〔第一実施形態〕
本発明の第一実施形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明に係る複合型中空容器の製造方法は、樹脂部材と金属部材とを接合して複合型の中空容器を製造するものである。複合型中空容器の用途は特に制限されないが、本実施形態では、樹脂部材と金属部材とを接合してなる液冷ジャケットを製造する場合を例示する。
図1に示すように、液冷ジャケット1は、樹脂製の容器2と、金属製の蓋3とで構成されている。容器2は、底部11と、底部11から立ち上がる側壁部12とで構成されている。容器2は、特許請求の範囲の「樹脂部材」に相当する。底部11は、平面視矩形を呈する。側壁部12は、平面視矩形枠状を呈する。側壁部12の板厚は一定になっている。容器2の材料は樹脂であれば特に制限されないが、本実施形態では例えばポリプロピレンで形成されている。
蓋3は、容器2の開口を塞ぐ部材である。蓋3は、特許請求の範囲の「樹脂付き金属部材」に相当する。蓋3は、ベース板21と、ベース板21に並設された複数のフィン22と、複数個所に形成された熱可塑性樹脂層23とで構成されている。ベース板21は、平面視矩形を呈する板状部材である。ベース板21の大きさは、側壁部12の外縁と同じ大きさになっている。
フィン22は、ベース板21の表面21aに垂直に形成されている。フィン22は、ベース板21の長手方向に対して平行に等間隔で並設されている。フィン22の高さは、側壁部12の高さと同じ寸法になっている。ベース板21及びフィン22の材料は金属であれば特に制限されないが、本実施形態ではアルミニウム合金である。ベース板21とフィン22とは一体形成されている。
熱可塑性樹脂層23は、熱可塑性樹脂で形成された層であって、表面21aの周縁部及びフィン22の先端面22aに形成されている。熱可塑性樹脂の種類は特に制限されないが、本実施形態ではPPS(ポリフェニレンサルファイド、ポリプラスチックス社製)を用いている。熱可塑性樹脂層23は、表面21aの周縁部の全周に亘って形成されている。また、熱可塑性樹脂層23は、フィン22の先端面22aの全面に形成されている。熱可塑性樹脂層23の厚さは数十〜数百μm程度であるが、図1では説明の便宜上実際の寸法よりも厚く描画している。
図2に示すように、容器2の開口を蓋3で塞ぐと、側壁部12の先端面12aと蓋3の表面21aの周縁部とが突き合わされて第一突合せ部J1が形成される。第一突合せ部J1は、平面視矩形枠状を呈する。また、図3に示すように、本実施形態では、フィン22の先端面22aと底部11とが突き合わされて複数の第二突合せ部J2が形成される。液冷ジャケット1は、第一突合せ部J1及び第二突合せ部J2がそれぞれ溶着されることにより接合されている。液冷ジャケット1は、フィン22,22同士の隙間やフィン22と側壁部12との隙間に流体が流れることにより、ベース板21に載置される装置等を冷却することができる。
なお、本実施形態では、液冷ジャケット1は平面視矩形状を呈するが、平面視円形状、楕円形状又は他の多角形状を呈するように形成されてもよい。
次に、第一実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。液冷ジャケットの製造方法は、主に準備工程と、接合工程とを行う。準備工程は、容器2及び蓋3を用意する工程である。準備工程における、表面処理工程、樹脂層形成工程、除去工程及び切削工程は、蓋3(樹脂付き金属部材)を形成するための工程である。
まず、表面処理工程に先だって、容器2及び金属部材30を用意する。容器2は、図1に示すように、射出成形によって一体形成する。一方、図4の(a)に示すように、例えば、ダイカストによって金属部材30を形成する。
金属部材30は、ベース板31と、ベース板31に形成されたブロック部32とを備えている。ブロック部32は、直方体を呈し、ベース板31の中央に形成されている。ブロック部32の表面32aの面積は、ベース板31の裏面31bの面積よりも小さくなっている。金属部材30は、アルミニウム等切削加工が可能な金属であれば特に制限されないが、本実施形態ではアルミニウム合金で形成されている。
図4の(a)及び(b)に示すように、表面処理工程は、ベース板31の表面31a及びブロック部32の表面32a、4つの側面32bに微細な凹部を形成する工程である。表面処理工程では、各面に微細な凹部が形成されればその形成方法は特に制限されないが、例えば、エッチング処理、アルマイト処理、スプレードライ法等を行う。
エッチング処理は、例えば、塩酸溶液中に塩化アルミニウム六水和物を添加して調製したエッチング液に該当部位を浸漬させて行う。一方、アルマイト処理は、希硫酸やシュウ酸などを用いてアルミニウム合金を陽極として電気分解することにより、該当部位を電気化学的に酸化させて行う。
