JP6199655B2 - 複合成形品 - Google Patents

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Description

本発明は、金属部材と高分子材料部を接合してなる複合成形品に関する。
従来、金属を母材とする表面をもつ金属部材と、金属部材の表面に被覆された樹脂材とからなる複合成形品がある。金属部材と樹脂材との接合強度を高めるために、様々な提案がされている。
例えば、特許文献1には、アルミニウム表面をヒドラジン等を含む還元性溶液で化成処理することで微細孔を多数形成し、アルミニウム表面に樹脂材を被覆して微細孔に樹脂を充填することにより、アルミニウム材と樹脂材とを一体化することが示されている。
特許文献2には、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)にオレフィン樹脂を混合することで、金属部材表面の微細孔に充填しやすくして金属部材と樹脂材の接合強度を高めることが開示されている。
特許文献3には、樹脂材と金属部材の一体化のために、カーボンナノチューブ(CNT)を添加した熱硬化型接着剤を用いることが示されている。金属部材表面に形成した微細孔にカーボンナノチューブを進入させ、脆弱な樹脂のアンカー部を補強することで金属部材と樹脂材の接合強度を高めることが開示されている。熱可塑性樹脂の高粘性融液にカーボンナノチューブを添加すると樹脂の流動性が悪化して、一般的な射出成形などの賦形法では樹脂を微細孔内に充填することが困難となる。熱可塑性樹脂に代えて熱硬化型接着剤を用いることで、樹脂の流動性を維持している。
特許文献4には、金属部材表面に50μm〜300μmの周期で制御された凹凸を形成し、更に化成処理によって細孔を形成し、この状態の金属部材表面に溶融樹脂を流し込むことにより金属部材と樹脂材との接合部の熱衝撃耐久性を高くすることが示されている。
国際公開2004−041532号公報 特開2007−313750号公報 特開2011−42030号公報 国際公開2011−045895号公報
しかしながら、特許文献1、2、4では、金属部材表面の凹部に樹脂が進入しにくい場合があり、金属部材と樹脂材との接合強度が不足するおそれがあった。特許文献3では、樹脂材料として熱硬化型接着剤を用いている。特許文献3の接合技術を熱可塑性樹脂に適用することはできない。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、金属部材と高分子材料との接合強度を高めた複合成形品を提供することを課題とする。
(1)本発明の複合成形品は、金属を母材とする表面をもつ金属部材と、前記金属部材の表面の少なくとも一部に被覆され、高分子材料を有する高分子材料部と、を有しており、前記金属部材の表面は、フェムト秒レーザ又はピコ秒レーザの照射により作成され、該レーザの光学波長に依存する周期で複数並設された長尺状の微小溝をもち、前記微小溝の内部は、前記高分子材料の一部で充填されており、前記金属部材の表面は、前記金属部材の表面の平面方向に対して平行な平行部と、前記平行部に対して平行ではない非平行部とをもち、前記非平行部に形成された前記微小溝は前記平面方向に対して平行に複数並設され、前記非平行部に形成された前記微小溝には、前記平行部に形成された前記微小溝に対して直交する方向に形成された前記微小溝を含んでおり、前記金属部材の表面は、前記平行部を有する格子状の突部と、前記突部に囲まれ前記非平行部を壁面とし前記高分子材料が進入する進入空間と、を備え、前記壁面には前記微小溝が設けられている。
上記複合成形品によれば、金属部材表面が、フェムト秒レーザ又はピコ秒レーザで、該レーザの光学波長に依存する周期で周期的に複数並設された長尺状の微小溝を有している。このため、微小溝内に進入した高分子材料が優れたアンカー効果を発揮し、金属部材と高分子材料部との間で強い接合強度を発揮することができる。
(2)前記壁面は複数の非平行面を有し、隣接する前記非平行面に設けられた前記微小溝は互いに直交する方向に形成されている。
)前記微小溝の長尺方向の長さは、1,000nm以上であり、前記微小溝の幅は100nm以上1,000nm以下であることが好ましい。高分子材料が熱可塑性樹脂を含む場合には、微小溝内に進入してくる高分子材料が放熱されにくく、高分子材料の流動性を保ち、微小溝全体に高分子材料が充填されやすくなる。
)前記微小溝の幅方向のピッチ間隔は、1μm以下であることが好ましい。微小溝の間の表面部と高分子材料との間の気密性を保持できる。
)前記微小溝の深さは、100nm以上3,000nm以下であることが好ましい。微小溝のほぼ全体に高分子材料を充填して、高分子材料と金属部材との接合強度を高めることができる。
また、(1)の発明において、非平行部では、微小溝に対する高分子材料のアンカー効果に加えて、非平行部に進入した高分子材料のアンカー効果も発揮される。非平行部に形成された微小溝に高分子材料が進入すると、金属部材表面と平行な平行部に形成された微小溝に高分子材料が進入した場合に比べて、鉛直方向の引き抜きに対して強いアンカー効果が発揮される。このため、金属部材に対する高分子材料部の接合強度が更に高くなる。
また、(1)の発明において、非平行部で微小溝を囲む溝壁部に対する高分子材料のアンカー効果がさらに強くなり、高い接合強度を発揮できる。特に、鉛直方向の引き抜き力に対する強度が高くなる。
)前記進入空間の深さは、3mm以下であることが好ましい。進入空間に高分子材料が進入しやすくなる。進入空間の底部にもレーザが到達し易くなり、進入空間を囲む空間壁面全体に微小溝を形成できる。
)前記高分子材料は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。金属部材表面に供給された流動性を有する高分子材料の固化するまでの時間を遅らせることで、微小溝内部全体に高分子材料を行き渡らせることができ、金属部材と高分子材料との接合強度を高めることができる。
)前記高分子材料の半結晶化時間は、1分以上であることが好ましい。微小溝内部全体に高分子材料を行き渡らせることができ、金属部材と高分子材料との接合強度を高めることができる。
)前記高分子材料は、(A)脂肪族ポリアミド樹脂、及び(B)半芳香族ポリアミド樹脂の群から選ばれる1種以上を有することが好ましい。これらの高分子材料は強度が高い。金属部材と高分子材料との接合強度を高めることができる。
10)前記(A)脂肪族ポリアミド樹脂が、6ナイロン又は/及び66ナイロンを含むことが好ましい。これらの高分子材料は、強度が高いからである。
11)前記(B)半芳香族ポリアミド樹脂が、6/66/6Iナイロン及び/又は6T/6Iナイロンを含むことが好ましい。これらの高分子材料は、強度が高いからである。
12)前記高分子材料部は、前記高分子材料からなるマトリックスと、前記マトリックスを補強する微小補強フィラーとを有し、前記微小補強フィラーの短辺部の幅は、前記微小溝の開口幅よりも小さく、且つ前記微小溝の内部に、前記微小補強フィラーの少なくとも一部が進入していることが好ましい。高分子材料部の金属部材に対する接合強度が高くなる。
13)前記微小補強フィラーのアスペクト比は1を超えて大きいことが好ましい。高分子材料部の金属部材に対する接合強度が高くなる。
14)前記微小補強フィラーの短辺部の幅は、1nm以上100nm以下であることが好ましい。微小補強フィラーの少なくとも一部が微小溝に進入できる。アンカー効果により高分子材料部の金属部材に対する接合強度が高くなる。
15)前記微小補強フィラーは、カーボンナノチューブ、ナノクレイ、並びに、金属及び/又は金属酸化物からなるナノ粒子の群から選ばれる少なくとも一種からなることが好ましい。これらの微小補強フィラーは、高分子材料部の金属部材に対する接合強度を高くする。
16)前記高分子材料部は、前記高分子材料に対して前記微小補強フィラーを相溶化させ得る相溶化剤を有することが好ましい。微小補強フィラーによる高分子材料を補強する効果がさらに高くなり、高分子材料部の剛性が向上する。高分子材料に対する微小補強フィラーの滑りを防止でき、高分子材料部の金属部材に対する接合強度が高くなる。
17)本発明の複合成形品は、金属を母材とする表面をもつ金属部材と、前記金属部材の表面の少なくとも一部に被覆され、高分子材料を有する高分子材料部と、を有しており、前記金属部材の表面は、ピッチ間隔1μm以下の周期で複数並設された長尺状の微小溝をもち、前記微小溝の長尺方向の長さは、1,000nm以上であり、前記微小溝の幅は100nm以上1,000nm以下であって、前記微小溝の内部は、前記高分子材料の一部で充填されており、前記金属部材の表面は、前記金属部材の表面の平面方向に対して平行な平行部と、前記平行部に対して平行ではない非平行部とをもち、前記非平行部に形成された前記微小溝は前記平面方向に対して平行に複数並設され、前記非平行部に形成された前記微小溝には、前記平行部に形成された前記微小溝に対して直交する方向に形成された前記微小溝を含んでおり、前記金属部材の表面は、前記平行部を有する格子状の突部と、前記突部に囲まれ前記非平行部を壁面とし前記高分子材料が進入する進入空間と、を備え、前記壁面には前記微小溝が設けられている。
上記複合成形品によれば、金属部材表面が、微小溝を有している。微小溝は、所定の大きさの長尺状であって、所定の周期で周期的に複数並設されている。このため、微小溝内に進入した高分子材料が優れたアンカー効果を発揮し、金属部材と高分子材料部との間で強い接合強度を発揮することができる。
本発明の複合成形品によれば、周期的に複数並設された長尺状の微小溝を有している。このため、微小溝内に進入した高分子材料が優れたアンカー効果を発揮し、金属部材と高分子材料部との強い接合強度を発揮することができる。
本発明の複合成形品の金属部材と高分子材料との界面の断面図である。 微小溝を説明するための金属部材の斜視図である。 比較例としての金属部材の斜視図である。 微小溝の形態を示すための金属部材の平面説明図であって、図4(a)はジグザグ状に屈曲した形状の微小溝を示し、図4(b)は直線状の微小溝を示し、図4(c)は緩やかに湾曲した形状の微小溝を示し、図4(d)は円弧形状の微小溝を示し、図4(e)は短い屈曲線が千鳥状に互い違いに配置した形状の微小溝を示す。 寸法関係を説明するための金属部材と高分子材料の複合成形品の斜視図である。 進入空間の空間壁面に微小溝を形成した金属部材と高分子材料の複合成形品の断面図である。 進入空間の空間壁面に微小溝を形成した金属部材の平面図である。 格子状の突部を表面にもつ金属部材の平面図である。 微小補強フィラーを含む高分子材料部と金属部材との界面を説明するための複合成形品の断面図である。 補強繊維及び微小補強フィラーを含む高分子材料部と進入空間を表面にもつ金属部材との界面を説明するための複合成形品の断面図である。 図11の左上図は、基板表面のSEM(走査型電子顕微鏡)写真であり、図11の左下図、右下図、及び右上図は、図11の左上図のA,B,C部分を拡大したSEM写真である。 基板1の厚み方向のSEM断面写真である。 基板5のSEM平面写真である。 基板5のSEM断面写真である。 基板6のSEM断面写真である。 基板7のSEM断面写真である。 剪断試験の説明図である。 剥離試験の説明図である。
