JP2016144628A - 介護者補助装置 - Google Patents

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Yutaka Sato
侑 佐藤
中村 康寛
Yasuhiro Nakamura
康寛 中村
秀斗 横川
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秀斗 横川
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Abstract

【課題】介護者が被介護者の抱き上げによる移乗や姿勢変化などの介護作業を行う際に、介護者の肉体的な負担を低減することができると共に、被介護者に痛みや不安などを与えることなく介護作業を行うことができる、新規な構造の介護者補助装置を提供すること。【解決手段】床面を移動可能な台車部16には4つ以上のリンク60をジョイント62で相対傾動可能にピン接合したリンク機構58が設けられており、リンク60aには介護者12の胴部を支える胴補助部66が設けられていると共に、リンク60cには被介護者14の胴部に当接するサポート部68が設けられており、台車部16によって支持されたアクチュエータ20がリンク機構58に接続されて、アクチュエータ20の出力によりリンク機構58が出力動作せしめられると共に、リンク機構58の出力動作によって胴補助部66とサポート部68が相対変位せしめられる。【選択図】図10

Description

本発明は、自力での立ち上がりや移動が困難な老人や傷病者などの被介護者に対する、座位と立位の移行などといった介護者の介護作業を補助する介護者補助装置に関するものである。
従来から、自力での立ち上がりや移動が困難な被介護者をベッドや椅子などから移動させる際などに、介護者が被介護者を端座位から抱き上げる介護作業が行われている。具体的には、被介護者と向い合せに対峙した介護者が、前傾姿勢で被介護者の腋に腕を差し入れて支えた状態から徐々に姿勢を起すことにより、被介護者を抱き上げることができる。
ところで、このような介護作業において、介護者には、被介護者の抱き上げに大きな力が求められることから、介護者と被介護者の体格などによっては、介護作業が困難であったり、介護者が腰などを痛めてしまうという問題があった。
そこで、介護者の負担を軽減する目的で、特開2007−267856号公報(特許文献1)では、被介護者を吊り下げて運ぶ介護リフターが提案されている。この介護リフターは、予め設置されたレールから吊り下げられたネットやシート、ベルトなどによって被介護者をベッドなどから吊り上げてレールに沿って移動させた後で下ろすことにより、介護者の負担を低減しながら被介護者の移動を実現することができる。
しかし、特許文献1に記載のような介護リフターでは、被介護者を吊り下げて運び得る高さにレールを予め設置する必要があることから装置が大型になってしまうと共に、予めレールが設けられた場所でしか使うことができず、任意の場所で簡単に使用することはできなかった。
また、使用可能な場所の自由度をより大きくできる特開2013−59652号公報(特許文献2)の如き補助装置もある。即ち、特許文献2では、キャスタによって移動可能な台車部にアーム状の部材を設けた構造とされており、アーム状の部材によって被介護者を持ち上げて移動させることにより、介護者に負担を強いることなく移乗などが実現されるようになっている。
しかしながら、特許文献2に記載された補助装置では、アーム状の部材が被介護者の体に直接触れて被介護者を持ち上げることから、被介護者に痛みや圧迫感を与えたり、恐怖心を抱かせてしまうおそれがあった。
特開2007−267856号公報 特開2013−59652号公報
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、介護者が被介護者の抱き上げによる移乗や姿勢変化などの介護作業を行う際に、介護者の肉体的な負担を簡単かつコンパクトな装置によって低減することができると共に、被介護者に痛みや不安などを与えることなく介護作業を行うことができる、新規な構造の介護者補助装置を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
本発明者は、上述の如き先行技術の問題点に鑑みて、それら先行技術の如き介護者に代わって介護作業を行う装置ではなく、介護者が従来から行っていた抱き上げなどの介護作業において、介護者の肉体的な負担を軽減するように介護作業を補助する装置を考えた。また、かかる補助装置が介護者の動作を大きく妨げないように、検討と実験を繰り返して、本発明に至った。
すなわち、本発明の第一の態様は、被介護者に対する介護者の介護作業を補助する介護者補助装置であって、床面を移動可能とされた台車部を備えており、該台車部上には4つ以上のリンクをジョイントで相対傾動可能にピン接合したリンク機構が設けられており、該リンク機構を構成する少なくとも一つの該リンクには前記介護者の胴部の前面に当接する胴補助部が設けられていると共に、該リンク機構を構成する他の少なくとも一つの該リンクには前記被介護者の胴部の前面に当接するサポート部が設けられており、該台車部によって支持されたアクチュエータが該リンク機構に接続されて、該アクチュエータの出力により該リンク機構が出力動作せしめられると共に、該リンク機構の出力動作によって該胴補助部と該サポート部が相対変位せしめられることを、特徴とする。
このような本発明に従う構造とされた介護者補助装置の第一の態様によれば、介護者が向い合せに対峙した被介護者を座位から抱き上げる介護作業が、リンク機構の出力動作による胴補助部とサポート部の相対変位によって補助される。このように、本発明に係る介護者補助装置は介護者の介護作業を補助するものであることから、被介護者は従来の介護者による介護作業と同等乃至はそれ以上の安全性と安心感をもって介護を受けることができる。しかも、介護者が被介護者を抱き上げる際に必要な力が、アクチュエータの出力によって補助されることから、介護者の肉体的な負担が軽減されて、作業効率の向上が図られると共に、介護作業によって腰などを痛めることもない。
さらに、アクチュエータによる出力が直接的に介護者に及ぼされるのではなく、当該出力がリンク機構に及ぼされて、リンク機構の出力動作によって介護作業の補助がなされるようになっている。それ故、本発明の介護者補助装置では、抱き上げ介護作業の開始前と完了後でリンク機構の形状が変化して、リンク機構に設けられた胴補助部とサポート部の相対的な位置関係が変化するようになっている。従って、例えば、介護者と被介護者の間に位置するリンク機構を、介護作業の進行と共に介護者と被介護者の対峙方向で細くなるように変形させることにより、被介護者が座位から立位に移行するに伴って介護者と被介護者の対峙方向での距離を近づけることもできる。これによれば、被介護者を抱き上げるに従って介護者と被介護者が密着することで、立位のような被介護者が自力では維持できない姿勢であっても被介護者に安心感を与えることができると共に、介護者は被介護者の肩越しに前方をより近くまで見易くなって、被介護者を再び座らせる際に、被介護者が座るべき場所を目視で確認しながら作業することが可能となる。
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載された介護者補助装置において、前記リンク機構が上下の横リンクとそれら上下の横リンクを相互に繋ぐ前記介護者側の縦リンクと前記被介護者側の縦リンクとを備える四角形の4リンクとされており、該介護者側の該縦リンクが前記台車部に固定されている一方、前記胴補助部が上側の該横リンクに設けられていると共に、前記サポート部が該被介護者側の該縦リンクに設けられているものである。
第二の態様によれば、4つのリンクからなる簡単な構造のリンク機構によって、リンク機構の出力動作に伴う胴補助部とサポート部の相対変位を、より抱き上げに適するように生ぜしめることができる。即ち、四角形のリンク機構では、胴補助部が介護者の胴部を押し上げて上体を起すように上側の横リンクを変位させると、上側の横リンクと被介護者側の縦リンクは相対的な傾斜角度が小さくなる。その結果、介護者の上体が胴補助部によって起されると共に、介護者と被介護者の対峙方向でリンク機構が小さくなって、介護者の上体と被介護者の上体が対峙方向で接近することから、抱き上げ時の被介護者の安心感や安全性の向上、被介護者を立位から座位へ移行させる介護作業の容易化などが図られる。
本発明の第三の態様は、第二の態様に記載された介護者補助装置において、前記横リンクが前記縦リンクよりも長さ寸法を大きくされているものである。
第三の態様によれば、横リンクの長さを比較的に長くすることによって、リンク機構の出力動作によるサポート部の上下方向への変位量を大きく得ることができて、サポート部の位置を被介護者の姿勢の変化に追従させることができる。一方、縦リンクが比較的に小さくされていることにより、下側の横リンクにアクチュエータを接続する場合に、ストロークの大きなアクチュエータを採用しつつ、胴補助部やサポート部が介護者や被介護者の体格に合わないほど高い位置に配されるのを回避することができる。
本発明の第四の態様は、第一〜第三の何れか一つの態様に記載された介護者補助装置において、前記台車部に対する前記リンク機構の高さを変更設定可能とするリンク位置設定手段が設けられているものである。
第四の態様によれば、介護者や被介護者の体格に合わせてリンク機構の高さ方向の位置を変更設定することにより、胴補助部やサポート部を介護者や被介護者の適切な部位に当接させて、目的とする補助力を有効に得ることができる。従って、体格の異なる複数の介護者又は被介護者が一つの介護者補助装置を利用する場合でも、各介護者(被介護者)に合わせたサイズに調節することができて、各介護者(被介護者)がそれぞれ効率的な補助を受けることができる。
