JP6107328B2 - 抗炎症作用を増強させたプロポリス・ケルセチン含有組成物の製造方法 - Google Patents

抗炎症作用を増強させたプロポリス・ケルセチン含有組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、プロポリスとケルセチンを金属塩存在下で加熱処理したまったく新しい加熱処理物を有効成分とする新しい抗炎症剤組成物の製造方法に関するものである。また、本発明は、前記抗炎症剤組成物を含む食品、医薬品または医薬部外品の製造方法に関するものである。
プロポリスはセイヨウミツバチが巣内を病原菌やウイルスから守るため、巣の中に塗りこめている樹脂状の物質である。プロポリスの成分は巣の周りの樹木や薬草などの植物の分泌液や新芽、花粉、さらにはこれらを集めたセイヨウミツバチ自らが分泌した蜜蝋が含まれている。
プロポリスには抗菌性、鎮痛、抗炎症、抗酸化、免疫力増強、血液浄化などの作用が知られ、経口投与のほか塗布など外用する地域もある。これらの作用の有効成分はフラボノイドのほか、テルペノイド、多糖成分が明らかにされている。
たとえば、臨床研究においてプロポリス300mg/日以上摂取することにより花粉症の症状が有意に緩和されることが報告されている(非特許文献1)。様々な薬理効果が期待されるプロポリスであるが、独特な苦味や辛味があり、使用において大きな弊害がある。非特許文献1で有効性が示されている量を日常的に摂取することは困難である場合がほとんどである。このような場合、プロポリスの機能性を向上させることで摂取量を低減させる方法が考えられる。
公知の方法としては、プロポリスの有効成分として知られるアルテピリンCやドルパニンなどをカラムクロマトグラフィー等の方法を用いて濃縮する方法なども考えられるが、濃縮工程のコストが高いこと、溶媒等の法規制問題などから濃縮物の用途は限られてしまう。
同様の効果を有する2つ以上の有効成分を混合する方法もある。たとえば、蜂の子、プロポリス、ローヤルゼリーを混合した抗酸化剤(特許文献1)などがある。この先行技術では3種の成分を混合することでプロポリスの代表的な機能性の1つである抗酸化作用を相乗的に増加させるものである。
また、プロポリス以外にも抗炎症作用を有する成分としてケルセチンも知られてはいるが、日常的に摂取することを目的とするにはプロポリスと同様にケルセチンの機能性を向上させることが必要である。
しかしながら、プロポリスやケルセチンなどの抗炎症作用をさらに増強させる技術については今まで知られていなかった。
特開2010−051313号公報
応用薬理,76,p71−77(2009)
本発明は、プロポリスよりも優れた抗炎症作用を有する優れた抗炎症剤組成物の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記抗炎症剤組成物を含むマクロファージのTNF−α遺伝子発現抑制剤、食品、医薬品および医薬部外品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、プロポリスやケルセチンの高機能化のための検討を種々行ったところ、プロポリスとケルセチンとを金属塩存在下で加熱処理することで、プロポリス単独やプロポリスとケルセチンを混合したものよりも高い抗炎症作用を発揮することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の要旨は、
〔1〕プロポリスの水抽出物、アルコール抽出物または含水アルコール抽出物とケルセチンとを混合してケルセチンを総固形重量中1重量%〜70重量%含有するプロポリス・ケルセチン混合組成物を作製し、次いで、前記プロポリス・ケルセチン混合組成物を金属塩存在下で110℃以上に加熱処理して得られるプロポリス・ケルセチン加熱処理物を含むことを特徴とする抗炎症剤組成物の製造方法
〔2〕前記〔1〕記載の製造方法で得られる抗炎症剤組成物を含有させることを特徴とするマクロファージのTNF−α遺伝子発現抑制剤の製造方法