本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の複合成形品7は、金属部材1と、金属部材1の表面の少なくとも一部を被覆する高分子材料部2とからなる。金属部材1の表面は、フェムト秒レーザ又はピコ秒レーザの照射により形成された微小溝10を有している。微小溝10は、長尺状であり、レーザの光学波長に依存する周期で周期的に複数並設されている。高分子材料部2は、高分子材料3を有する。金属部材1と高分子材料部2とは優れた接合強度を発揮する。その理由を以下に述べる。
図2に示すように、本実施形態では、金属部材1の表面に、溝壁面12で囲まれた長尺状の微小溝10が複数並設されている。図2に示す長尺状の微小溝10は、図3に示す比較例のように金属部材1の表面に壁面18により囲まれた円形状の凹部19に比べて、周囲の溝壁面12が少ない。
高分子材料が溶融状態ないし軟化状態にあり流動性を有しているときに、高分子材料3は微小溝10に進入する。高分子材料が熱可塑性樹脂からなる場合、微小溝10を形成する溝壁面12は、流動性をもつ高分子材料の熱の伝達経路となる。図2に示すように、長尺状の微小溝10では、高分子材料の熱の放散方向(図1の矢印方向)が、溝壁面12が存在する幅方向に限られる。これに対して、図3に示すように、円形の開口をもつ凹部19では、高分子材料の熱の放散方向(図3の矢印方向)が、壁面18の存在する周方向にわたる。このように、図2に示す長尺状の微小溝10は、図3に示す円形の凹部19に比べて、溝壁面12が少ない。このため、長尺状の微小溝10は、円形の凹部19に比べて、放熱経路が少ない。ゆえに、微小溝10内で高分子材料が放熱されにくく、比較的長い時間流動性を維持し続けることができる。このため、微小溝10内部に高分子材料3が十分に入り込む。ゆえに、微小溝10内に進入した高分子材料3が強いアンカー効果を発揮し、金属部材1と高分子材料部2との接合強度を高めることができる。
また、高分子材料が熱硬化性樹脂又はゴムからなる場合にも、微小溝に高分子材料が進入するため、高分子材料部と金属部材との接合強度が高くなる。
金属部材1の表面には、長尺状の複数の微小溝10が周期的に並設されている。このような微小溝10は、例えば、後述のように金属部材1の表面にレーザを照射することで形成することができる。
図4に示すように、微小溝10の形状は、長尺状であればよい。各微小溝10は、互いに略平行に配列しているとよい。より具体的には、例えば、ジグザグ状に屈曲した形状(図4(a))、直線状(図4(b))、緩やかに湾曲した形状(図4(c))、円弧形状(図4(d))、短い屈曲線が千鳥状に互い違いに配置した形状(図4(e))などの形状が挙げられる。この中、図4(a)、図4(c)が接合強度が高くなる傾向にあり、好ましい。
図5に示すように、微小溝10の長尺方向の平均長さLは、1,000nm以上であり、微小溝10の開口幅Hは100nm以上1,000nm以下であることが好ましい。更に、微小溝10の平均長さLの下限は、1,500nm、3,000nm、5,000nmが良い。微小溝10の平均長さLが過小の場合には、微小溝10を囲む溝壁面12が多くなる。高分子材料が熱可塑性樹脂からなる場合、微小溝10内に進入してくる高分子材料3が放熱されやすくなり、高分子材料3の流動性が比較的早く低下して、微小溝10全体に高分子材料3が充填されにくくなるおそれがある。微小溝10の平均長さLの上限は特に限定しないが、例えば、10,000nmであるとよい。
また、微小溝10の開口幅Hの下限は、100nm、200nm、300nmが良く、微小溝10の開口幅Hの上限は、700nm、500nmがよい。微小溝10の開口幅Hの下限が過小の場合には、微小溝10に高分子材料3が進入しにくく、金属部材1と高分子材料部2との接合強度が低下するおそれがある。微小溝10の開口幅Hの上限が過大である場合には、微小溝10の溝壁面12に対する高分子材料3のアンカー効果が低下して、接合強度が低下するおそれがある。
微小溝10は、長尺形状を呈しており、アスペクト比(微小溝10の幅Hに対する平均長さLの比)が大きい。微小溝10のアスペクト比は、1を超えて大きい。このため、微小溝10を囲む溝壁面12が少なくなる。ゆえに、高分子材料3が熱可塑性樹脂からなる場合、高分子材料3からの熱の放散経路が少なくなり、高分子材料3の固化を遅くすることができる。ゆえに、微小溝10内部の奥まで高分子材料3が到達し、微小溝10内部全体が高分子材料で充填される。ゆえに、高い接合強度を発揮することができる。
更に、微小溝10のアスペクト比の下限は、2がよく、5が好ましく、10が望ましい。この場合には、微小溝10を囲む溝壁面12が更に少なくなる。高分子材料3が熱可塑性樹脂からなる場合、高分子材料3の熱の放散が遅くなり、高分子材料3の固化を遅くすることができる。ゆえに、微小溝10内部全体に高分子材料3を確実に充填させることができる。
なお、微小溝10のアスペクト比の上限は特に限定しないが、100であってもよい。
微小溝10の幅方向のピッチ間隔Pは、1μm以下であるとよい。更に、微小溝10の幅方向のピッチ間隔Pの下限は、300nm、400nm、500nmがよく、微小溝10の幅方向のピッチ間隔Pの上限は、1,000nmがよく、更に、800nm、700nmが好ましい。微小溝10の幅方向のピッチ間隔Pが過小の場合には、微小溝10の開口幅Hも狭くなり、微小溝10に高分子材料3が進入しにくく、金属部材1と高分子材料部2との接合強度が低下するおそれがある。微小溝10の幅方向のピッチ間隔Pが過大である場合には、微小溝10の間の表面部11と高分子材料部3との間に隙間が発生しやすく、気密性が低下するおそれがある。このため、複合成形品による液体や気体の遮断性が低下するおそれがある。
微小溝10の深さD1は、100nm以上3,000nm以下であるとよい。更に、微小溝10の深さD1の下限は300nm、400nm、500nmであることが好ましく、深さD1の上限は 2,100nmがよく、更に、1,500nm、1,000nmであることが好ましい。
金属部材の表面にフェムト秒ないしピコ秒パルスレーザを照射することにより、長尺状の開口をもつ微小溝を幅方向に周期的に複数並設させる。微小溝の幅方向の周期は、レーザの波長に依存する。レーザの波長が長い程、微小溝の幅方向の周期が長くなる。レーザの波長が短い程、微小溝の周期が短くなる。金属部材の表面におけるパルスレーザの照射される部分をオーバーラップさせて、パルスレーザのスポット径及び発振周波数に応じて同一部分に繰り返し照射されるように走査するとよい。
金属部材の表面の同一部分に複数回パルスレーザを照射するとよい。パルスレーザは、直線偏光であるとよい。均一な周期及び形状の微小溝を形成することができる。パルスレーザのパルス間隔は、例えば、数十ピコ秒程度であり、パルスレーザのスポット径及び発信周波数に応じて同一部分での照射回数を複数回とすることがよい。パルスレーザの照射エネルギー、1ショット毎のパルス間隔、複数ショットにおける各ショット間の照射間隔を調整することで、微小溝の周期及び形状を変更することができる(特開2006−212646号公報参照)。
フェムト秒ないしピコ秒パルスレーザを照射することにより、金属部材の表面には、波長オーダの周期構造が形成される。微小溝は長尺状であり、微小溝の幅方向のピッチ間隔Pは1μm以下とするとよい。そのためには、パルスレーザのパルス幅は、10fs以上1,000,000fs以下であるとよい。また、パルスレーザの波長は400nm以上2,000nm以下であるとよい。また、パルスレーザの周波数は1kHz以上10,000kHz以下であるとよい。
金属部材表面に照射されるパルスレーザは、直線偏光であるとよい。金属部材表面が、平面方向と平行な平行部である場合には、パルスレーザ進行方向Zに対して垂直方向に延びる長尺状の周期的な微小溝が形成される。微小溝の周期は均一であるため、金属部材と高分子材料部との界面のどの部分においても均一に優れた接合強度を発揮させることができる。
また、パルスレーザの照射により形成された微小溝は、波長の形状に近似した形状の溝壁面をもつ。このため、微小溝の底部の幅に対する開口の幅の比率(開口比率)が大きく、高分子材料が進入し易い。
微小溝の底部の幅に対する開口部の幅の比率(開口比率)は、大きいことがよく、例えば、1以上2以下であることが好ましい。この場合には、微小溝の開口部から高分子材料が進入し易く、高分子材料部の金属部材に対する接合強度が向上しやすいからである。
図6に示すように、金属部材1の表面は、金属部材1の表面の平面方向に対して平行ではない非平行部13をもってもよい。金属部材1の表面における少なくとも非平行部13には、微小溝10が形成されていることが好ましい。非平行部13に微小溝10を形成することで、非平行部13では、微小溝10に対する高分子材料のアンカー効果に加えて、非平行部13に進入した高分子材料のアンカー効果も発揮される。しかも、高分子材料3は、非平行部13に形成された微小溝10に進入する場合には、金属部材1表面の平面方向と平行な平行部14に形成された微小溝10に進入する場合に比べて、鉛直方向の引き抜きに対して強いアンカー効果を発揮する。このため、金属部材1に対する高分子材料部2の接合強度を更に高めることができる。
図6,図7に示すように、金属部材1の表面が、平面方向に対して傾斜する方向に延びる非平行部13を有している場合に、非平行部13にパルスレーザを照射すると、非平行部13の傾斜方向I(図6,図7の矢印方向)に周期的に幅方向に並設された複数の微小溝10が形成されることが多い。このように非平行部13の傾斜方向Iに微小溝10が並設すると、その中に高分子材料が進入したときに、レーザ進行方向Zに対する非平行部13の傾斜方向Iがどのような向きであっても、非平行部13に形成された微小溝10に進入した高分子材料の鉛直方向の引き抜きに対するアンカー効果が強い。このため、非平行部での高分子材料部の金属部材に対する接合強度が高くなる。
