JP5540788B2 - ガスバリアフィルム、その製造方法、それを用いた有機光電変換素子及び太陽電池 - Google Patents

ガスバリアフィルム、その製造方法、それを用いた有機光電変換素子及び太陽電池 Download PDF

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Description

本発明は、ガスバリアフィルムとその製造方法に関する。より詳しくは、主に電子デバイス等のパッケージ、又は有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子や太陽電池素子、液晶表示素子等に用いられるガスバリアフィルムとその製造方法に関する。また、当該ガスバリアフィルムを用いた有機光電変換素子及び太陽電池に関する。
従来、プラスチック基板やフィルムの表面に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物の薄膜を含む複数の層を積層形成したガスバリアフィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、食品や工業用品及び医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。また、包装用途以外にも太陽電池素子、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、液晶表示素子等で使用されている。
このようなガスバリアフィルムを形成する方法として、テトラエトキシシラン(TEOS)に代表される有機珪素化合物を用いて減圧下の酸素プラズマで酸化しながら基板上に成膜する化学堆積法(プラズマCVD法:Chemical Vapor Deposition)や半導体レーザーを用いて金属Siを蒸発させ酸素の存在下で基板上に堆積するスパッタ法が知られている。
これらの方法は正確な組成の薄膜を基板上に形成できるためSiOをはじめとする金属酸化物薄膜の形成に好ましく使われてきたが、減圧下での成膜となるため、減圧及び大気開放に時間を要すること、連続生産が難しいこと、設備が大型化することなど著しく生産性が悪かった。
かかる問題を解決するため、生産性の向上を目的に、珪素含有化合物を塗布し、その塗膜を改質することで酸化シリコン薄膜を形成する方法、及び同じCVD法でも大気圧下でプラズマを発生し大気圧下で成膜する試みが行われており、ガスバリアフィルムにおいても検討されている。
一般的に溶液プロセスで作製可能な酸化ケイ素膜としては、アルコキシド化合物を原料として、ゾル−ゲル法と呼ばれる方法で形成する技術が知られている。このゾル−ゲル法は一般的に高温に加熱する必要があり、さらに脱水縮合反応の過程で大きな体積収縮が起こり、膜中に多数の欠陥が生じる。
これを防ぐために原料溶液に酸化物の形成に直接関与しない有機物などを混合する手法なども見いだされてはいるが、これらの有機物が膜中に残存することによって膜全体のバリア性の低下が懸念されている。これらのことから、ゾル−ゲル法で作製する酸化膜をそのままフレキシブル電子デバイスの保護膜として用いるのは困難であった。
その他の方法としては、原料にシラザン構造(Si−N)を基本構造とするシラザン化合物を用いて酸化ケイ素膜を形成することが提案されている。この場合の反応は脱水縮重合ではなく窒素から酸素への直接的な置換反応であるため、反応前後の質量収率が80%から100%以上と大きく、体積収縮による膜中欠陥が少ない緻密な膜が得られることが知られている。
しかし、シラザン化合物の置換反応による酸化シリコン膜の形成には450℃以上の高温が必要であり、プラスチック等のフレキシブル基板に適応することは不可能であった。
このような問題解決の手段として、シラザン化合物溶液から塗布形成した塗膜に紫外線照射を施すことにより、酸化シリコン膜を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。シラザン化合物内の原子間結合力より大きい真空紫外光(以下、「VUV」、「VUV光」とも記載する。)と呼ばれる100〜200nmの光エネルギーを用いて、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみによる作用により、直接切断しながら活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させることで、比較的低温で、酸化シリコン膜の形成をおこなうことができる。
この方法は、ロール・トゥー・ロールでの生産にも適しており、高い生産性によるガスバリアフィルムの低価格化への寄与も期待されるものである。
一般に、塗布で形成されたガスバリア性を有する層(以下「ガスバリア層」という。)の表面は、化学堆積法(プラズマCVD)で形成されたガスバリア層の表面と比較して、表面平滑性の高い緻密な表面となっていることが知られている。ガスバリア層の表面平滑性が高く緻密であることは、ガスバリア性が高いことにつながり、上記デバイスや素子に用いた場合にこれらの性能や寿命を良好なものとすることができる反面、ガスバリア層表面の摩擦係数が高くなり、また傷も入りやすくなるため、ガスバリアフィルム製造時や上記デバイスや素子製造時の工程ロールや部材との接触でガスバリア層表面に傷が発生したり、ガスバリア層全体にクラックを生じたりして、ガスバリア性が著しく低下することがあった。
一方で、真空製膜等で形成したガスバリア層に耐傷性を付与する方法として、ガスバリア層上にオーバーコート層を設ける技術が提案されている。
例えば、特許文献2には、金属酸化物の薄膜ガスバリア層上にポリシラザンの塗布層を形成し、これをエイジングで硬化して石英に近い硬度の1μmのオーバーコート層を形成することが提案されている。しかし、ポリシラザンの硬化層は柔軟性がないためクラックが入りやすく、このクラックがガスバリア層にまで伝播するため、オーバーコート層としては不適切なものである。
特許文献3には、無機ガスバリア層上にUV硬化性のアクリル樹脂からなる5μmのオーバーコート層を設ける例が挙げられている。しかし、比較的厚い樹脂層はその層自体に保持する酸素や水分も多くなるため、このようなガスバリアフィルムを用いた上記デバイスや素子は、性能が大きく劣化する懸念がある。また、厚さの厚い塗布層を乾燥、UV硬化させることは生産性の低下やコスト増につながるといった点でも好ましくない。
特許文献4には、無機ガスバリア層上に特定化合物を含有する有機薄層を積層する例が挙げられているが、オーバーコート層としての強度が考慮されていないため、ガスバリア層の傷やクラック抑制効果は全く不十分なものである。
このように、塗布で形成されたガスバリア層の平滑な表面を十分に保護して傷やクラック発生を防止するとともに、生産性を低下させることなく形成することが可能なオーバーコート層の技術は知られていなかった。
特開2009−503157号公報 特開2003−089165号公報 特開2003−251733号公報 特開2007−290369号公報
本発明は、上記問題・状況にかんがみてなされたものであり、その解決課題は、きわめて高いガスバリア性能を有し、ロール・トゥー・ロール方式の生産に適応可能なため安価であり、かつ耐傷性などの必要な生産適性を有するガスバリアフィルムとその製造方法を提供することである。また、当該ガスバリアフィルムを用いた有機光電変換素子及び太陽電池を提供することである。
本発明に係る上記課題は以下の手段により解決される。
1.基材上に、酸化珪素及び酸化窒化珪素のうちの少なくとも一方を含有する少なくとも一層からなるガスバリア層と当該ガスバリア層のうちの最表層上に設けられた重合性基又は架橋性基を有する有機化合物の反応生成物および無機微粒子を含有するオーバーコート層とを有するガスバリアフィルムであって、(1)当該ガスバリア層はポリシラザン骨格を有する珪素化合物含有液の塗布膜に改質処理を施して形成された層であり、かつ(2)当該オーバーコート層は有機化合物を含有し、当該オーバーコート層の厚さをt、25℃における弾性率をErとしたときに、tは0.2〜1.0μmであり、Erは16.0〜29.0MPaであることを特徴とするガスバリアフィルム
2.前記ポリシラザン骨格を有する珪素化合物が、パーヒドロポリシラザンであることを特徴とする前記1に記載のガスバリアフィルム;
3.前記1または2に記載のガスバリアフィルムを製造するガスバリアフィルムの製造方法であって、前記改質処理が、波長200nm以下の真空紫外光を照射する改質処理であることを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法;
4.前記1〜3のいずれか一項に記載のガスバリアフィルムが具備されたことを特徴とする有機光電変換素子;
5.前記1〜4のいずれか一項に記載のガスバリアフィルムが具備されたことを特徴とする太陽電池。
本発明の上記手段により、きわめて高いガスバリア性能を有し、ロール・トゥー・ロール方式の生産に適応可能なため安価であり、かつ耐傷性などの必要な生産適性を有するガスバリアフィルムとその製造方法を提供することができる。また、当該ガスバリアフィルムを用いた有機光電変換素子及び太陽電池を提供することができる。
本発明のガスバリアフィルムは、基材上に、酸化珪素及び酸化窒化珪素のうちの少なくとも一方を含有する少なくとも一層からなるガスバリア層と当該ガスバリア層のうちの最表層上に設けられたオーバーコート層とを有するガスバリアフィルムであって、(1)当該ガスバリア層はポリシラザン骨格を有する珪素化合物含有液の塗布膜に改質処理を施して形成された層であり、かつ(2)当該オーバーコート層は有機化合物を含有し、当該オーバーコート層の厚さをt、25℃における弾性率をErとしたときに、tは0.2μm以上であり、かつtとErとが前記関係式(1)を満たすことを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項6までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記オーバーコート層が、重合性基又は架橋性基を有する有機化合物の反応生成物を含有することが好ましい。また、前記ポリシラザン骨格を有する珪素化合物が、パーヒドロポリシラザンであることが好ましい。
本発明のガスバリアフィルムの製造方法としては、前記改質処理が、波長200nm以下の真空紫外光を照射する改質処理である態様の製造方法であることが好ましい。
本発明のガスバリアフィルムは、有機光電変換素子及びそれを用いた太陽電池に好適に使用することができる。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態について詳細な説明をする。
《ガスバリアフィルム及びその製造方法》
本発明のガスバリアフィルムは、基材上に、酸化珪素及び酸化窒化珪素のうちの少なくとも一方を含有する少なくとも一層からなるガスバリア層と当該ガスバリア層のうちの最表層上に設けられたオーバーコート層とを有するガスバリアフィルムであって、(1)当該ガスバリア層はポリシラザン骨格を有する珪素化合物含有液の塗布膜に改質処理を施して形成された層であり、かつ(2)当該オーバーコート層は有機化合物を含有し、当該オーバーコート層の厚さをt、25℃における弾性率をErとしたときに、tは0.2μm以上であり、かつtとErとが下記関係式(1)を満たすことを特徴とする。
