JP5540949B2 - ガスバリア性フィルム、及び有機光電変換素子、有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

ガスバリア性フィルム、及び有機光電変換素子、有機エレクトロルミネッセンス素子 Download PDF

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Description

本発明は、主に電子デバイス(有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう)、液晶素子等)のパッケージ、または有機光電変換素子(有機太陽電池=OPV)や有機エレクトロルミネッセンス素子等のディスプレイ材料にプラスチック基材として用いられるガスバリア性フィルムおよび該ガスバリア性フィルムを有する有機光電変換素子、有機EL素子等の有機電子素子に関する。
従来から、プラスチック基材やフィルムの表面に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物の薄膜を形成したガスバリアフィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、食品や工業用品および医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。
また、包装用途以外にも液晶表示素子、光電変換素子(太陽電池)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子の基材等に使用されている。
この様な分野での包装材料としてアルミ箔等が広く用いられているが、使用後の廃棄処理が問題となっているほか、基本的には不透明であり、外から内容物を確認することができないという課題を抱えており、更に、太陽電池や有機EL素子のフロント側(光取り出し側)用途の材料では透明性が求められており、適用することができない。
特に、液晶表示素子、有機EL素子、光電変換素子などへの応用が進んでいる透明基材には、近年、軽量化、大型化という要求に加え、ロール・トゥ・ロールでの生産が可能であること、長期信頼性や形状の自由度が高いこと、曲面表示が可能であること等の高度な要求が加わり、重く割れやすい、また大面積化が困難なガラス基材に代わって透明プラスチック等のフィルム基材が採用され始めている。
しかしながら、透明プラスチック等のフィルム基材はガラスに対しガスバリア性が劣るという問題がある。例えば、有機光電変換素子用の材料として用いた場合、ガスバリア性が劣る基材を用いると、水蒸気や空気が浸透して有機膜が劣化し、光電変換効率あるいは耐久性等を損なう要因となる。
また、電子素子用基材として高分子基材を用いた場合には、酸素や水分子が高分子基材を透過して電子素子内に浸透、拡散し、素子を劣化させてしまうことや、また、電子素子内で求められる真空度についてもこれを維持できないといった問題を引き起こす。
その様な問題を解決するためにフィルム基材上に金属酸化物薄膜を形成してガスバリア性フィルム基材とすることが知られている。最近では有機太陽電池や有機EL素子等の水分に弱い有機物のガスバリア性フィルムとしては、水蒸気透過率が1×10−3g/m・dayを下回るようなバリア性能が求められている。
そのような中、ガスバリア層(以下バリア層ともいう)としては250nm以下の膜厚のポリシラザン膜を湿式法で形成し真空紫外光を照射することを2回以上繰り返すことによりガスバリア層を2層以上積層形成する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、製造プロセス、具体的には、ポリシラザンの塗布・乾燥・改質(バリア層への転化)の条件の適正化がはかられていないため、ガスバリア性は不十分であった。
そこで、発明者らは、製造プロセスに着目して鋭意検討したところ、ポリシラザン塗布から改質に至る各工程において、工程内を適切な露点に調整することにより、ポリシラザンの改質(バリア層への転化)反応に伴うと考えられる、パーティクル(アンモニア・硝酸アンモニウムなど)の発生と、シラノール化の両者を抑制可能であることが分かった。
両者は共にバリア性の低下要因であり、シラノール化はバリア層の3次元ネットワーク(緻密さ)を損なうためバリア性低下を引き起こし、また、パーティクルの存在はバリア層において特異的な故障点(バリア性の低い箇所)となり、更に、バリア層の表面粗さRaの低下因子となり、折り曲げ耐性が低下する。特に、バリア層の積層時に、積層によるバリア性向上効果が大きく損なわれることとなることを突き止めた。
更に、材料特性(バリア性)とは異なる側面として、パーティクル発生は装置の汚染を引き起こすため、特に実験室レベルの検討から生産レベルへ移行する場合に、量が増えると伴に重要な課題(工程汚染)として改善をはかるべきであることが明らかになった。
特開2009−255040号公報
本発明の目的は、ガスバリア性及び折り曲げ耐性に優れ、尚且つ、可撓性のある樹脂フィルムが使用可能であり、更に、工程汚染が抑制可能であるため工業的な価値が高いガスバリア性フィルムの製造方法を提供すること、およびそれを用いた有機光電変換素子や有機EL素子の様な有機電子素子を提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
1.基材の少なくとも片面に、ポリシラザン塗布層を設け、エキシマランプ照射により改質してバリア層に転化し形成したガスバリア性フィルムにおいて、該バリア層のXPSの任意の深さ方向で測定される元素比が、以下の式(1−1)、(2−1)、(3−1)を満たすことを特徴とするガスバリア性フィルム。
バリア層の深さ方向の表面側5%の任意の点において
1.0 < O/Si ≦2.3 式(1−1)
バリア層の深さ方向の基材側95%の任意の点において
0.2 < O/Si ≦2.0 式(2−1)
バリア層の深さ方向の全域
0 ≦ N/Si ≦0.8 式(3−1)
2.前記1に記載のガスバリア性フィルムにおいて、さらに以下の式(1−2)、(2−2)を満たすことを特徴とするガスバリア性フィルム。
バリア層の深さ方向の表面側5%の任意の点において
1.5 < O/Si ≦2.2 式(1−2)
バリア層の深さ方向の基材側95%の任意の点において
1.0 < O/Si ≦2.0 式(2−2)
3.前記ガスバリア性フィルムにおいて、バリア層の表面粗さ(Ra)が、0.1〜10nmであることを特徴とする前記1または2に記載のガスバリア性フィルム。
4.前記バリア層の表面粗さ(Ra)が、0.1〜5nmであることを特徴とする前記3に記載のガスバリア性フィルム。
5.前記1〜4のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムの製造方法であって、ポリシラザン塗布および溶剤除去時の露点(露点1)が5〜15℃、同キュア時の露点(露点2)が−100℃〜10℃、かつ、エキシマ改質時の露点(露点3)が−100℃〜0℃、であることを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
6.前記露点3が、−100℃〜−20℃であることを特徴とする前記5に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
7.前記1〜4のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムを用いたことを特徴とする有機光電変換素子。
8.前記1〜4のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムを用いたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
本発明により、ガスバリア性、及び、折り曲げ耐性に優れた可撓性のあるガスバリア性フィルムを得ることができ、更に、工程汚染を抑制可能なガスバリア性フィルムの製造方法を提供でき、これを用いた有機電子素子を提供することができた。
ガスバリア性フィルムのXPS測定による膜厚の深さ方向の元素比(組成)の算出結果の一例を示すグラフである。 本発明の有機電子素子の基本的構成の例を示す概略断面図である。
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〈ガスバリア性フィルム〉
本発明のガスバリア性フィルムは、基材上に、少なくとも1層のポリシラザンを含有する液を塗布し、これを少なくとも1層のガスバリア層へ改質形成することで得られる。
本発明のガスバリアフィルムのガスバリア性としては、JIS K 7129B法に従って測定した水蒸気透過率(水蒸気透過度:25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、10−3g/(m・24h)以下であることが好ましく、更に好ましくは10−4g/(m・24h)以下であり、特に好ましくは10−5g/(m・24h)以下である。
また、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過率(酸素透過度)が0.01ml/(m・0.1MPa/day)以下であることが好ましく、より好ましくは0.001ml/(m・0.1MPa/day)以下である。
(バリア層)
バリア層の膜厚は、30nm〜1000nmが好ましく、より好ましくは30nm〜500nm、更に好ましくは30nm〜300nm、特には30nm〜150nmである。30nm以上とすると膜厚均一性が良好となり、ガスバリア性能に優れる。1000nm以下にすると、屈曲によるクラックが急激に入ることが少なくなり、500nm以下、300nm以下、150nm以下と薄膜化していくと順次改善される。
バリア層の成膜方法としては、蒸着法、スパッタリング法もしくはイオンプレーティング法等の物理的気相成長法(PVD)、化学的気相成長法(CVD)等の真空系を用いた原子堆積法、ゾルゲル法等が公知、且つ汎用であるが、生産性および平滑性の観点から塗布方式であることが好ましい。
塗布方法は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、スピンコート法、グラビアコート法、スライドコート法などの一般的な塗布方法を用いることが可能である。