図7に示すように、水平で平坦な平行部14では、レーザ進行方向Zに、幅方向に周期的に繰り返される微小溝10が形成される。この部分に形成された微小溝10は、レーザ進行方向Zに対して直交する方向に比較的長く延びている。
非平行部13にパルスレーザを照射すると、レーザ進行方向Zにかかわらず、非平行部13の傾斜方向Iに沿って複数の微小溝10が周期的に並設される。
非平行部13のうち、レーザ進行方向Z(図7の矢印方向)に傾斜する非平行部13Aでは、例えば、微小溝10は、レーザ進行方向Zに対して直交する方向に比較的長く延びていてよい(図4(a)〜(d))。レーザ進行方向Zと直交する方向に傾斜する非平行部13Bでは、例えば、短い屈曲線状の微小溝10が千鳥状に互い違いに形成されていてよい(図4(e))。
図6に示すように、金属部材1の表面の平面方向に対する非平行部13の傾斜角度θは、0°を超えて大きく且つ90°未満であればよい。更には、傾斜角度θは45〜75°であるとよい。この場合には、非平行部13にレーザが確実に照射され、非平行部13に微小溝10を形成することができる。非平行部13に形成された微小溝10に進入した高分子材料は、鉛直方向の引き抜き力に対して優れた強度を発揮することができる。非平行部の傾斜角度θが45°未満では、鉛直方向の引っ張り力が平行部とさほど変わらなくなる。傾斜角度θが90°を超えると、レーザが確実に照射されないおそれがある。
金属部材1の表面は、周期的に又は不規則的に並設された複数の突部15を有してなり、対向する突部15の間には、非平行部13を壁面とし高分子材料3が進入する進入空間4が形成されてなることが好ましい。非平行部13には、微小溝10が周期的に複数並設されている。進入空間4の開口寸法LBは、微小溝10の開口幅Hよりも大きい。
進入空間4に進入した高分子材料3は、進入空間4を囲む空間壁面16に係合し、更に微小溝10にも進入して微小溝10の溝壁面12にも係合する。更に、進入空間4を囲む空間壁面16は非平行部13を有する。この非平行部13には微小溝10が形成されている。このため、非平行部13で微小溝10を囲む溝壁面12に対する高分子材料3のアンカー効果が更に強くなり、高い接合強度を発揮することができる。特に、鉛直方向の引き抜き力に対する強度が高くなる。
進入空間4の深さD2は、3mm以下であることがよい。この場合には、進入空間4に高分子材料3が進入し易くなる。また、微小溝10をレーザ照射で形成する場合、進入空間4の底部17にもレーザが到達でき、進入空間4を囲む空間壁面16全体に微小溝10を形成することができる。このため、高分子材料部2と金属部材1との接合強度が更に高まる。
進入空間4の深さD2の下限は0.03mm、0.05mmがよく、進入空間4の深さD2の上限は、2mm以下が好ましく、1mm以下が望ましい。この場合には、レーザによって進入空間4の底部17にまで微小溝10を形成することができ、また微小溝10の溝壁面12に高分子材料3を強く係合させることができ、高分子材料部2の金属部材1に対する接合強度を更に高めることができる。
金属部材1の表面が複数の突部15を有する場合には、対向する突部15間のピッチ間隔をLAとすると、ピッチ間隔LAは、高分子材料3の種類(剛性)等の要因に応じて設定される。ピッチ間隔LAは、10〜5,000μmの範囲、30〜2,000μmの範囲、40〜500μmの範囲、40〜400μmの範囲の任意値を例示できる。
突部15間に形成された進入空間4の開口寸法LBは、高分子材料3の種類(剛性)等の要因に応じて設定される。開口寸法LBは、10〜5,000μmの範囲の任意値、30〜2,000μmの範囲、40〜400μmの範囲、40〜300μmの範囲の任意値を例示できる。
図8に示すように、突部15は、進入空間4の周囲を囲んでいる。突部15は、格子状に形成されていて、格子の間に進入空間4が形成されていてもよい。また、進入空間4は、点状に分散していて、突部15は点状の進入空間4を囲んでいてもよい。
進入空間および突部は、金属部材の表面に形成された転写面で形成されていることが好ましい。転写面としては、回転する転造ローラ、非回転の転動型等の転造要素(転写加工要素)の型面の凹凸を金属部材の表面に転写させた転造面(転写面)が挙げられる。転造ローラはローレットを含む。または転写面としては、成形型(転写加工要素)を型締めし、成形型の成形面に形成されている凹凸を金属部材の表面に加圧させて転写できる。場合によっては、進入空間および突部は、投射体の群を金属部材の表面に衝突させるブラスト処理面で形成されていることもできる。投射体の群を構成する投射体としては、ショット、グリッド、砂粒子等が挙げられる。投射体の材質は金属、セラミックスが挙げられる。グリッドは、球状または疑似球状をなすショットよりも異形状をなす粒子を意味し、一般的には高い研削性をもつ。金属線材をこれの長さ方向に切断したほぼ円柱形状または疑似円柱形状をなすカットワイヤショットを用いることもできる。カットワイヤショットは、金属部材の表面に対して高い研削性をもつ。
さて、高分子材料が熱可塑性樹脂を含む場合には、高分子材料を微小溝に進入させるには、金属部材表面に供給された流動性を有する高分子材料が、固化するまでの時間を遅らせるとよい。これにより、高分子材料は長時間流動性を保持して、微小溝に高分子材料を進入させて微小溝内部全体に行き渡らせることができる。金属部材表面に供給された高分子材料が固化するまでの時間を遅らせるためには、例えば、以下の1)〜4)の手法がある。
1)高分子材料の熱分解温度と結晶化温度の差ΔTが大きい材料を使用する。ΔTは90℃以上でよく、更には120℃以上であることが好ましい。ΔTが小さすぎる場合には、高分子材料が固化までに微小渠全体に行き渡らず、接合強度が低下するおそれがある。
2)ΔTが十分に取れない材料では、高分子材料の半結晶化時間を長くする。高分子材料の半結晶化時間は1分以上がよく、更には6分以上であることが好ましい。半結晶化時間が短すぎる場合には、高分子材料の結晶化が早く、高分子材料が固化までに微小溝内部全体に行き渡らず、接合強度が低下するおそれがある。半結晶化時間が長すぎる場合には、高分子材料の固化が遅いため、成形サイクルが長くなるなど、生産性が低下するおそれがある。一方、半結晶化時間の上限は、製造効率の観点から、10分であるとよい。
半結晶化時間について説明する。高分子材料を溶融させ、所定の結晶化可能な温度に向けて冷却する。結晶化可能な温度は、高分子材料の結晶化温度以上の温度範囲にある温度をいう。冷却された高分子材料を結晶化可能な温度に保持して高分子材料からの発熱量を示差走査熱量測定(DSC)装置で測定して、DSC曲線を作成する。このときに、DSCが所定の結晶化温度に到達した時刻を零時間とする。作成したDSC曲線から半結晶化時間を求めることができる。
3)加熱した金属部材の表面に、高分子材料からなるシートを圧着させる。圧着後には、プレス機で金属部材表面に対してシートを押圧してプレスしながら冷却させるとよい。金属部材の熱により金属部材表面の高分子材料の一部が溶融して、高分子材料の一部が金属部材表面の微小溝に進入する。この手法は、一般に加熱圧着法と称される。
金属部材の加熱温度は、高分子材料の溶融温度程度又はそれ以上とするとよい。例えばS、加熱温度は、200〜300℃であることがよい。プレス圧は、0.1〜10MPaとするとよい。
4)溶融した高分子材料を加温状態で金属部材表面に射出する。そのためには、金属部材の予備加熱をするか又は、成形用の金型を加温しておくとよい。具体的には、金属部材を成形型のキャビティにセットした状態で射出成形して高分子材料部を成形する。射出条件は、例えば、シリンダ温度250〜350℃、射出圧力100〜180MPa、射出速度10〜100mm/secにするとよい。ただし、これらに限定されるものではない。
ここで、金属部材の表面温度は、高分子材料の結晶化温度の程度に保温されていることが好ましい。これにより、高分子材料の固化を遅延させることができ、金属部材表面の微小溝内全体に高分子材料を充填させることができる。金属部材の表面温度は、高分子材料の結晶化温度にもよるが、例えば、60〜200℃であることがよい。
射出後において保圧工程を実行し、キャビティに装填された高分子材料に加える圧力を保持するとよい。これにより、高分子材料を微小溝に良好に進入させるのに有利となる。保圧工程では、保圧力40〜80MPa、保圧時間10〜15秒間とするとよい。
射出成形した後には、高分子材料部を熱処理することが好ましい。金型温度が低く、高分子材料が十分に結晶化せずに固化した場合にも、熱処理により再結晶化が進み複合成形品に十分な接合強度を与えることができる。熱処理温度は、高分子材料の再結晶化が進行する程度の温度とすることがよく、結晶化温度を超えない近傍温度とするとよい。例えば、熱処理温度は、90〜200℃とするとよい。
高分子材料を微小溝に進入させる手法には、上記の1)、2)、3)、4)を単独で行っても良いし、1)または2)と3)を併用してもよく、1)または2)と4)を併用してもよい。
高分子材料が熱硬化性樹脂又はゴムからなる場合には、溶媒などにより流動性を高くした状態で金属部材表面に高分子材料を供給するとよい。
上記の1)〜4)のいずれを行うにしても、金属部材及び高分子材料部は、以下の物性及び材料をもつことがよい。
金属部材を構成する金属は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、鉄、鉄合金、チタン、チタン合金、銅、銅合金のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
高分子材料部を構成する高分子材料は、樹脂でもゴムでもよい。樹脂は熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれでも良い。高分子材料部を構成する高分子材料は、熱可塑性樹脂を有することが好ましい。熱可塑性樹脂の流動時に微小溝に進入しやすく、また、微小溝は放熱経路が少ないため、熱可塑性樹脂の放熱が押さえられる。熱可塑性樹脂としては、具体的には、ナイロン(ポリアミド)、ポリイミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリサルホン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネ−ト、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、アクリロニトリル−ブタジエン(AB)、液晶ポリマーのうちの少なくとも1種であることがよい。これらのうちの少なくとも1種を主要成分とするものでも良い。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂などを用いることが好ましい。
