第1の発明は、外箱と内箱との間に発泡断熱材を充填した断熱箱体と、前記外箱の内側に配設された放熱パイプと、前記放熱パイプの庫内側に設けられた真空断熱材とを備え、前記真空断熱材は凹形状の溝を有し、少なくとも前記真空断熱材の端面から形成し前記真空断熱材を横切らない局所溝を設けて当該局所溝に前記放熱パイプの橋渡し折り曲げ部を通す構成としたものである。
これにより、放熱パイプの橋渡し折り曲げ部も真空断熱材で覆って真空断熱材の被覆率を向上させるとともに、断熱箱体の側面から他の面、例えば天井面への放熱パイプの橋渡しの折り曲げも無理なく行え、放熱パイプの折り曲げ品質を維持しつつ真空断熱材の被覆率を高め断熱性を向上させることができる。
第2の発明は、第1の発明において、前記局所溝に収納する放熱パイプは、前記断熱箱体の一面から他面へ繋がる放熱パイプとしたもので、これにより前記第1の発明と同様放熱パイプの折り曲げ品質を維持しつつ真空断熱材の被覆率を高め断熱性を向上させることができる。
以下、本発明による真空断熱材を用いた冷蔵庫の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1による冷蔵庫の正面図、図2は同実施の形態1による冷蔵庫を説明する概略側断面図、図3は同実施の形態1による冷蔵庫の放熱パイプ位置を説明する透視図、図4は同実施の形態1による冷蔵庫の外箱側面と放熱パイプとの関係を示す説明図、図5は同図4のD部の簡易拡大断面図、図6は同実施の形態1による冷蔵庫に用いる真空断熱材の正面図、図7は同実施の形態1による冷蔵庫を説明する概略側断面図、図8は同図6のA−A断面図、図9は同図6のB−B断面図である。
図1から図5において、この冷蔵庫は、前方に開口した断熱箱体1と、断熱箱体1内の貯蔵室を開閉する扉2とからなる。断熱箱体1は、金属製の外箱3と、硬質樹脂製の内箱4と、外箱3および内箱4の間に発泡充填された発泡断熱材5とから構成されており、外箱3の側面下部稜線部には図5に示すように強度向上の為の補強部材6を有している。補強部材6は外箱3の底面から背面に立ち上がって形成され、補強部材6と外箱3との間には外気と連通する空間7を備えている。
断熱箱体1内に形成された貯蔵室は、上部に設けられた冷蔵室8と、冷蔵室8の下に設けられた温度帯切り替え可能な切替室9と、切替室9の横に設けられた製氷室10と、切替室9および製氷室10と野菜室11の間に設けられた冷凍室12で構成されている。
冷凍室12の背面には冷却室14があり、冷気を生成する冷却器15と、冷気を各室に供給する冷気送風ファン16とを有し、庫内の温度検知センサー(図示せず)とダンパ等(図示せず)により庫内温度が制御されている。また、冷却器15下方には除霜手段が設置されている。
冷却器15は、圧縮機17と、コンデンサ(図示せず)と、放熱用の放熱パイプ18と、キャピラリーチューブ19とを環状に接続してなる冷凍サイクルを構成しており、圧縮機17によって圧縮された冷媒の循環によって冷却を行う。
断熱箱体1には図3に示すように前記した放熱パイプ18が配設してあり、側面及び背面に配設した放熱パイプサイド18Sは、一本のパイプを例えばU字に折り曲げることで放熱長さを確保し、外箱3にアルミテープ等を用いて貼り付けられている。また、断熱箱体1の各貯蔵室を仕切る仕切り板20前面にも同様に放熱パイプフロント18FがU字に折り曲げられて敷設されている。放熱パイプフロント18Fは各貯蔵室の仕切り板20を経て機械室13へ接続される。
断熱箱体1にはさらにまた断熱性を向上させるために前記放熱パイプ18を覆う如く外箱3に真空断熱材21が貼り付けてある。この真空断熱材21は、芯材をガスバリア性フィルムで覆いその内部を減圧し密封して形成してあり、例えば特開2011−89740号公報に記載されているような構成の真空断熱材を用いている。