その中でも該ガスバリア層は少なくとも一層のポリシラザン化合物を含有する塗布液を塗布して作製することが好ましい。また、ガスバリア性の観点からガスバリア層は酸化処理されていることが好ましい。
特に本発明のガスバリア層は塗布によって得られていることが好ましい。ドライプロセスで作製すると大型真空装置が必要になることから生産性が低下するばかりでなく、通常の方法だと各層間に明らかな界面が形成され、層間剥離が発生しやすくなる。更には、ドライプロセスで積層構造を作製した場合には表面平滑性も劣化しやすく、パーティクル(粗大粒子)と呼ばれる生成物や副生物の粗大粒子による粒界や異物が故障点となる場合があるなどの課題が多いことも確認された。
(ポリシラザン含有液の塗布によるガスバリア層の形成)
本発明に係るガスバリア層はポリシラザン化合物を塗布し、エキシマランプ照射による改質処理によって得られることが好ましい。
具体的には、酸化処理を施すため、雰囲気の酸素比率を0.001%〜5%で改質処理を行う。
尚、改質膜厚は処理時間により制御可能であり、処理時間を長くすれば厚く、短くすれば薄くすることができる。
ポリシラザン化合物から、ガスバリア層を得るには、改質として酸化処理が必要であるにも係わらず、低酸素比率の改質雰囲気で酸化可能である理由に関しては、構成や製造工程によっては、改質処理前のポリシラザン塗布層、及びポリシラザン塗布層に隣接する層または基材の表面または層内に、水分や酸素などの酸素源が多く存在するためと推測している。
ポリシラザン化合物の塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
本発明で用いられる「ポリシラザン」とは、珪素−窒素結合を持つポリマーであって、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO、Siおよび両方の中間固溶体SiO等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
Figure 0005540949
式中、R、R、およびRのそれぞれは、独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基などを表す。
本発明では、得られるガスバリア膜としての緻密性の観点からは、R、RおよびRのすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザンが特に好ましい。
一方、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより下地基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができ、より(平均)膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択してよく、混合して使用することもできる。
パーヒドロポリシラザンは直鎖構造と6および8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)であり、液体または固体の物質であり、分子量により異なる。これらは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有塗布液として使用することができる。
低温でセラミック化するポリシラザンの別の例としては、上記一般式(I)のポリシラザンに珪素アルコキシドを反応させて得られる珪素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(特開平7−196986号公報)等が挙げられる。
ポリシラザンを含有する液体を調製する有機溶媒としては、ポリシラザンと容易に反応してしまうようなアルコール系や水分を含有するものを用いることは好ましくない。具体的には、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。具体的には、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の炭化水素、塩化メチレン、トリコロロエタン等のハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等がある。これらの溶剤は、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度、等目的にあわせて選択し、複数の溶剤を混合しても良い。
ポリシラザン含有塗布液中のポリシラザン濃度は目的とするシリカ膜厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、0.2〜35質量%程度である。
有機ポリシラザンは、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換された誘導体であってもよい。アルキル基、特にもっとも分子量の少ないメチル基を有することにより下地基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいシリカ膜に靭性を持たせることができ、より膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる。
酸化珪素化合物への転化を促進するために、アミンや金属の触媒を添加することもできる。具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 アクアミカ NAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、SP140などが挙げられる。なかでも、触媒を含有しないパーヒドロポリシラザンからなる、NN120、NN110を用いることが、さらに緻密でガスバリア性の高いガスバリア層を形成する上で最も好ましい。
〈ガスバリア層の元素比(組成)〉
基材の少なくとも片面に、ポリシラザン塗布層を設け、該層をエキシマランプ照射により改質してバリア層に転化をはかるガスバリア性フィルムにおいて、XPSの深さ方向の元素比が、以下の関係式(1−1)、(2−1)、(3−1)を満たすことが良いガスバリア性フィルムであることを見出した。
バリア層の深さ方向の表面側5%
1.0 < O/Si ≦2.3 式(1−1)
バリア層の深さ方向の基材側95%
0.2 < O/Si ≦2.0 式(2−1)
バリア層の深さ方向の全域
0 ≦ N/Si ≦0.8 式(3−1)
ガスバリア層の元素比(組成)の具体的なイメージの1例を図1に示す。
本願のバリア層の深さ方向の表面側5%とは、バリア層全膜厚のバリア層表面から5%迄の深さにおける任意の点の元素比を示し、バリア層深さ方向の基材側95%とは、バリア層全膜厚の基材側から表面に向かって95%のところまでの任意の点の元素比と定義する。
また、バリア層の深さ方向の表面側5%のところまでの元素比が、
1.0 < O/Si ≦2.3
であると言うことは、この範囲においてどの深さの点においても、O/Si比が、1.0以下、また2,3を超える値を示す深さの部分がないことを意味する。
同様に、バリア層の深さ方向の基材側95%において、
0.2 < O/Si ≦2.0
であるということは、O/Si比が、0.2以下、また2.0を超える部分がないことを意味する。
同様に、深さ方向の全域において、
0 ≦ N/Si ≦0.8
であると言うことは、N/Si比が、0.8を超える部分がないことを意味する。
本発明においては、更に以下の関係式(1−2)、(2−2)を満たすことが、より良いガスバリア性フィルムであることを見出した。
バリア層の深さ方向の表面側5%
1.5 < O/Si ≦2.2 式(1−2)
バリア層の深さ方向の基材側95%
1.0 < O/Si ≦2.0 式(2−2)
バリア層の深さ方向の全域
0 ≦ N/Si ≦0.8 式(3−1)
最も単純な酸化珪素(SiO)の場合、式(1−1)と(2−1)は2.0となり、式(3−1)は0である。
バリア層を設ける汎用な方法である、気相積層法(蒸着、スパッタなど)では、バリア層として単純な酸化珪素(SiO)が選択される場合が多い。但し、酸化珪素(SiO)とした場合、xが2の場合には着色が無く透明性が高いもののバリア性が低く、xが2より小さい方が、黄色系の着色があるもののバリア性は高く、無色透明でありかつ高いバリア性の発現は困難であった。
本発明のように、ポリシラザン塗布層を設け、エキシマランプ照射により改質してバリア層を得る場合、酸化珪素(SiO)以外に酸窒化珪素(SiON:OとNは必ずしも1:1を意味している訳ではない。)が形成され、バリア膜質の緻密さやバリア性能向上と無色透明性に寄与していることが分かった。また、逆にシラノール化がバリア性低下させていると推測している。
本発明の提示したガスバリア層の元素比(組成)が良い理由は、解析中であり明確になってはいないが、本発明の関係式において、酸素/珪素元素比(O/Si)が余り大きいとシラノールが多いためバリア性が悪く、小さいと酸窒化珪素が少なく緻密さが低下しているものと推測している。
〈ガスバリア層の元素・膜厚測定〉
透過型電子顕微鏡(TEM)による断層面観察と、X線光電子分光法(XPS)による厚み方向の元素分布から行う。
(FIB加工)
装置:SII製SMI2050
加工イオン:(Ga 30kV)
(TEM観察)
装置:日本電子製JEM2000FX(加速電圧:200kV)
電子線照射時間:5秒から60秒
(スパッタ条件)
イオン種:Arイオン
加速電圧:1kV
(X線光電子分光測定条件)
装置:VGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200R
X線アノード材:Mg
出力:600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)
尚、測定の分解能は0.5nmでありこれに応じた各サンプリング点において、各元素比をプロットすることで得られる。
(ガスバリア層の表面からの膜厚の深さ方向の元素比(組成))
上述のバリア層表面からのスパッタにより得られた各深さでのXPS測定(Si、O、Nに注目)とTEMによる断層面観察の結果を照合させて、Siを1とした場合の各比(O/Si、N/Si)を算出した。
