実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、図面は説明のため簡略化されている。原則として、上下左右といった方向を示す言葉は、図面を正面視することを前提とする。図1及び図2に示すxz平面は、移動支援装置が配置された平面に対応する。図1及び図2に示すy軸は、鉛直方向に一致する。図3以降の図に示すxz平面は、正面保持部の支持面に対応する。図3以降の図に示すy軸は、正面保持部の支持面に対して直交する軸線に対応する。
図1及び図2に移乗支援装置100の概略的な斜視図を示す。移乗支援装置100は、被介助者を持ち上げるとき、図1に示す姿勢から図2に示す姿勢に変形する。移乗支援装置100は、被介助者を持ち上げた状態で空間移動し、これにより、被介助者をある場所から別の場所へ運搬する。別の場所に到達した後、移乗支援装置100は、図2に示す姿勢から図1に示す姿勢へ変形し、これにより、被介助者を別の場所へ運搬する作業を終了する。なお、被介助者の運搬は、介助者の助力のもとに実行するとよいが、これに限られるものではない。
図1に示すように、移乗支援装置(移動体、運搬車両)100は、台車部(本体部)10、アーム部(可動部)20、及び保持部30を有する。移乗支援装置100は、台車構造を有し、平面上を移動することが可能である。移乗支援装置100は、自身の筐体に内蔵された電動モータで生じる駆動力に応じて移動する。ただし、介助者の押す/引く力に応じて移動するように移乗支援装置100を構成してもよい。つまり、移乗支援装置100に対して電動モータ等の駆動源を実装させるか否かは任意である。なお、移乗支援装置100が空間移動する具体的態様は任意であり、車輪の回転に代えて、ベルト送りによって空間移動させてもよい。
台車部10は、ベースプレート11、車輪部12、車輪部13、車輪部14、車輪部15、支柱部16、レール部17、スライド制御部18、収容部19、及び着座部90を有する。アーム部20は、スライド部21、ハンドル部(把持部)22、およびリンク機構23を有する。保持部30は、正面保持部(主保持部)40、及び一組の側面保持部(副保持部)50、60を有する。
ベースプレート11は、x軸方向を長手方向として延在する板状部材である。ベースプレート11は、例えば、金属板(鉄板等)から構成される。ベースプレート11は4つの隅部を有し、ベースプレート11の各隅部には車輪部12〜15が設けられている。
車輪部12、13は、主車輪部として機能する。車輪部14、15は、補助車輪部として機能する。車輪部12が有する車輪、及び車輪部13が有する車輪は、モータから伝達される駆動力に応じて回転する。他方、車輪部14が有する車輪、及び車輪部15が有する車輪には、モータで生じる駆動力は伝達されない。車輪部14が有する車輪、及び車輪部15が有する車輪は、受動輪として機能する。
車輪部12は、車輪12a、車軸保持部12b、および車輪カバー部12cを備える。車輪12aの回転軸は、車軸保持部12bによって軸支されている。車軸保持部12bは、車輪カバー部12cに対して固定されている。車輪カバー部12cは、車輪12aの上方を覆う位置に配置され、ベースプレート11に対して固定されている。
車輪部12と同様、車輪部13は、車輪13a、車軸保持部13b、および車輪カバー部13cを備える。車輪部13の構成は、車輪部12と略同様であり、重複する説明は省略する。
車輪12a、13aは、同軸上に配置されており、かつベースプレート11を挟みこむように配置されている。車輪12aの回転軸は、車輪13aの回転軸と共通化されていない。車輪12a、車輪13aは、個別に回転制御され、これにより、移乗支援装置100の旋回が可能になる。なお、車輪12aを保持している車輪保持部12bを車輪カバー部12cに対して旋回可能としてもよい。この場合には、xz平面内において、車輪12aの回転方向を任意に制御可能になる。
車輪部12と同様、車輪部14は、車輪14a、車軸保持部14b、および車輪カバー部14cを備え、車輪部15は、車輪15a、車軸保持部15b、および車輪カバー部15cを備える。各車輪部14、15の構成は、車輪部12と略同様であり、重複する説明は省略する。
車輪部14、15は、同軸上に配置されている。車輪部14が有する車輪14aは、受動輪として機能する。車輪部15が有する車輪15aについても同様である。これにより、移乗支援装置100の移動を安定化させることができる。