真空断熱材21には図6に示すように凹溝22が形成してあり、この凹溝22に放熱パイプ18が設置してある。
側面の真空断熱材21に設けた凹溝22は縦溝22aと横溝22bと出口溝22cとからなり、放熱パイプサイド18Sが蛇行状に配置してある。
上記縦溝22aは真空断熱材21の長手方向(つまり冷蔵庫の上下方向)に沿って真空断熱材21の上下の端面部23まで形成された溝であり、複数の縦溝22aが互いに平行に配設されている。
横溝22bは真空断熱材21の短手方向(つまり冷蔵庫の前後方向)に沿って延びる凹溝であり、縦溝22aの上下方向に1本ずつ形成されており、互いに交差するように形成されている。また、下側の横溝22bは上側の横溝22bより幅広に形成してあり、少なくとも冷蔵庫の底面仕切壁(図示せず)の上端より下部に配置されている。
出口溝22cは真空断熱材21の上側の端面部23から横溝22bまで形成した溝であり、この実施の形態では前記縦溝22aと一直線状に複数形成されている。
上下の横溝22bには、放熱パイプサイド18Sの上下端で屈曲形成された折り返し部18S−1が配置されている。
また、横溝22bの上下のいずれか一方の溝部(本実施の形態では、下側の横溝22b)では放熱パイプサイド18Sまたは放熱パイプフロント18Fの少なくとも一方が凝縮器からの冷媒パイプ(図示せず)に連結されている。
そして、放熱パイプサイド18Sは、真空断熱材21の下側の横溝22bを通って、縦溝22aにその直線部が配置され、横溝22bに折り返し部18S−1が配置され、蛇行状態に配置されたのち、横溝22bの上部に形成される出口溝22cに向けて屈曲させ、その出口溝22cを通って外箱3の他の面、この実施の形態では外箱3の天井面へと配置されることで、上下に蛇行する放熱パイプサイド18Sのほぼ全体が、真空断熱材21の上下の端面部23より飛び出ることなく真空断熱材21と外箱側板との間に配置されている。換言すると、真空断熱材21は横溝22bを設けたことによってその上下両端部が放熱パイプサイド18Sの上下の屈曲部を越えて外箱3上下の各端部近傍まで位置して図2の点線で示すように外箱3の側面上下ほぼ全域を覆っている。
なお、上記真空断熱材に形成する溝は、ローラ方式あるいはプレス方式のいずれかによって形成する。プレス方式の場合は型が必要となり、コストアップ、溝形成の自由度が低い。一方、ローラ方式は一直線上に溝を形成することは可能であるが、複雑な溝形成は難しい。よって、溝形状によってローラ方式あるいはプレス方式のいずれかを選択して形成すればよい。
また、前記外箱3の左右に貼り付けた真空断熱材21は、その下部前後に図5、図7に示すように、外箱3の底面から背面に立ち上がって形成された補強部材6を避ける面取部25が設けられていて、その横幅は外箱側面の短手方向(つまり冷蔵庫の前後方向)の幅いっぱいの寸法に形成してある。
加えて、上記補強部材6もその上部に真空断熱材21側の面取部25に対応させて補強部材面取部26が形成されており、真空断熱材21とオーバーラップせず、かつ、前記真空断熱材21の面取部25の面積を縮小、すなわち、面取部25によって減少する真空断熱材面積の減少を少なくするようにしてある。
また、外箱3の左右少なくともいずれか一方に配設された真空断熱材21の上下の横溝
22bの一方、この実施の形態では下方の横溝22bには、図5に示すように連通部材27の一端が配置されている。連通部材27の他端は外箱3の底面から背面に立ち上がって形成された補強部材6の孔28へ嵌挿され、補強部材6と外箱3との間に構成された空間7に連通し、横溝内の空気を外気へ放出させている。
