以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
<冷蔵庫の全体構成>
図1は本発明に係る実施形態の冷蔵庫1を斜め前方から見た斜視図であり、図2は図1のA−A線断面図である。
冷蔵庫1は、食品等の貯蔵物を冷蔵又は冷凍して収容する冷蔵庫本体1Hと、冷蔵庫本体1Hの前面開口1H1(図2参照)を開閉する複数のドア5,6(6a,6b,6c),7を備えている。
冷蔵庫本体1Hは、内部に上から冷蔵室2と、製氷室3a,第一冷凍室3b,第二冷凍室3cを含む冷凍室3と、野菜室4とを有している。これらの貯蔵室が開口される前面開口1H1に、それぞれドアが設けられている。
また、図2に示すように、冷蔵室2と冷凍室3の間、及び冷凍室3と野菜室4の間は、断熱仕切り壁60,60でそれぞれ断熱区画されている。
冷蔵室扉5は、冷蔵室2を開閉する扉であり、観音開き式の左右二枚の扉より構成されている。冷凍室扉6は、冷凍室3を開閉する扉であり、引き出し式の独立した三枚の扉、すなわち、製氷室扉6a,第一冷凍室扉6b,第二冷凍室扉6cより構成されている。最下段の野菜室扉7は野菜室4を開閉する扉であり、引き出し式の扉である。
なお、引き出し式の扉は、貯蔵物が収容される収容ケースとともに引き出される扉である。
図2に示す冷却器室9内には、冷却器8が設置されており、冷却器8,圧縮機10,凝縮器,キャピラリチューブ等で冷凍サイクルを構成している。
ここで、凝縮器として、冷媒が通流する放熱パイプ20を冷蔵庫本体1Hの外郭を構成する側面板11及び背面板12の内側(発泡断熱材17の側)に取り付け(図4参照)、放熱している。
冷媒としてはイソブタン(R600a)が用いられる。なお、冷媒として、他の冷媒を用いてもよいが、イソブタンは、廃棄した場合にオゾン層を破壊しない、温暖化係数が低いなどの利点がある。
冷凍サイクルの冷却器8で冷却された冷気は、送風機13により、冷蔵室2,冷凍室3,野菜室4に強制循環させる。そして、各貯蔵室への冷気量は、各風路に設けた電動式の開閉ダンパで制御される。
冷蔵庫1の庫内温度や運転の各種制御は、冷蔵庫本体1Hの上部後方に設けられた制御基板14(制御装置)によって制御されている。
次に、冷蔵庫箱体15内への発泡断熱材17(ウレタンフォーム)の発泡方法について説明する。
図2に示すように、冷蔵庫本体1Hを構成する冷蔵庫箱体15は、側面板11(図1参照),背面板12等を有する外郭をなす外箱19と、食品等の貯蔵物を入れる空間を形成する内箱18とを備える。
図3は、冷蔵庫1の発泡断熱材17の発泡方法を示す斜視図である。図3に示すように、冷蔵庫箱体15内、すなわち、外箱19と内箱18との間の空間へのウレタンフォーム原液を注入する場合、冷蔵庫箱体15の背面板12が上に位置するよう冷蔵庫箱体15を発泡装置(図示せず)内にセットする。そして、背面板12に設けた複数の注入口16(16a,16b)からウレタンフォーム原液を注入する。
なお、ウレタンフォーム原液は、発泡した後に硬化して発泡断熱材17となるものであり、ポリエーテルポリオールに、シクロペンタン,水等の発泡剤、更には触媒,整泡剤等の助剤をプレミックスした液と、イソシアネート液とを混合した液体である。
注入されたウレタンフォーム原液は、冷蔵庫箱体15の外箱19と内箱18との間の開口縁側全体に回り込み、その後、背面板12側に向けて発泡を開始し、内箱18と外箱19とで構成される冷蔵庫箱体15の空間を埋めるように充填される。
この際、後述する真空断熱材21は、予め外箱19の内面側にホットメルトやシール材等により仮固定しており、発泡断熱材17の発泡充填により冷蔵庫箱体15の外箱19の内側(発泡断熱材17側)に固着される。
次に、冷蔵庫箱体15について説明する。冷蔵庫箱体15は、上述したように、各貯蔵室を区画して構成する内箱18と、外郭を構成する側面板11,背面板12を有する外箱19との間の空間に発泡断熱材17を発泡充填させて構成される。
図4のように、外箱19を構成する側面板11,背面板12は0.4〜0.5mm厚程度の板厚が薄い鉄板で構成されている。
側面板11,背面板12には、冷凍サイクルの凝縮器の役割を果たす放熱パイプ20がW1の間隔(ピッチ)でアルミニウム製のテープ等で固定されている。放熱パイプ20の直径は4.0〜5.0mm程度である。
冷蔵庫箱体15の前面開口部1H1側には、内箱18を外箱19に係止する係止部のR曲げ部19a(内箱係止部)が外箱19に形成されている。
外箱19のR曲げ部19aが、内箱18の被係止部18aを、弾性変形してフランジ部19bとで挟着することにより、外箱19と内箱18とが取り付けられている。
外箱19のR曲げ部19a近くの放熱パイプ20は、R曲げ部19aを保温しており、R曲げ部19aに続くフランジ部19b近傍が、冷却運転時に挟着する内箱18の被係止部18aを介して冷やされ露点温度以下となり、結露するのを防止している。
図4及び図5に示すように、真空断熱材21,31は、予め側面板11,背面板12等にアルミニウム製のテープ等をもって貼り付けられた、例えば連続する4本の放熱パイプ20(直径4.0mm)を逃げるための凹部22,端部凹部22a,22b,凹部32,端部凹部32aをそれぞれ有している。
真空断熱材21,31は、それぞれ側面板11,背面板12にW1の間隔(ピッチ)をもって取り付けられた放熱パイプ20を凹部22,端部凹部22a,22b,凹部32,端部凹部32a内に収納した状態で、ホットメルトや粘着テープ等を用いて側面板11,背面板12に貼り付けられている。
発泡断熱材17は、側面板11又は背面板12へ放熱パイプ20及び真空断熱材21,31を取り付けた後、外箱19と内箱18との間に形成される空間に充填される。そのため、側面板11又は背面板12への真空断熱材21,31の取り付けは、発泡断熱材17が、側面板11と真空断熱材21との間、及び、背面板12と真空断熱材31との間に侵入しないように固定する必要がある。
図5は、図1,図4に示す冷蔵庫1の側面板11に放熱パイプ20及び真空断熱材21を取り付けた状態を示す図であり、図5(a)は側面板11に取り付けた放熱パイプ20,真空断熱材21を冷蔵庫1の外側から見た正面図であり、図5(b)は(a)のC−C線断面図であり、図5(c)は(a)のD−D線断面図である。