関係式(1):0.40≦0.47t+0.06Er1/2≦1.2
本発明のガスバリアフィルムの製造方法の一態様としては、基材として、樹脂フィルム基板、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用い、PET上の少なくとも片面に、一層以上のポリシラザンを含有する塗膜(ポリシラザン層、ポリシラザン含有層ともいう。)を形成し、改質処理を施すことによりガスバリア性(「ガスバリア性能」ともいう。)を発現したガスバリア層を有しており、当該ガスバリア層が、ポリシラザン含有層を塗布した後、乾燥工程と真空紫外線(VUV)等のエネルギーを用いて塗膜を改質処理してガスバリア層を形成する工程を有する。
なお、当該ガスバリア層は単層(一塗布で形成可能な層)でも複数の同様な層を積層してもよく、複数の層で、更にガスバリア性を向上させることも可能である。本明細書内では特に積層構成は例示しないが、本発明の効果を用いて、更に高いガスバリア性を実現するには積層構成も好ましく用いることができる。
本発明のガスバリアフィルムに用いられるガスバリア層は、平滑性の確保の点から、上述のような塗布で形成されることが好ましい。また、塗布で形成されるガスバリア層として、好ましく用いられるのが、ポリシラザンを含有する組成物である。表面平滑性の良好なガスバリア層を有するガスバリアフィルムを有する有機光電変換素子、当該素子を有する太陽電池等は、エネルギー変換効率に優れ、かつ、強制劣化条件経時後においても良好なエネルギー変換効率を示す。
なお、ガスバリア層の表面平滑性は、JIS B 0601で規定される表面粗さで、最大断面高さRt(p)が、30nm以下であることが好ましい。
(真空紫外線(VUV)を用いたポリシラザンを含有する塗膜の改質処理)
本発明に係るガスバリア層は、ポリシラザンを含有する溶液を基材上に塗布した後、ポリシラザンを含む塗膜に真空紫外線(VUV)を照射する方法で改質処理されることが好ましい。
本発明に係るガスバリア層は、ポリシラザン含有溶液を基材上に塗布、乾燥した後、ポリシラザンを含む塗膜に上記の様な表面処理工程を経て、又は同時に真空紫外線を照射する方法で改質膜、すなわち、ガスバリア層が形成される。
この真空紫外線(VUV光)照射により、ポリシラザンの分子結合を切断し、また膜内若しくは雰囲気内に微量に存在する酸素でも効率的にオゾン若しくは活性酸素に変換することが可能であり、塗膜のセラミックス化(シリカ改質)が促進され、また得られるセラミックス膜が一層緻密になる。VUV光照射は、塗膜形成後であればいずれの時点で実施しても有効である。
本発明に係る「真空紫外線」には、具体的には、100〜200nmの真空紫外線(VUV光)が好ましく用いられる。
真空紫外線の照射は、照射される塗膜を担持している基材がダメージを受けない範囲で照射強度及び/又は照射時間を設定する。基材としてプラスチックフィルムを用いた場合を例にとると、基材表面の強度が10〜300mW/cmになるように基材−ランプ間距離を設定し、0.1秒〜10分間、好ましくは0.5秒〜3分の照射を行うことが好ましい。
真空紫外線照射装置は、市販のランプ(例えば、ウシオ電機製)を使用することが可能である。
真空紫外線(VUV)照射はバッチ処理にも連続処理にも適合可能であり、被塗布基材の形状によって適宜選定することができる。
例えば、バッチ処理の場合には、ポリシラザン塗膜を表面に有する基材(例、シリコンウェハー)を、真空紫外線発生源を具備した真空紫外線焼成炉で処理することができる。真空紫外線焼成炉自体は一般に知られており、例えば、ウシオ電機(株)製を使用することができる。また、ポリシラザン塗膜を表面に有する基材が長尺フィルム状である場合には、これを搬送させながら上記のような真空紫外線発生源を具備した乾燥ゾーンで連続的に真空紫外線を照射することによりセラミックス化することができる。
当該真空紫外光は、ほとんどの物質の原子間結合力より大きいため、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみによる作用により、直接切断することが可能であるため好ましく用いることができる。この作用を用いる事により、加水分解を必要とせず低温でかつ効率的に改質処理が可能となる。
これに必要な真空紫外光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。
Xe,Kr,Ar,Neなどの希ガスの原子は化学的に結合して分子を作らないため、不活性ガスと呼ばれる。しかし、放電などによりエネルギーを得た希ガスの原子(励起原子)は他の原子と結合して分子を作ることができる。希ガスがキセノンの場合には、
e+Xe→Xe*
Xe*+2Xe→Xe*+Xe
Xe*→Xe+Xe+hν(172nm)
となり、励起されたエキシマ分子であるXe*が基底状態に遷移するときに172nmのエキシマ光を発光する。
エキシマランプの特徴としては、放射が一つの波長に集中し、必要な光以外がほとんど放射されないので効率が高いことが挙げられる。また、余分な光が放射されないので、対象物の温度を低く保つことができる。さらには始動・再始動に時間を要さないので、瞬時の点灯点滅が可能である。
エキシマ発光を得るには誘電体バリア放電を用いる方法が知られている。誘電体バリア放電とは両電極間に誘電体(エキシマランプの場合は透明石英)を介してガス空間を配し、電極に数10kHzの高周波高電圧を印加することによりガス空間に生じる、雷に似た非常に細いmicro dischargeと呼ばれる放電で、micro dischargeのストリーマが管壁(誘電体)に達すると誘電体表面に電荷が溜まるため、micro dischargeは消滅する。
このmicro dischargeが管壁全体に広がり、生成・消滅を繰り返している放電である。このため肉眼でも分る光のチラツキを生じる。また、非常に温度の高いストリーマが局所的に直接管壁に達するため、管壁の劣化を早める可能性もある。
効率よくエキシマ発光を得る方法としては、誘電体バリア放電以外に無電極電界放電でも可能である。 容量性結合による無電極電界放電で、別名RF放電とも呼ばれる。ランプと電極及びその配置は基本的には誘電体バリア放電と同じで良いが、両極間に印加される高周波は数MHzで点灯される。無電極電界放電はこのように空間的にまた時間的に一様な放電が得られるため、チラツキが無い長寿命のランプが得られる。
誘電体バリア放電の場合はmicro dischargeが電極間のみで生じるため、放電空間全体で放電を行わせるには外側の電極は外表面全体を覆い、かつ外部に光を取り出すために光を透過するものでなければならない。
このため細い金属線を網状にした電極が用いられる。この電極は光を遮らないようにできるだけ細い線が用いられるため、酸素雰囲気中では真空紫外光により発生するオゾンなどにより損傷しやすい。
これを防ぐためにはランプの周囲、すなわち照射装置内を窒素などの不活性ガスの雰囲気にし、合成石英の窓を設けて照射光を取り出す必要が生じる。合成石英の窓は高価な消耗品であるばかりでなく、光の損失も生じる。
二重円筒型ランプは外径が25mm程度であるため、ランプ軸の直下とランプ側面では照射面までの距離の差が無視できず、照度に大きな差を生じる。したがって仮にランプを密着して並べても、一様な照度分布が得られない。合成石英の窓を設けた照射装置にすれば酸素雰囲気中の距離を一様にでき、一様な照度分布が得られる。
無電極電界放電を用いた場合には外部電極を網状にする必要は無い。ランプ外面の一部に外部電極を設けるだけでグロー放電は放電空間全体に広がる。外部電極には通常アルミのブロックで作られた光の反射板を兼ねた電極がランプ背面に使用される。しかし、ランプの外径は誘電体バリア放電の場合と同様に大きいため一様な照度分布にするためには合成石英が必要となる。
細管エキシマランプの最大の特徴は構造がシンプルなことである。石英管の両端を閉じ、内部にエキシマ発光を行うためのガスを封入しているだけである。
細管ランプの管の外径は6nm〜12mm程度で、あまり太いと始動に高い電圧が必要になる。
放電の形態は誘電体バリア放電でも無電極電界放電のいずれでも使用できる。電極の形状はランプに接する面が平面であっても良いが、ランプの曲面に合わせた形状にすればランプをしっかり固定できるとともに、電極がランプに密着することにより放電がより安定する。また、アルミで曲面を鏡面にすれば光の反射板にもなる。
Xeエキシマランプは波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから発光効率に優れている。この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラジカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。
また、有機物の結合を解離させる波長の短い172nmの光のエネルギーは能力が高いことが知られている。
この活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、短時間でポリシラザン層の改質を実現できる。
したがって、波長185nm、254nmの発する低圧水銀ランプやプラズマ洗浄と比べて高スループットに伴うプロセス時間の短縮や設備面積の縮小、熱によるダメージを受けやすい有機材料やプラスチック基板などへの照射を可能としている。
エキシマランプは光の発生効率が高いため低い電力の投入で点灯させることが可能である。また、光による温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域で単一波長でエネルギーを照射するため、解射対象物の表面温度の上昇が抑えられる特徴を持っている。このため、熱の影響を受けやすいとされるPETなどのフレシキブルフィルム材料に適している。
《真空紫外線の照射強度》
照射強度が高ければ、光子とポリシラザン内の化学結合が衝突する確率が増え、改質反応を短時間化することができる。また、内部まで侵入する光子の数も増加するため改質膜厚も増加及び/又は膜質の良化(高密度化)が可能である。
ただし、照射時間を長くしすぎると平面性の劣化やガスバリア性フィルムの他の材料にダメージを与える場合がある。一般的には、照射強度と照射時間の積で表される積算光量で反応進行具合を考えるが、酸化シリコンの様に組成は同一でも、様々な構造形態をとること材料に於いては、照射強度の絶対値が重要になる場合もある。
したがって、本発明ではVUV照射工程において、基材のダメージ、ランプやランプユニットの部材のダメージを抑制し、改質効率を上昇させ、ガスバリア性能を向上の両方を併せて達成する観点から、少なくとも一回は100〜200mW/cmの最大照射強度を与える改質処理を行うことが好ましい。
(真空紫外線(VUV)の照射時間)