スプレードライ法は、高速化した粒子を該当部位に衝突させて、部材の表面の改質や造形を行う。また、ワイヤーブラシ等で該当面を粗く削って凹部を形成してもよい。
図5の(a)に示すように、樹脂層形成工程は、ベース板31の表面31a及びブロック部32の表面32a及び4つの側面32bに熱可塑性樹脂を塗布して熱可塑性樹脂層23を形成する工程である。熱可塑性樹脂を塗布すると、溶融した熱可塑性樹脂が表面処理工程で形成された凹部に入り込んだ後、硬化する。これにより、ベース板31に対して熱可塑性樹脂層23が確実に定着する。
熱可塑性樹脂の種類は、特に制限されないが、例えば、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド等を用いればよい。樹脂層形成工程において、熱可塑性樹脂を塗布する方法は特に制限されるものではない。本実施形態では、金属部材30を射出成形型(図示省略)に設置した後、熱可塑性樹脂を射出して塗布している。なお、金属部材30の一部を樹脂液に含浸させるいわゆるドブ漬けによって熱可塑性樹脂層23を形成してもよい。
図5の(b)に示すように、除去工程は、ブロック部32の4つの側面32bに塗布された熱可塑性樹脂層23を除去する工程である。熱可塑性樹脂層23を除去する方法は特に制限されないが、本実施形態ではエンドミル等で切削除去している。除去工程では、少なくとも側面32bに塗布された熱可塑性樹脂を除去すればよいが、本実施形態では、図5の(b)の一点鎖線で示すラインに沿って切削除去する。つまり、本実施形態では、ブロック部32の側面32b及び表面32aの一部とこれらの部位に形成された熱可塑性樹脂層23とを切削除去する。
除去工程後は、図6の(a)に示すように、ブロック部32の4つの側面32b金属面の全てが露出するとともに、ブロック部32の周囲に沿って表面31aの一部が露出する。
図6の(b)に示すように、切削工程は、マルチカッターMでブロック部32を切削してフィンを形成する工程である。マルチカッターMは、回転軸Maと、回転軸Maに並設された複数の円盤カッターMbとで構成されている。円盤カッターMbは、隙間をあけて並設されており、周縁部には刃(図省略)が形成されている。隣り合う円盤カッターMb,Mbの隙間は、フィン22の厚さと同等である。また、円盤カッターMbの厚さは、隣り合うフィン22同士の隙間と同等である。
図7に示すように、切削工程では、回転軸Maとブロック部32の稜線32cとが平行となるようにマルチカッターMを配置するとともに、ブロック部32の稜線32cを通る鉛直線と、回転軸Maの中心とが重なる位置にマルチカッターMを配置する。そして、マルチカッターMとブロック部32とを近接させて、円盤カッターMbとブロック部32を接触させる。
円盤カッターMbを所定の深さまで挿入したら、ブロック部32に対するマルチカッターMの高さ位置を一定に維持しつつ、他方の稜線32dに向けて相対移動させる。回転軸Maの中心と他方の稜線32dを通る鉛直線とが重なる位置まで移動させたら、マルチカッターMとブロック部32とが離間するように相対移動させる。なお、マルチカッターMの挿入方法及び離脱方法は、この方法に限定されるものではない。
図8の(a)に示すように、切削工程によって、先端面22aに熱可塑性樹脂層23が形成された複数のフィン22(熱可塑性樹脂層23付きフィン22)が形成される。以上の表面処理工程と、樹脂層形成工程と、除去工程と、切削工程とによって蓋3が形成される。
図8の(b)に示すように、接合工程は、容器2と蓋3とを突き合わせた後、摩擦圧接を行って容器2と蓋3とを溶着する工程である。蓋3に容器2をかぶせると、蓋3の表面21aの周縁部と容器2の側壁部12の先端面12a(図1参照)とが突き合わされて第一突合せ部J1が形成される。また、底部11とフィン22の先端面22aとが突き合わされて複数の第二突合せ部J2が形成される(図3参照)。
摩擦圧接では、摩擦工程と圧接工程とを行う。摩擦工程では、容器2と蓋3とを互いに近接する方向に押圧しながら往復移動させる。本実施形態では、フィン22の長手方向と平行に容器2と蓋3とを相対的かつ直線的に往復移動させる。本実施形態では、蓋3は移動させず、容器2のみを直線的に往復移動させている。
摩擦工程における条件は適宜設定すればよいが、周波数を100〜260Hz、振幅を1.0〜2.0mm、摩擦圧力を3.0〜10.0MPaに設定する。摩擦工程の時間を1〜3秒程度に設定する。摩擦工程が終了したら、直ちに圧接工程に移行する。