真空断熱材21は、例えば直径4.0mmの銅パイプ等で作られる放熱パイプ20を収納するための凹部22と端部凹部22a,22bを有している。
凹部22と端部凹部22a,22bは、真空断熱材21の縦方向に複数列,中心線の間隔がW1寸法をもって形成されている。換言すると、真空断熱材21の中央側の凹部22と端部側の端部凹部22aとは、側面板11の内面11nに対してW1寸法が180〜220mmの間隔で取り付けられている放熱パイプ20を覆う構成である。
凹部22は、放熱パイプ20を覆う左右両側に立ち上がり壁部を有する凹んだ形状(凹形状)を有しており、その深さ寸法D1は約5mm、幅寸法L3は40〜70mmである。
すなわち、凹部22の幅寸法L3は、凹部22を形成する上での製造誤差,真空断熱材21を側面板11に取り付ける際の取り付け誤差や、放熱パイプ20が側面板11の平面上で多少曲がっていたり、放熱パイプ20の側面板11への取り付け誤差等があったりしても、放熱パイプ20を収納できる大きさとしている。
また、凹部22の深さ寸法D1は、真空断熱材21を側面板11に取り付ける際、放熱パイプ20が側面板11側に押し付けられ、側面板11に押し圧痕が生じたり、真空断熱材21の外包材24に損傷が生じたりしないように、放熱パイプ20の直径以上、例えば5.0mmに設計されている。
他方、図5(a)に示す真空断熱材21に並列で複数列形成された溝のうち、真空断熱材21の左右両端に沿って設けられた溝の端部凹部22aは、凹部22のように放熱パイプ20を囲むようにその左右両側に立ち上がり壁部を有する溝形状でなく、真空断熱材21の縁部に沿って設けられ、外方が開放された横断面L字状を成す凹んだ形状としている。
端部凹部22aの深さ寸法D1は、凹部22と同様に5.0mmであり、端部凹部22aの短手方向の幅寸法L4は、凹部22のL3寸法と同様に、40〜70mm前後である。
これは、真空断熱材21に複数列の凹部を形成する際、端部の凹部は、真空断熱材21の縁部に沿って、外方を開放した横断面L字状の形状の端部凹部22aの方が、単なる凹形状より形成し易いからである。また、外方が開放された端部凹部22aを用いることにより、放熱パイプ20を折り曲げる作業、放熱パイプ20を端部凹部22aに設置する作業、或いは機械室29(図2参照)側へ引き出す作業を行い易い。
更に、真空断熱材21の左右両端(左右両縁部)に沿って位置する凹部の形状を、端部凹部22aのように外方開放の構成としたことで、真空断熱材21を側面板11に貼り付ける時、R曲げ部19aに近づけて配置できることになる。
また、真空断熱材21の上下端部には、前記のように製造のし易さ及び放熱パイプ20の収納し易さを考慮して、端部凹部22bを有している。端部凹部22bは、凹部22のような放熱パイプ20を囲むようにその左右両側に立ち上がり壁部を有する形状でなく、真空断熱材21の縁部に沿って、外方が開放された横断面L字状を成す凹んだ形状としている。端部凹部22bは、真空断熱材21の長手方向の寸法L5が40〜80mm前後である。
すなわち、外方が開放された端部凹部22b内では、放熱パイプ20を外方に自由に動かして自由な経路で配置できる。例えば、図5(a)に示すようにU字状に配置することもできる。
<真空断熱材の構成>
次に、真空断熱材21の製造方法について、図6,図7を用いて説明する。図6は、真空断熱材21の芯材23を内袋に収納する製造工程を経時的に示す断面図であり、図7は、芯材23を外包材24に収納する製造工程を経時的に示す断面図である。なお、図6,図7における芯材23内の積層体25(符号25a,25b,25c,25d)の内部の横線は繊維の方向を示すものであり、そのピッチは厚みの変化を無視して示している。
真空断熱材21は、図7(c)に示すように、内部の芯材23と、熱溶着用のプラスチック層を有する金属蒸着ラミネートフィルム等から成る外側の外包材24とを有して構成される。
内部の芯材23は、無機繊維の積層体25(図6(a)では第一の積層体25a,第二の積層体25b,第三の積層体25c,第四の積層体25d)と積層体25を覆う内袋26とを有し構成されている。
積層体25は、一般にグラスウール,グラスファイバ,アルミナ繊維,シリカアルミナ繊維、或いは木綿等の天然繊維が用いられている。そして、積層体25を覆う内袋26は、厚さ20μmで柔軟性のあるポリエチレンフィルム等から構成されている。
内袋26に厚さ20μmの柔軟性のあるフィルムを用いる理由は、内袋26内を圧縮した時、このフィルムと積層体25の端部との間に、フィルムの柔軟性により、空間を作ることがないようにするためである。また、内袋26が柔軟性を有することで、外包材24の開口部の溶着部に、積層体25に混入する異物の大きさを吸収して内袋26が破けることなく、異物が外包材24から突出しないようにするためである。
芯材23を製造するに際しては、予め作られたロール状の無機繊維を定められた寸法の積層体25(第一の積層体25a,第二の積層体25b,第三の積層体25c,第四の積層体25d)にカットする。そして、カットされた積層体25を内袋26内に収納する(図6(b)参照)。そして、内袋26に収納された積層体25をプレス機27により圧縮するとともに、熱溶着機100を使って内袋26の開口部を熱溶着で密封することで、仮圧縮状態の芯材23が作られる(図6(c)参照)。
以下、真空断熱材21の製作工程を、図6,図7を用いて詳細に説明する。
先ず、図6(a)に示すように、原綿の無機繊維を乾燥後、所定の寸法の第一の積層体25a,第二の積層体25b,第三の積層体25c,第四の積層体25dに切断して、3段に積層する。
ここで、第一の積層体25a及び第二の積層体25bは、第三の積層体25cの上に間隔L1を空けて配置する。また、第三の積層体25cは、さらに第四の積層体25dの上に配置される。また、第一の積層体25aは、第三の積層体25cの一端部から間隔L2を空けて配置する。また、第二の積層体25bは、第三の積層体25cの他端部から間隔L3を空けて配置する。このL1,L2,L3寸法を調整することにより、端部凹部22a,22b及び凹部22の幅を調整できるものである。