本発明の第五の態様は、第一〜第四の何れか一つの態様に記載された介護者補助装置において、前記リンク機構の出力動作に伴って該リンク機構を構成する前記リンクの長さ寸法を変更するリンク伸縮機構が設けられているものである。
第五の態様によれば、リンク機構の出力作動に伴ってリンクを適宜に伸縮させることで、介護作業の開始時に好ましいリンク機構の態様と、介護作業の完了時に好ましいリンク機構の態様とが相互に異なる場合にも、それらを両立して実現することができる。例えば、四角形の4リンク機構において、介護作業の初期では横リンクを短く設定して、介護者と被介護者を接近させると共に、介護作業の進行に合わせて横リンクを伸ばすことで、リンク機構の出力による胴補助部およびサポート部の変位量を大きく確保して、リンク機構の出力動作によって介護者および被介護者に及ぼされる補助力を有利に得ることも可能となる。
本発明の第六の態様は、第一〜第五の何れか一つの態様に記載された介護者補助装置において、前記介護者が介護作業をする介護者用スペースと、前記被介護者が介護を受ける被介護者用スペースとが、前記リンク機構を挟んだ両側に対峙して設けられており、該介護者の胴部の前面に当接する前記胴補助部の支持面が該介護者用スペースに向かって設けられると共に、該被介護者の胴部の前面に当接する前記サポート部の支持面が該被介護者用スペースに向かって設けられるものである。
第六の態様によれば、介護者と被介護者がリンク機構を挟んで対峙することにより、介護者が胴補助部の変位による補助力を得ると共に、被介護者がサポート部の変位による補助力を得ることができる。しかも、介護者と被介護者の間に配される胴補助部とサポート部がリンク機構に設けられていることから、リンク機構の出力動作による変形に伴って、胴補助部とサポート部を接近させて、介護者と被介護者をより密着させることができる。なお、胴補助部の支持面が常に介護者用スペースに向かって配されている必要はなく、例えばリンク機構の出力動作によって介護者用スペース側に向くようにされていても良い。サポート部についても同様に、常に被介護者用スペースに向かって配されている必要はない。
本発明の第七の態様は、第六の態様に記載された介護者補助装置において、前記介護者用スペースには前記介護者が足裏を前記床面に接地可能とされた接地領域が設けられていると共に、前記被介護者用スペースには前記被介護者が乗るステップ部が前記台車部に設けられているものである。
第七の態様によれば、介護者は床面に直接立つことで、強く踏ん張りながら作業することが可能になると共に、介護者補助装置が介護作業中に不意に移動するのを防止することができる。更に、介護者が、被介護者を抱き抱えながら介護者補助装置を押して移動させることで、抱き上げた被介護者を容易に移動させることが可能とされている。特に、台車部には、被介護者の足を載せるためのステップ部が設けられており、移動時に被介護者の足が床面に接触することも防止される。
本発明の第八の態様は、第一〜第七の何れか一つの態様に記載された介護者補助装置において、前記リンク機構には前記介護者の腕部を支える一対の腕補助部が設けられているものである。
第八の態様によれば、被介護者を抱き上げる際に介護者の腕に及ぼされる荷重の一部乃至は全部が腕補助部によって支持されて、介護者の腕への負担が低減されると共に、介護者の腕力が弱い場合や被介護者の体重が重い場合などにも、抱き上げ介護作業を問題なく行うことができる。
本発明の第九の態様は、第八の態様に記載された介護者補助装置において、前記一対の腕補助部の前記リンク機構に対する取付位置と該一対の腕補助部の長さ寸法との少なくとも一方を変更設定可能とする腕補助部調節手段が設けられているものである。
第九の態様によれば、介護者の身長や腕の長さなどの体格に応じて、腕補助部の台車部に対する高さや、介護者と被介護者の対峙方向における腕補助部の位置を、腕補助部調節手段によって調節することができる。従って、体格の異なる複数の介護者が一つの介護者補助装置を共用する場合にも、各介護者の体格に合わせた適切なサイズとすることができて、目的とする介護作業を有効に補助させることができる。
本発明の第十の態様は、第八又は第九の態様に記載された介護者補助装置において、前記一対の腕補助部が前記リンク機構の出力動作において傾動する前記リンクに取り付けられているものである。
第十の態様によれば、一対の腕補助部がリンク機構の出力動作によって傾動することにより、介護者は、腕部を一対の腕補助部によって支えられるだけでなく、一対の腕補助部に載せたままで腕部の角度を変化せしめられる。これにより、たとえばリンク機構の出力動作の進行、即ち介護動作の進行に伴って、腕部の角度変化が腕補助部によって支えられたままで生じて、被介護者の抱き起こしなどにおいて介護者の負担が低減される。しかも、腕補助部を大きく持ち上げるためにリンク機構を大型化する必要がなく、介護者と被介護者の距離を小さく設定することが可能となって、介護者の介護作業の容易化や被介護者の安心感の向上などが図られる。
本発明の第十一の態様は、第十の態様に記載された介護者補助装置において、前記リンク機構が上下の横リンクとそれら上下の横リンクを相互に繋ぐ前記介護者側の縦リンクおよび前記被介護者側の縦リンクとを備える四角形の4リンクとされており、少なくとも一方の該横リンクに対して前記アクチュエータが接続されて該横リンクが前記台車部に対して傾動可能とされていると共に、該横リンクに前記一対の腕補助部が取り付けられているものである。
第十一の態様によれば、リンク機構の出力動作によって傾動する横リンクに一対の腕補助部を設けることにより、簡略な4リンク構造のリンク機構によって、リンク機構の出力動作時に一対の腕補助部の傾動を生じさせることができる。特に、腕補助部の変位による抱き上げ高さの変化量を大きくするために横リンクの長さを大きくする必要がなく、横リンクを挟んで対峙する介護者と被介護者の距離を小さくすることができる。
本発明の第十二の態様は、第八〜第十一の何れか一つの態様に記載された介護者補助装置において、前記腕補助部が取り付けられる前記リンク機構と該腕補助部との間には、該リンク機構と該腕補助部の各一方に固設されるインナ軸部材とアウタ筒部材を弾性体によって弾性連結したブッシュが介装されているものである。
第十二の態様によれば、一対の腕補助部がリンク機構に対してブッシュを介して弾性的に取り付けられることから、一対の腕補助部が介護者の腕に強く押し当てられるのを防ぐことができると共に、介護者が一対の腕補助部の角度を腕力で調節することも可能となる。
本発明の第十三の態様は、第八〜第十二の何れか一つの態様に記載された介護者補助装置において、一対の前記腕補助部が相対的に離隔変位可能な状態で前記リンク機構に取り付けられているものである。
第十三の態様によれば、たとえば被介護者や介護者の体格などに合わせて一対の腕補助部を離隔変位させることにより、体格の異なる複数の被介護者および介護者に同じ介護者補助装置を用いることができる。
本発明によれば、介護者の胴部を支えて補助力を及ぼす胴補助部と、被介護者の胴部を支えて補助力を及ぼすサポート部が、アクチュエータの出力によって出力動作するリンク機構に設けられていることから、アクチュエータの出力によるリンク機構の出力動作によって目的とする補助力を得ることができて、介護者の肉体的な負担を軽減できると共に、被介護者の安心感や安全性の向上なども図られる。特に、リンク機構の出力動作による胴補助部とサポート部の相対変位によって、例えば介護者と被介護者が座位から立位に移行するに従って接近するようにして、立位において介護者と被介護者をより密着させることで、被介護者の安心感がより高められると共に、介護者が前方を視認し易くなることで、立位から座位への移行作業も容易になる。
本発明の第一の実施形態としての介護者補助装置を示す斜視図。 図1に示す介護者補助装置の正面図。 図1に示す介護者補助装置の右側面図。 図1に示す介護者補助装置の平面図。 図1に示す介護者補助装置のフレームの斜視図。 図5に示す介護者補助装置のフレームの正面図。 図5に示す介護者補助装置のフレームの右側面図。 図5に示す介護者補助装置のフレームの平面図。 図1に示す介護者補助装置の使用方法を説明する側面図であって、(I)は、介護者補助装置を座位の被介護者に移動させている状態を、(II)は、前傾姿勢の介護者が座位の被介護者の腋に腕を差し入れた状態を、(III)は、介護者が被介護者を支えながら上体を起す過程を、(IV)は、介護者が被介護者を立位に起し終えた状態を、それぞれ示す。 図1に示す介護者補助装置におけるリンク機構の出力動作を説明する図であって、(i)が出力動作前を、(ii)が出力動作初期を、(iii)が出力動作後期を、(iv)が出力動作完了時を、それぞれ示す。 本発明の第二の実施形態としての介護者補助装置におけるリンク機構の出力動作を説明する図。 本発明の第三の実施形態としての介護者補助装置におけるリンク機構の出力動作を説明する図。 本発明の第四の実施形態としての介護者補助装置を構成するフレームの斜視図。 図13に示す介護者補助装置のフレームの作動を説明する右側面図であって、(a)がリンク機構の出力動作前を、(b)がリンク機構の出力動作後を、それぞれ示す。 本発明の第五の実施形態としての介護者補助装置を構成する支持アーム部の要部を示す平面図。 図15に示す支持アーム部を構成するブッシュの斜視図。 本発明の第六の実施形態としての介護者補助装置を構成する支持アーム部の要部を示す斜視図。 図17に示す支持アーム部の要部を示す平面図。 本発明の第七の実施形態としての介護者補助装置を構成する腕補助部を示す斜視図。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1〜4には、本発明の第一の実施形態としての介護者補助装置10が示されている。介護者補助装置10は、介護者12が向い合せに対峙した座位の被介護者14を椅子やベッド等から抱き上げるなどの介護作業を補助するものであって、床面(屋外であれば地面)上に載置される台車部16と、台車部16によって支持されるフレーム部18およびアクチュエータ20とを有している。以下の説明において、特に説明がない限り、上下方向とは鉛直上下方向となる図2中の上下方向をいう。更に、左右方向とは、図2中の左右方向をいう。更にまた、前後方向とは介護者12と被介護者14が対峙する図3中の左右方向であって、被介護者14側(図3中の左方)を前方とする。なお、図1〜4に示すように、フレーム部18は、介護者12および被介護者14に触れ得る部分が柔軟な複数のクッション22によって覆われているが、構造の理解を容易にするために、図5〜8にはクッション22を取り除いた骨格構造を示した。