本発明に係る真空紫外線(VUV)の照射時間は、任意に設定可能であるが、基材ダメージや膜欠陥生成の観点及びガスバリア性能のバラつき低減の観点から高照度工程での照射時間は0.1秒〜3分間が好ましく、更に好ましくは、0.5秒〜1分である。
(真空紫外線(VUV)照射時の酸素濃度)
本発明に係る真空紫外線(VUV)照射時の酸素濃度は500〜10000ppm(1%)とすることが好ましく、更に好ましくは、1000〜5000ppmである。
前記の酸素濃度の範囲に調整することにより、後述するように酸素過多のガスバリア膜の生成を防止してガスバリア性の劣化を防止することができる。
また、大気との置換時間が不必要に長くなるのを防ぎ、同時に、ロール・トゥ・ロールの様な連続生産を行う場合にウエッブ搬送によって真空紫外線(VUV)照射庫内に巻き込む空気量(酸素を含む。)の増大を防ぎ、酸素濃度の調整不能になることを防ぐことができる。
また、本発明者らの検討によると、ポリシラザン含有塗膜中には、塗布時に酸素及び微量の水分が混入し、更には塗膜以外の支持体にも吸着酸素や吸着水があり、照射庫内に敢えて酸素を導入しなくとも改質反応に要する酸素を供給する酸素源は十分にあることが分かった。
むしろ、酸素ガスが多く(数%レベル)含まれる雰囲気でVUV光を照射した場合、改質後のガスバリア膜が酸素過多の構造となり、ガスバリア性が劣化する。
また、前述した様に172nmの真空紫外線(VUV)が、酸素により吸収され膜面に到達する172nmの光量が減少してしまい、光による処理の効率を低下しやすい。
すなわち、真空紫外線(VUVJ)照射時には、できるだけ酸素濃度の低い状態で、VUV光が効率良く塗膜まで到達する状態で改質処理することが好ましい。
この点はCVD等の原子堆積法の様に、予め制御された組成比の膜を堆積して作製する方法と塗布による前駆体膜作製+改質処理という方法の大きく異なる点であり、大気圧下の塗布法に独特な点である。
真空紫外線(VUV)照射時にこれら酸素以外のガスとしては乾燥不活性ガスとすることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスにすることが好ましい。酸素濃度の調整は照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整可能である。
《ポリシラザンを含有する塗膜》
本発明に係るポリシラザン膜は、基材上に少なくとも一層のポリシラザン化合物を含有する塗布液を塗布することにより形成される。
塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。塗布厚さは、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、塗布厚さは、乾燥後の厚さが好ましくは1nm〜100μm程度、さらに好ましくは10nm〜10μm程度、最も好ましくは10nm〜1μm程度となるように設定され得る。
本発明で用いられる「ポリシラザン」とは、珪素−窒素結合を持つポリマーで、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO、Si及び両方の中間固溶体SiO等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
フィルム基材を損なわないように塗布するためには、特開平8−112879号公報に記載されているように比較的低温でセラミック化してシリカに変性するシリカに変性する化合物が好ましい。
−Si(R)(R)−N(R)−
式中、R、R、Rは、各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基を表す。
本発明では、得られるバリア膜としての緻密性の観点からは、R、R及びRのすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザンが特に好ましい。
一方、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより下地基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができ、より膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択してよく、混合して使用することもできる。
パーヒドロポリシラザンは直鎖構造と6及び8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)であり、液体又は固体の物質であり、分子量により異なる。これらは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有塗布液として使用することができる。
低温でセラミック化するポリシラザンの別の例としては、上記ポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(特開平7−196986号公報)等が挙げられる。
ポリシラザンを含有する液体を調製する有機溶媒としては、ポリシラザンと容易に反応してしまうようなアルコール系や水分を含有するものを用いることは好ましくない。具体的には、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。具体的には、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の炭化水素、塩化メチレン、トリコロロエタン等のハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等がある。これらの溶剤は、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度、等目的にあわせて選択し、複数の溶剤を混合しても良い。
ポリシラザン含有塗布液中のポリシラザン濃度は目的とするシリカ膜厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、0.2〜35質量%程度である。
有機ポリシラザンは、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換された誘導体であってもよい。アルキル基、特にもっとも分子量の少ないメチル基を有することにより下地基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいシリカ膜に靭性を持たせることができ、より膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる。
酸化珪素化合物への改質を促進するために、アミンや金属の触媒を添加することもできる。具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 アクアミカ NAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、SP140などが挙げられる。
(ポリシラザンを含有する塗布液に含有される反応触媒の濃度)
本発明に係るポリシラザンを含有する溶液(塗布液ともいう。)中には、必要に応じて、反応触媒を添加することによって加水分解・脱水縮合を促進するため、添加量によってSi−OH基の生成速度が大きく変化する。
すなわち、添加しすぎると過剰なSi−OH基により経時変化が大きな膜になってしまう。
更に、前述したように真空紫外光照射の様な分子結合を切断するのに十分なエネルギーを与えた場合、特にアミン系触媒は分解、蒸発してしまうことがある。
触媒の分解、蒸発が起こると改質膜内に不純物や空隙が含まれることになり、ガスバリア性は劣化してしまう。
本発明では、触媒による過剰なシラノール形成、及び膜密度の低下、膜欠陥の増大を避けるため、ポリシラザンに対する触媒の添加量を2質量%以下に調整することが好ましい。更には、Si−OH生成を抑制する観点で、触媒は添加しないことが、より好ましい。
(オーバーコート層)
本発明のガスバリアフィルムは、基材上に、酸化珪素及び酸化窒化珪素のうちの少なくとも一方を含有する少なくとも一層からなるガスバリア層と当該ガスバリア層のうちの最表層上に設けられたオーバーコート層とを有することを特徴とする。
また、本発明に係るオーバーコート層は、有機化合物を含有し、当該オーバーコート層の厚さをt、25℃における弾性率をErとしたときに、tは0.2μm以上であり、かつtとErとが下記関係式(1)を満たすことを特徴とする。
関係式(1):0.40≦0.47t+0.06Er1/2≦1.2
ここで、オーバーコート層の弾性率Erは、公知のナノインデンテーション法を用いて測定された25℃における弾性率である。
本発明において、ナノインデンテーション法による弾性率測定は、試料表面にダイヤモンドチップから成る圧子を、微小荷重をかけて押し込み、次いで、圧子にかけた荷重を除荷する際の押し込み変位量の変化の傾きから、圧子と試料の複合弾性率Erを求めるものである。試料に対して圧子の弾性率が十分に高いため、本発明においては上記複合弾性率Erをオーバーコート層の弾性率Erとしている。
オーバーコート層は厚さが薄い、及び/又は、弾性率が低い場合には、オーバーコート層の機械的強度が低いことによって、ガスバリア層の傷やクラックを防止する効果が不十分となる。特に、厚さが0.2μm未満では、弾性率によらず傷やクラックを防止する効果が不十分となる。
本発明に係るオーバーコート層は有機物を含有する層であるが、これは、オーバーコート層に柔軟性を付与して、オーバーコート自体に傷やクラックを生じにくくするためのものである。オーバーコート層は有機物を含有するため、必然的にガスバリア層よりもガスバリア性は低下する。これは、オーバーコート層自体に酸素や水分が保持される懸念を有することを意味する。
オーバーコート層の厚さが厚くなれば、一般的に層の機械強度は向上して、ガスバリア層の傷やクラックを防止する効果も向上する方向であるが、上述の層内の酸素や水分が上記デバイスや素子の内部に持ち込まれる懸念も増加する。したがって、オーバーコート層の厚さは、ガスバリア層の傷やクラックを防止する効果として必要十分な強度を得るに最低限必要な厚さに留めることが望ましい。また、最低限必要な厚さに留めることは生産性の向上やコストダウンにも寄与するものである。
オーバーコート層の弾性率が高くなる場合も、一般的に層の機械強度は向上して、ガスバリア層の傷やクラックを防止する効果も向上する方向である。しかし、有機物を含有する層であっても、弾性率が高く、かつ、厚い層になると硬く脆い層となり、オーバーコート層自体にクラックが入りやすくなって、このクラックがガスバリア層にまで伝播するようになる。このように、オーバーコート層の弾性率は厚さとの兼ね合いで、ガスバリア層の傷やクラックを防止する良好な範囲を有することになる。
上述の種々の因子を総合的に検討した結果、オーバーコート層の厚さと25℃における弾性率との関係の範囲として上記式(1)の本発明の範囲を見出した。
オーバーコート層の厚さと25℃における弾性率との関係のより好ましい範囲としては、下記関係式(2)の範囲を挙げることができる。
関係式(2):0.45≦0.47t+0.06Er1/2≦1.0
