JP5526948B2 - 2,6−ジプレニル−4−ビニルフェノールの生成方法 - Google Patents

2,6−ジプレニル−4−ビニルフェノールの生成方法 Download PDF

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本発明は、プロポリスから2,6−ジプレニル−4−ビニルフェノールを生成する方法に関するものである。また、本発明は、抗菌剤、抗酸化剤、細胞増殖抑制剤及び抗癌剤に関するものである。
健康の維持・増進、疾病からの回復など健康で豊かな人生を送るためには、様々な生理活性化合物が必要不可欠である。有益な生理活性化合物を効率的に得ることは人類にとって永遠の願望であり、これまでに様々な手法が開発されてきた。
かつての手法は、天然界から得るものであり、主には植物、動物から有益な生理活性化合物を抽出するものである。しかしながら、本手法では天然化合物しか得られず、また希少成分については回収量が少ないという問題点があった。そこで、天然生理活性化合物を効率よく抽出する方法や、非天然生理活性化合物を得るために抽出以外の新規な製造方法について長きにわたって検討が繰り返され、現在までに多くの技術が提案されている。
これらの諸技術は、その詳細まで記すことは不可能なほどに多いが、手法を概念的に大まかに分類することができる。抽出条件を最適化する手法(特許文献1)、化学的な手法で生理活性化合物を合成する手法(特許文献2)、微生物を利用した発酵により産生させる手法(特許文献3、4)、酵素を用いて産生する手法(特許文献5)、遺伝子組み換え技術を用いて組換え菌や組換え細胞を創製し生理活性化合物を産生する手法(特許文献6)、天日干しなどの原始的手法や加熱、酸、塩基などの初歩的な処理を施し物質変換することなどである。現在では我々はこれらの技術の多大な恩恵を受け、食品の栄養成分や機能性成分、医薬品の成分として生理活性成分を活用することにより過去には不可能であった高い生活レベルを達成できている。しかしながら、いずれの手法にも問題点が今なお存在しているのも事実である。
抽出条件を最適化する手法に関しては、生理活性化合物の由来である原料素材の処理、生理活性化合物の抽出溶媒の工夫、抽出方法の工夫などが主に上げられる。しかしながら、その全てを最適化したとしても、対象とする生理活性化合物がもともと含有されている量以上を回収することは不可能であるから、効率にはおのずと上限がある。抽出条件を数多く検討したにもかかわらず、目的の生理活性化合物を少量しか回収できないことも多々ある。さらには、抽出過程で生理活性化合物の構造が変化し、所望の生理活性を減衰あるいは消失させてしまうこともある。
化学的な手法で生理活性化合物を合成する手法の場合には、反応ステップが複雑、危険が伴う、コストが高い、得られた化合物自体の安全性に問題があることが多い、などデメリットが多い一面もある。生命科学と有機化学の進歩により実現できた技術であり今なお創薬手法の王道となっていることは紛れも無い事実ではあるが、現実に、実用レベルの安全な生理活性化合物を生み出すためには、多大な開発費用、特に安全性の試験費用、長期にわたる開発期間、服用時の注意などの課題が残されている。
微生物の発酵を利用した生理活性化合物の産生には、微生物を選定したり培養条件を最適化するまでに時間を要したり、収量が不十分であったり、精製作業が負担となったりするなどの課題が残されている。
酵素を用いて生理活性化合物を産生する手法には、酵素の基質特異性によるものであるから、必然的に得ることの出来る化合物の種類に限界がある。
遺伝子組み換え技術を用いて組換え菌や組換え細胞を創製し生理活性化合物を産生する手法も、組換え体作製の労力や現時点での技術的限界、安全性の問題、得ることの出来る化合物の種類に限界があるなどの課題が残されている。
天日干しなどの原始的手法や加熱、酸、塩基などの初歩的な処理を施し物質変換することにも、限られた反応しか起こすことができないため、得られる化合物に制限がある。
これらの手法は効果的である一方で、多くの課題を今なお有していることがわかる。そもそも、有益な生理活性化合物を人工的に作り出すことには、化学反応にせよ発酵にせよ遺伝子組み換え技術にせよ、当然のことながら製造技術に人為的な要素を多く含むために、合成や産生、さらに危険性を排除するために多くのエネルギーを要する。エネルギーとはここでは燃料、材料、加工コストなどの物理的エネルギー、投入する人的作業労力や、安全性等の法律面での基準を満たすために必要な社会的要素を満たすための知的労力を示す。製造にエネルギーが多く必要なことを分かりやすく例えるなら、目的物を完成させるために、必要となる多数の部品を設計書通りに正確かつ迅速に組み立てるには多大な労力を必要とすることは容易に想像できる通りである。また、目的物を効率的且つ安全に完成させることができる装置があるとしても、その装置自体を考案し、設計し、装置を組み立てるために多くの労力を必要とすることも容易に想像できる。
一方、人為的要素の少ない抽出手法は、人工的な上述した技術に比べるとエネルギーは要さないものの、天然界に存在する量には限りがあるため回収効率が低いという欠点がある。
低エネルギーで有用な物質を得ることが出来れば、社会に大きな進歩をもたらすことができる。低エネルギーとは、簡便に、低コストで、安全に、効率的に有用物質を得ることである。ましてや昨今、地球環境保護の観点からグリーンケミストリーの発展が提唱されているように、低エネルギーで有用な物質を効率的に得る技術開発は時代の要請事項でもある。
さて、プロポリスは有用な生理活性化合物を多く含有している素材であり、サプリメントや食品として日本で飲食されている。世界においては医薬品として用いられる国もある程で、一定の有用性は既に認められており、更なる効果効能の向上が期待されている。
プロポリスはセイヨウミツバチが巣内を病原菌やウイルスから守るため、巣の中に塗りこめている樹脂状の物質である。プロポリスの成分は巣の周りの樹木や薬草などの植物の分泌液や新芽、花粉、さらにはこれらを集めたセイヨウミツバチ自らが分泌した蜜蝋が含まれている。そのため、巣の周囲の環境やミツバチの種類により、プロポリスの原塊の成分も異なることが知られている(非特許文献1参照)
また、「ポリス(都市国家)のプロ(前面)」(を守る)というギリシャ語が「プロポリス」の語源となっているように、ヨーロッパにおいては古代ギリシャの時代よりこの物質の持つ抗菌力を様々な形で利用し、東ヨーロッパを中心に民間薬として用いられてきたことが報告されている。その後、プロポリスには抗菌性、鎮痛、抗炎症、抗酸化、免疫力増強、血液浄化などの作用が知られ、経口投与のほか塗布など外用する地域もある。これらの作用の有効成分は抗酸化活性の高いフラボノイドのほか、テルペノイド、多糖成分が明らかにされている。
さらに、前記の通り、生産地域によってプロポリスに含まれる成分に違いがあるように、生産地域によってプロポリスの有効成分の種類や含量も様々であり、その生理的効果も様々な特徴を持つことが報告されている。
例えば、抗酸化作用については、ポルトガル産プロポリスは地域により抗酸化活性が変動するという報告があり、ブラジル産プロポリスに関しては地域に加え、季節によっても抗酸化活性は変動することが報告されている。
また、中国産とブラジル産のプロポリスを脂溶性及び水溶性の溶媒にて調整したそれぞれのエキスは抗酸化活性及び成分比に大きな違いがあることが報告され、ブラジル産プロポリスに含まれるカフェ酸(caffeic acid)、アルテピリン(Artepillin)C及びドルパニン(drupanin)が抗酸化活性に優れているという報告や、プロポリスより単離した新規フラバノン化合物及び該フラバノン化合物が優れた抗酸化活性を有しているという報告もされている(非特許文献2,3,4,5、特許文献7参照)