〔3〕前記〔1〕記載の製造方法で得られる抗炎症剤組成物を含有させることを特徴とする食品、医薬品または医薬部外品の製造方法
に関する。
本発明の抗炎症剤組成物は、未処理のプロポリス、プロポリスの加熱処理物、プロポリスとケルセチンとの混合組成物などに比べて優れた抗炎症作用を有しており、プロポリスの抗炎症作用を向上させた新たな抗炎症剤として有用である。
図1は花粉抽出タンパク質処理で炎症応答させたマクロファージ中のTNF−α遺伝子の発現量を定量PCRで定量した結果を示す。プロポリスとは未処理のプロポリスであることを示し、比較品1および2は製造例1および2で得られたものを示す。本発明品とはプロポリスとケルセチンとの混合物を金属塩存在下で加熱処理したものを示す。 図2はリポポリサッカライド(LPS)で炎症応答させたマクロファージ中のTNF−α遺伝子の発現量を定量PCRで定量した結果を示す。プロポリスとは未処理のプロポリスであることを示し、比較品1および2は製造例1および2で得られたものを示す。本発明品とはプロポリスとケルセチンの混合物を金属塩存在下で加熱処理したものを示す。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明でいう「抗炎症剤」とは、マクロファージが細菌由来のLPSや花粉由来のタンパク質により起こる炎症応答を抑制できる薬剤をいう。マクロファージの炎症応答とは炎症性サイトカインであるTNF−αの産生である。したがって、抗炎症作用とは、マクロファージにおけるTNF−αの産生を抑制する作用であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することで確認することができる。
本発明の抗炎症剤組成物は、プロポリスとケルセチンとを金属塩存在下で加熱処理して得られるプロポリス・ケルセチン加熱処理物を含むことを特徴とする。
本発明で用いるプロポリスは、プロポリス原塊、このプロポリス原塊を公知の方法で抽出したプロポリス抽出物など、プロポリス成分を僅かでも含有しているものであればよく、特に限定はない。例えば、市販品として「EEP−B」シリーズ(商品名、アピ株式会社製)などが挙げられる。
前記プロポリス原塊としては、ブラジルを含む南アメリカ諸国、中国や日本などのアジア諸国、ヨーロッパ諸国、北アメリカ諸国、オセアニア諸国などの産地のものが使用できるが、特に限定はない。中でも、ブラジル産プロポリスを作るアフリカ蜂化ミツバチは在来種のセイヨウミツバチとアフリカミツバチの交配したミツバチであり、プロポリスの生産量がセイヨウミツバチよりも多いことが知られていることから、入手の容易さなどの観点からブラジル産プロポリスを用いることが好ましい。
また、前記プロポリス原塊から得られるプロポリス抽出物の種類としては、プロポリスの水抽出物、アルコール抽出物、含水アルコール抽出物、有機溶媒抽出物、超臨界抽出物、ミセル化抽出物などが挙げられる。これらのプロポリス抽出物はいずれも使用できるが、中でも高い生理活性を有することが頻繁に報告されているアルコール抽出物や含水アルコール抽出物が好ましい。なお、アルコール抽出物や含水アルコール抽出物を調製するために用いられるアルコールとしては、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの主に低級アルコールが挙げられるが、最終産物の食品への利用を考慮すると、エタノールが好ましい。なお、プロポリス原塊からの抽出は、常温下で行えばよく、時間などの他の条件については特に限定はない。