支柱部16は、y軸方向を長手方向として延在する柱状部材であり、ベースプレート11に対して立設されている。支柱部16は、車輪部12、13間に配置されている。支柱部16の具体的な構成は任意である。例えば、支柱部16は、中空の柱状部材である。支柱部16の内部には、電動モータ(駆動源)、電池(電源)、配線、電子部品、伝達機構等が収納されている。電動モータは、電池から供給される電力に応じて駆動力を生成する。電動モータで生じる駆動力は、伝達機構を介して、車輪部の車輪へ伝達される。
レール部17は、凸状の構造部分であり、支柱部16の横側面に対して設けられている。レール部17は、xy平面にて円弧状に延在する。レール部17に対して、アーム部20のスライド部21が装着されている。アーム部20の姿勢は、レール部17にガイドされながら変化する。なお、支柱部16の反対側の側面にも、レール部17と同様のレール部が設けられているものとする。
スライド制御部18は、レール部17上をスライドするスライド部21のスライド状態を制御する。例えば、レール部17上をスライド部21が急速に移動しないように、スライド制御部18は、スライド部21に対して摩擦係合する。また、レール部17上にスライド部21を固定させるために、スライド制御部18は、スライド部21に対して摩擦係合する。なお、スライド制御部18によるスライド部21の移動制御の具体的方法は任意である。
収容部19は、箱状の部材であり、支柱部16の前側面に対して設けられている。収容部19内には、例えば、電子部品(CPU(Central Processing Unit)、メモリ、ハードディスク)が実装されたマザーボードが収容されている。例えば、CPUは、メモリに格納されたプログラムの実行に応じて、上述の電動モータの駆動を制御する。
着座部90は、移乗支援装置100が空間移動する際、保持部30によって保持された状態の被介助者が座位をとることを可能とするために設けられており、これによって、移動中に被介助者が受ける身体的な負担を効果的に低減することができる。
アーム部20は、スライド部21、ハンドル部22、およびリンク機構23を有する。図1及び図2から明らかなように、アーム部20は、xy平面にて円弧を描くように変形する。アーム部20の先端には保持部30が装着されている。アーム部20の基端は、支柱部16によって支えられている。
スライド部21は、レール部17に対して係合しており、レール部17にガイドされてxy平面にて円弧を描くようにスライドする。スライド部21の移動を円滑化するために、ボール等を介して、スライド部21とレール部17とを係合させてもよい。
ハンドル部22は、介助者によって把持される部分であり、スライド部21に対して連結している。アーム部20に対してハンドル部22を設けることによって、被介助者の持ち上げ時に受ける被介助者の不安感を効果的に和らげることができる。アーム部20の姿勢変化は、ハンドル部22を把持している介助者によって調整可能である。被介助者の意向に応じて、介助者は、アーム部20の姿勢変化の速度を緩めることができる。これにより、持ち上げ時等に被介助者が覚える不安感を効果的に緩和することができる。
リンク機構23は、スライド部21に対して係合しており、スライド部21のスライド動作に応じて姿勢変化する。リンク機構23の基端は、スライド部21に対して係合しており、リンク機構23の先端は、保持部30に対して係合している。リンク機構23をスライド部21と保持部30間に介在させることによって、意図したように保持部30を変位させることができる。これによって、より自然な態様で保持部30を変位させることが可能になる。リンク機構23の具体的な構成は任意である。リンク機構23に含まれる関節数は任意であり、図示されているように2つに限られない。
保持部30は、正面保持部40、側面保持部50、側面保持部60、連結部70、および連結部80を有する。以下、図3乃至図5も併せて参照しながら、保持部30の構成について更に説明をする。
正面保持部40は、被介助者の胴部の正面(主面)に対応して設けられている。正面保持部40は、ヒトの胸郭上端からヒトの大腿骨上端までの範囲でヒトを支持することができる適当なサイズとなっており、被介助者の胴部を全体的に支持する。
