JP2011213673A - 生理活性低分子化合物の生成方法 - Google Patents

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正朋 野島
Takeki Matsui
雄毅 松居
Yasumasa Yamada
泰正 山田
Ichiro Yamada
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Abstract

【課題】天然高分子化合物を含有する組成物中において、加水分解反応では得られない生理活性低分子化合物を生成する方法を提供すること。
【解決手段】天然高分子化合物を含有する組成物を金属塩の存在下において加熱処理して、加水分解反応では得られない生理活性低分子化合物を生成させることができる。加熱条件は120℃以上が好ましく、さらに圧力条件が0.1MPa以上であることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、化学合成または酵素反応によらない生理活性低分子化合物の生成方法に関するものである。
健康の維持・増進、疾病からの回復など健康で豊かな人生を送るためには、様々な生理活性化合物が必要不可欠である。有益な生理活性化合物を効率的に得ることは人類にとって永遠の願望であり、これまでに様々な手法が開発されてきた。
かつての手法は、天然界から得るものであり、主には植物、動物から有益な生理活性化合物を抽出するものである。しかしながら、本手法では天然化合物しか得られず、また希少成分については回収量が少ないという問題点があった。そこで、天然生理活性化合物を効率よく抽出する方法や、非天然生理活性化合物を得るために抽出以外の新規な製造方法について長きにわたって検討が繰り返され、現在までに多くの技術が提案されている。
これらの諸技術は、その詳細まで記すことは不可能なほどに多いが、手法を概念的に大まかに分類することができる。抽出条件を最適化する手法(特許文献1)、化学的な手法で生理活性化合物を合成する手法(特許文献2)、微生物を利用した発酵により産生させる手法(特許文献3、4)、酵素を用いて産生する手法(特許文献5)、遺伝子組み換え技術を用いて組換え菌や組換え細胞を創製し生理活性化合物を産生する手法(特許文献6)、天日干しなどの原始的手法や加熱、酸、塩基などの初歩的な処理を施し物質変換することなどである。現在では我々はこれらの技術の多大な恩恵を受け、食品の栄養成分や機能性成分、医薬品の成分として生理活性成分を活用することにより過去には不可能であった高い生活レベルを達成できている。しかしながら、いずれの手法にも問題点が今なお存在しているのも事実である。
抽出条件を最適化する手法に関しては、生理活性化合物の由来である原料素材の処理、生理活性化合物の抽出溶媒の工夫、抽出方法の工夫などが主に上げられる。しかしながら、その全てを最適化したとしても、対象とする生理活性化合物がもともと含有されている量以上を回収することは不可能であるから、効率にはおのずと上限がある。抽出条件を数多く検討したにもかかわらず、目的の生理活性化合物を少量しか回収できないことも多々ある。さらには、抽出過程で生理活性化合物の構造が変化し、所望の生理活性を減衰あるいは消失させてしまうこともある。
化学的な手法で生理活性化合物を合成する手法の場合には、反応ステップが複雑、危険が伴う、コストが高い、得られた化合物自体の安全性に問題があることが多い、などデメリットが多い一面もある。生命科学と有機化学の進歩により実現できた技術であり今なお創薬手法の王道となっていることは紛れも無い事実ではあるが、現実に、実用レベルの安全な生理活性化合物を生み出すためには、多大な開発費用、特に安全性の試験費用、長期にわたる開発期間、服用時の注意などの課題が残されている。
微生物の発酵を利用した生理活性化合物の産生には、微生物を選定したり培養条件を最適化するまでに時間を要したり、収量が不十分であったり、精製作業が負担となったりするなどの課題が残されている。
酵素を用いて生理活性化合物を産生する手法には、酵素の基質特異性によるものであるから、必然的に得ることの出来る化合物の種類に限界がある。
遺伝子組み換え技術を用いて組換え菌や組換え細胞を創製し生理活性化合物を産生する手法も、組換え体作製の労力や現時点での技術的限界、安全性の問題、得ることの出来る化合物の種類に限界があるなどの課題が残されている。
天日干しなどの原始的手法や加熱、酸、塩基などの初歩的な処理を施し物質変換することにも、限られた反応しか起こすことができないため、得られる化合物に制限がある。
これらの手法は効果的である一方で、多くの課題を今なお有していることがわかる。そもそも、有益な生理活性化合物を人工的に作り出すことには、化学反応にせよ発酵にせよ遺伝子組み換え技術にせよ、当然のことながら製造技術に人為的な要素を多く含むために、合成や産生、さらに危険性を排除するために多くのエネルギーを要する。エネルギーとはここでは燃料、材料、加工コストなどの物理的エネルギー、投入する人的作業労力や、安全性等の法律面での基準を満たすために必要な社会的要素を満たすための知的労力を示す。製造にエネルギーが多く必要なことを分かりやすく例えるなら、目的物を完成させるために、必要となる多数の部品を設計書通りに正確かつ迅速に組み立てるには多大な労力を必要とすることは容易に想像できる通りである。また、目的物を効率的且つ安全に完成させることができる装置があるとしても、その装置自体を考案し、設計し、装置を組み立てるために多くの労力を必要とすることも容易に想像できる。
一方、人為的要素の少ない抽出手法は、人工的な上述した技術に比べるとエネルギーは要さないものの、天然界に存在する量には限りがあるため回収効率が低いという欠点がある。
低エネルギーで有用な物質を得ることが出来れば、社会に大きな進歩をもたらすことができる。低エネルギーとは、簡便に、低コストで、安全に、効率的に有用物質を得ることである。ましてや昨今、地球環境保護の観点からグリーンケミストリーの発展が提唱されているように、低エネルギーで有用な物質を効率的に得る技術開発は時代の要請事項でもある。
では、低エネルギーで生理活性化合物を効率的に得る例はどのようなケースであろうか、このヒントは社会に広く浸透している素材例にある。
果糖ブドウ糖液糖は、果糖とブドウ糖を主成分とする液状糖で、原料は自然界に豊富に存在する高分子なデンプンを酵素や熱でデンプンの構成単位であるブドウ糖にまで分解し、一部は異性化酵素で果糖に変換しえられる液糖である。デンプン自体には甘味は無いが、この処理により得られた果糖やブドウ糖は甘味を有し、加工適性に優れた物性を有している。天然物由来であるために安全であり、また非常に低コストで得られるものであるから、世界中で栄養素として、あるいは甘味付けのために用いられている。用途は飲料や菓子など食品を中心に広く用いられている。低コストで得られる最も大きな理由は、デンプンの構成単位はブドウ糖であり、わずか一分子のデンプンから何百以上もの分子のブドウ糖が得られるからである。同様の例は、他の素材にも当てはまる。一分子のセルロースを酸や酵素で加水分解しグルコースを得て、これを発酵させエタノールを得るバイオエタノール産業も発展しつつあるが、やはり低コストでグルコースを得ることが出来るという商業ベース上でのコストメリットが大きいからである。商業的には価値の低い高分子を、簡単な処理で価値を高めた低分子化合物を得る良い具体例である。
甲殻類の構成成分の一つである多糖のキチンを加水分解することで、単糖であるN−アセチルグルコサミンが多く得られる。これも高分子のキチンは、単糖であるN−アセチルグルコサミンが重合してなる高分子化合物であることによる。N−アセチルグルコサミンは近年では、関節痛に効果があるとして健康食品等に多用されている生理活性化合物である。