より詳細には、台車部16は、板状のベース24が複数のキャスタ26によって支持された構造を有しており、床面上をキャスタ26によって移動可能とされている。本実施形態のベース24では、被介護者14側(前側)の端部が前方に行くに従って下傾する案内部28とされており、被介護者14が前方からベース24に足を乗せ易くなっている。更に、ベース24の左右両端部には、上方へ突出する脱落防止突部30が前後に延びて形成されており、ベース24に乗せた被介護者14の足が脱落防止突部30に当接することで、被介護者14の足がベース24から左右外側へ落ちるのが防止されるようになっている。更にまた、本実施形態のベース24では、被介護者14が足を乗せる左右および前後の中間部分が、介護者12側に行くに従って下傾する傾斜板状とされており、被介護者14の足がベース24から前方へ落ち難くなっている。
なお、本実施形態のベース24は、ステンレスやアルミニウム合金などの金属材料で形成された高剛性の部材とされており、表面(上面)が合成樹脂や布、ゴムなどで形成された保護シート32で覆われているが、図5〜8では、保護シート32が取り除かれた状態が図示されており、金属製のベース24が露出して示されている。また、キャスタ26による台車部16の移動を阻止可能とするストッパ手段が設けられていることが望ましく、例えば、キャスタ26を構成する車輪の回転の許容と阻止を足などで簡単に切替え可能とするストッパを少なくとも一つのキャスタ26に設けることで、介護作業時に台車部16が不意に移動するのを防ぐことができる。
また、台車部16にはフレーム部18が取り付けられている。フレーム部18は、図5〜8に示すように、ベース24と同様の金属などで形成された高剛性の部材であって、支柱部36を備えている。支柱部36は、ベース24から上方に突出する中空乃至は中実の長手形状とされており、本実施形態では、略矩形筒状とされた支柱上部38の下端部が略矩形筒状とされた支柱下部40の上端部に挿入された構造を有している。また、支柱上部38と支柱下部40が長さ方向へ相対変位可能とされており、それら支柱上部38と支柱下部40の内外挿部分が図示しないピンやねじによって長さ方向で相互に位置決め可能とされている。そして、支柱上部38の支柱下部40への挿入量を調節することで、支柱部36の上下長さが変更設定されるようになっており、それに伴って後述するリンク機構58の台車部16に対する高さが変更設定可能とされて、本実施形態のリンク位置設定手段が構成されている。なお、本実施形態の支柱部36は、下端部が左右に分岐する二股形状とされており、それぞれベース24にボルトや溶接などによって固定されている。
また、支柱部36における支柱下部40の上下中間部分には、左右に突出する脛当て42が設けられている。脛当て42は、支柱下部40から左右に突出すると共に前方に屈曲して延び出すロッド状乃至はパイプ状のアーム状支持部材44を備えると共に、かかるアーム状支持部材44の突出先端には前後と直交して広がって前面をクッション22で覆われた当接板部46が設けられた構造を有している。本実施形態の当接板部46は、左右両端部が前方に向かって屈曲して、その左右内面がクッション22で覆われており、被介護者14の脚部が当接板部46に前方から当接した状態において被介護者14の脚部の左右への動き量を制限するようになっている。尤も、脛当て42は必須ではなく、その具体的な構造も特に限定されない。
また、台車部16のベース24には、アクチュエータ20が取り付けられている。アクチュエータ20は、シリンダ部50とそれに一部を挿入されたピストン部52とを有する一般的な構造のものであって、油圧や空気圧、電気などによってピストン部52がシリンダ部50に対して長さ方向で変位することにより、伸縮による所定の出力が発揮されるようになっている。更に、アクチュエータ20は、シリンダ部50の下端がベース24に対してピン接合されており、ベース24に対して前後方向へ傾動可能とされている。
さらに、支柱部36の支柱下部40には、アクチュエータ20の操作部54が設けられている。操作部54は、支柱下部40の後方(介護者12側)に設けられて、アクチュエータ20と電気的に接続されており、操作部54を後述のように操作することで、アクチュエータ20の長さ(出力)を変更できるようになっている。更に、操作部54には、操作スイッチ56が左右両側に設けられている。この操作スイッチ56は介護者12の膝の高さに設けられており、介護者12は、操作スイッチ56を膝で左右内側へ押し込むことによって、手を使うことなくアクチュエータ20を伸縮作動させることができる。なお、本実施形態では、左右一方の操作スイッチ56を押込み操作している間、アクチュエータ20が伸長する一方、左右他方の操作スイッチ56を押込み操作している間、アクチュエータ20が収縮するようになっている。また、介護者12が操作時に痛みなどを感じないように、操作スイッチ56の左右外面もクッション22で覆われている。
また、支柱部36における支柱上部38の上方には、リンク機構58が設けられている。本実施形態のリンク機構58は、4つのリンク60をジョイントとしての連結ピン62で相対傾動可能に連結した四角形状とされており、上側の横リンク60aと、下側の横リンク60bと、上下の横リンク60a,60bの前端を相互に繋ぐ被介護者14側の縦リンク60cと、上下の横リンク60a,60bの後端を相互に繋ぐ介護者12側の縦リンク60dとを、備えている。更に、横リンク60a,60bが互いに略同じ長さとされていると共に、縦リンク60c,60dが互いに略同じ長さとされている一方、横リンク60a,60bが縦リンク60c,60dよりも長さ寸法を大きくされている。
また、介護者12側の縦リンク60dは、台車部16に固設された支柱部36の支柱上部38に一体的に固定されて、支柱部36に対する傾動等の相対変位が防止されていると共に、上方へ行くに従って介護者12側に傾斜している。この縦リンク60dには、左右に突出する直線的なロッド形状のハンドル部64が設けられており、介護者12が介護者補助装置10を移動させる際に掴むことができるようになっている。更に、被介護者14側の縦リンク60cは、介護者12側の縦リンク60dと略平行に延びており、リンク機構58が略平行四辺形とされて、上側の横リンク60aが下側の横リンク60bよりも介護者12側に位置している。
さらに、上側の横リンク60aには、胴補助部66が取り付けられている。胴補助部66は、横リンク60aの上方を覆うように設けられた板状の部材であって、上面がクッション22で覆われており、介護者12の胴部前面に押し当てられて、介護者12の上半身を支持するようになっている。なお、胴補助部66を構成するクッション22は、後方へ延び出して後側の縦リンク60dの後面を覆っており、介護者12の胴部前面が縦リンク60dに直接的に接触するのを防止している。
更にまた、前側の縦リンク60cには、サポート部68が取り付けられている。サポート部68は、縦リンク60cの前方を覆うように設けられた板状の部材であって、前面がクッション22で構成されており、被介護者14の胴部前面に押し当てられて、被介護者14の上半身を支持するようになっている。なお、サポート部68は、被介護者14の胴部前面に当接する支持面が、リンク機構58の前方に位置する被介護者用スペースに向かって設けられている。
また、リンク機構58には、アクチュエータ20の上端が取り付けられている。即ち、リンク機構58における下側の横リンク60bの前後中間部分に対して、アクチュエータ20のピストン部52の上端が取り付けられている。このように、リンク機構58と台車部16が、支柱部36だけでなく、アクチュエータ20によっても連結されていることにより、リンク機構58の形状がアクチュエータ20の長さに応じて決定されると共に、アクチュエータ20の伸縮出力によってリンク機構58の形状が変化せしめられて、リンク機構58の出力動作が得られるようになっている。なお、アクチュエータ20の上端は、横リンク60bに対してピン接合されており、アクチュエータ20が横リンク60bに対して前後方向に傾動可能とされている。
また、前側の縦リンク60cには、支持部72が一体形成されている。支持部72は、縦リンク60cを長さ方向で下方へ延長するように設けられており、縦リンク60cに一体で設けられていても良いし、別部材とされて縦リンク60cに固定されていても良い。なお、本実施形態では、前面をクッション22で構成された保護部材74が支持部72の前方を覆うように設けられており、被介護者14が支持部72に接触するのを防ぐようになっている。
さらに、支持部72には、支持アーム部76が取り付けられている。支持アーム部76は、支持部72から左右外方に突出すると共に中間部分で前方へ屈曲して延びており、左右に延びる基端部分の中央には、支持部72に外挿される矩形筒状の取付部78が設けられている。なお、支持アーム部76の後述する基端部92が支持部72に対して回転可能に且つ回転を阻止可能な態様で取り付けられて、支持アーム部76の後述する先端部98の傾斜角度を調節可能とされていても良い。