また、オーバーコート層の厚さと25℃における弾性率との関係のさらに好ましい範囲としては、下記関係式(3)の範囲を挙げることができる。
関係式(3):0.50≦0.47t+0.06Er1/2≦0.8
(オーバーコート層に用いられる素材)
オーバーコート層に用いられる有機物としては、有機モノマー、オリゴマー、ポリマー等の有機樹脂を好ましく用いることができる。これらの有機樹脂は重合性基や架橋性基を有することが好ましく、これらの有機樹脂を含有し、必要に応じて重合開始剤や架橋剤等を含有する有機樹脂組成物塗布液から塗布形成した層に、光照射処理や熱処理を加えて硬化させることが好ましい。ここで「架橋性基」とは、光照射処理や熱処理で起こる化学反応によりバインダーポリマーを架橋することができる基のことである。このような機能を有する基であれば特にその化学構造は限定されないが、例えば、付加重合し得る官能基としてエチレン性不飽和基、エポキシ基/オキセタニル基等の環状エーテル基が挙げられる。また光照射によりラジカルになり得る官能基であってもよく、そのような架橋性基としては、例えば、チオール基、ハロゲン原子、オニウム塩構造等が挙げられる。中でも、エチレン性不飽和基が好ましく、特開2007−17948号公報の段落0130〜0139に記載された官能基が含まれる。
有機樹脂の構造や重合性基の密度、架橋性基の密度、架橋剤の比率、及び硬化条件等を適宜調整することで、オーバーコート層の弾性率を所望の値に調整することができる。
具体的な有機樹脂組成物としては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含有する樹脂組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた樹脂組成物等が挙げられる。また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。
当該光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性モノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−デシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトリキエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,2,4−ブタンジオールトリアクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールジアクリレート、ジアリルフマレート、1,10−デカンジオールジメチルアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及び、上記のアクリレートをメタクリレートに換えたもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。上記の反応性モノマーは、1種又は2種以上の混合物として、あるいは、その他の化合物との混合物として使用することができる。
前記感光性樹脂の組成物は光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノ−1−プロパン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モノフォリノフェニル)−ブタノン−1、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミン等の還元剤の組み合わせ等が挙げられ、これらの光重合開始剤を1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
本発明のオーバーコート層には無機素材を含有させることができる。無機素材を含有させることは一般的にオーバーコート層の弾性率増加につながる。無機素材の含有比率を適宜調整することでもオーバーコート層の弾性率を所望の値に調整することができる。
無機素材としては、数平均粒径が1〜200nmの無機微粒子が好ましく、数平均粒径が3〜100nmの無機微粒子がより好ましい。無機微粒子としては、透明性の観点より金属酸化物が好ましい。
金属酸化物として特に制約はないが、SiO、Al、TiO、ZrO、ZnO、SnO、In、BaO、SrO、CaO、MgO、VO、V、CrO、MoO、MoO、MnO、Mn、WO、LiMn、CdSnO、CdIn、ZnSnO、ZnSnO、ZnIn、CdSnO、CdIn、ZnSnO、ZnSnO、ZnInなどが挙げられる。これらは、単体の使用でも二種類以上の併用でも良い。
無機微粒子の分散物を得るには、近年の学術論文に倣って調整しても良いが、市販の無機微粒子分散物も好ましく用いることができる。
具体的には、日産化学社製のスノーテックスシリーズやオルガノシリカゾル、ビックケミー・ジャパン社製のNANOBYKシリーズ、Nanophase Technologies社製のNanoDurなどの各種金属酸化物の分散物を挙げることができる。
これら無機微粒子は表面処理を行って用いることもできる。
無機素材としては、天然雲母、合成雲母等の雲母群、式3MgO・4SiO・HOで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウムなどの平板状微粒子を用いることもできる。
具体的には、上記天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。また、合成雲母としては、フッ素金雲母KMg(AlSi10)F、カリ四ケイ素雲母KMg.5Si10)F等の非膨潤性雲母、及びNaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si10)F、Na又はLiテニオライト(Na,Li)MgLi(SiO10)F、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg/5Li1/8(Si10)F等の膨潤性雲母等が挙げられる。また合成スメクタイトも有用である。
オーバーコート層中の無機素材の比率としては、オーバーコート層全体に対して、10〜95質量%の範囲であることが好ましく、20〜90質量%の範囲であることがより好ましい。
オーバーコート層は、前記有機樹脂や無機素材、及び必要に応じて他の成分を配合して、適宜必要に応じて用いる希釈溶剤によって塗布液として調製し、当該塗布液を基材表面に従来公知の塗布方法によって塗布した後、電離放射線を照射して硬化させることにより形成することが好ましい。なお、電離放射線を照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプなどから発せられる100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線を照射する。又は走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
《基材:支持体》
本発明のガスバリアフィルムの基材(「支持体」ともいう。)は、後述のガスバリア性(単に「バリア性」ともいう。)を有するガスバリア層(単に「バリア膜」ともいう。)を保持することができる有機材料で形成されたものであれば、特に限定されるものではない。
例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の各樹脂フィルム、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム(製品名Sila−DEC、チッソ株式会社製)、更には前記樹脂を二層以上積層して成る樹脂フィルム等を挙げることができる。
コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)等が好ましく用いられ、また光学的透明性、耐熱性、無機層、ガスガスバリア層との密着性の点においては、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルムが好ましく用いることができる。支持体の厚さは5μm〜500μm程度が好ましく、更に好ましくは25〜250μmである。
また、本発明に係る基材(支持体)は透明であることが好ましい。
ここで、基材が透明とは、可視光(400〜700nm)の光透過率が80%以上であることを示す。
基材(支持体)が透明であり、支持体上に形成する層も透明であることにより、透明なガスバリアフィルムとすることが可能となるため、有機EL素子等の透明基板とすることも可能となるからである。
また、上記に挙げた樹脂等を用いた支持体は未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
本発明に用いられる基材(支持体)は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材(支持体)を製造することができる。
また、未延伸の基材(支持体)を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等の公知の方法により、基材(支持体)の流れ(縦軸)方向、又は基材(支持体)の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸支持体を製造することができる。
この場合の延伸倍率は、基材(支持体)の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2倍〜10倍が好ましい。
更には、延伸フィルムに於いて基板の寸法安定性を向上するために、延伸後の緩和処理をする事が好ましい。
また、本発明に係る基材(支持体)においては、塗膜を形成する前にコロナ処理してもよい。更に、本発明に係る支持体表面には、塗膜との密着性の向上を目的としてアンカーコート剤層を形成してもよい。
《アンカーコート剤層》
アンカーコート剤層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、及びアルキルチタネート等を一又は二種以上併せて使用することができる。
これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記のアンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により支持体上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりアンカーコーティングすることができる。上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1g/m〜5g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
《平滑層》
本発明のガスバリアフィルムは平滑層を有してもよい。本発明に用いられる平滑層は突起等が存在する透明樹脂フィルム支持体の粗面を平坦化し、あるいは、透明樹脂フィルム支持体に存在する突起により透明無機化合物層に生じた凹凸やピンホールを埋めて平坦化するために設けられる。このような平滑層は、基本的には感光性樹脂を硬化させて作製される。