参考情報として、上述のバリア層の表面からの膜厚の深さ方向の元素比(組成)の算出結果として、実施例のガスバリア性フィルムの試料2−2(バリア層厚み150nm)の測定・算出結果(グラフ1)を図1に示す。
図1で例示したバリア層は150nmの膜厚を有するが、バリア層表面から全バリア層厚みの5%のところ(表面から7.5nmの点)においては、O/Si比が2.2(表面)〜1.6位までの範囲にある。また、基材側から95%の厚みにおいては、最大値1.6、最小値0.7の範囲にある。また、バリア層の深さ方向の全域に亘って、N/Si比は、0〜0.7の範囲を示しており、このバリア層は、従って、前記式(1−1)、前記式(2−1)を共に満たし、また、前記式(3−1)についても満たすものである。
(ポリシラザン塗布層のキュア工程)
塗布された膜は溶媒が除去された均一な乾燥膜を得る上で、キュアする態様が好ましい。また、キュア(熱)+エキシマ(光)と改質を逐次分担すると生産性(=作製量/単位時間)が向上する。更に、別の利点として、エキシマ改質前にキュアで一部改質を進めるとエキシマ改質時のパーティクル(汚染物質)発生が抑制可能で比較的高価なエキシマランプ寿命の延命が図れることが分かった(詳細は〈製造プロセスの露点〉の項で後述する。)。キュア温度は、好ましくは60℃〜200℃、更に好ましくは70℃〜160℃である。キュア時間は、好ましくは5秒〜24時間程度、更に好ましくは10秒〜2時間程度である。
〈製造プロセスの露点〉
先述したように、構成や製造工程によっては、改質処理前のポリシラザン塗布層、及びポリシラザン塗布層に隣接する層の表面または層内に、水分や酸素などの酸素源が多く存在するようである。発明者らの検討の結果、この時、含有水分が多いと、ポリシラザン塗布層をエキシマ光照射により改質してバリア層に転化をはかる際、
(i)バリア層でのシラノール形成に伴うバリア性低下
(ii)バリア改質時のパーティクル発生に伴うバリア性低下と表面粗さUPと表面粗さUPによる折り曲げ耐性低下やバリア積層時の効果の低減
(iii)パーティクル発生に伴う工程汚染
などの課題があり、製造プロセスの露点を適宜調整することにより、これらが改善可能であることを見出した。
具体的には、製造プロセスにおける各工程の露点を下記に調整すると良いことを見出した。
(1)ポリシラザン塗布・溶剤除去時における露点(露点1):5〜15℃
(2)ポリシラザン塗膜のキュア時の露点(露点2):−100〜10℃
(3)ポリシラザン塗膜のエキシマ光照射による改質時の露点(露点3):−100〜0℃
更に、製造プロセスの露点を下記に調整すると、より好ましいことを見出した。
(4)露点1:5℃〜15℃
(5)露点2:−100℃〜10℃
(6)露点3:−100℃〜−20℃
ここで、露点1の意義について説明すると、溶剤除去時の露点がより高い場合は雰囲気の水蒸気が多いため、結果としてポリシラザン塗布層中(また基材中)の水分を不要に多く含むこととなり上記(i)〜(iii)を悪化させる。また、より低い場合もバリア性が低下している。低い場合の劣化原因は未だ十分特定できていないが、エキシマ光による改質前のキュア(熱時の一部硬膜)はシラノール経由の脱水反応と推測しており、水分が完全に無い状態ではエキシマ改質前のキュア(熱時の一部硬膜)の効果が得られないためと思われる。
また、露点2、露点3の意義について説明すると、露点がより高い場合は雰囲気の水蒸気が多いため、シラノール化が過剰に進み、前記(ii)、(iii)を悪化させる。より低い場合は、高真空化・大量の不活性ガス使用・極めて高い能力の除湿器使用などが必要となり工程のコスト負荷が大きく現実的ではない。(i)〜(iii)の観点からは低い程良いのであるが、費用対効果を考慮すると−60℃〜−40℃程度を下限とすることが適切と推算している。
上述の件で、疑問を持たれる可能性がある点を補足しておく。キュア(熱時での硬膜)が可能であれば、一部ではなく、全てをエキシマ改質によらず、キュア(熱改質)で実施すれば良いという考え方が出来る。但し、キュア(熱改質)は製造を考えた際に生産性が低い。特に、本発明のように基材として樹脂フィルム、特にスーパーエンジニアリングプラスチックなどの特殊で耐熱性が高いが高価なフィルムを使用せず、安価な汎用フィルムであるPET(ポリエチレンテレフタレート)などを用いるのであれば、キュアとして高い温度をかけることが出来ない。従って、高温キュアできない分、時間を長くする必要があり生産性が上げられない。エキシマ光による改質は、キュア(熱改質)における「ポリシラザン−シラノール化−脱水縮合−バリア層」の「シラノール化」を経ず、直接的にバリア層への改質(転化)が行われているものと推定しており、キュア(熱改質)に比べて極めて短時間で改質が出来ていることが発明者らの検討から分かっている。
〈改質処理の前処理〉
先述したように、構成や製造工程によっては、改質処理前のポリシラザン塗布層、及びポリシラザン塗布層に隣接する層や基材の表面または層内に、水分や酸素などの酸素源が多く存在する。
最終形態として、ガスバリア性フィルムは有機電子素子に用いられるが、この際に、ガスバリア性フィルム自体が含有する水分や酸素などが素子の阻害因子であるので、改質処理の実施前に前処理として、真空処理・加熱真空処理を行い余分な水分や酸素などの除去処理を行っても良い。プロセス上、このタイミングでの、水分や酸素などの除去処理が有用であるのは、改質処理後のガスバリア性が向上した後で、ガスバリア性フィルムに閉じ込められた水分や酸素の除去処理が困難となるからである。
〈改質処理〉
ポリシラザンの酸化処理としては、水蒸気酸化および/または加熱処理(乾燥処理を含む)、紫外線照射による処理等が知られている。
本発明で好ましく用いられるのは紫外線照射処理である。酸素の存在下で紫外光を照射することで活性酸素やオゾンが発生し、酸化反応をより進行させることができる。
この活性酸素やオゾンは非常に反応性が高く、例えば、珪素化合物としてポリシラザンを選択した場合、珪素酸化物の前駆体であるポリシラザン塗布膜は、シラノールを経由することなく直接酸化されることで、より高密度で欠陥の少ない珪素酸化物膜が形成される。
更に反応性オゾンの不足分を光照射部とは異なる部分で、放電法などの公知の方法により酸素からオゾンを生成し、紫外線照射部に導入しても良い。
このときに照射する紫外線の波長は特に限定されるところではないが、紫外光の波長は100nm〜450nmが好ましく、150nm〜300nm程度の紫外光を照射することがより好ましい。
光源は、低圧水銀灯、重水素ランプ、Xeエキシマランプ、メタルハライドランプ、エキシマレーザーなどを用いることができる。ランプの出力としては400W〜30kW、照度としては100mW/cm〜100kW/cm、照射エネルギーとしては10mJ/cm〜5000mJ/cmが好ましく、100mJ/cm〜2000mJ/cmがより好ましい。また、紫外線照射の際の照度は1mW/cm〜10W/cmが好ましい。ポリシラザン塗布膜に酸化性ガス雰囲気下で紫外線を照射することにより、ポリシラザンが高密度の珪素酸化物膜、すなわち高密度シリカ膜に転化するが、該シリカ膜の膜厚や密度は紫外線の強度、照射時間、波長(光のエネルギー密度)により制御が可能であり、所望の膜構造を得るためにランプの種類を使い分ける等、適宜選択することが可能である。また、連続的に照射するだけでなく複数回の照射を行ってもよく、複数回の照射が短時間ないわゆるパルス照射で有っても良い。
また、紫外線照射と同時に該塗膜を加熱することも、反応(酸化反応、転化処理ともいう)を促進するために好ましく用いられる。加熱の方法は、ヒートブロック等の発熱体に基材を接触させ熱伝導により塗膜を加熱する方法、抵抗線等による外部ヒーターにより雰囲気を加熱する方法、IRヒーターの様な赤外領域の光を用いた方法等が挙げられるが、特に限定はされない。塗膜の平滑性を維持できる方法を適宜選択してよい。
加熱する温度としては、50℃〜200℃の範囲が好ましく、更に好ましくは80℃〜150℃の範囲であり、加熱時間としては1秒〜10時間の範囲が好ましく、更に好ましくは1秒〜1時間の範囲で加熱することである。
その中でもよりフォトンエネルギーが大きい180nm以下の波長成分を有する真空紫外線照射によって処理することが好ましい。エネルギーが小さいとポリシラザンの効果が不十分となりガスバリア性が低くなる為である。
〈180nm以下の波長成分を有する真空紫外線照射による処理〉
本発明において、好ましい方法として、真空紫外線照射による改質処理が挙げられる。真空紫外線照射による処理は、化合物内の原子間結合力より大きい100〜180nmの光エネルギーを用い、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみによる作用により、直接切断しながら活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させることで、比較的低温で、膜の形成を行う方法である。
上述に必要な真空紫外光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。
1.エキシマ発光とは、Xe、Kr、Ar、Neなどの希ガスの原子は化学的に結合して分子を作らないため、不活性ガスと呼ばれる。しかし、放電などによりエネルギーを得た希ガスの原子(励起原子)は他の原子と結合して分子を作ることができる。希ガスがキセノンの場合には
e+Xe→e+Xe
Xe+Xe+Xe→Xe +Xe
となり、励起されたエキシマ分子であるXe が基底状態に遷移するときに172nmのエキシマ光を発光する。エキシマランプの特徴としては、放射が一つの波長に集中し、必要な光以外がほとんど放射されないので効率が高いことが挙げられる。加えて発光効率が他の希ガスよりも高いことや大面積へ照射するためのランプを石英ガラスで作製できることからXeエキシマランプを好ましく使用することが出来る。
エネルギーの観点だけからだとArエキシマ光(波長126nm)が最も高く、高いポリシラザン層の改質効果が期待される。しかし、Arエキシマ光は石英ガラスでの吸収が無視できないほど大きくなるため、二酸化珪素ガラスではなく炭酸カルシウムガラスを用いる必要がある。しかし、炭酸カルシウムガラスは非常に割れやすく大面積を照射するランプとしては製造が困難でるのが実情である。