また、抗菌活性については、プロポリスに含まれているArtepillin C及びバッカリン(baccharin)が抗菌作用に優れているという報告があり、またbaccharinにメチシリン耐性黄色ブドウ球菌に対する抗菌作用があることも報告されている。
(特許文献8、9参照)
また、抗癌作用については、プロポリスより単離したキナ酸誘導体に癌細胞に対する増殖抑制作用、細胞分化誘導作用、アポトーシス誘導作用を確認したという報告や、プロポリスに含まれるArtepillin Cには正常なアポトーシスに影響を与えずに異常細胞のアポトーシスを促進する効力があるという報告や、さらにはプロポリスに含まれるArtepillin Cに加え、drupanin及びbaccharinの抗癌作用も報告され、プロポリン(propolin)A及びpropolin Bについてはミトコンドリア経路を介してアポトーシスが誘導されているという報告もされている。(特許文献10、11、非特許文献6,7参照)
以上のように、プロポリスは生理活性を有する化合物を数多く含有しており、それらの効果は様々である。しかしながら、プロポリスに含まれるそれらの含有量はごく微量であり、工業的な規模で生産するのが難しい状況である。
そこで、プロポリスの生理活性効果や生理活性化合物含量を高める技術が開示されている。
例えば、抗菌活性の向上については、プロポリス又はプロポリス由来のケルセチンとα-グルコシル糖化物について糖転移酵素反応を行う方法が報告されている。
また、プロポリス中に含まれる特定のフラボノイド類にプレニル基転移酵素を作用させて新規プレニルフラボノイドを得る方法においては抗菌活性に加え、抗癌活性の向上も報告されている。
次いで、抗癌活性の向上については、プロポリスと紅豆杉を配合する方法、プロポリス中の有機酸をエステル化する方法、プロポリス又はプロポリス由来のArtepillin Cを担子菌類の菌糸体により発酵処理を行い、新規桂皮酸誘導体を得る方法が報告されている。
(特許文献12、13、14、15、16参照)
しかし、上記の酵素反応は工業レベルにおいては高コストであり、反応を制御することは困難である。また菌体培養法については培養後の目的物の精製・単離方法が複雑である。さらにその他の手法においては反応工程で化学物質を用いるから、最終産物を食品に応用するにはハードルが多い。よって、上記のような従来の手法は、簡便かつ安全にプロポリスの有効性を向上させる点では不十分なものである。
また、プロポリスに含まれる成分には、含有量が微量であるため、存在は確認されているもののその作用については不明な化合物も存在している。例えば、2,6−ジプレニル−4−ビニルフェノール(2,6-diprenyl-4-vinylphenol、以下、DPVPとも記載する)は、ブラジル産プロポリスより単離された、当時、新規化合物であり、その単離精製方法について報告されているが、作用についての詳細な実験事実及びそのデータは未だ報告されておらず、その生理活性作用については推測の域を出ておらず、不明であった(特許文献17、非特許文献8参照)。
特許第4205334号 特許第2976003号 特許第3965804号 特許第3782837号 特許第2743005号 特許第2926990号 特許第4268896号 特許第3481269号 特開平9−151131号公報 特開2006−213636号公報 特開平9−328425号公報 特許第3134233号公報 特開2009−46414号公報 特開2003−252773号公報 特開2007−53947号公報 特開2008−81号公報 特開2002−255883号公報
日経バイオ 最新用語辞典 第5版 Food and Chemical Toxicology 46 3482-3485 (2008) eCAM 177 1-9 2008 Boil. Pharm. Bull. 32(12) 1947-1951 (2009) BMC Complementry and Alternative Medicine 9:4 1-9 (2009) Boil. Pharm. Bull. 26(7) 1057-1059 (2003) Cancer Letters 245 218-231 (2007) Chem.Pharm.Bull.49(9) 1207-1209 (2001)
本発明者らはプロポリスに関する前記の状況を鑑みて、プロポリスに微量に含まれるものの、その作用については不明なDPVPに着目し、その製造方法を確立すべく鋭意検討した結果、プロポリスを特定の条件下で加熱処理することで、微量に存在しているDPVPの含有量が顕著に増大するという、これまで報告されていなかった全く新規な現象を初めて見出し、本発明を完成するに至った。
したがって、本発明は、プロポリスから、2,6−ジプレニル−4−ビニルフェノール(DPVP)を、効率よく、安全に生成する方法を提供することを目的とする
本発明の要旨は、
〔1〕プロポリスを含有する組成物を、金属塩の存在下において、前記組成物温度120℃以上に加熱処理することを特徴とする、2,6−ジプレニル−4−ビニルフェノールの生成方法、
〔2〕前記加熱処理における圧力条件が0.1MPa以上である、前記〔1〕記載の2,6−ジプレニル−4−ビニルフェノールの生成方法、
〔3〕前記金属塩が、マグネシウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、亜鉛塩、銅塩、ミネラルウォーターおよび植物由来の抽出物から選ばれる1種以上である、前記〔1〕または〔2〕記載の2,6−ジプレニル−4−ビニルフェノールの生成方法、
〔4〕前記植物由来の抽出物が、コーヒー豆由来の抽出物である前記〔3〕記載の2,6−ジプレニル−4−ビニルフェノールの生成方法、
〔5〕前記プロポリスを含有する組成物がプロポリス抽出物である、前記〔1〕〜〔4〕いずれか記載の2,6−ジプレニル−4−ビニルフェノールの生成方法、
〔6〕前記加熱処理がオートクレーブ処理である〔1〕〜〔5〕いずれか記載の2,6−ジプレニル−4−ビニルフェノールの生成方法
に関する。

本発明により、プロポリスを含有する組成物中のDPVPの含有量を顕著に高めることで、DPVPの単離収量を向上させることができる。これにより、本発明で得られるプロポリスを含有する組成物は、プロポリスの生理活性機能およびその効力を向上させることができる。また、DPVPを有効成分として含有する薬剤は、従来のプロポリスから単離された生理活性物質と比べて、抗菌活性、抗酸化活性、細胞増殖抑制活性および抗癌剤生理活性がいずれも高いことから、優れた抗菌剤、抗酸化剤、細胞増殖抑制剤および抗癌剤を提供することができる。
図1は、実施例1で行ったHPLCによる分析結果を示すグラフである。 図は上から、プロポリスエキス、コーヒー抽出物、プロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合物、プロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合物をそれぞれ加熱処理した反応後組成物についてのHPLC分析結果を示している。また、横軸は時間を示し、縦軸はピークの大きさを、「※」印はDPVPのピークをそれぞれ示している。なお、反応後組成物とは、プロポリスを含有する組成物を金属塩の存在下において加熱処理し、生成したDPVPを含む組成物を意味する。 図2は、実施例5の細胞増殖抑制試験より得られた結果を示すグラフである。 図2の縦軸は細胞生存率を、横軸は4種類の試料について示している。 図3は、実施例7の反応後組成物と精製後のDPVPのHPLCの分析結果を示すグラフである。上図は実施例2より得た反応後組成物、下図は精製後のDPVPである。 図4は、実施例8のDPPHラジカル消去法により得られた結果を示すグラフである。 図4について、縦軸はDPPHラジカル残存率であり、横軸はそれぞれの試料の濃度を示している。 図5は、実施例10の細胞増殖抑制試験より得られた結果を示すグラフである。 図5について、縦軸は細胞生存率を、横軸はそれぞれの試料について示している。 図6は、実施例11のDNAラダー(ladder)法より得られた電気泳動の結果を示す。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、プロポリスを含有する組成物を金属塩の存在下において前記組成物温度が120℃以上になるように加熱処理する工程を有する方法であり、本発明により、加熱処理前よりも、加熱処理物である反応後組成物中のDPVPの含有量を高めることができる。