また、前方へ延びる支持アーム部76の先端部分には、介護者12の腕を支える腕補助部80が設けられており、左右の腕補助部80,80が支持アーム部76を介してリンク機構58に支持されている。この腕補助部80は、支持アーム部76の突出先端部分(先端部98)に固定されて支持アーム部76の上方を覆う下方保持部82を有している。更に、下方保持部82の左右内端には下方へ突出して支持アーム部76の左右内方を覆う被介護者胴保護部84が設けられていると共に、左右外端には上方へ突出する側方保持部86が設けられており、更に後端には後方へ傾斜しながら上方へ突出する後方保持部88が設けられている。なお、腕補助部80は、支持アーム部76に対して固定されていても良いが、たとえば支持アーム部76に対して傾斜角度を調節できるように取り付けられていても良い。更に、腕補助部80の支持アーム部76に対する取付位置を変更設定可能とすることもできる。
また、介護者12の腕部に接触する下方保持部82の上面と側方保持部86の左右内面と後方保持部88の前面とは、何れもクッション22で覆われている。更に、被介護者14と接触し得る被介護者胴保護部84の左右内面もクッション22で覆われている。なお、本実施形態では、介護者補助装置10の左右方向で最も外側に位置する側方保持部86が、左右内面だけでなく左右外面もクッション22で覆われており、それら側方保持部86の左右内面と外面を覆うクッション22が側方保持部86の上方を跨いで一体で繋がっている。
なお、取付部78は、支持部72に外挿された状態で支持部72の長さ方向にスライド可能とされており、本実施形態では、取付部78に側方から螺入されるねじ90を締め込んで、ねじ90の先端面を支持部72の外周面に押し当てることで、取付部78が支持部72に対して任意の位置で位置決めされるようになっている。
また、支持アーム部76は、左右に直線的に延びる基端部92の左右外端が、L字状に屈曲して延びる中間部94の左右内端に外挿された構造を有しており、基端部92に対する中間部94の挿入量を調節することで支持アーム部76の左右方向の長さを調節可能とされている。更に、基端部92と中間部94の連結部分において、基端部92にはねじ96が直交方向に螺挿されており、ねじ96を締め込んで先端面を中間部94の外周面に押し当てることにより、支持アーム部76の左右方向の長さが保持されるようになっている。同様に、支持アーム部76は、腕補助部80に固定される先端部98の後端が、中間部94の前端に外挿された構造を有しており、挿入量を調節することで前後方向の長さを調節可能とされていると共に、先端部98と中間部94の連結部分において、先端部98に螺入されたねじ100を締め込むことで、先端部98と中間部94の前後方向での相対位置が保持されて、支持アーム部76の前後方向の長さが保持されるようになっている。
そして、取付部78の支持部72に対する位置の調節によって、腕補助部80の上下位置が設定可能とされていると共に、支持アーム部76の左右および前後での伸縮によって、腕補助部80の前後および左右の位置が設定可能とされており、これらによって本実施形態における腕補助部調節手段が構成されている。
このような構造とされた介護者補助装置10は、例えば、図9に示すように介護者12が座位の被介護者14を立位に抱き起す介護作業をする際などに使用される。以下に、介護者補助装置10の使用方法の一例を説明する。
先ず、介護者12は、介護者補助装置10のハンドル部64を握って押すことにより、介護者補助装置10を床面上で移動させて、図9(I)に示すように、ベッド102の端などに座った被介護者14に対して正面から接近させる。なお、図9(I)にも示すように、介護者12が支柱部36およびリンク機構58よりも後方に位置しており、支柱部36およびリンク機構58よりも後方には、介護者12が介護作業を行う介護者用スペースが設けられている。更に、介護者用スペースには、ベース24の後方において、介護者12が地面(床面)に足裏を直接接地させることが可能な接地領域が設けられている。
また、被介護者14の足がベース24に届き得る程度まで介護者補助装置10を被介護者14に接近させてから、被介護者14の足をベース24に乗せて、サポート部68が被介護者14の胴部前面に当接するまで介護者補助装置10を被介護者14に更に接近させる。被介護者14が自力で足をベース24に乗せられない場合には、介護者12は、ストッパなどで介護者補助装置10の移動を阻止した後、被介護者14の足をベース24に乗せる作業を行うこともできる。本実施形態の介護者補助装置10では、支柱部36に被介護者14の脚部を保護する脛当て42が設けられていることから、被介護者14の足をベース24に乗せる際に、脚部前面が脛当て42に当接するように位置決めする。上記の説明からもわかるように、支柱部36およびリンク機構58よりも前方には、被介護者14が介護を受ける被介護者用スペースが設けられており、介護者用スペースと被介護者用スペースが支柱部36およびリンク機構58を挟んで前後に対峙している。更に、被介護者用スペースでは、被介護者14が台車部16のベース24に足を乗せられるようになっており、ベース24によって本実施形態のステップ部が構成されている。
なお、介護者12は、支柱部36の長さと、支持アーム部76の基端部分および先端部分の長さとを、介護者12および被介護者14の体格に合わせて予め調節して、リンク機構58の高さと腕補助部80,80の位置とを設定しておくことが望ましい。特に支柱部36の長さは、好適には、胴補助部66の後端が介護者12の臍の高さとなるように設定されるが、後述するような使用時の前傾姿勢で確認しながら適宜に調節することが望ましい。また、一般的には、左右に延びる支持アーム部76の基端部分の長さが肩幅に応じて設定されると共に、前後に延びる支持アーム部76の先端部分の長さが腕の長さに応じて設定されるが、支柱部36と同様に、後述する前傾姿勢時の腕の位置を実際に確認しながら調節することが望ましい。
次に、図9(II)に示すように、介護者12は、ハンドル部64から手を離すと共に、前傾姿勢をとって胴補助部66の上面に胴部(腹部乃至は胸部)の前面を当接させる。また、介護者12は、左右の腕を被介護者14の両腋の下に差し入れると共に、左右の腕を各一方の腕補助部80の下方保持部82に載せる。
このように介護者12が被介護者14と対峙して抱き抱えた状態で、介護者12は一方の操作スイッチ56を膝で押圧操作して、アクチュエータ20を伸長出力させる。これにより、図9(III)および(IV)に示すように、介護者12の上体が胴補助部66で押圧されて起され、それに伴って、介護者12によって抱き抱えられた被介護者14が座位から立位に抱き起される。なお、被介護者14を抱き起す際に介護者12の両腕に及ぼされる荷重は、介護者12の腕を下方から支える腕補助部80によって支持されることから、介護者12に大きな腕力が要求されることはなく、介護者12の肉体的な負担が軽減される。更に、本実施形態の腕補助部80は、左右外端に側方保持部86を備えており、介護者12の腕が腕補助部80から左右外側へ外れてしまうことも回避されている。加えて、腕補助部80の後端には後方保持部88が設けられていることから、介護者12は肘を後方保持部88に当接させることで、腕の前後位置を簡単に維持することができる。このことからも明らかなように、介護者12は、介護者補助装置10の使用前に、肘が後方保持部88に当接するように腕補助部80の前後位置を設定することが望ましい。
ここにおいて、このような介護者12および被介護者14の姿勢の変化は、アクチュエータ20の出力に伴うリンク機構58の出力動作によって実現される。即ち、アクチュエータ20によって台車部16に連結されたリンク機構58は、図10に示すように、アクチュエータ20の伸縮出力によって、各リンク60が相互に傾動し、形状変化による出力動作が生じるようになっている。
より具体的には、図10には、アクチュエータ20の伸長に伴うリンク機構58の動作が段階的に示されている。即ち、アクチュエータ20が最も短い初期状態(i)から(ii)、(iii)、(iv)の順にアクチュエータ20が伸長するに従って、リンク機構は、横リンク60a,60bの水平に対する傾斜角度が大きくなると共に、前側の縦リンク60cが後側の縦リンク60dに対して上方へ変位する。本実施形態のリンク機構58は、平行四辺形とされていることから、前側の縦リンク60cが後側の縦リンク60dと略平行な一定の傾斜角度を保ったままで上方へ変位する。要するに、アクチュエータ20の伸長によって、縦リンク60cは、縦リンク60dに対して前後方向で次第に接近すると共に上下方向で次第に離隔するように変位する。
このようなリンク機構58の出力動作によって、横リンク60aが横リンク60aと縦リンク60dとを繋ぐ連結ピン62を中心に傾動して、横リンク60aに設けられた胴補助部66の水平に対する傾斜角度が大きくなると共に、上側の横リンク60aと前側の縦リンク60cとの成す角度θが次第に小さくなる。これにより、横リンク60aに設けられた胴補助部66が、縦リンク60cに設けられたサポート部68に対して、前後方向で略対向するように相対変位せしめられる。また、縦リンク60cに設けられたサポート部68は、横リンク60aに設けられた胴補助部66の前端と共に上方へ変位せしめられて、サポート部68の下端が、胴補助部66の後端に対して、上方へ相対変位せしめられると共に、前後方向で接近せしめられる。
このように、横リンク60aとそれに固定された胴補助部66の水平に対する傾斜角度が、アクチュエータ20の伸長出力によるリンク機構58の出力動作に伴って大きくなることから、胴補助部66に当接した介護者12の上体が、胴補助部66の傾動に伴って鉛直に近づくように起される。その結果、図9に示すように、介護者12の腕で腋の下を支えられた被介護者14が、介護者12の姿勢変化に伴って抱き上げられる。なお、リンク機構58の出力動作によって横リンク60aが傾斜することにより、胴補助部66における介護者12の支持面は、リンク機構58の後方に設けられた介護者用スペース側へ向けられるようになっている。