Xeエキシマランプは波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから発光効率に優れている。この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラジカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。また、有機物の結合を解離させる波長の短い172nmの光のエネルギーは能力が高いことが知られている。この活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、短時間でポリシラザン膜の改質を実現できる。したがって、波長185nm、254nmの発する低圧水銀ランプやプラズマ洗浄と比べて高スループットに伴うプロセス時間の短縮や設備面積の縮小、熱によるダメージを受けやすい有機材料やプラスチック基材などへの照射を可能としている。
本発明者らの検討によれば、エキシマ照射処理時の環境としては酸素濃度が0.001〜5%であると好ましい。さらには0.01〜3%であると性能が安定して好ましい。酸素濃度が5%を超えると結合の切断よりも活性酸素等を発生させる方にエネルギーを消費してしまい、0.001%以下に下げてもエキシマ光の照射効率は殆ど変化せず、改質効率および膜の組成制御性も変化しないため、雰囲気の置換時間を余計に要するため生産性の向上が見込みにくい。また、ステージ温度については熱をかけるとより反応が促進され好ましい。その場合の温度は50℃以上、基材のTg+80℃以下の温度が好ましく、基材Tg+30℃以下が基材を痛めずに反応性が良好になるために更に好ましい。
原理的には、比較的厚膜に塗布した膜に長時間エキシマ照射することで、1回の塗布で形成した塗膜から厚いバリア層を得ることが可能であるが、厚膜は欠陥を発生しやすいためガスバリア機能は発現しにくい。逆に薄膜過ぎても十分なガスバリア機能は発現しない。従って、前述したようにポリシラザンの膜厚は、30nm〜1000nmが好ましく、より好ましくは30nm〜500nm、更に好ましくは30nm〜300nm、特には30nm〜150nmであり、この膜厚の改質をはかりバリア層化する。
ガスバリア機能を高めるために、バリア層を積層、具体的には、ポリシラザン塗布と改質処理の一連の工程の繰り返しを行っても良い。
〈高照射強度処理と最大照射強度〉
照射強度が高ければ、光子とポリシラザン内の化学結合が衝突する確率が増え、改質反応を短時間化することができる。また、内部まで侵入する光子の数も増加するため改質膜厚も増加および/または膜質の良化(高密度化)が可能である。但し、照射時間を長くしすぎると平面性の劣化やガスバリア性フィルムの他の材料にダメージを与える場合がある。一般的には、照射強度と照射時間の積で表される積算光量で反応進行具合を考えるが、酸化シリコンの様に組成は同一でも、様々な構造形態をとること材料に於いては、照射強度の絶対値が重要になる場合もある。
従って、本発明では真空紫外線照射工程において、少なくとも1回は100〜200mW/cmの最大照射強度を与える改質処理を行うことが好ましい。100mW/cm以上とすることにより、急激な改質効率が劣化することなく、処理に時間を短期間とでき、200mW/cm以下とすることにより、ガスバリア性能の効率よく持たせることができ(200mW/cmを超えて照射してもガスバリア性の上昇は鈍化する)、基材へのダメージばかりでなく、ランプやランプユニットのその他の部材へのダメージも抑えることができ、ランプ自体の寿命も長期化できる。
〈真空紫外線の照射時間〉
照射時間は、任意に設定可能であるが、基材ダメージや膜欠陥生成の観点およびガスバリア性能のバラつき低減の観点から高照度工程での照射時間は0.1秒〜3分間が好ましい。より好ましくは0.5秒〜1分である。
〈真空紫外光照射時の酸素濃度〉
本発明における、真空紫外光照射時の酸素濃度は10ppm〜50000ppm(5%)とすることが好ましい。より好ましくは、1000ppm〜30000ppm(3%)である。前記の濃度範囲より酸素濃度が高いと、酸素過多のガスバリア膜となり、ガスバリア性が劣化する。また前記範囲より低い酸素濃度の場合、大気との置換時間が長くなり生産性を落とすのと同時に、ロール・トゥ・ロールの様な連続生産を行う場合はウエッブ搬送によって真空紫外光照射庫内に巻き込む空気量(酸素を含む)が多くなり、多大な流量のガスを流さないと酸素濃度を調整できなくなってくる。
発明者らの検討によると、ポリシラザン含有塗膜中には、大気中での塗布時に酸素および微量の水分が混入し、更には塗膜以外の支持体にも吸着酸素や吸着水があり、照射庫内に敢えて酸素を導入しなくとも改質反応に要する酸素を供給する酸素源は十分にあることが分かった。むしろ、酸素ガスが多く(5〜10%レベル)含まれる雰囲気で真空紫外光を照射した場合、改質後のガスバリア膜が酸素過多の構造となり、ガスバリア性が劣化する。また、前述した様に172nmの真空紫外光が酸素により吸収され膜面に到達する172nmの光量が減少してしまい、光による処理の効率を低下することになる。すなわち、真空紫外光照射時には、できるだけ酸素濃度の低い状態で、真空紫外光が効率良く塗膜まで到達する状態で改質処理することが好ましい。
真空紫外光照射時にこれら酸素以外のガスとしては乾燥不活性ガスとすることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスにすることが好ましい。酸素濃度の調整は照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整可能である。
(基材)
基材は、ガスバリア層を保持することができる有機材料で形成されたものであれば特に限定されるものではない。
例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の各基材、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム(製品名Sila−DEC、チッソ株式会社製)、更には前記プラスチックを2層以上積層して成る基材等を挙げることができる。コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などが好ましく用いられ、また、光学的透明性、耐熱性、無機層との密着性の点においては、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルムが好ましく用いることができる。基材の厚みは5〜500μm程度が好ましく、更に好ましくは25〜250μmである。本発明のガスバリア性フィルムは発光素子として使用する場合も鑑みて、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上であることが好ましい。また、熱収縮率も低いことが好ましい。
さらに、本発明に係る基材は透明であることが好ましい。基材が透明であり、基材上に形成する層も透明であることにより、透明なガスバリア性フィルムとすることが可能となるため、太陽電池や有機EL素子等の透明基材とすることも可能となるからである。
また、上記に挙げたプラスチック等を用いた基材は、未延伸フィルム・延伸フィルムがあるが、寸法安定性や熱安定性の観点から延伸フィルムが優れている。
本発明に用いられる基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となるプラスチックを押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、または基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
本発明の基材としては、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが特に好ましい。理由としては最も汎用な樹脂フィルムであるため、膜厚種、光学特性、易接着層の有無や種類、熱安定化の処理などの市販グレードの品揃えが突出して多く、最も汎用であるため安価であるということから工業的に有用だからである。
本発明の基材としては、フィルムメーカー標準の二軸延伸時の熱安定化に加え、フィルムメーカーがオプション(=追加熱処理)として行う熱安定化の実施が好ましい。これはメーカーにより異なるがインライン、オフライン、インライン・オフライン等がある。インラインではロール・ツゥ・ロールの搬送系で扱うため必要最低限の張力を要するのが一般的だが、オフラインでは完全に張力の無い条件での熱処理が可能である。最終的に、延伸方向・延伸の垂直方向を問わず、両方向共に150℃30分の熱収縮率が0.1%以下とすることが好ましい。フィルムメーカーのオプションの熱安定化を実施しても、熱収縮率が0.1%以下とならない場合は購入入手後に更に追加の熱安定化処理することが好ましい。
ここで述べる熱安定化処理とは、延伸成膜に起因するフィルムが本来有する収縮の大部分を生起させる(十分に緩和させる)ことにより、残留する収縮を非常に低く抑制し、その結果、高い熱的な寸法安定性を有するフィルムを作製するために、インラインの場合はフィルムを成膜の伸時に比べ低張力下でPETのガラス転位温度を超えるがその融点未満の温度で加熱することによりフィルムをさらに熱安定化させる処理である。また、オフラインではより好ましい条件として張力なしでの処理が可能である。
このインライン熱安定化処理中にフィルムに掛ける張力は、フィルム幅に対し代表的には5kg/m未満、好ましくは3.5kg/m未満、代表的には0.5〜2kg/mである。オフライン熱安定化処理に関しては張力なしが可能であり、この条件が好ましい。フィルムに残留する収縮を小さくする或いは無くすには張力なしでの熱処理、即ちオフライン熱安定化処理が最も優れている。
この。熱安定化処理の温度は、最終フィルムに所望される特性の組合せに応じて変えることができるが、より高い温度ではより優れた、すなわち、低い残留収縮特性をもたらすが、各樹脂の耐熱性も考慮して適宜選択する。PETにおいては、135℃〜250℃である。好ましくは170〜250℃である。更に好ましくは190〜250℃である。加熱時間は使用した温度により決まるが、代表的には10秒〜1時間であり、20秒〜30分の時間が好ましい。
また、本発明に係る基材においては、コロナ処理を施してもよい。