圧接工程では、容器2及び蓋3を相対移動させずに互いに近接する方向に押圧する。圧接工程における条件は適宜設定すればよいが、例えば、アップセット圧力(冷却圧力)を3.0〜12MPa、冷却時間を2〜10秒程度に設定する。
摩擦工程によって第一突合せ部J1及び第二突合せ部J2に摩擦熱が発生した後、往復移動を停止させ、圧接工程によってアプセット圧力を付与すると、ベース板21と側壁部12とが溶着するとともに、フィン22と底部11とが溶着する。より詳しくは、図9に示すように、摩擦熱が発生することによって、熱可塑性樹脂層23が溶融するとともに、側壁部12の先端面12aも溶融して両者が溶着する。
摩擦圧接の際には、第一突合せ部J1及び第二突合せ部J2には、軟化した母材が押し出されることによってバリが発生する。必要に応じて、第一突合せ部J1の側方に発生したバリを、カッター装置を用いて切除する。以上の工程により液冷ジャケット1が完成する。
以上説明した第一実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法によれば、表面処理工程によって形成された凹部31c(図9参照)に、塗布された熱可塑性樹脂が入り込んだ後に硬化するため、金属で形成されたベース板21(31)に熱可塑性樹脂層23を確実に定着させることができる。また、接合工程では、第一突合せ部J1及び突合せ部J2において樹脂同士が突き合わされるため、接合する部材間の親和性が高くなり容器と熱可塑性樹脂層とが確実に溶着し、結合力を大きくすることができる。
また、本実施形態では、第一突合せ部J1に加えて、底部11とフィン22の先端面22aとの突合せ部J2も溶着されるため、より強固に接合することができる。
ここで、例えば、フィン22を形成した後に、フィン22の先端面22aに熱可塑性樹脂を射出することもできるが、この場合は複数枚形成されたフィン22の側面に熱可塑性樹脂が塗布されないように、射出成形型に入れ子等を配置しなければならず、射出成形作業が煩雑になる。しかし、本実施形態によれば、切削工程の前に樹脂層形成工程を行うことにより、ベース板31及びブロック部32の全体(表面31a、表面32a及び側面32b)に一括して熱可塑性樹脂を射出できるため、入れ子等が不要になる。これにより、本実施形態によれば、ベース板31及びブロック部32に対して容易に熱可塑性樹脂を塗布することができる。
また、熱可塑性樹脂を塗布する方法は特に制限されないが、本実施形態のように射出成形によれば、熱可塑性樹脂のベース板31への定着性が良好となる。また、射出成形によれば、短時間で均一に熱可塑性樹脂を塗布することができる。
また、図9に示すように、凹部31cに熱可塑性樹脂が入り込んだ後に硬化することにより、いわゆるアンカー効果による引き抜き抵抗を向上させることができる。凹部31cの形状は特に制限されないが、本実施形態のように、凹部31cの開口部に向かうにつれて開口径が小さくなるように形成されていることが好ましい。
また、第一突合せ部J1及び突合せ部J2に熱を発生させる手段も特に制限されないが、本実施形態のように摩擦圧接を採用すると、短時間で容易に接合することができる。
なお、摩擦工程の移動方向は、フィン22に対して斜め方向に容器2を移動させてもよいし、フィン22の板厚方向と平行に容器2を移動させてもよい。また、接合工程では、摩擦圧接によって摩擦熱を発生させたが、例えば、ベース板21に発熱装置を接触させてベース板21に熱を発生させてもよい。また、ベース板21の裏面に回転ツールを回転させてベース板21と回転ツールとの摩擦熱によって熱を発生させてもよい。また、熱可塑性樹脂層23と容器2の樹脂の種類は同一でもよいし、異なってもよい。
〔第二実施形態〕
次に、第二実施形態について説明する。第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法は、表面処理工程、樹脂層形成工程及び接合工程が第一実施形態と相違する。第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法では、相違点を中心に説明する。
図10の(a)に示すように、表面処理工程では、ベース板31の表面31aの周縁部と、ブロック部32の表面32aのみに対して表面処理を行う。
図10の(b)に示すように、樹脂層形成工程では、表面処理を行った部位、つまり、ベース板31の表面31aの周縁部と、ブロック部32の表面32aに熱可塑性樹脂を塗布し、熱可塑性樹脂層23を形成する。
図10(b)に示すように、切削工程では、マルチカッターMを用いてブロック部32の表面32aを切削する。本実施形態では、マルチカッターMの回転軸Maが、ブロック部32の長辺を構成する稜線32eと平行となるように配置し、この平行状態を維持しつつ切削する。