高分子材料部を構成する高分子材料は、更に、(A)脂肪族ポリアミド樹脂、及び(B)半芳香族ポリアミド樹脂の群から選ばれる1種以上を有することが好ましい。前記(A)脂肪族ポリアミド樹脂が、6ナイロン又は/及び66ナイロンを含むことが好ましい。この中、66ナイロンは、6ナイロンよりも融点が高く、耐熱性に優れる。前記(B)半芳香族ポリアミド樹脂が、6/66/6Iナイロン及び/又は6T/6Iナイロンを含むことが好ましい。
高分子材料部を構成する高分子材料は、複数の構成単位を共重合させてなる共重合体を有することが好ましい。この場合には、高分子材料の半結晶化時間が長くなる傾向にある。このため、微小溝内部に高分子材料を十分に充填させて、金属部材に対する高分子材料部の接合強度を高めることができる。
また、高分子材料は、1種類の構成単位を重合させてなる重合体を有していてもよい。
高分子材料部は、金属部材表面の少なくとも一部を被覆する。
高分子材料部は、高分子材料からなる場合もある。または、高分子材料部は、高分子材料からなるマトリックスと、マトリックスを補強する補強材とを有していてもよい。補強材は、少なくともその一部が微小溝に進入し得る大きさの微小補強フィラーであることが好ましい。これによりマトリックスが補強されて、高分子材料部の剛性が高くなる。
微小補強フィラーの形状は、球状、扁平形状、棒状、筒状、板状、盤状などを採用することができる。中でも、扁平形状、棒状などがよい。かかる形状の微小補強フィラーは高分子材料部の金属部材に対する接合強度を更に高めることができる。
図9に示すように、高分子材料部2は、高分子材料3からなるマトリックスと、マトリックスを補強する微小補強フィラー5とを有し、微小補強フィラー5の短辺部51の幅Xは、微小溝10の開口幅Hよりも小さく、且つ微小溝10の内部に、微小補強フィラー5の少なくとも一部が進入していることが好ましい。これにより、高分子材料部2の金属部材1に対する接合強度を更に高めることができる。その理由は、微小補強フィラー5の短辺部51の幅Xが微小溝10の開口幅Hよりも小さいことで、微小補強フィラー5の少なくとも一部が微小溝10の内部に進入して、アンカー効果を発揮するためであると考えられる。ここで、微小補強フィラー5が棒状又は筒状である場合には、微小補強フィラー5の短辺部51の幅Xは、微小補強フィラー5の径に相当する。
微小補強フィラー5のアスペクト比は1を超えて大きいことが好ましい。微小補強フィラー5の短辺部51の幅Xに対する微小補強フィラー5の長辺部52の長さYの比率をいう。更に、微小補強フィラー5のアスペクト比は、10以上、更には100以上であるとよい。この場合には、高分子材料部2の金属部材1に対する接合強度が更に高まる。なお、微小補強フィラー5のアスペクト比の上限は、混合性、微小溝への進入性の観点から、300とするとよく、更に、200、150とすることが好ましい。
微小補強フィラー5の短辺部51の幅Xは、1nm以上100nm以下であることが好ましい。更に、微小補強フィラー5の短辺部51の幅Xの下限は、シングルウォールカーボンナノチューブの場合には2〜5nm、ダブルウォールナノチューブの場合には7〜10nmがよい。微小補強フィラー5の長辺部51の長さYの下限は、シングルウォールカーボンナノチューブの場合には1,500nm、ダブルウォールカーボンナノチューブの場合には1,000nm、クレイの場合には200nmがよい。この場合には、微小補強フィラー5の少なくとも一部が微小溝10に進入でき、アンカー効果により高分子材料部2の金属部材1に対する接合強度を高めることができる。
微小補強フィラー5は、カーボンナノチューブ、ナノクレイ、金属及び/又は金属酸化物からなるナノ粒子の群から選ばれる少なくとも一種からなることがよい。中でも、カーボンナノチューブ及びナノクレイの群から選ばれる1種以上が好ましい。カーボンナノチューブとは、炭素によって作られる六員環により形成される筒状物質をいう。ナノクレイとは、ナノサイズの粘土鉱物をいい、おおよそ薄片形状を呈しているものが多い。これらの微小補強フィラー5は、高分子材料部2の金属部材1への接合強度を高める効果が高いからである。
高分子材料部を100質量%としたときの微小補強フィラーの含有量は、0.1〜5質量%であることがよく、更に、0.5〜1.5質量%であることが好ましい。微小補強フィラー含有量が過少の場合には、高分子材料部の金属部材への接合強度を高める効果が低くなるおそれがあり、微小補強フィラー含有量が過多である場合には、樹脂流動性が低下し、高分子材料部の金属部材への接合が困難になるおそれがある。
高分子材料部は、高分子材料に対して微小補強フィラーを相溶化させ得る相溶化剤を有することが好ましい。高分子材料の中で微小補強フィラーが相溶化して、微小補強フィラーによる高分子材料を補強する効果が更に高くなり、高分子材料部の剛性が向上する。高分子材料に対する微小補強フィラーの滑りを防止でき、高分子材料部の金属部材に対する接合強度を更に高めることができる。
相溶化剤は、微小補強フィラー表面に固定されることで、微小補強フィラーと高分子材料との間に接合力をもたせる性質のものがよい。相溶化剤は、高分子材料と微小補強フィラーとの種類によっても異なるが、例えば、変性AS樹脂(変性アクリロニトリル−スチレン共重合体)、各種カップリング剤、及び変性ゴムの群から選ばれる1種以上を有するとよい。中でも、変性AS樹脂、各種カップリング剤がよい。
高分子材料部の中の微小補強フィラーを100質量%としたときに、相溶化剤の含有量は50〜200質量%であることがよい。この場合には、微小補強フィラーを高分子材料に十分に分散させることができる。
補強材は、例えば、補強繊維であることが好ましい。補強繊維は、微小補強フィラーよりも短辺部の幅が大きくてよい。高分子材料部が補強繊維を含む場合には、金属部材表面に、複数の突部と、対向する突部の間に進入空間を形成するとよい。
金属部材が突部及び進入空間をもつ場合には、補強繊維は進入空間に進入し得ない大きさのものであってもよいが、進入空間に進入し得る大きさのものであるとよい。
金属部材が進入空間をもつ場合には、突部は、補強繊維の径よりも大きなピッチ間隔を隔てて周期的に又は不規則的に複数並設されてなり、対向する突部の間に形成された進入空間には、高分子材料の一部が進入し且つ補強繊維のうちの少なくとも一部が進入し得ることが好ましい。金属部材と高分子材料部との界面に発生する剪断力に基づく歪を、突部により分断することができる。このため、熱衝撃が繰り返して作用する厳しい環境において複合成形品が使用されるときであっても、界面における剥離を抑えることが出来る。更に、進入空間には、高分子材料部のマトリックスを構成する高分子材料の一部が進入する。これにより、金属部材の表面と高分子材料部との界面における剪断強度を更に高めることが出来る。
金属部材が突部及び進入空間を表面にもつ場合には、微小補強フィラーの少なくとも一部及び補強繊維の少なくとも一部が進入空間に進入する。更に、微小補強フィラーの少なくとも一部は、微小溝にも進入する。進入空間に進入した微小補強フィラーの少なくとも一部は、進入空間を囲む空間壁面に形成された微小溝にも進入する。このように高分子材料部が微小補強フィラー及び微小溝の双方を含むことにより、微小補強フィラーまたは補強繊維のいずれか一方を含む場合に比べて、更に接合強度が高くなる。
高分子材料部を構成する補強繊維は、ガラス繊維、セラミックス繊維、金属繊維、炭素繊維、高分子高強力繊維のうちの少なくとも1種であることが好ましい。セラミックス繊維として、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ−シリカ繊維、窒化珪素繊維、炭素珪素繊維、ジルコニア繊維のうちの少なくとも1種が挙げられる。高分子高強力繊維としては超高強力ポリエチレン繊維、超高強力ポリビニルアルコール繊維、アラミド繊維、ポリアセタール繊維が挙げられる。補強繊維としては短繊維(繊維長:例えば1または2mm以下)、長繊維、ウィスカが挙げられる。
図10に示すように、高分子材料部2に埋設されている補強繊維6の平均繊維長K2がピッチ間隔LAよりも小さい場合、平均繊維長K2がピッチ間隔LAに接近している場合(K2/LA=0.5〜2.0の範囲、0.8〜1.5の範囲)には、進入空間4に補強繊維6を進入させて進入空間4の高分子材料3を補強させるのに貢献できる。
図10に示すように、金属部材1の表面が複数の突部15を有する場合には、対向する突部15間のピッチ間隔をLAとすると、LAは補強繊維6の径K1よりも大きいことがよい(LA>K1)。ピッチ間隔LAは、高分子材料3の種類及び剛性、補強繊維6の径K1等の要因に応じて設定される。ピッチ間隔LAは、10〜5,000μmの範囲、30〜2,000μmの範囲、40〜500μmの範囲、40〜400μmの範囲の任意値を例示できる。
突部15間に形成された進入空間4の開口寸法LBは、高分子材料3の種類及び剛性、補強繊維6の径K1等の要因に応じて設定される。開口寸法LBは、10〜5,000μmの範囲の任意値、30〜2,000μmの範囲、40〜400μmの範囲、40〜300μmの範囲の任意値を例示できる。
高分子材料部を100質量%としたときの補強繊維の含有量は、5〜60質量%であることがよく、更に、20〜40質量%であることが好ましい。補強繊維の含有量が過少の場合には、金属部材に対する高分子材料部の強度及び弾性率が低下するおそれがあり、補強繊維の含有量が過多である場合には、高分子材料の流動性が低下して、金属部材に対する高分子材料の接合が困難になるおそれがある。
本発明の複合成形品は、例えば、車両部品、電子部品に用いられる。例えば、車両のエンジンルーム、モータ収容室、電池収容室などに搭載する部品、器具、又は装置として採用することができる。
各種成分をもつ高分子材料部用の材料1〜12と、各種材質であり各種加工を施した金属部材からなる基板1〜8を準備し、様々な組み合わせで基板表面に材料を被覆して複合成形品(試料1〜33)を作製した。
<高分子材料部用の材料>
(材料1)
補強繊維及び66ナイロン樹脂からなる基本材料(デュポン社、70G33HS1L)を準備し、これを試料1とした。基本材料を100質量%としたときに、補強繊維の含有量は33質量%であり、66ナイロンは67質量%であった。補強繊維は、直径13μm、長さ0.6mmのガラス繊維からなる。