本発明で用いるケルセチンは、天然由来のものであっても、化学合成された純度の高い化成品であっても良い。天然由来のケルセチンを用いる場合は、完全に精製されたものである必要はないためケルセチン以外の成分を含む混合物も使用できる。ただし、その場合ケルセチン換算で1重量%以上含有された混合物が原料として望ましい。前記ケルセチンを含む混合物としては、かんきつ類やタマネギの鬼皮等の原料からの抽出物、凍結乾燥品等を使用してもよい。前記抽出物の種類としては、水抽出物、アルコール抽出物、含水アルコール抽出物、有機溶媒抽出物、超臨界抽出物、ミセル化抽出物などが挙げられる。これらのケルセチン抽出物はいずれも使用できるが、特に限定はない。なお、アルコール抽出物や含水アルコール抽出物を調製するために用いられるアルコールとしては、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの主に低級アルコールが挙げられる。これらの抽出は、常温下で行えばよく、時間などの他の条件については特に限定はない。また、前記凍結乾燥については常法に従えばよく、特に限定はない。
本発明では、プロポリス原塊または抽出物(以下プロポリスと表記)とケルセチンとを適切な溶媒に溶解させる。この際、溶媒が水のみであれば、プロポリスやケルセチンの水への溶解度が著しく低いために、水と有機溶媒の混合液や、有機溶媒のみに溶解させればよい。また、溶媒である水と有機溶媒の配合比や、有機溶媒の種類については特に制限はなく、プロポリスやケルセチンが十分に溶解すれば良い。中でも、メタノールやエタノールのみの溶媒や、水とメタノール、水とエタノール等の混合液を使用することが、安全性やコスト面から好ましい。また、最終的に得られるプロポリス・ケルセチン加熱処理物に対して精製を十分に適用せずにその組成物を食品に使用する場合には、安全性や法規面から溶媒としてエタノールや含水エタノールを使用することが望ましい。
得られるプロポリス、ケルセチンまたはプロポリスとケルセチンとの混合物を含有する溶液中のプロポリス含有量とケルセチンの濃度について特に制限はないが、それぞれの濃度が高いほど、溶媒使用量が少ない等のメリットもあるため、プロポリス含有量およびケルセチン含有量は各々の溶媒に対しプロポリスおよびケルセチンがそれぞれ飽和する濃度近くに調整することが好ましい。
また、プロポリス、ケルセチンは前記溶液中において生成反応前に完全に溶解していなくともよい。例えば、プロポリス抽出液とケルセチン含有溶液とを混合する場合、それぞれの溶液中のプロポリス濃度、ケルセチン濃度がともに飽和濃度以上であっても、混合液とした場合には、飽和濃度近くになるように調整しておけばよい。
中でも、抗炎症作用を効率的に向上させる観点から、プロポリスとケルセチンとを含有する溶液(プロポリス・ケルセチン混合組成物)中のケルセチンの含有量をその総固形重量中1重量%〜70重量%に調整することが好ましい。
本発明では、前記プロポリス・ケルセチン混合組成物中に金属塩を添加する。
前記金属塩としては、酸性塩、塩基性塩、正塩のいずれでもよく、また、単塩、複塩、錯塩のいずれでもよい。さらに、金属塩は1種類であっても、複数種類の混合物であってもよい。金属塩の例としては、食品添加物として認可されているものが安全性の面で好ましい。例えば、食品に添加することが認められているマグネシウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、亜鉛塩、銅塩等が挙げられる。
また、前記金属塩の混合物としては、例えば、ミネラルプレミックス(田辺製薬株式会社、グルコン酸亜鉛、クエン酸鉄アンモニウム、乳酸カルシウム、グルコン酸銅、リン酸マグネシウムを主成分としたミネラル混合物)のように金属塩を数種類含む物質が挙げられる。また、複数の金属塩を含む混合物として、ミネラルウォーターも挙げることができる。
また、前記金属塩を含むプロポリス・ケルセチン混合組成物のpHを8未満に調整することが好ましい。調整方法として、例えば、プロポリス・ケルセチン混合組成物を調製した後にpH調整剤を添加してpHを調整しても良いし、前記プロポリス・ケルセチン混合組成物の調製時に前もって溶媒のpHを調整しておいても良い。