併せて、上記下方の横溝22bより放熱パイプサイド18Sの端部が引き出されているが、この実施の形態では前記放熱パイプサイド18Sのパイプ端部18Tは図6、図7に示すように真空断熱材21の面取部25部分において少なくとも2度以上屈曲させ、ターン部18T−1、18T−2が2ヶ所以上になるようにして引き出してある。
なお、真空断熱材21の下部前後の面取部25は、前面より背面(パイプ端部18T収納側)の面取を大きく設定している。それに対応して、補強部材6の底面から背面の立ち上がり部の高さを前面の立ち上がり部の高さより高く設定している。
また、前記補強部材6は外箱側面の前部から底部および後部に沿ってコの字状に配置されていて、かつ外箱側面に位置する前記補強部材6の前部および後部の上端は補強部材面取部26を形成した構成としている。
また、真空断熱材21に設けた下部の横溝22bは前記面取部25を含んで形成している。
また、前記真空断熱材21に設けた下部の横溝22bは前記補強部材6の前部および後部の上端より下方に形成している。
また、前記横溝22bの溝幅は縦溝22aの溝幅より広く設定している。
また、上下に設けた横溝22bのうち下部の横溝22bはその幅寸法を上部の横溝22bよりも大きく設定している。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下のその動作、作用を説明する。
まず冷蔵庫の冷却動作について説明する。庫内温度が上昇して冷凍室センサ(図示せず)が起動温度以上になった場合に、圧縮機17が起動し冷却が開始される。圧縮機17から吐出された高温高圧の冷媒は、最終的に機械室13に配置されたドライヤ(図示せず)まで到達する間、特に外箱3に設置された放熱パイプサイド18Sにおいて、外箱3の外側の空気や庫内の発泡断熱材5との熱交換により、冷却されて液化する。
次に液化した冷媒はキャピラリーチューブ19で減圧されて、冷却器15に流入し冷却器15周辺の庫内空気と熱交換する。熱交換された冷気は、近傍の冷気送風ファン16により庫内に冷気が送風され庫内を冷却する。この後、冷媒は加熱されガス化して圧縮機17に戻る。庫内が冷却されて冷凍室センサ(図示せず)の温度が停止温度以下になった場合に圧縮機17の運転が停止する。
次にこの冷蔵庫及び冷蔵庫に取り付けた真空断熱材21の断熱作用について説明する。
本実施の形態の冷蔵庫においては、板状の真空断熱材21に長手方向の縦溝22aとともに短手方向の横溝22bを設け、縦溝22aに放熱パイプサイド18Sの直線部を、そして前記横溝22bに放熱パイプサイド18Sの上下の折り返し部18s−1を位置させて放熱パイプサイド18S全域を覆っているので、冷蔵庫壁を厚くして庫内容積を低下させることなく真空断熱材21の被覆率を増大させるとともに、放熱パイプサイド18Sか
ら庫内側への放熱を真空断熱材21によって断熱することが可能となる。
すなわち、横溝22bのない縦溝22aだけの状態の真空断熱材21で放熱パイプサイド18Sの折り返し部18S−1を覆うと、放熱パイプサイド18Sの折り返し部18S−1部分の外箱3と真空断熱材21との間に放熱パイプ径分の空間ができて冷蔵庫壁厚が厚くなりその分庫内容積の低下を招くが、本実施の形態によれば横溝22b内に放熱パイプサイド18Sの折り返し部18S−1が位置するので、真空断熱材21と外箱3との間に放熱パイプ径分の空間ができて冷蔵庫壁厚が厚くなることがなく、庫内容積を低下させることがないのである。
また、背景技術に記載したような真空断熱材に縦溝を設けただけの従来のものは真空断熱材で放熱パイプの折り返し部を覆わない構成となっている(図13参照)ため、放熱パイプの上下の折り返し部は縦溝から露出した状態となっており、放熱パイプの折り返し部から庫内側への放熱を真空断熱材で断熱できないとともに、真空断熱材の上下寸法も短いものとなって、真空断熱材の被覆率が低いものとなる。
