以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
本実施形態に係る電子写真感光体(以下、単に「感光体」ともいう。)は、導電性基体上に感光層を備える電子写真感光体であって、前記感光層の最外層は、上記式(I)で表される繰返し構造単位及び上記式(II)で表される繰返し構造単位からなるとともに、式(I)で表される繰返し構造単位を1〜30mol%含有するポリカーボネート樹脂を包含する結着樹脂を含む電子写真感光体である。
[電子写真感光体の構造]
本実施形態に係る電子写真感光体は、導電性基体と、この導電性基体の表面側に位置する感光層とが備えられた有機感光体である。前記感光層は、電荷発生剤、電荷輸送剤及び結着樹脂を同一層に含有する単層構造であってもよいし、電荷発生剤を含有する電荷発生層と、この電荷発生層の表面側に位置するとともに電荷輸送剤及び結着樹脂を含有する電荷輸送層とを有する二層構造であってもよい。即ち、本実施形態に係る電子写真感光体は、単層構造の感光層を備えた単層型感光体であってもよいし、二層構造の感光層を備えた積層型感光体であってもよい。
本実施形態に係る電子写真感光体が単層型感光体である場合には、図1に示すように、電子写真感光体10は、導電性基体11と、前記導電性基体11の表面側に位置する感光層12とを備える。例えば、図1(a)に示すように導電性基体11上に感光層12を直接備えてもよいし、電子写真感光体の特性を阻害しない範囲で、図1(b)に示すように導電性基体11と感光層12との間に中間層16をさらに備えてもよいし、図1(c)に示すように感光層12上に保護層18をさらに備えてもよいし、図1(d)に示すように導電性基体11と感光層12との間に中間層16をさらに備えるとともに、感光層12上に保護層18をさらに備えてもよい。しかし、画像流れの発生を防止する観点から、及び製造コストを抑制する観点から、本実施形態に係る単層型電子写真感光体は感光層12を最外層に配置することが好ましい。
一方、本実施形態に係る電子写真感光体が積層型感光体である場合には、図2に示すように、電子写真感光体10は、導電性基体11と、前記導電性基体11の表面側に位置する電荷発生層13と、前記電荷発生層13の表面側に位置する電荷輸送層14とを備える。例えば、図2(a)に示すように、導電性基体11上に電荷発生層13を直接備えるとともに、前記電荷発生層13上に電荷輸送層14を直接備えてもよいし、電子写真感光体の特性を阻害しない範囲で、図2(b)に示すように導電性基体11と電荷発生層13との間に中間層16をさらに備えてもよいし、図2(c)に示すように電荷発生層13と電荷輸送層14との間に中間層16をさらに備えてもよい。又、図2(a)〜(c)に示すように、電荷輸送層14が最外層として露出する代りに、図2(d)〜(f)に示すように、電荷輸送層14上に保護層18をさらに備えてもよい。しかし、画像流れの発生を防止する観点から、及び製造コストを抑制する観点から、本実施形態に係る積層型電子写真感光体は電荷輸送層14を最外層に配置することが好ましい。
本実施形態に係る電子写真感光体が単層型感光体である場合には、単一の感光層12自体が感光層の最外層に該当する。一方、本実施形態に係る電子写真感光体が積層型感光体である場合には、電荷輸送層14が感光層の最外層に該当する。
[結着樹脂(最外層用結着樹脂)]
本実施形態に係る電子写真感光体において、感光層の最外層は、上記式(I)で表される繰返し構造単位及び上記式(II)で表される繰返し構造単位からなるとともに、上記式(I)で表される繰返し構造単位を1〜30mol%含有するポリカーボネート樹脂を包含する結着樹脂(最外層用結着樹脂)を含んでいる。即ち、最外層用結着樹脂としては、感光層の最外層を構成する樹脂として用いることができ、上記式(I)で表される繰返し構造単位及び上記式(II)で表される繰返し構造単位からなるとともに、上記式(I)で表される繰返し構造単位を1〜30mol%含有するポリカーボネート樹脂を含むものであれば、特に限定されない。
前記ポリカーボネート樹脂は、上記式(I)で表される繰返し構造単位及び上記式(II)で表される繰返し構造単位からなる。即ち、前記ポリカーボネート樹脂は、1種又は2種以上の式(I)で表される繰返し構造単位と、1種又は2種以上の式(II)で表される繰返し構造単位とによって構成される。
ここで、一般式(I)で表される繰返し構造単位について説明する。
一般式(I)において、R1及びR2は、それぞれ水素原子及び炭素数1〜8のアルキル基の中から適宜選択されるものであり、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
一般式(I)中の炭素数1〜8のアルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
R1及びR2は、感光層の最外層用塗布液の溶媒への前記ポリカーボネート樹脂の溶解性を高める観点から、いずれか一方が炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましく、両方が炭素数1〜8のアルキル基であることがさらに好ましい。
一方、前記ポリカーボネート樹脂の摩耗量を抑制する観点から、R1及びR2は水素原子と炭素数の少ないアルキル基との組合せであることが好ましい。
次に、一般式(II)で表される繰返し構造単位について説明する。
一般式(II)において、R3及びR4は、それぞれ炭素数1〜8のアルキル基及び炭素数6〜12のアリール基の中から適宜選択されるものであり、同一であってもよいし、異なっていてもよい。そして、R3の繰返し数u及びR4の繰返し数vはそれぞれ0〜4の整数を示す。即ち、一般式(II)で表される繰返し構造単位において、この式の左側に位置するフェニレン基は1〜4個のR3を有してもよいし、R3を全く有さなくてもよいし;この式の右側に位置するフェニレン基は1〜4個のR4を有してもよいし、R4を全く有さなくてもよい。
一般式(II)において、Xは、単結合、酸素原子(−O−)、カルボニル基(−CO−)、炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数2〜8のアルキリデン基、炭素数3〜12のシクロアルキレン基及び炭素数3〜12のシクロアルキリデン基の中から適宜選択されるものである。
一般式(II)中の炭素数1〜8のアルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
一般式(II)中の炭素数6〜12のアリール基として、例えば、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,3−キシリル基、2,4,6−メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ナフチル基、ビフェニリル基等が挙げられる。
一般式(II)中の炭素数1〜8のアルキレン基として、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ブテン基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。
一般式(II)中の炭素数2〜8のアルキリデン基として、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、ブチリデン基、ペンチリデン基、ヘキシリデン基、ヘプチリデン基、オクチリデン基、2−メチルプロピリデン基、2−メチルブチリデン基、3−エチルブチリデン基、2,2−ジメチルブチリデン基、2,3−ジメチルブチリデン基、2,2,3−トリメチルブチリデン基、2−メチルペンチリデン基、3−メチルペンチリデン基、4−メチルペンチリデン基、2,2−ジメチルペンチリデン基、3,4−ジメチルペンチリデン基、2,2,3−トリメチルペンチリデン基、2−メチルヘキシリデン基、3−メチルヘキシリデン基、4−メチルヘキシリデン基、5−メチルヘキシリデン基、2−メチルへプチリデン基、3−メチルヘプチリデン基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキリデン基が挙げられる。