上記のプロポリスを含有する組成物としては、プロポリス原塊やプロポリス原塊を公知の方法で抽出したプロポリス抽出物など、プロポリス成分を僅かでも含有している組成物であれば何ら制限されるものではないが、DPVPの生成効率の観点から、プロポリス原塊やプロポリス抽出物を高含有している組成物が好適に使用される。特に他素材の含有量が少ないためDPVPの生成反応が行いやすく、取り扱いやすいなどの観点から、プロポリス抽出物がより好適に使用される。
プロポリス抽出物を得るために用いられるプロポリス原塊としては、ブラジルを含む南アメリカ諸国、中国や日本などのアジア諸国、ヨーロッパ諸国、北アメリカ諸国、オセアニア諸国などのあらゆる産地のものが使用可能である。ブラジル産プロポリスを作るミツバチは在来種のセイヨウミツバチとアフリカミツバチの交配したミツバチであり、プロポリスの生産量はセイヨウミツバチよりも多いことが知られている。よって、上記の中でもブラジル産プロポリスを用いることは原材料の確保、ロット差の問題を考慮した場合、より好ましい。
また、プロポリス抽出物の種類としては、プロポリスの水抽出物、アルコール抽出物、含水アルコール抽出物、有機溶媒抽出物、超臨界抽出物、ミセル化抽出物などが挙げられる。以上の中からどの抽出物を用いてもよいが、中でも高い生理活性を有することが頻繁に報告されているアルコール抽出物や含水アルコール抽出物を使用することが好ましい。なお、アルコール抽出物や含水アルコール抽出物を調製するために用いられるアルコールとしては、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの主に低級アルコールが用いられるが、最終産物の食品への利用を考慮すると、上記の中でもエタノールを用いることがより好ましい。
さらに、プロポリスの抽出物からDPVPを含む成分や該成分を含む分画物を分離し、得られた物質を組成物として加熱処理に使用してもよい。分離の方法は特に限定はないが、例えば、プロポリスの抽出物をゲルろ過クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどの各種カラムクロマトグラフィーを適宜組み合わせることにより行うことが可能であり、その場合は常法に従って実施することができる。
次に、前記金属塩は、どのような形状でもよく、粉末状、インゴット状、粉末を焼結などした成形体などが挙げられる。また、金属塩としては、無機金属化合物、有機金属化合物、単核錯体、多核錯体、水素化合物やこれらの誘導体など、これらのうちどのカテゴリーに属するものを用いてもよい。
金属塩としては、酸性塩、塩基性塩、正塩のいずれでもよく、また、単塩、複塩、錯塩のいずれでもよい。さらに、金属塩は1種類であっても、複数種類の混合物であってもよい。金属塩の例としては、食品添加物として認可されているものが安全性の面で好ましい。例えば、食品に添加することが認められているマグネシウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、亜鉛塩、銅塩などが挙げられる。
また、前記金属塩の混合物としては、例えば、ミネラルプレミックス(田辺製薬株式会社 グルコン酸亜鉛、クエン酸鉄アンモニウム、乳酸カルシウム、グルコン酸銅、リン酸マグネシウムを主成分としたミネラル混合物)のように金属塩を数種類含む物質が挙げられる。また、複数の金属塩を含む混合物として、ミネラルウォーターも挙げることができる。さらに、金属塩として、適当な植物由来の抽出物を使用することができる。例えば、コーヒー豆は比較的多量の金属塩を含有し、よってその抽出エキスも比較的多量の金属塩を含有することから使用に適する。このような金属塩を比較的多量に含有する素材の抽出物を金属塩として用いることも可能である。以上のような金属塩を含むものであれば、その他どのようなものでも構わないが、反応後組成物の風味面で、インスタントコーヒーなどのコーヒー豆由来の抽出物や硬水などが好ましい。中でも、コーヒー豆由来の抽出物は、プロポリスが有する若干の不快臭をマスキングする効果にも優れており、この面からも特に効果的である。
前記プロポリスを含有する組成物中における金属塩の存在量としては、DPVPの生成反応が進む量であれば良く、特に制限はないが、効率面からはプロポリスの固形分値に対して、0.01〜60重量%程度用いられることが好ましい。特に加熱処理後の反応物中のDPVPの生成量を考慮すると、金属塩が1〜30重量%程度用いられることがより好ましい。
なお、プロポリス原塊を含有している組成物を用いる場合においては、必ずしも金属塩を添加する必要はない。そもそもプロポリス原塊は様々な成分の混合物であるから何らかの金属塩を含有している。よって、プロポリス原塊を用いた場合に金属塩を添加するか否かは、DPVPの生成反応の効率をもとに判断すればよい。
上記の生成反応時の加熱温度は限られたものではないが、温度はより高い方がDPVPの生成量が増大するため好ましい。このDPVPの生成量が増大するという現象は、化学反応時に加熱することによって分子の運動エネルギーも上昇し、活性化エネルギー以上のエネルギーを持つ分子が増え、反応分子同士の衝突回数が増えることでプロポリスに含まれる物質に結合しているDPVPが分離されるためと推察される。本発明においては、加熱処理により前記組成物温度を120℃以上、好ましくは130℃以上とすることで、反応時に生成されるDPVPが顕著に増加する。また、前記温度の上限は、生成したDPVPが熱による分解などで顕著に低減しない温度であればよいが、安全性や加工コストを考えると500℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましい。
化学反応や酵素反応を用いる従来法に比べると、加熱処理は、低エネルギーの方法であり、労力の点でも簡便な方法といえる。
生成反応時の加熱時間も加熱温度と同様に限られたものではなく、効率的に目的の反応が進行する時間条件とすればよい。特に、加熱時間は加熱温度との兼ね合いによるものであり、加熱温度に応じた加熱時間にすることが望ましい。例えば、130℃付近で加熱する場合は、5分〜60分の加熱時間が望ましい。
加熱時に必ずしも圧力を加える必要はないが、加圧させることは有効な手法であり反応効率面から適宜取り入れることができる。圧力条件も限られたものではなく、DPVPの生成反応が効率的に進む条件であればよい。圧力を上昇させることにより、分子に運動エネルギーをさらに付加することが可能であり、DPVPの生成効率を高めることができる。この観点から、加熱処理時には、0.1MPa以上の圧力を付加することが好ましい。また、作業上の安全性や、装置スペックに限界がある観点から、150MPa以下の圧力に調整することが好ましい。
加熱時の熱源については、前記組成物の温度を120℃以上に加熱できるものであれば特に制限はなく、適切な反応容器を直火で加温、マイクロウェーブで加温、スチームで加温、温水で加温、電熱線で加温など何でも良く、容器を湯浴やオイルバス中で加温しても良い。また反応温度を上昇させる上で、水やアルコールよりも高沸点の液体油脂等を溶媒に使用することも有効な手法である。オートクレーブで加圧加温することや、工業的にはレトルト殺菌機を本目的のために使用して加熱する手法は、反応効率を高めた条件を設定できたなら、その作業性の高さから実用的であり好ましい。