しかしながら、図6に示す本実施の形態のように縦溝22aとともに横溝22bを設けてこの横溝22bに放熱パイプサイド18Sの折り返し部18S−1を位置させるようにしたことによって、冷蔵庫壁厚を厚くすることなく放熱パイプサイド18Sの折り返し部18S−1も真空断熱材21で覆うことができ、しかも、真空断熱材21はその上下の端面部23を図2の破線で示すように外箱3側面の上下端縁付近、具体的には断熱箱体1の天井面壁厚とオーバーラップする程度まで大きくすることができる。したがって、放熱パイプサイド18Sからの庫内側への放熱を真空断熱材21で確実に断熱することができるとともに、真空断熱材21の被覆率も飛躍的に増大させることができ、これらの相乗作用によって断熱箱体1の断熱性が大きく向上するのである。
加えてこの実施の形態の真空断熱材21は、断熱箱体1の側面に配置する真空断熱材21の前後下部に面取部25を形成しているから、図7に示す如く断熱箱体1の外箱側面下部に補強部材6等が存在していても、その横幅を広くしつつ下方向の寸法の最大化を図ることができ、側面の被覆率を大幅に高めることができる。特に上記真空断熱材21は前記補強部材6と重ならないように前記外箱3に配置してあるから、真空断熱材21はその面取部25で断熱箱体1の側面下部に存在している補強部材6等を確実に避けることができ、その結果、真空断熱材21はその横幅を断熱箱体側面の横幅ほぼ一杯の寸法まで広くしつつ下方向の寸法の最大化を図ることができる。よって、補強部材6による箱体強度アップ効果を損なわずに側面の被覆率を大幅に高めることができる。しかも真空断熱材21の下部が断熱箱体側面下部の補強部材6等と重なることがないので、補強部材6との重なりにより真空断熱材21のガスバリア性フィルムが損傷してその断熱性能を損なう等の懸念も払拭でき、長期間にわたって良好な断熱性能を確保できる。
また、前記補強部材6は外箱側面の前部から底部および後部に沿ってコの字状に配置されていて、かつ外箱側面に位置する前記補強部材6の前部および後部の上端は補強部材面取部26を形成した構成としてあるから、真空断熱材21の面取部25と補強部材6の補強部材面取部26の相乗効果によって真空断熱材21はその面取部25を縮小でき、その分真空断熱材面積が増大して被覆率が向上し、さらに高い断熱性を確保できる。
さらに、前記真空断熱材21に設けた面取部25は横溝22bが設けてある部分に形成、換言すると真空断熱材21に設けた下部の横溝22bは前記面取部25を含んで形成してあるから、真空断熱材21の下方向寸法の最大化を図って側面下部の真空断熱材被覆率を向上させつつ、放熱パイプサイド18Sの折り返し部18S−1を横溝22bに位置させて放熱パイプサイド18Sに対する真空断熱材被覆率向上も図ることができ、その断熱
性をさらに高いものとすることができる。
また、前記真空断熱材21に設けた下部の横溝22bは前記補強部材6の前部および後部の上端より下方に形成してあり、これにより、補強部材6の前部および後部の上端より下方に位置する放熱パイプサイド18Sの折り返し部18S−1を横溝22bに位置させることができ、放熱パイプサイド18Sに対する真空断熱材21の被覆率向上を図って断熱性を向上させることができる。
また、図6に示すように、上記真空断熱材21に設けた横溝22bは、真空断熱材21の上下の端面部23よりも中央寄り部分(上部の横溝22bは上部の端面部23よりも下方部分、下部の横溝22bは下部の端面部23より上方部分)に設けるとともに、縦溝22aはこの横溝22bと交差させて真空断熱材21の上下の端面部23まで形成しているので、真空断熱材21の上下端面部分には溝の無い厚肉部分22dが残存することになる。これにより、横溝22bが真空断熱材21の端面部23に臨むように形成されて当該端面部が溝によって薄肉になったままの場合に比べ真空断熱材21の上下の端面部23の強度が向上し、真空断熱材21の反り、変形等が最小となり、外箱3への貼り付けが容易となって工数削減、品質向上が可能となる。
