以下、本発明の一実施形態を図1〜図27に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係るカラープリンタ2000の概略構成が示されている。
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせて多色のカラー画像を形成するタンデム方式のカラープリンタであり、4つの感光体ドラム(K1、C1、M1、Y1)、4つのドラム帯電装置(K2、C2、M2、Y2)、4つの現像装置(K4、C4、M4、Y4)、4つのドラムクリーニング装置(K5、C5、M5、Y5)、4つの転写装置(K6、C6、M6、Y6)、光走査装置2010、ベルト帯電装置2030、ベルト分離装置2031、ベルト除電装置2032、搬送ベルト2040、ベルトクリーニング装置2042、定着装置2050、給紙コロ2054、レジストローラ対2056、排紙ローラ2058、給紙トレイ2060、通信制御装置2080、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置2090などを備えている。
なお、本明細書では、XYZ3次元直交座標系において、各感光体ドラムの長手方向に沿った方向をY軸方向、4つの感光体ドラムの配列方向に沿った方向をX軸方向として説明する。
通信制御装置2080は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
プリンタ制御装置2090は、通信制御装置2080を介して受信した上位装置からの多色の画像情報(ブラック画像情報、シアン画像情報、マゼンタ画像情報、イエロー画像情報)を光走査装置2010に通知する。
感光体ドラムK1、ドラム帯電装置K2、現像装置K4、ドラムクリーニング装置K5、及び転写装置K6は、組として使用され、ブラックの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Kステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラムC1、ドラム帯電装置C2、現像装置C4、ドラムクリーニング装置C5、及び転写装置C6は、組として使用され、シアンの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Cステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラムM1、ドラム帯電装置M2、現像装置M4、ドラムクリーニング装置M5、及び転写装置M6は、組として使用され、マゼンタの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Mステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラムY1、ドラム帯電装置Y2、現像装置Y4、ドラムクリーニング装置Y5、及び転写装置Y6は、組として使用され、イエローの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Yステーション」ともいう)を構成する。
各感光体ドラムはいずれも、その表面に感光層が形成されている。すなわち、各感光体ドラムの表面がそれぞれ被走査面である。なお、各感光体ドラムは、不図示の回転機構により、図1における面内で矢印方向に回転するものとする。
各ドラム帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面をそれぞれ均一に帯電させる。
光走査装置2010は、プリンタ制御装置2090からの多色の画像情報(ブラック画像情報、マゼンタ画像情報、シアン画像情報、イエロー画像情報)に基づいて、各色毎に変調された光ビームを、対応する帯電された感光体ドラムの表面にそれぞれ照射する。これにより、各感光体ドラムの表面では、光が照射された部分だけ電荷が消失し、画像情報に対応した潜像が各感光体ドラムの表面にそれぞれ形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラムの回転に伴って対応する現像装置の方向に移動する。なお、この光走査装置2010の構成については後述する。
現像装置K4は、感光体ドラムK1の表面に形成された潜像にブラックのトナーを付着させて顕像化させる。
現像装置C4は、感光体ドラムC1の表面に形成された潜像にシアンのトナーを付着させて顕像化させる。
現像装置M4は、感光体ドラムM1の表面に形成された潜像にマゼンタのトナーを付着させて顕像化させる。
現像装置Y4は、感光体ドラムY1の表面に形成された潜像にイエローのトナーを付着させて顕像化させる。
各現像装置によってトナーが付着した像(以下、便宜上「トナー画像」という)は、感光体ドラムの回転に伴って対応する転写装置の方向に移動する。
給紙トレイ2060には記録紙が格納されている。この給紙トレイ2060の近傍には給紙コロ2054が配置されており、該給紙コロ2054は、記録紙を給紙トレイ2060から1枚ずつ取り出し、レジストローラ対2056に搬送する。該レジストローラ対2056は、所定のタイミングで記録紙を搬送ベルト2040に向けて送り出す。
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー画像は、所定のタイミングで、対応する転写装置によって搬送ベルト2040上の記録紙に順次転写され、重ね合わされて多色のカラー画像となる。そして、各トナー画像が転写された記録紙は、定着装置2050に送られる。
定着装置2050では、熱と圧力とが記録紙に加えられ、これによって各トナー画像が記録紙上に定着される。この記録紙は、排紙ローラ2058を介して排紙トレイに送られ、排紙トレイ上に順次スタックされる。
各ドラムクリーニング装置は、対応する感光体ドラムの表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラムの表面は、再度対応する帯電装置に対向する位置に戻る。
ベルト帯電装置2030は、搬送ベルト2040の表面を帯電させる。これにより、記録紙が搬送ベルト2040の表面に静電吸着される。
ベルト分離装置2031は、搬送ベルト2040上に静電吸着されている記録紙の吸着を解除する。
ベルト除電装置2032は、搬送ベルト2040の表面を除電する。
ベルトクリーニング装置2042は、搬送ベルト2040の表面に付着している異物を除去する。
次に、前記光走査装置2010の構成について説明する。