一種類の物質だけが得られる訳ではないが、タンパク質の加水分解により得られるペプチドを得る方法についても同様の概念の範疇にある。タンパク質は固有のアミノ酸配列からなり各アミノ酸がペプチド結合し高分子物質であるが、タンパク質の加水分解部位や程度を制御することで、様々なペプチド混合物を得ることが出来る。やはり一分子のタンパク質から多分子のペプチドを得ることができ、生理活性を有したペプチドを多く得ることが出来る例もある。コラーゲンは −(Gly−Pro−Hyp)n−の繰り返し構造をとっている部分が多いタンパク質であるが、例えばGlyのN末端を特異的に加水分解することで、大量のGly−Pro−Hypが得られる。Gly−Pro−Hypは各種の生理活性が知られている。Gly−Pro−Hypのペプチドが多く含有された機能性食品は既に市場に見られるが、天然物を処理した安価な原料であるから実現できたものであり、合成ではこうはいかない。
このように天然高分子化合物の多くは、一種類の低分子化合物からなるポリマーであったり、あるいは複数種の低分子化合物からなる高分子化合物であったりする。部分的に修飾されている天然高分子も多々あるが、その骨格自体は重合で成り立っているものである。デンプンやセルロースはグルコースから、タンパク質はアミノ酸から、核酸はヌクレオチドから、天然ゴムはイソプレンから成っている。共通して言えることは、高分子化合物を分解すると、有用な構成単位の物質が多く得られる点である。
さて、高分子化合物は構成単位の低分子化合物から成り立っているが、天然界では低分子化合物同士の結合は主に三通りに分類される(架橋については省略する)。グリコシド結合、エステル結合、炭素原子同士の結合である。グリコシド結合とエステル結合は容易に熱や酵素で加水分解されるが、炭素原子同士の結合の場合は、自然条件化では分解されにくいという性質の差が存在する。ケイ素分子同士の結合の場合も同様に自然条件化では分解されにくい。故に加水分解耐性のあるような高分子(例えば天然ゴム)から構成単位である低分子化合物を簡便に効率よく得ることは困難である。
逆に、モノマー同士が炭素原子同士の結合で高分子化したポリマーの場合には、優れた耐久性を有す。これもまたこの種の高分子化合物の性質であり、この性質から、耐久性のある高分子素材を人工的に創製する技術も発展してきた。例えば、樹脂としてのポリエチレンや、スチレンとブタジエンの共重合体であるSBRがそうである。
さて、高分子化合物の特徴的なさらなる性質の一つに、吸着能がある。原理は多様であるが、電気的な性質、分子構造の特徴、多孔質構造といった三次元立体構造の特徴、多くの低分子化合物を吸着させることができる。活性炭、合成吸着剤、中空糸膜などの高分子が日常的に利用されている。例えば、タンパク質も吸着能が高く、タンニンは多数のフェノール性ヒドロキシ基を持つ複雑な芳香族化合物で、タンパク質と強固に結合し複合体を形成している。タンパク質の精製技術において、吸着している不純物を取り除く目的の技術が多いことからも良く分かる。さらに、サイクロデキストリンは低分子化合物を包接する性質を有し、溶解性の向上や風味改善などに広く用いられている。
つまり、高分子化合物は単分子で純粋に存在している場合もあるが、多くの低分子化合物を分子の表面や細孔構造の部分に吸着し複合体として存在している場合もあるのである。
天然物からなる組成物中には、多糖類やタンパク質等の加水分解されやすい高分子化合物を含有することはもちろんのこと、更には加水分解抵抗性を有する高分子化合物をも含有することがある。例えば、植物由来の加水分解抵抗性高分子として、天然ゴムの主成分であるポリイソプレンのような樹液や乳液成分中のポリマー類、リグニンといった木質の構成成分、クチンといった植物の表皮・クチクラの構成成分、スベリンのようなコルク質の構成成分、スポロポレニンといった花粉・胞子の外壁の構成成分などが挙げられる。
これまで述べてきたような高分子化合物の二つの性質を鑑みて、高分子化合物を処理し、有用な低分子化合物を効率的に得る技術は多い。高分子化合物一分子を分解し構成している低分子化合物を多分子得たり、あるいは一分子の高分子化合物から吸着している多分子の低分子化合物を得たりする手法が原理的に考えられるからである。
しかしながら、天然物において、開示されている技術や実用化されている技術には未完成な点がある。前駆体となる高分子化合物由来の低分子生理活性化合物は、化学的あるいは酵素作用による加水分解の過程を経て得られるものに限られるからである。加水分解により生成されない類の低分子生理活性化合物を、安全かつ簡便に得る技術情報は未だに見られないのである。
特許第4205334号公報 特許第2976003号公報 特許第3965804号公報 特許第3782837号公報 特許第2743005号公報 特許第2926990号公報
本発明の課題は、天然高分子化合物を含有する組成物中において、加水分解反応では得られない生理活性低分子化合物を生成させる方法を提供することにある。
本発明者らは、加水分解反応では得られない生理活性低分子化合物の製造方法について鋭意検討を重ねた結果、天然高分子化合物を含有する組成物を金属塩の存在下で加熱処理することにより、天然高分子化合物に結合しており、加水分解反応では得られなかった生理活性低分子化合物を生成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕天然高分子化合物を含有する組成物を金属塩の存在下において加熱処理して、加水分解反応では得られない生理活性低分子化合物を生成させることを特徴とする生理活性低分子化合物の生成方法、
〔2〕加熱条件が、120℃以上である前記〔1〕記載の生成方法、
〔3〕加熱条件が、120℃以上であり、さらに圧力条件が0.1MPa以上である前記〔1〕又は〔2〕記載の生成方法、
に関する。
本発明により、天然高分子化合物を含有する組成物から、安全且つ簡便に、加水分解反応では得られない生理活性低分子化合物を生成させることが可能になる。したがって、本発明により得られる反応後組成物は、天然高分子化合物が有する作用に加えて、生理活性低分子化合物による様々な生理活性を発揮する組成物となる。また、本発明により得られる生理活性低分子化合物は、加水分解反応などの従来の手法では得られないものであり、本発明の方法を使用することで、従来製造することが困難であった生理活性低分子化合物をも大量に得ることが可能になる。
図1は、実施例1で行ったHPLCによる分析結果を示すグラフである。 図は上から、プロポリスエキス、コーヒー抽出物、プロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合物、プロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合物をそれぞれ加熱処理した反応後組成物についてのHPLC分析結果を示している。また、横軸は時間を示し、縦軸はピークの大きさを、「※」印はDPVPのピークをそれぞれ示している。なお、反応後組成物とは、プロポリスを含有する組成物を金属塩の存在下において加熱処理し、生成したDPVPを含む組成物を意味する。 図2は、実施例5の細胞増殖抑制試験より得られた結果を示すグラフである。 図2の縦軸は細胞生存率を、横軸は4種類の試料について示している。 図3は、実施例7の反応後組成物と精製後のDPVPのHPLCの分析結果を示すグラフである。上図は実施例2より得た反応後組成物、下図は精製後のDPVPである。 図4は、実施例8のDPPHラジカル消去法により得られた結果を示すグラフである。 図4について、縦軸はDPPHラジカル残存率であり、横軸はそれぞれの試料の濃度を示している。 図5は、実施例10の細胞増殖抑制試験より得られた結果を示すグラフである。 図5について、縦軸は細胞生存率を、横軸はそれぞれの試料について示している。 図6は、実施例11のDNAラダー(ladder)法より得られた電気泳動の結果を示す。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明は、天然高分子化合物を含有する組成物を金属塩の存在下において加熱処理するという安全かつ簡便な方法で処理することにより、加水分解反応では得られない生理活性低分子化合物を生成させることを特徴とする。