側面保持部50、60は、被介助者の胴部の側面に対応して設けられている。側面保持部50、60は、ヒトの胸郭の下方へ窄む部分を支持可能となる態様にて配されている。側面保持部50は、正面保持部40上に寄り掛かった状態の被介助者を後方斜め横から押し支える。側面保持部60の動作は、側面保持部50と同様である。ただし、側面保持部60の押圧方向(推進方向)は、側面保持部50の押圧方向(推進方向)の逆である。正面保持部40、側面保持部50、60らが協調的に被介助者の胸郭を3方向から支持することによって、より安定して被介助者を保持することが可能になる。
側面保持部50は、連結部70を介して、正面保持部40に対して取り付けられている。側面保持部60は、連結部80を介して、正面保持部40に対して取り付けられている。連結部70は、z軸に沿って延在する板状部分と、xz平面内に含まれる軸線に沿って延在する板状部分とを含む構造部分である。連結部80の構成も、連結部70と同様である。なお、側面保持部を正面保持部に対して取り付ける具体的な構成は任意である。
正面保持部40からz軸方向に沿って延出する連結部70の延出量は調整可能であり、正面保持部40に対する側面保持部50の距離(間隔)は、z軸方向に沿って調整可能である。同様に、正面保持部40からz軸方向に沿って延出する連結部80の延出量は調整可能であり、正面保持部40に対する側面保持部60の距離(間隔)は、z軸方向に沿って調整可能である。側面保持部50と側面保持部60間の間隔が調整可能とすることによって、側面保持部50と側面保持部60間の間隔を被介助者の胴幅に応じたものに調整することが可能になる。なお、正面保持部40に対する側面保持部50の間隔を、電動制御により調整してもよい。同様に、正面保持部40に対する側面保持部60の間隔を、電動制御により調整してもよい。
図3に示すように、正面保持部40は、ベースプレート41、クッション材42、および収容部43を有する。ベースプレート41上は、クッション材42によって被覆されている。これにより、被介助者は、正面保持部40に対して快適に寄り掛かることができる。収容部43は、連結部70、80それぞれの基端が取り付けられている。なお、クッション材は、クッション性のある内部材をカバーシート(被覆材、表皮材)で被覆することにより構成される。正面保持部40と同様、側面保持部50は、ベースプレート、及びクッション材を含んで構成される。側面保持部60についても同様である。
図3乃至図5に示すように、正面保持部40の表面領域は、上部領域R1と下部領域R2とに分割されている。図4に模式的に示すように、正面保持部40を正面視したとき、正面保持部40が被介助者を支持する範囲を支持領域R10とする。この場合、上述の上部領域R1、R2は、いずれも支持領域R10に含まれている。なお、保持部30に対して保持された状態の被介助者から見たとき、被介助者の頭側を上側とし、被介助者の足側を下側としている。また、支持領域R10の全体に対して被介助者が現に支持される必要はない。この意味において、支持領域R10を支持予定領域と把握してもよい。
上部領域R1の表面は、摩擦係数が1以上の素材(例えば、レザー(メリヤスレザー)等)から構成される。より好適には、上部領域R1の表面は、摩擦係数=1.2のメリヤスレザーから構成される。他方、下部領域R2の表面は、摩擦係数=0.15〜0.6の素材(樹脂(ウレタン樹脂)等)から構成される。より好適には、下部領域R2の表面は、摩擦係数=0.2〜0.4のウレタン樹脂から構成される。なお、本願においては、摩擦係数は、静摩擦係数を意味する。
上部領域R1、下部領域R2の摩擦係数は、表面処理によって適宜調整されている。例えば、表面領域をエンボス処理(凹部形成処理)することによって表面に凸凹を形成し、表面の摩擦係数を調整することができる。つまり、凸凹密度を調整することによって、接触時に生じる摩擦力を調整することが可能になる。なお、表面領域を部分的に粗面とすることによって、表面領域の表面における摩擦係数を調整してもよい。
本実施形態では、上部領域R1は、表面の摩擦係数が高い材質から構成され、下部領域R2は、表面の摩擦係数が低い材質から構成される。換言すると、クッション材の外表面を構成するカバーシート(被覆材、表皮材)は、上部領域R1では高い摩擦係数を有し、下部領域R2では低い摩擦係数を有する。このように支持領域R10内において表面の摩擦係数に分布を持たせることによって、正面保持部40にて被介助者をより安定して保持しつつ、被介助者の衣服の着脱の容易化を図ることが可能になる。