光走査装置2010は、一例として図2〜図5に示されるように、4つの光源(2200a、2200b、2200c、2200d)、4つのカップリングレンズ(2201a、2201b、2201c、2201d)、4つの開口板(2202a、2202b、2202c、2202d)、2つのシリンドリカルレンズ(2204A、2204B)、ポリゴンミラー2104、2つの偏向器側走査レンズ(2105A、2105B)、2つの像面側走査レンズ(2106A、2106B)、6枚の折り返しミラー(2107a、2107b、2107c、2107d、2108b、2108c)、4枚の防塵ガラス(2109a、2109b、2109c、2109d)、及び不図示の走査制御装置などを備えている。そして、これらは、光学ハウジング2300(図2〜図4では図示省略、図5参照)の所定位置に組み付けられている。
なお、以下では、便宜上、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
ここでは、Z軸方向からみたときに、光源2200aと光源2200cは、X軸方向に関して離れた位置に配置されている。そして、光源2200bは光源2200aの−Z側に配置されている。また、光源2200dは光源2200cの−Z側に配置されている。
各光源としては、1チップに2つの発光部を有するLDアレイが用いられている。そして、感光体ドラム上での潜像の解像度が1200dpi(≒21.2μm)となるように配置されている。なお、各光源として、面発光レーザアレイ(VCSELアレイ)が用いられても良い。
カップリングレンズ2201aは、光源2200aから射出された光ビーム(以下では、「光ビームLBa」ともいう)の光路上に配置され、該光ビームを略平行光ビームとする。
カップリングレンズ2201bは、光源2200bから射出された光ビーム(以下では、「光ビームLBb」ともいう)の光路上に配置され、該光ビームを略平行光ビームとする。
カップリングレンズ2201cは、光源2200cから射出された光ビーム(以下では、「光ビームLBc」ともいう)の光路上に配置され、該光ビームを略平行光ビームとする。
カップリングレンズ2201dは、光源2200dから射出された光ビーム(以下では、「光ビームLBd」ともいう)の光路上に配置され、該光ビームを略平行光ビームとする。
開口板2202aは、開口部を有し、カップリングレンズ2201aを介した光ビームを整形する。
開口板2202bは、開口部を有し、カップリングレンズ2201bを介した光ビームを整形する。
開口板2202cは、開口部を有し、カップリングレンズ2201cを介した光ビームを整形する。
開口板2202dは、開口部を有し、カップリングレンズ2201dを介した光ビームを整形する。
シリンドリカルレンズ2204Aは、開口板2202aの開口部を通過した光ビーム、及び開口板2202bの開口部を通過した光ビームを、ポリゴンミラー2104の偏向反射面近傍にZ軸方向に関して結像する。
シリンドリカルレンズ2204Bは、開口板2202cの開口部を通過した光ビーム、及び開口板2202dの開口部を通過した光ビームを、ポリゴンミラー2104の偏向反射面近傍にZ軸方向に関して結像する。
カップリングレンズ2201aと開口板2202aとシリンドリカルレンズ2204Aとからなる光学系は、光源2200aの偏向器前光学系(以下では、「偏向器前光学系A」という)である。
カップリングレンズ2201bと開口板2202bとシリンドリカルレンズ2204Aとからなる光学系は、光源2200bの偏向器前光学系(以下では、「偏向器前光学系B」という)である。
すなわち、シリンドリカルレンズ2204Aは、2つの偏向器前光学系で共用されている。
カップリングレンズ2201cと開口板2202cとシリンドリカルレンズ2204Bとからなる光学系は、光源2200cの偏向器前光学系(以下では、「偏向器前光学系C」という)である。
カップリングレンズ2201dと開口板2202dとシリンドリカルレンズ2204Bとからなる光学系は、光源2200dの偏向器前光学系(以下では、「偏向器前光学系D」という)である。
すなわち、シリンドリカルレンズ2204Bは、2つの偏向器前光学系で共用されている。
ポリゴンミラー2104は、Z軸に平行な軸回りに回転する4面鏡を有し、各鏡がそれぞれ偏向反射面となる。すなわち、ポリゴンミラー2104は、4つの偏向反射面を有している。
シリンドリカルレンズ2204Aからの光ビームLBa及び光ビームLBbは、ポリゴンミラー2104における−X側に位置する同一の偏向反射面に入射する。
一方、シリンドリカルレンズ2204Bからの光ビームLBc及び光ビームLBdは、ポリゴンミラー2104における+X側に位置する同一の偏向反射面に入射する。
ここでは、光ビームLBaが、XY面に対して+Z側に角度θaだけ傾斜した方向から偏向反射面に入射するように、光源2200a及び偏向器前光学系Aが配置されている。また、光ビームLBbが、XY面に対して−Z側に角度θbだけ傾斜した方向から偏向反射面に入射するように、光源2200b及び偏向器前光学系Bが配置されている。すなわち、偏向器前光学系Aは斜入射角が+θaの斜入射光学系であり、偏向器前光学系Bは斜入射角が−θbの斜入射光学系である。
さらに、光ビームLBcが、XY面に対して+Z側に角度θcだけ傾斜した方向から偏向反射面に入射するように、光源2200c及び偏向器前光学系Cが配置されている。また、光ビームLBdが、XY面に対して−Z側に角度θdだけ傾斜した方向から偏向反射面に入射するように、光源2200d及び偏向器前光学系Dが配置されている。すなわち、偏向器前光学系Cは斜入射角が+θcの斜入射光学系であり、偏向器前光学系Dは斜入射角が−θdの斜入射光学系である。
なお、以下では、光ビームが偏向反射面に入射する際に、ポリゴンミラー2104の回転軸に直交する面に対して傾斜した方向から入射することを「斜入射」といい、ポリゴンミラー2104の回転軸に直交する面に平行な方向から入射することを「水平入射」という。
そして、シリンドリカルレンズ2204Aからの光ビームLBa及び光ビームLBbは、ポリゴンミラー2104の−X側に偏向される。一方、シリンドリカルレンズ2204Bからの光ビームLBc及び光ビームLBdは、ポリゴンミラー2104の+X側に偏向される。
偏向反射面に入射した光ビームLBaは、一例として図6に示されるように、副走査対応方向に直交する面に対して−Z側に角度θaだけ傾斜した方向に反射される。また、偏向反射面に入射した光ビームLBbは、一例として図6に示されるように、副走査対応方向に直交する面に対して+Z側に角度θbだけ傾斜した方向に反射される。
偏向反射面に入射した光ビームLBcは、一例として図7に示されるように、副走査対応方向に直交する面に対して−Z側に角度θcだけ傾斜した方向に反射される。また、偏向反射面に入射した光ビームLBdは、一例として図7に示されるように、副走査対応方向に直交する面に対して+Z側に角度θdだけ傾斜した方向に反射される。