一般式(II)中の炭素数3〜12のシクロアルキレン基として、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基等が挙げられる。
一般式(II)中の炭素数3〜12のシクロアルキリデン基として、例えば、シクロプロピリデン基、シクロブチリデン基、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基等が挙げられる。炭素数3〜12のシクロアルキリデン基のうち、耐摩耗性が向上する傾向を示す観点からシクロヘキシリデン基が好ましい。この理由は明確ではないが、他のシクロアルキリデン基と比べて、シクロヘキシリデン基を用いた場合には分子間の相互作用によって適度に絡み合って、耐摩耗性を向上させるためと考えられる。
前記ポリカーボネート樹脂は、その分子内に、上記式(I)で表される繰返し構造単位を1mol%以上含有すればよく、5mol%以上含有することが好ましく、10mol%以上含有することがより好ましい。前記ポリカーボネート樹脂を構成する分子内に含有される上記式(I)で表される繰返し構造単位が少なすぎると、感光層の最外層の摩耗量の低下を抑制するという効果を充分に発揮できないからである。これは、前記結着樹脂(最外層用結着樹脂)において、主として上記式(I)で表される繰返し構造単位が、耐摩耗性の向上に寄与しているためと考えられる。
一方、前記ポリカーボネート樹脂は、その分子内に、上記式(I)で表される繰返し構造単位を30mol%以下含有すればよく、25mol%以下含有することが好ましく、20mol%以下含有することがより好ましい。前記ポリカーボネート樹脂を構成する分子内に含有される上記式(I)で表される繰返し構造単位が多すぎると、感光層の最外層の溶媒に前記結着樹脂が溶解しづらくなる傾向を示すからである。
前記ポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量で30000以上であることが好ましく、40000〜60000であることがより好ましい。前記ポリカーボネート樹脂の分子量が低すぎると、前記ポリカーボネート樹脂の耐摩耗性を高めるという効果を充分に発揮できず、感光層の最外層が摩耗しやすくなる傾向がある。又、前記ポリカーボネート樹脂の分子量が高すぎると、感光層の最外層用塗布液の溶媒に前記ポリカーボネート樹脂が溶解しにくくなって、感光層の最外層用塗布液を調製しにくくなる等、感光層の最外層を形成することが困難になる傾向がある。
前記ポリカーボネート樹脂は、上記式(I)で表される繰返し構造単位及び上記式(II)で表される繰返し構造単位からなる共重合体であればよく、共重合体の構造は特に限定されない。具体的には、上記式(I)で表される繰返し構造単位と上記式(II)で表される繰返し構造単位とがランダムに共重合したランダム共重合体であってもよいし、両繰返し構造単位が交互に共重合した交互共重合体であってもよいし、1つ又は複数の上記式(I)で表される繰返し構造単位と1つ又は複数の上記式(II)で表される繰返し構造単位とが周期的に共重合した周期的共重合体であってもよいし、複数の上記式(I)で表される繰返し構造単位からなるブロックと複数の上記式(II)で表される繰返し構造単位からなるブロックとが共重合したブロック共重合体であってもよい。
ここで、前記ポリカーボネート樹脂の製造方法は、上述した構造のポリカーボネート樹脂を製造することができれば、特に限定されない。例えば、前記ポリカーボネート樹脂の繰返し構造単位を構成するためのジオール化合物とホスゲンとを界面縮重合させる方法、いわゆるホスゲン法や、前記ジオール化合物とジフェニルカーボネートとをエステル交換反応させる方法等が挙げられる。より具体的には、例えば、下記式(I-0)で表されるジオール化合物が1〜30mol%となるように、下記式(I-0)で表されるジオール化合物及び下記式(II-0)で表されるジオール化合物を混合して得た混合物と、ホスゲンと、を界面縮重合させる方法等が挙げられる。
上記式(I-0)において、R1及びR2は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。
上記式(II-0)において、R3及びR4は同一又は異なって、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を示し、繰返し数u及びvはそれぞれ0〜4の整数を示し、Xは単結合、酸素原子、カルボニル基、炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数2〜8のアルキリデン基、炭素数3〜12のシクロアルキレン基又は炭素数3〜12のシクロアルキリデン基を示す。
前記結着樹脂(最外層用結着樹脂)は前記ポリカーボネート樹脂を含んでいればよく、70質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましく、85質量%以上含むことがより一層好ましく、前記結着樹脂(最外層用結着樹脂)が前記ポリカーボネート樹脂のみからなることが最も好ましい。これは、感光層の最外層を構成する結着樹脂が前記ポリカーボネート樹脂を含むことで、結着樹脂全体の引張強度が上昇して感光層の最外層の摩耗量が抑制されるためと考えられる。
前記結着樹脂(最外層用結着樹脂)は、前記ポリカーボネート樹脂からなることが好ましいが、前記ポリカーボネート樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。前記ポリカーボネート樹脂以外の樹脂としては、感光層の最外層に用いることができるものであれば、特に限定されない。例えば、スチレン系重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、アルキド樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、前記ポリカーボネート樹脂以外のポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂;エポキシアクリレート樹脂、ウレタン−アクリレート共重合樹脂等の光硬化性樹脂等が挙げられる。
[導電性基体]
本実施形態に係る電子写真感光体において、前記導電性基体は、少なくとも表面部が導電性を有するものであれば、特に限定されない。例えば、基体の表面部が導電性を有する材料で構成されるもの等が挙げられる。より具体的には、例えば、導電性を有する材料からなるものであってもよいし、プラスチック材料又はガラスの表面を、導電性を有する材料で被覆や蒸着したものであってもよい。ここで、導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドニウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼及び真鍮等の金属や合金が挙げられる。これら導電性を有する材料は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。前記例示した導電性基体のうち、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるものを用いることが好ましい。そうすることによって、より好適な画像を形成することができる感光体を提供することができる。このことは、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることによると考えられる。
前記導電性基体の形状は、特に限定されない。例えば、シート状であってもよいし、ドラム状であってもよい。即ち、適用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状であっても、ドラム状であってもよく、特に限定されない。
又、前記導電性基体は、使用に際して、充分な機械的強度を有することが望ましい。
[感光層]
本実施形態に係る電子写真感光体が単層型感光体の場合には、感光層は単層構造であり、同一層中に前記結着樹脂、電荷発生剤及び電荷輸送剤を含む。一方、本実施形態に係る電子写真感光体が積層型感光体の場合には、感光層は電荷発生層と電荷輸送層の二層構造からなり、前記電荷発生層は電荷発生剤を含み、前記電荷輸送層は前記結着樹脂及び電荷輸送剤を含む。感光層は単層型及び積層型のいずれであってもよいが、優れた電気特性を得る点からは積層型が好ましく、製造コストを抑制する点からは単層型が好ましい。
