着材とを接合することを特徴とする金属と樹脂の複合体の製造方法。
  12. β型チタン合金またはα−β型チタン合金を機械的加工で形状化して合金形状物を形成する形状化工程と、
    前記合金形状物を、少なくとも弗素イオンを含む硫酸水溶液に浸漬処理する工程及び過マンガン酸塩水溶液に浸漬処理する工程を使用し、最終的には当該合金形状物の表面に(1)輪郭曲線要素の平均長さRSmが1〜10μmであるとともに最大高さ粗さRzが0.5〜5μmのミクロンオーダーの粗度を形成し(2)当該表面が径10〜100nmの多数の超微細凹部で覆われた形状とし(3)表面を主としてマンガン酸化物薄層で覆うこととする化学反応工程と、
    前記化学反応工程後の前記合金形状物に1液性熱硬化型接着剤を塗布する工程と、
    前記1液性熱硬化型接着剤を塗布した形状物を密閉容器に収納して減圧し、その後に加圧することにより、前記1液性熱硬化型接着剤を前記超微細凹部に侵入させる接着予備工程と、
    前記接着予備工程後の前記合金形状物に被着材を押し付けて固定する工程と、
    前記固定された合金形状物及び被着材を加熱して接着剤成分を硬化させる硬化接着工程と、
    を含みβ型チタン合金製またはα−β型チタン合金製の合金形状物と被着材とを接合することを特徴とする金属と樹脂の複合体の製造方法。
  13. 前記合金形状物がβ型チタン合金15V−3Cr−3Sn−3Alチタン合金製であることを特徴とする請求項10ないし12から選択される1項に記載の金属と樹脂の複合体の製造方法。
  14. 前記合金形状物がα−β型チタン合金の6Al−4Vチタン合金製であることを特徴とする請求項10ないし12から選択された1項に記載の金属と樹脂の複合体。
JP2008233749A 2008-09-11 2008-09-11 金属と樹脂の複合体及びその製造方法 Active JP5554483B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008233749A JP5554483B2 (ja) 2008-09-11 2008-09-11 金属と樹脂の複合体及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008233749A JP5554483B2 (ja) 2008-09-11 2008-09-11 金属と樹脂の複合体及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2010064397A JP2010064397A (ja) 2010-03-25
JP5554483B2 true JP5554483B2 (ja) 2014-07-23

Family

ID=42190399

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008233749A Active JP5554483B2 (ja) 2008-09-11 2008-09-11 金属と樹脂の複合体及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5554483B2 (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN108238113A (zh) * 2016-12-26 2018-07-03 本田技研工业株式会社 接合构造体及其制造方法
US20210008768A1 (en) * 2018-03-08 2021-01-14 Mitsui Chemicals, Inc. Magnesium alloy/resin composite structure and method for manufacturing the same
WO2022010133A1 (ko) * 2020-07-07 2022-01-13 주식회사 플라스탈 티타늄-수지 접합체 제조방법 및 이를 위한 티타늄 처리 용액
US11802415B2 (en) 2020-10-16 2023-10-31 JXR Constructors, Inc. Continuous composite structural reinforcing device and system