中でも、前記加熱処理は、処理予定のプロポリスおよび金属塩を含む組成物を加熱および加圧しやすい観点から、オートクレーブ処理することが好ましい。使用するオートクレーブ装置については、加熱処理時に前記温度および圧力の範囲に調整できるものであればよく、特に限定はない。
さらに、上記反応時のプロポリスおよび金属塩を含有する組成物のpH範囲は限られたものではなく、DPVPの生成反応が進むpHであればよい。
DPVPを生成する反応条件を最適化するためには、プロポリスを含有する組成物と金属塩それぞれが、どのような状態のものを利用するかに合わせて、随時、反応条件を工夫することで、DPVPの生成量をより増大させることが可能である。
例えば、プロポリスを含有する組成物として、プロポリスのエタノール抽出物を、金属塩として炭酸水素ナトリウムを使用する場合について以下に挙げる。
プロポリスのエタノール抽出物は、それに含まれているプロポリスの固形分を考慮し、希釈または濃縮する必要がある。生成反応時のプロポリスの濃度としては0.01〜20重量%程度が好ましい。実際には3〜10%程度がより反応効率が高く、より好ましい。
また、炭酸水素ナトリウムは水溶性であるため、固形のままプロポリスのエタノール抽出物に添加して反応させるよりも、水に溶かして添加する方が反応性は高く、より好ましい。実際には0.01〜3重量%の炭酸水素ナトリウム水溶液が好ましく、0.05〜0.3重量%程度の水溶液にして、両者を反応させるとさらに好ましい。
なお、本発明では、エタノール抽出物以外の組成物、炭酸水素ナトリウム以外の金属塩を適当に選択した場合でも、それぞれ反応効率を考慮して適当な条件を調整すればよい。
また、本発明において、加熱処理の際の温度、圧力そして時間を管理する方法は、様々な方法があり、どのような方法で制御を行ってもよい。
本発明の生成方法により得られるDPVPは、下記式〔1〕で示される構造を有する化合物である。
Figure 0005526948
式〔1〕の化合物は、IUPACの命名法では2,6−ジプレニル−4−ビニルフェノールと命名されており、2001年3月にブラジル産プロポリスより単離され、当時、新規化合物として報告され、前記特許文献17でも芳香に関連した効果が記載されているが、生理活性については詳細な実験事実及びそのデータは未だ報告されていない。
DPVPは、プロポリスを含有する組成物を金属塩の存在下で該組成物温度を120℃以上となるように熱処理することで、未処理時よりもその含有量を顕著に高めることが可能な化合物である。
反応後の組成物中にDPVPの含有量が増加したことは、公知の分析方法により確認できる。前述したように、自然産物であるプロポリスは、産地はもちろん、季節によっても成分が変動する天然物であるため、このような場合は原材料および反応後の組成物のロット差が生じることは容易に予測される。よって、反応物中のDPVPの生成について信頼性を確保するために、反応物中のDPVPの分析方法を確立しておくことは重要であると考えられる。例えば、反応後の固形物や溶液を一部採取し、溶媒抽出やカートリッジによる前処理の後に、ガスクロマトグラフィー、HPLC、NMR、質量分析などによる機器分析が挙げられる。得られたデータのピーク面積値や定量データをもとに正確に評価することが可能である。
本発明者らは、本発明において、DPVPが抗菌活性、抗酸化活性、細胞増殖抑制作用、抗癌活性に優れていることを初めて明らかにした。これらの効果を目的として、加熱処理後に得られた反応物は、その単独の形態はもちろん、液状、ペースト状および固形状の食品、化粧品および医薬品などの組成物としての形態を包含するものである。
例えば、食品の場合には、水、アルコール、澱粉室、蛋白質、繊維質、糖質、脂質、ビタミン、ミネラル、着香料、着色料、甘味料、調味料、安定剤、防腐剤のような食品に通常配合される原料または素材との組成物として、化粧品の場合には、主剤、基材、界面活性剤、起泡剤、湿潤剤、増粘剤、透明剤、着香料、着色料、安定剤、防腐剤、殺菌剤などとの組成物として、また医薬品の場合には、担体、賦形剤、希釈剤、安定剤、さらには、必要に応じて、他の生理活性物質の組成物としての形態も包含する。
本発明における加熱処理後の反応物、すなわちDPVPの含有量を高めた組成物は、このまま混合物の状態で使用することができ、また該組成物からDPVPを濃縮あるいは精製あるいは単離して、上記のような食品、化粧品または医薬品の形態にすることも可能である。用途やコストに応じて、混合物を使用するか精製品または単離品を得るか判断すればよい。
DPVPの濃縮、精製は、公知の方法で実施可能である。クロロホルムや酢酸エチルなどの溶媒抽出法や炭酸ガスによる超臨界抽出法などで抽出して濃縮できる。カラムクロマトグラフィーを利用して濃縮や精製を施すことも可能である。再結晶法や限外ろ過膜などの膜処理法も適用可能である。精製されたDPVP溶液を減圧乾燥や凍結乾燥させ、DPVPの純品を得ることは可能である。
DPVPの濃縮、精製、または単離を行う手法を選択する際は、特に限定されるものではないが、手法手順の中に公知の化学的合成法を含むものでもよいが、化学的手法を含まないものを選択することも可能である。その手法は操作が簡便であり、コストも安く、安全である。また、このような手法により得られた精製物またはDPVPは、医薬品はもちろん、食品へ添加することが可能であることから、組成物から精製または単離する方法はより好ましい。
本発明の方法により得たDPVPを含む組成物は、原料であるプロポリスや添加する金属塩が食品でも使用されていることから、安全性が高いものであり、処理手段も簡便であるため低加工コストで有用なDPVPを含有する組成物やDPVPを広く市場に供給できる。昨今の市場は、より高い安全性、有効性、低価格を要求しているが、これらの要求に応えることが出来るものである。
後述の実施例に記載しているように本発明者らによる検討の結果から、本発明の生成方法で得られた反応後組成物やそれより単離したDPVPは、抗菌作用、抗酸化作用、細胞増殖抑制作用、抗癌作用などに非常に優れているというデータが得られている。したがって、本発明は、DPVPを有効成分として含有する抗菌剤、抗酸化剤、細胞増殖抑制剤および抗癌剤を提供する。特に、DPVPの生理活性分野を考慮すると、生活習慣病などのように身近であり、かつ需要のある分野において、DPVPを含有する組成物を用いることが好ましい。
本発明で得られた組成物やDPVPが持つさらなる効果効能は、上記データより類推できる範囲で使用できる。
DPVPを医薬用途で使用する場合、例えば、DPVPを含む組成物100重量%中、有効成分であるDPVPの含有量は、1×10-4〜95重量%程度の範囲を挙げることができる。また、DPVPの摂取量は、所望の改善、治療又は予防効果が得られるような量であれば特に制限されず、通常その態様、患者の年齢、性別、体質その他の条件、疾患の種類並びにその程度等に応じて適宜選択される。通常、有効成分であるDPVPを、1日当たり約1×10-3〜85mg/kg程度とするのがよく、これを1日に1〜4回に分けて摂取することができる。
本発明で得られる反応後組成物は、上記のような生理活性を有するDPVPを有効成分として含有していることから、機能性食品、健康食品、健康志向食品等に使用することができる。食品としては、例えば、飲料、ゼリー、菓子など、どのような形態でもよく、菓子類の中でも、その容量などから保存や携帯に優れた、ハードキャンディ、ソフトキャンディ、グミキャンディ、タブレットなどが挙げられるが、特に限定はない。また、これらの食品を組み合わせて組成物として使用することも可能である。