本発明において、「天然高分子化合物」とは、天然に存在し、尚且つ分子量が10,000程度以上である化合物をいう。さらに、水素結合のような非共有結合により多量体を形成し高分子化している複合体も、ここでは天然高分子化合物に含める。本発明ではこれらの天然高分子化合物を含有する組成物を原料として使用する。
例えば、カゼインやグルテンなどの動植物中のタンパク質、ゼラチンのようにコラーゲンが抽出時に分解されたような天然タンパク質由来の素材、デンプン、セルロース、寒天、グリコーゲン、ペクチン、ヒアルロン酸、キチン、キトサンといった動植物中の多糖類、デキストリンのような多糖類が部分的に分解された素材、ポリフェノールが重合し高分子化したタンニン類などが挙げられる。また、タンパク質の場合には、同一のサブユニットや異なるサブユニット間でジスルフィド結合や水素結合により二量体や多量体を形成していること、あるいはタンパク質にタンニンが吸着し複合体を形成し、より巨大分子となっている場合があるが、これらの高分子化合物も天然高分子化合物に含まれる。本発明では、これらの天然高分子化合物を含む動植物由来の材料は、天然高分子化合物を含有する組成物として使用できる。
樹液や乳液中にはポリイソプレンなどの高分子ポリマー類も天然高分子化合物に含まれる。さらに植物中には、リグニンといった木質の構成成分、クチンといった植物の表皮・クチクラの構成成分、スベリンのようなコルク質の構成成分、スポロポレニンといった花粉・胞子の外壁の構成成分などの天然高分子化合物が広く存在することが知られており、これらも天然高分子化合物に含まれる。本発明では、前記樹液、乳液、コルク、花粉、胞子などが天然高分子化合物を含有する組成物として使用できる。
また、天然界には、動植物とは定義されない生物も多く存在しており、微生物や菌類などが一例として挙げられる。もちろん、微生物や菌類などがその細胞内外に産生する天然の高分子化合物も天然高分子化合物に含める。さらに、微生物や菌類が関与する発酵産物中に含有される天然高分子化合物も該当する。例えば、納豆の粘性成分であるポリグルタミン酸や曵糸性を有する発酵食品中の多糖類、キノコの粘性成分であるムチンが挙げられる。本発明では、微生物や菌類そのもの、それらの培養液が天然高分子化合物を含有する組成物として使用できる。
また、生物活動の結果として作り出される本来とは異なる形態や機能を有した天然物も、天然高分子化合物を含有する組成物として使用できる。昆虫が集めてくる蜜、例えば、蜂が植物から集めてなる蜂蜜や、蜂自身の分泌物をも含有するローヤルゼリー、蜂が集めてくる植物成分を高含有するプロポリス、ツバメの巣、さらには家畜の糞便も天然高分子化合物を含有する組成物に該当する。
さらに、天然高分子化合物としては、生物が直接関与しない土壌中の成分、例えばケイ素系の高分子化合物や、岩塩や海水由来の未精製塩なども含まれる。この場合、過去の生物活動の痕跡である化石や原油層中の成分も天然高分子化合物を含有する組成物に該当する。
本発明においては、前記のように、例えば、植物であれば果実、果皮、果実種子、根、葉、花、茎、花粉、海藻、藻、乳液、樹木の幹、樹皮、根、樹液などが天然高分子化合物を含有する組成物に該当する。動物においては、脊椎動物であれば皮、肉、内臓・脳などの臓器、血管、脂肪、コラーゲンやエラスチンなどの結合組織、血液、リンパ液、組織液など、無脊椎動物であれば甲殻、軟骨、触角などが天然高分子化合物を含有する組成物に該当する。また、微生物や菌体そのものや、これらの代謝物や産物が当てはまる。さらには生物体そのもの、あるいは生物の代謝産物、無生物体そのもの、そしてこれらの混合物として存在しているあらゆるものが天然高分子化合物を含有する組成物に該当する。
前記組成物中における天然高分子化合物の含有量としては、多い方が目的とする生理活性化合物の収量も増大するため好ましいが、特に制限は無い。
前記天然高分子化合物を含有する組成物の状態については、金属塩の存在下で加熱処理を施した際に、生理活性低分子化合物を生成する反応が生じれば良く、例えば、固形、液状、ゲル状、ゾル状などいずれでも良い。具体的には、粗い粉末でも微粉末でも良く、溶媒に溶解・懸濁している状態でも良い。前記溶媒は水でも有機溶媒でも良く、金属塩の存在下で反応が生じ、所望の効果が得られれば良い。また、前記天然高分子化合物を含有する組成物は、天然原料そのものでも、抽出された状態でも、他成分を配合した状態でも良く、金属塩の存在下で生理活性低分子化合物を生成する反応が生じ所望の効果が得られる状態であれば良い。前記抽出方法に制限はなく、一般的な溶媒抽出、水蒸気蒸留、超臨界抽出、高圧抽出、爆砕処理抽出、加温抽出、酸・アルカリ抽出などが挙げられる。なお、天然高分子化合物を含有する組成物が液状である場合のpHに制限はないが、pHは生理活性低分子化合物の生成に一定の影響を及ぼすから、生成するための反応に最適なpHに調製することが好適である。
また、前記天然高分子化合物を含有する組成物は、金属塩で反応させる前にあらかじめ前処理を施しても問題ない。例えば、細胞内部に存在する天然高分子化合物を得るために超音波処理や粉砕処理などの物理的処理や、酵素処理などを適宜施しても良い。
中でも、天然高分子化合物を含有する組成物が完全に乾固している場合は、生理活性低分子化合物の生成する反応の効率を高めるために、固形分重量に対して0.5重量%以上の溶媒を添加することが好適である。溶媒は生理活性低分子化合物を生成する反応が進むものであれば制限はない。ただし、天然高分子化合物を含有する組成物が完全に乾固し溶媒を含有しない場合であっても、水蒸気など気体状の溶媒の存在下で行われることによっても生理活性化合物の生成が進むから、適した処理系において所望の効果を得ることができる。例えば、オートクレーブ装置内での加熱処理がこの場合に該当する。溶媒選択のための他の要素としては天然高分子化合物の極性があげられ、天然高分子化合物が脂溶性の場合は有機溶媒を選択する必要が生じる場合もある。
本発明では、前記天然高分子化合物を含有する組成物を加熱処理して、加水分解反応では得られない生理活性低分子化合物を生成させるためには、金属塩の存在が必要である。金属塩の種類や添加量には、生理活性低分子化合物を生成する反応が効率的に進む限り特に制限はないが、生成後に生理活性物質を摂取したり、加工する時の安全性を考慮すれば食経験のある安全な金属塩を使用することが望ましく、食経験の無いような金属塩や反応性の高い非食用の触媒などは相応しくない。天然原料そのものまたはその粗抽出物のように、天然高分子化合物を含有する組成物中にもともと金属塩が含有されている場合には、さらに金属塩を添加する必要は必ずしもないが、生理活性低分子化合物を生成する反応の効率を高めるために金属塩を新たに添加しても良い。金属塩は僅かでも溶解していればよいので、天然高分子化合物を含有する組成物の固形分重量に対して0.1重量%以上の水分を添加することが好ましい。