前記電荷発生剤としては、電子写真感光体の電荷発生剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば下記化学式(3)で表されるY型オキソチタニルフタロシアニン(Y−TiOPc)やX型無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、ジオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、ピリリウム顔料、アンサンスロン顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料等の有機光導電体;セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコン等の無機光導電剤等が挙げられる。
前記電荷発生剤は、所望の領域に吸収波長を有するように、前記例示した電荷発生剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
例えば、半導体レーザー等の光源を使用したレーザービームプリンター及びファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置では、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば無金属フタロシアニン及びオキソチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料が電荷発生剤として好適に用いられる。尚、上記フタロシアニン系顔料の結晶形については特に限定されず、種々のものが用いることができる。
一方、ハロゲンランプ等の白色の光源を使用した静電式複写機等のアナログ光学系の画像形成装置では、可視領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えばペリレン顔料やビスアゾ顔料等が電荷発生剤として好適に用いられる。
前記電荷輸送剤には、負帯電型として作用する正孔輸送剤と、正帯電型として作用する電子輸送剤とがある。本実施形態に係る電子写真感光体が単層型感光体の場合には、電荷輸送剤として正孔輸送剤と電子輸送剤の双方を用いる。一方、本実施形態に係る電子写真感光体が積層型感光体の場合には、電子写真感光体の帯電極性に応じて、正孔輸送剤又は電子輸送剤を用いればよい。例えば、電荷輸送層の電荷輸送剤として正孔輸送剤を用いた場合には、電子写真感光体は負帯電型となる。この場合、電荷発生層に電子輸送剤を含有させてもよい。一方、電荷輸送層の電荷輸送剤として電子輸送剤を用いた場合には、電子写真感光体は正帯電型となる。
前記正孔輸送剤としては、電子写真感光体の正孔輸送剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば下記化学式(4)で表されるN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−メチルフェニル)ベンジジン等のベンジジン系化合物、下記化学式(5)で表される1,1−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−4,4−ジメチルフェニル−1,3−ブタジエン等のブタジエン系化合物、オキサジアゾール系化合物、スチリルアミン系化合物、ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物等の含窒素環式化合物、縮合多環式化合物等が挙げられる。
前記例示した正孔輸送剤のうち、感光体がより優れた電気特性を示す点から、スチリルアミン系化合物が好ましい。スチリルアミン系化合物として、例えば、上記式(1)で表されるトリフェニルアミン系化合物、及び上記式(2)で表されるビストリフェニルアミン系化合物が挙げられる。
ここで、一般式(1)で表されるトリフェニルアミン系化合物について説明する。
一般式(1)において、Q1は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基及び炭素数1〜8のアルコキシ基の中から適宜選択されるものであり、Q2〜Q7は同一又は異なる官能基(又は水素原子)であって、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基及び炭素数1〜8のアルコキシ基の中から適宜選択されるものである。
又、一般式(1)において、Q1の繰返し数aは0〜5の整数を示す。即ち、一般式(1)で表されるトリフェニルアミン系化合物は、その両端に位置するフェニル基において、1〜5個のQ1をそれぞれ有してもよいし、Q1をそれぞれ有さなくてもよい。
又、一般式(1)において、Q3〜Q7は互いに隣接する基同士が結合して環を形成してもよい。即ち、Q3とQ4が結合して例えば炭素数4〜10の環を形成してもよく、このとき、この環はQ3〜Q7を有するフェニル基と2員環を形成する。Q3とQ4が環を形成する代わりに、Q4とQ5が環を形成してもよいし、Q5とQ6が環を形成してもよいし、Q6とQ7が環を形成してもよい。そして、Q3とQ4が環を形成する場合において、Q5とQ6、又はQ6とQ7がさらに環を形成することで、これら2つの環がQ3〜Q7を有するフェニル基と3員環を形成してもよい。又、Q4とQ5が環を形成する場合において、Q6とQ7がさらに環を形成することで、これら2つの環がQ3〜Q7を有するフェニル基と3員環を形成してもよい。
又、一般式(1)において、Q1〜Q7中の少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン基、アシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基又はメルカプト基に独立して置換されていてもよい。
一般式(1)中の炭素数1〜8のアルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
一般式(1)中の炭素数6〜12のアリール基として、例えば、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,3−キシリル基、2,4,6−メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ナフチル基、ビフェニリル基等が挙げられる。
一般式(1)中の炭素数1〜8のアルコキシ基として、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられる。
上記式(1)で表されるトリフェニルアミン系化合物の具体例として、例えば、下記の化学式(1−1)、(1−2)、(1−3)及び(1−4)で表される化合物が挙げられる。化学式(1−1)において“n−Bu”はn―ブチル基を表し、化学式(1−4)において“OMe”はメトキシ基を表す。
次に、一般式(2)で表されるビストリフェニルアミン系化合物について説明する。
一般式(2)において、Q8及びQ15は同一又は異なる官能基であって、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基及び炭素数1〜8のアルコキシ基の中から適宜選択されるものであり、Q9〜Q14は同一又は異なる官能基(又は水素原子)であって、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基及び炭素数1〜8のアルコキシ基の中から適宜選択されるものである。
又、一般式(2)において、Q8の繰返し数bは0〜5の整数を示す。即ち、一般式(2)で表されるビストリフェニルアミン系化合物は、その両端に位置するフェニル基において、1〜5個のQ8をそれぞれ有してもよいし、Q8をそれぞれ有さなくてもよい。
又、一般式(2)において、Q15の繰返し数cは0〜4の整数を示す。即ち、一般式(2)で表されるビストリフェニルアミン系化合物は、その中央部に位置する2つのフェニレン基において、1〜4個のQ15をそれぞれ有してもよいし、Q15をそれぞれ有さなくてもよい。