次に、金属塩を含むプロポリス・ケルセチン混合組成物を加熱処理する。このように金属塩存在下でプロポリスとケルセチンとを加熱処理することで、プロポリスよりも優れた抗炎症作用を奏するプロポリス・ケルセチン加熱処理物を得ることができる。効率的に高機能化するために、金属塩を含むプロポリス・ケルセチン混合組成物の加熱温度は110℃以上に調整することが好ましい。また、使用する溶媒の沸点から考え、加圧加熱が望ましい。例えば、開放容器に金属塩を含むプロポリス・ケルセチン混合組成物を入れ、溶媒の沸点を超える高温で前記容器を加熱する、密閉容器に金属塩を含むプロポリス・ケルセチン混合組成物を入れて前記容器を加熱する、レトルト装置やオートクレーブを用いて加圧加熱する等、少なくとも部分的に前記組成物温度が110℃以上に達するように加熱することが好ましい。高機能化を効率的に促進させる観点から、前記組成物温度が均一に110℃〜150℃になることが、さらに好ましい。加熱時間も加熱温度と同様に限られたものではなく、効率的に目的の反応が進行する時間条件とすればよい。特に、加熱時間は加熱温度との兼ね合いによるものであり、加熱温度に応じた加熱時間にすることが望ましい。例えば、130℃付近に加熱する場合は、5分〜360分の加熱時間が望ましい。また、加熱は、一度でも良いし、複数回に分けて繰り返し加熱しても良い。複数回に分けて加熱する場合、蒸発した溶媒を補うために溶媒を新たに追加して行うことが好ましい。
前記のようにして得られるプロポリス・ケルセチン加熱処理物は、液状のまま使用してもよいし、必要に応じて、減圧乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥などの公知の乾燥手段により溶媒を除去することで、粉末状にして使用してもよい。また、粉末状にする場合には、デキストリン等の賦形剤を添加することも可能である。
また、前記プロポリス・ケルセチン加熱処理物を安全な原料のみを用いて製造した場合には、そのまま、食品、医薬品または医薬部外品に使用することが可能である。
以上のようにして得られるプロポリス・ケルセチン加熱処理物は、未処理のプロポリス、プロポリスの加熱処理物、プロポリスとケルセチンとの混合組成物などに比べて、優れた抗炎症作用を有する。したがって、本発明は、前記プロポリス・ケルセチン加熱処理物を有効成分として含有する抗炎症剤組成物を提供することができる。
また、本発明の抗炎症剤組成物の抗炎症作用は、具体的には、後述の実施例1、2に記載されるように、マクロファージのTNF−α遺伝子発現抑制作用を確認することで判断される。
したがって、本発明は、前記抗炎症剤組成物を含有する新規なマクロファージのTNF−α遺伝子発現抑制剤を提供することができる。
また、本発明の抗炎症剤組成物が前記のような抗炎症作用を有することを考慮すると、本発明の抗炎症剤組成物は健康増進、さらには疾病治癒分野において用いることが好ましい。
なお、本発明の抗炎症剤組成物が持つ効果効能は、得られた生理活性データより類推できる範囲で使用できる。
また、本発明の抗炎症剤組成物は、原料であるプロポリスおよびケルセチンの安全性が確認されていること、かつ製造段階で危険な有機溶媒等を使用しないことから、安全性の点でも原料であるプロポリスおよびケルセチンと同様に優れたものであると考えられる。
また、本発明の抗炎症剤組成物は、前記のような生理活性を奏することから、食品、医薬品、医薬部外品等に配合して使用することができる。
前記食品としては、例えば、飲料、アルコール飲料、ゼリー、菓子等、どのような形態でもよく、菓子類の中でも、その容量等から保存や携帯に優れた、ハードキャンディ、ソフトキャンディ、グミキャンディ、タブレット等が挙げられるが、特に限定はない。また、プロポリス・ケルセチン加熱処理物は、後述のように、優れた炎症抑制作用を有することから、炎症抑制を目的に、容易に摂取できるキャンディー、グミキャンディ、タブレット等にすることができる。なお、食品には、機能性食品、健康食品、健康志向食品等も含まれる。