また、前記反応後組成物またはDPVPを医薬品または食品として、経口から投与または摂取する場合には、常法に基づいて、錠剤、丸剤、カプセル剤、細粒剤、顆粒剤等としてもよい。錠剤、丸剤、顆粒剤、顆粒を含有するカプセル剤の顆粒は、必要により、ショ糖などの糖類、マルチトールなどの糖アルコールで糖衣を施したり、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどでコーティングを施したりすることもできる。または胃溶性もしくは腸溶性物質のフィルムで被覆してもよい。また、製剤の溶解性を向上させるために、公知の可溶化処理を施すこともできる。
さらに、精製したDPVPであれば常法に基づいて、注射剤、点滴剤に配合して使用してもよい。
前記の医薬品または食品は、安全性に優れたものであるので、ヒトに対してだけでなく、例えば、非ヒト動物、例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなどの哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類などの治療剤または飼料に配合してもよい。
<DPVPの生成方法と反応後組成物の生理活性>
天然高分子化合物を含む組成物であるプロポリスエキスと、金属塩の混合物であるコーヒー抽出物との混合物を加熱処理することにより、反応後組成物中のDPVPの含有量を増加させ、また反応後組成物の生理活性も上昇させることができる。以下の実施例1〜5では、プロポリスエキスとコーヒー抽出物との加熱処理方法、得られた反応後組成物の特徴的な分析結果、さらに、反応後組成物の生理活性について抗菌作用の2試験と、抗癌評価系の一つである細胞増殖抑制作用試験について示す。
(実施例1:プロポリスエキスとコーヒー抽出物(インスタントコーヒー)の加熱処理と反応後組成物のHPLC分析)
プロポリスエキス(ブラジル産プロポリス原塊のエタノール抽出物。固形分13%。以下実施例における「プロポリスエキス」はこれを用いる。)1.0g、インスタントコーヒー(味の素ゼネラルフーヅ株式会社「Blendy」(登録商標)。以下実施例における「インスタントコーヒー」はこれを用いる。)0.1g、水5mlを混合し(混合物のpHは4.7)、オートクレーブ(SANYO LABO AUTOCLAVE)にて130℃、20分間、0.2MPaにて加熱した。得られた反応後組成物をメタノールにて50mlにメスアップし、このうちの10μlをHPLCにより分析した。
HPLC分析は以下条件にて行った。
カラム:逆相用カラム「Develosil(登録商標)C−30−UG−5」(4.6mmi.d.×250mm)

移動相:A・・・H2O(0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)), B・・・アセトニトリル(0.1%TFA)
流速:1ml/min
注入:10μl
検出:254nm
勾配(容量%):80%A/20%Bから20%A/80%Bまで30分間、20%A/80%Bから100%Bまで5分間、100%Bで10分間(全て直線)
得られたクロマトグラムを図1に示す。
上から、プロポリスエキス、コーヒー抽出物、プロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合物、プロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合物を加熱処理した反応後組成物についてのHPLC分析結果である。プロポリスエキスとコーヒー抽出物を加熱処理した反応後組成物は加熱処理前のプロポリスエキスおよび加熱処理前のプロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合物と比較し、HPLCプロフィールが変化していた。特に「※」印で示したピークであるDPVPについては、加熱処理前に比べて、反応後組成物中の含有量は10倍程度に増加していることが確認された。
(実施例2:プロポリスエキスとコーヒー抽出物の加熱処理2)
プロポリスエキス10gと10%(w/v)のインスタントコーヒー水溶液10mlを混合し(混合物のpH5.1)、オートクレーブ(SANYO LABO AUTOCLAVE)にて130℃、20分間、0.2MPaで加熱した。得られた反応後組成物はさらに凍結乾燥処理を行い、黄褐色の粉体を得た。これを以下実験に使用した。
実施例2で得た反応後組成物について、抗菌作用の有無の確認を目的とし、ペーパーディスク法による検定を行った。ペーパーディスク法は試験物質の各阻止円を作成することにより、試験物質の抗菌活性の有無を簡易に調べることのできる公知の手法である。
(実施例3:ペーパーディスク法による抗菌作用の検定)
菌体は独立法人製品評価技術基盤機構NBRCより購入した枯草菌(Bacillus subtilis NBRC 3134)およびブドウ球菌(Staphylococcus aureus subsp. aureus NBRC 12732)を用いて行った。菌体の立ち上げ、培養方法はNBRC指定の培養液であるNo.702およびNo.802を調整、使用し、培養温度もNBRC指定の温度に従い、それぞれ30℃、37℃にて行った。
ペーパーディスク法の実験方法((寒天)培養液、培養方法、試験準備、試験方法)はBSAC標準化ディスク感受性試験法(第8版)(以下、BSAC standardized disc susceptibility testing method)に従い行った。
試料の種類は、実施例2で得たプロポリスエキスとコーヒー抽出物の反応後組成物に加え、プロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合物(加熱処理なし)、プロポリスエキス(加熱処理なし)をそれぞれ、プロポリスエキス含有量が150ppmおよび100ppmとなるように80%エタノールに溶解し調整した。また、ポジティブコントロールは医薬品として使用される抗菌成分のクロラムフェニコール(Chloramphenicol Wako 036−10571)を80%エタノールに溶解し調整し、ネガティブコントロールは80%エタノールを用いた。
このように調整した試料をペーパーディスクに浸し、充分に乾燥させた後に、枯草菌およびブドウ球菌を播種した寒天培地の上に配置し、培養を行い、24時間後、阻止円の測定を行った。
得られた結果を表1−1、表1−2に示す。
Figure 0005526948
Figure 0005526948
表1−1は、以下実験で用いる試料の割り振りを示している。
試料Aはプロポリスエキス、試料Bはプロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合、試料Cはプロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合物を加熱処理させ、得られた反応後組成物を示す。これら試料の名称は以下実験にも同試料として使用する。
表1−2は、実施例3のペーパーディスク法より得られた結果である。
表1−2について、ペーパーディスク法より得られた各試料の抗菌活性の有無を示した。(+)の表記は阻止円が形成されたことを示し、その数は阻止円の大きさを示す。(+)は直径1cmまで、(++)は直径1cm〜2cmまで、(+++)は直径2cm以上であることを示す。
80%エタノールにて阻止円が形成されず、またクロラムフェニコールの阻止円の大きさが充分であったことはBSAC standardized disc susceptibility testing methodに記載されているデータに相当していることから、本実施例の信頼性が示されている。
本結果より、プロポリスエキス、プロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合物、その加熱処理後の組成物は全て、充分な大きさの阻止円を得ることができ、よって、充分な抗菌活性を有することが示された。