材料1に含まれる66ナイロン樹脂の結晶化温度は208℃であった。材料1の233℃での半結晶化時間を測定した。半結晶化時間の測定のために、溶融状態の材料1を233℃まで冷却し、冷却された材料1を233℃に保持した。材料1からの発熱量を示差走査熱量測定(DSC)装置で測定して、DSC曲線を作成した。作成したDSC曲線から半結晶化時間を求めると、1分未満であった。材料1に含まれる66ナイロン樹脂の融点は、233℃よりも高く、270℃であった。
(材料2)
補強繊維及びナイロン樹脂からなる基本材料(東レ株式会社、NI36−007)を準備し、これを材料2とした。基本材料を100質量%としたときに、補強繊維の含有量は30質量%であり、ナイロン6は70質量%であった。補強繊維は、直径13μmのガラス繊維からなる。材料2の233℃での半結晶化時間は6分であった。材料2に含まれるナイロン樹脂の融点は265℃、結晶化温度は208℃であった。
材料2で用いたナイロン樹脂は、6/66/6Iナイロン共重合体50質量%と、66ナイロン樹脂50質量%とからなる。このナイロン樹脂の粘度数(VN)は110ml/gであった。このナイロン樹脂は、半結晶化時間の延長を狙いとするものである。
(材料3)
補強繊維及び6ナイロン樹脂からなる基本材料(東レ株式会社、CM1011G30)を準備した。基本材料を100質量%としたときに、補強繊維の含有量は30質量%であり、6ナイロン樹脂は70質量%であった。補強繊維は、直径13μmのガラス繊維からなる。材料3に含まれる6ナイロン樹脂の粘度数(VN)は130ml/gであり、融点は230℃、結晶化温度は170℃であった。195℃での半結晶化時間は1分未満であった。
(材料4)
補強繊維及び66ナイロン樹脂からなる基本材料(東レ株式会社、NI36−002)を準備し、これを試料4とした。基本材料を100質量%としたときに、補強繊維の含有量は30質量%であり、66ナイロン樹脂は70質量%であった。補強繊維は、直径13μmのガラス繊維からなる。材料4に含まれる66ナイロン樹脂の粘度数(VN)は117ml/gであった。スパイラルフロー試験の結果、材料4は、材料1,2よりも流動性がよかった。材料4の233℃での半結晶化時間は1分未満であった。材料4に含まれる樹脂の融点は265℃、結晶化温度は208℃であった。
(材料5)
補強繊維及び66ナイロン樹脂からなる基本材料(東レ株式会社、NI36−003)を準備し、これを試料5とした。基本材料を100質量%としたときに、補強繊維の含有量は30質量%であり、66ナイロン樹脂は70質量%であった。補強繊維は、直径13μmのガラス繊維からなる。材料5に含まれる66ナイロン樹脂の粘度数(VN)は137ml/gであった。基本材料は流動性を高める添加剤を含む。スパイラルフロー試験の結果、材料5で用いた66ナイロン樹脂は、上記材料1、2で用いた66ナイロンよりも流動性に富む。材料5の233℃での半結晶化時間は1分未満であった。材料5に含まれる66ナイロン樹脂の融点は270℃、結晶化温度は208℃であった。
(材料6)
材料1に微小補強フィラー及び相溶化剤を混合し、二軸押出機でペレット状の材料6を作製した。材料6全体を100質量%としたとき、材料1の含有量は94質量%であり、微小補強フィラーの含有量は5質量%であり、相溶化剤の含有量は1質量%であった。
微小補強フィラーは、短辺部の幅(直径)9.5nm、長さ1,500nm、アスペクト比158のダブルウォールカーボンナノチューブ(NANOCYL社、NC7000)であった。ダブルウォールカーボンナノチューブは、炭素原子で構成される6員環がネット状に連結して筒状体を形成したものであり、ネットは2層構造を有している。相溶化剤は、変性AS樹脂を主成分とするもので、カーボンナノチューブ表面のグラファイト構造と変性AS樹脂の側鎖の並進/回転自由度の高いベンゼン環がスタッキングすることで、カーボンナノチューブと66ナイロン樹脂とに接合力を発生させて、カーボンナノチューブと66ナイロン樹脂との滑りを抑制して、カーボンナノチューブによる補強効果を発現させる。
材料6の233℃での半結晶化時間は1分未満であった。
(材料7)
材料2に、微小補強フィラー及び相溶化剤を混合し、二軸押出機で押出してペレット状の材料7を作製した。材料7全体を100質量%としたとき、材料2は94質量%であり、微小補強フィラーの含有量は5質量%であり、相溶化剤の含有量は1質量%であった。微小補強フィラー及び相溶化剤は、材料6で用いたものと同様である。材料7の233℃での半結晶化時間は6分であった。
(材料8)
材料2に、微小補強フィラー及び相溶化剤を混合し、二軸押出機で押出してペレット状の材料8を作製した。材料8全体を100質量%としたとき、材料2を98質量%、微小補強フィラーの含有量は1質量%であり、相溶化剤の含有量は1質量%であった。微小補強フィラー及び相溶化剤は、材料6で用いたものと同様である。材料8の233℃での半結晶化時間は6分であった。
(材料9)
補強繊維及び6ナイロン樹脂からなる第1基本材料(東レ株式会社、CM1016G45)と、微小補強フィラー及び6ナイロン樹脂からなる第2基本材料(東レ株式会社、CM1016RV)を準備した。第1基本材料の中の補強繊維は、材料1の補強繊維と同じガラス繊維であり、第1基本材料を100質量%としたときの補強繊維の含有量は45質量%であり、6ナイロン樹脂は55質量%であった。第2基本材料の中の微小補強フィラーは、短辺部の幅20nm、長さ100nmの薄片形状のナノクレイである。第2基本材料を100質量%としたときの微小補強フィラーの含有量は4質量%であり、6ナイロン樹脂は96質量%であった。CM1016RVにはガラス繊維は含まれていない。
第1基本材料と第2基本材料とを、質量比で2:1の割合で混合し、材料9を得た。第1基本材料と第2基本材料とを混合してなる材料9を100質量%としたときの微小補強フィラーの含有量は、1.3質量%であった。材料9の融点は230℃、結晶化温度は170℃であり、195℃での半結晶化時間は1分未満であった。
(材料10)
補強繊維及び66ナイロン樹脂からなる基本材料(東レ株式会社、CM3006G30)を準備し、これを材料10とした。補強繊維は、ガラス繊維であり、材料1に含まれるガラス繊維と同様である。材料10を100質量%としたときに、ガラス繊維の含有量は30質量%であり、66ナイロン樹脂は70質量%であった。材料10の233℃での半結晶化時間は、1分未満であった。材料10に含まれる樹脂の融点は265℃、結晶化温度は208℃であった。
(材料11)
6ナイロン樹脂からなる基本材料(東レ株式会社、CM1017)を準備した。基本材料には、補強繊維は含まれていない。この基本材料を材料11とした。材料11の融点は230℃、結晶化温度は170℃であり、195℃での半結晶化時間は1分未満であった。
(材料12)
6ナイロン樹脂からなる基本材料(東レ株式会社、CM1016RV)を準備した。この基本材料は、材料9の第2基本材料と同じであり、微小補強フィラーとしてナノクレイを4質量%、6ナイロン樹脂を96質量%含んでいる。この基本材料を材料11とした。材料11の融点は230℃、結晶化温度は170℃であり、195℃での半結晶化時間は1分未満であった。
上記の各種材料の成分について表1にまとめた。
<金属部材としての基板>
(基板1)
アルミ押出材(JIS A5052)からなる金属片(金属部材に相当)の表面に、転造ローラ(材質:超硬合金、幅25mm、長さ100mm、厚み2mmのサイズ)をあてがい、転造加工により複数の突部を形成した。
具体的にはフライス盤上に金属片を固定し、刃具として転造ローラを用いて実行した。ステージ速度は75mm/min、転造ローラの外径は20mm、切込量は70μmとした。金属片の表面に規則的な周期で突部が形成された。対向する突部15の間には進入空間4が形成された。突部15は、縦方向と横方向に延びた格子状を呈している。格子状の突部15の間は、四角錐形状の進入空間4が形成された(図8参照)。隣接する突部15の頂点中央のピッチ間隔LAは100μm、突部15間に形成された進入空間4の開口寸法LBは85μm、深さHAは66μm、傾斜角θは60°であった。
次に、金属片の表面に、フェムト秒レーザ装置(IMURA America Corp.製、FCPA:10Wモデルプロトタイプ)によりフェムト秒レーザを照射した。フェムト秒レーザによる加工条件は、パルスエネルギー:8μJ、繰返し周波数:1MHz、ワーク速度:400mm/s、焦点形状:楕円(長軸方向:140μm、短軸方向:10μm)、偏光状態:直線偏光である。これにより、進入空間4を囲む空間壁16を含めて、金属片(金属部材1)の表面全体に微小溝10が形成された(図10参照)。
図11の左上図は、基板(金属片)表面のSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。図11の左下図、右下図、及び右上図は、図11の左上図のA,B,C部分を拡大したSEM写真である。図11の左上図に示すように、中央に四角錐形状の進入空間があり、その周囲は平坦な突部で囲まれている。図11のすべての写真において、黒色部分は微小溝が存在する箇所である。図12は、基板の厚み方向のSEM断面写真である。
金属片表面の突部では、レーザ進行方向Z(図11の左上図の矢印方向)に周期的に繰り返される微小溝が複数並設された。微小溝の形状は、金属片の表面の平坦な突部と非平行部によって変わる。
図11の左下図に示すように、金属片の表面の平坦な突部では、各微小溝は、山脈状に若干ジグザグ屈曲しながら、互いにほぼ同じ向きに延びていた。微小溝の幅方向のピッチは、レーザの波長に依存してサイズが変わる。図11,図12に示すように、本基板1の平坦な突部では、微小溝の幅方向のピッチPは、700nmであり、開口幅Hは300nmであり、深さD1は900nmであり、長尺方向の平均長さLは、8μmであった(図5参照)。微小溝は、底部よりも開口が幅方向に広く開口していて、開口比率が大きかった。
図11の右下図のB1領域に示すように、金属片の表面の非平行部13Aであって、レーザ進行方向Zに沿った傾斜方向I1をもつ面では、微小溝10は、傾斜面の傾斜方向に沿って幅方向に周期的に繰り返して並設された。微小溝の深さD1は、900nmであり、平坦な突部15に形成された微小溝10よりも深かった。微小溝の幅方向のピッチPは、700nmであり、開口幅Hは300nmであり、長尺方向の平均長さLは、900μmであった。レーザ進行方向Zに沿って傾斜する傾斜面(B1領域)に形成された微小溝の長さLは、突部の微小溝の長さLよりも長く、また、レーザ進行方向Zと垂直な方向に、略直線形状に延びていた(図7参照)。