つまり、第一の積層体25a,第二の積層体25bを所定の幅寸法で切断し、かつ、それぞれを所定の寸法の間隔L1,L2,L3を空けて第三の積層体25cの上に設置し、その後の工程(図6(b)〜図7(c))を経ることで、凹部22と端部凹部22aとが形成されることとなる。なお、真空断熱材21の端部凹部22bも同様に形成される。
なお、第一の積層体25aから第四の積層体25dは、それぞれ、例えばほぼ100mm厚であり、各積層体を重ねた状態で、全部で約300mmの厚さである。つまり、無機繊維の積層体25は、圧縮する前は約300mmの厚みを有している。
続いて、図6(b)に示すように、積層体25を、内袋26の開口部(図6(b)の右側)から、図6(b)の白抜き矢印のように収納する。このとき、積層体25はバインダ(硬化剤)を含んでいないので柔軟性を有しており、内袋26の形状に沿って変形し、角部は丸みを帯びた形状となる。この際、積層体25は押圧されてないので、未だ全体で約300mmの厚さがある。
次いで、図6(c)に示すように、内袋26に収納された積層体25を、所定の減圧下で、プレス機27で白抜き矢印のように圧縮し、厚さ約300mmであった積層体25を約10〜15mmの厚さまで圧縮する。つまり、芯材23はその厚み方向に元の厚さから、プレス機27をもって例えば25分の1位迄に圧縮し、その厚みが約10〜15mmとなる。なお、この際、ガス,水分等を吸着する吸着剤(図示せず)は予め積層体25内(内袋26内)に入れておく。
そして、内袋26の開口部を、溶着機100で熱溶着し密封する。この過程においても、積層体25は、内袋26の形状に沿って角部が丸みをもった形状の芯材23を構成する。そして、プレス機27を開放すると、芯材23の厚みは、10〜15mmから約30mmに復元する。
こうして製造した芯材23であれば、積層体25を仮圧縮状態で一時保管することが可能となり、保管中に積層体25が内袋26内で移動しない。また、内袋26の開口部は熱溶着されているので、内袋26内に外側から塵埃が侵入しない。
次に、図7(a)に示すように、真空断熱材21を覆う外包材24内に収納された芯材23は、図7(b)のプレス機127及び減圧装置を用いた圧縮及び減圧工程の前に、内袋26の一部が破られる。なお、内袋26が破れると、そこから空気が内袋26内に入り、芯材23の厚みが増加する。この状態で、図7(b)に示す真空チャンバ内の内袋26を含む積層体25を外包材24内で減圧、及び、所定厚さまでの圧縮がスムーズに行われる。
具体的には、図7(b)に示すように、内袋26内に収納された芯材23と芯材23を覆う外包材24とが、真空チャンバ内のプレス機127間に入れられ、形が崩れないようにプレス機127で約50mmの厚さに押圧されつつ、減圧され真空引きされる。
真空チャンバ内の外包材24の内部が真空状態になった時点において、溶着機100によって外包材24の耳部24aを溶着する。
この時、内袋26の耳部26aが外包材24の耳部24a内に重なり、耳部は4重構造になる。
ここで、外包材24はラミネート構造であり、その内側は熱溶着層のプラスチック層となっている。例えば、低密度ポリエチレンフィルム,鎖状低密度ポリエチレンフィルム,高密度ポリエチレンフィルム等の合成樹脂材で形成されている。そのため、内袋26のポリエチレンフィルムとの相性も良く、外包材24の耳部24aの4重部の熱溶着は可能となり、熱溶着された部分が一体化される場合もある。
従って、もし芯材23の積層体25の収納時に外包材24の開口部24c(図7(a)参照)に塵埃が付着しても、この開口部24cは内袋26があることより、塵埃等の異物が外包材24の表面に突出しないようにでき、外包材24の耳部24aの溶着及び密封を確実に行うことができる。
こうして、図7(b)の耳部24aが溶着された真空断熱材21を大気圧下におくと、厚さ約50mmの真空断熱材21に大気圧が加わり瞬間的に潰れ、間隔L1,L2,L3を設けた反対側に、それぞれ図7(c)に示す凹部22と端部凹部22aが形成された厚さ約15mmの真空断熱材21となる。
ここで、図7(b)の耳部24aが溶着された真空断熱材21を大気圧においた場合、第一の積層体25a,第二の積層体25bと内袋26との摩擦力、及び内袋26と外包材24との摩擦力は、第一の積層体25a,第二の積層体25bに対向する箇所で部分的に働くことから、過大なものとなる。
これに対して、間隔を設けていない反対側の第四の積層体25dと内袋26との摩擦力、及び内袋26と外包材24との摩擦力は、間隙がないことから、均等に摩擦力が働く。
そのため、第四の積層体25dに対向する内袋26,外包材24、及び第三の積層体25c,第四の積層体25dが全体的に、間隔L1,L2,L3に引っ張り込まれて湾曲し、間隔L1,L2,L3の反対側に凹部22,端部凹部22aが形成されることとなる。
なお、端部凹部22bも端部凹部22aと同様に形成される。
このように、間隔L1,L2,L3(図6(a)参照)の反対側の外包材24は、一様に広い面積で反対側に引っ張り込まれることから、部分的に応力が集中せず、外包材24のガスバリア性の劣化が抑制される。
なお、外包材24のガスバリア性の劣化をさらに抑制するため、下記の方策をとることが可能である。
図7(b)の減圧工程の前、又は減圧開始後から減圧途中までの積層体25と内袋26、及び内袋26と外包材24との各部材間の摩擦抵抗が大きくなる前に、外包材24の外側から、凹部22,端部凹部22a,22bが形成される方向に部分的に突出した型によって、最終的な凹部22,端部凹部22a,22bの深さよりも小さな寸法分、押し出すようにする。
これにより、ある程度減圧工程が進んで積層体25と内袋26、及び内袋26と外包材24との摩擦抵抗が大きくなる前に、外包材24が事前に凹み部分(凹部22,端部凹部22a,22b)に近い形状に滑るように位置するので、外包材24のガスバリア層が引き伸ばされることを抑制できる。よって、金型によるプレス成形加工を実質的に必要とすることなく、目的に応じた形状の凹部を形成できることから、真空断熱材21の信頼性を低下させることなく、断熱性能の低下も抑制し、生産性も向上させた真空断熱材21を提供することができる。