上部領域R1の表面は高い摩擦係数を有するため、正面保持部40からの被介助者のズレ落ち(滑り)を抑制することができる。下部領域R2の表面は低い摩擦係数を有するため、正面保持部40に保持された状態の被介助者が着衣している衣服(オムツ、ズボン、スカート等)の着脱が容易になる。下部領域R2の表面が低い摩擦係数を有するように設定することによって、支持領域R10全体の摩擦係数は低下してしまう。本実施形態では、上部領域R1の表面は高い摩擦係数を有するように設定されている。したがって、被介助者の保持性を犠牲にすることなく、被介助者の衣服の着脱の容易化を図ることができる。
正面保持部40からの被介助者のズレ落ちを抑制するためには、支持領域R10全体が高い摩擦係数を有するように設定すると良い。これによって、特に体重が重い被介助者に対しても安定した保持を提供することが可能になる。しかしながら、このように支持領域R10が高い摩擦係数を有するようにすると、被介助者に対する衣服の着脱が困難になる場合がある。
移乗支援装置の実使用環境では、移乗過程にて、被介助者の衣服の脱衣が必要になる場合がある。車椅子に着座している状態では、被介助者の衣服(特に、被介助者の下半身を覆う衣服)の脱衣が困難な場合がある。したがって、被介助者をベッド上からトイレの座椅子上へ移乗させる場合、移乗支援装置によって被介助者をベッドから持ち上げた状態のとき、被介助者が着ている衣服(オムツ、ズボン、スカート等)を脱がすことになる。しかしながら、脱衣過程にて衣服と保持部間に生じる摩擦抵抗力が大きい場合には、衣服の脱衣が容易ではなくなり、被介助者に対して圧迫感を与えてしまうおそれがある。また、介助者は、被介助者が着衣している衣服をより大きな力で引っ張ることが必要になってしまうおそれがある。
本実施形態では、上述の説明から明らかなように、支持領域R10内において表面の摩擦係数に分布を持たせている。より具体的には、上部領域R1の表面は高い摩擦係数を有し、下部領域R2の表面は低い摩擦係数を有する。これによって、正面保持部40によって被介助者を安定保持しつつ、被介助者の衣服の着脱を促進することが可能になる。
本実施形態では、支持領域R10内で占める下部領域R2の面積は、支持領域R10内で占める上部領域R1の面接よりも小さい。換言すると、下部領域R2は、支持領域R10の全域のうち、支持領域R10上に配された状態の被介助者の下半身を少なくとも部分的に被覆している衣服の着脱を促進することが可能となる範囲に設けられている。したがって、下部領域R2の採用に応じて、保持部30による被介助者の保持性が劣化してしまうことを効果的に抑制することができる。
本実施形態では、上部領域R1の表面を構成する素材の摩擦係数をC1とし、下部領域R2の表面を構成する素材の摩擦係数をC2としたとき、C1/C2≧3を満足する。これによって、被介助者のズレ落ち(滑り)を抑制しつつ、被介助者の衣服の着脱を容易化することを効果的に図ることができる。
図4に示すように、側面保持部50の内側面51は、上側から下側へ延在するに応じて正面保持部40側へ近接する(軸線X1もあわせて参照のこと)。同様に、側面保持部60の内側面61は、上側から下側へ延在するに応じて正面保持部40側へ近接する(軸線X2もあわせて参照のこと)。なお、上側は、保持部30に保持された状態の被介助者の頭側に一致する。下側は、保持部30に保持された状態の被介助者の足側に一致する。このように構成することによって、被介助者の胸郭の窄む部分(下部部分)を側面保持部50、60によって後方斜め横方向から好適に押し支えることが可能になる。これによって、被介助者に対して与える圧迫感を低減した態様にて、被介助者の安定保持を図ることが可能になる。
図5に示すように保持部30を側面視したとき、x軸方向の正面保持部40の幅=W1、x軸方向の下部領域R2の幅=W2とする。このとき、W1−W2>W2の関係が成立する。また、次のように条件を設定すると良い。幅W1=300〜400mmに設定すると良い。好適には、幅W1=350〜370mmに設定すると良い。幅W2=50〜150mmに設定すると良い。
図6に、幅W2の値を決めるために行った試験結果を示す。幅W1の値は、幅W1=360mmである。図6に示すように、幅W2=40mmのときには、ズボン・オムツの脱衣が容易ではなかった。他方、幅W2=50mmのときには、ズボン・オムツの脱衣をスムーズに行うことができた。幅W2=90mm、幅W2=150mmのときも同様に、ズボン・オムツの脱衣をスムーズに行うことができた。