前記金属塩の状態としては特に制限はない。例えば、粉末状、インゴット状、粉末を焼結などした成形体などでもよい。また、金属塩は、有機金属化合物、単核錯体、多核錯体、水素化合物やこれらの誘導体などでもよい。金属塩は、酸性塩、塩基性塩、正塩のいずれでもよく、また、単塩、複塩、錯塩のいずれでもよい。さらに、金属塩は1種類であっても、複数種類の混合物であってもよい。金属塩の例としては、食品添加物として認可されているものが安全性の面で好ましい。例えば、マグネシウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、亜鉛塩、銅塩などが挙げられる。
また、前記金属塩の混合物としては、例えば、ミネラルプレミックス(田辺製薬株式会社 グルコン酸亜鉛、クエン酸鉄アンモニウム、乳酸カルシウム、グルコン酸銅、リン酸マグネシウムを主成分としたミネラル混合物)のように金属塩を数種類含む物質が挙げられる。また、複数の金属塩を含む混合物として、ミネラルウォーターも挙げることができる。さらに、金属塩として、適当な植物由来の抽出物を使用することができる。例えば、コーヒー豆は比較的多量の金属塩を含有し、よってその抽出エキスも比較的多量の金属塩を含有することから使用に適する。このような金属塩を比較的多量に含有する素材の抽出物を金属塩として用いることも可能である。以上のような金属塩を含むものであれば、その他どのようなものでも構わないが、反応後組成物の風味面で、インスタントコーヒーなどのコーヒー豆由来の抽出物や硬水などが好ましい。中でも、コーヒー豆由来の抽出物は、プロポリスが有する若干の不快臭をマスキングする効果にも優れており、この面からも特に効果的である。
前記天然高分子化合物を含有する組成物中における金属塩の存在量としては、生理活性低分子化合物の生成反応が進む量であれば良く、特に制限はないが、効率面からは前記組成物中の固形分値に対して、0.01〜60重量%程度存在することが好ましく、生理活性低分子化合物の生成量を考慮すると、金属塩が1〜30重量%存在することがより好ましい。なお、前記組成物中にこれらの金属塩が元来含有されている場合には、人為的に金属塩を前記組成物中に添加する必要は必ずしもない。よって、この場合には金属塩を添加するか否かは、生理活性低分子化合物の生成反応の効率をもとに判断すればよい。
前記生理活性低分子化合物を生成する反応に必要な加熱温度としては、反応効率面から120℃以上が好ましい。120℃未満であれば、反応効率が低く目的の生理活性低分子化合物が十分に得られない。加熱温度に上限としては、前記反応が効率的に進む限り特に制限はないが、工程の安全性やエネルギー効率を考えると500℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましい。
化学反応や酵素反応を用いる従来法に比べると、加熱処理は、低エネルギーの方法であり、労力の点でも簡便な方法といえる。
前記加熱処理における加熱時間も前記加熱温度と同様に限られたものではなく、効率的に目的の反応が進行し所望の効果が得られる時間であればよい。特に、加熱時間は、加熱温度との兼ね合いによるものであり、加熱温度に応じた加熱時間にすることが望ましい。例えば、130℃付近で加熱する場合は、5分〜60分の加熱時間が望ましい。ただし、目的とする生理活性化合物が熱に不安定である場合には、長時間の加熱により生成された生理活性化合物が減少に転じることがあるから、最適な加熱時間を設定することが求められる。
また、加熱時に必ずしも圧力を加える必要はないが、加圧させることは有効な手法であり、前記生理活性低分子化合物の生成反応の効率面から適宜取り入れることができる。圧力条件も限られたものではなく、前記生成反応が効率的に進む条件であればよい。圧力を上昇させることにより、分子に運動エネルギーをさらに付加することが可能であり、効率を高めることが考えられる。この観点から、加熱処理時には、0.1MPa以上の圧力を付加することが好ましい。また、作業上の安全性や、装置スペックに限界がある観点から、150MPa以下の圧力に調整することが好ましい。
加熱時の熱源については、制限はなく、適切な反応容器を直火で加温、マイクロウェーブで加温、スチームで加温、温水で加温、電熱線で加温など何でも良く、容器を湯浴やオイルバス中で加温しても良い。また加熱温度を上昇させる上で、水やアルコールよりも高沸点な液体油脂等を溶媒に使用することも有効な手法である。オートクレーブで加圧加温することや、工業的にはレトルト殺菌機を本目的のために使用して加熱する手法は、前記生理活性低分子化合物を生成する反応の効率を高めた条件を設定できたなら、その作業性の高さから実用的であり好ましい。
中でも、前記加熱処理は、処理予定の天然高分子化合物および金属塩を含む組成物を加熱および加圧しやすい観点から、オートクレーブ処理することが好ましい。使用するオートクレーブ装置については、加熱処理時に前記温度および圧力の範囲に調整できるものであればよく、特に限定はない。
加熱処理による生理活性低分子化合物の生成反応の条件を最適化するためには、加熱処理前の天然高分子化合物を含有する組成物と金属塩それぞれが、どのような種類、状態のものを利用するかに合わせて、随時、反応条件を工夫することで、生理活性低分子化合物の生成量を増大させることが可能である。
例えば、加熱処理前の天然高分子化合物を含有する組成物と金属塩の濃度について、効率的な濃度を設定することができる。また、生成反応の効率を上げるために、前記組成物中に各種溶媒を添加することや、不溶物を乳化させるための乳化剤のような剤を添加することも工夫の範囲内である。特に、高温下における加熱は、従来の食品や医薬品や化粧品加工の実際において主に殺菌目的で多用されており、オートクレーブやレトルト殺菌といった手法も本発明では使用できる。
以上のように本発明の方法により、天然高分子化合物を含有する組成物を金属塩の存在下において加熱処理することで、加水分解反応では得られない生理活性低分子化合物を前記天然高分子化合物から生成させて、その含有量を高めた反応後組成物が得られる。生理活性低分子化合物の含有量を高めた反応後組成物は、このまま混合物の状態で使用できるし、反応後組成物から生理活性低分子化合物を濃縮あるいは精製して用いることも出来る。用途やコストに応じて、混合物を使用するか精製品を得るか判断すればよい。
本発明の方法により得た反応後組成物は、安全な金属塩の存在下で反応させて得られたものであるから、安全性が高い上に低い加工コストで広く市場に供給できる。昨今の市場は、より高い安全性、有効性、低価格などを要求しているが、前記反応後組成物はこれらの要求に応えることが出来るものである。
本発明の方法により、合成法や加水分解法では工業的な規模で得ることができなかった生理活性低分子化合物を安価でかつ簡便に得ることが可能になる。このような生理活性低分子化合物としては、天然高分子化合物の種類により一概に限定できないが、代表的なものとしては、天然高分子化合物としてプロポリスを用いた場合には、2,6-ジプレニル−4−ビニルフェノール(2,6-diprenyl-4-vinylphenol、以下、DPVPとも記載する)が生理活性低分子化合物として得られる。なお、プロポリスを室温で強アルカリ処理したところ、DPVPの生成は確認されない。前記DPVPは、下記式〔1〕で示される構造を有する化合物である。
Figure 2011213673
式〔1〕の化合物は、IUPACの命名法では2,6−ジプレニル−4−ビニルフェノールと命名されており、2001年3月にブラジル産プロポリスより単離され、当時、新規化合物として報告され、特開2002−255883号公報でも芳香を有することについて確認されているが、その生理活性については詳細な実験事実及びそのデータがなく、他の文献でも未だ報告されていない。
なお、本発明において前記生理活性低分子化合物の分子量としては、天然高分子化合物の分子量よりも低いことを意味していればよく、特に限定はない。