偏向器側走査レンズ2105Aは、ポリゴンミラー2104の−X側に配置され、偏向器側走査レンズ2105Bは、ポリゴンミラー2104の+X側に配置されている。
像面側走査レンズ2106Aは、偏向器側走査レンズ2105Aを介した光ビーム(光ビームLBa、光ビームLBb)の光路上に配置されている。
像面側走査レンズ2106Bは、偏向器側走査レンズ2105Bを介した光ビーム(光ビームLBc、光ビームLBd)の光路上に配置されている。
折り返しミラー2107aは、像面側走査レンズ2106Aを介した光ビームLBaの光路上に配置され、該光ビームの光路を感光体ドラムK1に向かう方向に折り返す。
そこで、ポリゴンミラー2104で偏向された光ビームLBaは、偏向器側走査レンズ2105Aと、像面側走査レンズ2106Aと、折り返しミラー2107aと、防塵ガラス2109aとを介して、感光体ドラムK1に照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、ポリゴンミラー2104の回転に伴って感光体ドラムK1の長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラムK1上を走査する。このときの光スポットの移動方向が、感光体ドラムK1での「主走査方向」であり、感光体ドラムK1の回転方向が、感光体ドラムK1での「副走査方向」である。
折り返しミラー2107bは、像面側走査レンズ2106Aを介した光ビームLBbの光路上に配置され、該光ビームの光路を+Z側に折り返す。
折り返しミラー2108bは、折り返しミラー2107bを介した光ビームLBbの光路上に配置され、該光ビームの光路を感光体ドラムC1に向かう方向に折り返す。
そこで、ポリゴンミラー2104で偏向された光ビームLBbは、偏向器側走査レンズ2105Aと、像面側走査レンズ2106Aと、折り返しミラー2107bと、折り返しミラー2108bと、防塵ガラス2109bとを介して、感光体ドラムC1に照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、ポリゴンミラー2104の回転に伴って感光体ドラムC1の長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラムC1上を走査する。このときの光スポットの移動方向が、感光体ドラムC1での「主走査方向」であり、感光体ドラムC1の回転方向が、感光体ドラムC1での「副走査方向」である。
折り返しミラー2107cは、像面側走査レンズ2106Bを介した光ビームLBcの光路上に配置され、該光ビームの光路を+Z側に折り返す。
折り返しミラー2108cは、折り返しミラー2107cを介した光ビームLBcの光路上に配置され、該光ビームの光路を感光体ドラムM1に向かう方向に折り返す。
そこで、ポリゴンミラー2104で偏向された光ビームLBcは、偏向器側走査レンズ2105Bと、像面側走査レンズ2106Bと、折り返しミラー2107cと、折り返しミラー2108cと、防塵ガラス2109cとを介して、感光体ドラムM1に照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、ポリゴンミラー2104の回転に伴って感光体ドラムM1の長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラムM1上を走査する。このときの光スポットの移動方向が、感光体ドラムM1での「主走査方向」であり、感光体ドラムM1の回転方向が、感光体ドラムM1での「副走査方向」である。
折り返しミラー2107dは、像面側走査レンズ2106Bを介した光ビームLBdの光路上に配置され、該光ビームの光路を感光体ドラムY1に向かう方向に折り返す。
そこで、ポリゴンミラー2104で偏向された光ビームLBdは、偏向器側走査レンズ2105Bと、像面側走査レンズ2106Bと、折り返しミラー2107dと、防塵ガラス2109dとを介して、感光体ドラムY1に照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、ポリゴンミラー2104の回転に伴って感光体ドラムY1の長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラムY1上を走査する。このときの光スポットの移動方向が、感光体ドラムY1での「主走査方向」であり、感光体ドラムY1の回転方向が、感光体ドラムY1での「副走査方向」である。
ポリゴンミラー2104と各感光体ドラムとの間の光路上に配置される光学系は、走査光学系とも呼ばれている。
本実施形態では、偏向器側走査レンズ2105Aと像面側走査レンズ2106Aと折り返しミラー2107aと防塵ガラス2109aとからKステーションの走査光学系が構成されている。
また、偏向器側走査レンズ2105Aと像面側走査レンズ2106Aと2枚の折り返しミラー(2107b、2108b)と防塵ガラス2109bとからCステーションの走査光学系が構成されている。
また、偏向器側走査レンズ2105Bと像面側走査レンズ2106Bと2枚の折り返しミラー(2107c、2108c)と防塵ガラス2109cとからMステーションの走査光学系が構成されている。
また、偏向器側走査レンズ2105Bと像面側走査レンズ2106Bと折り返しミラー2107dと防塵ガラス2109dとからYステーションの走査光学系が構成されている。
すなわち、各偏向器側走査レンズ及び各像面側走査レンズは、2つの走査光学系で共用されている。
Kステーションの走査光学系及びYステーションの走査光学系では、折り返しミラーの枚数は奇数であり、Cステーションの走査光学系及びMステーションの走査光学系では、折り返しミラーの枚数は偶数である。この配置により、斜入射光学系で発生する走査線曲がりの方向を各ステーションで一致させることができ、重ね合わせ画像による色ずれを低減させることができる。
ここで、具体的な設計値の一例について説明する。
各光源から射出される光ビームの波長は659nmである。
各カップリングレンズは、波長が659nmの光に対する屈折率が1.6894のガラス製である。そして、各カップリングレンズの焦点距離は約27mmである。
各開口板の開口部は、主走査対応方向の幅が約2.5mm、副走査対応方向の幅が約2.2mmである。
各シリンドリカルレンズは、副走査対応方向(ここでは、Z軸方向)にのみ光学的パワーを持ち、波長が659nmの光に対する屈折率が1.527118の樹脂製である。各シリンドリカルレンズの副走査対応方向における焦点距離は約47mmである。
各光ビームの斜入射角は、|θa|=|θb|=|θc|=|θd|=1°である。
図2における傾斜角θA、及び傾斜角θBの大きさ(絶対値)は、いずれも約68°である。
ポリゴンミラー2104の内接円の半径は約7mmである。