平滑層の感光性樹脂としては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含有する樹脂組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた樹脂組成物等が挙げられる。また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。
平滑層の形成方法は特に制限はないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等のウエットコーティング法、あるいは、蒸着法等のドライコーティング法により形成することが好ましい。
平滑層の形成では、上述の感光性樹脂に、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を加えることができる。また、平滑層の積層位置に関係なく、いずれの平滑層においても、成膜性向上及び膜のピンホール発生防止等のために適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。
平滑層の平滑性は、JIS B 0601で規定される表面粗さで表現される値で、最大断面高さRt(p)が、10nm以上、30nm以下であることが好ましい。この範囲よりも値が小さい場合には、後述のケイ素化合物を塗布する段階で、ワイヤーバー、ワイヤレスバー等の塗布方式で、平滑層表面に塗工手段が接触する場合に塗布性が損なわれる場合がある。また、この範囲よりも大きい場合には、ケイ素化合物を塗布した後の凹凸を平滑化することが難しくなる場合がある。
《ブリードアウト防止層》
本発明に用いられるブリードアウト防止層は、平滑層を有するフィルムを加熱した際に、フィルム支持体中から未反応のオリゴマー等が表面へ移行して、接触する面を汚染してしまう現象を抑制する目的で平滑層を有する基材の反対面に設けられる。ブリードアウト防止層は、この機能を有していれば基本的に平滑層と同じ構成をとっても構わない。
ブリードアウト防止層に含ませることが可能な重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物としては、分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する多価不飽和有機化合物又は分子中に一個の重合性不飽和基を有する単価不飽和有機化合物等を挙げることができる。
その他の添加剤として、マット剤を含有してもよい。マット剤としては平均粒子径が0.1〜5μm程度の無機粒子が好ましい。このような無機粒子としては、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等の一種又は二種以上を併せて使用することができる。
ここで無機粒子からなるマット剤は、ハードコート剤の固形分100質量部に対して2質量部以上、好ましくは4質量部以上、より好ましくは6質量部以上、20質量部以下、好ましくは18質量部以下、より好ましくは16質量部以下の割合で混合されていることが望ましい。
また、ブリードアウト防止層は、ハードコート剤及びマット剤の他の成分として熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、光重合開始剤等を含有させてもよい。
以上のようなブリードアウト防止層は、ハードコート剤、マット剤、及び必要に応じて他の成分を配合して、適宜必要に応じて用いる希釈溶剤によって塗布液として調製し、当該塗布液を支持体フィルム表面に従来公知の塗布方法によって塗布した後、電離放射線を照射して硬化させることにより形成することができる。
なお、電離放射線を照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等から発せられる100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、又は走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
ブリードアウト防止層の厚さとしては、フィルムの耐熱性向上させ、フィルムの光学特性のバランス調整を容易にし、かつ、ガスバリアフィルムの片面のみにブリードアウト防止層を設けた場合のカールを防止する観点から、1〜10μmの範囲が好ましく、更に好ましくは、2μm〜7μmの範囲にすることが好ましい。
(ガスバリアフィルムの用途)
本発明のガスバリアフィルムは、主に電子デバイス等のパッケージ、又は有機EL素子や太陽電池、液晶等のプラスチック基板といったディスプレイ材料に用いられるガスバリアフィルム及びガスバリアフィルムを用いた各種デバイス用樹脂基材、及び各種デバイス素子に適用することができる。
本発明のガスバリアフィルムは、種々の封止用材料、フィルムとしても好ましく適用することができる。
(有機光電変換素子)
本発明に係る有機光電変換素子は、本発明のガスバリアフィルムを構成として有するが、有機光電変換素子に用いる際に、ガスバリアフィルムは透明であるため、このガスバリアフィルムを基材(支持体ともいう。)として用いてこの側から太陽光の受光を行うように構成できる。
すなわち、このガスバリアフィルム上に、例えば、ITO等の透明導電性薄膜を透明電極として設け、有機光電変換素子用樹脂支持体を構成することができる。
そして、支持体上に設けられたITO透明導電膜を陽極としてこの上に多孔質半導体層を設け、更に金属膜からなる陰極を形成して有機光電変換素子を形成し、この上に別の封止材料を(同じでもよいが)重ねて、前記ガスバリアフィルム支持体と周囲を接着、素子を封じ込めることで有機光電変換素子を封止することができ、これにより外気の湿気や酸素等のガスによる素子への影響を封じることができる。
有機光電変換素子用樹脂支持体は、このようにして形成されたガスバリアフィルムのセラミック層(ここで、セラミック層とはポリシラザン層が改質処理されて形成される酸化ケイ素層が挙げられる。)上に、透明導電性膜を形成することによって得られる。
透明導電膜の形成は、真空蒸着法やスパッタリング法等を用いることにより、またインジウム、スズ等の金属アルコキシド等を用いたゾルゲル法等塗布法によっても製造できる。
また、透明導電膜の膜厚としては、0.1〜1000nmの範囲の透明導電膜が好ましい。
次いで、有機光電変換素子を構成する有機光電変換素子材料各層(構成層)について説明する。
(有機光電変換素子及び太陽電池の構成)
本発明に係る有機光電変換素子及び太陽電池の好ましい態様を説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、以下、本発明に係る有機光電変換素子の好ましい態様について詳細に説明するが、当該太陽電池は当該有機光電変換素子をその構成として有するものであり、太陽電池の好ましい構成も同様に記載することができる。
有機光電変換素子としては特に制限がなく、陽極と陰極と、両者に挟まれた発電層(p型半導体とn型半導体が混合された層、バルクヘテロジャンクション層、i層ともいう。)が少なくとも一層以上あり、光を照射すると電流を発生する素子であればよい。
有機光電変換素子の層構成(太陽電池の好ましい層構成も同様である)の好ましい具体例を以下に示す。
有機光電変換素子の層構成の好ましい具体例を以下に示す。
(i)陽極/発電層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発電層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発電層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/p型半導体層/発電層/n型半導体層/電子輸送層/陰極
(v)陽極/正孔輸送層/第1発電層/電子輸送層/中間電極/正孔輸送層/第2発電層/電子輸送層/陰極。
ここで、発電層は、正孔を輸送できるp型半導体材料と電子を輸送できるn型半導体材料を含有していることが必要であり、これらは実質二層でヘテロジャンクションを作製していてもよいし、一層の内部で混合された状態となっているバルクヘテロジャンクションを作製してもよいが、バルクヘテロジャンクション構成の方が光電変換効率が高いため、好ましい。発電層に用いられるp型半導体材料、n型半導体材料については後述する。
有機EL素子同様、発電層を正孔輸送層、電子輸送層で挟み込むことで、正孔及び電子の陽極・陰極への取り出し効率を高めることができるため、それらを有する構成((ii)、(iii))の方が好ましい。また、発電層自体も正孔と電子の整流性(キャリア取り出しの選択性)を高めるため、(iv)のようにp型半導体材料とn型半導体材料単体からなる層で発電層を挟み込むような構成(「p−i−n構成」ともいう。)であってもよい。また、太陽光の利用効率を高めるため、異なる波長の太陽光をそれぞれの発電層で吸収するような、タンデム構成((v)の構成)であってもよい。
以下に、これらの層を構成する材料について述べる。
(有機光電変換素子材料)
本発明に係る有機光電変換素子の発電層(「光電変換層」ともいう。)の形成に用いられる材料について説明する。
(p型半導体材料)
本発明に係る有機光電変換素子の発電層(バルクヘテロジャンクション層)として好ましく用いられるp型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族低分子化合物や共役系ポリマー・オリゴマーが挙げられる。
縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
また、上記の縮合多環を有する誘導体の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物等が挙げられる。
共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェン及びそのオリゴマー、又はTechnical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、国際公開第08/000664号パンフレットに記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv Mater,2007p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー、等のポリマー材料が挙げられる。
また、ポリマー材料ではなくオリゴマー材料としては、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は、結晶性薄膜を作製し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。
また、発電層上に電子輸送層を塗布で成膜する場合、電子輸送層溶液が発電層を溶かしてしまうという課題があるため、溶液プロセスで塗布した後に不溶化できるような材料を用いてもよい。