図11の(a)に示すように、切削工程によって、先端面22aに熱可塑性樹脂層23が形成された状態で複数のフィン22が形成される。また、表面31aの周縁部に熱可塑性樹脂層23が形成される。これにより蓋3が形成される。
図11の(b)に示すように、接合工程は、容器2と蓋3とを突き合わせた後、摩擦圧接を行って蓋3と容器2とを溶着により接合する工程である。本実施形態では、フィン22の長手方向と平行(蓋3の短手方向と平行)に容器2及び蓋3を相対的に往復移動させる。
以上説明した第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法によっても第一実施形態と略同等の効果を得ることができる。また、第二実施形態では、ベース板31の周縁部及び表面32aのみに樹脂を塗布するだけでよいため、第一実施形態の除去工程が不要になるというメリットがある。
〔変形例〕
第一実施形態及び第二実施形態では、金属部材30をダイカストによって形成したが、他の成形方法で形成してもよい。例えば、図12に示すように、押出し成形によって金属部材30を形成してもよい。この変形例では、金属部材の長手方向を押出し方向として押出形材を得た後、中間ブロック部32Aの両端(2点鎖線で示す部分)を切削することで金属部材30を得ることができる。
〔第三実施形態〕
次に、本発明の第三実施形態について説明する。第一実施形態では、マルチカッターMによって切削してフィン22を形成したが、第三実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法は、蓋3のフィンが予め形成されている点で第一実施形態と相違する。また、フィンを形成した後に、熱可塑性樹脂を塗布する点で第一実施形態と相違する。
第三実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法は、主に準備工程と、接合工程とを行う。準備工程は、表面処理工程と、樹脂層形成工程とを行う。準備工程は、主に蓋3を形成するための工程である。
まず、表面処理工程に先だって、容器2及び金属部材40を用意する。容器2(樹脂部材)は、図1に示すように、射出成形によって一体形成する。一方、図13の(a)に示すように、例えば、ダイカストによって金属部材40を形成する。金属部材40は、蓋3の素となる部材である。金属部材40は、ベース板41と、ベース板41に並設された複数のフィン42とで構成されている。
図13の(a)及び(b)に示すように、表面処理工程では、ベース板41の表面41aの周縁部及びフィン42の先端面42aに対して微細な凹部を形成する。
図14の(a)に示すように、樹脂層形成工程では、表面処理工程を行った部位に熱可塑性樹脂層を塗布して熱可塑性樹脂層23を形成する。これにより、第一実施形態に係る蓋と同等の蓋3(樹脂付き金属部材)が形成される。
接合工程は、具体的な図示は省略するが、第一実施形態の図8の(b)と同じ要領で摩擦圧接を行って、容器2と蓋3とを接合する工程である。
第三実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法であっても第一実施形態と略同等の効果を得ることができる。また、第三実施形態では、蓋3に予めフィン22が形成された状態から蓋3を形成するため、マルチカッターM等を用いる必要が無い。
第三実施形態では、金属部材40をダイカストによって形成したが、他の成形方法で形成してもよい。例えば、図15の(a)に示すように、押出し成形によって金属部材40を形成してもよい。この変形例では、金属部材40の長手方向を押出し方向として押出形材を得た後、中間フィン22Aの両端(2点差線の部分)を削除することで、金属部材40を得ることができる。
また、金属部材40を、マルチカッターMを用いて形成してもよい。この場合は、金属部材30(図4の(a)参照)を用意した後、ブロック部32に対してマルチカッターMを挿入して、フィンを形成すればよい(切削工程)。その後の工程(表面処理工程、樹脂層形成工程及び接合工程)については、第三実施形態と同等である。
また、図15の(b)に示すように、フィン22の先端面22aに溝22bを設けてもよい。溝22bは、先端面22aから離間するにつれて開口径が大きくなるように形成されている。先端面22a及び溝22bに熱可塑性樹脂が塗布されて、熱可塑性樹脂層が形成された後、容器2と溶着すると、溝22bに樹脂が入り込んだ状態で硬化する。これにより、フィン22に対する底部11の引き抜き抵抗が大きくなるため、フィン22と容器2との結合力をより高めることができる。