溶着及び密封工程を経た真空断熱材21は、図7(c)に示す状態から、最後に内袋26の耳部26a及び外包材24の耳部24aが、それらの根元を基点として真空断熱材21の凹部22,端部凹部22a,22bが形成される側と反対側の面に折り曲げられ、粘着テープや接着剤等(図示せず)で整形され固定される。この真空断熱材21,31が、側面板11の内側(図4参照)又は背面板12の内側に取り付けられる。
この構成により、真空断熱材21の成形後(図7(c)参照)に形成される凹部22,端部凹部22a,22bの深さ寸法は、圧縮工程前の積層体25の厚みに応じて自由に変化させることができる。
また、凹部22,端部凹部22a,22bの短手方向の幅寸法は、切断した複数の積層体(第一の積層体25a,第二の積層体25b)の第三の積層体25c上への設置位置を変更することで、容易に調整できる。
このように、本実施形態の真空断熱材21は、凹部22,端部凹部22a,22bが従来と異なり、真空断熱材21の成形後にプレス機や治具等を用いて強制的に外包材24等を伸ばしながら成形するものではない。
また、凹部22,端部凹部22a,22bは滑らかな曲線となるので、外包材24を損傷することがない。すなわち、凹部22,端部凹部22a,22b付近の外包材24は芯材23に沿って変形する。これにより、外包材24の損傷を防止できる。また、芯材23が切断されず、断熱性能が低下することがない。
前記の如く、図6(a)に示す複数の積層体(第三の積層体25cよりも小さい第一の積層体25a,第二の積層体25b)を所定の間隔(間隔L1,L2,L3)を空けて第三の積層体25c上に配置しているため、外包材24内に芯材23を収納後、減圧させると、図7(c)に示すように、凹部22,端部凹部22a,22bがそれぞれ間隔L1,L2,L3に対応して形成される。なお、真空断熱材21における凹部22,端部凹部22a,22bの反対側(図7(b)の間隔L1,L2,L3の側)は、少しの筋状のくぼみ(深さ0.5〜1.0mm程度)が生じることがあるが、断熱性能には殆ど影響がない。むしろ、このくぼみが凹部22,端部凹部22aの位置を表示する機能を有するため、凹部22,端部凹部22aに放熱パイプ20を適切に配置することができ、組み立て作業性が向上する。
なお、本実施例では積層体25の各厚み寸法が約100mmの場合を例示したが、これは一例であり、積層体25の各厚み寸法は任意に選択できるものである。
<放熱パイプ20間の寸法W1>
次に、図8,図9,図10を用いて、側面板11に並列に配置されている放熱パイプ20(図4,図5(a)参照)の間の寸法をW1(例えば、200mm)とした理由を説明する。
図8は、真空断熱材21に設ける溝ピッチを示す図4のP部拡大図である。図9は、図8の溝ピッチを選定するための真空断熱材の温度特性を示す図である。図10は、図8,図9の結果を適用した一例を示す図4のP部の要部拡大図である。
図8に示すように、放熱パイプ20は、厚さ40〜50μm程度のアルミニウムテープ28により、ほぼ全長を側面板11の内面11nに固定されている。なお、側面板11は、板厚0.4mm〜0.5mm程度の鋼板である。
そして、真空断熱材21は、ホットメルトや接着剤等にて側面板11の内面11nに固定されている。
内箱18の被係止部18aは、外箱19の弾性変形するR曲げ部19aと、ドアに対向するフランジ部19bとで挟持している。すなわち、被係止部18aはR曲げ部19aとフランジ部19bとで気密的に係止している。
ここで、外箱19のR曲げ部19aは、側面板11を形成する鉄板を曲げ加工してフランジ部19bを形成し、このフランジ部19bを折り返すことで形成されている。なお、R曲げ部19aは、フランジ部19b及び側面板11と別体に形成し、フランジ部19bに溶接して形成するように構成してもよい。
真空断熱材21は、外箱19のR曲げ部19aの近傍に配設される。そのため、寸法上の制約をクリアするため、従来の左右に壁部をもつ形状の凹部と異なり、真空断熱材21端部は横断面L字状を成すように、外方に開放された端部凹部22aとしている。
図5(a)に示す端部凹部22bも、端部凹部22aと同様に、真空断熱材21の縁部に沿って設けられ、外方が開放された凹んだ形状としている。
真空断熱材21に端部凹部22aを形成して、外箱19側のフランジ部19bに放熱パイプ20を近づける理由を以下説明する。
冷蔵庫1の庫内空間を密閉するために、ドア5には外箱19開口とのシール用のパッキン33(図10参照)を備えている。このパッキン33を介して、内箱18内部の庫内1nからの熱伝導による熱漏洩、及び、庫内1nからのパッキン33が当接するフランジ部19bを介しての熱伝導による熱漏洩がある。このため、フランジ部19b近くに庫内1nと庫外1g(図8参照)との温度差により、露点温度以下になった箇所で露付き現象が発生することがある。これを防止するため、放熱パイプ20の熱で加熱保温して、露点温度より高くし、露付きを防止している。
このために、真空断熱材21の端部凹部22aを設けたものである。すなわち、端部凹部22aを真空断熱材21の縁部に外方が開放された凹んだ形状に設けることで、端部凹部22aで覆われる放熱パイプ20を、フランジ部19bに近づけて配設することができる。これにより、有効な露付き対策が図れる。
次に、アルミニウムテープ28で側面板11に取り付けた放熱パイプ20と側面板11との温度関係について説明する。
一般的に、側面板11は内容積450リットル以上の冷蔵庫の場合、奥行き寸法が500〜600mm、高さ寸法が1700〜1850mmである。
図8に示すように、側面板11に貼り付けられる真空断熱材21には、W1間隔(例えば200mmピッチ)で凹形状の凹部22が2つ設けられており、端部凹部22aが2つ(図4参照)設けられている。端部凹部22a内の放熱パイプ20は、側面板11の端面(フランジ部19b)のA点までの寸法W2が50mm前後(40〜70mm)に設定されている。これは、放熱パイプ20の熱をフランジ部19bに伝達させることで、温度を露点温度より高く上げ、フランジ部19bに生じる結露対策を行うためである。