本発明の方法により得られた反応後組成物は、医薬品、サプリメント、あるいは食品の原料として使用することが出来る。そのまま原料として使用するには、乾固させ固形状で使用しても良いし、溶媒を加えて液体状にしても良いし、風味上の改善が必要あればシクロデキストリンでの包接処理などの公知の風味改善手法を施してから用いても良いし、用途に応じて適切に加工して用いればよい。特定の生理活性化合物の効果を期待する医薬品、サプリメント、あるいは食品として具現化する場合には、組成物からカラムクロマトグラフィーなどを利用した公知の方法で目的の生理活性低分子化合物を濃縮あるいは精製して用いることが望ましい。
次に、天然高分子化合物を含有する組成物としてプロポリスを用いた場合の実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
<DPVPの生成方法と反応後組成物の生理活性>
天然高分子化合物を含む組成物であるプロポリスエキスと、金属塩の混合物であるコーヒー抽出物との混合物を加熱処理することにより、反応後組成物中のDPVPの含有量を増加させ、また反応後組成物の生理活性も上昇させることができる。以下の実施例1〜5では、プロポリスエキスとコーヒー抽出物との加熱処理方法、得られた反応後組成物の特徴的な分析結果、さらに、反応後組成物の生理活性について抗菌作用の2試験と、抗癌評価系の一つである細胞増殖抑制作用試験について示す。
(実施例1:プロポリスエキスとコーヒー抽出物(インスタントコーヒー)の加熱処理と反応後組成物のHPLC分析)
プロポリスエキス(ブラジル産プロポリス原塊のエタノール抽出物。固形分13%。以下実施例における「プロポリスエキス」はこれを用いる。)1.0g、インスタントコーヒー(味の素ゼネラルフーヅ株式会社「Blendy」(登録商標)。以下実施例における「インスタントコーヒー」はこれを用いる。)0.1g、水5mlを混合し(混合物のpHは4.7)、オートクレーブ(SANYO LABO AUTOCLAVE)にて130℃、20分間、0.2MPaにて加熱した。得られた反応後組成物をメタノールにて50mlにメスアップし、このうちの10μlをHPLCにより分析した。
HPLC分析は以下条件にて行った。
カラム:逆相用カラム「Develosil(登録商標)C−30−UG−5」(4.6mmi.d.×250mm)

移動相:A・・・H2O(0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)), B・・・アセトニトリル(0.1%TFA)
流速:1ml/min
注入:10μl
検出:254nm
勾配(容量%):80%A/20%Bから20%A/80%Bまで30分間、20%A/80%Bから100%Bまで5分間、100%Bで10分間(全て直線)
得られたクロマトグラムを図1に示す。
上から、プロポリスエキス、コーヒー抽出物、プロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合物、プロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合物を加熱処理した反応後組成物についてのHPLC分析結果である。プロポリスエキスとコーヒー抽出物を加熱処理した反応後組成物は加熱処理前のプロポリスエキスおよび加熱処理前のプロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合物と比較し、HPLCプロフィールが変化していた。特に「※」印で示したピークであるDPVPについては、加熱処理前に比べて、反応後組成物中の含有量は10倍程度に増加していることが確認された。
(実施例2:プロポリスエキスとコーヒー抽出物の加熱処理2)
プロポリスエキス10gと10%(w/v)のインスタントコーヒー水溶液10mlを混合し(混合物のpH5.1)、オートクレーブ(SANYO LABO AUTOCLAVE)にて130℃、20分間、0.2MPaで加熱した。得られた反応後組成物はさらに凍結乾燥処理を行い、黄褐色の粉体を得た。これを以下実験に使用した。
実施例2で得た反応後組成物について、抗菌作用の有無の確認を目的とし、ペーパーディスク法による検定を行った。ペーパーディスク法は試験物質の各阻止円を作成することにより、試験物質の抗菌活性の有無を簡易に調べることのできる公知の手法である。
(実施例3:ペーパーディスク法による抗菌作用の検定)
菌体は独立法人製品評価技術基盤機構NBRCより購入した枯草菌(Bacillus subtilis NBRC 3134)およびブドウ球菌(Staphylococcus aureus subsp. aureus NBRC 12732)を用いて行った。菌体の立ち上げ、培養方法はNBRC指定の培養液であるNo.702およびNo.802を調整、使用し、培養温度もNBRC指定の温度に従い、それぞれ30℃、37℃にて行った。
ペーパーディスク法の実験方法((寒天)培養液、培養方法、試験準備、試験方法)はBSAC標準化ディスク感受性試験法(第8版)(以下、BSAC standardized disc susceptibility testing method)に従い行った。
試料の種類は、実施例2で得たプロポリスエキスとコーヒー抽出物の反応後組成物に加え、プロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合物(加熱処理なし)、プロポリスエキス(加熱処理なし)をそれぞれ、プロポリスエキス含有量が150ppmおよび100ppmとなるように80%エタノールに溶解し調整した。また、ポジティブコントロールは医薬品として使用される抗菌成分のクロラムフェニコール(Chloramphenicol Wako 036−10571)を80%エタノールに溶解し調整し、ネガティブコントロールは80%エタノールを用いた。
このように調整した試料をペーパーディスクに浸し、充分に乾燥させた後に、枯草菌およびブドウ球菌を播種した寒天培地の上に配置し、培養を行い、24時間後、阻止円の測定を行った。
得られた結果を表1−1、表1−2に示す。
Figure 2011213673
Figure 2011213673
表1−1は、以下実験で用いる試料の割り振りを示している。
試料Aはプロポリスエキス、試料Bはプロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合、試料Cはプロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合物を加熱処理させ、得られた反応後組成物を示す。これら試料の名称は以下実験にも同試料として使用する。
表1−2は、実施例3のペーパーディスク法より得られた結果である。
表1−2について、ペーパーディスク法より得られた各試料の抗菌活性の有無を示した。(+)の表記は阻止円が形成されたことを示し、その数は阻止円の大きさを示す。(+)は直径1cmまで、(++)は直径1cm〜2cmまで、(+++)は直径2cm以上であることを示す。
80%エタノールにて阻止円が形成されず、またクロラムフェニコールの阻止円の大きさが充分であったことはBSAC standardized disc susceptibility testing methodに記載されているデータに相当していることから、本実施例の信頼性が示されている。
本結果より、プロポリスエキス、プロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合物、その加熱処理後の組成物は全て、充分な大きさの阻止円を得ることができ、よって、充分な抗菌活性を有することが示された。
このような結果から、さらに詳細な試料それぞれの抗菌力を調べるために、寒天希釈法による抗菌活性の試験を行った。寒天希釈法とは、寒天培地内にあらかじめ試料を懸濁しておき、検定菌の育成の阻止能力を評価する実験法である。