さらに、前側の縦リンク60cがアクチュエータ20の伸長出力に伴って上方へ変位することから、被介護者14が座位から立位に移行するに従って、縦リンク60cに設けられて被介護者14の胴部を支持するサポート部68の位置が、徐々に床面から離れて高くなる。これにより、被介護者14は、胴部の所定位置をサポート部68にもたれかからせながら、座位から立位へ移行することができる。
なお、本実施形態では、台車部16に被介護者14の脚を乗せるベース24が設けられており、介護者12が介護者補助装置10を押す或いは引くことで、ベース24上で抱き上げた被介護者14を介護者補助装置10に乗せたまま移動させることができる。なお、介護者12は、ハンドル部64を握ることなく介護者補助装置10を移動させることも可能であり、特に被介護者14を抱き抱えた状態では、腕補助部80に前後左右の力を加えることによっても、介護者補助装置10を容易に移動させることができる。
さらに、上述した座位から立位への移行(抱き上げ)とは反対に、被介護者14を座位へ移行させることも可能である。即ち、介護者12は、例えばベッド102から立ち上がった被介護者14を介護者補助装置10に乗せたまま車椅子やトイレの便座などの手前まで移動させた後で、他方の操作スイッチ56を膝で押圧操作することにより、アクチュエータ20を収縮出力させる。これにより、リンク機構58が図10(iv)の状態から(i)の状態へ移行して、介護者12が徐々に前傾姿勢になると共に、それに伴って被介護者14が図9(IV)のような立位から図9(II)のような座位へ移行する。そして、介護者12は、被介護者14を目的とする場所に座らせた後で、腕を被介護者14の腋下から抜き出して、介護者補助装置10のハンドル部64を握り、介護者補助装置10を被介護者14から遠ざける(図9(I)参照)。以上により、介護者12は、抱き上げた被介護者14を座位へ移行させることができる。
ここにおいて、本実施形態に従う構造とされた介護者補助装置10では、従来から介護者12が抱き上げ(抱き起し)の介護作業を補助するようになっており、介護者12が座位の被介護者14に直接触れて抱き上げることによって被介護者14の姿勢を変化させることから、被介護者14に安心感を与えることができる。更に、被介護者14が地上を離れて大きく持ち上げられることはなく、被介護者14が恐怖を感じるのを防ぐことができると共に、体に装置が直接接触することに起因する被介護者14の痛みや違和感も回避される。
しかも、介護者12は、胴補助部66によって上体を起す力を補助されるだけでなく、左右の腕補助部80,80によって両腕を支えられることで、被介護者14を抱き抱えた状態を簡単に維持することができる。これにより、介護者12の腕への負担が低減されると共に、介護者12の腕力だけでは被介護者14の体重を支えきれない場合などでも、介護作業を問題なく行うことができる。
しかも、本実施形態の介護者補助装置10において、介護者12は、介護者用スペースにおいて床面に直接立つことで、強く踏ん張りながら作業することが可能とされていると共に、介護者補助装置10が介護作業中に不意に移動するのを防止することができる。更に、介護者12が床面に足裏を直接接地させて立つ一方で、被介護者14はベース24上に立つようになっており、被介護者14が介護者補助装置10に乗った状態で立位への移行を完了するようになっていることから、介護者12が被介護者14を抱き抱えながら介護者補助装置10を押して移動させることで、被介護者14を容易に移動させることが可能とされている。
さらに、介護者補助装置10では、リンク機構58が変形して被介護者14の座位から立位への移行が進行するに伴って、介護者12と被介護者14の距離が接近するようになっており、被介護者14が立位への移行を完了した状態では、介護者12の上体と被介護者14の上体が十分に接近した略密着状態とされる。その結果、介護者12は前方を被介護者14の肩越しにより近い位置まで見ることができて、被介護者14を立位から座位へ移行させる介護作業において、介護者12は、被介護者14が座るべき場所(椅子の座面など)を目視で確認しながら介護作業を行うことが可能となり、被介護者14を目的の場所へ容易に座らせることができる。
特に本実施形態では、リンク機構58が4つのリンク60a,60b,60c,60dからなる簡単な構造とされていることから、部品点数の削減や小型化及び軽量化、低コスト化などが図られている。
しかも、介護者12側に位置する縦リンク60dが支柱部36に固定されており、上側の横リンク60aに介護者12の胴前面を支持するサポート部68が設けられていると共に、被介護者14側の縦リンク60cには被介護者14の胴前面を支持する胴補助部66が設けられている。このようなリンク機構58によれば、リンク機構58の出力動作に伴って、縦リンク60dと横リンク60aの相対的な傾動が生じて、サポート部68と胴補助部66の相対的な角度が小さくなり、それらサポート部68と胴補助部66が前後で対向するように接近せしめられる。その結果、介護者12と被介護者14がサポート部68と胴補助部66によって上体をそれぞれ起されると共に、介護作業の進行に伴って介護者12と被介護者14が対峙方向(前後方向)で相互に接近せしめられて、向かい合った略密着状態に移行する。このように、リンク機構58では、4つのリンク60a,60b,60c,60dからなる簡単な構造を採用しながら、介護者12による被介護者14の抱き起し介護作業を有効に補助し、且つ介護者12と被介護者14を介護作業が進行するに従って徐々に接近させて上体を略密着状態に移行させることができる。従って、被介護者14が立位への移行によって自力では体を支え難くなるのに伴って、介護者12との距離が近づいて、介護者12によってより広い面積で安定して支えられることから、被介護者14が安心感を得ることができる。加えて、介護者12が抱き抱えた被介護者14の肩越しに前方を目視し易くなって、被介護者14を立位から座位へ移行させる介護作業もスムーズに行うことができる。
また、本実施形態の介護者補助装置10では、支柱部36を伸縮させることでリンク機構58の高さ方向での位置を調節可能とされている。それ故、複数の介護者12や被介護者14が介護者補助装置10を共用する場合にも、装置を使用する介護者12および被介護者14の体格などに合わせてリンク機構58の上下位置を調節することで、その介護者12および被介護者14に適した装置サイズとすることができて、目的とする補助力を安定して得ることができる。
同様に、介護者12の両腕を支える一対の腕補助部80,80は、取付部78の支持部72に対する固定位置の調節によって、上下方向で位置を調節して変更設定することができると共に、支持アーム部76の伸縮によって、左右方向および前後方向で位置を調節して変更設定することができる。それ故、介護者12の体格に合わせて適切な位置に腕補助部80を配することが可能であり、介護者12に無理な姿勢を強いることなく、介護者12の腕を支えて補助することができる。
また、図11には、本発明の第二の実施形態としての介護者補助装置110が概略的に示されている。介護者補助装置110は支柱部36の上方にリンク機構112を備えており、リンク機構112は横リンク114a,114bの長さが可変とされている。以下の説明において、第一の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、同一の符号を付すことで説明を省略する。また、以下に説明する介護者補助装置110においてリンク機構112以外の図示が省略されている部分や、リンク機構112の各部の具体的な構造などは、第一の実施形態と同様のものが採用され得ることから、説明を省略する。
すなわち、図11に示すリンク機構112は、第一の実施形態のリンク機構58と同様に四角形状の4リンク機構であって、上下の横リンク114a,114bと前後の縦リンク60c,60dが連結ピン62によって互いに傾動可能にピン接合された構造を有している。なお、上側の横リンク114aにサポート部68が取り付けられていると共に、前側の縦リンク60cに胴補助部66が取り付けられている。また、図中では省略されているが、前側の縦リンク60cには、第一の実施形態と同様に左右の腕補助部80,80を設けることが望ましい。
また、横リンク114は、中空筒構造で前端を縦リンク60cにピン接合された前部116が、後端を縦リンク60dにピン接合された後部118に対して、前方から外挿された構造を有しており、前部116と後部118が長さ方向に相対変位可能とされていると共に、それら前部116と後部118を所定の相対位置で位置決めして保持することも可能とされている。そして、前部116と後部118を長さ方向で相対変位させることにより、横リンク114a,114bが長さ方向に伸縮変形可能とされて本実施形態のリンク伸縮機構が構成されており、縦リンク60cと縦リンク60dの距離、換言すれば横リンク114a,114bの長さ方向におけるリンク機構112の寸法が変更設定可能とされている。
さらに、横リンク114a,114bの長さ寸法は、アクチュエータ20の出力によるリンク機構112の出力動作に伴って、図示しないモータの出力などによって変化せしめられるようになっている。本実施形態では、図11に示すように、アクチュエータ20の長さが長くなるに従って、横リンク114a,114bの長さも長くなるようにされており、特に介護作業の後半である図11(iii)から(v)において、横リンク114a,114bの長さの変化が大きくされている。また、本実施形態では、上下の横リンク114a,114bが互いに略同じ長さになるように伸縮されて、リンク機構112が略平行四辺形に保たれるようになっているが、上下の横リンク114a,114bの伸縮量が互いに異なるように制御することもできる。