前記医薬品としては、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、細粒剤、顆粒剤等の固形製剤、水剤、懸濁剤、乳剤等の液剤、ゲル剤等が挙げられる。錠剤、丸剤、顆粒剤、顆粒を含有するカプセル剤の顆粒は、必要により、ショ糖等の糖類、マルチトール等の糖アルコールで糖衣を施したり、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等でコーティングを施してもよいし、胃溶性若しくは腸溶性物質のフィルムで被覆してもよい。また、製剤の溶解性を向上させるために、前記の製剤を公知の可溶化処理を施すこともできる。常法に基づいて、前記液剤を注射剤、点滴剤に配合して使用してもよい。
医薬部外品としては、例えば、歯磨き、マウスウオッシュ、マウスリンス、ドリンク剤が挙げられる。
本発明の抗炎症剤組成物を用いて食品、医薬品または医薬部外品を調製する場合、本発明の効果が損なわれない範囲内で食品、医薬品または医薬部外品に通常用いられる成分を適宜任意に配合することができる。
例えば、食品の場合には、水、アルコール、澱粉質、蛋白質、繊維質、糖質、脂質、ビタミン、ミネラル、着香料、着色料、甘味料、調味料、安定剤、防腐剤のような食品に通常配合される原料または素材と組み合わせることができる。
医薬部外品の場合には、主剤、基材、界面活性剤、起泡剤、湿潤剤、増粘剤、透明剤、着香料、着色料、安定剤、防腐剤、殺菌剤等に組み合わせ、常法に基づいて、液状、軟膏状あるいはスプレー噴射可能な最終形態等にすることができる。
本発明の抗炎症剤組成物を食品に添加する場合には、該食品中に対して、通常は固形分値として0.001〜50重量%添加することが好ましい。
本発明の抗炎症剤組成物を医薬用途で使用する場合、例えば、その摂取量は、所望の改善、治療又は予防効果が得られるような量であれば特に制限されず、通常その態様、患者の年齢、性別、体質その他の条件、疾患の種類並びにその程度等に応じて適宜選択される。摂取量は、1日当たり約0.1mg〜1,000mg程度とするのがよく、これを1日に1〜4回に分けて摂取することができる。
本発明の抗炎症剤組成物を医薬部外品に添加する場合には、該医薬部外品中に、通常0.001〜60重量%添加するのが好ましい。
また、本発明の抗炎症剤組成物は、前記のように、安全性に優れたものであると考えられるので、ヒトに対してだけでなく、例えば、非ヒト動物、例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジー等の哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類等の治療剤または飼料に配合してもよい。飼料としては、例えばヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ニワトリ等に用いる家畜用飼料、ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料、ウナギ、タイ、ハマチ、エビ等に用いる魚介類用飼料、イヌ、ネコ、小鳥、リス等に用いるペットフードが挙げられる。
次に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はかかる実施例にのみ限定されるものではない。
(製造例1:プロポリス加熱処理物の調整)
プロポリス(EEP−B55、アピ株式会社製、エタノールを含有する抽出物、以下同じ)55g、ミネラルウォーター(硬度1310mg/L、商品名:ゲロルシュタイナー、サッポロ飲料株式会社製)50mLを添加した。これを130℃、180分加熱処理し、これを減圧乾燥にて乾燥させ、粉末状のプロポリス加熱処理物を得た。
(製造例2:プロポリス・ケルセチン混合物の調整)