Families Citing this family (23)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101389989B1 (ko) * 2011-05-30 2014-05-02 (주)일광폴리머 이종 재질의 일체형 금속 수지 복합 구조물과 그 제조방법
JP5652603B2 (ja) * 2010-10-22 2015-01-14 国立大学法人九州工業大学 傾斜機能性複合材料及びその製造方法
KR20130129190A (ko) 2010-11-05 2013-11-27 가부시키가이샤 가네카 인서트 성형용 적층 접착 필름
CN103429413A (zh) * 2011-03-25 2013-12-04 宇部兴产株式会社 金属与热塑性树脂的复合体
JP5784067B2 (ja) * 2012-05-29 2015-09-24 ポリプラスチックス株式会社 複合成形体の製造方法
JP5798535B2 (ja) * 2012-09-07 2015-10-21 ダイセルポリマー株式会社 複合成形体の製造方法
JP6007137B2 (ja) 2013-03-14 2016-10-12 本田技研工業株式会社 異種材接合品及びその製造方法
JP6259644B2 (ja) * 2013-04-24 2018-01-10 三井化学株式会社 金属/樹脂複合構造体
JP6199655B2 (ja) * 2013-08-07 2017-09-20 アイシン精機株式会社 複合成形品
JP5928424B2 (ja) 2013-09-18 2016-06-01 トヨタ自動車株式会社 金属部材と樹脂部材との接合方法、冷却器の製造方法、及び冷却器
JPWO2015152101A1 (ja) 2014-03-31 2017-04-20 日本製紙株式会社 金属とポリプロピレン系樹脂組成物の積層複合体とその製造方法
JP6341880B2 (ja) 2015-05-12 2018-06-13 合資会社アンドーコーポレーション 含金属複合体の製造方法
JP6065068B2 (ja) * 2015-07-16 2017-01-25 日本軽金属株式会社 複合型中空容器の製造方法及び複合型中空容器
JP6311677B2 (ja) * 2015-08-21 2018-04-18 マツダ株式会社 金属部材と樹脂部材との接合方法およびその方法で使用される樹脂部材
WO2017102943A1 (en) * 2015-12-17 2017-06-22 Dsm Ip Assets B.V. Process for plastic overmolding on a metal surface and plastic-metal hybrid part
JP6441295B2 (ja) 2016-12-26 2018-12-19 本田技研工業株式会社 接合構造体及びその製造方法
CN108265241A (zh) * 2016-12-31 2018-07-10 郑州吉田专利运营有限公司 轻质合金板材与碳纤维复合材料织物连接装置及连接方法
JP7173473B2 (ja) * 2017-06-14 2022-11-16 ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. 金属表面上にプラスチックオーバーモールドする方法、及びプラスチック-金属ハイブリッド部品
JP7020874B2 (ja) * 2017-11-17 2022-02-16 ポリプラスチックス株式会社 複合部材およびその製造方法
CN109355659B (zh) * 2018-09-21 2020-12-08 广东长盈精密技术有限公司 钛合金的表面处理方法及钛合金制品、钛合金-塑料复合体及其制备方法
JP7074868B2 (ja) * 2018-09-21 2022-05-24 三井化学株式会社 冷却装置
CN110962280B (zh) * 2018-09-28 2021-09-03 比亚迪股份有限公司 金属树脂复合体及其制备方法和电子产品外壳
CN113183477A (zh) * 2020-01-14 2021-07-30 中国科学院沈阳自动化研究所 Tpe材料与钛合金壳体粘接的工艺

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4501861B2 (ja) * 2003-09-29 2010-07-14 東レ株式会社 チタンまたはチタン合金、接着用樹脂組成物、プリプレグおよび複合材料
JP4927871B2 (ja) * 2006-12-22 2012-05-09 大成プラス株式会社 金属と樹脂の複合体とその複合体の製造方法

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN108238113A (zh) * 2016-12-26 2018-07-03 本田技研工业株式会社 接合构造体及其制造方法
US20210008768A1 (en) * 2018-03-08 2021-01-14 Mitsui Chemicals, Inc. Magnesium alloy/resin composite structure and method for manufacturing the same
WO2022010133A1 (ko) * 2020-07-07 2022-01-13 주식회사 플라스탈 티타늄-수지 접합체 제조방법 및 이를 위한 티타늄 처리 용액
US11802415B2 (en) 2020-10-16 2023-10-31 JXR Constructors, Inc. Continuous composite structural reinforcing device and system

Also Published As

Publication number Publication date
JP2010064397A (ja) 2010-03-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5554483B2 (ja) 金属と樹脂の複合体及びその製造方法
JP4903897B2 (ja) 亜鉛系鍍金鋼板と被着材の接合体及びその製造方法
JP5237303B2 (ja) 鋼材と樹脂の複合体とその製造方法
JP5094849B2 (ja) ステンレス鋼複合体
JP5253416B2 (ja) 金属と樹脂の複合体とその製造方法
JP5139426B2 (ja) 鋼材複合体及びその製造方法
JP5129903B2 (ja) マグネシウム合金複合体とその製造方法
JP5008040B2 (ja) チタン合金複合体とその接合方法
JP4965649B2 (ja) 銅合金複合体とその製造方法
Ageorges et al. Resistance welding of metal/thermoplastic composite joints
JP2011042030A (ja) 金属と被着物の接合体、及びその製造方法
JP4906004B2 (ja) 金属合金と繊維強化プラスチックの複合体の製造方法
JP5295738B2 (ja) 金属合金を含む接着複合体とその製造方法
JP5714864B2 (ja) Cfrpプリプレグと被着材の接合体

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20110826

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120831

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130610

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130807

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20140520

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20140529

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5554483

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250