なお、第一実施形態乃至第三実施形態について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本実施形態では、第一突合せ部J1に加えて、突合せ部J2につても溶着させたが、フィン22と底部11とは溶着させずに離間するように構成してもよい。また、本実施形態では、表面処理工程で凹部31cを形成した領域と、熱可塑性樹脂層23を形成した領域は同等であるが、樹脂層形成工程では少なくとも凹部31cを形成した箇所に熱可塑性樹脂層23を形成すればよい。
また、本実施形態では、容器2を樹脂とし蓋3を金属としたが、容器を金属とし、蓋を樹脂としてもよい。蓋を樹脂とする場合は、容器の底部にフィンを形成することが好ましい。この場合は、容器の側壁部の先端面やフィンの先端面に表面処理工程及び樹脂層形成工程を行った後に、蓋と容器(樹脂付き金属部材)とを接合工程で接合すればよい。
〔第四実施形態〕
図16に示すように、第四実施形態に係る液冷ジャケット51は、樹脂製の容器52と、金属製の蓋53とで構成されている。液冷ジャケット51は、支持部63が形成されている点で、第一実施形態と相違する。
容器52は、底部61と、底部61から立ち上がる側壁部62と、底部61から立ち上がり側壁部62に連続する支持部63とで構成されている。容器52は、特許請求の範囲の「樹脂部材」に相当する。容器52は、射出成形によって一体形成されている。
支持部63は、板状を呈し、側壁部62と同等の高さになっている。支持部63は、側壁部62の短辺部に連続し、当該短辺部に対して垂直に形成されている。支持部63の長さは、側壁部62の長辺部の2/3程度になっている。
蓋53は、容器52の開口を塞ぐ部材である。蓋53は、ベース板71と、ベース板71に並設された複数のフィン72と、熱可塑性樹脂層73と、スペース部74とで構成されている。蓋53は、特許請求の範囲の「樹脂付き金属部材」に相当する。
ベース板71は、平面視矩形を呈する板状部材である。ベース板71の大きさは、側壁部62の外縁と同じ大きさになっている。
フィン72は、ベース板71の表面71aに垂直に形成されている。フィン72は、ベース板71の長手方向に対して平行に等間隔で並設されている。フィン72の高さは、側壁部62の高さよりも小さくなっている。
スペース部74とは、複数枚並設されたフィン72群のうちフィン72が形成されていない空間を意味する。スペース部74は、支持部63を挿通するための空間である。
熱可塑性樹脂層73は、熱可塑性樹脂で形成された層であって、表面71aの周縁部と、表面71aのうち支持部63に対応する位置とに形成されている。
図17に示すように、容器52を蓋53で塞ぐと、側壁部62の先端面62aと蓋53の表面71aの周縁部とが突き合わされて第一突合せ部J1が形成される。第一突合せ部J1は、平面視矩形枠状を呈する。また、図18に示すように、支持部63の先端面63aとベース板71の表面71aとが突き合わされて第三突合せ部J3が形成される。液冷ジャケット51は、第一突合せ部J1と第三突合せ部J3とがそれぞれ溶着されることにより接合されている。
次に、第四実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。液冷ジャケットの製造方法は、主に準備工程と、接合工程とを行う。準備工程では、表面処理工程と、樹脂層形成工程とを行う。表面処理工程及び樹脂層形成工程は、蓋53を用意するための工程である。
まず、表面処理工程に先だって、容器52及び金属部材80を用意する。容器52は、図16を参照するように、射出成形によって一体形成する。一方、図19の(a)に示すように、例えば、ダイカストによって金属部材80を形成する。金属部材80は、蓋53の素となる部材である。金属部材80は、ベース板81と、ベース板81に並設された複数のフィン82とで構成されている。
表面処理工程は、ベース板81の裏面81aの周縁部及び裏面81aのうち支持部13が溶着される部位に微細な凹部を形成する工程である。
図19の(b)に示すように、樹脂層形成工程は、ベース板81の裏面81aの周縁部及び裏面81aのうち支持部63に溶着される部位に熱可塑性樹脂を塗布する工程である。つまり、樹脂層形成工程では、表面処理工程で凹部が形成された部位に樹脂を塗布して、熱可塑性樹脂層73を形成する。これにより、蓋53が形成される。
図20に示すように、接合工程は、容器52と蓋53とを突き合わせた後、摩擦圧接を行って容器52と蓋53とを溶着により接合する工程である。蓋53に容器52をかぶせると、ベース板71の表面71aの周縁部と側壁部62の先端面62aとが突き合わされて第一突合せ部J1が形成される。また、支持部63の先端面63aとベース板71とが突き合わされて第三突合せ部J3が形成される。