又、一般式(2)において、共役二重結合の繰返し数kは0又は1を示す。即ち、一般式(2)で表されるビストリフェニルアミン系化合物は、分子の端部に位置するフェニル基と、相対的に分子中央側にて窒素原子と結合するフェニレン基との間において、ビニレン基(−CH=CH−)を有してもよいし、1,3−ブタジエニレン基(−CH=CH−CH=CH−)を有してもよい。
又、一般式(2)において、Q10〜Q14は互いに隣接する基同士が結合して環を形成してもよい。即ち、Q10とQ11が結合して例えば炭素数4〜10の環を形成してもよく、このとき、この環はQ10〜Q14を有するフェニル基と2員環を形成する。Q10とQ11が環を形成する代わりに、Q11とQ12が環を形成してもよいし、Q12とQ13が環を形成してもよいし、Q13とQ14が環を形成してもよい。そして、Q10とQ11が環を形成する場合において、Q12とQ13、又はQ13とQ14がさらに環を形成することで、これら2つの環がQ10〜Q14を有するフェニル基と3員環を形成してもよい。又、Q11とQ12が環を形成する場合において、Q13とQ14がさらに環を形成することで、これら2つの環がQ10〜Q14を有するフェニル基と3員環を形成してもよい。
又、一般式(2)において、Q8〜Q15中の少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン基、アシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基又はメルカプト基に独立して置換されていてもよい。
一般式(2)中の炭素数1〜8のアルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
一般式(2)中の炭素数6〜12のアリール基として、例えば、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,3−キシリル基、2,4,6−メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ナフチル基、ビフェニリル基等が挙げられる。
一般式(2)中の炭素数1〜8のアルコキシ基として、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられる。
上記式(2)で表されるビストリフェニルアミン系化合物の具体例としては、例えば、下記の化学式(2−1)、(2−2)及び(2−3)で表される化合物が挙げられる。
前記正孔輸送剤として、前記例示した正孔輸送剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
前記電子輸送剤としては、電子写真感光体の電子輸送剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。例えば、ナフトキノン系化合物、ジフェノキノン系化合物、アントラキノン系化合物、アゾキノン系化合物、ニトロアントアラキノン系化合物、ジニトロアントラキノン系化合物等のキノン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸等が挙げられる。これら電子輸送剤は1種を単独で又は2種以上を組合せて用いられる。
本実施形態に係る電子写真感光体は、前記感光層の最外層中の前記結着樹脂(最外層用結着樹脂)の質量(MResin)に対する当該最外層中の前記電荷輸送剤の質量(MCTM)の比率(MCTM/MResin)が50/100以下(即ち0.5以下)であることが好ましく、40/100以下(即ち0.4以下)であることがより好ましい。前記感光層の最外層中の、前記結着樹脂に対する前記電荷輸送剤の質量比率が高すぎると、前記感光層の最外層の摩耗量の低下を抑制するという効果を充分に発揮できない傾向を示すからである。これは、前記感光層の最外層において、主として前記結着樹脂が耐摩耗性の向上に寄与しているためと考えられる。
一方、前記感光層の最外層中の前記結着樹脂(最外層用結着樹脂)の質量(MResin)に対する当該最外層中の前記電荷輸送剤の質量(MCTM)の比率(MCTM/MResin)は20/100以上(即ち0.2以上)であることが好ましい。前記感光層の最外層中の、前記結着樹脂に対する前記電荷輸送剤の質量比率が高めることで、電気特性が向上する傾向を示すからである。
尚、前記電荷発生層は、前記電荷発生剤を結着させる樹脂(電荷発生層用結着樹脂)を含む。前記電荷発生層用結着樹脂としては、電荷発生層を形成する結着樹脂として用いることができるものであれば、特に限定されない。前記最外層用結着樹脂を用いてもよいし、その他、例えば、スチレン系重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、アルキド樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、前記ポリカーボネート樹脂以外のポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂;エポキシアクリレート樹脂、ウレタン−アクリレート共重合樹脂等の光硬化性樹脂等が挙げられる。これら結着樹脂は1種を単独で又は2種以上が混合して用いられる。
[下引き層]
本実施形態に係る電子写真感光体では、導電性基体と感光層との間に位置する中間層として、無機粒子及び下引き層用結着樹脂を含有する下引き層を設けてもよい。導電性基体と感光層の間に下引き層を介在させることにより、リークの発生を抑える程度に絶縁しつつ、電子写真感光体を露光した際に円滑に電流を流して抵抗の上昇を抑えることができる。
前記無機粒子として、例えば、アルミニウム、鉄、銅等の金属;酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化亜鉛等の金属酸化物;及びシリカ等の非金属酸化物等が挙げられる。これらの無機粒子は1種を単独で又は2種以上を組合せて用いられる。
前記下引き層用結着樹脂としては、下引き層を形成する結着樹脂として用いることができるものであれば、特に限定されない。例えば、前記電荷発生層用結着樹脂で例示した樹脂の中から、1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
[添加剤]
本実施形態に係る電子写真感光体は、感光層、中間層及び保護層の少なくとも一層において、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、前記電荷発生剤、前記電荷輸送剤及び各結着樹脂の他、各種添加剤を含有してもよい。前記添加剤としては、例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー、界面活性剤、及びレベリング剤等が挙げられる。そして、前記酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びこれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が挙げられる。
又、単層型感光層や積層型感光層中の電荷発生層の感度を向上させるために、単層型感光層及び電荷発生層には、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の増感剤を含有させてもよい。
又、感光層の最外層の耐クラック性を向上させるために、感光層の最外層には、可塑剤として、例えば下記化学式(BP−1)〜(BP−20)で表されるビフェニル誘導体のうち、1種を単独で又は2種以上を組合せて含有させてもよい。
化学式(BP−16)において“n−C3H7”はn―プロピル基を表し、化学式(BP−17)及び(BP−18)において“i−C3H7”はi―プロピル基を表し、化学式(BP−19)及び(BP−20)において“t−Bu”はt−ブチル基を表す。
[電子写真感光体の製造方法]
単層型電子写真感光体の製造方法について説明する。
まず、前記感光層に含まれる各成分を溶媒に溶解又は分散させた感光層用塗布液を調製する。そして、前記導電性基体上に、この感光層用塗布液を塗布し、熱処理等で乾燥させて感光層を形成する。