ポリゴンミラー2104の偏向反射面の副走査対応方向に関する長さ(図8におけるDp、以下では、「偏向反射面の厚さ」ともいう)は約4mmである。また、同一の偏向反射面に入射する2つの光ビームの、該偏向反射面における各入射位置は、副走査対応方向に関して約2.5mm(図8におけるDb)離れている。
Mステーションの走査光学系における各光学素子の配置例が図9に示されている。すなわち、偏向反射面から偏向器側走査レンズ2105Bの入射側の面までの距離は30.05mm、偏向器側走査レンズ2105Bの入射側の面から射出側の面までの距離(すなわち、肉厚)は5mm、偏向器側走査レンズ2105Bの射出側の面から像面側走査レンズ2106Bの入射側の面までの距離は9mm、像面側走査レンズ2106Bの入射側の面から射出側の面までの距離(すなわち、肉厚)は6mm、像面側走査レンズ2106Bの射出側の面から折り返しミラー2107cの反射面までの距離は19mm、折り返しミラー2107cの反射面から防塵ガラス2109cの入射側の面までの距離は90mm、防塵ガラス2109cの入射側の面から射出側の面までの距離(すなわち、肉厚)は1.9mm、防塵ガラス2109cの射出側の面から感光体ドラムM1の表面までの距離は43.1mmである。なお、ポリゴンミラー2104の回転中心から偏向器側走査レンズ2105Aの入射側の面までの距離は36mmである。
また、各走査光学系では、主走査対応方向(Y軸方向)に関する原点は、ポリゴンミラー2104の回転中心とし、副走査対応方向(Z軸方向)に関する原点は、偏向反射面の中心とする。
各走査レンズは、波長が659nmの光に対する屈折率が1.527118の樹脂製である。また、各防塵ガラスの、波長が659nmの光に対する屈折率は、1.514245である。
各偏向器側走査レンズは、その射出側に、副走査対応方向(ここでは、Z軸方向)に並ぶ2つの光学面を有している(図10(A)及び図10(B)参照)。
ここでは、射出側の2つの光学面のうち、+Z側の光学面を第1射出光学面、−Z側の光学面を第2射出光学面という。また、入射側の光学面を入射光学面という。
偏向器側走査レンズ2105Aにおける第1射出光学面は、光ビームLBbに対応する光学面であり、第2射出光学面は、光ビームLBaに対応する光学面である。
偏向器側走査レンズ2105Bにおける第1射出光学面は、光ビームLBdに対応する光学面であり、第2射出光学面は、光ビームLBcに対応する光学面である。
各像面側走査レンズは、その入射側及び射出側に、いずれも副走査対応方向に並ぶ2つの光学面を有している(図11(A)及び図11(B)参照)。
ここでは、入射側の2つの光学面のうち、+Z側の光学面を第1入射光学面、−Z側の光学面を第2入射光学面という。また、射出側の2つの光学面のうち、+Z側の光学面を第1射出光学面、−Z側の光学面を第2射出光学面という。
像面側走査レンズ2106Aにおける第1入射光学面と第1射出光学面は、光ビームLBaに対応する光学面であり、第2入射光学面と第2射出光学面は、光ビームLBbに対応する光学面である。
像面側走査レンズ2106Bにおける第1入射光学面と第1射出光学面は、光ビームLBdに対応する光学面であり、第2入射光学面と第2射出光学面は、光ビームLBcに対応する光学面である。
各走査レンズの各光学面は、次の(1)式で表現される。
上記(1)式では、Yは主走査対応方向に関する原点からの距離、Zは副走査対応方向に関する原点からの距離である。また、Cmは原点における主走査対応方向の曲率、Csは原点における副走査対応方向の曲率を表す。このように、主走査対応方向及び副走査対応方向のいずれにも直交する方向のデプスデータX(Y,Z)で、レンズ面形状を表している。
上記(1)式におけるCs(Y)は、次の(2)式で示される。
上記(1)式における主走査対応方向の原点は、各走査レンズとも、ポリゴンミラー2104の回転中心から+Y側に3.784mmシフトした位置である。
上記(1)式における副走査対応方向の原点は、各偏向器側走査レンズでは、走査光学系での原点と同じであり、各像面側走査レンズの第1入射光学面及び第1射出光学面では、走査光学系での原点から+Z側に2.1mmシフトした位置であり、第2入射光学面及び第2射出光学面では、走査光学系での原点から−Z側に2.1mmシフトした位置である。なお、上記(1)式における原点の法線方向は、「基準軸」とも呼ばれている。
各偏向器側走査レンズにおける各数値の具体例が図12に示されている。また、各像面側走査レンズにおける各数値の具体例が図13に示されている。
各偏向器側走査レンズの各射出側の面では、係数F0の値が0ではない。ここでの係数F0の値は、基準軸上において、各入射側の面が、副走査対応方向に対して0.6°(deg)傾斜していることを表している。そして、その傾斜方向は、断面形状が谷型となるように、第1入射光学面と第2入射光学面とで異なる方向とされている。
各偏向器側走査レンズの第2射出光学面は、副走査対応方向に対する傾きが主走査対応方向の位置によって異なる平面である(図14(A)参照)。ここでは、+2°(deg)を超えないように傾きが設定されており、加工性を確保した形状としている。なお、各偏向器側走査レンズの第1射出光学面は、図14(A)に対して、正負が逆転した形状である。
各像面側走査レンズの各入射光学面は、係数F0の値が0である。これは、基準軸上において、各入射光学面が、副走査対応方向に平行であることを表している。
各像面側走査レンズの第2入射光学面は、基準軸上以外では、副走査対応方向に対する傾斜角が主走査対応方向の位置によって異なる面である(図14(B)参照)。ここでは、−2°(deg)を超えないように傾きが設定されており、加工性を確保した形状としている。なお、各像面側走査レンズの第1入射光学面は、図14(B)に対して、正負が逆転した形状である。
ここでは、各偏向器側走査レンズの射出側の面、各像面側走査レンズの入射側の面は、レンズ全体の形状としては谷型になる。
各防塵ガラスは、主走査対応方向及び副走査対応方向のいずれも光学的パワーを持たない。
各防塵ガラスは、その表面が副走査対応方向に対して14°傾斜している(図15参照)。なお、図15は、各光ビームの光路がそれぞれ1本の直線となるようにXZ面上に展開した図である。
ところで、一例として図16に示されるように、ポリゴンミラー2104の回転中心から各偏向反射面までの距離にばらつき(図16ではΔd)があると、光ビームが偏向反射面に斜入射されたとき、偏向反射面での反射位置が副走査対応方向(ここでは、Z軸方向)に関して変化(図16ではΔS)する。そして、偏向反射面での反射位置が副走査対応方向に関して変化すると、被走査面においても副走査対応方向に関して結像位置が変化する。これは、被走査面における走査線のピッチ変動を招く。