摩擦圧接では、第一実施形態と同様の手順によって、第一突合せ部J1と第三突合せ部J3とを接合する。
以上説明した第四実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法によれば、第一実施形態と同様の原理によって容器52の側壁部62と蓋53の周縁部との突合せ部が接合する。
第一実施形態〜第三実施形態では、フィンを容器の底部に溶着するものであったが、第四実施形態のように側壁部62の高さがフィン72の高さよりも大きくなる場合がある。このような場合は、液冷ジャケットに内圧が作用すると、容器の中央部に内圧が集中するため、容器の中央部分の変形が大きくなって突合せ部が破壊されるおそれがある。しかし、本実施形態のように、第一突合せ部J1に加えて、容器52の支持部63と蓋53のベース板71の中央部とが第三突合せ部J3で溶着されるため、容器52と蓋53との結合力を向上させることができる。
また、支持部63は、本実施形態のように側壁部62から連続して形成されることで、容器52及び液冷ジャケット51の剛性を向上させることができる。
なお、本実施形態ではフィン72を設けたが、フィン72を省略してもよい。また、本実施形態では、支持部63を容器52に設けたが、支持部63を蓋53に設けてもよい。この場合は、表面71aの周縁部と支持部63の先端面に表面処理を施すとともに、当該表面処理を行った部位に熱可塑性樹脂層を形成して蓋を作成する。そして、当該蓋と容器とを突き合わせて接合工程によって各突合せ部を溶着すればよい。
また、本実施形態では、金属部材80をダイカストによって形成したが、金属部材をマルチカッターMで切削して形成してもよい。
〔第五実施形態〕
図21に示すように、第五実施形態に係る液冷ジャケット51Aは、樹脂製の容器52Aと、金属製の蓋53Aとで構成されている。液冷ジャケット51Aは、支持部63Aが側壁部62と離間している点で第四実施形態と相違する。
容器52Aは、底部61と、底部61の端部から立ち上がる側壁部62と、底部61の中央から立ち上がる支持部63Aとで構成されている。容器52Aは、特許請求の範囲の「樹脂部材」に相当する。容器52Aは、射出成型によって一体形成されている。
支持部63Aは、円柱状を呈し、側壁部62と同等の高さになっている。支持部63Aは、底部61の中央において、側壁部62から離間して形成されている。
蓋53Aは、ベース板71と、ベース板71に併設された複数のフィン72と、熱可塑性樹脂層73と、スペース部74とで構成されている。蓋53Aは、特許請求の範囲の「樹脂付き金属部材」に相当する。
スペース部74とは、複数枚並設されたフィン72群のうちフィン72が形成されていない空間部分を意味する。スペース部74は、支持部63Aを挿通するための空間である。
熱可塑性樹脂層73は、熱可塑性樹脂で形成された層であって、表面71aの周縁部と、表面71aのうち支持部63Aに対応する位置に形成されている。
図22に示すように、容器52Aを蓋53Aで塞ぐと、側壁部62の先端面62aと蓋53Aの表面71aの周縁部とが突き合わされて第一突合せ部J1が形成される。第一突合せ部J1は、平面視矩形枠状を呈する。また、支持部63Aの先端面63Aaとベース板71の表面71aとが突き合わされて第三突合せ部J3が形成される。液冷ジャケット51Aは、第一突合せ部J1と第三突合せ部J3とがそれぞれ溶着されることにより接合されている。
次に、第五実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。液冷ジャケットの製造方法は、主に準備工程と、接合工程とを行う。準備工程では、表面処理工程と、樹脂層形成工程とを行う。
まず、表面処理工程に先だって、容器52A及び金属部材80Aを用意する。容器52Aは、図21を参照するように、射出成形によって一体形成する。一方、図23の(a)に示すように、例えば、ダイカストによって金属部材80Aを形成する。金属部材80Aは、蓋53Aの素となる部材である。金属部材80Aは、ベース板81と、ベース板81に並設された複数のフィン82とで構成されている。
表面処理工程は、ベース板81の裏面81aの周縁部及び裏面81aのうち支持部63Aが溶着される部位に微細な凹部を形成する工程である。
図23の(b)に示すように、樹脂層形成工程は、ベース板81の裏面81aの周縁部及び裏面81aのうち支持部63Aに溶着される部位に熱可塑性樹脂を塗布する工程である。つまり、樹脂層形成工程では、表面処理工程で凹部が形成された部位に熱可塑性樹脂を塗布して、熱可塑性樹脂層73を形成する。これにより、蓋53Aが形成される。