図9は、側面板11の表面温度を測定しグラフ化したものであり、縦軸は測定点の温度(℃)を示し、横軸は側面板11のA点(図8参照)からの冷蔵庫1の奥行き方向(図1の冷蔵庫1の奥側方向)の距離を示している。なお、測定時の庫外(1g)温度は30℃であり、冷蔵庫1は通常運転状態である。
測定点は、図1に示すS1,S2部である。なお、S1,S2部とも同様な温度特性を示したので、ここでは、図9を用いてS1部に関する温度特性を説明する。
また、放熱パイプ20の側面板11への配設位置を示す冷蔵庫1の奥行き方向のW1,W2寸法は、W2寸法が50mm、W1寸法が200mmとした。
更に、放熱パイプ20の側面板11(板厚0.45mmの鋼板)への取り付けには、厚さ50μmで幅40mmのアルミニウムテープ28を使用した。
この測定条件による測定結果は、図9に示すように、放熱パイプ20の温度影響を受けA点の温度が約33℃となり、湿度90%時の露点温度を上回ることが判明した。
すなわち、A点とこのA点から最も近い位置の放熱パイプ20との間の距離W2を50mmにすることで、A点の温度を結露温度より高い温度の約33℃とすることができ、結露を防止できる。
また、A点に最も近い放熱パイプ20と、それに隣り合って配置された放熱パイプ20との間の寸法W1の中間の温度は、庫外温度(30℃)とほぼ同じ温度(約30℃)になっていることが判った。
すなわち、放熱パイプ20を約200mmピッチの間隔で配設すると、隣り合う放熱パイプ20が互いの熱の影響を受けることなく、効率よく放熱を行うことができる。
このように、外方が開放された凹んだ形状の端部凹部22aにしたことにより、放熱パイプ20をフランジ部19bに近づけて配設できるとともに、放熱パイプ20を真空断熱材21の端部凹部22aで覆うことができる。
ここで、フランジ部19b近くの放熱パイプ20の位置を従来と同じとした場合、従来、真空断熱材の端部の凸形状部がR曲げ部19aにあたるので、真空断熱材でフランジ部19b近くの放熱パイプ20を覆うことは困難であった。そのため、真空断熱材の大きさを小さくして、フランジ部19b近くの放熱パイプ20を露出せざるを得なかった。
しかし、本構成の真空断熱材21は、外方が開放された凹んだ形状の端部凹部22aを形成することで、フランジ部19b近くの位置の放熱パイプ20を真空断熱材21で覆うことが可能となった。このように、従来と比較し、真空断熱材21を大きくできるので、発泡断熱材17が接する外箱19の面を覆う真空断熱材21のカバー率を向上させることができる。
なお、本実施形態においては、W2寸法が50mm、W1寸法を200mmとして説明したが、W2寸法は40mm〜70mmであればA点の温度を30℃以上に確保でき、結露の防止対策ができる。すなわち、図9において、W2を40mmとした場合、フランジ部19bの温度は約33.5℃となり、庫外温度30℃より高くる。また、W2を70mmとした場合、フランジ部19bの温度は庫外温度30℃に対して約30℃以上となる。これにより、フランジ部19bの結露対策は十分に行える。
なお、W2寸法が40mm未満の場合、放熱パイプ20の熱が出過ぎて庫内の冷却効果に悪影響を及ぼす。一方、W2寸法が70mmより大きい場合、放熱パイプ20からの熱が足らず、フランジ部19bの温度が下り、露付きが発生する可能性が高まる。そのため、W2寸法は40mm〜70mmが望ましい。
W1寸法は180mm〜220mmであれば、図9に示すように、放熱パイプ20の間の中間点の表面温度が庫外温度30℃より低くなり、放熱を十分に行うことが可能である。つまり、W1寸法を180〜220mmとすれば、放熱パイプ20の間の中間点の表面温度は、庫外温度30℃と同等以下となり、効率の良い放熱ができる。
なお、W1寸法を180mm未満とした場合、放熱パイプ20が隣りの放熱パイプ20の熱の影響を受けて、効率よく放熱できない。一方、W1寸法を220mmより大きくした場合、放熱パイプ20の長さが短くなり、効率のよい放熱が行えない。
従って、W1寸法を180〜220mmとすることにより、隣り合う放熱パイプ20同士が熱干渉せず、効率よく放熱作用を行うことができるので、最も望ましい。
<背面板の真空断熱材の構成>
次に、背面板12に取り付けた真空断熱材31について、図11〜図14を参照して説明する。具体的には、真空断熱材31のカバー率(発泡断熱材17が接する外箱19の面を覆う真空断熱材31の割合)を向上させる構成、及び発泡断熱材17の原液の注入口16を避けた形状の真空断熱材31の構成、更には、放熱パイプ20の引き出し部20dと真空断熱材31の凹部(凹部32,端部凹部32a,32b,32c)との関係について説明する。
図11,図13に示すように、背面板12の発泡断熱材17側の面に、蛇行状の放熱パイプ20がアルミニウムテープ28(図8参照)で取り付けられている。これにより、放熱パイプ20の熱が鋼板製の背面板12に伝達され、凝縮器と同様に放熱する役目を果たしている。
放熱パイプ20から放出される熱を庫内1nから断熱するため、背面板12に取り付けられた放熱パイプ20を覆って、真空断熱材31が背面板12に貼り付けられている。
また、放熱パイプ20の引き出し部20dは、例えば機械室29側に戻され、機械室29内で冷凍サイクルの配管(図示せず)に接続されている。そして、放熱パイプ20が取り付けられる背面板12を放熱器として最大限に活用している。図11に示すように、放熱パイプ20が背面板12の大きな領域に取り付けられるので、図12に示す真空断熱材31は、放熱パイプ20が取り付けられた背面板12の大きさとほぼ同等の大きさに形成されている。
また、真空断熱材31は、背面板12に設けられた複数の注入口16(16a,16b)の内、下注入口16aを避けた形状に製作されている。
図12(a)に示すように、真空断熱材31は左右下部に切り欠き部31aを有しており、ほぼ六角形を成している。従来の真空断熱材は、長方形に作られるのが一般的であるが、本実施形態の真空断熱材31は、2つの下注入口16a(図11参照)を避ける切り欠き部31aを設けたことにより、下注入口16aの下方まで真空断熱材31を延ばした形状としている。これにより、冷蔵庫1の外箱19に対する真空断熱材31のカバー率を向上させている。