そこで、上記ばらつきがあると、偏向反射面を4面もっているポリゴンミラーでは、4ライン周期で走査線のピッチ変動が発生する。
走査線のピッチ変動は、走査レンズの副走査対応方向における倍率をβとすると、△S×βとなる。そして、この値が5μm以上になると、出力画像上で濃度むらとなり、画像品質が大きく低下する。
なお、光ビームが偏向反射面に水平入射される場合には、上記ばらつきがあっても、副走査対応方向に関して反射位置は変化しないため、被走査面上の結像位置も変化しない。
上記画像品質の低下を抑制する第1の方法として、各走査レンズとポリゴンミラーとの距離を大きくして、上記倍率βを小さくすることが考えられる。この場合は、各走査レンズの主走査対応方向の長さを長くする必要があり、各走査レンズのコスト上昇、光走査装置の大型化を招く。また、画角を一定とし、倍率βを小さくするには、ポリゴンミラーと感光体ドラムとの間の光路長を長くする必要があり、画像形成装置の大型化を招く。
上記画像品質の低下を抑制する第2の方法として、光ビームの斜入射角を小さくすることが考えられる。斜入射角が小さいと、副走査対応方向に関する偏向反射面での反射位置のずれΔSが小さくなる。
しかしながら、光ビームの斜入射角が小さいと、同一の偏向反射面で反射された2つの光ビームのなす角度も小さくなり、一例として図17に示されるように、2つの光ビームを分離するための折り返しミラーと偏向反射面との距離が長くなる。これは、光走査装置の大型化を招く。
本実施形態における各偏向器側走査レンズでは、一例として図18に示されるように、射出側の面が副走査対応方向に対して傾斜しているため、射出側の面を透過した2つの光ビームのなす角度(θout)を、入射時の角度(θin)よりも大きくすることができる。すなわち、ここでは、各偏向器側走査レンズの射出側の面が「間隔拡大面」である。
そこで、一例として図19に示されるように、2つの光ビームの斜入射角が小さくても、2つの光ビームを分離するための折り返しミラーと偏向反射面との距離を短くすることができる。
この結果、2つの光ビームの斜入射角を小さくすることができるため、前記偏向反射面での反射位置のずれΔSが小さくなり、上記倍率βを小さくすることなく、すなわち、走査レンズをポリゴンミラーから遠ざけることなしに、走査線のピッチ変動を低減することができる。
次に、本実施形態における各偏向器側走査レンズの各射出光学面の形状を平面形状としている理由について説明する。
仮に、各偏向器側走査レンズの各射出光学面が副走査対応方向に関して曲率を持っていると、副走査対応方向に関する位置毎に主走査対応方向の形状が大きく異なることとなる。このとき、温度変動や光学素子の組み付け誤差に起因して副走査対応方向に関する光ビームの入射位置がずれると、大きな倍率誤差が発生する。そして、多色の画像形成装置においては、各色間での被走査面における光スポットの位置にずれを生じ、その結果、出力画像に色ずれが発生する。
一方、各偏向器側走査レンズの各射出光学面の形状が平面形状の場合には、副走査対応方向に関する位置による主走査対応方向の形状変化を小さくでき、副走査対応方向に関する光ビームの入射位置がずれても、倍率誤差が大きくなることはない。
なお、本実施形態における各偏向器側走査レンズの各射出光学面は、副走査対応方向の位置に応じて主走査対応方向に関する形状が異なるが、副走査対応方向に関して曲率を持つ場合に比べて、主走査対応方向に関する形状変化は極めて小さい。この結果、環境温度のばらつきによる光束間での主走査方向の倍率変動の差を小さくでき、同期を取ることで書き出し位置と書き終わり位置を各光束で一致させたときの中間像高での色ずれを低減できる。
また、仮に、各偏向器側走査レンズの各射出光学面が副走査対応方向に関して曲率を持っていると、各射出光学面に入射する光線が副走査対応方向にシフトした場合、各射出光学面から射出される光線の進行方向が変化する(図20参照)。この場合には、被走査面上において大きな走査線曲がりが発生する。また、光ビームのスキューが発生し、波面収差の増大、光スポットのスポット径の太りが生じる。
一方、各偏向器側走査レンズの各射出光学面が平面形状の場合には、各射出光学面に入射する光線が副走査対応方向にシフトしても、各射出光学面から射出される光線の進行方向はシフトするのみで、その変化は小さい(図21参照)。
以上の理由から、本実施形態における各偏向器側走査レンズの各射出光学面は、平面形状としている。
各偏向器側走査レンズの射出側の面を、各光学面から射出された2つの光ビームの間隔が副走査対応方向に関して広がるような形状とすることで、各偏向器側走査レンズの射出側の面を成形するのに用いられる金型部品の形状を、図22に示されるように、主走査対応方向全域で山形(光学面としては谷形)とすることができる。仮に、金型部品側の形状が谷形の場合、各面の副走査対応方向の稜線部の加工が困難となる。具体的には、加工時のバイトの逃げ部が必要となるため、副走査対応方向に並ぶ2つの光学面の間隔を広げる必要が生じ、走査レンズが大型化してしまう。副走査対応方向に並ぶ2つの光学面の間隔が広がると、斜入射角を大きくする必要が生じる等の不都合が発生する。
ところで、光ビームを斜入射させると、波面収差が増大する。副走査対応方向(Z軸方向)からみたときに、偏向器側走査レンズの入射側の面の形状が、偏向反射面での反射位置を中心とする円弧形状でない限り、偏向反射面での反射位置から偏向器側走査レンズにおける入射位置までの光路長は主走査対応方向の位置によって異なる。
偏向器側走査レンズの入射側の面の形状を上記円弧形状にすることは、光学性能を維持する上で困難である。そこで、通常、ポリゴンミラーで偏向され偏向器側走査レンズに入射する光ビームは、主走査対応方向からみたときに、光軸以外の位置では、光学面に対し垂直に入射することはなく、0°以外の入射角で入射する(図23参照)。
また、ポリゴンミラーで反射された光ビームは、主走査対応方向にある幅を持っており、該光ビーム内で主走査対応方向の両端の光線は、偏向反射面から偏向器側走査レンズの入射位置までの光路長が異なり、かつ、副走査対応方向に対して傾斜している。そこで、該光ビームは、ねじれた状態で偏向器側走査レンズに入射することになる。
このねじれた状態の光ビームが副走査対応方向に関して強い光学的パワーを持つ偏向器側走査レンズに入射すると波面収差を増大させる。つまり、副走査対応方向に関して強い光学的パワーを持つ面に、スキュー特性をもつ光ビームが入射することで、該光ビーム内で主走査対応方向の両端の光線の屈折角が異なり、被走査面上では各光線は一点に集まらず、光スポットに太りが生じる。
また、入射光ビームにおける主走査対応方向の両端の光線の副走査対応方向に関する偏向器側走査レンズへの入射位置の差は、一般的な偏向器側走査レンズでは、該光ビームの主走査対応方向に関する入射位置が光軸から離れるほど大きくなる。すなわち、光ビームの主走査対応方向に関する入射位置が光軸から離れるほど、該光ビームのねじれが大きくなり、被走査面上での光スポットは、波面収差の劣化による太りが大きくなる。