このような本実施形態に従う構造とされたリンク機構112を備える介護者補助装置110においても、第一の実施形態と同様に、介護者12と被介護者14の両方に介護作業の補助力を及ぼすことができて、被介護者14の座位から立位への姿勢の移行を簡単且つ安全に実現することができる。
しかも、リンク機構112では、横リンク114a,114bの長さが可変とされており、横リンク114a,114bの長さが介護作業の初期において短くされていると共に、介護作業の進行に伴って徐々に長くなるようにされている。それ故、介護作業の初期では、介護者12と被介護者14の距離が対峙方向(前後方向)で短くされて、介護作業の開始時に介護者12が被介護者14により密着して、介護者12が被介護者14をしっかり抱き抱えることができる。一方、介護作業が進行して横リンク114a,114bの水平に対する傾斜角度が大きくなるに従って横リンク114a,114bの長さが次第に長くされることにより、図11に示すように、被介護者14側である前側の縦リンク60cの初期位置からの変位量が大きくされて、リンク機構112の上下方向への出力が大きく得られるようになっている。従って、リンク機構112の出力動作によって被介護者14に及ぼされる補助力が効率的に発揮されて、被介護者14および介護者12の負担を抑えながら被介護者14を立位に移行させることができる。
なお、本実施形態では、介護者12側の胴補助部66は、支柱部36に固定された縦リンク60dに接続される上側の横リンク114aの後部118に取り付けられており、第一の実施形態と同様にリンク機構112の出力動作に対する傾動を生じるだけで、横リンク114a,114bの伸縮方向への胴補助部66の変位は生じない。しかしながら、例えば、横リンク114aの前部116に胴補助部66を取り付けて、横リンク114aの伸縮に伴って胴補助部66の位置が横リンク114aの長さ方向で変化するようにしても良い。
また、リンク機構は、必ずしも4つのリンクからなるリンク機構に限定されるものではなく、例えば、5つ以上のリンクからなる構造も採用可能である。具体的には、例えば、図12に示された本発明の第三の実施形態としての介護者補助装置120では、5リンクのリンク機構122が例示されている。このリンク機構122は、前記第一の実施形態の4リンク機構(58)における下側の横リンク(60b)が長さ方向中間部分で分割されてジョイントとしての連結ピン62で傾動可能にピン接合されたような構造を有している。
より具体的には、リンク機構122は、5つのリンク124a,124b,124c,124d,124eが五角形の各辺をなすように配されて両端部分を連結ピン62でピン接合された構造を有しており、それら5つのリンク124a,124b,124c,124d,124eが相対傾動することで出力動作が得られるようになっている。また、リンク124aが支柱部36に固定されて上下に延びていると共に、リンク124aの下端に後端を接続されたリンク124bの中央部分には、アクチュエータ20の上端がピン接合されている。更に、リンク124bの前端にピン接合されたリンク124cは、リンク124bと成す角の大きさα(図12(i)参照)が制限されており、例えば100°≦α≦180°とされている。更にまた、リンク124aの上端にピン接合されたリンク124eは、リンク124aと成す角の大きさβ(図12(i)参照)が制限されており、例えば90°≦β≦180°とされている。なお、本実施形態では、リンク124eに胴補助部66が設けられていると共に、リンク124dにサポート部68が設けられている。
このような5つのリンク124を備えるリンク機構122においても、前記実施形態の4リンク機構と同様に、アクチュエータ20の伸縮出力によって、リンク機構122の出力動作が生じるようになっている。即ち、図12(i)に示す初期状態からアクチュエータ20が伸長変形すると、先ず、リンク124bとリンク124cの相対的な傾斜角度αがアクチュエータ20の伸長に伴って180°まで徐々に大きくなって、図12の(i)と(ii)に示すように、リンク124dの水平に対する傾斜角度が小さくなることで、リンク124dに設けられたサポート部68が被介護者14の腹部を押し上げて被介護者14の上体を前傾させる。
さらに、リンク124bとリンク124cの相対的な傾斜角度αが180°より大きくならないことから、アクチュエータ20が更に伸長すると、リンク124bとリンク124cの水平に対する傾斜角度が大きくなる。これにより、図12の(iii)〜(v)に示すように、リンク124dが上方へ変位すると共に、リンク124eのリンク124aに対する相対的な傾斜角度βが90°から180°まで大きくなる。その結果、リンク124eに設けられた胴補助部66が略水平から垂直まで傾動して、介護者12の上体が胴補助部66で押されて起されると共に、被介護者14の上体がサポート部68で押されて上方に持ち上げられる。これらによって、被介護者14が座った状態から抱き上げられて、少なくとも座面から持ち上げられた移乗可能状態に移行せしめられるようになっている。
なお、本実施形態では5リンク機構を例示したが、リンク機構の形状がアクチュエータ20の出力に対して所定の対応形状に定まって保持可能とされていると共に、アクチュエータ20の出力に伴って胴補助部66とサポート部68を適切に相対変位させるように出力動作するものであれば、リンク機構の構造は特に限定されるものではなく、6つ以上のリンクを備えるリンク機構なども採用され得る。
すなわち、実施形態としては4節リンクと5節リンクを示したが、本発明では3節リンクのような自由度が0の固定連鎖を除く自由度が1以上の数式モデルで表すことができるリンク機構を採用することができる。そこにおいて、4節リンク(4リンク)のように自由度が1の場合にはアクチュエータ等の外力で静定保持および安定動作させることができるから望ましいが、5節リンク(5リンク)のように自由度が2以上の場合にも適数個のアクチュエータを用いたり節点(ジョイント)の回動角度を制限することなどによって静定保持および安定動作させて利用することができる。更に、リンク機構の自由度として回動節に加えてスライド節(リンク長の変化)も採用することが可能であり、回動節のみのリンク機構と同様に拘束条件を考慮することで自由度が2以上となる機構も利用可能である。
また、図13には、本発明の第四の実施形態としての介護者補助装置130が、クッション22が取り除かれたフレーム状態で図示されている。介護者補助装置130は、リンク機構58における下側の横リンク60bに対して、一対の腕補助部80,80が取り付けられた構造を有している。なお、図中では見易さのために省略されているが、本実施形態の介護者補助装置130は、第一の実施形態のクッション22と同様のクッションを備える。
より詳細には、横リンク60bの長さ方向の中間部分には取付孔132が形成されており、支持アーム部76の基端部92が取付孔132に挿通された状態で横リンク60bに取り付けられている。支持アーム部76の横リンク60bへの取付方法は特に限定されるものではないが、本実施形態では、支持アーム部76の基端部92が取付孔132に挿通された状態で横リンク60bに溶接等されて固定されている。これにより、基端部92が横リンク60bに対して回転不能に取り付けられており、先端部98が横リンク60bと略平行に配されて前後に延びている。なお、支持アーム部76の基端部92と横リンク60bの取付構造としては、基端部92の取付孔132への圧入による固定やねじ止め、かしめ固定など、各種構造が採用され得る。加えて、支持アーム部76は、横リンク60bに対して必ずしも固定されていなくても良く、たとえば、取付孔132に挿通された基端部92が横リンク60bに対してある程度の角度範囲で回転可能に取り付けられ得る。また、第一の実施形態において支持アーム部76が取り付けられていた支持部72および取付部78は、本実施形態では設けられていない。
このように支持アーム部76の基端部92が横リンク60bに取り付けられることにより、支持アーム部76の先端部98に固定される腕補助部80が横リンク60bに対して間接的に取り付けられている。
そして、本実施形態の介護者補助装置130は、図14に示すように、一対の腕補助部80,80の傾斜角度が、リンク機構58の出力動作時に生じる横リンク60bの傾動に合わせて変化するようになっている。即ち、リンク機構58の出力動作前には、図14(a)に示すように、横リンク60bが略水平に延びており、一対の腕補助部80,80を支持する支持アーム部76の先端部98,98が略水平に延びている。
一方、アクチュエータ20の出力によるリンク機構58の出力動作が開始されると、横リンク60bが台車部16に対して相対的に傾動して、横リンク60bの水平に対する傾斜角度が大きくなる(図14(b)参照)。それに伴って、横リンク60bに固定された支持アーム部76の先端部98,98も台車部16に対して相対的に傾動して、先端部98,98の水平に対する傾斜角度が大きくなる。これにより、支持アーム部76の先端部98,98に固定された腕補助部80,80の上面が、介護者の前方へ行くに従って上傾するように傾動せしめられる。なお、図14(b)では、リンク機構58の出力動作が完了したアクチュエータ20の最伸長状態が図示されている。
このような本実施形態に従う構造とされた介護者補助装置130によれば、介護者は、左右の腕部が一対の腕補助部80,80によって支持されながら、リンク機構58の出力動作の進行、換言すれば介護作業の進行に伴う一対の腕補助部80,80の傾動によって左右の腕部を持ち上げられる。これにより、一対の腕補助部80,80で支えられながら介護者の腕部が被介護者をより大きく抱き上げられるように傾動せしめられて、介護者は小さな腕力によって例えば被介護者を座位から立位へ移行させることができる。