また、上記真空断熱材21の上下の端面部23の厚肉部分22dを外箱3への貼り付け用糊面とすることにより、発泡断熱材5を充填する際の流入を防ぐことが可能となり、発泡圧力での外箱外観変形を防ぐことが可能となる。
さらにまた、前記横溝22bの溝幅は縦溝22aの溝幅より広くしているから、この横溝22bに通す放熱パイプサイド18Sの上下の折り返し部18S−1のターン曲げ径を大きく設計することが可能となる。これにより、折り返し部18S−1の折り曲げ時にパイプ壁に働く引き伸ばし力を小さくできるとともにこの折り返し部18−S1のパイプ径が細くなったりすることもなく、放熱パイプサイド18S若しくは放熱パイプフロント18Fの信頼性確保が可能となる。
加えて、上記上下に設けた横溝22bのうち下部の横溝22bはその幅寸法を上部の横溝22bよりも大きくしてあるから、放熱パイプ等を最適設置できるとともにパイプ接続等の作業性も向上させることができる。すなわち、放熱パイプ18の放熱パイプサイド18Sあるいは放熱パイプフロント18Fは凝縮器からの冷媒パイプ(図示せず)と溶接接続する必要があり、しかも放熱パイプサイド18Sは上下部分に折り返し部18S−1が形成されるため、下部の横溝22bの幅を大きくしておけば、この下部の横溝22bで放熱パイプサイド18Sの折り返し部18S−1を多く配置できると同時に放熱パイプフロント18Fもこの横溝22bを通して仕切り板20前部へと配管するなど多くのパイプを配設でき、しかもこの横溝22bを出たところで放熱パイプサイド18Sあるいは放熱パイプフロント18Fと凝縮器からの冷媒パイプ(図示せず)とを溶接する接続作業が外箱3側面上部ではなく外箱3側面下部の低い位置で行うことができるようになり、放熱パイプ18の最適設置と同時に作業性の向上も図れるのである。
なお、横溝22bは冷蔵庫の要求性能に応じて2列以上設けることが考えられるが、その場合は最下部に設けた横溝22bの幅寸法を最大とするのが好ましい。
また、この実施の形態では前記横溝22bに配置した放熱パイプサイド18S及び放熱パイプフロント18Fの接続部となるパイプ端部18Tは、図6、図7に示すようにターン部18T−1、18T−2を2ヶ所以上形成してあり、前記放熱パイプサイド18Sあるいは放熱パイプフロント18Fと凝縮器からの冷媒パイプ(図示せず)との溶接接続時に外箱3内面へ貼り付けた真空断熱材21を剥がしたり傷つけたりすることを防止して真
空断熱材21の断熱性能を良好に維持し、かつ、外箱3の外観変形や放熱パイプサイド18Sからの放熱能力低下を防止することができる。
すなわち、前記放熱パイプサイド18Sあるいは放熱パイプフロント18Fのパイプ端部18Tは、組立時の邪魔にならないように、図7に示すように外箱3の内面に沿って収納してあり、パイプ端部18Tを溶接等で接続する際には前記パイプ端部18Tを外箱内から引っ張り出すが、この時パイプ端部18Tを介して真空断熱材21に剥がし方向の外力が加わり、真空断熱材21が外箱3内面から剥がれたり傷ついたりすることが懸念される。併せて外箱3の外観が変形したり放熱パイプサイド18Sの放熱能力が低下したりする懸念もある。
しかしながら、本実施の形態では上記パイプ端部18Tに2ヶ所以上のターン部18T−1、18T−2を形成しているので、このターン部18T−1、18T−2がパイプ引っ張り時の外力の緩衝(変形吸収)となり、外箱3に貼り付けた真空断熱材21の剥がれや傷つきを防止すると同時に外箱の外観変形や放熱パイプからの放熱能力低下を防止することができるのである。