ところで、波面収差を補正するには、副走査対応方向に関して強い光学的パワーを持つ光学面への入射位置を補正し、被走査面上で一点に集光するようにする必要がある。
本実施形態における各偏向器側走査レンズでは、射出側の面における副走査対応方向に対する傾斜角を、主走査対応方向に関する位置に応じて異ならせることで、副走査対応方向に関して強い光学的パワーを持つ像面側走査レンズの射出光学面への光線の入射位置を調整している。すなわち、間隔拡大面は、斜入射光学系を用いることによる波面収差の増大を補正する機能も有している。
また、本実施形態における各像面側走査レンズでは、入射側の面における副走査対応方向に対する傾斜角を、主走査対応方向に関する位置に応じて異ならせることで、波面収差や走査線曲がりを補正している。
ところで、仮に、像面側走査レンズにおける射出光学面が1面の場合には、一例として図24に示されるように、副走査対応方向に関して基準軸外を光ビームが通過するため、走査レンズから射出される2つの光ビームは、副走査対応方向に関して互いの間隔が徐々に狭くなる。この場合は、2つの光ビームを分離するための折り返しミラーの配置位置を設定するのが難しくなる。
一方、本実施形態における各像面側走査レンズでは、一例として図25に示されるように、2つの光ビームは、各射出光学面の基準軸近傍を通過しているため、副走査対応方向への屈折を抑制することができる。つまり、本実施形態における各像面側走査レンズの射出側の面は、結像作用を有しつつ、2つの光ビームのなす角度を維持することができる。
また、本実施形態では、同一の偏向反射面に入射する2つの光ビームは、該偏向反射面に入射する前に、副走査対応方向からみたときに交差している。そして、その交差位置近傍にシリンドリカルレンズが配置されている。ここでの交差は、必ずしも2つの光ビームがぶつかり合う必要はなく、単に、副走査対応方向からみたときに交差しているようにみえれば良い。
これにより、一例として図26及び図27に示されるように、ポリゴンミラーと走査レンズとの距離を長くすることなく、斜入射角を小さくすることができる。
この場合、2つの光ビームは、副走査対応方向に関して、同一の偏向反射面の異なる位置に入射するため、従来の斜入射光学系を用いた場合よりも、偏向反射面の厚さを厚くする必要がある。但し、本実施形態では、偏向反射面の厚さを約4mmと抑えているため、高コスト化、消費電力の増加、騒音の増大を招来することは、ほとんどない。なお、2つの光ビームがそれぞれ水平入射され、2つの走査レンズを副走査対応方向に重ねて配置した場合、偏向反射面の厚さは8〜10mm程度になることが多い。
また、従来の斜入射光学系を用いた場合では、斜入射角は、3〜5°程度に設定されることが多いが、本実施形態では、斜入射角を1°程度とすることができる。
また、本実施形態では、シリンドリカルレンズを、同一の偏向反射面に向かう2つの光ビームで共用し、かつ、2つの光ビームが偏向反射面に入射する前に、副走査対応方向からみたときに交差する位置に配置している。この場合、部品点数を減らすことができる。
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る光走査装置2010では、偏向器側走査レンズによって本発明の第1の走査レンズが構成され、像面側走査レンズによって本発明の第2の走査レンズが構成されている。また、像面側走査レンズの第1射出光学面と第2射出光学面によって本発明の2つのレンズ面が構成されている。
また、偏向器側走査レンズの射出側の面によって、本発明の間隔拡大面が構成されている。
また、偏向器側走査レンズの入射側の面によって、本発明の2つのレンズ面を有する面及び間隔拡大面とは別に、主走査方向の位置によって副走査方向に対する傾斜角が異なる面(以下では、便宜上「第3の面」ともいう)が構成されている。
以上説明したように、本実施形態に係る光走査装置2010によると、4つの光源(2200a〜2200d)、複数の偏向反射面を有し、各光源から射出された光ビーム(LBa〜LBd)を偏向するポリゴンミラー2104、該ポリゴンミラー2104で偏向された2つの光ビーム(LBa、LBb)が入射する偏向器側走査レンズ2105A、該ポリゴンミラー2104で偏向された2つの光ビーム(LBc、LBd)が入射する偏向器側走査レンズ2105B、偏向器側走査レンズ2105Aを通過した2つの光ビーム(LBa、LBb)が入射する像面側走査レンズ2106A、偏向器側走査レンズ2105Bを通過した2つの光ビーム(LBc、LBd)が入射する像面側走査レンズ2106B、各偏向器側走査レンズを通過した光ビームを対応する感光体ドラムに個別に導く複数の折り返しミラー、及び折り返しミラーを介した光ビームが通過する4つの防塵ガラスなどを備えている。
各光源から射出された光ビーム(LBa〜LBd)は、いずれもポリゴンミラー2104に斜入射される。
そして、偏向器側走査レンズ2105Aは、光ビームLBaに対応する第1射出光学面、及び光ビームLBbに対応する第2射出光学面を有している。偏向器側走査レンズ2105Bは、光ビームLBdに対応する第1射出光学面、及び光ビームLBcに対応する第2射出光学面を有している。
また、像面側走査レンズ2106Aは、光ビームLBaに対応する第1入射光学面と第1射出光学面、及び光ビームLBbに対応する第2入射光学面と第2射出光学面を有している。像面側走査レンズ2106Bは、光ビームLBdに対応する第1入射光学面と第1射出光学面、及び光ビームLBcに対応する第2入射光学面と第2射出光学面を有している。
各偏向器側走査レンズの各射出光学面は、主走査対応方向の中央部で副走査対応方向に対して傾斜しており、さらに副走査対応方向に対する傾きが主走査対応方向の位置によって異なる平面である。これにより、同一の偏向反射面で偏向された2つの光ビームを分離するための折り返しミラーと偏向反射面との距離を短くするとともに、同一の偏向反射面に入射する2つの光ビームの斜入射角を小さくすることができる。また、これにより、斜入射による波面収差を小さくすることができる。さらに、各偏向器側走査レンズの各射出光学面を成形する際に用いられる金型部品を容易に精度良く作製することができる。
各像面側走査レンズの各入射光学面は、副走査対応方向に対する傾きが主走査対応方向の位置によって異なる平面である。これにより、波面収差や走査線曲がりを良好に補正することが可能となる。さらに、各像面側走査レンズの各入射光学面を成形する際に用いられる金型部品を容易に精度良く作製することができる。
また、各像面側走査レンズの各射出光学面は、副走査対応方向に関して強い光学的パワーを持つ面である。