前記感光層用塗布液の溶媒は、前記各成分を溶解又は分散させることができれば、特に限定されない。例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
前記感光層用塗布液は、前記各成分を混合・分散することにより調製される。例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散器等を用いて調製すること方法が挙げられる。
前記感光層用塗布液には、各成分の分散性、感光層表面の平滑性をよくするために、界面活性剤、レベリング剤等を添加してもよい。
前記塗布方法としては、感光層用塗布液を導電性基体上に均一に塗布できる方法であれば、特に限定されない。例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、バーコート法等が挙げられる。
前記乾燥方法としては、感光層用塗布液中の溶媒が蒸発して、感光層が形成される方法であれば、特に限定されない。例えば、高温乾燥機、減圧乾燥機等を用いて40〜150℃で3〜120分間の条件で熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。
尚、感光層の形成に先立ち、導電性基体上に中間層としての下引き層を形成してもよい。又、感光層の形成後に、当該感光層上に保護層を形成してもよい。
前記単層型電子写真感光体において、前記電荷発生剤、前記電荷輸送剤、及び前記結着樹脂(最外層用結着樹脂)の含有量は、適宜選定され、特に限定されない。例えば、前記電荷発生剤の含有量は、最外層用結着樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部であることが好ましく、0.5〜30質量部であることがより好ましい。前記電子輸送剤の含有量は、最外層用用結着樹脂100質量部に対して5〜50質量部であることが好ましく、10〜40質量部であることがより好ましい。又、前記正孔輸送剤の含有量は、最外層用結着樹脂100質量部に対して5〜500質量部であることが好ましく、25〜200質量部であることがより好ましい。
前記単層型電子写真感光体において、感光層の厚さは、感光層として充分に作用することができれば、特に限定されない。例えば、5〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることがより好ましい。
次に、積層型電子写真感光体の製造方法について説明する。
まず、前記電荷発生層に含まれる各成分を溶媒に溶解又は分散させた電荷発生層用塗布液を調製する。そして、前記導電性基体上に、この電荷発生層用塗布液を塗布し、熱処理等で乾燥させて電荷発生層を形成する。
前記電荷発生層用塗布液の溶媒は、前記各成分を溶解又は分散させることができれば、特に限定されない。例えば、前記感光層用塗布液の溶媒で例示した溶媒の中から、1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
前記電荷発生層用塗布液は、前記各成分を混合・分散することにより調製される。例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散器等を用いて調製すること方法が挙げられる。
前記電荷発生層用塗布液には、各成分の分散性、電荷発生層表面の平滑性をよくするために、界面活性剤、レベリング剤等を添加してもよい。
次に、前記電荷輸送層に含まれる各成分を溶媒に溶解又は分散させた電荷輸送層用塗布液を調製する。そして、前記電荷発生層の上に、この電荷輸送層用塗布液を塗布し、熱処理等で乾燥させて電荷輸送層を形成する。
前記電荷輸送層用塗布液の溶媒としては、電荷発生層用塗布液の溶媒で例示した溶媒の中から、1種を単独で又は2種以上を組合せ用いることができる。
電荷発生層及び電荷輸送層を形成する場合の塗布方法及び乾燥方法は、前記単層型感光層を形成する場合と同様である。
尚、電荷発生層の形成に先立ち、導電性基体上に中間層としての下引き層を形成してもよい。又、電荷輸送層の形成前に、電荷発生層上に中間層を形成してもよい。そして、電荷輸送層の形成後に、電荷輸送層上に保護層を形成してもよい。
前記積層型電子写真感光体において、前記電荷発生剤、前記電荷輸送剤、及び前記各結着樹脂の含有量は、適宜選定され、特に限定されない。例えば、前記電荷発生剤の含有量は、電荷発生層用結着樹脂100質量部に対して5〜1000質量部であることが好ましく、30〜500質量部であることがより好ましい。そして、電荷発生層に電子輸送剤を含有させる場合は、電子輸送剤の含有量は、電荷発生層用結着樹脂100質量部に対して0.5〜50質量部であることが好ましく、1〜40質量部であることがより好ましい。又、前記電荷輸送剤の含有量は、前記結着樹脂(最外層用結着樹脂)100質量部に対して10〜50質量部であることが好ましく、20〜40質量部であることがより好ましい。
前記積層型電子写真感光体において、電荷発生層の厚さは、電荷発生層として充分に作用することができれば、特に限定されない。例えば、0.01〜5μmであることが好ましく、0.1〜3μmであることがより好ましい。又、電荷輸送層の厚さは、電荷輸送層として充分に作用することができれば、特に限定されない。例えば、2〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましい。
前記電子写真感光体は、例えば、後述の、接触帯電方式の帯電器を備える画像形成装置の像担持体として用いることが好ましい。そうすることによって、接触帯電方式の帯電器を備えた画像形成装置であって、その画像形成装置の像担持体として有機感光体を用いた場合であっても、耐久性の充分に高い画像形成装置を提供することができる。具体的には、像担持体である前記電子写真感光体の感光層の最外層における摩耗量が充分に低く抑制された画像形成装置を提供することができる。
[画像形成装置]
本実施形態に係る画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体の表面を帯電させる帯電器と、前記帯電器によって帯電された前記像担持体の表面を露光して当該表面に静電潜像を形成する露光器と、前記静電潜像をトナー像として現像する現像器と、前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写するための転写器とを備え、前記像担持体が前記電子写真感光体の画像形成装置である。即ち、本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真方式の画像形成装置であって、前記実施形態に係る電子写真感光体を電子写真感光体として用いるものであれば、特に限定されない。
本実施形態に係る画像形成装置としては、本実施形態に係る電子写真感光体の優れた耐摩耗性を発揮できる点から、接触帯電方式の帯電器を備えた画像形成装置が好ましい。
又、複数色のトナーを用いるタンデム型のカラー画像形成装置が好ましい。より具体的には、各表面上にそれぞれ異なった各色のトナーによるトナー像を形成させるために、所定方向に並設された複数の像担持体と、各像担持体に対向して配置され、表面にトナーを担持して搬送し、搬送されたトナーを前記各像担持体の表面にそれぞれ供給する現像ローラを備えた複数の現像装置とを備えた画像形成装置であり、前記像担持体として前記実施形態に係る電子写真感光体を用いる画像形成装置である。
以下、接触帯電方式のタンデム型カラープリンターを本実施形態に係る画像形成装置の一例として、図2を用いて説明する。
図2は、前記実施形態に係る電子写真感光体を備えた画像形成装置の構成を示す概略図である。カラープリンター1は、箱型の機器本体1aを有している。この機器本体1a内には、用紙Pを給紙する給紙部2と、この給紙部2から給紙された用紙Pを搬送しながら当該用紙Pに画像データ等に基づくトナー像を転写する画像形成部3と、この画像形成部3で用紙P上に転写された未定着トナー像を用紙Pに定着する定着処理を施す定着部4とが設けられている。さらに、前記機器本体1aの上面には、前記定着部4で定着処理の施された用紙Pが排紙される排紙部5が設けられている。