図11の右下図のB2領域及び図11の右上図は、金属片の表面の非平行部13Bであって、レーザ進行方向Zと直交する方向に傾斜方向I2をもつ面のSEM像である。これらの図から明らかなように、レーザ進行方向Zと直交する方向に傾斜する非平行部13Bでは、例えば、短い屈曲線状の微小溝10が千鳥状に互い違いに形成されていた(図7参照)。
進入空間4を囲む4方向を向く非平行部13A、13Bのいずれにも、ピッチ間隔700nmの周期的な微小溝が形成された。レーザ進行方向Zに拘わらず、非平行部13に形成された微小溝10は、非平行部13の傾斜方向に沿って周期的に幅方向に複数が並設されていた。非平行部13A、13Bでは、それぞれの突部15からの深さにかかわらず、均一な微小溝10が形成された。
(基板2)
アルミダイキャスト材(JIS ADC12)からなる金属片(金属部材に相当、幅25mm、長さ100mm、厚み2mmのサイズ)の表面に、転造ローラ(材質:超硬合金)をあてがい、転造加工により複数の突部を形成した。対向する突部の間には四角錐形状の進入空間が形成された。金属片表面に形成された突部及び進入空間の形状及び寸法は、基板1と同様である。
次に、金属片の表面にフェムト秒レーザを照射して、周期的な微小溝を複数並設させた。フェムト秒レーザによる加工条件並びに微小溝の形状及び寸法は、基板1と同様である。
(基板3)
金属片として冷延鋼板(JIS SPC270)を用いた点を除いて、基板1と同様である。
(基板4)
金属片として真鍮(JIS C2600)を用いた点を除いて、基板1と同様である。
(基板5)
アルミ押出材(JIS A5052)からなる金属片の片面に、複数の突部を形成した。次に、金属片の表面に、エッチング液を用いたエッチング処理を施して凹部を形成した。
図13,図14に示すように、進入空間を囲む非平行部を含めて金属片の表面全体に、凹部が形成された。凹部の開口寸法は1,000〜2,000nmであり、ピッチ間隔は、1,000〜2,000nmであって、深さは1,000〜5,000nmであった。基板5にエッチング処理により形成された凹部19は、基板1〜4の微小溝10に比べて、開口寸法が大きかった。また、基板5にエッチング処理で形成された凹部19は、袋形状であり、基板1〜4に比べて、底部寸法に対する開口寸法が狭かった(図2,図3参照)。また、凹部の向き及び深さにバラツキがあった。その他は、基板1と同様である。
(基板6)
金属片として、アルミダイキャスト材(JIS ADC12)を用いた。金属片の表面に、基板5と同様のエッチング処理を施して凹部を形成した。図15に示すように、アルミダイキャスト材からなる金属片の表面には、凹部がほとんど形成されなかった。
(基板7)
金属片として、真鍮(JIS C2600)を用いた。金属片の表面に、基板5と同様のエッチング処理を施して微小凹部を形成した。図16に示すように、進入空間を囲む非平行部を含めて金属片の表面は、不均一に比較的大きな凹部が形成された。凹部の開口寸法は300〜500nmであり、ピッチ間隔は300〜500nmであって、深さは1000nm以下であった。
(基板8)
金属片として、冷延鋼板(JIS SPC270)を用いた。金属片の表面に、基板5と同様のエッチング処理を施して凹部を形成した。基板8の表面SEM像は掲載しないが、金属片の表面に、開口寸法2,000〜5,000nm、ピッチ間隔5,000〜10,000nmであって、深さ2,000〜5,000nmの凹部が形成された。
基板1〜4では、フェムト秒レーザの照射により微小溝を形成した。基板1〜4のいずれも、金属片表面にほぼ同じ微小溝が形成された(図11)。一方、基板5〜8では、金属片表面に、凹部(基板1〜4の微小溝に相当)形成のためにエッチング処理を施している。基板5〜8では、同じ条件でエッチング処理を施しているにもかかわらず、金属片の材質で凹部の形状及び深さが異なってしまった(図13〜図16)。基板5では、エッチング処理により形成された凹部が円形状に開口しており、底部の直径に対する開口の直径の比率(開口比率)が小さかった。
上記の各種基板の材質及び加工処理について表2にまとめた。
<複合成形品としての試料>
(試料1)
材料1をISO1型試験片に成形した後1/2の大きさに切断し、基板5の一端側平面上に重ねた。材料1の試験片と基板5との複合成形品を、加熱圧着法により一体化させた。図17に示すように、基板5(金属部材1)は、幅25mm×長さ50mm×厚み2mmであり、材料1の試験片(高分子材料部2)は、幅10mm×長さ10mm×厚み4mmである。材料1の試験片の接合位置は、基板5の長手方向の一端部近傍である。
加熱圧着法では、ミニテストプレス機(東洋精機製作所株式会社製)を用いて材料1の試験片と基板5との積層体をホットプレートの間に配置した。積層体のうちの材料1の試験片側はホットプレートでは加熱させず室温のままとし、基板5側はホットプレートにより280℃に加熱した(金属側280℃/材料側室温)。ホットプレートによる加圧力は10MPaであった。加熱加圧後に積層体を冷却した。材料1(高分子材料部)と基板5(金属部材)とを一体化させた複合成形品を得た。
目視によるバリ発生と油圧指針の低下を目安としてヒーター停止及び送風機による冷却を行い、ホットプレート温度が220℃まで低下した時点で複合成形品を取り出し、金属板上で室温まで放冷した。これを剪断強度試験用の試料1とした。
剪断強度試験用の試料1の複合成形品について剪断強度試験を行った。剪断強度試験は、図17に示すように、金属部材1と高分子材料部2との界面8に剪断力を与えるように複合成形品を図17のF1方向に引っ張り、複合成形品の界面8における初期剪断強度を求めた。試料1の剪断強度は12MPaであった。
また、図18に示すように、材料1を幅1cm×長さ5cm×厚み4mmの長板状の試験片に成形した。基板5の寸法も材料1と同じにした。材料1の試験片(高分子材料部2)を、基板5(金属部材1)と端面同士で重ね合わせた。材料1の試験片と基板5との積層体を、ミニテストプレス機(東洋精機製作所株式会社製)を用いて加熱加圧し、冷却して、複合成形品7を得た。加圧温度及び加圧力は、上記の剪断強度試験のための複合成形品形成時と同様である。これを剪断強度試験用の試料1とした。
図18に示すF2方向に、材料1の試験片(高分子材料部2)と基板5(金属部材1)との界面8に剥離が生じる方向に引っ張った。このときの複合成形品7の界面8における初期剥離強度を求めた。試料1の剥離強度は4MPaであった。
(試料2)
試料2の複合成形品では、高分子材料部が材料2からなり、金属部材が基板5からなる。試料2の複合成形品は、試料1と同様の加熱圧着法により作製した。加熱条件は、金属側290℃/材料側室温であった。加圧力は10MPaであった。その他は、試料1と同様に作製した。試料2の剪断強度は28MPaであり、試料2の剥離強度は10MPaであった。
(試料3)
試料3の複合成形品では、高分子材料部が材料3からなり、金属部材が基板5からなる。試料3の複合成形品は、試料1と同様の加熱圧着法により作製した。加熱条件は、金属側280℃/材料側室温であった。加圧力は10MPaであった。その他は、試料1と同様に作製した。試料3の剪断強度は32MPaであり、試料3の剥離強度は11MPaであった。
(試料4)
試料4の複合成形品では、高分子材料部が材料4からなり、金属部材が基板5からなる。試料4の複合成形品は、試料1と同様の加熱圧着法により作製した。加熱条件は、金属側280℃/材料側室温であった。加圧力は10MPaであった。その他は、試料1と同様に作製した。試料4の剪断強度は30MPaであり、試料4の剥離強度は9MPaであった。
(試料5)
試料5の複合成形品では、高分子材料部が材料5からなり、金属部材が基板5からなる。試料5の複合成形品は、試料1と同様の加熱圧着法により作製した。加熱条件は、金属側280℃/材料側室温であった。加圧力は10MPaであった。その他は、試料1と同様に作製した。試料5の剪断強度は23MPaであり、試料5の剥離強度は6MPaであった。
(試料6)
試料6の複合成形品では、高分子材料部が材料6からなり、金属部材が基板5からなる。試料6の複合成形品は、試料1と同様の加熱圧着法により作製した。加熱条件は、金属側290℃/材料側室温であった。加圧力は10MPaであった。その他は、試料1と同様に作製した。試料6の剪断強度は17MPaであり、試料6の剥離強度は8MPaであった。
(試料7)
試料7の複合成形品では、高分子材料部が材料7からなり、金属部材が基板5からなる。試料7の複合成形品は、試料1と同様の加熱圧着法により作製した。加熱条件は、金属側280℃/材料側室温であった。加圧力は10MPaであった。その他は、試料1と同様に作製した。試料7の剪断強度は35MPaであり、試料7の剥離強度は16MPaであった。
(試料8)
試料8の複合成形品では、高分子材料部が材料8からなり、金属部材が基板5からなる。試料8の複合成形品は、試料1と同様の加熱圧着法により作製した。加熱条件は、金属側280℃/材料側室温であった。加圧力は10MPaであった。その他は、試料1と同様に作製した。試料8の剪断強度は35MPaであり、試料8の剥離強度は15MPaであった。
(試料9)
試料9の複合成形品では、高分子材料部が材料9からなり、金属部材が基板5からなる。試料9の複合成形品は、試料1と同様の加熱圧着法により作製した。加熱条件は、金属側280℃/材料側室温であった。加圧力は10MPaであった。その他は、試料1と同様に作製した。試料9の剪断強度は34MPaであり、試料9の剥離強度は16MPaであった。
(試料10)
試料10の複合成形品では、高分子材料部が材料10からなり、金属部材が基板5からなる。試料10の複合成形品は、試料1と同様の加熱圧着法により作製した。加熱条件は、金属側280℃/材料側室温であった。加圧力は10MPaであった。その他は、試料1と同様に作製した。試料10の剪断強度は30MPaであり、試料10の剥離強度は8MPaであった。
(試料11)
試料11の複合成形品では、高分子材料部が材料1からなり、金属部材が基板5からなる。試料11の複合成形品は、インサート射出成形法により作製した。具体的には、基板5を200℃に予備加熱した後に、射出成形金型内のキャビティに設置した。材料1をキャビティ内に射出して、高分子材料部と基板5(金属部材)とからなる複合成形品を成形した。射出成形機のノズル先端の材料温度は293℃であり、金型は80℃に保温した。金型の中の可動型インサート面は、断熱材を設置した。複合成形品は、離型時に高分子材料部と金属部材との界面で剥離して、取り出すことはできなかった。試料11の剪断強度及び剥離強度は測定できなかった。
(試料12)