また、上記パイプ端部18Tが位置する部分の真空断熱材21は面取部25となっているので、この面取部25を利用してターン部18T−1、18T−2を無理なく設けることができ、しかも、パイプ端部18Tが横溝22bに入り込む部分X(図7参照)までの寸法も大きくとることができ、真空断熱材21の被覆率を向上させつつ真空断熱材21への外力印加による剥がれ傷つき予防効果をも向上させることができる。
また、この実施の形態の冷蔵庫は、上記真空断熱材21の縦溝22a及び横溝22b内の空気が放熱パイプサイド18Sまたは放熱パイプフロント18Fの放熱によって膨張し圧力上昇して外箱3側面に放熱パイプサイド18S沿った変形を生じさせやすくなるが、横溝22bに連通部材27を設けているのでこれも防止できる。すなわち、この実施の形態では図5に示すように下部の横溝22bに連通部材27を設けて空間7に臨ませているので、この連通部材27を介して縦溝22a及び横溝22b内を外気と通気させることができ、放熱パイプの放熱に起因する温度変化等による圧力変化を抑制し、外箱3の外観変形を防止することが可能となる。
また、上記連通部材27は縦溝22aより溝幅が大きく設定されている横溝22bに設けているので、複数の縦溝22aに滞留している空気が横溝22b側に短時間で流通することになる。しかも、この溝幅の大きい横溝22bは放熱パイプサイド18Sの折り返し部18S−1と放熱パイプフロント18Fが数本になって配設されているので、当該横溝22b内空気の温度自体も高くなって滞留している空気をより容易に流通させるようになり、スムーズな空気の排出が実現可能となる。
さらに、上記連通部材27は補強部材6の孔28へ挿入し、補強部材6に設けられた空間7を介して外気と連通させているだけであるから、部品点数も少なく、かつ、連通部材27の形状を簡素化することが可能となる。例えば、連通部材27は樹脂を用いて直線形状に押し出し成型することによって生産することができ、材料費や工数費を抑制できる。
また、断熱箱体1の外箱3と内箱4との間に充填する発泡断熱材5は、充填性を高めるために、断熱箱体1の前面開口部を底面に向けて断熱箱体1の背面に備えた開口部から下方に向けて発泡断熱材5の材料を注入し、下方(前面開口部側)から徐々に上方(断熱箱体1の背面側)に向けて発泡断熱材5が発泡充填される方法がとられるが、本実施の形態では、真空断熱材21の横溝22bに沿って連通部材27の一端を配置し、他端を断熱箱体1の背面側の外気に連通しているので、発泡断熱材5が発泡充填される方向と同方向に
連通部材27を介して空気が抜けることになり、発泡充填時の溝内の空気抜きの効率向上を図る事ができる。
なお、上記連通部材27は直線状のもので説明したが、この連通部材27は横溝22bと平行な部分と折れ曲がって立ち上がった部分とからなる構成とすることも考えられる。これは、外箱3と内箱4との間に発泡断熱材5を充填する際に発泡圧力による変形を防止するために発泡冶具を用いるが、外箱3に固定された放熱パイプや連通部材27が発泡冶具の邪魔にならないような逃がし効果を発揮することになる。そしてこれにより、断熱箱体1に発泡断熱材5を充填した後に、放熱パイプや連通部材27を引っ張り出して所定の位置に配置するための自由度を持たせることができることになる。
(実施の形態2)
図10は実施の形態2における冷蔵庫の真空断熱材を示す正面図である。
この実施の形態の真空断熱材21は上側の横溝の形状が実施の形態1と異なるものである。すなわち、この真空断熱材21の横溝22b‘は放熱パイプサイド18Sを通す部分のみの部分溝としてあり、必要がない部分は溝を無くして外箱3への貼り付け用糊面となる厚肉部分22dとしてある。その他の構成は実施の形態1と同様であり、同一番号を付記して説明は省略する。