前記給紙部2は、給紙カセット121、ピックアップローラ122、給紙ローラ123,124,125、及びレジストローラ126を備えている。給紙カセット121は、機器本体1aから挿脱可能に設けられ、各サイズの用紙Pを貯留する。ピックアップローラ122は、給紙カセット121の図2に示す左上方位置に設けられ、給紙カセット121に貯留されている用紙Pを1枚ずつ取り出す。給紙ローラ123,124,125は、ピックアップローラ122によって取り出された用紙Pを用紙搬送路に送り出す。レジストローラ126は、給紙ローラ123,124,125によって用紙搬送路に送り出された用紙Pを一時待機させた後、所定のタイミングで画像形成部3に供給する。
又、給紙部2は、機器本体1aの図2中の左側面に取り付けられる手差しトレイ(不図示)とピックアップローラ127とをさらに備えている。このピックアップローラ127は、手差しトレイに載置された用紙Pを取り出す。ピックアップローラ127によって取り出された用紙Pは、給紙ローラ123,125によって用紙搬送路に送り出され、レジストローラ126によって、所定のタイミングで画像形成部3に供給される。
前記画像形成部3は、画像形成ユニット7と、この画像形成ユニット7によってその表面(接触面)にコンピュータ等から電送された画像データに基づくトナー像が1次転写される中間転写ベルト31と、この中間転写ベルト31上のトナー像を給紙カセット121から送り込まれた用紙Pに2次転写させるための2次転写ローラ32とを備えている。
前記画像形成ユニット7は、上流側(図2では右側)から下流側に向けて順次配設されたブラック用ユニット7Kと、イエロー用ユニット7Yと、シアン用ユニット7Cと、マゼンタ用ユニット7Mとを備えている。各ユニット7K,7Y,7C及び7Mは、それぞれの中央位置に像担持体としての感光体ドラム37が矢符(時計回り)方向に回転可能に配置されている。そして、各感光体ドラム37の周囲には、帯電器39、露光装置38、現像装置71、不図示のクリーニング装置及び除電手段としての除電器等が、回転方向上流側から順に各々配置されている。尚、前記感光体ドラム37としては、前記電子写真感光体を用いる。
ここで、本実施形態の画像形成装置では、帯電器39として接触帯電方式の帯電器を用いているが、矢符方向に回転されている感光体ドラム37の周面を均一に帯電させるものであれば、非接触帯電方式の帯電器を用いてもよい。接触帯電方式の帯電器39としては、例えば、帯電ローラ及び帯電ブラシ等が感光体ドラム37に接触したまま、前記感光体ドラム37の周面(表面)を帯電させる装置、即ち、接触方式の帯電ローラ及び帯電ブラシ等を備えた帯電器等が挙げられる。
前記接触方式の帯電ローラとしては、例えば、少なくとも表面部が樹脂で構成され、感光体ドラム37と接触したまま、前記感光体ドラム37の回転に従属して回転するローラ等が挙げられる。より具体的には、例えば、回転可能に軸支された芯金と、前記芯金上に形成された樹脂層と、前記芯金に電圧を印加する電圧印加手段とを備えたもの等が挙げられる。このような帯電ローラを備えた帯電器は、前記電圧印加手段によって、前記芯金に電圧を印加することによって、前記樹脂層を介して接触する感光体ドラム37の表面を帯電させることができる。
このような接触方式の帯電ローラを備える帯電器は、像担持体として有機感光体を用いた場合、最外層の摩耗量が大きくなる傾向があったが、最外層に前記最外層用樹脂を含む前記電子写真感光体を前記像担持体として用いた場合、最外層の摩耗量が少ない等の耐久性の高いものが得られる。このことから、有機感光体としての利点である製造が容易であるとともに、感光層を構成する有機材料の選択肢が多様で構造設計の自由度が高いという利点を活かしつつ、摩耗量が少ない等の耐久性の高い感光体が得られる点から好ましい。
又、前記帯電ローラの樹脂層を構成する樹脂は特に限定されないが、例えば、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン変性樹脂等が挙げられる。この樹脂層は無機充填材を含有してもよい。
又、前記電圧印加手段で印加する電圧は、直流電圧のみであることが好ましい。そうすることによって、最外層に前記最外層用樹脂を含む前記電子写真感光体を前記像担持体として用いた場合、最外層の摩耗量をより少なくすることができる。具体的には、交流電圧や直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧を、帯電ローラに印加した場合より、前記帯電ローラに直流電圧のみを印加した場合のほうが、感光層の最表層の摩耗量を少なくすることができる。
又、交流電圧を印加すると、帯電による像担持体の表面(周面)の電位を均一化することができる傾向があるが、接触帯電方式の帯電器を備えた画像形成装置では、直流電圧のみを印加しても均一に帯電できると考えられる。そのため、前記帯電ローラに直流電圧のみを印加することによって、好適な画像を形成することができ、さらに、感光層の摩耗量を低減させることができると考えられる。
露光装置38は、いわゆるレーザー走査ユニットであり、帯電器39によって均一に帯電された感光体ドラム37の周面に、上位装置であるパーソナルコンピュータ(PC)から入力された画像データに基づくレーザー光を照射し、感光体ドラム37上に画像データに基づく静電潜像を形成する。現像装置71は、静電潜像が形成された感光体ドラム37の周面にトナーを供給することで、画像データに基づくトナー像を形成させる。そして、このトナー像が中間転写ベルト31に1次転写される。クリーニング装置は、中間転写ベルト31へのトナー像の1次転写が終了した後、感光体ドラム37の周面に残留しているトナーを清掃する。除電器は、1次転写が終了した後、感光体ドラム37の周面を除電する。クリーニング装置及び除電器によって清浄化処理された感光体ドラム37の周面は、新たな帯電処理のために帯電器39へ向かい、新たな帯電処理が行われる。
中間転写ベルト31は、無端状のベルト状回転体であって、表面(接触面)側が各感光体ドラム37の周面にそれぞれ当接するように駆動ローラ33、従動ローラ34、バックアップローラ35、及び1次転写ローラ36等の複数のローラに架け渡されている。又、中間転写ベルト31は、各感光体ドラム37と対向配置された1次転写ローラ36によって感光体ドラム37に押圧された状態で、前記複数のローラによって無端回転するように構成されている。駆動ローラ33は、ステッピングモータ等の駆動源によって回転駆動し、中間転写ベルト31を無端回転させるための駆動力を与える。従動ローラ34、バックアップローラ35、及び1次転写ローラ36は、回転自在に設けられ、駆動ローラ33による中間転写ベルト31の無端回転に伴って従動回転する。これらのローラ34,35,36は、駆動ローラ33の主動回転に応じて中間転写ベルト31を介して従動回転するとともに、中間転写ベルト31を支持する。
1次転写ローラ36は、1次転写バイアス(トナーの帯電極性とは逆極性)を中間転写ベルト31に印加する。そうすることによって、各感光体ドラム37上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム37と1次転写ローラ36との間で、駆動ローラ33の駆動により矢符(反時計回り)方向に周回する中間転写ベルト31に重ね塗り状態で順次転写(1次転写)される。
2次転写ローラ32は、トナー像と逆極性の2次転写バイアスを用紙Pに印加する。そうすることによって、中間転写ベルト31上に1次転写されたトナー像は、2次転写ローラ32とバックアップローラ35との間で用紙Pに転写され、これによって、用紙Pにカラーの転写画像(未定着トナー像)が転写される。
前記定着部4は、画像形成部3で用紙Pに転写された転写画像に定着処理を施すものであり、通電発熱体により加熱される加熱ローラ41と、この加熱ローラ41に対向配置され、周面が加熱ローラ41の周面に押圧当接される加圧ローラ42とを備えている。
そして、前記画像形成部3で2次転写ローラ32により用紙Pに転写された転写画像は、当該用紙Pが加熱ローラ41と加圧ローラ42との間を通過する際の加熱による定着処理で用紙Pに定着される。そして、定着処理の施された用紙Pは、排紙部5へ排紙されるようになっている。又、本実施形態の画像形成装置(カラープリンター1)には、定着部4と排紙部5との間の適所に搬送ローラ6が配設されている。