更に説明するならば、発泡断熱材17のウレタンフォーム原液を、内箱18と外箱19との間の断熱空間内に充填する時には、図3に示すように、冷蔵庫箱体15を背面が上になるようにして発泡装置(図示せず)内にセットし、上下の注入口16b,16aにノズルを差し込んでウレタン原液を注入するが、作業性を考慮するとノズルの向きに多少余裕をとる必要がある。
そのため、図11に示すように、真空断熱材31の下方の機械室29側の左右両端の角部、即ち、2つの下注入口16aの近傍の箇所の真空断熱材31を切り欠いた形状として切り欠き部31aを設けるため、真空断熱材31が、従来の四角形の真空断熱材56(図17参照)から2つの辺が増えてほぼ六角形になる。
なお、図11と異なり、放熱パイプ20の引き出し部20dを真空断熱材31の最下端まで重なるように配置してもよい。
真空断熱材31は、背面板12の内容積拡大のために設けられた立ち上がり部12bから膨出部12a(図13参照)を覆う曲げ部31bを有している。
更に、真空断熱材31は、その中央部に背面板12に取り付けられた放熱パイプ20の直線部20c(図11参照)を収納する凹部32(図12(a),(b)参照)を有している。また、放熱パイプ20の両側部の直線部20b(図11参照)を収納する端部凹部32a(図12(a),(b)参照)を有している。また、真空断熱材31の上下の外周部には、それぞれ放熱パイプ20の曲部のUターン部20a(図11参照)を収納する端部凹部32b,32c(図12(a),(c)参照)が、端部凹部32aと同様に形成されている。
真空断熱材31の溝の端部凹部32a,32b,32cは、凹部32のように放熱パイプ20を囲む左右両側の立ち上がり壁部を有する溝形状でなく、真空断熱材31の縁部に沿って設けられ、外方が開放された横断面L字状の凹んだ形状としている。
なお、凹部32,端部凹部32a,32b,32cは、図6,図7に示す凹部22及び端部凹部22aと同様に作られる。
図13に示すように、真空断熱材31の中央部の凹部32は、例えば直径4.0mmの放熱パイプ20の直線部20cを収納することができる。
真空断熱材31の上下の外周部の端部凹部32b,32cは、C字状の凹部32でなく、L字状の溝であり、図5(b)に示す端部凹部22aと同様に、例えば直径4.0mmの放熱パイプ20のUターン部20aを、図5の端部凹部22bと同様に収納することができる。ここで、両側部の端部凹部32aは、それぞれ真空断熱材31が背面板12に対して浮き上がることなく貼り付けられるように、背面板12の稜線12rより内側に配置される稜線31rをもって前方に向け屈曲して形成される。
また、真空断熱材31の両側部の端部凹部32aも、C字状の凹部32でなく、L字状の溝であり、図5(b)に示す端部凹部22aと同様に、例えば、図13のように、直径4.0mmの放熱パイプ20の側直線部20bを収納することができる。
図12(b)に示すように、凹部32の幅寸法L3は40〜60mmに作られている。
真空断熱材31は、凹部32,端部凹部32a,32b,32cで放熱パイプ20を覆い、ホットメルトを用いて背面板12に固定されている。
真空断熱材31は、図11にも示すように、背面板12の表面積とほぼ同等の大きさを有し、端部凹部32aが、真空断熱材31の縁部の外方が開放された形状であることから、放熱パイプ20の引き出し部20dを機械室29に誘導することができる。
即ち、放熱パイプ20の引き出し部20dは、端部凹部32a又は端部凹部32cのどこからでも外側(真空断熱材31の投影面外)に出して配置できる。
本実施形態の冷蔵庫1の場合、放熱パイプ20の引き出し部20dを切り欠き部31aより真空断熱材31の投影面外への引き出しを行えるようにしたものである。
放熱パイプ20の引き出し部20dは、一旦、真空断熱材31の投影面外に引き出してしまえば、必要に応じて機械室29側への引き出しに備え、図11にも示すように、容易に屈曲することができる。
図13に示す背面板12に取り付けられる放熱パイプ20(20b,20c)も、図8と同様に、各放熱パイプ20からの放熱量が飽和する距離(W1)の間隔(ピッチ)を確保して配置されている。
真空断熱材31は、背面板12に取り付けられた曲部が形成された放熱パイプ20を凹部32,端部凹部32a,32b,32cで覆うとともに、端部凹部32a(図12(a)参照)を利用して放熱パイプ20の引き出し部20dを発泡断熱材17が充填される外箱19と内箱18間の断熱空間から、機械室29内に引き出せるよう構成している。
真空断熱材31は、図12に示すように、下注入口16a周りの端部凹部32aを含む箇所に切り欠き部31aを有している。そのため、放熱パイプ20は、切り欠き部31aの所で、同一平面上で真空断熱材21の投影面外に引き出すことができる。
換言すると、放熱パイプ20の引き出し部20dは、真空断熱材31で覆われていない。真空断熱材31で覆われていない引き出し部20dは、放熱パイプ20の他の部分と略同一平面上に位置し、これを収納する真空断熱材31の凹部32および端部凹部32a,32b,32cも略同一平面上に位置する。このように、放熱パイプ20の引き出し部20bは、スムーズに真空断熱材31の投影面外に引き出され、機械室29に誘導することができる。
従って、真空断熱材31の凹部32,端部凹部32a,32b,32cにより、放熱パイプ20を蛇行状の放熱パイプ20のUターン部20aを含めて覆うことができる。
また、真空断熱材31の外方が開放された凹んだ形状の横断面L字状溝の端部凹部32aから放熱パイプ20を引き出すことができる。
更に、放熱パイプ20を側面板11および背面板12に対して広げて配置できるので、側面板11および背面板12の放熱面積を最大限に得ることができる。これにより、側面板11および背面板12を効率良く放熱器として利用できる。
換言すると、横断面L字形状の溝の端部凹部32a,32b,32cを設けることにより、真空断熱材31の面積を大きくできる。
これにより、放熱パイプ20の殆どは真空断熱材21,31で覆われ放熱パイプ20の熱が断熱されるので、庫内1nに放熱パイプ20の熱影響を及ぼさない冷蔵庫1が得られる。