このような結果から、さらに詳細な試料それぞれの抗菌力を調べるために、寒天希釈法による抗菌活性の試験を行った。寒天希釈法とは、寒天培地内にあらかじめ試料を懸濁しておき、検定菌の育成の阻止能力を評価する実験法である。
(実施例4: 寒天希釈法による抗菌活性の検定)
菌体は、実施例3と同じ枯草菌を用いて行い、実験方法はBSAC standardized disc susceptibility testing methodに従い行った。
試料調整については、(実施例2)より得られた反応後組成物の凍結乾燥品をDMSOに溶解し、これを200倍希釈となるように寒天培養液に懸濁し、寒天培地を作製した。試料の種類は、実施例2より得られるプロポリスエキスとコーヒー抽出物の反応後組成物に加え、プロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合物(加熱処理なし)、プロポリスエキス(加熱処理なし)、さらにポジティブコントロールとしてクロラムフェニコール、ネガティブコントロールとしてDMSOを用いた。
菌体はそれぞれ血球計算版を用いて細胞数を測定し、1×106cells/mlに調整し、各寒天培地に5μl/スポットにて28スポットを作製した。これを培養し、24時間後、菌体の生育が発生したスポット数をカウントした。
得られた結果を表2に示す。
Figure 0005526948
表2は、実施例4の寒天希釈法より得られた結果である。
数値は各濃度において枯草菌が発生したスポット数である。DMSOにおいて全28スポットが発生し、またクロラムフェニコールのスポット発生抑制濃度はBSAC standardized disc susceptibility testing methodに記載されているデータに相当していることから、本実施例の信頼性が示されている。
それぞれの試料が100ppmにて行った試験結果について比較すると、反応後組成物(試料C)は、加熱処理前のプロポリスエキス(試料A)および加熱処理前のプロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合物(試料B)よりも、スポット数が少なく、より強い抗菌作用を有しているという結果を得た。つまり、プロポリスエキスとコーヒー抽出物を加熱処理することにより得られた反応後組成物の抗菌力は、加熱処理前のエキスと比較し、高められたことが明らかとなった。
したがって、前記反応後組成物のようにDPVPを有効成分として含有する組成物は、抗菌剤として使用できることがわかる。
次に癌細胞に対する反応後組成物の効果を見るため、HL−60細胞(Human promyelocytic leokemiacells:ヒト骨髄球性白血病細胞)を用いた癌細胞増殖抑制作用について試験した。
(実施例5:癌細胞増殖抑制作用)
細胞の培養としては、高栄養培地RPMI−1690(SIGMA R0883)に、4mMグルタミン(L−Glutamine SIGMA G8540−100G)、10% FBS(Foetal Bovine Serum Biological industries 04−001−1A)を添加したものを培養液とし、継代培養を行った。試験は細胞培養用96ウェルプレート(corning 3595)を用いた。試験当日にHL−60細胞を1.5×105cell/mlとなるように細胞数を調整し、96ウェルプレートに、1ウェルあたり100μlずつ播種した。
試料調整については、実施例2より得られたものをDMSO(ジメチルスルホキシド、Wako 046−21981)にて20mg/mlに溶解し、これを200倍希釈(実験系内は100μg/ml)となるようにHL−60細胞の培養液に懸濁し、試験を開始した。試料の種類は、実施例2より得られるプロポリスエキスとコーヒー抽出物の反応後組成物に加え、プロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合物(加熱処理なし)、プロポリスエキス(加熱処理なし)、さらに、ネガティブコントロールとしてDMSOを用いた。
細胞増殖抑制効果の検出はcell counting kit−8(DOJINDO 347−07621)を用いて検出を行った。試験開始より24時間後、各ウェルにcell counting kit−8の検出液を10μl添加し、よく攪拌した。その後遮光反応を行い、プレートリーダー(BIO−RAD Model 680)を用いて450nmにて吸光度の測定を行い、得られたデータを処理した。
得られた結果を図2に示す。
図2について、縦軸は細胞生存率を、横軸はそれぞれの試料について示している。また、細胞生存率とは、DMSOを添加した培養液にて処理を受けた細胞の生存細胞数を100%とし、それぞれの試料100μg/mlにおける細胞の生存細胞数を相対値として算出した値である。
プロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合物を加熱処理した反応後組成物(図中、C)は、加熱処理前のプロポリスエキス(図中、A)および加熱処理前のプロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合物(図中、B)よりも、細胞生存率が低く、HL−60細胞の増殖を抑制する効果がより高いことが示唆される。
また、これより得られた結果について、Tukey HSD(honestly significant difference)検定を行った結果、それらの有意差はAC間で0.006、BC間で0.035であり、本データは充分な有意差を得ている。
<生理活性化合物DPVPの単離とその生理活性>
実施例1〜5の結果から、加熱処理により、反応後組成物中に特にDPVPの含有量が増加していることが示され、また反応後組成物の生理活性は加熱処理前の物と比較し、さらに優れた効力を有することが示された。したがって、特に含量の増加した化合物としてDPVPを精製し、その生理活性を検証した。以下、実施例6以降にて、反応後組成物よりDPVPを精製する手法、およびDPVPの生理活性(抗酸化作用、抗菌作用、抗癌作用)について示す。
(実施例6:DPVPの精製方法)
実施例2で得られた反応後組成物について、以下の条件にて分取カラムにて分画精製を行った。
カラム:Develosil(登録商標) C−30(20mmi.d.×250mm)
移動相:A・・・H2O, B・・・アセトニトリル
流速:10ml/min
注入:1ml
検出:254nm (UV)
勾配(容量%):50%A/50%Bから20%A/80%Bまで30分間、20%A/80%Bから100%Bまで5分間、100%Bで10分間(全て直線)
(実施例7:DPVPの分析方法)
実施例6より得られた精製物について、実施例1と同様の手法により、HPLC分析を行い、高純度のDPVPが得られている事を確認した。このことはNMR分析でも確認された。この結果を図3に示す。なお、図3の上図は、実施例2より得た反応後組成物、下図は精製後のDPVPである。HPLC結果より、「※」印で示されたDPVPが単離されていることが示されている。
反応後において、プロポリスエキス10g(固形分は13.0%)あたりからは、DPVPは40.8mg回収された。これはプロポリス1.3gあたりDPVP40.8mg回収したことに相当する(プロポリス固形物1gからは、DPVP31.3mg回収されたことになる)。
一方、これまで報告されているDPVPの精製では、例えば、特許文献17において、プロポリス原塊550gについて、水蒸気蒸留処理を120℃、5時間行うことにより、得た精油からDPVPを27mg回収している。これはプロポリス固形分1gから、DPVP0.049mg回収されたことになる。
したがって、本発明の方法では、従来法に比べてプロポリスから得られるDPVPの収量は、600倍以上も多いものである。この結果から、本発明の方法は、従来、工業的な生産が困難であったDPVPの生成を可能にしていることがわかる。