排紙部5は、カラープリンター1の機器本体1aの頂部が凹没されることによって形成され、この凹没した凹部の底部に排紙された用紙Pを受ける排紙トレイ51が形成されている。
本実施形態の画像形成装置(カラープリンター1)は、以上のような画像形成動作によって、用紙P上に画像形成を行う。本実施形態の画像形成装置では、前記像担持体として前記実施形態に係る電子写真感光体が用いられるので、特に、接触方式の帯電器を備えた場合には、最外層の摩耗量を顕著に抑制することができ、長期間に亘って像担持体を取替えなくとも好適な画像を形成することができる。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。尚、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
[実施例1]
(結着樹脂)
実施例1では、下記式(I-1)で表される繰返し構造単位を10mol%及び下記式(II-1)で表される繰返し構造単位を90mol%含有する、式(I-1)で表される繰返し構造単位と式(II-1)で表される繰返し構造単位とからなるポリカーボネート樹脂(以下、「Resin−1」ともいう。)を結着樹脂として用いた。Resin−1は、式(I-1)で表される繰返し構造単位と式(II-1)で表される繰返し構造単位とがランダムに共重合されたランダム共重合体である。粘度法で測定したResin−1の粘度平均分子量は、51000であった。
(電子写真感光体の製造)
常温常湿環境(温度20℃、湿度60%)において、以下のようにして負帯電積層型電子写真感光体を製造した。
まず、アルミナとシリカで表面処理した後に湿式分散しながらメチルハイドロジェンポリシロキサンで表面処理した酸化チタン(テイカ株式会社製、品番SMT−A、数平均一次粒子径10nm)2質量部と、ナイロン6−66−610−12四元共重合ポリアミド樹脂(東レ株式会社製、品番アミラン(登録商標)CM8000)1質量部とを、メタノール10質量部、ブタノール1質量部及びトルエン1質量部からなる分散媒に投入した。そして、ビーズミルを用いて5時間混合して分散させた。そうすることによって、下引き層用塗布液を調製した。
得られた下引き層用塗布液を5μmのフィルタでろ過した後、導電性基体であるアルミニウム製のドラム状基体(直径30mm、全長246mm)の表面にディップコート法にて塗布し、さらに熱処理(130℃にて30分間保持)を行った。そうすることによって、ドラム状基体の表面に膜厚2μmの下引き層を形成した。
次に、電荷発生剤として上記化学式(3)で表されるチタニルフタロシアニン1.5質量部と、電荷発生層用結着樹脂としてポリビニルブチラール樹脂(電気化学工業株式会社製、品番デンカブチラール#6000C)1質量部とを、プロピレングリコールモノメチルエーテル40質量部及びテトラヒドロフラン40質量部からなる分散媒に投入した。そして、ビーズミルを用いて2時間混合して分散させた。そうすることによって、電荷発生層用塗布液を調製した。
得られた電荷発生層用塗布液を3μmのフィルタでろ過した後、上記下引き層の表面にディップコート法にて塗布し、さらに熱処理(50℃にて5分間保持)を行った。そうすることによって、下引き層の表面に膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
次に、電荷輸送剤として正孔輸送剤である上記化学式(1−1)で表されるスチリルアミン系化合物(以下、「CTM−1」ともいう。)40質量部と、結着樹脂としてポリカーボネート樹脂(Resin−1)100質量部と、添加剤として酸化防止剤であるヒンダードフェノール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、品番イルガノックス1010)8質量部とを、テトラヒドロフラン350質量部及びトルエン350部からなる混合溶媒(以下、「テトラヒドロフラン・トルエン混合溶媒」ともいう。)に加えて混合し溶解させた。そうすることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。
得られた電荷輸送層用塗布液を3μmのフィルタでろ過した後、上記電荷発生層の表面にディップコート法にて塗布し、さらに熱処理(120℃にて40分間保持)を行った。そうすることによって、電荷発生層の表面に膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
このようにして、最表層に厚さ20μmの電荷輸送層を備えた負帯電積層型電子写真感光体を製造した。
[実施例2]
実施例2では、上記式(I-1)で表される繰返し構造単位を1mol%及び上記式(II-1)で表される繰返し構造単位を99mol%含有する、式(I-1)で表される繰返し構造単位と式(II-1)で表される繰返し構造単位とからなるポリカーボネート樹脂(以下、「Resin−2」ともいう。)を結着樹脂として用いた。Resin−2は、式(I-1)で表される繰返し構造単位と式(II-1)で表される繰返し構造単位とがランダムに共重合されたランダム共重合体である。粘度法で測定したResin−2の粘度平均分子量は、47500であった。
電荷輸送層用塗布液の調製に際して、配合する結着樹脂としてポリカーボネート樹脂(Resin−1)に代えてポリカーボネート樹脂(Resin−2)を同質量部用いたほかは、実施例1と同様にして積層型電子写真感光体を製造した。
[実施例3]
実施例3では、上記式(I-1)で表される繰返し構造単位を30mol%及び上記式(II-1)で表される繰返し構造単位を70mol%含有する、式(I-1)で表される繰返し構造単位と式(II-1)で表される繰返し構造単位とからなるポリカーボネート樹脂(以下、「Resin−3」ともいう。)を結着樹脂として用いた。Resin−3は、式(I-1)で表される繰返し構造単位と式(II-2)で表される繰返し構造単位とがランダムに共重合されたランダム共重合体である。粘度法で測定したResin−3の粘度平均分子量は、54000であった。
電荷輸送層用塗布液の調製に際して、配合する結着樹脂としてポリカーボネート樹脂(Resin−1)に代えてポリカーボネート樹脂(Resin−3)を同質量部用いたほかは、実施例1と同様にして積層型電子写真感光体を製造した。
[実施例4]
実施例4では、下記式(I-2)で表される繰返し構造単位を10mol%及び上記式(II-1)で表される繰返し構造単位を90mol%含有する、式(I-2)で表される繰返し構造単位と式(II-1)で表される繰返し構造単位とからなるポリカーボネート樹脂(以下、「Resin−4」ともいう。)を結着樹脂として用いた。Resin−4は、式(I-2)で表される繰返し構造単位と式(II-1)で表される繰返し構造単位とがランダムに共重合されたランダム共重合体である。粘度法で測定したResin−4の粘度平均分子量は、50500であった。
電荷輸送層用塗布液の調製に際して、配合する結着樹脂としてポリカーボネート樹脂(Resin−1)に代えてポリカーボネート樹脂(Resin−4)を同質量部用いたほかは、実施例1と同様にして積層型電子写真感光体を製造した。
[実施例5]
実施例5では、下記式(I-3)で表される繰返し構造単位を10mol%及び上記式(II-1)で表される繰返し構造単位を90mol%含有する、式(I-3)で表される繰返し構造単位と式(II-1)で表される繰返し構造単位とからなるポリカーボネート樹脂(以下、「Resin−5」ともいう。)を結着樹脂として用いた。Resin−5は、式(I-3)で表される繰返し構造単位と式(II-1)で表される繰返し構造単位とがランダムに共重合されたランダム共重合体である。粘度法で測定したResin−5の粘度平均分子量は、50500であった。
電荷輸送層用塗布液の調製に際して、配合する結着樹脂としてポリカーボネート樹脂(Resin−1)に代えてポリカーボネート樹脂(Resin−5)を同質量部用いたほかは、実施例1と同様にして積層型電子写真感光体を製造した。
[実施例6]