(実施例4: 寒天希釈法による抗菌活性の検定)
菌体は、実施例3と同じ枯草菌を用いて行い、実験方法はBSAC standardized disc susceptibility testing methodに従い行った。
試料調整については、(実施例2)より得られた反応後組成物の凍結乾燥品をDMSOに溶解し、これを200倍希釈となるように寒天培養液に懸濁し、寒天培地を作製した。試料の種類は、実施例2より得られるプロポリスエキスとコーヒー抽出物の反応後組成物に加え、プロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合物(加熱処理なし)、プロポリスエキス(加熱処理なし)、さらにポジティブコントロールとしてクロラムフェニコール、ネガティブコントロールとしてDMSOを用いた。
菌体はそれぞれ血球計算版を用いて細胞数を測定し、1×106cells/mlに調整し、各寒天培地に5μl/スポットにて28スポットを作製した。これを培養し、24時間後、菌体の生育が発生したスポット数をカウントした。
得られた結果を表2に示す。
Figure 2011213673
表2は、実施例4の寒天希釈法より得られた結果である。
数値は各濃度において枯草菌が発生したスポット数である。DMSOにおいて全28スポットが発生し、またクロラムフェニコールのスポット発生抑制濃度はBSAC standardized disc susceptibility testing methodに記載されているデータに相当していることから、本実施例の信頼性が示されている。
それぞれの試料が100ppmにて行った試験結果について比較すると、反応後組成物(試料C)は、加熱処理前のプロポリスエキス(試料A)および加熱処理前のプロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合物(試料B)よりも、スポット数が少なく、より強い抗菌作用を有しているという結果を得た。つまり、プロポリスエキスとコーヒー抽出物を加熱処理することにより得られた反応後組成物の抗菌力は、加熱処理前のエキスと比較し、高められたことが明らかとなった。
したがって、前記反応後組成物のようにDPVPを有効成分として含有する組成物は、抗菌剤として使用できることがわかる。
次に癌細胞に対する反応後組成物の効果を見るため、HL−60細胞(Human promyelocytic leokemiacells:ヒト骨髄球性白血病細胞)を用いた癌細胞増殖抑制作用について試験した。
(実施例5:癌細胞増殖抑制作用)
細胞の培養としては、高栄養培地RPMI−1690(SIGMA R0883)に、4mMグルタミン(L−Glutamine SIGMA G8540−100G)、10% FBS(Foetal Bovine Serum Biological industries 04−001−1A)を添加したものを培養液とし、継代培養を行った。試験は細胞培養用96ウェルプレート(corning 3595)を用いた。試験当日にHL−60細胞を1.5×105cell/mlとなるように細胞数を調整し、96ウェルプレートに、1ウェルあたり100μlずつ播種した。
試料調整については、実施例2より得られたものをDMSO(ジメチルスルホキシド、Wako 046−21981)にて20mg/mlに溶解し、これを200倍希釈(実験系内は100ug/ml)となるようにHL−60細胞の培養液に懸濁し、試験を開始した。試料の種類は、実施例2より得られるプロポリスエキスとコーヒー抽出物の反応後組成物に加え、プロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合物(加熱処理なし)、プロポリスエキス(加熱処理なし)、さらに、ネガティブコントロールとしてDMSOを用いた。
細胞増殖抑制効果の検出はcell counting kit−8(DOJINDO 347−07621)を用いて検出を行った。試験開始より24時間後、各ウェルにcell counting kit−8の検出液を10μl添加し、よく攪拌した。その後遮光反応を行い、プレートリーダー(BIO−RAD Model 680)を用いて450nmにて吸光度の測定を行い、得られたデータを処理した。
得られた結果を図2に示す。
図2について、縦軸は細胞生存率を、横軸はそれぞれの試料について示している。また、細胞生存率とは、DMSOを添加した培養液にて処理を受けた細胞の生存細胞数を100%とし、それぞれの試料100μg/mlにおける細胞の生存細胞数を相対値として算出した値である。
プロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合物を加熱処理した反応後組成物(図中、C)は、加熱処理前のプロポリスエキス(図中、A)および加熱処理前のプロポリスエキスとコーヒー抽出物の混合物(図中、B)よりも、細胞生存率が低く、HL−60細胞の増殖を抑制する効果がより高いことが示唆される。
また、これより得られた結果について、Tukey HSD(honestly significant difference)検定を行った結果、それらの有意差はAC間で0.006、BC間で0.035であり、本データは充分な有意差を得ている。
<生理活性化合物DPVPの単離とその生理活性>
実施例1〜5の結果から、加熱処理により、反応後組成物中に特にDPVPの含有量が増加していることが示され、また反応後組成物の生理活性は加熱処理前の物と比較し、さらに優れた効力を有することが示された。したがって、特に含量の増加した化合物としてDPVPを精製し、その生理活性を検証した。以下、実施例6以降にて、反応後組成物よりDPVPを精製する手法、およびDPVPの生理活性(抗酸化作用、抗菌作用、抗癌作用)について示す。
(実施例6:DPVPの精製方法)
実施例2で得られた反応後組成物について、以下の条件にて分取カラムにて分画精製を行った。
カラム:Develosil(登録商標) C−30(20mmi.d.×250mm)
移動相:A・・・H2O, B・・・アセトニトリル
流速:10ml/min
注入:1ml
検出:254nm (UV)
勾配(容量%):50%A/50%Bから20%A/80%Bまで30分間、20%A/80%Bから100%Bまで5分間、100%Bで10分間(全て直線)
(実施例7:DPVPの分析方法)
実施例6より得られた精製物について、実施例1と同様の手法により、HPLC分析を行い、高純度のDPVPが得られている事を確認した。このことはNMR分析でも確認された。この結果を図3に示す。なお、図3の上図は、実施例2より得た反応後組成物、下図は精製後のDPVPである。HPLC結果より、「※」印で示されたDPVPが単離されていることが示されている。
反応後において、プロポリスエキス10g(固形分は13.0%)あたりからは、DPVPは40.8mg回収された。これはプロポリス1.3gあたりDPVP40.8mg回収したことに相当する(プロポリス固形物1gからは、DPVP31.3mg回収されたことになる)。
一方、これまで報告されているDPVPの精製では、例えば、特許文献17において、プロポリス原塊550gについて、水蒸気蒸留処理を120℃、5時間行うことにより、得た精油からDPVPを27mg回収している。これはプロポリス固形分1gから、DPVP0.049mg回収されたことになる。
したがって、本発明の方法では、従来法に比べてプロポリスから得られるDPVPの収量は、600倍以上も多いものである。この結果から、本発明の方法は、従来、工業的な生産が困難であったDPVPの生成を可能にしていることがわかる。