また、主走査対応方向からみたときに、同一の偏向反射面に入射する2つの光ビームは、交差してから該偏向反射面に入射している。この場合、斜入射角を小さくすることなく、ポリゴンミラー2104と各走査レンズとの距離を短くすることができる。
また、1つの偏向器側走査レンズ及び1つの像面側走査レンズが2つの画像形成ステーションで共用されているため、部品点数を低減し低コスト化を図ることができる。
この場合は、ビームスポット径の小径化、走査線曲がりの低減を実現しながら、各光束の分離を容易にし、光走査装置全体の小型化を達成することができる。
そこで、光走査装置2010では、走査精度を低下させることなく、低コスト化及び小型化を図ることができる。
また、偏向反射面に入射する光ビームを斜入射させているため、光走査装置を構成する部品の中でコスト比率の高いポリゴンミラーの厚さを、水平入射させる場合よりも小さくすることができる。すなわち、ポリゴンミラーを小型化することができる。この小型化に伴い、コストを下げるだけでなく、消費電力や騒音を低減し環境を考慮した光走査装置の提供が可能となる。
また、各走査レンズでは、副走査対応方向に沿って並ぶ2つ光学面を近接することが可能であり、従来のように2つの走査レンズを副走査対応方向に重ねて配置する場合に比べて、斜入射角を小さくしたり、走査レンズを小型化することができる。
また、ポリゴンミラー2104から感光体ドラムに至る光学レイアウトの自由度が高い。特に、各走査レンズをポリゴンミラー2104の近くに配置することができるため、副走査対応方向において光走査装置の小型化(薄型化)を図ることができる。
また、本実施形態に係るカラープリンタ2000によると、光走査装置2010を備えているため、結果として、高い画像品質を維持しつつ、低コスト化及び小型化を図ることができる。
次に、3つの変形例について説明する。
《変形例1》
変形例1では、一例として図28及び図29に示されるように、上記実施形態と同様に、偏向器側走査レンズの射出側の面を間隔拡大面とし、像面側走査レンズの入射側の面を前記第3の面とし、像面側走査レンズの射出側の面を副走査対応方向に関して強い光学的パワーを持つ面としている。
この変形例1におけるMステーションの走査光学系の各光学素子の配置が図30に示されている。すなわち、偏向反射面から偏向器側走査レンズ2105Bの入射側の面までの距離は30.05mm、偏向器側走査レンズ2105Bの入射側の面から射出側の面までの距離(すなわち、肉厚)は7mm、偏向器側走査レンズ2105Bの射出側の面から像面側走査レンズ2106Bの入射側の面までの距離は7mm、像面側走査レンズ2106Bの入射側の面から射出側の面までの距離(すなわち、肉厚)は5mm、像面側走査レンズ2106Bの射出側の面から折り返しミラー2107cの反射面までの距離は20mm、折り返しミラー2107cの反射面から防塵ガラス2109cの入射側の面までの距離は90mm、防塵ガラス2109cの入射側の面から射出側の面までの距離(すなわち、肉厚)は1.9mm、防塵ガラス2109cの射出側の面から感光体ドラムM1の表面までの距離は43.1mmである。なお、ポリゴンミラー2104の回転中心から偏向器側走査レンズ2105Aの入射側の面までの距離は36mmである。
この場合の、各偏向器側走査レンズにおける上記(1)式の各数値が図31に示されている。また、各像面側走査レンズにおける上記(1)式の各数値が図32に示されている。
上記(1)式における主走査対応方向の原点は、各走査レンズとも、ポリゴンミラー2104の回転中心から+Y側に3.79mmシフトした位置である。
上記(1)式における副走査対応方向の原点は、各偏向器側走査レンズでは、走査光学系での原点と同じであり、各像面側走査レンズの第1入射光学面及び第1射出光学面では、走査光学系での原点から+Z側に2.04mmシフトした位置であり、第2入射光学面及び第2射出光学面では、走査光学系での原点から−Z側に2.04mmシフトした位置である。
各偏向器側走査レンズの各射出光学面は、係数F0の値が0である。これは、基準軸上において、各射出光学面が、副走査対応方向に平行であることを表している。
また、各偏向器側走査レンズの第2射出光学面は、基準軸上以外では、副走査対応方向に対する傾きが主走査対応方向の位置によって異なる平面である(図33(A)参照)。ここでは、+2°(deg)を超えないように傾きが設定されており、加工性を確保した形状としている。なお、各偏向器側走査レンズの第1射出光学面は、図33(A)に対して、正負が逆転した形状である。
各像面側走査レンズの各入射光学面では、係数F0の値が0ではない。ここでの係数F0の値は、基準軸上において、各入射側の面が、副走査対応方向に対して0.7°(deg)傾斜していることを表している。そして、その傾斜方向は、断面形状が谷型となるように、第1入射光学面と第2入射光学面とで異なる方向とされている。
また、各像面側走査レンズの第2入射光学面は、副走査対応方向に対する傾斜角が主走査対応方向の位置によって異なる面である(図33(B)参照)。ここでは、−2°(deg)を超えないように傾きが設定されており、加工性を確保した形状としている。なお、各像面側走査レンズの第1入射光学面は、図33(B)に対して、正負が逆転した形状である。
ところで、図34には、2つの光ビームが分離される位置での該2つの光ビームの走査線が示されている。このように、2つの走査線の間隔が中央部で最も短くなるため、各像面側走査レンズの入射側の面では、少なくとも中央部が、副走査対応方向に対して傾斜していれば良い。
《変形例2》
変形例2では、一例として図35及び図36に示されるように、偏向器側走査レンズの射出側の面を間隔拡大面とし、像面側走査レンズの入射側の面を、副走査対応方向に関して強い光学的パワーを持つ面とし、像面側走査レンズの射出側の面を、前記第3の面としている。
この変形例2におけるMステーションの走査光学系の各光学素子の配置が図37に示されている。すなわち、偏向反射面から偏向器側走査レンズ2105Bの入射側の面までの距離は30.05mm、偏向器側走査レンズ2105Bの入射側の面から射出側の面までの距離(すなわち、肉厚)は5mm、偏向器側走査レンズ2105Bの射出側の面から像面側走査レンズ2106Bの入射側の面までの距離は9mm、像面側走査レンズ2106Bの入射側の面から射出側の面までの距離(すなわち、肉厚)は5mm、像面側走査レンズ2106Bの射出側の面から折り返しミラー2107cの反射面までの距離は20mm、折り返しミラー2107cの反射面から防塵ガラス2109cの入射側の面までの距離は90mm、防塵ガラス2109cの入射側の面から射出側の面までの距離(すなわち、肉厚)は1.9mm、防塵ガラス2109cの射出側の面から感光体ドラムM1の表面までの距離は43.1mmである。