なお、水蒸気蒸留処理は、反応系で使用される水系溶媒の加熱可能な温度は100℃程度が限界であることから、DPVPを含む組成物の加熱温度は実質的には100℃程度になっている。また、プロポリス原塊を加熱溶媒により抽出処理をする方法も知られているが、90℃までの温度に溶媒を加熱して処理を行うことが一般的である。このように従来法では、プロポリスを含む組成物が加熱される温度は100℃以下であったことから、プロポリスに予め存在している極めて微量のDPVPを精製するに留まっていたと考えられる。
(実施例8:DPVPの抗酸化作用)
上記のように精製されたDPVPを用いて、抗酸化効果の試験を行った。試験はDPPH(1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル:1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)ラジカル消去法を採用し行った。以下手法について挙げる。
DPPHラジカル消去法の主な実験方法については、「食品機能研究法」(株式会社光琳発行、篠原和毅、鈴木建夫、上野川修一編著、2000年)に記載の手法を参考に試験を進めた。試料はArtepillin C(Wako 016−19131)および(実施例6)より得たDPVP、α−トコフェロール(Wako 209−01791)を75%EtOHにて溶解し、各濃度にて調整を行った。また、DPPH反応液については400μM DPPH(SIGMA D9132)、50mM MES(2−モルホノエタンスルホン酸(2-Morpholinoethanesulphonic acid) DOJINDO 345−01625)、75%EtOHとなるように調整した。反応は96ウェルプレート(アズワン 1−6776−03)にて行い、試料とDPPH反応液を100μlずつ入れ、混合、遮光静置を20分間行い、プレートリーダーにて520nmにおける各吸光度を測定した。
得られた結果を図4および表3に示す。
Artepillin Cはプロポリスに含まれる生理活性化合物であり、抗酸化作用、抗菌作用、抗癌作用等の多様な生理活性を示すことがすでに報告されている。図4から分かるように、DPVPはArtepillin Cよりラジカル残存率が低く、優れた抗酸化作用を有している。また、表3に示すようにDPVPのIC50(50%阻害濃度:half maximal inhibitory concentration)100μMは、Artepillin Cの180μMよりも低かった。すなわち、DPVPはArtepillin Cよりも抗酸化能力が高いことが明らかとなった。なお、DPPHラジカル残存率とは、試料に75%EtOHを用いた場合に検出されたDPPHラジカル残存量を100%とし、それぞれの試料におけるDPPHラジカル残存量を相対値として算出した値である。
また、表3について、それぞれの値はDPPHラジカル消去法より得られたIC50を示す値である。IC50とはDPPHラジカルを50%消去する能力を有するとみなされる、各試料の濃度である。
Figure 0005526948
以上、図4および表3の結果からDPVPはArtepillin CよりもIC50が低く、よって、抗酸化能力がより優れていることが示唆された。したがって、DPVPを有効成分とする抗酸化剤は従来のものよりも顕著な作用を奏すると考えられる。
(実施例9:DPVPの抗菌作用)
次に、DPVPの抗菌作用について寒天希釈法による抗菌活性試験により評価した。試料はArtepillin Cおよび実施例6より得たDPVPを用い、実験方法については実施例4と同様に、菌体は枯草菌について行った。なお、各試料の濃度は、表4に示すように設定した。
得られた結果を表4に示す。
DPVPおよびArtepillin Cをそれぞれ250mMにて得られた結果において、Artepillin Cでは28スポット全てにおいてコロニーが確認されたのに対して、DPVPではスポットは全く発生せず、つまり、枯草菌に対する抗菌作用を有し、DPVPはArtepillin Cよりも強い抗菌力を有することが示唆された。したがって、DPVPを有効成分とする抗菌剤は従来のものよりも顕著な作用を奏すると考えられる。
Figure 0005526948
(実施例10:DPVPの抗癌作用)
次にDPVPの抗癌作用について検討するため、cell counting kit−8による癌細胞増殖抑制作用について評価した。試料はArtepillin Cおよび(実施例6)より得たDPVPを用い、細胞はHL−60を用い、実験方法については(実施例5)と同様に実施した。
得られた結果を図5に示す。
図5より、DPVPはArtepillin Cよりも、細胞生存率が低く、HL−60細胞の増殖を抑制する効果がより高いことが示唆される。
すなわち、DPVPの癌細胞増殖抑制効果はArtepillin Cよりも強力であることが示された。したがって、DPVPを有効成分とする細胞増殖抑制剤は、従来のものよりも顕著な作用を奏すると考えられる。
なお、細胞生存率とは、DMSOを添加した培養液にて処理を受けた細胞の生存細胞数を100%とし、それぞれの試料における細胞の生存細胞数を相対値として算出した値である。
この癌細胞増殖抑制作用の検出を行ったcell counting kit−8は生細胞数に相当する値を検出する原理が特徴である。DPVPが癌細胞増殖を抑制する効力を有し、またその効果が濃度依存性であること、Artepillin Cには抗癌作用が報告されていることから、DPVPについてさらに詳細に抗癌作用を評価した。さらなる抗癌作用の評価として、DNAラダー法によるアポトーシスの検出を指標に検討した。
(実施例11:DPVPの抗癌作用)
細胞はHL−60を用いて実施し、細胞の継代培養は実施例5と同様に行った。試験当日にHL−60細胞を5.0×105cells/mlとなるように96ウェルプレートに播種し、Artepillin Cおよび(実施例6)より得たDPVPをDMSOにて調整、目的濃度となるように200倍希釈にて添加した。24時間培養を行い、細胞を回収し、PBS(Dulbecco’s P
BS(−) Wako 041−20211)にて細胞を洗い、Quick Apoptotic DNA Ladder Detection Kit(BioVision Research Products K120−50)を用いて細胞からDNAの回収を行った。得られた試料について、1%アガロースゲル(Takara agarose L03 5003)を用いて25Vにて4時間電気泳動を行い、染色反応はエチジウムブロマイド(Ethidium Bromide Solution BIO−RAD 161−0433)を用いて行った。
得られた結果を図6に示す。
図6は、各試料のDNA抽出物の電気泳動写真のイメージであり、電流は上から下に流されている。レーン左より、通常培養細胞(第1レーン)、DMSO処理(第2レーン)、DPVP100μM処理(第3レーン)、Artepillin C 100μM処理(第4レーン)、Artepillin C 300μM処理(第5レーン)、マーカーλ/Pst(第6レーン)を流した。通常培養細胞及びDMSO処理細胞ではDNA ladderが確認されない点から、本実験の信頼性が確認できる。
また、DPVPを100μMにて処理した細胞にてDNA ladderが確認できるのに対して、Artepillin Cでは同濃度の100μMではDNA ladderが確認されず、300μMにて確認することができた。これより、DPVPはアポトーシスを誘導する効果を有し、その効力はArtepillin Cよりも高いことが示された。
したがって、DPVPを有効成分とする抗癌剤は、従来のものよりも顕著な作用を奏すると考えられる。
<本反応の最適な条件の検討>
次に、様々な優れた生理活性を有するDPVPを効率的に増加させるためのより詳細な条件を検討した。