この実施の形態によれば、真空断熱材21の端縁部分の強度を向上させて、反り、変形等をより最小なものとすることができ、かつ、外箱3への貼り付けが容易となって工数削減が可能となる上に、放熱パイプサイド18Sを収納する横溝22b‘の適正化による真空断熱材21の被覆率向上を図ることができる。
また、上記部分溝22b’はその終端が縦溝22aに連通した状態となっているから、溝形成時の横溝22b’及び縦溝22a位置にばらつきがあってもこのばらつきを吸収でき、溝形成の生産性を向上させることができる。
(実施の形態3)
図11は実施の形態3における冷蔵庫の真空断熱材を示す正面図である。
この実施の形態の真空断熱材21は縦溝22aの間に真空断熱材21の上側の端面部23から上部の横溝22bまでつながる局所溝22eを追加して設けたものである。その他の構成は実施の形態1と同様であり、同一番号を付記して説明は省略する。
局所溝22eは、縦溝22a同士の間に真空断熱材21の上側の端面部23から上部の横溝22bまでつながるように形成されており、放熱パイプサイド18Sの他の面、この実施の形態では天井面への橋渡し部分の折り曲げ部18S−2が収納されている。
すなわち、放熱パイプサイド18Sは、外箱3の天井面からの橋渡し部となるL字状の折り曲げ部18S−2が局所溝22eに配置され、直線部を縦溝22aに、折り返し部18S−1を下部の横溝に配置され、さらにその端部はもう一つの局所溝22eを通って再び外箱3の天井面へと橋渡し配置されており、放熱パイプサイド18Sのほぼ全体が、真空断熱材21の上下の端面部23より飛び出ることなく真空断熱材21と外箱側板との間に配置されている。換言すると、真空断熱材21は横溝22b、局所溝22eを設けたことによってその上下両端部が放熱パイプサイド18Sの上下の屈曲部を越えて外箱3上下の各端部近傍まで位置して図2の点線で示すように外箱3の側面上下ほぼ全域を覆っている。
この実施の形態によれば、断熱箱体1の側面から他の面、この実施の形態では天井面への放熱パイプサイド18Sの橋渡しの折り曲げ品質を維持しつつ真空断熱材21の被覆率を高めることができる。
すなわち、断熱箱体1の外箱3は、平板をコの字状に折り曲げて天面と両側面を形成するが、予め平板に貼り付けた放熱パイプは、折り曲げ時に引き伸ばし力が働きくため、この折り曲げ部はパイプ径が細くなったりパイプ壁厚が薄くなるなどの変形を起こし品質低下が懸念される。これを防止するために、放熱パイプの橋渡しパイプ部分はL字状に折り曲げ部18S−2を形成して折り曲げ時に働く引き伸ばし力を吸収して品質の安定化を図るが、このようなL字状の折り曲げ部18S−2を形成するとこの部分の寸法分だけ真空断熱材を短くすることになって被覆率が低下する。
しかしながら、この実施の形態によれば横溝22bとこの横溝22bにつながる局所溝22eに放熱パイプの橋渡しパイプ部分のL字状の折り曲げ部18S−2をはめ込むことができるので、このL字状の折り曲げ部18S−2も覆う部分まで真空断熱材21の寸法を長くすることができるとともに、L字状の折り曲げ部18S−2を設けたことによって橋渡しパイプ部分の折り曲げ品質も維持することができるのである。
以上、各実施の形態によって本発明の具体構成を説明してきたが、これは本発明を実施する一形態として示したもので、本発明の目的の範囲内で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、縦溝22a、横溝22bは例示した本数以外に増あるいは減してもよく、冷蔵庫の要求性能に応じて適宜選択すればよい。
また、断熱箱体1の側面に設けた真空断熱材21の縦溝22a及び横溝22bの構成は断熱箱体の背面に設ける真空断熱材21に採用して被覆率を向上させるようにしてもよく、同様の効果が得られるものである。