なお、図6に示すBorgスケールとは、運動したときの感覚(つらさ)を数字で表現したものである。数値が小さいほど、脱衣が楽であることを示す。数値が大きいほど、脱衣がつらいことを示す。なお、Borgスケールの数値範囲は、0〜10である。
W1、W2の関係については、W1/W2≧3を満足すると良い。より好適には、W1/W2≧4の条件を満足するとよい。より好適には、W1/W2≧5の条件を満足するとよい。より好適には、W1/W2≧6の条件を満足するとよい。より好適には、W1/W2≧7の条件を満足するとよい。この条件を満足することによって、被介助者のズレ落ちを抑制することを犠牲にすることなく、被介助者の下半身用の衣服の着脱の容易化を好適に推進させることができる。なお、W1,W2との関係については、上部領域R1、下部領域R2の表面の摩擦係数も関係する点に留意を要する。
図5に示すように、側面保持部50のx軸方向に示す幅をW3とすると、W1>W3、W3>W2の関係が成立する。このように条件付けすることによって、保持部30による被介助者の保持性と被介助者の衣服の着脱の促進とのバランスを好適に確保することが可能になる。
図5に示すように、側面保持部50と下部領域R2とがy軸方向において空間をあけて重なり合う範囲をW4とすると、W4<W2の関係が成立する。このように条件付けすることによって、被介助者の衣服の着脱の促進を好適に図ることができる。
図5に示すように、正面保持部40の上端位置をP1とし、側面保持部50の上端位置をP2とし、下部領域R2の上端位置をP3とし、側面保持部50の下端位置をP4とし、正面保持部40の下端位置をP5とする。図5に示すように、上方(図5を正面視して左側)から下方(図5を正面視して右側)に向かって、P1、P2、P3、P4、P5の順で各位置が位置付けられていると良い。これによって、保持部30による被介助者の保持性と被介助者の衣服の着脱の促進とのバランスを好適に確保することが可能になる。
位置P3を位置P4よりも上方(図5を正面視して左側)に位置付けると良い。これによって、側面保持部50の下方にまで下部領域R2が存在することなり、側面保持部50、60によって挟み込まれた状態の被介助者から被介助者が着ている衣服の脱衣が容易になる。
図7に模式的に示すように、側面保持部50の内側面51は、正面保持部40側へ倒れるように傾斜して配置されている。同様に、側面保持部60の内側面61は、正面保持部40側へ倒れるように傾斜して配置されている。側面保持部50の上端と側面保持部60の上端間の間隔W5は、側面保持部50の下端と側面保持部60の下端間の間隔W6よりも狭い。このように構成することによって、被介助者の胴部の圧迫を好適に低減した態様にて、側面保持部によって被介助者を後方斜め横から押し支えることが可能になる。なお、側面保持部50の内側面が被介助者の胴部に対して十分に接触することができるように、側面保持部50の内側面を曲面としてもよい。この場合、側面保持部50の内側面を、被介助者の胴部の外周形状に応じた曲面形状とする。
図8及び図9を参照して、移乗支援装置の動作について説明をする。なお、図8は、図1に示した姿勢の移乗支援装置100に対応する。図9は、図2に示した姿勢の移乗支援装置100に対応する。
まず、移乗支援装置100は、被介助者150が保持部30に抱きつき可能な位置に配置される。被介助者は、正面保持部40に対して寄りかかり、自身又は介助者の操作によって、側面保持部50、60の位置を調整する。
次に、移乗支援装置100は、被介助者150が保持部30によって保持された状態で、被介助者を持ち上げる。移乗支援装置100による被介助者150の持ち上げ動作は、介助者の力又は内蔵モータで生じる駆動力によって実行される。被介助者150の持ち上げ時、スライド部21は、レール部17を上側から下側へ滑走する。スライド部21のスライド動作に応じて、ハンドル部22が変位する。同様に、スライド部21のスライド動作に応じて、リンク機構23は、変形する。これらの協調動作に伴って、保持部30の姿勢は、横向きから上向きに変化する。これによって、保持部30によって保持された状態の被介助者は、ベッドから上方へ持ち上げられる。なお、被介助者の持ち下げ動作については、上述の説明から明らかなであり、重複する説明は省略する。
次に、図10及び図11を参照して、下部領域R2の配置態様に関するバリエーションについて説明する。以下の説明では、正面保持部40を正面視していることを前提とする。