実施例6では、上記式(I-1)で表される繰返し構造単位を10mol%及び下記式(II-2)で表される繰返し構造単位を90mol%含有する、式(I-1)で表される繰返し構造単位と式(II-2)で表される繰返し構造単位とからなるポリカーボネート樹脂(以下、「Resin−6」ともいう。)を結着樹脂として用いた。Resin−6は、式(I-1)で表される繰返し構造単位と式(II-2)で表される繰返し構造単位とがランダムに共重合されたランダム共重合体である。粘度法で測定したResin−6の粘度平均分子量は、49500であった。
電荷輸送層用塗布液の調製に際して、配合する結着樹脂としてポリカーボネート樹脂(Resin−1)に代えてポリカーボネート樹脂(Resin−6)を同質量部用いたほかは、実施例1と同様にして積層型電子写真感光体を製造した。
[実施例7]
実施例7では、下記式(I-4)で表される繰返し構造単位を10mol%及び上記式(II-1)で表される繰返し構造単位を90mol%含有する、式(I-4)で表される繰返し構造単位と式(II-1)で表される繰返し構造単位とからなるポリカーボネート樹脂(以下、「Resin−7」ともいう。)を結着樹脂として用いた。Resin−7は、式(I-4)で表される繰返し構造単位と式(II-1)で表される繰返し構造単位とがランダムに共重合されたランダム共重合体である。粘度法で測定したResin−7の粘度平均分子量は、50500であった。
電荷輸送層用塗布液の調製に際して、配合する結着樹脂としてポリカーボネート樹脂(Resin−1)に代えてポリカーボネート樹脂(Resin−7)を同質量部用いたほかは、実施例1と同様にして積層型電子写真感光体を製造した。
尚、Resin−7は、Resin−1、Resin−4及びResin−5と比べて、電荷輸送層用塗布液の溶媒に溶け難かったので、実施例7の電荷輸送層用塗布液の調製時間は、実施例1、実施例4及び実施例5よりも長かった。
[実施例8]
電荷輸送層用塗布液の調製に際して、電荷輸送剤の配合量を60質量部に変更したほかは、実施例1と同様にして積層型電子写真感光体を製造した。
[実施例9]
電荷輸送層用塗布液の調製に際して、配合する電荷輸送剤として、上記化学式(1−1)で表されるスチリルアミン系化合物(CTM−1)に代えて正孔輸送剤である上記化学式(1−2)で表されるスチリルアミン系化合物(以下、「CTM−2」ともいう。)を同質量部用いたほかは、実施例1と同様にして積層型電子写真感光体を製造した。
[実施例10]
電荷輸送層用塗布液の調製に際して、配合する電荷輸送剤として、上記化学式(1−1)で表されるスチリルアミン系化合物(CTM−1)に代えて正孔輸送剤である上記化学式(1−3)で表されるスチリルアミン系化合物(以下、「CTM−3」ともいう。)を同質量部用いたほかは、実施例1と同様にして積層型電子写真感光体を製造した。
[実施例11]
電荷輸送層用塗布液の調製に際して、配合する電荷輸送剤として、上記化学式(1−1)で表されるスチリルアミン系化合物(CTM−1)に代えて正孔輸送剤である上記化学式(1−4)で表されるスチリルアミン系化合物(以下、「CTM−4」ともいう。)を同質量部用いたほかは、実施例1と同様にして積層型電子写真感光体を製造した。
[実施例12]
電荷輸送層用塗布液の調製に際して、配合する電荷輸送剤として、上記化学式(1−1)で表されるスチリルアミン系化合物(CTM−1)に代えて正孔輸送剤である上記化学式(2−1)で表されるスチリルアミン系化合物(以下、「CTM−5」ともいう。)を同質量部用いたほかは、実施例1と同様にして積層型電子写真感光体を製造した。
[実施例13]
電荷輸送層用塗布液の調製に際して、配合する電荷輸送剤として、上記化学式(1−1)で表されるスチリルアミン系化合物(CTM−1)に代えて正孔輸送剤である上記化学式(2−2)で表されるスチリルアミン系化合物(以下、「CTM−6」ともいう。)を同質量部用いたほかは、実施例1と同様にして積層型電子写真感光体を製造した。
[実施例14]
電荷輸送層用塗布液の調製に際して、配合する電荷輸送剤として、上記化学式(1−1)で表されるスチリルアミン系化合物(CTM−1)に代えて正孔輸送剤である上記化学式(2−3)で表されるスチリルアミン系化合物(以下、「CTM−7」ともいう。)を同質量部用いたほかは、実施例1と同様にして積層型電子写真感光体を製造した。
[実施例15]
電荷輸送層用塗布液の調製に際して、配合する電荷輸送剤として、上記化学式(1−1)で表されるスチリルアミン系化合物(CTM−1)に代えて正孔輸送剤である上記化学式(4)で表されるベンジジン系化合物(以下、「CTM−8」ともいう。)を同質量部用いたほかは、実施例1と同様にして積層型電子写真感光体を製造した。
[比較例1]
比較例1では、上記式(II-1)で表される繰返し構造単位のみからなるポリカーボネート樹脂(以下、「Resin−8」ともいう。)を結着樹脂として用いた。Resin−8は、式(II-1)で表される繰返し構造単位同士が重合した単独重合体である。粘度法で測定したResin−8の粘度平均分子量は、46500であった。
電荷輸送層用塗布液の調製に際して、配合する結着樹脂としてポリカーボネート樹脂(Resin−1)に代えてポリカーボネート樹脂(Resin−8)を同質量部用いたほかは、実施例1と同様にして積層型電子写真感光体を製造した。
[比較例2]
比較例2では、上記式(I-1)で表される繰返し構造単位を35mol%及び上記式(II-1)で表される繰返し構造単位を65mol%含有する、式(I-1)で表される繰返し構造単位と式(II-1)で表される繰返し構造単位とからなるポリカーボネート樹脂(以下、「Resin−9」ともいう。)を結着樹脂として用いた。Resin−9は、式(I-1)で表される繰返し構造単位と式(II-1)で表される繰返し構造単位とがランダムに共重合されたランダム共重合体である。粘度法で測定したResin−9の粘度平均分子量は、48000であった。
電荷輸送層用塗布液の調製に際して、配合する結着樹脂としてポリカーボネート樹脂(Resin−1)に代えてポリカーボネート樹脂(Resin−9)を同質量部用いたほかは、実施例1と同様の溶解操作を行った。しかし、Resin−9がテトラヒドロフラン・トルエン混合溶媒に溶解しなかったので、積層型電子写真感光体の製造を中止した。
[電子写真感光体の性能評価]
上記実施例1〜15及び比較例1で得られた電子写真感光体について、それぞれ下記の摩耗試験及び電気特性試験を行い、電子写真感光体の耐摩耗性及び電気特性(光感度)を評価した。
(摩耗試験)
得られた電子写真感光体を負帯電反転現像方式の市販のプリンター(株式会社沖データ製、品番C5900dn)に搭載して、常温常湿環境(温度20℃、湿度60%)下にてA4サイズの用紙にトナーを付着させずに白紙のまま1万枚連続して排出した。印刷前後の電荷輸送層の膜厚を渦電流式膜厚計でそれぞれ測定した。これらの差(連続印刷を行う前の電荷輸送層の膜厚−連続印刷終了後の電荷輸送層の膜厚)を摩耗量(印刷によって削られた膜厚)として算出し、摩耗量が0.7μm未満の場合を合格、0.7μm以上の場合を不合格として、耐摩耗性を評価した。
(電気特性試験)
得られた電子写真感光体を上記市販プリンター(C5900dn)に搭載して、常温常湿環境(温度20℃、湿度60%)下で、ベタ画像を形成した時点での現像位置での帯電電位(V0)及び明電位(VL)を測定した。
上記実施例1〜15並びに比較例1で得られた電子写真感光体についての各試験結果を、電荷輸送層用塗布液に配合された結着樹脂及び電荷輸送剤の種類、配合量及びこの結着樹脂に対する電荷輸送剤の質量比率にとともに表1に示す。
表1より明らかなように、感光層の最外層の一部を構成する結着樹脂として、式(I)で表される繰返し構造単位及び式(II)で表される繰返し構造単位からなるとともに、式(I)で表される繰返し構造単位を1〜30mol%含有するポリカーボネート樹脂を用いた場合(実施例1〜15)には、式(II)で表される繰返し構造単位のみからなるポリカーボネート樹脂を用いた場合(比較例1)と比べて、耐摩耗性に優れた電子写真感光体が得られた。
そして、正孔輸送剤として、一般式(1)又は一般式(2)で表されるスチリルアミン系化合物を用いた場合(実施例1、9〜14)には、ベンジジン系化合物を用いた場合(実施例15)と比べて、光感度(電気特性)に優れた電子写真感光体が得られた。