(実施例12:加熱温度の影響)
加熱時間を20分と固定し、プロポリスエキス1.0g、金属塩としてリン酸マグネシウム7.8mg、水5mlを混合し、オートクレーブにて加熱温度を100℃,110℃,120℃,130℃の各条件下で反応を進行させた。得られた反応後組成物中のDPVP量を、実施例1と同様の手法により、HPLC分析を行い、DPVPについて測定した。
得られた結果を表5に示す。表5は、加熱温度によるDPVP生成量の比較結果を示しており、面積値はHPLCによる分析より得られたDPVPのピークの面積の数値を示したものである。加熱温度が高温であるほど、DPVPのピーク面積は大きくなることが示されている。
この結果から、加熱温度が高いほど、DPVPは多く生成されており、120℃の加熱時間では、加熱していない対照品に対してDPVPは10倍以上の濃度に上昇していることが確認された。従って、加熱温度は120℃以上が好ましいことが明らかとなった。
Figure 0005526948
(実施例13:加熱時間の影響)
次に、プロポリスエキス1.0g、金属塩としてインスタントコーヒー0.1g、水5mlを混合し、オートクレーブにて加熱温度を130℃と固定し、加熱時間10分、20分、30分の各条件下で反応を進行させた。得られた反応後組成物中のDPVP量を、実施例1と同様の手法により、HPLC分析を行い、DPVPについて測定した。
得られた結果を表6に示す。表6は加熱時間によるDPVPの生成量の比較結果を示しており、面積値の計算は表5と同様にデータ処理を行い、示している。加熱時間が長くなるほど、DPVPのピーク面積は大きくなることが示されている。特に、10分の加熱時間では、加熱していない対照品に対してDPVPは10倍以上の濃度に上昇していることが確認された。従って、加熱時間は10分以上が好ましいことが明らかとなった。
Figure 0005526948
(実施例14:加熱時の組成による影響)
次に、オートクレーブによる加熱条件を加熱温度130℃、加熱時間20分と固定し、反応に供する組成物をプロポリスエキス1.0g、金属塩としてインスタントコーヒー0.1gをベースとして固定し、添加する水の量をそれぞれ1ml,2ml,3ml,4ml,5mlとし、各条件下で反応を進行させた。得られた反応後組成物中のDPVP量を、実施例1と同様の手法により、HPLC分析を行い、DPVPについて測定した。
得られた結果を表7に示す。表7は、加熱処理時の組成によるDPVPの生成量の比較結果である。面積値の計算は表5と同様にデータ処理を行い、示している。添加する水の量が多いほど、DPVPのピーク面積の大きさは小さくなることが示されている。特に、水1ml添加の組成物では、水5ml添加の組成物に対してDPVPは1.7倍程度の濃度まで上昇していることが確認された。反応時の組成物としては、特に制限はないものの、溶液濃度は濃いほどDPVPを生成する反応の効率が高いことが伺えた。
Figure 0005526948
(実施例15:加熱時の組成物のpHによる影響)
次に、オートクレーブによる加熱条件を加熱温度130℃、加熱時間20分と固定し、反応に供する組成液をプロポリスエキス2.0g、添加する水の量9mlをベースとして固定し、金属塩の供給源として及びpH調整のために水酸化ナトリウムを用いて、反応開始前の組成物のpHをそれぞれ5,6,7,8,9,10,11,12,13とし各条件下で反応を進行させた。得られた反応後組成物中のDPVP量を、実施例1と同様の手法により、HPLC分析を行い、DPVPについて測定した。
得られた結果を表8に示す。表8は組成物のpHによるDPVPの生成量の比較結果を示している。面積値の計算は表5と同様にデータ処理を行い、示している。
その結果、DPVPの生成量はpHにより異なり、好ましい組成液pHが存在することが伺えた。具体的には、組成液のpHとしては7〜11においてDPVPのピーク面積は大きかった。DPVPを生成する効率から考えて、金属塩として水酸化ナトリウムを使用する場合の反応前の組成液のpHは7〜11が好ましいと考えられた。ただし、金属塩として炭酸水素ナトリウムを使用する場合は、反応が進行中に組成液のpHは変化すると考えられ、一概に反応前の組成物のpHの最適条件を示すことはできない。さらには、前述の実施例1、2、13で金属塩として反応に用いた、コーヒー豆由来の抽出物などの金属塩の混合物も同様に、反応の進行中に、混合物中に含まれる物質が与える影響は様々であり、その反応は複雑であると考えられる。すなわち添加する金属塩の種類により反応前組成液の最適なpHは異なると考えられる。
Figure 0005526948
(実施例16:金属塩の種類による影響)
次に、オートクレーブによる加熱条件を加熱温度130℃、加熱時間20分と固定し、反応に供する組成物をプロポリスエキス1.0g、添加する水の量5mlをベースとして固定し、各種金属塩および酸によるDPVP量の増加効果を検討した。その結果を表9に示した。
表9の結果より、単独の金属塩としては、マグネシウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、銅塩、亜鉛塩のいずれにも、DPVP量の増加効果が認められた。また、金属塩の混合物としてはインスタントコーヒーとミネラルウォーターにDPVP量の増加効果が認められた。
上記の金属塩は、いずれも食品に添加できるものから適当に選択したものであり、他の金属塩でも類似のDPVP量の増加効果を有すると考えられる。
また、表9中の金属塩の中で、マグネシウム塩ではリン酸マグネシウム、カルシウム塩では、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム、ナトリウム塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、カリウム塩としては、炭酸カリウム、リン酸水素2カリウム、亜鉛塩としてはグルコン酸亜鉛、銅塩としてはグルコン酸銅、鉄塩としてはクエン酸鉄アンモニウム、金属塩の混合物としてはミネラルプレミックス、硬水、インスタントコーヒーが優れた添加効果を奏していた。
また、得られたDPVPを含む反応後組成物のうち、硬水とインスタントコーヒーを用いたものについては、風味の点でも好ましいものであり、特にインスタントコーヒーを用いたものはDPVPのマスキング効果が最も認められた。
なお、金属カチオンと塩を形成していない乳酸、グルタミン酸、グルコン酸などの酸類では、その効果は非常に弱いものであり、金属塩としての存在が必要であることが明らかとなった。
Figure 0005526948

Claims (6)

  1. プロポリスを含有する組成物を、金属塩の存在下において、前記組成物温度120℃以上に加熱処理することを特徴とする、2,6−ジプレニル−4−ビニルフェノールの生成方法。
  2. 前記加熱処理における圧力条件が0.1MPa以上である、請求項1記載の2,6−ジプレニル−4−ビニルフェノールの生成方法。
  3. 前記金属塩が、マグネシウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、亜鉛塩、銅塩、ミネラルウォーターおよび植物由来の抽出物から選ばれる1種以上である、請求項1または2記載の2,6−ジプレニル−4−ビニルフェノールの生成方法。
  4. 前記植物由来の抽出物が、コーヒー豆由来の抽出物である請求項3記載の2,6−ジプレニル−4−ビニルフェノールの生成方法。
  5. 前記プロポリスを含有する組成物がプロポリス抽出物である、請求項1〜4いずれか記載の2,6−ジプレニル−4−ビニルフェノールの生成方法。
  6. 前記加熱処理がオートクレーブ処理である請求項1〜5いずれか記載の2,6−ジプレニル−4−ビニルフェノールの生成方法
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