なお、水蒸気蒸留処理は、反応系で使用される水系溶媒の加熱可能な温度は100℃程度が限界であることから、DPVPを含む組成物の加熱温度は実質的には100℃程度になっている。また、プロポリス原塊を加熱溶媒により抽出処理をする方法も知られているが、90℃までの温度に溶媒を加熱して処理を行うことが一般的である。このように従来法では、プロポリスを含む組成物が加熱される温度は100℃以下であったことから、プロポリスに予め存在している極めて微量のDPVPを精製するに留まっていたと考えられる。
(実施例8:DPVPの抗酸化作用)
上記のように精製されたDPVPを用いて、抗酸化効果の試験を行った。試験はDPPH(1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル:1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)ラジカル消去法を採用し行った。以下手法について挙げる。
DPPHラジカル消去法の主な実験方法については、「食品機能研究法」(株式会社光琳発行、篠原和毅、鈴木建夫、上野川修一編著、2000年)に記載の手法を参考に試験を進めた。試料はArtepillin C(Wako 016−19131)および(実施例6)より得たDPVP、α−トコフェロール(Wako 209−01791)を75%EtOHにて溶解し、各濃度にて調整を行った。また、DPPH反応液については400μM DPPH(SIGMA D9132)、50mM MES(2−モルホノエタンスルホン酸(2-Morpholinoethanesulphonic acid) DOJINDO 345−01625)、75%EtOHとなるように調整した。反応は96ウェルプレート(アズワン 1−6776−03)にて行い、試料とDPPH反応液を100μlずつ入れ、混合、遮光静置を20分間行い、プレートリーダーにて520nmにおける各吸光度を測定した。
得られた結果を図4および表3に示す。
Artepillin Cはプロポリスに含まれる生理活性化合物であり、抗酸化作用、抗菌作用、抗癌作用等の多様な生理活性を示すことがすでに報告されている。図4から分かるように、DPVPはArtepillin Cよりラジカル残存率が低く、優れた抗酸化作用を有している。また、表3に示すようにDPVPのIC50(50%阻害濃度:half maximal inhibitory concentration)100μMは、Artepillin Cの180μMよりも低かった。すなわち、DPVPはArtepillin Cよりも抗酸化能力が高いことが明らかとなった。なお、DPPHラジカル残存率とは、試料に75%EtOHを用いた場合に検出されたDPPHラジカル残存量を100%とし、それぞれの試料におけるDPPHラジカル残存量を相対値として算出した値である。
また、表3について、それぞれの値はDPPHラジカル消去法より得られたIC50を示す値である。IC50とはDPPHラジカルを50%消去する能力を有するとみなされる、各試料の濃度である。
Figure 2011213673
以上、図4および表3の結果からDPVPはArtepillin CよりもIC50が低く、よって、抗酸化能力がより優れていることが示唆された。したがって、DPVPを有効成分とする抗酸化剤は従来のものよりも顕著な作用を奏すると考えられる。
(実施例9:DPVPの抗菌作用)
次に、DPVPの抗菌作用について寒天希釈法による抗菌活性試験により評価した。試料はArtepillin Cおよび実施例6より得たDPVPを用い、実験方法については実施例4と同様に、菌体は枯草菌について行った。なお、各試料の濃度は、表4に示すように設定した。
得られた結果を表4に示す。
DPVPおよびArtepillin Cをそれぞれ250mMにて得られた結果において、Artepillin Cでは28スポット全てにおいてコロニーが確認されたのに対して、DPVPではスポットは全く発生せず、つまり、枯草菌に対する抗菌作用を有し、DPVPはArtepillin Cよりも強い抗菌力を有することが示唆された。したがって、DPVPを有効成分とする抗菌剤は従来のものよりも顕著な作用を奏すると考えられる。
Figure 2011213673
(実施例10:DPVPの抗癌作用)
次にDPVPの抗癌作用について検討するため、cell counting kit−8による癌細胞増殖抑制作用について評価した。試料はArtepillin Cおよび(実施例6)より得たDPVPを用い、細胞はHL−60を用い、実験方法については(実施例5)と同様に実施した。
得られた結果を図5に示す。
図5より、DPVPはArtepillin Cよりも、細胞生存率が低く、HL−60細胞の増殖を抑制する効果がより高いことが示唆される。
すなわち、DPVPの癌細胞増殖抑制効果はArtepillin Cよりも強力であることが示された。したがって、DPVPを有効成分とする細胞増殖抑制剤は、従来のものよりも顕著な作用を奏すると考えられる。
なお、細胞生存率とは、DMSOを添加した培養液にて処理を受けた細胞の生存細胞数を100%とし、それぞれの試料における細胞の生存細胞数を相対値として算出した値である。
この癌細胞増殖抑制作用の検出を行ったcell counting kit−8は生細胞数に相当する値を検出する原理が特徴である。DPVPが癌細胞増殖を抑制する効力を有し、またその効果が濃度依存性であること、Artepillin Cには抗癌作用が報告されていることから、DPVPについてさらに詳細に抗癌作用を評価した。さらなる抗癌作用の評価として、DNAラダー法によるアポトーシスの検出を指標に検討した。
(実施例11:DPVPの抗癌作用)
細胞はHL−60を用いて実施し、細胞の継代培養は実施例5と同様に行った。試験当日にHL−60細胞を5.0×105cells/mlとなるように96ウェルプレートに播種し、Artepillin Cおよび(実施例6)より得たDPVPをDMSOにて調整、目的濃度となるように200倍希釈にて添加した。24時間培養を行い、細胞を回収し、PBS(Dulbecco’s PBS(−) Wako 041−20211)にて細胞を洗い、Quick Apoptotic DNA Ladder Detection Kit(BioVision Research Products K120−50)を用いて細胞からDNAの回収を行った。得られた試料について、1%アガロースゲル(Takara agarose L03 5003)を用いて25Vにて4時間電気泳動を行い、染色反応はエチジウムブロマイド(Ethidium Bromide Solution BIO−RAD 161−0433)を用いて行った。
得られた結果を図6に示す。
図6は、各試料のDNA抽出物の電気泳動写真のイメージであり、電流は上から下に流されている。レーン左より、通常培養細胞(第1レーン)、DMSO処理(第2レーン)、DPVP100μM処理(第3レーン)、Artepillin C 100μM処理(第4レーン)、Artepillin C 300μM処理(第5レーン)、マーカーλ/Pst(第6レーン)を流した。通常培養細胞及びDMSO処理細胞ではDNA ladderが確認されない点から、本実験の信頼性が確認できる。
また、DPVPを100μMにて処理した細胞にてDNA ladderが確認できるのに対して、Artepillin Cでは同濃度の100μMではDNA ladderが確認されず、300μMにて確認することができた。これより、DPVPはアポトーシスを誘導する効果を有し、その効力はArtepillin Cよりも高いことが示された。
したがって、DPVPを有効成分とする抗癌剤は、従来のものよりも顕著な作用を奏すると考えられる。
<本反応の最適な条件の検討>
次に、様々な優れた生理活性を有するDPVPを効率的に増加させるためのより詳細な条件を検討した。
(実施例12:加熱温度の影響)