試料12の複合成形品では、高分子材料部が材料2からなり、金属部材が基板5からなる。試料12の複合成形品は、試料11と同条件でインサート射出成形法により作製した。インサート成形後の離型時には、剥離することなく金型から取り出せた。試料12の剪断強度は25MPaであり、剥離強度は14MPaであった。
(試料13)
試料13の複合成形品では、高分子材料部が材料3からなり、金属部材が基板5からなる。試料13の複合成形品は、試料11と同条件でインサート射出成形法により作製した。試料13の剪断強度は18MPaであり、剥離強度は9MPaであった。
(試料14)
試料14の複合成形品では、高分子材料部が材料4からなり、金属部材が基板5からなる。試料14の複合成形品は、試料11と同条件でインサート射出成形法により作製した。試料14の剪断強度は6MPaであり、剥離強度は2MPaであった。
(試料15)
試料15の複合成形品では、高分子材料部が材料5からなり、金属部材が基板5からなる。試料15の複合成形品は、試料11と同条件でインサート射出成形法により作製した。試料15の剪断強度は8MPaであり、剥離強度は3MPaであった。
(試料16)
試料16の複合成形品では、高分子材料部が材料6からなり、金属部材が基板5からなる。試料16の複合成形品は、試料11と同条件でインサート射出成形法により作製した。インサート成形後の離型時には、高分子材料部と金属部材との界面で剥離してしまい、金型から取り出すことはできなかった。試料16の剪断強度及び剥離強度は測定できなかった。
(試料17)
試料17の複合成形品では、高分子材料部が材料7からなり、金属部材が基板5からなる。試料17の複合成形品は、試料11と同条件でインサート射出成形法により作製した。試料17の剪断強度は20MPaであり、剥離強度は7MPaであった。
(試料18)
試料18の複合成形品では、高分子材料部が材料8からなり、金属部材が基板5からなる。試料18の複合成形品は、試料11と同条件でインサート射出成形法により作製した。試料18の剪断強度は22MPaであり、剥離強度は9MPaであった。
(試料19)
試料19の複合成形品では、高分子材料部が材料9からなり、金属部材が基板5からなる。試料19の複合成形品は、試料11と同条件でインサート射出成形法により作製した。試料19の剪断強度は25MPaであり、剥離強度は14MPaであった。
(試料20)
試料20の複合成形品では、高分子材料部が材料10からなり、金属部材が基板5からなる。試料20の複合成形品は、試料11と同条件でインサート射出成形法により作製した。試料20の剪断強度は6MPaであり、剥離強度は2MPaであった。
(試料21)
試料21の複合成形品では、高分子材料部が材料10からなり、金属部材が基板1からなる。試料21の複合成形品は、試料1と同様の加熱圧着法により作製した。加熱条件は、金属側280℃/材料側室温であった。加圧力は10MPaであった。その他は、試料1と同様に作製した。試料21の剪断強度は30MPaであり、試料21の剥離強度は8MPaであった。
(試料22)
試料22の複合成形品では、高分子材料部が材料10からなり、金属部材が基板2からなる。試料22の複合成形品は、試料1と同様の加熱圧着法により作製した。加熱条件は、金属側280℃/材料側室温であった。加圧力は10MPaであった。その他は、試料1と同様に作製した。試料22の剪断強度は32MPaであり、試料22の剥離強度は8MPaであった。
(試料23)
試料23の複合成形品では、高分子材料部が材料10からなり、金属部材が基板3からなる。試料23の複合成形品は、試料1と同様の加熱圧着法により作製した。加熱条件は、金属側280℃/材料側室温であった。加圧力は10MPaであった。その他は、試料1と同様に作製した。試料23の剪断強度は35MPaであり、試料23の剥離強度は12MPaであった。
(試料24)
試料24の複合成形品では、高分子材料部が材料10からなり、金属部材が基板4からなる。試料24の複合成形品は、試料1と同様の加熱圧着法により作製した。加熱条件は、金属側280℃/材料側室温であった。加圧力は10MPaであった。その他は、試料1と同様に作製した。試料24の剪断強度は24MPaであり、試料24の剥離強度は7MPaであった。
(試料25)
試料25の複合成形品では、高分子材料部が材料10からなり、金属部材が基板6からなる。試料25の複合成形品は、試料1と同様の加熱圧着法により作製した。加熱条件は、金属側280℃/材料側室温であった。加圧力は10MPaであった。その他は、試料1と同様に作製した。試料25は、剪断強度測定用の治具取付の際に高分子材料部と金属部材との界面で剥離して剪断強度の測定ができなかった。試料25の剥離強度は1MPaであった。
(試料26)
試料26の複合成形品では、高分子材料部が材料10からなり、金属部材が基板7からなる。試料26の複合成形品は、試料1と同様の加熱圧着法により作製した。加熱条件は、金属側280℃/材料側室温であった。加圧力は10MPaであった。その他は、試料1と同様に作製した。試料26の剪断強度は8MPaであり、試料26の剥離強度は3MPaであった。
(試料27)
試料27の複合成形品では、高分子材料部が材料10からなり、金属部材が基板8からなる。試料27の複合成形品は、試料1と同様の加熱圧着法により作製した。加熱条件は、金属側280℃/材料側室温であった。加圧力は10MPaであった。その他は、試料1と同様に作製した。試料27の剪断強度は6MPaであり、試料27の剥離強度は1MPaであった。
(試料28)
試料28の複合成形品では、高分子材料部が材料8からなり、金属部材が基板1からなる。試料28の複合成形品は、試料11と同条件でインサート射出成形法により作製した。試料28の剪断強度は30MPaであり、剥離強度は19MPaであった。
(試料29)
試料29の複合成形品では、高分子材料部が材料8からなり、金属部材が基板2からなる。試料29の複合成形品は、試料11と同条件でインサート射出成形法により作製した。試料29の剪断強度は32Paであり、剥離強度は19MPaであった。
(試料30)
試料30の複合成形品では、高分子材料部が材料8からなり、金属部材が基板3からなる。試料30の複合成形品は、試料11と同条件でインサート射出成形法により作製した。試料30の剪断強度は34Paであり、剥離強度は20MPaであった。
(試料31)
試料31の複合成形品では、高分子材料部が材料8からなり、金属部材が基板4からなる。試料31の複合成形品は、試料11と同条件でインサート射出成形法により作製した。試料31の剪断強度は26Paであり、剥離強度は17MPaであった。
(試料32)
試料32の複合成形品では、高分子材料部が材料11からなり、金属部材が基板5からなる。試料32の複合成形品は、金属側240℃/樹脂室温、加圧力10MPaの製造条件で加熱圧着法により作製した。試料32の剪断強度は22.3MPaであった。試料32の剥離強度は測定しなかった。
(試料33)
試料33の複合成形品では、高分子材料部が材料12からなり、金属部材が基板5からなる。試料33の複合成形品は、金属側240℃/樹脂室温、加圧力10MPaの製造条件で加熱圧着法により作製した。試料33の剪断強度は24.1MPaであった。試料33の剥離強度は測定しなかった。
上記の各種試料の構成及び強度試験結果を表3,表4にまとめた。
表3,表4に示すように、表面に微小溝を形成した基板1〜4に高分子材料部を被覆したもの(試料21〜24、試料28〜31)は、微小溝よりも大きい凹部を表面に形成した基板5〜8に高分子材料部を被覆したもの(試料1〜20、試料25〜27、32、33)に比べて、剪断強度及び剥離強度が高い傾向が見られた。その理由は定かではないが、微小溝に高分子材料部のナイロン樹脂の一部が進入し、微小溝の壁面に樹脂が係合し、そのアンカー効果により高分子材料部の金属部材に対する接合力が高められたと考えられる。
更に、試料28〜31は、試料21〜24よりも更に剥離強度が高かった。その理由は、試料28〜31では、高分子材料部(材料8)に含まれるカーボンナノチューブの少なくとも一部が、金属部材表面の微小溝に進入し、カーボンナノチューブが微小溝の壁面に引っかかり、高分子材料部の金属部材に対する接合性を更に高くしたためであると考えられる。
試料1〜10は、加熱圧着法で作製した複合成形品であり、試料11〜20はインサート射出成形法で作製した複合成形品である。試料1〜10と試料11〜20とで構成の同じもの同士を比べると、加熱圧着法で作製した方が、インサート射出成形法で作成する場合に比べて、複合成形品の剪断強度及び剥離強度が高かった。これは、加熱圧着法では、金属部材をホットプレートで直接280〜290℃に加熱している。金属部材表面を被覆する高分子材料は金属部材の熱により溶融し、十分な時間流動性を維持している。このため、高分子材料などが基板5の表面の凹部に十分に進入することができる。そのため、強いアンカー効果を発揮でき、強度が高くなったと考えられる。
一方、インサート射出成形法では、金型の温度が80℃に保温されているとはいえ、材料が流動性を維持し続けるには低い温度である。また、金属部材は予め200℃に予熱された後に金型内にインサートされている。しかし、金型内では金属部材は次第に低温になる。このため、キャビティ内に射出された材料は、冷却されて、基板表面の凹部内に十分に進入する前に固化してしまう。このため、高分子材料部の金属部材に対する接合力が低下すると考えられる。
試料1は、試料2よりも剪断強度及び剥離強度とも低かった。試料1では、高分子材料部を構成する材料1の半結晶化時間は1分未満であった。このため、高温下で接合される加熱圧着法でも、基板5の表面の凹部内に進入する前に樹脂が固化してしまい、凹部内に十分に入らず、アンカー効果が発揮されにくかった。一方、試料2では、高分子材料部を構成する材料2の半結晶化時間は6分であった。このため、基板5の凹部内に十分に進入して、優れたアンカー効果を発揮したものと考えられる。
試料3の剪断強度及び剥離強度は試料2よりも高かった。一方、試料3の高分子材料部には、融点が低い6ナイロンが含まれている。このため、試料3は、試料2に比べて強度が高い一方、耐熱性が低い。
試料4と試料14はいずれも複合成形品の構成が同じで、高分子材料部の半結晶化時間が1分未満である。しかし、インサート射出成形法で作製した試料14は、加熱圧着法で作製した試料4に比べて強度が格段に低い。これは、加熱圧着法では、金属部材が高温に保持されており、金属部材表面の高分子材料が溶融状態ないし流動状態を長時間維持して、金属部材表面の凹部に高分子材料が十分に進入し、強いアンカー効果を発揮したためであると考えられる。
試料4は、試料2に比べて高分子材料の半結晶化時間が短い一方、高分子材料の平均分子量が短い。試料4は、試料2と同程度の剪断強度及び剥離強度であった。