図10(a)に示すように、上部領域R1と下部領域R2間の境界を直線状としてもよい。この場合、上部領域R1と下部領域R2間の境界は、被介助者のヘソの位置に対応づけられている。なお、下部領域R2において、矢印で示す幅は、z軸方向において略等しい。
日本人男性40歳〜50歳における腸骨からヘソまでの距離は、平均的に、100mm程度である。他方、同年齢層の日本人女性における腸骨からヘソまでの距離は、平均的に、50〜70mm程度である。したがって、下部領域R2のx軸方向の幅を90mm程度に設定している。下部領域R2のx軸方向の幅は、70〜100mm程度に設定することによって、移乗支援装置100を適用可能な被介助者の対象者数を増加させることが可能になる。
図10(b)に示すように、上部領域R1と下部領域R2間の境界を円弧状としても良い。この場合にも、上部領域R1と下部領域R2間の境界は、被介助者のヘソの位置に対応づけられている。なお、下部領域R2において、矢印で示す幅は、z軸方向において変動する。具体的には、中央部の幅W7は、左側部分の幅W8よりも広い。また、中央部の幅W7は、右側部分の幅W9よりも広い。左側部分の幅W8は、右側部分の幅W9と略等しい。正面保持部40の中央部において、下部領域R2の幅W7を上側へ伸長させることによって、被介助者のミゾオチへ与える圧迫を効果的に低減することが可能になる。また、正面保持部40の両側端部分において、下部領域R2の幅W8、W9を後退させることによって、被介助者の支持力が低下することを効果的に抑制することができる。
図11(a)に示すように、上部領域R1と下部領域R2間の境界を逆円弧状としても良い。この場合にも、上部領域R1と下部領域R2間の境界は、被介助者のヘソの位置に対応づけられている。なお、下部領域R2において、矢印で示す幅は、z軸方向において変動する。具体的には、中央部の幅W7は、左側部分の幅W8よりも狭い。また、中央部の幅W7は、右側部分の幅W9よりも狭い。左側部分の幅W8は、右側部分の幅W9と略等しい。このような場合であっても、被介助者の支持力の低下を抑制しつつ、被介助者の衣服の着脱の容易化を図ることができる。
図11(b)に示すように、下部領域R2を分割して設けても良い。つまり、下部領域R2を島状の下部領域R2a〜R2eから構成させても良い。このような場合にも、被介助者の支持力の低下を抑制しつつ、被介助者の衣服の着脱の容易化を図ることができる。なお、互いに隣り合って配置された下部領域R2aと下部領域R2b間には、上部領域R1が存在する。下部領域R2bと下部領域R2c間についても同様である。下部領域R2cと下部領域R2d間についても同様である。下部領域R2dと下部領域R2e間についても同様である。
図12を参照して、オムツの脱衣作業について補足説明する。
図12(a)に示すように、まず、被介助者は、移乗支援装置100に搭乗する。このとき、被介助者は、保持部30に対して寄りかかり、また、着座部90に着座している。なお、移乗支援装置100は、リンク機構91を介して支柱部16へ取り付けられた着座部90を有する。この状態のとき、被介助者が着衣しているオムツの上端位置は、参照ラインP1近傍にある。オムツは、保持部30に含まれる下部領域R2と被介助者自身の間に挟まれている。
図12(b)に示すように、移乗支援装置100は、被介助者を持ち上げる。このとき、被介助者は、斜め上方へ持ち上げられ、着座部90から浮いた状態になる。次に、リンク機構91が折りたたまれることによって着座部90はベースプレート11近傍に配置される。この状態のとき、介助者は、被介助者が着衣しているオムツを脱がす。これに応じて、オムツの上端位置は、矢印で模式的に示すように下方向へ下がる。これにより、被介助者は、トイレ200へ着座可能な状態になる。
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。上部領域R1と下部領域R2とは異なる摩擦係数の領域を支持領域内に付加的に設けても良い。例えば、上部領域R1の表面の摩擦係数と下部領域R2の表面の摩擦係数の中間の摩擦係数を有する中間領域を支持領域内に設けても良い。つまり、支持領域R10内において摩擦係数を異ならせる支持領域R10の分割数は任意である。側面保持部を設けるか否かは任意である。上部領域R1と下部領域R2間の境界の延在態様は任意であり、例えば、それを波状としてもよい。保持部30の表面を構成する材料は任意であり、例示したレザー、樹脂に限定されるべきものではない。保持具が実装される移乗支援装置の具体的な構成は任意である。