このような材料としては、Technical Digest of the International PVSEC−17, Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェンのような、塗布後に塗布膜を重合架橋して不溶化できる材料、又は米国特許出願公開第2003/136964号明細書、及び特開2008−16834号公報等に記載されているような、熱等のエネルギーを加えることによって、可溶性置換基が反応して不溶化する(顔料化する)材料等を挙げることができる。
(n型半導体材料)
本発明に係るバルクヘテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料としては特に限定されないが、例えば、フラーレン、オクタアザポルフィリン等、p型半導体の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物や、そのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げることができる。
しかし、各種のp型半導体材料と高速(〜50fs)、かつ効率的に電荷分離を行うことができる、フラーレン誘導体が好ましい。フラーレン誘導体としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等、及びこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、シリル基等によって置換されたフラーレン誘導体を挙げることができる。
中でも、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PCBM)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nブチルエステル(PCBnB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−イソブチルエステル(PCBiB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nヘキシルエステル(PCBH)、Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116等に記載のbis−PCBM、特開2006−199674号公報等のアミノ化フラーレン、特開2008−130889号公報等のメタロセン化フラーレン、米国特許第7,329,709号明細書等の環状エーテル基を有するフラーレン等のような、置換基を有してより溶解性が向上したフラーレン誘導体を用いることが好ましい。
(正孔輸送層・電子ブロック層)
本発明に係る有機光電変換素子は、バルクヘテロジャンクション層と陽極との中間には正孔輸送層を、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
これらの層を構成する材料としては、例えば、正孔輸送層としては、スタルクヴイテック製、商品名BaytronP等のPEDOT、ポリアニリン及びそのドープ材料、国際公開第06/19270号パンフレット等に記載のシアン化合物、等を用いることができる。
なお、バルクヘテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料のLUMO準位よりも浅いLUMO準位を有する正孔輸送層には、バルクヘテロジャンクション層で生成した電子を陽極側には流さないような整流効果を有する電子ブロック機能が付与される。
このような正孔輸送層は電子ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する正孔輸送層を使用するほうが好ましい。このような材料としては、特開平5−271166号公報等に記載のトリアリールアミン系化合物、また酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン等の金属酸化物等を用いることができる。
また、バルクヘテロジャンクション層に用いたp型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を作製する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。バルクヘテロジャンクション層を作製する前に、下層に塗布膜を作製すると塗布面をレベリングする効果があり、リーク等の影響が低減するため好ましい。
(電子輸送層・正孔ブロック層)
本発明に係る有機光電変換素子は、バルクヘテロジャンクション層と陰極との中間には電子輸送層を作製することで、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
また、電子輸送層としては、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)を用いることができるが、同様にバルクヘテロジャンクション層に用いられるp型半導体材料のHOMO準位よりも深いHOMO準位を有する電子輸送層には、バルクヘテロジャンクション層で生成した正孔を陰極側には流さないような整流効果を有する正孔ブロック機能が付与される。
このような電子輸送層は正孔ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する電子輸送層を使用するほうが好ましい。
このような材料としては、バソキュプロイン等のフェナントレン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型半導体材料、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物及びフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等を用いることができる。
また、バルクヘテロジャンクション層に用いたn型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を作製する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。
(その他の層)
エネルギー変換効率の向上や、素子寿命の向上を目的に、各種中間層を素子内に有する構成としてもよい。中間層の例としては、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層等を挙げることができる。
(透明電極(第1電極))
本発明に係る透明電極は、陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することができるが、好ましくは透明電極を陽極として用いることである。例えば、陽極として用いる場合、好ましくは380〜800nmの光を透過する電極である。
材料としては、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ用いることができる。
また、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン及びポリナフタレンの各誘導体からなる群より選ばれる導電性高分子等も用いることができる。また、これらの導電性化合物を複数組み合わせて透明電極とすることもできる。
(対電極(第2電極))
対電極は導電材単独層であってもよいが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用してもよい。対電極の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。
このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。
これらの中で、電子の取り出し性能及び酸化等に対する耐久性の点から、これら金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
対電極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を作製させることにより、作製することができる。また、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
対電極の導電材として金属材料を用いれば、対電極側に来た光は反射されて第1電極側に反射され、この光が再利用可能となり、光電変換層で再度吸収され、より光電変換効率が向上し好ましい。
また、対電極は、金属(例えば、金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素からなるナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ構造体であってもよく、ナノワイヤーの分散物であれば、透明で導電性の高い対電極を塗布法により作製でき好ましい。
また、対電極側を光透過性とする場合は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、銀及び銀化合物等の対電極に適した導電性材料を薄く1〜20nm程度の膜厚で作製した後、上記透明電極の説明で挙げた導電性光透過性材料の膜を設けることで、光透過性対電極とすることができる。
(中間電極)
また、前記有機光電変換素子の層構成の(v)のようなタンデム構成の場合に必要となる中間電極の材料としては、透明性と導電性を併せ持つ化合物を用いた層であることが好ましく、前記透明電極で用いたような材料(ITO、AZO、FTO、酸化チタン等の透明金属酸化物、Ag、Al、Au等の非常に薄い金属層又はナノ粒子・ナノワイヤーを含有する層、PEDOT:PSS、ポリアニリン等の導電性高分子材料等)を用いることができる。
なお、前述した正孔輸送層と電子輸送層の中には、適切に組み合わせて積層することで中間電極(電荷再結合層)として働く組み合わせもあり、このような構成とすると一層作製する工程を省くことができ好ましい。
(金属ナノワイヤー)
本発明に係る導電性繊維としては、金属でコーティングした有機繊維や無機繊維、導電性金属酸化物繊維、金属ナノワイヤー、炭素繊維、カーボンナノチューブ等を用いることができるが、金属ナノワイヤーが好ましい。
一般に、金属ナノワイヤーとは、金属元素を主要な構成要素とする線状構造体のことを言う。特に、本発明における金属ナノワイヤーとはnmサイズの直径を有する線状構造体を意味する。
本発明に係る金属ナノワイヤーとしては、1つの金属ナノワイヤーで長い導電パスを作製するために、また、適度な光散乱性を発現するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、更には3μm〜500μmが好ましく、特に3μm〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。
また、平均直径は、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。本発明においては、金属ナノワイヤーの平均直径として10nm〜300nmが好ましく、30nm〜200nmであることがより好ましい。併せて、直径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。