図24に示すように、接合工程は、容器52と蓋53とを突き合わせた後、摩擦圧接を行って容器52と蓋53とを溶着により接合する工程である。蓋53に容器52をかぶせると、ベース板71の表面71aの周縁部と側壁部62の先端面62aとが突き合わされて第一突合せ部J1が形成される。また、支持部63Aの先端面63Aaとベース板71とが突き合わされて第三突合せ部J3が形成される。
摩擦圧接では、第一実施形態と同様の手順によって、第一突合せ部J1と第三突合せ部J3とを接合する。
以上説明した第五実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法によれば、第四実施形態と同等の効果を得ることができる。また、第五実施形態のように、支持部63Aは側壁部62と離間して形成されていてもよい。また、本実施形態では支持部63Aを中央に1つだけ設けているが、他の位置に複数設けてもよい。なお、支持部63Aは本実施形態では円柱状としたが、角柱であってもよい。
なお、本実施形態ではフィン72を設けたが、フィン72を省略してもよい。また、本実施形態では、支持部63Aを容器52に設けたが、支持部63Aを蓋53に設けてもよい。この場合は、表面71aの周縁部と支持部63Aの先端面に表面処理を施すとともに、当該表面処理を行った部位に熱可塑性樹脂層を形成して蓋を作成する。そして、当該蓋と容器とを突き合わせて接合工程によって各突合せ部を溶着すればよい。
〔第六実施形態〕
次に、本発明の第六実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。図25に示すように、第六実施形態に係る液冷ジャケット91は、複数の流路孔104とこの流路孔104の端部に連通するヘッダー流路孔113を有する点で他の実施形態と相違する。第六実施形態に係る液冷ジャケット91は、金属製の容器92と樹脂製の蓋93とが溶着される。
容器92は、底部101と、底部101から立ち上がる側壁部102と、仕切り部103と、熱可塑性樹脂層105とで構成されている。容器92は、特許請求の範囲の「樹脂付き金属部材」に相当する。側壁部102は、平面視矩形枠状を呈する。容器92の内部は、仕切り部103によって複数の空間に仕切られる。当該空間は、流体を流通させるための流路孔104となる。
熱可塑性樹脂層105は、熱可塑性樹脂の層であって、側壁部102の先端面(表面)の全周に亘って形成されている。
蓋93は、底部111と、底部111に対して垂直に形成された側壁部112とで構成されている。蓋93は、特許請求の範囲の「樹脂部材」に相当する。側壁部112は、平面視矩形枠状を呈する。蓋93の内部には、ヘッダー流路孔113が形成されている。
第六実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法では、準備工程と、接合工程とを行う。準備工程では、表面処理工程と、樹脂層形成工程とを行う。表面処理工程及び樹脂層形成工程は、容器92を形成するための工程である。
まず、表面処理工程に先だって、容器92の素となる金属部材と、蓋93とを用意する。金属部材は、本実施形態では、底部101と、側壁部102と、仕切り部103とで構成される。一方、蓋93は、射出成形によって一体形成される。
表面処理工程では、側壁部102の先端面に微細な凹部を形成する。樹脂層形成工程では、表面処理によって凹部を形成した部位に熱可塑性樹脂層を形成する。これにより、容器92が形成される。
図26に示すように、接合工程では、容器92と蓋93とを摩擦圧接により接合する。摩擦工程における移動方向は特に制限されないが、本実施形態では蓋93の長手方向に沿って往復移動させる。以上の工程により、液冷ジャケット91が形成される。
以上説明した第六実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法によれば、内部に流路孔104と、この流路孔104の端部に連通するヘッダー流路孔113とを備えた液冷ジャケット91を容易に製造することができる。また、第一実施形態では、容器を樹脂、蓋を金属としたが、本実施形態のように容器92を金属、蓋93を樹脂としてもよい。
なお、本実施形態では、容器92を金属、蓋93を樹脂としたが、容器を樹脂とし、蓋を金属としてもよい。この場合は、蓋の側壁部の先端面に、表面処理工程及び樹脂層形成工程を行って熱可塑性樹脂層を形成した後、接合工程で接合すればよい。
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、本実施形態では、液冷ジャケットの内部にフィン22や仕切り部103等内部の空間を仕切る部材を備えた形態を例示したが、これらの部材が無い形態であってもよい。