この場合の、各偏向器側走査レンズにおける上記(1)式の各数値が図38に示されている。また、各像面側走査レンズにおける上記(1)式の各数値が図39に示されている。
上記(1)式における主走査対応方向の原点は、各走査レンズとも、ポリゴンミラー2104の回転中心から+Y側に3.79mmシフトした位置である。
上記(1)式における副走査対応方向の原点は、各偏向器側走査レンズでは、走査光学系での原点と同じであり、各像面側走査レンズの第1入射光学面では、走査光学系での原点から+Z側に2.02mmシフトした位置であり、第2入射光学面では、走査光学系での原点から−Z側に2.02mmシフトした位置であり、各射出光学面では、走査光学系での原点と同じである。
各偏向器側走査レンズの各射出光学面は、係数F0の値が0ではない。ここでの係数F0の値は、基準軸上において、各入射側の面が、副走査対応方向に対して0.5°(deg)傾斜していることを表している。そして、その傾斜方向は、断面形状が谷型となるように、第1射出光学面と第2射出光学面とで異なる方向とされている。
また、各偏向器側走査レンズの第2射出光学面は、副走査対応方向に対する傾きが主走査対応方向の位置によって異なる平面である(図40(A)参照)。ここでは、+2°(deg)を超えないように傾きが設定されており、加工性を確保した形状としている。なお、各偏向器側走査レンズの第1射出光学面は、図40(A)に対して、正負が逆転した形状である。
各像面側走査レンズの各射出光学面は、係数F0の値が0である。これは、基準軸上において、各射出光学面が、副走査対応方向に平行であることを表している。
また、各像面側走査レンズの第2射出光学面は、基準軸上以外では、副走査対応方向に対する傾斜角が主走査対応方向の位置によって異なる面である(図40(B)参照)。ここでは、−2°(deg)を超えないように傾きが設定されており、加工性を確保した形状としている。なお、各像面側走査レンズの第1射出光学面は、図40(B)に対して、正負が逆転した形状である。
《変形例3》
変形例3では、一例として図41及び図42に示されるように、像面側走査レンズの入射側の面を間隔拡大面とし、像面側走査レンズの射出側の面を副走査対応方向に関して強い光学的パワーを持つ面とし、偏向器側走査レンズの射出側の面を前記第3の面としている。
この場合の、各偏向器側走査レンズにおける上記(1)式の各数値が図43に示されている。また、各像面側走査レンズにおける上記(1)式の各数値が図44に示されている。
上記(1)式における主走査対応方向の原点は、各走査レンズとも、ポリゴンミラー2104の回転中心から+Y側に3.79mmシフトした位置である。
上記(1)式における副走査対応方向の原点は、各偏向器側走査レンズの入射光学面では、走査光学系での原点と同じであり、第1射出光学面では、走査光学系での原点から+Z側に1.77mmシフトした位置であり、第2射出光学面では、走査光学系での原点から−Z側に1.77mmシフトした位置であり、各像面側走査レンズの各入射光学面では、走査光学系での原点と同じであり、第1射出光学面では、走査光学系での原点から+Z側に1.2mmシフトした位置であり、第2射出光学面では、走査光学系での原点から−Z側に1.2mmシフトした位置である。
各偏向器側走査レンズの各射出光学面は、副走査対応方向の曲率が主走査対応方向の位置によって異なる面である。
各像面側走査レンズの各入射光学面は、係数F0の値が0ではない。ここでの係数F0の値は、基準軸上において、各入射側の面が、副走査対応方向に対して0.7°(deg)傾斜していることを表している。そして、その傾斜方向は、断面形状が谷型となるように、第1入射光学面と第2入射光学面とで異なる方向とされている。
また、各像面側走査レンズの第2入射光学面は、副走査対応方向に対する傾斜角が主走査対応方向の位置によって異なる面である(図45参照)。ここでは、−2°(deg)を超えないように傾きが設定されており、加工性を確保した形状としている。なお、各像面側走査レンズの第1入射光学面は、図45に対して、正負が逆転した形状である。
なお、上記実施形態及び各変形例では、副走査対応方向に関して強い光学的パワーを持つ光学面の基準軸がX軸に平行である場合について説明したが、これに限らず、該基準軸がX軸に対して傾斜していても良い(図46参照)。
また、上記実施形態及び各変形例では、各走査レンズの光学面形状を上記(1)式を用いて説明したが、これに限定されるものではなく、各走査レンズの光学面形状を上記(1)式とは異なる式を用いて表現しても良い。
また、上記実施形態及び各変形例では、間隔拡大面が2つの光学面を有する場合について説明したが、これに限らず、間隔拡大面が、主走査対応方向の中央部で副走査対応方向に負のパワーを持ち、主走査対応方向の位置によって曲率が異なる面であっても良い(図47参照)。
また、上記実施形態では、偏向反射面に光ビームを斜入射させるため、光源及び偏向器前光学系が、XY面に対して傾斜して配置される場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、偏向器前光学系にミラーを加え、該ミラーによって光ビームを傾斜させても良い。また、シリンドリカルレンズの光軸を副走査対応方向にシフトすることで、偏向反射面に向かう光束に角度をつけても良い。
また、上記実施形態では、光偏向器としてポリゴンミラーが用いられる場合について説明したが、これに限らず、いわゆるMEMSミラーを用いても良い。
また、上記実施形態において、同一の偏向反射面に入射する2つの光ビームを射出する2つの光源を主走査対応方向に離間させ、2つのシリンドリカルレンズを各光源に対応して設けても良い。この場合は、走査レンズの副走査対応方向に沿って並ぶ2つの光学面の形状を互いに異ならせることで良好な光学特性を得ることが可能である。
また、上記実施形態において、同一の偏向反射面に入射する2つの光ビームに対してシリンドリカルレンズを共用化しつつ、カップリングレンズの干渉を避けるため、該2つの光ビームを射出する2つの光源を主走査対応方向に離間させても良い。この場合、副走査対応方向からみたときに、偏向反射面近傍で該2つの光ビームを交差させることが望ましい。
また、上記実施形態において、前記シリンドリカルレンズに代えて、同様の機能を持つ光学素子を用いても良い。
また、上記実施形態では、画像形成装置が4つの感光体ドラムを有する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、画像形成装置が5つの感光体ドラムを有していても良い。
また、上記実施形態では、光走査装置2010がプリンタに用いられる場合について説明したが、プリンタ以外の画像形成装置、例えば、複写機、ファクシミリ、又は、これらが集約された複合機にも好適である。