プロポリス(EEP−B55、アピ株式会社製)55g、ケルセチン(メディエンス株式会社製)5gを混合し、これにミネラルウォーター(硬度1310mg/L、商品名:ゲロルシュタイナー、サッポロ飲料株式会社製)50mLを添加した。これを減圧乾燥にて乾燥させ、粉末状のプロポリス・ケルセチン混合物を得た。
(製造例3:プロポリス・ケルセチン加熱処理物の調製)
プロポリス(EEP−B55、アピ株式会社製)55g、ケルセチン(メディエンス株式会社製)5gを混合し、これにミネラルウォーター(硬度1310mg/L、商品名:ゲロルシュタイナー、サッポロ飲料株式会社製)50mLを添加した。この混合溶液(pH7.0)を130℃、180分加熱処理した後、減圧乾燥にて乾燥させ、粉末状のプロポリス・ケルセチン加熱処理物を得た。
(実施例1:花粉抽出タンパク質によるTNF−α遺伝子発現量の定量)
本発明品によるTNF−α遺伝子を、活性化マクロファージ細胞株であるTHP−1細胞(ヒト単球性白血病細胞)を用いて評価した。
試料にはプロポリス「EEP−B55」(商品名、アピ株式会社製)を減圧乾燥させた乾燥物(以下プロポリスと表記)、製造例1で得られたプロポリス加熱処理物(以下比較品1と記載)、製造例2で得られたプロポリス・ケルセチン混合物(以下比較品2と記載)および製造例3で得られたプロポリス・ケルセチン加熱処理物(以下本発明品と記載)の4種類を用いた。各試料をジメチルスルホキシド(DMSO、和光純薬工業(株)製)に2mg/mLの濃度で溶解させて評価試験に使用した。
炎症誘導物質である花粉抽出タンパク質は以下のように調製した。つまり、日本スギ花粉(株式会社ビオスタ社製)100mgにリン酸緩衝液(PBS)を900mL添加した。氷冷しながら3分超音波処理を行った。遠心分離後、上清の回収を行い、ブラットフォード法を用いてタンパク質濃度定量を行った。得られた花粉タンパク質溶液(60μg/mL)を実験に使用した。
培養は、1%アンチバイオティック−アンチマイコティック(ギブコ(GIBCO)社製)、4mMグルタミン(L−Glutamine シグマアルドリッチジャパン社製)、10%ウシ胎児血清(Foetal Bovine Serum:FBS Biological industries社製)を含むRPMI−1640培地(シグマアルドリッチジャパン社製)を用いた。
試験に使用する単球・マクロファージは定法に従って調製した。つまり、THP−1細胞を5×105cells/mLに調整し、ホルボールエステル(PMA)(シグマアルドリッチジャパン社製)を0.1μMとなるように添加し、細胞培養用24ウェルディッシュ(AGCテクノグラス株式会社製)に0.5mLずつ播種したのち、37℃、5%CO2条件下で48時間培養した。細胞を観察し、ディッシュに接着したことを確認して試験に使用した。
試験は以下のように行った。PMA0.1μMと各試料を10μg/mLとなるように添加した新しい添加したRPMI−1640培地に培地を交換した。なお、溶媒であるDMSOのみを0.5%添加したものをコントロールとした。
試料添加から12時間後、培地に花粉抽出タンパク質を0.3μg/mLとなるように添加(50μL)し、10時間培養した。なお、花粉抽出タンパク質を加えないものを炎症反応のないブランクとした。
培養終了後、細胞よりRNA抽出キット(商品名:NucleoSpin(登録商標)RNA II、タカラバイオ(株)製)を用いて全量RNAを抽出・精製した。得られたRNAを2ステップリアルタイムRT−PCR用逆転写試薬(商品名:PrimeScript(登録商標)RT Master Mix、タカラバイオ(株)製)の取扱説明書に準じて逆転写反応を行った。
つまり5×(Primescript(登録商標) RT Master Mix)4μL及び全量RNA 0.5μgを混合し、RNase Free dH2Oで全量を20μLにした。PCR用サーマルサイクラー(商品名:GeneAmp(登録商標)PCR System 9700、Applied Biosystem社製)を使用して1サイクルが「37℃×15分→85℃×5秒」であるプログラムにて逆転写反応を行った。逆転写反応液をリアルタイムRT−PCR用希釈試薬(商品名:EASY Dilution、タカラバイオ(株)製)にて10倍希釈した希釈液をリアルタイムRT−PCR解析に使用した。