また、本実施形態では、フィンを板状に形成したが、例えば、ピン状(柱状)に形成してもよい。例えば、ピン状のフィンを形成する場合は、図6の(b)を参照すると、金属部材の長手方向と平行にマルチカッターを移動させて切削を行う第一切削工程の後、金属部材の短手方向と平行にマルチカッターを移動させて切削を行う第二切削工程を行えばよい。この工程によれば、角柱状のピン状のフィンを得ることができる。なお、ピンフィンとベース板とが一体形成された部材をダイカストによって形成してもよい。
次に、本発明の実施例について説明する。以下では、第一実施形態と同様の符号を用いて説明する。実施例では、液冷ジャケットである試験体1〜3を、条件を変えて製造し、これらの試験体に対して耐圧試験を行った。第一実施形態と略同等の工程によって試験体1,2を製造した。一方、フィン22が容器2の底部11に溶着されていないものを試験体3とした。
試験体1の製造工程を具体的に説明する。図4の(a)を参照するように、準備工程では、アルミニウム合金(JIS:A1050H12)によって金属部材30を形成した。ベース板31の板厚は4mm、横寸法30mm、縦寸法50mmである。ブロック部32の板厚は4mm、横寸法19mm、縦寸法39mmである。
なお、JIS:A1050は、Si;0.25%以下、Fe;0.40%以下、Cu;0.05%以下、Mn;0.05%以下、Mg;0.05%以下、Zn;0.05%以下、V;0.05%以下、Ti;0.03%以下、Al;99.50%以上で構成されている。H12とは、熱処理等を行って引張強さ85N/mm2、伸び16%、耐力75N/mm2、硬さ23HVに調質されたものを言う。
また、準備工程では、PPS(ポリフェニレンサルファイド、ポリプラスチックス社製)を用いて容器2を形成した。具体的には、金型温度150℃、樹脂温度320℃、射出速度100mm/s、保圧50MPa、保圧時間3秒に設定して、射出成形型(図示省略)のキャビティにPPSを射出して成形した。
図4の(b)を参照するように、金属部材30に対して表面処理を行った。本実施例では、エッチング処理を行って、金属部材30に亜鉛含有皮膜を形成した。具体的には、水酸化ナトリウム濃度100g/L及び酸化亜鉛濃度25g/Lの亜鉛含有水酸化ナトリウム水溶液を調整した。そして、この亜鉛含有水酸化ナトリウム水溶液中に金属部材30を室温下で3分間含浸させ、水洗した。
図5(a)を参照するように、樹脂層形成工程では、射出成形型を用いて金属部材30に熱可塑性樹脂を塗布した。熱可塑性樹脂は、本実施形態ではPPS(ポリフェニレンサルファイド、ポリプラスチックス社製)を用いた。具体的には、表面処理工程を行った金属部材30を射出成形型(図示省略)にセットし、金型温度150℃、樹脂温度320℃、射出速度100mm/s、保圧50MPa、保圧時間3秒に設定して、PPSを射出した。これにより、熱可塑性樹脂が塗布された金属部材30を得た。
図5の(b)を参照するように、除去工程では、ブロック部32の4つの側面32bに塗布された熱可塑性樹脂を除去した。
図6の(a)及び(b)に示すように、切削工程では、マルチカッターMを用いてブロック部32にフィンを形成した。これにより、フィン22の先端面22aに熱可塑性樹脂層23が形成された蓋3を得た。
図8の(a)及び(b)に示すように、接合工程では、摩擦圧接により容器2と蓋3とを接合した。摩擦圧接の条件は、図25に示すとおりである。以上の工程によって試験体1を得た。
試験体2については、摩擦圧接における振幅と、摩擦時間を除いては、試験体1と同等の工程で製造した。
試験体3は、フィン22が容器2の底部11に溶着されていない構造である。したがって、試験体3の製造方法では、除去工程において、図5(b)に示すブロック部32の4つの側面32bに塗布された熱可塑性樹脂のみならず、上面32aに塗布された熱可塑性樹脂をも除去した。ベース板21(31)の周縁部に対してのみ表面処理工程及び樹脂層形成工程を行った後、接合工程を行った。
<耐圧試験>
耐圧試験は、試験体1〜3の蓋3の一部に貫通孔を設け、当該貫通孔から試験体1〜3の内部にエアーを供給し、試験体1〜3の接合部分が破壊されるまでの印加圧力を計測した。本実施例では、30秒ごとに圧力を0.1MPa上昇させた。
図25に示すように、試験体1,2と試験体3とを対比すると、第一突合せ部J1に加えて第二突合せ部(フィン22の先端面22aと容器2の底部11との突合せ部)を溶着した方が、大きな圧力に耐えられることがわかった。また、フィン22を底部11に溶着しなくても0.1MPaの圧力に耐えられることがわかった。