図15(a)は、図13のQ部の拡大図であり、図15(b)は、両側部の端部凹部32aを形成しないで曲げ部31b′を設けた真空断熱材31′を用いた場合の図13のQ部拡大図である。なお、真空断熱材31′においては、図12(a)に示す端部凹部32b、32cは真空断熱材31と同様に形成される。
図15(a),(b)において、背面板12には、ホットメルト30が0.5〜2.0mmの厚さで塗られ、ホットメルト30を介して真空断熱材31,31′が背面板12に貼り付けられている。つまり、ホットメルト30は、真空断熱材31,31′を背面板12に取り付けるための接着材である。
背面板12は後部に後方に突設した膨出部12aを形成する立ち上がり部12bを有する。なお、膨出部12aは、後方に突出して形成される平面状の平面部12cを有する。
真空断熱材31,31′は、背面板12の平面部12cと立ち上がり部12bに重ねて設けられている。
具体的には、真空断熱材31,31′の両側端部には、背面板12の平面部12cおよび立ち上がり部12bを覆う曲げ部31b(図12(a)参照)、曲げ部31b′が設けられている。
背面板12は、板厚が薄い鉄板を金型成形するので、設計したとおりの寸法となる。しかし、真空断熱材31,31′の形状は、設計した寸法通りには作り難い。特に曲げ治具を使って成形する曲げ部31b,31b′の角度R1は成形し難い。
このため、冷蔵庫1においては、図15(a)に示すように、真空断熱材31の端部凹部32aを曲げて曲げ部31bを形成し、真空断熱材31側の稜線31rを背面板12側の稜線12rに対して内側にずらして設ける。これにより、真空断熱材31が背面板12に対して浮き上がることなく貼り付けられ、曲げ部31bの先端を立ち上がり部12bに当接させて、曲げ部31bと背面板12の平面部12c,立ち上がり部12bとで閉鎖空間を形成している。
同様に、図15(b)に示すように、真空断熱材31′の両端部をそれぞれ曲げて曲げ部31b′を形成し、真空断熱材31′側の稜線31r′を背面板12側の稜線12rに対して内側にずらして設ける。これにより、真空断熱材31′が背面板12に対して浮き上がることなく貼り付けられ、曲げ部31b′の先端を立ち上がり部12bに当接させて、曲げ部31b′と背面板12の平面部12c、立ち上がり部12bとで閉鎖空間を形成している。
そして、曲げ部31b,31b′の先端が、立ち上がり部12bにホットメルト30で接着されることにより、真空断熱材31,31′の曲げ部31b,31b′が、発泡断熱材17の充填時に、発泡断熱材17が真空断熱材31,31′と背面板12との間に侵入して真空断熱材31,31′が変形してしまうことを防止している。
背面板12の側端部に取り付けられる放熱パイプ20は、背面板12の立ち上がり部12bと真空断熱材31,31′の曲げ部31b,31b′とで形成される閉鎖空間(図15(a)に示す背面板12と真空断熱材31の端部凹部32aとで形成される閉鎖空間、又は図15(b)に示す背面板12と真空断熱材31′の左右の端部とで形成される閉鎖空間)内に配設される。換言すると、背面板12の平面部12cと立ち上がり部12bとの稜線12rに放熱パイプ20が位置するので、その放熱パイプ20の配設作業は容易になる。
また、真空断熱材31,31′の曲げ加工も角度を合わせる必要がなくなるので容易になる。また、真空断熱材31,31′の背面板12への配設についても、真空断熱材31,31′の平面部31p(図15(a)参照),平面部31p′(図15(b)参照)を背面板12の平面部12cを合わせるだけでよいので容易となる。
更に、背面板12の立ち上がり部12bと真空断熱材31,31′の曲げ部31b,31b′の先端部とが接着剤で接着され密封されるので、放熱パイプ20を収納する閉鎖空間(図15(a)に示す背面板12と真空断熱材31の端部凹部32aとで形成される閉鎖空間または図15(b)に示す背面板12と真空断熱材31′の左右の端部の曲げ部31b′とで形成される閉鎖空間)に発泡断熱材が入り、真空断熱材31,31′の先端部が変形して開くことを防止できる。
なお、本実施形態では、真空断熱材31,31′の曲げ部31b,31b′の先端部を、背面板12の立ち上がり部12bに接着剤で接着する場合を例示したが、接着の代わりにアルミテープ等で密封して取り付けてもよく、真空断熱材31,31′の曲げ部31b,31b′の先端部を、背面板12の立ち上がり部12bに密封して取り付ければ、その取り付け態様は特に限定されず、適宜選択可能である。
<断熱仕切り壁>
図2に示すように、断熱仕切り壁60は、内箱18の内部空間を上下に仕切ることで、冷蔵室2と冷凍室3,冷凍室3と野菜室4とをそれぞれ断熱区画している。
ちなみに、冷蔵室2と冷凍室3との間に配置される断熱仕切り壁60は、冷凍室3と野菜室4との間に配置される断熱仕切り壁60よりも厚くなるように形成されているが、以下では、冷蔵室2と冷凍室3との間に配置される断熱仕切り壁60を例にとって説明する。
本実施形態での断熱仕切り壁60は、平面視で略矩形の板体の中空部に発泡断熱材17が充填されたものである。
次に参照する図16は、実施形態の冷蔵庫における断熱仕切り壁近傍の横断面の部分拡大断面図であって、発泡して膨張する発泡断熱材を断熱仕切り壁内に取り込むための連通口と真空断熱材との位置関係を示す図である。
また、図16は断熱仕切り壁60内に発泡断熱材17を充填するために、冷蔵庫1の開口側(冷蔵庫1の前側)が鉛直方向の下方を向くように冷蔵庫1を配置した様子を示すものであり、図16の紙面下側には、冷蔵庫1の前側を部分的に示しており、図16の紙面上方は、冷蔵庫1の後方に一致させている。また、図16の紙面左側には、冷蔵庫1の側面板11を介して冷蔵庫1の外側を部分的に示しており、紙面右側には冷蔵庫1の側面板11を介して冷蔵庫1の内側を部分的に示している。
図16に示す放熱パイプ20は、側面板11の内面上で蛇行して複数回折り返すように延設されたもののうち、最もフランジ部19b寄りに配置されて、冷蔵庫1の上下方向(図16の紙面に対して垂直方向)に延びる直管部分のみを表している。