本発明の基材として、市販のフィルム(PETなど)を用いる場合は、易接着層などのフィルムメーカーのオプションの機能層を有する基材を用いることも出来る。この場合は、別途後で独自に設ける工程が省略可能で好ましい。
(アンカーコート剤層)
本発明に係る基材表面には、バリア層、もしくはバリア層と基材間に設ける有機層(後述)との密着性の向上を目的としてアンカーコート剤層を形成してもよい。尚、上述した、フィルムメーカーのオプションである易接着層付きフィルムを利用可能な場合は、別途独自にアンカーコート剤層を設ける工程が省略可能である場合があり好ましい。
このアンカーコート剤層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、およびアルキルチタネート等を、1または2種以上併せて使用することができる。これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記のアンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により基材上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりアンカーコーティングすることができる。上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.01〜5g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
(有機層)
本発明においては、(1)バリア層と基材との接着性を十分得る。(2)突起等が存在する透明樹脂基板の粗面を平坦化し、あるいは、透明樹脂基板に存在する突起によりバリア層に生じた凹凸やピンホールを埋めて平坦化する。(3)ガスバリア性フィルムの曲げに対する応力を緩和する。などの目的のために、有機層を少なくとも基板とバリア層の間に設けてもよい。このような有機層は、たとえば感光性樹脂を含有する組成物を塗布乾燥後、硬化させて形成されることが、(1)〜(3)の観点より好ましい態様である。
有機層を構成する成分の基本骨格は、炭素、水素、酸素、窒素、硫黄等からなるものである。
有機層に用いる感光性樹脂としては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含有する樹脂組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた樹脂組成物等が挙げられる。また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。
感光性樹脂の組成物は光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノ−1−プロパン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モノフォリノフェニル)−ブタノン−1、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミン等の還元剤の組み合わせ等が挙げられ、これらの光重合開始剤を1種または2種以上の組み合わせで使用することができる。
有機層の形成方法は特に制限はないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等のウエットコーティング法により形成することが好ましい。
有機層の形成では、上述の感光性樹脂に、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を加えることができる。また、有機層の積層位置に関係なく、いずれの有機層においても、製膜性向上および膜のピンホール発生防止等のために適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。
感光性樹脂を溶媒に溶解または分散させた塗布液を用いて有機層を形成する際に使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、シクロヘキシルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等の酢酸エステル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、安息香酸メチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
(平滑層としての有機層)
有機層を平滑層としての用いる場合の平滑性は、JIS B 0601で規定される表面粗さで表現される値で、最大断面高さRt(p)が、30nm以下であることが好ましい。この範囲よりも大きい場合には、ポリシラザンを塗布した後の、凹凸を平滑化することが難しくなる場合がある。
本発明における有機層の厚みとしては、1〜10μm、好ましくは2〜7μmであることが望ましい。1μm以上にすることにより、有機層を有するフィルムとしての平滑性を十分なものにし易くなり、10μm以下にすることにより、フィルムの光学特性のバランスを調整し易くなる。
(応力緩和層としての有機層)
本発明において、該有機層は基板とバリア層との間に、ガスバリア性フィルムにかかる応力を緩和するための層として設けても良い。特に、樹脂基板などの上に、前述した本発明の塗布型バリア層を形成する場合、無機酸化物などの前駆体であるポリシラザンなどの塗布膜が、二酸化珪素膜および酸化窒化珪素膜に転化する際、高密度化し、膜の収縮が起こるため、応力が集中することで、バリア層にクラックが発生するなどの問題が生じる場合がある。
そこで、例えば、樹脂基板とバリア層の中間に位置するような、硬度、密度あるいは弾性率などの物性値を有する応力緩和層を設けると、クラック発生などを抑制する効果があると考えられる。
具体的には、後述する本発明のバリア層を形成するためのケイ素化合物として挙げた材料などから該応力緩和層を形成することが可能である。例えば、密度などを上層のバリア層より低くなるように応力緩和層を設計する場合、バリア層と同じ材料を用いても、転化反応の進行度を転化方法や転化条件の選択、あるいは設けるバリア層の膜厚などを適宜選択することによって制御することが可能である。また、得られる膜密度自体を応力緩和層に用いる材料の選択によって制御することも可能である。
具体的な材料としては、例えば、オルガノポリシラザンやパーヒドロポリシラザン、アルコキシシラン、あるいは、それらの混合物などを用いることが好ましい。
特に、メチルヒドロポリシラザンなどのオルガノポリシラザンとパーヒドロポリシラザンの混合物を該応力緩和層として用い、バリア層にパーヒドロポリシラザンを用いた場合、硬度、密度あるいは弾性率などの物性値に勾配を持たせることでガスバリア性フィルムの曲げに対する応力を緩和する機能を持たせることができ、また、応力緩和層とバリア層の密着性を向上させることができる点で大変好ましい。
オルガノポリシラザンとパーヒドロポリシラザンの混合比率は、望みの物性値に制御する目的で適宜選択すればよく、特に制限はない。例えば、オルガノポリシラザンの比率が高くなると、密度は低く設定でき、また、パーヒドロポリシラザンの比率が高くなると、密度は高く設定できる。
また、応力緩和層、バリア層は交互に複数層積層してもよく、熱、湿度、経時で、クラックや層界面での局所的な密着不良等が発生しないような材料構成、あるいは層構成を選択することが好ましい。
(有機層への添加剤)
好ましい態様の一つは、前述の感光性樹脂中に表面に光重合反応性を有する感光性基が導入された反応性シリカ粒子(以下、単に「反応性シリカ粒子」ともいう)を含むものである。
ここで光重合性を有する感光性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基に代表される重合性不飽和基などを挙げることができる。また感光性樹脂は、この反応性シリカ粒子の表面に導入された光重合反応性を有する感光性基と光重合反応可能な化合物、例えば、重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物を含むものであってもよい。
また、感光性樹脂としては、このような反応性シリカ粒子や重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物に適宜汎用の希釈溶剤を混合することによって固形分を調整したものを用いることができる。
ここで反応性シリカ粒子の平均粒子径としては、0.001μm〜0.1μmの平均粒子径であることが好ましい。平均粒子径をこのような範囲にすることにより、後述する平均粒子径1μm〜10μmの無機粒子からなるマット剤と組合せて用いることによって、本発明の効果である防眩性と解像性とをバランス良く満たす光学特性と、ハードコート性とを兼ね備えた平滑層を形成し易くなる。
尚、このような効果をより得易くする観点からは、更に平均粒子径として0.001μm〜0.01μmのものを用いることがより好ましい。
このような添加剤により、有機層のバリア層との密着性を向上させ、また、基板を湾曲させたり、加熱処理を行った場合にクラックの発生を防止し、ガスバリアフィルムの透明性や屈折率などの光学的物性を良好に保持する観点から、平滑層中には、上述の様な無機粒子20質量%〜60質量%の範囲で含有することが好ましい。
本発明では、また、重合性不飽和基修飾加水分解性シランが、加水分解性シリル基の加水分解反応によって、シリカ粒子との間に、シリルオキシ基を生成して化学的に結合しているようなものを、反応性シリカ粒子として用いることができる。
加水分解性シリル基としては、例えば、アルコキシシリル基、アセトキシシリル基等のカルボキシリレートシリル基、クロルシリル基等のハロゲン化シリル基、アミノシリル基、オキシムシリル基、ヒドリドシリル基等が挙げられる。
重合性不飽和基としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニイル基、シンナモイル基、マレート基、アクリルアミド基等が挙げられる。
また、近年、産官学で研究が進められている有機・無機ナノ粒子のハイブリッド材料やその製法を利用すると、本発明のいう「有機層への添加剤」の構成となっており、材料として、剛性、耐熱性、透明性、有機層/バリア層間の密着性、バリア層の応力緩和のみならず、バリア性の向上の補助(一部バリア層の機能を請け負う)が可能となり有用である。