本発明に係る金属ナノワイヤーの金属組成としては特に制限はなく、貴金属元素や卑金属元素の1種又は複数の金属から構成することができるが、貴金属(例えば、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム等)及び鉄、コバルト、銅、錫からなる群に属する少なくとも1種の金属を含むことが好ましく、導電性の観点から少なくとも銀を含むことがより好ましい。
また、導電性と安定性(金属ナノワイヤーの硫化や酸化耐性、及びマイグレーション耐性)を両立するために、銀と、銀を除く貴金属に属する少なくとも1種の金属を含むことも好ましい。本発明に係る金属ナノワイヤーが2種類以上の金属元素を含む場合には、例えば、金属ナノワイヤーの表面と内部で金属組成が異なっていてもよいし、金属ナノワイヤー全体が同一の金属組成を有していてもよい。
本発明において金属ナノワイヤーの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。
例えば、Agナノワイヤーの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837;Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745等、Auナノワイヤーの製造方法としては特開2006−233252号公報等、Cuナノワイヤーの製造方法としては特開2002−266007号公報等、Coナノワイヤーの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることができる。特に、上述した、Adv.Mater.及びChem.Mater.で報告されたAgナノワイヤーの製造方法は、水系で簡便にAgナノワイヤーを製造することができ、また銀の導電率は金属中で最大であることから、本発明に係る金属ナノワイヤーの製造方法として好ましく適用することができる。
本発明においては、金属ナノワイヤーが互いに接触し合うことにより3次元的な導電ネットワークを作製し、高い導電性を発現するとともに、金属ナノワイヤーが存在しない導電ネットワークの窓部を光が透過することが可能となり、更に金属ナノワイヤーの散乱効果によって、有機発電層部からの発電を効率的に行うことが可能となる。第1電極において金属ナノワイヤーを有機発電層部に近い側に設置すれば、この散乱効果がより有効に利用できるのでより好ましい実施形態である。
(光学機能層)
本発明に係る有機光電変換素子は、太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していてもよい。光学機能層としては、例えば、反射防止層、マイクロレンズアレイ等の集光層、陰極で反射した光を散乱させて再度発電層に入射させることができるような光拡散層等を設けてもよい。
反射防止層としては、各種公知の反射防止層を設けることができるが、例えば、透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基板と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには二層以上の構成にしてもよい。
集光層としては、例えば、支持基板の太陽光受光側にマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは所謂集光シートと組み合わせたりすることにより特定方向からの受光量を高めたり、逆に太陽光の入射角度依存性を低減することができる。
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚さが厚くなり好ましくない。
また、光拡散層としては、各種のアンチグレア層、金属又は各種無機酸化物等のナノ粒子・ナノワイヤー等を無色透明なポリマーに分散した層等を挙げることができる。
(成膜方法・表面処理方法)
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層、及び輸送層・電極の作製方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、バルクヘテロジャンクション層の作製方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。
このうち、前述の正孔と電子が電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、塗布法が好ましい。また、塗布法は製造速度にも優れている。
この際に使用する塗布方法に制限はないが、例えば、スピンコート法、溶液からのキャスト法、ディップコート法、ブレードコート法、ワイヤバーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法等が挙げられる。更には、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法でパターニングすることもできる。
塗布後は残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために、加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が凝集又は結晶化が促進され、バルクヘテロジャンクション層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、バルクヘテロジャンクション層のキャリア移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。
発電層(バルクヘテロジャンクション層)は、電子受容体と電子供与体とが均一に混在された単一層で構成してもよいが、電子受容体と電子供与体との混合比を変えた複数層で構成してもよい。この場合、前述したような塗布後に不溶化できるような材料を用いることで作製することが可能となる。
(パターニング)
本発明に係る電極、発電層、正孔輸送層、電子輸送層等をパターニングする方法やプロセスには特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。
バルクヘテロジャンクション層、輸送層等の可溶性の材料であれば、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取ってもよいし、インクジェット法やスクリーン印刷等の方法を使用して塗布時に直接パターニングしてもよい。
電極材料等の不溶性の材料の場合は、電極を真空堆積時にマスク蒸着を行ったり、エッチング又はリフトオフ等の公知の方法によってパターニングを行ったりすることができる。また、別の基板上に作製したパターンを転写することによってパターンを作製してもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1
《ガスバリアフィルムの作製》
以下に記載のように、まず、基板を作製し、次いで、基材上にガスバリア層を作製する工程を経て、ガスバリアフィルムを作製した。
《基板の作製》
熱可塑性樹脂基材(支持体)である、両面に易接着加工された厚さ125μmのポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、極低熱収PET Q83)を用い、下記に示すように、片面にブリードアウト防止層、反対面に平滑層を作製したものを基板として用いた。
(ブリードアウト防止層の形成)
上記基材の片面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材OPSTAR Z7535を塗布、乾燥後の膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、硬化条件;1.0J/cm空気下、高圧水銀ランプ使用、乾燥条件;80℃、3分で硬化を行い、ブリードアウト防止層を形成した。
(平滑層の形成)
続けて上記基材の反対面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材OPSTAR Z7501を塗布、乾燥後の膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥条件;80℃、3分で乾燥後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用、硬化条件;1.0J/cm硬化を行い、平滑層を形成した。
得られた平滑層の、JIS B 0601で規定される表面粗さで、最大断面高さRt(p)は16nmであった。
表面粗さは、SII社製のAFM(原子間力顕微鏡)SPI3800N DFMを用いて測定した。一回の測定範囲は80μm×80μmとし、測定箇所を変えて三回の測定を行って、それぞれの測定で得られたRtの値を平均したものを測定値とした。
《ガスバリア層の作製1》
上記で得られた基板の平滑層上に、下記の工程(a)、(b)によりガスバリア層を作製した。このオーバーコート層のない試料をガスバリアフィルムAとした。
工程(a):パーヒドロポリシラザン層の作製
上記平滑層、ブリードアウト防止層を設けた基材を、その平滑層面の上に下記に示すパーヒドロポリシラザンを含有する塗布液を塗布して、パーヒドロポリシラザン層(パーヒドロポリシラザンを含有する層ともいう。)を作製した。
(パーヒドロポリシラザンを含有する塗布液)
パーヒドロポリシラザンを含有する塗布液は、20質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製アクアミカ NN120−20)を用い、この溶液をジブチルエーテルで希釈することによりPHPS濃度を調整してロ−ルコーターにより塗布したのち、露点−5℃の乾燥空気で、80℃3分で乾燥し、乾燥後膜厚170nmのパーヒドロポリシラザン層を作製した。この際、ポリシラザン含有層は完全に固形化していなかった。
工程(b):パーヒドロポリシラザン層の改質(酸化)によるガスバリア層の作製
(真空紫外線(VUV)照射処理条件)
MDエキシマ社製のステージ可動型キセノンエキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200(波長172nm)を用い、ランプと上記試料の照射距離を1mmとなるように試料を固定し、試料温度が85℃となるように保ちながら、ステージの移動速度を10mm/秒の速さで試料を往復搬送させて、合計7往復照射したのち、試料を取り出した。
(酸素濃度の調整)
真空紫外線(VUV)照射時の酸素濃度は、真空紫外線(VUV)照射庫内に導入する窒素ガス、及び酸素ガスの流量をフローメーターにより測定し、照射庫内に導入するガスの窒素ガス/酸素ガス流量比により酸素濃度が0.2〜0.4体積%の範囲になるように調整した。
《ガスバリア層の作製2》
上記ガスバリアフィルムAのガスバリア層の上に、ガスバリア層の作製1と同様の方法を用いてガスバリア層を作製し、ガスバリア層が二層積層された試料を得た。このオーバーコート層のない試料をガスバリアフィルムBとした。