リアルタイムRT−PCR解析は定法に従って行った。解析には、ECO Realtime RT―PCR system」(商品名、イルミナ(株)製)を使用した。TNF−αプライマーには、TNFフォワードプライマー(プライマーID:HA137189−F)及びTNFリバースプライマー(プライマーID:HA137189−R)を使用した。細胞内遺伝子の内部標準はβ−アクチンとし、そのプライマーとして、ACTBフォワードプライマー(プライマーID:HA067803−F)及びACTBリバースプライマー(プライマーID:HA067803−R)(前記4種のプライマーはいずれもタカラバイオ(株)製)を使用した。
反応にはリアルタイムRT−PCR試薬(商品名:SYBR(登録商標)Premix EX taq II(Tli RNaseH Plus)、タカラバイオ(株)製)を使用した。反応液は48ウェルPCRプレート(イルミナ(株)製)中に、2×(SYBR Premix EX taq II(Tli RNaseH Plus))2.5μL、フォワードプライマー(50μM)0.04μL、リバースプライマー(50μM)0.04μL、逆転写反応液1μL及び(dH2O)1.42μL(総量5μL)を混合し、『95℃×30秒→「95℃×5秒→65℃×30秒」×40サイクル→95℃×15秒→55℃×15秒→95℃×15秒』のプログラムにてPCR反応を行った。
得られた各細胞中のβ−アクチンとTNF−αのCt値(Threshold Cycle:一定の増幅量(閾値)に達するサイクル数)からTNF−α遺伝子の相対値を算出した。結果を図1に示した。
図1の結果より、本発明品はプロポリスや比較品1に比べて高いTNF−α遺伝子の発現抑制活性が観察された。また、抗炎症作用を有することは知られているプロポリスとケルセチンを混合した比較品2と比べても、本発明品はさらに優れたTNF−α遺伝子の発現抑制活性を示していることから、金属塩と共に加熱処理することが活性の向上において非常に重要であることがわかる。このように、加熱処理という簡便な方法でプロポリスとケルセチンの混合物を処理することにより抗炎症作用を向上させることは今までに知られていない新規な発見である。
従って、本発明品は花粉由来の炎症反応を抑制する新たな抗炎症剤として有用であることが分かる。
(実施例2:リポ多糖(Lipopolysaccharide:LPS)によるTNF−α遺伝子発現量の定量)
本発明品によるTNF−α遺伝子を、THP−1細胞(ヒト単球性白血病細胞)を用いて評価した。
試料にはプロポリス「EEP−B55」(商品名、アピ株式会社製)を減圧乾燥させた乾燥物、製造例1で得られた比較品1、製造例2で得られた比較品2および製造例3で得られた本発明品の4種類を用いた。各試料をジメチルスルホキシド(DMSO、和光純薬工業(株)製)に2mg/mLの濃度で溶解させて評価試験に使用した。
細胞の培養および試験条件は実施例1と同様に行った。
ただし、試料添加から12時間後、0.1μMとなるようにPMAを添加したRPMI−1640培地に、リポ多糖(Lipopolysaccharide:LPS、Alexis社)を10μg/mLとなるように添加したものを各ウェルに50μL添加し、10時間培養した。なお、LPSを加えないものを炎症反応のないブランクとした。
評価試験は、実施例1と同様の方法にて行った。また、リアルタイムRT−PCR解析は実施例1と同様に行った。
得られた各細胞中のβ−アクチンとTNF−αのCt値からTNF−α遺伝子の発現量の相対値を算出した。結果を図2に示した。