(ブリードアウト防止層)
ブリードアウト防止層は、平滑層を有するフィルムを加熱した際に、フィルム基材中から未反応のオリゴマーなどが表面へ移行して、接触する面を汚染してしまう現象を抑制する目的で、平滑層を有する基材の反対面に設けられる。ブリードアウト防止層は、この機能を有していれば、基本的に平滑層と同じ構成をとっても構わない。
ブリードアウト防止層に含ませることが可能な、重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物としては、分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する多価不飽和有機化合物、あるいは分子中に1個の重合性不飽和基を有する単価不飽和有機化合物等を挙げることができる。
その他の添加剤として、マット剤を含有しても良い。マット剤としては、平均粒子径が0.1μm〜5μm程度の無機粒子が好ましく、目的は搬送性の付与・巻き(ロール)状態でのブロッキング防止である。
このような無機粒子としては、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等の1種または2種以上を併せて使用することができる。
ここで無機粒子からなるマット剤は、ブリードアウト防止層の固形分100質量部に対して2質量部以上、好ましくは4質量部以上、より好ましくは6質量部以上、20質量部以下、好ましくは18質量部以下、より好ましくは16質量部以下の割合で混合されていることが望ましい。
またブリードアウト防止層には、ハードコート剤およびマット剤の他の成分として熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、光重合開始剤等を含有させてもよい。
以上のようなブリードアウト防止層は、ハードコート剤、マット剤、および必要に応じて他の成分を配合して、適宜必要に応じて用いる希釈溶剤によって塗布液として調製し、当該塗布液を支持体フィルム表面に従来公知の塗布方法によって塗布した後、電離放射線を照射して硬化させることにより形成することができる。
尚、電離放射線を照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプなどから発せられる100nm〜400nm、好ましくは200nm〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、または走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
ブリードアウト防止層の厚みとしては、基材の耐熱性を向上させ、更に、基材の光学特性のバランスを調整し易くなると共に、ブリードアウト防止層を基材の一方の面にのみ設けた場合における基材のカールを防止する観点から、1μm〜10μmの範囲が好ましく、更に好ましくは2μm〜7μmの範囲である。
〈ガスバリア性フィルムの用途〉
本発明のガスバリア性フィルムは、種々の封止用材料、フィルムとして用いることができる。
本発明のガスバリア性フィルムは、光電変換素子、EL素子に特に有用に用いることができる。本発明のガスバリア性フィルムは透明であるため、このガスバリア性フィルムを支持体として用いて光電変換素子に用いた場合この側から太陽光の受光を行うように構成でき、EL素子に用いた場合、素子からの発光を妨げないため発光効率を劣化させない。
(有機電子素子の構成)
本発明の有機電子素子の基本的構成の例を図2に示す。
有機電子素子1は、基材6の上に第二電極5を有し第二電極5の上に有機機能層4を有し、有機機能層4の上に第一電極3を有し、第一電極3の上に本発明のガスバリア性フィルム2を有する。
有機機能層4としては、有機発光層、有機光電変換層、液晶ポリマー層など特に限定無く挙げることができるが、本発明は、機能層が薄膜でかつ電流駆動系のデバイス(素子)である有機発光層、有機光電変換層を含む層である場合において、特に有効である。
即ち、本発明のガスバリア性フィルムは、電子素子の中でも最もガスバリア性が必要である有機EL素子、または、有機光電変換素子に適用することが好ましい。
(封止)
本発明のガスバリア性フィルムを、有機電子素子として適用する場合について説明する。
まず、例えば、有機EL素子の場合、陽極層/正孔注入・輸送層/発光層/電子注入・輸送層/陰極層等、各種の有機化合物からなる機能層を作製する。
得られた有機EL素子の全体若しくは上部を封止する。
封止部材としては、本発明のガスバリア性フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル等のプラスチック、およびこれらの複合物、ガラス等が挙げられ、必要に応じて、特に樹脂フィルムの場合には、基材と同様、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、窒化珪素等のガスバリア層を積層したものを用いることができる。バリア層は、封止部材成形前に封止部材の両面若しくは片面にスパッタリング、蒸着等により形成することもできるし、封止後に封止部材の両面若しくは片面に同様な方法で形成してもよい。これについても、酸素透過度が1×10−3cm/(m・24h・atm)以下、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m・24h)以下のものであることが好ましい。
〈包装形態〉
本発明のガスバリア性フィルムは、連続生産しロール形態に巻き取ることが出来る(いわゆるロール・トゥ・ロール生産)。その際、バリア層を形成した面に保護シートを貼合して巻き取ることが好ましい。特に有機薄膜素子の封止材として用いる場合、表面に付着したゴミ(パーティクル)が原因で欠陥となる場合が多く、クリーン度の高い場所で保護シートを貼合してゴミの付着を防止することは非常に有効である。併せて、巻取り時に入るバリア層表面への傷の防止に有効である。
保護シートとしては、特に限定するものではないが、膜厚100μm以下程度の基材に弱粘着性の接着層を付与した構成の一般的な「保護シート」、「剥離シート」を用いることが出来る。
〈屈曲耐熱試験〉
作製したガスバリア性フィルムを、25℃50%RHの環境で曲率10cmφとなるようにバリア層のある側の面を内側になるように1回、外側となるように1回屈曲させる変形を1往復とし、100往復繰り返す屈曲処理を施した。次に、ガラスケース内に静置しファンによる送風でガスバリア性フィルムのバタツキが起きないようにした状態で100℃のサーモ機に4時間保管した。
〈水蒸気透過率(WVTR)の測定〉
前述のJIS K 7129B法に従って水蒸気透過率を測定には種々の方法が提案されている。例えば、カップ法、乾湿センサー法(Lassy法)、赤外線センサー法(mocon法)が代表として上げられるが、ガスバリア性が向上するに伴って、これらの方法では測定限界に達してしまう場合があり、以下に示方法も提案されている。水蒸気透過率の測定方法は特に限定するところではないが、本発明に於いてはCa法による評価を行った。
(前記以外の水蒸気透過率測定法)
Ca法
ガスバリア性フィルムに金属Caを蒸着し、該フィルムを透過した水分で金属Caが腐食される現象を利用する方法。腐食面積とそこに到達する時間から水蒸気透過率を算出する。
(株)MORESCOの提案する方法(平成21年12月8日NewsRelease)
大気圧下の試料空間と超高真空中の質量分析計の間で水蒸気の冷却トラップを介して受け渡す方法。
HTO法(米General Atomics社)
三重水素を用いて水蒸気透過率を算出する方法。
A−Star(シンガポール)の提案する方法(WO05/95924)
水蒸気または酸素により電気抵抗が変化する材料(例えばCa、Mg)をセンサーに用いて電気抵抗変化とそれに内在する1/f揺らぎ成分から水蒸気透過率を算出する方法。
〈本発明評価に用いたCa法〉
蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
水蒸気バリア性評価用セルの作製
ガスバリア性フィルム試料のバリア層面に、真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置JEE−400)を用い、透明導電膜を付ける前のガスバリア性フィルム試料の蒸着させたい部分(12mm×12mmを9箇所)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス製)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。また、屈曲前後のガスバリア性の変化を確認するために、上記屈曲の処理を行わなかったガスバリア性フィルムについても同様に、水蒸気バリア性評価用セルを作製した。
得られた両面を封止した試料を60℃、90%RHの高温高湿下で保存し、特開2005−283561号公報に記載の方法に基づき、金属カルシウムの腐食量からセル内に透過した水分量を計算した。
なお、ガスバリア性フィルム面から以外の水蒸気の透過が無いことを確認するために、比較試料としてガスバリア性フィルム試料の代わりに、厚さ0.2mmの石英ガラス板を用いて金属カルシウムを蒸着した試料を、同様な60℃、90%RHの高温高湿下保存を行い、1000時間経過後でも金属カルシウム腐食が発生しないことを確認した。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1
以下に示すように、バリアフィルム(試料)を作製/評価した。
(基材)
基材として、両面に易接着加工された125μmの厚さのポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、テトロンKDL86W)の基材を、170℃で30分アニール加熱処理したものを用いた。
(平滑層およびブリードアウト防止層を有するフィルムの作製)
以下の形成方法により、片面にブリードアウト防止層、反対面に平滑層を形成し、バリア性フィルム用基材を得た。
(ブリードアウト防止層の形成)