内箱18(被係止部18a)と、断熱仕切り壁60の前端面を形成する前板62は、フランジ部19b及びR曲げ部19aで外箱19に係止させている。
この最もフランジ部19b寄りに配置された放熱パイプ20部分は、冷凍サイクルの凝縮器としての機能と、冷蔵庫1内で低温となる内箱18を伝ってフランジ部19bが冷却されて結露するのを、その放散する熱によって防止する機能とを有している。そして、最もフランジ部19b寄りに配置された放熱パイプ20部分は、フランジ部19bからW2の距離(例えば40〜70mm程度)に配置され、フランジ部19bの近傍の結露防止を効率よく行っている。
断熱仕切り壁60の外側面には、その中空部と、冷蔵庫1の外箱19と内箱18との間に形成される断熱空間63とに連通するように、連通口61が形成されている。この連通口61は、発泡断熱材取り入れ口に相当する。
そして、真空断熱材21における端部凹部22aのフランジ部19b側の端縁は、連通口61の投影面内に位置している。
また、本実施形態での連通口61の前端は、通常、断熱仕切り壁60の前端面より30〜40mm程度の距離(図16中、W5で示す)で後退した位置(図16の紙面上方にオフセットした位置)に設定されている。つまり、連通口61は、フランジ部19bの近傍に位置するように、フランジ部19bに隣接して配置されている。また、連通口61の前後方向の幅L8は、30〜50mm程度に設定することが望ましい。
なお、端部凹部22aのフランジ部19b側の端縁は、連通口61の投影面内に位置している。図16の奥行き方向(前後方向)において、端部凹部22aのフランジ部19b側の端縁が、連通口61の幅L8内から、その均等の範囲で多少、ずれていてもよい。
以上のような端部凹部22aのフランジ部19b側の端縁と連通口61との位置関係にある冷蔵庫1によれば、図16に示すように、断熱仕切り壁60の前端面が鉛直方向の下方を向くように配置されると共に、前記したと同様に、注入口16,16a(図3参照)からウレタンフォーム原液が注入されると、このウレタンフォーム原液は、外箱19と内箱18との接合部となるフランジ部19b付近にウレタンフォーム原液溜まり56aを形成する。そして、このウレタンフォーム原液が発泡して未硬化の発泡断熱材17が断熱空間63を上昇していく。
この際、この未硬化の発泡断熱材17は上昇が阻害されることがない。さらには、真空断熱材21の前端部(図16の紙面下側部分)が、未硬化の発泡断熱材17の流れのガイドとして機能することによって、未硬化の発泡断熱材17は、連通口61を介して断熱仕切り壁60の内側に効率よく取り込まれて広がっていく。
<真空断熱材の端部構成>
次に、図17,図18を参照して、真空断熱材の端部構成について説明する。なお、図16に対応する構成は、同一符号を付して説明を省略する。
まず、図17の構成が図16の構成と異なる点は、放熱パイプ20を端部凹部22a′よりも外側に位置させており、端部凹部22a′が側面板11側ではなく、発泡断熱材21(内箱18)側に対向している点である。また、内箱18のフランジ部19b近傍には、傾斜部35を有する。そして、この傾斜部35に連通口61が備えられている。
この構成では、内箱18の側面は前方に向かって外箱19に近づく傾斜部35を有しているので、その分、フランジ部19側(冷蔵庫1の前方開口)に向かうに連れて先細りの空間となる。この空間はウレタンフォーム原液溜まり56a部となる。
図17の構成では、真空断熱材21の先端部Pが放熱パイプ20よりも後方に位置する。そして、先端部Pから所定距離に亘って、端部凹部22a′が連通口61近傍に位置するように配置されている。これにより、発泡断熱材17の発泡充填時、真空断熱材21の先端部P付近でウレタンフォーム原液が誘導されて流動する。すなわち、端部凹部22a′はフランジ部19b近傍の空間を広げて、発泡断熱材17の流れを良好にするものである。
また、真空断熱材21のカバー率を向上するために、真空断熱材21を内箱18の傾斜部35(連通口61近傍)に対向するように配置した場合であっても、発泡を開始したウレタンフォームの流動抵抗とならないように、背面板12側に誘導できる。また、傾斜部35に対向する位置に前方が開放した端部凹部22a′を備えることで、断熱仕切り壁60側への発泡断熱材17の誘導を円滑に行えるものである。すなわち、真空断熱材の端部及び傾斜部35が、断熱仕切り壁60側に入る発泡断熱材17の流れのガイドを行い、断熱仕切り壁60の未充填を防止できる。
次に、図18において、図16及び図17の構成と異なる点は、一側に端部凹部22a1を有し、他側に端部凹部22a2を備えた点である。
図16の端部凹部22aは、真空断熱材21の厚み方向で約1/3を切り欠いた形としている。一方、図18に示す端部凹部22a1は真空断熱材21の厚み方向で約1/3を切り欠くととともに、端部凹部の反対面にも端部凹部22a2が真空断熱材21の厚み方向で約1/3を切り欠くように形成されている。
換言すると、真空断熱材21の先端部に薄肉部を形成し、この薄肉部の一側に放熱パイプ20を覆う端部凹部22a1を有し、他側に発泡を開始した発泡断熱材の流動抵抗とならないように、背面板12側に誘導する端部凹部22a2を有するものである。
図18に示す構成では、放熱パイプ20の庫内側への熱侵入を抑えつつ、ウレタンフォーム原液溜まり56aから発泡を開始する発泡断熱材の流動抵抗を低減して背面板12側に誘導することができる。また、断熱仕切り壁60側への発泡断熱材17の誘導を真空断熱材21の端部凹部22a2で行えるものである。
なお、図18に示す真空断熱材21の端部凹部22a1,22a2は、芯材の積層体の厚みの組み合わせを適宜変更することで得られるものである。
以上説明した構成を有するものであるから、次の効果が得られるものである。
すなわち、外箱の側面内側に配置された真空断熱材と、該真空断熱材と前記外箱との間に配置された放熱パイプと、前記外箱と内箱との間に充填された発泡断熱材と、を備え、前記内箱の側面は前方に向かって前記外箱に近づく傾斜部を有し、前記真空断熱材は前記傾斜部に対向する位置に前方が開放した端部凹部を備える。
これにより、発泡断熱材の発泡充填を阻害しないように、側面板における真空断熱材のカバー率を向上できる。