《オーバーコート層の作製》
表1に示すガスバリア層作製済み基材、オーバーコート層塗布液、オーバーコート層乾燥厚さt、高圧水銀ランプ照射条件(照射エネルギー)の組み合わせでオーバーコート層を形成したガスバリアフィルム1〜20を作製した。
オーバーコート層を形成したガスバリアフィルムの弾性率Erについては、ナノインデンテーション法により、装置として、Hysitron社製Triboscope及びSII社製SPI3800Nを用い、25℃において、圧子は90°Cube corner tip、最大荷重を20μN、測定n数をn=3で測定した。その結果を表1に示した。また、比較として測定した石英の弾性率Erは70GPaであった。
また、計算式:0.47t+0.06Er1/2にそれぞれの物性値をあてはめて計算した数値も同様に表1に示した。
(オーバーコート層塗布液1)
DIC社のUV硬化型ウレタンアクリレートハードコート剤:ユニディックRC29−118を用いた。
(オーバーコート層塗布液2)
日本化薬社製:KAYAMER PM−21 1g、共栄社化学社製:ライトアクリレートBEPG−A 9g、及び光重合開始剤としてチバ・ジャパン社製:IRGACURE907 0.6gをメチルエチルケトン190gに溶解させて塗布液とした。
(オーバーコート層塗布液3)
JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材OPSTAR Z7501を用いた。Z7501は固形分中に50質量%の無機微粒子を含有する。
(オーバーコート層塗布液4)
オーバーコート層塗布液3に日産化学社製オルガノシリカゾル:MEK−STを添加し、固形分中の無機微粒子比率を60質量%に調整したものを塗布液とした。
(オーバーコート層塗布液5)
オーバーコート層塗布液3に日産化学社製オルガノシリカゾル:MEK−STを添加し、固形分中の無機微粒子比率を70質量%に調整したものを塗布液とした。
《耐傷性の評価》
(ガスバリア層への傷形成処理)
半径15mmの円筒形ステンレス部材を用意し、得られたガスバリアフィルムのガスバリア層を形成した面をこの円筒部材に接するように180度巻きつけ、ガスバリアフィルムの幅1cmあたりに10gの張力をかけて秒速2cmの速度で擦り処理を行った。この擦り処理を往復10回繰り返した。
(ガスバリアフィルムの水蒸気透過率の測定及び評価)
ガスバリア層への傷形成処理後のガスバリアフィルムの各々について、以下に示すように水蒸気透過率を測定し、下記に示すように5段階のランク評価を行い、ガスバリア性を評価した。
(水蒸気透過率の測定装置)
蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
(原材料)
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
(水蒸気バリア性評価用セルの作製)
真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置 JEE−400)を用い、透明導電膜を付ける前のガスバリアフィルム1〜20の各々蒸着させたい部分(12mm×12mmを9箇所)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。
その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス製)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。
得られた両面を封止した試料を60℃、90%RHの高温高湿下で保存し、特開2005−283561号公報に記載の計算方法に準拠して、金属カルシウムの腐食量からセル内に透過した水分量を計算した。結果を表1に示した。
(ランク評価)
5:5×10−4g/m/day未満であり、点状腐食箇所以外に金属カルシウム面に変色が見られない
4:5×10−4g/m/day以上、5×10−3g/m/day未満であり、点状腐食箇所以外に金属カルシウム面に変色が見られない
3:5×10−3g/m/day以上、5×10−2g/m/day未満、もしくは評価初期から金属カルシウム全面にわずかに変色が見られる
2:5×10−2g/m/day以上、5×10−1g/m/day未満、もしくは評価初期から金属カルシウム全面に変色が見られる
1:5×10−1g/m/day以上、もしくは評価初期から金属カルシウム全面に明確な変色が見られる
ランク評価において、実用上に耐えうるのはランク3以上である。
実施例2
《有機光電変換素子の作製》
実施例1で得られた、ガスバリア層への傷形成処理後のガスバリアフィルム試料を用いて、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(シート抵抗10Ω/□)を、通常のフォトリソグラフィ技術と湿式エッチングとを用いて2mm幅にパターニングし第1の電極を形成した。
パターン形成した第1の電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
この透明基板上に、導電性高分子であるBaytron P4083(スタルクヴィテック社製)を膜厚が30nmになるように塗布乾燥した後、150℃で30分間熱処理させ正孔輸送層を製膜した。
これ以降は、基板を窒素チャンバー中に持ち込み、窒素雰囲気下で作製した。
まず、窒素雰囲気下で上記基板を150℃で10分間加熱処理した。次に、クロロベンゼンにP3HT(プレクトロニクス社製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン)とPCBM(フロンティアカーボン社製:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)を3.0質量%になるように1:0.8で混合した液を調製し、フィルタでろ過しながら膜厚が100nmになるように塗布を行い、室温で放置して乾燥させた。続けて、150℃で15分間加熱処理を行い、光電変換層を製膜した。
次に、上記一連の機能層を製膜した基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動し、1×10−4Pa以下まで真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度0.01nm/秒でフッ化リチウムを0.6nm積層し、更に続けて、2mm幅のシャドウマスクを通して(受光部が2×2mmに成るように直行させて蒸着)、蒸着速度0.2nm/秒でAlメタルを100nm積層することで第2の電極を形成した。得られた有機光電変換素子を窒素チャンバーに移動し、封止用キャップとUV硬化樹脂を用いて下記にように封止処理を行って、受光部が2×2mmサイズの有機光電変換素子を各々作製した。
(有機光電変換素子の封止)
窒素ガス(不活性ガス)によりパージされた環境下で、ガスバリアフィルム各々二枚を用い、ガスバリア層を設けた面に、シール材としてエポキシ系光硬化型接着剤を塗布した。
上述した方法によって得られた封止前の有機光電変換素子を、上記接着剤を塗布した封止用の二枚のガスバリアフィルム接着剤塗布面の間に挟み込んで密着させた後、片側の基板側からUV光を照射して硬化させ、封止処理後の有機光電変換素子とした。
《エネルギー変換効率の評価1》
上記で得られた有機光電変換素子のエネルギー変換効率を求め、素子としての性能低下の度合いを比較した。性能低下の度合いの指標として、ロール巻取り工程を経ていないガスバリアフィルムで作製した有機光電変換素子のエネルギー変換効率を100%として、有機光電変換素子のエネルギー変換効率の割合で比較した。
(5段階ランク評価)
ロール巻取り前後の変換効率の比
5:98%以上
4:90%以上、98%未満
3:80%以上、90%未満
2:50%以上、80%未満
1:50%未満
なお、実用上に耐えうるのはランク3以上である。
《エネルギー変換効率の評価2》
上記で得られた有機光電変換素子のエネルギー変換効率の変化を下記条件で求め、素子としての耐久性を評価した。
なお、エネルギー変換効率は、有機光電変換素子の各々について、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を4.0mmにしたマスクを受光部に重ね、IV特性を評価することで、短絡電流密度Jsc(mA/cm)、開放電圧Voc(V)及びフィルファクターFF(%)を、同素子上に形成した4箇所の受光部をそれぞれ測定し、下記式1にしたがって求めたエネルギー変換効率PCE(%)の4点平均値を見積もった。
(式1):
PCE(%)=〔Jsc(mA/cm)×Voc(V)×FF(%)〕/100mW/cm
得られた有機光電変換素子の初期特性としての変換効率を測定し、次いで、性能の経時的低下の度合いを温度60℃、湿度90%RH環境で1000時間保存した強制劣化試験後の変換効率残存率により5段階のランク評価を行った。
(5段階ランク評価)
強制劣化試験後の変換効率/初期変換効率の比
5:90%以上
4:70%以上、90%未満
3:40%以上、70%未満
2:20%以上、40%未満
1:20%未満
なお、実用上に耐えうるのはランク3以上である。
得られた評価結果をまとめて表1に示す。
Figure 0005540788
表1に示したように、本発明のガスバリアフィルムは、耐傷性が高く、高いバリア性と十分な生産適性とを両立するものであることがわかる。

Claims (5)

  1. 基材上に、酸化珪素及び酸化窒化珪素のうちの少なくとも一方を含有する少なくとも一層からなるガスバリア層と当該ガスバリア層のうちの最表層上に設けられた重合性基又は架橋性基を有する有機化合物の反応生成物および無機微粒子を含有するオーバーコート層とを有するガスバリアフィルムであって、(1)当該ガスバリア層はポリシラザン骨格を有する珪素化合物含有液の塗布膜に改質処理を施して形成された層であり、かつ(2)当該オーバーコート層は有機化合物を含有し、当該オーバーコート層の厚さをt、25℃における弾性率をErとしたときに、tは0.2〜1.0μmであり、Erは16.0〜29.0MPaであることを特徴とするガスバリアフィルム。
  2. 前記ポリシラザン骨格を有する珪素化合物が、パーヒドロポリシラザンであることを特徴とする請求項1に記載のガスバリアフィルム。
  3. 請求項1または2に記載のガスバリアフィルムを製造するガスバリアフィルムの製造方法であって、前記改質処理が、波長200nm以下の真空紫外光を照射する改質処理であることを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスバリアフィルムが具備されたことを特徴とする有機光電変換素子。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のガスバリアフィルムが具備されたことを特徴とする太陽電池。
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