上記基材の片面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR Z7535を塗布、乾燥後の膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、硬化条件;1.0J/cm空気下、高圧水銀ランプ使用、乾燥条件;80℃、3分で硬化を行い、ブリードアウト防止層を形成した。
(平滑層の形成)
続けて上記基材の反対面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR Z7527を塗布、乾燥後の膜厚が8μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥条件;80℃、6分で乾燥後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用、硬化条件;1.0J/cm硬化を行い、平滑層を形成した。
このときの十点平均粗さRzJISは16nmであった。
表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が30μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する平均の粗さである。
〈ガスバリア性フィルム1−1の作製〉
(バリア層の形成)
次に、SAMCO社製UVオゾンクリーナー Model UV−1を用いて照射時の雰囲気を窒素置換しながら、オゾン濃度を300ppmとなるように調整して、80℃5分間の表面処理を上記平滑層に行った。この表面処理した平滑層上にポリシラザン層を以下に示す条件で形成した。
〔ポリシラザン層塗布液〕
パーヒドロポリシラザン(PHPS)(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 アクアミカ NN120−20)の10質量%ジブチルエーテル溶液を用い、スピンコート(5000rpm、60秒)にて20℃・露点30℃の条件で塗布・溶剤除去した。次いで、100℃・露点20℃の条件にて5分間、キュアし、ケイ素化合物を含有する膜を形成した。
その後、MDエキシマ社製のステージ可動型キセノンエキシマ光照射装置MODEL:MECL−M−1−200を用いて、照射庫内の雰囲気を窒素と酸素を用いて下記の様に制御しながら、ステージの移動速度を5mm/秒の速さで試料を往復搬送させて、合計10往復照射したのち、試料を取り出し試料1−1とした。本装置は有効照射幅10mmのXeエキシマランプが1本装着されており、ステージ搬送速度10mm/secで搬送した場合、1秒処理/パスに相当する。尚、改質処理後のバリア層の膜厚は150nmであった。
(条件)
エキシマ光強度:60mW/cm(172nm)
試料と光源の距離:1mm
ステージ加熱温度:100℃
酸素濃度:0.1%
露点:20℃
〈ガスバリア性フィルム1−2〜2−5の作製〉
試料1−1と同様に、表1に示す条件で、ガスバリア性フィルム1−2〜2−5の作製を行った。
尚、基材であるPETフィルムの厚み違い(75、38μm)は、共に両面に易接着加工された、75μmポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、テトロンO3)と38μmポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、テトロンHS)を170℃で30分アニール加熱処理したものを用いた。
〈ガスバリア性フィルム3−1、4−1〜4−3の作製〉
試料1−1と同様に、表1に示す条件で、尚且つ、バリア層上に再度ポリシラザン層塗布とエキシマ光改質を繰り返し、バリア層を2層積層したガスバリア性フィルム3−1、4−1〜4−3の作製を行った。
但し、積層したバリア層上層側の改質後膜厚は90nmに調整した。
〈平均表面粗さ:Ra〉
本発明のバリア層の平均表面粗さRaは、JIS B 0601に従い、AFM(原子間力顕微鏡)、Digital Instruments社製DI3100を用いて測定した。
(水蒸気透過率)
得られたガスバリア性フィルムについて、上述した、Ca測定方法で、水蒸気透過率(WVTR)を測定し、以下の評価基準で評価し、結果を表1に示す。
(即時WVTR評価)
Ca法により得られた水分量から、以下の5段階に分類して、水蒸気遮断性を評価した。
6:水蒸気透過率が1×10−5g/(m・24h)未満である
5:水蒸気透過率が1×10−5g/(m・24h)以上、1×10−4g/(m・24h)未満である
4:水蒸気透過率が1×10−4g/(m・24h)以上、1×10−3g/(m・24h)未満である
3:水蒸気透過率が1×10−3g/(m・24h)以上、1×10−2g/(m・24h)未満である
2:水蒸気透過率が1×10−2g/(m・24h)以上、1×10−1g/(m・24h)未満である
1:水蒸気透過率が1×10−1g/(m・24h)以上である。
(屈曲耐熱試験のWVTR評価)
各試料について、20℃50RH%環境にて、バリア層形成面が外側になる様にして曲率10cmφで、100回の屈曲を繰り返し、次に、ガラスケース内に静置しファンによる送風でガスバリア性フィルムのバタツキが起きないようにした状態で100℃の耐熱試験機に4時間保管した後、上記と同様の方法で水蒸気透過率を測定し、屈曲をしなかった試料の水蒸気透過率(上記水蒸気遮断性の評価で得られた水蒸気透過率)から、下式に従って水蒸気遮断性劣化率を測定し、下記の基準に従って折曲耐熱耐性を評価した。
水蒸気遮断性劣化率={1−〔(屈曲試験後の水蒸気遮断度(=水蒸気透過率の逆数))/屈曲なし試料の水蒸気遮断度(=水蒸気透過率の逆数)〕}×100(%)
5:水蒸気遮断性劣化率が10%未満
4:水蒸気遮断性劣化率が10%以上、20%未満
3:水蒸気遮断性劣化率が20%以上、50%未満
2:水蒸気遮断性劣化率が50%以上、70%未満
1:水蒸気遮断性劣化率が70%以上
Figure 0005540949
表1から明らかなように本発明のガスバリア性フィルムはガスバリア性と折り曲げ耐性が高いことが分かる。
実施例2
実施例1で作製したガスバリア性フィルムの試料を用いて、各屈曲耐熱処理有り無しのガスバリア性フィルムを、それぞれ準備し、有機光電変換素子と有機EL素子を作製した。
〈有機薄膜素子の作製方法〉
《有機光電変換素子の作製方法》
実施例1で作製した各屈曲耐熱試験有り無しのガスバリア性フィルムに、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(シート抵抗10Ω/□)を、通常のフォトリソグラフィー技術と湿式エッチングとを用いて2mm幅にパターニングし第1の電極を作製した。
パターン形成した第1の電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
この透明基材上に、導電性高分子であるBaytron P4083(スタルクヴィテック社製)を膜厚が30nmになるように塗布乾燥した後、150℃で30分間熱処理させ正孔輸送層を製膜した。
これ以降は、基材を窒素チャンバー中に持ち込み、窒素雰囲気下で作製した。
まず、窒素雰囲気下で上記基材を150℃で10分間加熱処理した。次に、クロロベンゼンにP3HT(プレクトロニクス社製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン)とPCBM(フロンティアカーボン社製:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)を3.0質量%になるように1:0.8で混合した液を調製し、フィルタでろ過しながら膜厚が100nmになるように塗布を行い、室温で放置して乾燥させた。続けて、150℃で15分間加熱処理を行い、光電変換層を製膜した。
次に、上記一連の機能層を製膜した基材を真空蒸着装置チャンバー内に移動し、1×10−4Pa以下まで真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度0.01nm/秒でフッ化リチウムを0.6nm積層し、更に続けて、2mm幅のシャドウマスクを通して(受光部が2×2mmに成るように直行させて蒸着)、蒸着速度0.2nm/秒でAlメタルを100nm積層することで第2の電極を形成した。
得られた各々の有機光電変換素子を窒素チャンバーに移動し、封止用キャップとして実施例1で作製したガスバリア性フィルムの同じ試料同士を組み合わせてUV硬化樹脂を用いて封止を行って、受光部が2×2mmサイズの有機光電変換素子1−1〜1−4、2−1〜2−5、3−1、4−1〜4−3をそれぞれ作製した。
《有機EL素子の作製方法》
実施例1で作製した各屈曲耐熱試験有り無しのガスバリア性フィルムの上に厚さ150nmのITO(インジウムチンオキシド)をスパッタ法により成膜し、フォトリソグラフィー法によりパターニングを行い、第1電極層を形成した。なお、パターンは発光面積が50mm平方になるようなパターンとした。
〈正孔輸送層の形成〉
第1電極層が形成されたガスバリア性フィルムの第1電極層の上に、以下に示す正孔輸送層形成用塗布液を押出し塗布機で塗布した後、乾燥し正孔輸送層を形成した。正孔輸送層形成用塗布液は乾燥後の厚みが50nmになるように塗布した。
正孔輸送層形成用塗布液を塗布する前に、ガスバリア性フィルムの洗浄表面改質処理を、波長184.9nmの低圧水銀ランプを使用し、照射強度15mW/cm、距離10mmで実施した。帯電除去処理は、微弱X線による除電器を使用し行った。
(塗布条件)
塗布工程は大気中、25℃相対湿度50%の環境で行った。
(正孔輸送層形成用塗布液の準備)
ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer社製 Bytron P AI 4083)を純水で65%、メタノール5%で希釈した溶液を正孔輸送層形成用塗布液として準備した。
(乾燥および加熱処理条件)
正孔輸送層形成用塗布液を塗布した後、製膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度100℃で溶媒を除去した後、引き続き、加熱処理装置を用い温度150℃で裏面伝熱方式の熱処理を行い、正孔輸送層を形成した。
〈発光層の形成〉
引き続き、正孔輸送層迄を形成したガスバリア性フィルムの正孔輸送層の上に、以下に示す白色発光層形成用塗布液を押出し塗布機で塗布した後、乾燥し発光層を形成した。白色発光層形成用塗布液は乾燥後の厚みが40nmになるように塗布した。