なお、本実施形態では、簡略な4リンク構造のリンク機構58においてリンク機構58の出力動作時に傾動する横リンク60bに一対の腕補助部80,80を固定することにより、簡単な構造で一対の腕補助部80,80の傾動による効果的な抱き上げ補助が実現されるようになっている。尤も、一対の腕補助部80,80の取付対象は必ずしも横リンク60bに限定されるものではなく、たとえば不等長の上下横リンクを備える4リンク構造のリンク機構では、リンク機構の出力動作時に被介護者側の縦リンクも傾斜角度が変化することから、当該縦リンクに一対の腕補助部を取り付けることによっても、リンク機構の出力時に一対の腕補助部が傾動するようにできる。更に、たとえば、5リンク以上のリンク機構においても、リンク機構の出力時に傾動するリンクに対して一対の腕補助部を取り付けることにより、本実施形態と同様に抱き上げ補助を有利に実現することが可能となる。
また、図15には、本発明の第五の実施形態としての介護者補助装置の要部である支持アーム部140の一部が図示されている。支持アーム部140は、図示しないリンク機構に取り付けられる基端部92と、湾曲した中間部94との接続部分にブッシュ142が配された構造を有している。このブッシュ142は、図16に示すように、インナ軸部材144とアウタ筒部材146が弾性体148によって弾性連結された構造を有している。
より詳細には、インナ軸部材144は、本実施形態では略円筒形状とされており、金属や合成樹脂で形成された硬質の部材とされている。一方、アウタ筒部材146は、インナ軸部材144の外径よりも大きな内径を有する略円筒形状であって、インナ軸部材144と同様に硬質の材料とされている。
そして、インナ軸部材144がアウタ筒部材146に対して略同一中心軸上で挿通配置されると共に、それらインナ軸部材144とアウタ筒部材146が弾性体148によって相互に弾性連結されている。弾性体148は、略円筒形状のゴム弾性体とされており、内周面がインナ軸部材144の外周面に固着されていると共に、外周面がアウタ筒部材146の内周面に固着されている。
このブッシュ142は、たとえば、支持アーム部140の基端部92がアウタ筒部材146に取り付けられると共に、支持アーム部140の中間部94がインナ軸部材144に取り付けられることにより、それら基端部92と中間部94の間に介装されている。本実施形態では、インナ軸部材144の軸方向端面に中間部94の軸方向端部に形成される図示しないフランジが重ね合わされてねじ止めされることにより、インナ軸部材144と中間部94が固定されている一方、アウタ筒部材146が基端部92に圧入されることにより、アウタ筒部材146と基端部92が固定されている。尤も、インナ軸部材144およびアウタ筒部材146の支持アーム部140への取付方法は、特に限定されるものではなく、更にインナ軸部材144が基端部92に固定されるとともにアウタ筒部材146が中間部94に固定されるようにしても良い。
また、基端部92が図示しないリンク機構に取り付けられていると共に、中間部94が先端部98を介して図示しない腕補助部に取り付けられていることから、インナ軸部材144が間接的にリンク機構に取り付けられていると共に、アウタ筒部材146が間接的に腕補助部に取り付けられている。要するに、ブッシュ142は、リンク機構と腕補助部の間に配設されている。なお、リンク機構および腕補助部は、たとえば第一の実施形態と同様の構造とされており、本実施形態に記載の構造は、第一の実施形態や第四の実施形態に示す介護者補助装置に好適に適用可能である。
このようにブッシュ142を介して連結された支持アーム部140の基端部92と中間部94は、弾性体148の弾性変形によって相対的な変位を許容されており、特に弾性体148の捻り変形(周方向の剪断変形)による基端部92と中間部94の相対的な回転が、比較的に小さなばね定数で許容されている。これにより、インナ軸部材144に取り付けられたリンク機構に対して、アウタ筒部材146に取り付けられた腕補助部が、弾性体148の弾性変形によって相対変位を許容されている。なお、本実施形態において、支持アーム部140の中間部94と先端部98は、相対変位が略不能な状態で相互に固定されているが、中間部94と先端部98の接続部分にもブッシュ142を配することができる。
このような支持アーム部140によれば、先端部98に取り付けられる図示しない腕補助部が、中間部94の基端部92に対する相対的な捻り変位(回転)によって、水平に対する傾斜角度の変化を弾性的に許容されている。これにより、たとえば介護者が腕補助部を腕で押し下げるなどして、腕補助部の傾斜角度を調節することができる。
しかも、抱き上げ時に腕補助部から介護者の腕に作用する圧力が、弾性体148の弾性変形により許容される腕補助部の弾性的な傾動によって低減される。それ故、介護者の腕が腕補助部に対して瞬間的に又は衝撃的に作用する大きな荷重で強く押し付けられて生じる痛みなどを防ぐことができる。
加えて、ブッシュ142の弾性体148がゴムとされていることから、腕補助部の傾斜角度の変化量が大きくなるに従ってブッシュ142のばねが非線形的に硬くなる。それ故、腕補助部の過大な傾動が防止されて、介護者は、腕補助部で支えられた腕部によって被介護者を確実に支えることができる。
なお、本実施形態では、ブッシュ142のインナ軸部材144およびアウタ筒部材146が支持アーム部140とは別体とされた構造を例示したが、たとえば、支持アーム部の中間部がインナ軸部材を構成すると共に、支持アーム部の基端部がアウタ筒部材を構成して、それら中間部と基端部に弾性体が直接固着されるようにしても良い。また、弾性体148は、ゴム弾性体に限定されず、たとえばゴム状弾性を示すエラストマなどを採用することもできる。更に、本実施形態では、ブッシュ142が支持アーム部140における基端部92と中間部94の間に配されていたが、ゴムブッシュ142を先端部98と図示しない腕補助部の間に配設して、腕補助部を支持アーム部に対して弾性的に変位可能としても良い。
また、たとえば支持アーム部の基端部と中間部をコイルスプリングや棒ばねなどの弾性体で弾性連結することによっても、腕補助部の当接によって生じる痛みの回避や、介護者の腕力による腕補助部の角度調節などを実現することができる。
また、図17,18には、本発明の第六の実施形態としての介護者補助装置の要部である支持アーム部150の一部が図示されている。支持アーム部150は、図示しないリンク機構に取り付けられる基端部92と、図示しない腕補助部が取り付けられる先端部98とを、可動連結部152によって相互に連結した構造を有している。なお、リンク機構や腕補助部は、図1に示されたものと同様であり、本実施形態に示す支持アーム部150は、第一の実施形態や第四の実施形態に示すような介護者補助装置に好適に適用される。
可動連結部152は、それぞれ略円筒形状で上下に重ね合わされた二つの筒部154,154を備えていると共に、それら筒部154,154の中心孔にピン156が挿通された構造を有しており、それら筒部154,154がピン156を中心として相対的に回転可能とされている。なお、筒部154,154の相対的な回転角度を制限するストッパを設けても良く、後述する左右一対の腕補助部(図示せず)が相対的に離隔する方向への回転だけが筒部154,154において許容されるようにしても良い。
そして、一方の筒部154に基端部92が一体乃至は別体で固設されていると共に、他方の筒部154に先端部98が一体乃至は別体で固設されており、それら筒部154,154の相対回転によって、図18に二点鎖線で示すように、先端部98が基端部92に対してピン156を中心として相対的に揺動可能とされている。これにより、先端部98に固定される第一の実施形態と同様の腕補助部が、被介護者側の端部である前端を左右に変位させることが可能とされている。従って、先端部98,98に固定された左右一対の腕補助部も、前端を相互に離隔または接近変位させることが可能とされた状態でリンク機構に取り付けられており、それら腕補助部に載せられた介護者の腕の移動の自由度が高められている。
このような本実施形態によれば、小柄な被介護者を介護する際に一対の腕補助部の前端を相互に接近させる一方、大柄な被介護者を介護する際に一対の腕補助部の前端を相互に離隔させることにより、同じ介護者補助装置によって体格の異なる被介護者に対応することが容易になる。
なお、本実施形態では、腕補助部を支持する支持アーム部150の先端部98が基端部92との接続部分を中心として揺動可能とされた構造を例示したが、たとえば基端部が左右に伸縮可能な構造とされて、先端部の全体が基端部の伸縮によって左右に平行移動可能とされていても良い。これによれば、先端部に取り付けられた腕補助部の左右への平行移動が許容されて、被介護者の体格差により有利に対応可能となると共に、介護者の体格差(肩幅の違いなど)にも対応することができる。換言すれば、一対の腕補助部が相対的に離隔変位可能な状態でリンク機構に取り付けられているとは、必ずしも一対の腕補助部の全体が離隔変位可能とされている場合だけでなく、一対の腕補助部が少なくとも一部において離隔変位可能とされている場合を含む。
また、図19には、本発明の第七の実施形態としての介護者補助装置の要部である腕補助部160が図示されている。腕補助部160は、第一の実施形態と略同じ構造を有していると共に、クッション22が腕補助部160を構成する下方保持部の前端を覆う前緩衝部162を備えている。
前緩衝部162は、発泡ポリウレタンなどで形成された柔軟な緩衝体であって、クッション22における下方保持部の上面を覆う部分から更に前方へ延び出すように設けられていると共に、前方へ行くに従って下傾する湾曲板状とされている。このように前緩衝部162が腕補助部160の下方保持部よりも前方へ延び出しながら下傾していることにより、下方保持部の前端が前緩衝部162によって覆われている。