加熱時間を20分と固定し、プロポリスエキス1.0g、金属塩としてリン酸マグネシウム7.8mg、水5mlを混合し、オートクレーブにて加熱温度を100℃,110℃,120℃,130℃の各条件下で反応を進行させた。得られた反応後組成物中のDPVP量を、実施例1と同様の手法により、HPLC分析を行い、DPVPについて測定した。
得られた結果を表5に示す。表5は、加熱温度によるDPVP生成量の比較結果を示しており、面積値はHPLCによる分析より得られたDPVPのピークの面積の数値を示したものである。加熱温度が高温であるほど、DPVPのピーク面積は大きくなることが示されている。
この結果から、加熱温度が高いほど、DPVPは多く生成されており、120℃の加熱時間では、加熱していない対照品に対してDPVPは10倍以上の濃度に上昇していることが確認された。従って、加熱温度は120℃以上が好ましいことが明らかとなった。
Figure 2011213673
(実施例13:加熱時間の影響)
次に、プロポリスエキス1.0g、金属塩としてインスタントコーヒー0.1g、水5mlを混合し、オートクレーブにて加熱温度を130℃と固定し、加熱時間10分、20分、30分の各条件下で反応を進行させた。得られた反応後組成物中のDPVP量を、実施例1と同様の手法により、HPLC分析を行い、DPVPについて測定した。
得られた結果を表6に示す。表6は加熱時間によるDPVPの生成量の比較結果を示しており、面積値の計算は表5と同様にデータ処理を行い、示している。加熱時間が長くなるほど、DPVPのピーク面積は大きくなることが示されている。特に、10分の加熱時間では、加熱していない対照品に対してDPVPは10倍以上の濃度に上昇していることが確認された。従って、加熱時間は10分以上が好ましいことが明らかとなった。
Figure 2011213673
(実施例14:加熱時の組成による影響)
次に、オートクレーブによる加熱条件を加熱温度130℃、加熱時間20分と固定し、反応に供する組成物をプロポリスエキス1.0g、金属塩としてインスタントコーヒー0.1gをベースとして固定し、添加する水の量をそれぞれ1ml,2ml,3ml,4ml,5mlとし、各条件下で反応を進行させた。得られた反応後組成物中のDPVP量を、実施例1と同様の手法により、HPLC分析を行い、DPVPについて測定した。
得られた結果を表7に示す。表7は、加熱処理時の組成によるDPVPの生成量の比較結果である。面積値の計算は表5と同様にデータ処理を行い、示している。添加する水の量が多いほど、DPVPのピーク面積の大きさは小さくなることが示されている。特に、水1ml添加の組成物では、水5ml添加の組成物に対してDPVPは1.7倍程度の濃度まで上昇していることが確認された。反応時の組成物としては、特に制限はないものの、溶液濃度は濃いほどDPVPを生成する反応の効率が高いことが伺えた。
Figure 2011213673
(実施例15:加熱時の組成物のpHによる影響)
次に、オートクレーブによる加熱条件を加熱温度130℃、加熱時間20分と固定し、反応に供する組成液をプロポリスエキス2.0g、添加する水の量9mlをベースとして固定し、金属塩の供給源として及びpH調整のために水酸化ナトリウムを用いて、反応開始前の組成物のpHをそれぞれ5,6,7,8,9,10,11,12,13とし各条件下で反応を進行させた。得られた反応後組成物中のDPVP量を、実施例1と同様の手法により、HPLC分析を行い、DPVPについて測定した。
得られた結果を表8に示す。表8は組成物のpHによるDPVPの生成量の比較結果を示している。面積値の計算は表5と同様にデータ処理を行い、示している。
その結果、DPVPの生成量はpHにより異なり、好ましい組成液pHが存在することが伺えた。具体的には、組成液のpHとしては7〜11においてDPVPのピーク面積は大きかった。DPVPを生成する効率から考えて、金属塩として水酸化ナトリウムを使用する場合の反応前の組成液のpHは7〜11が好ましいと考えられた。ただし、金属塩として炭酸水素ナトリウムを使用する場合は、反応が進行中に組成液のpHは変化すると考えられ、一概に反応前の組成物のpHの最適条件を示すことはできない。さらには、前述の実施例1、2、13で金属塩として反応に用いた、コーヒー豆由来の抽出物などの金属塩の混合物も同様に、反応の進行中に、混合物中に含まれる物質が与える影響は様々であり、その反応は複雑であると考えられる。すなわち添加する金属塩の種類により反応前組成液の最適なpHは異なると考えられる。
Figure 2011213673
(実施例16:金属塩の種類による影響)
次に、オートクレーブによる加熱条件を加熱温度130℃、加熱時間20分と固定し、反応に供する組成物をプロポリスエキス1.0g、添加する水の量5mlをベースとして固定し、各種金属塩および酸によるDPVP量の増加効果を検討した。その結果を表9に示した。
表9の結果より、単独の金属塩としては、マグネシウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、銅塩、亜鉛塩のいずれにも、DPVP量の増加効果が認められた。また、金属塩の混合物としてはインスタントコーヒーとミネラルウォーターにDPVP量の増加効果が認められた。
上記の金属塩は、いずれも食品に添加できるものから適当に選択したものであり、他の金属塩でも類似のDPVP量の増加効果を有すると考えられる。
また、表9中の金属塩の中で、マグネシウム塩ではリン酸マグネシウム、カルシウム塩では、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム、ナトリウム塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、カリウム塩としては、炭酸カリウム、リン酸水素2カリウム、亜鉛塩としてはグルコン酸亜鉛、銅塩としてはグルコン酸銅、鉄塩としてはクエン酸鉄アンモニウム、金属塩の混合物としてはミネラルプレミックス、硬水、インスタントコーヒーが優れた添加効果を奏していた。
また、得られたDPVPを含む反応後組成物のうち、硬水とインスタントコーヒーを用いたものについては、風味の点でも好ましいものであり、特にインスタントコーヒーを用いたものはDPVPのマスキング効果が最も認められた。
なお、金属カチオンと塩を形成していない乳酸、グルタミン酸、グルコン酸などの酸類では、その効果は非常に弱いものであり、金属塩としての存在が必要であることが明らかとなった。
Figure 2011213673

Claims (3)

  1. 天然高分子化合物を含有する組成物を金属塩の存在下において加熱処理して、加水分解反応では得られない生理活性低分子化合物を生成させることを特徴とする生理活性低分子化合物の生成方法。
  2. 加熱条件が、120℃以上である請求項1記載の生成方法。
  3. 加熱条件が、120℃以上であり、さらに圧力条件が0.1MPa以上である請求項1又は2記載の生成方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011213675A (ja) * 2010-03-31 2011-10-27 Uha Mikakuto Co Ltd 2,6−ジプレニル−4−ビニルフェノールの生成方法
JP2012012326A (ja) * 2010-06-30 2012-01-19 Uha Mikakuto Co Ltd 4−ビニルフェノール系化合物
CN111838658A (zh) * 2020-07-08 2020-10-30 江南大学 一种开盖即食燕窝罐头及其制备方法

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