(白色発光層形成用塗布液)
ホスト材のH−Aを1.0gと、ドーパント材D−Aを100mg、ドーパント材D−Bを0.2mg、ドーパント材D−Cを0.2mg、100gのトルエンに溶解し白色発光層形成用塗布液として準備した。
Figure 0005540949
(塗布条件)
塗布工程を窒素ガス濃度99%以上の雰囲気で、塗布温度を25℃とし、塗布速度1m/minで行った。
(乾燥および加熱処理条件)
白色発光層形成用塗布液を塗布した後、製膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度60℃で溶媒を除去した後、引き続き、温度130℃で加熱処理を行い、発光層を形成した。
〈電子輸送層の形成〉
引き続き、発光層迄を形成したのち、以下に示す電子輸送層形成用塗布液を押出し塗布機で塗布した後、乾燥し電子輸送層を形成した。電子輸送層形成用塗布液は乾燥後の厚みが30nmになるように塗布した。
(塗布条件)
塗布工程は窒素ガス濃度99%以上の雰囲気で、電子輸送層形成用塗布液の塗布温度を25℃とし、塗布速度1m/minで行った。
(電子輸送層形成用塗布液)
電子輸送層はE−Aを2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール中に溶解し0.5質量%溶液とし電子輸送層形成用塗布液とした。
Figure 0005540949
(乾燥および加熱処理条件)
電子輸送層形成用塗布液を塗布した後、製膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度60℃で溶媒を除去した後、引き続き、加熱処理部で、温度200℃で加熱処理を行い、電子輸送層を形成した。
(電子注入層の形成)
引き続き、形成された電子輸送層の上に電子注入層を形成した。まず、基材を減圧チャンバーに投入し、5×10−4Paまで減圧した。あらかじめ、真空チャンバーにタンタル製蒸着ボートに用意しておいたフッ化セシウムを加熱し、厚さ3nmの電子注入層を形成した。
(第2電極の形成)
引き続き、形成された電子注入層の上に第1電極の上に取り出し電極になる部分を除き、形成された電子注入層の上に5×10−4Paの真空下にて第2電極形成材料としてアルミニウムを使用し、取り出し電極を有するように蒸着法にて、発光面積が50mm平方になるようにマスクパターン成膜し、厚さ100nmの第2電極を積層した。
(裁断)
第2電極まで形成したガスバリア性フィルムを、再び窒素雰囲気に移動し、規定の大きさに裁断し、有機EL素子試料No.1−1〜1−4、2−1〜2−5、3−1、4−1〜4−3を作製した。
(断裁の方法)
断裁の方法として、特に限定するところではないが、紫外線レーザー(例えば、波長266nm)、赤外線レーザー、炭酸ガスレーザー等の高エネルギーレーザーによるアブレーション加工で行うことが好ましい。ガスバリア性フィルムは割れやすい無機の薄膜を有しているため、通常のカッターで断裁すると断細部で亀裂が発生することがある。素子の断裁だけでなく、ガスバリア性フィルム単体での断裁も同様である。更には無機層表面に有機成分を含む保護層を設置することでも断裁時のヒビ割れを抑制することが可能である。
(電極リード接続)
作製した有機EL素子に、ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製異方性導電フィルムDP3232S9を用いて、フレキシブルプリント基材(ベースフィルム:ポリイミド12.5μm、圧延銅箔18μm、カバーレイ:ポリイミド12.5μm、表面処理NiAuメッキ)を接続した。
圧着条件:温度170℃(別途熱伝対を用いて測定したACF温度140℃)、圧力2MPa、10秒で圧着を行った。
(封止)
電極リード(フレキシブルプリント基材)を接続した有機EL素子を、市販のロールラミネート装置を用いて封止部材を接着し、封止済み有機EL素子を製作した。
なお、封止部材として、実施例1で作製した各屈曲耐熱試験有り無しのガスバリア性フィルムを用いた有機EL素子について、同じガスバリア性フィルム試料同士を組み合わせるようにして、ラミネートした。
封止部材のバリア層面に熱硬化性接着剤を、ディスペンサを使用して厚み1.5μmで均一に塗布しラミネートした。
熱硬化接着剤としては以下のエポキシ系接着剤を用いた。
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)
ジシアンジアミド(DICY)
エポキシアダクト系硬化促進剤
しかる後、封止基板を、取り出し電極および電極リードの接合部を覆うようにして密着・配置して、圧着ロールを用いて圧着条件、圧着ロール温度120℃、圧力0.5MPa、装置速度0.3m/minで密着封止した。
〈評価方法〉
《有機電子素子の評価》
評価は以下の基準で実施した。
〈有機光電変換素子(OPV)の耐久性の評価〉
《エネルギー変換効率の評価》
上記作製した屈曲を繰り返したバリアフィルム試料と屈曲を行わなかったバリアフィルム試料にそれぞれ該当する有機光電変換素子試料について、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を4.0mmにしたマスクを受光部に重ね、IV特性を評価することで、短絡電流密度Jsc(mA/cm)、開放電圧Voc(V)及びフィルファクターFF(%)を、同素子上に形成した4箇所の受光部をそれぞれ測定し、下記式1に従って求めたエネルギー変換効率PCE(%)の4点平均値を見積もった。
(式1)PCE(%)=〔Jsc(mA/cm)×Voc(V)×FF(%)〕/100mW/cm
初期電池特性としての変換効率を測定し、また、性能の経時的低下の度合いを温度60℃、湿度90%RH環境で1000時間保存した加速試験後の変換効率残存率により評価した。
加速試験後の変換効率/初期変換効率の比について以下の評価を行った。
5:90%以上
4:70%以上、90%未満
3:40%以上、70%未満
2:20%以上、40%未満
1:20%未満
屈曲を繰り返したバリアフィルム試料にそれぞれ該当する有機素子試料それぞれの評価結果を表1の加速試験前後の評価結果(OPV)の欄に示す。
〈有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)の耐久性の評価〉
《輝度の評価》
上記作製した屈曲を繰り返したバリアフィルム試料と屈曲を行わなかったバリアフィルム試料No.1−1〜1−4、2−1〜2−5、3−1、4−1〜4−3にそれぞれ該当するOLED試料No.1−1〜1−4、2−1〜2−5、3−1、4−1〜4−3について、100mW時の輝度(cd/m)をコニカミノルタセンシング(株)製の分光放射輝度計 CS−2000A を用い計測した。尚、評価の安定のため10点測定の平均値を求めた。
初期発光特性としての輝度を測定し、また、性能の経時的低下の度合いを温度60℃、湿度90%RH環境で1000時間保存した加速試験後の輝度残存率により評価した。
初期発光特性としての輝度を測定し、また、性能の経時的低下の度合いを温度60℃、湿度90%RH環境で1000時間保存した加速試験後の輝度残存率により評価した。
加速試験後の輝度/初期の輝度の比(輝度残存率)については以下の評価を行った。
5:90%以上
4:70%以上、90%未満
3:40%以上、70%未満
2:20%以上、40%未満
1:20%未満
屈曲を繰り返したバリアフィルム試料にそれぞれ該当する有機素子試料それぞれの評価結果を表1の加速試験前後の評価結果(OLED)の欄に示す。
本発明のガスバリア性フィルムを用いた素子は屈曲耐熱試験を実施しても、有機電子素子の性能が殆ど変化しない。
すなわち、高いガスバリア性と屈曲性と耐熱性の全てを満足していることが分かる。
1 有機電子素子
2 ガスバリア性フィルム
3 第一電極
4 有機機能層
5 第二電極
6 基材

Claims (7)

  1. 基材の少なくとも片面に、ポリシラザン塗布層を設け、エキシマランプ照射により改質してバリア層に転化し形成することを含むガスバリア性フィルムの製造方法において、該バリア層のXPSの任意の深さ方向で測定される元素比が、以下の式(1−1)、(2−1)、(3−1)を満たし、ポリシラザン塗布および溶剤除去時の露点(露点1)が5〜15℃、同キュア時の露点(露点2)が−100℃〜10℃、かつ、エキシマ改質時の露点(露点3)が−100℃〜0℃、であることを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
    バリア層の深さ方向の表面側5%の任意の点において
    1.0<O/Si≦2.3 式(1−1)
    バリア層の深さ方向の基材側95%の任意の点において
    0.2<O/Si≦2.0 式(2−1)
    バリア層の深さ方向の全域
    0 ≦ N/Si ≦0.8 式(3−1)
  2. らに以下の式(1−2)、(2−2)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の製造方法
    バリア層の深さ方向の表面側5%の任意の点において
    1.5<O/Si≦2.2 式(1−2)
    バリア層の深さ方向の基材側95%の任意の点において
    1.0<O/Si≦2.0 式(2−2)
  3. 前記バリア層の表面粗さ(Ra)が、0.1〜10nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法
  4. 前記バリア層の表面粗さ(Ra)が、0.1〜5nmであることを特徴とする請求項3に記載の製造方法
  5. 前記露点3が、−100℃〜−20℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法で製造したガスバリア性フィルムを用いたことを特徴とする有機光電変換素子の製造方法
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法で製造したガスバリア性フィルムを用いたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法
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