試料5で用いられている材料5は、試料4の材料4に比べて溶融時の流動性のよい材料である。材料5は材料4に比べて流動性がよいので、金属部材表面の凹部に高分子材料が進入しやすいのではないかと考えられる。しかし、表3に示す結果では、溶融時の流動性のよい材料5を用いた試料5は、試料4と同程度の強度であった。このことから、溶融状態の高分子材料の流動性をよくするよりも、半結晶化時間を長くした方が高分子材料の凹部に対するアンカー効果を高くすることができることがわかった。ナノオーダの微小な凹部に高分子材料が進入するには、時間を要することがわかった。
試料7は、高分子材料部にカーボンナノチューブを含んでいる。試料7は、試料1〜20の中でも、剪断強度及び剥離強度ともに格段に高かった。試料6の高分子材料部は、試料7と同量のカーボンナノチューブを含んでいるにもかかわらず、試料7の強度は、試料6よりも高かった。その理由は以下のように考えられる。試料7の中の高分子材料の半結晶化時間は、試料6の中の高分子材料よりも長い。このため、微小な凹部に高分子材料及びカーボンナノチューブが進入し、優れたアンカー効果を発揮したためであると考えられる。
試料8は試料7よりもカーボンナノチューブの含有量が低い。しかし、試料8は試料7と同程度の剪断強度及び剥離強度を発揮した。
試料9は、高分子材料部にナノクレイを含んでいる。試料9も試料7,8と同程度の優れた剪断強度及び剥離強度を発揮した。試料9も、ナノクレイが高分子材料とともに微小な凹部に進入して、高いアンカー効果を発揮したためであると考えられる。
試料10の高分子材料の半結晶化時間は、試料6と同様に、1分未満である。試料10は試料6と同程度の強度であった。
試料11〜20は、インサート射出成形により作製された複合成形品である。試料11では、離型時に高分子材料部が金属部材から剥離してしまったが、試料12では剥離せず、ある程度の剪断強度及び剥離強度を発揮した。試料12の高分子材料の半結晶化時間は6分であり、試料11よりも長い。このため、試料12は、試料11と比べて、成形時に金属部材表面の凹部に進入して高いアンカー効果を発揮し、界面での接合強度が高くなったと考えられる。
試料16の高分子材料の半結晶化時間は1分未満である。試料16では、高分子材料部にカーボンナノチューブを含んでいても、試料11と同様に離型時に高分子材料部と金属部材との界面で剥離してしまった。
試料17〜19は、試料12と同様に、高分子材料の半結晶化時間が6分である。試料17〜19は、高分子材料部にカーボンナノチューブ又はナノクレイからなる微小補強フィラーを含んでいる。試料17〜19は、微小補強フィラーを含んでいない試料12と同程度の剪断強度及び剥離強度であった。
試料20〜27は、同じ材料10を用い、基板の種類を変えている。試料20〜27の各基板はいずれも四角錐形状の進入空間を形成している。この内、試料21〜24は、フェムト秒レーザに照射により、進入空間の空間壁面を含めて金属部材表面全体に微小溝を形成している。試料20、25〜27は、進入空間の空間壁面を含めて金属部材表面全体にエッチングで不規則的な凹部を形成している。フェムト秒レーザで微小溝を形成した試料21〜24は、エッチングにより凹部を形成した試料20、25〜27に比べて、剪断強度及び剥離強度が高かった。
この理由は以下のように考えられる。フェムト秒レーザ照射で作成した微小溝は、エッチングにより形成した凹部に比べて開口径及びピッチ間隔とも小さく、多数のアンカー部を形成できる。また、フェムト秒レーザで作成した微小溝は、山脈状に連なり、微小溝に進入した高温の高分子材料の熱の逃げ方向が2方向に限定され、放熱しにくい構造をとっており、放熱により固化するまでの時間を長く確保でき、その間に微小溝の全体に高分子材料を進入させることができる。また、フェムト秒レーザで作成した微小溝は、底部に対する開口の幅の比率が大きく、高分子材料が進入しやすい。このため、アンカー効果が高かった。
試料20、25〜27の剪断強度及び剥離強度が、試料21〜24よりも低い理由は、以下のように考えられる。エッチングにより不規則な凹部を形成している。エッチングは、袋状の微細な凹部を形成できるが、材料の組成(基本的には金属部材の組成)に影響を受け、凹部の形状及び寸法を均一に形成することが難しい(図14〜図16参照)。また、エッチングでは、凹部の方位及び深さが不規則で、安定しない。基板5のように、表面に形成された凹部が袋形状であると、開口が底部に比べて小さい。このため、高分子材料流入に対する粘性損失が大きく、凹部に高分子材料が進入しにくく、凹部にアンカー部を形成することが難しい(図3参照)。
試料28〜31では、高分子材料部が、半結晶化時間が6分の高分子材料とカーボンナノチューブとからなる。いずれも高分子材料の高温維持に不利なインサート射出成形で作成されたが、材料の性質上長い時間流動性を維持することができ、微小溝の奥深くまで全体に高分子材料及びカーボンナノチューブを進入させることができた。このため、剪断強度及び剥離強度が高かった。
試料32、33では、高分子材料部に補強繊維を含んでいない。試料32は微小補強フィラーを含まず、試料33は微小補強フィラーを含んでいる。補強繊維を含んでいない場合にも、微小補強フィラーを含む試料33は、微小補強フィラーを含まない試料32よりも剪断強度が高かった。
1:金属部材、2:高分子材料部、3:高分子材料、4:進入空間、5:微小補強フィラー、6:補強繊維、7:複合成形品、8:界面、10:微小溝、11:表面部、12:溝壁面、13:非平行部、14:平行部、15:突部、16:空間壁面、51:短辺部、52:長辺部。

Claims (17)

  1. 金属を母材とする表面をもつ金属部材と、
    前記金属部材の表面の少なくとも一部に被覆され、高分子材料を有する高分子材料部と、を有しており、
    前記金属部材の表面は、フェムト秒レーザ又はピコ秒レーザの照射により作成され、該レーザの光学波長に依存する周期で複数並設された長尺状の微小溝をもち、
    前記微小溝の内部は、前記高分子材料の一部で充填されている複合成形品において、
    前記金属部材の表面は、前記金属部材の表面の平面方向に対して平行な平行部と、前記平行部に対して平行ではない非平行部とをもち、
    前記非平行部に形成された前記微小溝は前記平面方向に対して平行に複数並設され、
    前記非平行部に形成された前記微小溝には、前記平行部に形成された前記微小溝に対して直交する方向に形成された前記微小溝を含んでおり、
    前記金属部材の表面は、前記平行部を有する格子状の突部と、前記突部に囲まれ前記非平行部を壁面とし前記高分子材料が進入する進入空間と、を備え、
    前記壁面には前記微小溝が設けられている、複合成形品。
  2. 前記壁面は複数の非平行面を有し、隣接する前記非平行面に設けられた前記微小溝は互いに直交する方向に形成されている、請求項1に記載の複合成形品。
  3. 前記微小溝の長尺方向の長さは、1,000nm以上であり、前記微小溝の幅は100nm以上1,000nm以下である請求項1又は2に記載の複合成形品。
  4. 前記微小溝の幅方向のピッチ間隔は、1μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合成形品。
  5. 前記微小溝の深さは、100nm以上3,000nm以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の複合成形品。
  6. 前記進入空間の深さは、3mm以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の複合成形品。
  7. 前記高分子材料は、熱可塑性樹脂を含む請求項1〜のいずれか1項に記載の複合成形品。
  8. 前記高分子材料の半結晶化時間は、1分以上である請求項に記載の複合成形品。
  9. 前記高分子材料は、(A)脂肪族ポリアミド樹脂、及び(B)半芳香族ポリアミド樹脂の群から選ばれる1種以上を有する請求項7又は8に記載の複合成形品。
  10. 前記(A)脂肪族ポリアミド樹脂が、6ナイロン又は/及び66ナイロンを含む請求項に記載の複合成形品。
  11. 前記(B)半芳香族ポリアミド樹脂が、6/66/6Iナイロン及び/又は6T/6Iナイロンを含む請求項又は10に記載の複合成形品。
  12. 前記高分子材料部は、前記高分子材料からなるマトリックスと、前記マトリックスを補強する微小補強フィラーとを有し、
    前記微小補強フィラーの短辺部の幅は、前記微小溝の開口幅よりも小さく、且つ前記微小溝の内部に、前記微小補強フィラーの少なくとも一部が進入している請求項1〜11のいずれか1項に記載の複合成形品。
  13. 前記微小補強フィラーのアスペクト比は1を超えて大きい請求項12記載の複合成形品。
  14. 前記微小補強フィラーの短辺部の幅は、1nm以上100nm以下である請求項12又は13に記載の複合成形品。
  15. 前記微小補強フィラーは、カーボンナノチューブ、ナノクレイ、並びに、金属及び/又は金属酸化物からなるナノ粒子の群から選ばれる少なくとも一種からなる請求項1214のいずれか1項に記載の複合成形品。
  16. 前記高分子材料部は、前記高分子材料に対して前記微小補強フィラーを相溶化させ得る相溶化剤を有する請求項1215のいずれか1項に記載の複合成形品。
  17. 金属を母材とする表面をもつ金属部材と、
    前記金属部材の表面の少なくとも一部に被覆され、高分子材料を有する高分子材料部と、を有しており、
    前記金属部材の表面は、ピッチ間隔1μm以下の周期で複数並設された長尺状の微小溝をもち、
    前記微小溝の長尺方向の長さは、1,000nm以上であり、前記微小溝の幅は100nm以上1,000nm以下であって、
    前記微小溝の内部は、前記高分子材料の一部で充填されている複合成形品において、
    前記金属部材の表面は、前記金属部材の表面の平面方向に対して平行な平行部と、前記平行部に対して平行ではない非平行部とをもち、
    前記非平行部に形成された前記微小溝は前記平面方向に対して平行に複数並設され、
    前記非平行部に形成された前記微小溝には、前記平行部に形成された前記微小溝に対して直交する方向に形成された前記微小溝を含んでおり、
    前記金属部材の表面は、前記平行部を有する格子状の突部と、前記突部に囲まれ前記非平行部を壁面とし前記高分子材料が進入する進入空間と、を備え、
    前記壁面には前記微小溝が設けられている、複合成形品。
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