このように前緩衝部162を設けた腕補助部160によれば、介護者の腕が薄く硬質の板状とされた下方保持部の前端に直接接触するのを防ぐことができて、被介護者を抱き上げる際の荷重の作用などによる介護者の痛みが防止される。特に、第四の実施形態に示したように腕補助部160が傾動する場合にも、下方保持部の前端が介護者の腕に直接接触することによる痛みを防ぐことができる。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、リンク機構は、リンクを傾動可能にピン接合したジョイントによる連結だけでなく、リンクの一端を他のリンクに対してスライド変位可能に接続したジョイント(スライダ)などを有していても良い。
また、前記実施形態では、上下の横リンク60a,60bが互いに同じ長さとされていると共に、前後の縦リンク60c,60dが互いに同じ長さとされており、リンク機構58が全体として平行四辺形とされていたが、例えば、上下の横リンクの長さが相互に異ならされて、リンク機構が台形などの四角形をなすようにもされ得る。同様に、前後の縦リンクが互いに異なる長さとされ得ることは言うまでもない。
また、胴補助部およびサポート部は、リンク機構58に一体で設けられていても良いし、リンク機構58のリンク60自体で構成することもできる。更に、胴補助部とサポート部は、複数のリンク60に跨って設けられていても良い。更にまた、前記実施形態で示した胴補助部66とサポート部68のリンク機構58に対する配置は、あくまでも例示であって、例えば、被介護者14側の縦リンク60cが支柱部36に固定されており、介護者12側の縦リンク60dに胴補助部66が設けられると共に、上側の横リンク60aにサポート部68が設けられた構造などであっても、介護作業の補助力を得ることができる。
また、リンクの長さを変更可能とする場合には、第二の実施形態に示すように、リンク長がリンク機構の出力動作に伴って変化するように制御されることが望ましいが、例えば、介護者12や被介護者14の体格や姿勢などに応じて、使用前にリンクの長さを予め調整できるようにし、リンク機構の出力動作中(介護作業中)にはリンク長が一定に保持されるようにしても良い。
また、腕補助部はリンク機構に設けられている必要はなく、例えば、支柱部36に取り付けられて設けられていても良い。更に、リンク機構58を出力動作させるアクチュエータ20とは別のアクチュエータを台車部16に取り付けて、そのアクチュエータによって腕補助部を上下変位可能に支持させることも可能である。
また、支柱部36と腕補助部80に設けられた調節機構の具体的な構造は、特に限定されるものではない。即ち、調節後の長さを一定に保つ構造として、前記実施形態では、内軸が外筒に挿入されており、外筒の周壁の一部に貫通形成されたねじ穴に対してねじが螺入されると共に、当該ねじの先端が内軸の外周面に押し当てられることで、内軸と外筒の長さが保持される構造を例示したが、例えば、内軸と外筒の両方を貫通するピンによって、それら内軸と外筒を長さ方向で相対的に位置決めして、長さを保持するようにしても良い。
更にまた、本発明の介護者補助装置において腕補助部は必須ではなく、例えば、介護者の腕力が十分に大きい場合や、介護者の腕部に装着されて介護者の腕力を補助するスーツ型乃至は外骨格型等の補助具を併用する場合などには、腕補助部を省略して構造の簡略化とそれに伴うコストの低減を図ることもできる。
また、アクチュエータ20の操作スイッチ56は、介護者12が膝で操作できるようにしたものに限定されず、好適には、介護者12の介護作業の妨げにならないように、手を使うことなく操作できるものが、適宜に選択されて採用される。即ち、足の裏で踏んで操作するフットペダル型のスイッチや、音声認識によるスイッチ、更には面圧センサによって介護者12の腹部の当接圧や当接面積を検出し、その検出結果に基づいてアクチュエータ20を操作する面圧スイッチなども、採用され得る。
また、前記実施形態では、介護者補助装置10を用いて介護者12が座位の被介護者14を立位(図9(IV)参照)まで移行させる介護作業を行う場合について説明したが、本発明に係る介護補助装置は、他の介護作業にも適用可能である。具体的には、例えば、下肢の関節が拘縮した被介護者の移乗介護などにおいて、座位の被介護者14を姿勢を略維持したまま座面から僅かに抱き上げる(図9(III)参照)こともできる。要するに、介護者補助装置10を用いて被介護者14をどの程度まで抱き起すかは、介護作業の目的や被介護者14の身体の状態などを考慮して適宜に決定される。
また、被介護者とは、ベッドと車椅子などの間での移乗を自力で行うことが困難で、他者(介護者)の介添を必要とする人を網羅的に言うものであって、傷病者などを含む。従って、本発明の介護者補助装置は、狭義の介護のみならず、医療現場での介添などを含む広義の介護において、好適に用いられ得る。
10,110,120,130:介護者補助装置、12:介護者、14:被介護者、16:台車部、20:アクチュエータ、38:支柱上部(リンク位置設定手段)、40:支柱下部(リンク位置設定手段)、58,112,122:リンク機構、60,124:リンク、62:連結ピン(ジョイント)、66:胴補助部、68:サポート部、72:支持部(腕補助部調節手段)、76:支持アーム部、78:取付部(腕補助部調節手段)、80:腕補助部、90:ねじ(腕補助部調節手段)、92:基端部(腕補助部調節手段)、94:中間部(腕補助部調節手段)、96:ねじ(腕補助部調節手段)、98:先端部(腕補助部調節手段)、100:ねじ(腕補助部調節手段)、114:横リンク(リンク)、116:前部(リンク伸縮機構)、118:後部(リンク伸縮機構)、140,150:支持アーム部、142:ブッシュ、144:インナ軸部材、146:アウタ筒部材、148:弾性体、152:可動連結部

Claims (13)

  1. 被介護者に対する介護者の介護作業を補助する介護者補助装置であって、
    床面を移動可能とされた台車部を備えており、該台車部上には4つ以上のリンクをジョイントで相対傾動可能にピン接合したリンク機構が設けられており、該リンク機構を構成する少なくとも一つの該リンクには前記介護者の胴部の前面に当接する胴補助部が設けられていると共に、該リンク機構を構成する他の少なくとも一つの該リンクには前記被介護者の胴部の前面に当接するサポート部が設けられており、
    該台車部によって支持されたアクチュエータが該リンク機構に接続されて、該アクチュエータの出力により該リンク機構が出力動作せしめられると共に、該リンク機構の出力動作によって該胴補助部と該サポート部が相対変位せしめられることを特徴とする介護者補助装置。
  2. 前記リンク機構が上下の横リンクとそれら上下の横リンクを相互に繋ぐ前記介護者側の縦リンクと前記被介護者側の縦リンクとを備える四角形の4リンクとされており、該介護者側の該縦リンクが前記台車部に固定されている一方、前記胴補助部が上側の該横リンクに設けられていると共に、前記サポート部が該被介護者側の該縦リンクに設けられている請求項1に記載の介護者補助装置。
  3. 前記横リンクが前記縦リンクよりも長さ寸法を大きくされている請求項2に記載の介護者補助装置。
  4. 前記台車部に対する前記リンク機構の高さを変更設定可能とするリンク位置設定手段が設けられている請求項1〜3の何れか1項に記載の介護者補助装置。
  5. 前記リンク機構の出力動作に伴って該リンク機構を構成する前記リンクの長さ寸法を変更するリンク伸縮機構が設けられている請求項1〜4の何れか1項に記載の介護者補助装置。
  6. 前記介護者が介護作業をする介護者用スペースと、前記被介護者が介護を受ける被介護者用スペースとが、前記リンク機構を挟んだ両側に対峙して設けられており、該介護者の胴部の前面に当接する前記胴補助部の支持面が該介護者用スペースに向かって設けられると共に、該被介護者の胴部の前面に当接する前記サポート部の支持面が該被介護者用スペースに向かって設けられる請求項1〜5の何れか1項に記載の介護者補助装置。
  7. 前記介護者用スペースには前記介護者が足裏を前記床面に接地可能とされた接地領域が設けられていると共に、前記被介護者用スペースには前記被介護者が乗るステップ部が前記台車部に設けられている請求項6に記載の介護者補助装置。
  8. 前記リンク機構には前記介護者の腕部を支える一対の腕補助部が取り付けられている請求項1〜7の何れか一項に記載の介護者補助装置。
  9. 前記一対の腕補助部の前記リンク機構に対する取付位置と該一対の腕補助部の長さ寸法との少なくとも一方を変更設定可能とする腕補助部調節手段が設けられている請求項8に記載の介護者補助装置。
  10. 前記一対の腕補助部が前記リンク機構の出力動作において傾動する前記リンクに取り付けられている請求項8又は9に記載の介護者補助装置。
  11. 前記リンク機構が上下の横リンクとそれら上下の横リンクを相互に繋ぐ前記介護者側の縦リンクおよび前記被介護者側の縦リンクとを備える四角形の4リンクとされており、少なくとも一方の該横リンクに対して前記アクチュエータが接続されて該横リンクが前記台車部に対して傾動可能とされていると共に、該横リンクに前記一対の腕補助部が取り付けられている請求項10に記載の介護者補助装置。
  12. 前記腕補助部が取り付けられる前記リンク機構と該腕補助部との間には、該リンク機構と該腕補助部の各一方に固設されるインナ軸部材とアウタ筒部材を弾性体によって弾性連結したブッシュが介装されている請求項8〜11の何れか一項に記載の介護者補助装置。
  13. 一対の前記腕補助部が相対的に離隔変位可能な状態で前記リンク機構に取り付けられている請求項8〜12の何れか一項に記載の介護者補助装置。
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