図2の結果より、本発明品はプロポリスや比較品1に比べて高いTNF−α遺伝子の発現抑制活性が観察された。また、抗炎症作用を有することは知られているプロポリスとケルセチンを混合した比較品2と比べても、本発明品はさらに優れたTNF−α遺伝子の発現抑制活性を示していることから、金属塩と共に加熱処理することが活性の向上において非常に重要であることがわかる。このように、加熱処理という簡便な方法でプロポリスとケルセチンの混合物を処理することにより抗炎症作用を向上させることは今までに知られていない新規な発見である。
従って、本発明品は微生物由来の炎症反応を抑制する新たな抗炎症剤として有用であることがわかる。
また、製造例3に準じて、ケルセチンの含有量を1〜70重量%の幅で調整して粉末状のプロポリス・ケルセチン加熱処理物した。これらのプロポリス・ケルセチン加熱処理物についても実施例1、2と同様にしてTNF−α遺伝子の発現量を調べたところ、差があったものの、製造例3で得られた本発明品と同様に、プロポリスと比べてTNF−α遺伝子の発現抑制活性が観察された。
(実施例3:プロポリス・ケルセチン加熱処理物を含有する食品)
製造例3で得た本発明品10gをあらかじめ100mLのエタノールに溶解させ、これにパラチニット(パラチニット社製)500g、還元麦芽糖水飴(株式会社東和化成工業製、Bx70)714g(固形分500g)からなる糖液を真空釜で混合し、真空度−600mmHgの条件で155℃まで炊き上げた。次にこれを冷却盤にあけ、約100℃で、クエン酸15g、レモン香料1.1mL、色素1mLを添加、混合後に固化してノンシュガーハードキャンディを得た。このノンシュガーハードキャンディは、定期的に摂取することで喉の炎症を低減したり、アレルギー症状を緩和することを期待した機能性食品としても利用できる。
(実施例4:プロポリス・ケルセチン加熱処理物を含有する医薬品)
製造例3で得た本発明品をエタノールに溶解し、これを微結晶セルロースに吸着させた後に、減圧乾燥させた。これを常法に従い、打錠品を得た。処方は、本発明品を10重量部、コーンスターチ23重量部、乳糖12重量部、カルボキシメチルセルロース8重量部、微結晶セルロース32重量部、ポリビニルピロリドン4重量部、ステアリン酸マグネシウム3重量部、タルク8重量部の通りである。本打錠品は、炎症抑制やアレルギー症状の緩和を目的とする医薬品としても有効に利用できる。
(実施例5:プロポリス・ケルセチン加熱処理物を含有する医薬部外品)
製造例3の方法で得た本発明品1gを10mlのエタノールに溶解し、タウリン20g、ビタミンB1硝酸塩0.12g、安息香酸ナトリウム0.6g、クエン酸4g、砂糖60g、ポリビニルピロリドン10gを全て精製水に溶解させ1000mlにメスアップした。なお、pHは希塩酸を用いて3.2に調整した。得られた溶液1000mlのうち50mlをガラス瓶に充填し、80℃で30分滅菌して、医薬部外品であるドリンク剤を完成させた。本ドリンク剤は、栄養補給の目的に加えて、喉の炎症を抑制することを目的とする医薬部外品としてやアレルギー症状を緩和することを目的とする医薬部外品として有効に利用できる。

Claims (3)

  1. プロポリスの水抽出物、アルコール抽出物または含水アルコール抽出物とケルセチンとを混合してケルセチンを総固形重量中1重量%〜70重量%含有するプロポリス・ケルセチン混合組成物を作製し、次いで、前記プロポリス・ケルセチン混合組成物を金属塩存在下で110℃以上に加熱処理して得られるプロポリス・ケルセチン加熱処理物を含むことを特徴とする抗炎症剤組成物の製造方法。
  2. 請求項1記載の製造方法で得られる抗炎症剤組成物を含有させることを特徴とするマクロファージのTNF−α遺伝子発現抑制剤の製造方法。
  3. 請求項1記載の製造方法で得られる抗炎症剤組成物を含有させることを特徴とする食品、医薬品または医薬部外品の製造方法。
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